(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】ドラムチューブに挿入された冷却スリーブを有する電動搬送ローラ
(51)【国際特許分類】
B65G 39/00 20060101AFI20220203BHJP
B65G 23/08 20060101ALI20220203BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B65G39/00 A
B65G23/08
H02K7/14 Z
(21)【出願番号】P 2020515214
(86)(22)【出願日】2018-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2018073849
(87)【国際公開番号】W WO2019052871
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2020-04-20
(31)【優先権主張番号】102017121486.0
(32)【優先日】2017-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506301427
【氏名又は名称】インターロール・ホールディング・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ・ドロク
(72)【発明者】
【氏名】ラインホルト・ヴァイヒブロット
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-008882(JP,U)
【文献】実開昭54-002985(JP,U)
【文献】特開昭60-122615(JP,A)
【文献】特開平10-304618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 39/00
B65G 23/08
H02K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送容器やパレット等を搬送するための搬送経路に使用するための電動搬送ローラ(1)であって、
内部に
形成された空
洞と長手方向の軸(A)とを有するドラムチューブ(2)と、
前記長手方向の軸(A)に沿って延在すると共に、前記ドラムチューブ(2)を
少なくとも1つの軸受(6)によって支持する軸部(4)と、
前
記空洞に配置された駆動ユニット(14)と、
前記駆動ユニット(14)から前記ドラムチューブ(2)の内周面(32)にトルクを伝達するように適応したカップリングユニット(22)と、を備え、
前記カップリングユニット(22)は、前記駆動ユニット(14)の動力を伝えるドライブ入力部分と外側のドライブ出力部分を備えたカップリングブッシュ(50)を有し、
前記カップリングブッシュ(50)は、前記ドラムチューブ(2)の内周面(32)に接続され、
半径方向内側方向に前記ドラムチューブ(2)に取り付けられ、少なくとも前記駆動ユニット(14)の一部を半径方向に覆う冷却スリーブ(30)をさらに備え、その結果、前記駆動ユニット(14)と前記冷却スリーブ(30)との間に半径方向の空気層(S)を形成する、電動搬送ローラ。
【請求項2】
前記冷却スリーブ(30)が前記ドラムチューブ(2)に圧入された、請求項1に記載の電動搬送ローラ。
【請求項3】
前記冷却スリーブ(30)が軸方向に挿入された、請求項1または2に記載の電動搬送ローラ。
【請求項4】
前記駆動ユニット(14)は電気モータ(16)を有し、前記冷却スリーブ(30)が前記電気モータ(16)
を実質的に完全に覆って軸方
向に延在する、請求項1から3のいずれか一項に記載の電動搬送ローラ。
【請求項5】
前記駆動ユニット(14)はギアユニット(18)を有し、前記冷却スリーブ(30)が前記ギアユニット(18)
を実質的に完全に覆って軸方
向に延在する、請求項1から4のいずれか一項に記載の電動搬送ローラ。
【請求項6】
前記空気層(S)の半径方向の幅(S1、S2)が軸方向に一定である、請求項1から5のいずれか一項に記載の電動搬送ローラ。
【請求項7】
前記空気層(S)の半径方向の幅(S1、S2)が0.1mmから2.5mm、望ましくは0.1mmから1.0mm、さらに望ましくは0.5mm付近である、請求項1から6のいずれか一項に記載の電動搬送ローラ。
【請求項8】
前記冷却スリーブ(30)の半径方向内側面(34)の表面粗さRzが、50μm以下、望ましくは40μm以下、さらに望ましくは30μm以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載の電動搬送ローラ。
【請求項9】
前記冷却スリーブ(30)の半径方向内側面(34)に、熱放射を吸収するための表面処理が施されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の電動搬送ローラ。
【請求項10】
前記表面処理が、暗い色素を用いたコーティング、好ましくは黒、好ましくは艶消し、陽極酸化、ブロンズ処理(黒染加工処理)、銅めっき、の少なくとも一つである、請求項9に記載の電動搬送ローラ。
【請求項11】
前記冷却スリーブ(30)の熱伝導率が100W/mK以上、望ましくは130W/mK以上である、請求項1から10のいずれか一項に記載の電動搬送ローラ。
【請求項12】
前記冷却スリーブ(30)の材料の密度が3.5kg/dm
3以下、望ましくは3.0kg/dm
3以下、より望ましくは2.9kg/dm
3以下である、請求項1から11のいずれか一項に記載の電動搬送ローラ。
【請求項13】
前記冷却スリーブ(30)の材料がアルミニウム材料である、請求項1から12のいずれか一項に記載の電動搬送ローラ。
【請求項14】
前記カップリングブッシュ(50)は、トルク伝達のために、特定箇所でのみ、
前記ドラムチューブ(2)の内周面(32)に摩擦嵌合で連結される、請求項1から13のいずれか一項に記載の電動搬送ローラ。
【請求項15】
ドラムチューブ(2)の提供若しくは製造、
冷却スリーブ(30)の提供若しくは製造、
前記冷却スリーブ(30)を前記ドラムチューブ(2)内に固定するため、前記冷却スリーブ(30)の前記ドラムチューブ(2)への挿入、
駆動ユニット(14)と前記冷却スリーブ(30)との間に半径方向の空気層(S)を形成するよう、前記駆動ユニット(14)の前記冷却スリーブ(30)への挿入、
の工程からな
り、
前記冷却スリーブ(30)の軸方向の溝が前記ドラムチューブ(2)の軸方向の溶接痕に沿わないように前記ドラムチューブ(2)に挿入される、電動搬送ローラの製造方法。
【請求項16】
外径が前もって決められた複数の前記ドラムチューブ(2)の内から1つを選ぶ工程を有し、
前記ドラムチューブ(2)の選択肢として、少なくとも1つは外径50mm、1つは外径60mmのものを含み、
複数の前記冷却スリーブ(30)の内から1つを選ぶ工程を有し、
前記冷却スリーブ(30)の選択肢として、少なくとも1つは外径50mmの前記ドラムチューブ(2)に該当するもの、1つは外径60mmの前記ドラムチューブ(2)に該当するものを含み、
前記冷却スリーブ(30)に前記駆動ユニット(14)を挿入した後、前記空気層(S)の幅(S1、S2)が0.1mmから2.5mm、望ましくは0.1mmから1.0mm、さらに望ましくは0.5mm付近であるように
前記冷却スリーブ(30)を選ぶ、請求項1
5に記載の電動搬送ローラの製造方法。
【請求項17】
前記駆動ユニット(14)の動力を伝えるドライブ入力部分と外側のドライブ出力部分を備え
たカップリングユニット(22)の提供若しくは製造、
前記カップリングユニット(22)が、トルク伝達のために、特定箇所でのみ、前記ドラムチューブ(2)の内周面(32)に摩擦嵌合で連結されるように、前記カップリングユニット(22)の前記ドラムチューブ(2)への挿入、の工程を含む、請求項15
または16に記載の電動搬送ローラの製造方法。
【請求項18】
前記カップリングユニット(22)および前記冷却スリーブ(30)の挿入を一工程で行う、請求項
17に記載の電動搬送ローラの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送容器やパレット等を搬送するための電動搬送ローラに関する。前記電動搬送ローラは、内部に空洞と長手方向の軸とを有するドラムチューブと、長手方向の軸に延在すると共に、少なくとも一つの回転軸受によってドラムチューブを支持する軸部と、空洞に配置された駆動ユニットと、を有する。本発明は、さらに、上記タイプの電動搬送ローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動搬送ローラは物流用途で様々な目的に使用される。例えば、パレット、小荷物配送センターでの搬送小荷物、様々な種類の倉庫での搬送容器、空港での手荷物、の搬送で、および他の多くの用途で使用することができる。そのようなローラは、互いに並んで配置され、複数のローラを備える搬送経路で通常使用される。それぞれのローラの上部周面が搬送する物品を受ける役割を果たすように配置されている。一方で、このような搬送経路は、駆動されずに、単に搬送枠組に回転可能に取り付けられるだけのアイドラローラを備える。さらに、搬送経路は、電気駆動ユニットによって回転する電動搬送ローラを備える。これらの電動搬送ローラは、駆動ユニットがローラ自体の内部に配置されるように構成される。したがって、ローラを回転させるためにローラ本体やドラムチューブの外側に設置される機械的構成要素は不要である。一方で、電動搬送ローラは、物品を、そのドラムチューブの外周面を介して、直接搬送するように働く。他方で、電動搬送ローラの回転を、例えばベルト駆動等の、伝達機構を用いて、1つ以上のアイドラローラに伝達することにより、電動搬送ローラはアイドラローラも回転させることができ、そのアイドラローラの外周面を介して物品を搬送することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのような電動搬送ローラ、特に高パワーの駆動ユニットを用いるもの、に関連する課題の一つが、駆動ユニットに充分な冷却の供給である。油冷却は、構造上の条件により実現できないことが多い。また、食料品加工業界においては、油冷却は望ましくない。したがって、乾式電動搬送ローラに高出力を実装するためには、冷却が必要である。
【0004】
例えば、ドイツ特許公開公報第2238562号より、ロータラミネート(rotor laminations)間に半径方向内側方向の熱伝導チューブを有する内蔵ロータ電機モータが知られている。熱伝導チューブは、ロータラミネートパケット(rotor laminations packets)間の熱伝導面をつなぎ、回転モータを冷却する。
【0005】
しかし、この内蔵ロータ電機モータを搬送ローラに使用すると、熱をドラムチューブの内部から外部へ移動させるという課題がいまだ残る。
【0006】
ドイツ特許公開公報第10324664号は、電気モータと軸方向に隣接する吸熱源を有するローラモータを提案する。吸熱源は、電気モータ内部から軸方向に隣接する吸熱源へ熱を伝導させ、そしてさらにドラムチューブへと移動させるため、外側ロータ電気モータのステータにチューブで接続される。
【0007】
これの欠点の一つは、複雑な構造と外側ロータ電気モータに対する制限である。さらに、不均一な熱移動およびドラムチューブ外部の不均一な加熱が挙げられる。
【0008】
似た解決策がドイツ特許公開公報第102006060009号より知られている。そこで提案されている解決策では、ロータステータの両端に熱伝導素子が設けられている。しかし、ここでも前記欠点が該当する。
【0009】
本出願人によるドイツ特許公開公報第10 2008 061 979号より、内蔵ロータ電気モータ及び熱伝導体を有するドラムモータが知られている。熱伝導体は、電気モータと軸方向に隣接するように配置されている。この熱伝導体の長所は、ドラムチューブへのより一様な熱伝達、およびドラムチューブのより均一な過熱を保証できるように、半径方向に拡張する複数の段階を有することである。しかし、より多くの熱を放熱させ、より均一かつ高効率な冷却を実現する必要が依然としてある。
【0010】
特に、一般的にドラムモータよりも外形が小さく、設置スペースが限られた電動搬送ローラにおいても、使用の選択を保証するべきである。
【0011】
したがって、本発明の目的は、向上した冷却機能を有し、簡単に設置でき、ドラムチューブから均一な放熱を実現できる、上記のタイプの電動搬送ローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記のような電動搬送ローラにおいて、この目的は、ドラムチューブの半径方向内側方向に取り付けられ、駆動ユニットの少なくとも一部を覆い、駆動ユニットと冷却スリーブとの間に半径方向に空気層が形成される、冷却スリーブによって達成される。
【0013】
一方で、冷却スリーブは駆動ユニットを半径方向に覆うため、冷却スリーブを駆動ユニットと軸方向に隣接して配置した場合より、冷却スリーブと駆動ユニットとの間で大きな伝達面積が得られる。他方で、冷却スリーブを駆動ユニットでなくドラムチューブに取り付ける。理論上、このような冷却スリーブを駆動ユニットの外側に半径方向に、例えば駆動ユニットにクランプで、取り付けることも可能である。しかし、駆動ユニットにダメージを与える危険性があり、駆動ユニットの整備が必要になると問題が発生し得る。
【0014】
本発明によると、冷却スリーブをドラムチューブに取り付け、駆動ユニットと冷却スリーブとの間に空気層が形成される。駆動ユニットと冷却スリーブとの間の熱移動は、主に輻射で行われ、一部のみ空気層の空気の対流によって行われる。冷却スリーブが駆動ユニットを半径方向に覆うため、ドラムチューブの外側において、顕著により多くの放熱が行われる。これは、駆動ユニットが配置されている部分以外のドラムチューブの部分が放熱に使用できるためである。駆動ユニット付近も特に、放熱に使用できる。
【0015】
さらに、これにより設置が単純になる。駆動ユニットの変更は不要である。駆動ユニットとドラムチューブ間の空間のみを、冷却スリーブの収容に使用する。冷却スリーブは、寸法公差を補正するために、または、変動するドラムチューブ直径に駆動ユニット直径を対応させるためにも、応用することができる。例えば、ドラムチューブが50mm、60mm、80mmのいずれかの外径を有することが考えられる。しかし、これら3つのドラムチューブ全てを、同じ駆動ユニットで動かすことが可能である。同じ駆動ユニットが、外形60mmや80mmのドラムチューブに使用されたら、駆動ユニットとドラムチューブの内面の半径方向の間隔が大きくなり、輻射による冷却が制限されてしまう。ここで、本発明によると、冷却スリーブを有効に使用することができる。冷却スリーブは、ドラムチューブの外径にかかわらず、冷却スリーブと駆動ユニットとの間の空気層を一定に維持するために使用することができる。したがって、冷却スリーブへの輻射による駆動ユニットの冷却はドラムチューブの外径から概ね独立している。ドラムチューブの外径として、50mm、60mm、80mm以外にも55mm等と、他の外径も取り得ることを理解する必要がある。外径は、望まれた要求に主に依存する。
【0016】
第1の好ましい設計では、冷却スリーブはドラムチューブに圧入される。ドラムチューブに、冷却スリーブが押し込まれることが望ましい。これによって、さらに組み立てが単純になり、ネジ等の余分な組み立て部品の追加を避けることができる。冷却スリーブを固定するための溶接痕の形成も不要である。さらに、ドラムチューブに摩擦嵌合した冷却スリーブは、冷却スリーブとドラムチューブの内周面との間で面接触を保証し、これは冷却スリーブからドラムチューブへの熱伝導による熱移動を特に高効率にする。
【0017】
冷却スリーブを軸方向に挿入することも望ましい。冷却スリーブが、中心軸と平行方向に延在する溝を有することが望ましい。しかし、この溝は、前記中心軸の周りに形成された螺旋であってもよい。この構造は、設置をさらに単純にする。組み立ての際に、ドラムチューブに挿入するために、冷却スリーブを少し圧縮することができる。さらに、軸方向の溝によって、ドラムチューブの特定の半径方向公差を埋め合わせることができる。ドラムチューブは通常軸方向に溶接されており、軸方向に延在する溶接痕を有する。その結果、ドラムチューブの内径は少し変動することがある。そのため、このような公差の埋め合わせができるように、かつ冷却スリーブとドラムチューブが強固な嵌合を形成するよう、冷却スリーブを設計するとよい。冷却スリーブが意図せず緩むことがないように、ドラムチューブに対して永久的な型締力が働くように設計することが望ましい。溝は、外周方向において広くある必要は特にない。溝は、冷却スリーブを簡単に圧縮できる程度に広く、かつ熱伝導を最大限に活用できる程度に狭くするとよい。軸方向の溝は連続していることが望ましい。つまり、冷却スリーブは完全に挿入される。どちらにせよ、部品や組み立て工数の追加を概ね避けるため、冷却スリーブは一つの部品として設計される。
【0018】
さらに組み立てを単純にするためには、冷却スリーブの片方の先端に面取り部を設けることが考えられる。面取り部の外径が冷却スリーブの外径より小さくなるように、軸方向に環状延在部分を有することが望ましい。これによって、ドラムチューブ内における冷却スリーブの位置決めとドラムチューブ内への冷却スリーブの挿入や押し込みがさらに単純になる。
【0019】
駆動ユニットには電気モータがあり、冷却スリーブが、電気モータを実質的に完全に覆うように、軸方向に延在することが望ましい。電気モータは、最も熱を発生させる部品であり、この熱を放熱する必要がある。電気モータを充分に冷却することで、モータのリミッター作動温度に達する回数や速度が減少するため、モータ性能の向上を実現する。電気モータが配置されている駆動ユニットの部分は冷却を必要とする。
【0020】
電気モータは、内蔵ロータ電気モータであることが望ましい。電気モータにおいて、ステータは電動搬送ローラの軸部に接続され、同軸部に支持される。原則として、前記のような電動搬送ローラの設計が知られている。
【0021】
さらに、駆動ユニットの構成にギアユニットが含まれ、ギアユニットを実質的に完全に覆うように冷却スリーブが延在することが望ましい。ギアユニットの種類によって、冷却スリーブによるギアユニットの覆い方が異なることがある。したがって、例えば、2段ギアユニットにおいては、冷却スリーブがギアユニットを完全に覆うように延在することが望ましく、相当する軸方向により長いハウジングを有する3段ギアユニットにおいては、冷却スリーブがハウジングを完全に十分に覆うように延在することが望ましく、例えば最初の2つのギアを覆うように延在する。これによって、両方のギアユニット種類に対応できる1種類のみの冷却スリーブを提供し、同一部品を使用することができる。原則、軸方向に最も長いギアユニットを完全に覆うことができ、他のより短いギアユニットを覆う際には軸方向に少し延在する冷却スリーブであれば、ある搬送ローラシステムにおいて同一の部品を冷却スリーブとして使用することができる。ギアユニットは、通常、電気モータと軸方向に隣接するように配置される。したがって、ギアユニットにおいては、電気モータで発生した熱を吸収し、自身の摩擦により熱を発生させる。したがって、冷却スリーブが、電気モータだけではなく、ギアユニットも実質的に完全に覆うように軸方向に延在することが望ましい。ドラムチューブへのより均一な熱移動を保証するために、冷却スリーブは、電気モータおよびギアユニットの隣接よりも軸方向にさらに延在するとよい。冷却スリーブが、片側の軸受カバーから、反対側の軸受カバーまで、またはギアユニットの動力をドラムチューブに伝達するカップリングユニットまで、延在することが望ましい。
【0022】
さらに、半径方向における空気層の幅が、軸方向において実質的に一定であることが望ましい。つまり、軸上の位置にかかわらず、冷却スリーブと駆動ユニットの間隔が実質的に一定である。通常、駆動ユニットの外径は一定である。しかし、駆動ユニットの外径が変化する設計も知られている。例えば、電気モータの外径よりもギアユニットの外径が小さい設計が知られている。この場合、冷却スリーブと駆動ユニットとの間の空気層幅を一定に維持できるように、冷却スリーブが半径方向内側方向に段差を有することが望ましい。冷却スリーブと駆動ユニットは、その重なる軸部分において、間隔が実質的に一定になるよう配置されている。
【0023】
空気層幅の値は0.1mmから2.5mmの範囲内にあるとよい。それ以上に望ましいのは0.1mmから2.0mm内、さらに0.1mmから1.0mm内、特に0.5mm付近であることが望ましい。幅が過剰に小さいと設置が困難である。しかし、熱輻射は2つの物体間の距離の二乗に依存するため、幅が過剰の大きいと冷却効果が低下する。空気層幅が2.5mmの場合においても、冷却は良好であるが、空気層幅の最適値は0.5mmである。0.5mmの空気層幅は、駆動ユニットから冷却スリーブへの良好な熱移動を実現するとともに、装置組み立てを単純にし、製造費を増加させるような公差に対する異常に厳しい要求が不要になる。
【0024】
別の好ましい設計では、冷却スリーブの半径方向内側の面の表面粗さRzが50μm以下であることが望ましく、さらに40μm以下、さらに30μm以下であることが望ましい。25μm以下であることが特に望ましい。冷却スリーブの表面に仕上げ加工を施すことが望ましい。冷却スリーブの表面が平坦面であると、駆動ユニットと冷却スリーブとの間の熱移動が向上する。一方で、冷却スリーブ表面の反射率は低い方がよい。例えば、研磨された面でないとよい。溝等が加工されている不均一な表面は、熱移動において、有効でない。Rzが25μm以下に仕上げされた表面が特に適している。このような表面は、高額な加工費を必要とせず標準的な加工工程によって得られ、同時に駆動ユニットと冷却スリーブとの間において良好な熱移動を実現する。
【0025】
輻射熱の吸収のため、冷却スリーブの半径方向内側の面に表面処理を施すこともできる。
【0026】
ある要素の半径方向内側方向の面に対する、輻射熱を吸収するための表面処理方法の転用も独立して開示する。この側面において、輻射熱を吸収するための表面処理方法の技術的な方法は、ドラムチューブへも転用でき、その方法も開示する。つまり、搬送容器やパレット等を搬送するためのコンベヤに使用するための電動搬送ローラを開示する。電動搬送ローラは、内部に空洞と長手方向の軸とを有するドラムチューブと、長手方向の軸に延在すると共に、少なくとも一つのピボット軸受によってドラムチューブを支持する軸部と、空洞に配置された駆動ユニットと、を有する。ドラムチューブの半径方向内側方向の内周面には、輻射熱を吸収できるよう、表面処理を施している。この場合、ドラムチューブと駆動ユニットとの間隔によって、冷却スリーブを省略することができる。
【0027】
輻射熱吸収のための表面処理によって、輻射熱による駆動ユニットと冷却スリーブおよび/またはドラムチューブとの間の熱移動がさらに向上される。反射を避けることで、駆動ユニットと冷却スリーブおよび/またはドラムチューブとの間の熱移動が、さらに向上され、さらに高効率で駆動ユニットが冷却される。
【0028】
適当な表面処理として、暗い色素を用いたコーティング、好ましくは黒、好ましくは艶消し、陽極酸化、ブロンズ処理(黒染加工やバニッシング加工等)、銅めっき等が挙げられる。また、これらの結合が望ましい。特に陽極酸化や銅めっきの際に、酸化銅等の、暗い色の、黒が望ましく、酸化物を使用することが重要である。暗い色素のコーティングはラッカー塗装で行うとよい。この場合、艶消しラッカー塗装が、光沢のあるラッカー塗装より望ましい。総合的に、冷却スリーブやドラムチューブの内周面の設計の理想が黒体であることに注意するとよい。表面処理または複数の表面処理の組み合わせが、表面を黒体に近づけるように選択されるとよい。
【0029】
冷却スリーブが挿入されていないドラムチューブの内周面の軸上部分において、冷却スリーブおよび表面処理の両方を該当内周面部分に設けることも考えられる。
【0030】
冷却スリーブの熱伝導率として、100W/mK以上が望ましく、130W/mK以上がさらに望ましい。160W/mKや200W/mK等と、さらに高い熱伝導率が望ましい。しかし、このような材料は、通常、製造コストの増加の原因になってしまう。この場合、約130W/mKの熱伝導率が最適である。
【0031】
冷却スリーブの密度として、3.5kg/dm3以下が望ましい。それ以上に望ましいのが3.0kg/dm3以下、さらに2.9kg/dm3以下である。本発明によると、冷却スリーブはドラムチューブと一緒に動き、回転する。ここで、過剰に大きい慣性モーメントを発生させないため、軽金属を使用することが望ましい。軽金属は熱伝導に適しており、相乗効果が得られる。どちらにせよ、熱伝導率を高く維持するため、多孔質材料でなく、無孔な固体を使用するとよい。
【0032】
冷却スリーブの材料として、アルミ材料やアルミ合金を使用することが望ましい。合金材料として特に適しているのは、銅、マグネシウム、鉛、マンガンやケイ素である。
【0033】
さらに別の好ましい設計では、電動搬送ローラは、駆動ユニットからドラムチューブの内周面へトルクを伝達するために改造したカップリングユニットを有する。カップリングユニットはカップリングブッシュを有する。カップリングブッシュは、駆動ユニットと連結するドライブ部分と外側のドリブン部分を有する。カップリングブッシュは、トルク伝達のために、特定箇所でのみ、ドラムチューブの内周面に摩擦嵌合で連結される。先行技術文献(prior art)より、円周方向の摩擦嵌合連結も知られ、ここでも使用することができる。しかし、カップリングブッシュとドラムチューブとの間の特定箇所での摩擦嵌合連結の使用は、設計を単純化できる長所を有する。形状嵌合連結(positive-locking connections)や完全摩擦嵌合連結(fully friction-locking connections)よりも広い公差を許容し、その結果として製造コストが低減される。また、これにより不十分な公差を原因とする過度の押圧作用の問題が回避され、したがって製造が全体的に単純化されて、搬送ローラの費用対効果の向上が可能になる。
【0034】
カップリングブッシュは、ドラムチューブの内周面と接触するように設けられた複数の半径方向ノーズ(lug:突起、突出部)を有する。このようにして、ノーズは、カップリングブッシュとドラムチューブとの間で摩擦嵌合連結が確立される接触点を形成する。ノーズは、丸み帯びた断面を有するように設計されることが望ましく、および/または、少し台形形状を有し、半径方向外側の端で平坦部を形成する。ノーズは、おおよそ部分的に円柱形状の輪郭を有し、カップリングブッシュを一部、好ましくは完全に覆うように、軸方向に延在する。半径方向のノーズを合わせて決定する直径は、ドラムチューブの内径よりも大きいことが望ましい。これにより、ノーズは合わせて過大となり、カップリングブッシュは予負荷のかかった状態でドラムチューブに挿入されるため、カップリングブッシュとドラムチューブとの間で特に良好な摩擦嵌合連結が得られる。このため、ノーズが可撓性を有することが望ましい。例えば、カップリングブッシュが軸方向に挿入される。また、ノーズが中空であることが望ましい。
【0035】
カップリングブッシュを有するカップリングユニットと冷却スリーブとを、一つの工程で組み立てることができる。さらに、カップリングユニットと冷却スリーブとを、同時に組み立てるため、一体として設計し、または、一つの部品やモジュールとして組み合わせることができる。
【0036】
本発明第2の態様では、本発明第1の態様によるいずれかの好ましい実施の形態の電動搬送ローラの製造方法が、ドラムチューブの提供若しくは製造、冷却スリーブの提供若しくは製造、冷却スリーブをドラムチューブに固定するためのドラムチューブへの冷却スリーブの挿入、冷却スリーブへの駆動ユニットの挿入、の工程によって解決される。冷却スリーブへの駆動ユニットの挿入において、冷却スリーブと駆動ユニットとの間に半径方向の空気層が形成されるように挿入する。
【0037】
本発明第1の態様による電動搬送ローラは、本発明第2の態様による製造方法と、特に従属の態様に記載する通り、同一若しくは類似の特徴を有していることを理解すべきである。この観点では、好ましい設計について、さらなる特徴や利点において、前記第1の態様による電動搬送ローラの説明を完全に参照する。
【0038】
製造方法の好ましい第1の実施の形態において、冷却スリーブはドラムチューブに挿入される。冷却スリーブの軸方向の溝が、ドラムチューブの軸方向の溶接痕に沿わないように挿入される。冷却スリーブがドラムチューブに挿入された際、冷却スリーブがドラムチューブに対し内部圧力を発生させ、したがって、接線方向の力が働き、溶接痕に悪影響が及ぶこともある。溶接痕付近の領域において、接線方向の力、または冷却スリーブのねじれが原因のせん断力等の、力学的力の作用を可能な限り避けるべきであると示されている。したがって、溶接痕を冷却スリーブの平坦は部分で覆うように、冷却スリーブの軸方向の溝を配置する。冷却スリーブの軸方向の溝が、ドラムチューブの軸方向の溶接痕に沿わない。
【0039】
さらに、本製造方法には、外径が前もって決められた複数のドラムチューブの内から1つのドラムチューブを選ぶ工程が含まれていることが望ましい。複数のドラムチューブの内に、少なくとも1つは外径50mm、1つは外径60mmのものを含む。複数の冷却スリーブの内から1つの冷却スリーブを選ぶ工程が含まれていることが望ましい。複数の冷却スリーブの内に、少なくとも1つは外径50mmのドラムチューブに対応するもの、1つは外径60mmのドラムチューブに対応するものを含む。冷却スリーブに駆動ユニットを挿入した後、半径方向の空気層幅の値は0.1mmから2.5mmの範囲内にあるように、冷却スリーブを選ぶ。それ以上に望ましいのは空気層幅の値が0.1mmから2.0mm内、さらに0.1mmから1.0mm内で、特に望ましいのは0.5mmの幅である。複数のドラムチューブの内に外径80mmのものが含まれ、複数の冷却スリーブの内に、外径80mmのドラムチューブに該当するものが含まれることが望ましい。
【0040】
前記のように、駆動ユニットは、外径50mm、60mm、80mmのドラムチューブにおいてまったく同じに設計できる。しかし、駆動ユニットに対して最大の冷却効果を保証するため、冷却スリーブは、ドラムチューブの外径のよって異なる。冷却スリーブの外径はドラムチューブに適応したものでなければならない。冷却スリーブの内径も実質的に同様に決まる。冷却スリーブは、ドラムチューブと駆動ユニットとの間の公差を補正する役割を果たし、駆動ユニットからドラムチューブへの放熱を実現する。ドラムチューブの外径を決める条件によって、この方法により外径50mm、60mm若しくは80mmのドラムチューブを選択する。選択したドラムチューブの外径に対応する冷却スリーブを選択し、駆動ユニットを挿入する。
【0041】
したがって、組み立てが単純化され、共通する同一部品を援用できる。ドラムチューブの大きさにかかわらず、駆動ユニットを充分に冷却することができるため、同じ電気モータでより高い出力を駆動ユニットに装備することができる。
【0042】
さらに、本製造方法が、カップリングユニットを提供または製造する工程、カップリングユニットをドラムチューブ内に押し込む工程、を含むことが望ましい。カップリングユニットは、駆動ユニットの動力を伝達するドライブ部分と外側のドリブン部分を有する。カップリングユニットは、トルク伝達のために、特定箇所でのみ、ドラムチューブの内周面に摩擦嵌合で連結される。カップリングユニットの押し込みと冷却スリーブの押し込みが、1つの工程で行われることが望ましい。カップリングユニットはカップリングとカップリングブッシュで構成されることが望ましい。カップリングブッシュは、トルク伝達のために、特定箇所でのみ、ドラムチューブの内周面に摩擦嵌合で連結される。
【0043】
以下、実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。図面は、縮小された発明の提示ではなく、説明に役立つところで、模式的なまたはゆがんだものとして実施する。図面から直接読み取れる追加情報に関しては、該当する先行技術文献(prior art)も参照する。この背景において、実施の形態の形状や詳細にかかわる様々な変更を、本発明の大枠からそれずに実施できることに注意する。説明、図面、および請求項に開示される本発明の特徴は、単独で若しくはいずれの組み合わせで、本発明のさらなる開発に欠かせない可能性がある。さらに、説明、図面、および請求項で開示される特徴の2以上のすべての組み合わせは、本発明の範囲内となる。本発明の概念は、記載されている厳密な実施の形態の形状や詳細に、または請求項に記載されているものと比較して狭いものに、限定されていない。特定されている設計の範囲において、特定されている範囲内の値は限界値として開示されるべきである。また、限界値は開示されたもの、請求されたものとして利用することが可能である。なお、単純化のため、図面において、同一または類似の部材や同一または類似の役割を有する部材については同一の符号を付している。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】実施の形態1に係る電動搬送ローラの断面である。
【
図2】実施の形態2に係る電動搬送ローラの断面である。
【
図5】内周面に表面処理を施した冷却スリーブの正面図である。
【
図6】カップリングブッシュ付きカップリングユニットの透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
次の望ましい実施の形態の説明および図面に、本発明のさらなる利点、特徴および詳細を示す。
【0046】
電動搬送ローラ1はドラムチューブ2を有する。ドラムチューブ2は中心軸Aを有し、中心軸Aの周りを回転できる。
図1より、搬送ローラ1は軸部4を有し、ドラムチューブ2の右側から延在し搬送経路のフレームに取り付けることができる。
図1より、ドラムチューブ2の左側には軸部4を表示しておらず、ここでは搬送ローラは部分的に崩している。通常、
図1の左側に追加の軸部があり、これは
図1において単純化のために省略した。
【0047】
回転軸受6を軸部4に取り付ける。軸部4は、
図1よりドラムチューブ2の右側に押し付けたカバー8を備える。
【0048】
軸部4は中心穴10を有し、穴10を供給ケーブル12が通る。供給ケーブル12は駆動ユニット14に接続される。駆動ユニット14は電機モータ16とギアユニット18を有する。ギア18はギアカートリッジとして設計される。ギアユニット18の動力出力側20はカップリングユニット22を有する。カップリングユニット22の詳細な説明は後述の
図6とともにする。カップリングユニット22は、ドラムチューブ2へ、ドラムチューブ2を回転させるために、圧入(摩擦)連結24を介して電機モータ16から供給されたトルクを伝達するために働く。
【0049】
駆動ユニット14は、実質的に回転軸対称なハウジング26を有する。ハウジング26は直径D1を有する。例えば、直径D1は40mmである。例えば、ドラムチューブの外径が50mmなら、ドラムチューブの内径D2は48mmである。前記の値は例示的なものであり、他の値を取ることもあり、望ましい。厳密な値は、特に、駆動ユニット14、ドラムチューブ2の壁の厚さおよびドラムチューブ2の外径による。
【0050】
本発明によると、冷却スリーブ30は駆動ユニット14を冷却するために設ける。冷却スリーブ30は、駆動ユニット14の少なくとも一部を半径方向に覆い、ドラムチューブ2に取り付ける。より厳密には、冷却スリーブ30は、ドラムチューブ2に挿入され、ドラムチューブ2の内周面32と密着する。
図1に示す実施の形態によると、冷却スリーブ30は、カバー8からまたはカバー8の手前から、ギアユニット18の少なくとも一部まで、軸方向に延在する。冷却スリーブ30は、搬送ローラ1における発熱するすべての部品を半径方向に覆う。
【0051】
駆動ユニット14、回転しない状態で軸部4に接続され、軸部4に支持される。ハウジング26も回転しない。ドラムチューブ2と冷却スリーブ30がともに回転できるよう、駆動ユニット14と冷却スリーブ30との間に空気層Sを設ける。実施の形態(
図1)において、空気層Sは、ハウジング26の領域で半径方向に幅S1を有し、ハウジング26に覆われていないギアユニット18の領域で半径方向に幅S2を有する。冷却スリーブ30の内面34は平坦であり、段差等がない。したがって、ハウジング26の領域の幅S1よりも、ギアユニット18の領域のS2が大きい。幅S1は約0.5mmで、幅S2は約2.0mmである。
【0052】
図2に実施の形態2の電動搬送ローラ1を示す。実施の形態2において、同一または類似の部材については、実施の形態1と同一の符号を付している。実施の形態1の説明を完全に参照する。次に、実施の形態1との違いを特に強調する。
【0053】
実施の形態1とは対照的に、駆動ユニット14は2段のみのギアユニットからなるため、冷却スリーブ30は電機モータ16およびギアユニット18上軸方向に完全に延在する。さらに、冷却スリーブ30は、外周上の段差38によって分離されている部分36を有する。部分36における冷却スリーブ30をギアユニット18の減少した外径D3に合わせたため、部分36の内径は少し小さくなっている。そのため、空気層Sは一様であり、ハウジング26およびギアユニット18の領域において一定の幅S1が維持される。
図1で示す実施の形態1のような空気層Sの増加は生じない(
図2参照)。
【0054】
冷却スリーブ30の詳細を
図3~5で示す。
図3に示した冷却スリーブ30は実施の形態1のものである(
図1参照)。冷却スリーブ30は円筒形状を有し、旋削加工(コンピューター数値制御も含む)、ミーリング加工(コンピューター数値制御も含む)、押出成形、ローリング加工、特に冷間ローリング加工等で、一部品として加工する。締まりばめ(interference fit)にするため、冷却スリーブ30は、ドラムチューブ2の内径D2よりも少し大きい外径D4を有する。
【0055】
冷却スリーブ30を取り付けるためには、軸上に挿入され、溝42を有する。溝42は幅Gを有し、幅Gは、例えば、約4mmの範囲である。幅Gは、冷却スリーブ30の壁の厚み、外径D4と内径D2の差、および冷却スリーブ30の材料に依存する。幅Gの値は、最大公差を考慮した上で、冷却スリーブ30をドラムチューブ2に挿入できるよう設定しなければならない。
【0056】
組み立てをさらに単純化するため、冷却スリーブ30には、それぞれ直径D5の延在部分46と46aを形成する取り付け用の面取り部44と44aを両端に有する。直径D5は直径D4より小さく、例えば4-6%小さい。直径D5の値も直径D2よりは少し小さく設定されるとよい。延在部分46を用いることで、冷却スリーブ30を、半径方向の圧縮が生じる前に、問題なく、かつ組み立ての際に大きな力を加えず、まずドラムチューブ2内へ挿入できる。その後、ドラムチューブ2内への完全に押し込む。
【0057】
面取り部44の面取り角は、例えば、中心軸Aに対して60°とするとよい。
【0058】
両端の面取り部44と44aにより、冷却スリーブ30は2つの取り得る方向のどちらからも挿入できる。したがって、組み立てを間違えることはなく、特定の先端を前にして挿入するための冷却スリーブ30の位置合わせ工程を、自動化組み立てにおいて省略することができる。
【0059】
冷却スリーブ30の内面34と外周面40は、Rz30μm以下の表面粗さを有する。Rz25μm以下の表面粗さがより望ましい。つまり、内面34と外周面40に仕上げ加工を行うことが望ましい。外周面40は、ドラムチューブ2の内周面32とできる限り強固な摩擦嵌合を形成するよう加工する必要がある。同時に、冷却スリーブ30からドラムチューブ2への熱伝導を実現できるよう、外周面40とドラムチューブ2の内周面32の接触面積ができる限り大きくする必要がある。
【0060】
冷却スリーブ30の内面34は、反射せず、かつ駆動ユニット14から冷却スリーブ30への高効率な熱放射を実現できるよう、形成する必要がある。
【0061】
このためには、冷却スリーブ30の内面34に、表面処理48を施す。表面処理48として、ブロンズ処理、陽極酸化や色の層を付けることが挙げられる。色の層において、暗い色、特に黒、が望ましい。表面処理48は、できる限り高効率で熱放射を吸収し、熱放射の反射を抑制する。
【0062】
全体として、冷却スリーブ30の材料として軽金属が望ましい。冷却スリーブ30の材料として、アルミニウムが特に望ましい。3kg/dm3以下の密度、130W/mK以上の熱伝導率を有するアルミニウムを使用することが望ましい。このためには、アルミ合金を使用してもよい。
【0063】
図6では、
図1や
図2で部分的に示したカップリングユニット22を示す。カップリングユニット22は摩擦力限定で働く。カップリングユニット22は冷却スリーブ30ともに設置されていることが望ましい。カップリングユニット22の説明は、ドイツ出願人のドイツ特許公開公報第10 2016 124 689号に記載されている。ドイツ特許公開公報第10 2016 124 689号の全開示内容は本出願にも記載する。
【0064】
カップリングユニット22は、カップリングブッシュ50を有する。カップリングブッシュ50は中央開口部74を有し、中央開口部74はスプライン軸51と噛み合う。スプライン軸51はギアユニット18の出力側に接続される。
【0065】
カップリングブッシュ50は、半径方向内側部分62と半径方向外側部分60の2部構成を有する。半径方向外側部分60は、ドラムチューブ2の内周面32と摩擦嵌合する出力部分52を形成する。
【0066】
内側部分62は、主に円筒形状の周面92を有し、そこに外側部分60を金属波板として取り付ける。外側部分60の金属波板は複数のノーズ54を形成する。この設計ではノーズ54は中空であり内部にキャビティ94を有する。キャビティ94によって、ノーズ54は弾性を有し、加工公差が補正される。
【0067】
内側部分62は、半径方向の台形開口部82を含む突出部78を有する。台形開口部82は、軽量化、ならびに突出部78に弾性を持たせるために役立つ。スプライン軸から内側部分62へトルクを弾性的に伝達できるよう、突出部78に弾性を持たせる。
【0068】
外側部分60を形成する金属波板は、内周面32と内側部分62の周面92の両方と摩擦嵌合する。金属波板の柔軟性により、公差は補正することができ、永久的な摩擦嵌合が形成される。冷却スリーブ30によって、カップリングブッシュ50はドラムチューブ2内部に挿入されることも考えられる。カップリングブッシュ50は冷却スリーブ30とともに一工程で取り付けるため、カップリングブッシュ50を取り付けるための1つの追加の工具が不要になる。