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特許6999828電界整形要素を有する癌治療用の医療デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】電界整形要素を有する癌治療用の医療デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/40 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
A61N1/40
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020542718
(86)(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 US2018057104
(87)【国際公開番号】W WO2019084003
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2020-04-28
(31)【優先権主張番号】62/575,700
(32)【優先日】2017-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/167,116
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505003528
【氏名又は名称】カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ブライアン エル.
(72)【発明者】
【氏名】ルートヴィヒ、ジェイコブ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ハースル、ベンジャミン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ケーン、マイケル ジェイ.
【審査官】安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0239213(US,A1)
【文献】米国特許第05458597(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0204161(US,A1)
【文献】特表2007-533389(JP,A)
【文献】特表2008-515544(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0129276(US,A1)
【文献】特表2008-532564(JP,A)
【文献】特表2008-541974(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0024802(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00- 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌性腫瘍を治療するための医療デバイスシステムであって、
1つ以上の電界発生電極と、
前記1つ以上の電界発生電極と共に植え込まれるように構成された電界整形要素であって、電界に曝された組織の領域を変質させる材料を含む、電界整形要素と、
を含み、
前記電界整形要素は、前記リード及び前記1つ以上の電界発生電極から物理的に分離され、
前記電界整形要素は、平坦ディスク、矩形又は正方形の形態に構成され、かつ、前記癌性腫瘍の近傍に配置され、
前記電界整形要素は、癌性腫瘍上に電界を集中させるための1つ以上の孔を含む、医療デバイスシステム。
【請求項2】
リードを更に含み、前記1つ以上の電界発生電極が前記リード上に配置されている、請求項1に記載の医療デバイスシステム。
【請求項3】
前記リードは、基端部と先端部とを有するリード本体を含み、前記リード本体は、前記リード本体を通り、前記1つ以上の電界発生電極と前記リード本体の前記基端部との間に電気通信を提供する1つ以上の導体を含む、請求項2に記載の医療デバイスシステム。
【請求項4】
前記電界整形要素は、癌性腫瘍と隣接する非癌性組織との間に、又は隣接する非癌性組織と前記1つ以上の電界発生電極との間に配置されるように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療デバイスシステム。
【請求項5】
前記電界整形要素は、電界のエネルギーを減衰させる材料を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の医療デバイスシステム。
【請求項6】
前記電界整形要素は、ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエチレン-co-テトラフルオロエテン(ETFE)、ポリウレタン、シリコーン、ポリ(p-キシリレン)、ポリエーテルブロックアミド、ナイロン、五酸化タンタル、セラミックス、石英、ガラス、ポリピロール、ポリアニリン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリチオフェン、ポリチオフェン-ビニレン、ポリ(2,5-チエニレンビニレン)、ポリ(3-アルキルチオフェン、ポリ(p-フェニレン)、ポリ-p-フェニレン-スルフィド、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリ(p-フェニレン-テレフタルアミド)、ポリアセチレン、ポリ(イソチアナフテン)、ポリ(α-ナフチルアミン)、ポリアズレン、ポリフラン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリ(3-オクチルチオフネン(octylthiophnene)-3-メチルチオフェン)、ポリ(p-フェニレン-テレフタルアミド)、パラジウム、白金、金、ニチノール、ニッケル-コバルト合金、ステンレス鋼合金、及びこれらの誘導体から選択される1つ以上の高誘電体材料を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の医療デバイスシステム。
【請求項7】
性腫瘍を治療するための医療デバイスシステムであって、
1つ以上の電界発生電極と、
前記1つ以上の電界発生電極と共に植え込まれるように構成された電界整形要素であって、電界から非癌性組織を遮蔽するように構成されている、電界整形要素と、
を含み、
前記電界整形要素は、前記リード及び前記1つ以上の電界発生電極から物理的に分離され、
前記電界整形要素は、平坦ディスク、矩形又は正方形の形態に構成され、かつ、前記癌性腫瘍の近傍に配置され、
前記電界整形要素は、癌性腫瘍上に電界を集中させるための1つ以上の孔を含む、医療デバイスシステム。
【請求項8】
リードを更に含み、前記1つ以上の電界発生電極が前記リード上に配置されている、請求項に記載の医療デバイスシステム。
【請求項9】
前記電界整形要素は金属シートを含む、請求項7又は8に記載の医療デバイスシステム。
【請求項10】
前記電界整形要素は拡張可能格子を含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の医療デバイスシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、全ての指定国の出願人として、カーディアックペースメーカーズインコーポレイテッド(Cardiac Pacemakers,Inc.)(米国企業)、及び全ての指定国の発明者として、ブライアン L.シュミット(Brian L.Schmidt)(米国国民)及びジェイコブ M.ルドウィグ(Jacob M.Ludwig)(米国国民)及びベンジャミン J.ハースル(Benjamin J.Haasl)(米国国民)及びマイケル J.ケーン(Michael J.Kane)(米国国民)の名義で、2018年10月23日にPCT国際特許出願として出願されたものであり、2018年10月22日出願の米国特許出願第16/167,116号明細書、及び2017年10月23日に出願の米国仮特許出願第62/575,700号明細書の優先権を主張し、それらの内容全体を参照により本明細書中に援用する。本明細書の実施形態は、身体組織内の癌性腫瘍の治療に使用するための電界整形要素を含む医療デバイスシステムに関する。より具体的には、本明細書の実施形態は、治療電界を癌性腫瘍の部位に方向転換する又は集中させるように構成された電界整形要素の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
米国がん協会によれば、癌は、米国内で毎年発生する死亡の約25%を占める。癌性腫瘍の現在の標準治療には、外科手術、放射線治療、及び化学療法などのファーストライン治療を含み得る。追加的なセカンドライン治療には、放射性シード注入、凍結療法、ホルモン又は生物学的製剤治療、アブレーション等を含み得る。ファーストライン治療とセカンドライン治療の組み合わせもまた、1つの特定の治療が単独で効果的でない場合に患者の利益となり得る。
【0003】
癌性腫瘍は、体のいずれかの部分の1つの正常細胞が突然変異し、その後過剰に及び過度に急激に成長及び増殖し始めると形成され得る。癌性腫瘍は、細胞分裂中に発生する細胞のDNA又はRNAの遺伝子突然変異、イオン化放射線又は非イオン化放射線などの外部刺激、発癌性物質への曝露の結果、又は遺伝性の遺伝子突然変異の結果であり得る。病因論に関わらず、多くの癌性腫瘍は、抑制のない急速な細胞分裂の結果である。
【0004】
有糸分裂は細胞分裂の過程であり、多くの種類の癌性細胞を含む体内の全ての体細胞の細胞周期の一部である。有糸分裂は、4つの基準期:前期、中期、後期、及び終期を含む。前期の直前に、細胞はその染色体を複製し、2つの同一姉妹染色分体を作る。前期中に、染色体は凝縮し始め、核を取り囲む核膜が消失する。有糸分裂紡錘体も前期中に形成され始める。有糸分裂紡錘体は、微小管及び中心体の自己組織化された双極性の配列を含む。微小管は、一般に、高極性のα-チューブリンタンパク質とβ-チューブリンタンパク質との重合で形成される。中心体は同じくタンパク質ベースの細胞小器官であり、この段階で、その2つは分裂細胞の両側に移動する。微小管の負に荷電した端部は中心体に付着する。微小管の正に荷電した端部は分裂細胞の赤道面に向かって放射状に広がり、各姉妹染色分体の動原体に最終的に付着する。中期は、全ての染色体が分裂細胞の赤道面に整列し、有糸分裂紡錘体と結合することと定義され得る。次いで、後期中に、同数の姉妹染色分体が細胞の両側に向かって引っ張られる。全ての染色体が分離されると、終期の過程が始まり、細胞膜は、2つの新たに形成される姉妹細胞間に分裂溝を形成し始め、細胞が細胞質分裂と呼ばれる過程で互いに物理的に分離すると、細胞分裂は完了する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書の実施形態は、身体組織内の癌性腫瘍の治療に使用するための電界整形要素を含む医療デバイスシステムに関する。第1の態様では、癌性腫瘍を治療するための医療デバイスシステムが提供される。医療デバイスシステムは、1つ以上の電界発生電極と、1つ以上の電界発生電極と共に植え込まれるように構成された電界整形要素と、を含み得る。電界整形要素は、電界に曝された組織の空間的領域を変質させる材料で作製され得る。
【0006】
第2の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、医療デバイスは、1つ以上の電界発生電極がリード上に配置されたリードを含み得る。
【0007】
第3の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、リードは、基端部と先端部とを有するリード本体を含み得る。リード本体は、リード本体を通り、1つ以上の電界発生電極とリード本体の基端部との間に電気通信を提供する1つ以上の導体を含み得る。
【0008】
第4の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、電界整形要素は、リード及び1つ以上の電界発生電極から物理的に分離され得る。
【0009】
第5の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、電界整形要素は、電界を遮蔽する材料を含み得る。
第6の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、電界整形要素は、癌性腫瘍と隣接する非癌性組織との間に配置され得る。
【0010】
第7の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、電界整形要素は、隣接する非癌性組織と1つ以上の電界発生電極との間に配置され得る。
【0011】
第8の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、電界整形要素は、電界を方向転換する材料を含み得る。
第9の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、電界整形要素は、電界のエネルギーを減衰させる材料を含み得る。
【0012】
第10の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、電界整形要素は、高誘電体材料を含み得る。
第11の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、電界整形要素は、癌性腫瘍に対して凹形状を含み得る。
【0013】
第12の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、電界整形要素は、癌性腫瘍に対して放物面形状を含み得る。
第13の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、電界整形要素はポリマーシートであり得る。
【0014】
第14の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、ポリマーシートは、ポリマーシート内に配置された、癌性腫瘍上に電界を収束させるための1つ以上の孔を含み得る。
【0015】
第15の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、電界整形要素は金属シートであり得る。
第16の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、金属シートは、金属シート内に配置された、癌性腫瘍上に電界を収束させるための1つ以上の孔を含み得る。
【0016】
第17の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、癌性腫瘍を治療するための医療デバイスシステムが提供される。医療デバイスシステムは、1つ以上の電界発生電極と、1つ以上の電界発生電極と共に植え込まれるように構成された電界整形要素と、を含み得る。電界整形要素は、電界から非癌性組織を遮蔽するように構成され得る。
【0017】
第18の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、リードが含まれ、1つ以上の電界発生電極がリード上に配置されている。
【0018】
第19の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、リードは、基端部と先端部とを有するリード本体を含み得る。リード本体は、リード本体を通り、1つ以上の電極とリード本体の基端部との間に電気通信を提供する1つ以上の導体を含み得る。
【0019】
第20の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、電界整形要素は、リード及び1つ以上の電界発生電極から物理的に分離され得る。
【0020】
第21の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、電界整形要素は、電界を方向転換する材料を含み得る。
第22の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、電界整形要素は、連続した金属シートであり得る。
【0021】
第23の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、連続した金属シートは、電界が非癌性組織に接触するのを防ぐために、金属シートの外面で電界を効果的に分路するように、金属シート内に配置された1つ以上の孔を含み得る。
【0022】
第24の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、連続した金属シートは、拡張可能格子を含み得る。
第25の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、癌性腫瘍を治療する方法が提供される。当該方法は、癌性腫瘍の近位に材料を配置することであって、材料は、置換される患者組織よりも少なく電界を減衰させる、ことと、材料の、癌性腫瘍から反対側に1つ以上の電極を配置することと、1つ以上の電極から癌性腫瘍の部位に電界を発生させることと、を含み得る。
【0023】
第26の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、材料を配置することは、患者組織の一部分を、置換される患者組織よりも少なく電界を減衰させる材料と置換することを含む。
【0024】
第27の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、材料は天然材料を含み得る。
第28の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、材料は合成材料を含み得る。
【0025】
第29の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、方法は、癌性腫瘍の部位に電界を発生させることは、患者の体の外部に電界を発生させることを含む、を含み得る。
【0026】
第30の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、癌性腫瘍を治療するための医療デバイスシステムが含まれる。医療デバイスは、1つ以上の植え込み式電界発生電極と、1つ以上の植え込み式電界発生電極に結合され、癌性腫瘍の部位に電界を送達するように構成された外部電界発生システムと、を含み得る。
【0027】
第31の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、1つ以上の植え込み式電界発生電極と外部電界発生システムは、容量結合、誘導結合、導電結合、高周波エネルギー伝達、及び音響エネルギー伝達から選択される少なくとも1つの機構を介して無線接続される。
【0028】
第32の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、システムは、1つ以上の電界発生電極と共に植え込まれるように構成された電界整形要素も含み得る。
【0029】
第33の態様では、先行する若しくは以下の態様の1つ以上に加えて、又はいくつかの態様の代替として、癌性腫瘍を治療する方法が提供される。方法は、電界整形要素を癌性腫瘍の近位に配置することを含み得る。方法は、1つ以上の電極を癌性腫瘍に、癌性腫瘍の近傍に、又は癌性腫瘍内に配置することも含み得る。方法は、1つ以上の電極から癌性腫瘍の部位に電界を発生させることも含み得る。
【0030】
この発明の概要は、本願の教示のいくつかの概要であり、本対象の排他的又は網羅的治療を意図するものではない。更なる詳細は詳細な説明及び付属の特許請求の範囲に記載されている。当業者には、他の態様は、それぞれ限定の意味で解釈されるべきではない、以下の詳細な説明を読み、理解すると共に、その一部を成す図面を見ると明らかであろう。本明細書の範囲は、付属の特許請求の範囲及びそれらの法的均等物により定義される。
【0031】
態様は、以下の図訳と絡めて、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本明細書中の各種実施形態による医療システムの概略図である。
図2】本明細書中の各種実施形態による医療システムの概略図である。
図3】本明細書中の各種実施形態による医療デバイスの概略断面図である。
図4】本明細書中の各種実施形態による医療デバイスの概略図である。
図5】本明細書中の各種実施形態による医療デバイスの構成要素の概略図である。
図6】本明細書中の各種実施形態による医療デバイスの概略図である。
図7】本明細書中の各種実施形態による医療デバイスシステムの概略図である。
図8】本明細書中の各種実施形態による医療デバイスシステムの概略図である。
図9】本明細書中の各種実施形態による医療デバイスシステムの概略図である。
図10】本明細書中の各種実施形態による医療デバイスシステムの概略図である。
図11】本明細書中の各種実施形態による医療デバイスシステムの概略図である。
図12】本明細書中の各種実施形態による医療デバイスシステムの概略図である。
図13】本明細書中の各種実施形態による癌性腫瘍を治療する方法の概略図である。
図14】本明細書中の各種実施形態による人体の断面図である。
図15】本明細書中の各種実施形態によるリードの概略図である。
図16】本明細書中の各種実施形態による例示的な治療パラメータのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
実施形態には様々な変更及び代替的形態が考えられるが、その詳細を例及び図面として示すと共に、詳しく述べる。しかしながら、本明細書の範囲は記載される特定の実施形態に限定されないことは理解すべきである。反対に、本発明は、本明細書の趣旨及び範囲内に含まれる変更、等価物、及び代替物を包含することを意図する。
【0034】
上で述べたように、多くの癌性腫瘍は、抑制のない急速な細胞分裂により生じ得る。癌性腫瘍を治療するためのいくつかの従来のファーストライン治療には、外科手術、放射線治療、及び化学療法を含み得る。しかしながら、多くのファーストライン治療は、いくつかの例を挙げると、疲労、脱毛、免疫抑制、及び長期の手術回復時間などの付随する望ましくない副作用を有する。
【0035】
理論により拘束されるものではないが、交流電界は、細胞分裂に関与する主要タンパク質(特にチューブリン及びセプチン)の双極子配列を障害することにより癌性腫瘍内の有糸分裂を破壊することができると考えられる。微小管紡錘糸を形成しているチューブリンタンパク質の重合を破壊することができ、それゆえ、染色体分離に必要な紡錘糸の形成が阻止される。これにより、有糸分裂の中期における細胞分裂を停止することができる。いくつかの場合では、交流電界は、既に成長している紡錘糸の重合を停止することができ、細胞がそれほど長く生存している場合には、後期中の不完全な紡錘体及び一様でない染色体分離に至る。いずれの場合においても、微小管の不完全重合に起因する後期中の微小管紡錘体形成の停止及び一様でない染色体分離は、アポトーシス(即ちプログラム細胞死)につながる可能性がある。
【0036】
また、交流電界は、終期中の分裂細胞の分裂溝の近傍における電界密度の増加につながり得ると考えられる。分裂溝の領域における電界密度の増加は、高電界密度の分裂溝への、タンパク質及び核酸などの荷電巨大分子の誘電泳動を生じ得る。分裂溝の部分における細胞分裂に必要な主要巨大分子の一様でない濃度は、終期中の姉妹細胞の最終分離を破壊することができ、最終的にアポトーシスに至る。
【0037】
電界の形状及び大きさは、空間中の電極の配置、及びいくつかの異なる電極構成の電界を変化させることにより調整することができる。時として、電界の形状は、個々の電極アレイ内又は医療デバイスシステム全体内の個別電極の極性を交番する又は切り替えることによって操作することができる。
【0038】
電界はまた、癌性腫瘍の治療部位又はその近傍に電界整形要素を配置することにより操作することができる。電界整形要素は、電界が、隣接する非癌性組織内の細胞に影響を及ぼさないように、又は隣接する非癌性組織内の細胞に対する影響を低下させるように、電界を方向転換するように構成され得る。電界整形要素はまた、癌性腫瘍の部位に電界を集中させるために使用され得る。
【0039】
ここで図1を参照すると、本明細書中の各種実施形態による医療デバイス100の概略図が示される。医療デバイス100は、患者101の体内の、身体組織内にある癌性腫瘍の部位又はその近傍に完全に植え込むことができる。四肢、上部胴体、腹部領域、頭部等などの領域を含む様々な植え込み部位を使用することができる。
【0040】
ここで図2を参照すると、本明細書中の各種実施形態による医療デバイス200の別の概略図が示される。医療デバイス200は患者101の体内に部分的に植え込むことができる。いくつかの実施形態では、医療デバイスは、部分的に植え込まれ、且つ部分的に患者の体外にあることができる。他の実施形態では、部分的に植え込まれた医療デバイスは、体内に配置された構成要素と体外に配置された構成要素との間の経皮的接続を含み得る。部分的に植え込まれた医療デバイスは医療デバイスの部分的に外部にある部分と無線接続を介して無線通信することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、医療デバイスの一部分は完全に植え込むことができ、医療デバイスの一部分は完全に外部にあることができる。例えば、いくつかの実施形態では、1つ以上の電極又はリードは体内に完全に植え込むことができる一方で、電界発生器などの電界を発生させる医療デバイスの部分は完全に体外にあることができる。本明細書中に記載されるいくつかの実施形態では、記載する電界発生器は、パルス発生器と同じ構成要素の多くを含むことができ、且つパルス発生器と同じ機能の多くを実施するように構成され得ることは理解されるであろう。医療デバイスの一部分が完全に植え込まれ、医療デバイスの一部分が完全に外部にある実施形態では、完全に外部にある医療デバイスの部分は、完全に内部にある医療デバイスの部分と無線通信することができる。しかしながら、他の実施形態では、有線接続を使用することはできる。
【0042】
医療デバイス100又は医療デバイス200は、筺体102と、筺体102に結合されたヘッダ104と、を含み得る。様々な材料が使用され得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、筺体102は、金属、セラミック、ポリマー、合成物等などの材料で形成され得る。いくつかの実施形態では、筺体102又はその1つ以上の部分はチタンで形成され得る。ヘッダ104は様々な材料で形成することができるが、いくつかの実施形態では、ヘッダ104は、エポキシ材料などの半透明ポリマーで形成され得る。いくつかの実施形態では、ヘッダ104は中空であり得る。他の実施形態では、ヘッダ104は、非中空となるように、エポキシ若しくは別の材料などの構成要素及び/又は構造材料で充填することができる。
【0043】
医療デバイス100又は医療デバイス200の一部分が部分的に外部にあるいくつかの実施形態では、ヘッダ104及び筺体102は、耐久性高分子材料製の保護ケーシングにより包囲することができる。医療デバイス100又は医療デバイス200の一部分が部分的に外部にある他の実施形態では、ヘッダ104及び筺体102は、高分子材料、金属材料、及び/又はガラスを組み合わせて作製された保護ケーシングにより包囲することができる。
【0044】
ヘッダ104は1つ以上のリード106に結合され得る。ヘッダ104は、1つ以上のリード106の基端部の固定を提供し、筺体102内の1つ以上の構成要素に1つ以上のリード106を電気的に接続するように機能し得る。1つ以上のリード106は、電気リード106の長さに沿って配置された1つ以上の電極108を含み得る。いくつかの実施形態では、電極108は電界発生電極を含むことができ、他の実施形態では、電極108は電界検知電極を含み得る。いくつかの実施形態では、リード106は、電界発生電極及び電界検知電極の両方を含み得る。他の実施形態では、リード106は、任意の数の電界検知及び電界発生の両方の電極を含み得る。本明細書の医療デバイスの多くの実施形態はリードと共に機能するように設計されているが、電界を発生させるリードレス医療デバイスもまた、本明細書で企図されることは理解されるであろう。
【0045】
ここで図3を参照すると、本明細書中の各種実施形態による医療デバイス100の概略断面図が示される。筺体102は内部容積302を画定することができ、内部容積302は、中空であり得る、且ついくつかの実施形態では医療デバイス100の外側の領域304から密閉されている。他の実施形態では、筺体102は、非中空となるように、構成要素及び/又は構造材料で充填され得る。医療デバイス100は制御回路306を含むことができ、制御回路306は、筺体102内に配置された様々な構成要素308、310、312、314、316、及び318を含むことができる。いくつかの実施形態では、これら構成要素は統合することができ、他の実施形態では、これら構成要素は分離することができる。更に他の実施形態では、統合構成要素及び分離構成要素の両方の組み合わせが存在し得る。医療デバイス100は、単方向又は双方向無線データ通信を可能にするためのアンテナ324も含み得る。いくつかの実施形態では、医療デバイス100の構成要素は、それに通信的に接続された又は取り付けられた、充電回路を介した医療デバイスの経皮的充電を容易にするための誘導性エネルギー受信用コイル(図示せず)を含み得る。
【0046】
制御回路306の各種構成要素308、310、312、314、316、及び318としては、とりわけ、マイクロプロセッサ、メモリ回路(ランダムアクセスメモリ(RAM)及び/又はリードオンリーメモリ(ROM)など)、レコーダ回路、コントローラ回路、遠隔測定回路、電源回路(バッテリーなど)、タイミング回路、及び特定用途用集積回路(ASIC)、充電回路が挙げられ得るがこれらに限定されない。制御回路306は電界発生回路320と通信することができ、電界発生回路320は、電流を発生させて、1つ以上の電界を生成するように構成され得る。電界発生回路320は、制御回路306と統合することができる、又は制御回路306と別個の構成要素とすることができる。制御回路306は、電界発生回路320からの電流の供給を制御するように構成され得る。いくつかの実施形態では、電界発生回路320は、体外にある医療デバイスの一部分内に存在し得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、制御回路306は、10kHz~1MHzの範囲から選択される1つ以上の周波数を使用して電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、100kHz~500kHzの範囲から選択される1つ以上の周波数で電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、100kHz~300kHzの範囲から選択される1つ以上の周波数で電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、1MHzを超える1つ以上の周波数を使用して電界を定期的に送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、電界は、癌性細胞の細胞有糸分裂の破壊に有効であり得る。電界は、1つより多いベクトルに沿って癌性腫瘍の部位に送達され得る。いくつかの例では、電界は、リード電極のうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つのベクトルに沿って送達され得る。いくつかの実施形態では、2つのベクトル間に空間的多様性を持つ少なくとも2つのベクトルが使用され得る。ベクトルは、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80又は90度で空間的に分離され得る(例えば、ベクトルは互いに対して角度を成して配置され得る)。
【0049】
所望の電界強度は、2つの電極間に電流を送達することにより得ることができる。電界が送達される特定の電流及び電圧は異なることができ、被治療組織の部位において所望の電界強度を得るように調整することができる。いくつかの実施形態では、制御回路306は、1mAmp~1000mAmpの範囲の電流を使用して癌性腫瘍の部位に電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、20mAmp~500mAmpの範囲の電流を使用して癌性腫瘍の部位に電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、30mAmp~300mAmpの範囲の電流を使用して癌性腫瘍の部位に電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、制御回路306は、1mAmp、2mAmp、3mAmp、4mAmp、5mAmp、6mAmp、7mAmp、8mAmp、9mAmp、10mAmp、15mAmp、20mAmp、25mAmp、30mAmp、35mAmp、40mAmp、45mAmp、50mAmp、60mAmp、70mAmp、80mAmp、90mAmp、100mAmp、125mAmp、150mAmp、175mAmp、200mAmp、225mAmp、250mAmp、275mAmp、300mAmp、325mAmp、350mAmp、375mAmp、400mAmp、425mAmp、450mAmp、475mAmp、500mAmp、525mAmp、550mAmp、575mAmp、600mAmp、625mAmp、650mAmp、675mAmp、700mAmp、725mAmp、750mAmp、775mAmp、800mAmp、825mAmp、850mAmp、875mAmp、900mAmp、925mAmp、950mAmp、975mAmp、又は1000mAmpを含む電流を使用して電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。制御回路は、ある範囲内の電流で電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成することができ、範囲の下限が範囲の上限よりも小さい値であることを前提として、前述の電流のいずれかが当該範囲の下限又は上限として機能し得ることは理解されるであろう。
【0051】
いくつかの実施形態では、制御回路306は、1Vrms~50Vrmsの範囲の電圧を使用して癌性腫瘍の部位に電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、5Vrms~30Vrmsの範囲の電圧を使用して癌性腫瘍の部位に電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、10Vrms~20Vrmsの範囲の電圧を使用して癌性腫瘍の部位に電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、制御回路306は、1Vrms、2Vrms、3Vrms、4Vrms、5Vrms、6Vrms、7Vrms、8Vrms、9Vrms、10Vrms、15Vrms、20Vrms、25Vrms、30Vrms、35Vrms、40Vrms、45Vrms、又は50Vrmsを含む1つ以上の電圧を使用して電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。制御回路は、ある範囲内の電圧を使用して電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成することができ、範囲の下限が範囲の上限のよりも小さい値であることを前提として、前述電圧のいずれかが当該範囲の下限又は上限として機能し得ることは理解されるであろう。
【0053】
いくつかの実施形態では、制御回路306は、10kHz、20kHz、30kHz、40kHz、50kHz、60kHz、70kHz、80kHz、90kHz、100kHz、125kHz、150kHz、175kHz、200kHz、225kHz、250kHz、275kHz、300kHz、325kHz、350kHz、375kHz、400kHz、425kHz、450kHz、475kHz、500kHz、525kHz、550kHz、575kHz、600kHz、625kHz、650kHz、675kHz、700kHz、725kHz、750kHz、775kHz、800kHz、825kHz、850kHz、875kHz、900kHz、925kHz、950kHz、975kHz、1MHzを含む1つ以上の周波数を使用して、及び電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。電界発生回路320は、ある範囲内の周波数を使用して電界を送達することができ、上限が下限よりも大きいことを前提として、前述の周波数のいずれかが当該範囲の上限又は下限として機能し得ることは理解されるであろう。
【0054】
いくつかの実施形態では、制御回路306は、0.25V/cm~1000V/cmの範囲から選択される1つ以上の印加電界強度を発生させるよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、3V/cmを超える1つ以上の印加電界強度を発生させるよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、1V/cm~10V/cmの範囲から選択される1つ以上の印加電界強度を発生させるよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、3V/cm~5V/cmの範囲から選択される1つ以上の印加電界強度を発生させるよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。
【0055】
他の実施形態では、制御回路306は、0.25V/cm、0.5V/cm、0.75V/cm、1.0V/cm、2.0V/cm、3.0V/cm、5.0V/cm、6.0V/cm、7.0V/cm、8.0V/cm、9.0V/cm、10.0V/cm、20.0V/cm、30.0V/cm、40.0V/cm、50.0V/cm、60.0V/cm、70.0V/cm、80.0V/cm、90.0V/cm、100.0V/cm、125.0V/cm、150.0V/cm、175.0V/cm、200.0V/cm、225.0V/cm、250.0V/cm、275.0V/cm、300.0V/cm、325.0V/cm、350.0V/cm、375.0V/cm、400.0V/cm、425.0V/cm、450.0V/cm、475.0V/cm、500.0V/cm、600.0V/cm、700.0V/cm、800.0V/cm、900.0V/cm、1000.0V/cmを含む1つ以上の印加電界強度を発生させるよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。電界発生回路320はある範囲内の電界強度を有する電界を治療部位に発生させることができ、上限が下限よりも大きいことを前提として、前述の電界強度のいずれかが当該範囲の上限又は下限として機能し得ることは理解されるであろう。
【0056】
いくつかの実施形態では、制御回路306は、身体組織内にある癌性腫瘍の部位にリード106を介して電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。他の実施形態では、制御回路306は、身体組織内にある癌性腫瘍の部位に医療デバイス100の筺体102を介して電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。他の実施形態では、制御回路306は、リード106と医療デバイス100の筺体102との間に電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のリード106は電界発生回路320と電気通信することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上のリード106は、リード106の長さに沿って配置された1つ以上の電極108を含むことができ、電極108は、電界発生回路320と電気通信することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、医療デバイス100内の各種構成要素は、検知された電界に対応する信号を生成するように構成された電界検知回路322を含み得る。電界検知回路322は、制御回路306と統合することができる、又は制御回路306から分離することができる。
【0058】
検知電極は、医療デバイスの筺体上若しくはその近傍に、筺体に接続された1つ以上のリード上に、腫瘍の近傍若しくは腫瘍内に植え込まれる別個のデバイス上に、又はこれら位置の任意の組み合わせで配置され得る。いくつかの実施形態では、電界検知回路322は、第1の検知電極332及び第2の検知電極334を含み得る。他の実施形態では、筺体102自体が、電界検知回路322の検知電極として機能することができる。電極332及び電極334は、電界検知回路322と通信することができる。電界検知回路322は、第1の電極332と第2の電極334との間の電位差(電圧)を測定することができる。いくつかの実施形態では、電界検知回路322は、第1の電極332又は第2の電極334と1つ以上のリード106の長さに沿って配置された電極との間の電位差(電圧)を測定することができる。いくつかの実施形態では、電界検知回路は、検知された電界を測定し、電界強度(V/cm)を記録するように構成され得る。
【0059】
電界検知回路322は更に、第1の電極332又は第2の電極334と筺体102自体との間の電位差を測定することができることは理解されるであろう。他の実施形態では、医療デバイスは、電界検知電極又は電界発生電極であり得る第3の電極336を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の検知電極はリード106に沿って配置することができ、電界を検知するための追加的な位置として機能することができる。本明細書の実施形態による、1つ以上のリード106の長さに沿って配置された電極と筺体102との間の電位差を測定するための多くの組み合わせが考えられ得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、1つ以上のリード106は電界発生回路320と電気通信することができる。図1及び図2に示すように、1つ以上のリード106は1つ以上の電極108を含み得る。いくつかの実施形態では、電気伝導体326及び電気伝導体328などの各種電気伝導体は、ヘッダ104から貫通構造330を通して、医療デバイス100の内部容積302に通すことができる。したがって、電気伝導体326及び電気伝導体328は、1つ以上のリード106と筺体102の内部容積302内に配置された制御回路306との間に電気通信を提供するように機能し得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、レコーダ回路は、電界検知回路322によって生成されたデータを記録し、これに関するタイムスタンプを記録するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は各種機能を実行するために有線接続することができ、他の実施形態では、制御回路306は、マイクロプロセッサ又は他の外部計算デバイス上で実行する命令を実施するように指示され得る。遠隔測定回路もまた、プログラマ、自宅ユニット、及び/又はモバイルユニット(例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ等)などの外部計算デバイスと通信するために提供され得る。
【0062】
ここで図4を参照すると、本明細書の実施形態によるリードレス医療デバイス400が示される。リードレス医療デバイス400は、筺体402と、筺体402に結合されたヘッダ404と、を含み得る。様々な材料が使用され得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、筺体402は、金属、セラミック、ポリマー、合成物等などの材料で形成され得る。いくつかの実施形態では、筺体402又はその1つ以上の部分はチタンで形成され得る。ヘッダ404は様々な材料で形成することができるが、いくつかの実施形態では、ヘッダ404は、エポキシ材料などの半透明ポリマーで形成され得る。いくつかの実施形態では、ヘッダ404は中空であり得る。他の実施形態では、ヘッダ404は、非中空となるように、エポキシ若しくは別の材料などの構成要素及び/又は構造材料で充填することができる。いくつかの実施形態では、リードレス医療デバイス400は、リードレス医療デバイス400を体内の癌性腫瘍の部位又はその近傍に配置させ続けるための固定要素406を含み得る。いくつかの実施形態では、固定要素406は、爪、歯、螺旋部、バイアス部等を含み得る。
【0063】
図5に、本明細書中に記載される医療デバイスの各種実施形態の要素を示す。しかしながら、いくつかの実施形態は図5に示すもの以外の追加的な要素を含むことができることは理解されるであろう。加えて、いくつかの実施形態では、図5に示すいくつかの要素がなくてもよい。本明細書で具現化される医療デバイスは、1つ以上の検知チャネルを介して情報を収集することができ、1つ以上の電界生成チャネルを介して情報を出力することができる。マイクロプロセッサ502は双方向データバスを介してメモリ504と通信することができる。メモリ504は、プログラム格納用のリードオンリーメモリ(ROM)又はランダムアクセスメモリ(RAM)、及びデータ格納用のRAMを含み得る。マイクロプロセッサ502はまた、プログラマ、自宅ユニット、及び/若しくはモバイルユニット(例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ等)などの外部デバイスと通信するための遠隔測定インターフェイス518に接続され得る、又はセルラー若しくは他のデータ通信ネットワークにより容易になるクラウド若しくは別の通信ネットワークに直接接続され得る。いくつかの実施形態では、医療デバイスは、それに通信的に接続された又は取り付けられた、医療デバイスの経皮的充電を容易にするための誘導性エネルギー受信用コイルインターフェイス(図示せず)を含み得る。
【0064】
医療デバイスは、1つ以上の電界検知電極508と、マイクロプロセッサ502のポートと通信することができる1つ以上の電界センサチャネルインターフェイス506と、を含み得る。医療デバイスはまた、1つ以上の電界発生電極512と、マイクロプロセッサ502のポートと通信することができる1つ以上の電界発生チャネルインターフェイス510と、を含み得る。医療デバイスはまた、1つ以上の生理学的センサ、呼吸センサ、又は化学センサ516と、マイクロプロセッサ502のポートと通信することができる1つ以上の生理学的/呼吸/化学センサチャネルインターフェイス514と、を含み得る。チャネルインターフェイス506、510、及び514は、信号入力をデジタル化するためのアナログ/デジタル変換器、検知増幅器、レジスタ(検知増幅器、ソースドライバ、変調器、復調器、マルチプレクサ等のゲイン値及び閾値を調整するために制御回路により書き込むことができる)などの各種構成要素を含み得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、生理学的センサは、体温、血流量、血圧等を監視するセンサを含み得る。いくつかの実施形態では、呼吸センサは、呼吸数、呼吸ピーク振幅等を監視するセンサを含み得る。いくつかの実施形態では、化学センサは、血液尿素窒素、クレアチニン、フィブリン、フィブリノーゲン、免疫グロブリン、デオキシリンボ核酸、リボ核酸、カリウム、ナトリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウム、リチウム、ヒドロニウム、リン酸水素、重炭酸塩等などの分析物を含むがこれらに限定されない、センサ周囲の治療領域内に存在する分析物の量を測定することができる。しかしながら、本明細書では他の多くの分析物も考えられる。例示的な化学/分析物センサは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、ケーン(Kane)らの共有の米国特許第7,809,441号明細書に開示されている。
【0066】
図5では、生理学的、呼吸、又は化学センサ516は、医療デバイスの一部として示されるが、いくつかの実施形態では、生理学的、呼吸、又は化学センサの1つ以上は医療デバイスから物理的に分離され得ることは認識されたい。各種実施形態では、生理学的、呼吸、又は化学センサの1つ以上は、遠隔測定インターフェイス518を介して医療デバイスに通信的に接続される植え込まれた別の医療デバイス内にあり得る。更に他の実施形態では、生理学的、呼吸、又は化学センサの1つ以上は、体外にあることができ、遠隔測定インターフェイス518を介して医療デバイスに接続される。
【0067】
ここで図6を参照すると、本明細書の実施形態による医療デバイス600の概略図が示される。医療デバイス600は、筺体102、ヘッダ104、及び1つ以上のリード106を含み得る。リード106は、リード106の長さに沿って配置された電極604、606、608、610、612、又は614などの1つ以上の電極を含み得る。いくつかの実施形態では、電極604、606、608、610、612、又は614は電界発生電極を含むことができ、他の実施形態では、電極604、606、608、610、612、又は614は電界検知電極を含むことができる。いくつかの実施形態では、リード106は、電界発生電極及び電界検知電極の両方を含み得る。
【0068】
リード106の基端部はヘッダ104内に配置されている。電気リード106の先端部は、電極604、606、608、610、612、又は614を癌性腫瘍602に近接させるように、癌性腫瘍602を包囲することができる。いくつかの実施形態では、リード106は、電極604、606、608、610、612、又は614が癌性腫瘍602に隣接する又は癌性腫瘍602内に配置されるように、脈管系内に配置され得る。しかしながら、リード106は癌性腫瘍602内又はその周囲の様々な場所に配置され得ることは理解されるであろう。いくつかの実施形態では、リード106は癌性腫瘍602に直接通すことができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、リード106は、リードの長さに沿って、腫瘍に対する電極の厳密な位置の決定に使用するための1つ以上のトラッキングマーカ616又は618を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のトラッキングマーカは、リード上に配置された1つ以上の電極のすぐ先端側又はすぐ基端側に配置され得る。いくつかの実施形態では、トラッキングマーカは磁性材料で形成され得る。いくつかの実施形態では、トラッキングマーカはX線撮影材料で形成され得る。いくつかの実施形態では、トラッキングマーカは蛍光撮影材料で形成され得る。
【0070】
電界を生成するために、リード106に沿って配置された電極604、606、608、610、612、又は614の各種組み合わせの間に複数の電界ベクトルを発生させることができることは理解されるであろう。例えば、電極604と電極610との間に1つ以上の電界ベクトルを発生させることができる。同様に、電極606と電極612との間に1つ以上の電界ベクトルを発生させることができる。電極604、606、608、610、612、又は614の任意の組み合わせの間に1つ以上の電界ベクトルを発生させることができることも理解されるであろう。いくつかの実施形態では、電極604、606、608、610、612、又は614の任意の組み合わせと医療デバイス400の筺体102との間に1つ以上の電界ベクトルを発生させることができる。本明細書の実施形態による1つ以上の単極又は多極リードを使用することができることは理解されるであろう。いくつかの実施形態では、単極リードと多極リードの組み合わせが使用され得る。他の実施形態では、円形リード、クランプリード、カフリード、パドルリード、又はパッチリードが使用され得る。
【0071】
ここで図7図11を参照すると、電界整形要素の各種実施形態が示される。以下でより詳細に説明するように、電界整形要素は絶縁材料又は導電材料で形成され得る。電界整形要素は、癌性腫瘍の部位又はその近傍に植え込まれるように構成され得る。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される電界整形要素は、癌性腫瘍と隣接する非癌性組織との間に配置され得る。いくつかの実施形態では、非癌性組織は、腫瘍非含有器官、骨、又は血管であり得る。いくつかの実施形態では、電界整形要素は、隣接する非癌性組織と1つ以上の電界発生電極との間に配置され得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、電界整形要素は、ある領域を電界から遮蔽するように構成され得る。いくつかの実施形態では、電界整形要素は、電界を方向転換するように構成され得る。いくつかの実施形態では、電界整形要素は、電界を減衰させるように構成され得る。いくつかの実施形態では、電界整形要素は、電界を集中させるように構成され得る。いくつかの実施形態では、電界整形要素は剛性であり得る。他の実施形態では、電界整形要素は、電界整形要素に構造的柔軟性を与えるために可撓性であり得る。構造的柔軟性は、本明細書中に記載される電界整形要素が目的の癌性腫瘍及び/又は器官の周り若しくは周囲で不定形構成をとることを可能にし得る。
【0073】
ここで図7を参照すると、本明細書の実施形態による、癌性腫瘍704を治療するための医療デバイスシステム700の概略図が示される。医療デバイスシステム700は、筺体102とヘッダ104とを有する医療デバイスを含み得る。医療デバイスシステムはまた、1つ以上の電界発生電極706と、1つ以上の電界発生電極706と共に植え込まれるように構成された電界整形要素702と、を含み得る。電界整形要素702は、電界発生電極706により発生した電界に曝された組織の空間的領域を変質させる材料で形成され得る。図7では、癌性腫瘍704又はその近傍に配置された医療デバイスシステム700のリード106が示されるが、腫瘍704が、体内に、腫瘍を含む器官及び/又は組織から切除できないように位置する場合があることは理解されるであろう。したがって、リード106が、器官又は他の身体組織内に完全に若しくは部分的に含まれる癌性腫瘍の部位内に、この部位に、又はこの部位の近傍に配置され得ることは理解されるであろう。
【0074】
図7図12に示される図は概略図であり、説明を容易にするために、癌性腫瘍/その中の組織は周囲非癌性組織と共に全般的に図示されないことは理解されるであろう。しかしながら、多くの場合、癌性腫瘍/組織は、実際には、少なくともある量の非癌性組織によって直接包囲されている。
【0075】
いくつかの実施形態では、電界整形要素は、リード106及び1つ以上の電界発生電極706から物理的に分離されるように構成され得る。いくつかの実施形態では、電界整形要素は、リード106及び1つ以上の電界発生電極706に物理的に接続されるように構成され得る。電界整形要素がリード106及び1つ以上の電界発生電極706に物理的に接続されるように構成されているいくつかの実施形態では、電界整形要素は電極706と直接電気接触しない。いくつかの実施形態では、医療デバイス(図示せず)の筺体102は、電界発生電極又は電界検知電極のいずれかとして機能することができる。
【0076】
医療デバイスシステム700は1つ以上のリード106も含み得る。電界発生電極706は、リード106の長さに沿って配置され得る。いくつかの実施形態では、リードは、リード106の長さに沿って配置された1つ以上の電界検知電極を含み得る。リード106は、基端部710と先端部712とを有するリード本体708を含み得る。リード本体708は、リード本体708を通り、1つ以上の電界発生電極706とリード本体708の基端部710との間に電気通信を提供する1つ以上の導体(図示せず)を含み得る。
【0077】
ここで図8を参照すると、本明細書の実施形態による医療デバイスシステム800の概略図が示される。医療デバイスシステム800は半球状の電界整形要素802を含み、半球状の電界整形要素802は、癌性腫瘍804の周囲の領域を囲み、電極806によって発生した電界から非癌性組織を遮蔽するように構成されている。電界整形要素802は癌性腫瘍804又はその近傍の部位に植え込むことができる。電界整形要素802は癌性腫瘍804の大部分を包囲することができる。いくつかの実施形態では、電界整形要素802は剛性材料で形成され得る形成する、及び他の実施形態では、電界整形要素802は可撓性材料で形成され得る形成する。電界整形要素802は半球状の形状として示されるが、これは非限定的な例であり、電界整形要素802は楕円形、放物面状、矩形等とすることもできることは理解されるであろう。
【0078】
図8に、癌性腫瘍804又はその近傍に配置された医療デバイスシステム800のリード106が示されるが、腫瘍804が、体内に、腫瘍を含む器官及び/又は組織から切除できないように位置する場合があることは理解されるであろう。したがって、リード106は、器官又は他の身体組織内に完全に若しくは部分的に含まれる癌性腫瘍の部位内に、この部位に、又はこの部位の近傍に配置され得ることは理解されるであろう。
【0079】
ここで図9を参照すると、本明細書の実施形態による医療デバイスシステム900の概略図が示される。医療デバイスシステム900は、癌性腫瘍904を囲み、電極906によって発生した電界から非癌性組織を遮蔽するように構成された球状の電界整形要素902を含む。電界整形要素902は、癌性腫瘍904を完全に包囲するように植え込むことができ、腫瘍904の部位に電界を集中させるように機能する。いくつかの実施形態では、電界整形要素902は、両側にヒンジ及びクロージャを含むように構成され得る。いくつかの実施形態では、電界整形要素902は、互いにパチンと嵌まり、植え込まれたときに癌性腫瘍904の周囲全体に配置され得る球を形成する2つの等しい半片として構成され得る。他の実施形態では、電界整形要素902は、癌性腫瘍904を一部のみ包囲するように構成され得る。
【0080】
電界整形要素902は、上部開口部908及び底部開口部910などの1つ以上の開口部を含むことができ、リード106がそれぞれ上部開口部908及び/又は底部開口部910を通過し、癌性腫瘍904の部位に達することを可能にする。いくつかの実施形態では、電界整形要素902は剛性材料で形成され得る形成する、及び他の実施形態では、電界整形要素902は可撓性材料で形成され得る形成する。図9に、医療デバイスシステム900のリード106は癌性腫瘍904又はその近傍に配置されて示されるが、腫瘍904が、体内に、腫瘍を含む器官及び/又は組織から切除できないように位置する場合があることは理解されるであろう。したがって、リード106は、器官又は他の身体組織内に完全に若しくは部分的に含まれる癌性腫瘍の部位内に、この部位に、又はこの部位の近傍に配置され得ることは理解されるであろう。
【0081】
ここで図10を参照すると、本明細書の実施形態による医療デバイスシステム1000の概略図が示される。医療デバイスシステム1000は、癌性腫瘍1004を囲み、電極1006によって発生した電界から非癌性組織を遮蔽するように構成された円筒状の電界整形要素1002を含む。電界整形要素1002は、癌性腫瘍1004を完全に包囲するように植え込むことができる。いくつかの実施形態では、電界整形要素1002は、電界整形要素1002を癌性腫瘍1004の周囲全体に配置することができるように、両側にヒンジ及びクロージャを含むように構成され得る。いくつかの実施形態では、電界整形要素1002は、互いにパチンと嵌まり、植え込まれたときに癌性腫瘍1004の周囲全体に配置され得る円筒を形成する2つの等しい半片として構成され得る。他の実施形態では、電界整形要素1002は、癌性腫瘍1004を一部のみ包囲するように構成され得る。
【0082】
電界整形要素1002は、上部開口部1008及び底部開口部1010などの1つ以上の開口部を含むことができ、リード106がそれぞれ上部開口部1008及び/又は底部開口部1010を通過し、癌性腫瘍1004の部位に達することを可能にする。いくつかの実施形態では、電界整形要素1002は剛性材料で形成され得る形成する、及び他の実施形態では、電界整形要素1002は可撓性材料で形成され得る。図10に、医療デバイスシステム1000のリード106は癌性腫瘍1004又はその近傍に配置されて示されるが、腫瘍1004が、体内に、腫瘍を含む器官及び/又は組織から切除できないように位置する場合があることは理解されるであろう。したがって、リード106は、器官又は他の身体組織内に完全に若しくは部分的に含まれる癌性腫瘍の部位内に、この部位に、又はこの部位の近傍に配置され得ることは理解されるであろう。
【0083】
ここで図11を参照すると、本明細書の実施形態による医療デバイスシステム1100の概略図が示される。医療デバイスシステム1100はシート状の電界整形要素1102を含む。シート状の電界整形要素1102は、その中に配置された、電極1106によって発生した電界を癌性腫瘍1104の部位上に集中させるための1つ以上の孔1108を含み得る。いくつかの実施形態では、シート状の電界整形要素1102は高分子材料で作製され得る。いくつかの実施形態では、シート状の電界整形要素1102は金属材料で作製され得る。いくつかの実施形態では、電界整形要素1102は剛性材料で形成され得る形成する、及び他の実施形態では、電界整形要素1102は可撓性材料で形成され得る形成する。
【0084】
図11に、癌性腫瘍1104又はその近傍に配置された医療デバイスシステム1100のリード106が示されるが、腫瘍1104が、体内に、腫瘍を含む器官及び/又は組織から切除できないように位置する場合があることは理解されるであろう。したがって、リード106が、器官又は他の身体組織内に完全に若しくは部分的に含まれる癌性腫瘍の部位内に、この部位に、又はこの部位の近傍に配置され得ることは理解されるであろう。
【0085】
ここで図12を参照すると、本明細書の実施形態による癌性腫瘍1204を治療するための医療デバイスシステム1200の概略図が示される(図12は正確な縮尺ではない)。医療デバイスシステム1200は、1つ以上の電界発生電極1206と、1つ以上の電界発生電極1206と共に植え込まれるように構成された電界整形要素1202と、を含み得る。電界整形要素1202は、電界から非癌性組織1208を遮蔽するように構成され得る。電界整形要素1202は、リード106及び1つ以上の電界発生電極1206から物理的に分離されるように構成され得る。いくつかの実施形態では、医療デバイス(図示せず)の筺体102は、電界発生電極又は電界検知電極のいずれかとして機能することができる。
【0086】
医療デバイスシステム1200は1つ以上のリード106も含み得る。電界発生電極1206は、リード106の長さに沿って配置され得る。いくつかの実施形態では、リード106は、リード106の長さに沿って配置された1つ以上の電界検知電極を含み得る。リード106は、基端部1212と先端部1214とを有するリード本体1210を含み得る。リード本体1210は、リード本体1210を通り、1つ以上の電界発生電極1206とリード本体1210の基端部1212との間に電気通信を提供することができる1つ以上の導体(図示せず)を含み得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、電界整形要素1202は、組織1208などの非癌性組織を完全に包囲するように構成され得る。電界整形要素1202は、電界整形要素1202の表面で電界を方向転換するように機能し得る。いくつかの実施形態では、電界整形要素1202は、電界整形要素1202を非癌性組織1208の周囲全体に配置することができるように、両側にヒンジ及びクロージャを含むように構成され得る。いくつかの実施形態では、電界整形要素1202は、互いにパチンと嵌まり、植え込まれたときに非癌性組織1208の周囲全体に配置され得る円筒を形成する2つの等しい半片として構成され得る。電界整形要素1202は、上部開口部1216及び底部開口部1218などの1つ以上の開口部を含み得る。いくつかの実施形態では、電界整形要素1202は剛性材料で形成され得る形成する、及び他の実施形態では、電界整形要素1202は可撓性材料で形成され得る形成する。
【0088】
いくつかの実施形態では、電界整形要素1202は、連続する高分子シート又は連続した金属シートで形成され得る。いくつかの実施形態では、連続した金属シートは、金属シート内に配置された、1つ以上の孔を含み得る。連続した金属シートは、電界が非癌性組織に接触するのを防ぐために、金属シートの外面及び非癌性組織の周囲で電界を効果的に分路するように構成され得る。高分子シートは同様に、非癌性組織がごくわずかな電界しか受けないように電界を減衰させることができる。いくつかの実施形態では、連続した金属シート又は連続する高分子シートは拡張可能格子として形成され得る。
【0089】
図12に、癌性腫瘍1204又はその近傍に配置された医療デバイスシステム1200のリード106が示されるが、腫瘍1204が、体内に、腫瘍を含む器官及び/又は組織から切除できないように位置する場合があることは理解されるであろう。したがって、リード106が、器官又は他の身体組織内に完全に若しくは部分的に含まれる癌性腫瘍の部位内に、この部位に、又はこの部位の近傍に配置され得ることは理解されるであろう。
【0090】
ここで図13を参照すると、本明細書の実施形態による癌性腫瘍を治療する方法1300の概略図が示される。方法1300は、癌性腫瘍1304の近位の患者組織の1つ以上の部分1302を除去することを含み得る。患者組織1302の除去される部分1302は、頭蓋並びに関連する皮膚及び組織など体の外部表面上の患者組織の一部分を含み得る、又は結合組織、脂肪など患者の体内にある患者組織の一部分、若しくは病的な器官、骨、若しくは血管等の一部分であり得る。多くのヒト組織(例えば、骨及び脂肪)は低い誘電率及び導電率を有するため、電界が標的癌性腫瘍に到達することができる前に電界を破壊するので、患者組織の一部分を除去することで、外部電極から印加される電界の伝搬を容易にすることができる。除去された患者組織を、癌性腫瘍の部位又はその近傍の誘電率及び導電率を増加することができる電界整形要素と置換することで、治効を高め、エネルギー使用を低減することができる。
【0091】
図13は患者組織の1つ以上の部分の除去を示すが、本明細書中に記載される方法は、患者組織が除去されない場合を含み得ることは理解されるであろう。例えば、いくつかの実施形態では、電界発生リードは、癌性腫瘍に、癌性腫瘍の近傍に、又は癌性腫瘍内に配置され得る一方、電界整形要素は経血管又はトンネリング(tunneling)法によって腫瘍の部位に送達され得る。いくつかの実施形態では、電界整形要素は、気管、気管支、血管等などの天然身体開口部を通して癌性腫瘍の部位に送達され得る。電界整形要素は、癌性腫瘍の部位で電界を方向転換するように構成され得る。いくつかの実施形態では、電界整形要素は、電界から非癌性組織を遮蔽するように構成され得る。いくつかの実施形態では、癌性腫瘍の部位に送達される電界整形要素は不定形溶液材料の形態であり得る。いくつかの実施形態では、溶液材料は導電性高分子溶液であり得る。他の実施形態では、癌性腫瘍の部位に送達される電界整形要素は金属ステント又はシートの形態であり得る。
【0092】
方法1300は、癌性腫瘍1304の近位の患者組織1302の一部分を、置換される患者組織よりも少なく電界を減衰させる材料1306と置換することを含み得る。いくつかの実施形態では、方法1300は、患者組織1302を天然材料と置換することを含み得る。いくつかの実施形態では、方法1300は、患者組織1302を合成材料と置換することを含み得る。方法1300はまた、患者組織1302と置換した材料1306の両側に1つ以上の外部結合電極1310を配置することと、1つ以上の電極1310から癌性腫瘍1304の部位に電界1312を発生させることと、を含み得る。いくつかの実施形態では、方法1300は、リード1314上に配置され、患者の体外に配置された電界発生器(図示せず)と電気通信する外部結合電極1310を使用することにより、癌性腫瘍1304の部位に電界1312を発生させることを含み得る。いくつかの実施形態では、材料1306は、2つ以上の電極として機能することができ、癌性腫瘍1304の部位に電界1312を発生させるために使用することができる。
【0093】
ここで図14を参照すると、ヒトの胸部1402の断面図1400の概略図が示される。ヒトの胸部1402の断面図1400は、肺1406を含む。肺組織1406内にある癌性腫瘍1404が示される。外部表面電極1410(又は外部表面カップリング構造)を含む外部電界発生システム1408が胸腔の外に配置され得る一方、内部リード1414は体内に完全に植え込むことができる。いくつかの実施形態では、内部リード1414は部分的に体内に及び部分的に体外に植え込むことができる。1つのリード1414のみを示すが、1つ以上のリードを含むことができることは理解されるであろう。
【0094】
リード1414の基端側部分は、皮膚の内面の隣に内部配置され得る内部表面電極1412(又は内部表面カップリング構造)を含むことができ、リードの先端側部分は、胸部内深くの、癌性腫瘍1404に、癌性腫瘍1404の近傍に、又は癌性腫瘍1404内に配置され得る。外部表面電極1410又はカップリング構造と内部表面電極1412又はカップリング構造は、リード1414を介して体内の癌性腫瘍の部位に電界を導くために、接続され得る、例えば無線接続され得る。外部表面電極1410と内部表面電極1412は、容量結合、誘導結合、導電結合、並びに高周波及び音響エネルギー伝達技術等などであるがこれらに限定されない様々な機構を使用して接続され得る。
【0095】
リード1414は、癌性腫瘍の部位に直流電界を生成するために、癌性腫瘍に、癌性腫瘍の近傍に、又は癌性腫瘍内に配置された1つ以上の電界発生電極1416を含み得る。外部電界発生システム1408は、癌性腫瘍の部位に電界を送達するために、1つ以上の植え込み式電界発生電極に接続されるように構成され得ることは理解されるであろう。このような構成は、脂肪、筋肉、骨等の存在によるあらゆる干渉を迂回しつつ、癌性の部位に直流電界を提供することができる。リード1414は、気管、気管支、血管等などの天然身体開口部を通して癌性腫瘍の部位に送達され得る。いくつかの実施形態では、リード1414は、癌性腫瘍の部位に外科的に送達され得る。いくつかの実施形態では、電界整形要素(図示せず)は、癌性腫瘍の部位に、リード1414と共に植え込まれ得る。いくつかの実施形態では、電界整形要素は、上述のように天然身体開口部を通して送達され得る。
【0096】
1つ以上のリード1414を使用した癌性腫瘍1404の部位への電界の直接送達は、皮膚表面で電界を引き起こすことに比べるとより少ないエネルギーを必要とし得ることは理解されるであろう。加えて、このタイプの内部/外部構成の組み合わせは、植え込み式バッテリーの必要性を排除できるため、システムの植え込み式構成要素の有効寿命が延びる。このタイプの受動的ではあるが能動的な植え込み型システムは、皮膚を介して治療エネルギーを提供することを可能にする。純粋に外部の手法に比べて、治療エネルギーを脂肪、骨等を通して非効率的に駆動する代わりに、そのようなエネルギーが追従する効率的な植え込み経路を可能にする。また、治療電界を癌性腫瘍の部位で直接生成することで、体の外面の組織加熱という副作用を減らすこともできる。
【0097】
ここで図15を参照すると、本明細書の実施形態による内部又は外部使用用のリードの例示的な部分1500が示される。部分1500は、その上に配置された複数の電極又はエネルギー伝送若しくは受信要素1504を有するパッチデバイス1502又はカップリングデバイスを含む。複数の電極又はエネルギー伝送若しくは受信要素は、ワイヤコイル、ワイヤループ、アンテナ等を含むがこれらに限定されない、電気エネルギーの無線伝送又は受信用の各種要素を含み得る。無線エネルギー伝送は、容量結合、誘導結合、導電結合、並びに高周波及び音響エネルギー伝達技術等を含むがこれらに限定されない各種機構を介して進めることができる。いくつかの実施形態では、体内の腫瘍部位に電界を送達するために1つ以上のパッチデバイスが用いられ得る。例えば、図14に示される例では、パッチデバイスは胸腔の外に配置することができ、外部電界発生システム1408に電気的に接続され得る。同様のパッチデバイスが、皮膚の内面の隣に内部配置され得る。そのような構成では、外部パッチデバイスと内部パッチデバイスは、互いに、及び1つ以上の電界発生電極が配置された1つ以上の植え込み式リードに無線接続することができる。パッチデバイス1502は、体内の癌性腫瘍の部位にある複数の植え込み式電極に1つ以上のリードを接続するように構成され得る。
電界整形要素
本明細書中に記載される医療デバイスシステムは、リード、電極、及び電界整形要素の各種組み合わせを含み得る。電界整形要素は、腫瘍の部位に電界を発生させることができる医療デバイスと共に、腫瘍の部位又はその近傍に植え込まれ得る。いくつかの実施形態では、電界整形要素は、リード、電極、及び電界発生器ハードウェアを含む医療デバイス全体と共に植え込まれ得る。いくつかの実施形態では、電界整形要素は、リード、電極、及び/又は電界発生器ハードウェアなどの医療デバイスの1つ以上の部分と共に植え込まれ得る。他の実施形態では、電界整形要素は、癌性腫瘍の部位又はその近傍に、1つ以上のリード及び電極と共に植え込むことができ、電界発生器ハードウェアは、内部リード及び電極構成要素に電気的に接続されるように、体外に外部配置され得る。内部リード及び電極構成要素への外部ハードウェアの電気的な接続には、容量結合、誘導結合、導電結合、並びに高周波及び音響エネルギー伝達技術等などであるがこれらに限定されない各種機構を含み得る。
【0098】
電界整形要素は、絶縁特性又は導電特性のいずれかを有する高誘電体高分子又は金属材料で形成され得る。生体適合性絶縁材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエチレン-co-テトラフルオロエテン(ETFE)、ポリウレタン、シリコーン、パリレンポリマーなどのポリ(p-キシリレン)ポリマー、ペバックス(登録商標)などのポリエーテルブロックアミド、ナイロン、五酸化タンタル、その他の高容量酸化物、又は前述のいずれかの誘導体などの材料が挙げられ得るがそれらに限定されない。他の実施形態では、絶縁材料は、セラミックス、石英、又はガラスなどの有機材料であり得る。
【0099】
生体適合性導電材料としては、ポリピロール、ポリアニリン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリチオフェン、ポリチオフェン-ビニレン、ポリ(2,5-チエニレンビニレン)、ポリ(3-アルキルチオフェン、ポリ(p-フェニレン)、ポリ-p-フェニレン-スルフィド、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリ(p-フェニレン-テレフタルアミド)、ポリアセチレン、ポリ(イソチアナフテン)、ポリ(α-ナフチルアミン)、ポリアズレン、ポリフラン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリ(3-オクチルチオフネン(octylthiophnene)-3-メチルチオフェン)、ポリ(p-フェニレン-テレフタルアミド)、及びこれらの誘導体などの高分子材料が挙げられ得るがそれらに限定されない。生体適合性導電材料としてはまた、パラジウム、白金、金、ニチノール、MP35N(登録商標)などのニッケル-コバルト合金、ステンレス鋼を含む各種合金等などの金属材料が挙げられ得るがそれらに限定されない。
【0100】
本明細書での使用に適した電界整形要素は、多くの3次元構成に成形することができる。いくつかの実施形態では、電界整形要素は、球、円筒、凸状ディスク、凹状ディスク、平坦ディスク、矩形、正方形、放物線等の形態に構成され得る。電界整形要素は、剛性又は可撓性とすることができる。いくつかの実施形態では、電界整形要素は、癌性腫瘍の部位でヒンジ若しくはスナップ機構又は縫合機構によって互いに接続され得る1つ以上の部品を含むように、モジュール式とすることができる。1つ以上の部品を接続するために多くの異なる手法及び構造を使用することができ、したがって、本明細書の実施形態は任意の特定の構造に限定されない。いくつかの実施形態では、電界整形要素は、互いに接続されない1つ以上の部品を含むように、モジュール式とすることができる。いくつかの実施形態では、電界整形要素は、器官又は血管の一部分が電界整形要素の一部分を通過することができるように、連続する領域及び連続しない領域を含み得る。いくつかの実施形態では、電界整形要素は剛性であり得る。いくつかの実施形態では、電界整形要素は、電界整形要素に構造的柔軟性を与えるために可撓性であり得る。構造的柔軟性は、本明細書中に記載される電界整形要素が目的の癌性腫瘍及び/又は器官の周り若しくは周囲で不定形構成をとることを可能にし得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、電界整形要素はシートとすることができる。いくつかの実施形態では、電界整形要素は、剛性シートを含み得る。いくつかの実施形態では、電界整形要素は、可撓性シートを含み得る。可撓性シートは、それが配置される下に存在する器官又は癌性腫瘍の形状をとることができることは理解されるであろう。いくつかの実施形態では、可撓性シートは、それが配置される下に存在する非癌性器官組織の形状をとることができることは理解されるであろう。いくつかの実施形態では、シートの形態の電界整形要素は、その上に配置された1つ以上の孔を含み得る。他の実施形態では、電界整形要素は不定形をとることができる。
【0102】
電界整形要素はまた、非癌性組織の電界への曝露を低減するために、癌性腫瘍の部位又はその近傍の電界を破壊するように構成され得る。電界整形要素は、発生した電界から1つ以上の非癌性組織を遮断する又は遮蔽するように構成されたシート、メッシュ、又は網製品によって囲まれた中空内部を有する連続デバイスの形状をとることができる。中空内部を有する連続デバイスは、デバイスの1つ以上の部分が開口し得る。連続デバイスは、癌性腫瘍の部位で例えばヒンジ若しくはスナップ機構又は縫合機構によって互いに接続され得る1つ以上の部品を含むように、モジュール式とすることができる。中空内部を有する連続デバイスとして構成される場合、電界整形要素はファラデーケージとして機能し得る。
【0103】
特定の理論により拘束されるものではないが、ファラデーケージは、局所電界がケージの内部に貫通しないように、局所電界をケージの外面に分路するように機能すると考えられる。ケージ内の電荷は、連続デバイスの導電材料の全体を移動し、電界がケージの内部に伝播しないように、電界の効果を取り消すことができる。ファラデーケージは、ケージ外部で電界を効果的に分路し、電界が非癌性組織に接触するのを防ぐために、非癌性組織の周囲に配置され得る。いくつかの実施形態では、非癌性組織は、腫瘍非含有器官、骨、又は血管であり得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の電界整形要素は、1つ以上の非癌性組織を包囲するためのファラデーケージとして動作するように、癌性腫瘍の部位又はその近傍に構成され得る。
リード及び電極
本明細書中に記載されるリードは、いくつかの手法を用いて、体内の、癌性腫瘍の部位近傍に配置され得る。1つ以上のリードの配置には、経血管配置、皮下腔へのトンネリング、及び/又は外科的配置などの手法を使用することを含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のリードの配置は、1つ以上の天然身体開口部を通した配置を含み得る。リードは、癌性腫瘍に隣接して又は癌性腫瘍内に配置され得る。いくつかの実施形態では、癌性腫瘍の近くで又は遠くで複数のリードが使用され得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される1つ以上のリードは、皮下腔内に配置され得る。皮下腔内に配置されたリード上の電極は、一次近距離発生電極(primary near-field generating electrode)として、又は遠距離電界発生電極として使用することができる。いくつかの実施形態では、皮下腔内に配置されたリード上の電極は、医療デバイスの筺体と共に、一次近距離発生電極として、又は遠距離電界発生電極として使用することができる。同様に、1つ以上のリードは、癌性腫瘍の部位若しくはその近傍の電極と共に、又は医療デバイスの筺体と共に、遠距離電界発生電極として機能するように、経血管的に配置され得る。
【0105】
本明細書中に記載されるリード及び電極は、更なる機能的及び構造的特徴を含み得る。いくつかの実施形態では、リードは、MRI(磁気共鳴映像法)、X線イメージング、脳深部刺激療法、及び/又は放射線治療を含むがこれらに限定されない画像化及び治療技術に対応するものを含み得る。いくつかの実施形態では、リードは、伝導性材料で作製された1つ以上の導体コアを含み得る。導体コアは、金属を含む伝導性材料及び/又はその他の伝導性材料で形成され得る。金属には、パラジウム、白金、銀、金、銅、アルミニウム、ステンレス鋼を含む各種合金、MP35N(登録商標)などのニッケル-コバルト合金等を含み得るがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、導体コアは、バイファイラコイル、トリファイラコイル、及びクアッドファイラコイルを含むがこれらに限定されないマルチファイラコイルであり得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、電極は、本明細書中に記載される1つ以上のリードの長さに沿って配置され得る。本明細書中に記載される電極での使用に適した材料は、磁界中におけるカップリング及びアーティファクト発生を最小限にするための、パラジウムなどの金属を含み得る。いくつかの実施形態では、電極は、他の金属及び/又は他の伝導性材料で作製され得る。金属には、パラジウム、白金、白金-イリジウム合金などの白金合金、金、銅、タンタル、チタン、ステンレス鋼を含む各種合金等を含み得るがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、電極は、電極の可撓性を損なうことなく表面積の増加という付加的な利点を提供することができる巻かれたコイルの形態とすることができる。いくつかの実施形態では、植え込み型デバイスの筺体は、電極として機能することができる。
【0107】
本明細書中に記載されるリードはまた、リードの長さに沿って配置された1つ以上の電極を含み得る。リードは、リードの長さに沿って配置された2つ以上の電極を含み得る。いくつかの実施形態では、電極は、リードの先端部にある先端電極であり得る。他の実施形態では、電極は、リードに沿って存在するが、リードの先端には存在しないリング電極であり得る。いくつかの実施形態では、電極はコイル電極であり得る。いくつかの実施形態では、リング又は先端電極は、腫瘍若しくは癌性組織内に又はこれに隣接して配置することができ、コイル電極は、発生する電界に空間的多様性を与えるのを補助するために、腫瘍又は癌性組織よりも遠くに配置され得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極は、約0.5、1、1.5、2、3、4、5、7.5、10、15、20、30、40、50、75、100mm又はそれ以上の、長手方向の軸線(例えば、基端側から先端側までの軸線)に沿った長さを有し得る。いくつかの実施形態では、電極の1つ以上は、ある範囲内の長さを有することができ、上限が下限よりも大きいことを前提として、前述の距離のいずれかが当該範囲の上限又は下限として機能し得る。
【0108】
リードは、単極、双極、又は多極とすることができる。いくつかの実施形態では、単極リードは、1つの電極と医療デバイスの筺体との間に電界を発生させるリードを含み得る。いくつかの実施形態では、双極リードは、リードに沿って配置された2つの電極間に、又は両電極と医療デバイスの筺体との間に及び電界を発生させることができるリードを含み得る。いくつかの実施形態では、多極リードは、リードに沿って配置された2つより多い電極間に、2つより多い電極と医療デバイスの筺体との間に、又は任意の数の組み合わせの電極の構成と医療デバイスの筺体との間に、電界を発生させることができるリードを含み得る。
【0109】
本明細書での使用に適した電極は、カーボン充填シリコーン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリティオフェン(polytiophene)、ポリフラン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリパラフェニレン等などの導電性ポリマーで作製され得る。他の実施形態では、電極は絶縁され得る。いくつかの実施形態では、及び電極を包囲する絶縁体は、細胞付着は防ぐものの電流が流れることはなお可能な微多孔質絶縁体を含み得る。微多孔質絶縁体は、ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエチレン-co-テトラフルオロエテン(ETFE)、ポリウレタン、シリコーン、パリレンポリマーなどのポリ(p-キシリレン)ポリマー、ペバックス(登録商標)などのポリエーテルブロックアミド、ナイロン、又はこれらの誘導体を含むがこれらに限定されない本明細書中に記載されるいくつかの絶縁材料で作製され得る。いくつかの実施形態では、電極は、ヒドロゲル、又は酸化イリジウム、酸化チタン、五酸化タンタル、他の金属酸化物などのフラクタルコーティング、パリレンなどのポリ(p-キシリレン)ポリマー等を含むがこれらに限定されない様々な材料でコーティングされ得る。
【0110】
本明細書の実施形態に従い、いくつかのリード固定法及び構成が使用され得る。リード固定法のいくつかの非限定的な例としては、生体適合性接着剤固定、爪固定、ヘリックスコイル固定、脈管系内におけるリードの受動調心、局所脈管系内における歯固定、局所脈管系内における螺旋バイアス固定、圧縮固定、縫合スリーブ固定等が挙げられ得る。いくつかの例では、本明細書で具現化されるリードは、癌性腫瘍の部位を取り囲む又はこれに隣接する脈管系内に配置され得る。他の実施形態では、本明細書で具現化されるリードは、癌性腫瘍の部位に又はその内部に又はその周囲に外科的に配置され得る。
【0111】
本明細書での使用に適したリードはまた、リードの長手方向の長さ全体又はリードの長手方向の長さの選択部分に延びる1つ以上の開口内腔を含み得る。いくつかの実施形態では、開口内腔は、疾患の進行及び/又は退行を監視するために癌性腫瘍部位から生検試料を定期的に得るのに適した内蔵生検装置を含み得る。開口内腔を有するリードはまた、ステロイド又は化学療法剤などの1つ以上の薬物を腫瘍の部位に定量ポンプにより1回のボーラスで又は定期的に送達することができる、内蔵された薬物送達内腔を含むように構成され得る。リードは、リードの長さに沿って配置された、癌性腫瘍の部位又はその近傍に薬物送達のための出口を提供するための1つ以上の門を含み得る。
【0112】
いくつかの実施形態では、リードの一部分又はリード全体は、薬物溶出コーティングを含み得る。いくつかの実施形態では、薬物溶出コーティングは、ステロイドなどの抗炎症薬を含み得る。いくつかの実施形態では、ステロイドはデキサメサゾンであり得る。他の実施形態では、薬物溶出コーティングは化学療法剤を含み得る。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、パクリタキセル、ドセタクセル等を含むがこれらに限定されないタキサン又はこの誘導体を含み得る。他の実施形態では、薬物溶出コーティングは、アルキル化薬、ビンカアルカロイドなどの植物アルカロイド、細胞毒性抗生物質、トポイソメラーゼ阻害薬等を含むがこれらに限定されない更なるクラスの化学療法剤を放出するように構成され得る。いくつかの実施形態では、薬物溶出コーティングは、コーティングから薬物を持続放出式で放出するように構成され得る。
【0113】
本明細書中のリードは、多くの形状又は構成をとることができる。いくつかの実施形態では、リードは線形とすることができ、他の実施形態では、リードは円形とすることができる。円形リードは完全に閉じたループであってもよい、又は半分閉じたループであってもよい。いくつかの実施形態では、リードは、U字形、S字形、螺旋形、半円形、楕円形等を含むがこれらに限定されない多くの構成にリードを成形することを可能にすることができる曲げられるコアを含み得る。
【0114】
更に他の例では、本明細書での使用に適したリードは、臨床医が癌性腫瘍の部位又はその近傍に精密配置するのを補助することができる蛍光定量マーカ又は磁気マーカを含み得る。リードはまた、癌性腫瘍又はその近傍のpHの変化を検知するための内蔵pHセンサ又は目的化学分析物の濃度の分析に適した他の化学センサを含み得る。
治療パラメータ
癌性腫瘍の成功的治療は、電界強度、周波数、細胞の不均一性、細胞の大きさ、癌細胞の種類、腫瘍の大きさ、及び体内の位置を含むいくつかの変数に依存し得る。本明細書中に記載される医療デバイスを使用し、様々な治療パラメータが実施され得る。1つ以上の治療的パラメータセットは医療デバイスのメモリにプログラムされ、図3に示される制御回路306によって実施され得る。例示的な治療的パラメータセットは、以下の概念を実施するものを含み得る:様々な周波数の掃引、1つ以上の周波数の同時スタッキング、1つ以上の周波数の逐次ステッピング、1つ以上の電界の空間的又は時間的送達、様々な電界強度の掃引、有効な回転電界の印加、電圧制御モード又は電流制御モードの調整、1つ以上のデューティサイクルの実施、パルス幅変調、波形形状及び/又はパルス系列の操作、並びに高周波又は高電界強度パルスの時折の使用。
【0115】
治療的パラメータセットは、自律的に動作するように医療デバイスにプログラムすることができる、又は患者若しくは臨床医が、プログラマ、自宅ユニット、及び/若しくはモバイルユニット(例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ等)などの外部計算デバイスを使用することにより照会及び操作され得る。他の実施形態では、治療的パラメータセットは、外部計算デバイスから医療デバイスに無線通信され得る。本明細書中の治療的パラメータセットのいずれかで使用するのに適した周波数及び/又は電界強度は、電界発生回路320に関して上で述べた。いくつかの実施形態では、1つ以上の治療的パラメータセットは同時に実施することができる。他の実施形態では、1つ以上の治療的パラメータセットは交互に実施することができる。
【0116】
ここで図16を参照すると、例示的なプロット1602は、癌性腫瘍の部位における様々な周波数の掃引の一例を示す。プロット1602は、治療が癌性腫瘍に適用されるにつれて周波数が経時的に増加する交流電界を示す。いくつかの実施形態では、周波数掃引は、約100kHz~300kHzの範囲を含む第1の周波数掃引と約200kHz~500kHzの範囲を含む第2の周波数との間の交番を含み得る。記載されるような第1及び第2の周波数範囲の掃引は、治療の過程全体を通して無期限に実施され得ることは理解されるであろう。
電界発生器
本明細書で具現化される医療デバイスは、癌性腫瘍の治療過程中に使用される治療法及び診断法に特に適した電界発生器を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書での使用に適した電界発生器は、癌性腫瘍の主要治療として指示されることの多い放射線治療の有害な作用にその構成要素が耐えるようにするために放射硬化で処理されたものを含み得る。電界発生器は、上記の図3及び図5を参照して説明したものなどの構成要素を含み得る。
【0117】
本明細書で具現化される電界発生器は、記載したような任意の数の治療的パラメータセットをプログラムすることができる。電界発生器は、植え込み前にプログラムすることができる、又は臨床医がプログラマ、自宅ユニット、及び/若しくはモバイルユニット(例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ等)などの外部計算デバイスを使用することによりプログラムすることができる。いくつかの実施形態では、治療パラメータは、遠隔測定回路を介して電界発生器に送られ得る。いくつかの実施形態では、電界発生器は、受信用コイルに通信的に接続された、医療デバイスの経皮的充電を容易にするための充電回路を含み得る。いくつかの実施形態では、電界発生器は、受信用コイルと外部充電デバイスとの間で無線通信することができる。
【0118】
本明細書及び付属の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容に別段の明確な指示のない限り、複数形の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「1つの化合物(a compound)」を含有する組成物に言及する場合、2つ以上の化合物の混合物を含む。用語「又は(or)」は、内容に別段の明確な指示のない限り、「及び/又は(and/or)」を含む意味で全般的に用いられることにも留意されたい。
【0119】
本明細書及び付属の特許請求の範囲で使用されるように、文言「構成される(configured)」は、特定のタスクを実施する又は特定の構成をとるように構築若しくは構成されたシステム、装置、又は他の構造を説明することにも留意されたい。文言「構成される(configured)」は、配置及び構成される(arranged and configured)、構築及び配置される(constructed and arranged)、構築される(constructed)、製造及び配置される(manufactured and arranged)等のような他の類似の文言と区別なく使用することができる。
【0120】
本明細書内の全ての刊行物及び特許出願は、本発明が関係する当業者の水準を示す。全ての刊行物及び特許出願は、それぞれ個々の刊行物又は特許出願が参照により具体的且つ個々に示されたかのような程度と同程度まで参照により本明細書中に組み込まれる。
【0121】
様々な特定の及び好ましい実施形態及び手法を参照して態様を記載してきた。しかしながら、本明細書の趣旨及び範囲内にありながらも多くの変更及び修正を施すことができることは理解すべきである。
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