(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】腕時計ケースにおける音響放射膜の保持と振動伝達のための構成
(51)【国際特許分類】
G04B 21/08 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
G04B21/08 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020175103
(22)【出願日】2020-10-19
【審査請求日】2020-10-19
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・ファーヴル
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・リヴァ
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-334574(JP,A)
【文献】米国特許第02786326(US,A)
【文献】スイス国特許発明第00311296(CH,A)
【文献】特開平11-194181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 21/08
G04B 23/02,23/12
G04B 37/08
G04C 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音楽または打撃腕時計(1)ケース(2)における音響振動膜(10)の保持および振動伝達のための構成であって、前記ケース(2)は、胴部(4)に取り付けられた少なくとも1つのクリスタル(3)と、前記胴部(4)の反対側に取り付けられた裏面(5)とを備え、音響放射膜(10)は、前記腕時計の
前記裏面に平行な方向に、前記膜の保持のために作用することによって、前記膜(10)の周縁または前記膜(10)の端部要素(11)と、前記腕時計ケース(2)の一部との間に配置された少なくとも1つの接続部品(12、13)によって、前記腕時計ケース(2)の一部に保持され
、
前記接続部品は、腕時計ケース(2)の一部のねじ切り開口部(14)にねじ込まれた少なくとも1つのねじ(12)であり、前記ねじの内端が、前記膜(10)の前記周縁に対して、または、前記膜(10)の周辺に固定された前記端部要素(11)の外側部分に対して力をかける
ことを特徴とする、構成。
【請求項2】
音楽または打撃腕時計(1)ケース(2)における音響振動膜(10)の保持および振動伝達のための構成であって、前記ケース(2)は、胴部(4)に取り付けられた少なくとも1つのクリスタル(3)と、前記胴部(4)の反対側に取り付けられた裏面(5)とを備え、音響放射膜(10)は、前記腕時計の
前記裏面に平行な方向に、前記膜の保持のために作用することによって、前記膜(10)の周縁または前記膜(10)の端部要素(11)と、前記腕時計ケース(2)の一部との間に配置された少なくとも1つの接続部品(12、13)によって、前記腕時計ケース(2)の一部に保持され
、
前記音響放射膜(10)を保持するための複数の接続部品がねじ(12)であり、前記ねじ(12)は、おのおのが、腕時計ケース(2)の一部のそれぞれのねじ切り開口部(14)にねじ込まれると、前記膜(10)の前記周縁と、または、前記膜の前記端部要素(11)とおのおの接触するように配置され、前記ねじ切り開口部(14)は、前記膜(10)、または前記膜の前記端部要素(11)の周りに規則的に分布される
ことを特徴とする、構成。
【請求項3】
前記ねじ(12)は、互いに180°に配置された2つ、または互いに120°に配置された3つ、または互いに90°に配置された4つであることを特徴とする、請求項
2に記載の構成。
【請求項4】
前記ねじ切り開口部(14)を備える前記腕時計ケース(2)の一部は、前記腕時計ケース(2)の胴部(4)であることを特徴とする、請求項
1から請求項
3のいずれか一項に記載の構成。
【請求項5】
音楽または打撃腕時計(1)ケース(2)における音響振動膜(10)の保持および振動伝達のための構成であって、前記ケース(2)は、胴部(4)に取り付けられた少なくとも1つのクリスタル(3)と、前記胴部(4)の反対側に取り付けられた裏面(5)とを備え、音響放射膜(10)は、前記腕時計の
前記裏面に平行な方向に、前記膜の保持のために作用することによって、前記膜(10)の周縁または前記膜(10)の端部要素(11)と、前記腕時計ケース(2)の一部との間に配置された少なくとも1つの接続部品(12、13)によって、前記腕時計ケース(2)の一部に保持され
、
前記接続部品は、前記腕時計ケース(2)の一部と、前記膜(10)の前記周縁、または前記膜(10)の前記端部要素(11)との間に配置されたコイルばね(13)である
ことを特徴とする構成。
【請求項6】
音楽または打撃腕時計(1)ケース(2)における音響振動膜(10)の保持および振動伝達のための構成であって、前記ケース(2)は、胴部(4)に取り付けられた少なくとも1つのクリスタル(3)と、前記胴部(4)の反対側に取り付けられた裏面(5)とを備え、音響放射膜(10)は、前記腕時計の
前記裏面に平行な方向に、前記膜の保持のために作用することによって、前記膜(10)の周縁または前記膜(10)の端部要素(11)と、前記腕時計ケース(2)の一部との間に配置された少なくとも1つの接続部品(12、13)によって、前記腕時計ケース(2)の一部に保持され
、
前記音響放射膜(10)を保持するための複数の接続部品は、前記腕時計ケース(2)の一部と、前記膜(10)の前記周縁、または前記膜(10)の前記端部要素(11)との間に、前記膜(10)の、または前記膜(10)の前記端部要素(11)の周囲において、互いに規則的に離間されることによって配置されたコイルばね(13)である
ことを特徴とする構成。
【請求項7】
前記腕時計ケース(2)の一部が胴部(4)であることを特徴とする、請求項
6に記載の構成。
【請求項8】
音楽または打撃腕時計(1)ケース(2)における音響振動膜(10)の保持および振動伝達のための構成であって、前記ケース(2)は、胴部(4)に取り付けられた少なくとも1つのクリスタル(3)と、前記胴部(4)の反対側に取り付けられた裏面(5)とを備え、音響放射膜(10)は、前記腕時計の
前記裏面に平行な方向に、前記膜の保持のために作用することによって、前記膜(10)の周縁または前記膜(10)の端部要素(11)と、前記腕時計ケース(2)の一部との間に配置された少なくとも1つの接続部品(12、13)によって、前記腕時計ケース(2)の一部に保持され
、
前記音響放射膜(10)は、ねじである第1の接続部品(12)と、コイルばねである第2の接続部品(13)とのアセンブリによって得られ、前記ねじ(12)は、前記腕時計ケース(2)の一部のねじ切り開口部(14)にねじ込まれ、前記コイルばね(13)は、前記腕時計ケース(2)の一部と、前記膜(10)の前記周縁、または前記膜(10)の前記端部要素(11)との間に配置され、前記ねじ(12)のシャフトを通過する
ことを特徴とする構成。
【請求項9】
前記音響放射膜(10)を保持することは、前記膜(10)、または前記膜(10)の前記端部要素(11)の周りに、規則的に離間された複数のねじ(12)と、コイルばね(13)とのアセンブリによって得られ、各ねじ(12)は、前記胴部(4)である前記腕時計ケース(2)の一部のそれぞれのねじ切り開口部(14)にねじ込まれることを特徴とする、請求項
8に記載の構成。
【請求項10】
音楽または打撃腕時計(1)ケース(2)における音響振動膜(10)の保持および振動伝達のための構成であって、前記ケース(2)は、胴部(4)に取り付けられた少なくとも1つのクリスタル(3)と、前記胴部(4)の反対側に取り付けられた裏面(5)とを備え、音響放射膜(10)は、前記腕時計の
前記裏面に平行な方向に、前記膜の保持のために作用することによって、前記膜(10)の周縁または前記膜(10)の端部要素(11)と、前記腕時計ケース(2)の一部との間に配置された少なくとも1つの接続部品(12、13)によって、前記腕時計ケース(2)の一部に保持され
、
前記音響放射膜(10)が、前記膜(10)のドーム基部から立ち上がる周辺端部を有するドーム形状を有し、おのおのが、胴部(4)のような前記腕時計ケース(2)の一部のそれぞれのねじ切り開口部(14)にねじ込まれるために、前記膜(10)の前記周辺端部に生成されたそれぞれの開口部(10’)を通過する、ねじ(12)である少なくとも2つの接続部品が提供され得、各ねじ(12)の頭部は、前記膜(10)の前記周辺端部の内側に配置され、前記ねじは、互いに規則的に離間された
ことを特徴とする構成。
【請求項11】
請求項1から請求項
10のいずれか一項に記載の腕時計ケース内における音響放射膜の構成を備え、前記ケース(2)は、胴部(4)に取り付けられた少なくとも1つのクリスタル(3)と、前記胴部(4)の反対側に取り付けられた裏面(5)とを備え、前記腕時計(1)は、支持体(11)に取り付けられた打撃機構を備えた少なくとも1つの計時器のムーブメント(6)を備えることを特徴とする、打撃または音楽腕時計(1)。
【請求項12】
前記打撃機構が、ゴングキャリアに取り付けられ、特定の音の生成のためにハンマによって打撃される可能性が高い、少なくとも1つのゴングを備え、前記音響放射膜(10)は、振動中の前記ゴングによって生成される前記音に合わせて前記膜の音響放射の周波数を適応させるために、ねじ(12)などの接続部品によって圧縮または引き伸ばされることを特徴とする、請求項
11に記載の打撃または音楽腕時計(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音楽または打撃腕時計ケース内の音響放射膜の保持および振動伝達のための構成に関する。
【0002】
本発明はまた、腕時計ケース内の音響放射膜の保持および振動伝達のための構成を備える音楽または打撃腕時計に関する。
【背景技術】
【0003】
腕時計の従来の打撃機構では、少なくとも1つのゴングキャリアに固定された1つまたは複数のゴングは、計時器のムーブメントを支持するプレートと同じ水平面で、1つまたは複数のハンマによって打撃される。打撃されたゴングの振動の音響放射のために、ケースに、打撃機構の膜も追加される。膜は、一般に、ムーブメントの支持体と、腕時計ケースにおいて膜を保持するための胴部の一部との間の面に直角すなわち垂直方向にクランプされる。一例では、膜は、腕時計ケースの裏面と、腕時計プレート上のムーブメントとの間に配置される。膜は、腕時計ケースの裏面と胴部との間に、固定すなわちクランプされている。しかしながら、生成された音の適切な音響放射のために、打撃されたゴングの膜への良好な振動伝達がないことに留意されたい。
【0004】
音楽腕時計の場合、打撃機構のピンバレルのブレードの振動によって音が生成され、腕時計ケースに音響放射膜を設けられ得る。前記膜は、ムーブメントの支持体と、腕時計ケース内に膜を保持するための胴部の一部との間の面に対して直角方向にクランプされる。
【0005】
特許EP2367078B1は、打撃機構を備えた腕時計について説明している。打撃機構によって生成された音を放射するために、音響膜が配置され、腕時計のケースに接続されている。膜は、ムーブメントの支持体と、ケースの裏面との間に、腕時計の面に対して直角方向にクランプされることにより、腕時計のケースに保持される。膜のそのような保持では、生成された音を、適切な音響放射のために、膜に向かって良好に振動伝達することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、腕時計ケースにおける打撃機構の動作中、良好な音響性能を得るために、打撃または音楽さえも発する腕時計ケースに、音響放射膜の保持および振動伝達のための構成を提供することによって、先行技術の欠点を克服することである。
【0008】
この目的のために、本発明は、独立請求項1に定義された特徴を備えた腕時計ケースにおける音響放射膜の保持および振動伝達のための構成に関する。
【0009】
音響放射膜の保持および振動伝達のための構成の特定の実施形態は、従属請求項2から11に定義されている。
【0010】
本発明による音響放射膜の構成の1つの利点は、腕時計ケースにおける音響放射膜の保持が、膜の縁に対して、または膜の端部要素に対して、水平および非垂直方向に作用する少なくとも1つの接続部品によって得られるという事実にある。接続部品は、たとえば、胴部の内壁と、膜の縁または端部要素との間のゴングキャリア上のコイルばねベアリングであり得る。接続部品はまた、縁または膜端部要素を横方向に圧迫するために、たとえば、胴部のねじ切り開口部にねじ込まれるねじ、またはねじと、コイルばねとの組合せであり得る。
【0011】
有利なことに、第1の実施形態によれば、コイルばねと比較して、ねじの使用は、ばねに対する膜の接続力または接触力を大幅に増加させるだけでなく、接続力または接触力を制御することも可能にする。膜の周囲を圧迫し、膜の圧縮効果が生成される。特定の音を生成する打撃されたゴングと、または音楽ピンバレルの少なくとも1つの活性化されたブレードと調和して、膜の音響放射の周波数を適応させることも想定され得る。したがって、これは、前記膜に加えられた保持力によって、膜の音響放射の主周波数を適応させることを可能にし、それにより、膜の音響放射の主周波数を、調整がより困難で、一度打撃されると、特定の音を生成するゴングに、より容易に適応させる。
【0012】
有利なことに、別の実施形態によれば、たとえば、胴部のような、腕時計ケースの壁に生成されたそれぞれのねじ山におのおのがねじ込まれるために、おのおのが膜の周辺端部の異なる開口部を通り抜ける少なくとも2つのねじが提供される。これにより、特定の音を生成する打撃されたゴングと、または音楽ピンバレルの少なくとも1つの活性化されたブレードと調和して、膜の音響放射の主周波数を適応させるために、膜の保持中に、膜の伸縮力を大幅に増加させることを可能にする。この他の実施形態によれば、周波数の適応は、前述した第1の実施形態の適応の逆である。
【0013】
この目的のために、本発明はまた、腕時計ケースに、音響放射膜構成を備え、独立請求項12に定義された特徴を備える、打撃または音楽腕時計に関する。
【0014】
打撃または音楽腕時計の実施形態は、従属請求項13に定義される。
【0015】
有利なことに、複数の音響膜が提供され得る。文字盤に第1の膜を、腕時計ケースの裏面上の二重裏面として第2の膜を設けることができる。また、互いに離間された、または重ね合わされた複数の音響膜を取り付けるために提供され得る。すべての膜は、周縁と、または、支持体を用いて各膜の端部要素と接触しており、すなわち、腕時計の面に平行な、つまり、腕時計の文字盤、または、腕時計のムーブメントを支持するプレートに平行な方向に作用する、接続部品によって、腕時計ケースの一部に保持される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
腕時計ケース内の音響放射膜の保持および振動伝達のための構成の目的、利点、および特徴は、以下の図面によって示される非限定的な実施形態に基づく以下の説明において明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1a】本発明による腕時計ケースにおける音響放射膜の保持および振動伝達のための構成の第1の実施形態の簡略上面図である。
【
図1b】本発明による腕時計ケースにおける音響放射膜の保持および振動伝達のための構成の第1の実施形態の部分断面図である。
【
図2a】本発明による腕時計ケースにおける音響放射膜の保持および振動伝達のための構成の第2の実施形態の簡略上面図である。
【
図2b】本発明による腕時計ケースにおける音響放射膜の保持および振動伝達のための構成の第2の実施形態の部分断面図である。
【
図3】本発明による腕時計ケースにおける音響放射膜の保持および振動伝達のための構成の第3の実施形態の簡略部分断面図である。
【
図4】本発明による腕時計ケースにおける音響放射膜の保持および振動伝達のための構成の第4の実施形態の簡略部分断面図である。
【
図5】本発明にしたがい、
図1aおよび
図1bを参照して、固定ねじまたは拘束のある場合、およびない場合において、腕時計ケースに保持される、構成の膜の各振動伝達モードの音響レベルのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の説明では、当業者によく知られている、腕時計ケースにおける音響放射膜の保持に関連するすべての部分は、簡略化された方式でのみ説明されている。
【0019】
図1aおよび
図1bは、計時器のムーブメント6および計時器のムーブメントの支持体7のない簡略上面図と、腕時計ケース2における少なくとも1つの音響放射膜10の保持および振動伝達のための構成を備える腕時計ケース2の第1の実施形態の簡略部分断面図とを示す。保持構成の音響放射膜10は、膜10の縁の上、または膜10の端部要素11の上の腕時計の面に平行な水平方向に作用する少なくとも1つの接続部品12によって腕時計ケース2に保持される。
【0020】
この第1の実施形態では、接続部品は、腕時計ケース2の一部、たとえば腕時計ケース2の胴部4のねじ切り開口部14にねじ込まれた少なくとも1つのねじ12である。ねじ12の内端は、
図1aおよび
図1bに示されるように、膜10の周縁、または膜10の周辺に固定された端部要素11の外側部分に力をかける。ねじ12は、好ましくは、膜の縁または端部要素11の円筒面を支える。ねじ12は、腕時計ケース2内に膜を保持することを可能にするために、ねじ切り開口14よりも長く、好ましくはねじ切り開口14の長さの1.5倍の長さと、放射の周波数の調整のために決定された圧縮力とを有していなければならない。
【0021】
腕時計ケース2に膜10を保持するために単一のねじ12が設けられている場合、
図1aおよび
図1bに示される膜10の周縁、または膜10の端部要素11の周縁は、ねじ12が、膜10の縁または端部要素11に対して反対側を圧迫するようになると、たとえば、胴部4の円筒形状の内面に対して力をかけるようになる。ねじ12が、胴部4のねじ切り開口部14にねじ込まれるほど、膜10は圧縮され、これは、膜の音響放射の周波数を変更する効果がある。したがって、前記周波数は、たとえば、計時器のムーブメント6における打撃機構のハンマによって打撃されたゴングによって生成された音によって調整することができる。本発明によれば、腕時計1ケース2に膜10を保持するための構成は、たとえば、胴部4におけるねじ切り開口部14にねじ込まれたねじ12のような、少なくとも1つの接続部品によって、計時器のムーブメント6の文字盤または支持体7に平行な面内で実行される。
【0022】
図1bに示されるように、腕時計1は、本質的に、胴部4からなる腕時計ケース2を備え、その上に、少なくとも1つのクリスタル3が上側から密封方式で固定され、裏面5が、胴部4の別の下側から固定される。裏面5は、図示されていない既知の手段によって、胴部4に、取り外し可能で密封された方式で取り付けられる。裏面5はまた、裏面5の縁の内側の同軸円の周りに均等に分布された開口部15を備え得る。前記開口部15は、腕時計ケース内で生成され、音響膜10によって放射された音またはメロディーが、腕時計ケース2の外側に伝達されることを可能にする。
【0023】
腕時計1はまた、プレートなどの支持体7上に配置された計時器のムーブメント6または計時器の電子モジュール6を備える。計時器のムーブメント6の打撃機構は、第1の変形例において、プレート7上または胴部4に固定されたゴングキャリアに取り付けられた少なくとも1つのゴングと、決められた周期で前記ゴングを打撃するために、プレート上に、回転可能に、または、線形のムーブメントとともに取り付けられた少なくとも1つのハンマとを備え得る。打撃機構は、第2の変形例では、プレートに固定されたヒールに接続されたブレードのアセンブリを備えたピンバレルと、メロディーを生成するためにブレードを活性化する目的で、プレート上で回転する円筒と、またはディスクと一体化されたピンとを備え得る。
【0024】
腕時計1はまた、図示されておらず、計時器のムーブメント6の上にある文字盤を備え、これは、胴部4の端部上または反対側に保持され、腕時計のクリスタル3の下に配置される。機械的打撃または音楽腕時計1の場合、通常は、外周の時刻表示をサポートする文字盤に、図示されていない時刻表示用の針がある。
【0025】
残りの説明では、主に、プレートに取り付けられ、または腕時計ケース2の胴部4に接続され、特定の音の生成のために、ハンマによって打撃されるゴングキャリアに、少なくとも1つのゴングが固定された打撃機構に言及する。
【0026】
機械的または電子的な打撃または音楽腕時計1は、打撃機構によって生成される音の音響性能を改善するために、本質的に少なくとも1つの音響膜10を備える。明確に決められた幾何学的形状に加えて、音響膜10は、可聴周波数の範囲内のモードの密度を制御および最適化するように選択された材料で製造され得る。一般に、選択される材料は、鋼、またはアモルファス金属、またはポリマー、または別の金属材料であり得る。好ましくは、選択される材料はまた、たとえば、木でできているか、または木質複合材であり得る複合材料でできているが、これに限定されない。
【0027】
前記シナリオでは、膜10の厚さは1mmに近くてもよい。
図1aおよび
図1bに示される1つの代替実施形態によれば、鋭角形状の端部要素11が、膜10の周縁に固定され得る。端部要素11を備えた膜10の直径は、腕時計のクリスタル3の直径と同様とすることができ、20mmから40mmの間であり得る。金属端部要素11またはアモルファス金属製で、断面がT字型であり、環状の内側が、膜10の縁の周囲に固定され、環状の外側が、胴部4に固定された裏面5の内側部分を圧迫するようになる。前記環状の外側は、たとえば、膜10を保持するための各ねじ12のベアリングのための円筒面を備える。
【0028】
前に示したように、少なくとも1つのねじ12が提供されるが、膜10または端部要素11の周りに、通常は規則的に分布された複数の他のねじ12があり得る。前記様々なねじ12は、おのおのが膜10の周縁と接触するように、または
図1aおよび
図1bに示されるように、おのおのが胴部4のそれぞれのねじ切り開口部14にねじ込まれると、端部要素11と接触するように配置される。
図1aおよび
図1bに示すように、互いに180°の位置にある少なくとも2本のねじ12、または互いに120°の位置にある3本のねじ12、または互いに90°の位置にある4本のねじ12、またはさらに多くのねじ12。前記4本のねじ12はおのおの、胴部4における対応するねじ切り開口部14にねじ込まれ、端部要素11と接触する。ねじ込み動作後の端部要素11の外側部分に対する各ねじ12の接触力に応じて、膜10の放射の周波数の適応は、ハンマによって打撃されると、少なくとも1つのゴングの振動の周波数に適応するために、単一のねじ12よりも容易に得られる。
【0029】
図5は、このようなねじ12の使用が、各音響放射モードの音響レベルに及ぼす影響を、ねじのない標準的なアセンブリと比較して示す。したがって、
図5のグラフは、ねじ(接続部品)がある場合と、ない場合との各放射モードの音響レベルを示す。様々な測定ポイントは、0から14kHz(X軸)の間で示され、ここで、略語Lq(同等レベル)は、デシベルdB(Y軸)で音響レベルを定義する以下の表に記載されている値を用いて示される。一般に、音響放射強度は、ねじを使用しない場合よりも、膜の周縁に対して、または端部要素に対して力をかける、ねじを使用した場合の方がはるかに優れている。通常、腕時計ケース内に膜を保持するために複数のねじが提供される場合、より良好な結果も想定され得る。
【0030】
【0031】
図2aおよび
図2bは、計時器のムーブメント6および計時器のムーブメントの支持体7のない簡略上面図、ならびに少なくとも1つの音響放射膜10の保持および振動伝達のための構成を備えた腕時計ケース2の第2の実施形態の簡略部分断面図を示す。第1の実施形態に対するこの第2の実施形態の唯一の相違は、少なくとも1つの接続部品13によって腕時計ケース2に保持される音響放射膜10を保持するための構成に関する。前記接続部品13は、膜の縁または端部要素11の円筒面と、好ましくは胴部4である腕時計ケース2の内側部分との間のコイルばね軸受である。
【0032】
前述のように、単一の圧縮コイルばね13が、音響膜10の保持および振動伝達に使用される場合、膜10の周縁または膜10の端部要素11は、たとえば、コイルばね13の反対側の胴部4の円筒形状の内面に力をかけるようになる。
【0033】
しかしながら、膜10を保持するための、または膜10をその端部要素11とともに保持するための複数のコイルばね13を有することが好ましい場合がある。
図2aおよび
図2bに示すように、互いに180°の位置にある少なくとも2つのコイルばね13、または互いに120°の位置にある3つのコイルばね13、または互いに90°の位置にある4つのコイルばね13、またはさらに多くのコイルばね13が提供され得る。
【0034】
腕時計ケース2における音響放射膜10の保持および振動伝達のためのそのような構成では、打撃されたゴングが生成する特定の音、または音楽ピンバレルの少なくとも1つの活性化されたブレードに合わせて膜10の音響放射の周波数を適応させることができないことに留意されたい。
【0035】
図3は、腕時計1ケース2における音響放射膜10の保持および振動伝達のための構成の第3の実施形態の部分断面図を示す。この第3の実施形態は、音響放射膜の保持が、第1の接続部品12の、および第2の接続部品13の、組合せまたはアセンブリによって得られるという事実によってのみ、前の2つの実施形態とは異なる。第1の接続部品12は、腕時計ケース2の一部のねじ切り開口部14にねじ込むことができるねじであり、これは、たとえば、第1の実施形態の
図1aおよび
図1bを参照して説明した胴部4である。第2の接続部品13は、ねじ12のシャフトが貫通するコイルばねである。コイルばね13は、膜10の、または端部要素11の縁の円筒面と、腕時計ケース2の内部との間を圧迫するようになる。
【0036】
第1および第2の実施形態について以前に説明したように、複数のねじ12およびコイルばね13のアセンブリは、膜10、または膜10の端部要素11の周りに規則的に分布して提供され得る。互いに180°の位置にある少なくとも2つのねじ12とコイルばね13のアセンブリ、または互いに120°の位置にある3つのねじ12とコイルばね13のアセンブリ、または互いに90°の位置にある4つのねじ12とコイルばね13のアセンブリ、またはそれ以上のねじ12およびコイルばね13のアセンブリが提供され得る。
【0037】
図4は、腕時計1ケース2における音響放射膜10の保持および振動伝達のための構成の第4の実施形態の部分断面図を示す。この第4の実施形態では、音響放射膜10は、端部要素に接続されていないが、膜10のドーム基部から立ち上がる周辺端部を備えたドーム形状を有することが示される。
【0038】
開口部10’は、接続部品12の通過のために周辺端部に生成され、これは、たとえば、胴部4などの腕時計ケースの一部のねじ切り開口部14にねじ込むために、好ましくはねじ12である。ねじ頭部12は、膜のドームの端部の内側に配置される。腕時計ケース2内の音響放射膜10の保持および振動伝達のための構成のこの第4の実施形態では、腕時計ケース2内に膜10を保持するための少なくとも2つのねじ12を提供する必要がある。膜10の端部の第1の開口部10’を通過する第1のねじ12は、たとえば腕時計ケース2の胴部4において、第1のねじ切り開口部14にねじ込まれ、たとえば第1の開口部10’から180°の膜10の端部の第2の開口部10’を通過する第2のねじ12は、たとえば、腕時計ケース2の胴部4において、第1のねじ切り開口部14から離れた第2のねじ切り開口部14にねじ込まれる。したがって、2つのねじ12のための2つのねじ切り開口部14は、この場合、互いに180°である。膜10の周辺端部のそれぞれの開口部10’をおのおのが通過して、おのおのが、たとえば胴部4のそれぞれのねじ切り開口部14にねじ込まれるようにするために、3つのねじ12を設けることもできる。前記ねじ切り開口部14は、好ましくは、互いに120°離される。膜10の周辺端部のそれぞれの開口部10’を、おのおの通過する4つのねじ12の場合、たとえば、胴部4のそれぞれのねじ切り開口部14におのおのねじ込まれるために、ねじは互いに90°離され、以下同様に、4本を超えるねじの場合、胴部4のそれぞれのねじ切り開口部14にねじ込まれる。
【0039】
音響放射膜は、保持構成の前記第4の実施形態ではもはや圧縮されておらず、引き伸ばされており、これは、第1および第3の実施形態に関して音響放射の周波数の適応を逆転させる。しかしながら、これはまた、ハンマによって一度打撃されると、少なくとも1つのゴングの振動周波数に適応させるために、膜10の音響放射の周波数の適応をより容易にすることを可能にする。
【0040】
音響膜10の材料はまた、その優れた音響放射特性で知られているマホガニーまたはオークまたはキハダカンバなどの貴重なまたは高貴な木材であり得ることにも留意されたい。バイオリンやギターのデザインに一般的に使用されるスプルース、メープル、ローズウッド、キングウッド、チェリーウッド、エボニーも選択できる。ポプラ、ヤナギ、クルミ、モミ、さらには特定の果樹など、他の木材も選択できる。しかしながら、腕時計ケースにおける良好な保持のために、膜10はまた、鋼、または金または白金またはアモルファス金属、またはポリマーなどの材料、または別の金属材料でも製造され得る。
【0041】
このように与えられた説明から、腕時計ケースにおける音響放射膜の保持および振動伝達のための構成の複数の代替実施形態は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって考案され得る。少なくとも1つの接続部品は、胴部に固定されたゴングキャリアの近くに配置され得る。
【符号の説明】
【0042】
1 打撃または音楽腕時計
2 腕時計ケース
3 クリスタル
4 胴部
5 裏面
6 ムーブメント
7 支持体
10 音響膜
10’ 開口部
11 端部要素
12 第1の接続部品、ねじ
13 第2の接続部品、コイルばね
14 ねじ切り開口部
15 開口部