(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】脂肪肝に伴う希発排卵の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/155 20060101AFI20220128BHJP
A61K 31/585 20060101ALI20220128BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20220128BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20220128BHJP
A61P 15/08 20060101ALI20220128BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220128BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
A61K31/155
A61K31/585
A61K31/4439
A61P15/00
A61P15/08
A61P1/16
A61P3/06
(21)【出願番号】P 2018521981
(86)(22)【出願日】2016-10-27
(86)【国際出願番号】 EP2016075953
(87)【国際公開番号】W WO2017072243
(87)【国際公開日】2017-05-04
【審査請求日】2019-10-03
(32)【優先日】2015-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (その1) 公開日 2016年9月12日 集会名、開催場所 イーエスピーイー 2016 - ザ フィフティーフィフス アニューアル イーエスピーイー ミーティング
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518145204
【氏名又は名称】カトリーケ ユニヴェルシテート ルーヴェン
(73)【特許権者】
【識別番号】515227176
【氏名又は名称】ホスピタル サン ホアン デ デュウ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イバニェス ルルド
(72)【発明者】
【氏名】デ ツェハー フランシス
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/098318(WO,A1)
【文献】IBANEZ LOURDES,ORAL CONTRACEPTION VERSUS LOW-DOSE PIOGLITAZONE - SPIRONOLACTONE - METFORMIN (PIOSPIMET),ENDOCRINE REVIEWS,2014年06月22日,VOL:35, NR:3,https://www.endocrine.org/meetings/endo-annual-meetings/abstract-details?id=15149,SUN-0102
【文献】総合臨牀,2005年,Vol.54, No.5,pp. 1638-1644
【文献】IBANEZ L,LOW-DOSE PIOGLITAZONE AND LOW-DOSE FLUTAMIDE ADDED TO METFORMIN AND OESTRO-PROGESTAGENS 以下備考,CLINICAL ENDOCRINOLOGY,英国,BLACKWELL SCIENTIFIC PUBLICATIONS,2009年09月,VOL:71, NR:3,PAGE(S):351 - 357,http://dx.doi.org/10.1111/j.1365-2265.2008.03472.x,FOR HYPERINSULINAEMIC WOMEN WITH ANDROGEN EXCESS: ADD-ON BENEFITS DISCLOSED BY A RANDOMIZED 以下省略
【文献】IBANEZ L,LOW-DOSE PIOGLITAZONE, FLUTAMIDE, METFORMIN PLUS AN ESTRO-PROGESTAGEN FOR NON-OBESE 以下備考,GYNECOLOGICAL ENDOCRINOLOGY,英国,TAYLOR & FRANCIS,2010年12月,VOL:26, NR:12,PAGE(S):869 - 873,http://dx.doi.org/10.3109/09513590.2010.487589,YOUNG WOMEN WITH POLYCYSTIC OVARY SYNDROME: INCREASING EFFICACY AND PERSISTENT SAFETY OVER 30 MONTHS
【文献】RADOSH L,DRUG TREATMENTS FOR POLYCYSTIC OVARY SYNDROME,AMERICAN FAMILY PHYSICIAN,米国,2009年04月15日,PAGE(S):671 - 676,http://www.aafp.org/afp/2009/0415/p671.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多嚢胞性卵巣症候群の予防又は治療のために用いられる、スピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンを含む医薬組成物。
【請求項2】
思春期の少女又は出産可能年齢の女性における多嚢胞性卵巣症候群の予防又は治療のために用いられる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
思春期の少女又は出産可能年齢の女性における肝臓脂肪症と関連する低排卵率の予防又は治療のために用いられる、スピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンを含む医薬組成物。
【請求項4】
スピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンの各々が別個の単一送達形態で順次に投与される、請求項1~
3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
スピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンのうち2つが単一送達形態で投与され、残りの化合物が別個の送達形態で投与される、請求項1~
3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記単一送達形態が同時に、又は5分~1時間の間隔、好ましくは15分~30分の間隔で投与される、請求項
4又は
5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記肝臓脂肪症が過体重又は肥満と関連しない、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記思春期の少女又は出産可能年齢の女性がアンドロゲン過剰を示す、請求項3又は
7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記思春期の少女又は出産可能年齢の女性が高インスリン血、低アディポネクチン、高C反応性タンパク質レベル及び/又は高ゴナドトロピンレベルを示す、請求項3、
7又は
8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記思春期の少女又は出産可能年齢の女性が内臓脂肪過剰及び/又は脂質異常症を示す、請求項3、
7、
8又は
9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記思春期の少女又は出産可能年齢の女性が経口避妊薬又は非経口避妊法を使用している、請求項2~1
0のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記非経口避妊法が子宮内避妊具である、請求項1
1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物の1日用量が25mg~100mgのスピロノラクトンを含む、請求項1~1
2のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記組成物の1日用量が5mg~15mgのピオグリタゾンを含む、請求項1~1
3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記組成物の1日用量が500mg~1500mgのメトホルミンを含む、請求項1~1
4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記組成物の1日用量が25mg~100mgのスピロノラクトンと、5mg~15mgのピオグリタゾンと、500mg~1500mgのメトホルミンとを含む、請求項1~1
5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記組成物の1日用量が50mgのスピロノラクトンと、7.5mgのピオグリタゾンと、850mgのメトホルミンとを含む、請求項1~1
6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、思春期の少女又は出産可能年齢の女性における肝臓脂肪症と関連する低排卵率に起因する低受胎の治療又は予防を含む、PCOS及びPCOS様病態の治療又は予防のために用いられる、方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の診断につながる症状である高インスリン血性アンドロゲン過剰は、思春期の少女における多毛症、座瘡、脂漏及び月経不順の最も一般的な原因である1。「高インスリン血性アンドロゲン過剰」という用語は、症候群の診断基準に焦点を合わせる上で必要でも十分でもないとNIHパネルにより批判を受けている「多嚢胞性卵巣症候群」という用語の代わりに用いることができるものである。
【0003】
卵巣アンドロゲン過剰は殆どの場合、脂肪組織、特に肝臓における絶対的又は相対的な脂肪過剰、並びにその後のインスリン血及びゴナドトロピン分泌の上昇によって生じるようである2、3。さらに、女性における低受胎の主な原因である希発排卵アンドロゲン過剰は、肥満とは無関係な脂肪肝にも関係している。
【0004】
思春期の少女における高インスリン血性アンドロゲン過剰に対して認可されている療法はない。一番の推奨は、ライフスタイル対策により身体の脂肪蓄積(adiposity)を低減することである4、5。経口エストロ(oestro)-プロゲストゲン避妊法(OC)の追加が広く承認されたアプローチである5、6。代替アプローチは、性的に活発でないアンドロゲン過剰の少女に対してインスリン感作(insulin-sensitising:インスリン抵抗性改善)薬物を追加することである7、8。アンドロゲン過剰を有する少女においてこれら2つのアプローチを比較したこれまでの研究により、インスリン感作が、例えば内臓脂肪症のマーカーである軽度の炎症及び心臓血管の健康、並びに細胞老化のマーカーである白血球テロメア長に対してより大きな正常化効果をもたらすことが公表されている9~12。しかしながら、試験薬物(フルタミド及び酢酸シプロテロン等)が多くの国々で利用可能でないことから、これらのデータは適合性が限られている5、9、10。
【発明の概要】
【0005】
本発明では、経口避妊を用いている又は用いていない高インスリン血性アンドロゲン過剰を有する思春期の少女において、広く処方されているOCの効果と、低用量のスピロノラクトン-ピオグリタゾン-メトホルミンの組合せ(SPIOMET)の使用を伴う新たなインスリン感作治療の効果とを比較した初のランダム化研究を報告する。驚くべきことに、本発明のSPIOMET治療が、代替インスリン感作治療の効果を調査した先行研究において報告されているよりも大幅に内臓及び肝臓の脂肪含量を減少させることが観察された。さらに、内臓脂肪及び肝臓脂肪に対する本発明のSPIOMET治療のプラス効果の逆転は、治療の1年後も観察されなかった。この研究結果は、PCOSの表現型における内臓脂肪、特に肝脂肪の重要な役割を考えると特に興味深い。本発明の治療は、脂肪肝に伴うアンドロゲン過剰(PCOS)を患う思春期の少女又は若い女性の排卵率に対する著しくプラスの効果を一貫して有し、このプラス効果は治療終了後も持続した。このように、本発明の主な目的は、思春期の少女又は出産可能年齢の女性における肝臓脂肪症と関連する低排卵率に起因する低受胎の治療又は予防を含む、PCOS及びPCOS様病態の治療に寄与することである。
【0006】
本発明の第1の態様は、思春期の少女又は出産可能年齢の女性における肝臓脂肪症と関連する低排卵率に起因する低受胎の治療又は予防を含む、PCOS及びPCOS様病態の治療のために用いられる、スピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンを含む医薬組成物である。
【0007】
本発明の別の態様は、思春期の少女又は出産可能年齢の女性における肝臓脂肪症と関連する低排卵率に起因する低受胎の治療又は予防を含む、PCOS及びPCOS様病態を治療する方法であって、スピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンの組合せの投与を含む、方法である。
【0008】
本発明の更なる態様は、送達形態の個々の単位各々にスピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンを含む医薬送達形態、好ましくは経口送達形態である。より好ましくは、送達形態、好ましくは経口送達形態の個々の単位がスピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンの各々の必要1日用量を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】肝脂肪の治療時の変化、及び遊離テストステロン血の治療後対治療前の変化と関連した治療後12+12週間にわたる予想排卵回数を示す図である。OC少女(N=17)による結果を黒丸で示し、SPIOMET少女(N=17)による結果を白丸で示す。P値及びR値はピアソン相関によるものである。
【
図2】12ヶ月間のOC又はSPIOMET治療を受けたPCOSを有する思春期の少女における月経歴、唾液プロゲステロン及び予想排卵の代表的な治療後パターンを示す図である。データは、治療後3ヶ月目~6ヶ月目及び更に治療後9ヶ月目~12ヶ月目の2つの12週間(更に2週間の月経歴)の時間窓で収集した。同様の月経歴を有する少女でも著しく異なる排卵率を有する可能性がある。
【
図3】12ヶ月にわたりOC(黒丸;N=17)又は低用量SPIOMET(白丸;N=17)を受け、続いて12ヶ月間治療を受けなかったPCOSを有する思春期の少女における肝脂肪及び遊離アンドロゲン血Zスコアの長期的変化を示す図である。OC及びSPIOMETは肝脂肪に対して逆の作用を有していた。OCはSPIOMETよりも急速に遊離アンドロゲン血を低下させたが、続いてより急速なリバウンドも生じた。結果を平均及びSEMとして表す。p値はサブグループ間の差を指す(0ヶ月目~24ヶ月目)。X軸上の記号(
*p<0.05、&p<0.01、#p<0.001)は、0ヶ月目~6ヶ月目及び12ヶ月目~18ヶ月目の差次的変化を指す。
【
図4】思春期の少女における肝臓脂肪症と関連した低排卵率に起因する低受胎を予防又は治療する本発明の治療法を表すスキームである。
【
図5】出産可能年齢の女性における肝臓脂肪症と関連した低排卵率に起因する低受胎を予防又は治療する本発明の治療法を表すスキームである。
【
図7】多嚢胞性卵巣症候群を有する思春期の少女における治療後の排卵パターンの極値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の文脈において、スピロノラクトンは下記の構造を有する合成ステロイド化合物及びその誘導体を指す。殆どの国では、スピロノラクトンはAldactone(商標)という商品名の製剤中で販売されている。
スピロノラクトンの構造式:
【化1】
スピロノラクトンの系統名:7α-アセチルチオ-3-オキソ-17α-プレグナ-4-エン-21,17-カルボラクトン又は17-ヒドロキシ-7α-メルカプト-3-オキソ-17α-プレグナ-4-エン-21-カルボン酸,γ-ラクトンアセテート
【0011】
本発明の文脈において、ピオグリタゾンは下記の構造を有するチアゾリジンジオン群の化合物及びその誘導体を指す。殆どの国では、ピオグリタゾンはActos(商標)という商品名の製剤中で販売されている。
ピオグリタゾンの構造式:
【化2】
ピオグリタゾンの系統名:(RS)-5-(4-[2-(5-エチルピリジン-2-イル)エトキシ]ベンジル)チアゾリジン-2,4-ジオン
【0012】
本発明の文脈において、メトホルミンは下記の構造を有する化合物及びその誘導体を指す。殆どの国では、メトホルミンはMetformina(商標)又はGlucophage(商標)という商品名の製剤中で販売されている。
メトホルミンの構造式:
【化3】
メトホルミンの系統名:N,N-ジメチルイミドジカルボンイミド酸ジアミド(diamid)
【0013】
本発明の文脈において、排卵率は所与の期間、例えば3ヶ月にわたる自然排卵の発生を指す。低排卵率とは、1ヶ月当たりの排卵が0.7回未満、例えば0.6回未満、例えば0.5回未満又は0.4回未満である状況を指す。
【0014】
本発明の文脈において、肝臓脂肪症は肝臓内の脂肪の蓄積と関連する病態を指す。本発明の特定の文脈において、肝臓脂肪症はアルコール摂取に関係せず、このタイプの肝臓脂肪症は概して、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と称される。
【0015】
ヒトにおいては、女性の受胎能は20代の前半及び半ばにピークに達し、その後ゆっくりと下降し始め、より劇的な低下が35歳前後に見られる。閉経、すなわち月経期の停止は、概して40代及び50代に起こり、受胎能の停止を意味する。したがって、本発明の文脈において、出産可能年齢は好ましくは20歳~45歳の年齢、より好ましくは20歳~35歳の年齢を指す。
【0016】
思春期の少女又は女性における希発排卵アンドロゲン過剰(NIHに従って多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を指すために用いることができる更なる用語)は低受胎の主な原因であり、肥満とは無関係に脂肪肝に関する。PCOSは以下の症状:多毛症、座瘡、脂漏及び月経不順の発生と更に関連する。早期介入が治療後の自然排卵率に影響を与えるかは不明である。しかしながら、本発明においては、脂肪肝に伴うアンドロゲン過剰のランダム化介入後に、スピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンの組合せで治療した群の(主として非肥満の)思春期の少女/若い女性において、経口避妊薬の投与からなる標準治療により治療した群と比較して、治療後排卵率の劇的な増大が本発明者らにより観察された。
【0017】
本発明では、PCOSとも称される高インスリン血性アンドロゲン過剰を有する思春期の少女において、広く処方されているOCの効果と、低用量のスピロノラクトン-ピオグリタゾン-メトホルミンの組合せ(SPIOMET)の使用を伴うインスリン感作治療の効果とを比較した初のランダム化研究を報告する。驚くべきことに、本発明のSPIOMET治療がピオグリタゾン、フルタミド及びメトホルミンの併用投与のような代替インスリン感作治療の効果を調査した先行研究
17において報告されているよりも大幅に内臓及び肝臓の脂肪含量を減少させることが観察された。加えて、本発明のSPIOMET治療は、内因性の規則的な月経の発生並びにアンドロゲン血及びインスリン血のマーカーを徐々に正常化した(表3)。さらに、インスリン血マーカーである内臓脂肪及び肝臓脂肪に対するSPIOMET治療のプラス効果の逆転は、治療の1年後も観察されず、治療後の高アンドロゲン血の再発は、標準OC治療の終了後に観察されるよりも著しく遅かった。本発明の更に驚くべき重要な研究結果は、治療後の排卵率の正常化が肝臓脂肪の低減と有意に相関していたということである(
図1)。したがって、SPIOMET治療後の肝臓脂肪の低減は、治療後1年間の排卵率の正常化と関連していた。この研究結果は、スピロノラクトン又はピオグリタゾンの摂取時には受胎を回避すべきであるにも関わらず、PCOSと関連する低受胎又は不妊の予防又は治療の点から非常に重要である。実際に、長期にわたる治療後の排卵率の正常化は、PCOS患者がSPIOMET摂取の終了後に安全な、好ましくは自然な受胎を試みるのに十分な時間をもたらす。さらに、過剰な肝臓脂肪が排卵率の低減を引き起こし得るという観察結果から、不妊を患うPCOSに関係しない肝臓脂肪症を有する女性、例えば過体重であり、及び/又は過剰な異所性脂肪沈着を有する女性において治療の選択肢が提供される。実際に、本発明によるSPIOMET治療は、この患者群において受胎能を回復させる、好ましくは体重減少を促進するライフスタイル変化の採用及び好都合な身体活動の増加と組み合わせた治療の一環としても勧められる。
【0018】
本発明の第1の態様は、思春期の少女又は出産可能年齢の女性におけるPCOS又は希発排卵アンドロゲン過剰の予防又は治療のために用いられる、スピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンを含む医薬組成物である。通例、本発明の医薬組成物は、アンドロゲン過剰及び/又は高インスリン血、低アディポネクチン、高C反応性タンパク質レベル及び/又は高ゴナドトロピンレベルも示す思春期の少女又は出産可能年齢の女性の治療のために用いられる。概して、これらの少女及び出産可能年齢の女性は肝臓及び内臓脂肪過剰、及び/又は脂質異常症も示す。これらのPCOS症状の発生は、過体重又は肥満と関連していても又は関連していなくてもよい。通例、本発明の第1の態様による上記医薬組成物の使用は、上記PCOS関連症状の1つ、幾つか又は全てを緩和する。例えば、上記使用は以下のPCOS症状:高インスリン血、アンドロゲン過剰、過剰な肝臓脂肪、過剰な内臓脂肪、内因性月経不順(irregular endogenous menses)及び低排卵率のいずれか1つ、幾つか又は全てを緩和又は軽減し得る。さらに、上記症状のいずれか1つ、幾つか又は全てのこの緩和又は軽減は、上記医薬組成物の使用の終了後も持続することが観察された。特に、過剰な肝臓脂肪及び内臓脂肪の低減、並びに排卵率の正常化は治療後長期間にわたって、例えば上記医薬組成物の使用の終了後6ヶ月間又は12ヶ月間にわたって維持された。
【0019】
本発明の第2の態様は、思春期の少女又は出産可能年齢の女性における肝臓脂肪症に関係する低排卵率の予防又は治療のために用いられる、スピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンを組み合わせた医薬組成物である。治療中の集団において、この肝臓脂肪症は過体重又は肥満と関連するとは限らない。通例、本発明の医薬組成物はアンドロゲン過剰及び高インスリン血、低アディポネクチン、高C反応性タンパク質レベル及び/又は高ゴナドトロピンレベルも示す思春期の少女又は出産可能年齢の女性の治療のために用いられる。概して、これらの少女及び出産可能年齢の女性は肝臓及び内臓脂肪過剰、及び/又は脂質異常症も示す。
【0020】
本発明の第2の態様の特定の実施形態は、希発排卵アンドロゲン過剰又はPCOSを患う思春期の少女又は出産可能年齢の女性における低排卵率の予防又は治療のために用いられる、スピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンを組み合わせた医薬組成物である。排卵率に対するこの医薬組成物の使用のプラス効果は、先行する肝臓脂肪の低減と明らかに相関していた。結果として、上記医薬組成物のこの使用は、過剰な肝臓脂肪又は肝臓脂肪症を有するPCOS患者における低排卵率の治療に特に適している。
【0021】
本発明の第2の態様の更なる実施形態は、希発排卵アンドロゲン過剰又はPCOSを患うとみなされない思春期の少女又は出産可能年齢の女性における肝臓脂肪症と関連する低排卵率の予防又は治療のために用いられる、スピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンを組み合わせた医薬組成物である。通例、この患者群の思春期の少女又は出産可能年齢の女性は過体重であり、及び/又は過剰な異所性脂肪沈着、特に過剰な内臓及び肝臓脂肪沈着を示す。
【0022】
本発明の第3の態様は、肝脂肪及び/又は内臓脂肪の低減により利益を得る病態の治療のために用いられる、スピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンを含む医薬組成物である。特定の実施形態では、かかる肝脂肪及び/又は内臓脂肪の低減は同時の総体重、体重、除脂肪量(lean mass)及び/又は総体脂肪量(total fat mass)の低減なしに起こる。病態は多嚢胞性卵巣症候群、正常体重肥満症候群(De Lorenzo症候群)、メタボリックシンドローム、肥満又は過体重であり得る。この治療は、バランスの取れた食事及び好都合な身体活動の増加を含むライフスタイルの採用と組み合わせるのが好ましい。
【0023】
本発明の第3の態様の特定の実施形態は、思春期の少女又は出産可能年齢の女性における肝脂肪及び/又は内臓脂肪の低減により利益を得る病態の治療のために用いられる、スピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンを含む医薬組成物である。特定の実施形態では、かかる肝脂肪及び/又は内臓脂肪の低減は同時の総体重、体重、除脂肪量及び/又は総体脂肪量の低減なしに起こる。病態は多嚢胞性卵巣症候群、正常体重肥満症候群(De Lorenzo症候群)、メタボリックシンドローム、肥満又は過体重であり得る。この治療は、バランスの取れた食事及び好都合な身体活動の増加を含むライフスタイルの採用と組み合わせるのが好ましい。
【0024】
「過体重」という用語は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)及び世界保健機関(WHO)により白人、ヒスパニック及び黒人については25以上のBMIとして規定されている。アジア人については、「過体重」は23~29.9のBMIとして規定される。小児及び青少年については、年齢、性別、民族及び/又は国に特有の基準を考慮する必要があり、小児及び青少年の「過体重」は概して、85パーセンタイル値を超えるBMIに相当する。
【0025】
「肥満」は全ての群で30以上のBMIとして規定されている。しかしながら、小児及び青少年については、「肥満」は95パーセンタイル値以上のBMIとして規定される。
【0026】
アメリカNIHによると、「メタボリックシンドローム」は心臓病、並びに糖尿病及び脳卒中等の他の健康問題のリスクを増大させる危険因子群に対する名称である。「メタボリック」という用語は、身体の正常機能に関与する生化学過程を指す。危険因子は、疾患を発症する可能性を増大する形質、身体状態(conditions)又は習慣である。メタボリックシンドロームと診断するには、少なくとも3つの代謝危険因子を有している必要がある。これらとしては、太い胴回り又は腹部肥満;高トリグリセリドレベル;低HDLコレステロールレベル;高血圧;及び高空腹時血糖が挙げられる。
【0027】
本発明に従って使用される上記医薬組成物を、上記思春期の少女又は出産可能年齢の女性による経口又は非経口避妊療法の使用と組み合わせるのが好ましい。特定の実施形態では、避妊法は非経口避妊法、例えば子宮内避妊具、例えば子宮内コイル(intra-uterine coil)である。
【0028】
本発明に従って使用される医薬組成物は通例、該組成物の1日用量中に少なくとも25mg、好ましくは少なくとも30mg、例えば少なくとも40mg又は少なくとも45mgのスピロノラクトンを含む。加えて、本発明に従って使用される医薬組成物は通例、該組成物の1日用量中に多くとも100mg、好ましくは多くとも75mg、例えば多くとも70mg又は60mgのスピロノラクトンを含む。特定の実施形態では、本発明に従って使用される医薬組成物は、該組成物の1日用量中に50mgのスピロノラクトンを含む。
【0029】
本発明に従って使用される医薬組成物は通例、該組成物の1日用量中に少なくとも2.5mg、好ましくは少なくとも5mg、例えば少なくとも6mg又は少なくとも7mgのピオグリタゾンを含む。加えて、本発明に従って使用される医薬組成物は通例、該組成物の1日用量中に多くとも15mg、好ましくは多くとも10mg、例えば多くとも9mg又は8mgのピオグリタゾンを含む。特定の実施形態では、本発明に従って使用される医薬組成物は、該組成物の1日用量中に7.5mgのピオグリタゾンを含む。
【0030】
本発明に従って使用される医薬組成物は通例、該組成物の1日用量中に少なくとも500mg、好ましくは少なくとも600mg、例えば少なくとも700mg又は少なくとも800mgのメトホルミンを含む。加えて、本発明に従って使用される医薬組成物は通例、該組成物の1日用量中に多くとも1500mg、好ましくは多くとも1200mg、例えば多くとも1000mg又は900mgのメトホルミンを含む。特定の実施形態では、本発明に従って使用される医薬組成物は、該組成物の1日用量中に850mgのメトホルミンを含む。
【0031】
スピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンの各々の必要1日用量を含む本発明による医薬組成物の1日用量が、容易に摂取することのできる単一単位の経口送達形態、例えば単一の錠剤又はカプセルに配合されるのが更に好ましい。
【0032】
このように、本発明による医薬組成物の使用は、上記思春期の少女が成人期及び出産可能年齢に達した後の受胎、好ましくは自然受胎に寄与する可能性がある(
図4を参照されたい)。出産可能年齢の女性、特に脂肪肝に関係する希発排卵アンドロゲン過剰を患う女性において、本発明による医薬組成物の使用は異所性脂肪、特に肝脂肪の低減に続いて希発排卵低受胎の軽減をもたらす(
図5)。思春期の少女又は出産可能年齢の女性における本発明による医薬組成物の使用は、十分な異所性脂肪の低減が観察されるまで維持するのが好ましい。かかる十分な異所性脂肪の低減は、治療開始時の推定肝臓脂肪含量と比較して少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%又は30%の推定肝臓脂肪含量の低減、例えば40%又は50%以上の低減に相当するのが好ましい。通例、かかる十分な異所性脂肪の低減は、治療開始時の推定内臓脂肪と比較して少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%の推定内臓脂肪の低減、例えば20%又は30%以上の低減と関連する。排卵率に対する本発明による医薬組成物の使用の促進効果が該組成物の摂取を終了した後も持続することを考えると、その摂取は、これらの化合物の胚又は胎児発生への推定される任意の干渉を回避するために、好ましくはかかる十分な異所性脂肪の低減が達成された後に受胎が望まれる場合に終了されると考えることができる。
【0033】
本発明による医薬組成物の使用は、経口避妊薬又は非経口避妊法、特に子宮内避妊具等の非経口避妊法の使用と組み合わせるのが好ましい。上記非経口避妊法の使用は、上記組成物中に含有される医薬化合物の摂取時に受胎及び妊娠が回避されるため、これらの化合物の胚及び/又は胎児発生への推定される任意の干渉が回避されるという利点を有する。好ましくは十分な異所性脂肪の低減が達成された後に、また受胎が望まれる場合に、上記経口避妊薬又は非経口避妊法、好ましくは非経口避妊法の使用を上記組成物によるスピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンの併用投与の終了後に中止することができる。
【0034】
本発明の第4の態様は、思春期の少女又は女性における希発排卵アンドロゲン過剰又はPCOSを予防又は治療する方法であって、スピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンの併用投与を含む、方法である。通例、本発明のこの方法は、高インスリン血、低アディポネクチン、高C反応性タンパク質レベル及び/又は高ゴナドトロピンレベルも示す思春期の少女又は出産可能年齢の女性の治療のために用いられる。概して、これらの少女及び出産可能年齢の女性は肝臓及び内臓脂肪過剰、及び/又は脂質異常症も示す。これらのPCOS症状の発生は、過体重又は肥満と関連していても又は関連していなくてもよい。通例、本発明のこの第3の態様による方法は、上記PCOS関連症状の1つ、幾つか又は全てを緩和する。例えば、上記方法は以下のPCOS症状:高インスリン血、アンドロゲン過剰、過剰な肝臓脂肪、過剰な内臓脂肪、内因性月経不順及び低排卵率のいずれか1つ、幾つか又は全てを緩和又は軽減し得る。さらに、上記症状のいずれか1つ、幾つか又は全てのこの緩和又は軽減は、上記医薬組成物の使用の終了後も持続することが観察された。特に、過剰な肝臓脂肪及び内臓脂肪の低減、並びに排卵率の正常化が治療後長期間にわたって、例えばスピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンの投与の終了後6ヶ月間又は12ヶ月間にわたって維持された。
【0035】
本発明の第5の態様は、思春期の少女又は出産可能年齢の女性における肝臓脂肪症と関連する低排卵率を予防又は治療する方法であって、スピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンの組合せの投与を含む、方法を提供する。
【0036】
本発明の第5の態様の特定の実施形態は、希発排卵アンドロゲン過剰又はPCOSを患う思春期の少女又は出産可能年齢の女性における低排卵率を予防又は治療する方法であって、スピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンの併用投与を含む、方法である。この方法の排卵率に対するプラス効果は、治療に関連した先行する肝臓脂肪の低減と明らかに相関していた。結果として、この方法は、過剰な肝臓脂肪又は肝臓脂肪症を有するPCOS患者における低排卵率の治療に特に適している。
【0037】
本発明の第5の態様の更なる実施形態は、希発排卵アンドロゲン過剰又はPCOSを患うとみなされない思春期の少女又は出産可能年齢の女性における肝臓脂肪症と関連する低排卵率を予防又は治療する方法であって、スピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンの併用投与を含む、方法である。通例、この患者群の思春期の少女又は出産可能年齢の女性は過体重であり、及び/又は過剰な異所性脂肪沈着、特に過剰な内臓及び肝臓脂肪沈着を示す。
【0038】
本発明の第6の態様は、肝脂肪及び/又は内臓脂肪の低減により利益を得る病態を治療する方法であって、スピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンの併用投与を含む、方法である。特定の実施形態では、かかる肝脂肪及び/又は内臓脂肪の低減は同時の総体重、体重、除脂肪量及び/又は総体脂肪量の低減なしに起こる。病態は正常体重肥満症候群(De Lorenzo症候群)、メタボリックシンドローム、肥満又は過体重であり得る。この治療は、バランスの取れた食事及び好都合な身体活動の増加を含むライフスタイルの採用と組み合わせるのが好ましい。
【0039】
本発明の第6の態様の特定の実施形態は、思春期の少女又は出産可能年齢の女性における肝脂肪及び/又は内臓脂肪の低減により利益を得る病態を治療する方法であって、スピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンの併用投与を含む、方法である。特定の実施形態では、かかる肝脂肪及び/又は内臓脂肪の低減は同時の総体重、体重、除脂肪量及び/又は総体脂肪量の低減なしに起こる。病態は多嚢胞性卵巣症候群、正常体重肥満症候群(De Lorenzo症候群)、メタボリックシンドローム、肥満又は過体重であり得る。この治療は、バランスの取れた食事及び好都合な身体活動の増加を含むライフスタイルの採用と組み合わせるのが好ましい。
【0040】
思春期の少女、特に高インスリン血性アンドロゲン過剰の症状を示す少女において、本発明による治療法は異所性脂肪、特に肝脂肪の低減、及び(早期)成人期における低排卵率に伴う低受胎の軽減をもたらす。このように、本発明の治療法は、上記思春期の少女が成人期及び出産可能年齢に達した後の受胎、好ましくは自然受胎に寄与する可能性がある(
図4を参照されたい)。出産可能年齢の女性、特に脂肪肝に関係する希発排卵アンドロゲン過剰を患う女性において、本発明による治療法は異所性脂肪、特に肝脂肪の低減に続いて希発排卵低受胎の軽減をもたらす(
図5)。本発明の治療法による思春期の少女及び/又は出産可能年齢の女性の治療は、十分な異所性脂肪の低減が観察されるまでスピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンの組合せの投与を維持することを含むのが好ましい。かかる十分な異所性脂肪の低減は、治療開始時の推定肝臓脂肪含量と比較して少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%又は30%の推定肝臓脂肪含量の低減、例えば40%又は50%以上の低減に相当するのが好ましい。通例、かかる十分な異所性脂肪の低減は、治療開始時の推定肝臓脂肪と比較して少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%の推定内臓脂肪の低減、例えば20%又は30%以上の低減と関連する。排卵率に対する本発明による治療の促進効果がスピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンの組合せの摂取を終了した後も持続することを考えると、これらの化合物の摂取は、これらの化合物の胚又は胎児発生への推定される任意の干渉を回避するために、好ましくはかかる十分な異所性脂肪の低減が達成された後に、受胎が望まれる場合に終了されると考えることができる。
【0041】
本発明の治療法は、肝臓脂肪症を示す思春期の少女及び/又は出産可能年齢の女性において、それが肥満又は過体重と関連するか否かに関わらず、効果的であるとみなされる。
【0042】
本発明の方法は、アンドロゲン過剰及び高インスリン血、更には(next to)低アディポネクチン、高C反応性タンパク質レベル及び/又は高ゴナドトロピンレベルを示す思春期の少女又は出産可能年齢の女性の治療に用いることができる。概して、これらの思春期の少女及び出産可能年齢の女性は内臓脂肪過剰及び/又は脂質異常症も示す。
【0043】
本発明の治療法は通例、少なくとも25mg、好ましくは少なくとも30mg、例えば少なくとも40mg又は少なくとも45mgのスピロノラクトンの連日投与を含む。加えて、本発明の治療法は通例、多くとも100mg、好ましくは多くとも75mg、例えば多くとも70mg又は60mgのスピロノラクトンの連日投与を含む。特定の実施形態では、本発明の治療法は50mgのスピロノラクトンの連日投与を含む。
【0044】
本発明の治療法は通例、少なくとも2.5mg、好ましくは少なくとも5mg、例えば少なくとも6mg又は少なくとも7mgのピオグリタゾンの連日投与を含む。加えて、本発明の治療法は通例、多くとも15mg、好ましくは多くとも10mg、例えば多くとも9mg又は8mgのピオグリタゾンの連日投与を含む。特定の実施形態では、本発明の治療法は、上記組成物の1日用量中に7.5mgのピオグリタゾンの連日投与を含む。
【0045】
本発明の治療法は通例、上記組成物の1日用量中に少なくとも500mg、好ましくは少なくとも600mg、例えば少なくとも700mg又は少なくとも800mgのメトホルミンの連日投与を含む。加えて、本発明の治療法は通例、上記組成物の1日用量中に多くとも1500mg、好ましくは多くとも1200mg、例えば多くとも1000mg又は900mgのメトホルミンの連日投与を含む。特定の実施形態では、本発明の治療法は、上記組成物の1日用量中に850mgのメトホルミンの連日投与を含む。
【0046】
好ましい実施形態では、本発明は60mg~70mgのスピロノラクトン、8mg~9mgのピオグリタゾン及び800mg~9000mgのメトホルミンの連日投与を含む。本発明は50mgのスピロノラクトン、7.5mgのピオグリタゾン及び850mgのメトホルミンの連日投与を含むのが好ましい。
【0047】
本発明の治療法が、経口送達形態の個々の単位の各々に、例えば個々の錠剤又はカプセルの各々にスピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンを含む経口送達形態である医薬組成物の投与を含むのが更に好ましい。上記経口送達形態の個々の単位がスピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンの各々の必要1日用量を含むのがより好ましい。通例、上記経口送達形態の個々の単位、例えば単一の錠剤又はカプセルは容易に摂取することができる。錠剤又はカプセルは、当業者により当該技術分野で既知の任意の方法に従って調製される、フィルムコートされたカプセル又は錠剤であってもよい。カプセル又は錠剤は即時放出送達形態として配合されるのが好ましい。
【0048】
本発明の更なる実施形態では、スピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンの各々が別個の送達形態で順次に投与される。別個の送達形態のスピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンが組合せを形成してもよい。
【0049】
また更なる実施形態では、スピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンのうち2つが単一送達形態で投与され、残りの化合物が別個の送達形態で投与される。
【0050】
単一送達形態は同時に、又は5分~1時間の間隔、好ましくは15分~30分の間隔で投与することができる。本発明の治療法であるスピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンの併用投与は、避妊療法、特に子宮内避妊具等の非経口避妊法の使用と組み合わせるのが好ましい。
【0051】
本発明の更なる実施形態では、スピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンの併用投与を単一送達形態の経口避妊薬と組み合わせる。
【0052】
更なる実施形態では、スピロノラクトン、ピオグリタゾン、メトホルミン及び経口避妊薬のうち2つ又は3つを単一送達形態で投与し、残りの化合物を別個の送達形態で投与する。
【0053】
避妊療法の使用は、上記医薬化合物の摂取時に妊娠が回避されるため、これらの化合物の胚及び/又は胎児発生への推定される任意の干渉が回避されるという利点を有する。好ましくは十分な異所性脂肪の低減が達成された後に、また受胎が望まれる場合に、上記非経口避妊法の使用をスピロノラクトン、ピオグリタゾン及びメトホルミンの併用投与の終了後に中止することができる。
【0054】
本発明の更なる態様は、25mg~100mgのスピロノラクトン及び/又は5mg~15mgのピオグリタゾン及び/又は500mg~1500mgのメトホルミンを含む医薬組成物である。一実施形態では、医薬組成物は、25mg~100mgのスピロノラクトン及び5mg~15mgのピオグリタゾンを含む。
【0055】
更なる実施形態では、上記医薬組成物の1日用量が25mg~100mgのスピロノラクトン、5mg~15mgのピオグリタゾン及び500mg~1500mgのメトホルミンを含む。特に好ましい実施形態では、医薬組成物の1日用量が50mgのスピロノラクトン、7.5mgのピオグリタゾン及び850mgのメトホルミンを含む。
【0056】
一実施形態では、医薬組成物は経口送達形態であり、経口送達形態の個々の単位は25mg~100mgのスピロノラクトン、5mg~15mgのピオグリタゾン及び500mg~1500mgのメトホルミンを含む。好ましい実施形態では、経口送達形態の個々の単位は錠剤又はカプセルである。
【実施例】
【0057】
実施例1:高インスリン血性アンドロゲン過剰を有する思春期の少女/若い女性に対する低用量スピロノラクトン-ピオグリタゾン-メトホルミン治療
方法
研究設計及び集団
表1に24ヶ月にわたるこのランダム化単一施設非盲検研究の設計をまとめる。
【0058】
研究集団は、多毛症(Ferriman-Gallweyスケールで8を超えるスコア)、希発月経(45日を超える月経間隔)、2.0年を超える婦人科年齢(又は初経後の期間)、及び性行為がないこと(避妊の必要なし)という4つの組み入れ基準を満たす36人のカタロニア人少女からなるものであった。
【0059】
少女は、Sant Joan de Deu University Hospital(Barcelona,Spain)の思春期内分泌科(Adolescent Endocrinology Unit)において2013年1月から2014年5月の間に募集された(CONSORT流れ図;
図6)。本状況では、過体重/肥満の思春期の少女は主に思春期内分泌科ではなく肥満科(Obesity Unit)に回されることから、募集は過体重/肥満に対して偏っていた。
【0060】
4つの組み入れ基準を満たす全ての少女が、いずれも以下の基準の1つによって除外されなかったために登録された:21-水酸化酵素欠損症(卵胞期における200ng/dL以上の17-OH-プロゲステロン血から又は2ヶ月の無月経後に判断される);耐糖能異常又は糖尿病;甲状腺、肝臓又は腎臓機能障害の徴候;高プロラクチン血;生殖腺若しくは副腎機能、又は炭水化物若しくは脂質代謝に影響を及ぼす薬物の任意の以前の使用17。
【0061】
エンドポイント
主要エンドポイントは治療後の排卵率とした。二次転帰は多毛症及び座瘡スコア、身体組成、腹部脂肪分配(partitioning)(皮下脂肪、内臓脂肪及び肝脂肪)、頸動脈内膜中膜厚(cIMT)、並びに循環インスリン、テストステロン、アンドロステンジオン、C反応性タンパク質(CRP)、脂質及び高分子量(HMW)アディポネクチンとした。
【0062】
研究登録及び倫理
研究はISRCTN29234515として登録され、Sant Joan de Deu University Hospitalの施設内倫理委員会による認可、親の承諾書、及び指標値を得ることができる健常対照を含む各々の対象少女による同意の後に行われた。元の研究登録の更新は、特に思春期のPCOSの診断6、研究期間(資金援助の延長が得られた後の6ヶ月から12ヶ月への治療後期間の延長)、及び循環アンドロゲンの測定(液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析への切替え)における2012年8月以来に起こった変化を反映するものである。
【0063】
ランダム化及び対象薬物
地中海式ダイエット及び定期的な運動を全ての少女に推奨した。対象薬物のランダム化(1:1)は、年齢(16.0歳未満又は16.0歳以上)及び肥満度指数(BMI、24.0Kg/m2未満又は24.0Kg/m2以上)の層によるランダム置換ブロックを用いたウェブベースのものとした(http://www.SealedEnvelope.com)。少女を、1日1回夕食時にLoette Diario(Pfizer,Madrid,Spain;21/28日間の20mcgのエチニルエストラジオール+100mgのレボノルゲストレル、及び7/28日間の偽薬)、又は3つの別個のジェネリック医薬品の低用量の組合せであるSPIOMET:50mgのスピロノラクトン(Pfizer(Madrid,Spain)製のAldactoneの100mg錠の半分)、7.5mgのピオグリタゾン(Takeda(Madrid,Spain)製のActosの15mg錠の半分)及び850mgのメトホルミン(Sandoz(Barcelona,Spain)製のMetforminaの850mg錠)のいずれかが与えられるようにランダムに割り当てた。
【0064】
治療遵守は、各臨床評価での治療歴及び対象薬物を供給する薬局におけるピル数によって審査した。
【0065】
臨床評価及び内分泌代謝評価
1人の研究者(LI、治療に非盲検)が体重、身長(Harpenden身長計)及び胴囲を測定し、多毛症(Ferriman-Gallwey)及び座瘡(Leeds評価スケール)の存在についてスコアリングし、副作用を審査した。収縮期及び拡張期血圧は、少女を仰臥位にし、電子血圧計(767シリーズ、Welch Allyn,Spain)を用いて5分間の安静後に右腕で記録した。
【0066】
内分泌代謝評価は、月経周期3日目~7日目(1人を除く全ての少女)又は2ヶ月の無月経の後(1人の少女)で早朝に行った。空腹時血糖及び循環インスリン(合わせてインスリン抵抗性のホメオスタシスモデル評価(HOMA-IR)の算出が可能となる)、性ホルモン結合グロブリン(SHBG)、テストステロン、アンドロステンジオン、LDLコレステロール及びHDLコレステロール、トリグリセリド、HMWアディポネクチン、並びにCRPを、安全性マーカーであるアラニントランスアミナーゼ(ALT)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)及びγグルタミルトランスフェラーゼ(GGT)と併せて評価した。付加的な安全性マーカーは血球数、並びに循環尿素及びクレアチニンとした(データは示さない)。75gのグルコースを用いた経口ブドウ糖負荷試験(oGTT)を、グルコース及びインスリンの測定のために3日間の高炭水化物食(300g/日)及び一晩の絶食後にグルコース摂取前、並びにその30分後、60分後、90分後及び120分後の採血により行い、それから平均血糖及びインスリン血Zスコアを導き出した17。
【0067】
頸動脈内膜中膜厚(cIMT)
頸動脈の縦波超音波スキャンは、1人の研究者(GS、治療に盲検)により高分解能装置(Acuson Sequoia 512 SHA、Medisales,Los Alamitos,CA)を用いて得られた。左側3回、右側3回のcIMT測定の平均値を平均化した17。
【0068】
身体組成及び腹部脂肪分配
身体組成を、Lunar Prodigy及びLunarソフトウェア(バージョン3.4/3.5、Lunar Corp,WI)を用いた二重X線吸光光度法(DXA)によって評価した17。
【0069】
腹部脂肪の皮下及び内臓分配を、マルチスライスMRI 1.5 Teslaスキャン(Signa LX Echo Speed Plus Excite、General Electric,Milwaukee,WI)17を用いた核磁気共鳴画像法(MRI)によって評価した。MRIを用いて、脾臓が脂肪を含まないと仮定して肝臓の強度と皮下脂肪及び脾臓の強度とを比較することにより、肝脂肪(%)も評価した。スキャンは1人の操作者により行われ、画像は1人の放射線科医(LdR)により分析されたが、両者とも治療に盲検とした。
【0070】
アッセイ
血清グルコースはグルコースオキシダーゼ法によって測定した。循環インスリン及びSHBGは、免疫化学発光(IMMULITE 2000、Diagnostic Products,Los Angeles,CA)によってアッセイした。HOMA-IRは、(空腹時インスリン(mU/L))×(空腹時グルコース(mg/dL))/405として算出した。CRPは、高感度法(Architect c8000;Abbott,Wiesbaden,Germany)によって測定した。HMWアディポネクチンは、ELISA(Linco,St. Louis,MO)によって評価した。循環テストステロン及びアンドロステンジオンは、記載の方法に基づくアプローチを用いた液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析によって測定した19。簡潔に述べると、50μLのサンプルを、タンパク質沈殿のために20μLのISTD混合物(テストステロン-d3 5ng/mL)及び150μLのアセトニトリルと混合した。サンプルを遠心分離し、上清の蒸発(窒素流下で40℃)後に1mLの水を添加した。混合物を3mLのターブチルメチルエーテルで抽出し、有機層を分離し、蒸発乾固させた。抽出物を100μLの脱イオン水:メタノールの混合物(1:1、v/v)で再構成し、10μLを液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析システム(Xevo三連四重極質量分析計に接続したAcquity UPLC、Waters)に投入した。液体クロマトグラフィー分離を、勾配プログラムを用いて行った。有機溶媒の割合を以下のように線形変化させた:0分、70%;0.5分、70%;3分、95%;3.5分、95%;3.6分、95%;5分、70%。アンドロゲンは、各分析物について2つの遷移(テストステロンについては289→97及び289→109、アンドロステンジオンについては287→97及び287→109、並びに内部標準については292→97及び292→109)を取得することによる選択反応モニタリング法によって決定した。両方の遷移を用いて定量的データを得た。5つの濃度レベルの溶媒標準を定量化目的で使用した。MassLynxソフトウェアをデータ管理に使用した。テストステロン及びアンドロステンジオンの自由指標(Free indices)は、性ホルモン結合グロブリン(SHBG、nmol/L単位)に対する循環アンドロゲン濃度(nmol/L単位)の比率の100倍として算出した。(これらの方法を用いて、この年齢範囲内で、またこの民族集団内で)正常値がない場合は、遊離アンドロゲンZスコアは、規則的な月経を有する同様の年齢及び民族的背景の健常少女において同じ方法を用いて得られた結果から導いた(表2)。この標示集団の相対的均一性は比較的小さな標準偏差をもたらし、本研究集団における比較的高いZスコア偏差を解釈する際にこれらを考慮するものとする。
【0071】
排卵
排卵は、月経日誌及び唾液プロゲステロン測定からのエビデンスを組み合わせることによって予想した。プロゲステロン濃度を、治療後1年目の第2及び第4四半期(trimesters)(研究月15~18及び21~24、表1中)に得られる唾液中で測定した。唾液サンプルを、各四半期の連続12週間にわたって週1回(同じ曜日に)、患者1人当たり合計24個のサンプルで収集した。サンプル(各々およそ5mL)は真水で口をすすいだ後、食品摂取前にプラスチックコレクター内に唾を吐くことによって得た。唾液分泌刺激デバイスの使用は避けた。患者の家庭用冷凍庫内に保管する前に各コレクターにラベル(名前及び日付)を付けた。各12週間の唾液収集の終了後に、唾液サンプルは各少女によって付けられた14週間(12週間の唾液収集後の2週間を含む)にわたる月経日誌と共に恒温バッグに入れて病院に運ばれた。受け取り後にサンプルを融解し、ポリプロピレンチューブに移し、3000rpmで15分間遠心分離して細胞残屑を除去した後、アッセイまで-20℃で最大3ヶ月間保管した。唾液サンプルを、ELISA(Novatec, Immundiagnostica,Dietzenbach,Germany)によるプロゲステロン測定の日に再び解凍及び遠心分離した。アッセイ内及びアッセイ間変動係数は5.5%及び6.0%であり、検出限界は3.8pg/mLであった。候補排卵は、アッセイのメーカーによって推奨されるように99pg/mLの下限プロゲステロンカットオフを用いて特定した。月経が該当唾液サンプルを得る2週間前までに開始せず、その後2週間以内に開始したことが月経日誌により示されている場合に、候補排卵を確認した。この2工程プロセスにおいて確認された排卵の全てが、150pg/mLを超える唾液プロゲステロン濃度と関連することが証明され、逆に、濃度が150pg/mLを超える候補排卵のいずれも月経パターンにより無効(infirmed)とならなかった。
【0072】
統計
分析はSPSS 22.0(SPSS,Chicago,IL)を用いて行った。群間の定量的変数の長期的変化を、反復測定一般線形モデルによって比較した。群間の長期的変化の差を、被験体間及び被験体内効果における相互作用項によって試験した。排卵回数の群間差をマン-ホイットニーのU検定、標準排卵(normovulatory)割合の群間差をフィッシャーの正確確率検定によって求めた。定量的変数間の関連性を相関分析によって求めた。P<0.05を統計的に有意であるとみなした。
【0073】
結果
研究完了、治療遵守、副作用
研究完了率は94%であった(各群において1人の治療後脱落)。治療遵守は治療歴及びピル数により判断すると、97%超と推定された。注目すべき副作用は最初の1ヶ月における出血(OC少女の17%)、及び最初の1ヶ月における時折の/軽い腹部不快感(SPIOMET少女の11%)であった。
【0074】
主要転帰:治療後排卵
SPIOMET治療は、OCよりも2.5倍高い排卵率及び6倍高い標準排卵少女の割合をもたらした(表2)。希発-無排卵の絶対リスクは、SPIOMET後にOCよりも65%低かった(95%信頼区間、40%~89%)。標準排卵を有する付加的な1人のPCOS少女を観察するためのSPIOMETによる治療必要数は、2であった(95%信頼区間、1.1~2.5)。
【0075】
治療後排卵率は、BMI及び総体脂肪量の変化の調整後も肝脂肪の治療時の変化、及び遊離テストステロン血の治療後対治療前の変化(
図1)と関連していた。
【0076】
月経歴及び唾液プロゲステロンの代表的なパターン(
図2)から、OC又はSPIOMET後に同様の月経歴を有する少女が著しく異なる排卵率を有し得ることが説明される。低排卵回数(12+12週間にわたって0回又は1回)はOC後のみに見られ(これらの少女の35%)、高排卵回数(5回又は6回)はSPIOMET後のみに見られた(これらの少女の59%)(
図7)。
【0077】
二次転帰
SPIOMET治療は、例えば肝脂肪(
図3)、内臓脂肪、胴囲、並びに循環インスリン、CRP及びHMWアディポネクチンに対する様々な正常化効果を伴っていた(表3)。肝脂肪及び内臓脂肪、並びにグルコース刺激性インスリン血は、SPIOMET後にOC後よりも正常のままであった(表4)。高アンドロゲン血は、SPIOMET時にOC治療よりもゆっくりと正常化したが、同様にSPIOMET後によりゆっくりとリバウンドした(
図3)。BMI、除脂肪量及び腹部皮下脂肪量は、どちらの群においても研究全体を通して安定していた。
【0078】
結論
思春期のPCOS少女に対するランダム化治療は、著しく異なる排卵率をもたらした。治療時の肝脂肪過剰のより大きな減少は、より正常な治療後排卵率と関連していた。
【0079】
本研究における一連の研究結果は、肝-内臓脂肪及び/又は高インスリン血が、神経内分泌レベルでのゴナドトロピン分泌の上方調節20及び卵巣レベルでのアンドロゲン放出の上方調節21を含む多数のレベルで協奏的作用を有する重要なPCOSの推進要因であるという考え7、8、9を裏付けるものである。
【0080】
肝脂肪及び内臓脂肪のSPIOMETに関連した正常化は体重、除脂肪量又は総脂肪の検出可能な変化なしに生じたことから、中心性/異所性デポ(depots:脂肪貯蔵場所)(肝臓及び内臓)から末梢性/正所性デポ(皮下脂肪組織)への脂肪の移動によって引き起こされた可能性があり、おそらくは異所性脂肪貯蔵に関係する任意の同時罹患率が低減する22、23。
【0081】
治療時の中心性脂肪過剰、特に肝臓脂肪のより大きな減少は、より多くの治療後排卵をもたらした。このため、PCOSにおける希発-無排卵は、長い間中心性脂肪欠乏と関連付けられてきた一流のアスリートにおける希発-無排卵とは正反対であり得る24。「排卵のための適正体重」という考え25を、U字型曲線により肝-内臓脂肪の量(X軸上)と希発-無排卵の罹患率(Y軸上)との間の関係が表される「排卵のための肝-内臓脂肪の適正量」という考え7へと更新すべきときが来たようである。LH上昇、アンドロゲン過剰及び無排卵を有する殆どのPCOS女性は卵巣障害を有しないが、肝-内臓脂肪の個々の閾値を超えて誘発され、中心性肥満(fatness)を低減するフィードバック機構26及び高リスク妊娠を予防する防御機構27として進化的に保存された内分泌状態にある可能性がある。早期メトホルミン治療(年齢8歳~12歳)により思春期のPCOSを遅らせることは、肝臓脂肪及び内臓脂肪過剰の複合的低減にも関連していた28、29。このため、進化的推測及び個体発生的エビデンスは共に(concord)、PCOSが卵巣症候群ではなく疑似-卵巣中心性肥満症候群(sequence)(pcos)であると示唆している。
【0082】
本結果により体重、除脂肪量、総体脂肪量及び腹部皮下脂肪量とは無関係な肝臓脂肪と排卵機能との間の関連性が明らかになった(
図1)。本研究結果が主としてPCOSを有する体重が安定した非肥満青少年において得られたにも関わらず、これにより、より健康的なライフスタイル及び/又は体重減少が、PCOSを有する肥満青少年及び女性において自然排卵機能(又は排卵誘発への反応性)を改善するのに同様に効果的であることの理由を説明することができる。肝臓は、より健康的なライフスタイル及び/又は体重減少の開始後に脂肪が減る最初のデポであるようであり、内臓が次のデポであるようである
30、31。実際に、低カロリーダイエット中の肥満者において、およそ10%の体重減少はおよそ60%の肝脂肪、20%の内臓脂肪及び僅か10%の皮下脂肪の低減を伴う
31。
【0083】
PCOSの表現型における肝-内臓脂肪の重要な役割の認識により、PCOSを有する非肥満青少年がやや低い出生体重を有する傾向があることの理由が説明される7、9。より低い出生体重を有する少女は、(BMIとは無関係に)より多くの肝臓脂肪及び内臓脂肪を有する傾向があり、この傾向は幼少期から見られる32、33。
【0084】
結論として、SPIOMETは、PCOSを有する思春期の少女の治療後排卵率をOCよりも正常化する。異所性脂肪、特に肝臓脂肪の早期低減に対する再焦点化PCOS治療は、その後の希発-無排卵性低受胎の一部を予防する可能性がある。
【0085】
実施例2:医薬錠剤
医薬錠剤の製造のために、活性物質スピロノラクトン、メトホルミン及びピオグリタゾンをポリビニルピロリドンと混合する。低剪断湿式造粒を行い、顆粒を乾燥させ、摩砕した。残りの賦形剤(クロスカルメロースナトリウム、微結晶性セルロース、ステアリン酸マグネシウム及びポリビニルアルコール)を摩砕した顆粒とブレンドし、潤滑剤ポリビニルアルコールと完全に混合した。ブレンドを最後に以下の組成を有する錠剤へと圧縮した。
【0086】
得られる錠剤コアは以下のものを含有していた。
【0087】
【0088】
一実施形態では、錠剤をフィルムコーティングによりコーティングした。
【0089】
【表2】
【表3】
【表4-1】
【表4-2】
【表5-1】
【表5-2】
参考文献