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特許6999619シリコンクラスレートIIを含有する負極活物質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】シリコンクラスレートIIを含有する負極活物質
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20220203BHJP
   C01B 33/06 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
C01B33/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019154879
(22)【出願日】2019-08-27
(65)【公開番号】P2021034279
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2020-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】原田 正則
(72)【発明者】
【氏名】江口 達哉
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 正和
(72)【発明者】
【氏名】吉田 淳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一裕
(72)【発明者】
【氏名】小坂 大地
(72)【発明者】
【氏名】中西 真二
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0380724(US,A1)
【文献】特開2020-87886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/38
C01B 33/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式NaSi136(0≦x≦10)で表されるシリコンクラスレートIIを含有し、かつ、径が100nm以下である孔の体積が0.025cm/g以上であるシリコン材料を含むことを特徴とする負極活物質。
【請求項2】
請求項1に記載の負極活物質を備える負極。
【請求項3】
請求項2に記載の負極を備えるリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンクラスレートIIを含有する負極活物質に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Siによって形成された多面体の空間の中に他の金属を包接するシリコンクラスレートなる化合物が知られている。シリコンクラスレートのうち、主にシリコンクラスレートI及びシリコンクラスレートIIについての研究が報告されている。
【0003】
シリコンクラスレートIとは、1個のNa原子を20個のSi原子で包接した12面体と、1個のNa原子を24個のSi原子で包接した14面体とが、面を共有してなるものであり、NaSi46との組成式で表わされる。シリコンクラスレートIを構成するすべての多面体のケージには、Naが存在している。
【0004】
シリコンクラスレートIIとは、Siの12面体とSiの16面体とが面を共有してなるものであり、NaSi136との組成式で表わされる。ここで、xは0≦x≦24を満足する。すなわち、シリコンクラスレートIIを構成する多面体のケージには、Naが存在してもよいし、存在しなくてもよい。
【0005】
非特許文献1には、Na及びSiを含有するNa-Si合金から、シリコンクラスレートI及びシリコンクラスレートIIを製造する方法が記載されている。具体的に述べると、10-4Torr未満(すなわち1.3×10-2Pa未満)の減圧条件下、Na-Si合金を400℃以上に加熱して、Naを蒸気として除去することで、シリコンクラスレートI及びシリコンクラスレートIIを製造したことが記載されている。そして、加熱温度の違いに因り、シリコンクラスレートI及びシリコンクラスレートIIの生成割合が変化することや、加熱温度が高くなれば、シリコンクラスレートIからNaが離脱し、シリコンクラスレートIの構造が変化することで、一般的なダイヤモンド構造であるSi結晶が生成することも記載されている。
さらに、シリコンクラスレートIIについては、Na22.56Si136、Na17.12Si136、Na18.72Si136、Na7.20Si136、Na11.04Si136、Na1.52Si136、Na23.36Si136、Na24.00Si136、Na20.48Si136、Na16.00Si136、Na14.80Si136を製造したことが記載されている。
【0006】
特許文献1にも、シリコンクラスレートの製造方法が記載されている。具体的には、シリコンウエハとNaを用いて製造されたNa-Si合金を、10-2Pa以下の減圧条件下、400℃で3時間加熱してNaを除去することで、シリコンクラスレートI及びシリコンクラスレートIIを製造したことが記載されている。
【0007】
また、シリコンクラスレートIIに包接されるNaがLi、K、Rb、Cs又はBaで置換されたシリコンクラスレートIIや、シリコンクラスレートIIのSiがGaやGeで一部置換されたシリコンクラスレートIIも報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】H. Horie, T. Kikudome, K. Teramura, and S.Yamanaka, Journal of Solid State Chemistry, 182, 2009, pp.129-135
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2012-224488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
シリコンクラスレートIIは、内包するNaが離脱しても、その構造を維持する。本発明者は、この点に着目し、内包するNaが離脱したシリコンクラスレートIIをリチウムイオン二次電池の負極活物質として利用することを想起した。
【0011】
本発明は、かかる事情に鑑みて為されたものであり、リチウムイオン二次電池の負極に適した、シリコンクラスレートIIを含有する負極活物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の負極活物質は、組成式NaSi136(0≦x≦10)で表されるシリコンクラスレートIIを含有し、かつ、径が100nm以下である孔の体積が0.025cm/g以上であるシリコン材料を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の負極活物質は、充電時における膨張の程度が抑制されている。そのため、本発明の負極活物質を備える負極は、充放電時の劣化が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】製造例1のシリコン材料のX線回折チャート、並びに、シリコンクラスレートI及びシリコンクラスレートIIのX線回折チャートである。
図2】評価例1における、Naゲッター剤とNaの反応物のX線回折チャート、並びに、ダイヤモンド構造であるSi結晶及びNaSiO結晶のX線回折チャートである。
図3】製造例2、製造例3及び製造例5のシリコン材料のX線回折チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x~y」は、下限xおよび上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
【0016】
本発明の負極活物質は、組成式NaSi136(0≦x≦10)で表されるシリコンクラスレートIIを含有し、かつ、径が100nm以下である孔の体積が0.025cm/g以上であるシリコン材料(以下、本発明のシリコン材料ということがある。)を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明のシリコン材料にて、シリコンクラスレートIIにおけるNa含量は低い方が好ましい。Naが離脱したシリコンクラスレートIIの多面体のケージ内にリチウムが移動することが可能となり、その結果、負極活物質の膨張の程度が抑制されるためである。
NaSi136におけるxの範囲としては、0≦x≦7が好ましく、0≦x≦5がより好ましく、0≦x≦3がさらに好ましく、0≦x≦2が特に好ましく、0≦x≦1が最も好ましい。
【0018】
本発明のシリコン材料には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、Na及びSi以外の他の元素が存在してもよい。他の元素としては、シリコンクラスレートIIにおいて、Naと置換可能なLi、K、Rb、Cs及びBa、並びに、Siと置換可能なGa及びGeを例示できる。
【0019】
本発明のシリコン材料は、径が100nm以下である孔の体積が0.025cm/g以上である。なお、本発明のシリコン材料に関する孔の径の大きさ及び孔の体積は、JIS Z 8831に準ずるガス吸着法を用いて本発明のシリコン材料を分析した際に算出される孔の径の大きさ及び孔の体積を意味する。
【0020】
リチウムイオン二次電池の負極製造時やリチウムイオン二次電池の組み立て時に、負極活物質を備える負極には加圧が付される。ここで、径の大きな孔は強度に劣るため、負極活物質に径の大きな孔が存在しても、加圧が付されることに因り、径の大きな孔は変形することが想定される。
本発明のシリコン材料において、径が100nm以下の孔について規定した理由は、かかる細孔であれば強度に優れるためリチウムイオン二次電池の製造時などの加圧条件下における変形が抑制されると想定し得る点と、かかる細孔の体積が異なるシリコン材料を用いて試験を行った結果、かかる細孔の体積と負極の膨張量(膨張力)との間に相関を見出した点にある。
【0021】
本発明のシリコン材料における、径が100nm以下である孔の体積としては、0.025cm/g~0.1cm/gの範囲内、0.03cm/g~0.08cm/gの範囲内、0.035cm/g~0.07cm/gの範囲内、0.04cm/g~0.06cm/gの範囲内を例示できる。
【0022】
さて、径が100nm以下である孔の体積が0.025cm/g以上である本発明のシリコン材料を製造するには、Na-Si合金からのNa離脱反応を、なるべく低温で行うのが好ましい。
【0023】
本発明者が、Na-Si合金からNaを蒸気として離脱させるシリコンクラスレートIIの効率的な製造方法についての検討を行ったところ、Naの蒸気を反応系内でトラップすることを想起した。Naの蒸気を反応系内でトラップすることに因り、反応系内におけるNaの分圧が低下して所望の反応速度の増加が想定されることに加えて、強い減圧条件を必要としないことが想定される。しかも、系外に排出されるNaの量を著しく削減できると考えられるため、Naをトラップするための特別な装置に要する費用が削減可能となる。
【0024】
そして、本発明者が、Naと反応し得る材料(本明細書において、「Naゲッター剤」と称する。)、及び、Na-Si合金が共存する環境下で実験を行ったところ、弱い減圧条件下であっても所望の反応が進行したこと、系外に排出されるNaの量を削減できたこと、かつ、シリコンクラスレートIIを優先的に製造できたことを知見した。
かかるNaゲッター剤を使用するシリコンクラスレートIIの製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」ということがある。)においては、所望の反応を比較的低温で進行させることができるため、本発明のシリコン材料の製造に有利である。
【0025】
本発明の製造方法の一態様は、Na及びSiを含有するNa-Si合金とNaゲッター剤とが非接触で共存する反応系内において、前記Na-Si合金を加熱することで、前記Na-Si合金から気化したNaを前記Naゲッター剤と反応させて、前記Na-Si合金におけるNa量を減少させることを特徴とする。
【0026】
本発明の製造方法の技術的意義は、以下の反応式における気体状のNa(g)を、系内に存在するNaゲッター剤で捕捉することで、以下の反応式を右側に有利に進行させることにある。また、本発明の製造方法においては、比較的低いNa分圧条件にて反応が進行するため、シリコンクラスレートIの生成が抑制され、シリコンクラスレートIIが優先的に製造されるとの利点もある。
Na-Si合金 ←→ シリコンクラスレートII + Na(g)
【0027】
Na-Si合金は、Na及びSiの組成がNaSi136(24<y)で表されるものである。Na-Si合金としては、SiよりもNaが過剰に存在するもの、すなわち、Na及びSiの組成がNaSi(1<z)で表されるものを使用するのが好ましい。
Na-Si合金を製造するには、不活性ガス雰囲気下、Na及びSiを溶融して合金化すればよい。
【0028】
Na-Si合金には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、Na及びSi以外の他の元素が存在してもよい。他の元素としては、シリコンクラスレートIIにおいて、Naと置換可能なLi、K、Rb、Cs及びBa、並びに、Siと置換可能なGa及びGeを例示できる。
【0029】
Naゲッター剤とは、0価のNaと反応し得る材料を意味する。本発明の製造方法の技術的意義に鑑みると、Naゲッター剤とは、0価のNaと反応し得る材料であって、金属Naの蒸気圧よりも蒸気圧が低い材料を意味する。
Naと反応しやすい優れたNaゲッター剤を使用することで、本発明の製造方法における加熱温度を低くすることが可能であるし、また、減圧条件を穏やかにすることも可能となる。
【0030】
Naゲッター剤としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属以外の金属酸化物、アルカリ金属及びアルカリ土類金属以外の金属硫化物、アルカリ金属及びアルカリ土類金属以外の金属ハロゲン化物を例示できる。
【0031】
具体的なNaゲッター剤としては、WO、WO、MoO、ZnO、FeO、Fe、VO、V、TiO、SiO、SiO、Al、WS、MoS、ZnS、FeS、TiS、SiS、Alを例示でき、その中でも、WO、MoO、ZnO、FeO、V、TiO、SiO及びAlから選択されるものが好ましく、WO、MoO、FeO及びTiOから選択されるものがより好ましい。
【0032】
好適なNaゲッター剤は、Naの分圧が低い条件下であっても、Naとの反応を進行し得る。系内におけるNaとNaゲッター剤とのモル比を概ね1:1とし、系内の温度を350℃とした条件において、以下の反応式が平衡状態に達した時点でのNa分圧を、表1に示す。
Na(g) + Naゲッター剤 ←→ 生成物
【0033】
【表1】
【0034】
Naゲッター剤の使用量は、Na-Si合金に含まれるNaの量に応じて、適宜決定すればよい。Naゲッター剤としては、1種類のものを使用してもよいし、複数のものを併用してもよい。
【0035】
本発明の製造方法においては、Naゲッター剤を用いることで、従来のシリコンクラスレートIIの製造方法と比較して、弱い減圧条件下であっても所望の反応が進行可能であるし、また、低い加熱温度であっても所望の反応が進行可能となる。
【0036】
減圧条件下における気圧Pとしては、P<10Pa、P≦10Pa、P≦10Pa、P≦10Pa、P≦10Paを例示できる。従来のシリコンクラスレートIIの製造方法と比較した場合の有利な気圧Pとしては、10-2Pa<P<10Pa、10-1Pa≦P≦10Pa、10Pa<P≦10Paを例示できる。
【0037】
加熱温度tは、減圧条件によっても左右するが、100℃≦t≦450℃、150℃≦t≦400℃、200℃≦t≦350℃、250℃≦t≦300℃を例示できる。加熱温度tが低い場合には、気圧Pを低くする必要がある。
加熱温度tが400℃以下であるのが好ましい。加熱温度tが400℃以下であれば、ダイヤモンド構造のSi結晶の生成を抑制することができるし、好適な物性のシリコン材料を得ることもできるからである。
【0038】
本発明の製造方法においては、NaをNaゲッター剤と反応させてNa-Si合金におけるNa量を減少させるとの工程を、単一の工程として実施して、シリコンクラスレートIIを製造してもよいし、また、上記の工程で得られたシリコンクラスレートIIと新たなNaゲッター剤とを非接触で共存させて、シリコンクラスレートIIを加熱することで、Na量が減少されたシリコンクラスレートIIを製造してもよい。
【0039】
以上の事項から、本発明の製造方法の他の態様として、以下の製造方法を把握できる。
【0040】
本発明の製造方法の他の態様は、組成式Nax1Si136で表されるシリコンクラスレートIIとNaゲッター剤とが非接触で共存する反応系内において、前記シリコンクラスレートIIを加熱することで、前記シリコンクラスレートIIから気化したNaを前記Naゲッター剤と反応させて、前記シリコンクラスレートIIにおけるNa量を減少させることを特徴とする組成式Nax2Si136で表されるシリコンクラスレートIIの製造方法。
ただし、x1及びx2は、0<x1≦24、0≦x2≦10、及び、x2<x1を満足する。
【0041】
本発明の製造方法を経て製造されたシリコンクラスレートIIを含有するシリコン材料には、NaやNaOHなどが付着し得るため、その除去のために、シリコン材料を水で洗浄する洗浄工程を実施するのが好ましい。
シリコン材料を水で洗浄することで、シリコン材料の表面が部分的に酸化されて、シリコン材料に酸素が導入されることも期待できる。酸素が導入されたシリコン材料は、安定性の向上や、負極活物質としての性能の向上が期待される。
【0042】
洗浄工程で用いる水としては、NaやNaOHなどが溶けやすい点から、酸性の水溶液を用いるのが好ましい。酸性の水溶液における酸の濃度としては、0.1~10質量%が好ましく、0.5~5質量%がより好ましく、1~4質量%がさらに好ましい。
【0043】
洗浄工程後には、濾過及び乾燥にてシリコン材料から水を除去することが好ましい。
【0044】
シリコン材料は、粉砕や分級を経て、一定の粒度分布の粉末とするのがよい。
シリコン材料の好ましい平均粒子径としては、1~30μmの範囲内が好ましく、2~20μmの範囲内がより好ましく、3~15μmの範囲内がさらに好ましい。なお、平均粒子径は、一般的なレーザー回折式粒度分布測定装置で試料を測定した場合のD50を意味する。
【0045】
リチウムイオン二次電池は、正極、負極、電解液及びセパレータ、又は、正極、負極及び固体電解質を具備する。本発明のシリコン材料を含む本発明の負極活物質は、負極に具備される。炭素などの導電性の材料で表面を被覆した本発明のシリコン材料を、本発明の負極活物質として採用してもよい。
本発明の負極活物質以外のリチウムイオン二次電池の構成要素としては、公知のものを、適宜適切に採用すればよい。
【0046】
本発明の負極活物質を備える負極は、充電時の膨張の程度が抑制されている。そのため、本発明の負極活物質を備えるリチウムイオン二次電池においては、正極-セパレータ-負極とのセル構成、又は、正極-固体電解質-負極とのセル構成の厚み方向の拘束圧を、低減することが可能である。また、本発明の負極活物質を備えるリチウムイオン二次電池においては、寿命の向上が期待される。
一般に、固体電解質を用いる固体型リチウムイオン二次電池の拘束圧は高いため、本発明の負極活物質を備えるリチウムイオン二次電池の拘束圧低減の効果は、固体型リチウムイオン二次電池において、効果的に奏される。
【0047】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【実施例
【0048】
以下に、製造例、実施例および比較例などを示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0049】
(製造例1)
・Na-Si合金の製造工程
不活性ガス雰囲気下、Na及びSiを溶融し、冷却して、Na-Si合金を製造した。当該Na-Si合金においては、Siに対するNaの組成比がやや高い。
【0050】
・シリコンクラスレートIIの製造工程
ステンレス製の反応容器内部の底に、Naゲッター剤として1質量部のSiO粉末を配置した。ステンレス製の反応容器内部の底に台座を設けて、台座の上部にステンレス製の坩堝を配置した。当該坩堝内に1質量部のNa-Si合金を配置した。
ステンレス製の反応容器にステンレス製の蓋をして、これらを真空炉内に配置した。なお、ステンレス製の反応容器とステンレス製の蓋との隙間から、反応容器内部の気体は排出可能である。
真空炉内を10Paまで減圧し、350℃で12時間加熱することで、シリコンクラスレートIIを含有するシリコン材料を合成した。
【0051】
真空炉内を室温まで冷却し、坩堝からシリコンクラスレートIIを含有するシリコン材料を回収した。また、反応容器内部の底に存在する、Naゲッター剤とNaの反応物も回収した。なお、真空炉内部や反応容器内部に金属Naの析出は観察されなかった。
シリコン材料を3質量%の塩酸に投入して、撹拌することで、洗浄を行った。洗浄後のシリコン材料を濾過にて分離し、80℃で減圧乾燥することで、シリコンクラスレートIIを含有する製造例1のシリコン材料を製造した。
【0052】
(評価例1)
シリコンクラスレートIIを含有する製造例1のシリコン材料、及び、Naゲッター剤とNaの反応物につき、粉末X線回折装置にて、X線回折測定を行った。
製造例1のシリコン材料のX線回折チャート、並びに、シリコンクラスレートI及びシリコンクラスレートIIのX線回折チャートを、図1に示す。また、Naゲッター剤とNaの反応物のX線回折チャート、並びに、ダイヤモンド構造であるSi結晶及びNaSiO結晶のX線回折チャートを図2に示す。
【0053】
図1から、製造例1のシリコン材料の主成分はシリコンクラスレートIIであることがわかる。また、図2から、Naゲッター剤としてのSiOがNaと反応してNaSiOに変化したことがわかる。
【0054】
(製造例2)
シリコンクラスレートIIの製造工程におけるシリコン材料の合成工程を、以下のとおり、2段階工程としたこと以外は、製造例1と同様の方法で、シリコンクラスレートIIを含有する製造例2のシリコン材料を製造した。
【0055】
・シリコンクラスレートIIを含有するシリコン材料の合成(1段階工程)
ステンレス製の反応容器内部の底に、Naゲッター剤として1質量部のSiO粉末を配置した。ステンレス製の反応容器内部の底に台座を設けて、台座の上部にステンレス製の坩堝を配置した。当該坩堝内に1質量部のNa-Si合金を配置した。ステンレス製の反応容器にステンレス製の蓋をして、これらを真空炉内に配置した。真空炉内を10Paまで減圧し、350℃で12時間加熱することで、シリコンクラスレートIIを含有するシリコン材料を合成した。
真空炉内を室温まで冷却し、坩堝からシリコンクラスレートIIを含有するシリコン材料を回収した。
【0056】
・シリコンクラスレートIIを含有するシリコン材料の合成(2段階工程)
別のステンレス製の反応容器内部の底に、Naゲッター剤として1質量部のSiO粉末を配置した。当該ステンレス製の反応容器内部の底に台座を設けて、台座の上部にステンレス製の坩堝を配置した。当該坩堝内に回収した1質量部のシリコン材料を配置した。ステンレス製の反応容器にステンレス製の蓋をして、これらを真空炉内に配置した。真空炉内を10Paまで減圧し、350℃で6時間加熱することで、シリコンクラスレートIIを含有するシリコン材料を合成した。
【0057】
(製造例3)
シリコンクラスレートIIの製造工程におけるシリコン材料の合成工程のうち、2段階工程の温度を400℃としたこと以外は、製造例2と同様の方法で、シリコンクラスレートIIを含有する製造例3のシリコン材料を製造した。
【0058】
(製造例4)
シリコンクラスレートIIの製造工程におけるシリコン材料の合成工程のうち、2段階工程の温度を400℃とし、加熱時間を12時間としたこと以外は、製造例2と同様の方法で、シリコンクラスレートIIを含有する製造例4のシリコン材料を製造した。
【0059】
(製造例5)
シリコンクラスレートIIの製造工程におけるシリコン材料の合成工程のうち、2段階工程の温度を450℃としたこと以外は、製造例2と同様の方法で、シリコンクラスレートIIを含有する製造例5のシリコン材料を製造した。
【0060】
(評価例2)
シリコンクラスレートIIを含有する製造例1~製造例5のシリコン材料につき、粉末X線回折装置にて、X線回折測定を行った。なお、製造例1のシリコン材料におけるシリコンクラスレートIIは、実質的に、製造例2~製造例5のシリコン材料の製造工程における1段階工程で合成された、シリコンクラスレートIIに相当する。
【0061】
製造例2、製造例3及び製造例5のシリコン材料のX線回折チャートを、図3に示す。図3において、三角形で示したピークはシリコンクラスレートIIに由来するものであり、四角形で示したピークはシリコンクラスレートIに由来するものであり、×で示したピークはダイヤモンド構造であるSi結晶に由来するものである。
【0062】
図3から、製造例2、製造例3及び製造例5のシリコン材料はいずれもシリコンクラスレートIIを主成分とするものであることがわかる。また、加熱温度が450℃である製造例5のシリコン材料には、ダイヤモンド構造であるSi結晶が存在することがわかる。
【0063】
以上の結果から、加熱温度が450℃である製造例5のシリコン材料の合成条件においては、Na分圧が比較的高いため、中間体としてのシリコンクラスレートIの生成割合が比較的高くなったと考えられる。そして、中間体としてのシリコンクラスレートIからNaが除去されるに従い、シリコンクラスレートIがSi結晶に変化したと考えられる。
他方、加熱温度が400℃以下である製造例2及び製造例3のシリコン材料の合成条件においては、Na分圧が比較的低いため、中間体としてのシリコンクラスレートIの生成割合が比較的低くなり、シリコンクラスレートIIが優先的に製造されたと考えられる。
【0064】
また、製造例1~製造例5のシリコン材料の各X線回折チャートにおいて、シリコンクラスレートIIの(311)に由来するピーク強度と(511)に由来するピーク強度から、シリコンクラスレートIIの組成式NaSi136におけるxの値をそれぞれ算出した。なお、シリコンクラスレートIIの組成式NaSi136におけるxの値は、(311)に由来するピーク強度に対する(511)に由来するピーク強度の比の値と相関関係にある。
結果を表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
表2から、加熱温度が高いほど、また、加熱時間が長いほど、製造されるシリコンクラスレートIIの組成式NaSi136におけるxの値が低くなることがわかる。
【0067】
(製造例6)
シリコンクラスレートIIの製造工程におけるシリコン材料の合成工程を、以下のとおりとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で、シリコンクラスレートIIを含有する製造例6のシリコン材料を製造した。
【0068】
ステンレス製の反応容器内部の底に、Naゲッター剤としてMoO粉末を配置した。ステンレス製の反応容器内部の底に台座を設けて、台座の上部にステンレス製の坩堝を配置した。当該坩堝内にNa-Si合金を配置した。Na-Si合金におけるNaのモルとNaゲッター剤のモルの比は、4:6であった。
ステンレス製の反応容器にステンレス製の蓋をして、これらを真空炉内に配置した。
真空炉内を10Paまで減圧し、280℃で40時間加熱することで、シリコンクラスレートIIを含有するシリコン材料を合成した。
【0069】
(製造例7)
加熱温度を330℃とし、加熱時間を20時間としたこと以外は、製造例6と同様の方法で、シリコンクラスレートIIを含有する製造例7のシリコン材料を製造した。
【0070】
(製造例8)
Naゲッター剤としてFeO粉末を用いたこと以外は、製造例6と同様の方法で、シリコンクラスレートIIを含有する製造例8のシリコン材料を製造した。
【0071】
(製造例9)
加熱温度を330℃とし、加熱時間を20時間としたこと以外は、製造例8と同様の方法で、シリコンクラスレートIIを含有する製造例9のシリコン材料を製造した。
【0072】
(製造例10)
加熱温度を380℃とし、加熱時間を20時間としたこと以外は、製造例8と同様の方法で、シリコンクラスレートIIを含有する製造例10のシリコン材料を製造した。
【0073】
(製造例11)
加熱温度を430℃とし、加熱時間を6時間としたこと以外は、製造例8と同様の方法で、シリコンクラスレートIIを含有する製造例11のシリコン材料を製造した。
【0074】
(製造例12)
Naゲッター剤としてSiO粉末を用いたこと以外は、製造例6と同様の方法で、シリコンクラスレートIIを含有する製造例12のシリコン材料を製造した。
【0075】
(製造例13)
シリコンクラスレートIIの製造工程におけるシリコン材料の合成工程を、以下のとおり、2段階工程としたこと以外は、製造例12と同様の方法で、シリコンクラスレートIIを含有する製造例13のシリコン材料を製造した。
【0076】
・シリコンクラスレートIIを含有するシリコン材料の合成(1段階工程)
ステンレス製の反応容器内部の底に、Naゲッター剤としてSiO粉末を配置した。ステンレス製の反応容器内部の底に台座を設けて、台座の上部にステンレス製の坩堝を配置した。当該坩堝内にNa-Si合金を配置した。Na-Si合金におけるNaのモルとNaゲッター剤のモルの比は、4:6であった。
ステンレス製の反応容器にステンレス製の蓋をして、これらを真空炉内に配置した。真空炉内を10Paまで減圧し、280℃で40時間加熱することで、シリコンクラスレートIIを含有するシリコン材料を合成した。
真空炉内を室温まで冷却し、坩堝からシリコンクラスレートIIを含有するシリコン材料を回収した。
【0077】
・シリコンクラスレートIIを含有するシリコン材料の合成(2段階工程)
別のステンレス製の反応容器内部の底に、Naゲッター剤としてSiO粉末を配置した。当該ステンレス製の反応容器内部の底に台座を設けて、台座の上部にステンレス製の坩堝を配置した。当該坩堝内に回収したシリコン材料を配置した。回収したシリコン材料に含まれるNaのモルとNaゲッター剤のモルの比は、4:6であった。
ステンレス製の反応容器にステンレス製の蓋をして、これらを真空炉内に配置した。真空炉内を10Paまで減圧し、330℃で20時間加熱することで、シリコンクラスレートIIを含有するシリコン材料を合成した。
【0078】
(製造例14)
シリコンクラスレートIIの製造工程におけるシリコン材料の合成工程のうち、2段階工程の温度を380℃としたこと以外は、製造例13と同様の方法で、シリコンクラスレートIIを含有する製造例14のシリコン材料を製造した。
【0079】
(製造例15)
シリコンクラスレートIIの製造工程におけるシリコン材料の合成工程のうち、2段階工程の温度を480℃とし、加熱時間を6時間としたこと以外は、製造例13と同様の方法で、シリコンクラスレートIIを含有する製造例15のシリコン材料を製造した。
【0080】
(比較製造例1)
シリコンクラスレートIIの製造工程におけるシリコン材料の合成工程を、以下のとおりとしたこと以外は、製造例1と同様の方法で、比較製造例1のシリコン材料を製造した。
【0081】
ステンレス製の反応容器内部の底にNa-Si合金を配置した。これを真空炉内に配置した。真空炉内を10Paまで減圧し、280℃で40時間加熱することで、シリコン材料を合成した。真空炉内を室温まで冷却し、シリコン材料を回収した。
【0082】
(比較製造例2)
シリコン材料の合成工程を、以下のとおり、2段階工程としたこと以外は、比較製造例1と同様の方法で、比較製造例2のシリコン材料を製造した。
【0083】
・シリコン材料の合成(1段階工程)
ステンレス製の反応容器内部の底にNa-Si合金を配置した。これを真空炉内に配置した。真空炉内を10Paまで減圧し、280℃で40時間加熱することで、シリコン材料を合成した。真空炉内を室温まで冷却し、シリコン材料を回収した。
【0084】
・シリコン材料の合成(2段階工程)
別のステンレス製の反応容器内部の底に、回収したシリコン材料を配置した。これらを真空炉内に配置した。真空炉内を10Paまで減圧し、380℃で20時間加熱することで、シリコンクラスレートIIを含有するシリコン材料を合成した。
【0085】
(比較製造例3)
シリコン材料の合成工程のうち、2段階工程の温度を480℃とし、加熱時間を6時間としたこと以外は、比較製造例2と同様の方法で、比較製造例3のシリコン材料を製造した。
【0086】
(評価例3)
シリコンクラスレートIIを含有する製造例6~製造例15のシリコン材料、及び、比較製造例1~比較製造例3のシリコン材料につき、粉末X線回折装置にて、X線回折測定を行った。
その結果、製造例6~製造例15のシリコン材料、及び、比較製造例2~比較製造例3のシリコン材料には、シリコンクラスレートIIが含有されることが裏付けられた。しかしながら、比較製造例1のシリコン材料からは、シリコンクラスレートIIに由来するピークが検出されなかった。比較製造例1の製造条件では、シリコンクラスレートIIが製造できなかったことが判明した。
【0087】
また、製造例6~製造例15のシリコン材料、及び、比較製造例2~比較製造例3のシリコン材料の各X線回折チャートにおいて、シリコンクラスレートIIの(311)に由来するピーク強度と(511)に由来するピーク強度から、シリコンクラスレートIIの組成式NaSi136におけるxの値をそれぞれ算出した。
以上の結果を、表3に示す。
【0088】
【表3】
【0089】
表3から、Naゲッター剤を使用した合成条件においては、Na-Si合金からのNaの除去が円滑に進行するといえる。また、Naゲッター剤の種類に因り、反応速度に差が生じるといえる。
Naゲッター剤を使用することで、より低温での反応が進行可能であり、かつ、より短時間での反応が進行可能であるといえる。
【0090】
(評価例4)
JIS Z 8831に準ずるガス吸着法を用いて、製造例6、製造例10、製造例11及び比較製造例3のシリコン材料を分析した。結果を表4に示す。表4における空孔体積とは、径が100nm以下である孔の体積を意味する。
【0091】
【表4】
【0092】
表4から、合成条件における加熱温度が低いほど、径が100nm以下である孔の体積が大きくなるといえる。本発明のシリコン材料を製造するには、加熱温度が低い製造方法が好適といえる。
【0093】
(実施例1)
製造例10のシリコン材料を用いて、以下のとおり、実施例1の固体型リチウムイオン二次電池を製造した。
【0094】
固体電解質原料である0.75LiS-0.25P粒子0.4g、負極活物質である平均粒子径が1μmの製造例10のシリコン材料0.8g、導電材である気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber)0.06g、及び、結着剤であるPVDF系樹脂の5質量%酪酸ブチル溶液0.32gをポリプロピレン製容器に添加した。当該容器を超音波分散装置中で30秒間超音波処理後、振とう器を用いて30分間振とう処理することで、相対的に負極活物質含有量が多い負極合材用原料Aを調製した。
固体電解質原料である0.75LiS-0.25P粒子0.7g、負極活物質原料である平均粒子径が3μmのSi単体粒子0.6g、導電材である気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber)0.06g、及び、結着剤であるPVDF系樹脂の5質量%酪酸ブチル溶液0.24gをポリプロピレン製容器に添加した。当該容器を超音波分散装置中で30秒間超音波処理後、振とう器を用いて30分間振とう処理することで、相対的に負極活物質含有量が少ない負極合材用原料Bを調製した。
このように準備した負極活物質含有量が多い負極合材用原料Aを、アプリケーターを使用するブレード法により、集電体である銅箔上に塗工し、60分間自然乾燥した。
続いて、自然乾燥した負極合材用原料Aの表面に、負極活物質含有量が少ない負極合材用原料Bを、アプリケーターを使用するブレード法により塗工し、60分間自然乾燥し負極前駆体を得た。
このように得られた負極前駆体を、100℃に調整したホットプレート上で30分間乾燥して、負極を製造した。
【0095】
固体電解質原料である0.75LiS-0.25P粒子0.3g、正極活物質原料であるLiNi1/3Co1/3Mn1/3粒子2g、導電材である気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber)0.03g、及び、結着剤であるPVDF系樹脂の5質量%酪酸ブチル溶液0.3gをポリプロピレン製容器に添加した。当該容器を超音波分散装置中で30秒間超音波処理後、振とう器を用いて30分間振とう処理することで、正極合材用原料を調製した。
このように準備した正極合材用原料を、アプリケーターを使用するブレード法により、集電体であるアルミニウム箔上に塗工し、60分間自然乾燥し正極前駆体を得た。
このように得られた正極前駆体を、100℃に調整したホットプレート上で30分間乾燥して、正極を製造した。
【0096】
固体電解質原料であり平均粒子径が2μmである0.75LiS-0.25Pを0.4g、並びに、結着剤であるABR系樹脂の5質量%ヘプタン溶液0.05gをポリプロピレン製容器に添加した。当該容器を超音波分散装置中で30秒間超音波処理後、振とう器を用いて30分間振とう処理することで、固体電解質材料部用ペーストを調製した。
このように準備した固体電解質材料部用ペーストを、アプリケーターを使用するブレード法により、基盤であるAl箔上に塗工し、100℃に調整したホットプレート上で30分間乾燥することにより固体電解質層を得た。
【0097】
上述の負極、固体電解質層、正極をこの順番で接するように積層した。この負極-固体電解質層-正極積層体に対して、130℃で200MPaの圧力を3分間印加し、実施例1の固体型リチウムイオン二次電池を得た。
【0098】
(比較例1)
負極活物質として比較製造例3のシリコン材料を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1の固体型リチウムイオン二次電池を製造した。
【0099】
(参考例1)
負極活物質としてダイヤモンド構造を示すSi結晶粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、参考例1の固体型リチウムイオン二次電池を製造した。
【0100】
(評価例5)
実施例1の固体型リチウムイオン二次電池を所定の圧力で拘束し、0.1Cで所定の電圧まで定電流で通電し初回充電を行った。
初回充電において、電池の拘束圧力をモニタリングし、充電状態における拘束圧力を測定した。
比較例1及び参考例1の固体型リチウムイオン二次電池についても同様の試験を行った。
参考例1の固体型リチウムイオン二次電池にて測定された最大拘束圧力を基準とした、実施例1及び比較例1の固体型リチウムイオン二次電池にて測定された最大拘束圧力の割合を算出した。
結果を表5に示す。
【0101】
【表5】
【0102】
表5から、負極活物質としてシリコンクラスレートIIを含有するシリコン材料を用いた実施例1及び比較例1の固体型リチウムイオン二次電池における拘束圧力は、いずれも、負極活物質としてSi結晶粉末を用いた参考例1の固体型リチウムイオン二次電池における拘束圧力よりも、低減していることがわかる。さらに、シリコンクラスレートIIを含有するシリコン材料において、径が100nm以下である孔の体積が大きいものであれば、拘束圧力の低減率が高いことがわかる。
以上の結果から、本発明のシリコン材料を負極活物質として用いることで、充電時の負極の膨張を効果的に抑制できるといえる。
図1
図2
図3