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▶ フロイデンベルグ−エヌオーケー ジェネラル パートナーシップの特許一覧

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  • 特許-自己付勢シール 図1
  • 特許-自己付勢シール 図2
  • 特許-自己付勢シール 図3
  • 特許-自己付勢シール 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】自己付勢シール
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/18 20060101AFI20220112BHJP
   F16J 15/24 20060101ALI20220112BHJP
   F16J 15/3268 20160101ALI20220112BHJP
【FI】
F16J15/18 C
F16J15/24 Z
F16J15/3268
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020097412
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021006743
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】16/443,844
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599039289
【氏名又は名称】フロイデンベルグ-エヌオーケー ジェネラル パートナーシップ
【氏名又は名称原語表記】FREUDENBERG-NOK GENERAL PARTNERSHIP
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド エル.スパラゴスキー
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-105652(JP,A)
【文献】実開平01-154365(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0298766(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/16-15/32
F16J 15/324-15/3296
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーリングシステムであって、
内面を有するボアを画定するハウジングと、
回転軸であって、前記ボアに回転可能に配置され、前記回転軸の外面に配置された環状溝を含み、前記環状溝が、溝底部と一対の側壁とを有する、前記回転軸と、
前記環状溝の軸方向の長さよりも長い軸方向の長さを有する熱可塑性筒状環状体として形成されるシールであって、V字型の断面に曲げられ、前記環状溝に受け入れられて前記シールの対向する端部が前記環状溝の対向する底部の角に配置され、前記V字型の断面の頂部が前記環状溝の半径方向外側に延び、前記ボアの前記内面と係合する、前記シールと
を含む、前記シーリングシステム。
【請求項2】
前記シールがPTFEから形成される、請求項1に記載のシーリングシステム。
【請求項3】
前記熱可塑性筒状環状体が、軸方向の長さと半径方向の厚さとの比率が2~6の長方形の断面を有する、請求項2に記載のシーリングシステム。
【請求項4】
前記熱可塑性筒状環状体が、少なくとも4.0の軸方向の長さと半径方向の厚さとの比率を有する長方形の断面を有する、請求項2に記載のシーリングシステム。
【請求項5】
前記熱可塑性筒状環状体が、軸方向の長さと半径方向の厚さとの比率が2~6の長方形の断面を有する、請求項1に記載のシーリングシステム。
【請求項6】
前記熱可塑性筒状環状体が、少なくとも4.0の軸方向の長さと半径方向の厚さとの比率を有する長方形断面を有する、請求項1に記載のシーリングシステム。
【請求項7】
シーリングシステムを作製する方法であって、
軸の外面に、溝底部と1対の側壁とを有する環状溝を形成すること、
前記環状溝の軸方向の長さよりも長い軸方向の長さを有する熱可塑性筒状環状体を形成すること、
前記熱可塑性筒状環状体をV字型の断面シールに曲げること、
前記V字型の断面のシールの対向する端部が前記環状溝の対向する底部の角に配置され、前記V字型の断面の頂部が、前記環状溝の半径方向外側に延びた状態で、前記V字型の断面のシールを前記環状溝に挿入すること、及び
前記V字型の断面の前記頂部がボアの内面に係合するよう、ハウジングの前記ボアに前記軸を挿入すること、
を含む、前記方法。
【請求項8】
前記シールがPTFEから形成される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記熱可塑性筒状環状体が、軸方向の長さと半径方向の厚さとの比率が2~6の長方形の断面を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記熱可塑性筒状環状体が、少なくとも4.0の軸方向の長さと半径方向の厚さとの比率を有する長方形の断面を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記熱可塑性筒状環状体が、軸方向の長さと半径方向の厚さとの比率が2~6の長方形の断面を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記熱可塑性筒状環状体が、少なくとも4.0の軸方向の長さと半径方向の厚さとの比率を有する長方形の断面を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記熱可塑性筒状環状体をV字型の断面のシールに曲げることが、前記熱可塑性筒状環状体をプレス-クランプに挿入することによって実行される、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転軸のシールに関し、より詳細には、シールシステムが加圧されていないときに下方向への排水を防止するための自己付勢シールに関する。
【背景技術】
【0002】
当該セクションでは、本開示に関連する背景情報を提供する。その情報は、必ずしも先行技術ではない。
【0003】
「下方向への排水」という作用は、回転軸とハウジングのボアとの間をシールするために今日利用されている従来型の正方形カット(すなわち正方形の断面)のPTFE環状シールで発生する。これらのシールでは、加圧されていないときに、流体がシールを通って流れ得るからである。その結果、ユニットがアイドル状態のときに流体が排出され、再始動と再加圧の問題が発生する。
【0004】
始動/停止の技術の利用を増加させるには、損失及び始動の問題を抱えないように流体を所定の位置に保てることが必要となる。多くの場合、このような問題の発生を防ぐには、これらのシステムの圧力を維持するためにアキュムレータが必要である。
【0005】
加えて、構築されたトランスミッションは流体で満たされ得、出荷時に、ユニットはユニットの主要な領域から流体を排出する。組み立て工場は、これらのユニットを使用する必要がある場合のこうした流体の損失による損傷のリスクを抱えている。したがって、流体を所定の位置に保ち、これらのリスクを低減するために、下方向への排水を防止するシーリングシステムを提供することはが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
当該セクションは、本開示の全体的な要約を提供しており、その全範囲またはそのすべての特徴の包括的な開示ではない。
【0007】
シーリングシステムは、内面を有するボアを画定するハウジングを含んでいる。回転軸は、ボアに回転可能に配置され、回転軸の外面に配置された環状溝を含み、環状溝が、溝底部と一対の側壁とを有する。シールは、環状溝の軸方向の長さよりも長い軸方向の長さを有する熱可塑性の中空の筒状体として形成され、V字型の断面に曲げられ/折り曲げられて環状溝に受け入れられて、シールの対向する端部が環状溝の対向する底部の角に配置され、V字型の断面の頂部が環状溝の半径方向外側に延び、ボアの内面と係合する。
【0008】
シーリングシステムを作製する方法は、軸の外面に環状溝を形成することを含み、環状溝は、溝底部と1対の側壁とを有する。環状凹部の軸方向の長さよりも大きい軸方向の長さを有する熱可塑性筒状環状体が形成される。熱可塑性筒状環状体は、V字型の断面の環状シールに曲げられ/折り曲げられる。V字型の断面の環状シールは、V字型の断面のシールの対向する端部が環状溝の対向する底部の角に配置され、V字型の断面の頂部は、環状溝の半径方向外側に延びた状態で、環状溝に挿入される。ハウジングのボアに軸を挿入し、V字型の断面の環状シールの頂部がボアの内面に係合する。
【0009】
本明細書に提供される説明から、さらなる適用範囲が明らかになる。この概要の説明及び特定の例は、例示のみを目的としており、本開示の範囲を限定することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本明細書で説明される図面は、選択された実施形態のみの例示を目的とし、すべての可能な実装を目的としてはおらず、本開示の範囲を限定することを意図してはいない。
【0011】
図1】本開示の原理による例示的なシーリングシステムの断面図である。
図2】長方形の断面を有する筒状環状体として形成されたシールの断面図である。
図3A】本開示の原理による、長さと厚さの比率が4.0であり、V字型の断面を有する環状シールの断面図である。
図3B】本開示の原理による、長さと厚さの比率が5.0であり、V字型の断面を有する環状シールの断面図である。
図4図4a~図4cは、V字型のシールを形成するための例示的なプレス-クランプの断面図である。
【0012】
一致する参照番号は、図面のいくつかの図を通して相応する部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
これより添付の図面を参照して、例示的な実施形態をより十分に説明する。
【0014】
本開示が徹底され、当業者に範囲を完全に伝えるように、例示的な実施形態が提供される。本開示の実施形態の完全な理解をもたらすために、特定のコンポーネント、デバイス、及び方法の例など、多数の特定の細部が示されている。特定の細部を利用する必要がないこと、例示的な実施形態が多くの異なる形態で具現化され得ること、及びいずれも本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではないことは、当業者には明らかである。いくつかの例示的な実施形態では、周知のプロセス、周知のデバイスの構造、及び周知の技術が詳細には説明されてない。
【0015】
本明細書で使用される用語は、特定の例示的な実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形も含むことが意図され得る。「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含んでいる(including)」及び「有する(having)」という用語は、述べられている特徴、完全体、ステップ、操作、要素、及び/または構成要素を含み、したがってそれが存在していることを明示するが、1つ以上のその他の特徴、完全体、ステップ、操作、要素、構成要素、及び/またはそれらの群が存在していること、または追加されることを排除しない。本明細書に記載されている方法のステップ、プロセス、及び操作は、パフォーマンスの順序として特に特定されていない限り、それらのパフォーマンスを説明または図示された特定の順序にすることを必ず必要とすると解釈されるべきではない。また、追加または代替のステップを使用できることも理解されたい。
【0016】
要素または層が、別の要素または層に対して「上にある」、「係合されている」、「接続されている」、または「結合されている」と言及されている場合、それは直接、他の要素または層に対して上にある、係合されている、接続されている、または結合されることが可能であり、あるいは介在する要素または層が存在していることは可能である。対照的に、要素が別の要素または層に対して「直接上に」、「直接係合されて」、「直接接続されて」、または「直接結合されて」いると言及されている場合、介在する要素または層が存在していないことは可能である。要素間の関係を説明するために使用される他の単語は、同様に解釈されるべきである(例えば、「間に」と「直接間に」、「隣接する」と「直接隣接する」など)。本明細書で使用される場合、「及び/または」という用語は、関連する列挙された項目の1つまたは複数のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0017】
本明細書では、第1、第2、第3などの用語を使用して、様々な要素、コンポーネント、領域、層及び/またはセクションを説明している場合があるが、これらの要素、コンポーネント、領域、層及び/またはセクションは、これらの用語により限定されるべきではない。これらの用語は、1つの要素、コンポーネント、領域、層、またはセクションを、別の領域、層、またはセクションと区別するためにのみ使用できる。本明細書で使用されるとき、「第1」、「第2」及び他の数値を表す語などの用語は、文脈で明確に示されていない限り、連続性または順序を示唆するものではない。したがって、以下で説明する第1の要素、コンポーネント、領域、層、またはセクションは、例示的な実施形態の教示から逸脱することなく、第2の要素、コンポーネント、領域、層、またはセクションと呼ぶことができる。
【0018】
本明細書では、説明を容易にするために、「内側」、「外側」、「下(beneath)」、「下方(below)」、「下側(lower)」、「上方(above)」、「上側(upper)」などの空間的に相対的な用語を使用して、図に示すような、1つの要素または機構と別の要素(複数可)または機構(複数可)との関係を説明している場合がある。空間的に相対的な用語は、図に示される向きに加えて、使用中または動作中のデバイスの異なる向きを包含することが意図され得る。例えば、他の要素または機構の「下方」または「下」として説明されている要素は、図面のデバイスがひっくり返されるならば、他の要素または機構の「上方」に向く。したがって、例示的な「下方」という用語は、上方と下方の両方の向きを包含することができる。デバイスは、他の方向に向けられ(90度または他の方向に回転)てもよく、本明細書で使用される空間的に相対的な記述語は、状況に応じて解釈され得る。
【0019】
図1を参照して、これより本開示によるシーリングシステム10を説明する。シーリングシステム10は、内面16を有するボア14を画定するハウジング12を含む。回転軸18は、ボア14に配置され、ハウジング12に対して回転可能である。回転軸18は、回転軸18の表面に窪んだ環状溝20を含む。環状溝20は、溝底部22と一対の側壁24とを含む。シール26は、回転軸18とハウジング12との間のギャップGをシールするために環状溝20に配置される。
【0020】
シール26は、PTFEなどの熱可塑性材料から、図2に示されるような長方形の断面を有する筒状環状体28として最初に形成される。筒状環状体の長方形の断面は、2と6の間である軸方向の長さLと半径方向の厚さRとの比率を有することができ、より特定の実施形態によれば、図3Aの例示的なシールによって示されるような4というLとRの比率、図3Bの例示的なシールによって示されるような5というLとRの比率を有することができる。筒状環状体28の軸方向の長さLは、環状溝20の軸方向の長さよりも長い。筒状環状体28は、図3A及び図3Bに示すように、V字型の断面を有するシール26に曲げられる/折り曲げられる。一実施形態では、図4a~図4cに示すように、内側マンドレル34、外側ハウジング36、停止装置38、及びピストン40を有するプレスークランプ装置30に筒状環状体28を挿入することにより、シール26をV字型の断面に形成することができる。筒状環状体は、外側ハウジング内のマンドレル34に配置される。停止装置38は、筒状環状体28の一端に配置され、ピストン40は、図4bに示すように、停止装置38に向かって押され、図4cにおいて示すように、V字型の断面シールへと筒状環状体を曲げる/折り曲げる。筒状環状体28の寸法ならびにマンドレル34及び外側ハウジング36の相対的な寸法は、シール26に所望の形状をもたらすように設計できることを理解されたい。
【0021】
シーリングシステム10を組み立てるために、環状シール26は、V字型の断面に形成され、次に、回転軸18の環状溝20に挿入され、その結果、対向する端部26a、26bが環状溝20の対向する角に配置され、環状シール26の頂部26cは環状溝20の外に延在する。次に、回転軸18がハウジング12のボア14に挿入され、その結果、頂部26cがボア14の内面16と係合する。
【0022】
シーリングシステム10は、加圧流体なしで軸18及びボア14への干渉を維持する。シール26は、V字型の幾何学形状を利用して、外径の圧縮から環状溝20の側壁24に力を加える。シール26は、現在使用されている従来型の正方形カットのシールとは対照的に、圧力なしでの流体損失の懸念をわずかなものに定める。シール26は、昇温すると、元の形状に戻ろうとする。しかし、このことはボアにシールを取り付けることで防止される。したがって、シールが昇温すると、この効果により実際には溝の壁に対してより良好にシールする。これにより、機械加工されたシールと比較して、耐久性とシール機能が向上する。
【0023】
実施形態の前述の説明は、例示及び説明の目的で提供されてきた。網羅的であること、または開示を限定することは意図されていない。特定の実施形態の個々の要素または特徴は、一般に、その特定の実施形態に限定されず、適用可能な場合、交換可能であり、具体的に図示または説明されていなくても、選択された実施形態で使用することができる。また、同じものを多くの方法で変更してもよい。そのような変更は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱するものとみなされるべきではなく、すべてのそのような修正は、本開示の範囲内に含まれることが意図されている。
図1
図2
図3
図4