(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】炭素数9以上の芳香族化合物類の選択的水素化脱アルキル化を達成しつつ、混合プラスチック熱分解からの熱分解油の脱塩化水素と水素化クラッキングを同時に行う方法
(51)【国際特許分類】
C10G 47/00 20060101AFI20220111BHJP
C10G 47/12 20060101ALI20220111BHJP
C10G 9/36 20060101ALI20220111BHJP
C10G 1/10 20060101ALI20220111BHJP
C08J 11/16 20060101ALI20220111BHJP
B01J 27/051 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C10G47/00 ZAB
C10G47/12
C10G9/36
C10G1/10
C08J11/16
B01J27/051 M
(21)【出願番号】P 2019501718
(86)(22)【出願日】2017-06-08
(86)【国際出願番号】 IB2017053407
(87)【国際公開番号】W WO2018011642
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-06-01
(32)【優先日】2016-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ナラヤナズワミー,ラビチャンダー
(72)【発明者】
【氏名】ラママーシー,クリシュナ・クマール
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-514726(JP,A)
【文献】特表2009-545548(JP,A)
【文献】特表平08-508520(JP,A)
【文献】特表2014-508109(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0141724(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素流を水素化脱アルキル化する方法であって、
(a)炭素数9以上の芳香族炭化水素類および一種または二種以上の塩化物化合物
類を含む前記炭化水素流を水素の存在下に水素化処理反応器中で水素化処理触媒と接触させて炭化水素生成物を得る工程;および
(b)処理された炭化水素流を前記炭化水素生成物から回収する工程であって、前記処理された炭化水素流が炭素数9以上の芳香族炭化水素類を含み、前記処理された炭化水素流中の炭素数9以上の芳香族炭化水素類の量が、前記接触する工程(a)中における前記炭化水素流からの炭素数9以上の芳香族炭化水素類の少なくとも一部の水素化脱アルキル化により、前記炭化水素流中の炭素数9以上の芳香族炭化水素類の量より少ない工程、を含み、
前記炭化水素流を水素化処理触媒と接触させる前記工程(a)が、
(i)260℃~350℃の温度;
(ii)10barg~45bargの圧力;
(iii)0.1/時~10/時の重量空間速度;および
(iv)200NL/L~800NL/Lの水素対炭化水素比で行われ、
前記水素化処理触媒が、本来の場所でおよび/または本来以外の場所で前記水素化処理触媒を硫化物類および塩化物類を含む流れと接触させることにより活性化され、
前記水素化処理触媒が、同時の脱塩化水素、水素化クラッキングおよび水素化脱アルキル化のために活性化され、
前記炭化水素流は、前記炭化水素流の塩化物含有量が前記炭化水素流の合計重量を基準として10ppm以上になる量の、一種または二種以上の塩化物化合物類が前記炭化水素流に含まれるおよび/または添加され、
前記処理された炭化水素流は、さらに、前記処理された炭化水素流の塩化物含有量が前記処理された炭化水素流の合計重量を基準として10ppm未満になる量の、一種または二種以上の塩化物化合物
類を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記水素化処理触媒が、アルミナ担体上のコバルトおよびモリブデン、アルミナ担体上のニッケルおよびモリブデン、アルミナ担体上のタングステンおよびモリブデン、アルミナ担体上の白金およびパラジウム、硫化ニッケル、アルミナ担体上の硫化ニッケル、硫化モリブデン、アルミナ担体上の硫化モリブデン、硫化ニッケルおよび硫化モリブデン、アルミナ担体上の硫化ニッケルおよび硫化モリブデン、コバルトおよびモリブデンの酸化物、アルミナ支持体上のコバルトおよびモリブデンの酸化物またはそれらの組み合わせを含む請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記炭化水素流を水素化処理触媒に接触させる前記工程(a)が、さらに、前記炭化水素流に含まれるおよび/または添加された一種または二種以上の硫化物類を前記水素化処理触媒に接触させることを含
む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記炭化水素流は、前記炭化水素流の硫黄含有量が、前記炭化水素流の合計重量を基準とし
て0.05重量%
~5重量%になるのに有効な量で、一種または二種以上の硫化物類が前記炭化水素流に含まれるおよび/または添加されている請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記処理された炭化水素流は、前記処理された炭化水素流の塩化物含有量が前記処理された炭化水素流の合計重量を基準とし
て10ppm未満になる量の、一種または二種以上の塩化物化合物類を含む請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記炭化水素流は、さらに、前記炭化水素流の塩化物含有量が、前記炭化水素流の合計重量を基準とし
て200ppm以上になる量の、一種または二種以上の塩化物化合物類を含む請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記処理された炭化水素流は、さらに、前記処理された炭化水素流の合計重量を基準として10ppm未満の一種または二種以上の塩化物化合物類を含み、
前記方法が、さらに、前記処理された炭化水素流をスチームクラッカーに供給することを含む請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記処理された炭化水素流
が370℃未満の沸点終点を特徴とする請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
処理された炭化水素流を前記炭化水素生成物から回収する前記工程(b)が、
(i)処理された生成物を分離器内において硫黄および塩素含有ガスから分離する工程;および、
(ii)前記処理された炭化水素流中の前記処理された生成物を前記分離器から流出させる工程を含む請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
処理された炭化水素流を前記炭化水素生成物から回収する前記工程(b)が、(i)中間の処理された生成物を分離器内において硫黄および塩素含有ガスから分離する工程;(ii)中間の処理された炭化水素流中の前記中間の処理された生成物を前記分離器から蒸留塔へ流出させて
、370℃未満の沸点終点を特徴とする処理された炭化水素流およ
び370℃以上の沸点終点を特徴とする重質の処理された炭化水素流を生成する工程;(iii)前記処理された炭化水素流の少なくとも一部をスチームクラッカーに供給する工程;および、(iv)前記重質の処理された炭化水素流の少なくとも一部を前記水素化処理反応器に炭化水素流として再循環させる工程を含む請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
前記炭化水素流が、炭素数6~8の芳香族炭化水素類を含み、
前記処理された炭化水素流が、炭素数6~8の芳香族炭化水素類を含み、
前記処理された炭化水素流中の炭素数6~8の芳香族炭化水素類の量が、工程(a)中における前記炭化水素流からの炭素数9以上の芳香族炭化水素類の少なくとも一部の水素化脱アルキル化により、前記炭化水素流中の炭素数6~8の芳香族炭化水素類の量より多いことを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項12】
工程(a)中に水素化脱アルキル化される炭素数9以上の芳香族炭化水素類の前記少なくとも一部が、前記炭化水素流中の炭素数9以上の芳香族炭化水素類
の5重量%以上である請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
前記炭化水素流が、プラスチック熱分解油、タイヤ熱分解油、石油起源流、石油精製流、熱分解ガソリン、アルキル芳香族含有流、またはそれらの組み合わせを含む請求項
1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、脱塩素化、クラッキングおよび脱アルキル化を同時に含むプロセスを介する炭化水素流の処理に関する。
【背景技術】
【0002】
廃プラスチックは、ポリ塩化ビニル(PVC)および/またはポリ塩化ビニリデン(PVDC)を含むことがある。熱分解プロセスを通じて、廃プラスチックを気体および液体生成物に変換することができる。これらの液体生成物(たとえば、熱分解油)は、パラフィン類、イソパラフィン類、オレフィン類、ナフテン類、および芳香族類成分を、数百ppmの濃度の有機塩化物と一緒に含みうる。典型的には、熱分解油の沸点終点は、典型的なディーゼル留分沸点終点よりもはるかに高くなりうる。熱分解油をスチームクラッカーに供給するために、熱分解油供給原料を非常に低い塩素濃度を達成するように脱塩素化し、供給原料中のオレフィンを飽和させ、プロセス中においてありうる汚染および腐食を回避するのに充分に低い沸点終点を有することが必要である。さらに、スチームクラッカー用の供給原料中の炭素数9以上の芳香族炭化水素類が、供給原料中の単環芳香族化合物類を維持しながら、炭素数6~8の芳香族炭化水素類(たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン類、エチルベンゼンなど)および/または飽和供給原料に変換されれば、好ましいであろう。すなわち、廃プラスチックから誘導された炭化水素供給原料を、特定のスチームクラッカー供給要件を満たすように処理する方法を開発することが継続的に必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第8895790号明細書
【文献】米国特許出願第15/085278号明細書
【文献】米国特許出願第15/085311号明細書
【文献】米国特許出願第15/085379号明細書
【文献】米国特許出願第15/085402号明細書
【文献】米国特許出願第15/085445号明細書
【発明の概要】
【0004】
炭素数9以上の芳香族炭化水素類を含有する炭化水素流を水素の存在下に水素化処理触媒と接触させて炭化水素生成物を生成することを含んでなる、炭化水素流の水素化処理のためのプロセスおよびシステムが本明細書で開示される。このプロセスは、炭化水素生成物から、処理された炭化水素流を生成することを含むことができ、ここで、処理された炭化水素流は、炭化水素流における塩化物化合物類の量および炭素数9以上の芳香族炭化水素類の量と比較して、それぞれ、塩化物化合類物の量および炭素数9以上の芳香族炭化水素類の量が減少する。本明細書の開示の目的において、「量」という用語は、特に断りのない限り、特定の組成物の合計重量(たとえば、その特定の組成物中に存在する全成分の合計重量)に基づく、特定の組成物中の所定の成分の重量%を意味する。炭化水素流は、脱塩素化、脱アルキル化およびクラッキングを同時に受ける。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】硫化された水素化処理触媒を用いて炭素数9以上の芳香族炭化水素類の水素化脱アルキル化と塩化物化合物類の脱塩素化とを同時に行う一方、さらに、重質炭化水素分子を水素化クラックし、炭化水素流に含まれるオレフィンを、スチームクラッカーへの導入に適したレベルに水素化する、水素化処理システムの説明図
【発明を実施するための形態】
【0006】
炭化水素流の水素化処理のためのプロセスを、
図1を参照してより詳細に説明する。
図1は、水素化処理触媒(たとえば、硫化された水素化処理触媒)を用いて、炭素数9以上の芳香族炭化水素類を水素化脱アルキル化し、さらに、重質炭化水素分子を水素化クラックし、塩化物化合物類を脱塩素化し、炭化水素流1に含まれるオレフィン類を、スチームクラッカー30への導入に適したレベルまで水素化する、水素化処理システム100を示す。システム100は、水素化処理反応器10、分離器20、任意の精製(polishing)ユニット25およびスチームクラッカー30を含む。炭化水素流1は水素化処理反応器10に供給され、反応生成物流出物が炭化水素生成物流2中において水素化処理反応器10から分離器20に流れる。分離器20では、処理された生成物が炭化水素生成物流2から回収され、処理された炭化水素流4を介して分離器20から流出し、一種または二種以上の硫黄含有ガスおよび/または塩素含有ガスが流3中において分離器20から流出する。水素化処理システムのいくつかの構成では、第二の水素化処理反応器および第二の分離器を分離器20と処理された炭化水素流4との間に配置することが考えられる。そのような構成において、分離器20から流出する処理された生成物は、残留硫黄(S)を含むことがあり、第二の水素化処理反応器/第二の分離器の組み合わせ(たとえば、任意の精製ユニット25)が、分離器20から流出する処理された生成物を処理して、硫黄を完全に除去(たとえば、反応器10と分離器20からの流出物を精製)し、それにより、第二の分離器からの処理された炭化水素流4中における第二の処理された生成物が、処理された炭化水素流4の合計重量を基準に、200、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、または0.1重量ppm未満のSを含むようになる。当業者により認識されるように、および本開示の助けを借りると、処理された炭化水素流4の含有量/組成は、処理された炭化水素流4を精製するために任意の精製ユニット25が使用されるか使用されないかに依存する。炭化水素流4の組成は、本明細書において後でより詳細に説明される。
【0007】
処理された炭化水素流4の処理された生成物が、直接(たとえば、処理された炭化水素流4の分離も分別も無しに)、または混合された炭化水素流4'(たとえば、処理された炭化水素流4および混合された炭化水素流4'の分離も分別も無しに)を介して、スチームクラッカー30に流れ、そこから高価値生成物が生成物流6に流入する。処理された炭化水素流4は非塩素化炭化水素流5と混合されて、混合された炭化水素流4'を生成することができる。
【0008】
炭化水素流1は、一般に、少なくとも一部が、炭素数9以上の芳香族炭化水素類である一種または二種以上の炭化水素類を含む。炭化水素流1は、さらに、一種または二種以上の硫化物類、一種または二種以上の塩化物化合物類、水素、またはそれらの組み合わせを含みうる。炭化水素流1は、通常は液相である。水素化処理反応器10に入る前に、水素流を炭化水素流1に添加することができる。必要に応じて、水素化処理反応器10内の多床配置の様々な触媒床の間に水素流をさらに添加して、反応器内の環境が水素に富むようにする。
【0009】
炭化水素流1は、熱分解プロセスのような上流プロセスの生成物流(たとえば、プラスチック熱分解油)であってもよく、一種または二種以上の塩化物化合物類、および、場合によっては一種または二種以上の硫化物類を含み、それらは、たとえば廃プラスチックの熱分解からのものである。上流プロセスからの生成物流が、本明細書に開示された量で一種または二種以上の硫化物類を含有しない場合、炭化水素流1は、たとえばドーピング流7を介して、一種または二種以上の硫化物類をドープすることができる。
【0010】
炭化水素流1は、プラスチック熱分解油であってよい。炭化水素流1は、本明細書に開示するように、パラフィン類、i-パラフィン類、オレフィン類、ナフテン類、芳香族炭化水素類、塩化物化合物類、硫化物類、またはそれらの組み合わせ、のいずれかを含有する一種または二種以上の熱分解油であってよい。一種または二種以上の熱分解油は、廃プラスチックの熱分解から得ることができる(たとえば、米国特許第8895790号明細書(特許文献1)(その全体が参照として取り込まれる)に開示されるような高過酷度プロセスから、または、当該分野で知られており本明細書の開示の助けを借りる任意の低温過酷度熱分解プロセスから、得ることができる)。いくつかの態様では、プラスチック熱分解油の少なくとも一部は、炭素数9以上の芳香族炭化水素類と同様に重質炭化水素分子(たとえば、熱分解油の重質末端産物とも呼ばれる)を含むと考えられる。炭素数9以上の芳香族炭化水素類の少なくとも一部を水素化脱アルキル化して炭素数6~8の芳香族炭化水素類を提供することに加え、スチームクラッカー30の供給要件を満たすようにプラスチック熱分解油の重質末端産物を水素化クラッキングすることが考慮される。本明細書の開示の目的のために、「重質炭化水素分子」という用語は炭素数9以上の芳香族炭化水素類を排除する。
【0011】
プラスチック廃棄物は、ポリオレフィン類、ポリスチレン類、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)など、またはそれらの組み合わせを含みうる。1つの態様において、プラスチック廃棄物は、プラスチック廃棄物の合計重量を基準として、約400重量ppm、600重量ppm、800重量ppm、1,000重量ppm、またはそれ以上の、PVCおよび/またはPVDCを含んでいてよい。
【0012】
炭化水素流1としては、接触ナフサ改質装置からの改質油流、タイヤ熱分解油、石油起源流、石油精製流、熱分解ガソリン、アルキル芳香族含有流、他の好適な塩化物含有炭化水素流、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。いくつかの態様では、炭化水素流1は、重質油(たとえば、ドーピング流7を介したナフサまたはディーゼル油)と混合された一種または二種以上の熱分解油であってもよい。
【0013】
炭化水素流1に含まれうる一種または二種以上の炭化水素の例には、パラフィン類(n-パラフィン、i-パラフィン、またはその両方)、オレフィン類、ナフテン類、芳香族炭化水素類、またはそれらの組み合わせが含まれる。一種または二種以上の炭化水素が、列挙された全ての炭化水素を含む場合、この炭化水素群は、PONAフィード(パラフィン、オレフィン、ナフテン、芳香族類)またはPIONAフィード(n-パラフィン、i-パラフィン、オレフィン、ナフテン、芳香類族)と総称することができる。
【0014】
任意の芳香族炭化水素が、炭化水素流1に含まれうる。炭化水素流1は、炭素数9以上の芳香族炭化水素類、たとえば、炭素数が9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、およびそれよりも多い芳香族炭化水素類を含むことができる。1つの態様において、芳香族炭化水素類の炭素数は22とすることができる。炭化水素流1の一部としての本開示での使用に適した炭素数9以上の芳香族炭化水素類の非限定的な例としては、プロピルベンゼン類、トリメチルベンゼン類、テトラメチルベンゼン類、ジメチルナフタレン、ビフェニルなど、またはそれらの組み合わせが挙げられる。炭素数9以上の芳香族炭化水素類は、炭化水素流1の合計重量を基準に、約1~約99重量%、あるいは約10重量%~約90重量%、あるいは約25重量%~約75重量%の量で、炭化水素流1中に存在してよい。炭化水素流1が水素化処理反応器10中において水素化処理触媒と接触した場合、炭化水素流1中の炭素数9以上の芳香族炭化水素類の5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、またはそれ以上が水素化脱アルキル化される。
【0015】
炭化水素流1は、さらに、ベンゼン、トルエン、キシレン類、エチルベンゼン、またはそれらの組み合わせのような、炭素数6~8の芳香族炭化水素類を含みうる。炭素数6~8の芳香族炭化水素類は、炭化水素流1の合計重量を基準として約10重量%未満の量で炭化水素流1中に存在してよい。あるいは、炭素数6~8の芳香族炭化水素類は、炭化水素流1の合計重量を基準として、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、またはそれ以上の量で炭化水素流1中に存在してよい。いくつかの態様において、炭化水素流1は炭素数6~8の芳香族炭化水素類を含まず、たとえば、炭化水素流1は実質的に炭素数6~8の芳香族炭化水素類を含まない。
【0016】
任意のパラフィンが炭化水素流1に含まれうる。炭化水素流1に含まれうるパラフィン類の例には、炭素数1~22のn-パラフィン類およびi-パラフィン類が含まれるが、これらに限定されない。パラフィン類は、炭化水素流1の合計重量を基準として10重量%未満の量で炭化水素流1中に存在してよい。あるいは、パラフィン類は、炭化水素流1の合計重量を基準として10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、またはそれ以上の量で炭化水素流1中に存在してよい。特定の炭化水素流は炭素数22までのパラフィン類を含むが、本開示はパラフィン類の好適な範囲の上限としての炭素数22に限定されず、パラフィン類の炭素数は、たとえば、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、およびそれ以上であってよい。いくつかの態様において、炭化水素流1中のパラフィン類の少なくとも一部は、重質炭化水素分子(たとえば、水素化処理反応器10において水素化クラッキングを受ける重質炭化水素分子)の少なくとも一部を含む。
【0017】
任意のオレフィンが炭化水素流1に含まれていてもよい。炭化水素流1に含まれうるオレフィン類の例としては、炭素数2~10のオレフィン類およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。オレフィン類は、炭化水素流1の合計重量を基準として10重量%未満の量で炭化水素流1中に存在してよい。あるいは、オレフィン類は、炭化水素流1の合計重量を基準として、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、またはそれ以上の量で炭化水素流1中に存在してよい。いくつかの態様において、炭化水素流1中の一種または二種以上のオレフィン類の少なくとも一部は記重質炭化水素分子(たとえば、水素化処理反応器10において水素化クラッキングを受ける重質炭化水素分子)の少なくとも一部を含む。特定の炭化水素流には炭素数10までのオレフィン類が含まれるが、本開示はオレフィン類の好適な範囲の上限として炭素数10に限定されず、オレフィン類の炭素数は、たとえば、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、およびそれ以上であってよい。いくつかの態様では、炭化水素流1はオレフィン類を含まず、たとえば、炭化水素流1は実質的にオレフィン類を含まない。
【0018】
任意のナフテンが炭化水素流1に含まれていてもよい。ナフテン類の例には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、およびシクロオクタンが含まれるが、これらに限定されない。ナフテン類は、炭化水素流1の合計重量を基準として10重量%未満の量で炭化水素流1中に存在してよい。あるいは、ナフテン類は、炭化水素流1の合計重量を基準として、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%またはそれ以上の量で炭化水素流1中に存在してよい。特定の炭化水素流は、炭素数8までのナフテン類を含むが、本開示は、ナフテン類の適切な範囲の上限として炭素数8に限定されず、ナフテン類の炭素数は、たとえば、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、およびそれ以上であってよい。いくつかの態様において、炭化水素流1中のナフテン類の少なくとも一部は、重質炭化水素分子(たとえば、水素化処理反応器10において水素化クラッキングを受ける重質炭化水素分子)の少なくとも一部を含む。
【0019】
本明細書で論じるように、本明細書に開示されるプロセスは、分子の、特に炭化水素流1の重質炭化水素分子の、水素化クラッキングを企図している。重質炭化水素分子は、炭化水素流1の合計重量を基準として10重量%未満の量で炭化水素流1中に存在してよい。あるいは、重質炭化水素分子は、炭化水素流1の合計重量を基準として、10重量%~90重量%の量で炭化水素流1中に存在してよい。上記のように、重質炭化水素分子は、パラフィン類、i-パラフィン類、オレフィン類、ナフテン類、またはそれらの組み合わせを含みうる。いくつかの態様では、重質炭化水素分子は、炭素数16以上の炭化水素を含むことができる。炭化水素流1が水素化処理反応器10中において水素化処理触媒と接触すると、炭化水素流1中の重質炭化水素分子の5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、またはそれ以上が、水素化クラッキングされる。当業者によって理解されるように、炭素数9以上の芳香族炭化水素が水素化脱アルキル化反応を受けるが、一部の炭素数9以上の芳香族炭化水素は水素化クラッキングを受けることができる。たとえば、炭化水素流1が水素化処理反応器10中において水素化処理触媒と接触すると、炭化水素流1中の炭素数9以上の芳香族炭化水素の10重量%超が水素化クラッキングされる。
【0020】
炭化水素流1に含まれうる塩化物化合物類には、塩素含有脂肪族炭化水類素、塩素含有芳香族炭化水素類、および他の塩素含有炭化水素類が含まれるが、これらに限定されない。塩素含有炭化水素類の例としては、1-クロロヘキサン(C6H13Cl)、2-クロロペンタン(C5H11Cl)、3-クロロ-3-メチルペンタン(C6H13Cl)(2-クロロエチル)ベンゼン(C8H9Cl)、クロロベンゼン(C6H5Cl)、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。塩化物化合物類は、炭化水素流1の合計重量を基準にして、5ppm、6ppm、7ppm、8ppm、9ppm、10ppm、15ppm、20ppm、30ppm、40ppm、50ppm、100ppm、200ppm、300ppm、400ppm、500ppm、600ppm、700ppm、800ppm、900ppm、1,000ppm、1,100ppm、1,200ppm、1,300ppm、1,400ppm、1,500ppm、1,600ppm、1,700ppm、1,800ppm、1,900ppm、2,000ppm、またはそれ以上の量で炭化水素流1中に存在してよい。
【0021】
炭化水素流1を水素化処理反応器10に導入する前に、一種または二種以上の塩化物化合物類を、たとえば、ドーピング流7を介して、炭化水素流1に添加することができる(たとえば、炭化水素流1に、一種または二種以上の塩化物類を「ドープ」する)。塩化物類の添加後に炭化水素流1の塩化物含有量が炭化水素流1の合計重量を基準として約5ppm以上となるような量で、一種または二種以上の塩化物類を炭化水素流1に添加することができる。
【0022】
炭化水素流1に含まれていてもよい硫化物化合物類または硫化物類としては、硫黄含有化合物類が挙げられる。たとえば、ジメチルジスルフィド(C2H6S2)、ジメチルスルフィド(C2H6S)、メルカプタン類(R-SH)、二硫化炭素(CS2)、硫化水素(H2S)、またはそれらの組み合わせなどの硫化剤を、炭化水素流1中の硫化物として使用することができる。
【0023】
炭化水素流1が水素化処理反応器10に導入される前に、たとえば、ドーピング流7を介して、一種または二種以上の硫化物類(たとえば、ジメチルジスルフィド(C2H6S2)、ジメチルスルフィド(C2H6S)、メルカプタン類(R-SH)、二硫化炭素(CS2)、硫化水素(H2S)、またはそれらの組み合わせ)を炭化水素流1に添加することができる(たとえば、炭化水素流1に一種または二種以上の硫化物類をドープする)。硫化物の添加後に、炭化水素流1の硫黄(S)含有量が、炭化水素流1の合計重量を基準に約0.05重量%、0.1重量%、0.5重量%、1重量%、1.5重量%、2重量%、2.5重量%、3重量%、3.5重量%、4重量%、4.5重量%、5重量%、またはそれ以上となるような量で、一種または二種以上の硫化物類を炭化水素流1に添加することができる。ドーピング流7は、ヘキサデカンおよびジメチルジスルフィドなどのドーピングのために調整された成分をさらに含むことができる。あるいは、ドーピング流7は、硫化物化合物類を既に含有して(または硫化物類が本明細書に開示された硫黄含有量を達成するためにドープされて)おり先に記載の硫黄含有量を達成するように炭化水素流1と混合されている重質油(たとえば、ナフサ、ディーゼル、またはその両方)であってもよい。
【0024】
あるいは、炭化水素流1がそこから流れてくる上流プロセスの結果として、一種または二種以上の硫化物類が炭化水素流1中に存在する。炭化水素流1は、炭化水素流1の硫黄含有量が、硫化物がドーピングされていない状態で、炭化水素流1の合計重量を基準として約0.05重量%、0.1重量%、0.5重量%、1重量%、1.5重量%、2重量%、2.5重量%、3重量%、3.5重量%、4重量%、4.5重量%、5重量%、またはそれ以上となるような量で、一種または二種以上の硫化物類を含むことができる。
【0025】
あるいは、炭化水素流1は、水素化処理反応器10中に含まれる水素化処理触媒(触媒は本明細書で後でより詳しく説明する)を硫化するのに不十分な量(たとえば、5,000、4,000、3,000、2,000、1,000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、5または1ppm未満)で一種または二種以上の硫化物類を含むことができ、炭化水素流1の硫黄含有量が、硫化物添加後に、炭化水素流1の合計重量を基準として、約0.05重量%、0.1重量%、0.5重量%、1重量%、1.5重量%、2重量%、2.5重量%、3重量%、3.5重量%、4重量%、4.5重量%、5重量%またはそれ以上となるように炭化水素流中の一種または二種以上の硫化物類の量を増やすためにドーピング流7が利用される。
【0026】
ドーピング流7を用いて硫化物を添加した後の、または、ドーピング流7を用いた硫化物添加を行っていない、炭化水素流1の硫黄含有量は、炭化水素流1の合計重量を基準として約3重量%までである。
【0027】
炭化水素流1中に存在する硫黄は、スチームクラッカーおよび/または精製ユニットでのプロセスのために許容される低減された硫黄レベルを提供するように、水素化処理反応器10の下流の流れ(たとえば、生成物流2)からH2Sとして除去することができる。
【0028】
水素化処理反応器10は、水素化処理反応器10に供給された炭化水素流1の成分を、水素化脱アルキル化するように、一部の構成では、さらに、水素化クラッキング、脱塩素化、および水素化するように構成されている。水素化反応器10において、炭化水素流1が水素の存在下に水素化処理触媒と接触されて、生成物流2中に炭化水素生成物を生成する。炭化水素流1を、上向き流、下向き流、半径流またはこれらの組合せで、炭化水素流1、ドーピング流7、水素流、またはこれらの組み合わせを段階的に添加して、または添加しないで、水素化処理触媒と接触させることができると考えられる。炭化水素流1の成分は、水素化処理反応器10中に存在するときに、液相、液-気相、または気相でありうるとさらに考えられる。
【0029】
水素化処理反応器10は、水素の存在下または水素を用いた炭化水素流1の成分の適切な反応を促進することができる。水素化処理反応器10中における反応は、炭素数9以上の芳香族炭化水素類の水素化脱アルキル化反応を含み、水素の存在下に炭素数9以上の芳香族炭化水素類がより低い分子量の芳香族炭化水素類(たとえば、炭素数6~8の芳香族炭化水素類)およびアルカン類を形成する。たとえば、トリメチルベンゼン類は、水素化脱アルキル化反応を受けてキシレン類およびメタンを生成しうる。不飽和分子(たとえば、オレフィン類、芳香族化合物類)の二重結合への水素原子の付加により飽和分子(たとえば、パラフィン類、i-パラフィン類、ナフテン類)を生じるような他の反応が、水素化処理反応器10内で起こりうる。さらに、水素化処理反応器10内での反応は、有機化合物の結合の崩壊を引き起こし、2つ以上のより小さい炭化水素分子への炭化水素分子の「クラッキング」を生じさせ、またはその後の反応および/またはヘテロ原子の水素による置換を生じさせる。水素化処理反応器10内で起こりうる反応の例としては、炭素数9以上の芳香族炭化水素類の水素化脱アルキル化、オレフィン類の水素化、ヘテロ原子含有炭化水素類からのヘテロ原子の除去(たとえば、脱塩素化)、大きなパラフィ類ンまたはi-パラフィン類からより小さな炭化水素分子類への水素化クラッキング、芳香族炭化水素類からより小さな環式または非環式炭化水素類への水素化クラッキング、一種または二種以上の芳香族化合物類から一種または二種以上のシクロパラフィン類への変換、一種または二種以上のノーマルパラフィン類から一種または二種以上のi-パラフィン類への異性化、一種または二種以上のシクロパラフィン類の一種または二種以上のi-パラフィン類への選択的開環、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0030】
水素化処理反応器10は、本明細書に開示される水素化処理触媒を含むように構成された任意の容器であってもよい。容器は、気相、液相、気-液相、またはスラリー相の操作のために構成することができる。水素化処理反応器10は、固定床、流動床、移動床、沸騰床、スラリー床、またはそれらの組み合わせにおける水素化処理触媒の一種または二種以上の床を含むことができる。水素化処理反応器10は、断熱的、等温的、非断熱的、非等温的、またはそれらの組み合わせで操作することができる。本開示の反応は、単一段階で、または複数段階で行うことができる。たとえば、水素化処理反応器10は、直列に流体接続された2つの反応容器とすることができ、それぞれが一種または二種以上の水素化処理触媒の触媒床を有する。あるいは、水素化処理のための2つ以上の段階を単一の反応器容器に含めることができる。複数の段階が使用される場合、第一段階は、炭化水素流1の成分を水素化脱アルキル化、クラック、脱塩素、および水素化して、第一レベルの炭素数9以上の芳香族炭化水素類、塩化物化合物類、およびオレフィン類を有する第一の炭化水素生成物を生成することができる。第一の炭化水素生成物は第一の段階から第二の段階へ流れることができ、そこで、第一の炭化水素生成物の他の成分が水素化脱アルキル化、クラック、脱塩素、および水素化されて、第二レベルの炭素数9以上の芳香族炭化水素類、塩化物化合物類、およびオレフィン類を有する第二の炭化水素生成物流(
図1における生成物流2)を生成することができる。次いで、第二の炭化水素流を、本明細書に記載の生成物流2として取り扱うことができる。
【0031】
水素化処理反応器10は、一種または二種以上の容器を含むことができる。本開示での使用に適した水処理プロセスおよび反応器は、米国特許出願第15/085278号明細書(特許文献2)、米国特許出願第15/085311号明細書(特許文献3)、米国特許出願第15/085379号明細書(特許文献4)、米国特許出願第15/085402号明細書(特許文献5)、および米国特許出願第15/085445号明細書(特許文献6)により詳しく記載されており、これらの各々が、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0032】
水素は、水素流8において水素化処理反応器10に供給することができる。水素化処理反応器10への水素添加速度は、一般に、本明細書に開示される水素対炭化水素比を達成するのに十分である。
【0033】
開示された水素化処理反応器10は、様々なプロセス条件で操作することができる。たとえば、炭化水素流1を水素の存在下に水素化処理触媒と接触させることは、水素化処理反応器10において、100℃~550℃の温度、あるいは、100℃~400℃、あるいは、260℃~350℃で起こりうる。炭化水素流1を水素の存在下に水素化処理触媒と接触させることは、水素化処理反応器10において、0.1/時~10/時、あるいは1/時~3/時の重量空間速度(WHSV)で起こりうる。炭化水素流1を水素の存在下に水素化処理触媒と接触させることは、水素化処理反応器10において、10~3,000NL/L、あるいは200~800NL/Lの水素対炭化水素(H2/HC)流量比で起こりうる。
【0034】
炭化水素流1を水素の存在下に水素化処理触媒と接触させることは、水素化処理反応器10において、1バール(bara:絶対圧)~200バール(barg:ゲージ圧)、あるいは、1bara~60barg、あるいは、10barg~45bargの圧力で起こりうる。理論によって制限されることを望むものではないが、より低い圧力およびより高い温度では、水化クラッキングに比べて水素化脱アルキル化が好ましい。
【0035】
本明細書に記載されるような水素化処理触媒を用いる脱塩素化は、塩素吸着剤を使用することなく、脱塩剤として機能するのに有効な量でNa2CO3を添加することなく、またはその両者の条件で、水素化処理反応器10において行われることが企図される。
【0036】
水素化処理触媒は、オレフィン類および芳香族炭化水素類の水素化(たとえば、飽和)に使用される任意の触媒(たとえば、市販の水素化処理触媒)であってよい。本開示における使用に適した水素化処理触媒の非限定的な例としては、
アルミナ担体上のコバルトおよびモリブデン、アルミナ担体上のニッケルおよびモリブデン、アルミナ担体上のタングステンおよびモリブデン、アルミナ担体上の白金およびパラジウム、硫化ニッケル類、アルミナ担体上の硫化ニッケル類、硫化モリブデン類、アルミナ担体上の硫化モリブデン類、硫化ニッケルおよび硫化モリブデン、アルミナ担体上の硫化ニッケルおよび硫化モリブデン、コバルトおよびモリブデンの酸化物、アルミナ担体上のコバルトおよびモリブデンの酸化物など、またはそれらの組み合わせが挙げられる。当業者には理解されるように、またこの開示の助けを借りて、担持されていない触媒を、たとえば、スラリー水素処理反応器において使用することもできる。
【0037】
炭化水素流1が一種または二種以上の硫化物類と一種または二種以上の塩化物化合物類とを含む構成では、炭化水素流1を水素化処理触媒と接触させることは、硫化により水素化処理触媒を活性化させ、塩素化により水素化処理触媒を酸性化するように作用する。一種または二種以上の硫化物類、一種または二種以上の塩化物化合物類、またはその両方を含む炭化水素流1に水素化処理触媒を連続的に接触させることは、触媒活性を連続的に維持することができる。本明細書の開示の目的のために、水素化処理触媒に関する用語「触媒活性」または「触媒活性」は、水素化脱アルキル化反応、水素化クラッキング反応、水素化脱塩素反応などのような水素化処理反応を触媒する水素化処理触媒の性能に言及する。
【0038】
水素化処理触媒は、硫化物類および/または塩化物類を含む流れ(たとえば、炭化水素流1、ドーピング流7、触媒活性化流9など)に水素化処理触媒を接触させることにより、その場で(in situ)および/またはその場以外の場所で(ex situ)活性化することができ、ここで、水素化処理触媒は、脱塩化水素、水素化クラッキング、および水素化脱アルキル化を同時に行うために活性化される。
【0039】
1つの態様において、水素化処理触媒をその場で硫化することにより、水素化処理触媒が活性化され、および/または、活性が維持される。たとえば、一種または二種以上の硫化物類を含む炭化水素流1を水素化処理触媒に連続的に接触させることにより、水素化処理触媒を硫化する(すなわち、活性化する)ことができ、および/または、水素化処理触媒の硫化(すなわち、触媒活性を維持する)を行うことができる(たとえば、水素化処理触媒を硫化状態に維持することが達成される)。
【0040】
あるいは、(炭化水素流1を水素化処理触媒に接触させる前に)水素化処理触媒を活性化するのに充分な時間(たとえば、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、またはそれ以上の時間)、一種または二種以上の硫化物類を含む触媒活性化流9を水素化処理触媒に接触させることにより、水素化処理触媒を硫化(すなわち、活性化)することができる。触媒活性化流9は、一種または二種以上の硫化物類のための炭化水素キャリア、たとえば、ヘキサデカンを含むことができる。一種または二種以上の硫化物類は、触媒活性化流9の硫黄含有量が、触媒活性化流9の合計重量を基準として約0.05重量%、0.1重量%、0.5重量%、1重量%、1.5重量%、2重量%、2.5重量%、3重量%、3.5重量%、4重量%、4.5重量%、5重量%、またはそれ以上となるような量で、触媒活性化流9に含まれうる。触媒活性化流9の硫黄含有量は、触媒活性化流9の合計重量を基準として約3重量%まででありうる。水素化処理触媒を、その場でおよび/またはその場以外の場所で触媒活性化流9と接触させることができる。
【0041】
水素化処理触媒をその場で活性化する場合、水素化処理触媒を触媒活性化流9で活性化した後、触媒活性化流9の流通が中断されてもよく、一種または二種以上の硫化物類を含む炭化水素流1を水素化処理触媒に連続的に接触させることにより、水素化処理触媒の硫化(すなわち、触媒活性の維持)を維持することができる(たとえば、水素化処理触媒を硫化された状態に維持することが達成される)。
【0042】
触媒活性は、水素化処理触媒を塩素化することによっても維持される。水素化処理触媒は、炭化水素流1により水素化処理触媒に提供された一種または二種以上の塩化物化合物類を用いて塩化される。水素化処理触媒の酸性化に貢献する一種または二種以上の塩化物化合物類を、本明細書に開示の量で炭化水素流1に含むことができる。炭化水素流が塩化物を含まない場合、一種または二種以上の塩化物類を、炭化水素流1の合計重量を基準として約5ppm塩化物以上の量で炭化水素流1に添加することができる。
【0043】
水素化処理反応器10中における水素化脱アルキル化反応により、炭化水素生成物流2中の炭素数9以上の芳香族炭化水素類の量は、炭化水素流1中の炭素数9以上の芳香族炭化水素類の量よりも、炭化水素流1中の炭素数9以上の芳香族炭化水素類の合計重量を基準として約5%~約95%少ない。当業者によって理解されるように、および本開示の助けを借りると、炭化水素流1と炭化水素生成物流2との間の炭素数9以上の芳香族炭化水素類の量の減少は、水素化処理反応器10中において炭素数9以上の芳香族炭化水素類が関与する水素化脱アルキル化反応に加えて、水素化処理反応器10中において炭素数9以上の芳香族炭化水素類が関与する水素化反応のみならず、水素化クラッキング反応も原因である。
【0044】
さらに、炭化水素生成物流2は、炭化水素流1中の炭素数6~8の芳香族炭化水素類の量よりも多い量の炭素数6~8の芳香族炭化水素類を含むことができる。当業者によって理解されるように、および本開示の助けを借りると、炭化水素流1と炭化水素生成物流2との間の炭素数6~8の芳香族炭化水素類の量の増加は、炭化水素流1の芳香族含有量に依存する。
【0045】
炭化水素生成物流2中の芳香族炭化水素類の合計量は、水素化処理反応器10中の芳香族炭化水素類の少なくとも一部の水素化および/または水素化クラッキングにより、炭化水素流1中の芳香族炭化水素類の合計量より少ないと考えられるが、炭素数9以上の芳香族炭化水素類の少なくとも一部は、水素化脱アルキル化されて炭素数6~8の芳香族炭化水素類を生成する。当業者によって理解されるように、および本開示の助けを借りると、炭素数6~8の芳香族炭化水素類は水素化脱アルキル化反応により生成されるが、水素化処理反応器10中に存在する炭素数6~8の芳香族炭化水素類の一部は(水素化脱アルキル化により生成されていても、炭化水素流1を介して導入されていても)、水素化および/または水素化クラッキングを受けることになる。
【0046】
さらに、水素化処理反応器10中における水素化反応が原因で、炭化水素生成物流2は、炭化水素生成物流2の合計重量を基準として1重量%未満の量で一種または二種以上のオレフィン類を含有することができる。
【0047】
反応生成物は、炭化水素生成物流2中において水素化処理反応器10から流出物として分離器20に流れる。分離器20は、炭化水素生成物2から処理された炭化水素流4を回収することができる任意の適切な容器でありうるが、処理された炭化水素流4の少なくとも一部は、分離器20に供給される。処理された炭化水素流4は、分離器20中において硫黄および塩素含有ガス(たとえば、塩化物および硫黄流3)から処理された生成物(たとえば、液体生成物または気体生成物)を分離し、処理された炭化水素流4中の処理された生成物を分離器20から流すことにより回収することができる。
【0048】
いくつかの構成では、分離器20は、硫黄および塩素含有化合物類を気相に残したまま、炭化水素生成物流2の一部を処理された生成物(たとえば、液体生成物または処理された液体生成物)に凝縮する条件で操作される凝縮器とすることができる。処理された液体生成物は、処理された炭化水素流4中において分離器20から流出し、硫黄および塩素含有ガスは、塩化物および硫黄流3を介して分離器20から流出する。
【0049】
他の構成では、分離器20は、苛性溶液(たとえば、水中の水酸化ナトリウムの溶液)を含むスクラビングユニットとすることができ、これは、(たとえば、反応、吸着、吸収、またはそれらの組み合わせによって)硫黄および塩素含有ガスを炭化水素生成物流2から除去して、処理された生成物(たとえば、気体生成物または処理された気体生成物)を生成し、これは処理された炭化水素流4を介して分離器20から流出し、一方、気相中の硫黄および塩素含有化合物類は、塩化物および硫黄流3を介して分離器20から流出する。
【0050】
さらに他の構成では、分離器20は、苛性溶液を含むスクラビングユニットと連通した凝縮器とすることができる。上述したように、凝縮器は、硫黄および塩素含有化合物類を気相中に残しながら、炭化水素生成物流2の一部を中間の処理された生成物(たとえば、液体生成物または処理された液体生成物)に凝結させる条件下で動作することができる。中間の処理された液体生成物は、凝縮器から流出し、(たとえば、本開示の助けを借りて、当技術分野で知られている弁または他の減圧装置を介して)減圧を受け、これにより流出ガスが作られ、流出ガスは、硫黄および塩素含有化合物類を含む先に分離された気相と共にスクラビングユニットに流れ、処理された炭化水素流4に流入する処理された生成物を残す。硫黄および塩素含有化合物類は、塩化物および硫黄流3において分離器20から流出する。
【0051】
さらに別の構成では、分離器20は、前述のように苛性溶液を含む凝縮器および/またはスクラビングユニットとすることができ、そこで、中間の処理された生成物流は、処理された炭化水素流4について前述したように分離器20中の硫黄および塩素含有ガス(たとえば、塩化物および硫黄流3)から中間の処理生成物(たとえば、液体生成物または気体生成物)を分離することにより、および分離器20から、中間の処理された炭化水素流中の中間の処理された生成物を流すことにより、回収することができる。中間の処理された炭化水素流は、分離器20から蒸留塔に流れて、約370℃未満の沸点終点を特徴とする処理された炭化水素流、および約370℃以上の沸点終点を特徴とする重質の処理された炭化水素流を生成することができる。そのような構成において、約370℃未満の沸点終点を特徴とする処理された炭化水素流の少なくとも一部を、本明細書で後でより詳しく説明される、スチームクラッカー30のようなスチームクラッカーに供給することができる。重質の処理された炭化水素流の少なくとも一部は、たとえば炭化水素流1を介して水素化処理反応器10に再循環させることができる。当業者によって理解されるように、および本開示の助けを借りると、ハロゲン化物を含まない化合物類が水素処理反応器10に再循環されるか、または(脱ハロゲン化水素効率に応じて)微量のハロゲン化物化合物類のみが水素化処理反応器10に再循環されるが、そのような化合物類は分離器20において除去されるからである。
【0052】
スチームクラッカー30に供給される処理された炭化水素流4は、塩化物含有量、硫黄含有量、オレフィン含有量および沸点終点についてのスチームクラッカー供給要件を満たす。本明細書で前述したように、処理された炭化水素流4の組成は、任意の精製ユニット25が使用されるか否かに応じて変化し得る。
【0053】
処理された炭化水素流4は、処理された炭化水素流4の合計重量を基準として15ppm、14ppm、13ppm、12ppm、11ppm、10ppm、9ppm、8ppm、7ppm、6ppm、5ppm、4ppm、3ppm、2ppm、1ppm、または0.5ppm未満の量で一種または二種以上の塩化物化合物類を含むことができる。処理された炭化水素流4中の一種または二種以上の塩化物化合物類は、炭化水素流1中の一種または二種以上の塩化物化合物類の一部または全てと同じであると考えられる、あるいは、処理された炭化水素流4中の一種または二種以上の塩化物化合物類の一部のみが、炭化水素流1中の一種または二種以上の塩化物化合物類の一部のみと同じであると考えられる、あるいは、処理された炭化水素流4中の一種または二種以上の塩化物化合物類のいずれも、炭化水素流1中の一種または二種以上の塩化物化合物類と同じではないと考えられる。理論によって限定されるものではないが、炭化水素流1中の一種または二種以上の塩化物化合物類の少なくとも一部が、炭化水素流1中の一種または二種以上の塩化物化合物類とは異なる処理された炭化水素流4中の一種または二種以上の塩化物化合物類を導く反応(たとえば、脱塩化水素反応)に関与することができる。
【0054】
当業者によって理解されるように、および本開示の助けを借りると、塩化物および硫化物の除去により処理された炭化水素流4が得られる場合、塩化物類および硫化物類以外の個々の成分の重量濃度(%)は低い程度に変更され、塩化物類および硫化物類以外の個々の成分の重量濃度(%)は、炭化水素生成物流2におけるよりも処理された炭化水素流4において僅かに高い(たとえば、約1%大きい)。さらに、当業者によって理解されるように、および本開示の助けを借りると、処理された炭化水素流4中におけるオレフィン類および炭素数9以上の芳香族炭化水素類のような成分の重量濃度(%)は、水素化処理反応器10中における水素化および水素化脱アルキル化反応が原因で、炭化水素流1中における成分(たとえば、それぞれ、オレフィン類および炭素数9以上の芳香族炭化水素類)の対応する重量濃度(%)より小さい。さらに、当業者によって理解されるように、および本開示の助けを借りると、処理された炭化水素流4中におけるパラフィン類および炭素数6~8の芳香族炭化水素類のような成分の重量濃度(%)は、炭化水素生成物流2からの成分の分離および水素化処理反応器10中における水素化クラッキングおよび水素化脱アルキル化反応の両方が原因で、炭化水素流1中における成分(たとえば、それぞれ、パラフィン類および炭素数6~8の芳香族炭化水素類)の対応する重量濃度(%)よりも大きい。
【0055】
当業者によって理解されるように、および本開示の助けを借りると、約370℃以上の沸点終点を有する重質の処理された炭化水素流の分離のみならず塩化物および硫化物の除去によって処理された炭化水素流4が得られる場合、塩化物類および硫化物類以外の個々の成分の重量濃度(%)はかなりの程度に変えることができ、塩化物類、硫化物類、および約370℃以上の沸点を有する分子以外の個々の成分の重量濃度(%)は、炭化水素生成物流2中におけるよりも処理された炭化水素流4中において大きい(たとえば、約5%以上高い)。さらに、当業者によって理解されるように、および本開示の助けを借りると、処理された炭化水素流4中におけるオレフィン類および炭素数9以上の芳香族炭化水素類のような成分の重量濃度(%)は、炭化水素生成物流2からの約370℃以上の沸点終点を有する炭素数9以上の芳香族炭化水素類の分離および除去のみならず水素化処理反応器10中における水素化および水素化脱アルキル化反応が原因で、炭化水素流1中における成分(たとえば、それぞれ、オレフィン類および炭素数9以上の芳香族炭化水素類)の対応する重量濃度(%)より小さい。さらに、当業者によって理解されるように、および本開示の助けを借りると、処理された炭化水素流4中における約370℃未満の沸点を有するパラフィン類および炭素数6~8の芳香族炭化水素類のような成分の重量濃度(%)は、炭化水素生成物流2からの成分の分離および水素化処理反応器10中における水素化クラッキングおよび水素化脱アルキル化反応の両方が原因で、炭化水素流1中における成分(たとえば、それぞれ、約370℃未満の沸点を有するパラフィン類および炭素数6~8の芳香族炭化水素類)の対応する重量濃度(%)より大きい。
【0056】
処理された炭化水素流4は、炭化水素流1からの一種または二種以上のオレフィン類の少なくとも一部が水素化される一方、炭化水素流1が水素化処理反応器10中において水素化処理触媒と接触することが原因で、炭化水素流1中の一種または二種以上のオレフィン類の量より少ない量で一種または二種以上のオレフィン類を含むことができる。さらに、処理された炭化水素流4は、炭化水素流1からの一種または二種以上のオレフィン類の少なくとも一部が水素化および水素化クラッキングされる一方、炭化水素流1が水素化処理反応器10中において水素化処理触媒と接触することが原因で、炭化水素流1中の一種または二種以上のオレフィン類の量よりも少ない量で一種または二種以上のオレフィン類を含む。一種または二種以上のオレフィン類が、処理された炭化水素流4の合計重量を基準として1重量%未満の量で、処理された炭化水素流4中に存在してよい。
【0057】
処理された炭化水素流4は、炭化水素流1からの炭素数9以上の芳香族炭化水素類の少なくとも一部が水素化脱アルキル化される一方、炭化水素流1が水素化処理反応器10中において水素化処理触媒と接触されることが原因で、炭化水素流1中の炭素数9以上の芳香族炭化水素類の量よりも少ない量で炭素数9以上の芳香族炭化水素類を含むことができる。炭素数9以上の芳香族炭化水素類の量の減少は、さらに、炭化水素生成物流2からの約370℃以上の沸点終点を有する炭素数9以上の芳香族炭化水素類の分離および除去が原因でありうる。
【0058】
処理された炭化水素流4は炭素数6~8の芳香族炭化水素類を含むことができ、処理された炭化水素流4中における炭素数6~8の芳香族炭化水素類の量は、水素化処理反応器10中における炭化水素流1からの炭素数9以上の芳香族炭化水素類の少なくとも一部の水素化脱アルキル化が原因で、炭化水素流1中における炭素数6~8の芳香族炭化水素類の量より多い。いくつかの態様では、処理された炭化水素流4中における炭素数6~8の芳香族炭化水素類の量は、炭化水素流1中における炭素数6~8の芳香族炭化水素類の量と比較すると、少なくとも1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%またはそれ以上増加しており、炭素数6~8の芳香族炭化水素類の量の増加は、(i)水素化処理反応器1中における炭化水素流1からの炭素数9以上の芳香族炭化水素類の少なくとも一部の水素化脱アルキル化、および/または、(ii)n-パラフィン(たとえば、ヘキサデカン)のような飽和化合物類の水素化クラッキング、が原因である。
【0059】
処理された炭化水素流4中における芳香族炭化水素類の合計量は、水素化処理反応器10中における芳香族炭化水素類の少なくとも一部の水素化および/または水素化クラッキングが原因で、炭化水素流1中における芳香族炭化水素類の合計量よりも少ないと考えられるが、炭素数9以上の芳香族炭化水素類の少なくとも一部が水素化脱アルキル化されて炭素数6~8の芳香族炭化水素類が生成される。たとえば、処理された炭化水素流4の合計重量を基準として約50重量%未満の量で、芳香族炭化水素類が処理された炭化水素流4中に存在してよい。
【0060】
炭化水素流1が水素化処理反応器10中において水素化処理触媒と接触するときの重質炭化水素分子の水素化クラッキングが原因で、処理された炭化水素流4は、370℃以下の沸点終点を有しうる。炭化水素流1と比較して、370℃超で沸騰する炭化水素の著しい減少が生成物流2において得られ、それにより、370℃以下の沸点終点を有する処理された炭化水素流4が回収される。
【0061】
処理された炭化水素流4が10ppm未満の量で一種または二種以上の塩化物化合物類を含む場合、処理された炭化水素流4はスチームクラッカー30に直接供給することができる。処理された炭化水素流4が10ppm以上(たとえば、10ppm~15ppm)の量で一種または二種以上の塩化物化合物類を含む別の構成において、処理された炭化水素流4が、非塩素化炭化水素流5と混合されて、混合炭化水素流4'の合計重量を基準として10ppm未満の一種または二種以上の塩化物類の量を有する混合炭化水素流4'(別の構成を示す破線で表される流4'および5)を生成する。混合された炭化水素流4'を、スチームクラッカー30に供給することができる。当業者によって理解されるように、および本開示の助けを借りると、非塩素化炭化水素流5が、処理された炭化水素流4の塩化物含有量を希釈し、それにより、塩化物含有量についてのスチームクラッカー供給要件を満たす混合炭化水素流4’が得られる。非塩素化炭化水素流5は、一般に、パラフィン類、イソパラフィン類、ナフテン類、および芳香族化合物類を含みうる。非塩素化炭化水素流5は、塩化物およびオレフィン類を実質的に含まない。
【0062】
非塩素化炭化水素流5として用いられる典型的な非塩素化炭化水素流は、任意の適切なナフサおよびガス凝縮スチームクラッカー供給原料でありうる。たとえば、スチームクラッカー供給原料として使用することができる典型的な広範囲ナフサ供給原料は、P:35.9体積%/I:36体積%/O:0.5体積%/N:22.1体積%/A:5.5体積%のP/I/O/N/A組成を有しており、米国石油協会(API)比重が70.4であり、硫黄含有量が161ppmであり、初期沸点(IBP)が35℃であり、最終沸点(FBP)が183℃であるPIONA供給原料でありうる。一般に、API比重は、石油液体が水と比べてどれだけ重いか軽いかの尺度である。
【0063】
別の例として、非塩素化炭化水素流5として用いられる典型的な非塩素化炭化水素流は、典型的にはAPI比重が37.4であり、IBP/95%沸点/FBPが216.1℃/361.7℃/378.9℃であり、硫黄含有量が250~400ppmである大気圧ガス油でありうる。
【0064】
スチームクラッカー30は、一般的に供給仕様要件を有する。第一に、スチームクラッカー30は、スチームクラッカー30への供給原料中の塩化物化合物類の量が10ppm未満であることを必要とする。第二に、スチームクラッカー30は、スチームクラッカー30に供給される流れ中のオレフィン類の量が1重量%未満であることを必要とする。第三に、スチームクラッカー30は、スチームクラッカー30に供給される流れの沸点終点を370℃にする必要がある。スチームクラッカー30は、蒸気の存在下に処理された炭化水素流4または混合炭化水素流4'中において分子を分解するまたは成分の炭素-炭素結合を高温で解離させて、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、芳香族化合物類、またはそれらの組み合わせのような高価値生成物を生成する。高価値生成物は、生成物流6を介してスチームクラッカー30から流出することができる。
【0065】
本明細書に開示の炭化水素流の脱塩化水素、水素化クラッキングおよび水素化脱アルキル化を同時に行うことを含む、炭化水素流を水素化処理する方法は、
(a)塩化物類および硫化物類を含む炭化水素流を、水素の存在下に、アルミナ担体上のコバルトおよびモリブデン触媒(Co-Mo触媒)を含む水素化処理触媒と接触させて炭化水素生成物を生成する工程を含むことができ;炭化水素流は、(i)塩化物含有量が炭化水素流の合計重量を基準にして約10ppm以上になる量の一種または二種以上の塩化物化合物類、(ii)硫黄(S)含有量が炭化水素流の合計重量を基準として約0.05重量%~約5重量%になる量の一種または二種以上の硫化物化合物類、(iii)炭素数5~8の炭化水素類、(iv)炭素数9以上の非芳香族化合物類を含む重質炭化水素分子、および(v)炭素数9以上の芳香族化合物類を含む炭素数9以上の芳香族炭化水素類を含み、および、
(b)炭化水素生成物から処理された炭化水素流を回収する工程を含むことができ;処理された炭化水素流は、塩化物含有量が処理された炭化水素流の合計重量を基準として約10ppm未満になる量の一種または二種以上の塩化物化合物類を含み、一種または二種以上の塩化物化合物類の減少は、接触工程(a)中における炭化水素流の脱塩化水素が原因であり;処理された炭化水素流は重質炭化水素分子を含み、処理された炭化水素流中の重質炭化水素分子の量は、接触工程(a)中における炭化水素流からの重質炭化水素分子の少なくとも一部分の水素化クラッキングが原因で、炭化水素流中の重質炭化水素分子の量よりも少なく;処理された炭化水素流は炭素数9以上の芳香族炭化水素類を含み、処理された炭化水素流中の炭素数9以上の芳香族炭化水素類の量は、接触工程(a)中における炭化水素流からの炭素数9以上の芳香族炭化水素類の少なくとも一部の水素化脱アルキル化および/または水素化クラッキングが原因で、炭化水素流中の炭素数9以上の芳香族炭化水素類の量よりも少なく、処理された炭化水素流中における炭素数6~8の芳香族炭化水素類の量は、接触工程(a)中における炭化水素流からの炭素数9以上の芳香族炭化水素類の少なくとも一部の水素化脱アルキル化および/または重質炭化水素分子の少なくとも一部の水素化クラッキングが原因で、炭化水素流中の炭素数6~8の芳香族炭化水素類の量よりも多い。水素化処理触媒は、水素化処理触媒を硫化物類および塩化物類を含む流れと接触させることにより脱塩化水素、水素化クラッキング、および水素化脱アルキル化を同時に行うために、その場でおよび/またはその場以外の場所で活性化される。Co-Mo触媒は、触媒を硫化することにより、たとえば、触媒を、ストレートランと、または、硫化物化合物類がドープされたクラックされていない炭化水素流と、接触させることにより活性化することができる。Co-Mo触媒は、塩化によって、たとえば、触媒を、塩化物化合物類および硫化物化合物類を含む供給原料(たとえば、
図1の炭化水素流1のような炭化水素流)と接触させることにより活性化することもできる。塩素化による活性化のために使用される供給原料は、ストレートラン供給原料、クラッキングされた供給原料、および/または塩化物類含有供給原料、たとえば、プラスチック熱分解油でありうる。供給原料が塩化物類を含まない態様では、供給原料に塩化物化合物類を添加して活性化供給原料として使用することができる。
【0066】
プラスチックス廃棄物を処理する方法は、
(a)プラスチックス廃棄物を炭化水素流に変換する工程を含むことができ;プラスチックス廃棄物は、ポリオレフィン類、ポリスチレン類、PET、PVC、PVDCなど、またはそれらの組み合わせを含み、炭化水素流は、(i)塩化物含有量が炭化水素流の合計重量を基準にして約10ppm以上になる量の一種または二種以上の塩化物化合物類、(ii)硫黄(s)含有量が炭化水素流の合計重量を基準として約0.05重量%~約5重量%になる量の一種または二種以上の硫化物化合物類、(iii)炭素数5~8の炭化水素類、(iv)炭素数9以上の非芳香族化合物類を含む重質炭化水素分子、および(v)炭素数9以上の芳香族化合物類を含む炭素数9以上の芳香族炭化水素類を含み、
(b)炭化水素流の少なくとも一部を、水素の存在下に水素化処理触媒と接触させて炭化水素生成物を生成する工程を含むことができ;水素化処理触媒は、アルミナ担体上のコバルトおよびモリブデン触媒(Co-Mo触媒)を含み、
(c)炭化水素生成物から処理された炭化水素流を回収する工程を含むことができ;処理された炭化水素流は、塩化物含有量が処理された炭化水素流の合計重量を基準として約10ppm未満になる量の一種または二種以上の塩化物化合物類を含み、一種または二種以上の塩化物化合物類の減少は、接触工程(b)中における炭化水素流の脱塩化水素が原因であり;処理された炭化水素流は重質炭化水素分子を含み、処理された炭化水素流中の重質炭化水素分子の量は、接触工程(b)中における炭化水素流からの重質炭化水素分子の少なくとも一部の水素化クラッキングが原因で、炭化水素流中の重質炭化水素分子の量よりも少なく;処理された炭化水素流中は炭素数9以上の芳香族炭化水素類を含み、処理された炭化水素流中の炭素数9以上の芳香族炭化水素類の量は、接触工程(b)中における炭化水素流からの炭素数9以上の芳香族炭化水素類の少なくとも一部の水素化脱アルキル化および/または水素化クラッキングが原因で、炭化水素流中の炭素数9以上の芳香族炭化水素類の量よりも少なく;処理された炭化水素流中の炭素数6~8の芳香族炭化水素類の量は、接触工程(b)中における炭化水素流からの炭素数9以上の芳香族炭化水素類の少なくとも一部の水素化脱アルキル化および/または重質炭化水素分子の少なくとも一部の水素化クラッキングが原因で、炭化水素流中の炭素数6~8の芳香族炭化水素類の量よりも多く、および
(d)処理された炭化水素流の少なくとも一部をスチームクラッカーに供給して高価値生成物を生成する工程を含むことができ;処理された炭化水素流は、塩化物含有量、オレフィン含有量、沸点終点、および硫黄含有量についてのスチームクラッカー供給要件を満たし、高価値生成物は、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、芳香族化合物類、またはそれらの組み合わせを含む。プラスチックス廃棄物は、約400重量ppm以上のPVCおよび/またはPVDCを含む。水素化処理触媒は、水素化処理触媒を硫化物類および塩化物類を含む流れと接触させることにより、脱塩化水素、水素化クラッキングおよび水素化脱アルキル化を同時に行うためにその場でおよび/またはその場以外の場所で活性化される。
【0067】
本明細書に開示の炭化水素流を水素化処理する方法は、炭化水素流の脱塩化水素、水素化クラッキングおよび水素化脱アルキル化を同時に行うことはない他の類似の方法と比較して、有利に、一種または二種以上のプロセス特性の向上を示す。本明細書に開示の炭化水素流を水素化処理する方法は、炭素数9以上の芳香族炭化水素類を炭素数6~8の芳香族炭化水素類に選択的に変換させつつ、熱分解油中の合計塩化物含有量をパーセントからppm水準に有利に下げることができる。
【0068】
炭化水素流中に含まれるオレフィンおよび重質炭化水素分子の水素化クラッキングが、本明細書に開示の条件において水素化処理触媒を用いて有利に生じることができる一方、炭化水素流中の炭素数9以上の芳香族炭化水素類も水素化脱アルキル化も行われる。オレフィンが、水素化クラッキングされることに加えて、水素化される。さらに、炭化水素流中に含まれる塩化物化合物類が除去される。炭化水素流成分の同時の水素化脱アルカリ化、水素化、脱塩素化および水素化クラッキングが、単一の水素化処理工程で有利に達成され、処理された炭化水素生成物は、処理された炭化水素生成物をさらに分離または分画することなく、本明細書に特定された供給原料要件を有するスチームクラッカーに供給されることができる。同時の水素化脱アルキル化、水素化、脱塩素化、および水素化クラッキングは、本明細書に開示の量で一種または二種以上の硫化物類および一種または二種以上の塩化物化合物類を含む炭化水素流を、本明細書に開示の操作条件において水素の存在下に水素化処理触媒に連続的に接触させることにより有利に達成される。すなわち、水素化処理反応器に供給される本明細書に開示の組成の炭化水素流を用いることにより、水素化脱アルキル化、水素化、脱塩素化および水素化クラッキングを同時に行うと共に、触媒活性を開始および/または同時に維持することができる。
【0069】
炭素数6~8の芳香族炭化水素類などの高価値芳香族化合物類を得るための芳香族分離プロセスは、処理された炭化水素流中の炭素数9以上の芳香族炭化水素類のようなより高級の芳香族化合物類の含有量が低減されているので有利に簡略化することができる。
【0070】
本明細書に開示の水素化クラッキングは、実施例に示される低い圧力を含めて、水素化処理反応器10について本明細書に開示されている操作圧力に渡って起こることができる。本明細書に開示の炭化水素流を水素化処理する方法は、スチームクラッカーに要求される370℃の沸点終点を満たす。炭化水素流がプラスチック熱分解油を含む場合、プラスチック熱分解油の重質最終産物が水素化クラッキングされる一方、炭素数9以上の芳香族炭化水素類の少なくとも一部が水素化脱アルキル化される。本明細書の開示のプロセスの水素化クラッキング性能に起因するパラフィン類の増加レベルにより、有利に、スチームクラッカーにおいてプロピレンを多量に製造できるようになる。
【0071】
低温(たとえば、350℃未満)での操作は、反応炉冶金の腐食軽減の追加の利点を有する。市販の反応器で使用されているほとんどの金属や合金では、300℃以上の反応器温度で腐食速度が増加し始める。開示された方法による脱塩素化の効率は、350℃未満の反応器温度で良好であり、脱塩素化プロセスは、260℃の低さでさえ、アルミナ担体上の硫化Co-Mo触媒を用いて作用することが見出されており、処理された生成物中の塩化物類は1ppm未満である。すなわち、冶金学的腐食の問題は軽減され、スチームクラッカー30への供給のために望ましいレベルへの脱塩素化を達成しながら、より長い装置寿命が可能である。本明細書に開示されているプロセスは、10barg程度の低い圧力で作用することが実証されており、これは市販の水素化処理触媒で典型的に使用される条件よりも厳しくない条件である。より低い圧力で動作する能力は、プロセス容器(たとえば、水素化処理反応器10)の要求される圧力定格を減少させ、投資コストを削減する機会を提供する。本明細書に開示されたプロセスで使用される水素化処理触媒は、水素化クラッキング触媒と比較して、低コストで得られ、改変することができる一方、有利なことに、炭化水素流の脱塩化水素、水素化クラッキングおよび水素化脱アルキル化を同時に行うことができる。
【0072】
開示されたプロセスは、塩化物含有量、オレフィン含有量、およびスチームクラッカー用の供給原料の沸点終点の要件を達成すると同時に、増加した量の炭素数6~8の芳香族炭化水素類の製造をもたらす。本明細書に開示の炭化水素流を水素化処理するためのプロセスのさらなる利点は、本開示を参照して当業者には明らかでありうる。
【実施例】
【0073】
〔実施例1〕
すべての水素化処理実験は、特に断りのない限り、アルミナ上Co-Mo酸化物水素化処理触媒を用い、以下の手順を用いて行った。水素化処理触媒を、ジメチルジスルフィド(DMDS)からの3重量%硫黄を加えたヘキサデカン供給原料で硫化することによって活性化した。触媒の完全硫化(硫化物活性化)に続いて、塩化物(205ppm)および硫化物(2重量%)含有PIONA(n-パラフィン、i-パラフィン、オレフィン、ナフテン、芳香族化合物類)供給原料(30%のヘキサデカン、10%のi-オクタン、20%の1-デセン、20%のシクロヘキサンおよび20%のエチルベンゼン)を、260℃の運転温度、60bargの運転圧力、0.92/時の重量空間速度(WHSV)および414NL/Lの水素対炭化水素比で、反応器床に導入した。供給原料の連続処理は、供給原料の脱塩素化だけでなく、水素化処理触媒の酸性化(塩化物活性化)ももたらし、それによって水素化(硫化金属部位)およびクラッキング部位(塩化アルミナ)を含有する触媒がもたらされる。この任意の前処理に続いて、触媒を、次に、有機塩化物類および有機硫化物類をドープしたプラスチック熱分解油と接触させた。以下の実施例に含まれる異なる動作条件の下で、同時の脱塩化水素、水素化クラッキングおよび水素化脱アルキル化を達成した。したがって、スチームクラッカーに供給することができる供給原料を生成することが可能であった。
【0074】
ポリオレフィン類82%、ポリスチレン11%、およびポリエチレンテレフタレート(PET)7%の組成を有する混合プラスチックを、USYゼオライトを含む使用済流体接触クラッキング触媒を用いて循環流動床ライザー反応器中において熱分解油に変換した。ライザー反応器の底部での供給原料および触媒のカップ混合ゾーン温度は、535℃(供給原料および触媒導入位置の下流)であった。ガス収率は58.8重量%、液体収率は32.9重量%、コークス収率は8.4重量%であった。ガソリンの収率(<220℃)は29.3重量%であり、残余の液体はディーゼルおよび重質末端産物あった。この液体生成物36gをn-ヘキサデカン240gと混合して供給混合物(たとえば、炭化水素流)を調製した。この得られた混合物を、以下の実施例に詳述するように、供給原料として固定床反応器におけるその後の実験に使用した。供給混合物の組成を、Detailed Hydrocarbon Analyser(ASTM D6730)およびM/S AC Analytical BV(オランダ)製の模擬蒸留(SIMDIS)ガスクロマトグラフで調べた。供給混合物の240℃未満の液体沸点の詳細な炭化水素分析(DHA)を表1に示し、この供給原料の沸点分布を表2に示す。表1のデータから、重質で未知のものは含まない基準で、240℃未満で沸騰する供給原料カットのPIONAまたはP/I/O/N/A組成は、P:3.77重量%、I:7.83重量%、O:0.55重量%、N:0.14重量%、A:87.71重量であり、重質で未知のものは含まない基準で供給原料中の炭素数9以上の芳香族化合物類は66.34重量%であり、重質で未知のものは含まない基準で供給原料中の炭素数6~8の芳香族化合物類は21.37重量%であることが分かる。
【0075】
【0076】
【0077】
表2の結果は、供給原料の約9.73重量%が240℃未満で沸騰し、供給原料の14.4重量%が280℃未満で沸騰することを示している。重質で未知のものは含まない基準で、240℃未満で沸騰する供給原料中の様々な種の重量%は表3に示すとおりである。
【0078】
【0079】
有機塩化物類およびDMDSをこの供給原料と混合し、供給原料の合計重量を基準として、塩化物含有量836重量ppmおよび硫黄含有量2.34重量%となった。上記の表3のデータは、供給原料全体における240℃未満で沸騰するP/I/O/N/Aを示している。これらのデータを用いて、異なる化合物の枯渇および/または形成を決定するための後の実施例からの類似組成産物のデータと比較した。表2は、供給原料全体の沸点分布を示し、水素化クラッキングによって形成されたより軽い分子の割合を決定するための次の実施例における生成物の沸点分布と比較するために使用した。
【0080】
〔実施例2〕
1034重量ppmの有機塩化物類および2重量%のSをドープしたn-ヘキサデカンを固定床触媒系と共に実験で用いて、実施例1に記載したように水素化処理実験を行った。この実験は、反応器触媒床温度300℃、圧力40barg、WHSV0.92/時、および水素対炭化水素比414NL/Lで行った。液体生成物の模擬蒸留結果を表4に示す。
【0081】
【0082】
表4の結果は、生成物の13.5重量%が240℃未満で沸騰し、生成物の18重量%が280℃未満で沸騰することを示している。全沸点は、n-ヘキサデカン供給原料の使用および転化に対応している。液体生成物の塩化物含有量は0.3重量ppmだった。240℃未満で沸騰する液体生成物のDHA結果を表5に示す。
【0083】
【0084】
表5のデータは、生成物流(たとえば、
図1の炭化水素生成物流2、処理された炭化水素流4等)中の炭素数6~8の芳香族炭化水素類の量が、供給原料流(たとえば、
図1の炭化水素流1)中の炭素数6~8の芳香族炭化水素類の量と比較した場合に増加していることを示しており、炭素数6~8の芳香族炭化水素類の量の増加は、飽和化合物の水素化クラッキングによるものである。たとえば、n-パラフィンであるヘキサデカンは、変換して、相当量の芳香族類を形成する。
【0085】
表5のデータを重質で未知のものは含まない基準で標準化し、240℃未満で沸騰する液体生成物中の様々な種の重量濃度(%)を表6に示す。
【0086】
【0087】
n-ヘキサデカンの13.5重量%が240℃未満で沸騰する種に転化することを考慮して、n-ヘキサデカンの重量%でのこれらの種の収率を計算し、表7に示す。
【0088】
【0089】
表7のデータは、n-ヘキサデカンが主としてn-パラフィン類、i-パラフィン類、ナフテン類、および芳香族化合物類に転化されたことを示している。したがって、これらのデータから、重質炭化水素分子の水素化クラッキング中にC9のみならずC6-C8芳香族化合物類が形成されうることが示される。
【0090】
〔実施例3〕
実験条件が表8に示され、データが実施例2に記載されたように計算されて、実施例1と同様のさらなる研究も実施した。
【0091】
【0092】
240℃未満で沸騰する液体生成物のDHA結果を表9に示す。
【0093】
【0094】
重質で未知のものは含まない基準で、DHA分析結果を表10に示す。供給原料の芳香族類含有量87.7重量%と比較して、重質で未知のものは含まない基準で、生成物の芳香族化合物類は13.19重量%への著しい低下が見られ、高圧では開環水素化クラッキングがより好ましいことを示している。
【0095】
【0096】
液体生成物の沸点分布を表11に示す。
【0097】
【0098】
表11の結果は、生成物の13.3重量%が240℃未満で沸騰し、生成物の15重量%が280℃未満で沸騰することを示している。240℃未満で沸騰する13.3重量%の液体生成物を考慮して、供給原料の重量%として種の対応する収率を計算して表12に示す。
【0099】
【0100】
さらに、実施例1に概説した供給原料組成(重量%)から表12の収率を差し引くことによって、新しいまたは新しく形成された種の収量が得られ、表13に示す。
【0101】
【0102】
表13のデータは、供給原料中のアルキル芳香族化合物類が他のパラフィン、ナフテン、およびオレフィン化合物類に転化することを明確に示している。C6芳香族化合物類を除いて、この実験で用いた60bargの比較的高圧で、他のすべての芳香族化合物類も転化していた。したがって、すべてまたはほとんどすべての芳香族化合物類を開環することが好ましい場合には、高圧条件がこのような開環を促進することができる。
【0103】
〔実施例4〕
実験条件が実施例4については表8に概説された通りであり、データが実施例2および3に記載されているように計算されて、追加の研究を実施例1および3と同様に行った。240℃未満で沸騰する液体生成物のDHA結果を表14に示す。
【0104】
【0105】
重質で未知のものは含まない基準で、DHA分析結果を表15に示す。炭素数9以上の芳香族化合物類は、供給原料中で66.3重量%であり、生成物中で23.27重量%まで低下し、炭素数9以上の芳香族化合物類の有意な脱アルキル化を示している。生成物中のC6-C8芳香族化合物類は21.73重量%であり、供給原料中の21.37重量%からわずかに変化していた。
【0106】
【0107】
液体生成物の沸点分布を表16に示す。
【0108】
【0109】
表16の結果は、生成物の13.1重量%が240℃未満で沸騰し、生成物の16.5重量%が280℃未満で沸騰することを示している。240℃未満で沸騰する13.1重量%の液体生成物を考慮して、供給原料の重量%として種の対応する収率を計算し、表17に示す。
【0110】
【0111】
さらに、実施例1に概説した供給原料組成(重量%)から表17の収率を差し引くことによって、新しいまたは新しく形成された種の収率を得て、表18に示す。
【0112】
【0113】
表18のデータは、供給原料中のアルキル芳香族化合物類が他のパラフィン、ナフテン、およびオレフィン化合物類に転化することを明確に示している。さらに、供給原料中の高分子量化合物が低分子量成分に転化する。表18のデータは、明らかにC9~C12芳香族化合物類の減少を示す。この減少は、供給原料中の炭素数9以上の芳香族化合物類と比較して53%であった。この割合の減少は、表18の炭素数9以上の芳香族化合物類の相違を表3の炭素数9以上の芳香族化合物類で除し、その結果を%減少として表すことによって計算した。さらに、C6-C8芳香族化合物類の生成は、同様の計算によって36.4%(たとえば、C6-C8芳香族化合物類の割合増加)であった。
【0114】
〔実施例5〕
実験条件は表8に概説された通りであり、データは実施例2および3に記載のように計算して、追加の研究を実施例1および3と同様に行った。240℃未満で沸騰する液体生成物についてのDHA結果を表19に示す。
【0115】
【0116】
表1に示すDHA結果と表9、表14、および表19に示すデータとを比較すると、供給原料流(たとえば、
図1の炭化水素流1)と生成物流(たとえば、
図1の炭化水素生成物流2、処理された炭化水素流4等)との間の組成物変化が明らかになる。
【0117】
重質で未知のものは含まない基準で、DHA分析結果を表20に示す。
【0118】
【0119】
表15および表20のデータは、供給原料流(たとえば、
図1の炭化水素流1)と比較した生成物流(たとえば、
図1の炭化水素生成物流2、処理された炭化水素流4等)中における芳香族化合物の含有量の著しい低下を示している。
【0120】
液体生成物の沸点分布を表21に示す。
【0121】
【0122】
表21の結果は、生成物の13.5重量%が240℃未満で沸騰し、生成物の28.2重量%が280℃未満で沸騰することを示している。240℃未満で沸騰する13.5重量%の液体生成物を考慮して、供給原料の重量%での対応する収率を計算し、表22に示す。
【0123】
【0124】
さらに、実施例1に概説した供給原料組成(重量%)から表22の収率を差し引くことにより、新しいまたは新たに形成された種の収率を得て、表23に示す。
【0125】
【0126】
表23のデータは、供給原料中のアルキル芳香族化合物類が他のパラフィン、ナフテン、およびオレフィン化合物類に転化することを明確に示している。さらに、供給原料中の高分子量化合物が低分子量成分に転化する。表23のデータは、明らかに、(i)C9~C12芳香族化合物類の減少:実施例4に概説したような同様の計算を用いて炭素数9以上の芳香族化合物類の45.9%減少、および(ii)C6-C8芳香族化合物類の形成または増加:実施例4に概説したような同様の計算を用いて20.12パーセントの増加を、示している。
【0127】
〔実施例6〕
実験条件は表8に概説された通りであり、データは実施例2および3に記載されているように計算して、追加の研究も実施例1および3と同様に行った。液体生成物の沸点分布を表24に示す。
【0128】
【0129】
表24の結果は、生成物の21.8重量%が240℃未満で沸騰し、生成物の50.3重量%が280℃未満で沸騰することを示している。
【0130】
全体として、実施例3~6の結果の要約を表25に示す。
【0131】
【0132】
実施例3~6のデータは、より高い運転温度では、沸点が240℃未満の生成物および沸点が280℃未満の生成物への転化率が増加することを示している。さらに、より低い圧力およびより高い温度では、炭素数9~12の芳香族化合物類の収率が減少する一方、炭素数6~8の芳香族化合物類の収率は維持または改善される。さらに、より高い圧力では、C6~C8芳香族化合物類の収率も低下する。得られた生成物を、下流の水素化ユニットでは従来の水素化触媒を適用することにより、または同じ反応器(たとえば、水素化処理反応器)では接触時間を増やすことにより、穏やかな水素化によって、1重量%未満の生成オレフィン含有量まで飽和させることができる。全体として、データは、炭素数6~8の芳香族化合物類を維持しながら、かつ同時に脱塩化水素および水素化クラッキングを行ないながら、高級アルキル芳香族化合物類を選択的に脱アルキル化することができることを示している。
【0133】
当業者によって理解されるように、および本開示の助けを借りると、生成芳香族含有量は、水素圧力のみならず供給原料芳香族含有量に依存する。実施例1~6のDHA分析から分かるように、240℃未満で沸騰する液体中の芳香族含有量は、240℃未満で沸騰する炭化水素生成物の合計重量を基準として、炭化水素生成物中12~40重量%の範囲であり、これは、240℃未満で沸騰する供給原料の合計重量を基準として、240℃未満で沸騰する供給原料中の約70重量%の芳香族含有量から著しく低下している。これらのデータは、有意な開環水素化クラッキングを示している。
【0134】
さらに、実施例1~6のデータは、240℃未満で沸騰する供給原料の合計重量を基準にして、240℃未満で沸騰する液体供給原料中の炭素数9以上の芳香族含有量53.6重量%が、240℃未満で沸騰する炭化水素生成物の合計重量を基準として、240℃未満で沸騰する炭化水素生成物カット中の約2.98~20.17重量%の範囲に低下することを示している。これらのデータは、炭素数9以上の芳香族化合物類の有意な転化を示す。より高い圧力では、240℃未満で沸騰する炭化水素生成物のより低い芳香族含有量が観察され、より低い圧力では、240℃未満で沸騰する炭化水素生成物のより高い芳香族含有量が観察される。
【0135】
〔追加的開示〕
以下は、非限定的な例として提供される列挙された実施形態である。
【0136】
第一の態様は、炭化水素流を水素化脱アルキル化する方法であって、(a)炭素数9以上の芳香族炭化水素類を含む前記炭化水素流を水素の存在下に水素化処理反応器中で水素化処理触媒と接触させて炭化水素生成物を得る工程;および(b)処理された炭化水素流を前記炭化水素生成物から回収する工程であって、前記処理された炭化水素流が炭素数9以上の芳香族炭化水素類を含み、前記処理された炭化水素流中の炭素数9以上の芳香族炭化水素類の量が、前記接触する工程(a)中における前記炭化水素流からの炭素数9以上の芳香族炭化水素類の少なくとも一部の水素化脱アルキル化により、前記炭化水素流中の炭素数9以上の芳香族炭化水素類の量より少ない工程を含む。
【0137】
第二の態様は、前記炭化水素流を水素化処理触媒と接触させる前記工程(a)が約100℃~約550℃の温度で行われる、第一の態様の方法である。
【0138】
第三の態様は、前記炭化水素流を水素化処理触媒と接触させる前記工程(a)が、約1バール(bara:絶対圧)~約200バール(barg:ゲージ圧)の圧力で行われる、第一および第二の態様のいずれか1つの方法である。
【0139】
第四の態様は、前記水素化処理触媒が、前記水素化処理触媒を硫化物類および塩化物類を含む流れに接触させることによりその場でおよび/またはその場以外の場所で活性化され、前記水素化処理触媒が、脱塩化水素、水素化クラッキングおよび水素化脱アルキル化を同時に行うように活性化される、第一から第三の態様のいずれか1つの方法である。
【0140】
第五の態様は、前記炭化水素流を水素化処理触媒に接触させる前記工程(a)が、約0.1/時~約10/時の重量空間速度で行われる、第一から第四の態様のいずれか1つの方法である。
【0141】
第六の態様は、前記炭化水素流を水素化処理触媒と接触させる前記工程(a)が、約10NL/L~約3,000NL/Lの水素対炭化水素比で実施される、第一から第五の態様のいずれか1つの方法である。
【0142】
第七の態様は、前記水素化処理触媒が、アルミナ担体上のコバルトおよびモリブデン、アルミナ担体上のニッケルおよびモリブデン、アルミナ担体上のタングステンおよびモリブデン、アルミナ担体上の白金およびパラジウム、硫化ニッケル、アルミナ担体上の硫化ニッケル、硫化モリブデン、アルミナ担体上の硫化モリブデン、硫化ニッケルおよび硫化モリブデン、アルミナ担体上の硫化ニッケルおよび硫化モリブデン、コバルトおよびモリブデンの酸化物、アルミナ支持体上のコバルトおよびモリブデンの酸化物、またはそれらの組み合わせを含む第一から第六の態様のいずれか1つの方法である。
【0143】
第八の態様は、前記炭化水素流を水素化処理触媒と接触させる前記工程(a)が、さらに、前記炭化水素流に含まれるおよび/または添加された一種または二種以上の硫化物類を前記水素化処理触媒に接触させることを含む、第一から第七の態様のいずれか1つの方法である。
【0144】
第九の態様は、前記炭化水素流は、前記炭化水素流の硫黄含有量が前記炭化水素流の合計重量を基準として約0.05重量%~約5重量%になるのに有効な量の、一種または二種以上の硫化物類が前記炭化水素流に含まれるおよび/または添加されている第八に記載の方法である。
【0145】
第十の態様は、前記炭化水素流は、前記炭化水素流の塩化物含有量が前記炭化水素流の合計重量を基準として約10ppm以上になる量の、一種または二種以上の塩化物化合物類が前記炭化水素流に含まれるおよび/または添加され、前記処理された炭化水素流は、前記処理された炭化水素流の塩化物含有量が前記処理された炭化水素流の合計重量を基準として約10ppm未満になる量の、一種または二種以上の塩化物化合物類を含む第一~第九の態様のいずれか1つの方法である。
【0146】
第十一の態様は、前記炭化水素流は、さらに、前記炭化水素流の塩化物含有量が、前記炭化水素流の合計重量を基準として約200ppm以上になる量の、一種または二種以上の塩化物化合物類を含む第一~第十の態様のいずれか1つの方法である。
【0147】
第十二の態様は、前記処理された炭化水素流は、さらに、前記処理された炭化水素流の塩化物含有量が前記処理された炭化水素流の合計重量を基準として約10ppm未満になる量の、一種または二種以上の塩化物化合物を含み、前記方法が、さらに、前記処理された炭化水素流をスチームクラッカーに供給することを含む第一~第十一の態様のいずれか1つの方法である。
【0148】
第十三の態様は、前記処理された炭化水素流が、約370℃未満の沸点終点を特徴とする第十二の態様の方法である。
【0149】
第十四の態様は、処理された炭化水素流を前記炭化水素生成物から回収する前記工程(b)が、(i)分離器中において硫黄および塩素含有ガスから処理された生成物を分離すること、および、(ii)前記処理された炭化水素流中の前記処理された生成物を前記分離器から流出させること、を含む第一~第十三の態様のいずれか1つの方法である。
【0150】
第十五の態様は、処理された炭化水素流を前記炭化水素生成物から回収する前記工程(b)が、(i)中間の処理された生成物を分離器内において硫黄および塩素含有ガスから分離する工程と、(ii)中間の処理された炭化水素流中の前記中間の処理された生成物を前記分離器から蒸留塔へ流出させて、約370℃未満の沸点終点を特徴とする処理された炭化水素流および約370℃以上の沸点終点を特徴とする重質の処理された炭化水素流を生成する工程と、(iii)前記処理された炭化水素流の少なくとも一部をスチームクラッカーに供給する工程と、(iv)前記重質の処理された炭化水素流の少なくとも一部を前記水素化処理反応器に炭化水素流として再循環させる工程とを含む、第一?第十四の態様のいずれか1つの方法である。
【0151】
第十六の態様は、前記炭化水素流が、炭素数6~8の芳香族炭化水素類を含み、前記処理された炭化水素流が、炭素数6~8の芳香族炭化水素類を含み、前記処理された炭化水素流中の炭素数6~8の芳香族炭化水素類の量が、工程(a)中における前記炭化水素流からの炭素数9以上の芳香族炭化水素類の少なくとも一部の水素化脱アルキル化により、前記炭化水素流中の炭素数6~8の芳香族炭化水素類の量より多い第一~第十五の態様のいずれか1つの方法である。
【0152】
第十七の態様は、前記炭化水素流が、炭素数6~8の芳香族炭化水素類および重質炭化水素分子を含み、前記処理された炭化水素流が、炭素数6~8の芳香族炭化水素類を含み、前記処理された炭化水素流中の炭素数6~8の芳香族炭化水素類の量が、前記炭化水素流中の炭素数6~8の芳香族炭化水素類の量と比較した場合に少なくとも1重量%以上増加しており、炭素数6~8の芳香族炭化水素類の量の増加は、炭素数9以上の芳香族炭化水素類の少なくとも一部の水素化脱アルキル化および/または工程(a)中における前記炭化水素流からの重質炭化水素分子の少なくとも一部の水素化クラッキングが原因である、第一~十六の態様のいずれか1つの方法である。
【0153】
第十八の態様は、工程(a)中に水素化脱アルキル化される炭素数9以上の芳香族炭化水素類の少なくとも一部が、前記炭化水素流中の炭素数9以上の芳香族炭化水素類の約5重量%以上である第一~第十七の態様のいずれか1つの方法である。
【0154】
第十九の態様は、前記炭化水素流中の炭素数9以上の芳香族炭化水素類の量が、前記炭化水素流の合計重量を基準として約1重量%~約99重量%である第一~第十八の態様のいずれか1つの方法である。
【0155】
第二十の態様は、前記炭化水素流が、プラスチック熱分解油、タイヤ熱分解油、石油起源流、石油精製流、熱分解ガソリン、アルキル芳香族含有流、またはそれらの組み合わせを含む第一~第十九の態様のいずれか1つの方法である。
【0156】
第二十一の態様は、炭化水素流を水素化処理する方法であって、前記炭化水素流の、脱塩化水素、水素化クラッキング、および水素化脱アルキル化を同時に行うことを含んでなり、前記方法は、
(a)塩化物類および硫化物類を含有する前記炭化水素流を水素の存在下に水素化処理触媒と接触させて炭化水素生成物を得る工程であって、前記炭化水素流が、(i)塩化物含有量が前記炭化水素流の合計重量を基準にして約10ppm以上になる量の一種または二種以上の塩化物化合物類;(ii)硫黄(S)含有量が前記炭化水素流の合計重量を基準として約0.05重量%~約5重量%になる量の一種または二種以上の硫化物化合物類;(iii)炭素数5~8の炭化水素類;(iv)重質炭化水素分子;および、(v)炭素数9以上の芳香族炭化水素類を含む工程;ならびに、
(b)処理された炭化水素流を前記炭化水素生成物から回収する工程であって、前記処理された炭化水素流が、塩化物含有量が前記処理された炭化水素流の合計重量を基準として約10ppm未満になる量の一種または二種以上の塩化物化合物類を含み、一種または二種以上の塩化物化合物類の減少は、接触する前記工程(a)中における前記炭化水素流の脱塩化水素が原因であり、前記処理された炭化水素流が、重質炭化水素分子を含み、前記処理された炭化水素流中の重質炭化水素分子の量は、接触の前記工程(a)中における前記炭化水素流からの重質炭化水素分子の少なくとも一部の水素化クラッキングにより、前記炭化水素流中の重質炭化水素分子の量より少なく、前記処理された炭化水素流が、炭素数9以上の芳香族炭化水素類を含み、前記処理された炭化水素流中の炭素数9以上の芳香族炭化水素類の量は、接触の前記工程(a)中における前記炭化水素流からの炭素数9以上の芳香族炭化水素類の少なくとも一部の水素化脱アルキル化により、前記炭化水素流中の炭素数9以上の芳香族炭化水素類の量より少ないことを特徴とする工程、を含む方法である。
【0157】
第二十二の態様は、前記水素化処理触媒が、前記水素化処理触媒を硫化物類および塩化物類を含む流れに接触させることによりその場でおよび/またはその場以外の場所で活性化され、前記水素化処理触媒が、脱塩化水素、水素化クラッキング、および水素化脱アルキル化を同時に行うように活性化される、第二十一の態様の方法である。
【0158】
第二十三の態様は、プラスチック廃棄物を処理する方法であって、
(a)プラスチック廃棄物を炭化水素流に変換する工程であって、前記炭化水素流が、(i)塩化物含有量が前記炭化水素流の合計重量を基準にして約10ppm以上になる量の一種または二種以上の塩化物化合物類;(ii)硫黄(S)含有量が前記炭化水素流の合計重量を基準として約0.05重量%~約5重量%になる量の一種または二種以上の硫化物化合物類;(iii)炭素数5~8の炭化水素類;(iv)重質炭化水素分子;および、(v)炭素数9以上の芳香族炭化水素類を含む工程;
(b)前記炭化水素流の少なくとも一部を水素の存在下に水素化処理触媒と接触させて炭化水素生成物を得る工程;
(c)処理された炭化水素流を前記炭化水素生成物から回収する工程であって、処理された炭化水素流が、塩化物含有量が前記処理された炭化水素流の合計重量を基準として約10ppm未満になる量の一種または二種以上の塩化物化合物類を含み、一種または二種以上の塩化物化合物類の減少は、接触する前記工程(b)中における前記炭化水素流の脱塩化水素が原因であり、前記処理された炭化水素流が、重質炭化水素分子を含み、前記処理された炭化水素流中の重質炭化水素分子の量は、接触の前記工程(b)中における前記炭化水素流からの重質炭化水素分子の少なくとも一部の水素化クラッキングにより、前記炭化水素流中の重質炭化水素分子の量より少なく、前記処理された炭化水素流が、炭素数9以上の芳香族炭化水素類を含み、前記処理された炭化水素流中の炭素数9以上の芳香族炭化水素類の量は、接触の前記工程(b)中における前記炭化水素流からの炭素数9以上の芳香族炭化水素類の少なくとも一部の水素化脱アルキル化により、前記炭化水素流中の炭素数9以上の芳香族炭化水素類の量より少ない工程;ならびに、
(d)前記処理された炭化水素流の少なくとも一部をスチームクラッカーに供給して、高価値生成物を生成する工程であって、前記処理された炭化水素流が、塩化物含有量、オレフィン含有量、沸点終点、および硫黄含有量についてのスチームクラッカー供給要求事項を満たし、前記高価値生成物が、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、芳香族化合物類、またはそれらの組み合わせを含む工程、を含む方法である。
【0159】
第二十四の態様は、前記プラスチック廃棄物が、約400重量ppm以上のポリ塩化ビニルおよび/またはポリ塩化ビニリデンを含む第二十三の態様の方法である。
【0160】
第二十五の態様は、前記プラスチック廃棄物が、ポリオレフィン類、ポリスチレン類、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、またはそれらの組み合わせを含む第二十三または第二十四の態様に記載の方法。
【0161】
第二十六の態様は、前記水素化処理触媒が、前記水素化処理触媒を硫化物類および塩化物類を含む流れに接触させることによりその場でおよび/またはその場以外の場所で活性化され、前記水素化処理触媒が、脱塩化水素、水素化クラッキングおよび水素化脱アルキル化を同時に行うように活性化される、第二十三~第二十五のいずれか1つの態様の方法。