(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】シール材を動的に計量するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
B05C 11/10 20060101AFI20220128BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20220128BHJP
B01F 35/83 20220101ALI20220128BHJP
B05D 1/26 20060101ALN20220128BHJP
B05D 3/00 20060101ALN20220128BHJP
B05D 3/06 20060101ALN20220128BHJP
B05D 7/24 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C5/00 101
B01F15/04 C
B01F15/04 D
B05D1/26 Z
B05D3/00 B
B05D3/06 Z
B05D7/24 301T
(21)【出願番号】P 2019535447
(86)(22)【出願日】2017-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2017072215
(87)【国際公開番号】W WO2018050482
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-09-04
(31)【優先権主張番号】102016217429.0
(32)【優先日】2016-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102016224655.0
(32)【優先日】2016-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517284496
【氏名又は名称】ケメタル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ブロック,ハインツ
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-149838(JP,A)
【文献】特開平09-098560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00- 5/04
7/00-21/00
B05D 1/00- 7/26
B01F15/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール材を動的に計量するための装置であって、前記装置が、
シール材成分のための2個の容器と、
2個のデバイスに接続された第1の駆動部であり、前記2個のデバイスの各々がその容器から前記シール材成分のうちの1つを輸送することができる、第1の駆動部と、
駆動コントローラと、
前記容器から輸送された前記シール材成分を混合するための混合ユニットであり、前記シール材を構成要素に施すための開口を有する、混合ユニットと
を含み、
前記装置が、追加として、
補償容積部をもつ補償容器と、
前記補償容器の前記補償容積部内に達するピストンに接続された第2の駆動部と
を含み、
前記補償容器が前記混合ユニットに接続され、前記第1の駆動部および前記第2の駆動部が、前記駆動コントローラによって動的に一緒に制御され得る、装置。
【請求項2】
前記第1の駆動部および/または第2の駆動部が、どちらの場合もサーボ駆動部である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
2個の輸送デバイスがピストンであり、前記ピストンの1個ずつが、シール材成分のための前記容器のうちの1個の中に達し、前記容器が貯蔵容器である、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
2個の輸送デバイスが、ポンプ、より詳細には、偏心スクリューポンプまたはスクープピストンポンプである、請求項1または2に記載の装置。
【請求項5】
前記2個の輸送デバイスが、偏心スクリューポンプであり、シール材成分のための前記容器が、各々シール材成分で連続的に充填され得る開放型容器である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記混合ユニットが、静的混合器である、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記補償容器が、プラスチックのカートリッジ、または清掃することが容易な構成要素である、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記装置が、2成分混合および計量システムである、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記装置が、化学線の統合源を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
シール材を動的に計量するための方法であって、
請求項1から9のいずれか一項に記載の前記装置の前記容器が各々1個のシール材成分で充填され、前記シール材成分が混合ユニットにおいて混合され、前記結果として生じたシール材が、前記第1の駆動部により前記容器から前記シール材成分を輸送することによって構成要素に施され、
前記駆動コントローラに事前設定された臨界値より下の計量速度は、前記容器からの前記シール材成分の輸送速度を前記計量速度の前記臨界値まで低下させ、前記補償容器が充填される速度が前記臨界値と前記計量速度の実現値との間の差に対応するように前記補償容器を前記第2の駆動部によりシール材で充填することによって実現される、方法。
【請求項11】
前記計量速度が再び少なくとも前記臨界値まで上昇する場合、前記容器からの前記シール材成分の前記輸送は停止され、前記シール材は、前記補償容器内の前記シール材が使い果たされるまで、前記第2の駆動部により前記補償容器から輸送される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記計量速度が再び少なくとも前記臨界値まで上昇する場合、前記第1の駆動部による前記容器からの前記シール材成分および前記第2の駆動部による前記補償容器からの前記シール材成分の前記輸送は、前記補償容器内の前記シール材が使い果たされるまで、同時に行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記シール材が、化学線による照射の後でのみ実質的に硬化するシール材である、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール材量を動的に計量するための装置と、さらに、対応する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、航空機および宇宙船で使用される種類のシール材は、一般に、混合装置で2個の成分(主剤および硬化剤)を混合することによって生成され、続いて、インサイチュー(in situ)で、すなわち、被覆されるべき構成要素上で硬化される。硬化作業は、熱により、および/または化学線によって達成され得る。
【0003】
この目的のための1つの装置が
図1に示される。成分Aおよび成分Bは、当初、別個の貯蔵容器に配置される。2個の成分(AおよびB)が、規定速度で静的混合管内に輸送され、互いに混合されるように、好適な駆動部、好ましくはサーボ駆動部が作動される。このようにして得られた、まだ完全には硬化していないシール材は、次に、ビーズの形態で装置を出て行く。
【0004】
形状が複雑である構成要素の封止を実行するとき、計量速度(すなわち、時間の単位当たりに施されるシール材の量)は、動的に、言い換えれば、封止される特定の部位に応じて調節されなければならない。「動的計量」という用語も使用される。
【0005】
しかしながら、後者の形態の計量では、生じる問題は、静的混合器を使用する場合、混合比および混合の品質に悪影響を及ぼすことなく計量速度を無限に低下させることができないということである。
【0006】
これの主な理由は、主剤成分(例えば、ポリサルファイド系成分)が圧縮可能であるが、硬化剤成分は圧縮性を欠いており、そこで、計量速度が低下するにつれて、硬化剤成分と比較して、貯蔵容器からの主剤成分の放出の減速が増加することになるからである。
【0007】
それゆえに、特に、計量速度が、少量計量作業の場合のように極端に低い場合、混合比の変化およびさらに混合の品質の低下に関する問題が生じる。
【0008】
単位距離当たりより低い放出、言い換えれば、明らかにより低い計量速度を達成するために、上述の装置を支えるクロスメンバの移動速度を増加させる場合、これは、そうは言っても、複雑な幾何形状の場合には、計量精度を犠牲にして達成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それゆえに、本発明の目的は、十分な品質の混合およびさらに十分な精度の計量が、計量速度と関係なく、言い換えれば、低い計量速度でさえ達成される、シール材を動的に計量するための装置、およびさらに対応する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1に記載の装置および請求項10に記載の方法によって達成されている。好ましい実施形態が、従属請求項にそれぞれ記載される。
【0011】
シール材を動的に計量するための本発明の装置は、シール材成分のための2個の容器と、2個のデバイス(輸送デバイス)に接続された第1の駆動部であり、2個のデバイスの各々がその容器からシール材成分のうちの1個を輸送することができる、第1の駆動部と、駆動コントローラと、容器から輸送されたシール材成分を混合するための混合ユニットであり、シール材を構成要素(component)に施すための開口を有する、混合ユニットと、さらに、追加として、補償容積部をもつ補償容器と、補償容器の補償容積部内に達するピストンに接続された第2の駆動部とを含む。
【0012】
この構成の補償容器は混合ユニットに接続される。補償容器は、この接続により充填され空にされる。第1の駆動部および第2の駆動部は、駆動コントローラによって動的に一緒に制御され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本発明に係る装置の一実施形態を示す図であって、計量速度が臨界値より上の場合を示す図。
【
図3】本発明に係る装置の一実施形態を示す図であって、計量速度が臨界値よりも低い場合を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1のそのような装置が、
図2およびさらに
図3に示され、第2のそのような装置が、
図4に示される。しかしながら、これらの図は、限定するものとして理解されるべきでない。
【0015】
「シール材」は、現在、常に、2個のシール材成分の混合物を意味する。
【0016】
「第1の駆動部」は、さらに、別々に制御され得る2個の駆動ユニットからなることができ、2個の駆動ユニットのうちの第1のものは2個の輸送デバイスのうちの第1のものに接続され、2個の駆動ユニットのうちの第2のものは2個の輸送デバイスのうちの第2のものに接続される(
図4を参照)。しかしながら、1つの好ましい実施形態によれば、第1の駆動部は、2個の輸送デバイスに接続される単一の駆動ユニットからなる。
【0017】
一方では、「シール材成分のための2個の容器」は、貯蔵容器、すなわち、各々、規定量のシール材成分で充填され、次に、閉じることができる容器とすることができる(
図2および
図3を参照)。
【0018】
他方では、「シール材成分のための2個の容器」は、開放型容器、すなわち、各々、シール材成分で連続的に充填することができる容器とすることができる(
図4を参照)。このようにして、シール材の中断されないフローを達成することができる(
図4を参照)。
【0019】
「混合ユニット」は、静的混合器、動的混合器、または両方の組合せとすることができる。
【0020】
好ましくは、第1の駆動部および/または第2の駆動部はサーボ駆動部であり、より好ましくは、第1の駆動部および第2の駆動部はどちらの場合もサーボ駆動部である。
【0021】
1つの第1の好ましい実施形態によれば、2個の輸送デバイスはピストンであり、それらの1個ずつが、この場合貯蔵容器である容器のうちの1つの中に達し、対応するシール材成分を押し出すことができる。
【0022】
1つの第2の好ましい実施形態によれば、2個の輸送デバイスはポンプであり、このポンプは、減圧を発生させることによって、容器からシール材成分を引き出すことができる。特に、偏心スクリューポンプおよびさらにスクープピストンポンプは、この目的に適している。
【0023】
偏心スクリューポンプの場合、特に、前記容器は、各々シール材成分で連続的に充填することができる開放型容器である(
図4を参照)。
【0024】
混合ユニットは、好ましくは静的混合器であり、より詳細には静的混合管である。
【0025】
補償容器は、好ましくは、プラスチックのカートリッジ、または清掃することが容易な構成要素、より好ましくは、プラスチックのカートリッジ、より詳細には、ポリエチレン(PE)で製作されたものである。
【0026】
第1の特に好ましい実施形態によれば、装置は、例えば、Hilger u. Kern(マンハイム、ドイツ)によって製作された種類の2成分混合および計量システムである。これらのシステムは、貯蔵容器からの2成分からなるシール材の輸送、混合、およびの計量を可能にする(
図2および
図3を参照)。
【0027】
シール材は、さらに、化学線での、より詳細にはUV放射による照射の後でのみ実質的に硬化する種類のシール材とすることができる。この種類のシール材の利点は、トリガによる制御された方法で硬化を開始できること(SCOD:要求に応じたシール材硬化)である。本発明の装置は、この目的のために、化学線の統合源(an integrated source of actinic radiation)、より詳細にはUV放射の統合源を含むことができる。
【0028】
シール材を動的に計量するための本発明の方法の場合、本発明の装置の容器は、各々、1個のシール材成分(成分Aおよび成分B、または主剤および硬化剤)で充填される。次いで、シール材成分は混合ユニットおいて混合され、結果として生じたシール材は、第1の駆動部により容器からシール材成分を輸送することによって構成要素に施される。
【0029】
この手順において、駆動コントローラに事前設定された臨界値より下の計量速度は、容器からのシール材成分の輸送速度を計量速度の臨界値まで低下させ、補償容器が充填される速度が臨界値と計量速度の実現値との間の差に対応するように補償容器を第2の駆動部によりシール材で充填することによって実現される。
【0030】
例えば、計量速度の臨界値が、シール材の3容積単位/時間の単位である場合、例えば、シール材の1容積単位/時間の単位の計量速度は、容器からのシール材成分の輸送速度をシール材の3容積単位/時間の単位まで低下させ、補償容器をシール材の2容積単位/時間の単位の速度で充填することによって実現される。
【0031】
図2は、臨界値より上の計量速度の場合の本発明の装置を示す。
図3では、対照的に、シール材ビーズの厚さの減少によって示されているように、計量速度は臨界値よりも低い。補償容器の補償容積部は、この場合、シール材で充填される。
【0032】
計量速度が再び少なくとも臨界値まで上昇する場合、容器からのシール材成分の輸送は停止され、シール材は、好ましくは補償容器内のシール材が使い果たされるまで、第2の駆動部により補償容器から輸送される。これは、後の時点に補償容器をシール材で再び充填することができるようにするために補償容器を十分に空に保つのに寄与する。
【0033】
しかしながら、代替として、容器からのシール材成分の輸送を第1の駆動部により行い続けることができ、同時に、補償容器内のシール材が使い果たされるまで第2の駆動部により補償容器からシール材を輸送することができる。このようにして、補償容器がない装置で可能である最大値を超えて計量速度を増加させることが可能である。
【0034】
その上、本発明は、本発明の方法によって封止された構成要素、好ましくは、航空機および宇宙船で使用されるような複雑な幾何形状をもつ構成要素に関する。