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特許6999751荷電粒子線デバイス用のセグメント化検出器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】荷電粒子線デバイス用のセグメント化検出器
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/244 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
H01J37/244
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020107513
(22)【出願日】2020-06-23
(62)【分割の表示】P 2018525503の分割
【原出願日】2016-07-22
(65)【公開番号】P2020167171
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2020-06-23
(31)【優先権主張番号】62/199,565
(32)【優先日】2015-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】303043704
【氏名又は名称】エフイーアイ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】バルビ ニコラス シー
(72)【発明者】
【氏名】モット リチャード ビー
(72)【発明者】
【氏名】ヒーリー オーウェン
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-541799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/244
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線デバイス用の光子検出器(64)であって、
前記荷電粒子線デバイス内に載置されるように構成された基板(42)であって、前記荷電粒子線デバイスのビームが前記光子検出器を通過することを可能にするための、前記基板を貫通するパススルー(44)を含む、基板(42)と、
前記パススルーの周りに離間配置されて前記基板上に備えられた複数の光子センサデバイス(48)であって、それぞれの光子センサデバイスが、被検物によって放射された光子に対して感応性があり、光子に応答して信号を生成するように構成され、それぞれの光子センサデバイスが、多画素光子計数器デバイスを備える、複数の光子センサデバイス(48)と、を備える光子検出器(64)。
【請求項2】
前記検出器が、前記センサデバイスのそれぞれが分離しており且つ独立してアクセス可能であるようなセグメント化された検出器である、請求項1に記載の光子検出器。
【請求項3】
前記光子センサデバイスのそれぞれが、ベア多画素光子計数器デバイスを備える、請求項1に記載の光子検出器。
【請求項4】
前記光子センサデバイスのそれぞれが、ベアSiPMを備える、請求項3に記載の光子検出器。
【請求項5】
前記光子センサデバイスのそれぞれが、ベア多画素光子計数器デバイスのアレイを備える、請求項1に記載の光子検出器。
【請求項6】
請求項1に記載の前記光子検出器を含む、荷電粒子線デバイス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている、2015年7月31日に出願された、「Segmented Detector for a Charged Particle Beam Device」と題された、米国特許仮出願第62/199,565号からの35U.S.C.§119(e)に基づく優先権を主張する。
【0002】
1.技術分野
本発明は、電子顕微鏡などの荷電粒子線デバイスを使用した撮像に関し、具体的には、電子に対して感応性のある1つ又はそれ以上のセンサ、及び光子に対して感応性のある1つ又はそれ以上のセンサを含む荷電粒子線デバイス用のセグメント化検出器、ならびにこのようなセグメント化検出器を採用した荷電粒子線デバイスに関する。本発明は、多画素光子計数器テクノロジーを採用したセグメント化光子検出器と、陰極線ルミネセンス(CL:Cathodoluminescence)撮像を向上させるために減衰時定数の画像を得る方法とにも関する。
【0003】
2.背景技術
電子顕微鏡(EM:Electron Microscope)は、電子の粒子線を使用して、被検物を照らし、被検物の拡大画像を作成する、一種の顕微鏡である。1つのよくあるタイプのEMは、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)として知られている。SEMは、ラスタパターンとして知られている、被検物の範囲にわたるパターンにおいて、微細に集束された電子のビームで被検物を走査することによって、被検物の画像を作り出す。電子は、被検物を作っている原子と相互作用し、被検物の表面トポグラフィ、組成、及び、結晶方位や導電性などの他の特性についての情報を含む信号を作成する。
【0004】
典型的なSEMでは、電子は、それの軸が通常垂直であることから、電子カラム、または単に「カラム」と呼ばれる、一連の集束光学素子及び偏向コイルの始まりに位置付けられている電子銃組立体によって生成される。カラムの次に、被検物を格納し、様々な検出器、探針、及びマニピュレータを収容する試料チャンバ、または単に「チャンバ」が続く。チャンバは、乾燥窒素または何か他の気体の分圧まで充填戻される場合があるが、電子が空気にすぐに吸収されるため、カラム及びチャンバの両方は、通常真空化されている。電子銃組立体によって生成された後、電子は、カラムを通る通路に従い、それにより、上に説明されたようなラスタ方式で、チャンバ内の被検物を走査するようにされる、微細に集束された電子のビーム(1~10ナノメートル程度の)を形成させられる。
【0005】
電子線が被検物を打つと、ビーム電子のいくつか(一次電子)が、一次電子と被検物の原子の核との間の衝突から生じる、弾性散乱によって被検物の外に反射/放出されて戻る。これらの電子は、後方散乱電子(BSE:BackScattered Electron)として知られており、被検物についての原子番号及びトポグラフィ情報の両方を提供する。他のいくつかの一次電子は、二次電子(SE:Secondary Electron)が表面に非常に近い被検物の領域から放出されるようにさせる非弾性散乱を受けることになり、高解像度で詳細なトポグラフィ情報を有する画像を提供する。被検物が、かなり薄く、入射ビームエネルギーがかなり高い場合、いくつかの電子は、被検物を通過することになる(透過電子またはTE)。後方散乱電子及び二次電子は、それぞれが、電子を、被検物の画像を生成するのに使用される電気信号に変換する、それぞれ、後方散乱電子検出器(BSED:BackScattered Electron Detector)、二次電子検出器(SED:Secondary Electron Detector)と呼ばれる、1つ又はそれ以上の検出器によって集められる。
【0006】
陰極線ルミネセンス(CL)は、発光材料に衝突する電子が、光子の放射を引き起こす、光学及び電磁現象である。当技術分野において、今説明されたSEMを別個のCL検出器に取り付けることが知られている。このような構成において、SEMの電子の集束ビームは、被検物に突き当たり、それに光子を放射させる。それらの光子は、CL検出器によって集められ、材料の組成、結晶成長、及び品質に関する情報を取得するために、被検物の内部構造を分析するのに使用され得る。
【0007】
米国特許第8,410,443号は、電子画像及びCL画像を同時に集めるためのシステムを説明している。しかしながら、本明細書において説明されている方法は、電子検出器から離れる、別個の光学式検出器への可視光の反射を必要とする。本特許の表紙図は、その外面が、鏡面仕上げされている、BSE(後方散乱電子)検出器の下に載置された光検出器を示している。この配置は、最短作業距離(磁極片と試料との間の距離)を相当に長くする。また、BSE検出器面の鏡面仕上げは、ミラーコーティングによって吸収される低エネルギー電子に対する感度を必然的に低減する。さらに、特別な光学式検出器は、被検物の周りに大きなスペースを取る。試料にきわめて近接しているような他のタイプの検出器が一般に望ましくなってきており、それによりスペースが貴重とされる。スペースは、本明細書の他の個所で言及されるデュアルビーム計器にとって特に重要である。特別な光学式検出器は、電子顕微鏡用の標準撮像モードである、二次電子検出器に到達する信号も低減するようになる。
【0008】
したがって、電子画像及びCL画像の収集用に構造化された検出器の分野において、改善の余地がある。
【発明の概要】
【0009】
一実施形態において、荷電粒子線デバイス内に載置されるように構造化された基板と、基板上に備えられたいくつかの第1のセンサデバイスであって、それぞれが被検物によって放出された電子に対して感応性があり、電子に応答して第1の信号を生成するように構造化されている、いくつかの第1のセンサデバイスと、基板上に備えられたいくつかの第2のセンサデバイスであって、それぞれが被検物によって放射された光子に感応性があり、光子に応答して第2の信号を生成するように構造化されている、いくつかの第2のセンサデバイスと、を含む、荷電粒子線デバイス用の検出器が提供される。
【0010】
別の実施形態において、荷電粒子線デバイス内に載置されるように構造化された基板であって、荷電粒子線デバイスのビームが、光子検出器を通過することを可能にするための、基板を貫通するパススルーを含む、基板と、パススルーの周りに間隔を置いて基板上に備えられた複数の第2の光子センサデバイスであって、それぞれが、被検物によって放射された光子に対して感応性があり、光子に応答して信号を生成するように構造化されており、それぞれが、多画素光子計数器デバイスを備える、複数の光子センサデバイスと、を含む、荷電粒子線デバイス用の光子検出器が提供される。
【0011】
別の実施形態において、荷電粒子線デバイスを使用して被検物を撮像する方法が提供される。方法は、第1の期間に、荷電粒子線デバイスの電子線を、被検物の第1の画素位置に向けるステップと、第2の期間に、電子線を第1の画素位置から離れるように偏向させるステップと、いくつかの多画素光子計数器センサを有する検出器を使用して、第2の期間中に第1の画素位置から放射された複数の光強度レベルを測定するステップと、複数の光強度レベルを使用して、第1の画素位置に対する減衰時定数を推定するステップと、を含む。
【0012】
また別の実施形態において、電子線を生成するように構造化された電子源と、ビームブランカと、いくつかの多画素光子計数器センサを含む光子分析器と、制御システムと、を含む荷電粒子線デバイスが提供される。制御システムは、第1の期間に、電子線に、被検物の第1の画素位置に向けられるようにさせ、第2の期間に、ビームブランカに、電子線を第1の画素位置から離れるように偏向させ、検出器に、第2の期間中に第1の画素位置から放射された複数の光強度レベルを測定させ、かつ複数の光強度レベルを使用して、第1の画素位置に対する減衰時定数を推定するように構造化されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】開示された着想の1つの例示的な実施形態による、SEMの概略図である。
図2図1のSEMにおいて使用され得る例示的なEPDの概略図である。
図3図2のEPDの原型で集められた鉱石粒子凝集体の処理画像である。
図4図1のSEMにおいて使用され得る代替の例示的なEPDの概略図である。
図5図1のSEMにおいて使用され得る別の代替の例示的なEPDの概略図である。
図6図1のSEMにおいて使用され得る例示的な光子検出器の概略図である。
図7A】標準SED画像の、図2のEPDの原型を使用して取り込まれたCL画像との比較を提供する図である。
図7B】標準SED画像の、図2のEPDの原型を使用して取り込まれたCL画像との比較を提供する図である。
図7C】標準SED画像の、図2のEPDの原型を使用して取り込まれたCL画像との比較を提供する図である。
図7D】標準SED画像の、図2のEPDの原型を使用して取り込まれたCL画像との比較を提供する図である。
図8図3のように作成された鉱石粒子凝集体のオーバーレイ画像の概略表現である。
図9】開示された着想の代替の例示的な実施形態による、SEMの概略図である。
図10】開示された着想のさらなる態様による、減衰時定数の画像を得る方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において使用される際、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数形照応を含む。本明細書において使用される際、2つ以上の部品または構成要素が「結合されている」という記述は、部品が、直接的、または間接的、すなわち、連結が生じる限りにおいて、1つ又はそれ以上の中間部品または構成要素を通して、のいずれかで、一緒に接合されている、または一緒に動作する、ことを意味するものとする。
【0015】
本明細書において使用される際、「直接結合された」は、2つの要素が互いに直接接触していることを意味する。
【0016】
本明細書において使用される際、「固定結合された」、または「固定された」は、2つの構成要素が、互いに対して一定の向きを維持しながら、一体となって動くように結合されていることを意味する。
【0017】
本明細書において使用される際、「一体の」という語は、構成要素が、1つの部分または1つの単位として作り出されていることを意味する。すなわち、別々に作り出され、次に1つの単位として一緒に結合されている部分を含む構成要素は、「一体の」の構成要素でも本体でもない。
【0018】
本明細書において使用される際、2つ以上の部品または構成要素が互いに「係合する」という記述は、部品が、直接的に、または1つ又はそれ以上の中間部品または構成要素を通して、のいずれかで、互いに力を及ぼすことを意味するものとする。
【0019】
本明細書において使用される際、「数」という用語は、1、または1より大きな整数(すなわち、複数)を意味するものとする。
【0020】
本明細書において使用される際、検出器との関連における「セグメント化」という用語は、検出器が、様々な視点(高度や方位角)から撮像することを可能にするための複数の個別のセンサデバイスを含む(例えば、1つの基板上に)ことを意味するものであり、この場合、様々な感知/検出特性(例えば、1つの以上のセンサデバイスは、電子を検出する、または第1のスペクトル領域の光を検出する能力などの第1の感知/検出特性を有し、また1つ又はそれ以上の異なるセンサデバイスは、光子を検出する、または第2の異なるスペクトル領域の光を検出する能力などの第2の感知/検出特性を有する)を有し、各センサまたは一種のセンサは、個々にアクセス(読み出し)され得る。
【0021】
本明細書において使用される際、「ソリッドステート光電子増倍管」及び「多画素光子計数器(MPPC:MultiPixel Photon Counter)」という用語は、入射放射線束に比例している電流を出力する、共通の半導体基板上のガイガーモードアバランシェフォトダイオードアレイを意味するものとする。現在のMPPCは、スペクトルの可視(RGB)及び近紫外(NUV)領域における光子に対して感応性がある。しかしながら、今後、スペクトルの赤外領域または他の領域に適応可能なMPPCがある可能性があり、このような今後のMPPCが、開示された着想に関連して採用され得ることが考えられる。
【0022】
本明細書において使用される際、「シリコン光電子倍増管(SiPM:Silicon PhotoMultiplier)」という用語は、ガイガーモードアバランシェフォトダイオードが共通の1つのシリコン基板上に形成されているMPPCを意味するものとする。
【0023】
本明細書において使用される際、「シンチレータ・オン・光電子倍増管(SoM:Scintillator-on-photoMultiplier)」または「SoMセンサ」という用語は、シンチレータが、SiPMなど、MPPCの活性面に密接に結合されているデバイスを意味するものとする。SoMセンサは、以下のように働く。試料から反射または放射された電子は、シンチレータに当たり、複数の光子を生み出し、その個数は、シンチレータに当たる所与のエネルギーの電子個数に比例する。実際には、シンチレータを打つ電子は、SEM加速電圧に等しいエネルギーを有し、任意の所与の時点で電子線に影響を及ぼされる、試料の領域内の局所平均原子番号(Z)に強く関係している強度を有する、BSEが圧倒的である。今度は、下部の適切にバイアスされたMPPCに向かって生成された光子は、それらの強度に比例する電流をMPPC内に生成する。したがって、入射電子線によるラスタ走査における各点において、SoMセンサからの出力は、BSE強度に比例し、また、適切な電子機器を使用して、BSE画像が作成され得る。
【0024】
本明細書において使用される際、「ベアMPPC」という用語は、それの活性面に結合されるシンチレータを有していないMPPCを意味するものとする(MPPCが非シンチレーティング被覆を含むこともあるが)。
【0025】
本明細書において使用される際、「ベアSiPM」という用語は、それの活性面に結合されるシンチレータを有していないSiPMを意味するものとする(SiPMが非シンチレーティング被覆を含むこともあるが)。
【0026】
例えば、また以下に限定されるものではないが、上面、底面、左、右、上方、下方、前、後ろ、及びそれらの派生語など、本明細書において使用される方向に関する句は、図面に示されている要素の向きに関し、本明細書において明示的に詳述されない限り、請求項に制限を課すものではない。
【0027】
ここで、本発明は、対象となる発明の完全な理解をもたらすために、数多くの具体的な詳細に関連して、解説目的で説明されることになる。しかしながら、本発明が、本革新の趣旨及び範囲から逸脱することなく、これらの具体的な詳細なしで実施され得る、というることが分かるであろう。
【0028】
開示された着想は、1つの検出デバイスを利用して、電子及び光子の両方を撮像することができる、またはそれらの強度を測定することができる電荷粒子線デバイスを提供する。本明細書において、より詳細に説明されているように、1つの検出デバイスは、試料または対象物から放射された電子及び光子を、別々に、また同時に検出、撮像することができる。開示された着想を採用し得る荷電粒子線デバイスの例は、上に説明されたような電子顕微鏡(EM)、集束イオンビーム計器(FIB:Focused Ion Beam instrument)、デュアルビーム計器、ならびに電子及び/またはイオンビーム試料調製ツールを含む。
【0029】
本明細書においてより詳細に述べられているように、開示された着想の目立った特性は、1つのセグメント化された検出器における別々の複数の光子センサ及び電子センサの使用である。本明細書において説明されている例示的な実施形態において、検出器は、従来のソリッドステート後方散乱電子検出器とほぼ同じサイズ、厚みである。具体的には、検出器は、それを、典型的な電子顕微鏡の磁極片の寸法よりわずかに大きくする、長さ及び幅を有し、検出器は、試料が、8~10mmほどの距離しかない作業距離でSEMにおいて調べられることを可能にする、3~6mm(例えば、2~5mmまたは2.5~3mm)の厚みを有する。このような検出器は、1つのタイプが、電子に対して感応性がある、または感応性があるようにされている一方、もう一方のタイプが、光子に対して感応性がある、または感応性があるようにされている限りにおいて、いずれのソリッドステートセンサでも使用する可能性がある。このような検出器は、電子放射の測定と光子放射の測定とを同時に行うことを可能にするであろう。本明細書において説明されている検出器の1つの特に有利な実装形態は、電子セグメント及び光子セグメントの両方に対して、ソリッドMPPCテクノロジーを採用する。
【0030】
図1の例示的な実施形態に関連して以下に説明されるように、開示された着想による、検出器の最も一般的な適用は、一次電子線が環状検出器内の穴を通過し、普通はBSEであるが、それに限定されない周囲の個別の電子センサが、電子を検出し、また、隣接する個別の光子センサが、CLから生じる、試料から放射された光子を検出するような、電子カラム(例えば、SEMにおける対物レンズの磁極片)内の電子線の出口点と試料との間に位置付けられている電子顕微鏡用の1つの環状検出器である。しかしながら、開示された着想による検出器内の光センサは、その起点に関係なく、いずれの光の存在も検出することができる、ということに留意されたい。
【0031】
図1は、開示された着想の1つの例示的な実施形態による、SEM1の概略図である。SEM1は、試料チャンバ3に結合され、普通は垂直に位置付けられる、電子カラム2を含む。電子カラム2及び試料チャンバ3は、本明細書では時折、集合的に、ポンピングマニホルド4を通して真空化される、真空化ハウジングと呼ばれることがある。いずれか1つが、単独で言及され、それがまた、真空化ハウジング全体に加えられ得る場合、試料チャンバ3は、単に「チャンバ」と呼ばれることがあり、電子カラムは、単に「カラム」と呼ばれることがある。電子源6を含む電子銃組立体5は、カラム2の上面に設けられている。電子源6は、カラム2内で電子線7を生成するように構造化されており、その電子線7は、試料(または被検物)13に向けられている、その通路を辿って試料チャンバ3に入り、最終的にはそれに衝突する。SEM1は、「一次ビーム」とも呼ばれる、一次電子の電子線7を、電子線強度、すなわち、「プローブ電流」が電子線直径と共に強まるような、所定の直径に集束する1つ又はそれ以上の集光レンズ9をカラム2内にさらに含む。SEM1のカラム2は、電子線7を、電子線7が、選択された作業距離11(すなわち、対物レンズ12の磁極片の底面と、試料13の表面との間の距離)において試料13に収束し、このような試料13が、試料ステージ(または被検物ホルダ)14によって、いくつかの軸(通常、X-Y-Z-傾斜-回転)において位置付け可能であるような、小さな直径にさらに集束する、その磁極片に相当する、偏向(走査)コイル10及び対物レンズ12も含む。走査コイル10は、電子線7を偏向させ、試料13の表面上に、X-Y軸におけるラスタ走査をもたらす。示されている実施形態では、出入口を通って試料チャンバ3またはカラム2に入るSED検出器15などの少なくとも1つのエバーハート-ソーンリー(ET:Everhart Thornley)検出器もあり、このようなSED検出器15は、制御システム16(適切な電子処理回路機構を備える)に電気信号を提供し、今後は、制御システムが、表示システム17に二次電子画像を作成する。
【0032】
さらに、開示された着想による、電子及び光子検出器(EPD:Electron and Photon Detector)18が、試料チャンバ3内で、対物レンズ12の磁極片の下に位置付けられている。EPD18は、試料チャンバ3に設けられた真空フィードスルー36を貫通する電線34(例えば、バイアス線、信号線、及びアース線)によって、制御システム16に結合されている。EPD18は、中央開口、ならびに中央開口の周りに備えられた、光子に対して感応性がある少なくとも1つのセンサ、及び電子に対して感光性がある少なくとも1つのセンサを含む、環状セグメント化検出器である。したがって、SEM1のその一次電子線は、中央開口、ならびに周囲の個別の電子センサ及び隣接する個別の光子センサを通過することができる。
【0033】
図1に見られるように、SEM1は、X線検出器38も含む。BSE信号の強度は、試料13の原子番号(Z)に強く関係している。したがって、一実施形態において、後方散乱電子を集めるように構成されたEPD18によって集められたBSE信号が、直接元素分析を提供する、X線分析器38を補うのに使用される。
【0034】
図2は、1つの非限定的な、例示的な実施形態による、EPD検出器18-1の概略図である。以下に説明されるように、EPD検出器18-1のセンサは、MPPCテクノロジー及びSoMテクノロジーを採用する。具体的には、EPD検出器18-1は、電子線7が、それが試料13に到達することができるように、EPD18-1を通過することを可能にするように構造化されている、そこに設けられたパススルーすなわち開口44を有する、基板42を含むプリント回路基板(PCB:Printed Circuit Board)組立体40を含む。示されている実施形態において、開口44は、PCB組立体40の遠位端が、ほぼ環状形状を有するような円形であるが、正方形または長方形であることもできる。
【0035】
図2に見られるように、PCB組立体40は、PCB組立体40の遠位端の内径上に位置付けられた4個の電子センサ46(46A、46B、46C、及び46Dとラベル付けされた)、ならびに、PCB組立体40の遠位端の外径上に位置付けられた4個の光子センサ48(48A、48B、48C、及び48Dとラベル付けされた)を含む。示されている実施形態において、各電子センサ46は、SiPM型SoMセンサなどのSoMセンサであり、各光子センサ48は、ベアSiPMセンサなどのベアMPPCセンサである。各電子センサ46及び各光子センサ48は、関連の導電性トレースに結合され、今度は、導電トレースが、電気接続が本明細書において説明されているような制御システム16に作られることを可能にする、関連の電線50に結合され、これにより、各電子センサ46及び各光子センサ48は、制御システム16によって個々にアクセス(読み出し)され得る。
【0036】
当然のことながら、BSEは、反射角が90°に近づくのに従って強くなる。したがって、図2に示されている例示的な実施形態は、電子センサ46が内径上に置かれており、光子センサ48が外径上に備えられている、構成を採用する。しかしながら、このことが、単に例示的であることが意図されており、異なるセンサ位置を採用する他の構成が、開示された着想の範囲内と考えられている、ということが理解されるであろう。さらに、例示的な実施形態において、EPD検出器18-1において、SoMセンサが、環境光または陰極線ルミネセンスに応答することを防ぐのに、アルミニウム被覆などの光不透過性被覆が使用される。
【0037】
例示的な実施形態において、SiPMテクノロジーなど、1つのテクノロジーが、電子センサ46及び光子センサ48の両方に使用される。SiPMテクノロジーは、高感度、広ダイナミックレンジ、及び高速回復時間(高速撮像と互換性のある)を提供する。SiPMに代わるフォトダイオードまたはアバランシェフォトダイオード(APD:Avalanche PhotoDiode)の使用は、開示された着想の範囲内と考えられているが、結果として生じたデバイスは、SiPMテクノロジーを使用して実装されたデバイスに比べて、かなり遅いであろう。また、デバイスにおいて、フォトダイオードまたはアバランシェフォトダイオードをSiPMと組み合わせるなど、テクノロジーが混合される可能性があるが、このようなデバイスは、電子センサ46(それ/それらが、例えばAPDベースであった場合)に比べて、光子センサ48(それ/それらが、例えばSiPMベースであった場合)により電子機器が異なることを必要とする可能性があり、したがって、おそらく、より複雑で費用のかかるものとなるであろう。すべてのセンサ46及び48に対してSiPMを使用することは、すべてのセンサ46、48に対して、バイアス及び撮像電子機器が、極めて似ている、場合によっては同一であることを可能にする。それにも関わらず、開示された着想は、あるタイプのセンサが光子に対して感応性があり、またあるタイプのセンサが電子に対して感応性があるような、1つのセグメント化された検出器に一体化された任意のソリッステートセンサの使用を考えている。
【0038】
EPD18-1の利点は、それが、高効率のために、試料13の近くに小型センサを組み入れることにある。このことは、チャンバ内部に大型放物面鏡を置くいくつかの従来のCL検出器とは対照的である。EPD18-1の別の利点は、その小さなサイズが、チャンバ3内部に置かれた他の検出器への妨害を最小限にすることにある。EPDのまた別の利点は、BSE検出器及びCL検出器の両方に対して、1つの電気フィードスルーすなわちチャンバ出入口36だけで済むことである。従来のCL検出器は、別々の出入口を必要とし、被検物チャンバ外部とともにそのチャンバ内部に、貴重な限られたスペースを取る。
【0039】
EPD18-1のなお別の利点は、光子センサ48が、セグメント化されていることにある(電子センサ46のように)。このことは、光子放射が、試料13上に様々な視点を有する光子センサ48から見えることを可能にし、高められた撮像描出を可能にする。例えば、図3は、原型EPD18-1で集められた鉱石粒子凝集体の処理画像である。図3の画像は、セグメント化に起因する発光範囲における強い「成長」効果を示す。より詳細には、図3の処理画像は、原型EPD18-1によって取り込まれた4つの独立したグレースケール画像で始まる。画像に1~4の番号を付けると、原画像は、以下のようであり、(1)画像1は、光子センサ48Aの出力の、その最も近い近傍センサ、例えば光子センサ48Bの出力との和から生成されており、(2)画像2は、光子センサ48Cの出力と光子センサ48Dの出力との和から生成されており、(3)画像3は、電子センサ46Aの出力の、その最も近い近傍センサ、例えば電子センサ46Bの出力との和であり、(4)画像4は、電子センサ46Cの出力と電子センサ46Dの出力との和である。したがって、画像1及び画像2は、開口44の直径方向両側から集められている一方、画像3及び画像4は、開口44の直径方向両側から集められた電子画像である。青灰色のBSE画像やピンクのCL画像をレンダリングするのに、偽着色が使用された。その後、画像が重ね合わされ、図3の最終画像を作成している。
【0040】
図4に概略的に示されている別の実施形態によれば、目的とするスペクトル領域が、センサごとに異なるか、または全センサに対して同じである状態で、特定のセンサが、目的とするスペクトル領域に対して感応性があることを可能にするために、フィルタ52(52A,52B、52C、及び52Dとラベル付けされた)が個別の光子センサ48A、48B、48C、及び48Dにわたって使用され得る。従来のCL検出器は、例えば、青色光が、唯一、いわば赤色光から測定され得るか、または撮像され得るように、分光計を使用する。フィルタ52の使用は、狭い範囲にも関わらず、かなり少ない費用で同様の結果をもたらすことができる。フィルタ52は、フィルタホイールなどの機械式デバイス上に導入された、関連の光子センサ48の表面に貼り付けられるか、そうでなければ取り付けられる別々の構成要素として適用され得、あるいは、リソグラフィ工程の一部、またはそれの後続として、関連の光子センサ48に適用され得る。これらの技法のうちの一方または他方を利用し、1つ又はそれ以上の光子センサ48は、スペクトルの領域に特有に、永続的または一時的に「チューニング」され得る。例えば、1つの光子センサ48、または光子センサ48セットは、青色光を検出するように永続的または一時的に構成される可能性があるが、別の光子センサ、または光子センサセットは、赤色光を検出し、また別の光子センサ、または光子センサセットは、緑色光を検出する。
【0041】
開示された着想は、1つのMPPC及びSoMチップよりもむしろ、MPPC及びSoMのアレイも採用し得る。これは、代替の実施形態による、EPD18-2の概略図である図5に示されている。図5に見られるように、EPD18-2は、第1の電子センサアレイ56A及び第2の電子センサアレイ56B、ならびに第1の光子センサアレイ58A及び第2の光子センサアレイ58Bを有するPCB組立体54を含む。第1の電子センサアレイ56A及び第2の電子センサアレイ56Bは、それぞれ、SiPM型SoMなどの個別のSoM60のアレイを含み、第1の光子センサアレイ58A及び第2の光子センサアレイ50Bは、それぞれ、ベアSiPMなどの個別のベアMPPC62のアレイを含む。1つの例示的な実施形態において、アレイ56及び58に対して高められた剛性及び支持を提供するために、EPD18-2は、3~6mm、より好ましくは4~5mの厚みを有するであろう。
【0042】
図6は、さらなる代替の例示的な実施形態による、光子検出器64の概略図である。光子検出器64は、EPD検出器18と同様であり、図1におけるEPD検出器18の代わりに使用され得る。しかしながら、光子検出器64は、センサのすべてが、本明細書に説明されているような光子センサ48(48A~48Hでラベル付けされた)である、PCB組立体66を含む。したがって、光子検出器64は、コンパクトでセグメント化されたCL検出器を提供する。この実施形態では、本明細書に説明されているような光子センサ48のうちの1つ又はそれ以上に関連して、フィルタ52が使用され得る。
【0043】
図7A図7Dは、原型EPD18を使用して取り込まれたCL画像との標準SED画像の比較を提供する。具体的には、図7A及び図7Cの画像は、標準SEM検出器を使用して取り込まれた二次電子画像である一方、図7B及び図7Dの画像は、原型EPD18を使用して取り込まれた。図7B及び図7DのCL画像では、不鮮明な電子画像が現れていることに留意されたい。これは、電子を吸収するための何の被覆もなく、光子検出にベアMPCCが使用されたことによるものである。これは、電子画像を作成するためのベアMPPCの能力による恩恵である。この価値は、光を放射しない試料の領域の輪郭が、試料全体に関連して、発光範囲の正確な位置を提供することにある。電子画像がなにも必要とされない場合、ITOのような比較的厚い層の導電性であるが光透過性である被覆が、電子信号を削除するのに使用され得る。
【0044】
図8は、BSE画像及びCL画像を表す原型EPD18を用いて、図3のように作成された鉱石粒子凝集体のオーバーレイ画像の概略表現である。エネルギー分散型X線(EDX:Energy Dispersive X-ray)分析は、画像の左側に指し示された明るい粒子の塊が、シリコン、アルミニウム、ナトリウム、及び酸素が圧倒的である基質に比べ、Feリッチであることを示す(図8の右下におけるスペクトル)。Feリッチ塊が、基質に比べて高い平均原子番号であることから、それは、画像では明るく見え、BSE撮像の従来の原子番号コントラストを示す。画像の右側に指し示された明るい範囲のEDX分析は、それらがCa及びFに富んでいることを示す。フッ化カルシウムは、既知のCL放射体であるので、この場合の明るさは、発光によるものである。図8の画像は、最大視覚効果及び情報内容に対して、図3に関連して解説された方法に従って、順次に集められ、カラー化されたが、1つのグレースケール画像は、同時に動作する両方のコントラスト機構を示す全センサの和から集められ得る。
【0045】
さらに、多くの陰極線ルミネセンス材料が、電子線が取り除かれた後、成長し続けることは、陰極線ルミネセンス撮像における既知の問題である。この問題は、持続性発光または燐光として知られている。この問題に対する既知の改善策は、数百マイクロ秒~数ミリ秒の非常に長い画素滞留時間、持続性放射が画素間で減衰することを可能にする画素間遅れ、及びより速く減衰する傾向にある短波長のみを使用することを含む。しかしながら、これらの既知の改善策のそれぞれは、それに関連した不利益を有する。長い滞留時間は、多くの鉱物が非導電性であることから、非常に短い撮像の結果となり、あり得る電子撮像側の帯電効果の一因となる。画素間遅れは、持続性の完全な減衰に十分に長くないことが多い。短波長のみを使用することは、CLテクノロジーから入手可能な情報の有用な断片を大幅に縮小する。
【0046】
開示された着想のさらなる態様は、持続性発光または燐光の問題への改善された解決策を提供する。具体的には、開示された着想のこの態様では、試料の撮像される領域にわたる放射の減衰率の測定及び微速度撮像を可能にするのに、SiPMテクノロジー(APDのような他のソリッドステート検出器に対する)によって与えられた高速撮像が、ビームブランキングテクノロジーと併用される。ビームブランカは、SEMにおける被検物から離れる電子線の一時的な偏向(通常、約50nSで)を可能にするよく知られているデバイスである。このようなタイミングは、約100nSかそこらのSiPM回復時間にぴったり合う。
【0047】
図9は、開示された着想のこのさらなる態様が実施され得る代替の例示的な実施形態による、SEM1’の概略図である。SEM1’は、SEM1と同じ部品のうちの多くを含み、同じ部品は、同じ参照番号でラベル付けされている。SEM1’は、電子カラム2及び制御システム16に動作可能に結合されているビームブランカ68をさらに含む。ビームブランカ68は、以下に限定されるものではないが、Deben UK Limitedからの市販のPCDビームブランカなど、任意の既知の、または以下のビームブランキングデバイスであり得る。
【0048】
図10は、SEM1’において実施される、開示された着想のこのさらなる態様の方法の1つの特定の実施形態を示すフローチャートである。この例示的な実施形態では、制御システム16は、図10に示されている方法を実施するための命令を有する1つ又はそれ以上のプログラムを格納する、不揮発性メモリなどの非一時的コンピュータ可読媒体を含む。図10に見られるように、方法は、ステップ70で始まり、そこでは、電子線7が、所定の期間に、被検物13のその時の画素位置に向けられる。次に、ステップ72において、電子線7が、ビームブランカ68を使用して、所定の期間に、被検物13から離れるように偏向される。次に、ステップ74において、その時の画素位置からの光が、陰極線ルミネセンスが減衰している間に複数の光強度測定値を取得するために、電子線7が偏向されている間、本明細書において説明されている検出器実施形態(1つ又はそれ以上の光子検出器48を含む)のいずれかを使用して複数回、サンプリングされる。この例示的な実施形態では、光は、電子線7が取り除かれた後、数マイクロ秒~数十マイクロ秒でサンプリングされる。この方法では、光が完全に減衰するのを待つ必要はない。むしろ、その時の画素位置に対して減衰の指数時定数を推定するための減衰曲線があれば十分である。光子検出器48(ベアSiPMなどのMPPC型センサである)の高速応答は、少なくとも10個かそれくらいの検出器(例えば、SiPM)の測定値及び関連の減衰時間(1マイクロ秒かそれくらい)が得られる限り、被検物13の光減衰が光子検出器48の信号減衰から見分けられることを可能にする。開示された着想のこの態様では、減衰画像が、10~100uSの滞留時間で、その時の「高速マッピング」X線システムとほぼ同じ時間で集められ得る。
【0049】
次に、方法は、ステップ76に進む。ステップ76において、その時の画素位置に対する減衰時定数が、得られた光強度測定値を使用して、制御システム16において推定される。次に、ステップ78において、電子線7が次の画素位置に動かされ、方法は、ステップ70に戻り、次の画素位置に対してプロセスを繰り返す。図10の方法は、被検物13の各画素位置に対して測定が行われるまで、繰り返されることになる。
【0050】
今説明されたように、画素ごとの減衰時定数の画像が得られると、次に、画素ごとの減衰時定数は、SEM1’の続く動作において、電子線7によってその時点で照明された画素において検出された光に対する、走査における前の画素の貢献度を計算するのに使用され得る。その時の画素からの貢献度と、それらの貢献度が依然としてかなりのものである、前の画素の貢献度との和が、画像収集後処理ステップとして、いくつかのよく知られているソフトウェア画像回復アルゴリズムのいずかを使用して、デコンボリューションされ得る。例えば、ハッブル宇宙望遠鏡が、球面収差を有することが見つけられたとき、反復リチャードソン-ルーシー(R-L:Richardson-Lucy)アルゴリズムが息を吹き返した。R-Lは、多くのフーリエ空間方法が必要とする、点拡がり関数(持続性発光によって引き起こされるスミアリングと同等)がすべての画素において同じであることを必要としない。R-Lは、現在、いくつかの消費用天体写真ソフトウェアパッケージで市販されている。デコンボリューションは、1つの画素によって放射されたすべての光が、その画素に戻されるようにさせ、高速走査のボケ効果を排除する。SEM電子撮像の走査性質のために、持続性発光からのボケは、従来の画像回復の際の2次元よりむしろ、1次元(走査線に沿う)である。
【0051】
本請求項では、丸括弧間に置かれたいずれの引用符号も、請求項を制限するとして解釈されるものではない。「備える」または「含む」という用語は、請求項に挙げられているそれら以外の要素またはステップの存在を排除するものではない。いくつかの手段を数え上げるデバイス請求項では、これらの手段のうちのいくつかが、全く同じハードウェア品によって具体化され得る。要素に先行する「a」または「an」という語は、複数のこのような要素の存在を排除するものではない。いくつかの手段を数え上げるいずれのデバイス請求項でも、これらの手段のうちのいくつかが、全く同じハードウェア品によって具体化され得る。相互に異なる従属請求項において、いくつかの要素が、列挙されているという事実だけで、これらの要素が、組み合わせで使用され得ないということにはならない。
【0052】
本発明は、最も実用的かつ好ましい実施形態であると現時点で考えられるものに基づき、説明目的で詳細に述べられたが、このような詳細が単にその目的のためであり、本発明が、開示された実施形態に限定されるものではなく、反対に、添付の請求項の趣旨及び範囲内にある修正形態及び同等構成に及ぶことが意図されている、ということが理解されるべきである。例えば、本発明が、可能な範囲で、いずれかの実施形態の1つ又はそれ以上の特徴が他のいずれかの実施形態の1つ又はそれ以上の特徴と組み合わせられ得ることを意図している、ということが理解されるべきである。
【0053】
以下に本発明の実施態様を記載する。
(実施態様1)荷電粒子線デバイス(1、1’)用の検出器(18)であって、
前記荷電粒子線デバイス内に載置されるように構成された基板(42)と、
前記基板上に備えられたいくつかの第1のセンサデバイス(46)であって、それぞれが、被検物によって放出された電子に対して感応性があり、電子に応答して第1の信号を生成するように構成されている、いくつかの第1のセンサデバイス(46)と、
前記基板上に備えられたいくつかの第2のセンサデバイス(48)であって、それぞれが、前記被検物によって放射された光子に対して感応性があり、光子に応答して第2の信号を生成するように構成されている、いくつかの第2のセンサデバイス(48)と、を備える、検出器(18)。
(実施態様2)前記検出器は、前記第1のセンサデバイス及び前記第2のセンサデバイスのそれぞれが分離しており且つ独立してアクセス可能であるようなセグメント化されたデバイスである、実施態様1に記載の検出器。
(実施態様3)前記いくつかの第1のセンサデバイスが、複数の第1のセンサデバイスであり、前記いくつかの第2のセンサデバイスが、複数の第2のセンサデバイスである、実施態様1に記載の検出器。
(実施態様4)前記第1のセンサデバイスのうちの1つ又はそれ以上が、多画素光子計数器デバイスを備える、実施態様1に記載の検出器。
(実施態様5)前記第2のセンサデバイスのうちの1つ又はそれ以上が、多画素光子計数器デバイスを備える、実施態様1に記載の検出器。
(実施態様6)前記第1のセンサデバイスのうちの1つ又はそれ以上、及び、前記第2のセンサデバイスのうちの1つ又はそれ以上が、多画素光子計数器デバイスを備える、実施態様1に記載の検出器。
(実施態様7)前記第1のセンサデバイスのうちの前記1つ又はそれ以上が、それぞれシンチレータ・オン・光電子倍増管デバイス(SoMデバイス)を備え、
前記第2のセンサデバイスのうちの前記1つ又はそれ以上が、それぞれベア多画素光子計数器デバイスを備える、実施態様6に記載の検出器。
(実施態様8)前記第1のセンサデバイスのうちの前記1つ又はそれ以上が、それぞれSiPM SoMデバイスを備え、前記第2のセンサデバイスのうちの前記1つ又はそれ以上が、それぞれベアSiPMデバイスを備える、実施態様7に記載の検出器。
(実施態様9)前記基板が、前記荷電粒子線デバイスのビームが前記検出器を通過することを可能にするための、前記基板を貫通するパススルー(44)を含み、
前記いくつかの第1のセンサデバイスが、前記パススルーに対し内径に沿って前記パススルーの周りに離間配置された4個の第1のセンサデバイスであり、
前記いくつかの第2のセンサデバイスが、前記パススルーに対し内径に沿って前記パススルーの周りに離間配置された4個の第1のセンサデバイスである、実施態様7に記載の検出器。
(実施態様10)各SoMデバイスが、前記SoMデバイスが光に応答することを防ぐための光不透過性被覆を含む、実施態様7に記載の検出器。
(実施態様11)前記基板が、前記荷電粒子線デバイスのビームが前記検出器を通過することを可能にするための、前記基板を貫通するパススルー(44)を含み、
前記いくつかの第1のセンサデバイス、及び、前記いくつかの第2のセンサデバイスが、前記パススルーの周りに離間配置されている、実施態様1に記載の検出器。
(実施態様12)前記第1のセンサデバイスのうちの前記1つ又はそれ以上が、それぞれSoMデバイスアレイを備え、
前記第2のセンサデバイスのうちの前記1つ又はそれ以上が、それぞれベア多画素光子計数器デバイスアレイを備える、実施態様6に記載の検出器。
(実施態様13)前記いくつかの第2のセンサデバイスのうちの1つ又はそれ以上が、それぞれフィルタを含む、実施態様1に記載の検出器。
(実施態様14)前記いくつかの第2のセンサデバイスのうちの複数が、それぞれフィルタを含む、実施態様13に記載の検出器。
(実施態様15)前記第2のセンサデバイスは、各フィルタによって同じスペクトル領域に対して感応性があるようにされている、実施態様14に記載の検出器。
(実施態様16)前記第2のセンサデバイスは、前記フィルタによって異なるスペクトル領域に対して感応性があるようにされている、実施態様15に記載の検出器。
(実施態様17)実施態様1に記載の検出器を含む、荷電粒子線デバイス。
(実施態様18)荷電粒子線デバイス用の光子検出器(64)であって、
前記荷電粒子線デバイス内に載置されるように構成された基板(42)であって、前記電荷粒子線デバイスのビームが前記光子検出器を通過することを可能にするための、前記基板を貫通するパススルー(44)を含む、基板(42)と、
前記パススルーの周りに離間配置されて前記基板上に備えられた複数の光子センサデバイス(48)であって、それぞれの光子センサデバイスが、被検物によって放射された光子に対して感応性があり、光子に応答して信号を生成するように構成され、それぞれの光子センサデバイスが、多画素光子計数器デバイスを備える、複数の光子センサデバイス(48)と、を備える光子検出器(64)。
(実施態様19)前記検出器が、前記センサデバイスのそれぞれが分離しており且つ独立してアクセス可能であるようなセグメント化された検出器である、実施態様18に記載の光子検出器。
(実施態様20)前記光子センサデバイスのそれぞれが、ベア多画素光子計数器デバイスを備える、実施態様18に記載の光子検出器。
(実施態様21)前記光子センサデバイスのそれぞれが、ベアSiPMを備える、実施態様20に記載の光子検出器。
(実施態様22)前記光子センサデバイスのそれぞれが、ベア多画素光子計数器デバイスのアレイを備える、実施態様18に記載の光子検出器。
(実施態様23)実施態様18に記載の前記光子検出器を含む、荷電粒子線デバイス。
(実施態様24)荷電粒子線デバイス(1、1’)を使用して、被検物を撮像する方法であって、
第1の期間に、前記被検物の第1の画素位置に、前記荷電粒子線デバイスの電子線を向けるステップと、
第2の期間に、前記第1の画素位置から離れるように、前記電子線を偏向させるステップと、
いくつかの多画素光子計数器センサを有する検出器を使用して、前記第2の期間中に前記第1の画素位置から放射された複数の光強度レベルを測定するステップと、
前記複数の光強度レベルを使用するステップであって、前記第1の画素位置に対する減衰時定数を推定する、前記使用するステップと、を含む方法。
(実施態様25)前記荷電粒子線デバイスのラスタ走査、及び、少なくとも前記第1の画素位置に対する前記減衰時定数を使用して、前記被検物の画像を生成するステップをさらに含む、実施態様24に記載の方法。
(実施態様26)複数の追加の画素位置のために、前記向けるステップ、偏向させるステップ、測定するステップ、及び、使用するステップを繰り返すステップであって、前記追加の画素位置のそれぞれに対する減衰時定数を推定する、前記繰り返すステップをさらに含む、実施態様24に記載の方法。
(実施態様27)前記荷電粒子線デバイスのラスタ走査、ならびに前記第1の画素位置に対する前記減衰時定数及び前記追加の画素位置のそれぞれに対する前記減衰時定数を使用して、前記被検物の画像を生成するステップをさらに含む、実施態様26に記載の方法。
(実施態様28)前記荷電粒子線のラスタ走査中に、前記第1の画素位置とは異なる第2の画素位置から放射された光を検出するステップと、
前記第1の画素位置に対する前記減衰時定数を使用して、前記第2の画素位置から検出された光に対する、前記ラスタ走査中の前記第1の画素位置の貢献度を計算するステップと、をさらに含む、実施態様24に記載の方法。
(実施態様29)前記偏向させるステップにおいてビームブランカ(68)が用いられる、実施態様24に記載の方法。
(実施態様30)荷電粒子線デバイス(1、1’)であって、
電子線を生成するように構成された電子源(6)と、
ビームブランカ(68)と、
いくつかの多画素光子計数器センサ(48)を含む光子検出器(18、64)と、
制御システム(16)と、を備え、
前記制御システム(16)は、
第1の期間に前記電子線を前記被検物の第1の画素位置に向け、
第2の期間に前記ビームブランカに前記電子線を前記第1の画素位置から離れるように偏向させ、
前記第2の期間中に前記検出器に前記第1の画素位置から放射された複数の光強度レベルを測定させ、
前記複数の光強度レベルを使用して、前記第1の画素位置に対する減衰時定数を推定するように構成された、荷電粒子線デバイス(1、1’)。
(実施態様31)前記制御システムが、前記荷電粒子線デバイスのラスタ走査、及び、少なくとも前記第1の画素位置に対する前記減衰時定数を使用して、前記被検物の画像を生成するように構成されている、実施態様30に記載の荷電粒子線デバイス。
(実施態様32)前記制御システムが、
追加の第1の期間に前記電子線を前記被検物の複数の追加の画素位置のそれぞれに向け、
追加の第2の期間に前記ビームブランカに前記電子線を追加の第1の画素位置のそれぞれから離れるように偏向させ、
第2の期間中に前記検出器に追加の第1の画素位置のそれぞれから放射された複数の追加の光強度レベルを測定させ、
前記複数の追加の光強度レベルを使用して、前記追加の画素位置のそれぞれに対する減衰時定数を推定するように、構成されている、実施態様30に記載の荷電粒子線デバイス。
(実施態様33)前記制御システムが、前記荷電粒子線デバイスのラスタ走査、ならびに前記第1の画素位置に対する前記減衰時定数及び前記追加の画素位置のそれぞれに対する前記減衰時定数を使用して、前記被検物の画像を生成するように構成されている、実施態様32に記載の荷電粒子線デバイス。
(実施態様34)前記制御システムが、
前記荷電粒子線のラスタ走査中に、前記第1の画素位置とは異なる第2の画素位置から放射された光を検出し、
前記第1の画素位置に対する前記減衰時定数を使用して、前記第2の画素位置から検出された光に対する、前記ラスタ走査中の前記第1の画素位置の貢献度を計算するように構成されている、実施態様30に記載の荷電粒子線デバイス。
(実施態様35)コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、実施態様24の方法を実行させる命令を含む、1つ又はそれ以上のプログラムを格納する非一時的コンピュータ可読媒体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10