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特許6999590細胞内貫通能を持ってRNA干渉を誘導する核酸分子およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】細胞内貫通能を持ってRNA干渉を誘導する核酸分子およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20220111BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20220111BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220111BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220111BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220111BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220111BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20220111BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220111BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220111BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220111BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220111BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220111BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/713
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61P17/02
A61P13/12
A61P19/02
A61P9/12
A61P9/00
A61P25/00
A61P3/10
A61P9/10 101
A61P35/00
A61P19/10
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019031549
(22)【出願日】2019-02-25
(62)【分割の表示】P 2016250474の分割
【原出願日】2013-05-21
(65)【公開番号】P2019122379
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2019-03-27
(31)【優先権主張番号】10-2012-0053950
(32)【優先日】2012-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514298162
【氏名又は名称】オリックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Olix Pharmaceuticals Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ホン ソンウ
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-504782(JP,A)
【文献】国際公開第2012/053741(WO,A1)
【文献】特開2012-061007(JP,A)
【文献】特表2011-500003(JP,A)
【文献】特表2008-535496(JP,A)
【文献】国際公開第2011/108682(WO,A1)
【文献】特開2011-101655(JP,A)
【文献】特表2012-502991(JP,A)
【文献】国際公開第2010/107952(WO,A1)
【文献】J. Gene. Med.,2006年,Vol.8 No.7,pp.889-900
【文献】Transplant. Proc.,2008年,Vol.40, No.7,pp.2365-2369
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/REGISTRY/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合組織成長因子(CTGF)mRNAである標的核酸と完全に相補的であり、そして少なくとも1つのホスホロチオエート結合、及び少なくとも1つの2’位置においてO-メチル基で改変されたヌクレオチドとを含む、配列番号154の核酸配列からなる第1核酸鎖と、前記第1鎖と相補的に結合し、そして少なくとも1つのホスホロチオエート結合及び少なくとも1つの2’位置においてO-メチル基で改変されたヌクレオチドを含み、そして親油性部分をさらに含む13~21nt長さの第2核酸鎖とを含む細胞貫通性の長い非対称形RNAi(cp-lasiRNA)分子であって、
前記第1鎖が、前記第2鎖が結合する二本鎖領域及び前記第2鎖が結合しない一本鎖領域を有するように、前記第2鎖が、前記第1鎖に結合し、そして前記第1鎖の5’末端及び前記第2鎖の3’末端が、平滑末端を形成し、そして前記第1鎖のホスホロチオエート結合がその一本鎖領域に位置する、前記細胞貫通性の長い非対称形RNAi(cp-lasiRNA)分子。
【請求項2】
前記第2核酸鎖が16ntの長さである、請求項1に記載のcp-lasiRNA分子。
【請求項3】
前記親油性部分が前記第2鎖の5’末端又は3’末端に結合した脂質、親油性ペプチド、又は親油性タンパク質である、請求項1又は2に記載のcp-lasiRNA分子。
【請求項4】
前記親油性部分がコレステロール部分である、請求項に記載のcp-lasiRNA分子。
【請求項5】
前記親油性部分がトコフェロール部分である、請求項に記載のcp-lasiRNA分子。
【請求項6】
前記親油性部分が10以上の炭素原子を有する長鎖脂肪酸である、請求項に記載のcp-lasiRNA分子。
【請求項7】
前記親油性部分がステアリン酸部分である、請求項に記載のcp-lasiRNA分子。
【請求項8】
前記親油性部分がパルミチン酸部分である、請求項に記載のcp-lasiRNA分子。
【請求項9】
前記親油性部分が前記第2鎖の3’末端に結合する、請求項1~のいずれか一項に記載のcp-lasiRNA分子。
【請求項10】
前記親油性部分が前記第2鎖の5’末端に結合する、請求項1~のいずれか一項に記載のcp-lasiRNA分子。
【請求項11】
前記コレステロール部分が前記第2鎖の3’末端に結合する、請求項に記載のcp-lasiRNA分子。
【請求項12】
前記ステアリン酸部分が前記第2鎖の5’末端に結合する、請求項に記載のcp-lasiRNA分子。
【請求項13】
前記cp-lasiRNA分子が4~17のホスホロチオエート結合を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載のcp-lasiRNA分子。
【請求項14】
前記第1鎖が4つのホスホロチオエート結合を含む、請求項13に記載のcp-lasiRNA分子。
【請求項15】
前記第2鎖が1~17のホスホロチオエート結合を含む、請求項13又は14に記載のcp-lasiRNA分子。
【請求項16】
前記標的核酸は、mRNA、microRNA、piRNA、コードDNA配列及び非コードDNAからなる群から選択される請求項1~15のいずれか一項に記載のcp-lasiRNA分子。
【請求項17】
前記第1鎖における前記一本鎖領域の少なくとも一つのヌクレオチドが巨大塩基類似体を含む請求項1~16のいずれか一項に記載のcp-lasiRNA分子。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載のcp-lasiRNA分子を含有する遺伝子発現抑制用組成物。
【請求項19】
請求項1~17のいずれか一項に記載のcp-lasiRNA分子を導入することを含む、インビトロで細胞中の標的遺伝子の発現を抑制する方法。
【請求項20】
請求項1~17のいずれか一項に記載のcp-lasiRNA分子を含む標的遺伝子の発現の抑制用医薬組成物であって、前記標的遺伝子が標的核酸を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規構造の細胞内貫通能(cell-penetrating ability)を持つRNAi誘導核酸分子およびその用途に関し、より詳細にはRNAiを誘導する二本鎖の核酸分子に含まれている少なくとも一つのヌクレオチドのホスフェートバックボーンがホスホロチオエート(Phosphorothioate)または、ホスホロジチオエート(phosphorodithioate)に置換されて、親油性化合物(lipophilic compound)が結合された構造を持つようにして、優秀な目的遺伝子抑制効率を持ちながらも別途の細胞伝達体がなくても細胞内貫通能を持つ新しい構造の核酸分子およびこれを利用した目的遺伝子の発現抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RNA干渉(RNA interference:RNAi)は、非常に特異的で、効率よく遺伝子発現を抑制できるメカニズムであり、これは標的遺伝子のmRNAと相同である配列を持つセンス鎖とこれと相補的な配列を持つアンチセンス鎖で構成される二本鎖RNA(dsRNA)を細胞等に導入して、標的遺伝子mRNAの分解を誘導することで標的遺伝子の発現を抑制する。
【0003】
このようなRNA干渉を誘導するsiRNAは、塩基配列特異的に標的遺伝子の発現を抑制できる短い長さ(19~21bp)の二本鎖RNAで、高い効率性と標的特異性に起因して現在治療が難しい癌、ウィルスの感染、および遺伝病など様々な疾病に対する治療剤として脚光を浴びている。siRNAを利用した効果的な治療剤開発のためには、安定性、発現抑制効率(silencing efficiency)、免疫反応、オフ-ターゲット効果(off-target effects)等解決されなければならない様々な問題点があるが、その中でもインビボでの効果的な伝達(delivery)が最も大きい困難と指摘されている。siRNAは、ホスフェートバックボーン(phosphate backbone)構造のために高い負の電荷を帯びており、細胞膜を通過できなく、その小さいサイズのために血液内で早く除去されて、実際の標的部位にRNAi誘導のための十分量のsiRNAを伝達するのに大きい困難を抱えている。
【0004】
現在インビトロ伝達の場合、陽イオン性脂質(cationic lipids)と陽イオン性ポリマー(cationic polymers)を利用した高効率の伝達方法が多く開発されている(Sioud M,Sorensen DR Cationic liposome-mediated delivery of siRNAs in adult mice.Biochem Biophys Res Commun 2003;312:1220-1225)。しかし、多くの場合インビボでは、インビトロほどの高い効率でsiRNAを伝達しにくく、生体内に存在する種々のタンパク質との相互作用によってsiRNAの伝達効率が減少する問題点がある(Bolcato-Bellemin AL, Bonnet ME, Creusat G,et al.Sticky overhangs enhance siRNA-mediated gene
silencing.Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 2007;104:16050-16055)。また、疾病が発生する部位と関係なく、伝達ビヒクル(delivery vehicle)の組成により肝や肺のような特定臓器に高く蓄積されて毒性を誘導する問題点を持っている。
【0005】
一方、結合組織成長因子(Connective tissue growth factor、CTGF/CCN2)は、マトリックス細胞(matricellular)
タンパク質の一つで、細胞の分化、成長、移行(migration)、ECM産生(production)、接着(adhesion)などで重要な役割を果たすと知られている。種々の臓器で繊維症を誘導して臓器の機能に損傷を起こす慢性線維性疾患の場合、線維性疾患が起きる組織でCTGFが過発現されることが確認され、皮膚の場合にはCTGFと繊維症の関係が比較的よく研究されている。正常皮膚では、CTGFが基礎レベルで発現が抑制されているが、傷が発生する場合、一時的にCTGFの発現が増加することが観察された。これとは対照的に、ケロイドや局所(localized)硬化症の場合、傷の治癒以後にもCTGFの過発現がずっと維持されることが明らかになり、アンチセンスなどを利用してCTGFの発現を抑制した場合繊維症およびケロイドの生成が抑制されて、CTGFが繊維症および肥大傷跡の生成に重要な役割を果たしているとことが確認された(Sisco M,Kryger ZB,O’Shaughnessy KD,et al.Antisense inhibition of connective tissue growth factor(CTGF/CCN2) mRNA limits hypertrophic scarring without affecting wound healing in vivo.Wound Repair Regen 2008;16:661-673.DOI:WRR416[pii])。病理学的には、全長CTGF分子は、結合組織細胞の過多増殖および細胞外マトリックスの過多沈着がある状態に関与すると報告されている。さらにCTGFは、血管内皮細胞移動および増殖および血管新生に関連した状態とも関連があると当業界に知られている。このような状態と関連した疾病および障害には、例えば、皮膚および重要器官の繊維症、癌、および関連疾病および障害、例えば、全身硬化症、血管形成、アテローム性動脈硬化症、糖尿性腎症および腎臓性高血圧などが挙げられる。また、CTGFは、創傷治癒、結合組織修復、骨および軟骨修復にも有用であると報告されている。このような側面から、CTGFは、骨粗しょう症、骨関節炎、または、骨軟骨炎、関節炎、骨格障害、肥厚性瘢痕、火傷、血管性肥大症、または、音(sound)治癒のような障害において、骨、組織または軟骨形成の誘導因子として記載されている(例えば、文献(米国特許第5,837,258号参照)。
【0006】
そこで、本発明者等は、インビトロおよびインビボでの効果的な伝達が可能な細胞内への貫通能を持つ新しい構造のRNAiを誘導する核酸分子を提供しようと鋭意努力した結果、RNAiを誘導する二本鎖の核酸分子に含まれている少なくとも1種のヌクレオチドのホスフェートバックボーンをホスホロチオエートで置換させて、親油性化合物をコンジュゲーションさせた場合、インビボでも別途の細胞伝達体なしに優秀な目的遺伝子抑制効率を持ちながらも優秀な細胞内貫通能を持つことを確認して、本発明を完成した。
【0007】
本背景技術の部分に記載された前記情報は、ただ本発明の背景に対する理解を向上させるためのものであって、そこに本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者にとって既知の先行技術を形成する情報を含まないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第5,837,258号
【非特許文献】
【0009】
【文献】Sioud M,Sorensen DR Cationic liposome-mediated delivery of siRNAs in adult mice.Biochem Biophys Res Commun 2003;312:1220-1225
【文献】Bolcato-Bellemin AL,Bonnet ME,Creusat G,et al.Sticky overhangs enhance siRNA-mediated gene silencing.Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 2007;104:16050-16055
【文献】Sisco M,Kryger ZB, O‘Shaughnessy KD,et al.Antisense inhibition of connective tissue growth factor(CTGF/CCN2) mRNA limits hypertrophic scarring without affecting wound healing in vivo.Wound Repair Regen 2008;16:661-673.DOI:WRR416[pii]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、インビトロおよびインビボでの効果的な伝達が可能な細胞内への貫通能を持つ新しい構造のRNAiを誘導する核酸分子およびその用途を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、標的核酸(target nucleic acid)と相補的な領域を含む第1鎖と、前記第1鎖と相補的結合を形成する第2鎖で構成されるRNAi誘導用二本鎖核酸分子において、前記核酸分子に含まれている少なくとも一つのヌクレオチドのホスフェートバックボーンがホスホロチオエートまたは、ホスホロジチオエートで置換されていて、親油性化合物が結合されていることを特徴とする、細胞内貫通能を持つRNAi誘導用核酸分子を提供する。
【0012】
さらに本発明は、前記核酸分子を含有する遺伝子発現抑制用組成物を提供する。
【0013】
さらに本発明は、前記核酸分子を細胞内導入させる工程を含む細胞内目的遺伝子の発現抑制方法を提供する。
【0014】
さらに本発明は、結合組織成長因子(CTGF)をコードするmRNAを目的核酸とする前記核酸分子を含有するCTGF関連疾病または障害の治療または予防用医薬組成物を提供する。
【0015】
さらに本発明は、結合組織成長因子(CTGF)をコードするmRNAを目的核酸とする前記核酸分子を含有する医薬組成物を投与することを含む、CTGF関連疾病または障害の治療または予防方法を提供する。
さらに本発明は、結合組織成長因子(CTGF)をコードするmRNAと相補的な領域を含む第1鎖と、前記第1鎖と相補的結合を形成する第2鎖で構成されるRNAi誘導用二本鎖核酸分子において、前記核酸分子に含まれている1~31個のヌクレオチドのホスフェートバックボーンがホスホロチオエートまたは、ホスホロジチオエートで置換されていて、親油性化合物が結合されていて、前記RNAiを誘導する二本鎖の核酸分子は、配列番号149および150の塩基対、配列番号151および152の塩基対、および配列番号153および154の塩基対で構成された群から選択された塩基対を持つことを特徴とする、細胞内貫通能を持つCTGF発現抑制用核酸分子を提供する。
【0016】
本発明の他の特徴及び具現例は、以下の詳細な説明及び添付された特許請求の範囲からより一層明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】表1~表3のCTGFを標的にする24種の配列に対するsiRNA、asiRNA、lasiRNA構造体の遺伝子抑制効率を示したグラフである。
図2】コレステロール改変(modification)に係るlasiRNAの細胞内吸収効率増加を示した蛍光顕微鏡観察写真である。
図3】本発明に係るコレステロールおよびPS改変されたlasiRNAの構造を示した(下線:OMe改変、*:PS改変、Chol:コレステロール、Cy3:Cy3)。
図4】ホスホロチオエート(PS)改変に係るchol-lasiRNAの細胞内の吸収効率増加を示した蛍光顕微鏡観察写真である。
図5】ホスホロチオエート(PS)改変に係るchol-lasiRNAの遺伝子減少効果を比較したグラフである(各グラフは、3回繰り返し実験の平均とSDを示した)。
図6】MyD88を標的にするchol-lasiRNA-PS7の構造を示した(下線:OMe改変、*:PS改変、Chol:コレステロール)。
図7】種々の細胞貫通性(cell penetrating)lasiRNA(cp-lasiRNA)の遺伝子抑制効率を比較したグラフである(括弧の中のCTGFまたはMyD88は、cp-lasiRNAの標的遺伝子を示した)。
図8】親油性化合物改変、すなわち疏水性改変に係る本発明に係る核酸分子の遺伝子抑制効率を示したグラフである。
図9】アンチセンス鎖の長さに係る本発明に係る核酸分子の遺伝子抑制効率を示したグラフである。
図10】PS2改変の構造である。
図11】ホスフェートバックボーン改変に係る本発明に係る核酸分子の遺伝子抑制効率を示したグラフである。
図12】本発明に係る核酸分子のインビボ標的遺伝子抑制効率を示したグラフである。
図13】本発明に係る核酸分子の濃度別インビボ標的遺伝子抑制効率を示したグラフである。
図14】本発明に係る核酸分子の期間別標的遺伝子抑制効率を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
他の方式で定義されない限り、本明細書において使用されたあらゆる技術的・科学的用語は、本発明が属する技術分野に熟練した専門家によって通常理解されるものと同じ意味を有する。通常、本明細書において使用された命名法は、本技術分野において周知であり、しかも汎用されるものである。
【0019】
本発明の詳細な説明などにおいて使用される主な用語の定義は、下記の通りである。
【0020】
本願において「RNAi」とは、標的遺伝子のmRNAと相同である配列を持つ鎖とこれと相補的な配列を持つ鎖で構成される二本鎖RNA(dsRNA)を細胞等に導入して、標的遺伝子mRNAの分解を誘導することで標的遺伝子の発現を抑制するメカニズムを意味する。
【0021】
本願において「siRNA(small interfering RNA)」とは、配列特異的に効率的な遺伝子発現抑制(gene silencing)を媒介する短い二本鎖のRNA(dsRNA)を意味する。
【0022】
本願において「アンチセンス鎖(antisense strand)」とは、関心が
ある標的核酸に実質的に、または100%相補的なポリヌクレオチドであり、例えば、mRNA(messenger RNA)、mRNAでないRNA配列(例えば、microRNA、piwiRNA、tRNA、rRNA及びhnRNA)または、コードまたは、非コードDNA配列と全体として、または一部として相補的であってもよい。本願において、アンチセンス鎖及びガイド鎖は、交換されて用いられる。
【0023】
本願において「センス鎖(sense strand)」とは、標的核酸と同じ核酸配列を持つポリヌクレオチドであり、mRNA、mRNAでないRNA配列(例えば、microRNA、piwiRNA、tRNA、rRNA及びhnRNA)または、コードまたは、非コードDNA配列と全体として、または一部として同じポリヌクレオチドをいう。
【0024】
本願において「遺伝子」とは、最広義の意味と見なされるべきであり、構造タンパク質または調節タンパク質を暗号化することができる。この時、調節タンパク質は転写因子、熱ショックタンパク質またはDNA/RNA複製、転写及び/または翻訳に係るタンパク質を含む。また、本発明において、発現抑制の対象になる目的遺伝子は、ウイルスゲノムに内在するもので、動物遺伝子で統合されたり染色体外の構成要素として存在することができる。例えば、目的遺伝子はHIVゲノム上の遺伝子であってもよい。この場合、siRNA分子はほ乳動物細胞内HIV遺伝子の翻訳を不活性化させるのに有用である。
【0025】
一観点において、本発明は、標的核酸と相補的な領域を含む第1鎖と、前記第1鎖と相補的結合を形成する第2鎖で構成されるRNAi誘導用二本鎖核酸分子において、前記核酸分子に含まれている少なくとも一つのヌクレオチドのホスフェートバックボーンがホスホロチオエートまたは、ホスホロジチオエートで置換されていて、親油性化合物が結合されていることを特徴とする、細胞内貫通能を持つRNAi誘導用核酸分子に関する。この時、第1鎖は、siRNAのアンチセンス鎖に対応して、第2鎖は、センス鎖に対応する。
【0026】
本発明において、前記RNAiを誘導する二本鎖の核酸分子で第1鎖は16~121nt、好ましくは24~121ntの長さであってもよい。
第1鎖は、目的核酸と相補的な一部領域を含み、この時、目的核酸と相補的な一部領域を含む領域の長さは16~31nt、19~31nt、または、19~21ntであることを特徴とする。なお、第2鎖は、13~25nt、13~21nt、または、16~21ntの長さを持つことを特徴とする。
【0027】
本発明において、好ましくは、前記RNAi誘導用二本鎖核酸分子は、標的核酸と相補的な一部領域を含む24~121nt長さの第1鎖と、前記第1鎖の標的核酸と相補的な一部領域と相補的結合を形成する領域を持つ13~21nt長さの第2鎖で構成されることを特徴とする。
【0028】
本発明の一実施例では、このような構造を持つ核酸分子をCTGFを標的にする24種の配列に対し作製した結果、既存のsiRNAに比べて全般的にさらに高い遺伝子発現抑制効率を示した傾向性があることを確認した。本発明者等は、前記のように第2鎖と相補的結合を形成しない長い一本鎖領域を持つRNAiを誘導する二本鎖の核酸分子、すなわち長いアンチセンス鎖を持つsiRNAを‘lasiRNA’と命名した。
【0029】
lasiRNAは、既存のsiRNAより短い二本鎖の長さを持ちながらも高い遺伝子抑制効率を持つ新規な構造の非対称形RNAi誘導構造である。また、長いオーバーハング構造のアンチセンスの役割に起因して、siRNAやasiRNAに比べて増加した最大遺伝子抑制効率を持って、既存の構造に代わって治療剤開発に利用されると期待されて
いる。また、他の構造に比べてさらに長いオーバーハングの長さを持って、オーバーハングの様々な改変にも高い活性を維持する特性があって、比較的多くの化学的改変の自由な導入が可能で、多様な機能を追加できる特徴がある。
【0030】
本発明において、前記第1鎖の標的核酸と相補的な一部領域の長さは、19~21ntであることを特徴とする。従って、前記第1鎖は第2鎖と結合しない一本鎖領域を含み、好ましくは、第1鎖は一本鎖領域にアンチセンスDNA、アンチセンスRNA、リボザイム及びDNAザイムで構成された群から選択される核酸オリゴヌクレオチドをさらに含むことを特徴とする。
【0031】
本発明において、前記第1鎖中、第2鎖と相補的結合を形成しない一本鎖領域は、直接または、リンカーによって前記第2鎖と相補的結合を形成する領域に連結され、この時、リンカーは、化学的リンカー(chemical linker)であることを特徴とする。この時、前記化学的リンカーは、これに制限されるものではないが、核酸(nucleic acid moiety)、PNA(PNA moiety)、ペプチド(peptide moiety)、ジスルフィド結合(disulfide bond)または、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol moiety)であることを特徴とする。
【0032】
また、本発明において、前記第1鎖は、一本鎖領域に前記標的核酸と相補的な配列を追加で含有するか、相補的でない配列を含有することを特徴とし、相補的な場合において、本発明に係る核酸分子の二本鎖領域、即ちsiRNAの標的核酸に相補的な領域と連続的に位置してもよく、遠く離れて位置してもよい。同様に、siRNAが標的とする配列と前記一本鎖領域のリボザイムやDNAザイムが標的とする配列は、連続的に位置してもよく、遠く離れて位置してもよい。また、前記第1鎖の一本鎖領域が前記siRNAの標的遺伝子と相補的な配列を持つ場合において、一本鎖領域に含まれる配列がアンチセンスDNAまたは、アンチセンスRNAならば、その配列とsiRNAの標的遺伝子の配列が、約70~80%以上、好ましくは約80~90%以上、さらに好ましくは約95~99%以上相補的であることを特徴とし、一本鎖領域がリボザイムまたはDNAzymeならば、その配列とsiRNAの標的遺伝子の配列が、約50~60%以上相補的であることを特徴とする。
【0033】
また、前記一本鎖領域は、5~100ntであってもよい。5nt以下であれば、遺伝子発現抑制効率の増加効果が充分でなく、100nt以上の場合、RNA分子の合成効率が低下する。また、前記一本鎖領域は、好ましくは9~100ntであり、または、50nt以下の長さを持つことを特徴とし、さらに好ましくは10~15ntの長さを持つことを特徴とする。
【0034】
本発明において、前記第1鎖で前記一本鎖領域を構成する塩基中少なくとも一つ以上が巨大(bulky)塩基類似体(base analog)を含むことを特徴とする。フェニル基を持つデオキシアデノシン(deoxyadenosine)誘導体のような巨大塩基類似体が拡張配列に含まれていれば、この拡張配列と相補的に結合するmRNA鎖は巨大塩基類似体の位置で切断(cleavage)が起きることになる。このような切断を誘導する巨大塩基類似体であれば制限なしに本発明に含まれてもよい。
【0035】
本発明では、siRNAのアンチセンス鎖を標的mRNA配列と相補的に長く伸ばした核酸構造体の場合、5’末端の部分は、RNAi機序として作用し、同時に3’末端の部分は、アンチセンスメカニズムとして作用するか、5’末端siRNA部分を標的mRNAに誘導する作用をすると予想した。この時、アンチセンス3’末端のmRNAに相補的な配列がDNAの場合には、リボヌクレアーゼH依存的mRNA切断を誘導することがで
きる。また、アンチセンス3’末端の一本鎖領域を構成する塩基中少なくとも一つ以上が巨大塩基類似体を含むか、一本鎖領域がmRNAと結合してバルジ(bulge)構造を形成する場合であっても切断を誘導できると予想した。また、第1鎖の一本鎖領域にリボザイムやDNAザイムを導入した核酸分子の場合には相乗的切断(synergistic cleavage)を誘導できると予想した。
【0036】
19~21nt長さのアンチセンス鎖及び13~16ntの長さのセンス鎖で構成されたsiRNA分子として、アンチセンス鎖の5’方向の末端が平滑末端であるsiRNA構造体は、siRNAのセンス鎖によるオフ-ターゲット効果の発生や他のRNAi機序を阻害することなく優秀な標的遺伝子発現抑制効率を提供するもので(大韓民国公開特許10-2009-0065880)、このようなsiRNAに本発明に係る構造を適用させる場合、オフ-ターゲット効果を最小化しながら第1鎖の一本鎖領域に含まれる核酸オリゴヌクレオチドによる前記のような効果を同時に示すことができる。本願において「オフ-ターゲット効果」とは、本来siRNAは、アンチセンス鎖と相補的な配列を持つmRNAの分解を誘導して、当該mRNAの遺伝子発現を抑制する効果を得るために用いられるものであるにもかかわらず、siRNAのセンス鎖によって他のmRNAの分解が発生する場合、センス鎖によって発生するこのような予想できない他のmRNAの分解乃至当該遺伝子の発現抑制効果、及びsiRNAのアンチセンス鎖が誤ったターゲットとペアリングして他のmRNAの分解が発生するアンチセンス鎖による他のmRNAの分解が発生する当該遺伝子の発現抑制効果を全て含む。
【0037】
本発明の一実施例では、コレステロール改変およびPS改変を行って、コレステロールの結合がlasiRNAの細胞貫通能を高めることが確認されたが、十分な数のPSが導入されない場合、コレステロールだけでは別途の細胞伝達体なしに効果的な標的遺伝子抑制を誘導するのに充分でないことを確認した。この時、PS改変の導入は、その導入個数に比例して細胞貫通能を高めることが明らかになったが、PS改変が多すぎる場合にはlasiRNAがRNAiによる遺伝子抑制を誘導できないと確認された。したがって、細胞とともにインキュベートした後、遺伝子抑制効率の比較を介して最適化されたPS改変の個数を確立した。すなわち、本発明に係る核酸分子は、1~48個、好ましくは1~31個、より好ましくは2~17個、さらに好ましくは4~17個、または、12~17個のヌクレオチドのポスポペイトバックボーンがホスホロチオエートに置換されていることを特徴とする。
【0038】
この時、前記核酸分子中第1鎖に含まれているヌクレオチドのホスフェートバックボーンがホスホロチオエートに置換されていることを特徴とし、また、前記第1鎖中目的核酸と相補的な領域以外の領域のヌクレオチドのホスフェートバックボーンがホスホロチオエートに置換されていることを特徴とする。この時、第1鎖に含まれている1~31個、好ましくは1~17個、より好ましくは2~17個、さらに好ましくは4~17個、または、12個~17個のヌクレオチドのホスフェートバックボーンがホスホロチオエートに置換されていることを特徴とする。なお、前記核酸分子中第2鎖に含まれている1~21個、好ましくは1~17個、より好ましくは2~17個、さらに好ましくは4~17個、または、12個~17個のヌクレオチドのホスフェートバックボーンがホスホロチオエートに置換されていることを特徴とする。
【0039】
この時、本発明の他の実施例では、PSの代わりに図10のようなPS2改変を利用してもPSよりは減少した遺伝子抑制効能を示すが、従来siRNA構造に比べて向上した遺伝子抑制効率を持ってくることを確認することができた。そこで、本発明に係る核酸分子は、一つ以上のヌクレオチドのホスフェートバックボーンがホスホロジチオエートに置換されていることを特徴とし、この時、好ましくは1~48個、より好ましくは1~31個、より一層好ましくは2~17個、さらに好ましくは4~17個、または、12~17
個のヌクレオチドのホスフェートバックボーンが置換されていることを特徴とし、この時、第1鎖の1~31個、好ましくは1~17個、より好ましくは2~17個、さらに好ましくは4~17個、または、12個~17個のヌクレオチドのホスフェートバックボーンがホスホロジチオエートに置換されているか、第2鎖の1~17個、より好ましくは2~17個、さらに好ましくは4~17個、または、12個~17個のヌクレオチドのホスフェートバックボーンがホスホロジチオエートに置換されていることを特徴とする。
【0040】
本発明において、親油性化合物は、疏水性改変をもたらすものであり、例えば、脂質、親油性ペプチドまたは親油性タンパク質などを利用することができる。この時、脂質としてはこれに制限されるものではないか、コレステロール、トコフェロールおよび、ステアリン酸、パルミチン酸などのような炭素数10以上の長鎖脂肪酸などを利用することを特徴とする。なお、これに制限されるものではないが、前記コレステロールなどの親油性化合物は、前記核酸分子の第1鎖または第2鎖の5’末端または、3’末端に結合されてもよい。
【0041】
本発明において、前記標的核酸は、これに限定されるものではないかが、mRNA、microRNA、piRNA(piwi-interacting RNA)、コードDNA配列及び非コードDNA配列等であってもよい。
【0042】
本発明の核酸分子は、一般に合成されたものであるが、これに限定されない。即ち、本発明において、前記核酸分子は、化学的または、酵素学的に合成されたものであってもよい。本発明のsiRNA分子は、標準組換え技法によって天然(naturally occurring)遺伝子から誘導することができるが、この場合、発現を変化させる標的遺伝子のmRNAの少なくとも一部分とヌクレオチド配列水準で実質的に相補的であることを特徴とする。
【0043】
そこで、本発明に係る核酸分子は、化学的改変を含むことを特徴とする。前記化学的改変において、前記核酸分子に含まれる少なくとも1種のヌクレオチドのリボースの2’位置のヒドロキシル基が、水素原子、フッ素原子、-O-アルキル基、-O-アシル基、及びアミノ基中のいずれか一つに置き換えられることを特徴とするが、これに制限されることなく核酸分子の伝達能を高めるなら、-Br、-Cl、-R、-R’OR、-SH、-SR、-N及びCN(R=アルキル基、アリール基、アルキレン基)中いずれか一つに置き換えられてもよい。また、前記化学的改変において、少なくとも1種のヌクレオチドのホスフェートバックボーンがアルキルホスホネート型(alkylphosphonate form)、ホスホロアミデート型(phosphoroamidate form)、及びボラノホスフェート型(boranophosphate form)中いずれか一つに置き換えられてもよい。また、前記化学的改変は、前記核酸分子に含まれる少なくとも1種のヌクレオチドがLNA(locked nucleic acid)、UNA(unlocked nucleic acid)、モルフォリノ(Morpholino)、PNA(peptide nucleic acid)中いずれか一つに置き換えられることを特徴とし、前記化学的改変は、前記核酸分子が、脂質、細胞貫通性ペプチド及び細胞標的リガンドで構成された群から選択される一つ以上と結合することを特徴とする。
【0044】
なお、本発明に係る核酸分子は、既にオリゴヌクレオチドを細胞内に効果的に伝達するものと知られている、リポソーム、陽イオン性ポリマー、抗体、アプタマー、ナノ粒子などの種々の伝達体および伝達方法と共に用いられて効率的にインビトロおよびインビボ伝達のために用いることができる。
【0045】
一方、本発明の一実施例では、別途の伝達体がなくともPBSのような溶液に溶かして
注射することだけでインビボで標的部位に90%以上の高い遺伝子抑制効率を示して、本発明に係る核酸分子が別途の剤形化過程がなくとも注射剤形態の薬品に直ちに開発が可能であることを確認することができた。
【0046】
本発明の実施例は、本発明に係るRNAiを誘導する核酸分子が効率的に目的遺伝子発現抑制効果を持っていることを提示しており、また他の観点において、本発明は、前記RNAi誘導用核酸分子を含有する遺伝子発現抑制用組成物に関する。この時、前記核酸分子は前記細胞伝達体が結合された核酸複合体の形態で含まれても良い。
【0047】
本発明の実施例では、目的遺伝子としてCTGFをターゲットとするsiRNAに対し本発明に係る核酸分子を適用させてその抑制効率が優秀で貫通能が優秀であることを確認したが、本発明に係る核酸分子構造は、その他の標的遺伝子をターゲットにする核酸分子を提供した場合にも同様の結果が得られることは、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者には自明である。
【0048】
一方、前記遺伝子発現抑制用組成物は遺伝子発現抑制用キットの形態で提供できる。遺伝子発現抑制用キットは瓶、タブ(tub)、小袋(sachet)、エンベロープ(envelope)、チューブ、アンプル(ampoule)等のような形態であってもよく、これらは部分的にまたは全体的にプラスチック、ガラス、紙、ホイル、ワックスなどから形成される。容器は、最初は容器の一部であるか、または機械的、接着性、またはその他の手段によって、容器に付着できる、完全にまたは部分的に分離可能な栓を取り付けることができる。容器はまた注射針によって内容物に接近できる、ストッパーが取り付けられる。前記キットは外部パッケージを有することができ、外部パッケージは構成要素の使用に関する使用説明書を含んでもよい。
【0049】
また他の観点において、本発明は、前記RNAiを誘導する核酸分子を利用して細胞内標的遺伝子の発現を抑制させる方法に関する。即ち、前記RNAiを誘導する核酸分子を細胞内に導入させる段階を含む細胞内標的遺伝子の発現抑制方法に関する。
【0050】
本発明において、前記RNAiを誘導する核酸分子の第1鎖は、標的遺伝子のmRNA配列に相補的であることを特徴とする。
【0051】
本発明において、前記標的遺伝子は内因性(endogeneous)遺伝子であるか導入遺伝子(transgene)であってもよい。
【0052】
この時、本発明に係る核酸分子は、必ずしも合成siRNAに制限されなく、細胞内で発現ベクター等を利用して発現するsiRNAやshRNAにも適用可能な長所がある。即ち、本発明に係る核酸分子は、細胞内で発現させることによって標的遺伝子の発現を抑制させることができる。従って、また他の観点において、本発明は、前記RNAiを誘導する核酸分子を細胞内で発現させる段階を含む細胞内標的遺伝子の発現抑制方法に関する。
【0053】
一方、本発明に係る核酸分子は、結合組織成長因子(CTGF)をコードするmRNAを目的核酸にしてもよい。本発明の一実施例では、本発明に係る構造の核酸分子を導入することによってCTGF発現を抑制することを確認した。従って、また他の観点において、本発明は、前記核酸分子を含有するCTGF関連疾病または障害の治療または予防用医薬組成物に関する。さらに本発明は、結合組織成長因子(CTGF)をコードするmRNAを目的核酸とする前記核酸分子を含有する医薬組成物を投与することを含む、CTGF関連疾病または障害の治療または予防方法に関する。
【0054】
それだけでなく、局所疾患に対する治療剤以外にも本発明に係る核酸分子は既に知らされた様々な細胞特異的な抗体、アプタマー、リガンドなどを共に用いて、望む部位でだけ遺伝子抑制効果を示す遺伝子調節治療剤の開発が可能であると期待される。
【0055】
本発明に係る医薬組成物は、前記RNAiを誘導する核酸分子を単独で含んだり一つ以上の医薬的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含んで医薬組成物で提供でき、前記核酸分子は疾患及びこれの重症程度、患者の年令、体重、健康状態、性別、投与経路及び治療期間等により適切な医薬的に有効な量で医薬組成物に含まれる。
【0056】
前記において「医薬的に許容される組成物」とは、生理学的に許容され、ヒトに投与される時、通常胃腸障害、めまいのようなアレルギー反応またはこれと類似する反応を起こさない組成物のことをいう。前記担体、賦形剤及び希釈剤としては、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、燐酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、マグネシウムステアレート及び鉱物油が挙げられる。
【0057】
前記医薬組成物は、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤等をさらに含んでもよい。また、本発明の医薬組成物は、ほ乳動物に投与された後、活性成分の迅速、持続または遅延放出を提供できるように当業界に公示された方法を使って、剤形化される。剤形は滅菌注射溶液などの形態でありうる。
【実施例
【0058】
以下、本発明を実施例を挙げて詳述する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないことは当業者において通常の知識を有する者にとって自明である。
【0059】
≪実施例1:CTGFをターゲットとしたRNAiを誘導する二本鎖の核酸分子のスクリーニング≫
効果的な自己伝達(self delivery)構造のための種々の化学的改変の導入に先立ち、CTGFを標的にする高効率のRNAiを誘導する二本鎖の核酸分子を確保するために、CTGFに対する50種の標的配列をデザインした後、スクリーニング(screening)を進行した。
【0060】
lasiRNAと既存RNAi誘導構造体とのCTGF遺伝子抑制効率を比較するために、表1~表3のように、各塩基配列を標的にするsiRNA、asiRNA、lasiRNA構造体を合成した。表1~表3はCTGFに対する24種の配列に対するsiRNA、asiRNA、lasiRNA構造体の塩基配列情報である(大文字:RNA、小文字:DNA)。各塩基配列および構造のCTGF mRNA発現抑制効果をテストするために、各構造をHaCaT(ATCC)に10nMでトランスフェクションした後、リアルタイムPCRでCTGF mRNA発現程度を測定した。
【0061】

【表1】
【0062】

【表2】
【0063】

【表3】
【0064】
すなわち、HaCat細胞を100mmペトリ皿に10%ウシ胎仔血清(Gibco)、100μg/mLペニシリン/ストレプトマイシンを添加したダルベコ改変イーグル培地(Gibco)で培養した。Hacatの場合、トランスフェクションする直前に、12ウェルプレートに8×10個の細胞を播種した。一方、前記siRNA、asiRNA、lasiRNAの場合、1×siRNAデュプレックスバッファー(duplex buffer)(Biosesang Co.,Ltd.)に適切な濃度で希釈して90℃で2分、37℃で1時間インキュベートした。アニーリングされたsiRNAは、10%ポリアクリルアミドゲルに電気泳動した後、EtBrで5分染色してUVトランスイルミネーターを介してバンドを確認した。これらは、リポフェクタミン(Lipofectamine)2000(Invitrogen)で提供する取扱説明書に基づいてsiRNAをトランスフェクションした後、24時間後にmRNAレベルを測定した。
【0065】
この時、トランスフェクション後、Isol-RNA溶解試薬(lysis reagent)(5PRIME)を用いて全RNAを抽出し、そのうち500ngのRNAをcDNA合成に用いた。cDNAは、大容量cDNA逆転写キット(High-capacity cDNA reverse transcription kit)(Applied Biosystems)を利用して提供されたプロトコルに基づいて合成された。合成されたcDNAは、希釈を介して濃度を低くした後、ステップワンリアルタイムPCRシステム(step one real-time PCR system)(Applied Biosystems)を利用して提供されたプロトコルに基づいて、定量的なリアルタイムPCRに利用した。標的遺伝子は、遺伝子に特異的なプライマーと共にパワーSYBRグリーンPCRマスターミックス(power SYBR greenPCR master Mix)(Applied Biosystems)を利用して確認した。実験に用いられたプライマー塩基配列は次のとおりである。
【0066】
GAPDH-forward 5’-GAG TCA ACG GAT TTG GTC GT
-3’(配列番号145)
GAPDH-reverse 5’-GAC AAG CTT CCC GTT CTC AG
-3’(配列番号146)
CTGF-forward 5’-CAA GGG CCT CTT CTG TGA CT-
3’(配列番号147)
CTGF-reverse 5’-ACG TGC ACT GGT ACT TGC AG-
3’(配列番号148)
【0067】
24個の塩基配列に対するスクリーニングの結果、図1に示したように、合計24個の塩基配列中14個の配列でlasiRNAがsiRNAに比べて増加した活性(lasiRNAがsiRNA対比20%以上増加した遺伝子抑制効率を示した場合)を持つことが確認されて、5種の配列ではsiRNAがlasiRNAに比べてさらに高い遺伝子抑制効率を示すことが明らかになり、lasiRNAが既存のsiRNAに比べて全般的にさらに高い遺伝子発現抑制効率を示した傾向性を確認することができた。
【0068】
特に、90%以上の遺伝子抑制効率を示すsiRNAとlasiRNAに対するIC50測定の結果、9番と16番塩基配列を標的にするlasiRNAが最も低いIC50を持つことが確認されたが、この中で改変と自己伝達実験のための最終候補群として9番塩基配列を選び、これは下記の表4のとおりである。
【0069】
【表4】
【0070】
≪実施例2:本発明に係る核酸分子の製造および細胞内取り込み収率の測定≫
2-1:コレステロール改変に係る影響
先に、コレステロール改変が、lasiRNAの伝達に及ぼす影響を調べるために、lasiRNAセンス鎖、すなわち第2鎖の5’末端をcy3で標識した後、コレステロール有無に係る取り込み差を蛍光顕微鏡で確認した。すなわち、HeLa細胞にcy3で標識したlasiRNAまたはchol-lasiRNA構造体を1μMでインキュベートした後、3時間後に蛍光顕微鏡で観察して細胞内に伝達された程度を比較した。
【0071】
先に、HeLa細胞(ATCC)を100mmペトリ皿に10%ウシ胎仔血清(Gibco)、100μg/mLペニシリン/ストレプトマイシンを添加したダルベコ改変イーグル培地(Gibco)で培養した。
【0072】
コレステロール改変させたlasiRNAは、それぞれの一本鎖Accell siRNAデリバリー培地(single strand Accell siRNA delivery media)(Thermo scientific)に適切な濃度で希釈して用い、コレステロールが適用された一本鎖は、アニーリング前に90℃で20~30秒間インキュベートした後用いた。センス鎖とアンチセンス鎖を混合した後、90℃で30秒、37℃で1時間インキュベートして、アニーリングされたsiRNAは、10%ポリアクリルアミドゲルに電気泳動した後、EtBrで5分染色後、UVトランスイルミネーターを介してバンドを確認した。
【0073】
インキュベーションテストのために、lasiRNAを処理する24時間前にカバーグラスボトムディッシュ(Coverglass-bottom dish)(SPL)に2×10個のHeLa細胞を播種した。準備された皿の培養培地除去後、2mLの1×DPBSで二回洗浄した。37℃ウォーターバスで予め暖めておいたAccell siRNAデリバリー培地(Thermo scientific)100μLに希釈して準備しておいたsiRNAを入れて培養した。3時間後、Accell培地を除去して1×DPBSで二回洗浄した後、1μg/mLのHoechst33343(Sigma)(Opti-MEM(gibco)中)で37℃で10分間インキュベートして核を染色した。Hoechst除去後、1×DPBS(Gibco)で二回洗浄した後、Opti-MEM培地に入れて顕微鏡(Microscope-Olympus IX81、software-MetaMorph)で細胞の蛍光を観察した。
【0074】
その結果、図2に示したように、コレステロール改変によるlasiRNAの細胞内への吸収効率を確認した結果、コレステロールがない場合には細胞内でcy3蛍光がほとんど観察されなかったが、lasiRNAにコレステロールを結合したlasiRNA-cholの場合には非常に強い蛍光を示すことが分かった。
【0075】
これはlasiRNA構造がコレステロール改変を介して細胞内伝達(intracellular delivery)が増加することを示した。
【0076】
2-2:PS改変に係る影響
追加的に、ホスホロチオエートを直接siRNAに導入する改変を行う場合、lasiRNAの取り込み効率を増加させるのか確認するために、コレステロールを結合させたchol-lasiRNAのアンチセンス鎖、すなわち第1鎖の3’オーバーハングにPS改変を導入して、PS改変に係るchol-lasiRNAの取り込み効率変化をテストした。HeLa細胞にcy3で標識したchol-lasiRNA-PS(N)構造体を1μMでインキュベートした後、3時間後に蛍光顕微鏡で観察して細胞内に伝達された程度を比較した。構造体の間の細胞貫通能の正確な比較のために、chol-lasiRNA-PS0が最小限の蛍光を見せる条件をセット後、他の構造体の蛍光強度を比較した。
【0077】
これのために図3のように、Chol-lasiRNAのアンチセンス3’末端を始め、0、4、7、12、17のPS改変を導入した後、HeLa細胞と共にインキュベートまたはトランスフェクションして、実施例2-1のように蛍光顕微鏡でPS改変の個数に係る伝達効率の差を観察した。図3で、下線および赤色はOMe改変を、*はPS改変を、Cholはコレステロールを、Cy3はCy3蛍光物質を示す。
【0078】
その結果、図4に示したように、PS改変がないchol-lasiRNA-PS0の場合HeLa細胞で蛍光がほとんど観察されなく、他のサンプルに比べて低い取り込み効率を示すことが確認された。
【0079】
なお、lasiRNAのアンチセンス鎖、すなわち第1鎖にPS改変が増加するほど明るい蛍光を示すことが確認され、全サンプル中PSが各12、17個の改変されたchol-lasiRNA-PS12、chol-lasiRNA-PS17が最も明るい蛍光を示したことが確認されて、chol-lasiRNAにPS改変個数を増加させるほど内部化(internalized)されたlasiRNAの量が増加することが確認された。
【0080】
≪実施例3:CTGF発現抑制効率測定≫
実施例2でCy3-標識化lasiRNAを利用した内部化(internaliza
tion)実験の結果、lasiRNA構造にコレステロールとPS改変を直接導入して伝達ビヒクルや追加的な試薬がなくともlasiRNAの効果的な細胞内伝達が可能であることが確認された。しかし、siRNAに種々の化学的改変を導入する場合、siRNAの活性を多少減少させたり、改変によりsiRNAの活性が急激に減少すると知られているが、各改変がlasiRNAの活性に及ぼす影響を調べるために、多様な構造のlasiRNAをHeLa細胞にトランスフェクションした後、CTGF mRNAの発現変化を測定して、各改変がlasiRNAの遺伝子発現抑制に及ぼす影響を測定した。
【0081】
PS改変がlasiRNAの遺伝子抑制効率に及ぼす影響を確認するために、様々な構造のPS改変lasiRNA[chol-lasiRNA-PS(N)]をHeLa細胞にトランスフェクションした後、CTGF遺伝子の発現抑制効率を測定した。すなわち、HeLa細胞にchol-lasiRNA-PS(N)構造体を10nMでトランスフェクションした後、48時間後にリアルタイムPCRでCTGF mRNAの発現程度を測定した。
【0082】
次に、実験時間24時間前に24ウェルプレートに2.5×10個のHeLa細胞を播種した後、プロトコルに基づいて、リポフェクタミン2000を利用して、各lasiRNAをトランスフェクションした。この後48時間の間、5%COインキュベーターで培養した後、実施例1の方法によりmRNAレベルの発現を測定した。
【0083】
その結果、図5に示したように、アンチセンス鎖にPS改変が増加するにつれて遺伝子抑制効率が減少する傾向を示し、アンチセンスに12個以上のPS改変を導入した場合、若干の発現抑制活性の減少が観察された。アンチセンスに17個の改変を導入したchol-lasiRNA-PS17の場合、遺伝子抑制効率が急激に減少して、CTGFに対する発現抑制効果をほとんど示さないことが確認されてアンチセンスにPSは最大17個の以下で用いることが好ましくアンチセンス鎖にそれ以上のPS改変は自己伝達のための改変では適さないことを確認することができた。図5で、各グラフは、3回繰り返し実験の平均とSDを示した。
【0084】
追加的に、PS改変の増加は、chol-lasiRNAの自己細胞伝達効率を増加させるが、同時にその程度によりlasiRNAの発現抑制活性を減少させる問題点がある。ビヒクルなしで最適の発現抑制を誘導する改変構造を確立するために、多様な個数のPS改変を持つchol-lasiRNA-PS(N)構造をHeLaと共インキュベートした後、CTGF mRNAレベルを測定して遺伝子抑制効率を比較した。この時、0.1μM、0.3μM、および1μMの濃度で各lasiRNAを処理し、MyD88を標的にするchol-lasiRNA-PS7(図6、赤色:OMe改変、*:PS改変、Chol:コレステロール)を対照群として共に用いた。すなわち、HeLa細胞にCTGFまたはMyD88を標的にするchol-lasiRNA-PS(N)構造体を共にインキュベートした後、48時間後にリアルタイムPCRでCTGF mRNAの発現程度を測定した。
【0085】
その結果、図7に示したように、chol-lasiRNA-PS4の場合には最も高い濃度である1μMでも約55%程度の遺伝子抑制効率しか示すことができないことが明らかになり、chol-lasiRNA-PS7、chol-lasiRNA-PS12の場合、1μMでCTGFの発現を約95%以上抑制することを確認することができた。より正確な遺伝子抑制効率比較のために、さらに低い濃度で各構造体をインキュベートした後、CTGF mRNAレベルを測定した結果では、PS12が低い濃度でも最も効率的にCTGF遺伝子の発現を抑制することが明らかになった。chol-lasiRNA-PS17は、トランスフェクションした場合と同様に高い濃度(1μM)でインキュベートした場合でも50%程度の遺伝子発現抑制効果しか持つことができないことが確認さ
れて、導入するPS変形の数が多すぎるよりは伝達の増加とsilencing activityの減少に係る適当なPS改変個数の最適化が必要であることを確認することができた。また、MyD88を標的にするchol-lasiRNA-PS7の場合にはCTGFに対する遺伝子抑制効率が全く現れないので、cp-lasiRNA構造体による遺伝子発現抑制が塩基配列特異的に起きることを確認することができた。
【0086】
≪実施例4:他の親油性化合物改変に係る細胞内取り込み収率の測定≫
コレステロール以外に他の親油性化合物改変(lipophilic modification)(すなわち、疎水性化合物改変(hydrophobic modification))を用いる場合の影響を調べるために、次の配列でサバイビン(survivin)を目的遺伝子にした本発明に係るcp-lasiRNA(cell penetrating lasiRNA)を製造した。この時、cp-lasiRNA-1はコレステロールが結合されたもので、cp-lasiRNA-2はコレステロールの代わりに該当位置にトコフェノールを結合したもので、cp-lasiRNA-3はコレステロールの代わりにセンス鎖の5’位置にステアリン酸を結合したものである。
【0087】
<cp-lasiRNA(survivin)31mer>
cp-lasiRNA(survivin)Antisense 31nt:5’UGA
AAAUGUUGAUCUCCUUUCCUAAGA*C*A*T*T 3’(配列番号
169)
cp-lasiRNA(survivin)Sense:5’U**A*cholesterol.3’(配列番号170)
下線:OMe改変、*:PS(ホスホロチオエート結合)
【0088】
A549細胞株(ATCC)に前記cp-lasiRNA-1、cp-lasiRNA-2、cp-lasiRNA-3をそれぞれ300mMで実施例2と同様にインキュベートした後、24時間後にリアルタイムPCRでサバイビンmRNAの発現程度を測定した。各2回繰り返し実験の平均とSDを図8に示した。
【0089】
トランスフェクション後、Isol-RNA溶解試薬(5PRIME)を用いて全RNAを抽出して、そのうちの500ngのRNAをcDNA合成に用いた。cDNAは、大容量cDNA逆転写キット(Applied Biosystems)を利用して提供されたプロトコルに基づいて合成された。合成されたcDNAは、希釈を介して濃度を低くした後、ステップワンリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)を利用して提供されたプロトコルに基づいて、定量的なリアルタイムPCRに利用した。標的遺伝子は、遺伝子に特異的なプライマーと共にパワーSYBRグリーンPCRマスターミックス(Applied Biosysems)を利用して確認した。実験に用いられたプライマー塩基配列は下記のとおりである。
【0090】
Survivin
Forward 5’-GCA CCA CTT CCA GGG TTT AT-3’(配列
番号172)
Reverse 5’-CTC TGG TGC CAC TTT CAA GA-3’(配列
番号173)
【0091】
その結果、図8に示したように、コレステロールを他の疏水性改変を誘導した場合にも高い効率で標的遺伝子を抑制する可能性があることを確認した。また、ステアリルの場合、センス鎖の5’末端に結合させたのにも係らず高い遺伝子抑制効率を示して本発明に係る核酸分子は、様々な位置に疏水性改変、すなわち親油性化合物を結合させた場合にも目的とする効果を得ることができることを確認した。
【0092】
≪実施例5:アンチセンス鎖の長さに係る標的遺伝子抑制効率調査≫
本発明に係る核酸分子の第1鎖の長さに係る標的遺伝子抑制効率を調べるために、同じ16ntの第2鎖(センス鎖)に31ntアンチセンスまたは21ntのアンチセンスを組み合わせてcp-lasiRNAを作った後A549細胞株に処理した。
【0093】
<cp-lasiRNA(survivin)31mer>
cp-lasiRNA(survivin)Antisense 31nt:5’UGA
AAAUGUUGAUCUCCUUUCCUAAGA*C*A*T*T3’(配列番号169)
cp-lasiRNA(survivin)Sense:5’U*C*A*cholesterol.3’(配列番号170)
<cp-lasiRNA(survivin)21mer>
cp-lasiRNA(survivin)Antisense 21nt:5’UGA
AAAUGUUGAUCUCCU*U*U*C*C3’(配列番号171)
cp-lasiRNA(survivin)Sense:5’U*C*A*cholesterol.3’(配列番号170)
下線:OMe改変、*:PS(ホスホロチオエート結合)
<cp-lasiRNA(CTGF)31mer>
cp-lasiRNA(CTGF)Antisense 31nt:5’UCUUCCA
GUCGGUAAGCCGCGAGGGCA*G*G*C*C3’(配列番号174)
cp-lasiRNA(CTGF)Sense:5’A**A*chol.3’(配列番号175)
<cp-lasiRNA(CTGF)21mer>
cp-lasiRNA(CTGF)Antisense 21nt:5’UCUUCCA
GUCGGUAAGC*C*G*C*G 3’(配列番号176)
cp-lasiRNA(CTGF)Sense:5’A**A*chol.3’(配列番号175)
下線:OMe改変、*:PS(ホスホロチオエート結合)
【0094】
すなわち、A549細胞株(ATCC)に前記核酸分子をそれぞれ実施例1と同様の方法でトランスフェクションするか、実施例2と同様にインキュベートした後、24時間後にリアルタイムPCRで標的遺伝子mRNAの発現程度を測定した。各2回繰り返し実験の平均とSDを図9に示した。図9Aは、21merアンチセンスを持つCTGF標的cp-lasiRNAの遺伝子抑制効率を、9Bは、31merアンチセンスを持つCTGF標的cp-lasiRNAの遺伝子抑制効率を、9Cは、21merアンチセンスを持つサバイビン標的cp-lasiRNAの遺伝子抑制効率を、9Dは、21merアンチセンスを持つサバイビン標的cp-lasiRNAの遺伝子抑制効率を示した。CTGFは、実施例1のプライマーを利用して抑制効率を測定して、サバイビンは、実施例4のプライマーを利用して抑制効率を測定した。
図9に示したように、CTGFを標的とするcp-lasiRNAの場合、トランスフェクションとインキュベート共に31ntアンチセンスを持つ場合が21ntアンチセンスを持つ場合よりさらに高い標的遺伝子抑制効率を示し(図9A-B)、サバイビンを標的とするcp-lasiRNAをインキュベートした場合にも同様に31ntアンチセンスの標的遺伝子抑制効率が高く観察されることを確認した。すなわち、本発明に係る核酸分子は、19nt~31ntの様々な長さのアンチセンス、すなわち第1鎖を持つ核酸分子のデザインが可能で、これを利用して効果的に標的遺伝子抑制が可能であるが、31ntの長さを持つ場合が21ntのアンチセンスより効率的に標的遺伝子抑制が可能であることが確認された。
【0095】
≪実施例6:PS2改変に係る効果確認≫
核酸分子中一つ以上のヌクレオチドホスフェートバックボーンをホスホロチオエートに改変させたこと以外に図10のような構造のホスホロジチオエート(PS2)に改変する場合、効果を下記の通り調べた。
【0096】
すなわち、A549細胞株に下記のcp-lasiRNA(Survivin)および下記のcp-lasiRNA(Survivin)において同じ位置でPS改変の代わりにPS2改変を導入したcp-lasiRNA(Survivin)-PS2を実施例1または2と同様の方法でトランスフェクションまたはインキュベートした後、24時間後に実施例4と同様の方法でリアルタイムPCRを行ってサバイビン遺伝子の発現程度を測定した。それぞれ2回繰り返し実験して、グラフに繰り返し実験の平均とSDを示した。
【0097】
<cp-lasiRNA(survivin)>
cp-lasiRNA(survivin)Antisense 31nt:5’UGA
AAAUGUUGAUCUCCUUUCCUAAGA*C*A*T*T3’(配列番号169)
cp-lasiRNA(survivin)Sense:5’U**A*cholesterol.3’(配列番号170)
下線:OMe改変、*:PS(ホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合)
【0098】
その結果、図11に示したように、追加的なイオウ改変(sulfur modification)(PS2)による向上した遺伝子抑制効果は観察されなく、既存のcp-lasiRNAより減少した遺伝子抑制効能を示すことが確認された。
【0099】
≪実施例7:本発明に係る核酸分子のインビボターゲットでの遺伝子抑制効率測定≫
現在RNAi技術を利用した治療剤開発で最も困難なことの一つは、インビボでの効果的なRNA伝達技術の開発である。現在開発されている多くの伝達体技術をこのインビトロ上では、高い効率を持つ反面、インビボに適用された場合、その効率が顕著に減少する問題点を有している。これに対して、本発明に係る核酸分子がインビボでも高い遺伝子抑制効果を持つのか確認するために、別途の伝達体を用いることなくcp-lasiRNAだけをラットの皮膚に注射して標的遺伝子の発現抑制効果を比較した。
【0100】
すなわち、ラットの皮膚にPBS、siRNA(CTGF)、cp-lasiRNA(CTGF)、またはcp-lasiRNA(Scrambled)を図12に表記された濃度のとおり100μLのPBSに溶解して皮内注射した後、24h後に組織を回収して標的遺伝子の発現効率を測定した。この時、ゾレチル(Zoletil)及びロンパン(rompun)溶液をラットの腹腔に注射して、麻酔後ラット(SDラット、オリエントバイオ)の背中の部分を全除毛した。除毛された部位の皮膚に半径5mmの円を描いた後、中心部位にインスリンシリンジ(insulin syringe)(BD、31G)で100μLのPBS、siRNA、またはcp-lasiRNAを皮内注射した。注射後、表記された日に8mm生検パンチ(biopsy punch)で皮膚組織を切り離して遺伝子発現分析を行った。用いられた核酸分子は下記のとおりである。
【0101】
cp-lasiRNA(CTGF)Antisense Rat:5’-UCUUCCA
GUCGGUAGGCAGCUAGGGCA*G*G*G*C-3’(配列番号177)cp-lasiRNA(CTGF)Sense Rat:5’-
A**A*choleterol.3’(配列番号178)
下線:OMe改変、*:PS(ホスホロチオエート結合)
siRNAとしては下記を利用した。
siRNA(CTGF)antisense:5’-
GAT-3’(配列番号179)
siRNA(CTGF)sense:5’--3’(配列番号180)
下線:OMe改変
【0102】
この時、RNeasy線維性組織ミニキット(RNeasy Fibrous tissue mini kit)(Qiagen)を用いてRNAを抽出し、合計1μgのRNAをcDNA合成に用いた。cDNAは、大容量cDNA逆転写キット(Applied Biosystems)を利用して提供されたプロトコルに基づいて合成された。合成されたcDNAは、希釈を介して濃度を低くした後、ステップワンリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)を利用して提供されたプロトコルに基づいて、定量的なリアルタイムPCRに利用した。標的遺伝子は、遺伝子に特異的なプライマーと共にパワーSYBRグリーンPCRマスターミックス(Applied Biosystems)を利用して確認した。実験に用いられたプライマー塩基配列は下記のとおりである。図12で各グラフは5回繰り返し実験の平均とSDを示した。
【0103】
CTGF-Rat
Forward 5’-GGC TCG CAT CAT AGT TG-3’(配列番号181)
Reverse 5’-CGG GAA ATG CTG TGA GGA GT-3’(配列
番号182)
【0104】
ラットの皮膚にPBS、siRNA(CTGF)、cp-lasiRNA(CTGF)、またはcp-lasiRNA(Scrambled)を表記された濃度のとおり100μLのPBSに溶解して皮内注射した後、24時間後に組織を回収して標的遺伝子の発現効率を測定した。各グラフは、5回繰り返し実験の平均とSDを示した。
【0105】
その結果、図12に示したように、PBS、cp-lasiRNA(scrambled)、またはsiRNA(CTGF)を処理した群に比べてcp-lasiRNA(CTGF)を処理した群でCTGFの発現が80~90%以上減少して、cp-lasiRNAがインビボでも高い効率で標的遺伝子抑制が可能であることを確認した。
【0106】
追加的に、Cp-lasiRNAのインビボで遺伝子抑制効率を確認するために、前記と同様の方法で100μg/インジェクション~0.1μg/インジェクション区間のcp-lasiRNAをラットに注射した後、標的遺伝子の発現を測定した。
【0107】
その結果、図13に示したように、cp-lasiRNA(CTGF)は、約0.3μg/インジェクションの低い濃度でも70%以上の高い標的遺伝子抑制効率を持つことが確認され、約0.21μg/インジェクションのIC50値を持つことが確認された。各グラフは2回繰り返し実験の平均とSDを示した。
【0108】
追加的に、前記と同様の方法でcp-lasiRNA(CTGF)注射した後、1日、2日、3日、6日目に組織を分析して遺伝子発現を測定した。すなわち、1日目でcp-lasiRNA(CTGF)を皮内注射した後、表記された日に組織を切り離して、CTGFの発現をリアルタイムPCRで確認した。
【0109】
その結果、図14に示したように、cp-lasiRNA(CTGF)は少なくとも5日以上標的遺伝子の発現を抑制することが確認された。各グラフは、2回繰り返し実験の平均とSDを示した。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上説明した通り、本発明に係る核酸分子構造は、コレステロール改変およびホスホロチオエート改変を共に導入することによって、優秀な遺伝子抑制効率を維持しながらも別途の細胞伝達体がなくても細胞内貫通能を持つことができて、実際の標的部位にRNAi誘導のための十分な量に伝達できて、従来問題になったインビボ伝達問題を解消させることができる。そこで、本発明に係る核酸分子は、従来のsiRNA分子に代えてsiRNAを利用した癌やウィルス感染治療などに活用することができて有用である。
【0111】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳述したが、当業界における通常の知識を持った者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施態様に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されることはないという点は明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は特許請求の範囲とこれらの等価物により定義されると言える。
図1
図2
図3
図4
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図6
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図9
図10
図11
図12
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図14
【配列表】
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