(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】蓋、調理器具セット、及びつまみ
(51)【国際特許分類】
A47J 36/06 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
A47J36/06 A
(21)【出願番号】P 2019109066
(22)【出願日】2019-05-27
【審査請求日】2021-04-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516020282
【氏名又は名称】スマートライフサプライ合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】506280096
【氏名又は名称】佐藤 徹弥
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 徹弥
【審査官】石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第201595694(CN,U)
【文献】特開2012-254155(JP,A)
【文献】登録実用新案第3186791(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0039330(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0086101(KR,A)
【文献】特開2019-041964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 36/00-36/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器具の開口部を閉塞するプレートと、
前記調理器具の使用者が前記プレートを保持するためのつまみと、
を備えた蓋であって、
前記つまみは、
前記プレートの平面視の略中心に接続される接続部と、
載置面に接触することで前記蓋を自立させるスタンド部と、
手で持つための柄部と、
を有し、
前記柄部は前記スタンド部の一部でもある、前記柄部が前記スタンド部を兼ねた構造であり、
前記接続部と前記スタンド部は、前記柄部によって接続され、かつ前記接続部と前記スタンド部は、それぞれ両端に配置され、
前記つまみは、前記プレートの平面視において全体が前記プレートの範囲内に含まれ、
前記スタンド部は、前記プレートを前記載置面に対して傾斜させ、かつ前記載置面に非接触の状態で支持し、
前記スタンド部に支持された前記プレートの傾斜方向を前記載置面に投影した方向を第1方向とすると、前記スタンド部と前記載置面との接触位置の第1方向の幅は50mm以内である蓋。
【請求項6】
前記調理器具と、
請求項1から5のいずれか1項に記載の蓋と、
を備える調理器具セット。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の蓋に使用されるつまみ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓋、調理器具セット、及びつまみに関する。
【背景技術】
【0002】
鍋等の調理器具を使用して調理する際には、調理器具の開口部に蓋を取り付けて開口部を閉塞することが行われる。そして、完成した料理の配膳等をするには、この蓋を取り外し、取り外した蓋をキッチンのワークトップやカウンタ等の載置面に載置する必要がある。このとき、蓋の裏面を下向きにして載置面に載置すると、蓋の裏面の水滴で載置面に汚れが発生する。また、蓋の熱によって載置面に悪影響を及ぼす可能性もある。したがって、蓋を載置面に載置する場合は、蓋を反転させて裏面を上向きにし、つまみを載置面に接触させることが通常である。
【0003】
しかしながら、このように蓋を載置するには、載置面に蓋の面積に相当する場所が必要となる。日本の住宅事情では、包丁やまな板、食材等が置かれた調理中のキッチンにおいて蓋を載置する場所を確保することは難しい。
【0004】
また、反転した状態の蓋を再度調理器具に取り付けるためには、調理者がつまみを把持することが必要になるが、つまみを把持する前に蓋が手や腕と接触する可能性がある。したがって、蓋の熱が冷めていない状態では、手や腕に火傷を負う場合があった。
【0005】
このような課題に対し、特許文献1には、取っ手の先端部と鍋蓋本体の外周縁とを接地させて鍋蓋本体を自立させる鍋蓋が記載されている。特許文献1に記載の鍋蓋によれば、蓋を反転させる場合よりも蓋を載置する際の省スペース化を図ることができ、かつ鍋蓋本体に触れることなく取っ手を掴むことができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の鍋蓋は、鍋蓋本体の外周縁を載置面に接触させるために、鍋蓋本体の裏面から載置面に垂れた水滴を介して鍋蓋本体と載置面とが接触する。したがって、同じ位置に複数回自立させると、前回の水滴が鍋蓋本体に再付着し、不衛生であるという問題があった。
【0007】
これに対し、特許文献2には、自立鍋蓋用受け皿が記載されている。特許文献2に記載の受け皿によれば、自立させた状態から鍋蓋を使用するために取り去ると、自立させた鍋蓋の裏面から流れた水滴が下に流れ落ちるために、再び鍋蓋を受け皿に置く際にはほとんど濡れていない状態で使用することができる。
【0008】
また、特許文献3には、鍋本体と鍋本体に設けたツマミとを有し、ツマミに蓋自立用支持部を設けた蓋が記載されている。特許文献3に記載の蓋によれば、蓋本体の縁部を載置面に接触させることなく、蓋を自立させることができる。したがって、受け皿のような他の部材を用いることなく、蓋に水滴が再付着することを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2007-267872号公報
【文献】実登第3195213号公報
【文献】実開昭61-130121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の鍋蓋は、取っ手の先端部と鍋蓋本体の外周縁との2ヶ所を載置面に接触させるため、さらなる省スペース化の余地がある。特許文献2に記載の受け皿は、事前に載置面に受け皿を載置しておく必要があり、受け皿が邪魔になる場合があった。
【0011】
また、鍋等を収納する際には、蓋の上下の向きを逆にして被せた方が、つまみを鍋等の内側に収納できるため、全体の体積を減らすことができる。しかしながら、特許文献3に記載の蓋は、ツマミが蓋の外径の外側まで達しているため、蓋の上下の向きを逆にすると蓋が鍋の開口部にはまらず、収まりよく収納することができないという欠点があった。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、衛生的で載置時及び収納時に省スペース化が可能な蓋、調理器具セット、及びつまみを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための蓋の一の態様は、調理器具の開口部を閉塞するプレートと、調理器具の使用者がプレートを保持するためのつまみと、を備えた蓋であって、つまみは、プレートの平面視の略中心に接続される接続部と、載置面に接触することで蓋を自立させるスタンド部と、を有し、つまみは、プレートの平面視において全体がプレートの範囲内に含まれ、スタンド部は、プレートを載置面に対して傾斜させ、かつ載置面に非接触の状態で支持し、スタンド部に支持されたプレートの傾斜方向を載置面に投影した方向を第1方向とすると、スタンド部と載置面との接触位置の第1方向の幅は50mm以内である蓋である。
【0014】
上記目的を達成するための調理器具セットの一の態様は、調理器具と、上記の蓋と、を備える調理器具セットである。
【0015】
上記目的を達成するためのつまみの一の態様は、上記の蓋に使用されるつまみである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、衛生的で載置時及び収納時に省スペース化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】
図4は、蓋100を自立させた様子を示す側面図である。
【
図5】
図5は、蓋100を自立させた様子を示す正面図である。
【
図6】
図6は、蓋100を鍋10に収納した様子を示す図である。
【
図7】
図7は、3つの脚部126A、126B、及び126Cが設けられたスタンド部126を示す図である。
【
図10】
図10は、蓋200を自立させた様子を示す側面図である。
【
図11】
図11は、蓋200を自立させた様子を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。
【0019】
〔第1の実施形態〕
図1は、本実施形態に係る調理器具セットの一例である鍋セット1の斜視図である。
図1に示すように、鍋セット1は、鍋10と、蓋100と、から構成される。
【0020】
鍋10は、鍋本体12と、取っ手20と、から構成される。鍋本体12は、底面14と、壁面16と、から構成される。底面14は円形状であり、鍋本体12は、底面と対向する位置に円形の開口部18を有する。即ち、鍋本体12は、内部が中空に構成された有底状の円筒形状を有する。
【0021】
壁面16の外側には、取っ手20が取り付けられている。取っ手20には、断熱性の素材が用いられる。鍋セット1の使用者は、取っ手20を把持することで、鍋10を持つことができる。
【0022】
図2及び
図3は、それぞれ蓋100の上面図及び側面図である。
図2及び
図3に示すように、蓋100は、プレート110と、つまみ120と、から構成される。プレート110は、鍋10の開口部18に対応した形状を有し、開口部18を閉塞する。本実施形態では、プレート110は、平面視において円形状を有している。
【0023】
つまみ120は、鍋10の使用者が蓋100を保持するための保持部材である。つまみ120は、プレート110の平面視においてつまみ120の全体がプレート110の範囲内に含まれる。つまみ120は、接続部122と、柄部124と、スタンド部126と、から構成される。
【0024】
接続部122は、プレート110の平面視の略中心部に接続されることで、プレート110につまみ120を固定する。例えば、つまみ120は、プレート110の略中心部に設けられたねじ穴に対して、接続部122に設けられたねじ穴を介して不図示のねじを螺合させることで、プレート110に取り付けられる。
【0025】
柄部124は、つまみ120の本体に相当し、接続部122から延伸する。柄部124の接続部122とは反対側の端部には、スタンド部126が設けられる。スタンド部126は、平面で構成される。スタンド部126は、平面部分が載置面に接触することで蓋100を自立させる。
【0026】
つまみ120には、断熱性の素材が用いられる。鍋セット1の使用者は、つまみ120を把持することで、蓋100を持つことができる。
【0027】
この鍋セット1を使用して調理をする場合、鍋10の中空部分に材料を入れ、蓋100によって開口部18を閉塞し、コンロ等によって鍋セット1を加熱する。
【0028】
図4及び
図5は、それぞれスタンド部126を載置面に接触させて蓋100を自立させた様子を示す側面図及び正面図である。
【0029】
図4に示すように、プレート110は、スタンド部126によって載置面に対して一定の角度を持って傾斜して支持される。また、プレート110は、スタンド部126によって載置面に非接触の状態で支持される。
【0030】
スタンド部126に支持されたプレート110の傾斜方向を載置面に投影した方向を第1方向(
図4に示すX方向)とすると、スタンド部126と載置面との接触位置の第1方向の幅W1は50mm以内であることが好ましく、40mm以内であることがより好ましい。スタンド部126と載置面との接触位置の第1方向の幅W1が小さいほど、省スペース化を図ることができる。なお、安定した自立という観点から、スタンド部126と載置面との接触位置の第1方向の幅W1は20mm以上であることが好ましい。
【0031】
スタンド部126は、プレート110の重心である点Gから載置面に下ろした垂線と載置面との交点Cを含んで設置面と接触している。スタンド部126と載置面との接触位置の第1方向の端部をそれぞれ点X1及び点X2とすると、点X1と交点Cとの第1方向の距離L1は、30mm以内であることが好ましく、20mm以内であることがより好ましい。点X2と交点Cとの第1方向の距離L2は、30mm以内であることが好ましく、20mm以内であることがより好ましい。
【0032】
また、スタンド部126と載置面との接触位置の第1方向に直交する第2方向(
図5に示すY方向)の幅W2は50mm以内であることが好ましく、40mm以内であることがより好ましい。スタンド部126と載置面との接触位置の第2方向の幅が小さいほど、省スペース化を図ることができる。なお、安定した自立という観点から、スタンド部126と載置面との接触位置の第2方向の幅W2は20mm以上であることが好ましい。
【0033】
また、つまみ120はプレート110の突起物に相当するため、極力小さいほうがよい。特に、蓋100の上下の向きを逆さにして鍋10に収納する場合があるが、つまみ120がプレート110の外形よりはみ出すと収納できなくなるという問題が発生する。
【0034】
図6は蓋100の上下の向きを逆さにして蓋100を鍋10に収納した様子を示す図である。本実施形態によれば、プレート110の平面視においてつまみ120の全体がプレート110の範囲内に含まれる。このため、蓋100の上下の向きを逆さにして蓋100を鍋10に収納した場合に、つまみ120が鍋10の内部に収まる。したがって、収納時の省スペース化を図ることができる。
【0035】
スタンド部126に支持されたプレート110の載置面に対する傾斜角度θは、10度以上70度以下であることが好ましく、20度以上60度以下であることがさらに好ましい。プレート110の載置面にたいする傾斜角度がこの範囲で大きいほど、自立時の空間上の省スペース化を図ることができる。また、傾斜角度がこの範囲で小さいほど
図6に示すように収納する場合につまみ120と鍋10の底面14の距離が大きくなる。すなわち、より浅い鍋10に収納することができる。
【0036】
以上のように、本実施形態によれば、スタンド部126のみが載置面に接触しているため、自立時の載置面上の省スペース化を図ることができる。また、プレート110は載置面に接触しないため、衛生面で有利である。さらに、収納時の省スペース化を図ることができる。
【0037】
なお、「スタンド部126と載置面との接触位置の第1方向の幅」とは、実効的な接触位置の幅を指す。
図7は、3つの脚部126A、126B、及び126Cが設けられたスタンド部126を示す図である。
図7に示すスタンド部126の場合、「スタンド部126と載置面との接触位置」とは、脚部126Aと載置面との接触位置、脚部126Bと載置面との接触位置、及び脚部126Cと載置面との接触位置に囲まれた領域の全てを接触位置とみなす。したがって、この場合の「第1方向の幅」とは、3つの接触位置に囲まれた領域の第1方向の幅として解釈すればよい。
【0038】
〔第2の実施形態〕
第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0039】
図8及び
図9は、蓋200の上面図及び側面図である。
図8及び
図9に示すように、蓋200は、プレート110と、つまみ220と、から構成される。
【0040】
つまみ220は、プレート110の平面視においてつまみ220の全体がプレート110の範囲内に含まれる。つまみ220は、接続部222と、柄部224と、スタンド部226と、から構成される。
【0041】
接続部222は、プレート110の平面視の略中心部に接続されることで、プレート110につまみ220を固定する。
【0042】
柄部224は、つまみ220の本体に相当し、接続部222から延伸する。柄部224は、八角柱形状を有する。柄部224の接続部222とは反対側の端部には、スタンド部226が設けられる。スタンド部226は、柄部224を底面とした略八角錐形状を有する。スタンド部226は、略八角錐形状のいずれかの角錐面が載置面に接触することで蓋200を自立させる。
【0043】
図10及び
図11は、それぞれスタンド部226を載置面に接触させて蓋200を自立させた様子を示す側面図及び正面図である。
【0044】
スタンド部226と載置面との接触位置の第1方向の幅W1、スタンド部226と載置面との接触位置の第1方向に直交する第2方向の幅W2、点X1と交点Cとの第1方向の距離L1、点X2と交点Cとの第1方向の距離L2、スタンド部226に支持されたプレート110の載置面に対する傾斜角度θは、第1の実施形態と同様に設定すればよい。
【0045】
本明細書では、鍋10の蓋100及び蓋200について説明したが、調理器具は鍋に限定されない。本実施形態に係る蓋100及び蓋200は、フライパンやホットプレートに使用することができる。また、蓋100及び蓋200は、調理器具の開口部の形状に対応した形状であればよく、円形状に限定されない。
【符号の説明】
【0046】
1…鍋セット
10…鍋
12…鍋本体
14…底面
16…壁面
18…開口部
20…取っ手
100…蓋
110…プレート
120…つまみ
122…接続部
124…柄部
126…スタンド部
126A…脚部
126B…脚部
126C…脚部
200…蓋
220…つまみ
222…接続部
224…柄部
226…スタンド部