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特許6999684電子デバイス、当該電子デバイスを製造するための方法、ならびに当該電子デバイスを含むディスプレイデバイス
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  • 特許-電子デバイス、当該電子デバイスを製造するための方法、ならびに当該電子デバイスを含むディスプレイデバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】電子デバイス、当該電子デバイスを製造するための方法、ならびに当該電子デバイスを含むディスプレイデバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20220111BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220111BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220111BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
H05B33/22 C
G09F9/30 365
H01L27/32
H05B33/10
H05B33/14 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019544860
(86)(22)【出願日】2018-02-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 EP2018054157
(87)【国際公開番号】W WO2018150049
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2020-12-11
(31)【優先権主張番号】17156904.9
(32)【優先日】2017-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17156902.3
(32)【優先日】2017-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17156906.4
(32)【優先日】2017-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503180100
【氏名又は名称】ノヴァレッド ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ヘッゲマン,ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】フンメルト,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ロゼノ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】フルノ,マウロ
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-212813(JP,A)
【文献】特開2016-106393(JP,A)
【文献】特表2015-504446(JP,A)
【文献】特開2001-131185(JP,A)
【文献】特表2015-506094(JP,A)
【文献】特開2003-017276(JP,A)
【文献】特開2012-151101(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0008638(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
H01L 27/32
H05B 33/00-33/28
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ酸金属塩を含む少なくとも1つの層を含む電子デバイスであって、前記ホウ酸金属塩が、前記ホウ酸金属塩を含む前記層において、前記層中に追加で含まれ得る他の成分の総量を超える重量および/または体積量で含まれ、前記層が、正孔注入層または正孔発生層である、電子デバイス。
【請求項2】
前記ホウ酸金属塩が、前記ホウ酸金属塩を含む前記層中において、前記層中に追加で含まれ得る他の成分の総量を超える重量および体積量で含まれる、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
前記電子デバイスが、第1の電極および第2の電極をさらに含み、前記ホウ酸金属塩を含む前記層が、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置される、請求項1または2に記載の電子デバイス。
【請求項4】
前記ホウ酸金属塩が、少なくとも1つの金属カチオンおよび少なくとも1つのアニオン性リガンドからなり、前記アニオン性リガンドが、少なくとも6個の共有結合原子からなり、前記共有結合原子のうちの少なくとも1つが、ホウ素原子である、請求項1~3のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【請求項5】
前記アニオン性リガンドが、少なくとも7個、あるいは少なくとも8個、あるいは少なくとも9個、あるいは少なくとも10個、あるいは少なくとも11個、あるいは少なくとも12個の共有結合原子からなる、請求項に記載の電子デバイス。
【請求項6】
前記金属が、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Sn、Pb、Bi、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Th、Uおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の電子デバイス
【請求項7】
前記ホウ酸金属塩が、以下の式(I)を有するアニオンを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の電子デバイス:
【化1】

式(I)中、A~Aは、それぞれ独立して、
(i)H、
(ii)F、
(iii)CN、
(iv)C~C60アリール、
(v)C~C60アリールアルキル、
(vi)C~C60アルキル、
(vii)C~C60アルケニル、
(viii)C~C60アルキニル、
(ix)C~C60シクロアルキル、および
(x)C~C60ヘテロアリールから選択され;
式(I)中、(iv)、(v)、(vi)、(vii)、(viii)、(ix)および(x)の基は、式(I)中に存在する場合、F、Cl、Br、I、CN、非置換またはハロゲン化アルキル、非置換またはハロゲン化(ヘテロ)アリール、非置換またはハロゲン化(ヘテロ)アリールアルキル、非置換またはハロゲン化アルキルスルホニル、非置換またはハロゲン化(ヘテロ)アリールスルホニル、非置換またはハロゲン化(ヘテロ)アリールアルキルスルホニル、非置換またはハロゲン化ホウ素含有ヒドロカルビル、非置換またはハロゲン化ケイ素含有ヒドロカルビルからなる群の少なくとも1つの置換基で置換され、(iv)、(v)、(vi)、(vii)、(viii)、(ix)および(x)の前記基の各々における炭素原子の全体数は、それぞれ60を超えない。
【請求項8】
~Aのうちの少なくとも1つが、F、CN、ヒドロカルビル、ホウ素含有ヒドロカルビル、ケイ素含有ヒドロカルビルおよびヘテロアリールからなる群から選択され、前記ヒドロカルビル、前記ホウ素含有ヒドロカルビル、前記ケイ素含有ヒドロカルビルおよび前記ヘテロアリールのそれぞれにおいて、含まれる水素原子の50%以上が、F、Cl、Br、IおよびCNからなる群の1つによって置き換えられている、請求項に記載の電子デバイス。
【請求項9】
前記ホウ酸金属塩を含む前記層が、前記ホウ酸金属塩を含む前記層の総重量に対して、少なくとも60重量%、あるいは少なくとも75重量%、あるいは少なくとも90重量%、あるいは少なくとも95重量%、あるいは少なくとも98重量%、あるいは少なくとも99重量%、あるいは少なくとも99.5重量%、あるいは少なくとも99.9重量%の量で前記ホウ酸金属塩を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【請求項10】
前記電子デバイスが、エレクトロルミネセンスデバイスであり、好ましくは有機発光ダイオードである、請求項1~のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【請求項11】
請求項10に記載の前記電子デバイスを含むディスプレイデバイス。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の電子デバイスを製造するための方法であって、前記方法は、
(i)ホウ酸金属塩を高温、かつ任意選択で、減圧下で、蒸発させる工程、および
(ii)蒸発したホウ酸金属塩を基板上に堆積させる工程
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイス、当該電子デバイスを含むディスプレイデバイス、ならびに当該電子デバイスを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自発発光装置である有機発光ダイオード(OLED)は、視野角が広く、コントラストに優れ、応答が速く、輝度が高く、動作電圧特性に優れ、色再現性に優れている。典型的なOLEDは、基板上に順次積層された陽極、正孔輸送層(HTL)、発光層(EML)、電子輸送層(ETL)、および陰極を含む。この点に関して、HTL、EML、およびETLは、有機および/または有機金属化合物から形成された薄膜である。
【0003】
陽極および陰極に電圧を印加すると、陽電極から注入された正孔がHTLを介してEMLに移動し、陰電極から注入された電子がETLを介してEMLに移動する。正孔と電子は、EML内で再結合して励起子を生成する。励起子が励起状態から基底状態に降下すると、光が放出される。前記構造を有する有機発光素子が優れた効率を発揮するために、正孔と電子の注入とフローを安定させなければならない。
【0004】
WO2013/079676は、有機電子デバイスおよびその電子輸送材料におけるn-ドーパントとしてのホウ酸金属塩錯体の使用を開示している。
【0005】
電子機器および/またはオプトエレクトロニクスデバイス、特に有機発光ダイオードまたは有機光起電力(OPV)デバイスなどの有機電荷輸送材料を含むオプトエレクトロニクスデバイス、およびOLEDディスプレイなどの前記オプトエレクトロニクスデバイスを含む複雑なデバイスの性能を改善する必要がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点を克服する電子デバイスおよびその製造方法を提供することであり、特に、新規な電荷輸送材料、有機電荷注入材料、または電荷発生材料を含む電子デバイスを提供し、デバイスの性能を改善し、特に、特にOLEDにおいて、電流密度および/または動作電圧および/または外部量子効率を改善することである。
【発明の概要】
【0007】
前記目的は、ホウ酸塩を含む少なくとも1つの層を含む電子デバイスであって、前記ホウ酸塩が、前記ホウ酸塩を含む前記層において、前記層中に追加で含まれ得る他の成分の総量を超える重量および/または体積量で含まれる電子デバイスよって達成される。
【0008】
本発明の電子デバイスは、少なくとも1つの層、通常は様々な層を含む電子デバイスである。これらの層は例えば、化学化合物を蒸発させ、それを基板(または前述の層)上に堆積させて層を形成することによって製造することができる。本発明によれば、電子デバイスに含まれる層の少なくとも1つは、量においてホウ酸塩が層の主な化合物となる、すなわち、前記ホウ酸塩が層に含まれる他の全ての化合物の量を超える量含まれる。すなわち、ホウ酸塩を含む層がいくつかの異なる化合物を含む場合、ホウ酸塩の量は、重量および/または体積量において他の化合物のそれぞれの量を超える。ホウ酸塩は、前記ホウ酸塩を含む層において、少なくとも50重量%および/または体積%の量で含まれていてもよい。さらに、「含む」が「によって構成される」、すなわち層がホウ酸塩のみ(従来の技術的手段では避けることができない不純物を除く)からなってもよい。
【0009】
驚くべきことに、本発明者らは、特に電荷注入層、電荷輸送層、またはその電荷発生層においてその主な成分としてホウ酸塩を含む少なくとも1つの層を含む電子デバイスが、特に電流密度、動作電圧、および量子効率に関して、従来技術のそれぞれのデバイスよりも優れた特性を示すことを見出した。これらの利点は、本明細書に提示される特定の具体例から明らかである。
【0010】
電子デバイスにおいて、前記ホウ酸塩が、前記ホウ酸塩を含む前記層中において、前記層中に追加で含まれ得る他の成分の総量を超える重量および体積量で含まれてもよい。これにより、特に動作電圧および/またはその効率に関して、電子デバイスの特性をさらに改善することが可能である。
【0011】
本発明の電子デバイスにおいて、前記電子デバイスが、第1の電極および第2の電極をさらに含み、前記ホウ酸塩を含む前記層が、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置されてもよい。これにより、特に動作電圧および/またはその効率に関して、電子デバイスの特性をさらに改善することが可能である。
【0012】
本発明の電子デバイスにおいて、前記ホウ酸塩を含む前記層が、電荷注入層、電荷発生層、または電荷輸送層であってもよい。これにより、特に動作電圧および/またはその効率に関して、電子デバイスの特性をさらに改善することが可能である。
【0013】
本発明の電子デバイスにおいて、前記電荷注入層が、正孔注入層であってもよく、および/または、前記電荷発生層が正孔発生層であってもよい。これにより、特に動作電圧および/またはその効率に関して、電子デバイスの特性をさらに改善することが可能である。
【0014】
本発明の電子デバイスにおいて、前記ホウ酸塩がホウ酸金属塩であってもよい。これにより、特に動作電圧および/またはその効率に関して、電子デバイスの特性をさらに改善することが可能である。
【0015】
本発明の電子デバイスにおいて、前記ホウ酸金属塩が、少なくとも1つの金属カチオンおよび少なくとも1つのアニオン性リガンドからなってもよく、前記アニオン性リガンドが、少なくとも6個の共有結合原子からなり、前記共有結合原子のうちの少なくとも1つが、ホウ素原子である。これにより、特に動作電圧および/またはその効率に関して、電子デバイスの特性をさらに改善することが可能である。
【0016】
本発明の電子デバイスにおいて、前記アニオン性リガンドが、少なくとも7個、あるいは少なくとも8個、あるいは少なくとも9個、あるいは少なくとも10個、あるいは少なくとも11個、あるいは少なくとも12個の共有結合原子からなってもよい。これにより、特に動作電圧および/またはその効率に関して、電子デバイスの特性をさらに改善することが可能である。
【0017】
本発明の電子デバイスにおいて、前記金属が、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Sn、Pb、Bi、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Th、Uおよびこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。これにより、特に動作電圧および/またはその効率に関して、電子デバイスの特性をさらに改善することが可能である。
【0018】
本発明の電子デバイスにおいて、前記ホウ酸塩が、以下の式(I)を有するアニオンを含んでもよい:
【0019】
【化1】
式(I)中、A~Aは、それぞれ独立して、
(i)H、
(ii)F、
(iii)CN、
(iv)C~C60アリール、
(v)C~C60アリールアルキル、
(vi)C~C60アルキル、
(vii)C~C60アルケニル、
(viii)C~C60アルキニル、
(ix)C~C60シクロアルキル、および
(x)C~C60ヘテロアリールから選択され;
式(I)中、(iv)、(v)、(vi)、(vii)、(viii)、(ix)および(x)の基は、式(I)中に存在する場合、F、Cl、Br、I、CN、非置換またはハロゲン化アルキル、非置換またはハロゲン化(ヘテロ)アリール、非置換またはハロゲン化(ヘテロ)アリールアルキル、非置換またはハロゲン化アルキルスルホニル、非置換またはハロゲン化(ヘテロ)アリールスルホニル、非置換またはハロゲン化(ヘテロ)アリールアルキルスルホニル、非置換またはハロゲン化ホウ素含有ヒドロカルビル、非置換またはハロゲン化ケイ素含有ヒドロカルビルからなる群の少なくとも1つの置換基で置換され、(iv)、(v)、(vi)、(vii)、(viii)、(ix)および(x)の前記基の各々における炭素原子の全体数は、それぞれ60を超えない。これにより、特に動作電圧および/またはその効率に関して、電子デバイスの特性をさらに改善することが可能である。
【0020】
本発明の電子デバイスにおいて、A~Aのうちの少なくとも1つが、F、CN、ヒドロカルビル、ホウ素含有ヒドロカルビル、ケイ素含有ヒドロカルビルおよびヘテロアリールからなる群から選択され、前記ヒドロカルビル、前記ホウ素含有ヒドロカルビル、前記ケイ素含有ヒドロカルビルおよび前記ヘテロアリールのそれぞれにおいて、含まれる水素原子の50%以上が、F、Cl、Br、IおよびCNからなる群の1つによって置き換えられてもよい。これにより、特に動作電圧および/またはその効率に関して、電子デバイスの特性をさらに改善することが可能である。
【0021】
本発明の電子デバイスにおいて、前記ホウ酸塩を含む前記層が、前記ホウ酸塩を含む前記層の総重量に対して、少なくとも60重量%、あるいは少なくとも75重量%、あるいは少なくとも90重量%、あるいは少なくとも95重量%、あるいは少なくとも98重量%、あるいは少なくとも99重量%、あるいは少なくとも99.5重量%、あるいは少なくとも99.9重量%の量で前記ホウ酸塩を含んでもよい。これにより、特に動作電圧および/またはその効率に関して、電子デバイスの特性をさらに改善することが可能である。
【0022】
本発明の電子デバイスにおいて、前記電子デバイスが、エレクトロルミネセンスデバイスであり、好ましくは有機発光ダイオードであってもよい。これにより、特に動作電圧および/またはその効率に関して、電子デバイスの特性をさらに改善することが可能である。
【0023】
前記目的は、本発明の電子デバイスを含むディスプレイデバイスによってさらに達成される。
【0024】
最後に、前記目的は、本発明の電子デバイスを製造するための方法によって達成され、前記方法は、
(i)ホウ酸塩を高温、かつ任意選択で、減圧下で、蒸発させる工程、および
(ii)蒸発したホウ酸塩を基板上に堆積させる工程
を含む。
【0025】
本発明の方法において、蒸発および堆積は、それぞれ、前記ホウ酸塩を含む層に含まれる他の化合物とホウ酸塩を共蒸発および共堆積させることを含んでもよい。
【0026】
さらに、本発明の方法が、さらなるプロセス工程、特に、OLEDまたはOPVなどの電子デバイスに含まれるのに適したさらなる層を堆積する工程を含んでもよい。
【0027】
前記ホウ酸塩の選択において、金属がAgであるホウ酸金属塩が除外されてもよい。これにより、ホウ酸塩がホウ酸塩を含む層の他の化合物と反応することを回避することができる。
【0028】
本発明の電子デバイスにおいて、前記ホウ酸塩を含む前記層が発光層であってもよく、前記ホウ酸塩がエミッタホストであってもよい。
【0029】
さらに、電子デバイスにおいて、特に前記電子デバイスがOLEDまたは太陽電池である場合、前記ホウ酸塩を含む前記層が、光学インカップリング層(optical incoupling layer)または光学アウトカップリング層(optical outcoupling layer)であってもよい。
【0030】
〔さらなる層〕
本発明によれば、電子デバイスは、既に上述した層の他に、さらなる層を含んでもよい。それぞれの層の例示的な実施形態を以下に説明する。
【0031】
<基板>
基板は、有機発光ダイオードなどの電子デバイスの製造に一般的に使用される任意の基板であってよい。光が基板を通して放出される場合、基板は、透明または半透明材料、例えばガラス基板または透明プラスチック基板でなければならない。光が上面を通して放出される場合、基板は透明材料、不透明材料のどちらでもよく、例えば、ガラス基板、プラスチック基板、金属基板またはシリコン基板であってよい。
【0032】
<陽電極>
第1の電極または第2の電極のいずれかは、陽電極であってもよい。陽電極は、陽電極を形成するために使用される材料を堆積またはスパッタリングすることによって形成されてもよい。陽電極を形成するために使用される材料は、正孔注入を促進するために、高仕事関数を有する材料であってもよい。陽極の材料はまた、低仕事関数を有する材料から選択されてもよい(すなわち、アルミニウム)。陽電極は、透明電極または反射電極であってもよい。陽電極を形成するために、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、二酸化スズ(SnO)、酸化アルミニウム亜鉛(AlZO)および酸化亜鉛(ZnO)などの透明導電性酸化物を使用してもよい。陽電極はまた、金属、典型的には銀(Ag)、金(Au)、または金属合金を使用して形成されてもよい。
【0033】
<正孔注入層>
本発明によれば、上述で詳細に説明したように、正孔注入層は、ホウ酸塩を主な成分として含んでもよく、またはホウ酸塩から構成されてもよい。正孔注入層(HIL)は、真空蒸着、スピンコーティング、プリンティング、キャスティング、スロットダイコーティング、ラングミュア・ブロジェット(LB)蒸着などによって陽電極上に形成することができる。真空蒸着を使用してHILを形成する場合、蒸着条件は、HILを形成するために使用される化合物、ならびにHILの所望の構造および熱特性に応じて変化し得る。しかし、一般的に、蒸着条件には、蒸着温度100℃~500℃、圧力10-8~10-3トル(1トル=133.322Pa)、蒸着速度0.1~10nm/秒が含まれてもよい。
【0034】
スピンコーティングまたはプリンティングを使用してHILを形成する場合、コーティング条件は、HILを形成するために使用される化合物、ならびにHILの所望の構造および熱特性に応じて変化し得る。例えば、コーティング条件には、コーティング速度約2000rpm~約5000rpm、熱処理温度約80℃~約200℃が含まれ得る。コーティングが行われた後に、熱処理によって溶媒が除去される。
【0035】
特に、電子デバイスが、主な成分としてホウ酸塩を含む別の層を含む場合、HILは、HILを形成するために一般的に使用される任意の化合物から形成されてもよい。HILを形成するために使用することができる化合物の例には、例えば銅フタロシアニン(CuPc)などのフタロシアニン化合物、4,4’,4''-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m-MTDATA)、TDATA、2T-NATA、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(Pani/DBSA)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/カンファースルホン酸(Pani/CSA)、およびポリアニリン/ポリ(4-スチレンスルホン酸)(PANI/PSS)が含まれる。
【0036】
前記の場合、HILは、p-ドーパントの純粋な層であってもよく、またはp-ドーパントでドープされた正孔輸送マトリックス化合物から選択されてもよい。公知のレドックスドープされた正孔輸送材料の典型的な例としては、HOMO準位が約-5.2eVであり、テトラフルオロテトラシアノキノンジメタン(F4TCNQ)でドープされ、LUMO準位が約-5.2eVである銅フタロシアニン(CuPc)、F4TCNQでドープされた亜鉛フタロシアニン(ZnPc)(HOMO=-5.2eV)、F4TCNQでドープされたα-NPD(N,N’-ビス(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン)、2,2’-(ペルフルオロナフタレン-2,6-ジイリデン)ジマロノニトリル(PD1)でドープされたα-NPD、2,2’,2''-(シクロプロパン-1,2,3-トリイリデン)トリス(2-(p-シアノテトラフルオロフェニル)アセトニトリル)(PD2)でドープされたα-NPDが挙げられる。ドーパント濃度は、1~20重量%、より好ましくは3~10重量%から選択することができる。
【0037】
HILの厚さは、約1nm~約100nm、例えば、約1nm~約25nmであり得る。HILの厚さがこの範囲内であれば、動作電圧において実質的な不利益はなく、HILは優れた正孔注入特性を有することができる。
【0038】
<正孔輸送層>
本発明によれば、上述で詳細に説明したように、正孔輸送層は、主な成分としてホウ酸塩を含んでいてもよく、またはホウ酸塩からなっていてもよい。
【0039】
正孔輸送層(HTL)は、真空蒸着、スピンコーティング、スロットダイコーティング、プリンティング、キャスティング、ラングミュア・ブロジェット(LB)蒸着などによってHIL上に形成することができる。HTLが真空蒸着またはスピンコーティングによって形成される場合、蒸着およびコーティングのための条件は、HILの形成のための条件と同様であり得る。しかし、真空蒸着または溶液蒸着のための条件は、HTLを形成するために使用される化合物に応じて変化し得る。
【0040】
本発明によれば、HTLが主な成分としてホウ酸塩を含まないが、ホウ酸塩が主な成分として別の層に含まれる場合、HTLはHTLを形成するために一般的に使用される任意の化合物によって形成されてもよい。適切に使用され得る化合物は例えば、Yasuhiko Shirota and Hiroshi Kageyama, Chem. Rev. 2007, 107, 953-1010に開示され、参考として援用される。HTLを形成するために使用することができる化合物の例としては、N-フェニルカルバゾールまたはポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体;N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(TPD)、またはN,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(α-NPD)などのベンジジン誘導体;および4,4’,4''-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)などのトリフェニルアミンベースの化合物が挙げられる。これらの化合物の中で、TCTAは正孔を輸送し、励起子がEML中に拡散されるのを抑制することができる。
【0041】
HTLの厚さは、約5nm~約250nm、好ましくは約10nm~約200nm、さらに約20nm~約190nm、さらに約40nm~約180nm、さらに約60nm~約170nm、さらに約80nm~約160nm、さらに約100nm~約160nm、さらに約120nm~約140nmの範囲であり得る。HTLの好ましい厚さは、170nm~200nmであり得る。
【0042】
HTLの厚さがこの範囲内であれば、動作電圧において実質的な不利益はなく、HTLは優れた正孔輸送特性を有することができる。
【0043】
<電子阻止層>
電子阻止層(EBL)の機能は、電子が発光層から正孔輸送層に移動することを防ぎ、それによって電子を発光層に閉じ込めることである。これにより、効率、動作電圧および/または寿命が改善される。典型的には、電子阻止層は、トリアリールアミン化合物を含む。トリアリールアミン化合物は、正孔輸送層のLUMO準位よりも真空準位に近いLUMO準位を有し得る。電子阻止層は、正孔輸送層のHOMO準位と比較して、真空準位からさらに離れたHOMO準位を有し得る。電子阻止層の厚さは、2~20nmの間で選択され得る。
【0044】
電子阻止層は、下記式(Z)の化合物を含み得る。
【0045】
【化2】
式Z中、CY1およびCY2は、互いに同じかまたは異なり、それぞれ独立して、ベンゼン環またはナフタレン環を表し、
Ar1~Ar3は、互いに同じかまたは異なり、それぞれ独立して、水素、6~30個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のアリール基、および5~30個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のヘテロアリール基から選択され、
Ar4は、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のビフェニル基、置換もしくは非置換のテルフェニル基、置換もしくは非置換のトリフェニレン基、および5~30個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のヘテロアリール基からなる群から選択され、
Lは、6~30個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のアリール基である。
【0046】
電子阻止層が高い三重項準位を有する場合、電子阻止層を三重項制御層として説明することもできる。
【0047】
燐光性緑色発光層または燐光性青色発光層が使用される場合、三重項制御層の機能は、三重項の消光を低減させることである。これにより、燐光性発光層の発光効率を高めることができる。三重項制御層は、隣接する発光層における燐光性エミッタの三重項準位よりも高い三重項準位を有するトリアリールアミン化合物から選択される。三重項制御層に適した化合物、特にトリアリールアミン化合物は、EP2722908A1に記載されている。
【0048】
<発光層(EML)>
EMLは、真空蒸着、スピンコーティング、スロットダイコーティング、プリンティング、キャスティング、LB蒸着などによってHTL上に形成することができる。EMLが真空蒸着またはスピンコーティングを用いて形成される場合、蒸着およびコーティングのための条件は、HILの形成のための条件と同様であり得る。しかし、蒸着およびコーティングの状態は、EMLを形成するために使用される化合物に応じて変化し得る。
【0049】
発光層(EML)は、ホストとエミッタドーパントとの組み合わせから形成されてもよい。ホストの例としては、Alq3、4,4’-N,N’-ジカルバゾール-ビフェニル(CBP)、ポリ(n-ビニルカルバゾール)(PVK)、9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン(ADN)、4,4’,4''-トリス(カルバゾール-9-イル)-トリフェニルアミン(TCTA)、1,3,5-トリス(N-フェニルベンズイミダゾール-2-イル)ベンゼン(TPBI)、3-tert-ブチル-9,10-ジ-2-ナフチルアントラセン(TBADN)、ジスチリルアリーレン(DSA)、ビス(2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾ-チアゾラート)亜鉛(Zn(BTZ))、下記のG3、AND、ならびに下記の化合物1および下記の化合物2が挙げられる。
【0050】
【化3】
エミッタドーパントは、燐光性エミッタまたは蛍光エミッタとすることができる。熱活性化遅延蛍光(TADF)メカニズムを介して光を放出する蛍光エミッタおよびエミッタの効率はより高いため、好適であり得る。エミッタは、小分子またはポリマーであってもよい。
【0051】
赤色エミッタドーパントの例としては、PtOEP、Ir(piq)、およびBtpIr(acac)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの化合物は燐光性エミッタであるが、蛍光赤色エミッタドーパントを使用することもできる。
【0052】
【化4】
燐光性緑色エミッタドーパントの例としては、以下に示されるIr(ppy)(ppy=フェニルピリジン)、Ir(ppy)(acac)、Ir(mpyp)が挙げられる。化合物3は蛍光緑色エミッタの一例であり、その構造を以下に示す。
【0053】
【化5】
燐光性青色エミッタドーパントの例としては、FIrpic、(Fppy)Ir(tmd)およびIr(dfppz)、ter-フルオレンが挙げられる。これらの構造を以下に示す。4.4’-ビス(4-ジフェニルアミノスチリル)ビフェニル(DPAVBi)、2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン(TBPe)、および以下の化合物4は、蛍光青色エミッタドーパントの例である。
【0054】
【化6】
エミッタドーパントの量は、ホスト100重量部に対して約0.01~約50重量部の範囲であってよい。あるいは、発光層は、発光ポリマーからなってもよい。EMLの厚さは、約10nm~約100nm、例えば、約20nm~約60nmであり得る。EMLの厚さがこの範囲内である場合、動作電圧において実質的な不利益はなく、EMLが優れた発光を有することができる。
【0055】
<正孔阻止層(HBL)>
正孔阻止層(HBL)は、ETLへの正孔の拡散を防止するために、真空蒸着、スピンコーティング、スロットダイコーティング、プリンティング、キャスティング、LB蒸着などを用いることによって、EML上に形成することができる。EMLが燐光性ドーパントを含む場合、HBLは三重項励起子阻止機能も有することができる。
【0056】
HBLが真空蒸着またはスピンコーティングを用いて形成される場合、蒸着およびコーティングのための条件は、HILの形成のための条件と同様であり得る。しかし、HBLを形成するために使用される化合物に応じて、蒸着およびコーティングのための条件は変化し得る。HBLを形成するために、一般的に使用される任意の化合物を使用することができる。HBLを形成するための化合物の例には、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、およびフェナントロリン誘導体が含まれる。
【0057】
HBLの厚さは、約5nm~約100nm、例えば、約10nm~約30nmの範囲であり得る。HBLの厚さがこの範囲内である場合、動作電圧において実質的な不利益はなく、HBLは優れた正孔阻止特性を有することができる。
【0058】
<電子輸送層(ETL)>
本発明に係るOLEDは、電子輸送層(ETL)を含んでいてもよい。
【0059】
様々な実施形態によれば、OLEDは、電子輸送層または少なくとも第1の電子輸送層および少なくとも第2の電子輸送層を含む電子輸送層の積層体を含むことができる。
【0060】
ETLの特定の層のエネルギー準位を適切に調整することによって、電子の注入および輸送を制御することができ、正孔を効率的に阻止(ブロック)することができる。したがって、OLEDは、長い寿命を有することができる。
【0061】
電子デバイスの電子輸送層は、有機電子輸送マトリックス(ETM)材料を含むことができる。さらに、電子輸送層は、1つ以上のn-ドーパントを含んでもよい。ETMに好適な化合物は特に限定されない。一実施形態では、電子輸送マトリックス化合物が共有結合原子からなる。好ましくは、電子輸送マトリックス化合物が少なくとも6個、より好ましくは少なくとも10個の非局在化電子の共役系を含む。一実施形態では、非局在化電子の共役系が、例えば文献EP1970371A1またはWO2013/079217A1に開示されているように、芳香族またはヘテロ芳香族の構造部分に含まれていてもよい。
【0062】
<電子注入層(EIL)>
陰極からの電子の注入を促進できる任意のEILは、ETL上に、好ましくは電子輸送層上に直接形成することができる。EILを形成するための材料の例には、当該技術分野で知られているリチウム8-ヒドロキシキノリノレート(LiQ)、LiF、NaCl、CsF、LiO、BaO、Ca、Ba、Yb、Mgが含まれる。EILを形成するための蒸着およびコーティング条件は、HILの形成のための条件と同様である。しかし、EILを形成するために使用される材料に応じて、蒸着およびコーティング状態は変化し得る。
【0063】
EILの厚さは、約0.1nm~約10nmの範囲、例えば、約0.5nm~約9nmの範囲であり得る。EILの厚さがこの範囲内である場合、動作電圧において実質的な不利益はなく、EILは十分な電子注入特性を有することができる。
【0064】
<陰電極>
陰電極は、EILが存在する場合、EIL上に形成される。陰電極は、金属、合金、導電性化合物、またはそれらの混合物から形成されてもよい。陰電極は、低い仕事関数を有し得る。例えば、陰電極は、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム(Al)-リチウム(Li)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)、イッテルビウム(Yb)、マグネシウム(Mg)-インジウム(In)、マグネシウム(Mg)-銀(Ag)などから形成されてもよい。あるいは、陰電極は、ITOまたはIZOなどの透明導電性酸化物から形成されてもよい。
【0065】
陰電極の厚さは、約5nm~約1000nmの範囲、例えば、約10nm~約100nmの範囲であり得る。陰電極の厚さが約5nm~約50nmの範囲である場合、陰電極は、金属または金属合金から形成されていても、透明または半透明であり得る。
【0066】
陰電極は、電子注入層または電子輸送層の一部ではないことを理解されたい。
【0067】
<電荷発生層/正孔発生層>
電荷発生層(CGL)は、二重層で構成されてもよい。電荷発生層、特にp型電荷発生層(正孔発生層)は、主な成分としてホウ酸塩を含んでいてもよく、またはホウ酸塩からなっていてもよい。
【0068】
典型的には、電荷発生層は、n型電荷発生層(電子発生層)と正孔発生層とを接合するpn接合部である。pn接合部のn側は、電子を発生させ、当該電子を陽極方向に隣接する層に注入する。同様に、pn接合部のp側は、正孔を生成し、当該正孔を陰極の方向に隣接する層に注入する。
【0069】
電荷発生層は、タンデム装置において、例えば、2つの電極間に2つ以上の発光層を含むタンデムOLEDにおいて使用される。2つの発光層を含むタンデムOLEDにおいて、n型電荷発生層は、陽極の近くに配置された第1の発光層に電子を提供し、一方、正孔発生層は、第1の発光層と陰極との間に配置された第2の発光層に正孔を提供する。
【0070】
本発明によれば、電子デバイスは、正孔注入層および正孔発生層を含み得る。正孔発生層以外の層が主な成分としてホウ酸塩を含む場合、正孔発生層もまたホウ酸塩を含むことは必須ではない。このような場合、正孔発生層は、p型ドーパントでドープされた有機マトリックス材料から構成することができる。正孔発生層に適するマトリックス材料は、正孔注入マトリックス材料および/または正孔輸送マトリックス材料として従来から使用されている材料であってもよい。また、正孔発生層に用いられるp型ドーパントは、従来の材料を用いることができる。例えば、p型ドーパントは、テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)、テトラシアノキノジメタンの誘導体、ラジアレン誘導体、ヨウ素、FeCl、FeF、およびSbClからなる群から1つ選択され得る。また、ホストは、N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N-ジフェニル-ベンジジン(NPB)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-1,1-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD)およびN,N’,N’-テトラナフチル-ベンジジン(TNB)からなる群から1つ選択され得る。
【0071】
一実施形態では、上述で詳細に定義したように、正孔発生層が主な成分としてホウ酸塩を含むか、またはホウ酸塩からなってもよい。
【0072】
n型電荷発生層は、純粋なn型ドーパント、例えば陽性金属の層であってもよく、またはn型ドーパントでドープされた有機マトリックス材料からなっていてもよい。一実施形態では、n型ドーパントが、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、またはアルカリ土類金属化合物とすることができる。別の実施形態では、金属がLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、La、Ce、Sm、Eu、Tb、Dy、およびYbからなる群から1つ選択され得る。より具体的には、n型ドーパントが、Cs、K、Rb、Mg、Na、Ca、Sr、EuおよびYbからなる群から1つ選択され得る。電子発生層に好適なマトリックス材料は、電子注入層または電子輸送層のためのマトリックス材料として従来から使用されている材料であってもよい。マトリックス材料は、例えば、トリアジン化合物、トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウムなどのヒドロキシキノリン誘導体、ベンザゾール誘導体、およびシロール誘導体からなる群から1つ選択され得る。
【0073】
一実施形態では、n型電荷発生層は、以下の化学式Xの化合物を含んでもよい。
【0074】
【化7】
ここで、A~Aの各々は、水素、ハロゲン原子、ニトリル(-CN)、ニトロ(-NO)、スルホニル(-SOR)、スルホキシド(-SOR)、スルホンアミド(-SONR)、スルホネート(-SOR)、トリフルオロメチル(-CF)、エステル(-COOR)、アミド(-CONHRまたは-CONRR’)、置換もしくは非置換の直鎖または分岐鎖C~C12アルコキシ、置換もしくは非置換の直鎖または分岐鎖C~C12アルキル、置換もしくは非置換の直鎖または分岐鎖C~C12アルケニル、置換もしくは非置換の芳香族または非芳香族環、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のモノアリールアミンまたはジアリールアミン、置換もしくは非置換のアラルキルアミンなどであってもよい。ここで、前記RおよびR’の各々は、置換もしくは非置換のC~C60アルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換の5~7員ヘテロ環などであってもよい。
【0075】
そのようなn型電荷発生層の一例としては、CNHATを含む層が挙げられ得る。
【0076】
【化8】
正孔発生層は、n型電荷発生層の上に配置される。
【0077】
<有機発光ダイオード(OLED)>
本発明の一態様によれば、基板;基板上に形成された陽電極;正孔注入層、正孔輸送層、発光層、および陰電極を含む有機発光ダイオード(OLED)が提供される。
【0078】
本発明の別の態様によれば、基板;基板上に形成された陽電極;正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、発光層、正孔阻止層、および陰電極を含むOLEDが提供される。
【0079】
本発明の別の態様によれば、基板;基板上に形成された陽電極;正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、および陰電極を含むOLEDが提供される。
【0080】
本発明の別の態様によれば、基板;基板上に形成された陽電極;正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、および陰電極を含むOLEDが提供される。
【0081】
本発明の様々な実施形態によれば、上述の層の間、基板上、または上部電極上に配置される層を含むOLEDを提供することができる。
【0082】
一態様によれば、OLEDは、陽電極に隣接して配置される基板の層状構造を含むことができ、陽電極は第1の正孔注入層に隣接して配置され、第1の正孔注入層は第1の正孔輸送層に隣接して配置され、第1の正孔輸送層は第1の電子阻止層に隣接して配置され、第1の電子阻止層は第1の発光層に隣接して配置され、第1の発光層は第1の電子輸送層に隣接して配置され、第1の電子輸送層はn型電荷発生層に隣接して配置され、n型電荷発生層は正孔発生層に隣接して配置され、正孔発生層は第2の正孔輸送層に隣接して配置され、第2の正孔輸送層は第2の電子阻止層に隣接して配置され、第2の電子阻止層は第2の発光層に隣接して配置され、第2の発光層と陰電極との間に、任意選択の電子輸送層および/または任意選択の注入層が配置される。
【0083】
例えば、図2に係るOLEDは、基板(110)上に、陽極(120)、正孔注入層(130)、正孔輸送層(140)、電子阻止層(145)、発光層(150)、正孔阻止層(155)、電子輸送層(160)、電子注入層(180)、および陰電極(190)が、この順番で順次形成されるプロセスによって形成することができる。
【発明の詳細および定義】
【0084】
本発明は、電子デバイスに関する。電子デバイスは、例えば、有機発光ダイオードなどの有機電子デバイス、または太陽電池などの有機光起電デバイスであってもよい。電子デバイスにおいて、その少なくとも1つの層が、主な化合物としてホウ酸塩を含むことが必須である。すなわち、ホウ酸塩は、層中に追加で含まれ得る他の成分の総量を超える重量および/または体積量で当該層中に含まれる。例えば、ホウ酸塩を含む層が2つの化合物、ホウ酸塩および他の化合物のみを含む場合、ホウ酸塩の重量および/または体積量は、他の化合物の量を超える。したがって、例えばマトリックス材料をドープするためのドーパント(マトリックス材料に主な量で含まれる)として、層中に少量のホウ酸塩しか含まない電子デバイスは、本発明として扱われないことは、当業者に理解されるだろう。
【0085】
本発明に関するホウ酸塩は、正に荷電したカチオン、および少なくとも1個のホウ素原子を含む負に荷電したアニオンを含む化合物である。特に、ホウ酸アニオンは、一般式BR を有し得、式中、R基の各々はホウ素原子に共有結合している。ホウ酸塩がホウ酸金属塩である場合、金属はカチオンとしてホウ酸金属塩に含まれる。したがって、ホウ酸金属塩は、一般式MBR を有し得る。
【0086】
本明細書で使用される「ヒドロカルビル基」という用語は、炭素原子を含む任意の有機基、特にアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアルキルなどの有機基、特に有機電子において通常の置換基であるような基を包含すると理解されるべきである。
【0087】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、直鎖ならびに分岐鎖および環状アルキルを包含するものとする。例えば、C-アルキルは、n-プロピルおよびイソプロピルから選択され得る。同様に、C-アルキルは、n-ブチル、sec-ブチルおよびt-ブチルを包含する。同様に、C-アルキルは、n-ヘキシルおよびシクロヘキシルを包含する。
【0088】
における下付きの数字nは、それぞれのアルキル基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基またはアリール基における炭素原子の総数を指す。
【0089】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、フェニル(C-アリール);ナフタレン、アントラセン、フェナントラセン、テトラセンなどの縮合芳香族を包含するものとする。さらには、ビフェニル、および、例えばテルフェニルなどのオリゴフェニルまたはポリフェニルが包含される。さらには、フルオレニルなどの任意のさらなる芳香族炭化水素置換基が包含されるものとする。アリーレン、ヘテロアリーレンは、それぞれ2つのさらなる部分が結合している基を指す。
【0090】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子、好ましくはN、O、S、BまたはSiから選択されるヘテロ原子によって置換されているアリール基を指す。
【0091】
「ハロゲン化」という用語は、その1つの水素原子がハロゲン原子で置換されている有機化合物を指す。「過(per)ハロゲン化」という用語は、その水素原子の全てがハロゲン原子で置換されている有機化合物を指す。「フッ素化」および「過フッ素化」という用語の意味は、同様に理解されたい。
【0092】
-ヘテロアリールにおける下付きの数字nは、単に、ヘテロ原子の数を除く炭素原子の数を指す。これに関連して、Cヘテロアリーレン基は、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾールなどの3個の炭素原子を含む芳香族化合物であることは明らかである。
【0093】
本発明に関して、1つの層が2つの他の層の間にある場合における「間」という表現は、1つの層と2つの他の層のうちの1つの層との間に配置され得るさらなる層の存在を排除するものではない。本発明に関して、2つの層が互いに直接接触している場合における「直接接触している」という表現は、これら2つの層の間にさらなる層が配置されていないことを意味する。別の層の上部に堆積された1つの層は、この層と直接接触しているとみなされる。
【0094】
本発明の電子デバイスに関して、実施例で言及される化合物が最も好ましい。
【0095】
本発明の電子デバイスは、有機エレクトロルミネセンスデバイス(OLED)、有機光起電力デバイス(OPV)、または有機電界効果トランジスタ(OFET)であってもよい。
【0096】
別の態様によれば、本発明に係る有機エレクトロルミネセンスデバイスは、2つ以上の発光層、好ましくは2つまたは3つの発光層を含んでもよい。2つ以上の発光層を含むOLEDは、タンデムOLEDまたは積層OLEDとしても記載される。
【0097】
有機エレクトロルミネセンスデバイス(OLED)は、ボトムエミッション型デバイスまたはトップエミッション型デバイスであってもよい。
【0098】
別の態様は、少なくとも1つの有機エレクトロルミネセンスデバイス(OLED)を含むデバイスを対象とする。有機発光ダイオードを含むデバイスは、例えば、ディスプレイまたは照明パネルである。
【0099】
本発明において、以下に定義される用語、これらの定義は、異なる定義が特許請求の範囲または本明細書の他の場所に与えられない限り、適用されるものとする。
【0100】
本明細書の文脈において、マトリックス材料に関する「異なった」または「異なる」という用語は、マトリックス材料がその構造式において異なることを意味する。
【0101】
HOMOとも呼ばれる最高被占分子軌道およびLUMOとも呼ばれる最低空軌道のエネルギー準位は、電子ボルト(eV)で測定される。
【0102】
「OLED」および「有機発光ダイオード」という用語は、同時に使用され、同じ意味を有する。本明細書で使用される「有機エレクトロルミネセンスデバイス」という用語は、有機発光ダイオードならびに有機発光トランジスタ(OLET)の両方を含み得る。
【0103】
本明細書で使用される場合、「重量パーセント」、「wt%」、「重量によるパーセント」、「重量による%」およびそれらの変形は、それぞれの電子輸送層の総重量で割られ、100を掛けられたそれぞれの電子輸送層のその成分、物質または薬剤の重量として、組成物、成分、物質または薬剤を指す。それぞれの電子輸送層および電子注入層の全ての成分、物質および薬剤の総重量パーセント量は、100重量%を超えないように選択されると理解される。
【0104】
本明細書で使用される場合、「体積パーセント」、「vol%」、「体積によるパーセント」、「体積による%」およびそれらの変形は、それぞれの電子輸送層の総体積で割られ、100を掛けられたそれぞれの電子輸送層のその成分、物質または薬剤の体積として、組成物、成分、物質または薬剤を表す。陰極層の全ての成分、物質および薬剤の総体積パーセントは、100体積%を超えないように選択されると理解される。
【0105】
全ての数値は、本明細書では明示的に示されているか否かにかかわらず、「約」という用語によって修飾されるものとみなす。本明細書中で使用される場合、「約」という用語は、生じ得る数量のばらつきを指す。「約」という用語によって修飾されるか否かにかかわらず、特許請求の範囲は、当該数量に等しい量を含む。
【0106】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、別段の明確な指示をしない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。
【0107】
「含まない(free of)」、「含まない(does not contain)」、「構成されない(does not comprise)」は不純物を除外しない。不純物は、本発明によって達成される目的に関して、技術的効果を有さない。
【図面の簡単な説明】
【0108】
本発明の上述のおよび/または他の態様および利点は、添付の図面と組み合わされた、例示的な実施形態の以下の説明から明らかになり、より容易に理解されるであろう。
図1】本発明の例示的な実施形態に係る有機発光ダイオード(OLED)の概略の断面図である。
図2】本発明の例示的な実施形態に係るOLEDの概略の断面図である。
図3】本発明の例示的な実施形態に係る、電荷発生層を含むタンデムOLEDの概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0109】
本発明の例示的な実施形態、添付の図面に示される例を、詳細に参照する。ここで、同様の参照番号は、全体を通して同様の要素を指す。以下、本発明の態様を説明するために、図面を参照して、例示的な実施形態を説明する。
【0110】
本明細書では、第1の要素が第2の要素「上に」形成または配置されると言及される場合、第1の要素が第2の要素上に直接配置されてもよく、または1つ以上の他の要素がその間に配置されてもよい。第1の要素が第2の要素「上に直接」形成または配置されると言及される場合、他の要素はそれらの間に配置されない。
【0111】
図1は、本発明の例示的な実施形態に係る有機発光ダイオード(OLED)100の概略の断面図である。OLED100は、基板110、陽極120、正孔注入層(HIL)130、正孔輸送層(HTL)140、発光層(EML)150、電子輸送層(ETL)160を含む。電子輸送層(ETL)160は、EML150上に直接形成される。電子輸送層(ETL)160上には、電子注入層(EIL)180が配置されている。陰極190は、電子注入層(EIL)180上に直接配置される。
【0112】
単一の電子輸送層160の替わりに、任意選択で電子輸送層積層体(ETL)を使用してもよい。
【0113】
図2は、本発明の別の例示的な実施形態に係るOLED100の概略の断面図である。図2は、図2のOLED100が電子阻止層(EBL)145および正孔阻止層(HBL)155を含む点で、図1と異なる。
【0114】
図2を参照すれば、OLED100は、基板110、陽極120、正孔注入層(HIL)130、正孔輸送層(HTL)140、電子遮断層(EBL)145、発光層(EML)150、正孔ブロッキング層(HBL)155、電子輸送層(ETL)160、電子注入層(EIL)180および陰電極190を含む。
【0115】
図3は、本発明の別の例示的な実施形態に係るタンデムOLED200の概略の断面図である。図3は、図3のOLED100が電荷発生層および第2の発光層をさらに含む点で図2と異なる。
【0116】
図3を参照すると、OLED200は、基板110、陽極120、第1の正孔注入層(HIL)130、第1の正孔輸送層(HTL)140、第1の電子阻止層(EBL)145、第1の発光層(EML)150、第1の正孔阻止層(HBL)155、第1の電子輸送層(ETL)160、n型電荷発生層(n型CGL)185、正孔発生層(p型電荷発生層;p型GCL)135、第2の正孔輸送層(HTL)141、第2の電子阻止層(EBL)146、第2の発光層(EML)151、第2の正孔阻止層(EBL)156、第2の電子輸送層(ETL)161、第2の電子注入層(EIL)181および陰極190を含む。
【0117】
図1図2および図3には示されていないが、OLED100、200を封止するために、陰電極190上に封止層をさらに形成することができる。また、他にも種々の変形が可能である。
【0118】
以下、本発明の1つ以上の例示的な実施形態を、以下の実施例を参照して詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は、本発明の1つ以上の例示的な実施形態の目的および範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0119】
<トリス(4,5,6,7-テトラフルオロ-3-(トリフルオロメチル)-1H-インダゾール-1-イル)ヒドロホウ酸リチウム(PB-1)>
[工程1:4,5,6,7-テトラフルオロ-3-(トリフルオロメチル)-1H-インダゾール]
【0120】
【化9】
11.09g(45.1mmol)のパーフルオロアセトフェノンを100mLのトルエンに溶解する。溶液を氷浴で冷却し、2.3mL(2.37g、47.3mmol、1.05当量)のヒドラジン一水和物を滴下して添加する。混合物を3日間、加熱還流する。室温まで冷却した後、前記混合物を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mLで2回、および水100mLで2回洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去する。黄色の油状残渣を約140℃の温度および約12Paの圧力でバルブトゥバルブ(bulb to bulb)蒸留する。粗生成物を熱ヘキサンに溶解し、溶液を-18℃で保存する。沈殿固体を濾別し、懸濁液を10mLのヘキサンで2回洗浄する。5.0g(43%)の生成物をわずかに黄色の固体として得た。
GCMS:予想されるM/z(質量/電荷)比258を確認した。
【0121】
[工程2:トリス(4,5,6,7-テトラフルオロ-3-(トリフルオロメチル)-1H-インダゾール-1-イル)ヒドロホウ酸リチウム]
【0122】
【化10】
Ar向流下で、5.1g(19.8mmol)の4,5,6,7-テトラフルオロ-3-(トリフルオロメチル)-1H-インダゾールを、焼き出した(out-baked) シュレンクフラスコに添加し、3mLのトルエンで処理する。新たに粉砕した水素化ホウ素リチウムを出発材料に添加する。混合物を、水素形成が停止するまで(約4時間)、100℃に加熱する。わずかに冷却した後、15mLのヘキサンを添加し、混合物を10分間、加熱還流し、室温に冷却する。沈殿固体を濾別し、10mLの熱ヘキサンで洗浄し、高真空中で乾燥させる。2.55g(49%)の生成物を黄色がかった白色の固体として得た。
【0123】
<トリス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル)ヒドロホウ酸リチウム(PB-2)>
【0124】
【化11】
焼き出したシュレンクフラスコ中、2.0g(9.8mmol、5当量)の3,5-ビス(トリフルオロメチル)ピラゾールを5mLの乾燥トルエンに溶解する。Ar向流下で、43mg(1.96mmol、1当量)の新たに粉砕した水素化ホウ素リチウムを添加し、混合物を3日間、加熱還流する。溶媒および過剰の出発材料を減圧下での蒸留によって除去し、残渣をn-クロロヘキサンから結晶化させる。0.25g(20%)の生成物を白色固体として得た。
【0125】
<トリス(4,5,6,7-テトラフルオロ-3-(パーフルオロフェニル)-1H-インダゾール-1-イル)ヒドロホウ酸リチウム(PB-3)>
[工程1:4,5,6,7-テトラフルオロ-3-(パーフルオロフェニル)-1H-インダゾール]
【0126】
【化12】
20.0g(54.8mmol)のパーフルオロベンゾフェノンを200mLのトルエンに溶解する。4.0mL(4.11g、82.1mmol、約1.5当量)のヒドラジン一水和物を、氷冷した溶液に滴下して添加する。40gの硫酸ナトリウムを添加し、混合物を2日間、加熱還流する。冷却後、10mLのアセトンを反応混合物に添加し、得られた懸濁液を室温で1時間撹拌する。固体を濾別し、4×50mLのトルエンで十分に洗浄し、有機画分を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回洗浄する。溶媒を減圧下で除去し、残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製した。7.92g(41%)の生成物を淡黄色固体として得た。
GC-MS:予想されるM/z(質量/電荷)比356を確認した。
【0127】
[工程2:トリス(4,5,6,7-テトラフルオロ-3-(パーフルオロフェニル)-1H-インダゾール-1-イル)ヒドロホウ酸リチウム]
【0128】
【化13】
焼き出したシュレンクフラスコ中、1.02g(2.86mmol、3.0当量)の4,5,6,7-テトラフルオロ-3-(パーフルオロフェニル)-1H-インダゾールを、5mLのクロロベンゼンに溶解させる。Ar向流下で、新たに粉砕した水素化ホウ素リチウム(21mg、0.95mmol、1.0当量)を添加する。混合物を150℃で2日間加熱し、室温に冷却する。溶媒を減圧下で除去し、残渣を高真空下で乾燥させる。粗生成物をさらに、約150℃の温度および約12Paの圧力下、バルブトゥバルブ蒸留装置中で乾燥させることで精製する。0.57g(70%)の生成物を、黄色がかった白色の固体として得た。
【0129】
<トリス(3-シアノ-5,6-ジフルオロ-1H-インダゾール-1-イル)ヒドロホウ酸リチウム(PB-4)>
【0130】
【化14】
新たに粉砕した水素化ホウ素リチウム(15mg、0.7mmol、1.0当量)を焼き出した圧力管に入れ、Ar向流下で、0.5g(2.79mmol、4.0当量)の5,6-ジフルオロ-1H-インダゾール-3-カルボニトリルを添加し、1mLのトルエンで洗浄する。圧力管を閉じ、約160℃の温度に約21時間加熱する。室温に冷却した後、超音波浴中で約30分間、混合物を5mLのヘキサンで処理する。沈殿固体を濾別し、ヘキサン(合計20mL)で洗浄する。乾燥後、0.48gの黄色がかった固体を得た。
【0131】
<トリス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル)ヒドロホウ酸亜鉛(II)(PB-5)>
【0132】
【化15】
0.57g(0.91mmol)のトリス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル)ヒドロホウ酸リチウムを6mLのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解する。水1mL中に二塩化亜鉛62mgを含む水溶液を滴下して添加する。20mLの水をさらに添加し、混合物を超音波浴中で2時間処理する。沈殿物を濾別し、高真空中で乾燥させる。0.485g(82%)の生成物を、白色固体として得た。
【0133】
装置例
実施例1(タンデムOLED、ボトムエミッション型白色OLEDピクセルのモデル)
厚さ90nmのITO陽極を備えたガラス基板上に、8重量%のPD-2でドープされたF1から作製される10nmの正孔注入層と、純粋なF1からなる厚さ140nmの非ドープ正孔輸送層と、3重量%のBD200でドープされたABH113(両方とも韓国、SFC社によって提供される)から形成される厚さ20nmの第1の発光層と、純粋なF2から作製される厚さ25nmの第1の電子輸送層と、5重量%のYbでドープされたF3から作製される厚さ10nmの電荷発生層の電子発生部(n-CGL)と、F4から作製される厚さ2nmの中間層と、PB-1から作製される厚さ30nmの電荷発生層の正孔発生部(p-CGL)と、純粋なF1から作製される厚さ10nmの第2の正孔輸送層と、第1の発光層と同じ厚さおよび組成の20nmの第2の発光層と、純粋なF2から作製される厚さ25nmの第1の電子輸送層と、5重量%のYbでドープされたF3から作製される厚さ10nmの電子注入層(EIL)と、100nmのAl陰極と、を順に堆積させた。
【0134】
全ての層を、真空熱蒸着(VTE)によって堆積させた。
【0135】
電流密度10mA/cmにおける、デバイスの動作電圧8Vおよび観測されたルミナンスは、PB-1の替わりに市販の最新技術のp-ドーパントを含む同じデバイスに十分に匹敵した。この予備実験では、効率評価に必要な正確な検定は省略した。
【0136】
実施例2(ボトムエミッション型青色OLEDピクセル)
次に、装置例1と同じITO陽極を備えたガラス基板上に、以下の層をVTEによって順に堆積させた:化合物PB-1から作製される10nmの正孔注入層;純粋なF1から作製される厚さ120nmのHTL;3重量%のNUBD370でドープされたABH113(両方とも韓国、SFC社によって供給される)から作製される20nmのEML;50重量%のLiQでドープされたF2から作製される36nmのEIL/ETL;100nmのAl陰極。
【0137】
本発明のデバイスは、電圧5.2Vにおいて、電流密度15mA/cmおよびEQE5.4%を達成した。一方で、比較デバイスは、5.4Vにおいて、EQE4.9%で作動した。
【0138】
【表1】
前述の説明および従属請求項に開示される特徴は、別々に、およびその任意の組み合わせの両方で、独立請求項においてなされた開示の態様をその多様な形態で実現するための材料であり得る。
【0139】
本明細書を通して使用される主要な記号および略語:
CV サイクリックボルタンメトリー
DSC 示差走査熱量測定
EBL 電子阻止層
EIL 電子注入層
EML 発光層
eq. 当量
ETL 電子輸送層
ETM 電子輸送マトリックス
Fc フェロセン
Fc フェリセニウム
HBL 正孔阻止層
HIL 正孔注入層
HOMO 最高被占軌道
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
HTL 正孔輸送層
p-HTL p-ドープされた正孔輸送層
HTM 正孔輸送マトリックス
ITO インジウムスズ酸化物
LUMO 最低空軌道
mol% モルパーセント
NMR 核磁気共鳴
OLED 有機発光ダイオード
OPV 有機光起電力
QE 量子効率
TLC遅延因子
RGB 赤-緑-青
TCO 透明導電性酸化物
TFT 薄膜トランジスタ
ガラス遷移温度
TLC 薄層クロマトグラフィー
wt% 重量パーセント

図1
図2
図3