(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】角膜レーザ治療のための球面収差パラメータの最適化
(51)【国際特許分類】
A61F 9/01 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
A61F9/01
(21)【出願番号】P 2019541449
(86)(22)【出願日】2017-02-10
(86)【国際出願番号】 IB2017050764
(87)【国際公開番号】W WO2018146520
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2020-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ジシーモス レモニス
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-502443(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0199858(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1541634(CN,A)
【文献】特表2011-502011(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0195086(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/01
A61B 3/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
角膜レーザ治療のための球面収差パラメータの最適化のためのレーザパラメータシステムであって、
プロセッサであって、
角膜レーザ治療を受ける患者の瞳孔測定データを受け取ることであって、前記瞳孔測定データは、薄明視下での直径、通常照明下での直径、調整近見時の直径、及び明所視下での直径を含むそれぞれの瞳孔径を含むことと、
前記薄明視下での直径より大きい、前記球面収差の外径を計算することと、
前記明所視下での直径に対応する前記球面収差の振幅に関連付けられる、前記球面収差の内径を計算することと、
前記球面収差の前記振幅を、
前記調節近見時の直径の全体にわたって近視を誘発する屈折力
であって老眼を打ち消すのに有効な屈折力に応じて計算することと、
前記明所視下での直径から前記通常照明下での直径へと延びる前記球面収差の勾配
であって急峻な下降として形成される勾配を計算することと、
前記外径、前記内径、前記振幅、及び前記勾配を含む、計算された前記球面収差を使って、前記角膜レーザ治療を前記患者に対して行うことと
を行うように、前記プロセッサにより実行可能な命令を記憶するメモリ媒体にアクセスできるプロセッサを含むレーザパラメータシステム。
【請求項2】
前記瞳孔測定データは前記瞳孔の瞳孔中心をさらに含み、前記命令はさらに、
前記瞳孔中心に基づいて前記球面収差の中心を計算するように実行可能である、
請求項
1に記載のレーザパラメータシステム。
【請求項3】
前記角膜レーザ治療はLASIK(レーザ光線近視手術)を使って行われる、請求項
1に記載のレーザパラメータシステム。
【請求項4】
前記球面収差の前記勾配を計算する前記命令は、より高次の球面収差を付加する命令を含む、請求項
1に記載のレーザパラメータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は眼科手術に関し、より具体的には、角膜レーザ治療のための球面収差パラメータの最適化に関する。
【背景技術】
【0002】
人の眼は、角膜と水晶体を含み、これらは眼の瞳孔に入る光を網膜に集束させるためのものである。しかしながら、眼は様々な屈折異常を示す場合があり、それによって光が網膜に正しく集束されず、その結果として視力が低下し得る。眼の収差は、近視、遠視、又は正乱視の原因となる、比較的単純な球面及び円筒面屈折異常から、例えば、患者の視野にハロ及びスターバーストを生じさせる可能性のある、より複雑な屈折異常まであり得る。
【0003】
眼の各種の収差を補正するために、長年にわたり多くの治療介入が開発されてきた。これらには、眼鏡、コンタクトレンズ、LASIK(laser-assisted in situ keratomileusis:レーザ光線近視手術)若しくは角膜移植等の角膜屈折矯正手術、及びIOL(intraocular lens:眼内レンズ)が含まれる。近視、遠視、及び乱視の診断並びにその治療のための球面-円筒面眼鏡とコンタクトレンズの仕様はしっかりと確立されている。角膜を変形させるためのLASIK等の幾つかの外科的手法は広く採用されており、良好な矯正結果を得ることができるが、望ましい程度まで予測可能とは言えない可能性がある。特に、老眼のためのLASIKでは、患者によって転帰が異なる可能性があり、これは望ましくない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの態様において、開示される方法は、角膜レーザ治療のための球面収差パラメータの最適化のためのものである。方法は、角膜レーザ治療を受ける患者に対して瞳孔測定を行い、薄明視下での直径、通常照明下での直径、調節近見時の直径、及び明所視下での直径を含むそれぞれの瞳孔径を測定するステップを含んでいてもよい。方法はまた、薄明視下での直径より大きい、球面収差の外径を計算するステップと、明所視下での直径に対応する球面収差の振幅に関連付けられた、球面収差の内径を計算するステップと、球面収差の振幅を、近視状態を誘発する屈折力に応じて計算するステップと、明所視下での直径から通常照明下での直径へと延びる球面収差の勾配を計算するステップと、を含んでいてもよい。方法は、外径、内径、振幅、及び勾配を含む、計算された球面収差を使って、患者に対して角膜レーザ治療を行うステップと、をさらに含んでいてもよい。
【0005】
方法の開示される実施形態の何れかにおいて、瞳孔測定を行うステップは、瞳孔の瞳孔中心を特定するステップをさらに含んでいてもよく、その一方で、方法は、瞳孔中心に基づいて球面収差の中心を計算するステップをさらに含んでいてもよい。
【0006】
方法の開示される実施形態の何れかにおいて、角膜レーザ治療は老眼治療であってもよい。
【0007】
方法の開示される実施形態の何れかにおいて、角膜レーザ治療はLASIK(レーザ光線近視手術)を使って行われてもよい。
【0008】
方法の開示される実施形態の何れかにおいて、球面収差の勾配を計算するステップは、より高次の球面収差を付加するステップを含んでいてもよい。
【0009】
さらなる態様において、角膜レーザ治療のための球面収差パラメータの最適化のためのレーザパラメータシステムが開示される。レーザパラメータシステムはプロセッサを含んでいてもよく、これはプロセッサにより実行可能な命令を記憶するメモリ媒体にアクセスできる。レーザパラメータシステムにおいて、命令はプロセッサにより、角膜レーザ治療を受ける患者の瞳孔測定データを受け取るように実行可能であり、瞳孔測定データは、薄明視下での直径、通常照明下での直径、調整近見時の直径、及び明所視下での直径を含むそれぞれの瞳孔径を含む。命令はさらに、薄明視下での直径より大きい、球面収差の外径を計算し、明所視下での直径に対応する球面収差の振幅に関連付けられる、球面収差の内径を計算し、球面収差の振幅を近視状態を誘発する屈折力に応じて計算し、明所視下での直径から通常照明下での直径へと延びる球面収差の勾配を計算するようにさらに実行可能であってよい。命令は、外径、内径、振幅、及び勾配を含む、計算された球面収差を使って、角膜レーザ治療が患者に対して行われるように実行可能であってもよい。
【0010】
レーザパラメータシステムの開示される実施形態の何れかにおいて、瞳孔測定データは瞳孔の瞳孔中心をさらに含んでいてもよく、命令はさらに、瞳孔中心に基づいて球面収差の中心を計算するように実行可能であってもよい。
【0011】
レーザパラメータシステムの開示される実施形態の何れかにおいて、角膜レーザ治療は老眼治療であってもよい。
【0012】
レーザパラメータシステムの開示される実施形態の何れかにおいて、角膜レーザ治療はLASIK(レーザ光線近視手術)を使って行われてもよい。
【0013】
レーザパラメータシステムの開示される実施形態の何れかにおいて、球面収差の勾配を計算する命令は、より高次の球面収差を付加する命令を含んでいてもよい。
【0014】
他の開示される態様は、瞳孔測定を行うための光学測定機器等の光学測定機器を含む。別の態様において、光学測定機器は、LASIKシステム等、角膜レーザ治療を行うためのレーザシステムの中に組み込まれてもよい。レーザパラメータシステムは、光学測定機器、レーザシステム、又はそれらの両方に組み込まれてもよい。
【0015】
本発明並びにその特徴及び利点をよりよく理解するために、ここで、下記のような添付の図面と共に以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】角膜及び瞳孔の大きさと角膜の球面収差の図である。
【
図3】レーザパラメータシステムのうちの選択された要素のブロック図である。
【
図4】角膜レーザ治療のための球面収差パラメータの最適化のための方法のうちの選択された要素のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の説明の中で、開示される主題を論じやすくするために、例として詳細事項が示されている。しかしながら、当業者にとっては、開示される実施形態は例であり、考えうるすべての実施形態を網羅しているわけではないことが明らかであるはずである。
【0018】
本開示を通じて、ハイフンのついた形式の参照番号はある要素の特定のインスタンスを指し、ハイフンのない形式の参照番号はその要素を総称的又は集合的に指す。それゆえ、(図示されていない)例として、装置「12-1」はある装置分類の1つのインスタンスを指し、この分類は集合的に装置「12」で示されてもよく、そのうちの何れの1つも総称的に装置「12」として示されてよい。図及び説明の中で、同様の番号は同様の要素を表すものである。
【0019】
前述のように、眼の収差を補正して患者の視力を改善するために、様々な眼科手法が開発されてきた。最近では、角膜の球面収差を利用して屈折力を補正することによって老眼を補正するためにLASIKが用いられている。老眼を矯正するための球面収差により、特に眼が近見のために調節されるときに角膜屈折性近視が引き起こされる可能性があり、この場合の調節反射は明所視状態への縮瞳、すなわち瞳孔収縮を含む。それ以外のすべての瞳孔の大きさで、眼は正常視であるべきであり、特に利き目はできるだけ正常視であるべきである。
【0020】
さらに、明所視下での直径、薄明視下での直径、及び瞳孔中心の角膜中心、虹彩中心、又は眼の視軸からの偏心度等の瞳孔パラメータに個人差があることはよく知られている。しかしながら、老眼を補正するための角膜の球面収差の現在の計算方法は、様々な照明条件下での瞳孔の大きさ及び偏心度の生体計測におけるばらつきを考慮していない。その結果、角膜の球面収差を付加するためのLASIKの転帰として、屈折力目標実現の低下、視力度数の変化(近見及び遠見の両方)、及びスターバースト、ハロ等の特定の望ましくない視覚的副作用が生じ得る。
【0021】
さらに詳しく説明するように、本開示の発明者は、付加される球面収差の振幅、勾配、及び直径を患者の瞳孔の実際の物理的寸法に適合させる角膜レーザ治療のための球面収差パラメータの最適化の方法を開発した。したがって、本明細書で開示されている角膜レーザ治療のための球面収差パラメータの最適化の方法は、患者にとっての視力における結果を改善することにより、LASIK等の老眼レーザ治療を改善し得る。本明細書で開示する角膜レーザ治療のための球面収差パラメータの最適化の方法はまた、望ましくない視覚的副作用も軽減又は排除し得る。
【0022】
ここで、図面を参照すると、
図1は角膜100の球面収差のある実施形態の図を示す。
図1は、説明のための概略図であり、正確な縮尺又は透視画法では描かれていない。角膜100の球面収差において、光軸106は人の眼の光軸を表し、参照プロファイル102は球面を表してもよい。さらに、角膜前部プロファイル104は、角膜表面の球面収差を表してもよく、これは参照プロファイル102に関して示されている。例えば、角膜レーザ治療を行う場合、角膜前部プロファイル104は結果として得られる角膜の球面収差を示してもよい。
図1にはまた、光線108も示され、これは光が光軸106と重なる様々な点に沿ってどのように集束すると予想されるかを示す。例えば、これらの点は視力を助けるための各種の光学的条件の下での網膜の位置に対応するように選択されてもよい。このようにして、角膜前部プロファイル104は、所望の視力が得られるように入射光線(図示せず)の屈折を変化させるために形成されてもよい。角膜前部プロファイル104は断面形状として示されているが、角膜前面104を3次元で表すには、光軸106の周囲での円対称が適用されてよいことがわかるであろう。角膜前面104は、各種の実施形態において、特定の非対称の特徴をさらに含んでいてもよい点に留意されたい。
【0023】
前述のように、球面収差パラメータは角膜前部プロファイル104を計算するために使用されてよい。すると、球面収差パラメータに基づいて、角膜前部プロファイル104がLASIK等のレーザ治療を使って角膜に作られてよい。このようにして、各種の視覚状態が治療されてよく、改善された視力が得られてよい。例えば、角膜前部プロファイル104は、加齢による水晶体(図示せず)の調節力の低下に起因する老眼を治療するために使用されてよい。
【0024】
次に、
図2を参照すると、角膜及び瞳孔の大きさ並びに球面収差の実施形態200の図が示されている。
図2は説明のための概略図であり、正確な縮尺又は透視画法では描かれていない。
図2の上部において、角膜202の図は、明所視下での瞳孔203、調節近見時の瞳孔204、通常照明下での瞳孔205、及び薄明視下での瞳孔206を含む異なる直径の瞳孔の表現を含み、これらは重ねて示されている。
図2の下部において、通常の球面収差210及び最適化された球面収差212が、瞳孔径に対応する任意の水平軸に沿った曲線として示されている。通常の球面収差210及び最適化された球面収差212の振幅もまた、任意のスケールとして示されており、
図1に示される角膜前部プロファイル102と同様のものであることが意図される。
【0025】
図2において、薄明視下での瞳孔206は例えば月光等の少光量条件下での瞳孔径に対応し、その一方で、明所視下での瞳孔203は例えば屋外の陽光等の多光量条件下での瞳孔径に対応する。したがって、通常照明下での瞳孔205は、オフィス内又は職場内等の屋内照明条件下での瞳孔径に対応する。さらに、調節近見時の瞳孔204は、比較的近い距離で読書している時の調節反射中の瞳孔径に対応する。患者が老眼である場合、瞳孔は引き続き調節近見時の瞳孔204へと狭まる可能性があるが、眼の水晶体(図示せず)はもはや、読書中に焦点を合わせることができない可能性がある。
【0026】
図2において、通常の球面収差210は、角膜レーザ治療中に適用される眼の球面収差が瞳孔の実際の直径と整合しない様々な条件を示している。典型的に、通常の球面収差210は図のように形成され、その全体的な形態は正弦波に似ている。
図2では、通常の球面収差210は様々な大きさ及び位置を有するように示され、各種の瞳孔径を含む角膜202は固定されたままであるが、通常の球面収差210は各種の瞳孔径との相対的なミスマッチを示しており、これは瞳孔径が患者によって異なる場合と同じミスマッチを表すと理解されたい。
【0027】
図2において、通常の球面収差210-1は薄明視下での瞳孔206の直径まで延びておらず、それゆえ、通常の球面収差210-1の範囲外の一部の光が瞳孔に入るであろう。その結果、通常の球面収差210-1は、スターバースト、ハロ等の望ましくない視覚的副作用を引き起こし得る。さらに、通常の球面収差210-2は角膜202又は図の各種の瞳孔径の何れに関しても中心が合っておらず、これは、瞳孔中心がずれる原因となる虹彩又は瞳孔の偏心度から生じている可能性がある。したがって、通常の球面収差210-2もまた、スターバースト、ハロ等の望ましくない視覚的副作用を引き起こし得る。次に、通常の球面収差210-3は薄明視下での瞳孔206の直径と中心が合い、その範囲を超えて延びている。しかしながら、通常の球面収差210-3は、振幅又は勾配において、調整近見時の瞳孔204の領域にわたり十分な屈折力を提供するように最適化されていない。その結果、通常の球面収差210-3は老眼を有効に治療するのにあまり適さず、適用されたときに望ましい臨床転帰につながらない可能性があり、これは収差のうち、調節近見時の瞳孔204内で近視を作るのに十分な屈折力を生じさせる振幅を持つ部分がわずかしかないからである。最後に、通常の球面収差210-4は、薄明視下での瞳孔206の直径と中心が合い、その範囲を超えて延び、調節近見時の瞳孔204に対応する領域において、より大きい振幅を有している。しかしながら、通常の球面収差210-4の勾配は薄明視下での瞳孔206を通って延びており、その結果、示される屈折力は瞳孔径に依存し、その範囲は日中の光にさらされている間に大きく変化する。それゆえ、通常の球面収差210-4の結果として、視力が大きく変化し、これは患者ごとに明確に異なる可能性があり、これは望ましくない。
【0028】
図2において、最適化された球面収差212は、老眼を治療するために、角膜202内に示された各種の瞳孔径に合わせて最適化された球面収差を示す。具体的には、最適化された球面収差212は直径において、薄明視下での瞳孔206の瞳孔径をわずかに超えて延びる。さらに、最適化された球面収差212は、調節近見時の瞳孔204の瞳孔径全体にわたって近視のための屈折力に対応する振幅214を有し、これは老眼を打ち消すのに有効である。また、最適化された球面収差212は、通常照明下での瞳孔205と明所視下での瞳孔203との間の瞳孔径に関して最適化された勾配216を有する。例えば、勾配216は、最適化された球面収差212の計算に、追加的なより高次の球面収差を付加することによって急峻な下降として形成されてもよい。最適化された球面収差212は患者の眼からの実測値を使って生成されるため、最適化された球面収差212は異なる患者にとって、より精密な補正が行われ、個々の患者各々に最適な結果を提供するようにカスタマイズされる。
【0029】
次に、
図3を参照すると、レーザパラメータシステム300の実施形態のうちの選択された要素を示すブロック図が提示されている。レーザパラメータシステム300は、本明細書で開示される、角膜レーザ治療のための球面収差パラメータの最適化を行うことができるようにされてよい。特定の実施形態において、レーザパラメータシステム300は、LASIKシステム等のレーザ治療システムに組み込まれ、又はそれに連結されてもよい。例えば、レーザパラメータシステム300は、本明細書に記載されているように、最適化された球面収差212を生成し、又はレーザ治療に適用するために使用されてよい。
【0030】
図3に示される実施形態において、レーザパラメータシステム300は、共有バス302を介して、まとめてメモリ310とされているメモリ媒体に連結されたプロセッサ301を含む。
図3に示されるようなレーザパラメータシステム300は、通信インタフェース320をさらに含み、これは他の装置のほかに、レーザ治療システム等の各種の外部エンティティとインタフェースできる。幾つかの実施形態において、通信インタフェース320は、レーザパラメータシステム300がネットワーク(
図3では示さず)に接続されるように動作可能である。実施形態において、
図3に示されるように、レーザパラメータシステム300は表示インタフェース304を含み、これは1つ又は複数のディスプレイのための出力ポートを備え、共有バス302又は別のバスにつながる。
【0031】
図3において、メモリ310は永続性及び揮発性媒体、固定及びリムーバブル媒体、並びに磁気及び半導体媒体を包含する。メモリ310は、命令、データ、又はそれらの両方を記憶するように動作可能である。図のメモリ310は、命令セット又はシーケンス、すなわちオペレーティングシステム312と、球面収差オプティマイザ314とを含む。オペレーティングシステム312は、UNIX又はUNIX系オペレーティングシステム、Windows(登録商標)ファミリのオペレーティングシステム、又は別の適当なオペレーティングシステムであってもよい。球面収差オプティマイザ314は、本明細書に記載の各種の方法及び計算の何れを実行してもよい。
【0032】
次に、
図4を参照すると、角膜レーザ治療のための球面収差パラメータを最適化する方法400のある実施形態のうちの選択された要素のフローチャート。方法400に記載されている特定の動作は任意選択によるものであってもよく、又は他の実施形態では配置しなおされてもよいことに留意されたい。方法400は、瞳孔測定を行うための光学測定機器等の光学測定機器(図示せず)を使って行われてもよい。特定の実施形態において、光学測定機器は、角膜レーザ治療を行うためのレーザシステムに組み込まれてもよい。
【0033】
方法400は、ステップ402で、角膜レーザ治療を受ける患者に対して瞳孔測定を行い、薄明視下での直径、通常照明下での直径、調節近見時の直径、及び明所視下での直径を含むそれぞれの瞳孔径を特定することによって開始される。ステップ404で、瞳孔測定を行って瞳孔の瞳孔中心を測定する。ステップ406で、薄明視下での直径より大きい球面収差の外径を計算する。ステップ408で、球面収差の振幅に関連付けられる、明所視下での直径に対応する内径を計算する。ステップ410で、球面収差の振幅を、近視を誘発する屈折力に応じて計算する。ステップ412で、明所視下での直径から通常照明下での直径へと延びる、球面収差の勾配を計算する。幾つかの実施形態において、球面収差の勾配を計算することは、追加の球面収差を付加することを含む。ステップ412では、通常照明下での瞳孔205に対応する所望の屈折力目標及び、調節近見時の瞳孔204のための所望の近視誘発が目指されてもよい。ステップ414で、球面収差の中心を瞳孔中心に基づいて計算する。ステップ416で、外径、内径、振幅、及び勾配を含む、計算された球面収差を使って、患者に対して角膜レーザ治療を行う。角膜レーザ治療は、LASIK治療を用いて行われてもよい。角膜レーザ治療は、本明細書に記載の方法にしたがって、老眼を治療するために適用されてよい。
【0034】
本明細書で開示されているように、老眼を治療する角膜レーザ治療のための球面収差パラメータを特定する方法は、瞳孔測定を行って、明所視下での直径から薄明視下での直径までの患者の様々な実際の瞳孔径を測定するステップを含んでいてもよい。患者の実際の瞳孔中心も測定されてよい。測定された瞳孔径及び瞳孔中心を使用して、治療後の眼の結果を改善するために、患者の眼に対して球面収差パラメータをカスタマイズしてもよい。
【0035】
上で開示された主題は、例示的であり、限定的ではないと考えるものとし、付属の特許請求の範囲は本開示の実際の主旨及び範囲に含まれる改変、改良、及び他の実施形態のすべてを包含することが意図される。それゆえ、法の下で可能な限り最大限に、本開示の範囲は以下の特許請求の範囲及びその均等物の可能な限り最も広い解釈により特定されるものとし、上記の詳細な説明によって制限又は限定されないものとする。