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<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】弾性体とそれを用いた力覚センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/1627 20200101AFI20220111BHJP
   G01L 1/22 20060101ALI20220111BHJP
   B25J 19/02 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
G01L5/1627
G01L1/22 F
B25J19/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019012326
(22)【出願日】2019-01-28
(65)【公開番号】P2020118647
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000105659
【氏名又は名称】日本電産コパル電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 嵩幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆史
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/066557(WO,A1)
【文献】米国特許第6871552(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L5/16
G01L1/22
B25J19/02
本件出願を優先基礎とする国際特許出願PCT/JP2019/047067の調査結果が利用された。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
6軸方向に変形可能な複数の第1弾性部が接続される第1構造体と、
前記6軸方向に変形可能な第2弾性部と、前記第2弾性部に接続された中継部を有する複数の第2構造体と、
前記第2構造体の前記中継部のそれぞれと前記第1弾性部のそれぞれとの間に設けられた複数の第3構造体と、
を具備し、
前記第1構造体、前記第2構造体、前記第3構造体、前記中継部、前記第1弾性部、及び前記第2弾性部は、1枚の金属板からなり、前記第2構造体、前記第3構造体、前記中継部、前記第1弾性部、及び前記第2弾性部は、折り曲げられた前記金属板であることを特徴とする弾性体。
【請求項2】
前記第1弾性部は、前記第2弾性部の剛性以下の剛性を有することを特徴とする請求項1記載の弾性体。
【請求項3】
前記第1弾性部は、前記第3構造体の幅方向の一部に設けられることを特徴とする請求項1記載の弾性体。
【請求項4】
前記第1弾性部は、前記第3構造体の長さ方向の一端部に設けられることを特徴とする請求項1記載の弾性体。
【請求項5】
6軸方向に変形可能な複数の第1弾性部が接続される第1構造体と、
前記6軸方向に変形可能な第2弾性部と、前記第2弾性部に接続された中継部を有する複数の第2構造体と、
前記第2構造体の前記中継部のそれぞれと前記第1弾性部のそれぞれとの間に設けられた複数の第3構造体と、
前記第1構造体と前記中継部のそれぞれとの間に設けられた複数の歪センサと、
を具備し、
前記第1構造体、前記第2構造体、前記第3構造体、前記中継部、前記第1弾性部、及び前記第2弾性部は、1枚の金属板からなり、前記第2構造体、前記第3構造体、前記中継部、前記第1弾性部、及び前記第2弾性部は、折り曲げられた前記金属板であることを特徴とする力覚センサ。
【請求項6】
前記第1弾性部は、前記第2弾性部の剛性以下の剛性を有することを特徴とする請求項5記載の力覚センサ。
【請求項7】
前記第1弾性部は、前記第3構造体の幅方向の一部に設けられることを特徴とする請求項5記載の力覚センサ。
【請求項8】
前記第1弾性部は、前記第3構造体の長さ方向の一端部に設けられることを特徴とする請求項5記載の力覚センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えばロボットアーム等に用いられる弾性体とそれを用いた力覚センサに関する。
【背景技術】
【0002】
力覚センサは、例えばロボットアーム等に用いられ、直交する3軸(x、y、z)に関して、力(Fx、Fy、Fz)とモーメント(Mx、My、Mz)を検出する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-48915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
力覚センサは、6軸方向、例えば3軸方向及び3軸回り方向に変形可能な弾性体を具備し、この弾性体に複数の歪センサが設けられている。各歪センサは起歪体に複数の歪ゲージが設けられている。さらに、力覚センサは、弾性体や起歪体を外力から保護するため、ストッパが設けられている。
【0005】
弾性体及び起歪体(以下、これらを合わせてセンサ体とも言う)の剛性が高く、6軸方向の変位量が非常に小さい場合、ストッパの構造に高い加工精度が要求され、ストッパの実現が困難となる。
【0006】
また、センサ体の剛性が、軸方向毎に大きく異なると、ストッパの設計が複雑となり、ストッパの実現が困難となる。
【0007】
一方、ストッパを設けずにセンサ体を設計した場合、弾性体及び起歪体の変位を大きくすることが困難であるため、大きなセンサ出力を得ることができず、ノイズなどの外乱に弱く、測定精度が低いセンサとなってしまう。
【0008】
本発明の実施形態は、十分なセンサ出力を得ることができ、測定精度を向上させることが可能な弾性体とそれを用いた力覚センサを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態の弾性体は、6軸方向に変形可能な複数の第1弾性部が接続される第1構造体と、前記6軸方向に変形可能な第2弾性部と、前記第2弾性部に接続された中継部を有する複数の第2構造体と、前記第2構造体の前記中継部のそれぞれと前記第1弾性部のそれぞれとの間に設けられた複数の第3構造体と、を具備し、前記第1構造体、前記第2構造体、前記第3構造体、前記中継部、前記第1弾性部、及び前記第2弾性部は、1枚の金属板からなり、前記第2構造体、前記第3構造体、前記中継部、前記第1弾性部、及び前記第2弾性部は、折り曲げられた前記金属板である。
【0010】
本実施形態の力覚センサは、6軸方向に変形可能な複数の第1弾性部が接続される第1構造体と、前記6軸方向に変形可能な第2弾性部と、前記第2弾性部に接続された中継部を有する複数の第2構造体と、前記第2構造体の前記中継部のそれぞれと前記第1弾性部のそれぞれとの間に設けられた複数の第3構造体と、前記第1構造体と前記中継部のそれぞれとの間に設けられた複数の歪センサと、を具備し、前記第1構造体、前記第2構造体、前記第3構造体、前記中継部、前記第1弾性部、及び前記第2弾性部は、1枚の金属板からなり、前記第2構造体、前記第3構造体、前記中継部、前記第1弾性部、及び前記第2弾性部は、折り曲げられた前記金属板である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る力覚センサを示す斜視図。
図2図1に示す力覚センサを分解して示す斜視図。
図3図2に示す力覚センサの一部を組み立てた状態を示す斜視図。
図4図2に示す力覚センサの一部をさらに組み立てた状態を示す斜視図。
図5図2に示す力覚センサの一部をさらに分解して示す斜視図。
図6】本実施形態に係る弾性体を取り出して示す平面図。
図7】本実施形態に係る弾性体の一部を取り出して示す斜視図。
図8A】本実施形態に係る弾性体の変形の一例を示すものであり、一部を取り出して示す側面図。
図8B図8Aに示す変形に伴う起歪体の変形の例を示す斜視図。
図8C】参考例としての弾性体の変形の例を示すものであり、一部を取り出して示す側面図。
図8D図8Cに示す変形に伴う起歪体の変形の例を示す斜視図。
図9】歪センサの一例を示す平面図。
図10】ブリッジ回路の一例を示す回路図。
図11】本実施形態に係る弾性体の変形例を示すものであり、一部を取り出して示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。図面において、同一部分には同一符号を付している。
【0013】
図1乃至図6を用いて、本実施形態に係る力覚センサ10の構成について説明する。
力覚センサ10は、例えばロボットアーム等に用いられ、X、Y、Z軸方向の力(Fx、Fy、Fz)、及びX、Y、Z軸回りのトルク(モーメント:Mx、My、Mz)を検出する。
【0014】
図1図2に示すように、力覚センサ10は、円筒状の本体11と、本体11を覆う円筒状のカバー12とを備えている。カバー12の内部には、本体11に対して動作可能な可動体としての取付けプレート13が設けられ、取付けプレート13は、複数のネジ14によりカバー12に固定される。カバー12及び取付けプレート13は、本体11に対して動作可能に設けられる。
【0015】
本体11は、図示せぬロボットアームの例えば本体に固定される。取付けプレート13は、ロボットアームの例えばハンド部分に固定される。
【0016】
本体11とカバー12との間には、リング状のシール部材15が設けられている。シール部材15は、弾性材、例えばゴム製又は発泡部材により形成され、本体11とカバー12との間隙をシールするとともに、カバー12が本体11に対して動作可能としている。
【0017】
図3に示すように、本体11と取付けプレート13との間には、弾性体16が設けられる。弾性体16は、後述するように、例えば1枚の金属を折り曲げて形成されており、1つの第1構造体16-1と、複数の第2構造体16-2と、第1構造体16-1と第2構造体16-2との間に設けられた複数の第3構造体16-3等と、を具備する。複数の第2構造体16-2は、第1構造体16-1の周囲に等間隔に配置される。
【0018】
本実施形態において、弾性体16は、例えば3つの第2構造体16-2を具備している。しかし、第2構造体16-2の数は3つに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。また、本実施形態を、力覚センサ以外の例えばトルクセンサに適用する場合、第2構造体16-2の数は、2つであってもよい。
【0019】
第1構造体16-1の周囲には、6つの第1弾性部16-4が設けられている。第1弾性部16-4は、第3構造体16-3と連続し、第1構造体16-1の周囲に配置される。
【0020】
第2構造体16-2のそれぞれは、略U字状の2つの第2弾性部16-5と、2つの第2弾性部16-5の間で、2つの第2弾性部16-5を繋ぐ直線上の中継部16-6を具備している。
【0021】
第3構造体16-3は、一端部が第1弾性部16-4に接続され、他端部が中継部16-6に接続される。第1構造体16-1と1つの第2構造体16-2との間に設けられた2つの第3構造体16-3は、互いに平行に配置される。
【0022】
第2構造体16-2は、複数のネジ17により本体11に固定され、第1構造体16-1は、図2図4に示すように、複数のネジ18により取付けプレート13に固定される。
【0023】
図2図3に示すように、歪センサ19は、第1構造体16-1と中継部16-6との間に設けられる。具体的には、歪センサ19の一端部は、固定プレート20と第1弾性部16-4の裏面に挿入されたネジ21により、2つの第1弾性部16-4の間の第1構造体16-1に固定され、歪センサ19の他端部は固定プレート22と中継部16-6の裏面に挿入されたネジ23により、中継部16-6の中央部に固定される。歪センサ19は、後述するように、金属製の起歪体の表面に複数の歪ゲージが配置されている。
【0024】
取付けプレート13及びカバー12が外力により、本体11に対して動作すると、第3構造体16-3、第1弾性部16-4、第2弾性部16-5、及び中継部16-6が変形する。これに伴い、歪センサ19の起歪体が変形し、歪ゲージから電気信号が出力される。
【0025】
各歪センサ19の各歪ゲージは、後述するように、ブリッジ回路を構成し、ブリッジ回路により、X、Y、Z軸方向の力(Fx、Fy、Fz)、及びX、Y、Z軸回りのトルク(モーメント:Mx、My、Mz)が検出される。
【0026】
図2に示すように、本体11には、弾性体16を外力から保護する複数のストッパ30が設けられている。各ストッパ30は、円筒状のストッパ部材31と、固定部材としてのネジ32と、取付けプレート13に設けられた複数の開口部13aと、により構成される。
【0027】
本実施形態は、3つのストッパ30を具備する場合を示している。しかし、ストッパ30の数は、3つに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。3つのストッパ30は、3つの第2構造体16-2の相互間にそれぞれ配置される。
【0028】
ストッパ30を第2構造体16-2の相互間に配置することにより、弾性体16及び力覚センサ全体の直径及び外形の大型化を抑制することが可能である。
【0029】
本体11の表面で、3つの第2構造体16-2の相互間に対応する位置には、3つ突起11aがそれぞれ設けられている。
【0030】
図4に示すように、ストッパ部材31は、取付けプレート13の開口部13a内に挿入された状態で、ネジ32により本体11の突起11aに固定される。ストッパ部材31の外径は、後述するように、開口部13aの内径より若干小さく設定されている。取付けプレート13が本体11に対して動作し、ストッパ部材31の外面が開口部13aの内面に当接すると、取付けプレート13の動作が阻止され、弾性体16及び歪センサ19の起歪体の破壊が防止される。
【0031】
図5に示すように、本体11の裏面部には、印刷基板41、複数のフレキシブル印刷基板42、裏蓋43、リード線アセンブリ44、中空管45が設けられている。印刷基板41は、ブリッジ回路に電源を供給したり、ブリッジ回路の出力信号を処理したりする図示せぬ処理回路などを具備している。
【0032】
複数のフレキシブル印刷基板42の一端部は、図2に示すように、本体11の上面側に配置され、各歪センサ19に接続される。複数のフレキシブル印刷基板42の他端部は、印刷基板41の裏面において、処理回路などに接続される。複数のフレキシブル印刷基板42は、歪ゲージに電源を供給したり、歪ゲージからの信号を処理回路に供給したりする。
【0033】
リード線アセンブリ44は、印刷基板41に接続され、処理回路に電源を供給したり、処理回路からの信号を伝送したりする。裏蓋43は、複数のネジにより本体11に固定され、印刷基板41をカバーする。
【0034】
本体11、カバー12、取付けプレート13、及び弾性体16の第1構造体16-1、印刷基板41、裏蓋43の中央部には、開口部が連通して設けられており、中空管45は、この開口部内に設けられる。
【0035】
図2図3に示すように、中空管45の一端部は、裏蓋43、印刷基板41、第1構造体16-1を貫通し、第1構造体16-1の表面に突出される。中空管45の第1構造体16-1の表面に突出された一端部には、リング状のシール部材26が設けられる。このシール部材26は、例えばゴム又は発泡材料により形成され、取付けプレート13の開口部と中空管25の一端部との間隙をシールする。これにより、カバー12の外部から取付けプレート13の内部に塵埃が侵入することが防止される。
【0036】
(弾性体の構成)
図6は、本実施形態に係る弾性体16を示している。前述したように、弾性体16は、1枚の金属を折り曲げて形成される。弾性体16は、1つの第1構造体16-1と、3つの第2構造体16-2、6つの第3構造体16-3、各第3構造体16-3に設けられた第1弾性部16-4、各第2構造体16-2に設けられた2つの第2弾性部16-5、2つの第2弾性部16-5の間と2つの第3構造体16-3との間に設けられた中継部16-6、及び第1構造体16-1と中継部16-6とを接続する梁部16-7を具備している。
【0037】
図6のAは、弾性体16の一部を展開した状態を示している。第1構造体16-1、第2構造体16-2、第3構造体16-3、第1弾性部16-4、第2弾性部16-5、中継部16-6、及び梁部16-7は、1枚の金属板から例えば打ち抜いて形成される。
【0038】
中継部16-6は、梁部16-7により第1構造体16-1に接続されている。中継部16-6の両側には、第2弾性部16-5と第2構造体16-2が連続して形成され、さらに、第3構造体16-3と第1弾性部16-4が連続して形成される。
【0039】
第1弾性部16-4は、第3構造体16-3の長さ方向の一端部(先端部)で、長さ方向と交差する方向(幅方向)に設けられている。
【0040】
第2構造体16-2、第3構造体16-3、第2弾性部16-5の幅はWであり、第1弾性部16-4の幅W1は、幅Wより狭くされている。中継部の幅は、ほぼ2Wとされている。
【0041】
金属板の厚みT(図6に示す)、第1弾性部16-4の幅W1、第2弾性部16-5、第3構造体16-3などの幅W、及び中継部16-6の幅2Wの関係は、必要に応じて変更可能である。
【0042】
梁部16-7の幅は、金属板の厚みTと等しく、梁部16-7の断面は、正方形とされている。このため、各軸方向の変形のし易さが等しくされている。梁部16-7は、第1構造体16-1と中継部16-6とを接続するために用いている。しかし、例えば第1構造体16-1と第3構造体16-3又は第1弾性部16-4とを接続する構造とすれば、梁部16-7は、省略することが可能である。
【0043】
Aに示すように打ち抜かれた金属板の破線で示す複数の折曲部Bを折り曲げることにより、図6に示す弾性体16が形成される。金属板の各部を折り曲げた後、第1弾性部16-4の先端部が例えばネジにより第1構造体16-1に固定される。第1弾性部16-4の固定方法は、これに限らず、第1弾性部16-4の先端部を第1構造体16-1に溶接したり、接着材を用いて接着したりすることも可能である。
【0044】
第1弾性部16-4は、後述するように第3構造体16-3に対して湾曲され、第3構造体16-3などの幅Wより狭い幅W1を有している。このため、第1弾性部16-4は、第2弾性部16-5の剛性以下の曲げ又はねじれ剛性を有している。
【0045】
第2弾性部16-5は、略U字状に折曲され、第2構造体16-2に比べて低い曲げ又はねじれ剛性を有している。
【0046】
歪センサ19は、2つの第1弾性部16-4の間に位置する第1構造体16-1と、中継部16-6の中央部との間に設けられる。さらに、歪センサ19は、2つの第3構造体16-3の間に位置され、2つの第3構造体16-3と平行に配置される。
【0047】
第1弾性部16-4、第2弾性部16-5、中継部16-6、第1構造体16-1、第2構造体16-2、及び第3構造体16-3の厚みは、金属板の厚みTに等しい。第2弾性部16-5は、U字状部の長さL1及びL2が長い程、及び金属板の厚みTが薄い程、柔軟であり、第1弾性部16-4及び中継部16-6も、金属板の厚みTが薄い程、及び又は幅が狭い程、柔軟である。
【0048】
歪センサ19を構成する起歪体19aの厚みは、第1構造体16-1、第2構造体16-2、第3構造体16-3、第1弾性部16-4、第2弾性部16-5、及び中継部16-6の厚みより薄く、起歪体19aの幅は、第3構造体16-3、第1弾性部16-4、第2弾性部16-5、及び中継部16-6の厚みTより広い。
【0049】
起歪体19aは、後述するように、厚みが薄い矩形状であり、平面の縦横比が大きい形状である。このため、起歪体19aが単体の場合、断面二次モーメントの相違により、起歪体19aは、Fx、Fy方向の力及びMz方向のモーメントに対して変位が小さく、Mx、My方向のモーメント及びFz方向の力に対して変位が大きい特性を有している。
【0050】
一方、弾性体16の変位量が小さ過ぎる場合、上述したストッパ30の構造に対して、高い加工精度が要求される。また、Fx、Fy方向の力及びMz方向のモーメントに対する変位量と、Mx、My方向のモーメント及びFz方向の力に対する変位量が大きい場合、ストッパ30の構造が複雑となる。このため、簡単な構造のストッパで高精度な力覚センサを構成するためには、弾性体16の各軸の変位量の差が小さいことが必要である。
【0051】
本実施形態に係る弾性体16は、X-Y平面(X軸、Y軸を含む平面)に平行な方向への変位量を増加させ、起歪体19aは、僅かしか変位していないにも関わらず、センサ体としては、大きな変位量を実現することを可能とする。
【0052】
さらに、起歪体19aのZ軸方向の剛性は、弾性体16のZ軸方向の剛性に比べて遥かに小さい。このため、力覚センサのZ軸方向の曲げに係わる定格荷重を、起歪体19a単体に印加することはできない。したがって、起歪体19aの変位量をコントロールする必要がある。
【0053】
したがって、弾性体16に求められる機能は、(1)X-Y平面内において、変位量が大きいこと。(2)Z軸方向の負荷を受けて、起歪体19aの変位量をコントロールすることである。
【0054】
(第1弾性部16-4の機能)
(1)Mz系(Fx、Fy、Mz)の変形
図7に示すように、第1弾性部16-4は、第3構造体16-3に対して湾曲部16-4aの部分で湾曲され、第1弾性部16-4の幅W1は、第3構造体16-3などの幅Wより狭くされている。このため、第1弾性部16-4は、第2弾性部16-5の剛性以下の剛性を有し、図示矢印C、D方向に変形し易くなっている。
【0055】
弾性体16にFx、Fy方向の力が印加された場合、及びMz方向のモーメントが印加された場合、第1構造体16-1に対して第2構造体16-2が相対的に移動し、第3構造体16-3に接続された第1弾性部16-4が、ねじれるように変形する。このため、第1構造体16-1に対する第2構造体16-2の変位量が増加する。起歪体19aは、第3構造体16-3の厚みと、起歪体19aの幅、及び負荷に応じて変位し、起歪体19aの変位量は、僅かである。すなわち、本実施形態の場合、起歪体19aの変位量に比べて、第1構造体16-1に対する第2構造体16-2の変位量を増加させることができる。
【0056】
(2)Fz系(Mx、My、Fz)の変形
一方、弾性体16にFz方向の力が印加された場合、及びMx、My方向のモーメントが印加された場合、第3構造体16-3が接続された第1弾性部16-4が、図7に示す矢印C、D方向に変形する。このため、第3構造体16-3の幅方向の変位量が増加し、起歪体19aの厚み方向の変位量を増加させることができる。このため、後述するように、第3構造体16-3を略S字状に変形させることができ、ブリッジ回路の出力電圧を増加させることができる。
【0057】
図8Aは、本実施形態に係る弾性体16の変形の一例を示している。
第1構造体16-1及び第3構造体16-3に接続された第1弾性部16-4の剛性は、第2弾性部16-5の剛性以下である。このため、弾性体16に例えばFz方向の力が印加された場合、第1弾性部16-4が変形することにより第2弾性部16-5の変形が減少し、中継部16-6の吊り上げ量が低減される。このため、第3構造体16-3は、略S字状に変形し、第1構造体16-1と中継部16-6との間に設けられた起歪体19aも、略S字状に変形される。
【0058】
図8Bは、図8Aに示す弾性体16の変形に伴う起歪体19aの変形を概略的に示している。起歪体19aの表面に複数の歪ゲージ51~54が図示のように配置されているものとする。
【0059】
弾性体16の変形に伴い起歪体19aが略S字状に変形された場合、起歪体19aの表面に設けられた歪ゲージ51、52は、伸長され、歪ゲージ53、54は圧縮される。このため、歪ゲージ51、52の抵抗値と、歪ゲージ53、54の抵抗値との差が大きくなり、歪ゲージ51~54により構成されるブリッジ回路の出力電圧を増加させることができる。したがって、力覚センサの精度を向上させることができる。
【0060】
図8Cは、比較例としての弾性体60の変形の様子を示している。この弾性体60は、本実施形態の弾性体16から第1弾性部16-4を除いたものである。第1弾性部16-4が無い場合、弾性体60に例えばFz方向の力が印加されると、第2構造体16-2に比べて低い剛性を有する第2弾性部16-5の曲げ又はねじれ変形により、第3構造体16-3が湾曲される。これに伴い、中継部16-6が吊り上げられる。このため、第1構造体16-1と中継部16-6との間に設けられた起歪体19aも湾曲される。
【0061】
図8Dは、図8Cに示す弾性体60の変形に伴う起歪体19aの変形を示している。弾性体60の湾曲に伴い起歪体19aが湾曲された場合、起歪体19aの表面に設けられた歪ゲージ51、52、及び歪ゲージ53、54は共に伸長される。このため、歪ゲージ51、52の抵抗値と、歪ゲージ53、54の抵抗値との差が小さく、歪ゲージ51~54により構成されるブリッジ回路の出力電圧も小さい。したがって、力覚センサの精度を向上させることが困難である。
【0062】
(第2弾性部16-5の機能)
第2弾性部16-5は、第2構造体16-2に比べて曲げ又はねじれ剛性が低い。このため、弾性体16にFx、Fy方向の力が印加された場合、及びMz方向のモーメントが印加された場合、第1構造体16-1と中継部16-6との間に設けられた起歪体19aが後述する第3構造体16-3により制御された量しか変位しないにも関わらず、第1構造体16-1に対する第2構造体16-2の変位量を増加させることができる。
【0063】
具体的には、U字状の第2弾性部16-5は、幅に比べて厚みが狭くされ、第2弾性部16-5の断面二次モーメントが大きく異なっている。このため、第2弾性部16-5は、Fz方向の力に対して剛性が高く、Mz方向のモーメントに対して剛性が低い。ねじれを考慮すると、第2弾性部16-5は、Fz方向の力に対しても単純に曲げで想定している以上に柔軟性を有している。しかし、第2弾性部16-5は、Mz方向のモーメントよりも、十分にFz方向の力に対する剛性が高い。
【0064】
(第3構造体16-3の機能)
第3構造体16-3は、第1弾性部16-4と中継部16-6との間に設けられ、且つ、歪センサ19と平行に配置されている。このため、弾性体16にFx、Fy方向の力、及び/又はMz方向のモーメントが印加された場合、歪センサ19を構成する起歪体19aの厚み方向と幅方向の変位量を制御することができる。
【0065】
具体的には、第3構造体16-3の幅Wは、起歪体19aの厚みより広くされ、第3構造体16-3の厚みTは、起歪体19aの幅より薄くされている。したがって、第3構造体16-3により、断面二次モーメントの異なる起歪体19aの厚み方向と幅方向の変位量を制御することが可能である。
【0066】
(歪センサの構成)
図9は、歪センサ19の一例を示している。前述したように、歪センサ19は、起歪体19aと、起歪体19aの表面に設けられた複数の歪ゲージR1~R8により構成される。起歪体19aは、金属により構成され、その厚みは、幅より薄くされている。このため、起歪体19aは、厚み方向に変形しやすく、幅方向に変形し難い。
【0067】
起歪体19aの一端部は第1構造体16-1に設けられ、他端部は第2構造体16-2の中継部16-6に設けられる。歪ゲージR1、R3、R5、R8は、起歪体19aの一端部近傍に設けられ、歪ゲージR2、R4、R6、R7は、起歪体19aの他端部近傍に設けられる。
【0068】
図10は、上記歪ゲージR1~R8を用いたブリッジ回路の一例を示している。歪ゲージR1、R2、R3、R4は、第1ブリッジ回路BC1を構成し、歪ゲージR5、R6、R7、R8は、第2ブリッジ回路BC2を構成する。
【0069】
第1ブリッジ回路BC1は、電源Vと接地GNDとの間に歪ゲージR2と歪ゲージR1の直列回路と、歪ゲージR4と歪ゲージR3の直列回路が配置される。歪ゲージR2と歪ゲージR1の接続ノードから出力電圧Vout+が出力され、歪ゲージR4と歪ゲージR3の接続ノードから出力電圧Vout-が出力される。出力電圧Vout+及び出力電圧Vout-は、演算増幅器OP1に供給され、演算増幅器OP1の出力端から出力電圧Voutが出力される。
【0070】
第2ブリッジ回路BC2は、電源Vと接地GNDとの間に歪ゲージR6と歪ゲージR5の直列回路と、歪ゲージR8と歪ゲージR7の直列回路が配置される。歪ゲージR6と歪ゲージR5の接続ノードから出力電圧Vout+が出力され、歪ゲージR8と歪ゲージR7の接続ノードから出力電圧Vout-が出力される。出力電圧Vout+及び出力電圧Vout-は、演算増幅器OP2に供給され、演算増幅器OP2の出力端から出力電圧Voutが出力される。
【0071】
前述したように、起歪体19aが例えばFz方向の力により、S字状に変形されることにより、第1ブリッジ回路BC1及び第2ブリッジ回路BC2から大きな出力電圧を得ることができる。
【0072】
尚、起歪体19aに対する歪ゲージR1~R8の配置、及びブリッジ回路BC1、BC2の構成は、これに限定されるものではなく、変形可能である。
【0073】
(弾性体16及び力覚センサの効果)
本実施形態の弾性体16は、第1構造体16-1と、複数の第2構造体16-2と、第2構造体16-2のそれぞれに設けられた第2弾性部16-5と、2つの第2弾性部16-5の間に設けられた中継部16-6と、中継部16-6に設けられた2つの第3構造体16-3と、第3構造体16-3のそれぞれに設けられ、第1構造体16-1に接続された第1弾性部16-4と、を具備し、第2弾性部16-5の剛性は、第2構造体16-2の剛性よりも低く、第1弾性部16-4の剛性は第2弾性部16-5の剛性以下である。このため、弾性体16の全体的な剛性を、第1弾性部16-4及び第2弾性部16-5が無い場合に比べて低くすることができ、Fx、Fy方向の力に対して、弾性体16の変位量を増加させることができる。したがって、Fx、Fy方向の力に対して、起歪体19aの僅な変形に比べて、弾性体16の変位量を増加させることができる。
【0074】
また、本実施形態の弾性体16は、第1弾性部16-4、第2弾性部16-5、及び中継部16-6を具備することにより、6軸方向の変位量をほぼ同等とすることができる。しかも、Fz方向の力を受けて、第3構造体16-3及び中継部16-6の変形を抑制でき、第1弾性部16-4、第3構造体16-3及び中継部16-6を略S字状に変形させることができる。これに伴い、起歪体19aをS字状に変形させることができるため、Fz方向の力に対して起歪体19aに十分な歪を与えることができる。したがって、大きなセンサ出力を得ることができ、高精度の力覚センサを構成することが可能である。
【0075】
さらに、第1弾性部16-4の剛性が、第2弾性部16-5の剛性以下であるため、Fz方向の力に対して起歪体19aにより大きな歪を与えることができ、一層大きなセンサ出力を得ることができる。尚、ここで、剛性とは、軸剛性、曲げ剛性、せん断剛性、及びねじり剛性を含んでいる。
【0076】
しかも、弾性体16は、6軸方向の変位量がほぼ同等であり、全体的な剛性が低い。このため、簡単な構成のストッパ30により、起歪体19aを保護することができる。
【0077】
具体的には、高い剛性を有する弾性体の場合、ストッパ30のストッパ部材31の側面と、取付けプレート13の開口部13aの内面との隙間を例えば20μm以下とする必要がある。このため、機械加工が困難である。しかし、本実施形態のように、弾性体16の全体的な剛性が低い場合、定格荷重時の弾性体16の変位量を例えば100μm~200μmに増加させることができる。このため、ストッパ部材31の側面と、取付けプレート13の開口部13aの内面との間隔を広げることができるため、過負荷時のストッパ30の設計が容易となり、ストッパ30の機械加工が容易となる。
【0078】
さらに、過負荷時、剛性が高いストッパ30によって、弾性体16及び起歪体19aの変位を抑制することができるため、定格荷重の範囲において、起歪体19aに十分な歪を与えることが可能である。したがって、高いセンサ出力を得ることが可能である。仮に、ストッパ30が無い場合、過負荷時も想定して、十分な安全率を見込んだ定格荷重を設定する必要がある。このため、起歪体に十分な歪を与えることができず、高いセンサ出力を取り出すことが困難である。
【0079】
(弾性体16の変形例)
図11は、弾性体16の変形例を示している。
上記実施形態において、第1弾性部16-4は、第3構造体16-3の長さ方向の一端部(先端部)で、長さ方向と交差する方向(幅方向)に設けられ、湾曲部16-4aを有している。
【0080】
これに対して、図11に示す変形例において、第1弾性部16-4は、第3構造体16-3の長さ方向の一端部で、金属板の厚み方向に折り曲げて形成される。このようにして形成された第1弾性部16-4は、第2弾性部16-5の剛性以下の剛性を有しており、図示矢印C、D方向に変形し易い構造とされている。
【0081】
上記変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
その他、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0082】
10…力覚センサ、11…本体、16…弾性体、16-1…第1構造体、16-2…第2構造体、16-3…第3構造体、16-4…第1弾性部、16-5…第2弾性部、16-6…中継部、19…歪センサ、19a…起歪体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11