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  • 特許-DMDに基づく高速走査露光方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】DMDに基づく高速走査露光方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
G03F7/20 505
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020534844
(86)(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 CN2019127498
(87)【国際公開番号】W WO2020135343
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2020-06-12
(31)【優先権主張番号】201811588156.0
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520211627
【氏名又は名称】合肥芯碁微電子装備股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CIRCUIT FABOLOGY MICROELECTRONICS EQUIPMENT CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】11/F,F3 BUILDING,INNOVATION INDUSTRIAL PARK,NO.2800 CHUANGXIN AVENUE,HIGH-TECH ZONE,HEFEI,Anhui 230088,China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】卞 洪飛
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-073495(JP,A)
【文献】特開2004-301914(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0266536(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー、DMD、対物レンズ、基板、および、精密ステージを含む露光装置に適用できるDMDに基づく高速走査露光方法であって、
前記レーザーから発せられた光が前記DMDを照射して、前記DMDで反射されてから対物レンズに入射し、前記精密ステージ上の基板に結像するように制御するステップS100と、
前記精密ステージが第1の方向に沿って均一な速度で移動しながら、設定された走査ステップに従ってパルス信号を等距離で発生させてから、前記第1の方向に垂直な第2の方向にステップ移動し、または、移動しないように制御するステップS200と、
前記DMDにより前記パルス信号が検出されとパターンを更新するとともに、次の前記パルス信号が検出されるまで、レーザーから発せられた光を前記対物レンズの外に反射させるようにDMDマイクロミラーの偏向角度を調整するステップS300と、
を含むことを特徴とするDMDに基づく高速走査露光方法。
【請求項2】
前記精密ステージのパルス信号は低レベルまたは高レベルである、ことを特徴とする請求項1に記載のDMDに基づく高速走査露光方法。
【請求項3】
前記DMDは、前記パルス信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジを検出すると、パターンの更新を開始する、ことを特徴とする請求項1に記載のDMDに基づく高速走査露光方法。
【請求項4】
前記精密ステージの走査ステップは、基板での結像後の前記DMDの有効表示高さ以下であり、前記有効表示高さが前記DMDによって前記精密ステージの前記基板の焦点面に投影された投影高さである、ことを特徴とする請求項1に記載のDMDに基づく高速走査露光方法。
【請求項5】
前記DMDにより、精密ステージのパルス信号が検出されてパターンが更新されてから次のステージのパルス信号が検出されるまで、レーザーから発せられた光を対物レンズの外に反射させるようにDMDマイクロミラーの偏向角度を調整するための遅延時間は調整可能である、ことを特徴とする請求項1に記載のDMDに基づく高速走査露光方法。
【請求項6】
前記DMDは、
オン状態とオフ状態の間で切り替え可能であり、前記オン状態にあるとき、レーザーから発せられた光を前記対物レンズに反射させ、前記オフ状態にあるとき、レーザー光を前記対物レンズの外に反射させることができるマイクロミラー本体と、
前記マイクロミラー本体の偏向角度を制御するためのものであり、記憶されたデータの結果に基づいて、前記マイクロミラー本体を前記オン状態と前記オフ状態の間で切り替えるように制御するメモリと、を含むことを特徴とする請求項1に記載のDMDに基づく高速走査露光方法。
【請求項7】
前記メモリには、データ1とデータ0が記憶されており、前記DMDマイクロミラーがパターンを更新する方法において、
前記メモリが前記パルス信号を検出しかつデータ1が記憶された場合、前記マイクロミラー本体は、前記オン状態に移行すること、および、
前記メモリが前記パルス信号を検出しかつデータ0が記憶された場合、前記マイクロミラー本体は、前記オフ状態に移行することを含む、ことを特徴とする請求項6に記載のDMDに基づく高速走査露光方法。
【請求項8】
前記マイクロミラー本体が前記オン状態にあるとき、前記マイクロミラー本体の偏向角度は+Θ度であり、前記マイクロミラー本体が前記オフ状態にあるとき、前記マイクロミラー本体の偏向角度は-Θ度である、ことを特徴とする請求項7に記載のDMDに基づく高速走査露光方法。
【請求項9】
前記マイクロミラー本体がさらに水平配置状態を有し、前記マイクロミラー本体が前記水平配置状態にあるとき、前記マイクロミラー本体の偏向角度はゼロ度であり、前記マイクロミラー本体はレーザー光を前記対物レンズの外に反射させる、ことを特徴とする請求項8に記載のDMDに基づく高速走査露光方法。
【請求項10】
前記DMDマイクロミラーがレーザー光を前記対物レンズの外に反射させる方法において、
前記DMDマイクロミラーは、水平配置コマンドにより、前記マイクロミラー本体を前記水平配置状態に移行させるように制御すること、または、メモリにデータ0をロードすることでマイクロミラー本体をオフ状態に移行させるように制御することを含む、ことを特徴とする請求項6に記載のDMDに基づく高速走査露光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクレスリソグラフィの技術分野に関し、具体的には、DMDに基づく高速走査露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マスクレスリソグラフィは、空間光変調器(Spacial Light Modulator、SLM )を用いて露光パターンを感光材料に転写して結像する技術である。
【0003】
デジタルマイクロミラーDMD(Digital Micro mirror Device)は空間光変調器の一つとして、マスクレスリソグラフィシステムに幅広く適用されている。それはマイクロミラーで構成されたアレイであり、マイクロミラーはその下方にあるメモリによって独立に制御され、画像中の1画素に対応している。メモリ内のデータが1であるとき、マイクロミラーが+Θ度だけ偏向され、オン状態に対応するが、メモリ内のデータが0であるとき、マイクロミラーが-Θ度だけ偏向され、オフ状態に対応する。Θ角はDMDデバイスに関連し、その典型的な値として、12度または17度が挙げられる。また、各マイクロミラーは、水平配置コマンドにより、その偏向角度はゼロ度状態にされてもよい。
【0004】
走査型露光は、ステージの均一な速度での移動を用いて、一定の走査ステップでパターンを更新する方式により、ストライプ走査露光を実現させる。走査型露光は、ステップ型露光と比べて、スティッチングを効果的に低減するとともに、生産性を向上させることができる。
【0005】
走査露光時、精密ステージが各走査ステップの始点から終点まで移動しているところ、パターンが更新されず、レーザーがオン状態にあるので、「スミア」が生じてしまい、さらに、走査方向とは平行または垂直で線幅が同一である線には、線幅のばらつきがあり、最終的に、走査ステップの増大が制限される。走査速度が更新頻度と走査ステップとを乗算した積であることから、パターンの更新頻度が一定である場合、走査ステップは、走査速度の向上を制限し、最終的に走査型露光システムの生産性の向上に影響を与えることが分かる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、少なくとも、従来技術に存在する技術的課題の一つを解決することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これに鑑みて、本発明は、「スミア」現象の発生を効果的に低減し、走査速度を大幅に向上させることができる走査露光方法を提案する。
【0008】
本発明の実施例に係るDMDに基づく高速走査露光方法は、レーザー、DMD、対物レンズ、基板、および、精密ステージを含む露光装置に適用でき、前記高速走査露光方法において、前記レーザーから発せられた光が前記DMDを照射して、前記DMDで反射されてから対物レンズに入射し、前記精密ステージ上の基板上の感光材料で結像するように制御するステップS100と、前記精密ステージが第1の方向に沿って均一な速度で移動しながら、設定された走査ステップに従ってパルス信号を等距離で発生させてから、前記第1の方向に垂直な第2の方向にステップ移動し、または、移動しないように制御するステップS200と、前記DMDにより、前記パルス信号が検出されたときにパターンが更新されてから、次の前記パルス信号が検出されるまで、レーザーからの光を前記対物レンズの外に反射させるようにDMDマイクロミラーの偏向角度を調整するステップS300と、を含む。
【0009】
本発明の実施例に係る走査露光方法では、DMDによりパルス信号が検出されてパターンが更新されてから、次のパルス信号が検出されるまで、レーザーからの光を対物レンズの外に反射させるようにDMDマイクロミラーの偏向角度を調整することで、精密ステージが第1の移動方向に走査移動するときに、基板上の感光材料で結像することができない。当該方法によれば、走査型露光の過程における「スミア」による異なる方向での線幅が同一である線の線幅のばらつきへの影響を低減し、それにより、走査ステップを大幅に増加するとともに、DMDマイクロミラーによる更新頻度を低減することができ、さらに、走査露光装置の走査速度と生産性を向上させることができる。
【0010】
本発明の一実施例によれば、前記パルス信号は低レベルまたは高レベルである。
【0011】
本発明の一実施例によれば、前記DMDは、前記パルス信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジを検出すると、パターンの更新を開始する。
【0012】
本発明の一実施例によれば、前記精密ステージの走査ステップは、基板での結像後の前記DMDマイクロミラーの有効表示高さ以下である。
【0013】
本発明の一実施例によれば、前記DMDにより、精密ステージのパルス信号が検出されてパターンが更新されてから、次のステージのパルス信号が検出されるまで、レーザーから発せられた光を対物レンズの外に反射させるようにDMDマイクロミラーの偏向角度を調整するための遅延時間は調整可能である。
【0014】
本発明の一実施例によれば、前記DMDは、オン状態とオフ状態の間で切り替え可能であり、前記オン状態にあるとき、レーザーから発せられた光を前記対物レンズに反射させ、前記オフ状態にあるとき、レーザー光を前記対物レンズの外に反射させることができるマイクロミラー本体と、前記マイクロミラー本体の偏向角度を制御するためのものであり、記憶されたデータの結果に基づいて、前記マイクロミラー本体を前記オン状態と前記オフ状態の間で切り替えるように制御するメモリと、を含む。
【0015】
本発明の一実施例によれば、前記メモリには、データ1とデータ0が記憶されており、前記DMDがパターンを更新する方法において、前記メモリが前記パルス信号を検出しかつデータ1が記憶された場合、前記マイクロミラー本体は前記オン状態に移行すること、および、前記メモリが前記パルス信号を検出しかつデータ0が記憶された場合、前記マイクロミラー本体は前記オフ状態に移行すること、を含む。
【0016】
本発明の一実施例によれば、前記マイクロミラー本体が前記オン状態にあるとき、前記マイクロミラー本体の偏向角度は+Θ度であり、前記マイクロミラー本体が前記オフ状態にあるとき、前記マイクロミラー本体の偏向角度は-Θ度である。
【0017】
本発明の一実施例によれば、前記マイクロミラー本体がさらに水平配置状態を有し、前記マイクロミラー本体が前記水平配置状態にあるとき、前記マイクロミラー本体の偏向角度はゼロ度であり、前記マイクロミラー本体はレーザー光を前記対物レンズの外に反射させる。
【0018】
本発明の一実施例によれば、前記DMDマイクロミラーがレーザーから発せられた光を前記対物レンズの外に反射させる方法において、前記DMDマイクロミラーは、水平配置コマンドにより、前記マイクロミラー本体を前記水平配置状態に移行させるように制御すること、または、メモリにデータ0をロードすることでマイクロミラー本体をオフ状態に移行させるように制御することを含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明の追加の態様や利点は、以下の記述に部分的に開示され、その一部は以下の記述から明らかなものとなり、または、本発明の実施から把握されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の上記および/または追加の態様や利点は、以下の図面と併せた実施例の説明から明らかなものとなり、かつ、理解されやすいものとなる。
図1】本発明の実施例に係る走査露光方法のフローチャートである。
図2】本発明の実施例に係る走査露光方法における露光装置の構造概略図である。
図3】本発明の実施例に係る走査露光方法における精密ステージから発せられたパルス信号の概略図である。
図4】本発明の実施例に係る走査露光方法におけるDMDマイクロミラーのマイクロミラー本体の状態概略図である。
図5】本発明の実施例に係る走査露光方法における走査ストライプパターンの概略図である。
図6図5に係る走査ストライプパターンのDMD上の表示過程の概略図である。
図7図5に係る走査ストライプパターンの基板上の感光材料による結像過程の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例を詳しく説明するが、前記実施例の例示を図面に示し、同一または類似の素子または同一または類似の機能を有する素子は、一貫して同一または類似の符号で示す。図面を参照して説明する以下の実施例は例示的なものであり、本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明を制限するものとして理解してはならない。
【0022】
本発明の記載では、「中央」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「縦」、「横」、「頂」、「底」、「内」、「外」という用語が示す方位または位置関係は、図面に基づいて示される方位または位置関係であり、本発明の説明を容易にし、記載を簡素化するためのものに過ぎず、示された装置または素子が特定の方位を有し、特定の方位で構築および操作されなければならないことを示したり示唆したりものではないため、本発明を制限するものとして理解されてはならない。
【0023】
なお、「第1の」、「第2の」という用語は、目的を説明するものに過ぎず、相対的な重要度を示すまたは示唆するものとして、あるいは、指し示す構成要件の数を暗示的に示すものとして、理解されてはならないことに留意されたい。それにより、「第1の」、「第2の」が限定された構成要件には、1つまたは複数の当該構成要件が明示的または暗示的に含まれることが可能である。さらに、本発明の記載では、特に断りのない限り、「複数」とは、2つ以上を意味している。
【0024】
以下、本発明の実施例に係る走査露光方法について、図面を参照して具体的に説明する。
【0025】
なお、本発明の実施例に係る走査露光方法は、図2に示す露光装置10に適用でき、露光装置10は、レーザー11、DMD12、対物レンズ13、基板14、および、精密ステージ15を含み、レーザー11からの光は、DMD12を照射して、DMD12で反射されてから対物レンズ13に入射し、最終的に精密ステージ15上の基板14上の感光材料、例えば、シリコンウェハで結像する。
【0026】
図1に示すように、本発明の実施例に係る走査露光方法は、
レーザー11から発せられた光がDMD12を照射して、DMD12で反射されてから対物レンズ13に入射し、精密ステージ15上の基板14上の感光材料で結像するように制御するステップS100と、
精密ステージ15が第1の方向に沿って均一な速度で移動しながら、設定された走査ステップに従ってパルス信号を等距離で発生させてから、第1の方向に垂直な第2の方向にステップ移動し、または、移動しないように制御するステップS200と、
DMD12によりパルス信号が検出されてパターンが更新されてから、次のパルス信号が検出されるまでに、レーザーから発せられた光を対物レンズ13の外に反射させるようにDMDマイクロミラーの偏向角度を調整するステップS300と、を含む。
【0027】
言い換えれば、本発明の実施例に係る走査露光方法では、走査すべきストライプパターンを走査露光する際、まず、レーザー11をオンにして、光がDMD12に照射されてDMD12で対物レンズ13へ反射されてから、精密ステージ15上の基板14上の感光材料で結像するように制御する。次に、露光過程において、精密ステージ15は第1の方向(図2に示すy方向)に沿って均一な速度で移動しながら、第1の方向に設定された走査ステップでパルス信号を発生させるように制御し、その後、精密ステージ15は第2の方向(図2に示すx方向)に沿って、それぞれ複数回の走査と1回の走査に対応するステップ移動し、または、移動しないように制御される。複数回の走査については、精密ステージ15は、第1の方向での1回の走査移動が終了すると、第2の方向にステップ移動し、その後、第1の方向の反対方向に沿って均一な速度および等距離でパルス信号をトリガーし、順次往復する。1回の走査について、精密ステージ15は、走査ストロークが終了するまで、第1の方向のみに均一な速度および等距離でパルス信号をトリガーする。
【0028】
DMD12は、精密ステージ15の移動中に、精密ステージ15から発せられたパルス信号をリアルタイムに検出し、DMD12は、パルス信号を検出すると、メモリ内のデータに基づいてパターンを更新する。メモリ内のデータが1であるとき、DMD12のマイクロミラーが+Θ度偏向され、オン状態に対応するが、メモリ内のデータが0であるとき、DMD12のマイクロミラーが-Θ度偏向され、オフ状態に対応する。パターンが更新されてから次の精密ステージ15のパルス信号が検出されるまで、DMD12のマイクロミラーの偏向角度を調整し、レーザーから発せられた光を対物レンズ13の外に反射させることにより、精密ステージ15が第1の方向に走査移動する過程に生じる「スミア」を回避する。
【0029】
それにより、本発明の実施例に係る走査露光方法において、DMD12によりパルス信号が検出されかつパターンが更新された後であって次のパルス信号が検出される前に、レーザーから発せられた光を対物レンズ13の外へ反射させるようにDMD12のマイクロミラーの偏向角度を調整することで、精密ステージ15が第1の方向に走査移動するときに、基板14上の感光材料で結像することができない。そのため、走査型露光の過程における「スミア」による異なる方向での線幅が同一である線の線幅のばらつきへの影響を低減し、それにより、走査ステップを大幅に増加するとともに、DMD12による更新頻度を低減することができ、さらに、走査露光装置10の走査速度と生産性を向上させることができる。
【0030】
本発明の一実施例によれば、DMD12は、パルス信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジを検出すると、パターンの更新を開始する。ここで、パルス信号は低レベルまたは高レベルであってもよい。
【0031】
具体的には、図3に示すように、図3には、精密ステージ15がパルス信号を発するタイミングと走査ステップの関係が示され、精密ステージ15が第1の方向に沿って移動するとき、移動し始めた時点でパルス信号を発し、その後、走査ステップで第1の方向にパルス信号を等距離でトリガーしてもよい。複数回の走査について、精密ステージ15は、第1の方向での1回の走査移動が終了すると、第2の方向にステップ移動し、その後、第1の方向の反対方向に沿って均一な速度および等距離でパルス信号をトリガーし、順次往復する。1回の走査について、精密ステージ15は、走査ストロークが終了するまで、第1の方向のみに均一な速度および等距離でパルス信号をトリガーする。
【0032】
本発明の幾つかの具体的な実施の形態では、DMD12は、マイクロミラー本体とメモリを含む。
【0033】
ここで、マイクロミラー本体は、オン状態とオフ状態の間で切り替え可能であり、オン状態にあるとき、レーザー11から発せられた光を対物レンズ13に反射させ、オフ状態にあるとき、レーザー11から発せられた光を対物レンズ13の外に反射させることができる。メモリは、DMD12の偏向角度を制御するためのものであり、記憶されたデータの結果に基づいて、マイクロミラー本体をオン状態とオフ状態の間で切り替えるように制御する。
【0034】
好ましくは、メモリに、データ1とデータ0が記憶されており、DMD12がパターンを更新する方法において、メモリがパルス信号を検出しかつデータ1が記憶された場合、マイクロミラー本体はオン状態に移行すること、および、メモリがパルス信号を検出しかつデータ0が記憶された場合、マイクロミラー本体はオフ状態に移行すること、を含んでもよい。さらに、マイクロミラー本体がオン状態にあるとき、マイクロミラー本体の偏向角度は+12度であり、マイクロミラー本体がオフ状態にあるとき、マイクロミラー本体の偏向角度は-12度である。
【0035】
言い換えれば、マイクロミラー本体の移動状態は、メモリによって個別に制御されてもよい。メモリはマイクロミラー本体の下方に位置するものであり、ロードされたデータに基づいてマイクロミラー本体の角度を制御し、レーザーから発せられた光を対物レンズ13内へ反射させ、または、対物レンズ13の外へ反射させることができる。具体的には、DMDマイクロミラー下方のメモリが1であるとき、マイクロミラー本体は+12度だけ偏向されオン状態となり、レーザーから発せられた光は精密ステージ15上の基板14上の感光材料に反射されて結像する。DMDマイクロミラー下方のメモリが0であるとき、マイクロミラー本体は-12度だけ偏向されオフ状態となり、レーザーから発せられた光は対物レンズ13の外へ反射される。
【0036】
本発明の一実施例によれば、マイクロミラー本体がさらに水平配置状態を有し、マイクロミラー本体が水平配置状態にあるとき、マイクロミラー本体の偏向角度はゼロ度であり、マイクロミラー本体はレーザーから発せられた光を対物レンズ13の外に反射させる。さらに、DMD12がレーザーから発せられた光を対物13の外へ反射させる方法において、DMD12は、水平配置コマンドにより、マイクロミラー本体を水平配置状態に移行させるように制御することをさらに含む。
【0037】
即ち、メモリは、データ0をロードすることでマイクロミラー本体をオフ状態に移行させるように制御するほか、マイクロミラー本体に対して水平配置コマンドを直接送信することで、マイクロミラー本体の偏向角度をゼロ度にすることもできる。その場合、マイクロミラー本体は、同様に、レーザーから発せられた光を対物レンズ13の外へ反射させることができ、当該状態はマイクロミラー本体のオフ状態に類似する。
【0038】
具体的には、図4に示すように、マイクロミラー本体は、オン状態、水平配置状態、および、オフ状態の間で移行可能であり、マイクロミラー本体がオン状態にあるとき、マイクロミラー本体の偏向角度は+12度であり、マイクロミラー本体がオフ状態にあるとき、マイクロミラー本体の偏向角はが-12度であり、マイクロミラー本体が水平配置状態にあるとき、マイクロミラー本体の偏向角度はゼロ度である。
【0039】
好ましくは、本発明の幾つかの具体的な実施の形態では、メモリは、DMD12によりパターンが更新された後、所定の期間だけ遅延させて、マイクロミラー本体に対してオフコマンドまたは水平配置コマンドを送信する。言い換えれば、DMDマイクロミラーのオフコマンドまたは水平配置コマンドは、DMD12によりパターンが更新された後、一定の期間だけ遅延して送信されてもよい。遅延期間は、DMDマイクロミラーの安定化期間によって決められてもよい。
【0040】
本発明の一実施例によれば、精密ステージ15の走査ステップは、DMD12の有効表示高さ以下である。ここで、DMD12の有効表示高さとは、DMD12の実際の表示高さが光学システムによって拡大または縮小されてから、ステージの基板の焦点面に投影された投影高さを指す。
【0041】
以下、図5図7を参照して、本発明の実施例に係る走査露光方法によるストライプパターンの走査の適用例について具体的に説明する。
【0042】
本発明の実施例に係る走査露光方法において、DMDマイクロミラーアレイの大きさは6×6であり、対物レンズの倍率は1であり、走査ステップは3つのDMDマイクロミラーの高さである。DMDマイクロミラーは、精密ステージのパルス1と2でそれぞれ、更新され、パルス1と2の間でオフされるまたは水平配置操作されることで、レーザーからの光を対物レンズ13の外へ反射させる。精密ステージ上の基板上の感光材料は、パルス1と2に対応するステージの位置で結像し、パルス1と2の間では結像しない。それにより、「スミア」の発生が回避される。
【0043】
それにより、本発明の実施例に係る走査露光方法において、精密ステージの2つのパルス信号の間をオフまたは水平配置にすることでDMDマイクロミラーの偏向角度を調整し、レーザーから発せられた光を対物レンズの外へ反射させることにより、走査方向に垂直なストライプの「スミア」による異なる方向での線幅が同一である線の線幅のばらつきを低減し、DMDマイクロミラーをオフまたは水平配置にしたとき、「スミア」は走査ステップに対して正の相関とはならない。その場合、走査ステップを大幅に増加することができるが、最大のものとして、DMDの有効表示領域の長さを超えないため、DMDの更新頻度の低減、より高い走査速度、および生産性のさらなる向上の効果を実現した。
【0044】
本発明の記載では、参照用語である「1つの実施例」、「いくつかの実施例」、「例示的な実施例」、「例」、「具体的な例」、または、「いくつかの例」などの記載とは、当該実施例または例示の記載に関して説明した具体的な構成要件、構造、材料または特徴が本発明の少なくとも1つの実施例または例に含まれることを意味する。本明細書において、上記用語に対する例示的な表現は、必ずしも同一の実施例または例を指すものであるとは限らない。しかも、記載される具体的な構成要件、構造、材料または特徴は、任意の1つまたは複数の実施例または例において、適切な方式により組み合わされてもよい。
【0045】
本発明の実施例を示して説明したが、本発明の原理及び趣旨から逸脱しない限り、それらの実施例に対して種々の変更、修正、差し替え、及び変形を行うことができ、本発明の範囲が請求項及びその均等物によって限定されることは当業者には理解できるであろう。
【符号の説明】
【0046】
10、露光装置 11、レーザー 12、DMD 13、対物レンズ 14、基板 15、精密ステージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7