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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】電池に使用される固体-液体電解質
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/056 20100101AFI20220128BHJP
   H01M 6/22 20060101ALI20220128BHJP
   H01M 12/06 20060101ALI20220128BHJP
   H01G 11/56 20130101ALI20220128BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20220128BHJP
【FI】
H01M10/056
H01M6/22 C
H01M12/06 G
H01G11/56
H01M10/052
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019511450
(86)(22)【出願日】2017-08-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 EP2017071319
(87)【国際公開番号】W WO2018041709
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-07-21
(31)【優先権主張番号】16306092.4
(32)【優先日】2016-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ル メルシェ, ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】ブライダ, マルク-ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】アミス, ロバン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンテ, ジュール
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-229966(JP,A)
【文献】国際公開第2010/090253(WO,A1)
【文献】特開2002-313136(JP,A)
【文献】特表2011-513189(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0155676(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/056
H01M 6/22
H01M 12/06
H01G 11/56
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲルの形態の固体-液体電解質であって、
- 少なくとも1つのイオン伝導性塩と、
- 少なくとも1つの有機カーボネート系溶媒と、
- 沈降シリカと
を含む固体-液体電解質。
【請求項2】
沈降シリカは、粒子形態である、請求項1に記載の固体-液体電解質。
【請求項3】
沈降シリカは、100~650m/gのBET比表面積を有する、請求項1又は2に記載の固体-液体電解質。
【請求項4】
沈降シリカは、電解質の総重量に対して1.0重量%~25.0重量%の量で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の固体-液体電解質。
【請求項5】
沈降シリカは、電解質の総重量に対して1.0重量%~8.0重量%の範囲に含まれる量で存在する、請求項4に記載の固体-液体電解質。
【請求項6】
沈降シリカは、電解質の総重量に対して8.0重量%~25.0重量%の範囲に含まれる量で存在する、請求項4に記載の固体-液体電解質。
【請求項7】
沈降シリカは、電解質の総重量に対して20.0重量%~25.0重量%の範囲に含まれる量で存在する、請求項4に記載の固体-液体電解質。
【請求項8】
沈降シリカは、100~270m/gのBET比表面を有する、請求項5又は6に記載の固体-液体電解質。
【請求項9】
沈降シリカは、300~650m/gのBET比表面を有する、請求項6又は7に記載の固体-液体電解質。
【請求項10】
沈降シリカは、3.0~80.0μmのメジアン粒径を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の固体-液体電解質。
【請求項11】
少なくとも1つのイオン伝導性塩は、
(a)MeI、Me(PF)、Me(BF)、Me(ClO)、Me-ビス(オキサラト)ボレート、MeCFSO、Me[N(CFSO]、Me[N(CSO]、Me[N(CFSO)(RSO)](式中、Rは、C、C、又はCFOCFCF、Me(AsF)、Me[C(CFSOMeSであり、Meは、Li又はNaである)、
(b)
(式中、R’は、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、COCF、COCF、COCF及びCFOCFからなる群から選択される)、及び
(c)これらの混合物
からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の固体-液体電解質。
【請求項12】
少なくとも1つのイオン伝導性塩は、LiPF、LiBF、LiClO、リチウムビス(オキサラト)ボレート(「LiBOB」)、LiN(CFSO、LiN(CSO、Li[N(CFSO)(RSO)](式中、Rは、C、C、CFOCFCF、LiAsF、LiC(CFSOである)及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の固体-液体電解質。
【請求項13】
少なくとも1つの有機カーボネート系溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びフルオロプロピレンカーボネートからなる群から選択される不飽和環状カーボネートと、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルエタンからなる群から選択される不飽和非環状カーボネートとを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の固体-液体電解質。
【請求項14】
少なくとも1つの有機カーボネート系溶媒は、少なくとも1つの不飽和非環状カーボネートと少なくとも1つの不飽和環状カーボネートとの混合物である、請求項1~13のいずれか一項に記載の固体-液体電解質。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の固体-液体電解質を含む電子デバイス。
【請求項16】
電池である、請求項15に記載の電子デバイス。
【請求項17】
固体-液体電解質は、電池の正極と負極との間の層の形態で塗布される、請求項16に記載の電子デバイス
【請求項18】
請求項6又は7に記載の固体-液体電解質を含むセパレータ不使用二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年8月30日出願の欧州特許出願公開第16306092.4号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、非水性溶媒と、シリカと、少なくとも1つのイオン伝導性塩と、添加剤とを含む物理的ゲルの形態の固体-液体電解質であって、一次若しくは二次電池、スーパーキャパシタ、エレクトロクロミックディスプレイ又は太陽電池で使用され得る固体-液体電解質に関する。
【背景技術】
【0003】
液体電解質は、ほとんどの市販の電池に使用されている。液体電解質は、少なくとも1つのイオン伝導性塩及び非水性溶媒を含む。
【0004】
液体電解質は、高いイオン伝導性及び電極表面の良好な湿潤性を特徴とする。液体電解質は、漏れが起こる可能性があるという欠点を有し得る。
【0005】
或いは、乾燥ポリマー電解質及びポリマーゲル電解質などの固体電解質を使用することができる。一般的に、固体電解質は、漏れを受けないか、又は限られた漏れのみが生じる。しかしながら、固体電解質は、電極の良好な湿潤性をもたらさず、伝導性の低下を特徴とする。
【0006】
液体電解質を有する電池では、電解質漏れの危険性を完全に回避することはできないが、固体電解質(即ち乾燥ポリマー又はゲルポリマー電解質)の使用は、電池設計及び製造における劇的な変更を必要とする。また、現在の固体電解質は、例えば、電極に対する化学的安定性又は電気的接触不良などの遅い反応速度及び界面の問題のため、電気化学的性能が不十分である。
【0007】
電池用の別の部類の電解質は、いわゆる「湿潤砂(soggy-sand)」電解質によって代表される。
【0008】
「湿潤砂」電解質は、非水性液体電解質塩溶液に分散されたAl、TiO、SiOなどの微細な酸化物粒子を含む固体-液体複合電解質として定義される。電解質系の成分に典型的である酸化物の体積分率の特定の状況では、液体電解質は、ゲル電解質に変換する。
【0009】
電解質漏れの危険性は、液体電解質よりも良好な機械的特性を有する「湿潤砂」電解質を使用することによって大幅に減少する。
【0010】
更に、「湿潤砂」電解質は、出発の液体電解質よりも高く、また固体電解質よりも高いイオン輸送及びイオン伝導性を示し得る。
【0011】
「湿潤砂」電解質の伝導性は、電解質に存在する酸化物の量、表面化学及びサイズに依存する、浸透した密なネットワークの形成に起因する。
【0012】
従来技術の「湿潤砂」電解質の酸化物粒子の割合は、これがネットワーク形成を決定し、これがイオン伝導性における浸透及び許容できるイオン移動数につながることから、重要な側面として定義される。
【0013】
これに関し、Phys.Chem.Chem.Phys.,2013,15,18318-18335では、イオン伝導性塩、溶媒及びシリカナノ粒子(ヒュームドシリカ、メソ構造化シリカ又はアルキル官能化シリカ)の様々な組み合わせによって形成される、当技術分野において公知の多くの「湿潤砂」系を要約している。0.1体積%~8体積%の範囲の量の異なるシリカナノ粒子を含む系が、イオン伝導性における浸透につながる粒子ネットワークを形成することが開示されている。電解質により高い比率のシリカナノ粒子を使用することは、それが伝導性の著しい低下を招く場合があるために推奨されない。
【0014】
他方では、欧州特許出願公開第1505680A2号明細書としても公開されている米国特許第7700240号明細書は、イオン伝導性塩、非水性無水溶媒及び5μm未満の平均粒径を有するSiOなどの酸化物を含む非水性電解質を開示しており、酸化物は、電解質に20~50体積%の量(即ちSiOの場合に44重量%超)で存在する。
【0015】
Phys.Chem.Chem.Phys.,2013,15,18318-18335では、60体積%までのメソポーラスシリカからなる複合材料において、高いLi移動数及び伝導性が達成され得ることを示唆している。しかしながら、上記を裏付ける実験データは提供されていない。
【0016】
原則として、高い酸化物比率を有するより高い密度の電解質は、より迅速でより安定したネットワーク形成をもたらす。しかしながら、従来技術の「湿潤砂」の電解質は、経時的に安定な粒子ネットワークを形成する可能性が低い。特に、シリカ粒子の体積濃度が大きすぎると、粗大化及び沈降が起こり得、ネットワーク内の経路が遮断され、これにより伝導性が低下する(Adv.Funct.Mater.2011,21,3961-3966;J.Mater.Chem.A,2013,1,12560-12567)。
【0017】
電池、スーパーキャパシタ、エレクトロクロミックディスプレイ又は太陽電池に使用される場合、漏れ問題を防止し、同時に経時的に安定したカチオン移動数及び全体的な伝導性を提供する電解質が必要とされている。
【発明の概要】
【0018】
驚くべきことに、沈降シリカを液体電解質に添加すると、他の種類のシリカを使用したときに生じる粗大化効果なしに経時的に安定なゲルが得られることが見出された。
【0019】
従って、本発明は、一次電池若しくは二次電池の調製、スーパーキャパシタ、エレクトロクロミックディスプレイ又は太陽電池に好都合に使用され得、増大したカチオン移動数及び全体的な伝導性を有する、安定性が向上した改良された固体-液体電解質を提供する。本発明の固体-液体電解質は、電解質の内部に安定な粒子ネットワークを形成し、粗大化又は沈降効果の危険性を回避するなどの更なる利点を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1によるコインセル型リチウムイオン電池の概略図を示す。
図2】実施例2の参照例の概略図を示す。
図3】実施例3によるコインセル型セルセパレータ不使用リチウムイオン電池の概略図を示す。
図4】実施例2のコインセル型電池の電気化学試験の結果(異なる放電速度での容量対サイクル数)を示すグラフを示す。
図5】実施例3のコインセル型電池の電気化学試験の結果(異なる放電速度での容量対サイクル数)を示すグラフである。
図6】実施例4のコインセル型電池の電気化学試験の結果(異なる放電速度での容量対サイクル数)を示すグラフを示す。
図7】実施例4のコインセル型電池のサイクル試験の結果(容量対サイクル数)を示すグラフを示す。
図8】実施例5のコインセル型電池の電気化学試験の結果(異なる放電速度での容量対サイクル数)を示すグラフを示す。
図9】実施例5のコインセル型電池のサイクル試験の結果(容量対サイクル数)を示すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の目的の1つは、ゲルの形態の固体-液体電解質であって、
- 少なくとも1つのイオン伝導性塩と、
- 少なくとも1つの有機カーボネート系溶媒と、
- 沈降シリカと
を含む固体-液体電解質である。
【0022】
適切なイオン伝導性塩は、
(a)MeI、Me(PF)、Me(BF)、Me(ClO)、Me-ビス(オキサラト)ボレート(「Me(BOB)」)、MeCFSO、Me[N(CFSO]、Me[N(CSO]、Me[N(CFSO)(RSO)](式中、Rは、C、C、又はCFOCFCF、Me(AsF)、Me[C(CFSOMeSであり、Meは、Li又はNaである)、
(b)
(式中、R’は、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、COCF、COCF、COCF及びCFOCFからなる群から選択される)、及び
(c)これらの混合物
からなる群から選択される。
【0023】
ここで関係する固体-液体電解質がリチウムイオン電池に適したものである場合、少なくとも1つのイオン伝導性塩は、好ましくは、LiPF、LiBF、LiClO、リチウムビス(オキサラト)ボレート(「LiBOB」)、LiN(CFSO、LiN(CSO、Li[N(CFSO)(RSO)](式中、Rは、C、C、CFOCFCF、LiAsF、LiC(CFSOである)及びこれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、イオン伝導性塩は、LiPFである。
【0024】
イオン伝導性塩は、好ましくは、0.5~1.5モル、より好ましくは0.8~1.2モル、更により好ましくは1モルの濃度で有機カーボネート系溶媒に溶解される。
【0025】
適切な有機カーボネート系溶媒の非限定的な例としては、不飽和環状カーボネート及び不飽和非環状カーボネートが挙げられる。
【0026】
好ましい不飽和環状カーボネートとしては、環状アルキレンカーボネート、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びフルオロプロピレンカーボネートが挙げられる。より好ましい不飽和環状カーボネートは、エチレンカーボネートである。
【0027】
好ましい不飽和非環状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルエタン(DME)が挙げられる。好ましい不飽和非環状カーボネートは、ジメチルカーボネートである。
【0028】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの有機カーボネート系溶媒は、少なくとも1つの不飽和非環状カーボネートと少なくとも1つの不飽和環状カーボネートとの混合物である。より好ましくは、少なくとも1つの有機カーボネート系溶媒は、ECとDMCとの混合物である。
【0029】
好ましくは、少なくとも1つの不飽和非環状カーボネートと少なくとも1つの不飽和環状カーボネートとの混合物は、少なくとも1つの不飽和環状カーボネートと少なくとも1つの不飽和非環状カーボネートとを1:3~1:1、より好ましくは1:1.5~1:1、更により好ましくは1:1の体積比で含む。
【0030】
イオン伝導性塩と有機カーボネート系溶媒との有利な組み合わせは、例えば、体積でEC:DMCが1:1であるLiPFの1モル溶液であり得る。
【0031】
本発明のゲルの形態の固体-液体電解質は、沈降シリカを含む。
【0032】
「沈降シリカ」とは、ケイ酸塩(ケイ酸ナトリウムなど)を含む溶液から酸性化剤(硫酸など)を用いて沈降させることによって典型的に調製されるシリカを意味する。
【0033】
沈降シリカは、顆粒(少なくとも1mm、例えば1~10mmのサイズを有する)、マイクロパール(100~300μmの典型的な平均サイズを有する)又は粉末の形態で得ることができる。
【0034】
本発明で使用される沈降シリカは、欧州特許出願公開第396450A号明細書、欧州特許出願公開第520862A号明細書、欧州特許出願公開第670813A号明細書、欧州特許出願公開第670814A号明細書、欧州特許出願公開第762992A号明細書、欧州特許出願公開第762993A号明細書、欧州特許出願公開第917519A号明細書、欧州特許出願公開第1355856A号明細書、国際公開第03/016215号パンフレット、国際公開第2009/112458号パンフレット、国際公開第2011/117400号パンフレット、国際公開第2013/110659号パンフレット、国際公開第2013/139934号パンフレット、国際公開第2008/000761号パンフレットに記載された方法を実施することによって調製できる。
【0035】
本発明において使用され得る沈降シリカの注目に値する非限定的な例は、例えば、全てSolvayから市販されているTixosil(登録商標)43、Tixosil(登録商標)68B、Tixosil(登録商標)331又はTixosil(登録商標)365である。
【0036】
本発明の固体-液体電解質に使用される沈降シリカは、好都合には、粒状形態である。
【0037】
このような形態のシリカは、乾燥シリカに対して行われる粉砕又は微粉化工程によって得ることができる。
【0038】
「粒子形態」という用語は、3.0μm~80.0μmの範囲に含まれるメジアン粒径の固体粒子を意味する。メジアン粒径は、レーザー回折によって典型的に決定される。
【0039】
好ましい実施形態では、沈降シリカメジアン粒径は、3.0~80.0μm、より好ましくは3.0~60.0μm、更により好ましくは3.0~20.0μmの範囲に含まれる。いくつかの実施形態では、メジアン粒径は、5.0μm超、更には6.0μm超であり得る。
【0040】
メジアン粒径は、フラウンホーファ(Fraunhofer)理論を用いて、MALVERN(MasterSizer 2000)粒径測定器を使用してレーザー回折によって決定することができる。分析プロトコールは、レーザー回折決定前に行われる沈降シリカ試料の最初の完全なデアグロメレーション(deagglomeration)を含む。
【0041】
沈降シリカ試料の完全なデアグロメレーションは、2つの連続した分析間のメジアン粒径変動が5%より下になるまで、以下のパラメータを設定することにより、MasterSizer 2000の試料分散ユニットにおいて直接行われる。
・Hydro 2000G試料分散ユニット
・攪拌条件:500rpm
・ポンプ条件:1250rpm
・超音波プローブ:100%
測定パラメータ:
・隠蔽範囲:8~15
・バックグラウンド測定期間:10秒
測定期間:10秒
測定間の遅延:1秒
【0042】
このようなプロトコールで安定したメジアン粒径に達するまでの時間は、典型的には、およそ100秒である。
【0043】
本発明の固体-液体電解質に用いる沈降シリカは、BET比表面積が100~650m/gであることを特徴とする。
【0044】
本発明の好ましい一実施形態では、沈降シリカは、100~270m/gのBET比表面積を有する。沈降シリカは、典型的には、少なくとも110m/g、特に少なくとも120m/gのBET比表面を有する。BET比表面は、一般的に、最大で240m/g、特に最大で250m/gである。
【0045】
別の好ましい実施形態では、沈降シリカは、300~650m/gのBET比表面積を有する。沈降シリカは、典型的には、少なくとも310m/g、特に少なくとも330m/gのBET比表面を有する。
【0046】
BET比表面は、The Journal of the American Chemical Society,Vol.60,page 309,February 1938に記載されており、標準NF ISO 5794-1,Appendix E(2010年6月)に対応するブルナウアー-エメット-テラー法に従って決定される。
【0047】
適切な沈降シリカは、例えば、
- 100~270m/gのBET比表面及び3.0~80.0μmのメジアン粒径、又は
- 300~650m/gのBET比表面及び3.0~80.0μmのメジアン粒径
を有することができる。
【0048】
本発明の固体-液体電解質に使用される好ましい沈降シリカは、少なくとも2.5重量%、より好ましくは少なくとも4.0重量%の結合水含有量を有することを特徴とする。
【0049】
結合水含有量は、1000℃での引火損失(DIN 55921、ISO 3262/11、ASTM D1208に従って測定される)と、105℃で測定される湿分損失(ISO 787/2、ASTM D280に従って測定される)との間の差によって決定され、この値は、シリカの基本構造の特徴である。
【0050】
本発明において使用される沈降シリカは、好ましくは、6.3~8.0、より好ましくは6.3~7.6のpHを示す。
【0051】
pHは、以下の通り標準ISO 787/9(水での5%懸濁液のpH)の修正に従って測定される。5グラムの沈降シリカを200mlのビーカーに約0.01グラム以内で秤量する。続いて、メスシリンダーから計量した95mlの水を沈降シリカ粉末に添加する。このようにして得られた懸濁液を10分間激しく撹拌する(磁気撹拌)。次いで、pH測定を実施する。
【0052】
特定の実施形態によれば、本発明で使用される沈降シリカは、アルミニウムを含む。アルミニウム含有量は、沈降シリカの重量に対して典型的には最大で3重量%、一般的には0.5~2.5重量%である。
【0053】
アルミニウムの量は、フッ化水素酸の存在下において水中でシリカを添加した後、任意の適切な方法、例えばICP-AES(「誘導結合プラズマ-原子発光分析」)によって測定することができる。
【0054】
一般的に、沈降シリカは、100~625m/gのCTAB比表面を有する。CTAB比表面は、標準NF ISO 5794-1,Appendix G(2010年6月)に従って測定することができる外部表面である。
【0055】
本発明の固体-液体電解質に存在する沈降シリカの量は、電解質にゲルの粘稠度を与えるものである。
【0056】
「ゲル」という用語は、粘稠なゼリー状製品を製造するための、固体と液体との半硬質コロイド分散体を意味することを意図する。
【0057】
好ましくは、本発明の固体-液体電解質における沈降シリカの重量による量は、固体-液体電解質の総重量に対して1.0%~25.0%の範囲に含まれる。
【0058】
本発明の第一の変形形態によれば、ゲルの形態の固体-液体電解質は、
- 少なくとも1つのイオン伝導性塩と、
- 少なくとも1つの有機カーボネート系溶媒と、
- 電解質の総重量に対して8.0重量%~25.0重量%の範囲に含まれる量の沈降シリカと
を含む。沈降シリカの重量による量は、電解質の総重量に対して有利には8.5%~25.0%、好ましくは9.0%~25.0%、更には10.0%~25.0%であり得る。
【0059】
本発明の一実施形態では、沈降シリカは、電解質の総重量に対して8.5重量%~15.0重量%、9.0重量%~15.0重量%、更には10.0重量%~15.0重量%の量である。
【0060】
好ましい一実施形態では、本発明は、ゲルの形態の固体-液体電解質であって、
- 少なくとも1つのイオン伝導性塩と、
- 少なくとも1つの有機カーボネート系溶媒と、
- 電解質の総重量に対して8.0重量%~15.0重量%、好ましくは9.0重量%~15.0重量%、更には10.0重量%~15.0重量%の範囲に含まれる量の沈降シリカと
を含む固体-液体電解質を提供し、この場合、沈降シリカは、100~270m/gのBET比表面及び3.0~80.0μmのメジアン粒径を有する。いくつかの例において、メジアン粒径は、5.0μm超、更には6.0μm超であり得る。
【0061】
本発明の別の実施形態では、沈降シリカは、電解質の総重量に対して20.0重量%~25.0重量%の量である。
【0062】
更なる好ましい実施形態では、本発明は、ゲルの形態の固体-液体電解質であって、
- 少なくとも1つのイオン伝導性塩と、
- 少なくとも1つの有機カーボネート系溶媒と、
- 電解質の総重量に対して20.0重量%~25.0重量%の範囲に含まれる量の沈降シリカと
を含む固体-液体電解質を提供し、この場合、沈降シリカは、300~650m/gのBET比表面及び3.0~80.0μmのメジアン粒径を有する。いくつかの例において、メジアン粒径は、5.0μm超、更には6.0μm超であり得る。
【0063】
沈降シリカが電解質の総重量に対して8.0重量%~25.0重量%に含まれる量で存在する場合、固体-液体電解質は、高い機械的特性を特徴とし、その結果、容易に広がる安定なゲルが得られることが見出された。前記安定なゲルは、押し出し成形するのに十分な厚さであり、電池の製造に使用される場合に明らかな利点をもたらす。
【0064】
この第1の変形形態による固体-液体電解質は、従来のリチウム又はナトリウムイオン電池の調製と同様に、セパレータ不使用リチウム又はナトリウムイオン電池の調製に使用することができる自立型電解質として適切であるように十分に厚い。
【0065】
第2の変形形態によれば、本発明は、ゲルの形態の固体-液体電解質であって、
- 少なくとも1つのイオン伝導性塩と、
- 少なくとも1つの有機カーボネート系溶媒と、
- 電解質の総重量に対して1.0重量%~8.0重量%の量の沈降シリカと
を含む固体-液体電解質を提供する。
【0066】
前記第2の変形形態による固体-液体電解質における沈降シリカの存在は、液体電解質の保持に有利であり、同時に、従来のリチウム又はナトリウム電池の製造での使用に適するようにする十分に低い粘度の固体-液体電解質をもたらす。この前記第2の変形形態による固体-液体電解質を利用する電池は、液体電解質を含む電池と比較して、特に高い放電率において優れたサイクル性能を示す。
【0067】
更なる好ましい実施形態では、本発明は、ゲルの形態の固体-液体電解質であって、
- 少なくとも1つのイオン伝導性塩と、
- 少なくとも1つの有機カーボネート系溶媒と、
- 電解質の総重量に対して1.0重量%~8.0重量%の範囲に含まれる量の沈降シリカと
を含む固体-液体電解質を提供し、この場合、沈降シリカは、100~270m/gのBET比表面及び3.0~80.0μmのメジアン粒径を有する。いくつかの例において、メジアン粒径は、5.0μm超、更には6.0μm超であり得る。
【0068】
本発明の固体-液体電解質は、
- ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、アリルエチルカーボネートなどのフィルム形成カーボネート、
- ポリチオフェン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などの伝導性コーティング、
- Liビス(トリフルオロスルホニル)イミド、オキサリルジフルオロホウ酸リチウムなどの更なるリチウム塩、
- SO、CS、環状アルキル亜硫酸塩などの触媒抑制剤、
- B、有機ボレート、ボロキシンなどの固体電解質界面相(SEI)安定剤、
- ペルフルオロ-オクチル-エチレンカーボネート(PFO-EC)などの界面活性剤、
- ヘキサフルオロイソプロパノール、無水コハク酸などの不動態化剤、
- イオン液体
- レドックスシャトル、及び
- 難燃剤
からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤も好都合に含有し得る。
【0069】
別の目的では、本発明は、前述で定義された固体-液体電解質を含む電子デバイス、特に一次若しくは二次電池、スーパーキャパシタ、エレクトロクロミックディスプレイ又は太陽電池を提供する。
【0070】
好ましい態様において、本発明は、電気活性化合物EA1を含む正極、電気活性化合物EA2を含む負極、及びゲルの形態の固体-液体電解質であって、
- 少なくとも1つのイオン伝導性リチウム又はナトリウム塩と、
- 少なくとも1つの有機カーボネート系溶媒と、
- 沈降シリカと
を含む固体-液体電解質を含むリチウム又はナトリウムイオン一次又は二次電池、好ましくはリチウムイオン電池に関する。
【0071】
リチウムイオン二次電池用の正極を形成する場合、化合物EA1は、式LiMQ(式中、Mは、Co、Ni、Fe、Mn、Cr及びVなどの遷移金属から選択される少なくとも1つの金属であり、Qは、O又はSなどのカルコゲンである)の複合金属カルコゲナイドを含むことができる。これらの中で、式LiMO(式中、Mは、前述で定義されたものと同じものである)のリチウム系複合金属酸化物を使用することが好ましい。これらの好ましい例としては、LiCoO、LiNiO、LiNiCo1-x(0<x<1)及びスピネル構造LiMnを挙げることができる。
【0072】
代替として、化合物EA1は、式M(JO1-f(式中、Mは、M金属の20%未満を表す別のアルカリ金属で部分的に置換され得るリチウムであり、Mは、+1~+5の酸化レベルでの、M金属の35%未満を表す1つ以上の更なる金属で部分的に置換され得る、Fe、Mn、Ni、又はこれらの混合物から選択される+2の酸化レベルでの遷移金属であり、JOは、任意のオキシアニオンであり、ここで、Jは、P、S、V、Si、Nb、Mo又はこれらの組み合わせのいずれかであり、Eは、フルオリド、ヒドロキシド又はクロリドアニオンであり、fは、一般的に、0.75~1に含まれるJOオキシアニオンのモル分率である)のリチウム化又は部分的にリチウム化された遷移金属オキシアニオン系電気活性材料を含むことができる。
【0073】
前述で定義されたM(JO1-f電気活性材料は、好ましくは、ホスフェート系であり、規則正しい又は変性されたカンラン石構造を有することができる。
【0074】
より好ましくは、化合物EA1は、式Li3-xM’M’’2-y(JO(式中、0≦x≦3であり、0≦y≦2であり、M’及びM’’は、同じ又は異なる金属であり、これらの少なくとも1つは、遷移金属であり、JOは、好ましくは、別のオキシアニオンで部分的に置換され得るPOであり、Jは、S、V、Si、Nb、Mo又はこれらの組み合わせのいずれかである)を有する。更により好ましくは、化合物EA1は、式Li(FeMn1-x)PO(式中、0≦x≦1であり、xは、好ましくは、1である(即ち式LiFePOのリチウム鉄ホスフェート))のホスフェート系電気活性材料である。
【0075】
リチウムイオン二次電池用の負極を形成する場合、化合物EA2は、好ましくは、
- リチウムをホストする粉末、フレーク、繊維又は球体(例えば、メソカーボンマイクロビーズ)などの形態で典型的に存在する、リチウムを挿入することができるグラファイト炭素と、
- リチウム金属と、
- 特に米国特許第6203944号明細書及び/又は国際公開第00/03444号パンフレットに記載されているものを含むリチウム合金組成物と、
- 一般的に式LiTi12で表される、リチウムチタネート(これらの化合物は、可動イオン、即ちLiを受け入れるときに低レベルの物理的膨脹を有する「ゼロ歪」挿入材料と一般的に考えられる)と、
- 高いLi/Si比のケイ化リチウムとして一般的に知られるリチウム-ケイ素合金、特に式Li4.4Siのケイ化リチウムと、
- 式Li4.4Geの結晶相を含むリチウム-ゲルマニウム合金と
を含むことができる。
【0076】
好ましいリチウムイオン電池は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO又は「LCO」)又はリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(LiNi0,33Mn0,33Co0,33又は「NMC」など)正極及びグラファイト負極を含む。
【0077】
一実施形態では、本発明は、ゲルの形態の固体-液体電解質であって、
- 少なくとも1つのイオン伝導性塩と、
- 少なくとも1つの有機カーボネート系溶媒と、
- 電解質の総重量に対して1.0重量%~8.0重量%の量の沈降シリカと
を含む固体-液体電解質を含む従来のリチウム又はナトリウム電池に関する。
【0078】
別の実施形態では、本発明は、ゲルの形態の固体-液体電解質であって、
- 少なくとも1つのイオン伝導性塩と、
- 少なくとも1つの有機カーボネート系溶媒と、
- 電解質の総重量に対して8.0重量%~25.0重量%の量の沈降シリカと
を含む固体-液体電解質を含む従来のリチウム又はナトリウム電池に関する。
【0079】
固体-液体電解質に関して前述で提供された全ての定義及び選択は、電子デバイス、特に本発明の目的である一次電池及び二次電池に等しく適用される。
【0080】
「従来のリチウム又はナトリウムイオン電池」という用語は、非水性電解質、放電時にリチウム又はナトリウムイオンを放出し、電池の充電時にリチウム又はナトリウムイオンを吸収する活物質を含む負極、及び正極を含む電池を含むと定義され、この場合、前記負極は、一般的に、負極と正極との空間的及び電気的分離をもたらす多孔質膜(「セパレータ」)によって正極から分離されている。
【0081】
前記実施形態による従来のコインセル型リチウムイオン電池の概略図を図1に報告する。
【0082】
別の実施形態では、本発明は、ゲルの形態の固体-液体電解質であって、
- 少なくとも1つのイオン伝導性塩と、
- 少なくとも1つの有機カーボネート系溶媒と、
- 電解質の総重量に対して8.0重量%~25.0重量%の量の沈降シリカと
を含む固体-液体電解質を含むセパレータ不使用リチウム又はナトリウム電池に関する。
【0083】
「セパレータ不使用電池」という用語は、放電時にリチウム又はナトリウムイオンを放出し、電池の充電時にリチウム又はナトリウムイオンを吸収する活物質を含む負極を有する電池を指し、この場合、自立型電解質は、物理的なセパレータを必要とせずに前記負極及び正極内に配置される。
【0084】
前記実施形態によるコインセル型セルセパレータ不使用電池の概略図を図3に報告する。
【0085】
本発明の固体-液体電解質は、電池の正極と負極との間に適用された層の形態であることが好ましい。
【0086】
固体-液体電解質の層は、電池セルの組み立て中に堆積され得る。
【0087】
本発明の固体-液体電解質の粘稠度は、電解質の堆積を特に容易及び安全にする。
【0088】
当技術分野において、ゲル電解質の性能は、電極間の電気的短絡を防ぐための機械的完全性の欠如によって制限されることが知られている。この影響を克服するために、ゲル電解質の厚さは、典型的には、液体電解質を含むセルに使用される従来のセパレータ材料の厚さよりも大きい。しかしながら、この電解質の厚さの増加は、より低い伝導性をもたらす。
【0089】
本出願人は、驚くべきことに、本発明による固体-液体電解質が、電池の正極と負極との間に厚い層で適用されても、液体電解質の厚さが約25μmである従来の電池と比較して改善されたカチオン輸送特性を有する電池を得ることを可能にすることを見出した。
【0090】
本発明による固体-液体電解質の層の厚さは、1~1000μm、好ましくは10~400μmの範囲に好都合に含まれる。
【0091】
好ましい実施形態では、本発明は、LiPF又はNaPFを含むゲルの形態の固体-液体電解質、EC及びDMCの混合物、及び沈降シリカを含むリチウム又はナトリウム二次電池を提供する。
【0092】
有利には、LiPF又はNaPF系電解質の分解中に形成されるHFによるリチウム又はナトリウムイオン電池における元素の腐食の危険性は、沈降シリカのHFスカベンジャー特性によって制限される。
【0093】
本発明は、ここで、以下の実施例を参照して説明されるが、その目的は、単に例証的なものに過ぎず、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【0094】
参照により本明細書に組み込まれる特許、特許出願及び刊行物のいずれかの開示が、用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例
【0095】
原料
沈降シリカ1:SBET=633m/g、メジアン粒径17.0μm(レーザー回折により測定)、結合水含有量=4.2%。
沈降シリカ2:SBET=147m/g、メジアン粒径3.8μm(レーザー回折により測定)。結合水含有量=4.4%、SolvayからTixosil(登録商標)365として市販されている。
沈降シリカ3:SBET=217m/g、メジアン粒径10.5μm(レーザー回折により測定)、結合水含有量=4.1%、SolvayからTixosil(登録商標)43として市販されている。
発熱性シリカ1:SBET=200m/gを有する発熱性シリカ、メジアン粒径4.3μm(レーザー回折により測定)、結合水含有量=1.0%、EvonikからAerosil(登録商標)200vとして市販されている。
LP30:EC:DMC(1:1体積%)99.9%における1M LiPF、SolvionicからSolvionic(登録商標)E001として市販されている。
【0096】
実施例1
2.0重量%のVCを有するLP30中の21.0重量%の沈降シリカ1を含む固体-液体電解質を調製した(電解質A)。
【0097】
最終生成物中の微量の水を回避するように、沈降シリカを乾燥させ、不活性雰囲気中で液体電解質に添加した。図1に概略的に示すように構成されたコインセル型リチウムイオン二次電池に電解質(A)を導入した(電池A):
- 負極:人工グラファイト
配合:[SCMG-ARグラファイト]+[スーパーPカーボン]+[PVDF 8%Solef(登録商標)5130]重量で90:4:6(Umicore製)
電極ローディング:9.3mg/cm、厚さ200~202μm、
- 正極:LiCoOCellcore(登録商標)LCO(Umicore製)
配合:LiCoO+[スーパーPカーボン]+[PVDF 8%Solef(登録商標)5130]、重量比92:4:4
電極ローディング:17.3mg/cm、厚さ175~177μm、
理論容量:161mAh/g。
【0098】
電極間の接触を避けるために、リング形状ガラス繊維セパレータを使用した。
【0099】
セパレータのリングを負極上に配置し、電解質(A)をセパレータの孔に、350μmを超える厚さを有する層の形態で塗布し、正極を上からプレスした。
【0100】
電池Aについて以下の条件で電力試験(増加する放電速度での充電-放電サイクル)を行った。
・C/20-C/20速度で2倍のGCPL*充電/放電サイクル
・C/10-C/10速度で5倍のGCPL*充電/放電サイクル
・C/5-C/5速度で5倍のGCPL*充電/放電サイクル
・C/2-C/2速度で5倍のGCPL*充電/放電サイクル
・C/2-1C速度で5倍のGCPL*充電/放電サイクル
・C/2-2C速度で5倍のGCPL*充電/放電サイクル
・C/2~5C速度で5倍のGCPL*充電/放電サイクル
【0101】
*GCPL=電位制限のある定電流サイクリング
【0102】
C速度は、電池が充電又は放電されている速度の尺度である。これは、電池の公称定格容量を1時間で達成するのに要する理論的な電流の流れで割った電流として定義される。
【0103】
セル成分の事後検討観察:セルにおける電極及びセパレータに加えて、痕跡量の液体又はゲル電解質はなく、即ち漏れがない。
【0104】
実施例2
実施例1に記載されるように第1の電池を調製した(電池A)。
【0105】
2.0重量%のVCを有するLP30中の11.9重量%の沈降シリカ2を含む固体-液体電解質を調製した(電解質B)。
【0106】
最終生成物中の微量の水を回避するように、沈降シリカを乾燥させ、不活性雰囲気中で液体電解質に添加した。
【0107】
図1に概略的に示すように構成されたコインセル型リチウムイオン二次電池に電解質(B)を導入した(電池B)。電解質Bの層の厚さは、350μmより大きかった。
【0108】
図2に概略化されているように構成された参照コインセル型リチウムイオン電池、即ち実施例1の電池と同じ構成を有するが、リング形状ガラス繊維セパレータの代わりにCelgard(登録商標)-PP-PE-PP-三層セパレータを含むものを調製し、前記電池は、2.0重量%のVCを有するLP30を含む液体電解質を含んだ(参照例1)。参照例1の電池における液体電解質層の厚さは、25μmであった。
【0109】
電池A、電池B及び参照例1の電池を、実施例1に示したものと同じプロトコールで同じ電力試験にかけた。
【0110】
結果は、参照例1(図4)と比較して、本発明による電池((電池A)及び(電池B))の高いC速度(1C及び2C)での優れた性能を表している。
【0111】
実施例3
2.0重量%のVCを有するLP30中の11.6重量%の沈降シリカ3を含む固体-液体電解質を調製した(電解質C)。
【0112】
最終生成物中の微量の水を回避するように、沈降シリカを乾燥させ、不活性雰囲気中で液体電解質に添加した。
【0113】
図3に概略的に示すように構成されたコインセル型セパレータ不使用リチウムイオン二次電池に電解質(C)を導入した(電池C):
- 負極:人工グラファイト
配合:[SCMG-ARグラファイト]+[スーパーPカーボン]+[PVDF8%Solef(登録商標)5130]重量で90:4:6(Umicore製)、
電極ローディング:9.3mg/cm、厚さ200~202μm、
- 正極:LiCoO Cellcore(登録商標)LCO(Umicore社製)、
配合:LiCoO+[スーパーPカーボン]+[PVDF8%Solef(登録商標)5130]、重量比92:4:4
電極ローディング:17.3mg/cm、厚さ175~177μm、
理論容量:161mAh/g。
【0114】
一滴の固体-液体電解質を負極に堆積させ、正極を上からプレスした。
【0115】
電池Cと同じ構成を有するが、2.0重量%のVCを有するLP30中に11.4重量%の焼成シリカ1を含む固体-液体電解質を含む参照電池(参照例2)を調製した。
【0116】
電池C及び参照例2の電池を、実施例2に示したものと同じプロトコール(増加する放電速度での充電-放電サイクル)で電力試験にかけた。
【0117】
結果は、8サイクル後に死んだ参照例2の電池と比較して、本発明による電池(電池C)のより高い性能を示す(図5)。
【0118】
更に、参照例2の電池に用いられている電解質は、ゲルの形態で非常に短い安定性を示し、押し出し成形開始直後に焼成シリカを含む電解質が粗大化し、押し出し成形することができず、初めに液体抜けを示し、次いで固体シリカの粉砕を示した。
【0119】
実施例4
2.0重量%のVCを有するLP30中の1.8重量%の沈降シリカ2を含む固体-液体電解質を調製した(電解質D)。
【0120】
最終生成物中の微量の水を回避するように、沈降シリカを乾燥させ、不活性雰囲気中で液体電解質に添加した。
【0121】
図1に概略的に示すように構成されたコインセル型リチウムイオン二次電池に電解質(D)を導入した(電池D):
- 負極:グラファイト
[SMG-Aグラファイト(Hitachi、日本)]+[スーパーC65カーボン]+PVDF Solef(登録商標)5130、重量比90:5:5、
電極ローディング:10mg/cm、厚さ70μm、
- 正極:NMC
配合:LiNi0.33Mn0.33Co0.33+[スーパーC65カーボン]+[KS6Lグラファイト]+PVDF Solef(登録商標)5130、重量比90:3:4:3、
電極ローディング:17mg/cm、厚さ70μm、
理論容量:148mAh/g。
【0122】
セパレータのリングを負極上に配置し、電解質(D)をセパレータの孔に、350μmを超える厚さを有する層の形態で塗布し、正極を上からプレスした。
【0123】
電池Dと同じ構成を有するが、リング形状のガラス繊維セパレータの代わりにセルガードのセパレータを含む参照コインセル型リチウムイオン電池を調製し、前記電池は、液体電解質としてLP30+2重量%VCを含む混合物を含んだ(参照例3)。参照例3の電池における液体電解質層の厚さは、25μmであった。
【0124】
電池D及び参照例3の電池について、以下の条件で電力試験(増加する放電速度での充電-放電サイクル)を行った。
・C/10-C/10速度で5倍のGCPL充電/放電サイクル
・C/5-C/5速度で5倍のGCPL充電/放電サイクル
・C/2-C/2速度で5倍のGCPL充電/放電サイクル
・C/2-1C速度で5倍のGCPL充電/放電サイクル
・C/2-2C速度で5倍のGCPL充電/放電サイクル
・C/2-5C速度で5倍のGCPL充電/放電サイクル。
【0125】
結果は、本発明による電池(電池D)及び参照電池(参照例3)について、2C(30分での放電)までの全ての速度で同様の性能を示すが、最も高い充電速度(5C)で本発明の電池の優れた性能を示す(図6)。
【0126】
電池D及び参照例3の電池を以下の条件でサイクル試験にかけた。
・C/10速度で3回の充電/放電サイクル
・1時間又はC/20の電流に達するまで、4.2VでのCCCVで1C速度において97回の充電/放電サイクル
【0127】
このシーケンスを1回行った(即ち全体で100サイクル)。
【0128】
結果は、88回の充電/放電サイクル後に測定されたように、本発明による電池(電池D)及び参照電池(参照例3)について同様の性能を示し、こうして粗大化又は沈降作用なしに経時的に安定な粒子ネットワークの形成を実証している(図7)。
【0129】
実施例5
2.0重量%のVCを有するLP30中の11.9重量%の沈降シリカ2を含む固体-液体電解質を調製した(電解質E)。
【0130】
最終生成物中の微量の水を回避するように、沈降シリカを乾燥させ、不活性雰囲気中で液体電解質に添加した。
【0131】
図3に概略的に示すように構成されたコインセル型リチウムイオン二次電池に電解質(E)を導入した(電池E):
- 負極:人工グラファイト
配合:[SCMG-ARグラファイト]+[スーパーPカーボン]+[PVDF8%Solef(登録商標)5130]90:4:6(Umicore製)
電極ローディング:9.3mg/cm、厚さ200~202μm、
- 正極:LiCoO Cellcore(登録商標)LCO(Umicore製)
配合:LiCoO+[スーパーPカーボン]+[PVDF 8%Solef(登録商標)5130]、重量比92:4:4
電極ローディング:17.3mg/cm、厚さ175~177μm
理論容量:161mAh/g。
【0132】
一滴の固体-液体電解質を負極に堆積させ、正極を上からプレスした。
【0133】
参照例1の電池(参照例4)と同じ構成を有する参照コインセル型リチウムイオン電池である。参照例4の電池における液体電解質層の厚さは、25μmであった。
【0134】
電池E及び参照例4の電池を、実施例2に示したものと同じプロトコール(増加する放電速度での充電-放電サイクル)で電力試験にかけた。
【0135】
結果は、高い充電速度(≧1C)において、参照電池(参照文献4)と比較して、本発明による電池(電池E)について優れた性能を示している(図8)。
【0136】
電池E及び参照例4の電池について以下の条件でサイクル試験サイクル試験を行った。
・C/10速度で3回の充電/放電サイクル
・1時間又はC/20の電流に達するまで、4.2VでのCCCVで1C速度において97回の充電/放電サイクル。
【0137】
このシーケンスを4回行った(即ち全体で400サイクル)。
【0138】
結果は、少なくとも最初の400回の充電/放電サイクルにおいて、本発明による電池(電池E)及び参照電池(参照4)について同様の性能を示し、こうして、本発明の電解質をセパレータ不使用電池に用いた場合にも粗大化又は沈降作用がなく経時的に安定である粒子ネットワークの形成を実証している(図9)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9