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特許6999750同軸スピーカおよびオフセットスピーカにおけるドップラー補償
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】同軸スピーカおよびオフセットスピーカにおけるドップラー補償
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/12 20060101AFI20220112BHJP
   H04R 1/26 20060101ALI20220112BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
H04R3/12 Z
H04R1/26
H04R3/00 310
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020105310
(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公開番号】P2021002829
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2020-06-24
(31)【優先権主張番号】16/448,994
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503062253
【氏名又は名称】アナログ ディヴァイスィズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ケネス・マルスキー
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ハン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミゲル・エイ・チャベス
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-090894(JP,A)
【文献】特開2011-109487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/12
H04R 1/26
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオプロセッサであって、
第1の周波数帯域を第2の周波数帯域から分離するためのオーディオクロスオーバーであって、前記第1の周波数帯域は前記第2の周波数帯域よりも低い周波数帯域を有する、オーディオクロスオーバーと、
前記第1の周波数帯域の情報から、低周波ドライバの予測偏移を推定する偏移推定部と、
前記推定された偏移を補償するための前記第2の周波数帯域への調整を補間するための補間部と、
前記調整された第2の周波数帯域高周波ドライバに送り出すための回路と、を備え
前記補間部は、前記高周波ドライバからのオーディオ波形の、前記低周波ドライバからの反射に対するドップラー補償を計算するためのロジックを含む、オーディオプロセッサ。
【請求項2】
前記第1の周波数帯域を前記低周波ドライバに送り出すための回路をさらに備える、請求項に記載のオーディオプロセッサ。
【請求項3】
オーディオプロセッサであって、
第1の周波数帯域を第2の周波数帯域から分離するためのオーディオクロスオーバーであって、前記第1の周波数帯域は前記第2の周波数帯域よりも低い周波数帯域を有する、オーディオクロスオーバーと、
前記第1の周波数帯域の情報から、低周波ドライバの予測偏移を推定する偏移推定部と、
前記推定された偏移を補償するための前記第2の周波数帯域への調整を補間するための補間部と、
前記調整された第2の周波数帯域を高周波ドライバに送り出すための回路と、を備え、
前記補間部は、前記低周波ドライバから反射される高周波波形を相殺するためのオーディオ波形を計算するように構成されている、オーディオプロセッサ。
【請求項4】
前記補間部は、前記オーディオプロセッサを含むラウドスピーカシステムの数理モデルを含む、請求項に記載のオーディオプロセッサ。
【請求項5】
前記ラウドスピーカシステムの前記数理モデルは、前記高周波ドライバが前記低周波ドライバと同心である同心スピーカシステムを含む、請求項に記載のオーディオプロセッサ。
【請求項6】
前記ラウドスピーカシステムの前記数理モデルは、前記高周波ドライバが前記低周波ドライバからオフセットされているオフセットスピーカシステムを含む、請求項に記載のオーディオプロセッサ。
【請求項7】
線形化サブシステムをさらに備える、請求項1に記載のオーディオプロセッサ。
【請求項8】
前記線形化サブシステムは、非線形補償部を有するフィードバックループ内にラウドスピーカモデルを含む、請求項に記載のオーディオプロセッサ。
【請求項9】
オーディオプロセッサであって、
第1の周波数帯域を第2の周波数帯域から分離するためのオーディオクロスオーバーであって、前記第1の周波数帯域は前記第2の周波数帯域よりも低い周波数帯域を有する、オーディオクロスオーバーと、
前記第1の周波数帯域の情報から、低周波ドライバの予測偏移を推定する偏移推定部と、
前記推定された偏移を補償するための前記第2の周波数帯域への調整を補間するための補間部と、
前記調整された第2の周波数帯域を高周波ドライバに送り出すための回路と、
前記第1の周波数帯域を修正せずに前記低周波ドライバに送り出すための回路と、を備えるオーディオプロセッサ。
【請求項10】
請求項1に記載のオーディオプロセッサを含む、集積回路。
【請求項11】
請求項1に記載のオーディオプロセッサを含む、システムオンチップ。
【請求項12】
請求項1に記載のオーディオプロセッサを含む、離散電子回路。
【請求項13】
ラウドスピーカシステムであって、
ウーハと、
ツィータと、
オーディオ処理回路とを備え、前記オーディオ処理回路は、
高周波帯域から低周波帯域を分離することと、
前記低周波帯域から、前記低周波帯域に応答する前記ウーハの予想偏移を推定することと、
前記ツィータからの高周波オーディオ信号の、前記推定された偏移で動く前記ウーハからの反射を補償するための前記高周波帯域への調整を計算することと、
前記低周波帯域を調整せずに前記ウーハに送り出すことと、
前記調整された高周波帯域を前記ツィータに送り出すことと、を行うように構成されている、ラウドスピーカシステム。
【請求項14】
ラウドスピーカシステムであって、
ウーハと、
ツィータと、
オーディオ処理回路とを備え、前記オーディオ処理回路は、
高周波帯域から低周波帯域を分離することと、
前記低周波帯域から、前記低周波帯域に応答する前記ウーハの予想偏移を推定することと、
前記ツィータからの高周波オーディオ信号の、前記推定された偏移で動く前記ウーハからの反射を補償するための前記高周波帯域への調整を計算することと、
前記低周波帯域を前記ウーハに送り出すことと、
前記調整された高周波帯域を前記ツィータに送り出すことと、を行うように構成され、
前記オーディオ処理回路はさらに、前記ツィータからのオーディオ波形の、前記ウーハからの反射に対するドップラー補償を計算するように構成されている、ラウドスピーカシステム。
【請求項15】
ラウドスピーカシステムのためのオーディオ処理を実行する方法であって、
第1の周波数帯域を第2の周波数帯域から分離することであって、前記第1の周波数帯域は前記第2の周波数帯域よりも低い周波数帯域を有する、前記分離することと、
前記第1の周波数帯域から、低周波ドライバの予測偏移を推定することと、
前記予測偏移を補償するための前記第2の周波数帯域への調整を補間することと、
前記調整された第の周波数帯域を高周波ドライバに送り出すことと、を含み、
前記補間することは、前記高周波ドライバからのオーディオ波形の、前記低周波ドライバからの反射に対するドップラー補償を計算することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、オーディオ信号処理の分野に関し、より具体的には、同軸スピーカおよびオフセットスピーカにおけるドップラー補償を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ製品の消費者は、オーディオ処理アプリケーションから高品質のオーディオおよび線形応答を期待する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一実施例では、第1の周波数帯域を第2の周波数帯域から分離するためのオーディオクロスオーバーであって、第1の周波数帯域は第2の周波数帯域よりも低い周波数帯域を有するオーディオクロスオーバーと、第1の周波数帯域の情報から低周波数ドライバの予測偏移を推定するための偏移推定部と、推定偏移を補償するための第2の周波数帯域への調整を補間するための補間部と、調整された第2の周波数を受信部に送り出すための回路と、を含む、オーディオプロセッサが開示される。
【0004】
本開示は、添付の図面とともに読まれたときに以下の詳細な説明から最も良く理解される。業界における標準的な慣行に従い、さまざまな特徴部は、縮尺通りには示されておらず、例示の目的でのみ使用されることを強調しておく。実際、さまざまな特徴部の寸法は、説明の明確さのために任意に増大または縮小される場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1A】同軸または同心ドライバで構成され得るラウドスピーカの外部斜視図である。
図1B】ラウドスピーカのさらなる外部斜視図である。
図2A】同軸スピーカシステム、具体的には同心圧縮ツィータを伴うウーハの斜視図である。
図2B】同心スピーカシステム、具体的には、同心の慣用ツィータを伴うウーハのブロック図である。
図2C】ウーハおよびツィータが互いにオフセットされた構成で使用され得る、単独のウーハを例示するブロック図である。
図3】スピーカシステムの電気モデルの回路図を含む。
図4】線形化サブシステムの1つの考えられる実施のブロック図である。
図5】音響波形の変調の例示である。
図6】制御回路のブロック図である。
図7】先端的オーディオプロセッサのブロック図である。
図8】オーディオプロセッサの選択された要素を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下の開示は、本開示の異なる特徴を実施するための多くの異なる実施形態または実施例を提供する。本開示を平易にするために、コンポーネントおよび配置の具体例を以下に説明する。これらはもちろん単なる例であり、限定を意図するものではない。さらに、本開示は、さまざまな実施例において、参照番号および/または参照文字を反復することがある。この反復は、単純化および明確化を目的としており、それ自体は、説明されているさまざまな実施形態および/または構成間の関係を決定づけるものではない。異なる実施形態は異なる利点を有し得、特定の利点が必ずしも任意の実施形態に要求されるものではない。
【0007】
広義には、スピーカは、音を再生する電気機械システムである。スピーカは、グラム単位で測定され得る特徴的な移動質量と、例えば1ミリメートル当たりのニュートン単位で測定され得る特徴的な懸吊剛性とを有するコーンまたはダイヤフラムを有する。
【0008】
ドライバモータは、所与の周波数でダイヤフラムまたはコーンの振動を引き起こし、これによりコーンは、音として知覚可能である空気または他の伝達媒体中に機械的波動を生成する。ドライバモータは、強力な磁石および音声コイルを含み得、これらは、電気入力によって励起され得る。音声コイルへの電気入力は、変動磁場を生成し、それが磁石の地場を引き寄せたりまたは反発させてダイヤフラムを所望の周波数で動かし、したがって、選択された周波数で音を生成する。
【0009】
スピーカ設計における1つの基本的な問題は、異なる周波数を生成するには異なるサイズのコーンがより適していることである。例えば、ヒトが知覚可能な音楽を再生する場合、約10ヘルツ(Hz)~約10Hzまでの範囲の周波数を再生する必要があり得る。(例えば、20~500Hzの範囲の)より低い周波数は、より大きな音響質量を変位させるより大きなコーンによってより良く生成される。一方、500Hzを超える周波数、特に2~20kHzの範囲の周波数は、より高い周波数で動作するより小さなコーンによってより良く生成される。
【0010】
スピーカ設計の「聖杯」は完全な線形応答である。つまり、完璧なスピーカは、可聴周波数の全範囲を歪みなく生成することができる。これまで、このような広い周波数範囲を完璧に生成できるスピーカドライバ設計は知られていない。特定のドライバは、特定の周波数範囲に対して最適化することができるが、一般的には、ある範囲でより積極的に最適化すれば、他の範囲ではより大きな歪みが存在する。この現実を補償するために、多くの最高級スピーカは、低周波~中周波範囲に特化して最適化された別個の「ウーハ」と、より高周波範囲に最適化された別個の「ツィータ」とを含む。いくつかのスピーカシステムはまた、別個の中音域スピーカも含み、一般的な場合、ヒトが知覚可能なオーディオスペクトル(または約20Hz~約20,000Hzの「ヒト聴覚範囲」)は、任意の数の部分範囲に分割され得、各部分範囲に対して特化されたドライバを用いる。
【0011】
スピーカが別個のウーハおよびツィータなどの別個のドライバを提供するとき、より広い周波数範囲の音の再生を実現することができる。具体的には、入力オーディオ信号を別個のコンポーネントに分割することができ、高周波信号はツィータに導かれ、低~中周波信号はウーハに導かれる。
【0012】
別個の音域を有するスピーカの一般的な構成は、オフセット構成である。例えば、キャビネット型スピーカは、大きなウーハを有し、軸方向にオフセットされたツィータが備えられる。これは、ヒトの聴覚の範囲にわたってより線形な周波数応答をもたらすが、一方で、それはまた、不利なこともある。理想的なのは、ヒトユーザの観点からすると、音は単一点源から発生するように見られることである。スピーカがオフセットされていると、音は単一点源から発せられるものとして知覚されず、したがって、より幅広い応答にもかかわらず、ヒトユーザは再生音にいくらかの歪みを覚える。
【0013】
この問題にはいくつかの解決策がある。1つの解決策は、同心または同軸スピーカ構成である。この構成では、より大きなウーハの中心に別個のツィータが配置される。ウーハとツィータとは、自身のオーディオ周波数範囲を独立に生成するものの、同心であるので、音声が、より密接で、単一点から発せられているように見られる。もう一つの解決策は、単純に単一のドライバを有することである。これは、オフセットスピーカ構成よりも正確に単一点源の目的を実現するが、全範囲の周波数を生成することは犠牲とされる。
【0014】
上記の構成、すなわちオフセットスピーカ、同心スピーカ、および単一ドライバスピーカのすべては、いわゆるドップラー歪みの影響を受けやすい。ドップラー効果は、機械的波動理論と電磁波理論の両方でよく知られている。ごく簡単に言えば、波源が観測者に向かって動いているとき、波は、観測者の観点からは圧縮されているように見られ(より短い波、より高い周波数)、圧縮の大きさは、波源が近づく速度に直接ともなって変化する。波源が観測者から遠ざかるよう動いているとき、波形は、観測者の観点からは拡張されるように見られ(より長い波、より低い周波数)、拡張の大きさは、波源が観測者から遠ざかるように動く速度に直接ともなって変化する。電磁波理論では、これは、観測者に近づく電磁波源の「青方偏移」、観測者から遠ざかる電磁波源の「赤方偏移」として知られている。音などの機械的波動の場合、効果は、救急車に関して分かりやすく一般的に説明される。救急車が観測者に近づいているとき、機械的波動は救急車の到来速度によって圧縮され、救急車のサイレンは、定位置観測者にとっては、救急車が観測者に到達するまでより高いピッチを有するように見られる。救急車が観測者に到達したちょうどその時、救急車のサイレンには周波数シフトはなく、その瞬間、観測者はその「真」の周波数でサイレン周波数を聞く。次いで、救急車が観測者から遠ざかると、救急車の速度に比例して周波数波形が拡張され、機械的波動が救急車の速度に比例して低い周波数を有するように見られるので、サイレンのピッチが低くなるように見られる。
【0015】
最も簡単に言えば、ドップラー効果により、波形源が観測者に対して動くとき、波形はその観測者に対する何らかの周波数の歪みを被ることが前提とされる。この効果は、本明細書に開示されるすべてのスピーカタイプにおいて作用する。
【0016】
ヒトの全聴覚範囲にわたって音声を再生することを意図された単一ドライバスピーカの簡単な例では、ダイヤフラムは、ヒトユーザに知覚可能な音波を生成する。しかしながら、ダイヤフラムは、前後に動くことによってこれらの音波を生成する。音源が動いているので、当然、ドップラー効果が存在する。単一範囲ウーハの場合、低音周波数の波長に比べて、ドライバの運動範囲が比較的小さいことにより、効果は軽減される。したがって、低音波形には、最小限のヒト知覚可能な歪みが存在する。単一範囲ツィータの場合、やはり最小限のヒト知覚可能な歪みが存在する。この場合、ドライバは非常に高い周波数で前後に動くものの、ドライバは非常にわずかな変位、実際にはウーハの変位と比較して無視し得る変位を被る。したがって、ドライバは非常に少ししか動かないため、非常に少ない周波数の歪みしか存在しない。しかしながら、ドライバが大きな変位を必要とする低周波と高周波との両方を重ね合わせて生成する全範囲ドライバの場合、より高い周波数の変調が相当な大きさとなり得る。
【0017】
例えば、20Hzで低音波形を再生しつつ、20キロヘルツ(kHz)で高音波形を再生しているドライバを考える。つまり、20Hzの信号を再生するためにコーンが振動するごとに、コーンは、20kHzの波形に対して千回振動する。モデルを簡略化するために、ドライバが前方に動くと、500回振動して高周波波形を再生すると考える。そして、後方に動くと、500回振動してさらに高周波波形を生成し、そうしてこの動きを前後に続ける。この場合、高周波の半分は、電気刺激よりも高いピッチで、半分はより低いピッチで知覚される。これは、ヒトが知覚可能であり得、何故ならば、低周波波形を生成するためのスピーカの変位が、高周波波形を生成するためのスピーカの変位よりもはるかに大きいからである。これは、高周波波形に実質的なドップラー偏移を引き起こし、高周波信号に実質的なヒト知覚可能な歪みをもたらす可能性がある。
【0018】
機構は異なるが、同心スピーカまたはオフセットスピーカの場合にも、ヒト知覚可能な歪みが存在する。
【0019】
同心ドライバの場合、低周波ドライバおよび高周波ドライバは、互いに同軸に座しているにもかかわらず、互いに独立して作用する。したがって、低周波ドライバがその低周波波形を生成しているとき、高周波ドライバが低周波ドライバとともに前後に動くことはない。しかし、低周波ドライバは高周波ドライバを取り囲んでいるため、高周波ドライバの波形は、低周波ドライバのコーンから反射する。この反射だけで歪みを引き起こすことがあるが、周波数が反射している表面自体が動いているとき、歪みは悪化する。オフセットスピーカの場合も同様の結果になり得る。その場合、ドライバは互いに同軸ではないが、高周波波形の一部が可動低周波ドライバから反射することが依然として予想され得、したがって歪みが生じる。
【0020】
本明細書は、主に、別個の高周波ドライバ(「ツィータ」)が低周波ドライバ(「ウーハ」)の可動表面から反射し得る波形を生成する、同軸スピーカまたはオフセットスピーカにおけるドップラー歪みを補償するための方法および制御回路に注目する。これは、2つの信号セット間の分割点を特定するクロスオーバーネットワークの使用を含むことができる。本明細書の教示は、2つの独立したドライバ、具体的には中~低周波ウーハと高周波ツィータとが使用される実施例を説明する。クロスオーバー点は、一般に、そのようなシステムにおいて、周波数10~10Hzの、典型的には1~3kHzの範囲内のどこかに特定される。通常、このクロスオーバー周波数範囲で各ドライバの応答に比較的激しい減少があり、入力オーディオ信号はこのクロスオーバー周波数で分割される。クロスオーバー周波数よりも低いトーンはウーハに送り出され、クロスオーバー周波数よりも高いトーンはツィータに送り出される。より多くの音域のためにより多くのドライバを含むより複雑なシステムでは、複数のクロスオーバー周波数を特定し、入力オーディオ信号をさらに細分化し得ることに留意されたい。低周波信号は、少なくともドップラー歪みに関しては、いかなる変更または調節もなく、ウーハに直接提供され得る。例えば、能動的ノイズ相殺など、他の信号調節を適用してもよい。高周波成分は、ツィータに直接供給されるのではなく、まず低周波成分からの情報を使用して、ドップラー効果のために高周波信号が被るであろう歪みを予測する。次いで、高周波信号を調節して、このドップラーの歪みを補償してから、ツィータに送り出す。例えば、ウーハの動きが高周波波形の知覚周波数を500Hzだけずらすことが予想される場合、ツィータに送り出される周波数は、500Hzだけ低減されて、予想される変化を補償し得る。場合によっては、ドライバの音響中心のずれまたはウーハからの反射によって引き起こされ得る加速を補償するために、高周波オーディオ信号にタイムシフトを適用し得る。
【0021】
本明細書に記載の同軸スピーカまたはオフセットスピーカの場合、高周波高音波形は、それらの低周波ドライバからの反射によって変調される。本明細書に記載されるように、この変調を補償する1つの方法は、既存のクロスオーバー回路のソフトウェアモデルを使用して、低音コーンから反射する高周波を特定することである。これはまた、ラウドスピーカの物理的モデル自体を使用することも含み得る。例えば、物理的モデルは、ラウドスピーカシステムにおけるさまざまなドライバのサイズおよび位置を考慮し得る。別個のウーハ、ツィータ、およびおそらく中音域スピーカを備える既存のラウドスピーカシステムでは、オーディオ信号をそれぞれ2つまたは3つのコンポーネントに分離するための2ウェイまたは3ウェイクロスオーバー回路であり得るクロスオーバー回路が既に存在し得ることに留意されたい。このクロスオーバーのソフトウェアモデルを使用して、既知のスピーカシステムにおいて周波数がどのように相互作用するかをモデル化することができる。具体的には、高周波信号およびその予想されるウーハとの相互作用に関する情報を高周波ドライバに提供することができる。反射された高周波を相殺または緩和するよう意図された効果を有する、事前歪みを高周波ドライバへの信号に挿入し得る。
【0022】
ここで、添付の図をより具体的に参照して、同軸スピーカおよびオフセットスピーカにおけるドップラー補償を提供するためのシステムおよび方法を説明する。全図面を通して、特定の参照番号は、特定のデバイスまたはブロックが全図面にわたって全体的にまたは実質的に一貫していることを示すべく繰り返される場合があることに留意されるべきである。しかしながら、これは、開示されるさまざまな実施形態間の任意の特定の関係を暗示することを意図するものではない。特定の実施例では、要素のある属性が、特定の参照番号(「ウィジェット10」)によって参照されることがあり、一方で、属性の個々の種または例は、ハイフンで結ばれた数字(「第1の特定のウィジェット10-1」および「第2の特定のウィジェット10-2」)によって参照されることがある。
【0023】
図1Aは、同軸または同心ドライバで構成され得るラウドスピーカ100の斜視外観図である。ラウドスピーカ100は、同軸もしくは同心ドライバまたは場合によっては単一ドライバを含み得る、あるクラスのラウドスピーカを表す。本明細書で提供される実施例の目的のために、ラウドスピーカ100は、別個の同軸ウーハおよびツィータを含む実施形態を表す。
【0024】
この実施例では、ラウドスピーカ100は、キャビネット104内に包含されている。キャビネット104は、プラスチック、木材、金属、または他の剛性材料などの任意の好適な剛性材料で構築され得る。キャビネット104は、ラウドスピーカ100のための物理的構造を提供し、また、ドライバの背後に音響容積を提供する。キャビネット104の一面内には、サラウンド110を含むドライバが含まれ、サラウンド110はドライバを取り囲んでいる。
【0025】
ツィータホーン108、およびウーハダイヤフラム116が図示されている。同軸または同心スピーカの場合、図2Aにより明確に示されるように、複数のダイヤフラムが互いの内部にネストされ得る。埃またはその他の汚染物がシステムに侵入するのを防ぐために、ダストキャップが音声コイルおよびモータを覆い得る。
【0026】
ラウドスピーカ100は、低音反射ポート112を伴って図示されている。この低音反射構成は、より豊かで深みのある低音を実感できるので、当代のラウドスピーカ設計において人気がある。低音反射ポート112は、ラウドスピーカ100の低周波ドライバのためのヘルムホルツ共鳴を提供する。ヘルムホルツ共鳴器は、空気質量を使用して、より素晴らしい低周波数の音響出力を提供する。
【0027】
キャビネット104内の領域は、低音反射ポート112によって通気される音響容積を提供する。低音反射ポート112は、典型的には円形または矩形の断面を有し得るパイプまたはダクトに接続し得る。空気の質量およびその慣性の「ばね性」は、機械的共鳴を形成し、したがって、選択された低音周波数においてヘルムホルツ共鳴を提供する。これは、ドライバの低音応答を増大させ、ドライバ/筐体結合体の周波数応答を、ドライバが密閉ボックス内で再生することができる範囲よりも小さい周波数にまで拡張し得る。
【0028】
図1Bは、オフセットドライバとともに使用するように構成され得るラウドスピーカ101の外部斜視図である。ラウドスピーカ101は、図1Aのラウドスピーカ100と同様である。例えば、ラウドスピーカ101は、キャビネット118と、低音反射ポート128-1および128-2とをそれぞれ含む。この実施形態はまた、ウーハ124と同軸または同心ではないオフセットホーン搭載ツィータ120も含む。
【0029】
上記で説明したように、これらの構成のうちのいずれも、変調、特に、可動ウーハから反射されるので、ツィータからの高周波波形の変調をもたらし得る。反射自体が変調や歪みを引き起こすだけでなく、ウーハはツィータと比較して非常に大きな偏移を被るため、ウーハの可動面は、反射された高音波形の加速を引き起こす。これは、図1Aのラウドスピーカ100または図1Bのラウドスピーカ101を聴くヒトユーザの側では、実質的な歪みとして体験され得る。高音波形のこの歪みは、高音が偏って聞こえる、かつ/または中周波数および低音波形と同調していない、やや不快な聴取経験をもたらす可能性がある。したがって、上記で説明したように、オーディオ波形に及ぼす歪みの影響を制限する助けとなり得る何らかの事前変調を提供することが望ましい。
【0030】
図2Aおよび図2Bは、同軸スピーカ設計の2つの実施形態を示し、図2Cは非同心ウーハを示す。
【0031】
図2Aは、同軸スピーカシステム200、具体的には同心圧縮ツィータを伴うウーハの斜視図である。同軸スピーカシステム200は、独立した同軸の高周波ドライバおよび低周波ドライバを含む。
【0032】
同軸スピーカシステム200は、中~低周波ドライバ(ウーハ)を含み、ウーハ内に高周波ドライバ(圧縮ツィータ204)がネストされている。2つのドライバは互いに独立して動作し、別々の低音周波数範囲および高音周波数範囲を提供する。同心構成は、自由空間における点源の音響的理想により近いものを提供する助けとなる。
【0033】
この構成では、圧縮ツィータ204は、音声コイル212によって駆動される磁石220を含む。音声コイル212は、磁石220内に磁場を誘導し、それが圧縮ツィータ204を駆動し、圧縮ツィータ204は、ツィータの分散を増大させるためにツィータホーン236によって蓋されている。
【0034】
スピーカシステム200の残りの部分は、中~低周波のためのウーハを提供する。スピーカシステム200はまた、バックプレート216、天板224、バスケット228、スパイダ240、コーン232、サラウンド244、およびガスケット248などの慣用要素も含む。
【0035】
同心ドライバ200などの音源は、4πステラジアンで全方向に圧力波を放射する。圧力波は、音響媒体の圧縮および希薄として放射される。この現象は、空気、水、他の液体、および他の媒体中の音波を含む、任意の音響媒体において起こる。
【0036】
ほとんどの音源は、周波数の関数としての複雑な三次元放射パターンを有する。音源の領域内の物体や表面も、音波を乱したり歪ませたりする反射や屈折を生み出す。具体的には、空気中のラウドスピーカの場合、その動きは主にピストンの動きである。しかし、ピストンに対して波長が非常に大きかったり、または非常に小さかったりするので、ピストンの動きは放射パターンに影響する。
【0037】
コーンまたはダイヤフラムが前方に動くとき、ダイヤフラムはコーンの前方の圧力を増加させ(圧縮)、コーンの背後の圧力を減少させる(希薄)。コーンの大きさに対して波長がより大きい周波数で動作するドライバについては、ある距離で測定すると、正圧および負圧が相殺する。したがって、ラウドスピーカは、通常、放射面の前方および後方を隔離する筐体内に配置される。ドライバと同一平面をなすこの表面は「バッフル」と称される。有限バッフルの縁部からの屈折により、放射パターンが変わる。
【0038】
例えば、図1Aのラウドスピーカ100および図1Bのラウドスピーカ101の前面は、それぞれのラウドスピーカのためのバッフルを形成する。
【0039】
自由大気中とは異なり、理論的無限バッフル内のラウドスピーカドライバは半空間(2πステラジアン)に放射する。そうでなければドライバが後方(例えば、その可動ピストンの背後)に発射するであろうすべての放射は、バッフルの平面を通って前方に反射される。ウーハは、そのピストンよりも実質的に大きい波長を放射する。したがって、放射表面の大きさ程度の波長に対応する周波数以下の実質的な反射放射が存在する。ウーハでは、例えば、室温の空気中の50Hzトーンの波長は約20フィートであり、これは、ほとんどのウーハの直径よりも一桁大きい。対照的に、ツィータは、典型的には、波長が約6インチの約2kHzから、波長が約0.75インチの20kHzまでの範囲の音を再生する。したがって、ツィータによって生成される波長は、ウーハと同様の大きさである。
【0040】
ウーハ内に取り付けられた同軸ツィータの場合と同様に、ラウドスピーカドライバが可動バッフル内に取り付けられていると、バッフルから反射されるドライバの放射は、ドップラー効果の対象となる。バッフルが周波数fで正弦波運動しており、バッフル内に取り付けられたドライバが周波数fで正弦波運動している場合、結果として生じる圧力波は、f±n×fの変調トーンを有し、ここで、nは正の整数1、2、3などである。
【0041】
別個のウーハおよびツィータを有するいかなるラウドスピーカも、この効果をある程度示す。ツィータがウーハに隣接して取り付けられているとき、ウーハは、ツィータが取り付けられたバッフルの一部に相当し、予測可能かつ測定可能な量の相互変調を生み出す。しかし、通常の状況では、バッフルの遠い部分しか動いていないので、この効果は小さい。したがって、他の歪みメカニズムと比較しても、効果は小さい。しかしながら、ツィータがウーハに近づけて取り付けられている場合、特にツィータがウーハと同軸に取り付けられている場合、効果はより顕著になる。
【0042】
同軸に取り付けられたツィータの極端な場合、歪みは重度であり得る。同軸または同心ドライバ構成では、ツィータ出力は、より大きなウーハまたは中音域ドライバの中心から、多数の構成のうちの1つによって、発せられ、したがって、より低い周波数ドライバの可動ピストンは、より高い周波数ドライバのバッフルとして機能する。
【0043】
既知の歪みアーチファクトにもかかわらず、同心または同軸ドライバは一般的に使用されている。重要な属性は、2つのドライバがタイムアライメントされていると仮定すると、ドライバの音響中心が同じであることである。自然の音源は、空間内の単一点からあらゆる周波数を放射するため、この構成は、現実世界の音の再生をより良く近似する。現在のラウドスピーカドライバはこれらのドップラー偏移および他の歪みを克服することにおいて欠点を有するため、別個のウーハ、中音域、およびツィータなどの異なる周波数に対して別個のラウドスピーカドライバを有することが時には必要である。
【0044】
理想的なのは、単一のラウドスピーカドライバが、可聴スペクトル全体にわたって周波数を再生できることである。これは現在のスピーカ技術では実用的ではないため、同軸ドライバを、異なる範囲の周波数を生成することができるトランスデューサと融合し、空間内で同位置に配置し、クロスオーバー領域で生成される音波の建設的および破壊的な空間的干渉を排除する。これは非常に効果的で、優れたソニックイメージを生み出すことができる。しかし、同じ構成は、ウーハによるツィータのドップラー変調にとっては、最悪のシナリオである。
【0045】
既存のシステムでは、同軸ドライバを作製するために、低周波ドライバおよび高周波ドライバのさまざまな機械的構成が使用されてきた。ポールピースを介してホーンに、またはウーハコーン自体をホーンとして使用して放射する、ウーハの背後に取り付けられた圧縮ドライバを使用するものもある。その他の設計では、ウーハのポールピースに直接取り付けた小さなツィータが使用される。あらゆる場合で、ウーハは、事実上、ツィータに対してのバッフルであり、相互変調が生じる。低めのウーハ偏移では、ドップラー歪みは、ラウドスピーカに「濁った」音を与え得る。大きなウーハ偏移では、効果がはっきりと聞こえて不協和音になることがある。
【0046】
二次的要因は、ツィータがウーハのスロートに配置されたとき、コーンがツィータのためのホーンとして機能することである。通常、クロスオーバーでは、ウーハとツィータとが一緒に動き、それらの圧力出力は加算的になる。しかし、ツィータからそのホーンへの移行はツィータの動きとともに変化するため、追加の振幅変調(AM)効果が起こり得る。要約すると、ウーハの大きな動きがツィータに対する可動バッフル効果を生み出し、ドップラー変調をもたらす。これは、ウーハが比較的低い周波数を生成していて高度な偏移を有し、ツィータが、ウーハからの寄与がほとんどないクロスオーバーを超える周波数を生成しているときに最も良く聴こえる。また、ウーハの動きは、いくつかの構成では、AM歪みを生み出すホーン移行を変調することができる。これは、高度なウーハ偏移で最も顕著である。
【0047】
ほとんどのラウドスピーカは、ウーハの位置を追跡するための手段を含まない。しかしながら、コーン位置のモデル化および予測、またはウーハコーン位置の直接もしくは間接的な測定のいずれかによって行うことが可能である。ウーハコーンの位置が分かれば、信号処理を使用して、ツィータに及ぼすウーハの変調効果を反転させることが可能である。
【0048】
本明細書は、低周波ドライバの放射面の動きを追跡または予測し、その相互変調効果を相殺するメカニズムを提供する。信号処理は、動き情報を用いて実行することもでき、入力としてツィータに送信されるであろう信号を修正することができる。ドライバの一方または両方に対して修正信号を生成して、ドップラー効果および/または他の変調を補償することができる。
【0049】
さまざまな実施形態では、ウーハの動きは、物理的センサで感知されるか、またはモデル化および電気的フィードバックを使用して予測され得る。高周波ドライバは、低周波ドライバの前方に、ドライバのスロートに、ドライバの背後に、またはドライバに隣接して(すなわち、オフセットしてまたは非同軸に)取り付けられ得る。本明細書の教示は、これらの構成のすべてに適用され、いずれの場合も、変調歪みを低減することができる。
【0050】
本明細書の教示を実行するために使用される信号処理は、アナログ、デジタル、またはこれら2つの何らかの組み合わせであり得る。
【0051】
図2Bは、同心スピーカシステム201、具体的には同心の慣用ツィータを伴うウーハのブロック図である。このスピーカは、図2Cのスピーカシステム202と同様に機能する。磁石222は、音声コイル214によって駆動される。音声コイル214は、電気信号を受け取り、磁石222内に磁場を誘導する。これが、オーディオ音を再生するためのピストンとして機能するコーン234を駆動する。高周波オーディオ信号を再生するためのツィータモーター206も存在する。他の慣用要素は、ポールピース210、天板226、バスケット230、スパイダ238、サラウンド242、およびガスケット246を含む。
【0052】
図2Cは、ウーハおよびツィータが互いにオフセットしている構成で使用され得る、単独のウーハ202を示すブロック図である。図2Cの例では、別個のウーハおよびツィータは示されていないことに留意されたい。むしろ、ウーハ202の構成は、さまざまな要素のサイズまたは特性などの周知のパラメータを変えることによって、ウーハ、ツィータ、中音域、または他のドライバに好適に適合させ得る。
【0053】
この場合、ウーハ202は、音声コイル250によって駆動される磁石262を含む。音声コイル250は、電気入力信号を受け取り、磁石262内に磁場を誘導する。これは、オーディオ音を再生するためのピストンとして機能するコーン274を駆動する。他の慣用要素は、ポールピース254、バックプレート258、天板266、バスケット270、スパイダ278、サラウンド282、およびガスケット286を含む。
【0054】
別個のウーハおよびツィータが図2Aの同心ドライバ200におけるような同軸に取り付けられてはいない構成では、さまざまな周波数範囲に適合された複数のドライバがスピーカシステム全体に配置され得る。そのような構成は、図1Bのスピーカ101に例示してある。
【0055】
図3は、スピーカシステムの電気モデルの回路図300を含む。現在最も広く使用されているタイプのラウドスピーカの1つは、ダイナミックスピーカである。オーディオスピーカからの入力が一形態の交流電流として音声コイルに印加されると、音声コイルおよび音声コイルを取り囲む永久磁石によって形成される定常磁場は、電磁力によって動かされる。音声コイルに取り付けられたダイヤフラムが空気を押して音波を作り出す。このタイプのスピーカは、回路図300に示す二次集中素子1自由度(SDOF)システムで合理的にモデル化することができる。
【0056】
このモデルでは、印加電圧と結果として生じる電流との関係を、以下のように閉じた形で表現することができる。
【0057】
【数1】
【0058】
単純化のために、この方程式はウーハ単独のためのものであり、密閉筐体のための追加項を含まないことに留意されたい。密閉筐体は、密閉筐体の特定の設計に従ってモデル化される必要があり得る追加項を導入し得る。
【0059】
ラウドスピーカは、当然ながら筐体内に収容され、上記モデルは、この密閉筐体に対して有効である。低音反射ポートなどのポートまたは通気口を有する筐体は、ラウドスピーカの挙動をエミュレートするためのモデルにおいて追加要素を必要とし得る。そのようなモデルは周知であり、本開示の目的のため、および本明細書に開示されるモデルの単純化のために、低音反射ポートに対する項は本モデルには含まれない。
【0060】
ラウドスピーカの非線形性は、通常、ダイヤフラムの位置に応じて、さまざまなBl、Kms、およびLeによってモデル化される。これらは、以下のように、偏移の多項式としてモデル化することができる。
【0061】
【数2】
【0062】
T線形化の原理は、システムの非線形素子を決定し、補償アルゴリズムをオーディオ信号に適用し、信号を事前に歪め、ラウドスピーカの非線形性を線形化することである。
【0063】
図4は、線形化サブシステム400の1つの考えられる実施のブロック図である。この場合、非線形補償回路420は、オーディオ入力を受け取り、オーディオを駆動し、オーディオ入力信号に対して線形化補償を行う。補償されたオーディオ信号は、オーディオパワーアンプ424に送り出され、オーディオパワーアンプ424は、ドライバ404に線形化出力を提供する。
【0064】
線形化を提供するために、ラウドスピーカモデル412が、パラメータ適応408に基づいて、非線形度および補償線形化因子を計算するために使用される。上記で説明したように、これらは以下のモデルによって表され得る。
【0065】
【数3】
【0066】
システムの離散時間モデルが、双線形変換を使用する連続時間モデルから導出され得る。例えば、二次無限インパルス応答(IIR)システムが、システムの線形挙動をモデル化するために使用され得、連続リアルタイム適応が、経時変化およびデバイス変化を追跡するために実施され得る。状態空間モデルが、1組の一次微分方程式を用いてシステムを記述するために使用され得るし、連続時間モデルからスピーカを離散時間モデル化するための手段を提供し得る。状態空間モデルの1つの利点は、主要スピーカパラメータの非線形挙動を適用することができることである。線形離散時間モデルを使用して、線形パラメータを適応し、状態空間非線形モデルを使用して、非線形挙動を予測および補償してもよい。
【0067】
これらの非線形係数は、例えばレーザを用いて偏移を測定するための実験施設において特徴付けられ得る。それらは、適応フィルタによって更新される必要はない。しかしながら、フィードバック電圧および電流に基づいて、非線形パラメータを現場で更新する可能性がある。
【0068】
図5は、音響波形の変調の例示である。この図は、ドップラー歪みの概念を示す。高周波トーンが、ツィータと同軸であるウーハからなどの可動バッフルから反射されると、ドップラー歪みが起こり得る。例えば、2kHzトーンが、80Hzトーンを生成している振動バッフルから反射し得る。低周波トーンは、低周波ドライバにおいてかなりの偏移をもたらす一方、高周波ドライバの偏移は比較的無視し得る。
【0069】
この図では、スピーカ504は、80Hzで振動するバッフルから反射する2kHzトーンを生成する。これが、波形508をもたらし、変調が2kHz信号に導入されたことが分かる。
【0070】
バッフルの動きは、ヒトユーザによって知覚されるような、2kHzトーンの見かけの点源を前後に周期的に動かす周期的なタイムシフトを引き起こす。
【0071】
80Hzバッフルによって変調されたときの2kHz信号の音は、以下によって表され得る:
【0072】
【数4】
【0073】
Aexcrusionは80Hzバッフルのピーク偏移であり、Vsoundは音速(室温空気中で約340メートル/秒)である。
【0074】
この例のスピーカでは、-60デシベル(dB)オーディオ信号におけるピーク偏移は2.73mmであり、これは8マイクロ秒(μs)の時間遅延と解釈される。
【0075】
デジタル信号プロセッサ(DSP)におけるクロスオーバーフィルタで高周波信号および低周波信号を単離し、高周波トーンに対するタイムシフトを補償することによって、ドップラー歪みを補償することができる。これは、高周波トーンを変化させることによって行うことができ、それは、実質的にすべてのトーンが振動バッフルによって変調され得る同心ドライバの場合に特に有用である。オフセットスピーカの場合、ウーハから反射された波形が相殺されたとしても、ツィータによって生成された波形のかなりの割合が依然としてユーザに到達するため、反射波形を相殺することがより好適であり得る。
【0076】
図6は、制御回路600のブロック図である。制御回路600は、クロスオーバーネットワーク604を含む。クロスオーバーネットワークは、別個のウーハ、ツィータ、または他の限定スペクトラムドライバを駆動するスピーカシステムに一般的に必要とされるため、クロスオーバーネットワーク604はシステム内に既に存在し得る。クロスオーバーネットワーク604は、能動的クロスオーバーネットワークまたは受動的クロスオーバーネットワークのいずれかであり得、2ウェイ、3ウェイ、または他のクロスオーバーネットワークを含み得る。一般に、クロスオーバーネットワーク604は、nウェイクロスオーバーネットワークであり得、能動的または受動的のいずれかで実施され得る。さらに、クロスオーバーネットワーク604は、ソフトウェアおよび/またはハードウェアを含み得る。この実施形態では、オーディオ信号が単一パワーアンプによって増幅されてから、受動的クロスオーバーネットワークがオーディオ信号を分割する。能動的スピーカシステムでは、クロスオーバーがアンプの前に置かれ、各ドライバに1台のアンプが必要とされる。
【0077】
次いで、増幅された信号は、各々が異なる周波数範囲を表す2つ以上のドライバタイプに送信される。能動的クロスオーバーネットワークでは、フィルタ内に能動的コンポーネントが存在する。能動的クロスオーバーネットワークは、操作可能アンプなどの能動的デバイスを採用し得、パワーアンプ入力に適したレベルで動作し得る。
【0078】
クロスオーバーネットワーク604は、高周波信号および低周波信号を提供する。低周波信号は、低周波ドライバ616に直接送り出され得る。高周波信号は、調整可能遅延ブロック612に提供される。偏移推定部608は、低周波信号情報を受け取り、高周波信号に対して可動バッフルを提供する低周波ドライバの偏移を推定する。調整可能遅延ブロック612は、低周波バッフルの動きを補償するための高周波信号の調整可能遅延を推定する。この信号は、次いで、高周波ドライバ614に送り出される。HFドライバ614およびLFドライバ616からの音が空中で混合され、聴取者に単一のオーディオ信号として提示される。
【0079】
この例では、高周波信号を調整して、高周波出力に対するバッフルとして作用する低周波ドライバの動きを補償する一実施形態が例示されたことに留意されたい。これは、すべての事例で可能であるのではない。他の場合では、調整可能遅延612は、低周波ドライバ616に挿入され得る。これは、LFドライバ616から反射する音声の歪んだ音を相殺するためである。このような構成は、スピーカが同心ではなく、反射の歪んだ音声を完全に相殺することが望ましい場合に、特に好適であり得る。同心または同軸ドライバの場合、反射された信号全体を相殺するのは適切ではない場合があり、代わりに、反射された信号が歪みのないオーディオ信号としてエンドユーザに提示されるように補償係数を構築することが望ましい場合がある。これは、調整可能遅延をHFドライバ614に挿入することによって達成され得る。
【0080】
図7は、先端的オーディオプロセッサ700のブロック図である。先端的オーディオプロセッサ700は、スピーカシステム、または任意の他の好適な回路もしくは構造の一実施形態であり得る。
【0081】
先端的オーディオプロセッサ700は、実際のオーディオ波形を聴取のためにユーザに送り出すドライバ730を含む。ドライバ730は、ここでは先端的オーディオプロセッサ700のドライバとして図示されているが、任意の好適な正弦波形ドライバであり得ることに留意されたい。これは、オーディオドライバ、メカニカルドライバ、または電気信号ドライバであり得る。同様に、先端的オーディオプロセッサ700は、本明細書の教示の例示的な用途として提供されるが、非限定的な例として理解されるべきである。他の用途には、説明的な例として、ホームエンターテイメントセンタースピーカ、ポータブルスピーカ、コンサートスピーカ、携帯電話、スマートフォン、ポータブルMP3プレーヤー、任意の他のポータブル音楽プレーヤー、タブレット、ラップトップ、またはポータブルビデオデバイスが含まれる。非エンターテイメント用途には、医療分野で使用されるデバイス、通信に使用されるデバイス、製造関係で使用されるデバイス、パイロットヘッドセット、アマチュア無線、任意の他の種類の無線、スタジオモニタ、音楽もしきはビデオ製作装置、ディクタフォン、またはオーディオ信号の電子伝達を容易にするための任意の他のデバイスが含まれ得る。
【0082】
図7の説明の残りの部分では、本明細書の教示は、先端的オーディオプロセッサ700内において具現化されると仮定する。
【0083】
先端的オーディオプロセッサ700は、直接アナログオーディオ入力を受信するために使用されるオーディオジャック708を含む。アナログオーディオ入力が受信された場合、アナログデータは信号プロセッサ720に直接提供され、音声に信号処理が行われる。これは、信号をデジタルフォーマットに変換することと、信号を符号化、復号化、または別様に処理することと、を含み得ることに留意されたい。場合によっては、デジタルドメインではなくアナログドメインで信号処理が行われることに留意されたい。
【0084】
場合によっては、先端的オーディオプロセッサ700はまた、デジタルデータインターフェース712も含む。デジタルデータインターフェース712は、例えば、USB、イーサネット、Bluetooth、または他の有線もしくは無線デジタルデータインターフェースであり得る。先端的オーディオプロセッサ700においてデジタルオーディオデータが受信されると、データは、アナログドメインにおいて直接処理することはできない。したがって、その場合、データは、オーディオコーデック716に提供され得、オーディオコーデック716は、オーディオ信号の符号化および復号化を提供することができ、場合によっては、アナログドメインオーディオデータを、信号プロセッサ720においてデジタルドメインで処理することができるデジタルドメインオーディオデータに変換する。
【0085】
図8は、オーディオプロセッサ800の選択された要素を示すブロック図である。オーディオプロセッサ800は、本明細書に記載の同軸スピーカおよびオフセットスピーカを含む、本明細書の教示から利益を引き出すことができる回路または用途の一実施例である。
【0086】
ここには、オーディオプロセッサ800の選択された要素のみが示されている。これは、図面を簡単にするためであり、特定のコンポーネントに対する用途を例示するためである。この図における特定のコンポーネントの使用は、これらのコンポーネントが必要であることを暗示するものではなく、特定のコンポーネントの省略は、これらのコンポーネントを省略しなければならないことを暗示するものではない。さらに、ここに示されるブロックは、特性において一般的機能性のものであり、どの場合においても個別のまたは明確に定義された回路を表すものではない場合がある。多くの電子システムにおいて、さまざまなコンポーネントおよびシステムが互いにフィードバックおよび信号を提供し、したがって、どこで1つのシステムまたはサブシステムが終了し、別のものが開始されるかを正確に決めることは必ずしも可能でない。
【0087】
説明的な例として、オーディオプロセッサ800は、マイクロフォン入力のためのDCバイアスを生成するマイクロフォンバイアス生成部808を含む。これは、ヘッドセットなどのマイクロフォンおよびスピーカの両方を有する実施形態のためのものであり、マイクロフォンバイアス生成部808は、マイクロフォンが正しい電圧で動作することを保証する助けとなる。
【0088】
電力マネージャ812は、電力調節、DC出力電圧などの定常電圧供給、および他のシステムコンポーネントへの電力分配を提供する。
【0089】
低ドロップアウト(LDO)電圧調整部816は、適切な電圧が他のシステムコンポーネントに提供されることを保証する助けとなる電圧調整部である。
【0090】
位相ロックループ(PLL)840およびクロック発振部844は、一緒になって、回路内の動作のためのローカルクロック信号であるmclkを提供し得る。なお、PLL840はフィルタなしのデジタルPLLとすることができるが、より伝統的な設計の単純なアナログPLLであってもよい。
【0091】
アナログ-デジタル変換(ADC)入力変調部824は、アナログ音源から信号を受け取り、デジタルマイクロフォン入力804からの信号と多重化された出力信号を生成する。
【0092】
I/O信号ルーティング836は、オーディオプロセッサ800のさまざまなコンポーネント間の信号のルーティングを提供する。I/O信号ルーティング836は、デジタルオーディオ出力信号をデジタル-アナログ変換部(DAC)864に提供し、デジタル-アナログ変換部864は、デジタル音声をアナログ音声に変換し、次いでアナログ音声を出力アンプ870に送り出し、出力アンプ870は、オーディオ波形をドライバに送り出す。
【0093】
DSPコア848は、入出力信号を受け取り、オーディオ処理を提供する。DSPコア848は、例示的かつ非限定的な例として、双二次フィルタ、リミッタ、音量制御、およびオーディオミキシングを含むことができる。オーディオ処理は、符号化、復号化、能動的ノイズ相殺、オーディオ増強、および他のオーディオ処理技術を含むことができる。制御インターフェース852が内部機能の制御のために提供されるが、場合によっては、ユーザが選択可能である。制御インターフェース852はまた、セルフブート機能も提供し得る。
【0094】
オーディオプロセッサ800はまた、非同期サンプルレート変換部(ASRC)860-1および860-2も含み、これらは、いくつかの実施例では、双方向ASRCであり得る。双方向ASRCは、入力ASRCおよび出力ASRCの両方を含み、ASRCの異なる実施形態を含み得る。ASRC860-1および860-2は、いくつかの実施例では、1つ以上のフィルタなしデジタルPLLを含み得る。ASRC860-1および860-2はまた、ASRC860-1および860-2が外部システムと通信することを可能にするシリアルI/Oポート856-1および856-2をそれぞれ含む。
【0095】
図を参照して上述したアクティビティは、オーディオ信号処理に関与し、他の種類の信号処理(例えば、ジェスチャ信号処理、ビデオ信号処理、オーディオ信号処理、アナログ-デジタル変換、デジタル-アナログ変換)を行う回路、特に専門的なソフトウェアプログラムまたはアルゴリズムを実行することができ、そのうちのいくつかはデジタル化されたリアルタイムデータの処理と関連付けられ得る回路と組み合わせられ得る、任意の集積回路に適用可能であることに留意されたい。特定の実施形態は、マルチDSP、マルチASIC、またはマルチSoC信号処理、浮動小数点処理、信号/制御処理、固定機能処理、マイクロコントローラアプリケーションなどに関することができる。特定の文脈において、本明細書で説明された特徴は、オーディオヘッドセット、ノイズキャンセリングヘッドホン、イヤホン、スタジオモニタ、コンピュータオーディオシステム、ホームシアターオーディオ、コンサートスピーカ、ならびに他のオーディオシステムおよびサブシステムに適用され得る。本明細書の教示はまた、医療システム、科学的計器、無線および有線通信、レーダー、産業プロセス制御、オーディオおよびビデオ機器、電流感知、(高度に正確であり得る)計器、および他のデジタル処理ベースのシステムなど、他のシステムまたはサブシステムと組み合わされ得る。
【0096】
さらに、上述の特定の実施形態は、オーディオまたはビデオ機器、医療イメージング、患者モニタリング、医療器具、および在宅医療のためのデジタル信号処理技術においてプロビジョニングされ得る。これは、例えば、肺モニタ、加速度計、心拍数モニタ、またはペースメーカ、ならびにそのための周辺機器を含み得る。他の用途には、安全システム(例えば、安定制御システム、ドライバアシストシステム、ブレーキシステム、インフォテインメント、および任意の種類の内部アプリケーション)のための自力推進技術を含まれ得る。さらに、(例えば、ハイブリッドおよび電気自動車における)パワートレインシステムでは、バッテリモニタリング、制御システム、レポート制御、保守活動などにおいて、高精度なデータ変換、レンダリング、および表示成果を使用することができる。さらに他の例示的なシナリオでは、本開示の教示は、生産性、エネルギー効率、および信頼性を操作する助けとなるプロセス制御システムを含む産業市場において適用可能である。消費者向け用途においては、上述の信号処理回路の教示は、画像処理、オートフォーカス、および画像安定化(例えば、デジタルスチルカメラ、カムコーダなど)のために使用することができる。その他の消費者向け用途には、ホームシアターシステム、DVDレコーダー、および高解像度テレビ用のオーディオおよびビデオプロセッサが含まれ得る。さらに他の消費者向け用途には、高度なタッチスクリーンコントローラ(例えば、任意のタイプのポータブルメディアデバイス)が含まれ得る。したがって、そのような技術は、スマートフォン、タブレット、セキュリティシステム、PC、ゲーム技術、仮想現実、シミュレーショントレーニングなどの一部に容易になり得る。
【0097】
実施例
以下の実施例を、例示として提供する。
【0098】
一実施例では、第1の周波数帯域を第2の周波数帯域から分離するためのオーディオクロスオーバーであって、第1の周波数帯域は第2の周波数帯域よりも低い周波数帯域を有するオーディオクロスオーバーと、第1の周波数帯域の情報から低周波数ドライバの予測偏移を推定するための偏移推定部と、推定偏移を補償するための第2の周波数帯域への調整を補間するための補間部と、調整された第2の周波数を受信部に送り出すための回路と、を含む、オーディオプロセッサが開示される。
【0099】
受信部は高周波ドライバである、例示的なオーディオプロセッサがさらに開示される。
【0100】
第1の周波数を低周波ドライバに送り出すための回路をさらに備える、例示的なオーディオプロセッサがさらに開示される。
【0101】
補間部は、高周波ドライバからのオーディオ波形の、低周波ドライバからの反射に対するドップラー補償を計算するためのロジックを含む、例示的なオーディオプロセッサがさらに開示される。
【0102】
補間部は、オーディオプロセッサを含むラウドスピーカシステムの数理モデルを含む、例示的なオーディオプロセッサがさらに開示される。
【0103】
ラウドスピーカシステムのモデルは、高周波ドライバが低周波ドライバと同心である同心スピーカシステムを含む、例示的なオーディオプロセッサがさらに開示される。
【0104】
補間部は、可動低周波ドライバから反射される高周波波形を相殺するためのオーディオ波形を計算する、例示的なオーディオプロセッサがさらに開示される。
【0105】
ラウドスピーカシステムのモデルは、高周波ドライバが低周波ドライバからオフセットされているオフセットスピーカシステムを含む、例示的なオーディオプロセッサがさらに開示される。
【0106】
補間部は、可動低周波ドライバから反射される高周波波形を相殺するためのオーディオ波形を計算する、例示的なオーディオプロセッサがさらに開示される。
【0107】
線形化サブシステムをさらに備える、例示的なオーディオプロセッサがさらに開示される。
【0108】
線形化サブシステムは、非線形補償部を有するフィードバックループ内にラウドスピーカモデルを含む、例示的なオーディオプロセッサがさらに開示される。
【0109】
第1の周波数を修正せずに低周波ドライバに送り出すための回路をさらに備える、例示的なオーディオプロセッサがさらに開示される。
【0110】
上記の実施例のうちのいくつかのオーディオプロセッサを含む、例示的な集積回路がさらに開示される。
【0111】
上記の実施例のうちのいくつかのオーディオプロセッサを含む、例示的なシステムオンチップがさらに開示される。
【0112】
上記の実施例のうちのいくつかのオーディオプロセッサを含む、離散電子回路の実施例がさらに開示される。
【0113】
また、ウーハと、ツィータと、オーディオ処理回路とを備え、オーディオ処理回路は、低周波帯域を高周波帯域から分離することと、低周波帯域に応答するウーハの予想偏移を低周波帯域から推定することと、ツィータからの高周波オーディオ信号の、推定偏移で動くウーハからの反射を補償するための高周波帯域への調整を計算することと、低周波帯域をウーハに送り出すことと、調整された高周波帯域をツィータに送り出すことと、を行うように構成されている、例示的なラウドスピーカシステムが開示される。
【0114】
オーディオ処理回路は、低周波帯域を調整せずにウーハに送り出すように構成されている、例示的なラウドスピーカシステムがさらに開示される。
【0115】
オーディオ処理回路はさらに、高周波ドライバからのオーディオ波形の、低周波ドライバからの反射に対するドップラー補償を計算するように構成されている、例示的なラウドスピーカシステムがさらに開示される。
【0116】
オーディオ処理回路は、ラウドスピーカシステムの数理モデルを提供する、例示的なラウドスピーカシステムがさらに開示される。
【0117】
ツィータがウーハと同心である、例示的なラウドスピーカシステムがさらに開示される。
【0118】
オーディオ処理回路は、可動ウーハから反射される高周波波形を相殺するためのオーディオ波形を計算するように構成されている、例示的なラウドスピーカシステムがさらに開示される。
【0119】
オーディオ処理回路は、可動ウーハから反射される高周波波形を相殺するためのオーディオ波形を計算するように構成されている、例示的なラウドスピーカシステムがさらに開示される。
【0120】
オーディオ処理回路は、線形化サブシステムを含む、例示的なラウドスピーカシステムがさらに開示される。
【0121】
線形化サブシステムは、非線形補償部を有するフィードバックループ内にラウドスピーカモデルを含む、例示的なラウドスピーカシステムがさらに開示される。
【0122】
ラウドスピーカシステムのためのオーディオ処理を実行する例示的な方法であって、第1の周波数帯域を第2の周波数帯域から分離することであって、第1の周波数帯域は第2の周波数帯域よりも低い周波数帯域を有する、分離することと、第1の周波数帯域から低周波ドライバの予測偏移を推定することと、予測偏移を補償するための第2の周波数帯域への調整を補間することと、調整された第1の周波数帯域を高周波ドライバに送り出すことと、を含む方法も開示される。
【0123】
第1の周波数を低周波ドライバに送り出すことをさらに含む、例示的な方法がさらに開示される。
【0124】
補間することは、高周波ドライバフからのオーディオ波形の、低周波ドライバからの反射に対するドップラー補償を計算することを含む、例示的な方法がさらに開示される。
【0125】
ラウドスピーカシステムの数理モデルを計算することをさらに含む、例示的な方法がさらに開示される。
【0126】
ラウドスピーカシステムのモデルは、ウーハと同心であるツィータを含む、例示的な方法がさらに開示される。
【0127】
補間することは、可動ウーハから反射される高周波波形を相殺するためのオーディオ波形を計算することを含む、例示的な方法がさらに開示される。
【0128】
ラウドスピーカシステムのモデルは、ウーハからオフセットされたツィータを含む、例示的な方法がさらに開示される。
【0129】
補間することは、可動ウーハから反射される高周波波形を相殺するためのオーディオ波形を計算することを含む、例示的な方法がさらに開示される。
【0130】
ラウドスピーカシステムの線形化を計算することをさらに含む、例示的な方法がさらに開示される。
【0131】
線形化を計算することは、非線形補償部を有するフィードバックループ内にラウドスピーカモデルを適用することを含む、例示的な方法がさらに開示される。
【0132】
上記は、当業者が本開示の態様をよりよく理解することができるように、いくつかの実施形態の特徴を概説するものである。当業者は、本明細書で紹介された実施形態と同じ目的を実行するためおよび/または同じ利点を達成するために他のプロセスおよび構造を設計または修正するための基礎として、本開示を容易に使用することができることを理解するであろう。当業者はまた、そのような等価な構築物は本開示の精神および範囲から逸脱しないこと、ならびに本開示の精神および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更、置換、および変更をそこに行い得ること、を認識するであろう。
【0133】
本開示の特定の実施形態は、システムオンチップ(SoC)中央処理ユニット(CPU)パッケージを容易に含み得る。SoCは、コンピュータまたは他の電子システムのコンポーネントを単一のチップ内に統合する集積回路(IC)を表す。それは、デジタル機能、アナログ機能、混合信号機能、無線周波機能を含み得、これらはすべて、単一のチップ基板上に提供され得る。他の実施形態は、複数のチップが単一の電子パッケージ内に配置され、電子パッケージ全体にわたって互いに密接に相互作用するように構成されたマルチチップモジュール(MCM)を含み得る。ASICまたはSoCの任意のモジュール、機能、またはブロック要素は、必要に応じて、再利用可能な「ブラックボックス」知的財産(IP)ブロック内に提供することができ、IPブロックのロジック詳細を開示することなく分配することができる。さまざまな他の実施形態では、デジタル信号処理機能は、アプリケーション特有集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、および他の半導体チップ内の1つ以上のシリコンコアにおいて実施され得る。
【0134】
場合によっては、本明細書の教示は、実行されると、プログラマブルデバイス(プロセッサまたはDSPなど)に本明細書に開示された方法または機能を実行するように指示する実行可能命令を格納した1つ以上の有形の非一時的なコンピュータ可読媒体に符号化され得る。本明細書の教示が少なくとも部分的にハードウェアデバイス(ASIC、IPブロック、またはSoCなど)において具現化される場合、非一時的媒体は、本明細書に開示された方法または機能を実行するためのロジックでハードウェアプログラムされたハードウェアデバイスを含み得る。教示はまた、開示されたハードウェア素子を生成するための製造プロセスをプログラムするために使用することができる、レジスタ転送レベル(RTL)、またはVHDLやVerilogなどの他のハードウェア記述言語の形態で実践することができる。
【0135】
例示的な実施では、本明細書で概説された処理アクティビティの少なくともいくつかの部分はまた、ソフトウェアにおいて実施され得る。いくつかの実施形態では、これらの特徴のうちの1つ以上は、開示された図の要素の外部に提供されるハードウェアにおいて実施されたり、または意図された機能を達成するための任意の適切な方法で統合され得る。さまざまなコンポーネントは、本明細書で概説されたような動作を達成するために、連係することができるソフトウェア(または相互連係ソフトウェア)を含み得る。さらに他の実施形態では、これらの要素は、それらの動作を容易にする任意の好適なアルゴリズム、ハードウェア、ソフトウェア、コンポーネント、モジュール、インターフェース、またはオブジェクトを含み得る。
【0136】
加えて、記載のマイクロプロセッサに関連付けられたコンポーネントのいくつかは、除外されてもよいし、または別様に統合されてもよい。一般的に、図に示された配置は、それらの表現においてより論理的であり得る一方で、物理的アーキテクチャは、これらの要素のさまざまな順列、組み合わせ、および/または混合を含み得る。本明細書に概説された動作目標を達成するために、無数の考えられる設計構成を使用することができることに注意する必要がある。したがって、関連するインフラストラクチャは、無数の代替配置、設計選択、デバイスの可能性、ハードウェア構成、ソフトウェア実装、機器オプションなどを有する。
【0137】
任意の適切に構成されたプロセッサコンポーネントは、本明細書に詳述された動作を達成するためのデータに関連付けられた任意のタイプの命令を実行することができる。本明細書に開示されたどのプロセッサも、要素または物品(例えば、データ)を1つの状態または物から別の状態または物に変換することができる。別の実施例では、本明細書で概説されたいくつかのアクティビティは、固定ロジックまたはプログラマブルロジック(例えば、プロセッサによって実行されるソフトウェアおよび/またはコンピュータ命令)で実施され得、本明細書で特定された要素は、あるタイプのプログラマブルプロセッサ、プログラマブルデジタルロジック(例えば、FPGA、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM)、デジタルロジック、ソフトウェア、コード、電子命令を含むASIC、フラッシュメモリ、光ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、磁気カードもしくは光学カード、電子命令を記憶するのに好適な他のタイプの機械可読媒体、またはこれらの任意の好適な組み合わせであり得る。動作中、プロセッサは、任意の好適なタイプの非一時的記憶媒体(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、FPGA、EPROM、電気的消去可能プログラマブルROM(EEPROM)など)、ソフトウェア、ハードウェアに、または必要に応じておよび特定のニーズに基づいて、他の任意の好適なコンポーネント、デバイス、要素、またはオブジェクトに、情報を記憶し得る。さらに、追跡、送信、受信、またはプロセッサに記憶される情報は、特定のニーズおよび実施に基づいて、任意のデータベース、レジスタ、テーブル、キャッシュ、キュー、制御リスト、または記憶装置構造で提供され得、これらのすべては、任意の好適な時間枠で参照され得る。本明細書で説明されたメモリ用品のいずれも、広義の「メモリ」に包含されるものとして解釈されるべきである。同様に、本明細書に記載された潜在的な処理要素、モジュール、および機械のいずれも、広義の「マイクロプロセッサ」または「プロセッサ」に包含されるものとして解釈されるべきである。さらに、さまざまな実施形態では、本明細書に記載のプロセッサ、メモリ、ネットワークカード、バス、記憶装置、関連周辺機器、および他のハードウェア素子は、それらのハードウェア素子の機能をエミュレートまたは仮想化するためのソフトウェアまたはファームウェアによって構成されるプロセッサ、メモリ、および他の関連デバイスによって実現され得る。
【0138】
本明細書に記載された機能の全部または一部を実施するコンピュータプログラムロジックは、これらに限定されないが、ソースコード形態、コンピュータ実行可能形態、ハードウェア記述形態、およびさまざまな中間形態(例えば、マスク作業、またはアセンブラ、コンパイラ、リンカー、またはロケータによって生成される形態)を含むさまざまな形態で具現化される。一実施例では、ソースコードは、さまざまなオペレーティングシステムまたは動作環境とともに使用するために、オブジェクトコード、アセンブリ言語、またはOpenCL、RTL、Verilog、VHDL、Fortran、C、C+++、JAVA(登録商標)、もしくはHTMLなどの高レベル言語など、さまざまなプログラミング言語で実施される一連のコンピュータプログラム命令を含む。ソースコードは、さまざまなデータ構造および通信メッセージを定義および使用し得る。ソースコードは、(例えば、インタプリタを介して)コンピュータ実行可能形態であり得、またはソースコードは、(例えば、トランスレータ、アセンブラ、またはコンパイラを介して)コンピュータ実行可能形態に変換され得る。
【0139】
上述の実施形態の説明において、コンデンサ、バッファ、グラフィック素子、相互接続基板、クロック、DDR、カメラセンサ、分割器、インダクタ、抵抗器、増幅器、スイッチ、デジタルコア、トランジスタ、および/または他のコンポーネントは、特定の回路ニーズに対応するために容易に交換、置換、または別様に変更され得る。さらに、補完的な電子デバイス、ハードウェア、非一時的なソフトウェアなどの使用は、本開示の教示を実施するために、同様に実現可能な選択肢を提供することに留意されたい。
【0140】
1つの例示的な実施形態では、図の任意の数の電気回路は、関連する電子デバイスの基板上に実装され得る。基板は、電子デバイスの内部電子システムのさまざまなコンポーネントを保持し、さらに、他の周辺機器のためのコネクタを提供することができる一般的な回路基板であり得る。より具体的には、基板は、システムの他のコンポーネントがそれによって電気的に通信することができる電気的接続を提供することができる。任意の好適なプロセッサ(デジタル信号プロセッサ、マイクロプロセッサ、支援チップセットなどを含む)、メモリ素子などは、特定の構成ニーズ、処理要件、コンピュータ設計などに基づいて、適切に基板に結合することができる。外部記憶装置、追加センサ、オーディオ/ビデオディスプレイ用コントローラ、および周辺機器などの他のコンポーネントは、プラグインカードとして、ケーブルを介して基板に取り付けられてもよいし、または基板自体に統合されてもよい。別の例示的な実施形態では、図の電気回路は、スタンドアロンモジュール(例えば、特定のアプリケーションまたは機能を実行するように構成された関連コンポーネントおよび回路を有するデバイス)として実装されてもよいし、または電子デバイスのアプリケーション特有ハードウェア内にプラグインモジュールとして実装されてもよい。
【0141】
本明細書で提供された多数の実施例では、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の電気部品に関して、相互作用が説明され得ることに留意されたい。しかしながら、これは、明確さおよび例のみを目的として行われたものである。システムは、任意の好適な方法で統合され得ることを理解されたい。同様の設計代替案に沿って、図面の図示されたコンポーネント、モジュール、および要素のいずれもが、さまざまな考えられる構成で組み合わされ得、それらのすべては明らかに、本明細書の広範な範囲内にある。特定の場合、限られた数の電気素子のみを参照することによって、所与のフローセットの機能のうちの1つ以上を説明することがより容易であり得る。図の電気回路およびその教示は、容易に拡張可能であり、より多くのコンポーネント、ならびにより複雑化/洗練された配置および構成に対処できることを理解されたい。したがって、提供された実施例は、潜在的に多くの他のアーキテクチャに適用されるので、電気回路の広範な教示を制限または阻害するべきではない。
【0142】
当業者には、多数の他の変更、置換、変形、変造、および改変が確認され得、本開示は、添付の特許請求の範囲内に含まれるようなすべてのそのような変更、置換、変形、変造、および改変を包含することが意図される。本明細書に添付される特許請求項を解釈するに当たり、米国特許商標庁(USPTO)および、加えて、本出願において発行されたいずれかの特許の読者も支援するために、出願人は、(a)「ための手段」または「ためのステップ」という語が特定の特許請求項で具体的に使用されていない限り、添付の特許請求項のいずれも、本明細書の出願日に存在する35U.S.C.§112(f)を行使することを意図しておらず、かつ(b)本明細書におけるいずれの記述によっても、添付の特許請求項に別様に反映されない方法で本開示を制限することを意図していない。
【符号の説明】
【0143】
100 ラウドスピーカ
104 キャビネット
108 ツィータホーン
110 サラウンド
112 低音反射ポート
116 ウーハダイヤフラム
118 キャビネット
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8