(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】MEMSデバイスの可動質量体のための減衰システム
(51)【国際特許分類】
B81B 7/02 20060101AFI20220111BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20220111BHJP
G01P 15/08 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B81B7/02
B81B3/00
G01P15/08 102D
(21)【出願番号】P 2019527428
(86)(22)【出願日】2017-11-20
(86)【国際出願番号】 FR2017053166
(87)【国際公開番号】W WO2018091851
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-10-30
(32)【優先日】2016-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】306047664
【氏名又は名称】サフラン
(73)【特許権者】
【識別番号】311015001
【氏名又は名称】コミサリヤ・ア・レネルジ・アトミク・エ・オ・エネルジ・アルテルナテイブ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レエ,ギヨーム・ジェローム・フランソワ
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0251897(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0220803(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0113977(KR,A)
【文献】特開2011-153838(JP,A)
【文献】A Novel Shock Protection Method Based on MEMS Compliant Latching Stopper,2016 IEEE 29th International Conference on Micro Mechanical Systems (MEMS),米国,IEEE,2016年01月24日,p.1125 - 1128
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B81B 7/02
B81B 3/00
G01P 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MEMSデバイス(1)の可動質量体(2)のための減衰システムにして、
システムは、MEMSデバイス(1)の質量体(2)と表面要素(3)との間の直接的な接触を防止することができ、質量体(2)は、表面要素(3)に対して第1の方向(D
1)に沿って並進方向に移動可能であり、
減衰システムは、
- 質量体(2)と表面要素(3)との間に位置決めされている、弾性的な特性を有する機械的ストッパー(4)であって、ストッパー(4)は、ストッパー(4)が休止位置(PB
R)にあるときに、第2の方向に沿って配向されている、機械的ストッパー(4)と、
- ストッパー(4)をロック/アンロックするためのシステム(5)と、
を含む、減衰システムであって、
ロッキング/アンロッキングシステム(5)が、
ストッパー(4)に向けて配向されているブランチ(51)であって、ブロッキング端部(53)を含む、ブランチ(51)と、
第1の方向(D
1)および第2の方向に対して実質的に垂直の回転軸(A)に沿ってブランチ(51)を枢動させることができる枢動リンク(54)と、
を含み、
ロッキング/アンロッキングシステム(5)は、並進の第1の方向(D
1)に沿って、質量体(2)の2つの以下の位置、すなわち、
- 質量体(2)の中央位置(PM
C)であって、質量体(2)は、前記中央位置(PM
C)において復帰手段(21、22)によって付勢されており、復帰手段(21、22)は、それぞれ、質量体と、表面要素(3)に対して固定されたMEMSデバイスの構造体と、に接続されている、中央位置(PM
C)と、
- 第1の端部位置(PM
1)であって、第1の端部位置(PM
1)では、質量体(2)が、その中央位置(PM
C)
と比べて表面要素(3)
に対してより近づけられており、ストッパー(4)は、ロック位置(PB
V)に沿って、表面要素(3)に向けて押されており、ブランチ(51)は、そのブロッキング端部(53)によって、このロック位置(PB
V)においてストッパー(4)をブロックするように構成されている、第1の端部位置(PM
1)と
を画定しており、
ロッキング/アンロッキングシステムは、ストッパー(4)がロック位置(PB
V)に保持されない位置まで、枢動リンク(54)の周りに回転可能になっていることを特徴とする、減衰システム。
【請求項2】
ロッキング/アンロッキングシステム(5)が、レバー(52)をさらに含み、レバー(52)が、ブランチ(51)に固定され、枢動リンク(54)に沿って回転可能であり、
減衰システムが、質量体(2)に固定された突出部要素(23)をさらに含み、突出部要素(23)が、質量体(2)からレバー(52)に向けて突出しており、
質量体(2)が中央位置(PM
C)から第2の端部位置(PM
2)へ切り換わるときに、レバー(52)が、突出要素(23)の並進移動によって駆動され、ストッパー(4)がロック位置(PB
V)に保持されない位置まで、枢動リンク(54)の周りにロッキング/アンロッキングシステム(5)を回転させるように、レバー(52)および突出要素(23)が構成されている、請求項1に記載の減衰システム。
【請求項3】
減衰システムが、アクチュエーターをさらに含み、アクチュエーターが、ブランチ(51)の付近に位置決めされており、能動的制御によってブランチを駆動することができ、ストッパー(4)がブランチによってロック位置(PB
V)に保持されない位置まで、ブランチを枢動リンク(54)の周りに回転させる、請求項1または2に記載の減衰システム。
【請求項4】
ブランチの付近に位置決めされているアクチュエーターが、電子的に制御される静電アクチュエーターである、請求項3に記載の減衰システム。
【請求項5】
ストッパーが、ビーム(4)から構成されており、ビーム(4)が、表面要素(3)に固定されたMEMSデバイスの第1の表面に、ビーム端部を通して埋め込まれており、ビーム(4)は、MEMSデバイスの第2の表面にも、第2のビーム端部を通して埋め込み可能である、請求項1から4のいずれかに記載の減衰システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の減衰システムを含む、アクチュエーターまたはセンサータイプの、MEMSデバイス。
【請求項7】
MEMSデバイスが、請求項1から5のいずれか一項に記載のいくつかの減衰システムを含むことを特徴とする、請求項6に記載のMEMSデバイス。
【請求項8】
質量体(2)と第1の表面要素(3)および第2の表面要素(3’)との間の直接的な接触を防止するために、2つの表面要素(3、3’)が、第1の方向(D
1)に沿って、質量体(2)の両側に位置付けされており、2つの減衰システムのストッパー(4、4’)およびロッキング/アンロッキングシステム(5、5’)が、第1の方向(D
1)に沿って質量体(2)の両側に配置されている、請求項7に記載のMEMSデバイス。
【請求項9】
質量体(2)が、第1の方向(D
1)とは別個の第3の方向(D
3)に沿って、第2の表面要素(3”)に対して並進方向に移動可能であり、減衰システムが、第1の方向(D
1)に沿って、質量体(2)と第1の表面要素(3)との間の直接的な接触を防止するように配設されており、別の減衰システムが、第3の方向(D
3)に沿って、質量体(2)と第2の表面要素(3”)との間の直接的な接触を防止するように配設されている、請求項7に記載のMEMSデバイス。
【請求項10】
MEMSデバイスが、2つの減衰システムのロッキング/アンロッキングシステム(5、5’)の間に連結システム(6)をさらに含み、
前記ロッキング/アンロッキングシステム(5)に関連付けられるストッパー(4)がロック位置に保持されないように、ロッキング/アンロッキングシステム(5)がその枢動部(54)の周りに回転することが、他方のロッキング/アンロッキングシステム(5’)に関連付けられるストッパー(4’)もロック位置に保持されない位置まで、この他方のロッキング/アンロッキングシステム(5’)をその枢動部(54’)の周りに回転駆動するように、連結システムが構成されている、請求項7から9のいずれかに記載のMEMSデバイス。
【請求項11】
連結システム(6)が、
- 2つの連結枢動部(62、62’)であって、2つの連結枢動部(62、62’)が、2つのロッキング/アンロッキングシステム(5、5’)にそれぞれ固定されており、第1の方向(D
1)および第2の方向に対して実質的に垂直の回転軸(A)に沿って、2つのロッキング/アンロッキングシステム(5、5’)をそれぞれ枢動させることができる、2つの連結枢動部(62、62’)と、
- 主に並進方向に移動可能な、2つの連結枢動部(62、63)に接続されているスライド部(61)と
を含む、請求項10に記載のMEMSデバイス。
【請求項12】
レバー、および、減衰システムの質量体に固定されている要素が、質量体(2)が中央位置(PM
C)から減衰システムのうちの一方の第1の端部位置(PM
1)へ切り換わるときに、他方の減衰システムのレバー(52’)が、この他方のシステムの突出部要素(23’)によって駆動され、対応するストッパー(4’)がロック位置(PB
V)に保持されない位置まで、この他方のシステムのロッキング/アンロッキングシステム(5’)をその枢動リンク(54’)の周りに回転させるように構成されている、組み合わせた請求項8および10に記載のMEMSデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、小さいサイズの慣性センサーとして、MEMS(マイクロ電気機械的システム)システムの中に、小さな寸法の可動要素を備えた機械的システムの設計に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMSデバイスの信頼性の低さおよび壊れやすさの主な原因のうちの1つは、振動事象または衝撃の間に、前記可動要素が、固定された表面と接触するときである。この接触は、一方では、静電相互作用またはファンデルワールス力による可動要素の結合を引き起こす可能性がある。他方では、これらの可動要素および隣接する要素は、たとえば、MEMSデバイスの急な落下の間に、激しいおよび/または繰り返される衝撃によって劣化させられる可能性がある。
【0003】
これらの問題は、運動中の要素がかなりの質量または大きい変位振幅を有するときに、いっそう問題とされる:両方のケースでは、可動体の運動エネルギは、質量体が変位させられるときに増加させられ、対向して固定された表面との衝突の間の可動システムの劣化のリスクが増加させられる。これは、とりわけ、最新式の慣性システム、たとえば、加速度計またはジャイロスコープなどにおいても当てはまり、そのようなシステムは、信号/ノイズ比を低減させるために、高い慣性および大きい変位振幅の質量体を必ず含む。
【0004】
結合のリスクを制限するために、MEMSセンサー可動体の表面の上に剛性のストップ要素を実装することが当技術分野において知られており、可動体とその軌跡の上に位置付けされている固定されたサポートとの間の接触エリアの表面を低減させるようになっている。実際に、結合の源における相互作用の強度は、前記接触表面に比例している。しかし、この表面が小さくなればなるほど、機械的な拘束がますますその表面に集中させられ、ストップにおける機械的な故障の増加のリスクを伴う。
【0005】
固定されたサポートに対して可動体の進行(stroke)をもはや急激に停止させない目的のために、しかし、可動体の進行を減衰させ、減速させ、次いで、その変位を停止させる目的のために、剛性の変形不可能なストップ要素の代わりに、可撓性のおよび変形可能の弾性的なまたは塑性的なストッパーを、MEMSセンサーの中へ導入することが提案されている。以下の刊行物:S. W. Yoon, S. Lee, N.C. Perkins, and K. Najafi, Shock-Protection Improvement Using Integrated Novel Shock-Protection Technologies, Journal of Micro-electromechanical Systems, Vol. 20, no. 4, pp. 1016-1031, Aug. 2011は、MEMSシステムの中の硬い表面に対するビームの衝突の力を低減させるために、弾性的なまたは塑性的な挙動を有するストップを提案している。
【0006】
しかし、塑性的な性質のストップ要素の設計は、機械的なパーツを製造するための方法の中に追加的な複雑性を誘発する。そのうえ、純粋に弾性的な挙動を有するストッパーと接触する運動中の可動要素は、その運動エネルギの大部分をストッパーの位置エネルギへ変換させる。可動体の運動エネルギがゼロに到達するときに、非常に弾性ストッパーは、その位置エネルギの多くを可動体の運動エネルギに復元する可能性があり、低いエネルギ消散を伴う。したがって、ストッパーは、可動体を再び運動状態に置くこととなり、機械的な破砕のリスクを伴って、隣接する表面の上での可動構造体の複数の跳ね返りを引き起こす可能性がある。
【0007】
この問題を克服するために、そのような弾性ストッパーを、可動体によって変位させられたその位置にロックすることが提案されているが、ストッパーは、可動体の運動エネルギの一部を位置エネルギの形態で貯蔵するため、この位置エネルギが可動体に戻されないようになっている。読者は、以下の刊行物:K. Xu, N. Zhu, X. Zhang, W. Su, W. Zhang, and Y. Hao, A novel shock protection method based on MEMS compliant latching stopper, in Proc. IEEE MEMS 2016, 2016, pp. 1125-1128を参照することができるであろう。ここで実装されている弾性ストッパーは、ストッパーの表面から突き出ている一部分の上に1対のフックを含み、それは、ストッパーに面する壁部の上に装着されたフックとかみ合うことが可能である。壁部に向けて方向付けされた質量体が、ストッパーと接触するときには、ストッパーは、変形させられ、次いで、それが臨界的な変形振幅に到達すると、その変形された位置にフックによって機械的にロックされる。したがって、可動体がその初期位置に戻るときには、ストッパーは、ブロックされており、その弾性位置エネルギを可動体に伝えることができない。ストッパーは、可動体の付近に解放されることができず、跳ね返りを引き起こすことができない。
【0008】
しかし、この解決策、および、最新技術から知られている他の同様の解決策は、1回よりも多く使用可能でないという重大な不利益を有しており、ストッパーのブロッキングは、不可逆的となるように設計されている。機械構造体の衝撃または振動の新しい事象の発生に対して、ブロック位置にあるままのストッパーシステムは、もはや、機械的な衝撃を吸収するその機能を保証せず、その効果を悪化させる可能性もある。ストッパーがブロック位置にあるときには、可動体の自由変位振幅が増加させられ、その運動衝突エネルギが増加させられ得る。
【0009】
国際特許出願WO2006/127035A2は、並進方向に移動可能な質量体を含む、MEMSデバイスの中に実装され得る衝撃センサーを開示している。この質量体は、衝撃事象の後に質量体をロック位置に保持するために、および、特定のレベルの衝撃を検出するために、ラチェットと係合可能なフックを設けられている。この文献は、ラチェットの上に作用することができるアンロッキングアクチュエーターの形態の、質量体をアンブロックするための追加的な要素を提供している。したがって、衝撃センサーは、一連の衝撃事象を検出するために再使用可能である。しかし、可動体に対向する要素との間の衝撃を吸収する機能は、ここでは保証されていない。この文献において実装されているデバイスの複雑性および容積は、可動体によって経験される衝撃を吸収する要素とのその関連付けを困難にする。それに加えて、そこで説明されているリスタートアクチュエーターは、能動的制御、たとえば、サーマル制御またはキャパシティブ制御によって制御されており、この文献は、受動的制御モードでの純粋に機械的な解決策を提案していない。
【0010】
したがって、設計の中に過度の複雑性を誘発させることなく、受動的制御または能動的制御によって、ストッパーをアンロックするステップも提供する、電気機械的マイクロ構造体の中の弾性ストッパーをロックするための解決策に対する必要性が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【非特許文献】
【0012】
【文献】S. W. Yoon, S. Lee, N.C. Perkins, and K. Najafi, Shock-Protection Improvement Using Integrated Novel Shock-Protection Technologies, Journal of Micro-electromechanical Systems, Vol. 20, no. 4, pp. 1016-1031, Aug. 2011
【文献】K. Xu, N. Zhu, X. Zhang, W. Su, W. Zhang, and Y. Hao, A novel shock protection method based on MEMS compliant latching stopper, in Proc. IEEE MEMS 2016, 2016, pp. 1125-1128
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、小さな寸法のシステムおよび機械的要素の精巧な寸法決めに適合された機械的な設計によって、MEMSタイプのデバイスにおける関連の使用の、能動的として受動的制御モードで動作することができる、マイクロ機械構造体のための弾性ストッパーのロッキング/アンロッキングを制御するためのシステムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によるストッパーは、本発明によるロッキング/アンロッキングシステムと組み合わせて、機械的なヒステリシスサイクルを提供し、ストッパーは、それが減衰させる可動質量体の変位振幅に対して非線形の機械的な挙動を有している。しかし、第1の衝撃事象の後にストッパーをロック位置にブロックすることによって導入される非可逆性は、本明細書で後に説明されることになるように、能動的にまたは受動的に制御され得る後続のアンロッキングステップによって対処され得る。
【0015】
第1の態様によれば、本発明は、そのようなデバイスの可動質量体のための減衰システムであって、
システムは、MEMSデバイスの質量体と表面要素との間の直接的な接触を防止することができ、質量体は、表面要素に対して第1の方向に沿って並進方向に移動可能であり、
減衰システムは、
- 質量体と表面要素との間に位置決めされている、弾性的な特性を有する機械的ストッパー
を含み、
前記ストッパーは、ストッパーが休止位置にあるときに、第2の方向に沿って配向されるとともに、
ロッキング/アンロッキングシステムに関連付けられており、ロッキング/アンロッキングシステムは、以下の要素:
ストッパーに向けて配向されているブランチであって、ブランチは、ブロッキング端部によって終端されている、ブランチと、
MEMSデバイスの要素がその上に配置されているプレートの平面に対して垂直の回転軸に沿って、ブランチを枢動させることができる枢動リンクと
を備えており、
ロッキング/アンロッキングシステムは、その並進の方向に沿って、質量体の2つの位置:
- 中央位置と、
- 第1の端部位置であって、第1の端部位置では、質量体が、その中央位置に対して対向する表面要素のより近くにあり、ストッパーは、次いで、ロック位置に沿って、表面要素に向けて押されており、ブランチは、そのブロッキング端部によって、このロック位置においてストッパーをブロックするように構成されている、第1の端部位置と
を画定しており、
アンロッキングシステムは、ストッパーがロック位置に保持されない位置まで、枢動リンクの周りでのロッキング/アンロッキングシステムの回転を可能にするようにさらに構成されている、減衰システムに関する。
【0016】
図1から
図9に図示されているロッキング/アンロッキングシステムの受動的機械的制御に対応する1つの実施形態では、ロッキング/アンロッキングシステムであって、ロッキング/アンロッキングシステムは、レバーをさらに含み、レバーは、ブランチに固定されており、ブランチと同じ枢動リンクに沿って回転するようになっており、
減衰システムは、質量体に固定された突出部要素をさらに含み、突出部要素は、質量体からこのレバーに向けて延在しており、質量体が中央位置から第2の端部位置へ切り換わるときに、レバーが、突出要素の並進移動によって駆動され、ストッパーがロック位置に保持されない位置まで、枢動リンクの周りにロッキング/アンロッキングシステムを回転させるようになっている、ロッキング/アンロッキングシステムがここで提供される。
【0017】
ストッパーのロッキングおよびアンロッキングの能動的制御に対応する第2の実施形態では(ここでは図示されていない)、ロッキング/アンロッキングシステムのその枢動リンクの周りの回転動作の制御は、アクチュエーターによって保証され得、たとえば、MEMSデバイスの対向する表面のアクチュエーターと関連付けられ得る。これらのアクチュエーターは、たとえば、電気的に活性化させられる静電櫛型駆動装置であり、ロッキング/アンロッキングシステムと対向する表面との間の距離を変調させ、ロッキング/アンロッキングシステムをその枢動リンクの周りに一方の方向または他方の方向に回転させるのに十分な静電相互作用力を発生させることが可能である。
【0018】
第2の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様による減衰システムを含む、センサーまたはアクチュエータータイプのMEMSデバイスを提案する。本発明は、質量体が隣接する要素に対して移動可能であり、前記要素との衝撃の事象の間の機械的な連結または機械的な破砕の重大なリスクを生じさせる、MEMSデバイスに関する有利な使用に関するものである。
【0019】
そのうえ、同じ並進の方向に沿っていくつかの変位の方向のいずれかにおいて(
図4から
図7に図示されているように)、または、いくつかの並進の方向において(
図8に図示されているケース)、可動質量体を減衰させるために、いくつかのロッキング/アンロッキングシステムを含むMEMSデバイスが提案される。
【0020】
非限定的な非常に有利な様式では、複数のストッパーをアンロックするステップの受動的制御を改善するために、および、ストッパーをロックするステップの可逆性を改善するために、そのような複数のロッキング/アンロッキングシステムは、可動質量体の変位に応答して、ロッキング/アンロッキングシステムの回転移動同士をリンクさせるために、1つまたは複数の連結システムに関連付けられ得る。本発明の要素の精巧な寸法決めは、とりわけ、
図4から
図7を参照して下記に説明されることになるような、複数のロッキング/アンロッキングシステムの間のこの相互作用を可能にする。
【0021】
さらに、本発明は、減衰システムを含むMEMSデバイスであって、減衰システムは、2つの方向に沿って隣接する表面要素に対して移動することができる2つの質量体のセットとともに動作するように提供されており、前記2つの質量体は、同じ可動要素の一部であることができるまたは一部であることができない、MEMSデバイスを提案する。次いで、4つのセットのストッパーおよびロッキング/アンロッキングシステムが作製され、4つのシステムは、
図9を参照して後に本明細書で説明されることになるように連結されている。
【0022】
本発明のいくつかの例示的な実施形態は、以下の図によって図示されており、および、下記に詳述されており、本発明は、弾性的な挙動を伴うストッパーの受動的制御または能動的制御によって、ロッキングおよびアンロッキングを保証するためのMEMSデバイスの中に製造および導入することが簡単な解決策を与える。ここで提案されているロッキング/アンロッキングシステムの非常に簡単な設計は、そのようなデバイスの小型化を目的として、小さな寸法のMEMSデバイスの中へのその実装を可能にする。
【0023】
ロッキング/アンロッキングシステムによって発生させられる小さい容積は、いくつかの並進の方向にMEMSデバイスの中の可動体を減衰させるために、下記に説明されているように、これらのシステムのうちのいくつかを実装することを可能にする。本発明は、いくつかのロッキング/アンロッキングシステムの同時の能動的制御を可能にする。
【0024】
また、本発明は、並進の変位の1つまたは複数の方向に沿ってMEMSデバイスの隣接する構造体のいくつかの表面要素と接触することができる可動MEMSデバイスの質量体に関して、上記に定義されているような減衰システムのセットを提案する。
【0025】
そのうえ、本発明は、また、枢動部およびスライド部を使用して、いくつかのロッキング/アンロッキングシステムを連結するためのシステムを提案する。この後者の解決策は、いくつかのロッキング/アンロッキングシステムの同時の能動的制御を促進させる。それに加えて、2つの連結されているロッキング/アンロッキングシステムの使用は、下記に説明されることになるように、機械的な衝撃の新しい事象の間のストッパーの再使用のための可能性を改善する。
【0026】
本発明の使用の範囲は、MEMSデバイスの中の並進の軌跡のみを説明する可動体のケースに限定されないということが、当業者によって理解されるべきである。本発明は、有利には、その全体的な移動は回転成分を含むが、大半を並進移動として局所的に説明され得る、可動体と組み合わせて使用され得る。
【0027】
本発明の他の特徴、目的、および利点は、MEMSシステムの中のいくつかの有利な実施形態を説明する以下の詳細な説明を読むと、および、純粋に例示的で非限定的な目的のために解釈されるべき以下の図を参照して、より明らかになることになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1のケースを概略的に表す図であり、第1のケースでは、質量体が、1つの幾何学的配置のみにおいて1つの並進の方向に沿って減衰させられ、質量体は、初期の中央位置に表されていることを示す図である。
【
図2】同じデバイスを図示する図であり、可動質量体が、第1の低い端部位置にあり、ストッパーがロック位置に設定されていることを示す図である。
【
図3】質量体が第2の上部端部位置へと切り換わるときの、ストッパーのアンロッキング局面を図示する図である。
【
図4】第2のケースを概略的に表す図であり、第2のケースでは、2つの連結されているロッキング/アンロッキングデバイスが、可動質量体の並進の方向の両側に設置されている(ここでは、初期の中央位置に表されている)ことを示す図である。
【
図5】質量体が
図4に提示されているシステムの状態から低い位置へと切り換わるときの、2つの連結されているロッキングシステムを備える同じデバイスを図示する図であり、対向するフレーム要素とのその接触が、低いストッパーによって減衰させられていることを示す図である。
【
図6】同じデバイスの中において、
図5に提示されているステップの後の、中央位置への質量体の復帰を図示しており、低いストッパーが低いロック位置にブロックされたままになっていることを示す図である。
【
図7】
図6に提示されているシステムの状態から上部端部位置への質量体の切り換えを図示する図である。
【
図8】第3のケースを概略的に表す図であり、第3のケースでは、質量体が、2つの実質的に垂直の並進の方向に沿って移動可能であり、これらの2つの方向に沿って1つの配向のみに減衰させられることを示す図である。
【
図9】第4のケースを概略的に表す図であり、第4のケースでは、2つの質量体が、同じ2つの実質的に垂直の並進の方向に沿って移動可能であり、これらの2つの方向に沿った或る配置においてのみ減衰させられることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ここで説明されている実施形態のすべては、小さな寸法の質量体を含む、MEMSタイプの電気機械的デバイスに関するものであり、質量体は、並進移動として局所的に説明され得る移動で、その進行をブロックする可能性のある隣接する表面要素に対して移動することが可能である。この局所的な並進移動は、他の並進成分もしくは回転成分または変形制約を含む、質量体の全体的な移動の一部であることが可能であるということが想起される。
【0030】
図1は、MEMSタイプデバイスの可動質量体2を表しており、可動質量体2は、MEMSデバイスの表面要素3に対して実質的に垂直方向に沿って並進方向に移動可能である。ここで表されている減衰システムは、質量体2をストッパー4と接触させるのに十分に大きい加速度で質量体2が駆動されているときに、下向きへの質量体2の移動を減衰させることが意図されている。空間の任意の方向に沿った質量体の並進移動を減衰させることが可能であるということが理解される。
【0031】
1つの非本質的な特質によれば、質量体2は、ここでは、2つの復帰要素21および22によって並進方向に拘束されている。スプリング21は、一方の端部によって、質量体2の上側面に固定されており、別の端部によって、表面要素3に対して固定された表面要素に固定されている。同様に、スプリング22は、一方の端部において、質量体2の下側面に固定されており、別の端部において、固定された要素に固定されている。ここで、2つのスプリングは、
図1に図示されているように、質量体2を中央位置PM
Cへ戻そうとする。質量体2は、MEMSデバイスにおいて使用可能な任意の他の手段によって、並進方向に拘束され得るということが理解される。ここで表されている中央位置PM
Cは、質量体の休止位置として考えられ得る。
【0032】
ストッパー4は、弾性的な挙動を有する板ばねを含む。板ばねは、その垂直方向に沿って薄い厚さを有する板ばねと、その垂直方向に沿ってより大きい厚さを有する先端部要素41とを含む。板ばねは、図の平面に対して垂直の平面の上に(したがって、水平方向に)実質的に延在している。ここで提示されているその休止位置PB
Rにおいて、すなわち、ストッパー4が弾性的に拘束されていない位置において、ストッパー4は、図の平面に対して垂直の平面の上に実質的に延在している。ストッパー4は、ここでは、簡単に、要素3に対して固定された表面要素の中にその右側端部を通して埋め込まれており、左側端部は、垂直方向に移動可能である。ストッパー4は、中央位置にある質量体と表面要素3との間にストッパー4が延在することを可能にするレベルを通して、垂直方向に埋め込まれている。本出願に表されていない別の実施形態によれば、ストッパー4は、二重に埋め込まれ得、たとえば、一方では、その右側端部において、
図1に表されている平面に埋め込まれ得、他方では、左側端部において、図の平面に対して平行の別の平面に埋め込まれ得る。したがって、質量体2が要素3に対して並進方向に方向付けされる場合には、ストッパー4は、質量体2と要素3との間に間置されるように配設されている。ストッパー4は、たとえば、シリコン、シリカ、ゲルマニウム、窒化ケイ素、または、MEMSデバイスにおいて従来から使用されている別の半導体材料など、弾性的な特性および良好な機械的な強度を有する材料で製造されている。
【0033】
ロッキング/アンロッキングシステム5が、さらに表されている。ここで公表されている実施形態では、および、非限定的な様式で、ロッキング/アンロッキングシステム5は、その後に説明される様式にしたがって、ストッパー4の位置の受動的制御を実施する。システム5は、良好な機械的な強度を有する剛性材料で形成されている。システム5は、その低い部分において、いくつかの部分からなるブランチ51を含む:一部分は、ストッパー4に向けて水平方向に沿って延在しており、一部分は、垂直方向に延在し、フック53を伴って終端しており、それにより、凹面を提示するようになっており、凹面は、概して右に向けて配向され、ストッパー4の変形経路の上に延在している。その結果、フック53の下に水平方向に延在することになる要素が、フック53によってその上向きの移動において限定されることになるようになる。ロッキング/アンロッキングシステム5は、その上側部分において、レバー52をさらに含み、レバー52は、ブランチ51にしっかりと接続されており、レバー52は、質量体2に向けて水平方向に延在している。ブランチ51およびレバー52は、剛性のアセンブリを形成しており、剛性のアセンブリは、枢動リンク54によって、要素3に対して固定された表面要素に接続されており、従って、図の平面に対して実質的に垂直の軸線の周りの回転において、ロッキング/アンロッキングシステム5が部分的に自由になるようになっている。
【0034】
最後に、質量体2は、レバー52の対向する、その左側の低い部分に、突出部要素23を含み、突出部要素23は、レバー52に向けて方向付けられており、その垂直方向の並進移動に関して堅固であり、質量体2に固定されている。ここで表されている質量体2の中央位置において、突出部要素23が、休止位置におけるレバー52とストッパー4との間に配設され、フック53が休止位置においてストッパー4の下に位置付けされるように、レバー52およびブランチ51は、寸法決めおよび配置されている。
【0035】
レバー52および突出部要素23は、ここでそうであるように、ロッキング/アンロッキングシステムの受動的制御を保証する実施形態のみにしたがって、減衰システムの中で有用であるということが留意されたい。本出願の図によって表されていない別の実施形態によれば、下記に述べられている追加的な要素が、能動的制御を介して、突出部要素23およびレバー52と同じ機能を保証することが可能である。
【0036】
図2では、
図1の参照数字が、対応する要素に関して(および、すべての他の図に関しても)保たれており、
図2は、並進させられた低い位置PM
1(システムの第1の端部位置として見なされる)にある質量体2を表しており、低いスプリング22は、圧縮状態で作動しており、スプリング21は、弛緩状態で作動している。位置PM
1は、中央位置PM
Cに対して十分に並進させられており、それにより、質量体2の進行によって下向きに駆動されるストッパー4が、ロック位置PB
Vへ切り換えられる。このロック位置において、ストッパー4は、もはや、その全体が、垂直方向の平面に対して実質的に垂直の平面の上に延在しておらず、その非可動の右側端部を通して埋め込まれているままで、下向きに変位させられている。したがって、ストッパー4の可動端部41は、対向するブランチ51のフック53の下を通っており、突出部要素23は、質量体2の中央位置PM
Cに対して、レバー52から離れるように移動している。位置PM
Cから位置PM
1への質量体2の移動の間に、質量体2の運動エネルギは(並進方向へのその速度に関係付けられる)、ストッパー4の板ばねの弾性位置エネルギへ部分的に変換され(ばね定数k
b)、また、それらの休止位置ではない位置へ拘束されているスプリング21および22の弾性位置エネルギへ部分的に変換される(ばね定数k)。質量体2の上向きへの上昇の間に、突出部要素23がレバー52に当接した質量体2の状態を超えることなく、ストッパー4は、フック53の下にブロックされたままになっている(上向きへの質量体2の上昇のこの状態は、ここで表されていない)。したがって、ストッパー4によって貯蔵されている弾性位置エネルギは、運動エネルギの形態で質量体2に戻されず、スプリング21および22によって貯蔵されている位置エネルギのみが戻されることになる。ηは、上述の質量体2の下降のステップ、次いで、上昇のステップの間の、質量体2に関して見られるエネルギ効率を表すものとし、x(表されていない)は、中央位置PMCに対する質量体2の最大垂直方向の変位振幅を表ものとし、g
bは、質量体2の低い縁部とストッパー4の上側表面との間の垂直方向の距離(表されていない)を表すものとして、以下の式を有することが可能である。
【0037】
【0038】
ストッパー4のブロッキングに起因して、1よりも厳密に小さい効率ηが存在する。その下向きの移動における質量体2の運動エネルギは、完全には質量体2に戻されるわけではない。表面要素3と反対側の表面要素(ここでは表されていない)との間で、質量体2の上昇の間に、ストッパー4の解放において、質量体2が垂直方向に跳ね返ることにならないという利点を伴う。95%よりも小さいエネルギ効率ηが、跳ね返り効果を回避するために重要なものとしてすでに考えられ得、ここで提示されているシステムは、50%程度の低い効率に戻ることを理論的に可能にする。
【0039】
図3は、同じデバイスに関して、第2の端部位置PM
2として見なされ得る高い位置に向かう質量体2の上昇を図示している。位置PM
2は、十分に高くなっており、その中央位置PM
Cからその高い位置PM
2へのその進行において、質量体2が、突出部要素23を介してレバー52を駆動し、レバー52が、その変形不能性に起因して、枢動リンク54を介してロッキング/アンロッキングシステム5を上向きに回転駆動するようになっている。ブランチ51、および、とりわけフック53(レバー52に固定されている)は、フック53が十分に持ち上げられた位置まで、上向きに回転駆動され、ストッパー4の端部41が、もはやロック位置PB
Vにブロックされないようになっている。したがって、ストッパー4は解放され、
図2に図示されている質量体2の下降のステップの間に貯蔵されたその弾性位置エネルギを消散させる。有利には、このエネルギは、質量体2に戻されず、したがって、質量体2の跳ね返りを引き起こす可能性がない。
【0040】
この実施形態では、ロッキング/アンロッキングシステム5のアンロッキングの受動的制御が存在する場合に、ロック位置PBVへ切り換わった後のストッパー4のアンロッキングは、たとえば、高い位置PM2において、突出部要素23がレバー52を上向きに駆動するように、質量体2が後続のステップにおいて十分に上昇する場合にのみ達成され得る。第1の低い端部位置PM1の後に、この条件を充足しない位置に向けて、たとえば、中央位置PMCに向けて(質量体2は中央位置PMCに向けて復帰手段21および22によって自発的に拘束されている)、質量体2が上昇する場合には、ストッパー4はアンブロックされず、下向きへの質量体2のその後の衝撃を吸収するためのその有効性が損なわれる。
【0041】
ロッキング/アンロッキングシステム5のアンロッキングの能動的制御が存在することになる別の実施形態では(本出願では表されていない)、電子的な作動手段が、ロッキング/アンロッキングシステム5に、たとえば、レバー52に、および、対向する表面の上に配設され得、枢動部54の周りの上向きへのブランチ51の回転の機械的なアクションへの入力電気信号の変換を可能にする。たとえば、一方では、レバー52の高い部分に設置され、他方では、対向する固定された表面の上に配置されている、異なる極性の電極が、適切な静電アクチュエーターを形成することが可能である。この能動的制御モードでは、突出部要素23は、もはやアンロッキングに対して必須ではなく、省略され得る。そのうえ、アンロッキングは、次いで、もはや、先験的に、特定の高い位置への質量体2の上昇によって条件付けされず、有利には、高い位置PM2よりも低い質量体2の位置において、ストッパー4のアンロッキング閾値を確立することが可能である。
【0042】
減衰システムのセットの第2の実施形態が、
図4から
図8に表されている。この実施形態では、実質的に垂直方向に沿って並進方向に移動可能な質量体2は、以前の実施形態と同様にその下向きの移動において減衰させられるだけでなく、第2の弾性ストッパー4’に関連付けられる第2のロッキング/アンロッキングシステム5’によって、MEMSデバイスの第2の表面要素3’に対するその上向きの移動においても減衰させられる。第2のロッキング/アンロッキングシステム5’およびストッパー4’の構造および配置は、すべてのポイントにおいて、
図4の平面に対して垂直の平面に関して対称的に、ロッキング/アンロッキングシステム5およびストッパー4のものにしたがっている。しかし、MEMSデバイスの構造がそれを要求する場合には、上記に説明されている様式によるロッキング/アンロッキングシステム5’の機能性が保たれている限りにおいて、上向きへの質量体2の移動の減衰に対応する要素の寸法決めおよび配置は、異なることも可能であるということが留意されたい。
【0043】
図4から
図8に表されているケースにおいて、2つのロッキング/アンロッキングシステム5および5’、ならびに、2つの弾性ストッパー4および4’が、まったく同一の垂直方向の並進の軸線において質量体2の変位を減衰させ、2つのストッパー4および4’が、その変位の方向において質量体2の両側に配設されているということに留意されたい。しかし、下記に説明されているように、および、とりわけ
図8に図示されているように、2つのロッキング/アンロッキングシステムによって、2つの別個の方向に沿った並進移動を減衰させることが可能である。
【0044】
そうであるので、
図4に表されているデバイスは、先行する図においてすでに識別された要素に加えて、以下の要素:すなわち、表面要素3’と、ストッパー4’であって、ストッパー4’は、その右側端部において埋め込まれており、その左側端部41’を自由にさせている、ストッパー4’と、ロッキング/アンロッキングシステム5’であって、ロッキング/アンロッキングシステム5’は、端部フック53’を設けられたブランチ51’およびレバー52’を含み、枢動リンク54’の周りに回転し、レバー52’は、突出部要素23’と相互作用することができ、突出部要素23’は、その移動において堅固であり、質量体2に固定されている、ロッキング/アンロッキングシステム5’と、を含む。
【0045】
組み合わせられたこれらのさまざまな要素の動作は、ここでは繰り返して詳述されないことになる。しかしながら、上記に説明されている語彙および用語を使用するために、上記に定義されているような、ストッパー4に関する質量体2の第1の低い端部位置PM1は、ストッパー4’に関する質量体2の第2の端部位置に対応しており、ストッパー4に関する質量体2の第2の上部端部位置PM2は、ストッパー4’に関する質量体2の第1の端部位置に対応しているということが留意されたい。
【0046】
質量体2の垂直方向の位置決めの連続的なステップのシーケンスが、下記に詳述されている。
【0047】
ここでは表されていない代替的な実施形態によれば、並進の高い方向および低い方向の両方に関する機能的な減衰システムは、2つのロッキング/アンロッキングシステム5および5’の間に追加的な連結要素を含まない。
【0048】
図4および以下の図に表されている別の非常に有利な実施形態によれば、減衰システムのセットは、2つのロッキング/アンロッキングシステム5および5’の間に連結システム6をさらに含む。連結システム6は、枢動リンク62および枢動リンク62’によって2つのロッキング/アンロッキングシステム5および5’にそれぞれ接続されており、枢動リンク62は、たとえば、レバー52の連続性の中において、ロッキング/アンロッキングシステム5の高い部分に位置付けされており、枢動リンク62’は、たとえば、レバー52’の連続性の中において、ロッキング/アンロッキングシステム5’の低い部分に位置付けされている。また、連結システム6は、スライド部61を含み、スライド部61は、2つの枢動リンク62および62’に接続されている。連結システム6の自由度は、スライド部61によって拘束されており、実質的に水平方向の軸線に沿ったスライド部61の並進のみを可能にするようになっている。このように、その枢動リンク54の周りのロッキング/アンロッキングシステム5の回転移動、とりわけ、上向きの回転移動は、反対側方向へのその枢動リンク54’の周りのロッキング/アンロッキングシステム5’の反対側方向への同じ角度の回転移動を引き起こし、また、その逆も同様である。この構成の利点は、下記に公表されることとなり、以下の図によって説明されることになる。
【0049】
図5は、質量体2がストッパー4に関する第1の低い端部位置PM
1に到達しているときの、同じデバイスを表している。したがって、
図5は、ストッパー4およびロッキング/アンロッキングシステム5に関する
図2と同じステップに対応している。これらの要素の挙動は、その枢動リンク62に拘束されているロッキング/アンロッキングシステム5がその枢動リンク54の周りに上向き回転しているということを除いて、
図2を参照してすでに上記に説明されている挙動と同等である。したがって、ブランチ51は、上向きに回されるが、ストッパー4は、低い位置に留まっており、表面要素3に当接する質量体2によって拘束されている。
【0050】
ロッキング/アンロッキングシステム5のこの回転は、スライド部61の並進によって引き起こされ、それ自身は、その枢動接続部54’の周りのロッキング/アンロッキングシステム5’の下向きの回転によって引き起こされる。実際に、その低い端部位置PM
1に向けてのその進行において、質量体2は、突出部要素23’を介して、レバー54’を下向きに駆動する。まさにロッキング/アンロッキングシステム5およびストッパー4に関して
図3に提示されている状況のように、ロッキング/アンロッキングシステム5’およびストッパー4’に関するすべてのことが起こる。実質的に水平方向の休止位置に、
図4に提示されている状態にあったストッパー4’は、ブランチ51’の進行によって下向きに駆動されるが、これは、質量体2の変位のこの段階において影響がない。
【0051】
距離g
1およびg
2は、明確化のために、
図4に表されている。ストッパー4の上側表面および突出部要素23は、距離g
1にある。ストッパー4の上側表面および表面要素3は、距離g
2にある。質量体2の下向きの移動の振幅g
1+g
2は、次いで、ロック位置PB
Vにストッパー4をロックすることを可能にする。
【0052】
図6は、再び同じシステムに関して、
図4および
図5に図示されている状態を通過した後の、質量体2のその中央位置PM
Cへの復帰を表している。システムは、フック53の下にブロックされているその自由左側端部41によって、ストッパー4がそのロック位置PB
Vにブロックされているということを除いて、
図4に図示されているものと同様の状態に戻っている。
【0053】
図6から、本出願の図は、2つの可能な状態への切り換えを図示している。
【0054】
図7では、質量体2は、ストッパー4に関する第2の上部端部位置PM
2に向けて装着されている。したがって、
図7は、ストッパー4およびロッキング/アンロッキングシステム5に関する
図3と同じステップに対応している。これらの要素の挙動は、
図3を参照することによってすでに上記に説明されている挙動に等しい。ストッパー4は、そのロック位置PB
Vから解放されており、質量体2が再び下向きに移動させられる場合に、質量体2を減衰させることができる。
【0055】
そのうえ、質量体2をその上部端部位置PM2へ切り換えることは、第2のストッパー4’をロック位置へ切り換えることを引き起こし、質量体2がストッパー4’を表面要素3’に押し付けた状態になる。枢動リンク62および62’の連結に起因して、ロッキング/アンロッキングシステム5’は、アンロック位置に設定されているロッキング/アンロッキングシステム5の上向きの進行によって下向きに駆動されるが、これは、ストッパー4’に対して有利な効果を有していない。
【0056】
しかし、システムが、
図6に提示されている状態から、
図5に提示されているものと同様の新しい状態(そこでは、質量体2は、2回目に中央位置PM
Cへ再び切り換えられた後に、2回目に低い位置PM
1へ戻る)へ切り換えられるときに、質量体2がその下向きの進行を終了し、ストッパー4を表面要素3に押し付ける前に、ストッパー4は、そのロック位置PB
Vから解放される。
【0057】
ストッパー4がロック位置PBVにある状態の後、低い位置PM1への質量体2の別の切り換えの間に、ストッパー4のこのアンロッキングは、連結システム6を含む、ここで表されている実施形態の主要な利点を構成する。
【0058】
これは、減衰システムのセットの寸法決めによって可能にされ、それは、質量体2の下向きの進行においてレバー52’が突出部要素23’によって駆動され、ストッパー4がもはやそのロック位置PBVから離れることができない位置に質量体2が到達する前に、ブランチ51の持ち上げを引き起こすということを提供する。
【0059】
ステップのこのシーケンシングを可能にするためのアセンブリに対する寸法決めの制約は、明確化のために、
図4に見られる距離g
1およびg
3によって図示されている。注意として、ストッパー4の上側表面および突出部要素23は、距離g
1にある。そのうえ、レバー52’の上側表面および突出部要素23’は、垂直方向の距離g
3にある。質量体2によるそのブロッキングの前のストッパー4のアンロッキングは、距離g
1が距離g
3よりも厳密に大きいという事実によって可能にされる。
【0060】
したがって、2つのロッキング/アンロッキングシステムを連結するための解決策を含む減衰システムのセットは、弾性ストッパーのロッキングの改善された可逆性を可能にする。ストッパーのロッキングを引き起こす所与の方向への質量体2の移動の後に、たとえば、2つのストッパー4および4’のうちのいずれか1つをアンロックするには、その中央位置への質量体2の復帰だけでよく、一方、連結システムがない場合には、その中央位置をはるかに越えた他の方向における端部位置へ質量体2を切り換えることが、アンロッキングのために必要であることになる。
【0061】
減衰システムのセットの第3の実施形態が、
図8に提示されており、
図8は、同じ機能の要素を指定するために、
図4から
図8に与えられている参照記号を部分的に使用している。ここで、連結システム6’が、2つのロッキング/アンロッキングシステム5および5”の間に実装されており、2つのロッキング/アンロッキングシステム5および5”は、それぞれ、2つの表面要素3および3”に対する質量体2の起こり得る衝撃を吸収することを目指している。ここで図示されているセットと
図4から
図8のものとの差は、表面要素3”に当接するために、質量体2が、表面要素3に当接するのと同じ方向だけに沿って並進移動を実施しなければならないということである。2つのロッキング/アンロッキングシステム5および5”、ならびに、2つのそれぞれの弾性ストッパー4および4”は、もはや、同じ並進の方向に沿って質量体2の両側に配設されておらず、2つの別個の並進の方向に、すなわち、垂直方向D
1および水平方向D
3(そのうえ、ここでは垂直である)に配設されている。スライド部61’、ならびに、2つのそれぞれのロッキングシステム5および5’の上の2つの枢動リンク62および62’を含む、連結システム6’は、スライド部の並進の移動が、実質的に水平方向の軸線の上に行われず、水平方向と実質的に45°の角度を形成する軸線の上に行われるということを除いて、
図4から
図8の連結システム6と同等の様式で動作する。
【0062】
図9は、複雑な形態を備えた第4の実施形態を表しており、MEMSデバイスの2つの質量体2aおよび2bに関係しており、2つの質量体2aおよび2bは、運動中の同じ可動要素を構成している可能性もあり、または、構成していない可能性もあり、それぞれが、水平方向D
1に沿って、および、垂直方向D
3に沿って移動可能である。
【0063】
質量体2aは、要素3aに対するロッキング/アンロッキングシステム5aおよびストッパー4aによって、右側に向かう方向D1に沿って減衰させられ、また、要素3’aに対するロッキング/アンロッキングシステム5’aおよびストッパー4’aによって、上向きの方向D3に沿って減衰させられる。質量体2bは、要素3bに対するロッキング/アンロッキングシステム5bおよびストッパー4bによって、下向きの方向D3に沿って減衰させられ、また、要素3’bに対するロッキング/アンロッキングシステム5’bおよびストッパー4’bによって、左側に向かう方向D1に沿って減衰させられる。ここで図示されているシステムは、互いに垂直の2つの対角線の軸線に沿って対称性がある。したがって、それぞれの質量体は、それぞれの並進の方向に沿って1つの方向にだけ減衰させられる。
【0064】
そのうえ、複雑な連結解決策6が、4つのロッキング/アンロッキングシステム5a、5b、5’a、5’bの間に実装されている。第1のスライド部61aは、ロッキング/アンロッキングシステム5aと5’aとの間の連結を生成させており、第2のスライド部61bは、ロッキング/アンロッキングシステム5bと5’bとの間の連結を生成させている。それに加えて、2つのスライド部61aおよび61b、ならびに、4つのロッキング/アンロッキングシステム5a、5b、5’a、5’bに伴うそれぞれの枢動リンクによって形成されているシステムの追加的な自由度は、2つのスライド部61cおよび61dによって拘束されており、スライド部61aの並進およびスライド部61bの並進が相互に独立していないようになっている。この配置およびこの連結解決策6の1つの効果は、4つのロッキング/アンロッキングシステム5a、5b、5’a、5’bの回転をリアルタイムで連結することであり、それらのそれぞれの枢動リンク54a、54b、54’a、54’bの周りのそれらのそれぞれの回転が、
図9に見ることができる2つの対角線の軸線に沿って常に対称性を順守するようになっている。