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特許6999810高温耐酸化性が向上されたジルコニウム合金被覆管及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】高温耐酸化性が向上されたジルコニウム合金被覆管及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 3/06 20060101AFI20220112BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20220112BHJP
   C23C 14/24 20060101ALI20220112BHJP
   G21C 3/07 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
G21C3/06 210
C23C14/14 D
C23C14/24 F
G21C3/07 100
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020526415
(86)(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 KR2018013879
(87)【国際公開番号】W WO2019098665
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-05-13
(31)【優先権主張番号】10-2017-0151660
(32)【優先日】2017-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】597060645
【氏名又は名称】コリア アトミック エナジー リサーチ インスティテュート
【氏名又は名称原語表記】KOREA ATOMIC ENERGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ファン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ギル・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・イル・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ジュン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・クォン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ホ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ホ・ヤン
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0005819(KR,A)
【文献】Hyun-Gil Kim, et al.,Development of Surface Modified Zr Cladding by Coating Technology for ATF,Top Fuel 2016,2016年,1157-1163,https://www.researchgate.net/publication/317182705_Development_of_Surface_Modified_Zr_Cladding_by_Coating_Technology_for_ATF
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/00
C23C 14/24
C23C 14/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)Cr及びAlを含むターゲットを製造するステップ;及び
(b)前記ターゲットに電流及びバイアス電圧を印加するアークイオンプレーティングを通じてジルコニウム合金被覆管上にCr-Al薄膜を蒸着させるステップを含み、
前記ターゲット内のAl含量は、7重量%~23重量%であり、
前記ステップ(b)で、印加された電流は、30A~120A、バイアス電圧は、100V~400Vであり、
前記ステップ(b)で、蒸着時の作動圧力を5mTorr~50mTorrに維持し、
前記ステップ(b)で、蒸着された薄膜の算術平均粗さ(arithmeticalaverage roughness;Ra)は、5μm以下である
ことを特徴とする、高温耐酸化性が向上されたジルコニウム合金被覆管の製造方法。
【請求項2】
前記ステップ(b)で、蒸着は、200℃~300℃の温度で行われることを特徴とする、請求項に記載の高温耐酸化性が向上されたジルコニウム合金被覆管の製造方法。
【請求項3】
前記ステップ(b)で、蒸着は、2μm/h~15μm/hの速度で行われることを特徴とする、請求項に記載の高温耐酸化性が向上されたジルコニウム合金被覆管の製造方法。
【請求項4】
前記ステップ(b)で、蒸着された薄膜を1200℃及び水蒸気雰囲気条件で2000秒間酸化させた結果、重量増加量は、1mg/dm2~3,000mg/dm2であることを特徴とする、請求項に記載の高温耐酸化性が向上されたジルコニウム合金被覆管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温耐酸化性が向上されたジルコニウム合金被覆管及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジルコニウム合金は、正常運転条件での優れた耐酸化性と機械的特性を有するため、軽水炉で核燃料を外部から保護する核燃料被覆管材料に用いられている。しかし、ジルコニウム合金は、高温水蒸気雰囲気で酸化が急速に進行され、水素と多量の熱を発生させるため、安全に対する問題が常に提起されてきた。特に、日本の福島原発事故で核燃料被覆管の高温酸化による水素爆発が発生した以後、核燃料被覆管の事故時の安全性を確保するための研究が活発に進行されている。
【0003】
核燃料被覆管の安全性の確保のための方法としては、高温耐酸化性に優れた物質で核燃料被覆管を製造してジルコニウム合金を代替する方法がある。核燃料被覆管材料として、SiC/SiCf複合体、FeCrAl合金、Ti-Al合金、Mo素材などが候補物質として開発されている。しかし、SiCは、正常運転条件で水にとける問題点が発見され、技術難易度が高いという短所を有している。また、残りの合金の場合、Zrより高い熱中性子吸収断面積を有するため、経済性が落ちるという短所がある。
【0004】
核燃料被覆管の安定性を確保するまた他の方法は、既存ジルコニウム合金核燃料被覆管の表面を耐酸化性に優れた物質でコーティングする方法である。この場合、既存のジルコニウム合金をそのまま用いるので常用原子炉に適用することが容易であり、製造コストが前で言及した方法より低いという長所を有している。したがって、世界的にコーティング技術を抵抗性強化核燃料開発に適用するための研究が活発に進行されている。
【0005】
韓国原子力研究院でも既存にコーティング素材として研究されたFeCrAl、Cr及び新合金に対する研究が進行された。FeCrAl合金の場合、高温でFeがZr母材に拡散されてZr-Fe系金属間化合物を形成して脆性が弱くなる短所を有している。Crは、軟性が低くて衝撃に弱く、高温酸化時に酸素イオンが結晶粒界(grain boundary)によって拡散してZr母内表面にOxygen-stailized alpha(α-Zr(O))層を形成することが観察された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】大韓民国公開特許公報第10-2016-0005819号(2016.01.18)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ジルコニウム合金被覆管;及び前記被覆管上にコーティングされたCr-Al薄膜を含み、前記薄膜は、アークイオンプレーティングを通じて蒸着されたものであり、前記薄膜内のAl含量は、5重量%~20重量%であることを特徴とする高温耐酸化性が向上されたジルコニウム合金被覆管などを提供することを目的とする。
【0008】
しかし、本発明が達成しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及しなかったまた他の課題は下の記載から当業者に明確に理解されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ジルコニウム合金被覆管;及び前記被覆管上にコーティングされたCr-Al薄膜を含み、前記薄膜は、アークイオンプレーティングを通じて蒸着されたものであり、前記薄膜内のAl含量は、5重量%~20重量%であることを特徴とする高温耐酸化性が向上されたジルコニウム合金被覆管を提供する。
【0010】
本発明の一具現例で、(a)Cr及びAlを含むターゲットを製造するステップ;及び(b)前記ターゲットに電流及びバイアス電圧を印加するアークイオンプレーティングを通じてジルコニウム合金被覆管上にCr-Al薄膜を蒸着させるステップを含み、前記ターゲット内のAl含量は、7重量%~23重量%であることを特徴とする高温耐酸化性が向上されたジルコニウム合金被覆管の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明による高温耐酸化性が向上されたジルコニウム合金は、ジルコニウム合金被覆管;及び前記被覆管上にコーティングされたCr-Al薄膜を含み、前記薄膜は、アークイオンプレーティングを通じて蒸着されたものであり、前記薄膜内のAl含量は、5重量%~20重量%であることを特徴とすることによって、正常運転条件だけではなく高温事故条件でも優れた耐酸化性を有すると共に、Cr-Al薄膜が界面から剥離する問題点と、Cr-Al薄膜に発生するクラック又は液滴(droplet)による問題点を抑制することだけではなく、表面粗さを減少させ得る利点を有する。
【0012】
また、本発明による高温耐酸化性が向上されたジルコニウム合金の製造方法は、Cr及びAlを含むターゲットに電流及びバイアス電圧を印加するアークイオンプレーティングを通じてジルコニウム合金被覆管上にCr-Al薄膜を蒸着させるステップを含むことを特徴とし、このとき、蒸着条件を最適化させることで蒸着速度も向上させ得るので、経済性を高めることができる。
したがって、原子力発電の安定性と経済性を大きく増大させることができると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例1~3及び比較例1によってCr-Al薄膜が蒸着されたジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管でCr-Al薄膜のXRDパターンを分析した結果を示すグラフである。
図2図2は、実施例1~3及び比較例1~3によるジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管を1200℃及び水蒸気雰囲気条件で2000秒間酸化させた結果、重量増加量を比較した結果を示すグラフである。
図3図3は、比較例1によってCr-Al薄膜が蒸着されたジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管を1200℃及び水蒸気雰囲気条件で2000秒間酸化させた結果、外形を示す写真及び断面を示すSEM写真である。
図4図4は、実施例1と同一の方法でジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管上にCr-Al薄膜を蒸着させるが、アークイオンプレーティングするときにターゲットに印加するバイアス電圧を300Vに固定した状態で、印加する電流を10~150Aに多様に調節するとき、その蒸着速度を測定した結果を示すグラフである。
図5図5は、実施例1と同一の方法でジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管上にCr-Al薄膜を蒸着させるが、アークイオンプレーティングするときにターゲットに印加する電流を90Aに固定した状態で、印加するバイアス電圧を30~400Vに多様に調節するとき、その蒸着速度を測定した結果を示すグラフである。
図6a図6(a)は、実施例1と同一の方法でジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管上にCr-Al薄膜を蒸着させるが、アークイオンプレーティングするときにターゲットに印加するバイアス電圧を150Vに固定した状態で、印加する電流を120A及び150Aにそれぞれ調節した結果、Cr-Al薄膜が蒸着されたジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管の外形を示す写真及び断面を示すSEM写真である。
図6b図6(b)は、実施例1と同一の方法でジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管上にCr-Al薄膜を蒸着させるが、アークイオンプレーティングするときにターゲットに印加するバイアス電圧を150Vに固定した状態で、印加する電流を120A及び150Aにそれぞれ調節した結果、Cr-Al薄膜が蒸着されたジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管の外形を示す写真及び断面を示すSEM写真である。
図7図7は、実施例1と同一の方法でジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管上にCr-Al薄膜を蒸着させるが、アークイオンプレーティングするときにターゲットに印加する電流を90Aに固定した状態で、印加するバイアス電圧を30Vに調節した結果、Cr-Al薄膜が蒸着されたジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管の外形を示す写真である。
図8図8は、実施例1と同一の方法でジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管上にCr-Al薄膜を蒸着させるが、アークイオンプレーティングするときにターゲットに印加するバイアス電圧を50~400Vに多様に調節した後、これを1200℃及び水蒸気雰囲気条件で2000秒間酸化させた結果、重量増加量を比較した結果を示すグラフである。
図9図9は、実施例1と同一の方法でジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管上にCr-Al薄膜を蒸着させるが、薄膜の厚さを多様に調節した後、これを1200℃及び水蒸気雰囲気条件で2000秒間酸化させた結果、重量増加量を比較した結果を示すグラフである。
図10図10は、実施例1と同一の方法でジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管上にCr-Al薄膜を蒸着させるが、蒸着時の作動圧力(working pressure)を3~20mTorrに多様に調節した結果、Cr-Al薄膜が蒸着されたジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管の表面外形を示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、ジルコニウム合金被覆管の高温耐酸化性を向上させるために、ジルコニウム合金被覆管上にCr-Al薄膜(薄膜内のAl含量=5~20重量%)をアークイオンプレーティングを通じて蒸着する場合、Cr-Al薄膜が界面から剥離せず、Cr-Al薄膜にクラックを発生しないことを確認して、本発明を完成した。
【0015】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0016】
高温耐酸化性が向上されたジルコニウム合金被覆管
本発明は、ジルコニウム合金被覆管;及び前記被覆管上にコーティングされたCr-Al薄膜を含み、前記薄膜は、アークイオンプレーティングを通じて蒸着されたものであり、前記薄膜内のAl含量は、5重量%~20重量%であることを特徴とする高温耐酸化性が向上されたジルコニウム合金被覆管を提供する。
【0017】
まず、本発明による高温耐酸化性が向上されたジルコニウム合金被覆管は、ジルコニウム合金被覆管を母材として含む。
【0018】
前記ジルコニウム合金は、軽水炉で核燃料を外部から保護する核燃料被覆管の材料になり、前記ジルコニウム合金は、ジルカロイ-4(Zircaloy-4)、ジルカロイ-2(Zircaloy-2)、ZILRO、M5、HANA、最適化ZILRO(Optimized-ZILRO)及びE110からなる群より選択された一つ以上を含むことができ、ジルカロイ-4(Zircaloy-4)を含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0019】
具体的に、ジルカロイ-4(Zircaloy-4)及びジルカロイ-2(Zircaloy-2)は、常用発電所の核燃料被覆管の材料として主に用いられており、ZILRO、M5、HANA、最適化ZILRO(Optimized-ZILRO)及びE110は、耐腐食性を一層向上させた材料であって、最近開発された常用発電所の核燃料被覆管の材料として用いられており、具体的な組成は下記の通りである:
【0020】
-ジルカロイ-4(Zircaloy-4):1.20%~1.70% Sn;0.18%~0.24% Fe;0.07%~1.13% Cr;900ppm~1500ppm O;0.007%未満 Ni;残余Zr。
-ジルカロイ-2(Zircaloy-2):1.20%~1.70% Sn;0.07%~0.20% Fe;0.05%~1.15% Cr;0.03%~0.08% Ni;900ppm~1500ppm O;残余Zr。
-ZILRO:0.5%~2.0% Nb;0.7%~1.5% Sn;0.07%~0.28%のFe、Co、Ni、Crから選択された少なくとも一つの成分;最大200ppm C;残余Zr。
-M5:0.8%~1.2% Nb;0.090%~0.149% O;200ppm~1000ppm Fe;残余Zr。
-HANA:約1.1% Nb;約0.05% Cu;残余Zr。
-最適化ZILRO(Optimized-ZILRO):0.8%~1.2% Nb;0.6%~0.9% Sn;0.090%~0.13% Fe;0.105%~0.145% O;残余Zr。
-E110:約1.0% Nb;残余Zr。
【0021】
次に、本発明による高温耐酸化性が向上されたジルコニウム合金被覆管は、Cr-Al薄膜を含み、前記薄膜は、前記被覆管上にコーティングされたもので、このような薄膜形態は、熱中性子の断面積を減少させることで経済性を確保する利点を有する。一方、前記薄膜は、アークイオンプレーティングを通じて蒸着されたものであり、前記薄膜内のAl含量は、5重量%~20重量%であることを特徴とする。
【0022】
前記薄膜は、前記被覆管がコーティングされたもので、Cr及びAlを元素で含み、その他元素として不可避な不純物をさらに含むことができる。
【0023】
具体的に、Crは、遷移金属としてジルコニウム酸化膜の結晶成長方向を不規則にするが、これは、酸化膜が一方向のみに成長することを阻むので、酸化膜が急に破壊される現象を抑制する性質を有する。また、Cr23のようなクロム酸化物の酸化膜を形成して常温から高温まで耐酸化性を有することができる。また、Alは、酸化時に高温、特に、原発事故条件で安定的なAl23酸化膜を形成し、Alは、中性子吸収断面積(thermal neutron absortion cross section)が0.233 barnでCrの熱中性子吸収断面積である3.1 barnより小さいため、Alの含量が増えるほど薄膜の熱中性子吸収断面積を減らすので、核燃料サイクルを増加させる利点がある。
【0024】
前記薄膜内のAl含量は、5重量%~20重量%であってもよく、7重量%~18重量%であることが好ましいが、これに限定されない。このとき、薄膜内のAl含量が過度に少ない場合には、高温耐酸化性が低下され、酸素浸透によりジルコニウム合金被覆管の表面にα-Zr(O)(Oxygen-stailized alpha)層を形成させる問題点があり、薄膜内のAl含量が過度に多い場合には、薄膜に金属間化合物が生成されるが、これは、ジルコニウム合金と高温で熱膨脹率の差が大きくなるので、薄膜が界面から分離されるか、薄膜にクラックが発生する問題点を有する。
【0025】
前記薄膜が前記ジルコニウム合金被覆管上によく蒸着されるように、前記薄膜にCr2Al化合物又はCr8Al5化合物のような金属間化合物が生成されないことが好ましい。このような金属間化合物は、ジルコニウム合金と高温で熱膨脹率の差が大きくなるので、薄膜が界面から分離されるか、薄膜にクラックが発生する問題点を有する。また、前記薄膜は、液滴(droplet)発生が最小限に抑えられる必要がある。前記薄膜の厚さは、5μm~100μmであることが好ましいが、これに限定されない。このとき、薄膜の厚さが5μm未満である場合、高温水蒸気条件で重量増加量が大きく増加する問題点がある。また、核燃料集合体の組み立て又は原発運転状況で摩耗又は消耗により一部薄膜が離れてジルコニウム合金被覆管の表面が露出される可能性がある。一方、薄膜の厚さが100μmを超過する場合、薄膜の熱中性子吸収断面積を増加させて核燃料サイクルを減少させることになる問題点がある。
【0026】
その外に、前記薄膜は、正常運転条件だけではなく高温事故条件でも優れた耐酸化性を有するものであって、前記薄膜を1200℃及び水蒸気雰囲気条件で2000秒間酸化させた結果、重量増加量は、1mg/dm2~3,000mg/dm2であってもよく、重量増加量は、1mg/dm2~2,000mg/dm2であることが好ましいが、これに限定されない。
【0027】
さらに、前記薄膜は、表面粗さが減少されたことを特徴とし、前記薄膜の表面粗さ(surface roughness;Ra)は、別途のポリッシング工程を経なくても5μm以下を維持することができる。
【0028】
高温耐酸化性が向上されたジルコニウム合金被覆管の製造方法
本発明は、(a)Cr及びAlを含むターゲットを製造するステップ;及び(b)前記ターゲットに電流及びバイアス電圧を印加するアークイオンプレーティングを通じてジルコニウム合金被覆管上にCr-Al薄膜を蒸着させるステップを含み、前記ターゲット内のAl含量は、7重量%~23重量%であることを特徴とする高温耐酸化性が向上されたジルコニウム合金被覆管の製造方法を提供する。
【0029】
まず、本発明による高温耐酸化性が向上されたジルコニウム合金被覆管の製造方法は、Cr及びAlを含むターゲットを製造するステップ(ステップ(a))を含む。
【0030】
前記ターゲットは、Cr-Al薄膜を製造するための出発物質であって、具体的に、Cr及びAlが混合された形態であるか、Cr-Al合金形態であってもよい。前記ターゲットは、公知の方法で製造でき、Cr及びAlを混合した後に溶解法、Hot press、HIP(Hot isostatic pressing)、SPS(spark plasma sintering)などを用いて製造することができる。
【0031】
前記ターゲットは、蒸着前に酸化されることを防止するために真空状態で製造される必要があり、このとき、1×10-6 torr~1×10-5 torrの真空状態であってもよい。
【0032】
具体的に、前記ターゲット内のAl含量を7重量%~23重量%に維持することで、前記薄膜内のAl含量を5重量%~20重量%に制御することができる。より具体的に、前記ターゲット内のAl含量を10重量%~20重量%に維持することで、前記薄膜内のAl含量を7重量%~18重量%に制御することができる。
【0033】
次に、本発明による高温耐酸化性が向上されたジルコニウム合金被覆管の製造方法は、前記ターゲットに電流及びバイアス電圧を印加するアークイオンプレーティングを通じてジルコニウム合金被覆管上にCr-Al薄膜を蒸着させるステップ(ステップ(b))を含む。
【0034】
通常的な蒸着(又はコーティング)技術としては、化学気相蒸着法(CVD)、低温噴射コーティング(Cold spray coating)、物理的蒸着法(PVD)などがある。化学気相蒸着法の場合、均一な厚さのコーティング膜の形成が容易であるが、コーティング膜の相を形成させるための蒸着温度が非常に高いので、ジルコニウム母材の相変化又は変形をもたらす短所がある。低温噴射コーティングの場合、蒸着速度は非常に速いがコーティング膜の密度が低いので、核燃料被覆管のコーティング技術で適用することは難しい点がある。物理的蒸着法の場合、低い温度でも蒸着が可能であり、コーティング密度が理論密度に近いコーティングが可能であるため、事故抵抗性核燃料被覆管の開発のために活発に研究されている。しかし、物理的蒸着法の場合、蒸着速度が他の方法に比べておそく、ターゲット構成元素の原子量差によってスパッタ収率(sputter yield)が異なるため、ターゲット組成と薄膜組成が不一致する短所を有している。また、蒸着条件によって多結晶又は非晶質に形成され得、多孔性構造又は粗密構造、柱状構造、粗大構造などの多様な形態で薄膜の構造が現われ、薄膜構造によって特性が変わるので、高温耐酸化性の向上のための蒸着条件の最適化が必要である。
【0035】
本発明で用いるアークイオンプレーティングは、上記言及した物理的蒸着法の一種である。したがって、前記アークイオンプレーティングは、電流及びバイアス電圧を印加することによって原子単位の蒸着を行うためのもので、蒸着条件の最適化が重要である。
【0036】
前記印加された電流は、30A~120A、印加されたバイアス電圧は、100V~400Vであってもよい。具体的に、印加された電流は、60A~120Aであることが好ましく、80A~100Aであることがより好ましいが、これに限定されない。このとき、印加された電流値が過度に小さい場合には、蒸着速度が低下する問題点があり、印加された電流値が過度に大きい場合には、Cr-Al薄膜に発生する液滴(droplet)のサイズと数が増加する問題点がある。また、印加されたバイアス電圧は、100V~400Vであることが好ましく、100V~300Vであることが好ましいが、これに限定されない。このとき、印加されたバイアス電圧が100V未満である場合には、高温耐酸化性が低下され、Cr-Al薄膜が界面から剥離する問題点があり、バイアス電圧が400Vを超過する場合には、蒸着速度が顕著に低下される問題点がある。
【0037】
一般的に、蒸着時に蒸発物質のサイズが大きいほど加速される速度がおそいので、気体分子との衝突により基板に到達できない確率が大きくなる。したがって、蒸着時の作動圧力を増加させることで、ターゲットで生成されたイオン及び液滴(droplet)が気体分子と衝突する確率を高めることができる。したがって、前記蒸着時の作動圧力は、5mTorr~50mTorrを維持することが好ましく、5mTorr~20mTorrであることが好ましいが、これに限定されない。このとき、蒸着時の作動圧力が5mTorr未満である場合、表面粗さ及び液滴(droplet)が過度に増加する問題点がある。
【0038】
また、前記蒸着は、200℃~300℃の温度で行われ得る。このとき、蒸着温度が200℃未満である場合、有機不純物により薄膜品質が低下される問題点があり、蒸着温度が300℃を超過する場合、ジルコニウム母材の相変化により機械的性質が低下される問題点がある。
【0039】
また、前記蒸着は、2μm/h~15μm/hの速度で行われ得る。このとき、蒸着速度が2μm/h未満である場合、蒸着時間が長くなる問題点があり、蒸着速度が15μm/hを超過する場合、高電流アーク熱による液滴(droplet)が発生する問題点がある。
【0040】
したがって、前記蒸着された薄膜を1200℃及び水蒸気雰囲気条件で2000秒間酸化させた結果、重量増加量は、1mg/dm2~3,000mg/dm2であってもよく、重量増加量は、1mg/dm2~2,000mg/dm2であることが好ましいが、これに限定されない。
【0041】
さらに、前記蒸着された薄膜は、表面粗さが減少されたことを特徴とし、前記薄膜の算術平均粗さ(arithmetical average roughness;Ra)は、別途のポリッシング工程を経なくても5μm以下に維持することができる。したがって、前記蒸着された薄膜は、追加ポリッシング工程を通じて算術平均粗さ(arithmetical average roughness;Ra)を一層低めることができる。
【0042】
上記したように、本発明による高温耐酸化性が向上されたジルコニウム合金は、ジルコニウム合金被覆管;及び前記被覆管上にコーティングされたCr-Al薄膜を含み、前記薄膜は、アークイオンプレーティングを通じて蒸着されたものであり、前記薄膜内のAl含量は、5重量%~20重量%であることを特徴とすることによって、正常運転条件だけではなく高温事故条件でも優れた耐酸化性を有するとともに、Cr-Al薄膜が界面から剥離する問題点と、Cr-Al薄膜に発生するクラック又は液滴(droplet)による問題点を抑制することだけではなく、表面粗さを減少させることができる利点を有する。
【0043】
また、本発明による高温耐酸化性が向上されたジルコニウム合金の製造方法は、Cr及びAlを含むターゲットに電流及びバイアス電圧を印加するアークイオンプレーティングを通じてジルコニウム合金被覆管上にCr-Al薄膜を蒸着させるステップを含むことを特徴とし、このとき、蒸着条件を最適化させることで、蒸着速度も向上させることができるので、経済性を高めることができる。
【0044】
したがって、原子力発電の安定性と経済性を大きく増大させることができると予想される。
【0045】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものであって、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0046】
実施例1
公知の方法でCr及びAlを含むターゲットを製造した。このとき、ターゲット内のAl含量は、10重量%である。このとき、ターゲットが蒸着前に酸化されることを防止するために、1×10-6 torr~1×10-5 torrの真空状態にした後、キャリアガスであるアルゴン(Ar)を注入して5~20mTorrに作動圧力を設定した。ターゲットに90Aの電流及び150Vのバイアス電圧を印加するアークイオンプレーティングを通じてジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管上に50μm厚さのCr-Al薄膜を蒸着させた。Cr-Al薄膜をEDX分析した結果、薄膜内のAl含量は、7.3重量%であることが確認される。
【0047】
実施例2
ターゲット内のAl含量が15重量%であること以外は、実施例1と同一の方法でジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管上にCr-Al薄膜を蒸着させた。Cr-Al薄膜をEDX分析した結果、薄膜内のAl含量は、11.4重量%であることが確認される。
【0048】
実施例3
ターゲット内のAl含量が20重量%であること以外は、実施例1と同一の方法でジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管上にCr-Al薄膜を蒸着させた。Cr-Al薄膜をEDX分析した結果、薄膜内のAl含量は、17.8重量%であることが確認される。
【0049】
比較例1
ターゲット内のAl含量が25重量%であること以外は、実施例1と同一の方法でジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管上にCr-Al薄膜を蒸着させた。Cr-Al薄膜をEDX分析した結果、薄膜内のAl含量は、21.1重量%であることが確認される。
【0050】
比較例2
別途の薄膜を蒸着しないジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管を準備した。
【0051】
比較例3
50μm厚さのCr薄膜が蒸着されたジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管を準備した。
【0052】
図1は、実施例1~3及び比較例1によってCr-Al薄膜が蒸着されたジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管でCr-Al薄膜のXRDパターンを分析した結果を示すグラフである。
【0053】
図1に示したように、実施例1~3の場合、ターゲット内のAl含量が10~20重量%(すなわち、薄膜内のAl含量が約7~18重量%)であって、Cr-Al薄膜のXRDパターンを分析した結果、別途の金属間化合物が生成されないことが確認されるが、比較例1の場合、ターゲット内のAl含量が25重量%(すなわち、薄膜内のAl含量が約21重量%)であって、Cr-Al薄膜のXRDパターンを分析した結果、Al原子サイズがCr原子サイズより大きいため、置換されたAlの含量が増加するほど格子定数が大きくなって(110)ピークが低い角度側に移動することで確認される。すなわち、Cr2Al化合物が生成されたことが確認される。Cr2Al化合物のような金属間化合物は、ジルカロイ-4(Zircaloy-4)と高温で熱膨脹率の差が大きくなるので、Cr-Al薄膜が界面から分離されたり、Cr-Al薄膜にクラックが発生する問題点を有する。
【0054】
図2は、実施例1~3及び比較例1~3によるジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管を1200℃及び水蒸気雰囲気条件で2000秒間酸化させた結果、重量増加量を比較した結果を示すグラフである。
【0055】
図2に示したように、比較例2の場合、別途の薄膜が蒸着されなかったが、高温水蒸気条件で重量増加量がよほど大きいことが確認された。実施例1~3及び比較例1、3のように、高温耐酸化性薄膜が蒸着された場合、高温水蒸気条件で重量増加量が相対的に小さいことで確認される。特に、実施例1~3のように、ターゲット内のAl含量が10~20重量%(すなわち、薄膜内のAl含量が約7~18重量%)である場合、比較例1~3に比べて高温水蒸気条件で重量増加量が一層小さいことが確認される。
【0056】
図3は、比較例1によってCr-Al薄膜が蒸着されたジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管を1200℃及び水蒸気雰囲気条件で2000秒間酸化させた結果、外形を示す写真及び断面を示すSEM写真である。
【0057】
図3に示したように、比較例1の場合、ターゲット内のAl含量が25重量%(すなわち、薄膜内のAl量が約21重量%)であって、外形ではCr-Al薄膜上に腐食が観察され、断面ではCr-Al薄膜内に金属間化合物としてCr2Al化合物が観察される。
【0058】
図4は、実施例1の同一の方法でジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管上にCr-Al薄膜を蒸着させるが、アークイオンプレーティングするときにターゲットに印加するバイアス電圧を300Vに固定した状態で、印加する電流を10~150Aに多様に調節するとき、その蒸着速度を測定した結果を示すグラフである。
【0059】
図4に示したように、アークイオンプレーティングするとき、ターゲットに印加する電流値が増加するほど蒸着速度が増加する傾向を示すことが確認される。
【0060】
また、図5は、実施例1と同一の方法でジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管上にCr-Al薄膜を蒸着させるが、アークイオンプレーティングするときにターゲットに印加する電流を90Aに固定した状態で、印加するバイアス電圧を30~400Vに多様に調節するとき、その蒸着速度を測定した結果を示すグラフである。
【0061】
図5に示したように、アークイオンプレーティングするとき、ターゲットに印加する電圧値が減少するほど蒸着速度が増加する傾向を示すことが確認される。特に、アークイオンプレーティングするときにターゲットに印加するバイアス電圧が30~400Vである場合には、蒸着速度が約2~12μm/hレベルであることで確認されるが、アークイオンプレーティングするときにターゲットに印加するバイアス電圧が400V超過である場合には、蒸着速度が顕著に低下されることが確認される。
【0062】
図4及び図5と関連して、表1は、実施例1と同一の方法でジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管上にCr-Al薄膜を蒸着させるが、アークイオンプレーティングするときにターゲットに印加する電流及びバイアス電圧を多様に調節するとき、その蒸着速度を測定した結果を示すものである。
【0063】
【表1】
【0064】
表1に示したように、アークイオンプレーティングするときにターゲットに印加する電流を60A以上に調節しながら印加するバイアス電圧を250V以下に調節する場合、最適化された蒸着速度を有することが確認される。
【0065】
図6は、実施例1と同一の方法でジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管上にCr-Al薄膜を蒸着させるが、アークイオンプレーティングするときにターゲットに印加するバイアス電圧を150Vに固定した状態で、印加する電流を120A又は150Aに調節した結果、Cr-Al薄膜が蒸着されたジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管の外形を示す写真及び断面を示すSEM写真である。
【0066】
図6に示したように、アークイオンプレーティングするときにターゲットに印加する電流値が120Aを超過して増加する場合には、Cr-Al薄膜に発生する液滴(droplet)のサイズと数が増加する問題点があることが確認される。
【0067】
図7は、実施例1と同一の方法でジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管上にCr-Al薄膜を蒸着させるが、アークイオンプレーティングするときにターゲットに印加する電流を90Aに固定した状態で、印加するバイアス電圧を30Vに調節した結果、Cr-Al薄膜が蒸着されたジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管の外形を示す写真である。
【0068】
図7に示したように、アークイオンプレーティングするときにターゲットに印加するバイアス電圧が30Vである場合、Cr-Al薄膜が界面から剥離される問題点があることが確認される。
【0069】
図8は、実施例1と同一の方法でジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管上にCr-Al薄膜を蒸着させるが、アークイオンプレーティングするときにターゲットに印加する電流を90Aに固定した状態で、印加するバイアス電圧を50~400Vに多様に調節した後、これを1200℃及び水蒸気雰囲気条件で2000秒間酸化させた結果、重量増加量を比較した結果を示すグラフである。
【0070】
図8に示したように、アークイオンプレーティングするときにターゲットに印加するバイアス電圧が50~100Vである場合、高温水蒸気条件で重量増加量が相対的に大きいことが確認されるが、アークイオンプレーティングするときにターゲットに印加するバイアス電圧が120V以上である場合、高温水蒸気条件で重量増加量が大幅に小さくなることが確認される。
【0071】
図9は、実施例1と同一の方法でジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管上にCr-Al薄膜を蒸着させるが、薄膜の厚さを多様に調節した後、これを1200℃及び水蒸気雰囲気条件で2000秒間酸化させた結果、重量増加量を比較した結果を示すグラフである。
【0072】
図9に示したように、薄膜の厚さが少なくとも5μm以上である場合、高温水蒸気条件で重量増加量が大幅に小さくなることが確認される。
【0073】
図10は、実施例1と同一の方法でジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管上にCr-Al薄膜を蒸着させるが、蒸着時の作動圧力(working pressure)を3~20 mTorrに多様に調節した結果、Cr-Al薄膜が蒸着されたジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管の表面外形を示すSEM写真である。
【0074】
また、表2は、実施例1と同一の方法でジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管上にCr-Al薄膜を蒸着させるが、蒸着時の作動圧力(working pressure)を5mTorr、10mTorr及び20mTorrで調節した結果、Cr-Al薄膜が蒸着されたジルカロイ-4(Zircaloy-4)材質の被覆管の算術平均粗さ(arithmetical average roughness;Ra)を示したものである(測定装備:Surftest、V-500)。
【0075】
【表2】
【0076】
図10及び表2に示したように、蒸着時の作動圧力が増加するほど表面粗さが減少することが確認される。これは、蒸着時の作動圧力が増加するほど、ターゲットで生成されたイオン及び液滴(droplet)が気体分子と衝突する確率が高くなるからである。したがって、蒸着時の作動圧力が5~20mTorrの場合には、表面粗さ(surface roughness;Ra)が5μm以下であることが確認される。
【0077】
上述した本発明の説明は例示に過ぎず、本発明が属する技術分野の通常の知識を有した者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更せずに他の具体的な形態に容易に変形が可能であることを理解すべきである。したがって、以上で記述した実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10