(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】形鋼固定金具
(51)【国際特許分類】
F16B 2/12 20060101AFI20220128BHJP
E04B 9/18 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
F16B2/12 B
E04B9/18 A
(21)【出願番号】P 2017255467
(22)【出願日】2017-12-26
【審査請求日】2020-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000157197
【氏名又は名称】丸井産業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平田 達識
(72)【発明者】
【氏名】松島 光秀
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】意匠登録第1237374(JP,S)
【文献】実開昭49-146524(JP,U)
【文献】実開平05-014314(JP,U)
【文献】実公昭39-016056(JP,Y1)
【文献】特開2003-222106(JP,A)
【文献】特開2008-308874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/00- 2/26
F16B 7/00- 7/22
E04B 9/00- 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
ネジ穴に進退自在になる締付けボルトを設けた固定部と、該固定部から略L字状に延伸する連結部を介して前記固定部に対向配置する支持部とからなり、前記連結部から前記支持部に亘って水平支持材を挿通する矩形状の開口部を設けた板状の金具本体であって、前記開口部に挿通した水平支持材と交差状に重ねる水平基材を前記固定部の締付けボルトの締付けにより挟持して固定する形鋼固定金具において、前記締付けボルトの締付け方向と反対側の前記開口部の端縁から内側に向かって突出して水平支持材とする等辺山形鋼の水平辺を支える支持片を設けたことを特徴とする形鋼固定金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、構築物の設備工事において、梁部材やその他造営材として使用するH形鋼、C型鋼を水平基材とし、その水平基材にリップ溝形鋼や等辺山形鋼を水平支持材として取付けて、配管や設備機器を所定の位置に吊設する場合に、形鋼同士を交差状に固定するための形鋼固定金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種、形鋼同士を交差状に固定するための形鋼固定金具として、例えば、ネジ穴に進退自在になる締付けボルトを設けた固定部と該固定部から略L字状に延伸する連結部を介して前記固定部に対向配置する支持部とからなり、前記連結部から前記支持部に亘って水平支持材を挿通する矩形状の開口部を設けた板状の金具が開示されている。
その使用方法として、構築物の梁材とするH形鋼のフランジ部底面に金具の開口部に挿通した状態で軽量溝型鋼を、電線を内包してレースウエイの部材、あるいは開口部に取付ける専用の吊りボルト支持具を取付けて配管等を吊設する部材として使用ものであるが、交差状に重ねて配置し、締付けボルトを締付けて挟持して固定するものである。
【0003】
この金具において、軽量溝形鋼の開口面が締付けボルトの締付け方向と反対の方向に配置する場合、締付けボルトの締付け力により軽量溝形鋼の開口面が開く方向に変形しても開口部の両側面に規制されて変形することなく確実に固定することができる。
この形態の金具を使って配管等を吊設する水平支持材としてリップ溝鋼を使用する場合、一般的には開口部が側面に向いた状態で使用される場合が多く、その状態であれば、締付けボルトで締め付けた場合、開口部は片持ちの状態で反力が弱く容易に変形してしまうので確実に固定することはできない。
また、水平支持材として等辺山形鋼を使用する場合、一般的にはL字状または逆L字状に配置し、等辺山形鋼の水平辺をH型鋼フランジ部の上下面どちらかに当接した状態とし、締付けボルトを締付けて固定するが、L字状のため水平辺に掛ける締付けボルトの締付け力に対する反力を他方の垂直辺の先端で受けることとなり偏芯による回転が生じて確実に固定することはできない。
すなわち、この形態の金具では締付けボルトの締付け方向に対して、リップ溝形鋼のように反力が弱く所定の強度を有しない場合、あるいは、等辺山形鋼のように締付け方向に対し、偏芯する場合は使用することができないなどの問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】登録意匠第1237374号
【文献】特開2008-308874号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は上記従来の課題に鑑みなされたもので、その目的は、構築物の特に設備工事において、梁と梁の間等に水平支持材として形鋼を渡して配管や設備機器を吊設する場合に、形鋼同士を交差状に固定するための形鋼固定金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その手段として、本発明は、ネジ穴に進退自在になる締付けボルトを設けた固定部と該固定部から略L字状に延伸する連結部を介して前記固定部に対向配置する支持部とからなり前記連結部から前記支持部に亘って水平支持材を挿通する矩形状の開口部を設けた板状の金具本体であって、前記開口部に挿通した水平支持材と交差状に重ねる水平基材を前記固定部の締付けボルトの締付けにより挟持して固定する形鋼固定金具において、前記開口部両側縁の少なくとも一方から内側に突出して水平支持材とするリップ溝形鋼の開口に嵌挿して、前記締付けボルトの締付けの際に前記開口の一端部を支える支持片を設けたことを特徴とする。
【0007】
また、ネジ穴に進退自在になる締付けボルトを設けた固定部と、該固定部から略L字状に延伸する連結部を介して前記固定部に対向配置する支持部とからなり、前記連結部から前記支持部に亘って水平支持材を挿通する矩形状の開口部を設けた板状の金具本体であって、前記開口部に挿通した水平支持材と交差状に重ねる水平基材を前記固定部の締付けボルトの締付けにより挟持して固定する形鋼固定金具において、前記締付けボルトの締付け方向と反対側の前記開口部の端縁から内側に向かって突出して水平支持材とする等辺山形鋼の水平辺を支える支持片を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の形鋼固定金具によれば、開口部両側縁の少なくとも一方から内側に突出して水平支持材とするリップ溝形鋼の開口に嵌挿する支持片を設けたことにより、締付けボルトの締付けの際、リップ溝形鋼の開口に嵌挿した支持片が開口の一端部を支え、開口が変形することなく確実に固定することができる。
【0009】
また、締付けボルトの締付け方向と反対側の開口部の端縁から内側に向かって突出して水平支持材とするL字状に配置する等辺山形鋼の水平辺を支える支持片を設けたことにより、締付けボルトの締付けの際、支持片が等辺山形鋼の水平辺を内側から前記締付けボルトと同軸で支えるため、等辺山形鋼の回転を防止し確実に固定することができるなど、上記従来の課題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】本発明の第1実施例によりH形鋼フランジの下面にリップ溝形鋼を固定した状態の正面図である。
【
図5】本発明の第1実施例によりH形鋼フランジの上面にリップ溝形鋼を固定した状態の正面図である。
【
図8】本発明の第2実施例によりH形鋼フランジの上面にリップ溝形鋼を固定した状態の正面図である。
【
図10】本発明の第2実施例によりH形鋼フランジの下面にリップ溝形鋼を固定した状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を図面により詳細に説明する。
図1は本発明の形鋼固定金具の第1実施例を示す斜視図、
図2は第1実施例を示す側面図である。
10は固定部であり、そのほぼ中央にネジ穴11を設け、締付けボルト12を螺着する。13は連結部であり、固定部10の一方から略L字状に延伸させ、更にその先端を屈曲して支持部14を設ける。固定部10と連結部13と支持部14は薄鋼鈑をプレス加工により一体的に形成し、更に両縁には略L字状に屈曲させて金具全体の剛性を上げるための補強リブ15、15を形成すると共に、前記連結部13と支持部14に亘って矩形状の開口部16を設ける。
開口部16の両側縁にはリップ溝形鋼の開口に嵌挿できる幅長さの支持片17、17を設けるが、片側の側縁でもよく、両側縁にすることはリップ溝形鋼を開口部に挿通する際に方向性をなくして使い勝手を向上すると共に、例えば、H形鋼の両フランジに取付ける場合には左右対称であることが必須となり使用用途の範囲を広げるためである。
【0012】
次に本発明の第1実施例の使用方法を
図3、
図4を用いて説明する。
開口を側面に向けたリップ溝形鋼Aの上面をH形鋼Bの下面に当接した状態でリップ溝形鋼Aの一端から本発明の形鋼固定金具の開口部16を嵌挿し、前記H形鋼Bの一方のフランジを介して固定部10の締付けボルト12でリップ溝形鋼Aを締め付ける。同様に他端より別の形鋼固定金具の開口部16を嵌挿し、前記H形鋼Bの他方のフランジを介して固定部10の締付けボルト12でリップ溝形鋼Aを締め付ける。その際、開口部16に設けた支持片17がリップ溝形鋼Aの開口の一端部を支えるため、変形することなく確実に固定することができる。
その後、リップ溝形鋼Aの下面に透孔を設け、六角ナットDで固定された吊りボルトCに配管Eを配管バンドHで固定する。
また、
図5はH型鋼Bフランジの上面にリップ溝形鋼Aを固定した状態の正面図であり、リップ溝形鋼AをH型鋼Bのフランジ上下面の所望する面に固定することができる。
【0013】
図6は本発明の形鋼固定金具の第2実施例を示す斜視図、
図7は第2実施例を示す側面図である。
20は固定部であり、そのほぼ中央にネジ穴21を設け、締付けボルト22を螺着する。23は連結部であり、固定部20の一方から略L字状に延伸させ、更にその先端を屈曲して支持部24を設ける。固定部20と連結部23と支持部24は薄鋼板をプレス加工により一体的に形成し、更に両縁には略L字状に屈曲させて金具全体の剛性を上げるための補強リブ25、25を形成すると共に、前記連結部23と支持部24に亘って矩形状の開口部26を設ける。
固定部20に設けた締付けボルト22の締付け方向と反対側で且つ、開口部26の端縁から内側に向かって突出する支持片27を設ける。支持片27と開口部26の隙間の幅は、等辺山形鋼の厚みよりやや大きく設定すると共に、等辺山形鋼の水平辺を内側から支えるように設ける。
【0014】
次に本発明の第2実施例の使用方法を
図8、
図9を用いて説明する。
L字状に向けた等辺山形鋼Fの水平辺をH型鋼Bのフランジの上面に当接した状態で予め、等辺山形鋼Fの一端から開口部26を嵌挿して配置した本発明の形鋼固定金具を前記H型鋼Bの一方のフランジを介して固定部20の締付けボルト22で等辺山形鋼Fを締め付ける。同様に他端に配置した別の形鋼固定金具を前記H形鋼Bの他方のフランジを介して固定部20の締付けボルト22で等辺山形鋼Fを締め付ける。その際、開口部26に設けた支持片27が等辺山形鋼Fの水平面を締付けボルト22と同軸上で支えるため、回転することなく確実に固定することができる。その後、等辺山形鋼Fの水平辺に透孔を設け、六角ナットDで固定された吊りボルトCに空調機Gを吊持する。
また、
図10はH形鋼Bフランジの下面に等辺山形鋼Fを固定した状態の正面図であり、等辺山形鋼FをH形鋼Bのフランジ上下面の所望する面に固定することができる。
【符号の説明】
【0015】
10、20 固定部
11、21 ネジ穴
12、22 締付けボルト
13、23 連結部
14、24 支持部
15、25 補強リブ
16、26 開口部
17、27 支持片
A リップ溝形鋼
B H形鋼
C 吊りボルト
D 六角ナット
E 配管
F 等辺山形鋼
G 空調機
H 配管バンド