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特許6999664胆汁酸を含む虚血性再灌流損傷の予防または治療用薬学的組成物
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  • 特許-胆汁酸を含む虚血性再灌流損傷の予防または治療用薬学的組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】胆汁酸を含む虚血性再灌流損傷の予防または治療用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/575 20060101AFI20220111BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220111BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220111BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20220111BHJP
【FI】
A61K31/575
A61P9/10
A61P9/10 101
A61P9/00
A23L33/10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019523032
(86)(22)【出願日】2017-10-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 KR2017012127
(87)【国際公開番号】W WO2018080276
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2019-06-14
(31)【優先権主張番号】10-2016-0143393
(32)【優先日】2016-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326683
【氏名又は名称】サムスン ライフ パブリック ウェルフェア ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG LIFE PUBLIC WELFARE FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ヒョンチョル
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ヒョンソク
【審査官】鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】China Journal of Chinese Materia Medica,2005, Vol.30, No.12,pp.930-932
【文献】Journal of Molecular and Cellular Cardiology,2005, Vol.39, No.5,pp.766-776
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/575
A61P 9/10
A61P 1/00
A61P 9/00
A23L 33/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胆汁酸(bile acid)またはその薬学的に許容可能な塩を含む心筋虚血性再灌流損傷の予防または治療用薬学的組成物であって、前記胆汁酸が、デオキシコール酸およびコール酸からなる群から選択される少なくとも1種である、前記薬学的組成物。
【請求項2】
前記心筋虚血性再灌流損傷が外傷または再灌流手術により生じる、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記再灌流手術が動脈硬化症または心血管疾患を治療するためのものである、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記心血管疾患が心筋梗塞または狭心症である、請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記組成物は、再灌流手術の前処理用である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩は、mPTP(mitochondrial permeability transition pore)の開放抑制剤である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩は、ベータ-カテニン(β-catenin)のアゴニスト(agonist)である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩は、ミトコンドリア保護用である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩は、組織の梗塞を抑制するものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
経口用製剤または注射用製剤の形態で剤形化されることを特徴とする、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
胆汁酸(bile acid)またはその薬学的に許容可能な塩は、0.1~10mg/kg/日で投与されることを特徴とする、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩を含む心筋虚血性再灌流損傷の予防または改善用食品組成物であって、前記胆汁酸が、デオキシコール酸およびコール酸からなる群から選択される少なくとも1種である、前記食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩を含む虚血性再灌流損傷の予防、治療または改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血液は、酸素や栄養分を体の各組織や細胞に運ぶ役割をするが、身体器官、組織または部位に血液を供給する血管が狭窄または収縮するか、正常な血管生成が充分になされず血液供給が不足で酸素が欠乏された状態を虚血(ischemia)という。虚血は、細胞を不可逆的に損傷させて組織の怪死(necrosis)につながる。特に、脳や心臓は、血流供給の不足に最も敏感な身体器官として、例えば、脳卒中または頭部損傷などで組織に虚血が発生すれば虚血性カスケード(ischemic cascade)という一連の過程が触発して組織が永久的に損傷される。このような組織損傷を防ぐために虚血が生じた後に血流が再び流れることを再灌流(reperfusion)という。
【0003】
虚血及びこれによる低酸素症に対する通常の治療は、全身の酸素供給を増加させるかまたは血管塞がりの原因を除去して、血流及び酸素伝達を正常水準に復旧することである。しかし、血流及び酸素伝達が復旧されながら、虚血または低酸素症によって誘発する損傷と関係なく追加で細胞死または機能喪失がもたらせるという問題がある。血流及び酸素伝達が復旧しながら誘発される追加の損傷は、再灌流損傷と知られている。再灌流損傷によって誘発される組織の損傷は、炎症性細胞の再灌流された組織への付着、これらの炎症性細胞の活性化及び後続するフリーラジカルの形成から生じる急性炎症状態と類似したものといえる。再灌流された組織内にフリーラジカル及びその他の細胞毒性生体分子の生成は、怪死またはアポトーシス経路の活性化による細胞死を誘発し得る。
【0004】
一方、mPTP(mitochondrial permeability transition pore)は、ミトコンドリア内膜に形成されており、mPTPが開放されれば1500Da以下の分子がミトコンドリア膜内に入ることができる。mPTP開放の結果は、酸化性リン酸化の脱共役、貯蔵されたカルシウム及び全アポトーシス因子の後続的放出と共に外部ミトコンドリア膜の腫脹及び窮極的な破裂をもたらすことである。貯蔵されたカルシウムの放出は、カルシウム過積載、活性酸素種(ROS)の生成及び細胞を通じた連鎖反応をもたらす近接のミトコンドリアにおけるMPT(mitochondrial permeability transition)をもたらし得る。次いで、細胞のエネルギー状態によって、不可逆的組織及び器官損傷を誘導するアポトーシスまたは怪死が発生する。
【0005】
多数の疾患の病因でミトコンドリアが媒介されたアポトーシス及び怪死の役割はよく定立されており、mPTPが急性心筋梗塞、脳卒中及び神経学上疾患、肝炎などを含む幾つかの疾患の病因及び進展で原因であることが知られている。
【0006】
特に、心筋梗塞の場合、虚血性心臓疾患で、順次的虚血性再灌流が怪死及び/またはアポトーシスによって心筋細胞死をもたらしながら発生する。致命的な再灌流傷害(組織再灌流の直接結果としての心筋細胞死)は、最終の心筋梗塞の大きさの50%まで占めると考えられ、RISK(Reperfusion Injury Salvage Kinase)経路及びmPTP開放に依存すると知られている。
【0007】
現在までこのような機能をするmPTPと胆汁酸との関連性については報告されていない。上述したように、発生頻度の高い重要疾患である虚血性再灌流損傷に対する効果的な治療法が十分でない実情であるため、胆汁酸を利用した虚血性再灌流損傷の効果的な予防と治療法があれば、その波及効果は非常に大きいことが予想される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者らは、mPTPと胆汁酸との連関性を研究する中で、胆汁酸中のデオキシコール酸、コール酸及びリトコール酸によって虚血性再灌流損傷が抑制可能なことを確認し、本発明を完成するようになった。
【0009】
従って、本発明の目的は、胆汁酸(bile acid)またはその薬学的に許容可能な塩を含む虚血性再灌流損傷の予防または治療用薬学的組成物及び虚血性再灌流損傷の予防または改善用食品組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、胆汁酸(bile acid)またはその薬学的に許容可能な塩を含む虚血性再灌流損傷の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩を含む虚血性再灌流損傷の予防または改善用食品組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、胆汁酸は、ベータ-カテニンの核内水準を増加させ、mPTP(mitochondrial permeability transition pore)の開放を妨害し、虚血性再灌流損傷動物モデルで組織の損傷を改善して梗塞の大きさを減少させる優れた効果があるため、虚血性再灌流損傷の予防、治療または改善に有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】コール酸、リトコール酸、デオキシコール酸が核内のベータ-カテニン水準を増加させるか否かをnuclear beta-catenin Luciferase assayを通じて確認した結果を示した図面である。
図2】デオキシコール酸(DCA)の処理後に時間別β-catenin核内移動をウエスタンブロット(western blot)を通じて確認した結果を示した図面である。
図3】コール酸、リトコール酸、デオキシコール酸がミトコンドリアを保護する効果があるか否かをTMRM(Tetramethylrhodamine、Methyl Ester、Perchlorate)染色法を通じて確認した結果を示した図面である。
図4】胆汁酸のTauroCA、コール酸及びリトコール酸を処理してHUVEC(human umbilical vein endothelial cell)で細胞のcounting方法(図4A)及びCCK-8(図4B)を利用した染色法を通じて細胞増殖効果の結果を示した図面である。
図5】胆汁酸のTauroCA、コール酸及びリトコール酸を処理してHUVEC(human umbrical vein endothelial cell)で染色法を通じた細胞移動効果の結果(図5A)及びBoyden chamberを利用して膜を通過した細胞の数をカウンティングした結果を示した図面(図5B)である。
図6】胆汁酸のマウス再灌流損傷抑制効果を確認したマウスモデルの組織写真を示した図面(図6A)及び前記組織写真で全体面積対比梗塞組織の面積を%で定量した結果を示した図面(図6B)である。
図7】胆汁酸中のデオキシコール酸による再灌流損傷による心筋怪死の抑制効果を確認するためにAnnexin-Vivo750蛍光染料を利用した染色結果を示した図面(図7A)及びデオキシコール酸の濃度別の心筋細胞死滅減少効果の結果を示した図面(図7B)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明は、胆汁酸(bile acid)またはその薬学的に許容可能な塩を含む虚血性再灌流損傷の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0015】
本発明において、胆汁酸は、ベータ-カテニンの核内水準を増加させ、mPTP(mitochondria permeable transition pore)の開放を妨害し、虚血性再灌流損傷動物モデルで組織の損傷を改善し、梗塞の大きさを減少させる優れた効果があるため、虚血性再灌流損傷の予防、治療または改善に有用に使用することができる。
【0016】
本発明において、胆汁酸(bile acids)は、ウルソデオキシコール酸(ursodeoxycholic acid)、GlycochenDCA(glycochenodeoxycholic acid)、TauroDCA(Taurodeoxycholic acid)、グリココール酸(Glycocholic acid)、TauroCA(Taurocholic acid)、ChenoDCA(Chenodeoxycholic acid、ケノデオキシコール酸)、コール酸(Cholic acid)、デヒドロコール酸(Dehydrocholic acid)、リトコール酸(Lithocholic acid)及びデオキシコール酸(Deoxycholic acid、DCA)で構成された群から選ばれた1種以上であることができ、好ましくは、コール酸、リトコール酸またはデオキシコール酸であるが、これに制限されるものではない。
【0017】
本発明のコール酸、リトコール酸及びデオキシコール酸は、低濃度でも効果的に虚血性再灌流損傷の予防及び治療が可能である。
【0018】
胆汁酸の薬学的に許容可能な塩は、特に断らない限り、胆汁酸に存在することができる酸性または塩基性基の塩を含む。例えば、薬学的に許容可能な塩としては、ヒドロキシ基のナトリウム、カルシウム及びカリウム塩が含まれ、アミノ基のその他に薬学的に許容可能な塩としては、ヒドロブロミド、硫酸塩、水素硫酸塩、リン酸塩、水素リン酸塩、ニ水素リン酸塩、アセテート、スクシネート、シトレート、タルトレート、ラクテート、マンデレート、メタンスルホネート(メシレート)及びp-トルエンスルホネート(トシレート)塩があり、当業界で知られた塩の製造方法や製造過程を通じて製造されることができる。好ましくは、グリコレートナトリウム塩、タウレートナトリウム塩であるが、これに制限されない。
【0019】
本発明において「虚血性損傷」とは、心臓、脳、腎臓などの血流供給を必要とする臓器で血液循環が遮断されながら酸素伝達が減少して発生する損傷を意味し、組織の機能損傷及び細胞死をもたらし得る致命的損傷を含む。虚血性損傷を引き起こし得る原因としては、血管疾病、冠状動脈血栓症、脳血管血栓症、動脈瘤破裂、全身出血、圧潰損傷、敗血症、深刻な肌熱傷、血管閉塞性手術方法(例えば、胸腹動脈瘤の手術過程における脊髓虚血)、心肺バイパス方法、臓器移植、心肺虚脱(急性心臓死)及び窒息などがあるが、これに制限されない。
【0020】
また、本発明において「虚血性損傷」とは、通常発生し得る虚血性損傷の他に臓器移植などで発生し得る虚血再灌流損傷を含む。
【0021】
本発明において「虚血性再灌流損傷」とは、心筋虚血、脳血管虚血、腎臓虚血、肝虚血、虚血再灌流心筋病症、肌虚血、腸管虚血、臓虚血、胃虚血、肺虚血、膵腸虚血、骨格筋虚血、腹筋虚血、四肢虚血、虚血再灌流結腸炎、腸間膜虚血及び無症侯性虚血からなる群から選ばれた1種以上の虚血によって生じることができ、これに制限されるものではない。
【0022】
前記虚血性再灌流損傷は、外傷、例えば、急性心筋梗塞後に血流の復旧のような自然的事件または血液供給減少を経験した組織または器官で血流の復旧;または再灌流手術、例えば、血液供給減少を経験した組織または器官で血流を復旧させる一つ以上の外科的手術、他の治療的介入(therapeutic intervention)または臓器移植手術過程によって発生し得る。前記外科的手術には、例えば、冠状動脈バイパス術、冠状動脈形成術、器官移植手術などが含まれる。
【0023】
例えば、急性心筋梗塞は、心臓の血管のうち一つが閉鎖されながら酸素及び栄養供給が行われず、心臓筋肉が死滅、怪死する現象を指すが、この場合、通常、病院で1時間以内に血管を再灌流させれば10%以内に死亡率を低くすることができる。しかし、10%内外の患者は塞がれた血管が再灌流しながら急激な酸素供給により心筋細胞が損傷を受けるが、これを再灌流損傷という。再灌流損傷によって10%内外の患者が施術後30日内に死亡し、生き残った患者の中で30%程度は心不全などの症状を得ることになる。
【0024】
本発明において用語「再灌流手術」とは、血管内に生成された血栓を除去し血流が再び流れるようにするための手術または施術を意味し、外科的血栓除去術及びステント(stent)などの使用を通じた再灌流誘発操作法などを含むが、これに限定されない。再灌流手術は、再灌流治療剤(例えば、tPAのようなプラスミノーゲン活性化剤)の短所を補完するために利用されることができる。
【0025】
再灌流手術としては、陰圧をかけて血栓を吸入する方法(近位部血栓除去術:proximal thrombectomy)、コイルをかけて血栓を抜き出す方法(遠位部血栓除去術:distal thrombectomy)、そしてステントを挿入して細くなった血管を広げると同時に、ステントを抜きながら血栓を共に除去する方法(ステントリトリーバー:Stent retriever)などがある。近位部血栓除去術は、血栓の近位部から接近して陰圧をかけて血栓を除去する方法として、主に吸入装置を利用し、例えばPenumbra systemがある。遠位部血栓除去術は、血栓を通り遠位部からワイヤをかけて血栓を除去する方法として、主にコイル装置を利用し、例えばMerci systemがある。ステントリトリーバーを利用する方法は、冠状動脈と同様にステントを入れて血管の再灌流を誘導する方法である。本発明による組成物は、上述した施術以外に再灌流を目的とする多様な再灌流手術に適用されることができる。
【0026】
本発明において再灌流手術とは、脳血管疾患、動脈硬化症、心血管疾患などを治療するために実施される手術または施術を意味するが、これに制限されるものではない。
【0027】
前記脳血管疾患は、脳卒中、脳梗塞、脳血栓症、脳塞栓証などを含むが、これに制限されるものではない。前記心血管疾患は、心筋梗塞、狭心症などを含むが、これに制限されるのではない。
【0028】
本発明の薬学的組成物は、虚血性再灌流損傷の発生前、発生と同時に、または発生後に投与が可能であり、例えば、再灌流手術の前処理用であることができる。本発明の薬学的組成物は、血管再灌流手術以前に患者の血管内に投与されて、再灌流後にくる組織、例えば心筋損傷を予防、治療または改善するのに有用である。
【0029】
また、本発明に記載されたように、虚血から始まった病状、及び虚血または虚血性再灌流によって引き起こされる損傷は、罹患された細胞、組織または器官で細胞死滅を誘導することができ、これは損傷及び機能障害につながる。本発明は、胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩をこれを必要とする細胞、組織または器官と接触させるか、これを必要とする個体に投与する段階を含む虚血性再灌流損傷の予防または治療方法を提供する。虚血性損傷または虚血性再灌流損傷の予防または治療のためには、例えば、本発明の胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩は、再灌流手術を受ける個体に、例えば、再灌流手術の約約5分前、約10分前、約15分前、約20分前、約30分前、約45分前、1時間前、約2時間前、約3時間前、約4時間前、約5時間前、約12時間前、約24時間前、または約48時間前に投与されることができ、好ましくは、約2時間前に投与されることができる。
【0030】
代案または追加的に、本発明の胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩は、再灌流手術後に、または再灌流手術途中に個体に投与されることができる。例えば、胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩は、再灌流手術の過程中に一定の間隔で1回以上投与されることができる。代案として、胆汁酸は、再灌流手術の持続時間中に連続して投与されることができる。また、例えば、本発明の胆汁酸は、再灌流手術を受けた個体に再灌流手術後に投与されることができる。本発明の胆汁酸は、再灌流手術を受けた個体に、例えば、再灌流手術の約5分後、約10分後、約15分後、約20分後、約30分後、約45分後、約1時間後、約2時間後、約3時間後、約4時間後、約5時間後、約12時間後、約24時間後、または約48時間後に投与されることができる。本発明の胆汁酸またはその許容可能な塩は、また再灌流手術前に生体外細胞、組織または器官(例えば、移植手術で使用される組織、器官移植術で使用される器官)に対する虚血または虚血性再灌流損傷を抑制するために使用されることができる。例えば、器官を宿主個体に移植する前に(例えば、滅菌環境内で器官の貯蔵または輸送中)、器官を胆汁酸と接触させて(例えば、本発明の胆汁酸を含む組成物中に入浴されて)虚血または虚血性再灌流損傷を抑制することができ、好ましくは、急性心筋梗塞を持った個体の再灌流施術前に1回の静脈注射をすることで、再灌流施術による心臓損傷を抑制することができる。
【0031】
また、本発明の薬学的組成物は、再灌流治療剤(therapeutic agent for recanalization)をさらに含むことができる。また、本発明の薬学的組成物は、再灌流治療剤と併用して使用されることができる。
【0032】
本発明の胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩は、mPTPの開放抑制剤である。
【0033】
本発明の胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩は、ベータ-カテニン(β-catenin)のアゴニスト(agonist)である。
【0034】
本発明の胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩は、ミトコンドリア保護用である。
【0035】
本発明の胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩は、組織の梗塞を抑制する。
【0036】
本発明の胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩は、ベータ-カテニン(β-catenin)のアゴニスト(agonist)で、塞がれた血管が再灌流しながら急激な酸素流入によりmPTP(mitochondrial permeability transition pore)が開放されて、心臓筋肉が死滅あるいは怪死する現象を大きく減少させる。これにより、再灌流施術以後30日内に10%に至る死亡率を減らし、施術後30%程度の患者が経験する心不全症状を減らすことができる。mPTPは、ミトコンドリア内膜に形成されており、mPTPが開放されればミトコンドリアの脱分極が誘導されてミトコンドリア機能不全が生じる。胆汁酸は、ベータ-カテニンのアゴニストとして作用してmPTPの開放を妨害しミトコンドリアの脱分極を抑制することで、ミトコンドリアを保護し、その酸化的損傷を防止して組織の梗塞を抑制する。これにより、虚血性再灌流損傷を予防、治療または改善する効果を表す。
【0037】
本発明の胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩を含む薬学的組成物は、注射用製剤または経口用製剤の形態で剤形化することができる。また、本発明の薬学的組成物を含む注射用製剤は、経口、経皮、皮下、静脈または筋肉を含んだ様々な経路を通じて投与されることができるが、好ましくは、静脈を通じて投与されることができる。本発明の薬学的組成物を含む注射用製剤は、個体に投与された後、活性成分の迅速、持続または遅延された放出が提供できるように当業界に公知された方法を使って剤形化することができる。前記注射用製剤は、皮下、筋肉または静脈内に投与されることが好ましく、最も好ましくは、静脈内に投与されることができる。静脈内に投与される場合、再灌流施術前に1回の静脈注射で投与されることができ、1回の静脈注射だけでも再灌流施術による心臓などの臓器の損傷を効果的に改善することができる。また、前記経口用製剤は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤及び凍結乾燥製剤で構成されたグループの中から選ばれることができるが、これに制限されるものではない。
【0038】
本発明の胆汁酸(bile acid)またはその薬学的に許容可能な塩は、腹腔内投与、鼻腔内投与、静脈注射、皮下注射、腦脊髄腔内注射、吸入投与、または経口投与を通じて個体に投与されることができる。また、本発明の薬学的組成物の有効成分は、投与を受ける個体の年齢、性別、体重、病理状態及びその深刻度、投与経路または処方者の判断によって変わる。このような因子に基づいた適正用量の決定は当業者の水準内にあるが、FDA承認濃度と類似した濃度またはFDA承認濃度対比低濃度で使用することができる。さらに具体的に、その1日投与用量は、例えば0.1mg/kg/日~10mg/kg/日、具体的には0.5mg/kg/日~5mg/kg/日、さらに具体的には0.8mg/kg/日~3mg/kg/日、よりさらに具体的には1mg/kg/日~2mg/kg/日であることができるが、これに制限されるものではない。本発明の薬学的組成物は、1日1回~3回投与されることができるが、これに制限されるものではない。
【0039】
本発明の薬学的組成物の非経口投与のための剤形は、注射剤、点滴剤、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、懸濁剤、乳剤、坐剤、パッチまたは噴霧剤であることができるが、これに制限されるものではない。また、本発明の薬学的組成物は、必要に応じて希釈剤、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩解剤、緩衝剤、分散剤、界面活性剤、着色剤、香料または甘味剤などの添加剤を含むことができる。本発明の薬学的組成物は、当業界の通常の方法によって製造されることができる。
【0040】
本発明の薬学的組成物は、単独でまたは一つ以上の他の治療剤と共に投与されることができ、他の治療剤の以前、以後またはこれと同時に投与されることができる。本発明の胆汁酸及び上記の他の治療剤は、分離した剤形として、または共同剤形として同時に(例えば、伴って)共同投与されることができる。代案として、作用剤は、熟練した臨床医が決めた適切な時間枠内で(例えば、療法の薬剤学的効果の重畳を許容するのに十分な時間)分離した組成物として順次に投与されることができる。本発明の胆汁酸及び一つ以上の他の治療剤は、要望される治療効果(例えば、虚血の減少及び/または抑制、虚血性損傷の減少及び/または抑制;虚血性再灌流損傷の減少及び/または抑制)を達成するのに適した順にそのようなスケジュールに従って単一用量または多数の用量で投与されることができる。適した投与量及び投与療法は、臨床医によって決められることができ、選択された作用剤、薬学的剤形及び投与経路、多様な患者要因及びその他の考慮事項に依存的である。
【0041】
本発明の薬学的組成物と共に投与されることができる、適した他の治療剤は、カルシウムチャンネル遮断剤、ベータ遮断剤、ニトログリセリン、アスピリン、抗炎症剤、ナトリウム利尿因子、血管拡張剤、血栓溶解剤及び抗血栓剤(antithrombolic agent)を含むが、これに制限されるものではない。
【0042】
また、本発明は、胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩を含む虚血性再灌流損傷の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0043】
前記食品組成物は、健康食品に使用されることができ、本発明で健康食品は、胆汁酸をそのまま添加するか他の食品または食品成分と共に使用されることができ、通常の方法によって適切に使用されることができる。
【0044】
前記食品の種類に特に制限はない。前記食品の例としては、ドリンク剤、肉類、ソーセージ、パン、ビスケット、餅、チョコレート、キャンディ類、スナック類、お菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種のスープ、飲料、アルコール飲料及びビタミン複合剤などがあり、通常の意味における健康食品を全て含む。
【0045】
本発明の胆汁酸またはその薬学的に許容可能な塩は、食品にそのまま添加するか他の食品または食品成分と共に使用されることができ、通常の方法によって適切に使用されることができる。有効成分の混合量は、その使用目的(予防または改善用)によって適合に決定されることができる。一般的に、健康食品中の胆汁酸の量は、全体食品重量の0.01~15重量で加えることができ、健康飲料組成物は、100mlを基準として0.02~5g、好ましくは0.3~1gの割合で加えることができる。しかし、健康及び衛生を目的とするかまたは健康調節を目的として長期間摂取する場合は、上記量は、上記範囲以下であることができる。安全性面で何らの問題もないため、有効成分は上記範囲以上の量でも使用されることができる。
【0046】
本発明の健康機能性飲料組成物は、指示された割合で必須成分として胆汁酸を含有する以外は、他の成分に特に制限がなく、通常の飲料のように様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。上述した天然炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えばマルトース、スクロースなど;及びポリサッカライド、例えばデキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖、及びキシリトル、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。上述したもの以外の香味剤として、天然香味剤(ソーマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウジオシドA、グリチルリチン)及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を有利に使用することができる。
【0047】
上記の他に本発明の食品組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含むことができる。
【0048】
本明細書で特に定義されない用語は、本発明が属する技術分野で通常使用される意味を持つ。
【実施例
【0049】
以下では、本発明を実施例によって詳しく説明する。但し、下記の実施例は、本発明を例示するだけで、本発明の内容が下記の実施例に限定されるものではない。
【0050】
実施例1.胆汁酸が核内のベータ-カテニン(β-catenin)水準に及ぼす影響の分析
1.1 ベータ-カテニン(β-catenin)亢進薬物を発掘するためのスクリーニング
多様な種類の胆汁酸が核内のベータ-カテニン水準に及ぼす影響を分析して、ベータカテニン亢進効果がある薬物を発掘するための実験を実施した。Nuclear beta-catenin Luciferase assayを通じてウルソデオキシコール酸(ursodeoxycholic acid)、GlycochenDCA(glycochenodeoxycholic acid)、TauroDCA(Taurodeoxycholic acid)、グリココール酸(Glycocholic acid)、TauroCA(Taurocholic acid)、ChenoDCA(Chenodeoxycholic acid、ケノデオキシコール酸)、コール酸(Cholic acid)、デヒドロコール酸(Dehydrocholic acid)、リトコール酸(Lithocholic acid)及びデオキシコール酸(Deoxycholic acid、DCA)の処理が核内のベータ-カテニン水準の変化に及ぼす影響を観察した。
【0051】
具体的に、TCF/LEF reporter_HEK293細胞株(BPS bioscience)を利用した。TCF/LEF reporter_HEK293細胞株は、核内のTCF/LEFプローモータ(ベータ-カテニン結合プローモータ)にルシフェラーゼがクローニングされている安定した細胞株で薬物処理後にルシフェラーゼの水準を測定すると、核内のベータ-カテニン水準を観察することができる細胞株である。TCF/LEF reporter_HEK293細胞株(BPS Bioscience)を24well(2×10個)あるいは96well(2×10個)に分株し、プレート底に細胞が付くまで培養した。休止期状態の細胞を作るために10%のFBS DMEM培地を1%のFBS培地に交替して一日中培養した。上記のような胆汁酸を細胞に1μMまたは10μMで処理して24時間培養した後、ルミノメーター(luminometer)を利用してルシフェラーゼの活性度を測定した。測定結果を図1に示した。
【0052】
図1に示すように、10種の胆汁酸中のTauroCA、コール酸、リトコール酸、デオキシコール酸が核内のベータ-カテニン水準を有意的に増加させることを確認した。
【0053】
1.2 Deoxycholic acid(DCA)によるβ-cateninの核内移動増加の確認
上記実施例1.1で確認したデオキシコール酸(DCA)によるβ-catenin核内移動関連機作を調べるために、western blotを行った。DCA 1μMを細胞に処理して30分、1、2、4、8時間後の細胞に対してwestern blotを行い、その結果を図2に示した。
【0054】
図2から確認できるように、DCAの処理後30分から核内でβ-cateninの増加が観察され、2時間後に細胞の核内のβ-cateninの量が最もpeakをなす結果を確認した。
【0055】
従って、TauroCA、コール酸、リトコール酸、デオキシコール酸がmPTP(mitochondrial permeability trasition pore)の開放を妨害するベータ-カテニンの水準を増加させ、これを通じて再灌流損傷を抑制する効果を表してベータ-カテニン亢進効果のある薬物の候補群としての可能性を確認した。
【0056】
実施例2.胆汁酸のミトコンドリア保護効果の確認-mPTPの開放抑制
上記実施例1でベータ-カテニンの水準を増加させる効果があることを確認したコール酸、リトコール酸、デオキシコール酸がミトコンドリアを保護する効果があるのかを確認するために、TMRM(Tetramethylrhodamine、Methyl Ester、Perchlorate)染色法を行った。TMRMは、正常なミトコンドリアに染色される蛍光マーカーである。
【0057】
具体的に、293T細胞にコール酸、リトコール酸、デオキシコール酸を1μM及び10μM処理して1時間後、再灌流と類似した刺激をミトコンドリアに誘導してmPTPを開いて分極を誘導する物質であるCCCP(chlorophenylhydrazone、50μM)を処理して、mPTPの開放誘導及びミトコンドリアの脱分極を誘導した。45分後にPBSで洗い出してTMRMで染色した後、蛍光リーダー器を利用して数値を測定した。測定結果を図3に示した。陽性対照群としては、代表的なmPTPの開放を抑制する物質であるCyp(cyclosporine A)を使用した。
【0058】
図3に示すように、陽性対照群であるCypを処理した群でCypがミトコンドリア損傷を約50%程度抑制し、リトコール酸も陽性対照群と類似した水準でミトコンドリアの損傷を抑制した。特に、コール酸及びデオキシコール酸の場合、ミトコンドリア損傷を約90%抑制可能な効果があることを確認した。
【0059】
従って、コール酸、デオキシコール酸、リトコール酸を処理して誘導されたmPTPの開放を抑制してミトコンドリアの脱分極を抑制し、ミトコンドリアを保護する優れた効果があることを確認した。従って、コール酸、デオキシコール酸及びリトコール酸が再灌流によるミトコンドリアの損傷を抑制して、不可逆組織及び器官損傷を誘導するアポトーシスまたは怪死を抑制することができることを確認した。
【0060】
実施例3.胆汁酸のin vitro細胞増殖効果及び細胞移動効果の確認
3.1 胆汁酸のin vitro細胞増殖効果の確認
胆汁酸の中でTauroCA、コール酸及びリトコール酸を1μM処理してHUVEC(human umbrical vein endothelial cell)で細胞増殖効果が表れるのかを確認するための実験を実施した。細胞counting方法及びCCK-8を利用した染色法としてTauroCA、コール酸及びリトコール酸を処理した24時間後の細胞の増殖効果を確認した。上記実験の結果を図4A及び4Bに示した。
【0061】
図4Aに示すように、Proliferation assayではコール酸及びリトコール酸が対照群より有意な細胞増殖効果があることを確認した。図4Bに示すように、CCK-8 assayではコール酸による有意な細胞増殖効果を確認した。従って、コール酸及びリトコール酸が細胞を増殖させ、これを通じた虚血性再灌流損傷の抑制効果を示すことを確認した。
【0062】
3.2 胆汁酸のin vitro細胞移動効果の確認
胆汁酸の中でTauroCA、コール酸及びリトコール酸を1μM処理してHUVEC(human umbrical vein endothelial cell)で細胞移動効果が表れるのかを確認するためにBoyden chamberを利用して細胞の数を確認した。TauroCA、コール酸及びリトコール酸を処理した後の細胞の移動効果を確認し、上記実験の結果を図5A及び5Bに示した。
【0063】
図5Aに示すように、コール酸、TauroCA及びリトコール酸を処理すれば、対照群より確実に細胞の移動が起きることを確認した。また、図5Bに示すように、migration assayではコール酸及びリトコール酸を処理した場合、細胞の移動が対照群より有意な水準に増加する効果があることを確認した。特に、コール酸は、対照群より約2倍ほど細胞移動効果があり、最も優れた移動効果があることを確認した。
【0064】
従って、コール酸及びリトコール酸は細胞を移動させ、これを通じた虚血性再灌流損傷の抑制効果を表すことを確認した。
【0065】
実施例4.再灌流損傷マウスモデルの製造及び胆汁酸のマウス再灌流損傷抑制効果の確認
再灌流損傷マウスモデルを製造するために、ケタミンを利用してBalb/Cマウス(8週齢)を痲酔した。チューブを気道内に挿管して呼吸器に連結した後、マウスの左側横が上になるように補正して肌を切開した。3、4番の肋骨間を開いて心臓が表れるように固定し、左心室にデオキシコール酸またはスクリーニング及びin vitro assayで最も効果が優れたコール酸を血管注射方式で濃度別(2、10、50mg/kg)に注射した後、 左冠状動脈を縛ってから40分後解いて縫合した。24時間後に心臓を採取して-20℃に4時間氷らせた後、心臓を2mmの厚さで4等分して、それぞれの組織を2%TTC(PBS内)溶液に入れて40分間培養して染色した。以後、10%のホルマリン溶液に移して一日保管後に写真を撮り、その結果を図6Aに示した。また、組織写真で全体面積対比梗塞組織の面積を%に定量した結果を図6Bに示した。陽性対照群としては、mPTPの開放を抑制する物質であるCyp(cyclosporine A)を使用した。
【0066】
図6Aに示すように、生きている組織は赤色で染色され、梗塞組織は白色で染色されたことを確認した。対照群より2mg/kgのデオキシコール酸を処理した組織及び2、10mg/kgのコール酸を処理した組織は、白色で染色された部分がほとんどなく大部分が赤色で染色されたことを確認した。
【0067】
また、図6Bに示すように、陽性対照群であるCyp(5mg/kg)の場合、20%程度の梗塞面積減少を表すことに対し、2mg/kgのデオキシコール酸を処理した場合50%以上減少し、2mg/kgのコール酸の場合は約50%減少し、10mg/kgのコール酸の場合は約40%程度梗塞面積が減少することを確認した。但し、デオキシコール酸の場合は10mg/kg以上の濃度では個体が死亡し、2mg/kg以下の濃度で効果を表した。コール酸の場合も2mg/kgで最適な効能を表した。従って、低濃度で使用する場合に再灌流損傷抑制効果に優れたことを確認した。
【0068】
従って、低濃度のデオキシコール酸とコール酸を再灌流後の心臓損傷抑制剤として使用可能なことを確認した。
【0069】
実施例5.再灌流損傷マウスモデルの製造で胆汁酸のマウス心筋怪死抑制効果の確認
上記再灌流損傷による心筋怪死の胆汁酸の中でデオキシコール酸による抑制効果を確認するために、Annexin-Vivo750蛍光染料を利用してマウス心筋怪死の確認実験を行った。上記実施例3で製造されたマウスモデルに24時間後にAnnexin-Vivo750蛍光染料を投入して、濃度別のデオキシコール酸(1、2、5mg/kg(mpk))の効果を観察し、その結果を図7A及び7Bに示した。Annexin染料は、細胞死滅が起こった所で結合して蛍光を表すと知られている。
【0070】
図7Aに示すように、再灌流施術をしなかった対照群の場合は、心臓が染色されないが、再灌流施術をした対照群は強い蛍光が表れることを確認した。また図7Bに示すように、デオキシコール酸の場合、1mpk、2mpk濃度の場合は、再灌流施術対象群対比40%以上心筋死滅を減少させる効果を確認した。従って、低濃度のデオキシコール酸を効果的な虚血性再灌流の損傷抑制による再灌流損傷抑制剤として使用可能なことを確認した。
【0071】
たとえ本発明が上記で言及された好ましい実施例として説明されたが、発明の要旨と範囲から逸脱することなく多様な修正や変形をすることが可能である。また、添付の請求の範囲は、本発明の要旨に属するこのような修正や変形を含む。
【0072】
製剤例1:医薬品の製造
1.1 カプセル剤の製造
胆汁酸:100ml
トウモロコシでん粉:100mg
乳糖:100mg
ステアリン酸マグネシウム:2mg
通常のカプセル剤の製造方法によって上記の成分を混合し、ゼラチンカプセルに充填して錠剤を製造する。
【0073】
1.2 注射剤の製造
胆汁酸:100ml
注射用滅菌蒸留水:適量
pH調節剤:適量
通常の注射剤の製造方法によって1アンプル当り(2ml)上記の成分含量で製造する。
【0074】
1.3 液剤の製造
胆汁酸:100ml
砂糖:20g
異性化糖:20g
レモン香:適量
精製水を加えて全体1,000mlに合わせた。通常の液剤の製造方法によって上記成分を混合した後、茶色瓶に充填して滅菌させて液剤を製造する。
【0075】
製剤例2:食品の製造
2.1 小麦粉食品の製造
本発明の食品組成物0.1~10.0重量部を小麦粉に添加し、この混合物を利用して通常の方法でパン、ケーキ、クッキー、クラッカー及び麺類を製造して健康増進用食品を製造した。
【0076】
2.2 乳製品(dairy products)の製造
本発明の食品組成物0.1~1.0重量部を牛乳に添加し、前記牛乳を利用して通常の方法でバター及びアイスクリームのような多様な乳製品を製造した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7