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特許6999799多孔質成形体及びその製造方法、α-オレフィン二量化用触媒及びその製造方法、並びに、α-オレフィン二量体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】多孔質成形体及びその製造方法、α-オレフィン二量化用触媒及びその製造方法、並びに、α-オレフィン二量体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/10 20060101AFI20220128BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20220128BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20220128BHJP
   B01J 27/232 20060101ALI20220128BHJP
   C07C 11/113 20060101ALI20220128BHJP
   C07C 2/24 20060101ALI20220128BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
B01J35/10 301G
B01J37/08
B01J37/02 101Z
B01J27/232 Z
C07C11/113
C07C2/24
C07B61/00 300
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020511020
(86)(22)【出願日】2019-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2019013740
(87)【国際公開番号】W WO2019189636
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2018066083
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新城 亮
(72)【発明者】
【氏名】川原 潤
(72)【発明者】
【氏名】村上 雅美
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/093378(WO,A1)
【文献】特開2008-149275(JP,A)
【文献】特開平03-042043(JP,A)
【文献】特開平07-222927(JP,A)
【文献】米国特許第05081094(US,A)
【文献】国際公開第2018/117247(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C07C 11/113
C07C 2/24
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(x-1)~(x-)を満たす多孔質成形体(X)と、
アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩と、を含有し、
前記アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩の含有率は、前記多孔質成形体(X)100質量部に対して1質量部~230質量部の範囲である、多孔質成形体(Y)。
要件(x-1):細孔直径が0.01μm~100μmの範囲にある細孔容積が、0.10mL/g~1.00mL/gである。
要件(x-2):細孔直径が0.01μm~100μmの範囲にある細孔のメジアン細孔径が、0.01μmを超え10.0μm以下である。
要件(x-3):圧壊強度が、0.7kgf~15.0kgfである。
要件(x-4):金属又は希土類元素の酸化物及びこれらの複合酸化物、ゼオライト、活性炭、並びにSiCよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む
【請求項2】
前記金属又は希土類元素の酸化物及びこれらの複合酸化物、ゼオライト、活性炭、並びにSiCよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を、前記多孔質成形体(X)の全質量に対して、70質量%~100質量%で含む、請求項1に記載の多孔質成形体(Y)。
【請求項3】
前記アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩が、NaCO、NaHCO、KCO、及び、KHCOよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1又は請求項2に記載の多孔質成形体(Y)。
【請求項4】
前記多孔質成形体(Y)の細孔直径が、0.01μm~100μmの範囲にある細孔容積が、0.10mL/g~0.80mL/gである、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の多孔質成形体(Y)。
【請求項5】
前記多孔質成形体(X)が、Alの成形体である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の多孔質成形体(Y)。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の多孔質成形体(Y)に、アルカリ金属(D)を担持させた、α-オレフィン二量化用触媒。
【請求項7】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の多孔質成形体(Y)に、アルカリ金属(D)を担持させてα-オレフィン二量化用触媒を得る工程を有する、α-オレフィン二量化用触媒の製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載のα-オレフィン二量化用触媒の存在下で、α-オレフィンを二量化反応させてα-オレフィン二量体を得る工程を有する、α-オレフィン二量体の製造方法。
【請求項9】
下記要件(x-1)~(x-)を満たす多孔質成形体(X)に、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩を、前記多孔質成形体(X)100質量部に対して1質量部~230質量部の範囲で、担持させて担持物を得る工程と、
前記担持物を100℃~500℃で熱処理して、多孔質成形体(Y)を得る工程と、
を有する、多孔質成形体(Y)の製造方法。
要件(x-1):細孔直径が0.01μm~100μmの範囲にある細孔容積が、0.10mL/g~1.00mL/gである。
要件(x-2):細孔直径が0.01μm~100μmの範囲にある細孔のメジアン細孔径が、0.01μmを超え10.0μm以下である。
要件(x-3):圧壊強度が、0.7kgf~15.0kgfである。
要件(x-4):金属又は希土類元素の酸化物及びこれらの複合酸化物、ゼオライト、活性炭、並びにSiCよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む
【請求項10】
前記金属又は希土類元素の酸化物及びこれらの複合酸化物、ゼオライト、活性炭、並びにSiCよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を、前記多孔質成形体(X)の全質量に対して、70質量%~100質量%で含む、請求項9に記載の多孔質成形体(Y)の製造方法。
【請求項11】
前記アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩が、NaCO、NaHCO、KCO、及び、KHCOよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項9又は請求項10に記載の多孔質成形体(Y)の製造方法。
【請求項12】
前記多孔質成形体(X)が、Alの成形体である、請求項9~請求項11のいずれか1項に記載の多孔質成形体(Y)の製造方法。
【請求項13】
前記担持物を得る工程が、含浸法により担持させて担持物を得る工程である、請求項9~請求項12のいずれか1項に記載の多孔質成形体(Y)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質成形体及びその製造方法、α-オレフィン二量化用触媒及びその製造方法、並びに、α-オレフィン二量体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
4-メチル-1-ペンテンに代表されるα-オレフィンの二量体(α-オレフィンの共二量体を含む。以下同じ。)は、ポリオレフィン製造用の単量体として利用されている。α-オレフィンの二量化反応(α-オレフィンの共二量化反応を含む。以下同じ。)によって相応する二量体を製造するための触媒として、多くの塩基性触媒が従来から提案されている。特に、無水カリウム化合物を主成分とする担体にアルカリ金属を担持させた触媒が多く用いられている。
【0003】
これらの触媒に関し、触媒活性及び目的物質の得られやすさ(以下、「選択性」ともいう。)を更に高くするための研究が継続して行われている。また、初期活性が高くても触媒寿命が十分ではないことから、触媒寿命を延ばすための研究も継続して行われている。
また、使用する無水カリウム化合物の物性又は担体の物性を調整することにより、触媒活性の向上、選択性の向上、触媒寿命の改良が進められてきている(例えば、特許文献1~6参照)。
特許文献7には、α-オレフィン二量化用触媒の担体に用いられる成形体として、細孔容積の大きさが特定の範囲に調整された多孔性の成形体(多孔質成形体)を製造する方法が開示されている。上記成形体をα-オレフィン二量化用触媒の担体に用いると、公知の触媒に比べて反応選択率が高くなることが開示されている。
また、α-オレフィン二量化用触媒の担体として、特許文献8には、炭酸カリウムとシリカ・アルミナの混合物を用いることが開示され、非特許文献1にはゼオライトの表面を炭酸カリウムで被覆した物質を用いることが開示されている。
【0004】
特許文献1:特開昭58-114737号公報
特許文献2:特開平3-42043号公報
特許文献3:特開平7-222927号公報
特許文献4:特開2006-326418号公報
特許文献5:特開2008-149275号公報
特許文献6:米国特許第5081094号明細書
特許文献7:国際公開第2015/093378号
特許文献8:欧州特許第474087号明細書
【0005】
非特許文献1:Chem.Eng.Technol. 17 1995 354
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、上記特許文献に代表される触媒について、種々の検討を行った。その結果、特許文献1~5に開示されている触媒は、触媒活性の向上又は選択性の向上についてはある程度の改善効果がみられるものの、長期の反応において触媒担体が崩壊(以下、「粉化」ともいう場合がある。)し、運転継続が困難になる傾向にあることが明らかとなった。本発明者らは、特にエチレンと1-ブテンから3-メチル-1-ペンテンを得るような液相での反応が必要となる態様では、触媒担体の粉化傾向が強い可能性があることを見出した。
特許文献6に開示されている炭酸水素カリウムを含む担体を用いた触媒は、粉体状であるため工業生産に適さないものであった。また、特許文献6には、担体をペレット状等に成形してもよいことの開示があるものの、成形に水を用いるため炭酸水素カリウムが溶解し、成形金型への充填がスムーズにできず、成形体の物性が不均一となることが推定された。
また、多孔質成形体を製造するにあたり、細孔の大きさを調整できることがより望ましい。より具体的には、特許文献7に記載された方法で得られる多孔質成形体よりも細孔径がより大きい多孔質成形体を製造することが求められることがある。さらに、形状が制御し易い製造方法であることも好ましい要件と考えられる。
特許文献8及び非特許文献1では上記混合物又は物質を用いた成形体の記載はなく、これらの工業的な有用性までは認めがたい。
【0007】
そこで、本開示に係る一実施形態は、α-オレフィン二量化反応における粉化抑制性に優れる多孔質成形体を提供する。
更に、本開示に係る一実施形態は、α-オレフィン二量化反応における粉化抑制性に優れる多孔質成形体の製造方法、該多孔質成形体を用いたα-オレフィン二量化用触媒及びその製造方法、及び該触媒を用いたα-オレフィン二量体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下の実施態様が含まれる。
<1> 下記要件(x-1)~(x-3)満たす多孔質成形体(X)と、
アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩と、を含有し、
上記アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩の含有率は、上記多孔質成形体(X)100質量部に対して1質量部~230質量部の範囲である、多孔質成形体(Y)。 要件(x-1):細孔直径が0.01μm~100μmの範囲にある細孔容積が、0.10mL/g~1.00mL/gである。
要件(x-2):細孔直径が0.01μm~100μmの範囲にある細孔のメジアン細孔径が、0.01μmを超え10.0μm以下である。
要件(x-3):圧壊強度が、0.7kgf~15.0kgfである。
<2> 上記多孔質成形体(X)が、下記要件(x-4)を更に満たす、<1>に記載の多孔質成形体(Y)。
要件(x-4):金属又は希土類元素の酸化物及びこれらの複合酸化物、ゼオライト、活性炭、並びにSiCよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。
<3> 上記アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩が、NaCO、NaHCO、KCO、及び、KHCOよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、<1>又は<2>に記載の多孔質成形体(Y)。
<4> 上記多孔質成形体(Y)の細孔直径が、0.01μm~100μmの範囲にある細孔容積が、0.10mL/g~0.80mL/gである、<1>~<3>のいずれか1つに記載の多孔質成形体(Y)。
<5> 上記多孔質成形体(X)が、Alの成形体である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の多孔質成形体(Y)。
<6> <1>~<5>のいずれか1つに記載の多孔質成形体(Y)のアルカリ金属(D)を担持させた、α-オレフィン二量化用触媒。
<7> <1>~<5>のいずれか1つに記載の多孔質成形体(Y)に、アルカリ金属(D)を担持させてα-オレフィン二量化用触媒を得る工程を有する、α-オレフィン二量化用触媒の製造方法。
<8> <6>に記載のα-オレフィン二量化用触媒の存在下で、α-オレフィンを二量化反応させてα-オレフィン二量体を得る工程を有する、α-オレフィン二量体の製造方法。
<9> 下記要件(x-1)~(x-3)を満たす多孔質成形体(X)に、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩を、上記多孔質成形体(X)100質量部に対して1質量部~230質量部の範囲で、担持させて担持物を得る工程と、
上記担持物を100℃~500℃で熱処理して、多孔質成形体(Y)を得る工程と、
を有する、多孔質成形体(Y)の製造方法。
要件(x-1):細孔直径が0.01μm~100μmの範囲にある細孔容積が、0.10mL/g~1.00mL/gである。
要件(x-2):細孔直径が0.01μm~100μmの範囲にある細孔のメジアン細孔径が、0.01μmを超え10.0μm以下である。
要件(x-3):圧壊強度が、0.7kgf~15.0kgfである。
<10> 上記多孔質成形体(X)が、下記要件(x-4)を更に満たす、<9>に記載の多孔質成形体(Y)の製造方法。
要件(x-4):金属又は希土類元素の酸化物及びこれらの複合酸化物、ゼオライト、活性炭、並びにSiCよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。
<11> 上記アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩が、NaCO、NaHCO、KCO、及び、KHCOよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、<9>又は<10>に記載の多孔質成形体(Y)の製造方法。
<12> 上記多孔質成形体(X)が、Alの成形体である、<9>~<11>のいずれか1つに記載の多孔質成形体(Y)の製造方法。
<13> 上記担持物を得る工程が、含浸法により担持させて担持物を得る工程である、<9>~<12>のいずれか1つに記載の多孔質成形体(Y)の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る一実施形態によれば、α-オレフィン二量化反応における粉化抑制性に優れる多孔質成形体が提供される。
また、本開示に係る一実施形態によれば、α-オレフィン二量化反応における粉化抑制性に優れる多孔質成形体の製造方法、該多孔質成形体を用いたα-オレフィン二量化用触媒及びその製造方法、及び該触媒を用いたα-オレフィン二量体の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本明細書における圧壊強度の単位[kgf]は、1kgf=9.8Nの関係式により[N]に変換可能である。
本明細書において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0011】
<<多孔質成形体(Y)>>
本開示に係る多孔質成形体(Y)は、下記要件(x-1)~(x-3)を満たす多孔質成形体(X)と、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩(以下、「特定化合物」ともいう。)と、を含有し、上記アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩の含有率は、上記多孔質成形体(X)100質量部に対して1質量部~230質量部の範囲である。
本開示に係る多孔質成形体(Y)は、上記構成を有するので、α-オレフィン二量化反応における粉化の抑制性に優れる(以下、「粉化抑制性に優れる」ともいう。)。すなわち、上記粉化抑制性に優れることは、多孔質成形体(Y)は、α-オレフィン二量化反応に用いた場合であっても粉化され難いことを意味する。
この理由は明らかではないが、以下のように推測される。但し、本開示は、以下の理由によって限定されることはない。
【0012】
本発明者等が検討したところ、要件(x-1)~(x-3)を満たす多孔質成形体(X)と、特定化合物と、を含み、多孔質成形体(X)に対する含有率が特定の範囲である特定化合物を含有する多孔質成形体(Y)では、多孔質成形体(X)がコアとなって、多孔質成形体(X)と特定化合物とが複合化されることにより、本開示に係る多孔質成形体(Y)を用いてα-オレフィン二量化反応を行った場合であっても、反応中に多孔質成形体(Y)が粉化し難いことを見出した。
本開示に係る多孔質成形体(Y)に含まれる多孔質成形体(X)は、要件(x-1)~(x-3)を満たし、例えば、特定の金属など酸化物などを含む。上記の金属の酸化物の成分は、強度にも優れた成分であるだけでなく、触媒としての反応に関わる機能を実質的に持たないと考えられるので、触媒反応による構造への影響(例えば、変形し難い、破壊され難い等)を受け難い可能性が有る。この為、本開示に係る多孔質成形体(Y)は、特に上記のα-オレフィン共二量化反応においても従来以上に粉化し難いと推察される。
また、従来の、Na担持炭酸カリウム触媒をα-オレフィンの2量化反応に用いた場合、上記触媒内部において2量化反応が進行することにより、触媒が粉化すると推察している。
これに対して、本開示に係る多孔質成形体(Y)は、上記構成を有するので、後述する多孔質成形体(Y)のアルカリ金属(D)担持体(α-オレフィン二量化用触媒)を、α-オレフィンの2量化反応に用いた場合、多孔質成形体(Y)の内部まで反応点が形成され難いため、粉化抑制性に優れるとも本発明者らは考えている。
また、本開示に係る多孔質成形体(Y)の製造方法は、上記工程を有することにより、特定化合物が多孔質成形体(X)に担持しやすく、さらに、特定化合物が多孔質成形体(X)に強固に密着した構造とすることができるので、得られる多孔質成形体(Y)は、滑剤としてグラファイト等を用いて特定化合物を打錠して生成した、従来の多孔質成形体と比べて、α-オレフィン二量化反応中に多孔質成形体(Y)が粉化することを抑制すると推察される。
以下、本開示に係る多孔質成形体(Y)を構成する各成分、及び、本開示に係る多孔質成形体(Y)の製造方法に用いられる多孔質成形体(X)及び特定化合物について説明する。
【0013】
<多孔質成形体(X)>
本開示に係る多孔質成形体(Y)は、下記要件(x-1)~(x-3)を満たす多孔質成形体(X)(以下、単に「多孔質成形体(X)」ともいう。)含有する。
要件(x-1):細孔直径が0.01μm~100μmの範囲にある細孔容積が、0.10mL/g~1.00mL/gである。
要件(x-2):細孔直径が0.01μm~100μmの範囲にある細孔のメジアン細孔径が、0.01μmを超え10.0μm以下である。
要件(x-3):圧壊強度が、0.7kgf~15.0kgfである。
本開示に係る多孔質成形体(Y)は、粉化抑制性の観点から、要件(x-1)~(x-3)を満たす多孔質成形体(X)を担体として、多孔質成形体(X)に後述の特定化合物が担持した担持物であることが好ましい。上記担持物は、α-オレフィン二量化反応に多孔質成形体(Y)を用いた場合であっても、粉化し難い。
以下、多孔質成形体(X)が満たす各要件について説明する。
【0014】
(x-1)細孔容積
多孔質成形体(X)の細孔直径(以下、単に「細孔直径(X)」ともいう。)が0.01μm~100μmの範囲にある細孔容積(以下、単に「細孔容積(X)」ともいう。)は、得られる多孔質成形体(Y)をα-オレフィン二量化用触媒の担体に適用したときの反応選択性を向上する観点から、0.10mL/g~1.00mL/gであり、好ましくは0.20mL/g~0.80mL/gであり、より好ましくは0.26mL/g~0.77mL/gである。
なお、本明細書において、「細孔容積」とは、細孔直径(X)が0.01μm~100μmの範囲にある細孔の全ての容積の合計のことを指す。
上記細孔容積(X)は、例えば、使用する多孔質成形体の原料の種類及び成形の方法又は条件によって調整することができる。
上記細孔容積(X)及び細孔直径(X)は、水銀圧入法によって測定される細孔分布より求められる。また、本明細書において細孔容積とは、特に断りのない場合には、細孔直径(X)(以下、「細孔径(X)」ともいう。)が0.01μm~100μmの範囲にある細孔容積の値を意味する。
本開示における細孔容積の測定方法は、マイクロメトリクス社製、型番:Auto PoreIV)を用い、1.0psi(6894.76Pa)~33,000psi(2275.27×10Pa)の圧力範囲の50点~100点で測定を行い、細孔に圧入される水銀量を測定して、各細孔径と細孔容積との関係を決定することができる。
上記測定方法は、水銀の特性により、水銀が圧入される細孔径は、水銀の圧力により決定される原理に基づいた測定法である。後述する細孔直径範囲の細孔容積も同様にして測定した細孔径と細孔容積との測定値から求められる。
【0015】
(x-2)メジアン細孔径
多孔質成形体(X)の細孔直径(X)が0.01μm~100μmの範囲にある細孔のメジアン細孔径は、得られる多孔質成形体(Y)をα-オレフィン二量化用触媒の担体に適用したときの反応選択性を向上する観点から、0.01μmを超え10.0μm以下であり、好ましくは0.10μm以上10.0μm以下である。
本明細書において、メジアン細孔径(X)とは、細孔直径(X)(細孔径(X))が0.01μm~100μmの範囲にある細孔径を水銀圧入法によって測定し、上記範囲にある細孔径累計が50%となる細孔径を2つに分けたとき、大きい側(大径側)と小さい側(小径側)が同数となる細孔径を意味する。
メジアン細孔径(X)の測定方法は、実施例の項に記載する。
【0016】
(x-3)圧壊強度
多孔質成形体(X)の圧壊強度は、0.7kgf~15.0kgfであり、好ましくは1.0kgf以上であり、より好ましくは1.5kgf以上である。
ここで圧壊強度とは、多孔質成形体の半径方向の強度を示す。
上記多孔質成形体(X)の形状としては、特に制限はなく、タブレット状、ヌードル状、円柱状(ペレット状)、コンベックス状、リング状、及び、球状等が挙げられるが、上記形状は、いずれも半径方向に相当する方向が存在するが、半径方向に相当する方向のない形状の多孔質成形体の場合、最も弱い方向の強度を圧壊強度とする。
なお、圧壊強度は、造粒物の耐圧強度を表す物性として一般的に知られており、通常、ペレット状、タブレット状等の形状を有する成形体1個を胴方向(長軸方向)に加圧し、圧壊する時の力を測定するものである。
JIS Z8841(1993)「造粒物-強度試験法」には試験方法の規定がある。
【0017】
(x-4)組成
多孔質成形体(X)は、金属又は希土類元素の酸化物(以下、単に「酸化物」ともいう。)及びこれらの複合酸化物(以下、単に「複合酸化物」ともいう。)、ゼオライト、活性炭、並びにSiCよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。
上記化合物は、1種単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用して使用してもよい。
上記金属としては、Al、Si、Ti、Zr、Ca、Sr、Ba、Na、K、Cs、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、W、Ir、Pt、Au等が挙げられる。
希土類元素としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、及び、ランタノイドが挙げられる。
多孔質成形体(Y)の調製、及び、α-オレフィン二量化用触媒として使用する観点から、多孔質成形体(X)としては、金属の酸化物及び複合酸化物を含むことが好ましく、Al、Si、Ti、Zr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、W、Ca、Sr、Ba、Na、K又はCsの酸化物及びこれらの複合酸化物を含むことがより好ましく、Al、Si、Ti又はZrの酸化物を含むことが更に好ましく、Alを含むことが特に好ましく、多孔質成形体(X)がAl成形体であることが特に好ましい。
なお、多孔質成形体(Y)中に含まれる上記酸化物、複合酸化物、ゼオライト、活性炭、又はSiCについては、例えば、多孔質成形体(Y)を水に含浸させることにより、担持された特定化合物を水に溶解させて除去してから乾燥させた後にX線回折(XRD)、蛍光X線分析(XRF)又は高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析によって同定することで確認することができる。勿論、上記水銀圧入法を利用して、細孔形状などを測定することも出来る。
【0018】
上記酸化物、複合酸化物、ゼオライト、活性炭、及びSiCよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量としては、多孔質成形体(X)の全質量に対して、70質量%~100質量%の範囲で含有することが好ましく、80質量%~100質量%の範囲で含有することがより好ましい。
【0019】
多孔質成形体(X)の大きさ及び形状は、特に制限はない。多孔質成形体(X)の形状としては、成形装置等の条件によって選択することができ、タブレット状、ヌードル状、円柱状(ペレット状)、コンベックス状、リング状、及び球状のいずれも取りうる。
多孔質成形体(X)の形成に用いられる成形装置としては、市販されているものを使用することができ、適宜、生産量に応じて最適なスケールの装置が選択できる。
【0020】
多孔質成形体(X)の形状として、例えば、円柱状とする場合、通常、直径2mm~5mm、高さ2mm~7mmの大きさに成形することができる。
多孔質成形体(X)が円柱状である場合、多孔質成形体(X)の大きさが上記範囲であると、多孔質成形体(X)を熱処理した後に、例えばα-オレフィン二量化用触媒の担体として適用した場合、α-オレフィン二量化反応系内での原料及び反応生成物の拡散が良好になりやすく、α-オレフィン二量化反応の反応活性及び反応選択性が向上しやすい。
【0021】
上記要件(x-1)~(x-2)を満たす多孔質成形体(X)は、公知の方法を用いて調製することができる。例えば、上記の金属酸化物などを特定の温度範囲で熱処理して結晶転移させることで、密度変化に伴う多孔質成形体(X)の表面を凹凸化させる方法で調製してもよい。また、同様の方法を用いて、多孔質成形体(X)を種々の形状、サイズに制御することができる。
また、この熱処理により、多孔質成形体(X)の表面の酸点(「活性点」ともいう場合がある。)等の官能基構造が活性化し、多孔質成形体(X)に対して後述する特定化合物を強固に担持させやすくなると考えられる。その観点からも上記の熱処理は好ましい。また、熱処理された多孔質成形体(X)の表面は、比表面積が大きい場合が多い。これも多孔質成形体(X)に特定化合物を強固に担持させやすい理由の一つではないかと考える。
多孔質成形体(X)の形状は、特定化合物を担持させる前に形成させてもよく、特定化合物を多孔質成形体(X)に担持させながら、多孔質成形体(X)の形状を形成してもよい。特定化合物を強固に担持させる観点からは、特定化合物を担持させる前に多孔質成形体(X)を形成させておくことが好ましい。一方、特定化合物を多孔質成形体(X)に担持させながら、多孔質成形体(X)の形状を形成する場合、あらかじめ多孔質成形体(X)単独で、所望の形状を形成できる条件を確定させておくことが好ましい。
上記熱処理を行う好ましい温度範囲は、1,000℃~1,300℃である。より好ましい温度範囲の下限値は、1,050℃、更に好ましくは1,100℃である。
上記の温度範囲は、上記の酸点の活性化、多孔質構造の形成、及び、維持の観点で好ましい温度範囲である。
【0022】
また、多孔質成形体(X)は市販品を用いてもよく、市販品の一例としては、アルミナSA5102、SA3132、及びSA31132(以上、製品番号)が挙げられる。これらは、サンゴバン(株)から入手できる。
【0023】
<特定化合物>
本開示に係る多孔質成形体(Y)は、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩(特定化合物)と、を含有する。
上記特定化合物を含む多孔質成形体(Y)は、α-オレフィン二量化反応における粉化抑制性により優れる。
特定化合物は、粉化抑制性の観点から、担体として上記多孔質成形体(X)に担持した担持物であることが好ましい。
例えば熱安定性の観点から、特定化合物としては、NaCO、NaHCO、KCO、及びKHCOよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましく、KCO及びNaCOよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることがより好ましく、KCOであることが更に好ましい。
特定化合物は、1種単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用して使用してもよい。
【0024】
特定化合物の含有率としては、多孔質成形体(X)100質量部に対して1質量部~230質量部の範囲である。
特定化合物の含有率が上記範囲であると、本開示に係る多孔質成形体(Y)をオレフィン二量化触媒として用いた場合に、十分な触媒性能を発揮することができる。
上記観点から、特定化合物の含有率としては、多孔質成形体(X)100質量部に対して3質量部~150質量部の範囲であることが好ましく、5質量部~100質量部の範囲であることがより好ましく、10質量部~50質量部であることが更に好ましい。
【0025】
(y-1)細孔容積
多孔質成形体(Y)の細孔容積(以下、単に「細孔容積(Y)」ともいう。)は、多孔質成形体(Y)をα-オレフィン二量化用触媒の担体に適用したときの反応選択性を向上する観点から、好ましくは0.10mL/g~0.80mL/gであり、より好ましくは0.15mL/g~0.80mL/gである。
細孔容積(Y)は、例えば、担持させる特定化合物の量又は担持方法及び担持条件を変えることによって調整することができる。
なお、上記細孔容積(Y)及び細孔直径(細孔径)(以下、「細孔直径(Y)(細孔径(Y)」ともいう。)は、水銀圧入法によって測定される細孔分布より求められる。細孔容積(Y)は、細孔直径(Y)(細孔径(Y))が0.01μm~100μmの範囲にある細孔容積の値を意味する。細孔容積(Y)の測定方法は、実施例の項に記載する。
【0026】
(y-2)メジアン細孔径
多孔質成形体(Y)のメジアン細孔径(以下、単に「メジアン細孔径(Y)」ともいう。)は、多孔質成形体(Y)をα-オレフィン二量化用触媒の担体に適用したときの反応選択性を向上する観点から、好ましくは0.01μmを超え、より好ましくは0.15μm以上である。上記メジアン細孔径の上限値は、10.0μmであることが好ましい。 なお、メジアン細孔径(Y)は、細孔直径(細孔径)が0.01μm~100μmの範囲にある細孔径を測定し、上記範囲にある細孔径累計が50%となる細孔径を2つに分けたとき、大きい側(大径側)と小さい側(小径側)が同数となる細孔径(D50)を意味する。メジアン細孔径(Y)の測定方法は、実施例の項に記載する。
【0027】
(y-3)圧壊強度
多孔質成形体(Y)の圧壊強度は、好ましくは0.7kgf以上であり、より好ましくは1.0kgf以上であり、更に好ましくは1.5kgf以上である。上限値は好ましくは15.0kgfである。
なお、多孔質成形体(Y)の圧壊強度は、前述の多孔質成形体(X)の圧壊強度と同義であり、多孔質成形体(X)と同様の方法により、圧壊強度を求めることができる。
【0028】
本開示に係る多孔質成形体(Y)は、後述の本開示に係るα-オレフィン二量化用触媒に好適に用いることができる。
【0029】
<<多孔質成形体(Y)の製造方法>>
本開示に係る多孔質成形体(Y)の製造方法は、上記要件(x-1)~(x-3)を満たす多孔質成形体(X)に、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩(特定化合物)を、上記多孔質成形体(X)100質量部に対して1質量部~230質量部の範囲で、担持させて担持物を得る工程(以下、「担持工程」ともいう。)と、上記担持物を100℃~500℃で熱処理して、多孔質成形体(Y)を得る工程(以下、「熱処理工程」ともいう。)と、を有する。
本開示に係る多孔質成形体(Y)の製造方法によって得られた多孔質成形体(Y)は、多孔質成形体(X)と特定化合物が密着した構造を有するので、得られた多孔質成形体(Y)は、α-オレフィン二量化反応の触媒として用いた場合あっても、粉化しにくいので、長期間のα-オレフィン二量化反応を継続することができる。
本開示に係る多孔質成形体(Y)の製造方法で用いられる多孔質成形体(X)及び、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩は、上述の本開示に係る多孔質成形体(Y)における多孔質成形体(X)及び、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩と同義であり、好ましい態様も同様である。
以下、本開示に係る多孔質成形体(Y)の製造方法が有する各工程について説明する。
【0030】
<担持工程>
担持工程は、多孔質成形体(X)に、特定化合物を、多孔質成形体(X)100質量部に対して1質量部~230質量部の範囲で、担持させて担持物を得る工程である。
多孔質成形体(X)に特定化合物を担持させる量(以下、「担持量」ともいう。)は、多孔質成形体(X)と特定化合物とが密着した構造を得る観点から、多孔質成形体(X)100質量部に対して、好ましくは2質量部以上であり、より好ましくは5質量部以上であり、さらに好ましくは10以上である。同様の観点から、多孔質成形体(X)における特定化合物の担持量は、多孔質成形体(X)100質量部に対して、200質量部以下であることが好ましく、より好ましくは150質量部以下であり、さらに好ましくは100質量部以下であり、特に好ましくは50質量部である。
【0031】
担持工程において、特定化合物は、溶媒に溶解又は分散させて用いてもよいが、高い担持率が得られる観点から、溶媒に溶解させて用いることが好ましい。上記溶媒としては、水であることが好ましい。
特定化合物を水に溶解して用いる場合、高い担持率が得られる観点から、特定化合物の水溶液の濃度としては、10質量%~50質量%であることが好ましく、30質量%~50質量%であることがより好ましい。
【0032】
多孔質成形体(X)に、特定化合物を担持させる方法(以下、「担持法」ともいう。)としては、種々の方法を採用することができる。
担持法としては、例えば、蒸着法、スパッタ法、化学気相成長法(CVD法)、含浸法等が挙げられる。
上記特定化合物が水に溶解する観点から、担持法としては、含浸法であることが好ましい。
含浸法としては、特に制限はなく、例えば、特定化合物の水溶液を撹拌して多孔質成形体(X)に含浸させる方法であってもよく、特定化合物の水溶液を撹拌せずに静置したまま多孔質成形体(X)に含浸させる方法であってもよい。またこれらの方法を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
多孔質成形体(Y)の製造方法における担持工程が、含浸法により特定化合物を担持させて担持物を得る工程である場合、高い担持率が得られる観点から、担持工程としては、所定の濃度に調整した上記特定化合物の水溶液に多孔質成形体(X)を含浸させる工程であることが好ましい。
【0034】
特定化合物の水溶液を静置して多孔質成形体(X)に含浸させる場合、静置時間は、特定化合物の水溶液を多孔質成形体(X)の細孔内(すなわち細孔内表面)へ十分に拡散させる観点から、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上、更らに好ましくは5時間以上である。静置時間の上限は、製造適性の観点から、24時間であることが好ましい。
【0035】
本開示に係る多孔質成形体(Y)の製造方法は、高い担持率が得られる観点から、上記担持工程において、多孔質成形体(X)に、特定化合物を含浸させた後、担持物を特定化合物の水溶液から取り出す工程(以下、「担持物を回収する工程」ともいう。)を有することが好ましい。
担持物を特定化合物の水溶液から取り出す方法としては、特に制限はなく、例えば、蒸発乾固で水を蒸発させる方法、又は、ふるいを利用して特定化合物の水溶液から担持物を回収する方法等であってもよい。ふるいを利用して特定化合物の水溶液から担持物を回収した場合、例えば、蒸発乾固の場合と比べて、低いエネルギーでかつ容易に担持物を取り出すことができる。
【0036】
<熱処理工程>
熱処理工程は、担持物を100℃~500℃で熱処理して、多孔質成形体(Y)を得る工程である。
担持物を上記温度範囲内で熱処理することで、担持物を十分に乾燥することができる。また、担持物に担持された特定化合物がNaHCO及びKHCOよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である場合には、それら化合物が熱分解して、水蒸気等のガスを発生することにより、触媒用として好適な細孔容積等を有する多孔質成形体(Y)を得ることができる。
熱処理工程の温度としては、大気圧下で100℃~500℃であり、好ましくは150℃~450℃であり、より好ましくは180℃~400℃である。
熱処理の温度は、特定化合物の種類によって任意に設定することができる。
【0037】
以上のように、本開示に係る製造方法で製造される多孔質成形体(Y)は、強度及び形状の均一性に優れるため、触媒担体、特にα-オレフィン二量化用触媒の担体として好適である。
なお、本開示に係る製造方法で得られる(Y)は、α-オレフィン二量化用触媒の担体として好適に用いられるが、α-オレフィン二量化用触媒の担体以外の触媒担体として用いてもよい。
【0038】
<<α-オレフィン二量化用触媒>>
本開示に係るα-オレフィン二量化用触媒は、本開示に係る多孔質成形体(Y)に、アルカリ金属(D)を担持させた触媒である。すなわち、本開示に係るα-オレフィン二量化用触媒は、上記多孔質成形体(Y)とアルカリ金属(D)との担持物である。
【0039】
アルカリ金属(D)としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられるが、触媒活性の観点から、ナトリウム、カリウム、又はナトリウムとカリウムとの混合物が好ましい。ここでアルカリ金属(D)とは、イオン化されていない0価の金属を示す。アルカリ金属(D)は、アルカリ金属の純度が90%以上である場合、アルカリ金属以外の成分が含まれていてもよいが実質的に含まないことが好ましい。
本開示において、実質的に含まないとは、含有量が1質量%未満であることをいい、0.1質量%未満であることが好ましい。また、アルカリ金属の純度とは、α-オレフィン二量化用触媒におけるアルカリ金属の質量分率を示す。
アルカリ金属以外の成分としては、周期表第1族元素以外の金属元素の各種酸化物又は水酸化物、周期表第1族元素以外の金属元素等が挙げられる。
アルカリ金属(D)は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0040】
α-オレフィン二量化用触媒中のアルカリ金属(D)の含有率(即ち、アルカリ金属(D)の担持率)は、アルカリ金属(D)と担体(即ち、多孔質成形体(Y))との合計質量を100質量%とするときに、通常0.5質量%~15質量%の範囲であり、好ましくは1質量%~13質量%の範囲である。
【0041】
<<α-オレフィン二量化用触媒の製造方法>>
本開示に係るα-オレフィン二量化用触媒の製造方法は、本開示に係る多孔質成形体(Y)にアルカリ金属(D)を担持させることによりα-オレフィン二量化用触媒を得る工程と、を有する。
本開示に係るα-オレフィン二量化用触媒の製造方法は、上記工程を有するので、粉化抑制性に優れたα-オレフィン二量化用触媒が得られる。また、上記工程を有するので、α-オレフィン二量化反応の反応選択性に優れたα-オレフィン二量化用触媒が得られやすい。
【0042】
α-オレフィン二量化用触媒の製造方法において、本開示に係る多孔質成形体(Y)にアルカリ金属(D)を担持させる方法としては、種々の公知の担持方法を採用してもよい。
担持処理時の温度は、大気圧下において通常150℃~400℃の範囲である。触媒活性、触媒寿命、及び、α-オレフィン二量化生成物への選択性に優れた触媒が得られる観点から、担持処理時の温度としては、200℃~350℃の範囲が好ましく、200℃~300℃の範囲がより好ましい。担持処理時の雰囲気は、水分及び酸化雰囲気でなければ、還元雰囲気であってもよく、不活性雰囲気であってもよい。安全性及び経済性を考慮すると、窒素雰囲気で担持処理することが好ましい。
【0043】
担持処理時、アルカリ金属(D)を均一に担持させるために、多孔質成形体(Y)及びアルカリ金属(D)を、振動、回転、又は撹拌して多孔質成形体(Y)に担持させることが好ましい。
アルカリ金属(D)は、担体(多孔質成形体(Y))と加熱下で接触することにより担体に含まれるアルカリ金属と交換反応を起こすことが知られている。
【0044】
α-オレフィン二量化用触媒の製造方法は、多孔質成形体(Y)を準備する工程を更に有することが好ましい。
多孔質成形体(Y)を準備する工程としては、上記多孔質成形体(Y)の製造方法が有する各工程が挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0045】
本開示に係る多孔質成形体(Y)の製造方法により得られた多孔質成形体(Y)は、従来技術で製造した成形体に比べて、細孔径がより大きく調整された多孔質成形体が得られる。また、アルカリ金属(D)の担持率と触媒活性とは相関があるので、細孔径がより大きく調整された多孔質成形体では、アルカリ金属(D)をより多く担持させることが可能となり、本開示に係るα-オレフィン二量化用触媒は、より高活性でα-オレフィン二量化反応を行うことが可能となる。
なお、一般的に、触媒活性が高くなると担体への負荷が大きくなり、触媒担体(多孔質成形体(Y))の崩壊(粉化)が高まる傾向があるが、上記多孔質成形体(Y)は、強度(例えば、半径方向の圧壊強度)が確保されているため、α-オレフィン二量化用触媒は崩壊(粉化)しにくいと考えられる。
【0046】
本開示に係る多孔質成形体(Y)の表面を観察した場合、多孔質成形体(X)に由来する色と、特定化合物に由来する色と、の判別が比較的しやすい場合がある。
本開示に係る多孔質成形体(Y)の表面の色調は、一般的に、特定化合物に由来する色である黒系の色調を示すことが多い。また、本開示に係る多孔質成形体(Y)の表面の色としては、粉化抑制性の観点から、この特定化合物に由来する色の割合が高いことが好ましい。
【0047】
本開示に係る多孔質成形体(Y)の表面の色の評価は、特定化合物に由来のする色が占める指標(CI)により判断することができる。
本明細書において、特定化合物に由来のする色が占める指標(CI)(以下「指標(CI)」ともいう。)は、以下のように求めることができる。
上記の通り、特定化合物(X)は、実質的に粒子の形状である。
1:50個以上の多孔質成形体(Y)が視野に収まるように、倍率を調整して、デジタルカメラで多孔質成形体(Y)を撮影し、画像の中から、任意の50個の多孔質成形体(Y)を選択する。
2:次いで、50個の多孔質成形体(Y)について、(i)多孔質成形体(Y)の表面のほぼ全面が特定化合物に由来の色を呈しているのもの、(ii)多孔質成形体(Y)の表面の部分的に色が付いているもの、(iii)多孔質成形体(Y)の表面にほぼ色がついていないもの、の3つに分類する。
3:(i)~(iii)に分類した多孔質成形体(Y)について、以下のような評点をつけ、評点数の総和を指標(CI)とする。
【0048】
2点:多孔質成形体(Y)の表面のほぼ全面が、特定化合物由来の色を呈している。
1点:多孔質成形体(Y)の表面の部分的に色が付いている。
0点:多孔質成形体(Y)の表面のほぼ色がついていない。
【0049】
従って、50個の多孔質成形体(Y)の全てが特定化合物に由来の色を呈する場合、指標(CI)は100点となり、多孔質成形体の表面にほぼ色がついていないもの(すなわち、特定化合物が担持されていない)場合は、0点となる。
【0050】
指標(CI)は、粉化抑制性の観点から、100 ≧ 指標(CI) ≧ 20であることが好ましい。
【0051】
指標(CI)値の好ましい下限値は、30であり、より好ましくは40であり、更に好ましくは45である。一方、指標(CI)値の好ましい上限値は、95であり、より好ましくは、92である。
粉化抑制性の観点から、(CI)値は、30~95であることが好ましく、40~92であることが好ましく、45~92であることがより好ましい。
また、多孔質成形体(Y)のサイズ(大きさ)が小さい場合は、デジタルカメラの代わりに光学顕微鏡などの適したデバイスで撮影して指標(CI)値を求めることができる。
【0052】
<<α-オレフィン二量体の製造方法>>
本開示に係るα-オレフィン二量体の製造方法は、本開示に係るα-オレフィン二量化用触媒の存在下でα-オレフィンの二量化反応を行うことによりα-オレフィンの二量体を得る工程と、を有する。
α-オレフィン二量体の製造方法は上記工程を有するので、粉化抑制性に優れたα-オレフィン二量化用触媒の存在下でα-オレフィンの二量化反応を行うので、α-オレフィン二量化生成物への選択性に優れやすく、かつ、高い収率でα-オレフィン二量体を得ることができる。
【0053】
α-オレフィン二量体の製造方法に用いられるα-オレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン等の低級α-オレフィンが挙げられる。
α-オレフィン二量体の製造方法は、上記α-オレフィン二量化用触媒の存在下でα-オレフィンの二量化反応を行うことで、低級α-オレフィンの二量化反応の中でも、プロピレンの二量化による4-メチル-1-ペンテン、及び、1-ブテンとエチレンとの共二量化による3-メチル-1-ペンテンを高い収率で得られる、
本開示に係るα-オレフィン二量体の製造方法では、本開示に係る、粉化抑制性に優れるα-オレフィン二量化触媒を用いるので、4-メチル-1-ペンテンや、3-メチル-1-ペンテン等を長期わたって安定的に高収率で製造することができる。
【0054】
本開示に係るα-オレフィン二量体の製造方法において、α-オレフィンの二量化反応における反応温度は、通常、0℃~300℃であり、好ましくは50℃~200℃である。
また、反応圧力は、通常、常圧、すなわち、約0.1Mpa~19.6MPa(200kg/cm-G)であり、好ましくは1.96MPa~14.7MPa(20kg/cm-G~150kg/cm-G)の範囲である。
α-オレフィンの二量化反応におけるα-オレフィンの状態としては、二量化反応条件及び用いるα-オレフィンの種類によって異なるが、一般的に液相状態、気相状態又は超臨界状態を取りうる。
また、α-オレフィンの二量化反応は、固定床方式で行うこともできるし、流動床方式で行うこともでき、中でも、固定床方式で行うことが好ましい。固定床方式で二量化反応を行う場合に、α-オレフィンの液空間速度(LHSV)は通常0.1hr-1~10hr-1であり、好ましくは0.5hr-1~5hr-1の範囲である。
二量化反応終了後の混合物から定法に従って未反応のα-オレフィン及び二量化反生成物が分離され、未反応のα-オレフィンは二量化反応に循環再利用される。
【実施例
【0055】
以下、実施例によって本開示の実施形態を具体的に説明するが、以下の実施例に示す原料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本開示の実施形態の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本開示の実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
[細孔容積(X)及び(Y)、並びに、メジアン細孔径(X)及び(Y)の測定]
既述の方法のとおり、水銀ポロシメーター(マイクロメトリクス社製、型番:Auto PoreIV)を用いて水銀圧入法によって、細孔直径(すなわち、細孔径)が0.01μm~100μmの範囲にある細孔の細孔容積(mL/g)を測定した。また、上記範囲にある細孔径を測定し、その測定値からメジアン細孔径(μm)を算出した。
【0057】
[多孔質成形体の圧壊強度の測定]
デジタル硬度計(藤原製作所製、型番:KHT-40N)を用い、JIS Z8841(1993)「造粒物-強度試験法」に記載の方法に従って、多孔質成形体の半径方向(すなわち、円柱状成形体の胴方向(長手方向))の圧壊強度(kgf)を測定した。
圧壊強度の測定原理は、静止している試料台の上に、被測定対象である円柱状の多孔質成形体を載置し、可動式の加圧面を上部から一定速度で下降させ、円柱状の多孔質成形体に押し付けて破壊するときの強度を測定するものである。
【0058】
(実施例1)
〔多孔質成形体(X1)〕
多孔質成形体(X1)として、サンゴバン(株)製Al(製品番号;SA5102、直径3.0mm、高さ2mm~7mm、細孔容積0.26mL/g、メジアン細孔径1.17μm、圧壊強度9.4kgf)を用いた。
【0059】
〔多孔質成形体(Y1)の製造〕
多孔質成形体(X1)57.5gを、30質量%のKCO水溶液100gに含浸させ、室温(25℃)で5時間静置した。その後、ふるい(目開き径:710μm)を使ってKCO水溶液から多孔質成形体(X1)を取り出し、電気炉で乾燥空気中300℃で2時間熱処理を施し、多孔質成形体(X1)100質量部に対して10質量部のKCOが担持された多孔質成形体(Y1)を得た。
得られた多孔質成形体(Y1)の細孔容積、メジアン細孔径及び半径方向の圧壊強度を表1に示す。
【0060】
[α-オレフィン二量化用触媒(Z1)の調製]
上記で得られた多孔質成形体(Y1)98.0質量部を窒素気流中、300℃で2時間乾燥させた後、窒素雰囲気気流下、ナトリウム2.0質量部を添加し、280℃で3.5時間撹拌してα-オレフィン二量化用触媒(Z1)を調製した。
【0061】
担持容器への添加したナトリウムの付着は見られなかったため、多孔質成形体(Y1)にナトリウムが全量担持されていると判断した。この際のα-オレフィン二量化用触媒(Z1)中のナトリウムの含有率(すなわち、ナトリウムの担持率)は2.0質量%であった。
【0062】
[評価]
-粉化抑制性:粉化率-
[エチレンと1-ブテンとの二量化反応]
上記調製方法により得られたα-オレフィン二量化用触媒(Z1)2.5gを単管型反応器(直径18mm)に充填し、反応器内温度80℃、反応圧力9.3MPa、流量7.2g/hで触媒層に連続的にエチレンと1-ブテンの混合液を供給し、エチレンと1-ブテンとの二量化反応による3-メチル-1-ペンテン(以下、3MP-1と略す)の合成反応を行った。流通反応を140時間実施後、反応器内よりα―オレフィン二量化触媒(Z1)を取り出し、重量を測定した。
その後、取り出したα-オレフィン二量化触媒(Z1)の全てを目開き径が500μmの網ふるいの上部に入れて、手動でふるいにかけ、ふるいを通過(パス)した粉体質量を反応器内から取り出したα-オレフィン二量化触媒(Z1)の重量で割ることにより、触媒の粉化率を算出した。結果を表1に示す。
【0063】
(実施例2)
[多孔質成形体(X2)]
多孔質成形体(X2)として、サンゴバン(株)製Al(製品番号;SA3132、直径3.0mm、高さ2mm~7mm、細孔容積0.55mL/g、メジアン細孔径0.87μm、圧壊強度1.5kgf)を用いた。
【0064】
[多孔質成形体(Y2)の製造]
多孔質成形体(X2)30.9gを、40質量%のKCO水溶液100gに含浸させ、室温で5時間静置した。その後、ふるい(開き径:710μm)を使ってKCO水溶液から多孔質成形体(X2)を取り出し、電気炉で乾燥空気中300℃で2時間熱処理を施し、多孔質成形体(X2)100質量部に対して32質量部のKCOを担持させた多孔質成形体(Y2)を得た。
得られた多孔質成形体(Y2)の細孔容積、メジアン細孔径及び半径方向の圧壊強度を表1に示す。
【0065】
[α-オレフィン二量化用触媒(Z2)の調製]
上記多孔質成形体(Y2)90.0質量部を窒素気流中、300℃で2時間乾燥させた後、窒素雰囲気気流下、ナトリウム10.0質量部を添加し、280℃で3.5時間撹拌してα-オレフィン二量化用触媒(Z2)を調製した。
【0066】
担持容器への添加したナトリウムの付着は見られなかったため、多孔質成形体(Y2)にナトリウムが全量担持されていると判断した。この際のα-オレフィン二量化用触媒(Z2)中のナトリウムの含有率(すなわち、ナトリウムの担持率)は10.0質量%であった。
得られたα-オレフィン二量化用触媒(Z2)を用いて、実施例1と同様にα-オレフィンの二量化反応を行って評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
(実施例3)
[多孔質成形体(X3)]
多孔質成形体(X3)として、サンゴバン(株)製Al(製品番号;SA31132、直径3.0mm、高さ2mm~7mm、細孔容積0.77mL/g、メジアン細孔径0.15μm、圧壊強度3.5kgf)を用いた。
【0068】
〔多孔質成形体(Y3)の製造〕
多孔質成形体(X3)26.8gを、50質量%のKCO水溶液100gに含浸させ、室温で5時間静置した。その後、ふるいを使ってKCO水溶液から多孔質成形体(X3)を取り出し、電気炉で乾燥空気中300℃で2時間熱処理を施し、多孔質成形体(X3)100質量部に対して68質量部のKCOを担持させた多孔質成形体(Y3)を得た。
得られた多孔質成形体(Y3)の細孔容積、メジアン細孔径及び半径方向の圧壊強度を表1に示す。
【0069】
[α-オレフィン二量化用触媒(Z3)の調製]
上記多孔質成形体(Y3)96.5質量部を窒素気流中、300℃で2時間乾燥させた後、窒素雰囲気気流下、ナトリウム3.5質量部を添加し、280℃で3.5時間撹拌してα-オレフィン二量化用触媒(Z3)を調製した。
【0070】
添加したナトリウムの担持容器への付着は見られなかったため、多孔質成形体へナトリウムが全量担持されていると判断した。この際のα-オレフィン二量化用触媒(Z3)中のナトリウムの含有率(すなわち、ナトリウムの担持率)は3.5質量%であった。得られたα-オレフィン二量化用触媒(Z3)を用いて、実施例1と同様にα-オレフィンの二量化反応を行って評価を行った。結果を表1に示す。
【0071】
(実施例4)
[多孔質成形体(X4)]
多孔質成形体(X4)として、サンゴバン(株)製Al(製品番号;SA31132、直径3.0mm、高さ2mm~7mm、細孔容積0.77mL/g、メジアン細孔径0.15μm、圧壊強度3.5kgf)を用いた。
【0072】
[多孔質成形体(Y4)の製造]
多孔質成形体(X4)26.9gを、30質量%のKCO水溶液100gに含浸させ、室温で5時間静置した。その後、ふるいを使ってKCO水溶液から多孔質成形体(X4)を取り出し、電気炉で乾燥空気中300℃で2時間熱処理を施し、多孔質成形体(X4)100質量部に対して35質量部のKCOを担持させた多孔質成形体(Y4)を得た。
得られた多孔質成形体(Y4)の細孔容積、メジアン細孔径及び半径方向の圧壊強度を表1に示す。
【0073】
[α-オレフィン二量化用触媒(Z4)の調製]
上記多孔質成形体(Y4)87.0質量部を窒素気流中、300℃で2時間乾燥させた後、窒素雰囲気気流下、ナトリウム13.0質量部を添加し、280℃で3.5時間撹拌してα-オレフィン二量化用触媒(Z4)を調製した。
【0074】
添加したナトリウムの担持容器への付着は見られなかったため、多孔質成形体へナトリウムが全量担持されていると判断した。この際のα-オレフィン二量化用触媒(Z4)中のナトリウムの含有率(すなわち、ナトリウムの担持率)は13.0質量%であった。得られたα-オレフィン二量化用触媒(Z4)を用いて、実施例1と同様にα-オレフィンの二量化反応を行って評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
(比較例1)
[打錠成形体(T1)の調整]
100質量部のKCO(旭硝子(株)製、純度99%)に、0.9質量部のグラファイト(純度98%、メジアン径(d50)7μm、BET法で測定した比表面積150m/g)を均一に混合し、成形体密度が1.7g/mLとなるように圧縮強度を制御して打錠し、乾燥空気中で300℃2時間の熱処理を施した打錠成形体(T1)を得た。
得られた打錠成形体(T1)の細孔容積、メジアン細孔径及び半径方向の圧壊強度を表1に示す。
【0076】
[α-オレフィン二量化用触媒(T1)の調製]
実施例3において、多孔質成形体(Y3)の代わりに打錠成形体(T1)を用いた以外は実施例3と同様の方法でα-オレフィン二量化用触媒(T1)を調製した。α-オレフィン二量化用触媒(T1)中のナトリウムの含有率(すなわち、ナトリウムの担持率)は表1に示す。
得られたα-オレフィン二量化用触媒(T1)を用いて、実施例1と同様にα-オレフィンの二量化反応を行って評価を行った。結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1に示すように、上記要件(x-1)~(x-4)を満たす多孔質成形体(X)と、NaCO、NaHCO、KCO、及びKHCOよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含有し、化合物の含有率は、多孔質成形体(X)100質量部に対して1質量部~230質量部の範囲である、実施例1~4の多孔質成形体(Y)は、α-オレフィン二量化反応に用いた場合であっても、α-オレフィン二量化反応における粉化の抑制性に優れていた。
一方、上記要件(x-1)~(x-4)を満たす多孔質成形体(X)を含まない、比較例1の打錠成形体(T1)は、α-オレフィン二量化反応に用いた場合、α-オレフィン二量化反応による粉化が確認された。
【0079】
(実施例5)
[多孔質成形体(X5)]
多孔質成形体(X5)として、サンゴバン(株)製Al(製品番号;SA31132、直径3.0mm、高さ2mm~7mm、細孔容積0.77mL/g、メジアン細孔径0.15μm、圧壊強度3.5kgf)を、1,200℃、5時間焼成処理を行ったもの(細孔容積0.69mL/g、メジアン細孔径0.52μm、圧壊強度3.7kgf)を用いた。
【0080】
〔多孔質成形体(Y5)の製造〕
多孔質成形体(X5)300gを、30質量%のKCO水溶液500gに含浸させ、室温で5時間静置した。その後、ふるいを使ってKCO水溶液から多孔質成形体(X5)を取り出し、電気炉で乾燥空気中300℃で2時間熱処理を施し、多孔質成形体(X5)100質量部に対して28質量部のKCOを担持させた多孔質成形体(Y5)を得た。
【0081】
[α-オレフィン二量化用触媒(Z5)の調製]
上記多孔質成形体(Y5)87.0質量部を窒素気流中、300℃で2時間乾燥させた後、窒素雰囲気気流下、ナトリウム13.0質量部を添加し、280℃で3.5時間撹拌してα-オレフィン二量化用触媒(Z5)を調製した。
【0082】
添加したナトリウムの担持容器への付着は見られなかったため、多孔質成形体へナトリウムが全量担持されていると判断した。この際の担持率は13.0質量%であった。得られたα-オレフィン二量化用触媒(Z5)を用いて、実施例1と同様にα-オレフィンの二量化反応を行った。結果を表2に示す。
【0083】
(実施例6)
[多孔質成形体(X6)]
多孔質成形体(X6)として、サンゴバン(株)製Al(製品番号;SA31132、直径3.0mm、高さ2mm~7mm、細孔容積0.77mL/g、メジアン細孔径0.15μm、圧壊強度3.5kgf)を、1,200℃5時間焼成処理を行ったもの(細孔容積0.69mL/g、メジアン細孔径0.52μm、圧壊強度3.7kgf)を用いた。
【0084】
〔多孔質成形体(Y6)の製造〕
多孔質成形体(X6)32.8gを、25質量%のKCO水溶液100gに含浸させ、室温で5時間静置した。その後、ふるいを使ってKCO水溶液から多孔質成形体(X6)を取り出し、電気炉で乾燥空気中300℃で2時間熱処理を施し、多孔質成形体(X6)100質量部に対して24質量部のKCOを担持させた多孔質成形体(Y6)を得た。
【0085】
[α-オレフィン二量化用触媒(Z6)の調製]
上記多孔質成形体(Y6)87.0質量部を窒素気流中、300℃で2時間乾燥させた後、窒素雰囲気気流下、ナトリウム13.0質量部を添加し、280℃で3.5時間撹拌してα-オレフィン二量化用触媒(Z6)を調製した。
【0086】
添加したナトリウムの担持容器への付着は見られなかったため、多孔質成形体へナトリウムが全量担持されていると判断した。この際の担持率は13.0質量%であった。得られたα-オレフィン二量化用触媒(Z6)を用いて、実施例1と同様にα-オレフィンの二量化反応を行って評価を行った。結果を表2に示す。
【0087】
(実施例7)
[α-オレフィン二量化用触媒(Z7)の調製]
上記多孔質成形体(Y6)84.0質量部を窒素気流中、300℃で2時間乾燥させた後、窒素雰囲気気流下、ナトリウム16.0質量部を添加し、280℃で3.5時間撹拌してα-オレフィン二量化用触媒(Z6)を調製した。
【0088】
添加したナトリウムの担持容器への付着は見られなかったため、多孔質成形体へナトリウムが全量担持されていると判断した。この際の担持率は16.0質量%であった。得られたα-オレフィン二量化用触媒(Z7)を用いて、実施例1と同様にα-オレフィンの二量化反応を行って評価を行った。結果を表2に示す。
【0089】
(実施例8)
実施例6で調製したα-オレフィン二量化用触媒(Z6)3.8gを単管型反応器(直径18mm)に充填し、反応器内温度140℃、反応圧力9.8MPa、プロピレン流量4g/hで触媒層に連続的にプロピレンを供給し、プロピレンの二量化反応により4-メチル-1-ペンテン(以下、4MP-1と略す)を得た。流通反応を実施し4MP-1の生成を確認した。反応器内よりα―オレフィン二量化触媒(Z6)を取り出し、重量を測定した。その後、取り出したα―オレフィン二量化触媒(Z6)の全てを500μmの網ふるいの上部に入れて手動でふるいにかけた。ふるいをパスした触媒(Z6)の粉体の質量を、反応器内から取り出した触媒(Z6)の重量で割ることにより、触媒の粉化率を算出した。α-オレフィン二量化用触媒(Z6)の粉化率は0%であった。
【0090】
-多孔質成形体(Y)の表面の色の評価-
上記実施例5~実施例8における多孔質成形体(Y6)は、既述の方法に従い、デジタルカメラを用いた写真から、任意の50個の得られた多孔質成形体(Y6)について、上述の方法に基づき、指標(CI)を求めた。結果を表2に示す。なお、実施例8における指数(CI)は98であった。
【0091】
【表2】
【0092】
表2に示すとおり、実施例5~実施例7における本開示に係る多孔質成形体(Y)及びα-オレフィン二量化用触媒は、粉化抑制性に優れていることが分かる。
以上より、本開示に係る多孔質成形体(Y)及びその製造方法、α-オレフィン二量化用触媒及びその製造方法、並びに、α-オレフィン二量体の製造方法は、α-オレフィン二量化反応における粉化の抑制性に優れる。
【0093】
2018年3月29日に出願された日本国特許出願第2018-066083号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び、技術規格は、個々の文献、特許出願、及び、技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。