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  • 特許-有機金属化合物およびこれを用いた薄膜 図1a
  • 特許-有機金属化合物およびこれを用いた薄膜 図1b
  • 特許-有機金属化合物およびこれを用いた薄膜 図2a
  • 特許-有機金属化合物およびこれを用いた薄膜 図2b
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-24
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】有機金属化合物およびこれを用いた薄膜
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/00 20060101AFI20220128BHJP
   C07F 9/6596 20060101ALI20220128BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20220128BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
C07F9/00 Z CSP
C07F9/00 A
C07F9/6596
H01L21/31 B
H01L21/316 X
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020542899
(86)(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-27
(86)【国際出願番号】 KR2019001062
(87)【国際公開番号】W WO2019156400
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2020-08-07
(31)【優先権主張番号】10-2018-0015715
(32)【優先日】2018-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518221346
【氏名又は名称】メカロ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MECARO CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】(Mogok-dong)103-14,Sandan-ro,Pyeongtaek-si,Gyeonggi-do,17745,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】スン・ウォン・ハ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・フン・ピョン
(72)【発明者】
【氏名】ジョム・ジョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ホ・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ハク・チョン
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-505177(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0049020(KR,A)
【文献】特表2014-510733(JP,A)
【文献】国際公開第2017/179857(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/048124(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/00
C07F 9/6596
H01L 21/31
H01L 21/316
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式3の構造を有する有機金属化合物;
【化1】
前記化学式3で、Mは、5族遷移金属の中から選ばれ;
aおよびXcは、それぞれ独立して、O、N、P、Asまたは-P=Oであり;
bは、N、P、Asまたは-P=Oであり;
1およびR3は、それぞれ独立して、水素またはC1-9のアルキル基またはヘテロアルキル基であり、前記R1およびR3は、XaおよびXcの原子価によって存在するかまたは存在せず;
AおよびBは、それぞれ独立して、C1-9のアルキレン基またはヘテロアルキレン基である。
【請求項2】
前記5族遷移金属は、V、NbまたはTaのうちいずれか一つであり、前記XaおよびXcは、それぞれ独立して、OまたはNであり、Xbは、Nであり、前記R1およびR3は、それぞれ独立して、水素またはC1-6のアルキル基であり、前記AおよびBは、それぞれ独立して、C1-3のアルキレン基またはヘテロアルキレン基であることを特徴とする請求項に記載の有機金属化合物。
【請求項3】
下記化学式4の構造を有する有機金属化合物;
【化2】
前記化学式4で、Mは、NbまたはTaである。
【請求項4】
請求項1~のいずれかに記載の有機金属化合物を前駆体として含んで製造された半導体用金属含有薄膜。
【請求項5】
請求項に記載の金属含有薄膜を含む半導体構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機金属化合物およびこれを用いた薄膜に関し、より詳細には、高い揮発性、優れた化学的・熱的安定性を満たすと同時に、薄膜蒸着速度が低い温度でも顕著に向上した有機金属化合物およびこれを用いた薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノスケール集積素子の製作のために、金属、半導体、酸化物など多様な薄膜の適用が研究されてきている。これらの多様な薄膜の形成工程において、継続される素子の極微細化とともに、新しい形態の素子が持続的に提案されるにつれて、ナノスケールで複雑な形態の構造に原子層の水準で厚さが調節される薄膜蒸着工程の必要性と正角性(conformality)の重要性が共に増加している。現在電子素子の核心であるMOSFET(metal-oxidesemiconductor field effect transistor)のゲート構造に使用されているゲート酸化物は、ケイ素酸化物(silicon oxide)に基盤を置いている。しかしながら、素子のサイズのナノ化によって漏洩電流の増加とゲート空乏層の形成のような問題点が発生しており、このような問題を解決するために、高誘電率を有する新しい酸化物を利用しようとする試みが多く行われている。多様な高誘電率酸化物のうち最も多く研究されている物質が、HfO2基盤の窒素がドーピングされたHfOxy、そしてシリケート(silicate)物質であるHfSixyなどであり、このような物質を適用して電荷移動度と信頼性を高めるのに良い成果を上げているが、まだ誘電率の増加や熱的安定性、界面特性などで問題点を示している。このような問題点の解決のために、原子層蒸着法を用いた高誘電率薄膜の蒸着工程とその特性および多様な高誘電率物質の蒸着工程の開発と新しい工程法の開発、そしてナノ素子への応用に研究が重視されている。
【0003】
有機金属化学蒸着法あるいは原子層蒸着法を使用して金属薄膜または金属酸化物や金属窒化物を蒸着させるための前駆体として最も代表的なものは、金属ハライド系の化合物である金属五塩化物(Metal pentachloride、MCl5(M=V、Nb、Ta))である。しかしながら、これらの金属五塩化物は、(1)室温で蒸気圧が低い固体状態の化合物であって、低い薄膜蒸着速度に起因して半導体量産工程に適用しにくいと共に、(2)クロリド汚染の問題があった。
【0004】
一方、金属酸化物を蒸着させるための代表的な前駆体化合物としては、金属アルコキシド系化合物がある。特にM2(OEt)10(M=Nb、Ta)の化学式で表わされる金属エトキシド前駆体化合物は、室温で揮発性が高い液体で存在して、MOCVDおよびALD工程を用いて金属酸化膜を蒸着するのに最も広く用いられてきた化合物である。しかしながら、これらの金属-アルコキシド化合物は、(1)低い熱的安定性に起因して蒸着時に基質温度が300℃以上では前駆体の分解によって段差被覆性が悪くなり、(2)カーボン汚染が増加する問題があった。
【0005】
また、金属-イミド/アミド系化合物は、(1)可能なALD工程温度が325℃未満に過ぎず、(2)薄膜の結晶性が低く、(3)蒸着された薄膜内のカーボンなどの汚染が高い問題があった。また、(4)特に50nm工程以下のDRAM工程だけでなく、フラッシュメモリ(Flash memory)分野のゲートおよびキャパシタ誘電物質として適用されるためには、漏洩電流が高い問題があった。
【0006】
また、最近、半導体集積回路の配線膜として、Cu配線膜の利用が広がっている。しかしながら、32nmノード以後の先端デバイスのCu配線膜の形成プロセスにおいては、現行メッキ法によるホール、トレンチへのCu埋込は難しい。これは、Cu配線膜の下地層として必要なバリアーメタル膜を現状況ではPVD法により形成しているので、その微細化が難しくて、満足できる下地層を得ることができないためである。そのため、バリアーメタル膜に対してアスペクト(aspect)比が大きいホール、トレンチなどに対する高被覆率と共に、膜が極薄であることや高バリアー性があることが要求されているのが現況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記の問題点を解決するために案出されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、高い揮発性、優れた化学的・熱的安定性を満たすと同時に、薄膜蒸着速度が低い温度でも顕著に向上した有機金属化合物およびこれを用いた薄膜を提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための本発明の有機金属化合物は、下記化学式1で表される構造を有することができる。
【0009】
【化1】
【0010】
前記化学式1で、Mは、5族遷移金属の中から選ばれ;Xa、XbおよびXcは、それぞれ独立して、O、N、P、Asまたは、-P=Oであり;R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素またはC1-9のアルキル基またはヘテロアルキル基であり、前記R1、R2、R3およびR4は、Xa、XbおよびXcの原子価によって存在するかまたは存在せず;AおよびBは、それぞれ独立して、C1-9アルキレン基またはヘテロアルキレン基であり、前記Bは、XbおよびXcの原子価によって存在するかまたは存在しない。
【0011】
本発明の好ましい一実施例において、前記化学式1の5族遷移金属は、V、NbまたはTaのうちいずれか一つを含むことができる。
【0012】
本発明の好ましい一実施例において、前記化学式1のXa、XbおよびXcは、それぞれ独立して、OまたはNであり、前記R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素またはC1-6のアルキル基でありうる。
【0013】
本発明の好ましい一実施例において、前記化学式1のAおよびBは、それぞれ独立して、C1-3アルキレン基またはヘテロアルキレン基である。
【0014】
また、前記課題を解決するための本発明の有機金属化合物は、下記化学式2の構造を有することができる。
【0015】
【化2】
【0016】
前記化学式2で、Mは、5族遷移金属の中から選ばれ;Xa、XbおよびXcは、それぞれ独立して、O、N、P、Asまたは-P=Oであり;R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素またはC1-9のアルキル基またはヘテロアルキル基であり、前記R1、R2、R3およびR4は、Xa、XbおよびXcの原子価によって存在するかまたは存在せず;Aは、C1-9アルキレン基またはヘテロアルキレン基である。
【0017】
本発明の好ましい一実施例において、前記化学式2の5族遷移金属は、V、NbまたはTaのうちいずれか一つであり、前記Xa、XbおよびXcは、それぞれ独立して、OまたはNであり、前記R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素またはC1-6のアルキル基であり、前記Aは、C1-3アルキレン基またはヘテロアルキレン基でありうる。
【0018】
また、前記課題を解決するための本発明の有機金属化合物は、下記化学式3の構造を有することもできる。
【0019】
【化3】
【0020】
前記化学式3で、Mは、5族遷移金属の中から選ばれ;XaおよびXcは、それぞれ独立して、O、N、P、Asまたは-P=Oであり;Xbは、N、P、Asまたは-P=Oであり;R1およびR3は、それぞれ独立して、水素またはC1-9のアルキル基またはヘテロアルキル基であり、前記R1およびR3は、XaおよびXcの原子価によって存在するかまたは存在せず;AおよびBは、それぞれ独立して、C1-9アルキレン基またはヘテロアルキレン基である。
【0021】
本発明の好ましい一実施例において、前記化学式3の5族遷移金属は、V、NbまたはTaのうちいずれか一つであり、前記XaおよびXcは、それぞれ独立して、OまたはNであり、Xbは、Nであり、前記R1およびR3は、それぞれ独立して、水素またはC1-6のアルキル基であり、前記AおよびBは、それぞれ独立して、C1-3アルキレン基またはヘテロアルキレン基である。
【0022】
また、前記課題を解決するための本発明の有機金属化合物は、下記化学式4の構造を有することもできる。
【0023】
【化4】
【0024】
前記化学式4で、Mは、NbまたはTaを含む。
【0025】
本発明の他の目的は、前記化学式1~化学式4の中から選ばれた1種以上を含む有機金属化合物を前駆体として含んで製造された半導体用金属含有薄膜を提供することにある。
【0026】
また、本発明の他の目的は、半導体用金属含有薄膜を含む半導体構造物を提供することにある。
【0027】
本明細書で使用された用語について簡略に説明する。
【0028】
用語「アルキル」は、脂肪族炭化水素グループを意味する。アルキル部位は、いかなるアルケンやアルキン部位を含んでいないことを意味する「飽和アルキル(saturated alkyl)」グループでありうる。アルキル部位は、少なくとも一つのアルケンまたはアルキン部位を含んでいることを意味する「不飽和アルキル(unsaturated alkyl)」部位であってもよい。「アルケン(alkene)」部位は、少なくとも二つの炭素原子が少なくとも一つの炭素-炭素二重結合からなるグループを意味し、「アルキン(alkyne)」部位は、少なくとも二つの炭素原子が少なくとも一つの炭素-炭素三重結合からなるグループを意味する。飽和や不飽和にかかわらず、アルキル部位は、分岐状、直鎖状または環状でありうる。また、アルキルは、「置換または非置換アルキル」を全部含む。
【0029】
用語「置換または非置換」は、別途説明されていなければ、置換体が置換された場合と置換されない場合を全部含むという意味であり、置換された場合には、置換体が、アルキル、アシル、シクロアルキル(ジシクロアルキルおよびトリシクロアルキルを含む)、パーハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリック、ヒドロキシ、アルコキシ、アジド、アミン、ケトン、エーテル、アミド、エステル、トリアゾール、イソシアネート、アリールアルキルオキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、S-スルホンアミド、N-スルホンアミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、イソシアネート、チオシアネイト、イソチオシアネート、ニトロ、シリル、トリハロメタンスルホニル、ピロリジノン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、アミン、アミノ、アミド、ニトロ、エーテル、エステル、ハロゲン、チオール、アルデヒド、カルボニル、リン、硫黄、ホスフェート、ホスファート、ホスフィト、サルフェート、ジスルフィド、オキシ、メルカプトおよびヒドロカルビルモノ-およびジ-置換アミノグループを含むアミノ、およびこれらの保護誘導体から個別的にそして独立して選ばれた一つまたはそれ以上のグループで置換された場合を含み、これらに限定されることなく、当分野において常用される多様な置換基により置換された場合を包括的に含む意味である。場合によって、これらもやはり、置換または非置換されることもできる。
【0030】
用語「ヘテロ原子」は、炭素および水素以外の原子を意味する。
【0031】
用語「ヘテロアルキル」は、アルキルグループの炭素原子のうち一つ以上が他のヘテロ原子で置換された形態を意味する。
【0032】
用語「原子価によって」は、原子価を充足することを意味し、「原子価を充足する」は、結合された原子が最も安定した状態で存在しうるように、その原子の最外殻に一定の数の電子が入るようにする状態を意味する。
【発明の効果】
【0033】
本発明の有機金属化合物およびこれを用いた薄膜は、高い揮発性、優れた化学的・熱的安定性を満たすと同時に、低い温度でも顕著に向上した薄膜蒸着速度を有する。また、副産物による特性低下が改善され、段差被覆性に優れ、高誘電率を有していて、電気的には等価酸化膜厚(EOT)を有しかつ物理的にはトンネリングが起こらない厚みの薄膜を具現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1a】実施例1で製造したMap-Nb01の1H-NMRおよび13C-NMR測定データである。
図1b】実施例1で製造したMap-Nb01の1H-NMRおよび13C-NMR測定データである。
図2a】実施例2で製造したMap-Ta01の1H-NMRおよび13C-NMR測定データである。
図2b】実施例2で製造したMap-Ta01の1H-NMRおよび13C-NMR測定データである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施例について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。ただし、実施例が本発明の範囲を制限するものではなく、これは、本発明の理解を助けるものと解すべきである。
【0036】
上述したように、従来の金属五塩化物、金属-アルコキシド化合物または金属-イミド/アミド系化合物は、室温で蒸気圧が低い固体状態の化合物であって、低い薄膜蒸着速度に起因して半導体量産工程に適用しにくいという問題があり、低い熱的安定性に起因して蒸着時に基質温度が高い温度では前駆体の分解に起因して段差被覆性が悪くなる問題があり、工程および蒸着された薄膜内の汚染が高くて、工程の信頼度および効率性が低い問題があった。
【0037】
これより、本発明は、下記化学式1の構造を有する有機金属化合物を提供して上述した問題点の解決を模索した。前記有機金属化合物は、高い揮発性、優れた化学的・熱的安定性を満たすと同時に、低い温度でも顕著に向上した薄膜蒸着速度を有する効果がある。また、副産物による特性低下が改善され、段差被覆性に優れ、高誘電率を有していて、電気的には等価酸化膜厚(EOT)を有しかつ物理的にはトンネリングが起こらない厚みの薄膜を具現することができる効果がある。
【0038】
下記化学式1の構造を有する有機金属化合物;
【0039】
【化5】
【0040】
前記化学式1で、Mは、5族遷移金属の中から選ばれ、Xa、XbおよびXcは、それぞれ独立して、O、N、P、Asまたは-P=Oであり、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素またはC1-9のアルキル基またはヘテロアルキル基であり、前記R1、R2、R3およびR4は、Xa、XbおよびXcの原子価によって存在するかまたは存在せず、AおよびBは、それぞれ独立して、C1-9アルキレン基またはヘテロアルキレン基であり、前記Bは、XbおよびXcの原子価によって存在するかまたは存在しない。
【0041】
前記Mは、5族遷移金属であり、これは、V、Nb、Taのうちいずれか一つを意味し、好ましくはV、NbおよびTaのうちいずれか一つであり得、より好ましくはNbまたはTaでありうる。
【0042】
前記R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素またはC1-9のアルキル基またはヘテロアルキル基であり、前記R1、R2、R3およびR4は、Xa、XbおよびXcの原子価によって存在するかまたは存在しない。R1、R2、R3およびR4が存在してもよく、存在しなくてもよく、存在する場合には、それぞれ独立して、水素またはC1-9のアルキル基またはヘテロアルキル基であることを意味する。
【0043】
前記Xa、XbおよびXcは、それぞれ独立して、O、N、P、Asまたは-P=Oという意味は、Xa、XbおよびXcがそれぞれO、N、P、Asおよび-P=Oのうちいずれか一つであって、互いに同一または異なるように選択され得ることを意味する。
【0044】
また、前記R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素またはC1-9のアルキル基またはヘテロアルキル基であり、前記R1、R2、R3およびR4は、Xa、XbおよびXcの原子価によって存在するかまたは存在しないという意味は、Xa、XbおよびXcの原子価を充足するように、前記R1、R2、R3およびR4が、それぞれ独立して、存在したり存在しなくてもよいことを意味する。また、互いに異なる置換基であるR1、R2、R3およびR4が全部存在してもよく、全部存在しなくてもよく、いずれか一つ以上は存在し、いずれか一つ以上は存在しなくてもよいことを意味する。具体的にR1、R2、R3およびR4が、それぞれ独立して存在する場合には、互いに同一または異なる置換基に選択され得ることを意味する。例えば、XaがNである場合には、R1が存在し、XaがOである場合には、R1が存在しない。
【0045】
また、前記R2、R3およびR4の存在の有無は、XbおよびXcの原子価によって決定されると共に、Bの存在の有無によって決定されることもできる。例えば、XbがN、XcがNであり、Bが存在する場合には、R2は存在せず、R3およびR4のうちいずれか一つは存在し、いずれか一つは存在しない。また、他の例としてXbがN、XcがOであり、Bが存在する場合には、R2、R3およびR4は、全部存在しない。
【0046】
また、前記AおよびBは、それぞれ独立して、C1-9アルキレン基またはヘテロアルキレン基であり、前記Bは、XbおよびXcの原子価によって存在するかまたは存在しないという意味は、AおよびBが互いに同一または異なる置換基に選択され得、Bは、XbおよびXcの原子価を充足するように存在してもよく、存在しなくてもよいことを意味する。例えば、XbがOである場合には、Bが存在しない。また、前記Bの存在の有無は、XbおよびXcの原子価だけでなく、R2、R3およびR4の存在の有無によって決定されることもできる。例えば、XbがN、XcがOであり、R2およびR3は存在し、R4は存在しない場合には、Bが存在しない。反面、XbがN、XcがOであり、R2、R3、R4が全部存在しない場合には、Bが存在する。
【0047】
上述したように、R1、R2、R3およびR4とXa、XbおよびXcとBの存在の有無は、各置換基の存在の有無および種類によって上述した範囲内で制限なしに決定され得る。一方、前記C1-9のヘテロアルキル基の意味は、炭素数が1~9個のヘテロアルキル基という意味でなく、炭素とヘテロ原子数が1~9個であることを意味する。すなわち、炭素およびヘテロ原子の総和が1~9であるヘテロアルキル基を意味するものである。
【0048】
また、前記ヘテロアルキル基のうちヘテロ原子は、通常、アルキル基中の炭素原子と結合して安定した置換基を構成できる原子であれば、幅広く選択され得るが、好ましくはN、OまたはSでありうる。また、前記ヘテロ原子の個数は、必ず1個以上の炭素を含み、かつ、安定した有機金属化合物を形成できる程度であれば、制限がないが、炭素数とヘテロ原子数の和が7~9個である場合、好ましくは1~8個であり得、より好ましくは1~4個でありうる。また、炭素数とヘテロ原子数の和が3~6である場合、好ましくは1~5個であり得、より好ましくは1~2個でありうる。
【0049】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記Xa、XbおよびXcは、それぞれ独立して、OまたはNであり、前記R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素またはC1-6のアルキル基でありうる。より好ましくは、前記Xa、XbおよびXcは、Nであり、前記R1、R2およびR4は、それぞれ独立して、水素またはC1-3のアルキル基であり得、R3は、C4-6のアルキル基でありうる。
【0050】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記AおよびBは、それぞれ独立して、C1-3アルキレン基またはヘテロアルキレン基でありうる。より好ましくは、前記AおよびBは、それぞれC1-3アルキレン基であり得、さらに好ましくは、前記AおよびBは、それぞれC1-2アルキレン基でありうる。
【0051】
以下に記述される本明細書の化学式2~5の各置換単位に関する説明は、上述した化学式1の同じ置換単位に関する説明と一致し、以下では、上述した内容と重複する内容を除いて説明する。
【0052】
また、本発明は、上述した問題点を解決するために、下記化学式2の構造を有する有機金属化合物を提供する。
【0053】
【化6】
【0054】
前記化学式2であり、Mは、5族遷移金属の中から選ばれ、Xa、XbおよびXcは、それぞれ独立して、O、N、P、Asまたは-P=Oであり、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素またはC1-9のアルキル基またはヘテロアルキル基であり、前記R1、R2、R3およびR4は、Xa、XbおよびXcの原子価によって存在するかまたは存在せず、Aは、C1-9アルキレン基またはヘテロアルキレン基である。
【0055】
そして、前記5族遷移金属は、V、NbまたはTaのうちいずれか一つであり得、前記Xa、XbおよびXcは、それぞれ独立して、OまたはNであり得、前記R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素またはC1-6のアルキル基であり得、前記Aは、C1-3アルキレン基またはヘテロアルキレン基でありうる。より好ましくは、前記5族遷移金属は、NbまたはTaであり得、前記Xa、XbおよびXcは、それぞれ独立して、Nであり得、前記R1、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素またはC1-3のアルキル基であり得、前記R2は、C3-6のアルキル基でありうる。さらに好ましくは、前記R1、R3およびR4は、それぞれ独立して、C1-2のアルキル基であり得、前記R2は、C4-5のアルキル基でありうる。
【0056】
前記R1、R2、R3およびR4は、Xa、XbおよびXcの原子価によって存在するかまたは存在しないという意味は、Xa、XbおよびXcの原子価を充足するように、前記R1、R2、R3およびR4がそれぞれ独立して、存在したり存在しなくてもよいことを意味する。また、互いに異なる置換基であるR1、R2、R3およびR4が全部存在することもでき、全部存在しなくてもよく、いずれか一つ以上は存在し、いずれか一つ以上は存在しなくてもよいことを意味する。具体的にR1、R2、R3およびR4がそれぞれ独立して存在する場合には、互いに同一または異なる置換基に選択され得ることを意味する。例えば、XaがNである場合には、R1が存在し、XaがOである場合には、R1が存在しない。
【0057】
また、本発明は、上述した問題点を解決するために、下記化学式3の構造を有する有機金属化合物を提供する。
【0058】
【化7】
【0059】
前記化学式3で、Mは、5族遷移金属の中から選ばれ、XaおよびXcは、それぞれ独立して、O、N、P、Asまたは-P=Oであり、Xbは、N、P、Asまたは-P=Oであり、R1およびR3は、それぞれ独立して、水素またはC1-9のアルキル基またはヘテロアルキル基であり、前記R1およびR3は、XaおよびXcの原子価によって存在するかまたは存在せず、AおよびBは、それぞれ独立して、C1-9アルキレン基またはヘテロアルキレン基である。
【0060】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記5族遷移金属は、V、NbまたはTaのうちいずれか一つであり得、前記XaおよびXcは、それぞれ独立して、OまたはNであり得、Xbは、Nであり得、前記R1およびR3は、それぞれ独立して、水素またはC1-6のアルキル基であり得、前記AおよびBは、それぞれ独立して、C1-3アルキレン基またはヘテロアルキレン基でありうる。より好ましくは、前記5族遷移金属は、NbまたはTaであり得、前記Xa、XbおよびXcは、全部Nであり得、前記R1およびR3は、それぞれ独立して、水素またはC1-3のアルキル基であり得、前記AおよびBは、それぞれ独立して、C1-3アルキレン基でありうる。さらに好ましくは、前記R1およびR3は、それぞれ独立して、C1-2のアルキル基であり得、前記AおよびBは、それぞれ独立して、C1-2アルキレン基でありうる。
【0061】
また、本発明は、下記化学式4の構造を有する有機金属化合物を提供することができる。
【0062】
【化8】
【0063】
前記化学式4で、Mは、NbまたはTaである。
【0064】
ひいては、前記有機金属化合物は、通常、これを使用できる分野であれば、広範囲に使用され得るが、好ましくは半導体分野において半導体物質を製造する過程に含まれたり使用され得る。また、より好ましくは、半導体金属含有薄膜の製造用に使用され得る。
【0065】
具体的に、前記有機金属化合物は、半導体に含まれる薄膜を形成する前駆体として用いられる。前駆体とは、物質代謝や反応で特定物質になる前段階の物質を意味し、前記有機金属化合物の前駆体を基板上に物理/化学吸着する方式で半導体に用いられる薄膜を形成することができる。
【0066】
また、前駆体として用いられる場合、本発明の有機金属化合物は、金属含有薄膜の中にそのまま含まれることもでき、工程実行中に最終形態が変形されることもできる。すなわち、本発明の有機金属化合物を前駆体として使用して半導体に含まれる薄膜の製造時に使用する場合、その最終形態は、多様に存在しうる。
【0067】
すなわち、本発明は、実施例に記載された化合物を含む金属含有薄膜を提供し、前記有機金属化合物のうちいずれか一つ以上を前駆体として含んで製造された金属含有薄膜を提供する。このような薄膜は、均一性に優れ、段差被膜特性が改善されていて、効率が顕著に優れているという長所がある。
【0068】
また、本発明は、前記の金属含有薄膜を含む半導体構造物を提供する。このような半導体構造物は、物性に優れ、高効率の薄膜を用いて製造されるので、より安定的でありかつ効率が向上する長所がある。
【0069】
一方、これと関連して本発明は、a)先立って説明した多様な形態の有機金属化合物を含む蒸気を提供する段階と、b)前記の蒸気を沈着方法によって基材と反応させて、前記基材の少なくとも一つの表面上に金属-含有錯物の層を形成する段階とを含む金属含有薄膜の製造方法を提供する。
【0070】
前記の製造方法を用いる場合、基板の形成時に基板吸着効率が向上すると同時に、安全性が増加し得、薄膜蒸着速度を増加させて工程速度を短縮させることができる。また、工程上の汚染を低下させると同時に、広い温度範囲で使用され得、製造工程の信頼度および効率性を顕著に向上させることができる。ひいては、前記の製造方法を通じて均一性に優れ、段差被膜特性が改善された薄膜を得ることができる。
【0071】
以下では、上述した内容と重複する内容を除いて詳細に説明する。
【0072】
まず、(a)前記有機金属化合物のうちいずれか一つ以上を含む蒸気を提供する段階を説明する。
【0073】
キャリア気体を本発明の有機金属化合物を金属供給源として含有する加熱した容器に導入することによって、前記金属供給源の蒸発を具現する。容器は、好ましくは前記金属供給源を十分な蒸気圧で獲得できる温度に加熱する。キャリア気体は、Ar、He、H2、N2またはこれらの混合物から選択され得る。容器で前記金属供給源を溶媒またはさらに他の金属供給源またはこれらの混合物と混合することができる。容器は、好ましくは25℃~200℃の範囲の温度で加熱され得、前記容器の温度を調整して蒸発される前駆体の量を調節することができる。容器中で蒸発水準の制御のために容器中の圧力を変更させることができる。容器中の圧力を減少させて、金属供給源の蒸発水準を増加させることができる。好ましくは、前記容器中の圧力は、1Torrから800Torrまでの範囲で変わり得る。
【0074】
また、前記金属供給源を液体状態で蒸発が起こる蒸発器に供給することができる。前記金属供給源を溶媒と混合しなくてもよく、混合してもよい。また、前記金属供給源をさらに他の金属供給源と混合することができる。前記金属供給源の混合物を溶媒または溶媒混合物と混合することができる。前記金属供給源を安定化剤と混合することができる。前記溶媒は、アルカン、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、芳香族溶媒、例えばベンゼン、トルエン、メシチレン、キシレン、ケイ素含有溶媒、例えばヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルシラン、硫黄含有溶媒、例えばジメチルスルホキシド、酸素含有溶媒、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサンよりなる群から選ばれる。一方、前記溶媒を含む混合溶液の濃度は、好ましくは前記金属供給源を50~99.9重量%含むことができる。
【0075】
次に、(b)前記の蒸気を沈着方法によって基材と反応させて、前記基材の少なくとも一つの表面上に金属-含有錯物の層を形成する段階を説明する。
【0076】
前記気化した金属供給源を反応チャンバーに導入し、ここで、それを基材の表面と接触させる。基材は、十分な成長速度で目的とする物理的状態および組成を有する目的とする薄膜を得るのに十分な温度で加熱させることができる。前記加熱温度は、通常、目的とする薄膜を得るための温度に加熱することができるが、好ましくは100℃~700℃の範囲であり得、より好ましくは450℃以下でありうる。一方、前記工程は、前記気化した金属供給源の反応性および/または工程に使用された他の気体種の反応性を改善させるために、非制限的に選択されたプラズマ技術により補助され得る。
【0077】
一方、前記段階(b)で沈着方法は、基材の表面上に金属-含有錯物層を形成できる方法であれば、制限ないが、好ましくは化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition、CVD)または原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)を使用することができる。
【0078】
まず、原子層蒸着法(ALD)は、金属が含まれた原料と反応ガスを交差して注入することによって薄膜を成長させる方法であって、原料とガスを反応させて、原子単位薄膜を成長させ、これを繰り返して薄膜の厚みを調節する方法である。具体的に、本発明による有機金属化合物の前駆体を気化器内に注入した後、蒸気相(vapour phase)でチャンバーに伝達させることができる。気化した膜形成組成物をチャンバーに移送させることができる。この場合、前駆体物質の伝達方式は、蒸気圧を用いて揮発された気体を移送させる方式、直接液体注入(Direct Liquid Injection)方式または前駆体物質を有機溶媒に溶かして移送する液体移送方式(Liquid Delivery System;LDS)を使用することができる。この場合、前駆体物質を基板上に移動させるための運送ガスまたは希釈ガスは、好ましくはAr、N2、HeまたはH2の中から選ばれた一つ以上の不活性気体を使用することができ、より好ましくはArまたはN2から選ばれる。一方、N2キャニスタ流量は、好ましくは30sccm~5000sccmの範囲であり得、より好ましくは50sccm~300sccmでありうる。
【0079】
次に、移送された前駆体物質を基板上に吸着させ、未吸着された前駆体物質をパージ(purge)させることができる。パージガスとしては、不活性ガスが使用され得る。次に、反応物質を供給することができる。反応物質は、H2O、H22、O2、O3、N2Oなどの酸化剤を含むことができる。反応物質と吸着した前駆体物質が反応して金属含有薄膜が形成され得、前記薄膜は、ジルコニウム、チタニウムまたはハフニウムなどを含むことができる。次に、未反応物質をパージさせる。これによって、過量の反応物質および生成された副産物を除去することができる。
【0080】
一方、前記の吸着段階、パージ、反応物質供給段階およびパージを単位サイクルとする。所望の厚みの薄膜を形成するために、単位サイクルを繰り返すことができる。好ましくは、10~10000回繰り返して実施することができる。
【0081】
また、前記原子層蒸着法を用いる場合、温度は、好ましくは100℃~450℃であり得、より好ましくは150℃~350℃の範囲でありうる。ALDでパルス期間は、好ましくは1~10秒であり、圧力は、好ましくは0.01Torr~800Torrでありうる。
【0082】
次に、化学気相蒸着法(CVD)は、形成しようとする薄膜材料を構成する元素を含むガスを基材の上に供給して、気相または基材の表面での熱分解、光分解、酸化還元反応、置換などの化学的反応を通じて基材の表面で薄膜を形成する方法である。前記化学気相蒸着法を用いる場合、温度は、好ましくは100℃~700℃であり得、より好ましくは200℃~500℃の範囲でありうる。また、圧力は、好ましくは0.01Torr~800Torrであり得、より好ましくは1Torr~200Torrの範囲でありうる。また、キャリア気体は、好ましくはN2、He、Ar、H2であり得、より好ましくはArまたはN2から選ばれる。好ましいN2キャニスタ流量は、30~300sccmの範囲であり得、さらに好ましくは、50sccm~100sccmでありうる。
【0083】
ひいては、本発明は、前記有機金属化合物のうちいずれか一つ以上を0.1%~99.9%含んでおり、飽和または不飽和炭化水素類、環式エーテル類、非環式エーテル類、エステル類、アルコール類、環式アミン類、非環式アミン類、環式スルフィド類、非環式スルフィド類、ホスフィン類、ベータ-ジキトン類、ベータ-キトエステル類から選ばれた一つまたはそれ以上の有機化合物残余量を含む組成物およびこれを用いて金属含有薄膜を製造する方法を提供する。
【0084】
前記有機金属化合物を含む組成物を用いて金属含有薄膜を製造する場合、化合物の基板吸着効率および安全性を増加させ、工程時間を短縮させる効果がある。また、前記組成物の含有量を調節して製造される薄膜の物性的特性および組成を調節することができるので、目的と手段に適した薄膜を容易に製造することができる。
【0085】
また、前記有機金属化合物を含む組成物を用いて高被覆率、極薄性および高バリアー性を有するバリアーメタル(barrier metal)膜を製造することもできる。
【0086】
結局、本発明は、新規の有機金属化合物を提供して、(1)製造工程の信頼度および効率性を高めることができることはもちろん、(2)より向上した化学的・熱的安定性を満たし、(3)これと同時に低い温度でも顕著に向上した薄膜蒸着速度を達成することができる。また、上記のように優れた有機金属化合物を半導体金属含有薄膜の製造用に使用することができるので、これを通じて、本発明は、副産物による特性低下が改善され、段差被覆性に優れ、高誘電率を有していて、電気的には等価酸化膜厚(EOT)を有しかつ物理的にはトンネリングが起こらない厚みの半導体用金属含有薄膜およびこれを含む半導体構造物を提供することができる。
【0087】
以下では、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明をする。しかしながら、下記実施例は、本発明の理解を助けるためのものであり、下記実施例により本発明の権利範囲を限定して解してはならない。
【0088】
[実施例]
実施例1(Nb)
(1)合成した新規化合物の製造
【0089】
【化9】
【0090】
ジメチルアミン17gをトルエンに溶かした後に、-20℃で2.5Mブチルリチウム溶液141mlに滴加した後、常温で2時間の間撹拌して、ジメチルアミンリチウム塩を収得した(収率90%)。tert-アミルアミン32.7gをトルエンに溶かした後、クロロトリメチルシラン22.5mLを滴加し、15分間撹拌した。反応物をセライトに通過した後に、ニオビウムクロリド21.8gをトルエンに溶かした反応容器に滴加し、1時間の間撹拌した。ピリジン25mLを滴加した後、12時間の間撹拌した。反応物をセライトに通過した後に減圧して溶媒を除去して、TANbCl(tert-アミルアミンニオビウムクロリド)を得た。TANbClをトルエンに溶かした後、-20℃でジメチルアミンを滴加し、4時間の間還流した。反応物をセライトに通過した後に減圧して、溶媒を除去した。反応物を0.1torr、100℃で減圧精製を行って、Nb-DMA(ニオビウムジメチルアミン)を収得した(収率57.9%)。Nb-DMA(ニオビウム-ジメチルアミン)14.5gをトルエンに溶かした後、-20℃でシクロペンタジエニルエチルメチルアミン5.76gを滴加し、1時間の間撹拌した後、減圧蒸留して溶媒を除去し、Map-Nb01[シクロペンタジエンエチルメチルアミドニオビウム(V)メチルアミドtert-アミルアミン]を収得した(収率44%)。
【0091】
そして、製造したMap-Nb01の1H-NMRおよび13C NMR測定データを図1aおよび図1bに示した。
【0092】
(2-1)前記Map-Nb01を前駆体として用いた金属含有薄膜の製造(実施例1-1)
前駆体として前記Map-Nb01をまず、硫酸(H2SO4)と過酸化水素水(H23)を4:1の体積比で混合したピラニア(piranha)溶液にシリコンウェハーを10分間漬けて取り出した後、薄いHF水溶液に2分間漬けて純粋なシリコン表面を形成した後に、プラズマ原子層蒸着(PEALD)方法によるNbN膜を蒸着させた。この際、基質の温度は、300~450℃に加熱し、前駆体は、ステンレス容器にオクタン(octane)で希釈して、粘度4~10cpsに合わせ、気化器を通じて気化させた。この際、反応器内への前駆体の供給時間は、5~20秒、還元剤であるアンモニアガスの流量は、100sccm、供給時間は、5~20秒に調節した。
【0093】
浄化気体であるアルゴンは、前駆体とアンモニアガスを供給した後に、それぞれ30秒間流した。本発明のMAP-Nb01を前駆体として使用し、還元剤としてアンモニアを使用する薄膜製造工程がALD特性を示すことが分かる。そして、蒸着速度は、約0.43Å/cycleであり、フィルムの密度は、3.6g/cm3であった。Nb:N at%比(atomic percentage)は、1:1に近く、炭素は、1.0%以内であるフィルムを得た。低い速度は、パージ時間が長くなったためである。
【0094】
炭素含量と抵抗性は、全部アンモニアの添加に依存した。アンモニアの流速が25sccmであるとき、フィルムは、ほとんど炭素がないが、アンモニアがない場合の炭素含量は、30at%(atomic concentration percentage)以上であった。
【0095】
(2-2)前記Map-Nb01を前駆体として用いた金属含有薄膜の製造(実施例1-2)
前駆体として前記Map-Nb01をまず、硫酸(H2SO4)と過酸化水素水(H23)を4:1の体積比で混合したピラニア(piranha)溶液にシリコンウェハーを10分間漬けて取り出した後、薄いHF水溶液に2分間漬けて純粋なシリコン表面を形成した後に、原子層蒸着(ALD)方法によるNb25膜を蒸着させた。この際、基板(substrate)の温度は、150~400℃に加熱し、前駆体は、ステンレス容器にオクタン(octane)で希釈して、粘度4~10cpsに合わせ、気化器を通じて気化させた。この際、反応器内への前駆体の供給時間は、3~7秒、酸化剤であるオゾンガスの流量は、500sccm、供給時間は、3~7秒に調節した。
【0096】
浄化気体であるアルゴンは、前駆体とオゾンガスを供給した後にそれぞれ5~7秒間流した。本発明のMAP-Nb01を前駆体として使用し、酸化剤としてオゾンを使用する薄膜製造工程がALD特性を示すことが分かる。そして、蒸着速度は、約0.66Å/cycleであり、フィルムの密度は、4.4g/cm3であった。Nb:Oat%比は、2:5に近く、炭素は、1.0%以内であるフィルムを得た。
【0097】
実施例2(Ta)
(1)合成した新規化合物の製造
【0098】
【化10】
【0099】
ジメチルアミン17gをトルエンに溶かした後に、-20℃で2.5Mブチルリチウム溶液141mLに滴加した後に、常温で2時間の間撹拌して、ジメチルアミンリチウム塩を収得した(収率90%)。tert-アミルアミン32.7gをトルエンに溶かした後にクロロトリメチルシラン22.5mLを滴加し、15分間撹拌した。次に、反応物をセライトに通過した後に、タンタルクロリド28.66gをトルエンに溶かした反応容器に滴加し、1時間の間撹拌した。次に、ピリジン20mLを滴加後、12時間撹拌した。次に、反応物をセライトに通過した後に、減圧して溶媒を除去して、TATaCl(tert-アミルアミンタンタル(V)クロリド)を収得した。次に、TATaClをトルエンに溶かした後に、-20℃でジメチルアミン13.5gを滴加し、4時間の間還流した。次に、反応物をセライトに通過した後に、減圧して溶媒を除去した。次に、反応物を0.1torr、100℃で減圧精製を行って、Ta-DMA(タンタルジメチルアミン)を収得した(収率:30%)。次に、Ta-DMA(タンタル-ジメチルアミン)9.48gをトルエンに溶かした後に、-20℃でシクロペンタジエニルエチルメチルアミン2.93gを滴加し、1時間の間撹拌した後に、減圧蒸留して溶媒を除去し、Map-Ta01[シクロペンタジエンエチルメチルアミドタンタル(V)メチルアミドtert-アミルアミン]を収得した(収率20%)。
【0100】
そして、製造したMap-Ta01の1H-NMRおよび13C NMR測定データを図2aおよび図2bに示した。
【0101】
(2)前記Map-Ta01を前駆体として用いた金属含有薄膜の製造
前駆体として前記Map-Ta01をまず、硫酸(H2SO4)と過酸化水素水(H23)を4:1の体積比で混合したピラニア(piranha)溶液にシリコンウェハーを10分間漬けて取り出した後、薄いHF水溶液に2分間漬けて純粋なシリコン表面を形成した後に、プラズマ原子層蒸着(PEALD)方法によるTaN膜を蒸着させた。この際、基質の温度は、300~450℃に加熱し、前駆体は、オクタン(octane)で希釈して、粘度4~10cpsに合わせて、ステンレススチール材質の容器に入れて気化器に伝達して気化させた。この際、反応器内への前駆体の供給時間は、5~20秒であり、還元剤アンモニアガスの流量は、25~100sccmであり、供給時間は、5~20秒に調節した。浄化気体であるアルゴンは、前駆体とアンモニアガスを供給した後に、それぞれ30秒間流した。本発明のMAP-Ta01を前駆体として使用し、還元剤としてアンモニアを使用する薄膜製造工程がALD特性を示すことが分かる。蒸着速度は、約0.46Å/cycleであり、フィルムの密度は、6.45g/cm3であった。
【0102】
Ta:N at%比は、1:1に近く、炭素は、1.0%以内であるフィルムを得た。低い速度は、パージ時間が長くなったためである。タンタル窒化物膜を蒸着するのに300~375℃で薄膜は非常に窒素が多かったが、抵抗率が非常に低く(NH3流量が25sccmである12000μΩ・cm)、TaNの存在を明確に示したので、Ta35よりは、TaN相であると考えられる。炭素含量と抵抗性は、全部アンモニアの添加に依存した。アンモニアの流速が25sccmであるとき、フィルムは、ほとんど炭素がないが、アンモニアがない場合の炭素含量は、30at%以上であった。
【0103】
実施例3~実施例15
下記化学式5の構造を有し、表1~表3によって置換基が決定される有機金属化合物を合成して前駆体として用いたことを除いては、実施例1と同一に行った。
【0104】
【化11】
【0105】
また、前記実施例1~実施例15を通じて合成して前駆体として使用された化合物は、下記の通りである。この際、下記化学式において1は、実施例1の化合物を意味し、このように各化合物と各実施例は、順次に対応する。
【0106】
【化12】
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【0110】
実験例1-薄膜の蒸着率の測定
前記実施例1~15によって製造された薄膜に対してALDの1周期当たり薄膜の蒸着率を測定した。その結果を下記表4に示した。
【0111】
実験例2-段差被覆特性改善効果の評価
前記実施例1~15によって製造された薄膜に対して段差被覆特性の改善効果を評価した。その結果を下記表4に示した。
【0112】
実験例3-蒸着された薄膜内純度改善効果の評価
前記実施例1~15によって製造された薄膜に対してオージェ電子分光分析機(Auger Electron Spectroscopy、AES)を用いて成分分析を実施して、膜内汚染源である炭素と窒素の含量を測定した。その結果を下記表4に示した。
【0113】
【表4】
【0114】
前記表4を通じて本発明の有機金属化合物を前駆体として使用して製造された薄膜の薄膜蒸着率は、いずれも、0.35(Å/cycle)を超過して顕著に向上した値を有することが分かる。実施例10~13のように、ヘテロアルキル基やメチルのような鎖の長さが多少短いアルキル基が置換されている場合にも、薄膜蒸着率が0.40(Å/cycle)以上と優れていることが分かる。
【0115】
また、薄膜段差被覆率も、いずれも、92%を超過して顕著に向上した値を有することが分かる。実施例4~9のように、Xa、XbおよびXcが窒素以外のO、P、Asまたは-P=Oである場合にも、薄膜段差被覆率が94.6%以上と優れていることが分かる。
【0116】
ひいては、薄膜純度の場合にも、汚染源である炭素が、いずれも、1.3at%以下であり、これを通じて、本発明は、残存する不純物の量が顕著に低くて、純度が改善された薄膜を提供することができることが分かる。
図1a
図1b
図2a
図2b