(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】プラスチック材料の射出成形方法および射出成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20220111BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/26
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019001047
(22)【出願日】2019-01-08
【審査請求日】2020-03-27
(31)【優先権主張番号】102018000002639
(32)【優先日】2018-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】505296588
【氏名又は名称】イングラス ソシエタ ペル アチオニ
【氏名又は名称原語表記】INGLASS S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【氏名又は名称】奥西 祐之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】マウリツィオ・バッツォ
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-113963(JP,A)
【文献】特開2002-103401(JP,A)
【文献】特開2015-182266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉が電子制御(8)によって操作される少なくとも1つのインジェクタ(6)による、型(1)のキャビティ(4)へのプラスチック材料の射出成形方法であって、前記キャビティ(4)に射出される前記プラスチック材料の過圧力によって引き起こされる、型(1)の不必要な開きが、前記少なくとも1つのインジェクタ(6)の前記電子
制御(8)によって検出されて修正され、
前記型(1)の前記開きの前記検出が、前記型(1)の前記キャビティ(4)の外側に設けられた変換器手段(9)によって起こり、前記型(1)の前記検出された開きが、射出工程の間及び/又はこれに続く前記射出されたプラスチック材料を詰め込む工程の間に、前記少なくとも1つのインジェクタ(6)のストローク及び/又は速度及び/又は開閉加速度を調整することによって修正され
、
前記型(1)の最大開き値が確立されており、前記最大開き値に到達したときに、前記少なくとも1つのインジェクタ(6)の開口が妨げられ又は低減される、ことを特徴とする、プラスチック材料の射出成形方法。
【請求項2】
前記型(1)は、固定部(2)と可動部(3)とを含み、
前記変換器手段(9)は、前記型(1)の前記固定部(2)に位置している、
請求項1に記載のプラスチック材料の射出成形方法。
【請求項3】
前記型(1)は、固定部(2)と可動部(3)とを含み、
前記型の前記固定部(2)は成形機プレートに取り付けられ、
前記変換器手段(9)は前記成形機プレートに位置している、
請求項1に記載のプラスチック材料の射出成形方法。
【請求項4】
前記型(1)は、固定部(2)と、前記固定部(2)に対してスライド柱に沿って移動可能である可動部(3)とを含み、
前記変換器手段(9)は、前記柱に位置している、
請求項1に記載のプラスチック材料の射出成形方法。
【請求項5】
前記変換器手段(9)は、変形センサ、屈曲センサ、ねじりセンサ、圧力センサのうちから選択される、
請求項1~4のいずれか1つに記載のプラスチック材料の射出成形方法。
【請求項6】
前記センサは、接触式である、
請求項5に記載のプラスチック材料の射出成形方法。
【請求項7】
前記センサは、磁気誘導式である、
請求項5に記載のプラスチック材料の射出成形方法。
【請求項8】
前記射出は、自律的に制御された複数のインジェクタ(6)によって作動させられており、
初期の自動チューニング工程を提供し、前記型(1)の最大開き値を定義するとき、インジェクタ(6)の開口が、一度に命令され、前記変換器手段(9)によって、前記最大値に対する各インジェクタ(6)のインパクトが起こり、このインパクトは、これに続く成形サイクルの間の各インジェクタ(6)の前記電子制御のときに監視される、
請求項1~
7のいずれか1つに記載のプラスチック材料の射出成形方法。
【請求項9】
固定部(2)と可動部(3)との間に形成された型(1)のキャビティ(4)にプラスチック材料を射出成形する装置であって、開閉が電子制御(8)によって実行される少なくとも1つのインジェクタ(6)と、前記キャビティ(4)に射出された前記プラスチック材料の圧力によって引き起こされる前記型(1)の不必要な開きを検出するのに適しており、前記電子制御(8)に作動可能に接続されている、変換器手段(9)とを含み、
前記変換器手段(9)は、前記型(1)の前記キャビティ(4)の外側に配置されており、
前記電子制御(8)は、射出工程の間及び/又はこれに続く前記射出されたプラスチック材料を詰め込む工程の間に、前記少なくとも1つのインジェクタ(6)のストローク及び/又は速度及び/又は開閉加速度を調整することによって、開口を制限するように、前記型(1)の内側の圧力を低減するように構成されて
おり、
前記電子制御(8)は、前記型(1)の最大開き値を確立しており、前記最大開き値に到達したときに前記少なくとも1つのインジェクタの開口を妨げ又は低減する、プラスチック材料の射出成形装置。
【請求項10】
前記変換器手段(9)は、前記型(1)の前記固定部(2)に位置している、
請求項
9に記載のプラスチック材料の射出成形装置。
【請求項11】
前記固定部(2)は成形機プレートに取り付けられており、
前記変換器手段(9)は、前記成形機プレートに位置している、
請求項
9に記載のプラスチック材料の射出成形装置。
【請求項12】
前記可動部(3)は、前記固定部(2)に対してスライド柱に沿って移動可能であり、
前記変換器手段(9)は、前記柱に位置している、
請求項
9に記載のプラスチック材料の射出成形装置。
【請求項13】
前記変換器手段(9)は、変形センサ、屈曲センサ、捻りセンサ、圧力センサのうちから選択され、接触式又は磁気誘導式である、
請求項
9~12のいずれか1つに記載のプラスチック材料の射出成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子サーボ制御によって開閉が制御される少なくとも1つのインジェクタによる、型のキャビティへのプラスチック材料の射出成形に関する。
【背景技術】
【0002】
幾年にもわたって、出願人は、Flexflow(登録商標)と称される、電子射出制御システムを設計して開発してきており、該システムは成形プロセス時に射出された材料の流れの正確な制御を確実にする。特に、1つのインジェクタ又は複数のインジェクタそれぞれのアクチュエータは、典型的に回転電気モータから必ずしも構成されるわけではないが、ピンバルブの位置、速度、及び加速度のうち1つ又は複数をプログラム可能な態様で調整されるように電子制御されて、それにより射出されるプラスチックの圧力及び流速を、例えば本出願人の代わりに文献米国特許第9102085号に開示及び図示されるように、調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第9102085号
【文献】米国特許第5556582号
【文献】欧州特許出願第1990603号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
成形プロセス時に、キャビティに射出されたプラスチック材料の過圧力により引き起こされる、型の不必要な開きに関連した問題が生じ得る。このような開きは、たとえ僅かであっても、型の破損がないとしても、成形される物品上に、明確に視認可能な欠陥の形成のみならず損傷の原因となり得る。
【0005】
この問題を解消するため、1つのインジェクタ又は複数のインジェクタそれぞれの電子制御によって、キャビティに射出されるプラスチック材料の過圧力を検出して修正し、つまり過圧力を低減し又は解消することが提案されていた。例えば、文献米国特許第5556582号は、射出されたプラスチック材料の過圧力を、型のキャビティに設けられたセンサを用いることによって検出することを提案している。成形時に、1つのインジェクタ又は複数のインジェクタそれぞれの開度が、キャビティ内の圧力センサによって実行される検出に基づいて調整される。
【0006】
この解決策は、起こり得る過圧力を検出し修正することになるときに効率的であるものの、キャビティの内側における、圧力センサ又は成形される物品が大きい場合には幾つかの圧力センサの存在が、成形される片上の多少の明確な欠陥を必然的に伴うという事実に、在る短所を必然的に伴う。
【0007】
文献欧州特許出願第1990603号は、型の外側に取り付けられた、型の可動部と固定部との間の分離を検出する、レーザー装置を開示している。
【0008】
型の起こり得る開きの検出に関する技術的な問題を解決するけれども、この解決策は、型の2つの部分に取り付けられる、レーザーエミッタとリフレクタとレシーバとの間の正確なアライメントを要求するとすれば、相対的に複雑且つ高価である。さらに、レーザー装置によって検出される起こり得る開きは、ディスプレイ上に単に表示されるか、若しくはせいぜい音響アラームを介して知らされ、それ故、型の可動部による再閉鎖の移動により修正されるので、更なる技術的な複雑性を必然的に伴う。
【0009】
本発明の課題は、上述した技術問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題は、上述した技術問題を解決することである。この課題は、本発明に係る射出成形方法において型のキャビティに射出されたプラスチック材料の過圧力によって引き起こされる型の開きの検出が、型のキャビティの外側に設けられた変換器(トランスデューサ)によって実行され、検出された型の開きが、射出工程及び/又はこれに続く射出されたプラスチック材料を詰め込む工程の間に、少なくとも1つのインジェクタのストローク及び/又は速度及び/又は開閉加速度を調整することによって修正される。
【0011】
変換器手段は、型の外側又は内側に設けられてもよいが、いずれの場合でもそのキャビティの外側に設けられる。例えば、変換器手段は、型の固定部、又は成形機プレート、又は型の可動部のスライド柱に位置していてもよい。
【0012】
変換器手段は、変形センサ、屈曲センサ、捻れセンサ、又は圧力センサのうちから選択されてもよい。このようなセンサは、接触式又は磁気誘導式でもよい。
【0013】
射出が自律的に制御される複数のインジェクタによって作動させられる場合、本発明に係る方法は、自動チューニング法を更に提供し、許容可能な型の最大開き値を定義する際に、インジェクタの開口が、続いて一度に命令され、各インジェクタのインパクトが、この最大値に依存して上述した変換器手段により検証される。後続する成形サイクルの過程において、各インジェクタのインパクトは電子制御のときに考慮される。
【0014】
本発明は、上記方法を実行するための、射出成形装置にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る方法を実行する射出成形装置の第1例を、透過した態様で示す、概略斜視図。
【
図4】本発明に係る射出成形方法を実行する装置の第2例を示す
図1に類似した図。
【
図5】本発明に係る射出成形方法を実行する装置の第2例を示す
図2に類似した図。
【
図6】本発明に係る射出成形方法を実行する装置の第2例を示す
図3に類似した図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、非限定的な例により単に提供される添付の図面を参照して詳細に説明される。
【0017】
まず、
図1、2及び3を参照して、本発明に係る方法を実行するためのプラスチック材料の射出成形用の、第1例に係る装置は、成形機プレートに周知であり不図示の方法で取り付けられる固定部又はマトリックス2と、固定部2に対してスライド柱に沿って移動可能であり周知であり詳細には図示されていない、可動部又はダイ3と、によって形成される型1で構成される。図に示されている型1の閉位置において、固定部2及び可動部3は成形するキャビティ4を相互に画定している。図示された例の場合、キャビティ4は、自動車産業で使用される大きなスポイラを成形するように構成されている。
【0018】
型1は、成形プレスによって供給され、一連の従来型のインジェクタ6に接続された、分配器又はホットランナ5を従来含む射出システムを装備している。インジェクタ6の数及び配置は単に例示として提供されていることが認められるべきである。
【0019】
各インジェクタ6は、それ自体周知な態様であるが詳細には図示されておらず、ノズルを備え、ノズルには、キャビティ4への加圧されたプラスチック材料の射出に関する全閉位置と最大開口位置との間を移動可能である、軸方向移動ピンバルブがある。各インジェクタ6のピンバルブの移動は、流動式又は、符号8で図示される電子ユニットによって制御される、より便利な電子式、例えば回転式である、それぞれのアクチュエータ7によって制御される。
【0020】
電子制御ユニット8は、各アクチュエータ7、したがって各ピンバルブ6を制御することによって、成形サイクルの間にキャビティ4にそれによって射出されるプラスチック材料の圧力及び流速を調整するようにプログラムされている。制御は、特に、キャビティ4を充填する工程における、インジェクタ6のピンバルブの位置、速度、加速度及びストロークの調整を提供してもよい。
【0021】
本発明に係る成形装置はまた、キャビティ4に射出されるプラスチック材料の過大な圧力によって引き起こされる型1の不必要な開きを検出するのに設けられており、後述するように型1の開きを制限し又はさらに解消するようにプログラムされた電子ユニット8に作動可能に接続された変換器手段を備えている。
【0022】
本発明の特有の特徴によれば、これらの変換器手段は、キャビティ4の外側に位置しており、型1の内側又は型1の外側にも配置されている。
【0023】
図1、2及び3に示された実施形態において、変換器手段は、可動部3が閉じ位置に位置するときに、可動部3に対向するように型1の固定部2に位置する、一連の4つのセンサ9から構成されている。センサ9は、変形センサ、屈曲センサ、捻れセンサ、圧力センサのうちから選択することができ、接触式又は磁気誘導式であってもよい。
【0024】
作動時に、型1が閉じて、ホットランナ5から来るプラスチック材料がインジェクタ6によってキャビティ4に導入される場合、センサ9はキャビティ4に射出されたプラスチック材料の過大な圧力による固定部2に対する可動部3の起こり得る開き動作を検出し、対応する信号を電子ユニット8へ送信する。電子ユニット8は、起こり得る検出された過圧力の原因となったインジェクタ6を特定し、それぞれのピンバルブの開口ストローク及び/又は速度及び/又は加速度を調整することによって起こり得る検出された過圧力を修正し、それ故、最適な圧力に復帰させる。基本的に、型1の最大開き値は予め設定されており、この最大値を引き金としたインジェクタ6の開口が妨げられ又は低減される。
【0025】
上述した修正工程が、型へのプラスチック材料の導入工程だけでなく、これに続く射出されたプラスチック材料を詰め込む工程の間にも作動することが認められるべきである。
【0026】
図4、5及び6に示された変形例の場合、先に既に説明されたものと同一又は類似の部品は同じ参照番号を用いて示されており、センサ9は、型1の固定部2及び可動部3が相互に対向する状態において固定部2及び可動部3の外側に取り付けられている。
【0027】
型1の不必要な開きを検出する変換器は、図示された例に示されているものとは異なる位置、例えば成形機プレート上又は固定部2に対する可動部3のスライド柱に沿って等の型1の外側にも配置され得ることが、認められるべきである。如何なる場合でも、これらのセンサは、型1のキャビティ4の外側に常時配置されており、それによって、これらの存在が、どんな態様でも、キャビティ4で成形される物品の審美的及び構造上の特性に影響を与えない。
【0028】
上述したように、本発明は、成形サイクルの最初に、初期自動チューニング工程を提供し、型1の許容可能な最大開き値を定義するときに、インジェクタ6の開口が、続いて一度に命令されて、センサ9によって、許容可能な最大開き値に依存した各インジェクタのインパクトが生じる。これは、成形サイクルの間のインジェクタ6の開口順序によらず、型1のどの領域が、各単一のインジェクタ6によって最も圧力が加えられているのかを検出するのを許容する。これは、各インジェクタ6のインパクトを監視することを許容し、電子ユニット8は型1の特定の領域に影響を与えるインジェクタを校正することを可能にする。
【0029】
明らかに、構造の詳細及び実施形態は、以下の請求項に画定された本発明の保護範囲から逸脱することなく、説明され図示されたものに対して幅広く異なり得る。