(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】抗分泌性因子17
(51)【国際特許分類】
C07K 7/08 20060101AFI20220111BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20220111BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20220111BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220111BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220111BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220111BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220111BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20220111BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220111BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20220111BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C07K7/08
C07K14/47 ZNA
A61K38/08
A61P31/04
A61P29/00
A61P35/00
A61P3/10
A61P1/12
A61P25/00
A61K38/10
A61K38/16
(21)【出願番号】P 2019502254
(86)(22)【出願日】2017-07-18
(86)【国際出願番号】 EP2017068111
(87)【国際公開番号】W WO2018015379
(87)【国際公開日】2018-01-25
【審査請求日】2019-03-28
(32)【優先日】2016-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】508318845
【氏名又は名称】ラントメネン・メディカル・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ランゲ
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/181324(WO,A1)
【文献】特表2016-505588(JP,A)
【文献】特表2009-535328(JP,A)
【文献】特表2007-506735(JP,A)
【文献】特開2008-043331(JP,A)
【文献】国際公開第2015/157283(WO,A1)
【文献】Annual Review of Entomology,2012年,Vol.58,p.475-496
【文献】Expert Opinion on Biological Therapy,2011年,Vol.11, No.11,p.1469-1484
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド、または等価な機能活性を有するその薬学的に活性な塩であって、前記ペプチドが配列番号1(AF)に示された抗分泌性因子(AF)タンパク質の断片に相当し、配列番号
3のアミノ酸(aa)位置
2番におけるシステインジスルフィドを含む配列番号
7(
VC(C)HSKTR
SNPENNVGL)に示されたアミノ酸配列を少なくとも含み、抗分泌性活性を有する、前記単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド、または等価な機能活性を有するその薬学的に活性な塩。
【請求項2】
16~25アミノ酸
長である、請求項
1に記載の単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド。
【請求項3】
配列番号7に示されたアミノ酸配列(VC(C)HSKTRSNPENNVGL
)からなる、請求項1
または2に記載の単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド。
【請求項4】
少なくとも0.2h、好ましくは少なくとも0.5h、1h、または1.5hのt1/2を有する、請求項1~
3のいずれか1項に記載の単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド。
【請求項5】
少なくとも1.8hのt1/2を有する、請求項1~
4のいずれか1項に記載の単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド。
【請求項6】
医学における使用のための、請求項1~
5のいずれか1項に記載の単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド。
【請求項7】
病理学的体液輸送、感染症、炎症、炎症反応、TBI、TBI関連状態および症状、腫瘍、腫瘍関連合併症、がん、コンパートメント症候群、神経膠芽腫、糖尿病、ならびに下痢からなるリストから選択される疾患または状態を治療するかつ/または予防することにおける使用のための、または、活性物質の細胞取込みを最適化することにおける使用のため、神経保護のため、および/またはカルベオラを正常化するための、請求項1~
6のい
ずれか1項に記載の単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド。
【請求項8】
二次的脳損傷から選択されるTBIおよび/またはTBI関連状態もしくは症状を治療するかつ/または予防することにおける使用のための、請求項1~
7のいずれか1項に記載の単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド。
【請求項9】
後天的脳損傷を治療するかつ/または予防することにおける使用のための、請求項1~
8のいずれか1項に記載の単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチドと、適した医薬担体とを含む医薬組成物。
【請求項11】
病理学的体液輸送、感染症、炎症、炎症反応、TBI、TBI関連状態、腫瘍、腫瘍関連合併症、がん、コンパートメント症候群、神経膠芽腫、糖尿病、および下痢からなるリストから選択される疾患または状態を治療するかつ/または予防することにおける使用のための、または、活性物質の細胞取込みを最適化することにおける使用のため、神経保護のため、および/またはカルベオラを正常化するための、請求項
10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
TBIと関連している二次的脳損傷のようなTBIを治療するかつ/または予防することにおける使用のため、または後天的脳損傷を治療するかつ/または予防することにおける使用のための、請求項
10に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
抗分泌性因子(AF)は、炎症を抑制し、体液輸送を調節するタンパク質複合体であり、AF複合体は、修飾プロテアソームに属する。抗分泌性因子(AF)タンパク質配列上のアミノ酸位置35~50間に位置する止痢配列AF-16を含む合成ペプチドは、以前特徴付けられている(特許文献1;特許文献2)。AF16は、血漿中で急速に分解することが知られている。本発明は、血漿中でのAF-16の主要な代謝的運命を開示しており、これは、AF16の急速なジスルフィド形成であり、アミノ酸位置2(C2)でのシステインジスルフィドを含むAF-16(以下、AF-17と称される)をもたらす。可逆的であるこの作用は、急速なペプチダーゼ分解からAF16を明らかに保護する。この驚くべき見識に基づいて、本発明は、初めて、それを必要とする患者に投与された場合、AF16の実質的に延長された半減期をもたらす、AF-17を含む合成ペプチドを開示する。
【背景技術】
【0002】
抗分泌性因子(AF)
抗分泌性因子(AF)は、元々、下痢疾患および腸の炎症に対する保護を提供することが報告された41kDaのタンパク質である(総説に関しては、非特許文献1を参照されたい)。抗分泌性因子(AF)タンパク質は、配列決定されており、そのcDNAは、クローン化されている。抗分泌性活性は、止痢配列の特に4、6、7、8または16などの少なくとも4~16アミノ酸を含む、抗分泌性因子(AF)タンパク質配列(すなわち止痢配列/コンセンサス配列)上のアミノ酸位置35から50間に位置するペプチドによって主に発揮されるように見える。免疫化学的および免疫組織化学的調査により、抗分泌性因子(AF)タンパク質が存在し、また身体における大部分の組織および器官によって合成されることがあることが明らかになった。止痢/コンセンサス配列またはその断片を含む合成ペプチドは、以前特徴付けられている(特許文献1;特許文献2)。抗分泌性因子(AF)タンパク質およびペプチドは、コレラ毒素の負荷後の腸および中枢神経系における脈絡叢におけるなどの病理学的体液輸送および/または炎症反応を正常化することが以前開示された(特許文献1)。したがって、例えば、特許文献1において、AFの内在性合成を誘発するまたは添加されたAFの取込みの能力を有する食品および飼料は、浮腫、下痢、脱水症および炎症の治療に有用であることが示唆された。特許文献3は、抗分泌性因子(AF)タンパク質の形成を誘発する食品の作製のための酵素活性を有する生成物の使用を開示している。特許文献4は、天然の抗分泌性因子(AF)タンパク質、それ自体として(NASP)が濃縮された食品生成物をさらに開示している。
【0003】
抗分泌性因子(AF)タンパク質およびその断片は、細胞の喪失および/または獲得と関連している状態の治療において神経組織の修復、ならびに幹細胞および前駆細胞ならびにそれに由来する細胞の増殖、アポトーシス、分化、ならびに/または遊走を改善すること(特許文献2)、コンパートメント症候群の治療および/または予防に関して(特許文献5)、眼内高血圧の治療および/または予防(特許文献6)において同等に有効であることも示された。
【0004】
本発明者らは、AFが膜における脂質ラフト、受容体および/またはカベオラの構造、分布および複数の機能をモニターするかつ/またはこれらに有利に影響を与えることができ、したがって、細胞膜における脂質ラフトおよび/またはカベオラの構造的組織崩壊および機能障害の治療および/または予防に有用であることをさらに示した(特許文献7)。
【0005】
本発明者らは、さらに、同じ抗分泌性因子(AF)タンパク質、ならびにそのペプチドおよび断片がFAKおよびCAPを介して膜貫通タンパク質、例えばNKCC1の生物学的活性化に介入し得ること、したがって、それが病理学的かつ/または乱された細胞におけるイオンチャネルの病理学的活性を直接的に調節し、前記細胞における細胞内圧および膜貫通タンパク質機能を効果的に正常化し、したがって、例えばがん療法において使用される薬物の改善された取込みを可能にすることを明らかにすることができた(特許文献8)。
【0006】
本発明者らは、AF1(抗分泌性因子1)と命名されたタンパク質を血液から単離し、そのコード遺伝子を配列決定した。後に、AF1は、それ自体PSMD4、RPN10またはS5aと命名された19Sプロテアソームサブユニットの構成物であることが示された。細菌エンテロトキシンおよびプロセシングされたシリアルが抗分泌性因子(AF)の改変された形を誘発することができ、これは、腸における炎症および体液分泌を抑制したことがさらに示された。AFのこの修飾された形は、多糖アガロースに結合することが見出された。α-メチルグルコシドでの溶出後、その濃度は、ELISAによって決定される。
【0007】
驚くべきことに、プロテアソームがプロセシングされたシリアル(SPC)の取込み後に補体因子C3と反応することが最近実証された。この反応は、以前隠されていた抗分泌性エピトープの暴露をもたらし、プロテアソーム/補体複合体形成は、その不活性型C3cへのC3の分割をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】WO97/08202
【文献】WO05/030246
【文献】WO98/21978
【文献】WO00/038535
【文献】WO07/126363
【文献】WO07/126364
【文献】WO07/126365
【文献】WO2010/093324
【非特許文献】
【0009】
【文献】The antisecretory factor:synthesis,anatomical and cellular distribution,and biological action in experimental and clinical studies.Int Rev Cytol,2001.210:p.39-75.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、AF-16の投与から利益を得る多くの医学的状態がある。残念ながら、それは、一度投与された患者の身体において非常に短い半減期を有することが示された。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、一度投与された患者の身体において実質的に延長された半減期を有する、単離、組換え、または合成的に作製された保護されたAF16代謝産物(本明細書では、AF-17と称される)を初めて提出する。
【0012】
一実施形態では、本発明は、配列番号3(AF-16)に示されたアミノ酸配列と、配列番号3のアミノ酸位置2番におけるシステインジスルフィドとを含み、抗分泌性活性を有する、以下、AF-17(配列番号7に示された)と称される、単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド、または等価な機能活性を有するその薬学的に活性な塩に関する。
【0013】
異なる種におけるAF16の相対的安定性が
図12に示されている。初めて本明細書で文書化されるように、種に関係なく、AF16は、10分以下のin vitro半減期(t
1/2)で急速に消えている。本発明者らは、さらに、投与後のペプチドAF-16の分子の運命を初めて決定することができ、これは、AFの任意の薬理作用の薬物動態学的基礎の徹底的な理解および改善されたin vitro半減期(t
1/2)を有する新規なAF-ペプチド(AF-17)の開発につながり、それを必要とする患者への投与後に活性AF物質の運命をモニターするための改善された手段を可能にし、結果として、活性AFおよび/またはAFペプチドの投薬計画を最適化するための改善された手段につながる。
【0014】
本発明は、初めて、AFの主要な代謝産物をAF16(AF-17)のシステインジスルフィドと同定する。可逆的であるAF16の急速なジスルフィド形成は、急速なペプチダーゼ分解からAF16を明らかに保護し、AF16がはるかに高い程度までその標的にインタクトに到達することを可能にし、かつ/またはそれを必要とする患者への投与後の活性AF物質の運命をモニターするための手段を改善し、結果として最適化された活性AFおよび/またはAFペプチドの投薬計画につながる保護機能である。
【0015】
本明細書で明らかにされるように、本発明者らは、AF-17のin vitro薬物動態学的特性を初めて総合的に扱い研究し、AF-17を、それを必要とする患者に直接投与し得ること、および例えば実験3に示されているように、AF-17がコレラ毒素の負荷後に、腸におけるなど、病理学的体液輸送および/または炎症反応を正常化するのにAF-16と少なくとも同じくらい効果的であることを明らかにした。AF-16が病理学的体液輸送および/または炎症反応を正常化すること、TBI、腫瘍および/または腫瘍関連合併症を治療するかつ/または予防すること、がん、コンパートメント症候群、神経膠芽腫、糖尿病および下痢を治療すること、低分子薬物などの所与の薬物の細胞取込みを最適化すること、神経保護、およびカルベオラを正常化することから選択されるがこれらに限定されない様々な種々の疾患および状態に効果的であることが以前示され、かつAF-17がAF-16の天然の代謝産物であることを考えれば、本明細書で開示されたAF-17は、AF-16が効果的であることが知られているのと同じ疾患および/または状態を治療するのにAF-16と少なくとも同じくらい効果的であることが仮定される。
【0016】
したがって、本発明は、抗分泌性因子(AF)タンパク質(AF-17)からなる、これを含む、これに由来する、かつ/またはこれに基づく新規な改善された単離組換えまたは合成活性ペプチドおよび医学におけるその使用を開示する。特に、本発明は、本明細書で記載された、外傷性脳損傷(TBI)を治療するためのAF-17の使用に関する。
【0017】
さらに、長年にわたる抗分泌性タンパク質(AF)の広範な研究からよく知られているように、その内在性タンパク質は、タンパク質のコア活性配列(AF-6、配列番号2に示された)がインタクトである限り、全て、証明された同様の抗分泌性効果を有する多量のより小さいペプチドに転写後にプロセシングされる。したがって、自然環境において、抗分泌性タンパク質(AF)が分解されるかつ/またはAF-6を含むより小さいペプチドに転写後にプロセシングされることになる、かつそれらのより小さいペプチドの代謝産物がAF-16の観察された運命と類似して、AF-6の唯一のシステインにおける、すなわち配列番号2に示されたAF-6のアミノ酸位置1におけるジスルフィドによって少なくとも保護されることにもなることは、当然である。
【0018】
したがって、本発明は、単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド、または等価な機能活性を有するその薬学的に活性な塩であって、該ペプチドが配列番号1(AF)に示された抗分泌性因子(AF)タンパク質の断片および/または等価な活性を有するその相同体に相当し、配列番号2(AF-6)に示されたアミノ酸配列と、配列番号2のアミノ酸位置1番におけるシステインジスルフィドとを少なくとも含み、抗分泌性活性ならびに配列番号2のアミノ酸位置1番におけるシステインジスルフィドを含まない、配列番号1(AF)に示された抗分泌性因子(AF)タンパク質の同一の断片および/またはその相同体からなるペプチドと比較して改善されたin vitro半減期(t1/2)を有する、前記単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド、または等価な機能活性を有するその薬学的に活性な塩にさらに関する。
【0019】
現在好ましい実施形態では、本発明の単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチドは、配列番号3(AF-16)に示されたアミノ酸配列と、配列番号3のアミノ酸位置2番におけるシステインジスルフィドとを含む。
【0020】
本発明による単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチドは、6~25アミノ酸長、好ましくは6、7、8、9、16または17アミノ酸長などの7~17、6~16、7~20、7~17、16~25、16~20、17~20、17~25アミノ酸長である。ある特定の実施形態では、それは、少なくとも6、7、16、または17アミノ酸長かつ/または最大7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25アミノ酸長である。
【0021】
本発明による単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチドは、配列番号7に示されたアミノ酸配列(VC(C)HSKTRSNPENNVGL)、または配列番号8に示されたアミノ酸配列(C(C)HSKTR)、または配列番号9に示されたアミノ酸配列(VC(C)HSKTR)を典型的に含む。
【0022】
本発明による単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチドは、配列番号7に示されたアミノ酸(VC(C)HSKTRSNPENNVGL)、または配列番号8に示されたアミノ酸配列(C(C)HSKTR)、または配列番号9に示されたアミノ酸配列(VC(C)HSKTR)から典型的になる。
【0023】
本発明による単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチドは、少なくとも1.8hのt1/2などの少なくとも0.2h、好ましくは少なくとも0.25h、0.3h、0.4h、0.5h、1h、または1.5h、1.9h、2.0h、2.5hのt1/2を典型的に有する。
【0024】
本発明は、病理学的体液輸送、感染症、炎症、炎症反応、TBI、TBI関連状態、腫瘍、腫瘍関連合併症、がん、コンパートメント症候群、神経膠芽腫、糖尿病、および下痢からなるリストから選択される疾患または状態を治療するかつ/または予防することにおける使用のためなどの、医学における使用のための本発明による単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチドにさらに関する。本発明は、活性物質の細胞取込みを最適化するため、神経保護のためおよび/またはカルベオラを正常化するための本発明による単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチドにさらに関する。
【0025】
一実施形態では、本発明による単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチドと、適した医薬担体とを含む医薬および/または化粧品組成物が構想される。
【0026】
本発明による医薬および/または化粧品組成物は、病理学的体液輸送、感染症、炎症、炎症反応、TBI、TBI関連状態、腫瘍、腫瘍関連合併症、がん、コンパートメント症候群、神経膠芽腫、糖尿病、および下痢からなるリストから選択される疾患または状態を治療するかつ/または予防することにおける使用を目的とする。本発明は、活性物質の細胞取込みを最適化するため、神経保護のためおよび/またはカルベオラを正常化するための本発明による医薬および/または化粧品組成物にさらに関する。
【0027】
それを必要とする患者における病理学的体液輸送および/または炎症反応を正常化する方法、ならびに/または活性物質の細胞取込みを最適化するため、神経保護のため、および/もしくはカルベオラを正常化するためおよび/もしくは病理学的体液輸送、感染症、炎症、炎症反応、TBI、TBI関連状態、腫瘍、腫瘍関連合併症、がん、コンパートメント症候群、神経膠芽腫、糖尿病、および下痢からなるリストから選択される疾患または状態を治療するかつ/または予防するための方法であって、それを必要とする動物またはヒトに本発明による単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチドまたは前記ペプチドを含む医薬組成物の有効量を投与することを含む方法にも関する。
【0028】
さらに、本発明は、配列番号7、8または9に示されたアミノ酸配列を本質的に有するペプチドに対する抗体、ならびに哺乳類およびヒトを含めた動物などの生物における前記タンパク質またはその相同体もしくは断片を検出することにおけるその使用に関する。
【0029】
相当するペプチドを作製するための、配列番号1~9のいずれかに示されたアミノ酸配列を本質的に有するペプチドをコードする核酸の使用であって、前記ペプチドが少なくとも配列番号1のアミノ酸(aa)位置36番における、配列番号2のaa位置1番における、配列番号3のaa位置2番にける、および/または配列番号4のaa位置2番における少なくとも1つのシステインジスルフィドを含む、使用も本明細書で提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】システインの酸化を示す図である。A:スルフェン酸、B:スルフィン酸、C:スルホン酸である。
【
図2】AF16のN-エチルマレイミド類似体(AF16-NEM)を示す図である。
【
図3】AF16(A)およびAF16-NEM(B)のヒト血漿および緩衝液安定性を示す図である。
【
図4】ヒト血漿中のAF16のLC-MS検出分解生成物を示す図である。
【
図5】Caco-2細胞の存在下でのAF16分解を示す図である。+PIは、プロテアーゼ阻害剤カクテルを示す。
【
図6】Caco-2細胞の存在下でのAF16分解の代謝産物形成動態を示す図である。青いダイヤモンド形は、AF16、赤い四角は、AF16+阻害剤カクテルである。
【
図7】Caco-2細胞の存在下でのAF16分解の代謝産物形成動態を示す図である。青いダイヤモンド形は、AF16、赤い四角は、AF16+阻害剤カクテルである。
【
図8】Caco-2細胞の存在下でのAF16分解の代謝産物形成動態を示す図である。青いダイヤモンド形は、AF16、赤い四角は、AF16+阻害剤カクテルである。
【
図9】Caco-2細胞の存在下でのAF16の分解、決定された構造の示唆された経路を示す図である。
【
図10】10℃で20hにわたる異なる沈殿法でのAF16の相対的安定性を示す図である。20hにわたる3回の同じサンプルの繰返し注入の結果を示す。TCAおよびMeCNは、経時的に良好な明らかな安定性を示すことが明らかである。わずかな消失が20hでのZnSO4で注目される。経時的な著しい喪失がMeOHで示されている。AF16は、MeOHで安定であるが、ペプチドは、アルコール混合物に限定された溶解性を有することがあることが知られているので、喪失は、ペプチド沈殿が原因である可能性がある。
【
図11】10℃で20hにわたる異なる沈殿法でのAF16の相対的安定性を示す図である。MS-強度(イオンカウント)に換算した互いに比較した上で得られたデータのダイヤグラムである。TCA沈殿は、最も強いシグナルを示し、参照として設定された。非有機的方法が後れを取っていることが明らかであるが、これは、共溶出抑制イオンによる可能性が高い。最良の安定性を有する2つの方法(TCAおよびMeCN)は、500倍を超える感度の差異を示しており、したがって、継続的研究に関して、TCAは、研究にわたって使用されることが選択された。
【
図12】10℃で20hにわたる異なる沈殿法でのAF16の相対的安定性を示す図である。
【
図13A】ヒト(最上位)およびラット(最下位)血漿中のAF16および同定された代謝産物の動態を示す図である。
【
図13B】ヒト(最上位)およびラット(最下位)血漿中のAF16および同定された代謝産物の動態を示す図である。
【
図14】592.3/594.4代謝産物の高解像度スキャンを示す図である。
【
図15】血漿沈殿剤としてZnSO4および+/-DTTを使用した、AF16および同定された代謝産物の動態を示す図である。A:ヒト+DTT、B:ヒト-DTT、C:ラット+DTTおよびD:ラット-DTTである。AF16は、完全な円で示されている。
【
図16】ヒト血漿中の主要な同定された生成物の相対的形成を示す図である。
【
図17】ラット血漿中の主要な同定された生成物の相対的形成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
定義および略語
略語
IFP:間質液圧;
PBS:リン酸緩衝生理食塩水;
AF:抗分泌性因子、全長AFタンパク質(配列番号1に示された)
AF-6:ヘキサペプチドCHSKTR(配列番号2に示された);
AF-7:アミノ酸C(C)HSKTR(配列番号8に示された)からなるペプチド;
AF-16:アミノ酸VCHSKTRSNPENNVGL(配列番号3に示された)からなるペプチド;
AF-17:アミノ酸VC(C)HSKTRSNPENNVGL(配列番号7に示された)からなるペプチド;
AF-8:セプタペプチドVCHSKTR(配列番号4に示された);
AF-9:アミノ酸VC(C)HSKTR(配列番号9に示された)からなるペプチド;オクタペプチドIVCHSKTR(配列番号5に示された);
ペンタペプチドHSKTR(配列番号6に示された);
SPC:特別にプロセシングされたシリアル;
RTT:AF(ASP)の含有量を測定するためのSE9000028-2(刊行物番号466331)において公表された、ラット小腸における標準化された分泌応答を測定するための方法;
AF:抗分泌性因子;
ELISA:酵素結合免疫吸着検定法;
PBS:リン酸緩衝生理食塩水;
AP:アルカリホスファターゼ;
BSA:ウシ血清アルブミン;
mAb:モノクローナル抗体;
LC-MS/MS:ナノフロー液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法;
PAGE:ポリアクリルアミドゲル電気泳動。
HSV1:単純ヘルペスウイルス-1
TBI:外傷性脳損傷
【0032】
定義
タンパク質は、ペプチド結合によって一緒に連結されたアミノ酸残基によって構成された生体高分子である。タンパク質は、アミノ酸の線状重合体として、ポリペプチドとも称される。典型的に、タンパク質は、50~800のアミノ酸残基を有し、したがって、約6,000から約数十万ダルトン以上の範囲内の分子量を有する。小さいタンパク質は、ペプチド、ポリペプチド、またはオリゴペプチドと称される。「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」という用語は、本文脈において互換的に使用される。ペプチドは、2~50アミノ酸残基(aa)などの非常に少ないアミノ酸残基を有し得る。
【0033】
「抗分泌性」という用語は、本文脈では、分泌および/または体液輸送を抑制するまたは減少させることを意味する。本文脈では、「抗分泌性因子タンパク質」、「抗分泌性因子(AF)タンパク質」、「AF-タンパク質」、AF、またはその相同体、誘導体もしくは断片という用語は、特許文献1において定義された「抗分泌性因子」または「抗分泌性因子タンパク質」という用語と互換的に使用され、抗分泌性因子(AF)タンパク質またはペプチドまたは抗分泌性および/もしくは等価な機能および/もしくは類似体活性を有するその相同体、誘導体および/もしくは断片を、またはポリペプチドの機能を改変しないその修飾物を表す。したがって、本文脈における「抗分泌性因子」、「抗分泌性因子タンパク質」、「抗分泌性ペプチド」、「抗分泌性断片」、または「抗分泌性因子(AF)タンパク質」は、その誘導体、相同体または断片も表し得ることが理解されるべきである。これらの用語は、全て本発明の文脈において互換的に使用される。さらに、本文脈では、「抗分泌性因子」という用語は、「AF」に省略することがある。本文脈における抗分泌性因子(AF)タンパク質は、特許文献1およびWO00/38535において以前定義された抗分泌性特性を有するタンパク質も表す。抗分泌性因子は、例えば特許文献2にも開示されている。
【0034】
SPC(C)は、特別にプロセシングされたシリアル(SPC)を含む医療食品である。
【0035】
「医療食品」は、本文脈では、食品、飼料または栄養補助食品、または特別な食事使用のための食品を表し、これらは、抗分泌性因子(AF)タンパク質を用いて製造されている、または代わりに、内在性AFの合成および/または活性化を誘発する能力を有する。前記食品は、液体または粉末などの液体または固体形態の任意の適した食品、または任意の他の適した食材とすることができる。そのような物質の例は、WO0038535またはWO91/09536に見出される。
【0036】
また、抗分泌性因子という用語によって意図されるSalovum(C)は、例えばSE900028-2およびWO00/38535に記載されており、以下にさらに記載されている、抗分泌性因子(NASP)の高い含有量で卵黄において提供される天然の抗分泌性因子(NASP)である。
【0037】
本発明の詳細な説明
本発明は、初めて、AFの主要な代謝産物をAF16(AF-17)のシステインジスルフィドと同定する。可逆的であるAF16の急速なジスルフィド形成は、急速なペプチダーゼ分解からAF16を明らかに保護し、AF16がはるかに高い程度までその標的にインタクトに到達することを可能にし、かつそれを必要とする患者への投与後の活性AF物質の運命をモニターするための手段を改善し、結果として最適化された活性AF物質、全長AF、AFの断片および/またはAFペプチドの投薬計画につながる保護機能である。本明細書で初めて文書化されるように、改善されたin vitro半減期(t1/2)を有する新規な合成的に作製されたまたは単離組換えAF-ペプチド(AF-17)が開示され、これは、それを必要とする患者への投与後の活性AF物質の運命をモニターするための改善された手段を可能にし、結果として、活性AFおよび/またはAFペプチドの投薬計画を最適化するための改善された手段につながる。
【0038】
一実施形態では、本発明は、以下でAF-17(配列番号7に示された)と称される単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド、または等価な機能活性を有するその薬学的に活性な塩であって、配列番号3(AF-16)に示されたアミノ酸配列と、配列番号3のアミノ酸位置2番におけるシステインジスルフィドとを含み、該ペプチドが抗分泌性活性を有する、前記単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド、または等価な機能活性を有するその薬学的に活性な塩に関する。
【0039】
別の実施形態では、本発明は、以下でAF-7(配列番号8に示された)と称される、単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド、または等価な機能活性を有するその薬学的に活性な塩であって、配列番号2(AF-6)に示されたアミノ酸配列と、配列番号3のアミノ酸位置1番におけるシステインジスルフィドとを含み、該ペプチドが抗分泌性活性を有する、前記単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド、または等価な機能活性を有するその薬学的に活性な塩に関する。
【0040】
さらに別の実施形態では、本発明は、以下でAF-9(配列番号9に示された)と称される、単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド、または等価な機能活性を有するその薬学的に活性な塩であって、配列番号4(AF-8)に示されたアミノ酸配列と、配列番号4のアミノ酸位置2番におけるシステインジスルフィドとを含み、該ペプチドが抗分泌性活性を有する、前記単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド、または等価な機能活性を有するその薬学的に活性な塩に関する。
【0041】
本明細書で明らかにされるように、本発明者らは、例えば実験3に示されているように、コレラ毒素の負荷後に、腸におけるなど、病理学的体液輸送および/または炎症反応を正常化するのにAF-16と少なくとも同じくらい効果的である本発明によるペプチドを初めて開示する。本発明によるペプチドは、病理学的体液輸送および/または炎症反応を正常化すること、TBI、腫瘍および/または腫瘍関連合併症を治療するかつ/または予防すること、がん、コンパートメント症候群、神経膠芽腫、糖尿病および下痢を治療すること、所与の薬物の細胞取込みを最適化すること、神経保護、およびカルベオラを正常化することから選択されるがこれらに限定されない様々な種々の疾患および状態において効果的である。
【0042】
したがって、本発明は、抗分泌性因子(AF)タンパク質(AF-17)からなる、これを含む、これに由来する、かつ/またはこれに基づく新規な改善された単離組換えまたは合成活性ペプチドおよび医学におけるその使用を開示する。特に、本発明は、病理学的体液輸送、感染症、炎症、炎症反応、TBI、TBI関連状態、腫瘍、腫瘍関連合併症、がん、コンパートメント症候群、神経膠芽腫、糖尿病、および下痢からなるリストから選択される疾患または状態を治療するかつ/または予防するため、または活性物質の細胞取込みを最適化するため、神経保護のためおよび/またはカルベオラを正常化するための本明細書で記載されたAF-17、AF-7、および/またはAF-9の1つまたは組合せの使用に関する。
【0043】
本発明は、抗分泌性因子(AF)タンパク質(AF-17)からなる、これを含む、これに由来する、かつ/またはこれに基づく新規な改善された単離組換えまたは合成活性ペプチドおよび特に、抗分泌性因子(AF)17と称される新規なペプチドを開示する。そのペプチドは、例えば、ヒトを含めた動物における病理学的体液輸送および/または炎症反応を正常化するために使用される。AF-17は、免疫検出に、動物を育てるための飼料添加物として、止痢薬ならびに浮腫、脱水症および/または炎症を伴う疾患に対する薬剤としてさらに使用される。
【0044】
抗分泌性因子
抗分泌性因子は、身体において天然に生じるタンパク質のクラスである。ヒト抗分泌性因子AFタンパク質は、脳下垂体から単離された場合、382~288アミノ酸を含む41kDaのタンパク質である。本発明による活性部位は、そのタンパク質のN末端に近い領域におけるタンパク質に局在していることがあり、特に、配列番号1のアミノ酸1~163、より具体的には、抗分泌性因子(AF)タンパク質配列上のアミノ酸位置35~50に局在している。AFの生物学的効果は、配列番号2(AF-6)に示された、前記コンセンサス配列の少なくとも6アミノ酸を含む、またはそのポリペプチドおよび/またはペプチドの生物学的機能を改変しないその修飾物を含む任意のペプチドまたはポリペプチドによって発揮される。
【0045】
本発明者らは、抗分泌性因子が、より詳細には、19S/PA700capにおける、全ての細胞において支配的な構成物、26Sプロテアソームのサブユニットを構成するタンパク質S5a、およびRpn10とある程度まで相同であることを示した。本発明では、抗分泌性因子(AF)タンパク質は、同じ機能的特性を有する相同タンパク質のクラスと定義される。抗分泌性因子は、また、トロンボスポンジン-1に結合することが知られており、がん進行と関連しているアンギオシジン、別のタンパク質アイソフォームと高度に類似している。
【0046】
本発明による抗分泌性因子(AF)タンパク質および/またはペプチドの相同体、誘導体および断片は、全て類似した生物活性を有する。相同体、誘導体および断片は、本文脈では、天然の抗分泌性因子(AF)タンパク質のものに相当する少なくとも6アミノ酸(配列番号2に示された)を含み、これは、ポリペプチドおよび/またはペプチドの必須の生物学的機能を改変することなく、抗分泌性因子の生物活性を最適化するために、1つまたはそれ以上アミノ酸を変化させることによってさらに修飾されていてもよい。
【0047】
誘導体によって、本文脈では、直接的または修飾もしくは部分的置換によって別の物質に由来する、本明細書で定義された抗分泌性因子と等価な活性および/または機能的に等価な活性を有するタンパク質が意図されており、ここで、1つまたはそれ以上のアミノ酸が別のアミノ酸に置換されており、このアミノ酸は、修飾アミノ酸または非天然アミノ酸とすることができる。例えば、本発明による抗分泌性因子誘導体は、N末端および/またはC末端保護基を含み得る。N末端保護基の一例は、アセチルを含む。C末端保護基の一例は、アミドを含む。
【0048】
さらに、本発明による抗分泌性因子(AF)タンパク質、ペプチド、相同体、誘導体および/または断片のアミノ酸配列と少なくとも72%、75%、77%、80%、82%、85%、87%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるなど、少なくとも70%同一である任意のアミノ酸配列も本発明の範囲内であると考えられる。
【0049】
参照アミノ酸配列と少なくとも例えば95%同一のアミノ酸配列を有するタンパク質、その相同体、誘導体、ペプチドおよび/または断片によって、アミノ酸配列が参照アミノ酸配列の各100アミノ酸あたり最大5つの点変異を含み得ることを除いて、例えばペプチドのアミノ酸配列が参照配列と同一であることが意図されている。言い換えれば、参照アミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るために、参照配列中のアミノ酸の最大5%を欠失させ得るまたは別のアミノ酸と置換し得る、または参照配列中の総アミノ酸の最大5%であるいくつかのアミノ酸を参照配列に挿入し得る。参照配列のこれらの変異は、参照アミノ酸配列のアミノまたはカルボキシ末端位置またはこれらの末端位置間のどこかで生じ得、参照配列中のアミノ酸中に個々にまたは参照配列内の1つまたはそれ以上の隣接する群で散在し得る。
【0050】
本発明では、ローカルアルゴリズムプログラムが同一性を決定するために最適である。ローカルアルゴリズムプログラム(Smith Watermanなどの)は、ある配列中のサブ配列を第2の配列中のサブ配列と比較し、サブ配列およびそれらのサブ配列のアラインメントの組合せを見出し、これは、最も高い全体的類似度スコアをもたらす。内部ギャップは、可能であれば、ペナルティを課される。ローカルアルゴリズムは、共通の単一ドメイン、または結合部位のみを有する2つの多ドメインタンパク質を比較するのに良く機能する。
【0051】
同一性および類似度を決定するための方法は、公的に利用可能なプログラムにおいて体系化されている。2つの配列間の同一性および類似度を決定するための好ましいコンピュータプログラム方法は、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J et al(1994))BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Altschul,S.F.et al(1990))を含むが、これに限定されない。BLASTXプログラムは、NCBIおよび他の供給源(BLAST Manual,Altschul,S.F.et al,Altschul,S.F.et al(1990))から公的に利用可能である。各配列分析プログラムは、デフォルトスコアリングマトリックスおよびデフォルトギャップペナルティを有する。一般に、分子生物学者は、使用されるソフトウェアプログラムによって確立されたデフォルト設定を使用することが期待されている。
【0052】
本明細書で定義された抗分泌性因子(AF)タンパク質またはペプチドまたは等価な活性を有するその相同体、誘導体および/もしくは断片は、6~16アミノ酸など、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20アミノ酸以上などの6アミノ酸以上を含み得る。他の好ましい実施形態では、抗分泌性因子は、7、9または17アミノ酸からなる。ある特定の実施形態では、本発明による抗分泌性因子(AF)タンパク質、その相同体、誘導体、ペプチドおよび/または断片は、6、7、8、9、15、16または17アミノ酸からなる。
【0053】
現在好ましい実施形態では、単離組換えかつ/または合成ペプチドAF-17(配列番号7に示された)、または等価な機能活性を有するその薬学的に活性な塩は、配列番号3(AF-16)に示されたアミノ酸配列と、配列番号3のアミノ酸位置2番におけるシステインジスルフィドとを含み、前記ペプチドは、抗分泌性活性を有する。
【0054】
別の好ましい実施形態では、単離組換えかつ/または合成ペプチド、または等価な機能活性を有するその薬学的に活性な塩は、配列番号2(AF-6)に示されたアミノ酸配列と、配列番号2のアミノ酸位置1番におけるシステインジスルフィドとを少なくとも含み、前記ペプチドは、抗分泌性活性を有する。
【0055】
さらに別の好ましい実施形態では、単離組換えかつ/または合成ペプチド、または等価な機能活性を有するその薬学的に活性な塩は、配列番号4(AF-8)に示されたアミノ酸配列と、配列番号4のアミノ酸位置2番におけるシステインジスルフィドとを少なくとも含み、前記ペプチドは、抗分泌性活性を有する。
【0056】
本発明による抗分泌性因子(AF)タンパク質、その相同体、誘導体、ペプチドおよび/または断片は、in vivoまたはin vitroで作製し得る、例えば組換えで、合成的にかつ/または化学的に合成し得る、かつ/またはブタの脳下垂体またはトリの卵からなど、抗分泌性因子の天然の供給源から単離し得る。作製後、本発明による抗分泌性因子(AF)タンパク質、その相同体、誘導体、ペプチドおよび/または断片は、より小さい抗分泌性活性断片への化学的または酵素的切断によって、および/またはアミノ酸の修飾によって、および/またはペプチドのシステインにおけるジスルフィド連結を介した配列番号2のアミノ酸位置1番における、代わりに、配列番号3のアミノ酸位置2番におけるシステインの付加によってなど、さらにプロセシングされることがある。
【0057】
精製によって純粋な形で抗分泌性因子(AF)タンパク質を得ることは現在不可能である。しかしながら、特許文献1および特許文献2において以前開示されたように、生物学的に活性な抗分泌性因子タンパク質を組換えでまたは合成的に作製することは可能である。特許文献1もまた、7~80アミノ酸のこのタンパク質の生物学的に活性な断片の作製を開示している。
【0058】
本文脈では、本発明による抗分泌性因子(AF)タンパク質、その相同体、誘導体、ペプチドおよび/または断片は、哺乳類(ヒトを除く)において作製された抗分泌性因子(AF)タンパク質の天然の代謝産物、または組換えで作製され、かつ場合により化学的に修飾された、もしくは合成的に作製されたペプチドである。
【0059】
本発明による抗分泌性因子(AF)タンパク質、その相同体、誘導体、ペプチドおよび/または断片は、N末端および/またはC末端保護基をさらに含み得る。N末端保護基の一例は、アセチルを含む。C末端保護基の一例は、アミドを含む。
【0060】
本発明の好ましい実施形態では、本発明による抗分泌性因子(AF)タンパク質、その相同体、誘導体、ペプチドおよび/または断片は、アミノ酸の通常の一文字の略語を使用して、配列番号7~9、すなわちVC(C)HSKTRSNPENNVGL(本文脈では、AF-17とも称される、配列番号7)、C(C)HSKTR(本文脈では、AF-7とも称される、配列番号8)、VC(C)HSKTR(本文脈では、AF-9とも称される、配列番号9)から選択される。添付の配列表に明記されているように、上に明記された配列中のアミノ酸のいくつかを、他のアミノ酸に置き換え得る。
【0061】
本発明は、配列番号7~9によるペプチドのいずれかの2つまたはそれ以上の組合せも意図する。
【0062】
さらに別の実施形態では、本発明は、本明細書で開示された医薬組成物の使用にも関し、これは、2つもしくはそれ以上の本発明による抗分泌性因子(AF)タンパク質、その相同体、誘導体、ペプチドおよび/または断片を含む。
【0063】
ジスルフィド
本文脈では、ジスルフィドは、一般構造R-S-S-Rを有する官能基を表す。その連結は、SS結合またはジスルフィド架橋とも称され、2つのチオール基のカップリングに通常由来する。正式な言い方では、結合は、その同類物、過酸化物(R-O-O-R)と類似した、パースルフィドである。
【0064】
システイン(CysまたはCと省略される)は、式HO2CCH(NH2)CH2SH>を有する準必須タンパク新生アミノ酸である。それは、コドンUGUおよびUGCによってコードされる。Cysにおけるチオール側鎖は、求核剤として酵素反応にしばしば関与する。チオールは、酸化に感受性であり、多くのタンパク質における重要な構造的役割を果たすジスルフィド誘導体システインをもたらす。
【0065】
システイン残基は、最も化学的に複雑なアミノ酸の1つであり、活性酸素または代謝的に修飾された生体異物/薬物などの反応性求電子剤に対する求核剤としても酸化還元化学反応に典型的に関与する。AF16は、配列番号2の位置2に1つのシステイン残基を含有する。AF-17、またはAF-7およびAF-9などであるが、これらに限定されない本出願によるペプチドを含む任意の他のジスルフィドは、したがって、他のシステインとの反応(ジスルフィド形成)、求電子剤との反応による、硫黄の両方の酸化に対して保護されており、したがって、タンパク分解活性に対してより靭性がある。
【0066】
合成
ジスルフィド結合は、スルフヒドリル(-SH)基の酸化から通常形成される。過酸化水素を含めたいろいろなオキシダントがこの反応を促進する。このような反応は、スルフェン酸中間体を介して進行すると考えられている。実験室では、塩基の存在下でヨウ素がチオールをジスルフィドに酸化するために通例用いられる。代わりに、タンパク質におけるジスルフィド結合は、チオール-ジスルフィド交換によってしばしば形成される。このような反応は、ある場合には、酵素によって媒介され、他の場合には、平衡制御下に、特に、触媒量の塩基の存在下にある。
【0067】
多くの専門化された方法がジスルフィドを形成するために、有機合成における適用のために開発され、本発明による合成AF-17またはAF-7またはAF-9またはAF-7に基づくAF-ジスルフィドペプチドを作製するために用いられ得る。
【0068】
AF16は、
図3Aに示されているように血漿に対する高度な感度を示す。分解の動態は、0.4hのin vitro半減期(t1/2)を示す。AF-17は、ほぼ5倍高い安定性、t1/2=1.8hを有することが予測される。AF16は、体循環における酵素および化学分解に高度に感受性である。AF-17は、システイン部分が修飾されているので、酵素および化学反応に対して靭性がある。
【0069】
Caco-2細胞透過性実験中のAF16の定量的パイロット実験は、ペプチドの急速な消失を明らかに示した(示さず)。腸に、およびそのようにCaco-2細胞の頂端側に、刷子縁ペプチダーゼが存在することがよく知られている。AF16の分解の動態は、8分のt1/2で記載されているように非常に急速である。
【0070】
AF16および同様の量の同位体標識されたペプチドを実験1に記載されているようにラットおよびヒトの血漿中でインキュベートした。フルスキャンMSデータの分析に関して、Sciex,Lightsight製の代謝産物同定ソフトウェアを使用し、これは、品質管理(QC)サンプルに対するインキュベートされたMS応答を比較し、明らかなピークを質量電荷比(m/z)値を有する代謝産物として割り当てる。最も大きい代謝産物ピーク領域を順位付けし、ある場合には、MS/MS断片化によって検証した。スカイライン手法を使用して、小量がモニターされるように創造的で感度の良いMRM方法においても助けられ、同定されたペプチドの断片化を予測した。
【0071】
表6は、同定された生成物および30分のインキュベーションでのそれらの相対量を列挙している。MS感度は、異なることがあり、したがって、百分率は、変化し得る。結果を再検討すると、同定されたピークの相対的面積に基づいて、表6においてM1と命名された1つの代謝産物が他のものよりかなり大きいことが明らかであった。しかしながら、同定された質量ペア(m/z625/630)は、どの異化生成物(予想されるタンパク質ペプチド結合切断)にも相当しなかった。このペアは、ここで、AF-16(AF-17)のシステインジスルフィドと同定される。
【0072】
医学的治療
TBI
外傷性脳損傷(TBI)は、症状および能力障害の広範な範囲を有する複雑な損傷である。外傷性脳損傷(TBI)は、頭蓋内損傷としても知られており、それは、外力が脳を外傷性に損傷する場合に生じる。TBIは、重症度、機構(閉鎖性または穿通性頭部損傷)、または他の機能(例えば、特定の場所においてまたは広範な面積にわたって生じる)に基づいて分類し得る。本文脈では、TBIは、頭部損傷も含むものとし、すなわちそれは、頭皮および頭蓋骨などの脳以外の構造へのダメージを伴い得る。
【0073】
TBIは、特に、子供および若年成人において世界中で死および能力障害の主要な原因である。原因は、落下、自動車事故、および暴力を含む。頭部外傷は、頭蓋内の突然の加速/減速によってまたは運動と突然の衝撃の両方の複雑な組合せによって、頭部への局所的衝撃の結果として生じ得る。損傷の瞬間に生じるダメージに加えて、頭部外傷は、二次的損傷、損傷の直後または数日で起こるいろいろな事象を引き起こす。脳血流量および頭蓋骨内の圧力の変化を含むこれらのプロセスは、最初の損傷からのダメージに実質的に寄与する。
【0074】
TBIは、ホストに身体的、認知的、社会的、情緒的、および行動的効果を引き起こし得、結果は、完全な回復から永久的な能力障害または死までにわたり得る。
【0075】
本文脈では、以下の用語および定義は、TBIの/TBIに関する異なる損傷を表し、その全ては、単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド、または等価な機能活性を有するその薬学的に活性な塩であって、該ペプチドが配列番号1(AF)に示された抗分泌性因子(AF)タンパク質の断片および/または等価な活性を有するその相同体に相当し、配列番号3(AF-16)に示されたアミノ酸配列と、配列番号3のアミノ酸位置2番におけるシステインジスルフィドなどの、配列番号2(AF-6)に示されたアミノ酸配列と、配列番号2のアミノ酸位置1番におけるシステインジスルフィドとを少なくとも含む、前記単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド、または等価な機能活性を有するその薬学的に活性な塩をそれを必要とする患者に投与することによって治療可能である:閉鎖性頭部損傷、開放性頭部損傷、びまん性軸索損傷、挫傷、貫通性外傷、および二次的損傷。
【0076】
現在開示された単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド、または等価な機能活性を有するその薬学的に活性な塩であって、該ペプチドが配列番号1(AF)に示された抗分泌性因子(AF)タンパク質の断片および/または等価な活性を有するその相同体に相当し、配列番号3(AF-16)に示されたアミノ酸配列と、配列番号3のアミノ酸位置2番におけるシステインジスルフィドなどの、配列番号2(AF-6)に示されたアミノ酸配列と、配列番号2のアミノ酸位置1番におけるシステインジスルフィドとを少なくとも含む、前記単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド、または等価な機能活性を有するその薬学的に活性な塩は、炎症および細胞損傷または死を促進する化学物質の膨張および放出などの二次的TBIを治療するかつ/または予防するのに特に有用である。これは、頭蓋内圧を増加させ、脳脊髄液が頭蓋骨からの流れ出るのを妨げ得る脳の膨張を引き起こす。これは、圧力および脳ダメージのさらなる増加を引き起こす。これが制御されず、防がれていない場合、脳は、頭蓋底を脱漏し(押し通し)、呼吸不全および死を引き起こし得る。この二次的損傷の予防は、損傷後の急性の医療ケアの焦点である。
【0077】
したがって、現在好ましい実施形態における本発明は、二次的TBI損傷を治療するかつ/または予防するための医薬組成物の製造のための本発明による単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチドの使用に関する。本発明は、二次的TBI損傷を治療するかつ/または予防するための本発明による単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチドの使用に、二次的TBI損傷を治療するかつ/または予防することにおける使用のための本発明による単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチドに、ならびにそれを必要とする患者に前記患者を治療するかつ/または治すのにおよび/またはTBI損傷の症状を予防するのに十分な量で本発明による単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチドを投与することによって二次的TBI損傷を治療するかつ/または予防する方法に同等に関する。
【0078】
二次的TBI損傷は、以下のものを含む:
・頭蓋内出血(頭蓋骨内の出血)
・脳膨張
・増加した頭蓋内圧(頭蓋骨内の圧力)
・酸素の欠乏と関連している脳ダメージ
・貫通性外傷に共通の頭蓋骨内の感染
・細胞死につながる化学的変化
・頭蓋骨内の増加した体液(水頭症)
【0079】
後天的脳損傷-
後天的脳損傷は、先天的、分娩時外傷、遺伝性または退行性以外の損傷である。これは、外傷性脳損傷を含む。後天的脳損傷の非外傷性の型では、脳は、通常散在性損傷している。これらの損傷は、外傷性脳損傷に通常含まれないが、症状は、同じ範囲に及ぶ。共通の原因は、無酸素および低酸素である。これらは、脳への酸素の欠乏および脳への不十分な酸素である。それらは、呼吸に関連する、心拍停止または出血に関連する器質的問題のために起こり得る。薬物および中毒も後天的外傷性脳損傷を引き起こし得る。一酸化炭素中毒も脳損傷を引き起こし得る中毒の例である。
【0080】
現在開示された単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド、または等価な機能活性を有するその薬学的に活性な塩であって、該ペプチドが配列番号1(AF)に示された抗分泌性因子(AF)タンパク質の断片および/または等価な活性を有するその相同体に相当し、配列番号3(AF-16)に示されたアミノ酸配列と、配列番号3のアミノ酸位置2番におけるシステインジスルフィドなどの、配列番号2(AF-6)に示されたアミノ酸配列と、配列番号2のアミノ酸位置1番におけるシステインジスルフィドとを少なくとも含む、前記単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド、または等価な機能活性を有するその薬学的に活性な塩は、後天的脳損傷を治療するかつ/または予防するのに同等に有用である。
【0081】
したがって、現在好ましい実施形態における本発明は、後天的脳損傷を治療するかつ/または予防するための医薬組成物の製造のための本発明による単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチドの使用に関する。本発明は、後天的脳損傷を治療するかつ/または予防するための本発明による単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチドの使用に、後天的脳損傷を治療するかつ/または予防することにおける使用のための本発明による単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチドに、および本発明による単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチドを十分な量でそれを必要とする患者に投与することによって後天的脳損傷を治療するかつ/または予防する方法に同等に関する。
【0082】
がん
一実施形態では、本発明は、単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド、または等価な機能活性を有するその薬学的に活性な塩であって、該ペプチドが配列番号1(AF)に示された抗分泌性因子(AF)タンパク質の断片および/または等価な活性を有するその相同体に相当し、配列番号3(AF-16)に示されたアミノ酸配列と、配列番号3のアミノ酸位置2番におけるシステインジスルフィドなどの、配列番号2(AF-6)に示されたアミノ酸配列と、配列番号2のアミノ酸位置1番におけるシステインジスルフィドとを少なくとも含む、前記単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド、または等価な機能活性を有するその薬学的に活性な塩をそれを必要とする患者に投与することによって特徴付けられる、神経膠芽腫などであるがこれに限定されないがんを治療するための方法に関する。前記方法は、本発明の一実施形態では、最適化された薬物取込みおよびさらなる医薬物質の送達を促進するために使用し得る。
【0083】
神経膠芽腫などであるがこれに限定されないがんに罹っている哺乳類を治療するための前記方法は、現在好ましい実施形態では、最適化された薬物取込みおよびさらなる医薬物質の送達を促進するために食品、食材および/または栄養補助食品を前記患者に供給し、それによってAFの内在性作製を誘発することを含み得る。
【0084】
前記医薬物質および/または製剤は、本文脈では、坑がん剤、抗腫瘍剤、放射線療法、免疫学的物質および/または細胞ならびに抗生物質、外傷後損傷を標的とする薬物、神経変性を標的とする薬物、ならびに炎症状態に対する薬物からなる群から選択される。前記さらなる医薬物質は、神経膠芽腫(GBM腫瘍)などであるがこれに限定されないがんの治療においてナノ粒子および/またはその製剤の形とすることができる。
【0085】
以下で、本発明の実施形態を詳細に記載することになる。以下に個々に開示される実施形態は、単離または合成ペプチドおよびそのペプチドの意図された使用の例であることに留意されたい。本発明は、これらの例に限定されない。
【0086】
コンパートメント症候群
さらに、本発明は、一実施形態では、コンパートメント症候群を治療するかつ/または予防するための医薬組成物の製造のための本発明による単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチドの使用に関する。本発明は、コンパートメント症候群を治療するかつ/または予防するための本発明による単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチドの使用に、コンパートメント症候群を治療するかつ/または予防することにおける使用のための本発明による単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチドに、および本発明による単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチドを十分な量でそれを必要とする患者に投与することによって、後天的脳損傷を治療するかつ/または予防する方法に同等に関する。
【0087】
一実施形態では、本発明は、単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド、または等価な機能活性を有するその薬学的に活性な塩であって、該ペプチドが配列番号1(AF)に示された抗分泌性因子(AF)タンパク質の断片および/または等価な活性を有するその相同体に相当し、配列番号3(AF-16)に示されたアミノ酸配列と、配列番号3のアミノ酸位置2番におけるシステインジスルフィドなどの、配列番号2(AF-6)に示されたアミノ酸配列と、配列番号2のアミノ酸位置1番におけるシステインジスルフィドとを少なくとも含む、前記単離組換えかつ/または合成的に作製されたペプチド、または等価な機能活性を有するその薬学的に活性な塩をそれを必要とする患者に投与することによって特徴付けられる、コンパートメント症候群またはその症状を治療するかつ/または予防するための方法に関する。前記方法は、本発明の一実施形態では、最適化された薬物取込みおよびさらなる医薬物質の送達を促進するために使用し得る。
【実施例1】
【0088】
抗分泌性因子タンパク質(AF16)のペプチド断片の効果は、いくつかのグループによって様々な薬理学的機構においてかなりよく研究されている。研究の大部分は、タンパク質またはペプチドの薬理的/生理学的効果に焦点を置いている。しかしながら、AF16の薬物動態学的見地を扱う報告はより少ない。したがって、様々なマトリックスにおける全ての試験は、AF、またはおそらくその加えられたペプチド断片が効果を引き起こしている分子種であると仮定している。他の実験室における以前の研究は、実際、AFまたはAF16が例えばヒトまたはげっ歯類血漿において分解に感受性であることを示したが、詳細な調査は、行われていない。
【0089】
この実験は、ヒトのプールされた血漿とAF16薬理学的研究において通例使用されるCaco-2細胞の存在下での両方におけるAF16ペプチドのin vitro薬物動態および分子の運命を理解する努力を集約する。
【0090】
材料および方法
材料
AF16の固形材料および安定同位体標識(SIL)AF16 ISは、LantmannenのJan Bruhnによって提供された。Sahlgrenska HospitalのEwa Johanssonによって提供された情報に従って、ペプチドは、純度が約70%であり、他の構成要素は、4×トリフルオロ酢酸(TFA)および未知数×H2Oであった。しかしながら、簡潔さのために、ペプチドに関する全ての濃度は、100%であるとみなす。それらは、相対的基準に基づくので、この仮定は、本明細書で提出される結果に影響しない。全ての他の化学物質および消耗品は、一般的な商業的供給源からのものである。
【0091】
AF16のアルキル化および酸化
AF16の酸化を試験するために、50%過酸化水素(H2O2)溶液を使用した。2μl H2O2を(35mM最終濃度)15μM AF16の0.1M重炭酸アンモニウムの1ml溶液に添加した。混合後直ちに、溶液を質量分析計(MS)に注入して(直接注入)、酸化生成物を探した。酸化最終生成物、スルホン酸のみが検出され、その感度の良い多重反応方法(MRM)が作られた(表1)。同時実験では、過剰ジチオスレイトール(DTT)を加えると、DTTが酸化に対して保護したことが示された。AF16のN-エチルマレイミド(NEM)アルキル化バリアント(AF16-NEM)を、HPLCガラスバイアル中で10μl 0.1M NEMをPBS中の250μl 2mg/ml AF16と混合し、約1mM溶液をもたらすことによって作製した。MS分析前に、サンプルを周囲温度で30分間静置し、密封した。30分後、5%未満のAF16が残っており、AF16-NEMの感度の良いMRM方法が作られた(表1)。
【0092】
ヒト血漿およびCaco-2細胞におけるAF16安定性
血漿中のAF16およびAF16-NEM安定性の試験をHPLCガラスバイアル中37℃(20μMインキュベーション濃度)でプールされたヒト血漿(4人のドナー、2人の女性+2人の男性)を使用して行った。4つの異なるマトリックスを試験した:血漿:等張67mMリン酸カリウムpH7.4(KP)(1:1)、血漿:KP+0.1mM DTT、KPおよびKP+0.1mM DTT。インキュベーション時間は、0、1.5および3hであった。示された時間で、50μlアリコートを抽出し、150μl氷冷メタノール中でクエンチ/沈降させ、分析まで凍結させた。相対定量をUPLC-MS/MSで行った。Caco-2細胞の存在下でのAF16の運命の調査を3つの別々の時に行った。最初に、定量的測定を0、15、30および60分にわたってMRM手法を使用して行った(表1)。ここで、AF16またはその可能性のあるスルホン酸代謝産物を頂端と基底外側コンパートメントの両方においてモニターした(示さず)。第2の実験は、60分のインキュベーション中のAF16の運命の定性的決定であった。HBSS緩衝液中の50μM AF16をCaco-2細胞単層の頂端側でインキュベートし、100μlアリコートを5、10、20、30および60分で抽出した。サンプルを100μl MeCN/H2Oを含有する96ウェルプレート上に置いた。プレートを密封し、フルスキャンUPLC-MS分析まで凍結した(以下および表2を参照されたい)。第3の実験は、第2のミラーであり、唯一の違いは、構造解明を助けるためにAF16:AF16 IS(1:1)のHBSS溶液を使用したことであった。
【0093】
分析手順
異なるアッセイからの全てのサンプルをUPLC-MS/MSによって分析した。以下のシステム、Waters Acquity UPLC(Waters Corp.)に結合されたWaters XEVO TQ三連四重極質量分析計(エレクトロスプレーイオン化、ESI)を使用した。クロマトグラフ分離のために、一般的な勾配をC18 BEH1.7μmカラム2×100mm(Waters Corp.)上で使用した(3分の総走行にわたる1%移動相Bから50%)。移動相Aは、0.05%TFAからなり、移動相Bは、100%アセトニトリルからなった。流速は、0.5ml/分であった。5μLのサンプルを注入し、表1に報告した質量分析設定で走らせた。フルスキャンMS分析では、10μlを注入したことを除いて同じクロマトグラフィー設定を使用した(フルループ)。MSは、表1におけるコーン電圧を使用して100~400または400~700m/zウインドウにおいてイオンをスキャンするように設定した。表2における選択された親イオンの娘スキャン分析に関して、衝突エネルギーを10、20および40Vの間で段にした。AF16の親イオン、示唆された電荷および保持時間ならびに見出された代謝産物を表2に列挙する。
【0094】
【0095】
【0096】
結果
AF16のアルキル化および酸化
システイン残基は、最も化学的に複雑なアミノ酸の1つであり、酸化還元化学反応にだけでなく、活性酸素または代謝的に修飾された生体異物/薬物などの反応性求電子剤に対する求核剤としても典型的に関与する。AF16は、1つのシステイン残基を含有するため、酸化または他の修飾への感度がin vitroで生じるかどうかを試験することが重要であった。最初に、可能性のあるスルフェン、スルフィンおよびスルホン酸誘導体の分析MS方法を作ることが可能であるかどうかを確かめるために、過酸化水素でのAF16の酸化を行った(
図1)。過酸化水素は、低次種の検出を可能にするのに強すぎる酸化剤であることが証明され、したがって、スルホン酸類似体に関する方法のみを作った。
【0097】
後の実験においてシステインの役割をさらに探求するために、S-アルキル化バリアントをアルキル化試薬N-エチルマレイミド(NEM)を使用して作った(
図2)。したがって、NEM修飾AF16は、硫黄の酸化に対して、他のシステインと反応すること(ジスルフィド形成)、求電子剤と反応することから保護されており、非天然アミノ酸であるのでタンパク分解活性に対しておそらくより靭性がある。
【0098】
ヒト血漿中のAF16安定性。
AF16、安定同位体標識(SIL)AF16およびアルキル化類似体AF16-NEMを1μMでヒト血漿:0.1Mリン酸カリウムpH7.4(KP)(1:1)、ヒト血漿:KP(1:1)+1mM DTT、KPまたはKP+1mM DTTで37℃で3hにわたってインキュベートして、安定性を調査した。KPを含めて、血漿に緩衝液能力を提供し、pH関連効果で結果を混乱させないようにした。結果を
図3に示す。
【0099】
AF16は、
図3Aに示されるように、血漿に対する高度な感度を示す。分解の動態は、0.4hのin vitro半減期(t1/2)を示す。DTTを含めることには、t1/2を1.1hに増加させる保護効果があるように見える。興味深いことに、非天然AF16類似体(
図3B)は、ほぼ5倍高い安定性、t1/2=1.8hを有する。ここでも、DTTは、保護効果、t1/2=4.2hを課す。これらの結果は、AF16が体循環における酵素および化学分解に高度に感受性であることを示している。それは、システイン部分が修飾されている場合、AF16が酵素および化学反応に対して靭性があることも示している。両方の化合物を有するDTTの効果は、理解することがより難しいが、これは、DTTがカルボニル生成物、例えば、全てAF16に存在する、トレオニン、リシン、アルギニンおよびプロリンの形成などの一般的な酸化反応に対して保護することを反映している可能性が最も高い。AF16、SIL-AF16およびAF16-NEMの3hインキュベーションのフルスキャンLC-MS分析は、いくつかの興味深い結果を明らかにしており、
図4を参照されたい。2つの特徴的な分解生成物が見出され、5番目のペプチド結合(リシンおよびトレオニン)でのおよび10番目の結合(プロリンおよびグルタメイト)での切断が、理論上の断片VCHSK-TRSNP、TRSNP-ENNVGLおよびENNVGLをもたらした。断片TRSNP-ENNVGLおよびENNVGLは、LC-MSによって検出されたが、VCHSK-TRSNPは、検出されなかった。おそらく、検出されなかった断片は、インキュベーション中にさらなる分解を受けた。興味深いことに、AF16-NEMでのインキュベーションでは、明白なタンパク分解は、位置5で生じず、これは、N末端に対して作用するプロテアーゼ、例えばアミノペプチダーゼが除外されていることを示している。
【0100】
Caco-2細胞でのAF16安定性
Caco-2細胞透過性実験中のAF16の定量的パイロット実験は、ペプチドの急速な消失を明確に示した(示さず)。腸に、およびそのようなものとしてCaco-2細胞の頂端側に、刷子縁ペプチダーゼが存在することはよく知られている。これをさらに調査するために、別個の実験を設計した。Caco-2細胞をプロテアーゼ阻害剤カクテルを有するまたは有さない50μM AF16に頂端側で暴露し、1hにわたってサンプル採取した。AF16分解に関する結果を
図5に示す。
【0101】
AF16の分解の動態は、8分のt1/2で説明されるように、非常に急速である。阻害剤カクテルは、分解を著しく遅くする(t1/2=57分)が、複雑な動態を完全には示さない。AF16の分子の運命を理解するために、LC-MS分析を追跡した。抑制剤を有するまたは有さないインキュベーションでは、血漿安定性実験と比較して、いくつかの新規な代謝産物が検出された。しかしながら、これは、使用されたより高いインキュベーション濃度に依存する可能性がある。
図6~8は、実験時間にわたる代謝産物M1-M9の形成動態を示し、
図9は、これらの生成物に対して仮に決定された構造を示す。
【0102】
表3は、それぞれ、30および60分後の個々の分子種の相対量、±阻害剤カクテルを示す。明らかに主要な代謝産物(>10%)を太字の数字で示す。しかしながら、表3におけるような比較を行う場合、本発明者らが全ての個々のイオンが類似したMS感度を有すると仮定していることを言及することは、重要である。全ての同定された生成物は、特定のペプチド結合での切断に関係している。示唆されたアミノ酸組成物を表4に示す。
【0103】
阻害剤カクテルの非存在下では、3つの明らかな代謝産物、M1、M3およびM6が30分のインキュベーション後に優位を占める。60分のインキュベーション後、M3とM6の両方は、減少する一方、M1は、直線的に増加し続ける(
図6A/Cおよび7C)。
図9における示唆された経路を見ると、M3のさらなるN末端ペプチド切断がM1をもたらしたと仮定することは合理的である。M6の構造は不明だが、20分後に比較的急速に減少するので、これも、M6がM1の形成に寄与していることを示している可能性がある。他の代謝産物は、M1のさらなる分解生成物であることが示唆されたが、当然、より遅い経路によってより直接的な様式でも形成されよう。
【0104】
【0105】
阻害剤カクテルは、タンパク分解酵素、Bestatin(アミノペプチダーゼ)、Diprotin A(ジペプチジルペプチダーゼIV)およびCaptopril(アンジオテンシン変換酵素、カルボキシペプチダーゼ)の3つの抑制剤からなった。これらの酵素の抑制により、M1、M3およびM6の形成が効果的に最小化されることを理解することは興味深い。さらに、
図4、9および表4に示された理論上の生成物M7は、比較的線形の様式で形成され、抑制剤によって安定化されるように見える。これは、N末端作用プロテアーゼの抑制と一致している。
図8Aは、M7が抑制剤なしで最初に非常に急速に形成されるが、おそらく効率的にさらに代謝されることを示唆している。比較的小さいが、主要な代謝産物M8およびM9は、まだ今のところ同定されていない。これら2つの代謝産物が上記のペプチド結合切断よりもより複雑な化学的反応に由来する可能性は、かなりある。しかしながら、未知の代謝産物M6、M8およびM9の構造を理解しようと試み、既に構造的に割り当てられたものを検証するために、追加の実験をSIL標識AF16を使用して行った。しかしながら、この実験からは、M6がSILアミノ酸を含有し、M8およびM9が含有しないという事実以外は、さらなる情報は何も抽出できなかった。しかしながら、これは、さらに探求される必要がある。
【0106】
【0107】
AF16または検出された代謝産物のいずれかの透過性もCaco-2細胞での60分のインキュベーション時間後に基底外側でモニターした。しかしながら、代謝産物は、この実験では、抑制されたインキュベーションにおける特徴的なピークを与えるM8を除いて見出されなかった。
【0108】
結論およびさらなる研究
AF16のin vitro薬物動態をさらに理解するために、いくつかの重要なin vitro実験を行った。
AF16は、例えばポリスチレン表面に最も吸着しやすい。しかしながら、記載された対策は、効果を示さず、それがどのくらい厳しいかを解釈することは難しい。より高い濃度、>1μMで、効果は、明らかではなく、したがって、本発明者らのインキュベーションでは、効果は小さい可能性が最も高い。
本研究は、AF16ペプチドがヒト血漿とCaco-2細胞の両方の存在下でいくつかのペプチド生成物に分解することを示した。
分解は、両方のマトリックスにおいて非常に急速であり、類似した代謝経路を示し、主要な、線状に形成された明らかに安定な生成物としてM1をもたらす(5番目のペプチド結合(リシンおよびトレオニン)での切断)。
刷子縁ペプチダーゼの関与が阻害剤カクテルの強い効果によって証明され、これは、8から55分までin vitro t1/2を増加させる。プロテアーゼ抑制剤の存在下での代謝パターンの変化は、興味深いが、現在のところ未知の代謝産物(M8、M9)は、抑制剤の非存在下で著しい程度まで形成されない可能性が最も高い。
N-エチルマレイミドでの位置2でのシステインの保護は、ヒト血漿中のペプチドを大きく安定化する。アミノペプチダーゼの活性の除去による可能性が最も高い。これらの結果を一緒にすると、AF16のin vitro薬物動態は、複雑であり、注意深く、バランスが保たれ、様々な状態下で観察された薬理的効果に解釈される必要があることが強く示唆される。AF16がCaco-2細胞での短いインキュベーション時間後にin vitroで急速に消失することは明らかである。さらに、いくつかの代謝産物がAF16消失に相当する速度で非常に急速に形成される。AF16および代謝産物が類似した効率で同じ標的に対して作用する可能性が十分にある。これは、機能的アッセイにおいて証明されるはずである。
【実施例2】
【0109】
AF16:血漿in vitro安定性および代謝的運命
導入
この実験は、種間の(ヒト、マウス、ラットおよびイヌ)血漿動態ならびにヒトおよびラット血漿中のAF16の定性的異化/代謝に関する最新の知見を要約する。
【0110】
材料および方法
材料
AF16の固形材料および安定同位体標識(SIL)AF16 ISは、Lantmannen ABによって提供された。Sahlgrenska HospitalのEwa Johanssonによって提供された情報に従って、ペプチドは、純度が約70%であり、他の構成要素は、4×トリフルオロ酢酸(TFA)および未知数×H2Oであった。しかしながら、簡潔さのために、ペプチドに関する全ての濃度は、100%であるとみなす。それらは、相対的基準で比較されるので、この仮定は、本明細書で提出される結果に影響しない。ヒトのプールされた血漿(4人のドナー、2人の男性および2人の女性、非喫煙者)は、学術的病院から得た。動物血漿は、Novakemi ABからであった。全ての他の化学物質および消耗品は、一般的な商業的供給源からであった。
【0111】
血漿プレシピエントの試験
AF16のMS感度を最適化するために、明らかな類似した効率を有する最も一般的なタンパク質沈殿剤を試験した。血漿マトリックスは、1:2(血漿:等張リン酸カリウム緩衝液)(pH7.4)からなり、HPLCガラスバイアル中で1:3(血漿:アセトニトリル(MeCN))、1:4(血漿:メタノール(MeOH))、1:3(血漿:硫酸亜鉛(ZnSO4:5M NaOH)(10%w/v))および1:3(血漿:トリクロロ酢酸(TCA)(10%w/v))で沈殿させた(Polson et al,2003)。サンプルをAF16および同位体標識AF16(AFIS)の10μM(最終濃度)1:2混合物で添加した。サンプルを密封し、3500rpmで遠心分離した。遠心分離後、上清をUHPLC-MS/MSによって分析した(以下を参照されたい)。同一のサンプルを異なる時点で3回注入して、オートサンプラー中10℃で所与の沈殿剤を用いてペプチド安定性を探索した。
【0112】
ヒトおよびラット血漿中のAF16安定性、動態および代謝産物同定
血漿サンプルの全てのインキュベーションは、AF16(MeCN:H2O中の原液1mM)およびAFIS(MeCN:H2O中の原液0.9mM)1:2の混合物を利用し、代謝または異化生成物の構造的解釈を助けた。化合物混合物は、任意の他の溶媒の添加前にバイアルの底に常にピペットで移された。血漿中の安定性をヒトのプールされた血漿、Wistarラット血漿、CD-1マウス血漿およびBeagleイヌ血漿を使用して密封されたHPLCガラスバイアル中で37℃(10μMインキュベーション濃度)で行った。インキュベーション時間は、一般に、0(QCサンプル)から2hの間であった。各時点で、アリコートを採取し、反応をジチオスレイトール(DTT)(1mM最終濃度)を含む選択された沈殿剤で停止した。相対定量(QCと比較した)をUHPLC-MS/MSを使用して行った(以下を参照されたい)。代謝産物同定を多重反応モニタリング(MRM、スカイライン予測MRM)、Lightsightソフトウェア(Sciex)強化MSスキャン(EMS)、強化作製イオンスキャン(EPI)および高解像度スキャン(ERS)を使用して行った。
【0113】
分析手順
異なるアッセイからの全てのサンプルを、EMS、ERSおよびEPIスキャンに関して線形イオントラップを利用してUHPLC-MS/MSによって分析した。以下のシステムを使用した;Agilent1290 UHPLCに結合された線形イオントラップを有するSciex QTRAP 6500三連四重極質量分析計(エレクトロスプレーイオン化、ESI)。クロマトグラフ分離に関して、一般的な勾配をC18 HSS T3 1.8μmカラム2×50mm(Waters Corp.)上で使用した(5~15分の総ランにわたって0%移動相Bから90%)。移動相Aは、0.05%TFA/0.05%ギ酸からなり、移動相Bは、100%アセトニトリル0.05%TFA/0.05%ギ酸からなった。流速は、0.5ml/分であった。10μLのサンプルを注入し、表5に報告された質量分析設定で走らせた。
【0114】
【0115】
結果および考察
AF16 MS-感度およびUHPLCクロマトグラフィーに及ぼす血漿タンパク質沈殿物の衝撃
血漿マトリックスの複雑さにより、どのようにAF16クロマトグラフィーおよび質量分析法(MS)感度が異なるタンパク質沈殿法に応答するかを試験することが重要であった。選択された沈殿剤が通例適用され、類似した効率のものであることが示された。結果を
図10および11に示す。
【0116】
図10は、20hにわたる3回の同じサンプルの繰返し注入の結果を示す。TCAおよびMeCNは、経時的に良好明白な安定性を示すことが明らかである。Aわずかな消失が20hでのZnSO4で注目される。経時的な著しい喪失がMeOHで示されている。AF16は、MeOHで安定であるが、ペプチドは、アルコール混合物に限定された溶解性を有することがあることが知られているので、喪失は、ペプチド沈殿が原因である可能性がある。さらなる試験が行われるべきである。
【0117】
図11は、MS-強度(イオンカウント)の観点から互いに比較した上で得られたデータのダイヤグラムである。TCA沈殿は、最も強いシグナルを示し、参照として設定した。非有機的方法が後れを取っていることが明らかであるが、これは、共溶出抑制イオンによる可能性が高い。最良の安定性を有する2つの方法(TCAおよびMeCN)は、感度の500倍を超える差を示し、したがって、引き続く研究に関して、TCAを研究を通して使用することを選択した。
【0118】
AF16の血漿安定性
異なる種におけるAF16の相対的安定性を
図12に示す。種にかかわらず、AF16は、10分以下のin vitro半減期(t
1/2)で急速に消失している。したがって、任意の薬理作用の薬物動態学的基礎を理解するために、ペプチドの分子の運命を決定することが最も重要である。
【0119】
ヒトおよびラット血漿中のAF16の分子の運命
AF16および同様の量の同位体標識されたペプチドを上記のラットおよびヒトの血漿中でインキュベートした。フルスキャンMSデータの分析に関して、Sciex,Lightsight製の代謝産物同定ソフトウェアを使用し、これは、インキュベートされたMS応答を品質管理(QC)サンプルと比較し、明らかなピークを質量電荷比(m/z)値を有する代謝産物として割り当てる。そのソフトウェアは、ペプチドなどの複数電荷化合物に使用するのに現在最適ではなく、したがって、代謝産物検出のヒット率は、かなり高く、各見出されたピークの手動の評価が行われるべきである。次いで、最も大きい代謝産物ピーク領域を順位付けし、場合によっては、MS/MS断片化によって検証する。スカイライン手法を使用して、同定されたペプチドの断片化を予測し、低い量がモニターされるように創造的で感度の良いMRM方法も利用した。
【0120】
表6は、30分のインキュベーションでの同定された生成物およびそれらの相対量を列挙している。しかしながら、この比較は、各生成物が同じMS感度を有すると仮定していることが強調されなければならず、この感度は、異なることがあり、したがって、個々の百分率は、変化し得る。結果を再検討すると、同定されたピークの相対的面積に基づいて、表6においてM1と命名された1つの代謝産物が他のものよりもはるかに大きいことが非常に明白であった。しかしながら、同定された質量ペア(m/z625/630)は、どの異化生成物(予想されるタンパク質ペプチド結合切断)にも相当しなかった。このペアは、ここで、AF16のシステインジスルフィドと同定する。
【0121】
【0122】
図13は、同定された代謝産物の相対的動態を示し、システインジスルフィドM1が、ヒトおよびラット血漿中で速度と量の両方において同様に形成されることが明らかであり、これは、ラットが薬理学的研究のための良いモデルであり得ることを示している。ヒトとラット間の最も大きい相違は、M9の形成であり、これは、ヒトにおいて経時的に直線的に形成されるが、ラットにおいては形成される程度が非常に低い。これへの1つの説明は、より小さい断片のヒト血漿タンパク分解活性がラット血漿中よりも高いということであろう。592.3/594.4のm/zペアを有する1つの代謝産物(M10)(表6/
図13に示さず)は不明なままであり、MS/MS研究およびERSモードスキャン後に初めて理解された(
図14)。ERSは、それが
13C同位体パターン上で三重に荷電しており(同位体ピーク間の0.3Da工程)、M2ジスルフィド生成物と一致したことを示した。M2は、明白に低い量で形成されるが、この形成は、ジスルフィドを形成する効率的なシステイン酸化によって不明瞭になるのであろう。代わりに、M10は、M1から形成されるが、それは、可能性が低い。大部分のN末端作用ペプチダーゼは、一度に2つのアミノ酸を切断し、ペプチダーゼがジスルフィドにそれほど近く作用し、M10を形成することは本発明者らの知る限りでは珍しいので、N末端バリンの単純な切断は、かなり驚くべきである(M2を形成する)。
【0123】
本当にこれらの生成物、M1およびM10がジスルフィドであったかをさらに検証するために、反応混合物を、これらの代謝産物との反応を確認しなかったシステイン選択的アルキル化剤N-エチルマレイミドでインキュベートした(示さず)。
【0124】
DTTの還元能力が酸性条件において低下される可能性があるけれども、DTTを、TCAを有するクエンチ溶液において使用した事実を考えると、
図13に示された動態は、驚くべきである。したがって、中性の沈殿剤ZnSO4(NaOHを有さない)を使用した場合に、同じパターンが生じるかどうかを試験した。この沈殿方法は、効率的ではないが、主要なジスルフィド生成物の形成に関するより多くの情報を与えることが期待される。結果を
図15に示す。
【0125】
図13と比較して、
図15から、大きな違いは、示されていないことが明らかであり、また、M1/M10ジスルフィドがDTT還元に対してどれほど靭性があるかは非常に驚くべきである。
【0126】
結論およびさらなる研究
AF16のin vitro薬物動態、およびそれがin vivo状況にどのようにつながり得るのかをさらに理解するために、いくつかの重要なin vitro実験が行われた。
1.トリクロロ酢酸がインキュベーション混合物中の血漿タンパク質を除去し、良好なMS感度およびクロマトグラフィーを維持するための最適な選択として同定された。
2.AF16は、以前の研究から血漿中で急速に分解することが知られている。この調査は、これが速度が異なる種間で類似していることも示すことをさらに確証する。
3.ラットとヒトの両方の血漿中での明白な主要な代謝的運命は、AF16の急速なジスルフィド形成であることが示される。可逆的であるこの作用は、AF16を急速なペプチダーゼ分解から明らかに保護し、この保護は、可逆性がより低いN-エチルマレイミド安定化で以前示された。これは、AF16がその標的にインタクトに到達することをはるかにより高い程度で可能にする保護機能とみなし得る。
4.M1/M10ジスルフィドは、驚くべきことに、DTT還元に対して靭性がある。
【実施例3】
【0127】
M1(AF-17)は、in vitro/in vivoで正確に定量化できるように、また、一般に、in vitro薬物動態学的特性を研究するために、薬理学的研究において使用されるために合成する。
【0128】
AF-17の生物活性-抗分泌性活性は、以前報告されたラット腸係蹄モデルにおいて測定された(Lange,S.(1982)FEMS Microbiol.Lett.15,239-242)。空腸ループに対して3pgのコレラ毒素を負荷した。異なる用量の合成的に作製されたAF-17、AF-16または対照(=ペプチドなし、緩衝液のみ(XY))をコレラ毒素の負荷前に静脈内にまたは筋肉内に注入した。腸係蹄における累積体液の重量(mg/cm(mg/ml))を5時間後に記録した。各AF調製物を少なくとも6匹のラットにおいて試験した。フィッシャーPLSDをデータの統計的分析に使用した。
【0129】
AF-17の生物活性-AF-17の生物活性をラットモデルにおいて試験した。コレラ毒素の腸への負荷前20~30秒に静脈内にまたは筋肉内に注入された場合に、AF-17が腸液分泌を抑制する能力を表7に示す。緩衝液のみを注入された対照動物では、コレラ毒素は、腸1cmあたり390mg体液の顕著な分泌を引き起こした。
【0130】
AF-17は、緩衝液への応答とは有意に異なるコレラ分泌の用量依存的抑制を引き起こした(p<0.001、n=6)。
【0131】
【0132】
【0133】
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