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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】電動式直動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/20 20060101AFI20220111BHJP
   F16H 25/24 20060101ALI20220111BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
F16H25/20 D
F16H25/24 A
H02K7/116
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019127119
(22)【出願日】2019-07-08
(62)【分割の表示】P 2015143710の分割
【原出願日】2015-07-21
(65)【公開番号】P2019178785
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2019-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】江口 雅章
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/040217(WO,A1)
【文献】特開2009-168056(JP,A)
【文献】特開2016-61396(JP,A)
【文献】特開2011-74950(JP,A)
【文献】特開2010-125478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/20
F16H 25/24
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータ(2)と、
その電動モータ(2)の回転が入力される回転軸(3)と、
その回転軸(3)を囲む筒状に形成され、螺旋凸条(20)を内周にもつ外輪部材(4)と、
前記回転軸(3)の外周と前記外輪部材(4)の内周との間に周方向に間隔をおいて設けられた複数個の遊星ローラ(5~5)と、
その各遊星ローラ(5~5)を自転可能かつ公転可能に保持するキャリヤ(6)と、
そのキャリヤ(6)と前記各遊星ローラ(5~5)の間に組み込まれた複数のスラスト軸受(7)とを有し、
前記各遊星ローラ(5~5)の外周には、前記螺旋凸条(20)に係合する複数の円周溝(21)が軸方向に間隔をおいて形成され、前記各遊星ローラ(5~5)の軸方向端面には、前記スラスト軸受(7)で支持される軸受面(22~22)が形成された電動式直動アクチュエータ(1)において、
前記各遊星ローラ(5~5)の外周の円周溝(21)は、円周溝(21)に沿って湾曲した形状の連続した金属組織をもつ転造溝であり、
前記各遊星ローラ(5 ~5 )の軸方向長さ(L ~L )は、前記螺旋凸条(20)のリード角に対応して変化するように遊星ローラ(5 ~5 )ごとに異なる長さに設定され、
全ての前記遊星ローラ(5 ~5 )について、その各遊星ローラ(5~5)の外周の円周溝(21)のうち前記軸受面(22~22)から最も遠い位置にある円周溝(21b)は、円周溝(21b)の溝底が遊星ローラ(5~5)の前記軸受面(22~22)とは反対側の端面(37)と交差するように形成され、かつ、転造による金属組織の流動の開始点が、前記遊星ローラ(5~5)の前記軸受面(22~22)とは反対側の前記端面(37)の位置にある、
ことを特徴とする電動式直動アクチュエータ
【請求項2】
前記軸受面(22~22)に最も近い円周溝(21a)と前記軸受面(22~22)との間の軸方向距離(d~d)が遊星ローラ(5~5)ごとに異なり、前記軸方向距離(d~d)は前記螺旋凸条(20)のリード角に対応して変化する設定とされている請求項1に記載の電動式直動アクチュエータ
【請求項3】
前記各遊星ローラ(5~5)は、軸方向に外径が一定でかつその外径が前記円周溝(21)の溝底径以下の大きさである小径部(36)を前記スラスト軸受(7)で支持される側の端部に有し、
前記小径部(36)の軸方向長さ(α~α)は、前記螺旋凸条(20)のリード角に対応して変化するように遊星ローラ(5~5)ごとに異なる長さに設定されている請求項2に記載の電動式直動アクチュエータ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動式直動アクチュエータに組み込まれる遊星ローラの製造方法、その製造方法で製造された遊星ローラ、およびその遊星ローラを組み込んだ電動式直動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ブレーキ装置として、油圧を駆動源とする油圧ブレーキ装置が多く採用されてきたが、油圧ブレーキ装置は、ブレーキオイルを使用するので環境負荷が高く、またABS、スタビリティ・コントロール・システム、ブレーキアシスト等といった機能の更なる高機能化が難しい。そこで、ブレーキ装置の更なる高機能化と環境負荷の低減を実現する手段として電動ブレーキ装置が注目されている。
【0003】
電動ブレーキ装置は、車輪と一体に回転するブレーキディスクと、そのブレーキディスクの側面に対向して配置された摩擦パッドと、その摩擦パッドをブレーキディスクに向けて押し動かす電動式直動アクチュエータとを有し、この電動式直動アクチュエータで摩擦パッドをブレーキディスクの側面に押し付けることで制動力を発生する。
【0004】
このような電動ブレーキ装置に用いられる電動式直動アクチュエータとして、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1の電動式直動アクチュエータは、電動モータと、その電動モータの回転が入力される回転軸と、その回転軸を囲む筒状に形成された外輪部材と、回転軸の外周と外輪部材の内周との間に周方向に間隔をおいて設けられた複数個の遊星ローラと、その各遊星ローラを自転可能かつ公転可能に保持するキャリヤと、各遊星ローラを軸方向に支持するようにキャリヤと各遊星ローラの間に組み込まれた複数のスラスト軸受とを有する。外輪部材の内周には、螺旋凸条が設けられている。各遊星ローラの外周には、外輪部材の螺旋凸条に係合する複数の円周溝が軸方向に間隔をおいて形成され、各遊星ローラの軸方向端面には、前記スラスト軸受で支持される軸受面が形成されている。また本願の出願人は、上記と同様の電動式直動アクチュエータについて、特許文献2の出願も行なっている。
【0005】
この電動式直動アクチュエータは、電動モータの回転が回転軸に入力されると、各遊星ローラが自転しながら外輪部材の内周に沿って公転する。このとき、遊星ローラの外周の円周溝と外輪部材の内周の螺旋凸条の係合によって、遊星ローラと外輪部材が軸方向に相対移動する。そして、この外輪部材と遊星ローラの軸方向の相対移動により対象物(ここでは摩擦パッド)を軸方向に移動させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-74950号公報
【文献】特願2014-191148号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願の発明者は、上記電動式直動アクチュエータの遊星ローラを製造するにあたり、切削加工によって遊星ローラの外周の円周溝を形成するよりも、転造により遊星ローラの外周の円周溝を形成する方が低いコストで製造することができる点に着眼した。転造は、円筒形素材を回転させながら、その円筒形素材の外周に転造金型を転がり接触させ、円筒形素材と転造金型の間に作用する接触圧力により円筒形素材の表面を塑性変形させる加工方法である。
【0008】
ここで、1個の電動式直動アクチュエータには複数個の遊星ローラが組み込まれることから、遊星ローラの製造コストが高いと、電動式直動アクチュエータの全体としての製造コストが高くなる。特に、上記特許文献1に記載のように、1個の電動式直動アクチュエータに組み込まれる複数個の遊星ローラの形状が互いに異なる場合、遊星ローラの製造コストが高くなりやすい。
【0009】
この発明が解決しようとする課題は、電動式直動アクチュエータに用いられる遊星ローラを低コストで製造可能な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、電動式直動アクチュエータに用いられる遊星ローラの製造方法として以下の製造方法を提供する。
電動モータと、
その電動モータの回転が入力される回転軸と、
その回転軸を囲む筒状に形成され、螺旋凸条を内周にもつ外輪部材と、
前記回転軸の外周と前記外輪部材の内周との間に周方向に間隔をおいて設けられた複数個の遊星ローラと、
その各遊星ローラを自転可能かつ公転可能に保持するキャリヤと、
そのキャリヤと前記各遊星ローラの間に組み込まれた複数のスラスト軸受とを有し、
前記各遊星ローラの外周には、前記螺旋凸条に係合する複数の円周溝が軸方向に間隔をおいて形成され、前記各遊星ローラの軸方向端面には、前記スラスト軸受で支持される軸受面が形成された電動式直動アクチュエータに用いる前記遊星ローラの製造方法において、
前記複数個の遊星ローラのうちの2個以上の遊星ローラの合計長さに相当する軸方向長さをもつローラ素材を準備するローラ素材準備工程と、
そのローラ素材準備工程で準備したローラ素材の外周に前記複数の円周溝を転造により形成する円周溝転造工程と、
その円周溝転造工程の後、前記ローラ素材を前記各遊星ローラに分割するローラ素材切断工程と、
を有することを特徴とする遊星ローラの製造方法。
【0011】
このようにすると、遊星ローラの外周の円周溝を転造するときに、1回の転造で複数個の遊星ローラの円周溝を形成するので、低コストで遊星ローラを製造することが可能である。
【0012】
前記円周溝転造工程の後、前記遊星ローラの軸受面を研削加工する軸受面仕上げ工程を更に有する場合、
前記円周溝転造工程では、前記ローラ素材の軸方向の両端面が、互いに軸方向反対向きに配置した2個の遊星ローラの軸受面となる向きで前記円周溝を転造すると好ましい。
【0013】
すなわち、円周溝転造工程で円周溝を転造したときに、ローラ素材の軸方向端面に金属組織の流動による膨らみ(余肉)が生じても、その後の軸受面仕上げ工程で余肉を除去することができ、軸受面を仕上げる研削加工が、転造で生じる余肉の除去加工を兼ねることになる。そのため、軸受面の研削加工とは別に余肉の除去加工を行なう必要がなく、遊星ローラの製造に要するリードタイムを短く抑えることができる。
【0014】
前記複数の円周溝は、前記軸受面に最も近い円周溝と前記軸受面との間の軸方向距離が、前記螺旋凸条のリード角に対応して変化するように遊星ローラごとに異なる軸方向位置に配置すると好ましい。
【0015】
このようにすると、周方向に間隔をおいて配置された各遊星ローラの円周溝と、周方向に向かって軸方向位置が次第に変化する外輪部材の螺旋凸条とを係合させたとき、前記各遊星ローラの軸方向端面に設けた前記軸受面の軸方向位置を遊星ローラの間で一致させることができ、各遊星ローラの負荷を均一化することができる。
【0016】
この場合、前記各遊星ローラは、軸方向に外径が一定でかつその外径が前記円周溝の溝底径以下の大きさである小径部を前記スラスト軸受で支持される側の端部に有し、
前記小径部の軸方向長さは、前記螺旋凸条のリード角に対応して変化するように遊星ローラごとに異なる長さに設定されている構成のものを採用することができる。
【0017】
このようにすると、円周溝転造工程で円周溝を転造するときの金属組織の流動が小径部で吸収されるので、ローラ素材の軸方向端面に金属組織の流動による膨らみ(余肉)が生じにくくなる。そのため、軸受面仕上げ工程の加工代を少なくして、遊星ローラの製造コストを効果的に低減することが可能である。
【0018】
前記各遊星ローラの軸方向長さは、前記螺旋凸条のリード角に対応して変化するように遊星ローラごとに異なる長さに設定することができる。
【0019】
このようにすると、各遊星ローラの円周溝の数を確保しつつ各遊星ローラの軸方向長さを短く抑えることができ、ローラ素材の材料の歩留まりを高めることができる。
【0020】
さらに、前記複数個の遊星ローラの個数が3個以上の場合、
前記ローラ素材準備工程では、前記3個以上の遊星ローラのうちの軸方向長さが最も長い遊星ローラと最も短い遊星ローラのローラ素材として、軸方向長さが最も長い遊星ローラと最も短い遊星ローラの合計長さに相当する軸方向長さをもつ第1のローラ素材を準備し、更に、前記3個以上の遊星ローラのうちの軸方向長さが2番目に長い遊星ローラと2番目に短い遊星ローラのローラ素材として、前記第1のローラ素材と同一長さを有する第2のローラ素材を準備するようにすると好ましい。
【0021】
例えば、前記複数個の遊星ローラの個数が3個の場合、
前記ローラ素材準備工程では、3個の遊星ローラのうちの軸方向長さが最も長い遊星ローラと最も短い遊星ローラのローラ素材として、軸方向長さが最も長い遊星ローラと最も短い遊星ローラの合計長さに相当する軸方向長さをもつ第1のローラ素材を準備し、更に、3個の遊星ローラのうちの軸方向長さが中間の遊星ローラ(軸方向長さが2番目に長く、かつ、2番目に短い遊星ローラ)の2個分のローラ素材として、前記第1のローラ素材と同一長さを有する第2のローラ素材を準備すると好ましい。
【0022】
このようにすると、最も長い遊星ローラと最も短い遊星ローラを製造するための第1のローラ素材と、2番目に長い遊星ローラと2番目に短い遊星ローラを製造するための第2のローラ素材とが同一長さなので、ローラ素材の材料の歩留まりをより効果的に高めることが可能となる。
【0023】
また、前記複数個の遊星ローラの個数が3個以上の場合、
前記ローラ素材準備工程では、前記3個以上の遊星ローラのうちの、前記軸受面に最も近い円周溝と前記軸受面との間の軸方向距離が最も長い遊星ローラと最も短い遊星ローラのローラ素材として第1のローラ素材を準備し、更に、前記3個以上の遊星ローラのうちの、前記軸受面に最も近い円周溝と前記軸受面との間の軸方向距離が2番目に長い遊星ローラと2番目に短い遊星ローラのローラ素材として第2のローラ素材を準備し、
前記円周溝転造工程では、前記第1のローラ素材と前記第2のローラ素材とで同一形状の転造金型を用いると好ましい。
【0024】
例えば、前記複数個の遊星ローラの個数が3個の場合、
前記ローラ素材準備工程では、3個の遊星ローラのうちの、前記軸受面に最も近い円周溝と前記軸受面との間の軸方向距離が最も長い遊星ローラと最も短い遊星ローラのローラ素材として第1のローラ素材を準備し、更に、3個の遊星ローラのうちの、前記軸受面に最も近い円周溝と前記軸受面との間の軸方向距離が中間の遊星ローラ(前記軸方向距離が2番目に長く、かつ、2番目に短い遊星ローラ)の2個分のローラ素材として第2のローラ素材を準備し、
前記円周溝転造工程では、前記第1のローラ素材と前記第2のローラ素材とで同一形状の転造金型を用いると好ましい。
【0025】
このようにすると、第1のローラ素材の転造に用いる転造金型と、第2のローラ素材の転造に用いる転造金型とが同一形状なので、転造コストを低く抑えることができる。
【0026】
前記ローラ素材切断工程では、ローラ素材の外周に形成された円周溝の溝底の位置で前記ローラ素材を切断することができる。
【0027】
また、この発明では、上記製造方法で製造した遊星ローラとして、以下の構成のものを提供する。
【0028】
電動モータと、
その電動モータの回転が入力される回転軸と、
その回転軸を囲む筒状に形成され、螺旋凸条を内周にもつ外輪部材と、
前記回転軸の外周と前記外輪部材の内周との間に周方向に間隔をおいて設けられた複数個の遊星ローラと、
その各遊星ローラを自転可能かつ公転可能に保持するキャリヤと、
そのキャリヤと前記各遊星ローラの間に組み込まれた複数のスラスト軸受とを有し、
前記各遊星ローラの外周には、前記螺旋凸条に係合する複数の円周溝が軸方向に間隔をおいて形成され、前記各遊星ローラの軸方向端面には、前記スラスト軸受で支持される軸受面が形成された電動式直動アクチュエータに用いる遊星ローラにおいて、
前記各遊星ローラの外周の円周溝は、円周溝に沿って湾曲した形状の連続した金属組織をもつ転造溝であり、
前記各遊星ローラの外周の円周溝のうち前記軸受面から最も遠い位置にある円周溝は、円周溝の溝底が遊星ローラの前記軸受面とは反対側の端面と交差するように形成され、
または、前記各遊星ローラの外周の円周溝のうち前記軸受面から最も遠い位置にある円周溝は、円周溝の溝底から軸方向へと延びる小径部が遊星ローラの前記軸受面とは反対側の端面と交差するように形成され、
かつ、転造による金属組織の流動の開始点が円周溝の溝底の位置にある、
ことを特徴とする遊星ローラ。
【0029】
すなわち、複数個の遊星ローラのうちの2個以上の遊星ローラの合計長さに相当する軸方向長さをもつローラ素材を準備するローラ素材準備工程と、
そのローラ素材準備工程で準備したローラ素材の外周に複数の円周溝を転造により形成する円周溝転造工程と、
その円周溝転造工程の後、前記ローラ素材を前記各遊星ローラに分割するローラ素材切断工程とを有する製造方法で遊星ローラを製造した場合、
その製造方法で得られる遊星ローラの外周の各円周溝は、円周溝に沿って湾曲した形状の連続した金属組織をもつ転造溝となる。
さらに、前記円周溝転造工程では、前記ローラ素材の軸方向の両端面が、互いに軸方向反対向きに配置した2個の遊星ローラの軸受面となる向きで前記円周溝を転造し、
前記ローラ素材切断工程では、ローラ素材の外周に形成された円周溝の溝底の位置で前記ローラ素材を切断するようにした場合、
その製造方法で得られる遊星ローラの外周の円周溝のうち前記軸受面から最も遠い位置にある円周溝は、円周溝の溝底が遊星ローラの前記軸受面とは反対側の端面と交差するように形成され、
または、その製造方法で得られる遊星ローラの外周の円周溝のうち前記軸受面から最も遠い位置にある円周溝は、円周溝の溝底から軸方向へと延びる小径部が遊星ローラの前記軸受面とは反対側の端面と交差するように形成され、
かつ、転造による金属組織の流動の開始点が円周溝の溝底の位置にあるものとなる。
【0030】
この構成の遊星ローラは、円周溝が転造で形成されているので低コストである。
【0031】
また、上記構成の遊星ローラは、前記軸受面とは反対側の端面に膨らみが生じず、また円周溝の溝肩の寸法精度が良い。例えば、1個分の遊星ローラに相当する軸方向長さをもつローラ素材を準備し、そのローラ素材の外周に、軸受面から最も遠い位置にある円周溝の溝底がローラ素材の端面と交差するように円周溝を転造した場合、軸受面から最も遠い位置にある円周溝は、金属組織の流動の開始点が円周溝の溝底ではなく、溝底と溝肩の中間点の位置にあるものとなる。この場合、前記軸受面から最も遠い位置にある円周溝のある側の端面には、金属組織の流動によって軸方向に膨らみ(余肉)が生じ、この余肉を除去せず残すと遊星ローラの軸方向長さが余分に長くなる。この余肉を後加工で除去するとしても、その分遊星ローラの製造コストが上昇してしまう。また、余肉を吸収するための逃がし形状を転造加工前にあらかじめローラ素材の端面外周に設けたとしても、軸受面から最も遠い位置にある円周溝の深さは他の円周溝と一致せず、また、軸受面から最も遠い位置にある溝肩の径寸法が他の円周溝の溝肩の径寸法よりも小さくなり、円周溝の溝肩の寸法精度が低下する。これに対し、上記構成の遊星ローラの外周の円周溝のうち前記軸受面から最も遠い位置にある円周溝は、その他の円周溝と同様に、金属組織の流動の開始点が円周溝の溝底の位置にあって前記軸受面とは反対側の端面に余肉が生じず、また溝肩の径寸法が他の円周溝の溝肩の径寸法と一致し、円周溝の溝肩の寸法精度が良い。
【0032】
前記軸受面に最も近い円周溝と前記軸受面との間の軸方向距離は遊星ローラごとに異なり、前記軸方向距離が前記螺旋凸条のリード角に対応して変化する設定とするのが好ましい。
【0033】
このようにすると、周方向に間隔をおいて配置された各遊星ローラの円周溝と、周方向に向かって軸方向位置が次第に変化する外輪部材の螺旋凸条とを係合させたとき、前記各遊星ローラの軸方向端面に設けた前記軸受面の軸方向位置を一致させることができ、周方向に間隔をおいて配置された各遊星ローラの負荷を均一化することができる。
【0034】
前記各遊星ローラは、軸方向に外径が一定でかつその外径が前記円周溝の溝底径以下の大きさである小径部を前記スラスト軸受で支持される側の端部に有し、
前記小径部の軸方向長さは、前記螺旋凸条のリード角に対応して変化するように遊星ローラごとに異なる長さに設定されている構成のものを採用することができる。
【0035】
また、前記各遊星ローラの軸方向長さは、前記螺旋凸条のリード角に対応して変化するように遊星ローラごとに異なる長さに設定することができる。
【0036】
また、前記各遊星ローラは、軸方向に外径が一定でかつその外径が前記円周溝の溝底径以下の大きさである第2の小径部を前記スラスト軸受で支持される側とは反対側の端部に有し、
前記第2の小径部の軸方向長さは、前記螺旋凸条のリード角に対応して変化するように遊星ローラごとに異なる長さに設定されている構成のものを採用することができる。
【0037】
ここで、前記小径部の軸方向長さと前記第2の小径部の軸方向長さとを足し合わせた長さは、各遊星ローラで同一の長さに設定することができる。
【0038】
また、前記各遊星ローラの軸方向長さは、同一の長さに設定することができる。
【0039】
また、この発明では、上記の遊星ローラを組み込んだ電動式直動アクチュエータを併せて提供する。
【発明の効果】
【0040】
この発明の遊星ローラの製造方法は、遊星ローラの外周の円周溝を転造するときに、1回の転造で複数個の遊星ローラの円周溝を形成するので、低いコストで遊星ローラを製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】この発明の第1実施形態の製造方法で製造される遊星ローラを組み込んだ電動式直動アクチュエータを示す断面図
図2図1の外輪部材の近傍の拡大断面図
図3図2のIII-III線に沿った断面図
図4図2に示す遊星ローラを拡大して示す部分断面図
図5図3に示す遊星ローラおよび外輪部材を平面に展開して示す図
図6図5に示す複数の遊星ローラを製造するための第1のローラ素材および第2のローラ素材を示す図
図7図6に示す第1のローラ素材および第2のローラ素材の外周に円周溝を転造した状態を示す図
図8】(a)は、円周溝を転造したときに、金属組織の流動の開始点が、円周溝の溝底の位置となる例を示す模式図、(b)は、円周溝を転造したときに、金属組織の流動の開始点が、円周溝の溝底と溝肩の中間点となる例を示す模式図、(c)は、金属組織の流動による膨らみが端面に生じるのを回避するためにローラ素材の端部外周に逃がし形状を設けた例を示す模式図
図9】転造で形成された円周溝が有する金属組織(すなわち円周溝に沿って湾曲した形状の連続した金属組織)を示す模式図
図10】この発明の第2実施形態の製造方法で製造される遊星ローラの1つを拡大して示す部分断面図
図11】この発明の第2実施形態の製造方法で製造される遊星ローラおよび外輪部材を平面に展開して示す図
図12図11に示す複数の遊星ローラを製造するための第1のローラ素材および第2のローラ素材を示す図
図13図12に示す第1のローラ素材および第2のローラ素材の外周に円周溝を転造した状態を示す図
図14】この発明の第3実施形態の製造方法で遊星ローラを製造するためのローラ素材を示す図
図15図14に示すローラ素材の外周に円周溝を転造した状態を示す図
図16】この発明の各実施形態の製造方法で製造される遊星ローラを組み込んだ電動式直動アクチュエータを用いた電動ブレーキ装置を示す断面図
図17図3の遊星ローラの個数を3個に変更した変形例を示す断面図
図18図17に示す遊星ローラおよび外輪部材を平面に展開して示す図
図19図18に示す3個の遊星ローラを製造するための第1のローラ素材および第2のローラ素材を示す図
図20図19に示す第1のローラ素材および第2のローラ素材の外周に円周溝を転造した状態を示す図
図21図11に示す第2実施形態の4個の遊星ローラの個数を3個に変更した変形例を示す図
図22図21に示す3個の遊星ローラを製造するための第1のローラ素材および第2のローラ素材を示す図
図23図22に示す第1のローラ素材および第2のローラ素材の外周に円周溝を転造した状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1に、この発明の第1実施形態の製造方法で製造される遊星ローラを用いた電動式直動アクチュエータ1を示す。この電動式直動アクチュエータ1は、電動モータ2と、電動モータ2の回転が入力される回転軸3と、その回転軸3を囲む筒状に形成された外輪部材4と、回転軸3の外周と外輪部材4の内周との間に設けられた複数個の遊星ローラ5~5図3参照)と、その各遊星ローラ5~5を自転可能かつ公転可能に保持するキャリヤ6と、キャリヤ6と遊星ローラ5~5の間に組み込まれた複数のスラスト軸受7と、外輪部材4を軸方向に移動可能に収容する筒状のハウジング8とを有する。
【0043】
電動モータ2は、ハウジング8の一方端から径方向外方に延びるベースプレート9に取り付けられている。電動モータ2は、通電により回転駆動されるモータ軸10を有する。モータ軸10と回転軸3の間には、モータ軸10の回転を減速して回転軸3に伝達する減速機構11が設けられている。減速機構11は、モータ軸10に固定された入力ギヤ12と、回転軸3に固定された出力ギヤ13と、入力ギヤ12と出力ギヤ13の間で回転を伝達する中間ギヤ14とを有する。この減速機構11は、ハウジング8の前記一方端の開口とベースプレート9の側面とを共通して覆うように設けられたカバー15内に収容されている。
【0044】
図2に示すように、外輪部材4の内周には、螺旋凸条20が設けられている。螺旋凸条20は、円周方向に対して所定のリード角をもって斜めに延びる凸条である。ここでは、螺旋凸条20は一条の凸条とされている。また、図3に示すように、遊星ローラ5~5は、周方向に等間隔となるように配置されている。遊星ローラ5~5は、回転軸3の外周および外輪部材4の内周に設けた螺旋凸条20にそれぞれ接触している。回転軸3の遊星ローラ5~5に対する接触部分は円筒面である。そして、回転軸3が回転したとき、各遊星ローラ5~5は、各遊星ローラ5~5の中心に設けられたローラ軸17を中心に自転しながら、回転軸3を中心に公転する。すなわち、遊星ローラ5~5は、回転軸3の外周から受ける回転力によって自転し、これに伴い、外輪部材4の内周に設けた螺旋凸条20に沿って公転する。
【0045】
遊星ローラ5~5が螺旋凸条20に沿って外輪部材4の内周を1周したときの外輪部材4の軸方向の変位量は、軸方向に隣り合う螺旋凸条20のピッチp(図5参照)に等しい。外輪部材4は、ハウジング8に対して回り止めした状態で、ハウジング8に対して軸方向に移動可能に支持されている。
【0046】
各遊星ローラ5~5の外周には、螺旋凸条20に係合する複数の円周溝21が軸方向に間隔をおいて形成されている。各遊星ローラ5~5の軸方向端面には、スラスト軸受7で軸方向に支持される軸受面22~22が形成されている。軸受面22~22は、軸方向に直交する平面である。軸受面22~22は、研削加工で仕上げた研削仕上げ面とされている。軸受面22~22の面粗さはRa3.2μm以下(より好ましくはRa1.6μm以下)である。
【0047】
キャリヤ6は、遊星ローラ5~5を間にして軸方向に対向する一対のディスク23a,23bと、ディスク23a,23b同士を連結する連結部16およびねじ24と、各遊星ローラ5~5を自転可能に支持するローラ軸17とを有する。連結部16は、ディスク23a,23bの間を軸方向に延び、ねじ24で固定されている。各ディスク23a,23bは回転軸3を貫通させる環状に形成され、その内周には回転軸3の外周に摺接する滑り軸受がそれぞれ装着されている。連結部16は、周方向に隣り合う遊星ローラ5~5の間を軸方向に延びるように配置されている(図3参照)。
【0048】
ローラ軸17は、遊星ローラ5~5に形成された軸受孔18に挿通している。軸受孔18の内周とローラ軸17の外周の間には、ラジアル軸受19が組み込まれている。各ローラ軸17の両端部は、一対のディスク23a,23bにそれぞれ形成された軸挿入孔25に挿入されている。各軸挿入孔25は、ローラ軸17の端部を、外輪部材4の半径方向に移動可能に収容する長穴とされている。各ローラ軸17の両端部には、すべてのローラ軸17に外接するように弾性リング26が掛け渡されている。弾性リング26は、遊星ローラ5~5を回転軸3の外周に押し付けることにより、遊星ローラ5~5と回転軸3の間の滑りを防止している。
【0049】
各遊星ローラ5~5と軸方向に対向する一対のディスクのうちハウジング8を覆うように設けられたカバー15側に配置したディスク23bとの間には、遊星ローラ5~5を自転可能に支持するスラスト軸受7が組み込まれている。スラスト軸受7は、遊星ローラ5~5の軸受面22~22に転動する複数のローラ27を有する。また、スラスト軸受7とディスク23bとの間には、スラスト軸受7を介して遊星ローラ5~5を傾動可能に支持する調心座28が組み込まれている。調心座28は、加圧座板28aと受圧座板28bとからなる。加圧座板28aにはローラ軸17の中心線上に中心をもつ凸球面が形成され、受圧座板28bには、加圧座板28aの前記凸球面を摺動可能に支持する凹面が形成されている。
【0050】
外輪部材4と減速機構11の間には、軸受支持部材29が設けられている。軸受支持部材29の内周には、回転軸3を回転可能に支持するラジアル軸受30が組み付けられている。軸受支持部材29は、ハウジング8の内周に装着した止め輪31(図1参照)で減速機構11側への移動が規制されている。キャリヤ6の軸方向に対向する一対ディスクのうち一方のディスク23bと軸受支持部材29との間には、ディスク23bと一体に公転する間座32と、間座32を介してディスク23bを公転可能に支持するスラスト軸受33とが組み込まれている。
【0051】
外輪部材4の開口端のうち軸受支持部材29とは反対側の端部には、これを閉塞するシールカバー35が取り付けられている。シールカバー35は、外輪部材4の内部に異物が侵入するのを防止する。
【0052】
軸受支持部材29は、間座32とスラスト軸受33とを介してキャリヤ6の軸方向に対向する一対ディスクのうち一方のディスク23bを軸方向に支持することで、ディスク23bの軸受支持部材29側への移動を規制している。また、ディスク23aは、回転軸3の外周に装着した止め輪34で外輪部材4のシールカバー35側への移動が規制されている。したがって、キャリヤ6は、いずれの軸方向への移動も規制され、キャリヤ6に保持された遊星ローラ5~5も軸方向移動が規制された状態となっている。
【0053】
図4に示すように、遊星ローラ5~5の外周の円周溝21は、遊星ローラ5~5の円周方向に対して平行に延びる溝である(図4は遊星ローラ5を示す)。各円周溝21は、軸方向に隣り合う円周溝21の中心間距離が等しくなるように設けられている。隣り合う円周溝21の中心間距離は、螺旋凸状のピッチp(図5参照)と等しい。各円周溝21は、後述の転造で形成した転造溝であり、図9に示すように、円周溝21に沿って湾曲した形状の連続した金属組織を有する。円周溝21の金属組織は、遊星ローラ5~5を切断し、その切断面に対して硝酸を含む腐食液(ナイタール等)を用いて腐食させることによって、観察することができる。なお、各円周溝21を転造で形成するのではなく、切削加工で形成した場合、円周溝21の金属組織は、円周溝21の形状と無関係に軸方向に延び、円周溝21で分断された金属組織となる。
【0054】
図5に示すように、遊星ローラ5~5の外周の円周溝21は、軸受面22~22に最も近い円周溝21aの中心位置と軸受面22~22との間の軸方向距離d~dが、螺旋凸条20のリード角に対応して変化するように遊星ローラ5~5ごとに異なる軸方向位置に配置されている。図では、4個の遊星ローラ5~5のうち遊星ローラ5の軸方向距離dが最も長く、遊星ローラ5の軸方向距離dが2番目に長い。また、遊星ローラ5の軸方向距離dが最も短く、遊星ローラ5の軸方向距離dが2番目に短い。軸方向距離dと軸方向距離dの差は(p/4)であり、軸方向距離dと軸方向距離dの差も(p/4)である。
【0055】
つまり、遊星ローラ5~5の個数がn個、軸方向に隣り合う螺旋凸条20の間隔がpのとき、軸受面22~22に最も近い円周溝21aの中心位置と軸受面22~22との間の軸方向距離d~dが、周方向に隣り合う遊星ローラ5~5の間で(p/n)ずつ変化するように設定されている。これにより、周方向に間隔をおいて配置された各遊星ローラ5~5の各円周溝21と、周方向に向かって軸方向位置が次第に変化する螺旋凸条20とを係合させたとき、各遊星ローラ5~5の軸方向端面に設けた軸受面22~22の軸方向位置が遊星ローラ5~5の間で一致している。
【0056】
図4に示すように、遊星ローラ5~5のスラスト軸受7で支持される側の端部の外周には、小径部36が形成されている。小径部36は、軸方向に外径が一定となるように形成された円筒状の部分である。小径部36の外径は、円周溝21の溝底径と同じかそれよりも小さい。図5に示すように、小径部36の軸方向長さα~αは、螺旋凸条20のリード角に対応して変化するように遊星ローラ5~5ごとに異なる長さに設定されている。図では、4個の遊星ローラ5~5のうち遊星ローラ5の小径部36の軸方向長さαが最も長く、遊星ローラ5の小径部36の軸方向長さαが2番目に長い。また、遊星ローラ5の小径部36の軸方向長さαが最も短く、遊星ローラ5の小径部36の軸方向長さαが2番目に短い。遊星ローラ5の小径部36の軸方向長さαはゼロ以上であればよく、ゼロに設定してもよい。軸方向長さαと軸方向長さαの差は(p/4)であり、軸方向長さαと軸方向長さαの差も(p/4)である。
【0057】
つまり、遊星ローラ5~5の個数がn個、軸方向に隣り合う螺旋凸条20の間隔がpのとき、小径部36の軸方向長さα~αは、周方向に隣り合う遊星ローラ5~5の間で(p/n)ずつ変化するように設定されている。
【0058】
図4に示すように、遊星ローラ5~5のスラスト軸受7で支持される側とは反対側の端部の外周には、軸受面22~22から最も遠い位置にある円周溝21bが形成されている。すなわち、軸受面22~22から最も遠い位置にある円周溝21bは、その溝底が遊星ローラ5~5の軸受面22~22とは反対側の端面37と交差するように形成されている。
【0059】
図5に示すように、各遊星ローラ5~5の軸方向長さL~Lは、螺旋凸条20のリード角に対応して変化するように遊星ローラ5~5ごとに異なる長さに設定されている。図では、4個の遊星ローラ5~5のうち遊星ローラ5の軸方向長さLが最も長く、遊星ローラ5の軸方向長さLが2番目に長い。また、遊星ローラ5の軸方向長さLが最も短く、遊星ローラ5の軸方向長さLが2番目に短い。軸方向長さLと軸方向長さLの差は(p/4)であり、軸方向長さLと軸方向長さLの差も(p/4)である。
【0060】
つまり、遊星ローラ5~5の個数がn個、軸方向に隣り合う螺旋凸条20の間隔がpのとき、遊星ローラ5~5の軸方向長さL~Lが、周方向に隣り合う遊星ローラ5~5の間で(p/n)ずつ変化するように設定されている。
【0061】
図16に、上記の電動式直動アクチュエータ1を用いた電動ブレーキ装置を示す。電動ブレーキ装置は、図示しない車輪と一体に回転するブレーキディスク40と、ブレーキディスク40の側面に対向して配置された一対の摩擦パッド41,42と、一対の摩擦パッド41,42を軸方向に移動可能に支持するキャリパボディ43と、摩擦パッド41をブレーキディスク40に向けて押し動かす電動式直動アクチュエータ1とを有し、この電動式直動アクチュエータ1で摩擦パッド41をブレーキディスク40の側面に押し付けることで制動力を発生する。
【0062】
キャリパボディ43は、ブレーキディスク40を間に挟んで対向する一対の対向片44,45を、ブレーキディスク40の外径側に位置するブリッジ46で連結した形状とされている。そして、一方の対向片44とブレーキディスク40の間に一方の摩擦パッド41が配置され、他方の対向片45とブレーキディスク40の間に他方の摩擦パッド42が配置されている。キャリパボディ43は、車輪を支持するナックル(図示せず)に固定されたマウント(図示せず)で軸方向にスライド可能に支持されている。
【0063】
対向片44には、電動式直動アクチュエータ1のハウジング8が一体に形成されている。外輪部材4のブレーキディスク40側の端部には、摩擦パッド41の背面に形成された係合凸部47に係合する係合凹部48が形成され、この係合凸部47と係合凹部48の係合によって、外輪部材4がハウジング8に対して回り止めされている。
【0064】
上記の電動式直動アクチュエータ1の動作例を説明する。
【0065】
電動モータ2(図1参照)が回転すると、電動モータ2の回転が減速機構11を介して回転軸3に入力され、遊星ローラ5~5が自転しながら公転する。このとき、螺旋凸条20と円周溝21の係合によって外輪部材4と遊星ローラ5~5が軸方向に相対移動するが、遊星ローラ5~5はキャリヤ6と共に軸方向の移動が規制されているので、遊星ローラ5~5は軸方向に移動せず、外輪部材4が軸方向に移動する。
【0066】
ここで、電動モータ2(図1参照)が正逆のうち一方の回転方向に回転したときは、外輪部材4が摩擦パッド41をブレーキディスク40へと向けて押し出す方向へ軸方向移動することで、ブレーキディスク40には押し付けられた摩擦パッド41により制動力が発生する。また、電動モータ2が正逆のうち他方の回転方向に回転したときは、外輪部材4が摩擦パッド41から離れる方向へ軸方向移動することで、摩擦パッド41がブレーキディスク40から離反し、ブレーキディスク40に対する制動力が解除される。
【0067】
上記の電動式直動アクチュエータ1は、図5に示すように、軸受面22~22に最も近い円周溝21aと軸受面22~22との間の軸方向距離d~dが、螺旋凸条20のリード角に対応して変化するように遊星ローラ5~5ごとに異なる軸方向位置に配置されているので、周方向に間隔をおいて配置された各遊星ローラ5~5の円周溝21と、周方向に向かって軸方向位置が次第に変化する外輪部材4の螺旋凸条20とを係合させたとき、各遊星ローラ5~5の軸方向端面に設けた軸受面22~22の軸方向位置が遊星ローラ5~5の間で一致し、各遊星ローラ5~5の負荷を均一化することができる。
【0068】
次に、上記の電動式直動アクチュエータ1に用いられる遊星ローラ5~5の製造方法の一例を説明する。
【0069】
<ローラ素材準備工程>
図6に示すように、第1のローラ素材51と第2のローラ素材52とを準備する。第1のローラ素材51は、図5に示す4個の遊星ローラ5~5のうち2個の遊星ローラ5,5を製造するためのローラ素材である。第1のローラ素材51は、4個の遊星ローラ5~5のうち軸方向長さが最も長い遊星ローラ5と最も短い遊星ローラ5の合計長さに相当する軸方向長さSを有する。
【0070】
第1のローラ素材51の軸方向の一方の端面53は、遊星ローラ5の軸受面22となる面である。第1のローラ素材51の軸方向の他方の端面53は、遊星ローラ5の軸受面22となる面である。つまり、第1のローラ素材51は、遊星ローラ5と遊星ローラ5を、軸受面22,22が互いに軸方向外向きとなるように配置し、軸受面22,22とは反対側の端面37(図4参照)同士を連結したものに対応している。第1のローラ素材51の外周には、遊星ローラ5,5の各円周溝21(図4参照)に対応する位置に形成された大径円筒面54と、遊星ローラ5,5の各小径部36に対応する位置に形成された小径円筒面55とが設けられている。小径円筒面55の外径は、大径円筒面54の外径よりも小さい。第1のローラ素材51の中心には遊星ローラ5,5の軸受孔18(図2参照)となる貫通孔56が形成されている。
【0071】
第2のローラ素材52は、図5に示す4個の遊星ローラ5~5のうち、2個の遊星ローラ5,5を製造するためのローラ素材である。第2のローラ素材52は、遊星ローラ5と遊星ローラ5の合計長さに相当する軸方向長さSを有する。ここで、第2のローラ素材52の軸方向長さSは、第1のローラ素材51の軸方向長さSと同一である。
【0072】
第2のローラ素材52の軸方向の一方の端面53は、遊星ローラ5の軸受面22となる面である。第2のローラ素材52の軸方向の他方の端面53は、遊星ローラ5の軸受面22となる面である。つまり、第2のローラ素材52は、遊星ローラ5と遊星ローラ5を、軸受面22,22が互いに軸方向外向きとなるように配置し、軸受面22,22とは反対側の端面37(図4参照)同士を連結したものに対応している。第2のローラ素材52の外周には、遊星ローラ5,5の各円周溝21(図4参照)に対応する位置に形成された大径円筒面54と、遊星ローラ5,5の各小径部36に対応する位置に形成された小径円筒面55とが設けられている。小径円筒面55の外径は、大径円筒面54の外径よりも小さい。第2のローラ素材52の中心には遊星ローラ5,5の軸受孔18(図2参照)となる貫通孔56が形成されている。
【0073】
<円周溝転造工程>
図7に示すように、転造によって、第1のローラ素材51の外周に、遊星ローラ5と遊星ローラ5の各円周溝21を形成する。具体的には、第1のローラ素材51を回転させながら、その第1のローラ素材51の外周に転造金型57を転がり接触させ、第1のローラ素材51と転造金型57の間に作用する接触圧力により第1のローラ素材51の表面を塑性変形させる。転造金型57には、遊星ローラ5と遊星ローラ5の各円周溝21に対応する複数の突起58が設けられており、その複数の突起58が第1のローラ素材51の大径円筒面54(図6参照)に食い込むことで、遊星ローラ5と遊星ローラ5の各円周溝21を同時に形成する。このように形成された各円周溝21は、図9に示すように、その円周溝21に沿って湾曲した形状の連続した金属組織をもつ転造溝となる。この円周溝転造工程において、第1のローラ素材51の外周に形成される各円周溝21の位置は、2個の遊星ローラ5,5を互いに軸方向反対向きに配置したときの各円周溝21の位置に対応している。
【0074】
上記のように転造加工すると、図7に示すように、第1のローラ素材51の2個の遊星ローラ5,5の繋ぎ目に相当する円周溝21b(すなわち、軸受面22,22から最も遠い位置にある円周溝21b)の部分では、他の円周溝21と同様に、金属組織が径方向に逃げることとなり、円周溝21bの溝底からその両側の外周に向かって金属組織の流動が生じる。また、後述のローラ素材切断工程で2個の遊星ローラ5,5の継ぎ目に相当する位置で第1のローラ素材51を切断したとき、その切断面には転造による余肉が存在しない。また、軸受面22,22から最も遠い位置にある円周溝21bの溝深さは、他の円周溝21の溝深さ(転造金型57の突起58の高さ)を超えることがない。
【0075】
また上記と同様に、転造によって、第2のローラ素材52の外周に、遊星ローラ5と遊星ローラ5の各円周溝21を形成する。具体的には、第2のローラ素材52を回転させながら、その第2のローラ素材52の外周に転造金型57を転がり接触させ、第2のローラ素材52と転造金型57の間に作用する接触圧力により第2のローラ素材52の表面を塑性変形させる。転造金型57には、遊星ローラ5と遊星ローラ5の各円周溝21に対応する複数の突起58が設けられており、その複数の突起58が第2のローラ素材52の大径円筒面54に食い込むことで、遊星ローラ5と遊星ローラ5の各円周溝21を同時に形成する。この円周溝転造工程において、第2のローラ素材52の外周に形成される各円周溝21の位置は、2個の遊星ローラ5,5を互いに軸方向反対向きに配置したときの各円周溝21の位置に対応している。第2のローラ素材52を転造するときに使用する転造金型57の形状は、第1のローラ素材51を転造するときに使用する転造金型57と同一である。
【0076】
上記のように転造加工すると、図7に示すように、第2のローラ素材52の2個の遊星ローラ5,5の繋ぎ目に相当する円周溝21b(すなわち、軸受面22,22から最も遠い位置にある円周溝21b)の部分では、他の円周溝21と同様に、金属組織が径方向に逃げることとなり、円周溝21bの溝底からその両側の外周に向かって金属組織の流動が生じる。また、後述のローラ素材切断工程で2個の遊星ローラ5,5の継ぎ目に相当する位置で第2のローラ素材52を切断したとき、その切断面には転造による余肉が存在しない。また、軸受面22,22から最も遠い位置にある円周溝21bの溝深さは、他の円周溝21の溝深さ(転造金型57の突起58の高さ)を超えることがない。
【0077】
<ローラ素材切断工程>
外周に各円周溝21が形成された第1のローラ素材51を、図7に示す切断線Cの位置に沿って切断し、遊星ローラ5と遊星ローラ5に分割する。このとき、第1のローラ素材51は、円周溝21bの溝底の位置で切断される。また、外周に各円周溝21が形成された第2のローラ素材52を、図7に示す切断線Cの位置に沿って切断し、遊星ローラ5と遊星ローラ5に分割する。このとき、第2のローラ素材52は、円周溝21bの溝底の位置で切断される。
【0078】
<軸受面仕上げ工程>
第1のローラ素材51、第2のローラ素材52をそれぞれ切断して得た4個の遊星ローラ5~5の軸受面22~22をそれぞれ研削加工する。これにより、各遊星ローラ5~5の軸受面22~22が所定の面粗さ(例えばRa3.2μm以下)に仕上げられる。また、上記の円周溝転造工程で円周溝21を転造したときに、第1のローラ素材51または第2のローラ素材52の軸方向端面53~53(つまり、遊星ローラ5~5の軸受面22~22となる面)に金属組織の流動による膨らみ(余肉)が生じる可能性があるが、この余肉を研削加工で除去することができる。ここでは、軸受面仕上げ工程を、ローラ素材切断工程の直後に実施しているが、円周溝転造工程の直後(すなわちローラ素材切断工程の前)に実施するようにしてもよい。
【0079】
以上の各工程を経て、上記の電動式直動アクチュエータ1に用いられる4個の遊星ローラ5~5を製造することができる。
【0080】
上記の製造方法で遊星ローラ5~5を製造すると、遊星ローラ5~5の外周の円周溝21を転造するときに、1回の転造で2個の遊星ローラ5,5の円周溝21を形成し、また、1回の転造で2個の遊星ローラ5,5の円周溝21を形成するので、低コストで遊星ローラ5~5を製造することが可能である。
【0081】
また、上記の製造方法で遊星ローラ5~5を製造すると、円周溝転造工程で円周溝21を転造したときに、第1のローラ素材51または第2のローラ素材52の軸方向端面53~53に金属組織の流動による膨らみ(余肉)が生じても、その後の軸受面仕上げ工程で余肉を除去することができる。すなわち軸受面22~22を仕上げる研削加工が、転造で生じる余肉の除去加工を兼ねることになる。そのため、軸受面22~22の研削加工とは別に余肉の除去加工を行なう必要がなく、遊星ローラ5~5の製造に要するリードタイムを短く抑えることができる。
【0082】
また、上記の製造方法で遊星ローラ5~5を製造すると、最も長い遊星ローラ5と最も短い遊星ローラ5を製造するための第1のローラ素材51の軸方向長さSと、2番目に長い遊星ローラ5と2番目に短い遊星ローラ5を製造するための第2のローラ素材52の軸方向長さSとが同一なので、第1のローラ素材51および第2のローラ素材52の材料となる鋼材を統一することができ、第1のローラ素材51および第2のローラ素材52の材料の歩留まりをより効果的に高めることが可能となる。
【0083】
また、上記の製造方法で遊星ローラ5~5を製造すると、第1のローラ素材51の転造に用いる転造金型57と、第2のローラ素材52の転造に用いる転造金型57とが同一形状なので、転造コストを低く抑えることができる。
【0084】
また、上記の製造方法で遊星ローラ5~5を製造すると、円周溝転造工程で円周溝21を転造するときの金属組織の流動が小径部36で吸収されるので、第1のローラ素材51および第2のローラ素材52の軸方向端面53~53に金属組織の流動による膨らみ(余肉)が生じにくい。そのため、軸受面仕上げ工程の加工代を少なくして、遊星ローラ5~5の製造コストを効果的に低減することが可能である。
【0085】
また、上記の製造方法で遊星ローラ5~5を製造すると、各遊星ローラ5~5の軸方向長さL~Lが、螺旋凸条20のリード角に対応して変化するように遊星ローラ5~5ごとに異なる長さに設定されているので、各遊星ローラ5~5の円周溝21の数を確保しつつ各遊星ローラ5~5の軸方向長さL~Lを短く抑えることができ、第1のローラ素材51および第2のローラ素材52の材料の歩留まりを高めることができる。
【0086】
また、上記の製造方法で製造された遊星ローラ5~5は、軸受面22~22とは反対側の端面に膨らみが生じず、また円周溝21bの溝肩の寸法精度が良い。例えば、1個分の遊星ローラ5に相当する軸方向長さをもつローラ素材を準備し、そのローラ素材の外周に、軸受面22から最も遠い位置にある円周溝21bの溝底がローラ素材の端面53と交差するように円周溝21bを転造した場合、図8(b)に示すように、円周溝21bは、金属組織の流動の開始点が円周溝21bの溝底ではなく、溝底と溝肩の中間点の位置にあるものとなる。この場合、端面53には、金属組織の流動による膨らみ(余肉)59が生じ、この余肉59を除去せずに残すと遊星ローラ5の軸方向長さが余分に長くなってしまうという問題がある。この余肉59を後加工で除去するとしても、その分、遊星ローラ5の製造コストが上昇してしまう。また、図8(c)に示すように、余肉59を吸収するための逃がし形状を転造加工の前にあらかじめローラ素材の端部外周に設けたとしても、円周溝21bの溝深さが他の円周溝21の溝深さと一致せず、また、円周溝21bの溝肩寸法も他の円周溝21の溝肩寸法と一致せず、円周溝21bの溝肩の寸法精度が低下する。
これに対し、図8(a)に示すように、第1のローラ素材51の外周に形成された円周溝21bの溝底の位置で切断線Cに沿ってローラ素材を切断し、遊星ローラ5と遊星ローラ5を製造した場合、遊星ローラ5と遊星ローラ5の円周溝21bは、その他の円周溝21と同様に、転造による金属組織の流動の開始点が円周溝21bの溝底の位置にあって余肉59が生じず、また溝肩の径寸法が他の円周溝21の溝肩の径寸法と一致し、円周溝21bの溝肩の寸法精度が良い。
【0087】
次に、この発明の第2実施形態を、図10から図13に基づいて説明する。第1実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0088】
図10に示すように、各遊星ローラ5~5のスラスト軸受7で支持される側とは反対側の端部の外周には、第2の小径部60が形成されている(図10は遊星ローラ5を示す)。第2の小径部60は、軸方向に外径が一定となるように形成された円筒状の部分である。第2の小径部60の外径は、円周溝21の溝底径と同じかそれよりも小さい。図11に示すように、第2の小径部60の軸方向長さβ~βは、螺旋凸条20のリード角に対応して変化するように遊星ローラ5~5ごとに異なる長さに設定されている。図では、4個の遊星ローラ5~5のうち遊星ローラ5の第2の小径部60の軸方向長さβが最も短く、遊星ローラ5の第2の小径部60の軸方向長さβが2番目に短い。また、遊星ローラ5の第2の小径部60の軸方向長さβが最も長く、遊星ローラ5の第2の小径部60の軸方向長さβが2番目に長い。遊星ローラ5の第2の小径部60の軸方向長さβはゼロ以上であればよく、ゼロに設定してもよい。軸方向長さβと軸方向長さβの差は(p/4)であり、軸方向長さβと軸方向長さβの差も(p/4)である。
【0089】
つまり、遊星ローラ5~5の個数がn個、軸方向に隣り合う螺旋凸条20の間隔がpのとき、第2の小径部60の軸方向長さβ~βが、周方向に隣り合う遊星ローラ5~5の間で(p/n)ずつ変化するように設定されている。
【0090】
さらに、遊星ローラ5~5のスラスト軸受7で支持される側の端部の外周に設けた小径部36の軸方向長さα~αと、スラスト軸受7で支持される側とは反対側の端部の外周に設けた第2の小径部60の軸方向長さβ~βとを足し合わせた長さ(α+β)~(α4+β)は、各遊星ローラ5~5で同一の長さに設定されている。
【0091】
また、各遊星ローラ5~5の軸方向長さL~Lは、すべて同一の長さに設定されている。
【0092】
図11に示す遊星ローラ5~5の製造方法の一例を説明する。
【0093】
<ローラ素材準備工程>
図12に示すように、第1のローラ素材51と第2のローラ素材52とを準備する。第1のローラ素材51は、図11に示す4個の遊星ローラ5~5のうち2個の遊星ローラ5,5を製造するためのローラ素材である。第1のローラ素材51は、遊星ローラ5と遊星ローラ5の合計長さに相当する軸方向長さSを有する。
【0094】
第1のローラ素材51の軸方向の一方の端面53は、遊星ローラ5の軸受面22となる面である。第1のローラ素材51の軸方向の他方の端面53は、遊星ローラ5の軸受面22となる面である。つまり、第1のローラ素材51は、遊星ローラ5と遊星ローラ5を、軸受面22,22が互いに軸方向外向きとなるように配置し、軸受面22,22とは反対側の端面37同士を連結したものに対応している。第1のローラ素材51の外周には、遊星ローラ5,5の各円周溝21に対応する位置に形成された大径円筒面54と、遊星ローラ5,5の小径部36に対応する位置に形成された小径円筒面55と、遊星ローラ5,5の第2の小径部60に対応する位置に形成された第2の小径円筒面61とが設けられている。小径円筒面55の外径および第2の小径円筒面61の外径は、大径円筒面54の外径よりも小さい。
【0095】
第2のローラ素材52は、図11に示す4個の遊星ローラ5~5のうち、2個の遊星ローラ5,5を製造するためのローラ素材である。第2のローラ素材52は、遊星ローラ5と遊星ローラ5の合計長さに相当する軸方向長さSを有する。ここで、第2のローラ素材52の軸方向長さSは、第1のローラ素材51の軸方向長さSと同一である。
【0096】
第2のローラ素材52の軸方向の一方の端面53は、遊星ローラ5の軸受面22となる面である。第2のローラ素材52の軸方向の他方の端面53は、遊星ローラ5の軸受面22となる面である。つまり、第2のローラ素材52は、遊星ローラ5と遊星ローラ5を、軸受面22,22が互いに軸方向外向きとなるように配置し、軸受面22,22とは反対側の端面37同士を連結したものに対応している。第2のローラ素材52の外周には、遊星ローラ5,5の各円周溝21に対応する位置に形成された大径円筒面54と、遊星ローラ5,5の小径部36に対応する位置に形成された小径円筒面55と、遊星ローラ5,5の第2の小径部60に対応する位置に形成された第2の小径円筒面61とが設けられている。小径円筒面55の外径および第2の小径円筒面61の外径は、大径円筒面54の外径よりも小さい。
【0097】
第1のローラ素材51の外周の大径円筒面54は、第2の小径円筒面61を間に挟むように軸方向に離れて2箇所設けられている。第2のローラ素材52の外周の大径円筒面54も、第2の小径円筒面61を間に挟むように軸方向に離れて2箇所設けられている。第1のローラ素材51の外周の各大径円筒面54の軸方向長さと、第2のローラ素材52の外周の各大径円筒面54の軸方向長さは、すべて同一である。また、第1のローラ素材51の外周の第2の小径円筒面61の軸方向長さと、第2のローラ素材52の外周の第2の小径円筒面61の軸方向長さも同一である。
【0098】
<円周溝転造工程>
図13に示すように、転造によって、第1のローラ素材51の外周に、遊星ローラ5と遊星ローラ5の各円周溝21を形成する。具体的には、第1のローラ素材51を回転させながら、その第1のローラ素材51の外周に転造金型57を転がり接触させ、第1のローラ素材51と転造金型57の間に作用する接触圧力により第1のローラ素材51の表面を塑性変形させる。転造金型57には、遊星ローラ5と遊星ローラ5の各円周溝21に対応する複数の突起58が設けられており、その複数の突起58が第1のローラ素材51の大径円筒面54(図12参照)に食い込むことで、遊星ローラ5と遊星ローラ5の各円周溝21を同時に形成する。この円周溝転造工程において、第1のローラ素材51の外周に形成される各円周溝21の位置は、2個の遊星ローラ5,5を互いに軸方向反対向きに配置したときの各円周溝21の位置に対応している。
【0099】
また上記と同様に、転造によって、第2のローラ素材52の外周に、遊星ローラ5と遊星ローラ5の各円周溝21を形成する。具体的には、第2のローラ素材52を回転させながら、その第2のローラ素材52の外周に転造金型57を転がり接触させ、第2のローラ素材52と転造金型57の間に作用する接触圧力により第2のローラ素材52の表面を塑性変形させる。転造金型57には、遊星ローラ5と遊星ローラ5の各円周溝21に対応する複数の突起58が設けられており、その複数の突起58が第2のローラ素材52の大径円筒面54(図12参照)に食い込むことで、遊星ローラ5と遊星ローラ5の各円周溝21を同時に形成する。この円周溝転造工程において、第2のローラ素材52の外周に形成される各円周溝21の位置は、2個の遊星ローラ5,5を互いに軸方向反対向きに配置したときの各円周溝21の位置に対応している。第2のローラ素材52を転造するときに使用する転造金型57の形状は、第1のローラ素材51を転造するときに使用する転造金型57と同一である。
【0100】
<ローラ素材切断工程>
外周に各円周溝21が形成された第1のローラ素材51を、図13に示す切断線Cの位置に沿って切断し、遊星ローラ5と遊星ローラ5に分割する。また、外周に各円周溝21が形成された第2のローラ素材52を、図13に示す切断線Cの位置に沿って切断し、遊星ローラ5と遊星ローラ5に分割する。
【0101】
<軸受面仕上げ工程>
第1のローラ素材51、第2のローラ素材52をそれぞれ切断して得た4個の遊星ローラ5~5の軸受面22~22をそれぞれ研削加工する。これにより、各遊星ローラ5~5の軸受面22~22が所定の面粗さ(例えばRa3.2μm以下)に仕上げられる。また、上記の円周溝転造工程で円周溝21を転造したときに、第1のローラ素材51または第2のローラ素材52の軸方向端面53~53(つまり、遊星ローラ5~5の軸受面22~22となる面)に金属組織の流動による膨らみ(余肉)が生じる可能性があるが、この余肉も研削加工で除去することができる。ここでは、軸受面仕上げ工程を、ローラ素材切断工程の直後に実施しているが、円周溝転造工程の直後(すなわちローラ素材切断工程の前)に実施するようにしてもよい。
【0102】
以上の各工程を経て、上記の電動式直動アクチュエータ1に用いられる4個の遊星ローラ5~5を製造することができる。
【0103】
上記の製造方法で遊星ローラ5~5を製造すると、遊星ローラ5~5の外周の円周溝21を転造するときに、1回の転造で2個の遊星ローラ5,5の円周溝21を形成し、また、1回の転造で2個の遊星ローラ5,5の円周溝21を形成するので、低コストで遊星ローラ5~5を製造することが可能である。
【0104】
また、上記の製造方法で遊星ローラ5~5を製造すると、円周溝転造工程で円周溝21を転造したときに、第1のローラ素材51または第2のローラ素材52の軸方向端面53~53に金属組織の流動による膨らみ(余肉)が生じても、その後の軸受面仕上げ工程で余肉を除去することができる。すなわち軸受面22~22を仕上げる研削加工が、転造で生じる余肉の除去加工を兼ねることになる。そのため、軸受面22~22の研削加工とは別に余肉の除去加工を行なう必要がなく、遊星ローラ5~5の製造に要するリードタイムを短く抑えることができる。
【0105】
また、上記の製造方法で遊星ローラ5~5を製造すると、遊星ローラ5と遊星ローラ5を製造するための第1のローラ素材51の軸方向長さSと、遊星ローラ5と遊星ローラ5を製造するための第2のローラ素材52の軸方向長さSとが同一なので、第1のローラ素材51および第2のローラ素材52の材料となる鋼材を統一することができ、第1のローラ素材51および第2のローラ素材52の材料の歩留まりをより効果的に高めることが可能となる。
【0106】
また、上記の製造方法で遊星ローラ5~5を製造すると、第1のローラ素材51の転造に用いる転造金型57と、第2のローラ素材52の転造に用いる転造金型57とが同一形状なので、転造コストを低く抑えることができる。
【0107】
その他の作用効果も第1実施形態と同様である。
【0108】
次に、この発明の第3実施形態を、図14に基づいて説明する。第1実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0109】
<ローラ素材準備工程>
図14に示すローラ素材50を準備する。ローラ素材50は、図5に示す4個の遊星ローラ5~5を製造するための素材である。ローラ素材50の軸方向の一方の端面53は、遊星ローラ5の軸受面22となる面である。ローラ素材50の軸方向の他方の端面53は、遊星ローラ5の軸受面22となる面である。ローラ素材50の外周には、遊星ローラ5~5の各円周溝21に対応する位置に形成された大径円筒面54と、遊星ローラ5~5の小径部36に対応する位置に形成された小径円筒面55とが設けられている。ローラ素材50の中心には遊星ローラ5~5の軸受孔18となる貫通孔56が形成されている。
【0110】
<円周溝転造工程>
図15に示すように、転造によって、ローラ素材50の外周に、遊星ローラ5~5の各円周溝21を形成する。具体的には、ローラ素材50を回転させながら、そのローラ素材50の外周に転造金型57を転がり接触させ、ローラ素材50と転造金型57の間に作用する接触圧力によりローラ素材50の表面を塑性変形させる。転造金型57には、遊星ローラ5~5の各円周溝21に対応する複数の突起58が設けられており、その複数の突起58がローラ素材50の大径円筒面54に食い込むことで、遊星ローラ5~5の各円周溝21が同時に形成される。ここで、各円周溝21は、ローラ素材50の軸方向の両端面53,53が、互いに軸方向反対向きに配置した2個の遊星ローラ5,5の軸受面22,22となる向きで転造される。
【0111】
<ローラ素材切断工程>
外周に各円周溝21が形成されたローラ素材50を、図15に示す切断線Cの位置に沿って切断し、各遊星ローラ5~5に分割する。
【0112】
<軸受面仕上げ工程>
ローラ素材50を切断して得た4個の遊星ローラ5~5の軸受面22~22をそれぞれ研削加工する。これにより、各遊星ローラ5~5の軸受面22~22が所定の面粗さ(例えばRa3.2μm以下)に仕上げられる。
【0113】
上記の製造方法で遊星ローラ5~5を製造すると、遊星ローラ5~5の外周の円周溝21を転造するときに、1回の転造で4個の遊星ローラ5~5の円周溝21を同時に形成するので、低コストで遊星ローラ5~5を製造することが可能である。
【0114】
また、上記の製造方法で遊星ローラ5~5を製造すると、円周溝転造工程で円周溝21を転造したときに、ローラ素材50の軸方向端面53,53に金属組織の流動による膨らみ(余肉)が生じても、その後の軸受面仕上げ工程で余肉を除去することができる。すなわち軸受面22~22を仕上げる研削加工が、転造で生じる余肉の除去加工を兼ねることになる。そのため、軸受面22~22の研削加工とは別に余肉の除去加工を行なう必要がなく、遊星ローラ5~5の製造に要するリードタイムを短く抑えることができる。
【0115】
また、上記の製造方法で遊星ローラ5~5を製造すると、遊星ローラ5~5を製造するためのローラ素材50を1種類に統一することができるので、材料の歩留まりを効果的に高めることが可能となる。
【0116】
また、上記の製造方法で遊星ローラ5~5を製造すると、遊星ローラ5~5を製造するための転造金型57を1種類に抑えることができるので、転造コストを低く抑えることができる。
【0117】
上記各実施形態では、遊星ローラの個数が4個の場合を例に挙げて説明したが、この発明は、遊星ローラの個数が3個の場合にも適用することができる。以下、遊星ローラの個数が3個の場合について説明する。上記各実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0118】
図17に示すように、3個の遊星ローラ5~5は、回転軸3の外周と外輪部材4の内周との間に周方向に等間隔に配置されている。
【0119】
図18に示すように、3個の遊星ローラ5~5は、図5に示す第1実施形態の4個の遊星ローラ5~5に対応する構成を採用することができる。すなわち、遊星ローラ5~5の外周の円周溝21は、軸受面22~22に最も近い円周溝21aの中心位置と軸受面22~22との間の軸方向距離d~dが、螺旋凸条20のリード角に対応して変化するように遊星ローラ5~5ごとに異なる軸方向位置に配置されている。3個の遊星ローラ5~5の軸方向距離d~dのうち、遊星ローラ5の軸方向距離dが最も長く、遊星ローラ5の軸方向距離dが最も短い。また、遊星ローラ5の軸方向距離dは、軸方向距離d~dのうち2番目に長く、かつ、2番目に短い。軸方向距離dと軸方向距離dの差は(p/3)であり、軸方向距離dと軸方向距離dの差も(p/3)である。
【0120】
つまり、軸受面22~22に最も近い円周溝21aの中心位置と軸受面22~22との間の軸方向距離d~dは、周方向に隣り合う遊星ローラ5~5の間で(p/3)ずつ変化するように設定されている。これにより、周方向に間隔をおいて配置された各遊星ローラ5~5の各円周溝21と、周方向に向かって軸方向位置が次第に変化する螺旋凸条20の軸方向位置とを係合させたとき、各遊星ローラ5~5の軸方向端面に設けた軸受面22~22の軸方向位置が遊星ローラ5~5の間で一致している。
【0121】
また、小径部36の軸方向長さα~αは、螺旋凸条20のリード角に対応して変化するように遊星ローラ5~5ごとに異なる長さに設定されている。3個の遊星ローラ5~5のうち遊星ローラ5の小径部36の軸方向長さαが最も長く、遊星ローラ5の小径部36の軸方向長さαが最も短い。また、遊星ローラ5の小径部36の軸方向長さαは、軸方向長さα~αのうち2番目に長く、かつ、2番目に短い。遊星ローラ5の小径部36の軸方向長さαはゼロ以上であればよく、ゼロに設定してもよい。軸方向長さαと軸方向長さαの差は(p/3)であり、軸方向長さαと軸方向長さαの差も(p/3)である。
【0122】
つまり、3個の遊星ローラ5~5の小径部36の軸方向長さα~αは、周方向に隣り合う遊星ローラ5~5の間で(p/3)ずつ変化するように設定されている。
【0123】
また、各遊星ローラ5~5の軸方向長さL~Lは、螺旋凸条20のリード角に対応して変化するように遊星ローラ5~5ごとに異なる長さに設定されている。3個の遊星ローラ5~5のうち遊星ローラ5の軸方向長さLが最も長く、遊星ローラ5の軸方向長さLが最も短い。また、遊星ローラ5の軸方向長さLは、軸方向長さL~Lのうち2番目に長く、かつ、2番目に短い。軸方向長さLと軸方向長さLの差は(p/3)であり、軸方向長さLと軸方向長さLの差も(p/3)である。
【0124】
図18に示す遊星ローラ5~5は、上述の第1実施形態と同様の製造方法で製造することができる。
【0125】
このとき、図19に示すように、ローラ素材準備工程では、遊星ローラ5と遊星ローラ5を製造するためのローラ素材として第1のローラ素材51を準備し、また、遊星ローラ5を2個分製造するためのローラ素材として第2のローラ素材52を準備する。第2のローラ素材52は、第1のローラ素材51の個数の半分の個数だけ準備すればよい。
【0126】
第1のローラ素材51は、3個の遊星ローラ5~5のうちの軸方向長さが最も長い遊星ローラ5と最も短い遊星ローラ5の合計長さに相当する軸方向長さSをもつ。第2のローラ素材52は、3個の遊星ローラ5~5のうちの軸方向長さが中間の遊星ローラ5(軸方向長さが2番目に長く、かつ、2番目に短い遊星ローラ)の2個分の合計長さに相当する軸方向長さSをもつ。第2のローラ素材52の軸方向長さSは、第1のローラ素材51の軸方向長さSと同一である。また、第2のローラ素材52の一端の小径円筒面55の軸方向長さと、他端の小径円筒面55の軸方向長さは同一である。
【0127】
第1のローラ素材51の軸方向の一方の端面53は、遊星ローラ5の軸受面22となる面である。第1のローラ素材51の軸方向の他方の端面53は、遊星ローラ5の軸受面22となる面である。つまり、第1のローラ素材51は、遊星ローラ5と遊星ローラ5を、軸受面22,22が互いに軸方向外向きとなるように配置し、軸受面22,22とは反対側の端面37(図4参照)同士を連結したものに対応している。
【0128】
第2のローラ素材52の軸方向の両端面53は、いずれも遊星ローラ5の軸受面22となる面である。つまり、第2のローラ素材52は、2個の遊星ローラ5を、軸受面22が互いに軸方向外向きとなるように配置し、軸受面22とは反対側の端面37(図4参照)同士を連結したものに対応している。
【0129】
図20に示すように、円周溝転造工程では、第1のローラ素材51の外周に転造金型57を転がり接触させ、遊星ローラ5と遊星ローラ5の各円周溝21を同時に形成する。このとき、第1のローラ素材51の外周に形成される各円周溝21の位置は、2個の遊星ローラ5,5を互いに軸方向反対向きに配置したときの各円周溝21の位置に対応している。同様に、第2のローラ素材52の外周に転造金型57を転がり接触させ、2個分の遊星ローラ5の円周溝21を同時に形成する。このとき、第2のローラ素材52の外周に形成される各円周溝21の位置は、2個の遊星ローラ5を互いに軸方向反対向きに配置したときの各円周溝21の位置に対応している。第2のローラ素材52を転造するときに使用する転造金型57の形状は、第1のローラ素材51を転造するときに使用する転造金型57と同一である。
【0130】
このように3個の遊星ローラ5~5を製造すると、第1のローラ素材51と第2のローラ素材52とが同一長さなので、3個の遊星ローラ5~5のローラ素材の材料の歩留まりを効果的に高めることが可能である。また、第1のローラ素材51の転造に用いる転造金型57と、第2のローラ素材52の転造に用いる転造金型57とが同一形状なので、転造コストを低く抑えることができる。その他の作用効果も第1実施形態と同様である。
【0131】
また、図21に示すように、3個の遊星ローラ5~5は、図11に示す第2実施形態の4個の遊星ローラ5~5に対応する構成を採用することができる。すなわち、第2の小径部60の軸方向長さβ~βは、螺旋凸条20のリード角に対応して変化するように遊星ローラ5~5ごとに異なる長さに設定されている。3個の遊星ローラ5~5のうち遊星ローラ5の第2の小径部60の軸方向長さβが最も短く、遊星ローラ5の第2の小径部60の軸方向長さβが最も長い。また、遊星ローラ5の第2の小径部60の軸方向長さβは、軸方向長さβ~βのうち2番目に長く、かつ、2番目に短い。遊星ローラ5の第2の小径部60の軸方向長さβはゼロ以上であればよく、ゼロに設定してもよい。軸方向長さβと軸方向長さβの差は(p/3)であり、軸方向長さβと軸方向長さβの差も(p/3)である。
【0132】
つまり、3個の遊星ローラ5~5の第2の小径部60の軸方向長さβ~βは、周方向に隣り合う遊星ローラ5~5の間で(p/3)ずつ変化するように設定されている。
【0133】
さらに、遊星ローラ5~5のスラスト軸受7で支持される側の端部の外周に設けた小径部36の軸方向長さα~αと、スラスト軸受7で支持される側とは反対側の端部の外周に設けた第2の小径部60の軸方向長さβ~βとを足し合わせた長さ(α+β)~(α+β)は、各遊星ローラ5~5で同一の長さに設定されている。また各遊星ローラ5~5の軸方向長さL~Lは、すべて同一の長さに設定されている。
【0134】
図21に示す遊星ローラ5~5は、上述の第2実施形態と同様の製造方法で製造することができる。
【0135】
このとき、図22に示すように、ローラ素材準備工程では、遊星ローラ5と遊星ローラ5を製造するためのローラ素材として第1のローラ素材51を準備し、また、遊星ローラ5を2個分製造するためのローラ素材として第2のローラ素材52を準備する。第2のローラ素材52は、第1のローラ素材51の個数の半分の個数だけ準備すればよい。
【0136】
また、図23に示すように、円周溝転造工程では、第1のローラ素材51の外周に転造金型57を転がり接触させ、遊星ローラ5と遊星ローラ5の各円周溝21を同時に形成する。同様に、第2のローラ素材52の外周に転造金型57を転がり接触させ、2個分の遊星ローラ5の円周溝21を同時に形成する。転造金型57の形状は、転造金型57と同一である。
【0137】
このように3個の遊星ローラ5~5を製造すると、第1のローラ素材51と第2のローラ素材52とが同一長さなので、3個の遊星ローラ5~5のローラ素材の材料の歩留まりを効果的に高めることが可能である。また、第1のローラ素材51の転造に用いる転造金型57と、第2のローラ素材52の転造に用いる転造金型57とが同一形状なので、転造コストを低く抑えることができる。その他の作用効果も第2実施形態と同様である。
【0138】
また、図18および図21に示す3個の遊星ローラ5~5を、上述の第3実施形態と同様の方法で製造することも可能である。このようにすると、遊星ローラ5~5の外周の円周溝21を転造するときに、1回の転造で3個の遊星ローラ5~5の円周溝21を同時に形成するので、低コストで遊星ローラ5~5を製造することが可能である。その他の作用効果も第3実施形態と同様である。
【0139】
上記各実施形態では、遊星ローラ5~5の軸受孔18となる貫通孔56はローラ素材準備工程で形成されていたが、ローラ素材50~52を中実丸棒形状とし、円周溝転造工程の直後に貫通孔56を加工してもよい。
【0140】
また、軸受面仕上げ工程に前後して、遊星ローラ5~5の外径面を研削加工して所定の面粗さ(例えば、Ra3.2μm以下)に仕上げてもよい。または、ローラ素材切断工程の直前に、ローラ素材50~52の外径面を研削加工して所定の面粗さ(例えば、Ra3.2μm以下)に仕上げてもよい。
【0141】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0142】
1 電動式直動アクチュエータ
2 電動モータ
3 回転軸
4 外輪部材
6 キャリヤ
7 スラスト軸受
20 螺旋凸条
21,21a,21b 円周溝
22~22 軸受面
36 小径部
37 端面
50 ローラ素材
~5 遊星ローラ
51 第1のローラ素材
52 第2のローラ素材
53~53 端面
57、57 転造金型
~d 軸方向距離
~L 軸方向長さ
α~α 軸方向長さ
β~β 軸方向長さ
,S 軸方向長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23