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特許6999905注意力低下状態の推定のためのシステム、方法、プログラム、及びプログラムを記憶した記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】注意力低下状態の推定のためのシステム、方法、プログラム、及びプログラムを記憶した記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20220112BHJP
   A61B 3/113 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
A61B5/16 130
A61B5/16 200
A61B3/113
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018552946
(86)(22)【出願日】2017-11-22
(86)【国際出願番号】 JP2017042081
(87)【国際公開番号】W WO2018097204
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-11-20
(31)【優先権主張番号】P 2016227148
(32)【優先日】2016-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(73)【特許権者】
【識別番号】510147776
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100151987
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 信行
(72)【発明者】
【氏名】阿部 高志
(72)【発明者】
【氏名】古川 聡
(72)【発明者】
【氏名】緒方 克彦
(72)【発明者】
【氏名】三島 和夫
(72)【発明者】
【氏名】北村 真吾
【審査官】九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-224637(JP,A)
【文献】阿部高志,眠気検出装置の現状と展望,睡眠医療,日本,2015年,睡眠医療Vol.9 No.1,55-61
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/16
A61B 3/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定し、眼球運動・眼瞼活動データを得る眼球運動・眼瞼活動測定部と、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間、閉眼区間、瞬目区間、及び群発区間を判定する区間判定部と、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記開眼区間及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度の標準偏差、前記群発区間の各々の、持続時間が所定時間未満の閉眼の出現割合である短時間閉眼出現割合、及び前記群発区間の各々の、持続時間が前記所定時間以上の閉眼の出現割合である長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つを算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部と、
前記開瞼度の標準偏差、前記短時間閉眼出現割合、及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ群発区間である開眼・群発区間に対する注意力評価、
前記開瞼度の標準偏差、前記短時間閉眼出現割合、及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ群発区間である閉眼・群発区間に対する注意力評価、
前記短時間閉眼出現割合及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、瞬目区間且つ群発区間である瞬目・群発区間に対する注意力評価、
前記開瞼度の標準偏差少なくとも基づく、開眼区間且つ非群発区間である開眼・非群発区間に対する注意力評価、及び
前記開瞼度の標準偏差に少なくとも基づく、閉眼区間且つ非群発区間である閉眼・非群発区間に対する注意力評価、
のうちの少なくとも1つを求める注意力評価部と、
を備える注意力低下状態推定システム。
【請求項2】
前記眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部は、更に、前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼/閉眼/瞬目のいずれか、開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、閉眼区間が群発区間に含まれるか、マイクロサッカード頻度、開眼区間持続時間、開瞼度平均値、瞬目頻度、閉瞼時の相対速度の逆数、開瞼時の相対速度の逆数、瞬目持続時間、瞬目中の閉眼時間、瞬目の出現割合、及び閉眼区間持続時間のうちの1つを算出し、
前記注意力評価部は、
前記開瞼度の標準偏差、前記短時間閉眼出現割合、及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つ、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、前記マイクロサッカード頻度、前記開眼区間持続時間、前記開瞼度平均値、前記瞬目頻度、前記閉瞼時の相対速度の逆数、前記開瞼時の相対速度の逆数、前記瞬目持続時間、前記瞬目中の閉眼時間、及び前記瞬目の出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ群発区間である開眼・群発区間に対する注意力評価、
前記開瞼度の標準偏差、前記短時間閉眼出現割合、及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つ、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記閉眼区間が群発区間に含まれるか、前記閉眼区間持続時間、前記開瞼度平均値、前記瞬目頻度、前記閉瞼時の相対速度の逆数、前記開瞼時の相対速度の逆数、前記瞬目持続時間、前記瞬目中の閉眼時間、及び前記瞬目の出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ群発区間である閉眼・群発区間に対する注意力評価、
前記短時間閉眼出現割合及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つ、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、前記瞬目頻度、前記閉瞼時の相対速度の逆数、前記開瞼時の相対速度の逆数、前記瞬目持続時間、瞬目中の閉眼時間、及び前記瞬目の出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、瞬目区間且つ群発区間である瞬目・群発区間に対する注意力評価、
前記開瞼度の標準偏差、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、前記マイクロサッカード頻度、前記開眼区間持続時間、及び前記開瞼度平均値のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ非群発区間である開眼・非群発区間に対する注意力評価、
前記開瞼度の標準偏差、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記閉眼区間持続時間、及び前記開瞼度平均値のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ非群発区間である閉眼・非群発区間に対する注意力評価、
前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、及び前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるかのうちの少なくとも1つに基づく、瞬目区間且つ非群発区間である瞬目・非群発区間に対する注意力評価、
のうちの少なくとも1つを求める請求項1に記載の注意力低下状態推定システム。
【請求項3】
前記注意力評価は、ナイーブベイズ推定により得られた、注意力低下レベルの各々の推定出現確率である請求項1又は2に記載の注意力低下状態推定システム。
【請求項4】
前記注意力評価は、前記開眼・群発区間,前記閉眼・群発区間,前記瞬目・群発区間、前記開眼・非群発区間、前記閉眼・非群発区間、前記瞬目・非群発区間の各区間ごとに算出された注意力低下レベルの各々の推定出現確率に基づいて算出された評価時間当たりの前記注意力低下レベルの各々の推定出現確率である請求項3に記載の注意力低下状態推定システム。
【請求項5】
前記ナイーブベイズ推定における最初の事前確率は、前記対象者自身の眼球運動・眼瞼活動データから得られた教師用データに基づいて算出されたものである請求項3又は4に記載の注意力低下状態推定システム。
【請求項6】
対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定することによって得られた眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間、閉眼区間、瞬目区間、及び群発区間を判定する区間判定ステップと、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記開眼区間の各々の前記開眼区間及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度の標準偏差、前記群発区間の各々の、持続時間が所定時間未満の閉眼の出現割合である短時間閉眼出現割合、及び前記群発区間の各々の、持続時間が前記所定時間以上の閉眼の出現割合である長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つを算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出ステップと、
前記開瞼度の標準偏差、前記短時間閉眼出現割合、及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ群発区間である開眼・群発区間に対する注意力評価、
前記開瞼度の標準偏差、前記短時間閉眼出現割合、及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ群発区間である閉眼・群発区間に対する注意力評価、
前記短時間閉眼出現割合及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、瞬目区間且つ群発区間である瞬目・群発区間に対する注意力評価、
前記開瞼度の標準偏差少なくとも基づく、開眼区間且つ非群発区間である開眼・非群発区間に対する注意力評価、及び
前記開瞼度の標準偏差に少なくとも基づく、閉眼区間且つ非群発区間である閉眼・非群発区間に対する注意力評価、
のうちの少なくとも1つを算出する注意力評価算出ステップと、
を含むコンピュータにより実行される注意力低下状態推定方法。
【請求項7】
前記眼球運動・眼瞼活動関連情報算出ステップは、更に、前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼/閉眼/瞬目のいずれか、開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、閉眼区間が群発区間に含まれるか、マイクロサッカード頻度、開眼区間持続時間、開瞼度平均値、瞬目頻度、閉瞼時の相対速度の逆数、開瞼時の相対速度の逆数、瞬目持続時間、瞬目中の閉眼時間、瞬目の出現割合、及び閉眼区間持続時間のうちの1つを算出し、
前記注意力評価算出ステップは、
前記開瞼度の標準偏差、前記短時間閉眼出現割合、及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つ、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、前記マイクロサッカード頻度、前記開眼区間持続時間、前記開瞼度平均値、前記瞬目頻度、前記閉瞼時の相対速度の逆数、前記開瞼時の相対速度の逆数、前記瞬目持続時間、前記瞬目中の閉眼時間、及び前記瞬目の出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ群発区間である開眼・群発区間に対する注意力評価、
前記開瞼度の標準偏差、前記短時間閉眼出現割合、及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つ、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記閉眼区間が群発区間に含まれるか、前記閉眼区間持続時間、前記開瞼度平均値、前記瞬目頻度、前記閉瞼時の相対速度の逆数、前記開瞼時の相対速度の逆数、前記瞬目持続時間、前記瞬目中の閉眼時間、及び前記瞬目の出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ群発区間である閉眼・群発区間に対する注意力評価、
前記短時間閉眼出現割合及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つ、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、前記瞬目頻度、前記閉瞼時の相対速度の逆数、前記開瞼時の相対速度の逆数、前記瞬目持続時間、瞬目中の閉眼時間、及び前記瞬目の出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、瞬目区間且つ群発区間である瞬目・群発区間に対する注意力評価、
前記開瞼度の標準偏差、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、前記マイクロサッカード頻度、前記開眼区間持続時間、及び前記開瞼度平均値のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ非群発区間である開眼・非群発区間に対する注意力評価、
前記開瞼度の標準偏差、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記閉眼区間持続時間、及び前記開瞼度平均値のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ非群発区間である閉眼・非群発区間に対する注意力評価、
前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、及び前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるかのうちの少なくとも1つに基づく、瞬目区間且つ非群発区間である瞬目・非群発区間に対する注意力評価、
のうちの少なくとも1つを求める請求項6に記載の注意力低下状態推定方法。
【請求項8】
前記注意力評価は、ナイーブベイズ推定により得られた、注意力低下レベルの各々の推定出現確率である請求項6又は7に記載の注意力低下状態推定方法。
【請求項9】
前記注意力評価は、前記開眼・群発区間,前記閉眼・群発区間,前記瞬目・群発区間、前記開眼・非群発区間、前記閉眼・非群発区間、前記瞬目・非群発区間の各区間ごとに算出された注意力低下レベルの各々の推定出現確率に基づいて算出された評価時間当たりの前記注意力低下レベルの各々の推定出現確率である請求項8に記載の注意力低下状態推定方法。
【請求項10】
前記ナイーブベイズ推定における最初の事前確率は、前記対象者自身の眼球運動・眼瞼活動データから得られた教師用データに基づいて算出されたものである請求項8又は9に記載の注意力低下状態推定方法。
【請求項11】
対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定し、眼球運動・眼瞼活動データを得る眼球運動・眼瞼活動測定部と、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間、閉眼区間、瞬目区間、及び群発区間を判定する区間判定部と、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記開眼区間の各々のマイクロサッカード割合、前記開眼区間の各々のサッカード相対速度、前記開眼区間及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度の標準偏差、前記開眼区間の及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度平均値、前記群発区間の各々の瞬目持続時間のうちの少なくとも1つを算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部と、
前記マイクロサッカード割合、前記サッカード相対速度、前記開瞼度の標準偏差、前記開瞼度平均値、及び前記瞬目持続時間のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ群発区間である開眼・群発区間に対する注意力評価、
前記開瞼度の標準偏差、前記開瞼度平均値、及び前記瞬目持続時間のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ群発区間である閉眼・群発区間に対する注意力評価、
前記瞬目持続時間に少なくとも基づく、瞬目区間且つ群発区間である瞬目・群発区間に対する注意力評価、
前記マイクロサッカード割合、前記サッカード相対速度、前記開瞼度の標準偏差、及び前記開瞼度平均値のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ非群発区間である開眼・非群発区間に対する注意力評価、及び
前記開瞼度の標準偏差、及び前記開瞼度平均値のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ非群発区間である閉眼・非群発区間に対する注意力評価、
のうちの少なくとも1つを求める注意力評価部と、
を備え、
前記注意力評価は、3つ以上の注意力低下レベルのいずれであるかの評価である注意力低下状態推定システム。
【請求項12】
対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定することによって得られた眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間、閉眼区間、瞬目区間、及び群発区間を判定するステップと、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記開眼区間の各々のマイクロサッカード割合、前記開眼区間の各々のサッカード相対速度、前記開眼区間及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度の標準偏差、前記開眼区間の及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度平均値、前記群発区間の各々の瞬目持続時間のうちの少なくとも1つを算出するステップと、
前記マイクロサッカード割合、前記サッカード相対速度、前記開瞼度の標準偏差、前記開瞼度平均値、及び前記瞬目持続時間のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ群発区間である開眼・群発区間に対する注意力評価、
前記開瞼度の標準偏差、前記開瞼度平均値、及び前記瞬目持続時間のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ群発区間である閉眼・群発区間に対する注意力評価、
前記瞬目持続時間に少なくとも基づく、瞬目区間且つ群発区間である瞬目・群発区間に対する注意力評価、
前記マイクロサッカード割合、前記サッカード相対速度、前記開瞼度の標準偏差、及び前記開瞼度平均値のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ非群発区間である開眼・非群発区間に対する注意力評価、及び
前記開瞼度の標準偏差、及び前記開瞼度平均値のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ非群発区間である閉眼・非群発区間に対する注意力評価、
のうちの少なくとも1つを求めるステップと、
を含み、
前記注意力評価は、3つ以上の注意力低下レベルのいずれであるかの評価である注意力低下状態推定方法。
【請求項13】
請求項10、12のいずれか1項に記載の注意力低下状態推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、注意力低下の状態を推定するための装置、方法、プログラム、及びプログラムを記憶した記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
眠気や疲労等による注意力低下を評価する様々な指標や方法が提案されている。
【0003】
精神運動ヴィジランス課題(Psychomotor Vigilance Test:PVT)は、刺激に対する応答性(反応時間)を測定する (下記非特許文献1参照)。このPVTは軽度から重度の注意力低下を測ることができる。PVTによって測定した注意力低下は睡眠不足や生体リズムの変化に対して鋭敏に反応することが厳密に統制された実験によって示されており、眠気や疲労による注意力低下を測定するためのゴールドスタンダードとして広く用いられている。PVTについては、時間を短縮した方法が開発されている。PVT-A(Adaptive-Duration Version of the PVT)(下記非特許文献2参照)とPVT-B(下記非特許文献3参照)はPVTに必要となる10分間(標準的に用いられる実施時間)の検査時間をそれぞれ約6.5分と3分に短縮している。
【0004】
また、目や瞼の動き、心拍に着目した方法が考案されている。このような方法として、瞼の開閉時間を利用したPERCLOS(Percent of Eyelid Closure:単位時間当たりの閉眼時間の割合)が特に知られている(下記非特許文献4参照)。PERCLOSは、居眠り検知技術として既に実用化されている。この他にも目の微細な運動(固視微動;マイクロサッカード)を用いて注意力低下を推定する方法が提案されている(下記特許文献1参照)。下記特許文献3に記載の方法は、視線が対象物を見ているにもかかわらず、対象物に注意を向けていないという状態を推定する。また、まばたきに関する様々なパラメーターが眠気と関係して変化することが知られている。まばたき回数の増加や減少、まばたきの所要時間の延長、瞼が閉じるフェーズと開くフェーズの速度の低下、まばたき中の目が閉じている時間の増加、眼球運動の速度が眠気と関係していることが知られている。
【0005】
また、目や瞼の動きに関する複数のパラメーターを用いて注意を評価する方法が提案されている(下記特許文献2参照)。この方法はJohns Drowsiness Scale(JDS)と呼ばれている。JDSは眠気を0から10の11段階で評価する。JDSと反応時間が相関関係を有することも示されている。
【0006】
このように、開眼区間の持続時間、開瞼度、瞬目頻度、閉瞼時の相対速度の逆数、開瞼時の相対速度の逆数、瞬目持続時間、瞬目中の閉眼時間、瞬目の出現割合、視線が対象物を見ているにもかかわらず対象物に注意を向けていないことによるマイクロサッカードの頻度、サッカード相対速度等が注意力低下を評価する指標として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-116376号公報
【文献】特開2008-531142号公報
【0008】
【文献】Dinges DF, Powell JW. Microcomputer analyses of performance on a portable, simple visual RT task during sustained operations. Beh Res Meth Instr Comp. 1985;17:652-5.
【文献】Basner M, Dinges DF. An Adaptive-Duration Version of the PVT Accurately Tracks Changes in Psychomotor Vigilance Induced by Sleep Restriction. Sleep. 2012;35:193-202.
【文献】Basner M, Mollicone D, Dinges DF. Validity and Sensitivity of a Brief Psychomotor Vigilance Test (PVT-B) to Total and Partial Sleep Deprivation. Acta Astronaut. 2011;69:949-59.
【文献】Wierwille WW, Ellsworth LA, Wreggit SS, Fairbanks RJ, Kim CL. Research on vehicle-based driver status/performance monitoring: development, validation, and refinement of algorithms for detection of driver drowsiness. In: National Highway Traffic Safety Administration Final Report; 1994.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、PVTは、課題の実施中は測定中に他の作業を行えないという問題と、時間がかかるため(各回3~20分間)、測定回数が限られるという問題があり、注意力を連続して評価できない。
【0010】
また、PERCLOSは、居眠りが生じる程の極度の注意力低下しか検出できない。一方、特許文献3に記載の方法は、比較的軽度の注意力低下を評価できるが、居眠りが生じる程の強い眠気を評価できない。まばたきに関する様々なパラメーターを用いる方法も、様々なレベルの注意力低下を測ることができない。脳波を用いて注意を測る方法も存在するが、実生活で脳波を装着することは容易ではない。
【0011】
また、JDSは、反応時間と相関関係を有することが示されているが、JDSの各段階と反応時間(注意力の指標)とは単なる相関関係が求められているだけであり、多くの知見を有するPVTとJDSの各段階との対応付けが行えない。したがって、JDSの各段階を先行研究の知見と対応づけて説明することができない。
【0012】
また、注意力低下を評価するための指標は、さまざまなものが知られているが、新たな指標も望まれている。
【0013】
そこで、本発明は、注意力低下を評価するための新たな指標を提供すること目的の1つとする。
【0014】
また、本発明は、様々なレベルの注意力低下を簡便に連続測定でき、かつ多くの先行研究が蓄積されたPVTの知見への参照が容易にできる注意力低下状態推定システム及び方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の1つの態様は、対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定し、眼球運動・眼瞼活動データを得る眼球運動・眼瞼活動測定部と、前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間、閉眼区間、瞬目区間、及び群発区間を判定する区間判定部と、前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記開眼区間の各々のマイクロサッカード突度、前記開眼区間及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度の標準偏差、前記群発区間の各々の、持続時間が所定時間未満の閉眼の出現割合である短時間閉眼出現割合、及び前記群発区間の各々の、持続時間が前記所定時間以上の閉眼の出現割合である長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つを算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部と、前記マイクロサッカード突度、前記開瞼度の標準偏差、前記短時間閉眼出現割合、及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ群発区間である開眼・群発区間に対する注意力評価、前記開瞼度の標準偏差、前記短時間閉眼出現割合、及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ群発区間である閉眼・群発区間に対する注意力評価、前記短時間閉眼出現割合及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、瞬目区間且つ群発区間である瞬目・群発区間に対する注意力評価、前記マイクロサッカード突度及び前記開瞼度の標準偏差のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ非群発区間である開眼・非群発区間に対する注意力評価、及び前記開瞼度の標準偏差に少なくとも基づく、閉眼区間且つ非群発区間である閉眼・非群発区間に対する注意力評価、のうちの少なくとも1つを求める注意力評価部とを備える注意力低下状態推定システムを提供するものである。
【0016】
前記眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部は、更に、前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼/閉眼/瞬目のいずれか、開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、閉眼区間が群発区間に含まれるか、マイクロサッカード頻度、開眼区間持続時間、開瞼度平均値、瞬目頻度、閉瞼時の相対速度の逆数、開瞼時の相対速度の逆数、瞬目持続時間、瞬目中の閉眼時間、瞬目の出現割合、及び閉眼区間持続時間のうちの1つを算出し、前記注意力評価部は、前記マイクロサッカード突度、前記開瞼度の標準偏差、前記短時間閉眼出現割合、及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つ、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、前記マイクロサッカード頻度、前記開眼区間持続時間、前記開瞼度平均値、前記瞬目頻度、前記閉瞼時の相対速度の逆数、前記開瞼時の相対速度の逆数、前記瞬目持続時間、前記瞬目中の閉眼時間、及び前記瞬目の出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ群発区間である開眼・群発区間に対する注意力評価、前記開瞼度の標準偏差、前記短時間閉眼出現割合、及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つ、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記閉眼区間が群発区間に含まれるか、前記閉眼区間持続時間、前記開瞼度平均値、前記瞬目頻度、前記閉瞼時の相対速度の逆数、前記開瞼時の相対速度の逆数、前記瞬目持続時間、前記瞬目中の閉眼時間、及び前記瞬目の出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ群発区間である閉眼・群発区間に対する注意力評価、前記短時間閉眼出現割合及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つ、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、前記瞬目頻度、前記閉瞼時の相対速度の逆数、前記開瞼時の相対速度の逆数、前記瞬目持続時間、瞬目中の閉眼時間、及び前記瞬目の出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、瞬目区間且つ群発区間である瞬目・群発区間に対する注意力評価、前記マイクロサッカード突度、前記開瞼度の標準偏差、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、前記マイクロサッカード頻度、前記開眼区間持続時間、及び前記開瞼度平均値のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ非群発区間である開眼・非群発区間に対する注意力評価、前記開瞼度の標準偏差、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記閉眼区間持続時間、及び前記開瞼度平均値のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ非群発区間である閉眼・非群発区間に対する注意力評価、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、及び前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるかのうちの少なくとも1つに基づく、瞬目区間且つ非群発区間である瞬目・非群発区間に対する注意力評価、のうちの少なくとも1つを求めるものとすることができる。
【0017】
前記注意力評価は、ナイーブベイズ推定により得られた、注意力低下レベルの各々の推定出現確率であるものとすることができる。
【0018】
前記注意力評価は、前記開眼・群発区間、前記閉眼・群発区間、前記瞬目・群発区間、前記開眼・非群発区間、前記閉眼・非群発区間、前記瞬目・非群発区間の各区間ごとに算出された注意力低下レベルの各々の推定出現確率に基づいて算出された評価時間当たりの前記注意力低下レベルの各々の推定出現確率であるものとすることができる。
【0019】
前記ナイーブベイズ推定における最初の事前確率は、前記対象者自身の眼球運動・眼瞼活動データから得られた教師用データに基づいて算出されたものであるものとすることができる。
【0020】
本発明の1つの態様は、対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定し、眼球運動・眼瞼活動データを得る眼球運動・眼瞼活動測定部と、前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間を判定する区間判定部と、前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記開眼区間の各々のマイクロサッカード突度を算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部と、前記開眼区間に対して、前記マイクロサッカード突度に少なくとも基づいて、注意力評価を求める注意力評価部とを備える注意力低下状態推定システムを提供するものである。
【0021】
本発明の1つの態様は、対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定し、眼球運動・眼瞼活動データを得る眼球運動・眼瞼活動測定部と、前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間及び/又は閉眼区間を判定する区間判定部と、前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記開眼区間及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度の標準偏差を算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部と、前記開眼区間及び/又は前記閉眼区間に対して、前記開瞼度の標準偏差に少なくとも基づいて、注意力評価を求める注意力評価部とを備える注意力低下状態推定システムを提供するものである。
【0022】
本発明の1つの態様は、対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定し、眼球運動・眼瞼活動データを得る眼球運動・眼瞼活動測定部と、前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、群発区間を判定する区間判定部と、前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記群発区間の各々の、持続時間が所定時間未満の閉眼の出現割合である短時間閉眼出現割合、及び/又は持続時間が前記所定時間以上の閉眼の出現割合である短時間閉眼・長時間閉眼出現割合を算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部と、前記群発区間に対して、前記短時間閉眼出現割合及び/又は前記長時間閉眼出現割合に少なくとも基づいて、注意力評価を求める注意力評価部とを備える注意力低下状態推定システムを提供するものである。
【0023】
本発明の1つの態様は、対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定することによって得られた眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間、閉眼区間、瞬目区間、及び群発区間を判定する区間判定ステップと、前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記開眼区間の各々のマイクロサッカード突度、前記開眼区間及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度の標準偏差、前記群発区間の各々の、持続時間が所定時間未満の閉眼の出現割合である短時間閉眼出現割合、及び前記群発区間の各々の、持続時間が前記所定時間以上の閉眼の出現割合である長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つを算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出ステップと、前記マイクロサッカード突度、前記開瞼度の標準偏差、前記短時間閉眼出現割合、及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ群発区間である開眼・群発区間に対する注意力評価、前記開瞼度の標準偏差、前記短時間閉眼出現割合、及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ群発区間である閉眼・群発区間に対する注意力評価、前記短時間閉眼出現割合及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、瞬目区間且つ群発区間である瞬目・群発区間に対する注意力評価、前記マイクロサッカード突度及び前記開瞼度の標準偏差のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ非群発区間である開眼・非群発区間に対する注意力評価、及び前記開瞼度の標準偏差に少なくとも基づく、閉眼区間且つ非群発区間である閉眼・非群発区間に対する注意力評価、のうちの少なくとも1つを算出する注意力評価算出ステップとを含む注意力低下状態推定方法を提供するものである。
【0024】
本発明の1つの態様は、対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定することによって得られた眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間を判定する区間判定ステップと、前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記開眼区間の各々のマイクロサッカード突度を算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出ステップと、前記開眼区間に対して、前記マイクロサッカード突度に少なくとも基づいて、注意力評価を求める注意力評価ステップとを備える注意力低下状態推定方法を提供するものである。
【0025】
本発明の1つの態様は、対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定することによって得られた眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間及び/又は閉眼区間を判定する区間判定ステップと、前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記開眼区間及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度の標準偏差を算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出ステップと、前記開眼区間及び/又は前記閉眼区間に対して、前記開瞼度の標準偏差に少なくとも基づいて、注意力評価を求める注意力評価ステップとを備える注意力低下状態推定方法を提供するものである。
【0026】
本発明の1つの態様は、対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定することによって得られた眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、群発区間を判定する区間判定ステップと、前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記群発区間の各々の、持続時間が所定時間未満の閉眼の出現割合である短時間閉眼出現割合及び/又は持続時間が前記所定時間以上の閉眼の出現割合である短時間閉眼・長時間閉眼出現割合を算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出ステップと、前記群発区間に対して、前記短時間閉眼出現割合及び/又は前記長時間閉眼出現割合に少なくとも基づいて、注意力評価を求める注意力評価ステップとを備える注意力低下状態推定方法を提供するものである。
【0027】
本発明の1つの態様は、前記注意力低下状態推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供するものである。
【0028】
本発明の1つの態様は、前記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供するものである。
【0029】
本発明の1つの態様は、対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定し、眼球運動・眼瞼活動データを得る眼球運動・眼瞼活動測定部と、前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間、閉眼区間、瞬目区間、及び群発区間を判定する区間判定部と、前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記開眼区間の各々のマイクロサッカード割合、前記開眼区間の各々のサッカード相対速度、前記開眼区間及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度の標準偏差、前記開眼区間の及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度平均値、前記群発区間の各々の瞬目持続時間のうちの少なくとも1つを算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部と、前記マイクロサッカード割合、前記サッカード相対速度、前記開瞼度の標準偏差、前記開瞼度平均値、及び前記瞬目持続時間のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ群発区間である開眼・群発区間に対する注意力評価、前記開瞼度の標準偏差、前記開瞼度平均値、及び前記瞬目持続時間のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ群発区間である閉眼・群発区間に対する注意力評価、前記瞬目持続時間に少なくとも基づく、瞬目区間且つ群発区間である瞬目・群発区間に対する注意力評価、前記マイクロサッカード割合、前記サッカード相対速度、前記開瞼度の標準偏差、及び前記開瞼度平均値のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ非群発区間である開眼・非群発区間に対する注意力評価、及び前記開瞼度の標準偏差、及び前記開瞼度平均値のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ非群発区間である閉眼・非群発区間に対する注意力評価、のうちの少なくとも1つを求める注意力評価部とを備え、前記注意力評価は、3つ以上の注意力低下レベルのいずれであるかの評価である注意力低下状態推定システムを提供するものである。
【発明の効果】
【0030】
新規指標を用いた本発明によれば、注意力低下状態を効率的に推定することができる。
【0031】
また、上記構成を有する本発明によれば、様々なレベルの注意力低下を簡便に連続測定でき、かつ多くの先行研究が蓄積されたPVTの知見への参照が容易にできる注意力低下状態推定システム及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】開眼区間、閉眼区間、瞬目区間、群発区間の例を示す図である。
図2】本発明の新たな注意力指標の注意力低下レベルごとの比較結果を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る注意力低下状態推定システムの全体構成を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る注意力低下状態推定システムのハードウエア構成の例を示す図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る注意力低下状態推定システムの注意力低下状態推定処理の例のフローチャートである。
図6】PVTにより求めた20分当たりの各注意力低下レベルの出現確率、本発明の第1の実施形態の注意力低下状態推定方法により求めた20分当たりの各注意力低下レベルの推定出現確率、及びそれらの相関を示す図である。
図7】軽度以上の注意力低下及び重度の注意力低下についての、PVTにより求めた20分当たりの出現確率、本発明の第1の実施形態の注意力低下状態推定方法により求めた20分当たりの推定出現確率、及び20分当たりのPERCLOSの値を示す図である。
図8】軽度以上の注意力低下及び重度の注意力低下についての、評価単位時間ごとに求めた、PVTにより求めた出現確率と、本発明の第1の実施形態の注意力低下状態推定方法により求めた推定出現確率及びPERCLOSの値との相関を示す図である。
図9】PVTと、本発明の第1の実施形態の注意力低下状態推定方法及びPERCLOSの関係性の散布図と線形回帰直線を示す図である。
図10】マイクロサッカード割合、サッカード相対速度、開瞼度の平均値、開瞼度の標準偏差、瞬目持続時間を、注意力低下レベル(正常、軽度、重度)ごとに比較した結果を示す図である。
図11】PVTにより求めた20分当たりの各注意力低下レベルの出現確率、本発明の第2の実施形態の注意力低下状態推定方法により求めた20分当たりの各注意力低下レベルの推定出現確率、それらの相関係数、及び20分当たりのPERCLOSの値を示す図である。
図12】注意力低下レベルの各々についての、評価単位時間ごとに求めた、PVTにより求めた出現確率と、本発明の第2の実施形態のテイラーメイド型の注意力低下状態推定方法により求めた推定出現確率及びPERCLOSの値との相関係数を示す図である。
図13】注意力低下レベルの各々についての、評価単位時間ごとに求めた、PVTにより求めた出現確率と、本発明の第2の実施形態のレディメイド型の注意力低下状態推定方法により求めた推定出現確率及びPERCLOSの値との相関係数を示す図である。
図14】PVTと、本発明の第2の実施形態のテイラーメイド型の注意力低下状態推定方法及びPERCLOSの関係性の散布図と線形回帰直線を示す図である。
図15】PVTと、本発明の第2の実施形態のレディメイド型の注意力低下状態推定方法及びPERCLOSの関係性の散布図と線形回帰直線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0034】
(第1の実施形態)
本発明者らは、注意力低下を評価するための新たな指標として、眠気から生じるマイクロサッカードの頻度、マイクロサッカード突度、開瞼度の標準偏差、持続時間が所定時間未満の閉眼の出現割合、持続時間が所定時間以上の閉眼の出現割合を見出した。これらの新たな指標とPVTにより測定した注意力との関連を示すために本発明者らが実施した実験内容について説明する。
【0035】
被験者として、健康で睡眠障害がない成人男性8名(年齢20-47歳、36.6±10.2[SD]歳)を選定した。
【0036】
実験前の被験者の睡眠時間及び睡眠覚醒リズムを統制するため、実験の1週間前から実験当日まで、睡眠日誌及びアクチグラフを用いて、自宅での睡眠・覚醒パタンを記録した。21:00~1:00就床、6:00~9:00の起床、7時間以上の睡眠時間をとるように被験者に教示した。
【0037】
実験は、4名を1セットとして実施した。実験当日の起床後から実験室来室までカフェイン摂取や過度の運動を控えるよう教示した。被験者は夜20時に実験室に来室した。実験室に到着後、1週間の睡眠覚醒パタン及び日中の行動を確認し、実験者の指定通りのパタンを示した者のみが実験に参加した。
【0038】
被験者は、最初の1晩は午後10時から10時間の睡眠をとった。その後午前8時から38時間連続で覚醒し、後述のようにPVTを行った。3晩目に午後10時から10時間の回復睡眠をとった後、午前8時から午前12時までPVTを再び行い実験を終了した。覚醒中は、2時間に1回、200kcalの食事を摂取した。水(ミネラルウォーター)は自由摂取とした。各セットの4名中2名は上記スケジュールを1時間ずらして実施した。
【0039】
被験者は、覚醒中2時間に1回PVTを行い、被験者の眼球や眼瞼の動きを測定し、各種の眼球運動・眼瞼活動データを得た。
【0040】
ここで、被験者は非特許文献3及びPVTの実施方法を詳細に記述した文献 (Basner, M.,
& Dinges, D. F. Maximizing sensitivity of the psychomotor vigilance test (PVT) to sleep loss. Sleep 2011, 34: 581-91.)に準拠したPVTを行った。被験者が行ったPVTは、パソコン画面上に2~10秒の範囲のランダムな時間間隔で表示されるミリ秒単位のカウンタが出現したら、できるだけ早くボタン押し反応を行うという課題である。ボタンが押されたところでカウンタが止まり、反応時間が1秒間フィードバックされる。ミリセカンド単位で増加するカウンタを長方形の枠の中に呈示した。刺激が出現していない時に生じた反応もしくは、反応時間が100ms未満の反応が生じた場合は、フィードバックとして「FS」(False Startの略)を1秒間呈示した。無反応のまま30,000ms以上経過した場合をタイムアウトとした。タイムアウトが生じた場合、「OVERRUN」を1秒間フィードバックした。この時に参加者に、音刺激を呈示した。本実験では被験者は2時間に1回、PVTを20分間行った。
【0041】
また、被験者の眼球運動・眼瞼活動データの取得は、被験者にアイカメラ(ナックイメージテクノロジー製、アイマークレコーダー、EMR-9)と脳波計(日本光電製、Neurofaxデジタル脳波計システム、EEG-1200)を装着して被験者の眼球や眼瞼の動きを測定することによって行った。
【0042】
眼球運動データを取得するために、アイカメラにより、X軸周り及びY軸周りそれぞれの目の眼球回転角度を記録した。目の位置座標を240.21Hzでサンプリングし、取得した目のX軸周り及びY軸周りの眼球の回転角度Xi,Yiに対して、60Hzの高域遮断フィルタをかけたあと、ある時間iにおける速度Vi(°/秒)を次式により求めた。ここで、Tはサンプリング間隔(=1/240.21秒)、mは差分ポイント数(=1)である。
解析は、左目の眼球運動を対象として行った。(1)眼球運動発生に伴う速度波形の変化点(ある時点の速度がピーク速度25°/秒以下且つ、1つ前の時点の速度と同じか遅い点且つ、ピーク速度に最も近い点)から終了に伴う変化点(ある時点の速度が眼球運動の最大ピーク速度以下且つ、1つ後の時点の速度と同じか遅い点且つ、最大ピーク速度に最も近い点)までの眼球回転角度のベクトル(Xi,Yi)の大きさが0.1度以上、(2)眼球運動発生に伴う速度波形の変化点から終了に伴う変化点までの眼球回転角度Xi,Yiの大きさが共に0.1度以上、(3)眼球運動発生に伴う速度波形の変化点から終了に伴う変化点までの時間が10ms以上、(4)最大ピーク速度25°/秒以上1000°/秒未満、(5)眼球運動の発生に伴う速度波形の変化点から終了に伴う速度波形の変化点まで速度が両変化点の速度よりも遅くなっていない、の全ての条件を満たす眼球運動をサッカードとした。このうち、眼球回転角度のベクトル(Xi,Yi)の大きさが1度以下のサッカードをマイクロサッカードとした。
【0043】
また、アイカメラを用いて、眼瞼活動データの1つである開瞼度を取得した。開瞼度のデータを取得するために、アイカメラにより目の画像を30Hzで記録した。解析は眼球運動と同様に左目を対象として行った。左目の画像における上瞼から下瞼へ垂直におろした線の長さが最大となるピクセル値を100msごとに測定した。上瞼から下瞼までの距離の計測と同じ記録上での任意のある時点で、虹彩の直径のピクセル値を測定した。そして、上瞼から下瞼までの距離を虹彩の直径で除した値を開瞼度とした。後述のような目が閉じはじめてから開くまでの持続時間が500ms未満のまばたきが発生している区間に関しては、開瞼度を求めず瞬目区間とした。
【0044】
また、脳波計を用いて、左目の眼窩上下につけた電極から眼電位を取得し、眼電位から眼瞼活動データの1つである瞬目(まばたき)に関するデータを取得した。これは、目の画像から取得した開瞼度ではサンプリング周波数が遅いため、瞬目に関するデータを眼電位からも取得したものである。眼電図を200Hzのサンプリング周波数で計測し、左目眼窩上下に装着した2つの電極を双極導出することで眼電位を求めた。0.05Hzの低域遮断フィルタ及び30Hzの高域遮断フィルタを用いて眼電位の低周波成分及び高周波成分をカットした。眼電位の変化量(ある測定点に対して±5測定点[±25ms]間の眼電位振幅の差)が閾値(+20μV/50ms)と等しいか大きくなった時点を閉瞼相の開始点、閾値(+20μV/50ms)よりも等しいか小さくなった時点を閉瞼相の終了点、閾値(-20μV/50ms)と等しいか小さくなった時点を開瞼相の開始点、閾値(-20μV/50ms)と等しいか大きくなった時点を開瞼相の終了点とした。(1)閉瞼相の開始点、閉瞼相の終了点、開瞼相の開始点、開瞼相の終了点がこの順に並んでいること、(2)閉瞼相の終了点から開瞼相の開始点の間の変化量の絶対値が閉瞼相の終了点もしくは開瞼相の開始点の変化量の絶対値よりも大きくなっていないこと、(3)閉瞼相の開始点から閉瞼相の終了点まで変化量が閾値(+20μV/50ms)を下回っていないこと、(4)開瞼相の開始点から開瞼相の終了点までの変化量が閾値(-20μV/50ms)を上回っていないこと、(5)閉瞼相の振幅が開瞼相の振幅の半分と等しいか大きいこと、(6)開瞼相の振幅が閉瞼相の振幅の半分と等しいか大きいこと、(7)閉瞼相の開始点から開瞼相の終了点までの時間が50ms以上500ms未満であること、閉瞼相の振幅と開瞼相の振幅がともに80μVと等しいか大きいこと、をすべて満たす閉瞼相の開始点から開瞼相の終了点までの眼電位の変化を瞬目(まばたき)とした。
【0045】
得られた眼球運動・眼瞼活動データから、開眼区間、閉眼区間、瞬目区間、群発区間を判定した。具体的には、アイカメラにより記録された一連の左目の画像から判別される目が閉じ始めてから開くまでの持続時間が500ms未満のまばたきが発生している区間を瞬目区間とした。更に、まばたきが発生していない区間を閉眼区間と開眼区間に分類した。開瞼度が20%以上である状態を開眼状態とし、開眼状態の区間を開眼区間とした。また、開瞼度が20%未満の状態を閉眼状態とし、閉眼状態の区間を閉眼区間とした。
【0046】
開眼、閉眼、瞬目の状態分類に加えて、まばたきや閉眼が群発しているかどうかで状態を分類した。まばたき又は閉眼で挟まれた開眼区間の持続時間が1秒未満の場合、開眼前のまばたき又は閉眼の開始時点から、開眼後のまばたき又は閉眼の終了時点までを群発区間とした。群発区間が連続する場合は、それらを一連の群発区間とした。群発区間以外の区間を非群発区間とした。
【0047】
図1に、開眼区間、閉眼区間、瞬目区間、群発区間の例を示す。
【0048】
また、判定された区間の種類と得られた眼球運動・眼瞼活動データから以下の眼球運動・眼瞼活動関連情報を求めた。
【0049】
(1)開眼区間持続時間
開眼区間における開眼開始から終了までの時間を開眼区間持続時間とする。ここで、開瞼度が20%以上となる測定時点が連続している区間を開眼区間とする。開瞼度が20%以上となる最初の測定時点を開眼開始とし、瞬目区間又は閉眼区間(開瞼度が20%未満)となる測定時点の直前の測定時点を開眼終了とする。
【0050】
(2)マイクロサッカード頻度
上述のように、マイクロサッカードを眼球の回転角度のベクトルの大きさが1度以下のサッカードとする。開眼区間に出現したマイクロサッカードの個数を開眼区間の持続時間で除した値をマイクロサッカード頻度とする。ここで、ノイズによる眼球運動測定の不備が生じている区間を除外し、眼球運動が計測できている場合のみのマイクロサッカードの頻度を求めた。開眼区間に少なくとも1つ以上のサッカードが生じた区間をサッカード発生区間とした(図1参照)。
【0051】
(3)マイクロサッカード突度
マイクロサッカードにおける眼球運動の最大の回転角速度を、マイクロサッカードの持続時間(マイクロサッカードの開始に伴う加速度の最大点から終了に伴う加速度の最小点までの時間)で除した値をマイクロサッカードの突度とする。
【0052】
(4)開瞼度の平均値
各開眼区間及び各閉眼区間における各測定時点の開瞼度の平均値を、各開眼区間及び各閉眼区間における開瞼度の平均値とする。ここで、開瞼度は、上述のように、上瞼から下瞼までの距離を虹彩の直径で除した割合とする。本実験では、0.1秒ごとに開瞼度を算出し、その平均値を求めた。
【0053】
(5)開瞼度の標準偏差
各開眼区間及び各閉眼区間における各測定時点の開瞼度の標準偏差を、各開眼区間及び各閉眼区間における開瞼度の標準偏差とする。ここで、開瞼度は、上述のように、上瞼から下瞼までの距離を虹彩の直径で除した割合とする。本実験では、0.1秒ごとに開瞼度を算出し、その標準偏差を求めた。
【0054】
(6)瞬目頻度
各群発区間中に発生した瞬目の数を群発区間の持続時間で除した値を瞬目頻度とする。本実験では、瞬目の数は、上述の眼電位から判定した瞬目を数えた。
【0055】
(7)閉瞼時の相対速度の逆数
瞬目区間が含まれる群発区間において、まばたき中の瞼が閉じるフェーズを閉瞼時(相)とし、閉瞼振幅を閉瞼速度で除した値を閉瞼時の相対速度の逆数とする。ここで、眼電位の変化量(ある測定時点に対する±5測定時点[±25ms]間の眼電位振幅の差)が閾値(20μV/50ms)と等しいか超えた時点(閉瞼相開始点)から眼電位の変化量が閾値(20μV/50ms)と等しいかそれよりも小さくなった時点(閉瞼相終了点)までを瞼が閉じるフェーズ(閉瞼相)とする。また、瞬目中の眼電位の最大振幅から閉瞼相開始点の眼電位振幅を引いた値を閉瞼振幅とし、閉瞼相開始点から閉瞼相終了点までの最大速度(μV/50ms)を閉瞼速度とする。
【0056】
(8)開瞼時の相対速度の逆数
瞬目区間が含まれる群発区間において、まばたき中の瞼が開くフェーズを開瞼時(相)とし、開瞼振幅を開瞼速度で除した値を開瞼時の相対速度の逆数とする。ここで、眼電位の変化量(ある測定時点に対する±5測定時点[±25ms]間の眼電位振幅の差)が閾値(-20μV/50ms)と等しいか下回った時点(開瞼相開始点)から眼電位の変化量の絶対値(-20μV/50ms)が閾値と等しいかそれよりも大きくなった時点(開瞼相終了点)までを瞼が開くフェーズ(開瞼相)とする。また、瞬目中の眼電位の最大振幅から開瞼相終了点の眼電位振幅を引いた値を開瞼振幅とし、開瞼相開始点から開瞼相終了点までの最大速度(μV/50ms)を開瞼速度とする。
【0057】
(9)瞬目持続時間
瞬目区間が含まれる群発区間における、眼電位の振幅が閉瞼振幅の50%を超える時点から眼電位の振幅が閉瞼振幅の50%を下回る時点までの時間を瞬目持続時間とする。
【0058】
(10)瞬目中の閉眼時間
瞬目区間が含まれる群発区間における、瞬目中の目が閉じている時間を瞬目中の閉眼時間とする。ここで、閉瞼振幅の90%を基準として、眼電位の振幅がそれより大きい振幅に達している状態を瞬目中の閉眼とする。
【0059】
(11)瞬目の出現割合
瞬目区間が含まれる群発区間において、瞬目が発生している時間の累計時間を群発区間の持続時間で除した割合を瞬目の出現割合とする。本実験では、上述の瞬目区間の判定と同様にして、アイカメラにより記録された一連の左目の画像から判別される目が閉じ始めてから開くまでの持続時間が500ms未満のまばたきが発生している場合、瞬目が発生しているとした。これは、眼電位からは閉眼を判定することができず、閉眼は、上述のようにアイカメラにより記録された左目の画像に基づいて求められる開瞼度から判定することになるところ、同一の眼瞼活動について、サンプリング周波数や記録方法(電位の記録もしくは画像の記録)の違いによって、眼電位による瞬目の判定結果と、開瞼度による瞬目の判定結果が完全には一致しないことがあるため、眼電位からは瞬目と判定されるが、開瞼度からは後述の短時間閉眼と判定される場合が起こり得るためである。
【0060】
(12)持続時間が所定時間未満の閉眼の出現割合(短時間閉眼出現割合)
瞬目区間が含まれる群発区間において、群発区間の持続時間に占める所定時間未満の閉眼の総出現時間の割合を短時間閉眼時間出現割合とする。本実験では、所定時間を1秒とした。
【0061】
(13)持続時間が所定時間以上の閉眼の出現割合(長時間閉眼出現割合)
瞬目区間が含まれる群発区間において、群発区間の持続時間に占める所定時間以上の閉眼の総出現時間の割合を長時間閉眼出現割合とする。本実験では、所定時間を1秒とした。
【0062】
(14)閉眼区間持続時間
閉眼区間における閉眼開始から終了までの時間を閉眼区間持続時間とする。ここで、開眼区間持続時間と同様に、開瞼度が20%未満の測定点が連続している区間を閉眼区間とする。開瞼度が20%未満となる最初の点を閉眼開始とし、瞬目区間又は開眼区間(開瞼度が20%以上)となる測定時点の直前の測定時点を閉眼終了とする。
【0063】
上述のように、PVTにおける各試行に対する反応時間(Response Time: RT)は注意力低下度を示すものであるが、この反応時間を100ms≦RT<300ms、300ms≦RT<500ms、500ms≦RTの3つの注意力低下レベルに分け、それぞれ「正常」、「軽度」、「重度」と呼ぶ。ここで、RT<100ms又はカウンターが出現していない時の反応(False Start)の試行は出現回数が稀であるため除外した。
【0064】
PVTの各試行の反応が生じた時点の各眼球運動・眼瞼活動関連情報と、PVTで測定した注意力との関係性を、注意力低下レベル(正常、軽度、重度)ごとにPVTの各試行の反応が生じた時点の眼球運動・眼瞼活動を比較することにより求めた結果を表1に示す。また、眼球運動・眼瞼活動関連情報のうち、PVTの各試行の反応が生じた時点の眠気から生じるマイクロサッカードの頻度、マイクロサッカード突度、開瞼度の標準偏差、短時間閉眼出現割合、長時間閉眼出現割合を、注意力低下レベル(正常、軽度、重度)ごとに比較した結果を図2に示す。表1及び図2から、従来から知られている注意力指標である開眼区間の持続時間、開瞼度、瞬目頻度、閉瞼時の相対速度の逆数、開瞼時の相対速度の逆数、瞬目持続時間、瞬目中の閉眼時間、瞬目の出現割合に加えて、眠気から生じるマイクロサッカードの頻度、マイクロサッカード突度、開瞼度の標準偏差、短時間閉眼出現割合、長時間閉眼出現割合を注意力指標として用いることができることが分かる。
【0065】
【表1】
【0066】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る注意力低下状態推定システムの全体構成図である。
【0067】
図3に示されるように本実施形態に係る注意力低下状態推定システム1は、眼球運動・眼瞼活動測定部11、PVT実施部12、区間判定部13、眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部15、注意力評価部17、事前確率・尤度算出部18、記憶部19を備える。
【0068】
眼球運動・眼瞼活動測定部11は、カメラやセンサによって対象者の眼球や眼瞼の動きを測定し、各種の眼球運動及び眼瞼活動データを得る。
【0069】
PVT実施部12は、対象者に対してPVTを実施する。そして、PVTの試行に対する対象者の反応時間を測定し、記憶部19に記憶する。
【0070】
区間判定部13は、眼球運動・眼瞼活動測定部11により取得された眼球活動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間、閉眼区間、瞬目区間、群発区間を判定する。
【0071】
眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部15は、眼球運動・眼瞼活動測定部11により取得された眼球運動・眼瞼活動データ、及び区間判定部13により判定された区間の種類に基づいて、各種の眼球運動・眼瞼活動関連情報を算出する。
【0072】
具体的には、開眼/閉眼/瞬目のいずれか、閉眼区間が群発区間に含まれるか、開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、そして、開眼区間に対して開眼持続時間、マイクロサッカード頻度及びマイクロサッカード突度を、開眼区間及び閉眼区間に対して開瞼度の平均値及び開瞼度の標準偏差を、閉眼区間に対して閉眼持続時間を、群発区間に対して瞬目頻度、閉瞼時の相対速度の逆数、開瞼時の相対速度の逆数、瞬目持続時間、瞬目中の閉眼時間、瞬目の出現割合、短時間閉眼出現割合及び長時間閉眼出現割合を算出する。
【0073】
注意力評価部17は、眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部15により算出された各種の眼球運動・眼瞼活動関連情報に基づいて、注意力評価を算出する。本実施形態においては、ナイーブベイズ推定により、注意力低下レベルの各々の推定出現確率や評価時間当たりの各注意力低下レベルの推定出現確率を算出する。
【0074】
事前確率・尤度算出部18は、注意力評価部17により行われるナイーブベイズ推定における最初の事前確率と、眼球運動・眼瞼活動関連情報についての尤度及び尤度を算出するための確率密度関数を算出し、記憶部19に記憶する。
【0075】
記憶部19は、各種のデータを記憶する。
【0076】
図4は、本発明の1つの実施形態に係る注意力低下状態推定システム1のハードウエア構成の例を示す図である。注意力低下状態推定システム1は、CPU10a、RAM10b、ROM10c、外部メモリ10d、入力部10e、出力部10f、通信部10gを含む。RAM10b、ROM10c、外部メモリ10d、入力部10e、出力部10f、通信部10gは、システムバス10hを介して、CPU10aに接続されている。
【0077】
図4に示される注意力低下状態推定システムの各部は、ROM10cや外部メモリ10dに記憶された各種プログラムが、CPU10a、RAM10b、ROM10c、外部メモリ10d、入力部10e、出力部10f、通信部10g等を資源として使用することで実現される。
【0078】
以上のシステム構成を前提に、本発明の一実施形態に係る注意力低下状態推定システムの注意力低下状態推定処理の例を図1、3~5を参照して、以下に説明する。図5は、本発明の1つの実施形態に係る注意力低下状態推定システムの注意力低下状態推定処理の例のフローチャートである。
【0079】
[I]教師用データ取得フェーズ
本実施形態では、ナイーブベイズ推定を用いる。そのため、ナイーブベイズ推定に必要な事前確率と尤度を与えるための教師用データをまず取得する。ここで、ベイズ推定は、あるデータDの原因Hiについて成立する下記の(式1)で表されるベイズの定理に基づいて、事前確率P(Hi)、尤度P(D|Hi)から事後確率P(Hi|D)を求めるものである。
ナイーブベイズ推定は、原因Hiが互いに独立であると仮定し、得られた事後確率を事前確率として、別のデータについての事後確率を求めることを順に行い(ベイズ更新)、原因Hiの確率を求める手法である。以下、教師用データ取得フェーズにおける処理を説明する。
【0080】
眼球運動・眼瞼活動測定部11が、カメラやセンサによって対象者の眼球や眼瞼の動きを測定し、各種の眼球運動及び眼瞼活動データを得る(S101)。
【0081】
PVT実施部12が、対象者に対してPVTを実施し、PVTの試行に対する対象者の反応時間を測定し、記憶部19に記憶する(S102)。
【0082】
区間判定部13が、眼球運動・眼瞼活動測定部11により測定された眼球活動及び眼瞼活動データに基づいて、開眼区間、閉眼区間、瞬目区間、群発区間を判定する(S103)。この区間判定は、例えば、上述の実験内容の説明と同様に行うことができる。
【0083】
眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部15が、PVT中の試行の開始時点が含まれる区間(図1の斜線を施した区間を参照)について、眼球運動・眼瞼活動測定部11により測定された眼球運動・眼瞼活動データ、及び区間判定部13により判定された区間の種類に基づいて、各種の眼球運動・眼瞼活動関連情報を算出し、記憶部19に記憶する(S105)。この各種の眼球運動・眼瞼活動関連情報の算出は、例えば、上述の実験内容の説明と同様に行うことができる。
【0084】
事前確率・尤度算出部18が、ナイーブベイズ推定における最初の事前確率と、眼球運動・眼瞼活動関連情報についての尤度及び尤度を算出するための確率密度関数を算出し、記憶部19に記憶する(S107)。
【0085】
具体的には、記憶部19に記憶されたPVTの各試行の反応時間に基づいて、各試行について、正常(100ms≦RT<300ms)、軽度(300ms≦RT<500ms)、重度(300ms≦RT<500ms)のいずれの注意力低下レベルかを決定し、記憶部19に記憶する。正常、軽度、重度の注意力低下レベルの各々の出現試行数を、正常、軽度、重度の全注意力低下レベルの総試行数で除した値を、それぞれの注意力低下レベルの出現確率とし、ナイーブベイズ推定で用いる各注意力低下レベルの事前確率とする。P(H1)を正常の事前確率、P(H2)を軽度の事前確率、P(H3)を重度の事前確率とする。
【0086】
また、下記の眼球運動・眼瞼活動関連情報について、尤度又は尤度を算出するための確率密度関数を算出する。
【0087】
(1)閉眼/開眼/瞬目のいずれか
注意力低下レベルごとに、開眼区間、閉眼区間、瞬目区間の各出現数を開眼区間(D1-1)、閉眼区間(D1-2)、瞬目区間(D1-3)の総出現数で除することで、それぞれの注意力低下レベルにおける各区間の尤度(P(D1-1|H1)、P(D1-2|H1)、P(D1-3|H1)、P(D1-1|H2)、P(D1-2|H2)、P(D1-3|H2)、P(D1-1|H3)、P(D1-2|H3)、P(D1-3|H3))を算出する。
【0088】
(2)閉眼区間が群発区間に含まれるか
注意力低下レベルごとに、群発区間中に発生している閉眼区間(D2-1)とそれ以外の閉眼区間(D2-2)の出現数をそれぞれ閉眼区間の総出現数で除することで、各注意力低下レベルにおける尤度(P(D2-1|H1)、P(D2-2|H1)、P(D2-1|H2)、P(D2-2|H2)、P(D2-1|H3)、P(D2-2|H3))を算出する。
【0089】
(3)開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか
注意力低下レベルごとに、群発区間(瞬目中、開眼中を含む)(D3-1)、群発区間以外の開眼区間(D3-2)、群発区間以外の瞬目区間(D3-3)の出現数を算出する。それらの出現数を閉眼区間以外の出現数で除することで、それぞれの注意力低下レベルにおける各区間の尤度(P(D3-1|H1)、P(D3-2|H1)、P(D3-3|H1)、P(D3-1|H2)、P(D3-2|H2)、P(D3-3|H1)、P(D3-1|H3)、P(D3-2|H3)、P(D3-3|H1))を算出する。
【0090】
(4)開眼区間持続時間
本眼球運動・眼瞼活動関連情報については、下記の(式2)を用いて注意力低下レベルごとの平均値(μ)と標準偏差(σ)から正規分布型の確率密度関数を算出する。
すなわち、全開眼区間を対象として、注意力低下レベルごとに、開眼区間の持続時間の平均値(μ6)と標準偏差(σ6)を求め、(式2)のμをμ6、σをσ6として、注意力低下レベルごとに確率密度関数を算出する。
【0091】
(5)マイクロサッカード頻度
本眼球運動・眼瞼活動関連情報については、上記の(式2)を用いて注意力低下レベルごとの平均値(μ)と標準偏差(σ)から正規分布型の確率密度関数を算出する。すなわち、開眼区間中に眼球運動が一つ以上出現した区間を対象として、注意力低下レベルごとに、各区間でのマイクロサッカードの頻度の平均値(μ4)と標準偏差(σ4)を求め、(式2)のμをμ4、σをσ4として、注意力低下レベルごとに確率密度関数を算出する。
【0092】
(6)マイクロサッカード突度の平均値
本眼球運動・眼瞼活動関連情報については、上記の(式2)を用いて注意力低下レベルごとの平均値(μ)と標準偏差(σ)から正規分布型の確率密度関数を算出する。すなわち、開眼区間中にマイクロサッカードが一つ以上出現した区間を対象として、注意力低下レベルごとに、この区間でのマイクロサッカードの突度の平均値の平均値(μ5)と標準偏差(σ 5)を求め、(式2)のμをμ5、σをσ5として、注意力低下レベルごとに確率密度関数を算出する。
【0093】
(7)開瞼度の平均値
本眼球運動・眼瞼活動関連情報については、上記の(式2)を用いて注意力低下レベルごとの平均値(μ)と標準偏差(σ)から正規分布型の確率密度関数を算出する。すなわち、全区間を対象として、各区間での開瞼度の平均値の平均値(μ7)と標準偏差(σ7)を求め、(式2)のμをμ7、σをσ7として、注意力低下レベルごとに確率密度関数を算出する。
【0094】
(8)開瞼度の標準偏差
本眼球運動・眼瞼活動関連情報については、上記の(式2)を用いて注意力低下レベルごとの平均値(μ)と標準偏差(σ)から正規分布型の確率密度関数を算出する。すなわち、開眼区間及び閉眼区間を対象として、各区間での開瞼度の標準偏差の平均値(μ8)と標準偏差(σ8)を求め、(式2)のμをμ8、σをσ8として、注意力低下レベルごとに確率密度関数を算出する。
【0095】
(9)瞬目頻度
本眼球運動・眼瞼活動関連情報については、上記の(式2)を用いて注意力低下レベルごとの平均値(μ)と標準偏差(σ)から正規分布型の確率密度関数を算出する。すなわち、全群発区間を対象として、注意力低下レベルごとに、各区間での瞬目頻度の平均値(μ9)と標準偏差(σ9)を求め、(式2)のμをμ9、σをσ9として、注意力低下レベルごとに確率密度関数を算出する。
【0096】
(10)閉瞼時の相対速度の逆数の平均値
本眼球運動・眼瞼活動関連情報については、上記の(式2)を用いて注意力低下レベルごとの平均値(μ)と標準偏差(σ)から正規分布型の確率密度関数を算出する。すなわち、瞬目区間が含まれる群発区間のすべてを対象として、注意力低下レベルごとに、瞬目区間が含まれる群発区間の各々での閉瞼時の相対速度の逆数の平均値の平均値(μ10)と標準偏差(σ10)を算出する。ここで、(式2)のμをμ10、σをσ10として、注意力低下レベルごとに(式2)を用いて確率密度関数を算出する。
【0097】
(11)開瞼時の相対速度の逆数の平均値
本眼球運動・眼瞼活動関連情報については、上記の(式2)を用いて注意力低下レベルごとの平均値(μ)と標準偏差(σ)から正規分布型の確率密度関数を算出する。すなわち、瞬目区間が含まれる群発区間のすべてを対象として、注意力低下レベルごとに、瞬目区間が含まれる群発区間の各々での開瞼時の相対速度の逆数の平均値の平均値(μ11)と標準偏差(σ11)を求め、(式2)のμをμ11、σをσ11として、注意力低下レベルごとに確率密度関数を算出する。
【0098】
(12)瞬目持続時間
本眼球運動・眼瞼活動関連情報については、上記の(式2)を用いて注意力低下レベルごとの平均値(μ)と標準偏差(σ)から正規分布型の確率密度関数を算出する。すなわち、瞬目区間が含まれる群発区間のすべてを対象として、注意力低下レベルごとに、瞬目区間が含まれる群発区間の各々での瞬目持続時間の平均値の平均値(μ12)と標準偏差(σ12)を求め、(式2)のμをμ12、σをσ12として、注意力低下レベルごとに確率密度関数を算出する。
【0099】
(13)瞬目中の閉眼時間
本眼球運動・眼瞼活動関連情報については、上記の(式2)を用いて注意力低下レベルごとの平均値(μ)と標準偏差(σ)から正規分布型の確率密度関数を算出する。すなわち、瞬目区間が含まれる群発区間のすべてを対象として、注意力低下レベルごとに、瞬目区間が含まれる群発区間の各々での瞬目中の閉眼時間の平均値の平均値(μ13)と標準偏差(σ1 3)を求め、(式2)のμをμ13、σをμ13として、注意力低下レベルごとに確率密度関数を算出する。
【0100】
(14)瞬目の出現割合
本眼球運動・眼瞼活動関連情報については、上記の(式2)を用いて注意力低下レベルごとの平均値(μ)と標準偏差(σ)から正規分布型の確率密度関数を算出する。すなわち、群発区間を対象として、注意力低下レベルごとに、群発区間ごとの群発区間中の瞬目の出現割合の平均値(μ14)と標準偏差(σ14)を求め、(式2)のμをμ14、σをσ14として、注意力低下レベルごとに確率密度関数を算出する。
【0101】
(15)短時間閉眼出現割合
本眼球運動・眼瞼活動関連情報については、上記の(式2)を用いて注意力低下レベルごとの平均値(μ)と標準偏差(σ)から正規分布型の確率密度関数を算出する。すなわち、群発区間を対象として、注意力低下レベルごとに、群発区間ごとの群発区間中の閉眼(1秒未満)の出現割合の平均値(μ15)と標準偏差(σ15)を求め、(式2)のμをμ15、σをσ1 5として、注意力低下レベルごとに確率密度関数を算出する。
【0102】
(16)長時間閉眼出現割合
本眼球運動・眼瞼活動関連情報については、上記の(式2)を用いて注意力低下レベルごとの平均値(μ)と標準偏差(σ)から正規分布型の確率密度関数を算出する。すなわち、群発区間を対象として、注意力低下レベルごとに、群発区間ごとの群発区間中の閉眼(1秒以上)の出現割合の平均値(μ16)と標準偏差(σ16)を求め、(式2)のμをμ16、σをσ1 6として、注意力低下レベルごとに確率密度関数を算出する。
【0103】
(17)閉眼区間持続時間
本眼球運動・眼瞼活動関連情報については、上記の(式2)を用いて注意力低下レベルごとの平均値(μ)と標準偏差(σ)から正規分布型の確率密度関数を算出する。すなわち、全閉眼区間を対象として、注意力低下レベルごとに、閉眼区間の持続時間の平均値(μ17)と標準偏差(σ17)を求め、(式2)のμをμ17、σをσ17として、注意力低下レベルごとに確率密度関数を算出する。
【0104】
なお、上記(4)~(17)の眼球運動・眼瞼活動関連情報については、各注意力低下レベルの眼球運動・眼瞼活動関連情報の値が正規分布に従わない場合は、眼球運動・眼瞼活動関連情報の値をある閾値で分類してカテゴリー化することで尤度を算出することができる。注意力低下レベルごとに、各カテゴリーに出現したデータ数を全カテゴリーに出現したデータ数で除することで、それぞれの注意力低下レベルにおける各カテゴリーの尤度を算出できる。
【0105】
[II]注意力評価算出フェーズ
教師用データ取得フェーズで得られた事前確率と、眼球運動・眼瞼活動関連情報についての尤度及び尤度を算出するための確率密度関数に基づいて、対象者の眼球や眼瞼の動きの測定から得られた眼球運動・眼瞼活動データから、注意力評価を算出する。
【0106】
眼球運動・眼瞼活動測定部11が、カメラやセンサによって対象者の眼球や眼瞼の動きを測定し、各種の眼球運動及び眼瞼活動データを得る(S201)。
【0107】
区間判定部13が、上記の教師用データ取得フェーズのステップS103と同様にして、眼球運動・眼瞼活動測定部11により測定された眼球活動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間、閉眼区間、瞬目区間、群発区間を判定する(S203)。
【0108】
眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部15が、上記の教師用データ取得フェーズのステップS105と同様にして、区間判定部13により判定された各区間について、眼球運動・眼瞼活動測定部11により測定された眼球運動・眼瞼活動データ、及び区間判定部13により判定された区間の種類に基づいて、各種の眼球運動・眼瞼活動関連情報を算出する(S205)。
【0109】
注意力評価部17が、上記教師用データ取得フェーズで算出され、記憶部19に記憶された、ナイーブベイズ推定における最初の事前確率と、眼球運動・眼瞼活動関連情報についての尤度及び尤度を算出するための確率密度関数に基づいて、(式1)によって、ナイーブベイズ推定により、各区間に対する注意力低下レベルの各々の推定出現確率を算出する(S207)。
【0110】
具体的には、下記の各区間について、下記のように、ベイズ更新によって、各注意力低下レベルに対する各眼球運動・眼瞼活動関連情報についての事後確率を、ベイズの定理である(式1)に基づいて順に算出し、各注意力低下レベルが出現する出現確率を算出する。各眼球運動・眼瞼活動関連情報についての事後確率を算出する順序は、ベイズ理論の逐次合理性により、任意である。以下一例について説明する。
【0111】
(1)開眼・群発区間
開眼区間且つ群発区間である開眼・群発区間(例えば図1のa)に対しては、眼球運動・眼瞼活動関連情報として、開眼/閉眼/瞬目のいずれか(P(D1-1)、P(D1-2)、P(D1- 3))、開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか(P(D3-1)、P(D3-2))、マイクロサッカード頻度(D4)、マイクロサッカード突度(D5)、開眼区間の持続時間(D6)、開瞼度の平均値(D7)、開瞼度の標準偏差(D8)、瞬目頻度(D9)、閉瞼時の相対速度の逆数(D10)、開瞼時の相対速度の逆数(D11)、瞬目持続時間(D12)、瞬目の出現割合(D14)、短時間閉眼出現割合(D15)、長時間閉眼出現割合(D16)を用いる。
【0112】
(ア)対象とする区間の開瞼度の平均値(D7)を教師用データ取得フェーズで求めた各カテゴリーの確率密度関数(式2)のxに代入することにより尤度を算出する。教師用データ取得フェーズで算出された事前確率p(H1)、p(H2)、p(H3)と求められた尤度から、(式1)により、開瞼度の平均値についての事後確率(P(H1|D7)、P(H2|D7)、P(H3|D7))を算出する。
【0113】
(イ)対象とする区間の開瞼度の標準偏差(D8)を教師用データ取得フェーズで求めた各カテゴリーの確率密度関数(式2)のxに代入することで、尤度を算出する。上記(ア)で求めた事後確率を事前確率とし、この事前確率と求められた尤度から、(式1)により、開瞼度の標準偏差についての事後確率(P(H1|D8)、P(H2|D8)、P(H3|D8))を算出する。
【0114】
(ウ)上記(イ)で求めた事後確率を事前確率とし、この事前確率と教師用データ取得フェーズで求めた尤度(P(D1-1|H1)、P(D1-1|H2)、P(D1-1|H3))から、(式1)により、開眼/閉眼/瞬目のいずれかについての事後確率(P(H1|D1-1)、P(H2|D1-1)、P(H3|D1-1))を算出する。
【0115】
(エ)上記(ウ)で求めた事後確率を事前確率とし、この事前確率と教師用データ取得フェーズで求めた尤度(P(D3-1|H1)、P(D3-1|H2)、P(D3-1|H3))から、(式1)により、開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるかについての事後確率(P(H1|D3-1)、P(H2|D3-1))、P(H3|D3-1))を算出する。
【0116】
(オ)対象とする区間の開眼区間の持続時間(D6)を教師用データ取得フェーズで求めた各カテゴリーの確率密度関数(式2)のxに代入することにより尤度を算出する。上記(エ)で求めた事後確率を事前確率とし、この事前確率と求められた尤度から、(式1)により開眼区間持続時間についての事後確率(P(H1|D6)、P(H2|D6)、P(H3|D6))を算出する。
【0117】
(カ)対象とする区間において眼球運動が発生している場合、対象とする区間のマイクロサッカード頻度(D4)を教師用データ取得フェーズで求めた各カテゴリーの確率密度関数(式2)のxに代入することにより尤度を算出する。上記(オ)で求めた事後確率を事前確率とし、この事前確率と求められた尤度から、(式1)によりマイクロサッカード頻度についての事後確率(P(H1|D4)、P(H2|D4)、P(H3|D4))を算出する。
【0118】
(キ)対象とする区間において眼球運動が発生している場合、対象とする区間のマイクロサッカード突度(D5)を教師用データ取得フェーズで求めた各カテゴリーの確率密度関数(式2)のxに代入することにより尤度を算出する。上記(カ)で求めた事後確率を事前確率とし、この事前確率と求められた尤度から、(式1)によりマイクロサッカード突度についての事後確率(P(H1|D5)、P(H2|D5)、P(H3|D5))を算出する。
【0119】
(ク)対象とする区間を含む群発区間の瞬目頻度(D9)を教師用データ取得フェーズで求めた各カテゴリーの確率密度関数(式2)のxに代入することにより尤度を算出する。上記(キ)で求めた事後確率を事前確率とし、この事前確率と求められた尤度から、(式1)により瞬目頻度についての事後確率(P(H1|D9)、P(H2|D9)、P(H3|D9))を算出する。
【0120】
(ケ)対象とする区間を含む群発区間の閉瞼時の相対速度の逆数(D10)を教師用データ取得フェーズで求めた各カテゴリーの確率密度関数(式2)のxに代入することにより尤度を算出する。上記(ク)で求めた事後確率を事前確率とし、この事前確率と求められた尤度から、(式1)により閉瞼時の相対速度の逆数についての事後確率 (P(H1|D10)、P(H2|D10)、P(H3|D10))を算出する。
【0121】
(コ)対象とする区間を含む群発区間の開瞼時の相対速度の逆数(D11)を教師用データ取得フェーズで求めた各カテゴリーの確率密度関数(式2)のxに代入することにより尤度を算出する。上記(ケ)で求めた事後確率を事前確率とし、この事前確率と求められた尤度から、(式1)により開瞼時の相対速度の逆数についての事後確率(P(H1|D11)、P(H2|D 11)、P(H3|D11))を算出する。
【0122】
(サ)対象とする区間を含む群発区間の瞬目持続時間(D12)を教師用データ取得フェーズで求めた各カテゴリーの確率密度関数(式2)のxに代入することにより尤度を算出する。上記(コ)で求めた事後確率を事前確率とし、この事前確率と尤度から、(式1)により瞬目持続時間についての事後確率(P(H1|D12)、P(H2|D12)、P(H3|D12))を算出する。
【0123】
(シ)対象とする区間を含む群発区間の閉眼時間(D13)を教師用データ取得フェーズで求めた各カテゴリーの確率密度関数(式2)のxに代入することにより尤度を算出する。上記(サ)で求めた事後確率を事前確率とし、この事前確率と尤度から、(式1)により閉眼時間についての事後確率(P(H1|D13)、P(H2|D13)、P(H3|D13))算出する。
【0124】
(ス)対象とする区間を含む群発区間の瞬目の出現割合(D14)を教師用データ取得フェーズで求めた各カテゴリーの確率密度関数(式2)のxに代入することにより尤度を算出する。上記(シ)で求めた事後確率を事前確率とし、この事前確率と尤度から、(式1)により瞬目の出現割合についての事後確率(P(H1|D14)、P(H2|D14)、P(H3|D14))を算出する。
【0125】
(セ)対象とする区間を含む群発区間の短時間閉眼出現割合(D15)を教師用データ取得フェーズで求めた各カテゴリーの確率密度関数(式2)のxに代入することにより尤度を算出する。上記(ス)で求めた事後確率を事前確率とし、この事前確率と尤度から、(式1)により短時間閉眼出現割合についての事後確率(P(H1|D15)、P(H2|D15)、P(H3|D15))を算出する。
【0126】
(ソ)対象とする区間を含む群発区間の長時間閉眼出現割合(D16)を教師用データ取得フェーズで求めた各カテゴリーの確率密度関数(式2)のxに代入することにより尤度を算出する。上記(セ)で求めた事後確率を事前確率とし、この事前確率と尤度から、(式1)により長時間閉眼出現割合についての事後確率(P(H1|D16)、P(H2|D16)、P(H3|D16))を算出する。この事後確率が、注意力低下レベルの各々の推定出現確率となる。
【0127】
(2)閉眼・群発区間
閉眼区間且つ群発区間である閉眼・群発区間(例えば図1のb)に対しては、眼球運動・眼瞼活動関連情報として、開眼/閉眼/瞬目のいずれか(P(D1-1)、P(D1-2)、P(D1- 3))、閉眼区間が群発区間に含まれるか(P(D2-1)、P(D2-2))、開瞼度の平均値(D7)、開瞼度の標準偏差(D8)、瞬目頻度(D9)、開瞼時の相対速度の逆数(D11)、瞬目持続時間(D12)、瞬目中の閉眼時間(D13)、瞬目の出現割合(D14)、短時間閉眼出現割合(D15)、長時間閉眼出現割合(D16)を用いて、上述の(1)開眼・群発区間と同様にして、注意力低下レベルの各々の推定出現確率を算出する。
【0128】
(3)瞬目・群発区間
瞬目区間且つ群発区間である瞬目・群発区間(例えば図1のc)に対しては、眼球運動・眼瞼活動関連情報として、開眼/閉眼/瞬目のいずれか(P(D1-1)、P(D1-2)、P(D1- 3))、開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか(P(D3-1)、P(D3-2))、瞬目頻度(D9)、閉瞼時の相対速度の逆数(D10)、開瞼時の相対速度の逆数(D11)、瞬目持続時間(D12)、瞬目中の閉眼時間(D13)、瞬目の出現割合(D14)、短時間閉眼出現割合(D15)、長時間閉眼出現割合(D16)を用いて、上述の(1)開眼・群発区間と同様にして、注意力低下レベルの各々の推定出現確率を算出する。
【0129】
(4)開眼・非群発区間
開眼区間且つ非群発区間である開眼・非群発区間(例えば図1のd)に対しては、眼球運動・眼瞼活動関連情報として、開眼/閉眼/瞬目のいずれか(P(D1-1)、P(D1-2)、P(D1-3))、開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか(P(D3-1)、P(D3-2))、マイクロサッカード頻度(D4)、マイクロサッカード突度(D5)、開眼区間の持続時間(D6)、開瞼度の平均値(D7)、開瞼度の標準偏差(D8)を用いて、上述の(1)開眼・群発区間と同様にして、注意力低下レベルの各々の推定出現確率を算出する。
【0130】
(5)閉眼・非群発区間
閉眼区間且つ非群発区間である閉眼・非群発区間(例えば図1のe)に対しては、眼球運動・眼瞼活動関連情報として、開眼/閉眼/瞬目のいずれか(P(D1-1)、P(D1-2)、P(D1-3))、閉眼区間が群発区間に含まれるか(P(D2-1)、P(D2-2))、開瞼度の平均値(D7)、開瞼度の標準偏差(D8)、閉眼区間持続時間(D17)を用いて、上述の(1)開眼・群発区間と同様にして、注意力低下レベルの各々の推定出現確率を算出する。
【0131】
(6)瞬目・非群発区間
瞬目区間且つ非群発区間である瞬目・非群発区間(例えば図1のf)に対しては、眼球運動・眼瞼活動関連情報として、開眼/閉眼/瞬目のいずれか(P(D1-1)、P(D1-2)、P(D1-3))、開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか(P(D3-1)、P(D3-2))を用いて、上述の(1)開眼・群発区間と同様にして、注意力低下レベルの各々の推定出現確率を算出する。
【0132】
注意力評価部17は、求められた注意力低下レベルの各々の推定出現確率に基づいて、更に評価時間当たりの注意力レベルを求めてもよい。具体的には、評価時間に出現した各区間(開眼・群発区間、閉眼・群発区間、瞬目・群発区間、開眼・非群発区間、閉眼・非群発区間、瞬目・非群発区間)ごとに求めた推定出現確率(P(Hi)k)にその各区間の持続時間(Durationk)をかけた値を、評価時間に出現した全区間であるN個の区間について合計し、評価時間で除することで、評価時間当たりの各注意力低下レベルの推定出現確率を算出する(式3)。
上記実験では、被験者ごとに、前半のセッション(第1~10セッション)において上記の教師用データ取得フェーズを行い、後半のセッション(第11~22セッション)において、自己の教師用データに基づいて、上記注意力評価算出フェーズを行った。上記実験により得られたデータについて、PVTにより求めた20分当たりの各注意力低下レベルの出現確率、上記実施形態の注意力低下状態推定方法により求めた20分当たりの各注意力低下レベルの推定出現確率、及びそれらの相関とを図6に示す。
【0133】
図6から、本実施形態の注意力低下状態推定方法により求めた20分当たりの各注意力低下レベルの推定出現確率の変動は、PVTにより求めた20分当たりの各注意力低下レベルの推定出現確率の変動とよく一致していることが分かる。また、注意力評価算出フェーズのみの値を用いてPVTにより求めた出現確率と本実施形態の注意力低下状態推定方法により求めた推定出現確率の相関(pearsonの積率相関係数)を求めた。なお、正規分布に従うようにFisherのZ変換を用いて被験者ごとのpearsonの積率相関係数rを変換した後、グループ平均を求めた。図6には逆Z変換した相関係数(r)を示している。その結果、正常と重度の注意力低下レベルだけではなく、軽度の注意力低下レベルについても有意にPVTにより求めた出現確率と本実施形態の注意力低下状態推定方法により求めた推定出現確率との間に相関を有することが分かった。以上から、本実施形態の注意力低下状態推定方法によれば、課題を負荷せずに様々なレベルの注意力低下を連続測定できることが分かった。
【0134】
また、上記実験により得られたデータについて、軽度以上の注意力低下(RT≧300ms)及び重度の注意力低下(RT≧500ms)についての、PVTにより求めた20分当たりの出現確率、上記実施形態の注意力低下状態推定方法により求めた20分当たりの推定出現確率、及び20分当たりのPERCLOSの値を図7に示す。
【0135】
図7から、PVTの軽度以上の注意力低下の出現確率は、本実施形態の注意力低下状態推定方法による軽度以上の注意力低下の推定出現確率と一致した変動を示しているが、PERCLOSの値は、PVTの軽度以上の注意力低下の出現確率よりも小さくなっていることが分かる。また、PVTの重度の注意力低下の出現確率は、本実施形態の注意力低下状態推定方法による重度の注意力低下の推定出現確率及びPERCLOSの値と高い一致性を示していることが分かる。
【0136】
軽度以上の注意力低下及び重度の注意力低下についての、評価単位時間ごとに求めた、PVTにより求めた出現確率と、本実施形態の注意力低下状態推定方法により求めた推定出現確率及びPERCLOSの値との相関を図8に示す。なお、正規分布に従うようにFisherのZ変換を用いて被験者ごとのpearsonの積率相関係数rを変換した後、本実施形態の注意力低下状態推定方法により求めた各カテゴリーの推定出現確率とPERCLOSの値の相関係数のグループ平均を比較した。図8には逆Z変換した相関係数(r)を示している。相関係数のグループ平均を用いた解析では以降も同様の手法を用いた。
【0137】
図8から、評価時間が5分以下の場合には、本実施形態の注意力低下状態推定方法により求めた推定出現確率の方がPERCLOSの値よりも、PVTの軽度以上の注意力低下の出現確率との相関が有意に高かったことが分かる。評価に用いた時間が10分及び20分の場合には、有意傾向であった。PVTの重度の注意力低下の出現確率との相関は、本実施形態の注意力低下状態推定方法により求めた推定出現確率とPERCLOSの値との間に差を認めなかった。よって、PVTの重度の注意力低下との関連性は、本実施形態の注意力低下状態推定方法とPERCLOSとに差がないが、PVTの軽度以上の注意力低下との関連性は、本実施形態の注意力低下状態推定方法が、PERCLOSよりも高かったことが分かる。以上から、本実施形態の注意力低下状態推定方法によれば、従来の手法よりも高精度に注意力を測定できることが分かった。
【0138】
PVTの軽度以上の注意力低下の出現確率及び重度の注意力低下の出現確率が、本実施形態の注意力低下状態推定方法の軽度以上の注意力低下の推定出現確率及び重度の注意力低下の推定出現確率とそれぞれ完全に一致するのかどうか(y=xの関係を有するのかどうか)を級内相関係数(Intraclass correlation coefficients:ICC)を用いて検討した。この検討に際して、各被験者の注意力評価算出フェーズの全セッションの平均値を用いた。8例分の、PVTと、本実施形態の注意力低下状態推定方法及びPERCLOSの関係性の散布図と線形回帰直線を図9に示す。
【0139】
ICCの値は0.81-1.00が"almost perfect"と判定される。軽度以上の注意力低下及び重度の注意力低下の完全一致度(ICC)が、PVTと本実施形態の注意力低下状態推定方法との間で0.81以上であり、almost perfectと判定された。一方、PERCLOSとPVTとのICCは、本実施形態の注意力低下状態推定方法のICCよりも値が低かった。完全一致性に関しては軽度以上及び重度の注意力低下の出現確率とも、本実施形態の注意力低下状態推定方法の方が優れており、本実施形態の注意力低下状態推定方法により求めた推定出現確率は、PVTで測定した注意力低下の推定出現確率としてそのままで用いることができる。つまり、本実施形態の注意力低下状態推定方法によれば、多くの先行研究が蓄積されたPVTの知見への参照が容易にできることが分かった。
【0140】
以上から、本実施形態の注意力低下状態推定方法によれば、様々なレベルの注意力低下を簡便に連続測定でき、かつ多くの先行研究が蓄積されたPVTの知見への参照が容易にできる。
【0141】
また、本実施形態の注意力低下状態推定方法によれば、ナイーブベイズ推定を用いているので、眼球運動・眼瞼活動関連情報の一部を欠いても、その欠いた眼球運動・眼瞼活動関連情報以外の眼球運動・眼瞼活動関連情報によって推定出現確率を算出することができるので、眼球運動・眼瞼活動データの一部の取得不能やデータ不足等に柔軟に対応することができる。したがって、上記実施形態において、各区間に対して列挙した眼球運動・眼瞼活動関連情報のすべてについて事後確率を算出しなくても、その一部の眼球運動・眼瞼活動関連情報について事後確率を算出する構成としてもよい。
【0142】
上記実施形態においては、所定の眼球運動・眼瞼活動関連情報を用いたナイーブベイズ推定によって各注意力低下レベルの推定出現確率や評価時間当たりの各注意力低下レベルの推定出現確率を算出したが、注意力評価算出方法はこれに限定されるものでない。例えば、新たな注意力評価指標である眠気から生じるマイクロサッカードの頻度、マイクロサッカード突度、開瞼度の標準偏差、短時間閉眼出現割合、長時間閉眼出現割合のうちの1つ又はそれらの組合せにより注意力評価を算出してもよい。また、注意力評価は、推定出現確率でない他の適切な任意の表現としてもよい。また、注意力低下は、離散的なレベルでなく、連続的な注意力低下度等の他の適切な任意の表現としてもよい。
【0143】
上記の開眼区間、閉眼区間、瞬目区間、群発区間、各眼球運動・眼瞼活動関連情報の定義は、上述の定義に限定されるものでなく、その本質が変わらない限り、他の適切な任意の定義とすることができる。
【0144】
上記実施形態においては、注意力評価算出フェーズにおいて、教師用データ取得フェーズで得られた眼球活動・眼瞼活動情報についての尤度及び尤度を算出するための確率密度関数を、注意力評価算出を行うごとに更新していないが、注意力評価算出を行うごとに更新してもよい。
【0145】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態の構成及び動作原理について説明する。第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0146】
第1の実施形態は、健康で睡眠障害がない成人男性8名(年齢20-47歳、36.6±10.2[SD]歳)の被験者のデータの分析に基づくものであったが、本実施形態は、第1の実施形態と同一の実験の被験者の更に成人男性8名のデータをも加えて、成人男性16名(年齢20-49歳、36.7±9.3[SD]歳)の分析に基づくものである。本発明者らは、16名の分析から、注意力低下を評価するための指標として、更に、マイクロサッカード割合を見出した。また、マイクロサッカード割合、サッカード相対速度、開瞼度の平均値、開瞼度の標準偏差、瞬目持続時間について、「正常」、「軽度」、「重度」の3つの注意力低下レベルの間のすべてで有意差が認められることを見出した。
【0147】
そこで、本実施形態では、開眼区間、閉眼区間、瞬目区間、群発区間の中から判定された区間の種類と得られた眼球運動・眼瞼活動データから、マイクロサッカード割合、サッカード相対速度、開瞼度の平均値、開瞼度の標準偏差、瞬目持続時間の5つの眼球運動・眼瞼活動関連情報を求める。開瞼度の平均値、開瞼度の標準偏差、瞬目持続時間の求め方は、第1の実施形態と同一であるので説明は省略するが、マイクロサッカード割合、サッカード相対速度の求め方は以下のとおりである。
【0148】
開眼区間に出現したマイクロサッカードの個数を開眼区間に出現した全サッカード数で除した値をマイクロサッカード割合とする。
【0149】
サッカードにおける眼球運動の最大の回転角速度を、サッカードの回転角度で除した値をサッカード相対速度とする。
【0150】
PVTの各試行の反応が生じた時点のマイクロサッカード割合、サッカード相対速度、開瞼度の平均値、開瞼度の標準偏差、瞬目持続時間を、注意力低下レベル(正常、軽度、重度)ごとに比較した結果を図10に示す。図10から、マイクロサッカード割合、サッカード相対速度、開瞼度の平均値、開瞼度の標準偏差、瞬目持続時間について、「正常」、「軽度」、「重度」の3つの注意力低下レベルの間のすべてで有意差が認められることが分かる。そして、マイクロサッカード割合も注意力指標として用いることができることが分かる。
【0151】
本実施形態に係る注意力低下状態推定システムは、第1の実施形態と同様であるが、眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部15が、開眼/閉眼/瞬目のいずれか、閉眼区間が群発区間に含まれるか、開眼・閉眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、そして、開眼区間に対してマイクロサッカード割合及びサッカード相対速度を、開眼区間及び閉眼区間に対して及び開瞼度の標準偏差及び開瞼度平均値を、群発区間に対して瞬目持続時間を算出する点で相違する。
【0152】
次に、本実施形態に係る注意力低下状態推定システムの注意力低下状態推定処理の例を説明する。本実施形態に係る注意力低下状態推定システムの注意力低下状態推定処理の例のフローチャートも第1の実施形態と同様であるので、図5を参照して説明する。
【0153】
[I]教師用データ取得フェーズ
本実施形態でも、第1の実施形態と同様のナイーブベイズ推定を用いる。本実施形態での教師用データ取得フェーズにおける処理も第1の実施形態と同様であるが、本実施形態においては、ステップS105において、眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部15が、眼球運動・眼瞼活動関連情報として、マイクロサッカード割合、サッカード相対速度、開瞼度の平均値、開瞼度の標準偏差、瞬目持続時間を算出し、記憶部19に記憶する。この各種の眼球運動・眼瞼活動関連情報の算出は、例えば、上述の説明と同様に行うことができる。
【0154】
また、ステップS107において、事前確率・尤度算出部18が、眼球運動・眼瞼活動関連情報についての尤度及び尤度を算出するための確率密度関数を算出するが、開瞼度の平均値、開瞼度の標準偏差、瞬目持続時間についての算出は第1の実施形態と同様に行われ、マイクロサッカード割合、サッカード相対速度についての算出は以下のように行われる。
【0155】
マイクロサッカード割合については、(式2)を用いて注意力低下レベルごとの平均値(μ)と標準偏差(σ)から正規分布型の確率密度関数を算出する。すなわち、全開眼区間を対象として、注意力低下レベルごとに、マイクロサッカード割合の平均値(μ18)と標準偏差(σ18)を求め、(式2)のμをμ18、σをσ18として、注意力低下レベルごとに確率密度関数を算出する。
【0156】
サッカード速度については、上記の(式2)を用いて注意力低下レベルごとの平均値(μ)と標準偏差(σ)から正規分布型の確率密度関数を算出する。すなわち、注意力低下レベルごとに、各区間でのサッカード速度の平均値(μ19)と標準偏差(σ19)を求め、(式2)のμをμ19、σをσ19として、注意力低下レベルごとに確率密度関数を算出する。
【0157】
[II]注意力評価算出フェーズ
本実施形態での注意力評価算出フェーズにおける処理も第1の実施形態と同様であるが、本実施形態においては、ステップS205において、眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部15が、上記の教師用データ取得フェーズのステップS105と同様にして、区間判定部13により判定された各区間について、眼球運動・眼瞼活動測定部11により測定された眼球運動・眼瞼活動データ、及び区間判定部13により判定された区間の種類に基づいて、マイクロサッカード割合、サッカード相対速度、開瞼度の平均値、開瞼度の標準偏差、瞬目持続時間の眼球運動・眼瞼活動関連情報を算出する。
【0158】
また、ステップS207において、注意力評価部17が、上記教師用データ取得フェーズで算出され、記憶部19に記憶された、ナイーブベイズ推定における最初の事前確率と、眼球運動・眼瞼活動関連情報についての尤度及び尤度を算出するための確率密度関数に基づいて、(式1)によって、ナイーブベイズ推定により、各区間に対する注意力低下レベルの各々の推定出現確率を算出する。具体的には、下記の各区間について、下記のように、ベイズ更新によって、各注意力低下レベルに対する各眼球運動・眼瞼活動関連情報についての事後確率を、ベイズの定理である(式1)に基づいて順に算出し、各注意力低下レベルが出現する出現確率を算出する。各眼球運動・眼瞼活動関連情報についての事後確率を算出する順序は、ベイズ理論の逐次合理性により、任意である。以下一例について説明する。
【0159】
(1)開眼・群発区間
開眼区間且つ群発区間である開眼・群発区間(例えば図1のa)に対しては、眼球運動・眼瞼活動関連情報として、開眼/閉眼/瞬目のいずれか(P(D1-1)、P(D1-2)、P(D1- 3))、開眼・閉眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか(P(D20-1)、P(D20-2))、マイクロサッカード割合(D18)、サッカード相対速度(D19)、開瞼度の平均値(D7)、開瞼度の標準偏差(D8)、瞬目持続時間(D12)を用いる。
【0160】
(ア)対象とする区間の開瞼度の平均値(D7)を教師用データ取得フェーズで求めた各カテゴリーの確率密度関数(式2)のxに代入することにより尤度を算出する。教師用データ取得フェーズで算出された事前確率p(H1)、p(H2)、p(H3)と求められた尤度から、式(1)により、開瞼度の平均値についての事後確率(P(H1|D7)、P(H2|D7)、P(H3|D7))を算出する。
【0161】
(イ)対象とする区間の開瞼度の標準偏差(D8)を教師用データ取得フェーズで求めた各カテゴリーの確率密度関数(式2)のxに代入することで、尤度を算出する。上記(ア)で求めた事後確率を事前確率とし、この事前確率と求められた尤度から、式(1)により、開瞼度の標準偏差についての事後確率(P(H1|D8)、P(H2|D8)、P(H3|D8))を算出する。
【0162】
(ウ)上記(イ)で求めた事後確率を事前確率とし、この事前確率と教師用データ取得フェーズで求めた尤度(P(D1-1|H1)、P(D1-1|H2)、P(D1-1|H3))から、式(1)により、開眼/閉眼/瞬目のいずれかについての事後確率(P(H1|D1-1)、P(H2|D1-1)、P(H3|D1-1))を算出する。
【0163】
(エ)上記(ウ)で求めた事後確率を事前確率とし、この事前確率と教師用データ取得フェーズで求めた尤度(P(D20-1|H1)、P(D20-1|H2)、P(D20-1|H3))から、式(1)により、開眼・閉眼・瞬目区間が群発区間に含まれるかについての事後確率(P(H1|D20-1)、P(H 2|D20-1))、P(H3|D20-1))を算出する。
【0164】
(オ)対象とする区間において眼球運動が発生している場合、対象とする区間のマイクロサッカード割合(D18)を教師用データ取得フェーズで求めた各カテゴリーの確率密度関数(式2)のxに代入することにより尤度を算出する。上記(エ)で求めた事後確率を事前確率とし、この事前確率と求められた尤度から、式(1)によりマイクロサッカード割合についての事後確率(P(H1|D18)、P(H2|D18)、P(H3|D18))を算出する。
【0165】
(カ)対象とする区間において眼球運動が発生している場合、対象とする区間のサッカード相対速度(D19)を教師用データ取得フェーズで求めた各カテゴリーの確率密度関数(式2)のxに代入することにより尤度を算出する。上記(オ)で求めた事後確率を事前確率とし、この事前確率と求められた尤度から、式(1)によりサッカード相対速度についての事後確率(P(H1|D19)、P(H2|D19)、P(H3|D19))を算出する。
【0166】
(キ)対象とする区間を含む群発区間の瞬目持続時間(D12)を教師用データ取得フェーズで求めた各カテゴリーの確率密度関数(式2)のxに代入することにより尤度を算出する。上記(コ)で求めた事後確率を事前確率とし、この事前確率と尤度から、式(1)により瞬目持続時間についての事後確率(P(H1|D12)、P(H2|D12)、P(H3|D12))を算出する。この事後確率が、注意力低下レベルの各々の推定出現確率となる。
【0167】
(2)閉眼・群発区間
閉眼区間且つ群発区間である閉眼・群発区間(例えば図1のb)に対しては、眼球運動・眼瞼活動関連情報として、開眼/閉眼/瞬目のいずれか(P(D1-1)、P(D1-2)、P(D1- 3))、閉眼区間が群発区間に含まれるか(P(D2-1)、P(D2-2))、開瞼度の平均値(D7)、開瞼度の標準偏差(D8)、瞬目持続時間(D12)を用いて、上述の(1)開眼・群発区間と同様にして、注意力低下レベルの各々の推定出現確率を算出する。
【0168】
(3)瞬目・群発区間
瞬目区間且つ群発区間である瞬目・群発区間(例えば図1のc)に対しては、眼球運動・眼瞼活動関連情報として、開眼/閉眼/瞬目のいずれか(P(D1-1)、P(D1-2)、P(D1- 3))、開眼・閉眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか(P(D20-1)、P(D20-2))、瞬目持続時間(D12)を用いて、上述の(1)開眼・群発区間と同様にして、注意力低下レベルの各々の推定出現確率を算出する。
【0169】
(4)開眼・非群発区間
開眼区間且つ非群発区間である開眼・非群発区間(例えば図1のd)に対しては、眼球運動・眼瞼活動関連情報として、開眼/閉眼/瞬目のいずれか(P(D1-1)、P(D1-2)、P(D1-3))、開眼・閉眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか(P(D20-1)、P(D20-2))、マイクロサッカード割合(D18)、サッカード相対速度(D19)、開瞼度の平均値(D7)、開瞼度の標準偏差(D8)を用いて、上述の(1)開眼・群発区間と同様にして、注意力低下レベルの各々の推定出現確率を算出する。
【0170】
(5)閉眼・非群発区間
閉眼区間且つ非群発区間である閉眼・非群発区間(例えば図1のe)に対しては、眼球運動・眼瞼活動関連情報として、開眼/閉眼/瞬目のいずれか(P(D1-1)、P(D1-2)、P(D1-3))、閉眼区間が群発区間に含まれるか(P(D2-1)、P(D2-2))、開瞼度の平均値(D7)、開瞼度の標準偏差(D8)を用いて、上述の(1)開眼・群発区間と同様にして、注意力低下レベルの各々の推定出現確率を算出する。
【0171】
(6)瞬目・非群発区間
瞬目区間且つ非群発区間である瞬目・非群発区間(例えば図1のf)に対しては、眼球運動・眼瞼活動関連情報として、開眼/閉眼/瞬目のいずれか(P(D1-1)、P(D1-2)、P(D1-3))、開眼・閉眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか(P(D20-1)、P(D20-2))を用いて、上述の(1)開眼・群発区間と同様にして、注意力低下レベルの各々の推定出現確率を算出する。
【0172】
第1の実施形態と同様に、注意力評価部17は、求められた注意力低下レベルの各々の推定出現確率に基づいて、更に評価時間当たりの注意力レベルを求めてもよい。上記実験では、被験者ごとに、前半のセッション(第1~10セッション)において上記の教師用データ取得フェーズを行い、後半のセッション(第11~22セッション)において、自己の教師用データに基づいて、上記注意力評価算出フェーズを行った。上記実験により得られたデータについて、自己の教師用データに基づく注意力評価算出を行った場合(以下、「テイラーメイド型」という。)として求めた、PVTにより求めた20分当たりの各注意力低下レベルの出現確率、上記実施形態の注意力低下状態推定方法により求めた20分当たりの各注意力低下レベルの推定出現確率、それらの相関係数(r)、及び20分当たりのPERCLOSの値とを図11に示す。また、上記実験により得られたデータについて、他の15名の被験者の全セッションのデータを教師用データとし、自己の全セッションのデータについて注意力評価を行った場合(以下、「レディメイド型」という。)として求めた、PVTにより求めた20分当たりの各注意力低下レベルの出現確率、上記実施形態の注意力低下状態推定方法により求めた20分当たりの各注意力低下レベルの推定出現確率、それらの相関係数(r)、及び20分当たりのPERCLOSの値とを図11に示す。
【0173】
図11から、本実施形態の注意力低下状態推定方法により求めた20分当たりの各注意力低下レベルの推定出現確率の変動は、テイラーメイド型、レディメイド型共に、PVTにより求めた20分当たりの各注意力低下レベルの推定出現確率の変動とよく一致していることが分かる。また、正常と重度の注意力低下レベルだけではなく、軽度の注意力低下レベルについても有意にPVTにより求めた出現確率と本実施形態の注意力低下状態推定方法により求めた推定出現確率との間に相関を有することが分かった。以上から、本実施形態の注意力低下状態推定方法によれば、課題を負荷せずに様々なレベルの注意力低下を連続測定できることが分かった。
【0174】
また、正常及び軽度の注意力低下レベルについて、PERCLOSの値は、PVTの出現確率よりも小さくなったことが分かった。一方、重度の注意力低下レベルについては、PVTの出現確率は、本実施形態の注意力低下状態推定方法による推定出現確率及びPERCLOSの値と高い一致性を示したことが分かった。
【0175】
次に、注意力低下レベルの各々についての、評価単位時間ごとに求めた、PVTにより求めた出現確率と、本実施形態のテイラーメイド型の注意力低下状態推定方法により求めた推定出現確率及びPERCLOSの値との相関係数(r)を図12に示す。また、注意力低下レベルの各々についての、評価単位時間ごとに求めた、PVTにより求めた出現確率と、本実施形態のレディメイド型の注意力低下状態推定方法により求めた推定出現確率及びPERCLOSの値との相関係数(r)を図13に示す。
【0176】
図12、13から、正常及び軽度の注意力低下レベルについては、本実施形態の注意力低下状態推定方法により求めた推定出現確率は、テイラーメイド型、レディメイド型共に、PVTの出現確率と高い正の相関性を示したのに対し、PERCLOSの値は、PVTの出現確率とは負の関係性を示したことが分かった。重度の注意力低下レベルについては、本実施形態の注意力低下状態推定方法により求めた推定出現確率とPVTの出現確率との相関は、テイラーメイド型、レディメイド型共に、PERCLOSの値とPVTの出現確率との相関よりわずかに大きかった。PVTの重度の注意力低下との関連性は、本実施形態の注意力低下状態推定方法とPERCLOSとに差がないが、PVTの正常及び軽度の注意力低下との関連性は、本実施形態の注意力低下状態推定方法が、PERCLOSよりも高かったことが分かった。以上から、本実施形態の注意力低下状態推定方法によれば、従来の手法よりも高精度に注意力を測定できることが分かった。
【0177】
続いて、PVTの注意力低下レベルの各々の出現確率が、本実施形態の注意力低下状態推定方法の注意力低下レベルの各々の推定出現確率とそれぞれ完全に一致するのかどうか(y=xの関係を有するのかどうか)を級内相関係数(Intraclass correlation coefficients:ICC)を用いて検討した。この検討に際して、テイラーメイド型については、各被験者の注意力評価算出フェーズの全セッションの平均値を用いた。また、レディメイド型については、各被験者の全セッション(基準夜及び回復睡眠夜からの起床直後に取得した第1セッションと第20セッションを除く)の平均値を用いた。16例分の、PVTと、本実施形態のテイラーメイド型の注意力低下状態推定方法及びPERCLOSの関係性の散布図と線形回帰直線を図14に示す。また、16例分の、PVTと、本実施形態のレディメイド型の注意力低下状態推定方法及びPERCLOSの関係性の散布図と線形回帰直線を図15に示す。
【0178】
ICCの値が0.61-0.80であれば完全一致度が"substantial",0.81-1.00であれば”almost
perfect”と判定される。また、95%CIが0を上回っていれば、2つの指標の値が有意に正に完全に一致していると言える。本実施形態のテイラーメイド型のICCは、注意力低下レベルの各カテゴリーすべてで0.7を上回っており、かつ、95%CIが0を上回っていた。すなわち、正常と重度の注意力低下レベルではalmost perfectと判定され、軽度の注意力低下レベルではsubstantialと判定された。よって、本実施形態のテイラーメイド型の注意力低下状態推定方法により求めた推定出現確率は、PVTの出現確率に置き換え可能であることが分かった。また、本実施形態のレディメイド型のICCは、重度の注意力低下レベルにおいては0.84でalmost perfectである一方、正常及び軽度の注意力低下においては0.7を下回り、テイラーメイド型よりも精度は低いものの、PVTの出現確率と有意に一致していたことが分かった。
【0179】
一方、PERCLOSの値は、正常及び軽度の注意力低下レベルについては、PVTの出現確率とは負の関係性を示した。重度の注意力低下レベルについては、PERCLOSとPVTとのICCの値は、PERCLOSとPVTとのICCの値は0.7を上回り、両者は高い一致率を示した。しかしながら、PERCLOSとPVTとのICCの値は、substantialと判定されるものであり、テイラーメイド型、レディメイド型共に、上述のようにalmost perfectと判定される本実施形態の注意力低下状態推定方法のICCの方が、完全一致度が高かった。
【0180】
以上から、完全一致性に関しては、注意力低下レベルのいずれのカテゴリーの出現確率とも、テイラーメイド型、レディメイド型共に、本実施形態の注意力低下状態推定方法の方が優れており、本実施形態の注意力低下状態推定方法により求めた推定出現確率は、PVTで測定した注意力低下の推定出現確率としてそのままで用いることができる。つまり、本実施形態の注意力低下状態推定方法によれば、多くの先行研究が蓄積されたPVTの知見への参照が容易にできることが分かった。また、レディメイド型の注意力低下状態推定方法により求めた推定出現確率でも、PVTで測定した注意力低下の推定出現確率として用いることができるので、自己の教師用データの取得を必要とすることなく注意力低下レベルを推定できることは非常に有利である。
【0181】
以上から、本実施形態の注意力低下状態推定方法によれば、テイラーメイド型、レディメイド型共に、様々なレベルの注意力低下を簡便に連続測定でき、かつ多くの先行研究が蓄積されたPVTの知見への参照が容易にできる。
【0182】
また、本実施形態のテイラーメイド型の注意力低下状態推定方法によれば、少ない指標を用いて推定出現確率を精度よく推定できる。
【0183】
また、第1の実施形態で用いたマイクロサッカード突度は、他の注意力指標に比べて測定が難しいところ、本実施形態では、マイクロサッカード突度を用いていないので、より簡単に注意力低下状態を推定することができる。
【0184】
上記実施形態においては、注意力低下状態を推定するための眼球運動・眼瞼活動関連情報として、マイクロサッカード割合、サッカード相対速度、開瞼度の平均値、開瞼度の標準偏差、瞬目持続時間の5つの指標を用いたが、用いる指標はこれらの5つに限定されるものではなく、これらの5つのうちの任意の数の指標を用いて注意力低下状態を推定してもよいし、また、これらの5つのうちの任意の数の指標と他の注意力指標を用いて注意力低下状態を推定してもよい。
【0185】
以上、本発明について、例示のためにいくつかの実施形態に関して説明してきたが、本発明はこれに限定されるものでなく、本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細について、様々な変形及び修正を行うことができることは、当業者に明らかであろう。
【0186】
以上の説明に関連して、更に以下の各項を開示する。
【0187】
(1)
対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定し、眼球運動・眼瞼活動データを得る眼球運動・眼瞼活動測定部と、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間、閉眼区間、瞬目区間、及び群発区間を判定する区間判定部と、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記開眼区間の各々のマイクロサッカード割合、前記開眼区間の各々のマイクロサッカード突度、前記開眼区間及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度の標準偏差、前記群発区間の各々の、持続時間が所定時間未満の閉眼の出現割合である短時間閉眼出現割合、及び前記群発区間の各々の、持続時間が前記所定時間以上の閉眼の出現割合である長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つを算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部と、
前記開眼区間の各々のマイクロサッカード割合、前記マイクロサッカード突度、前記開瞼度の標準偏差、前記短時間閉眼出現割合、及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ群発区間である開眼・群発区間に対する注意力評価、
前記開瞼度の標準偏差、前記短時間閉眼出現割合、及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ群発区間である閉眼・群発区間に対する注意力評価、
前記短時間閉眼出現割合及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、瞬目区間且つ群発区間である瞬目・群発区間に対する注意力評価、
前記開眼区間の各々のマイクロサッカード割合、前記マイクロサッカード突度及び前記開瞼度の標準偏差のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ非群発区間である開眼・非群発区間に対する注意力評価、及び
前記開瞼度の標準偏差に少なくとも基づく、閉眼区間且つ非群発区間である閉眼・非群発区間に対する注意力評価、
のうちの少なくとも1つを求める注意力評価部と、
を備える注意力低下状態推定システム。
【0188】
(2)
前記眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部は、更に、前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼/閉眼/瞬目のいずれか、開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、閉眼区間が群発区間に含まれるか、マイクロサッカード頻度、開眼区間持続時間、開瞼度平均値、瞬目頻度、閉瞼時の相対速度の逆数、開瞼時の相対速度の逆数、瞬目持続時間、瞬目中の閉眼時間、瞬目の出現割合、及び閉眼区間持続時間のうちの1つを算出し、
前記注意力評価部は、
前記開眼区間の各々のマイクロサッカード割合、前記マイクロサッカード突度、前記開瞼度の標準偏差、前記短時間閉眼出現割合、及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つ、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、前記マイクロサッカード頻度、前記開眼区間持続時間、前記開瞼度平均値、前記瞬目頻度、前記閉瞼時の相対速度の逆数、前記開瞼時の相対速度の逆数、前記瞬目持続時間、前記瞬目中の閉眼時間、及び前記瞬目の出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ群発区間である開眼・群発区間に対する注意力評価、
前記開瞼度の標準偏差、前記短時間閉眼出現割合、及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つ、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記閉眼区間が群発区間に含まれるか、前記閉眼区間持続時間、前記開瞼度平均値、前記瞬目頻度、前記閉瞼時の相対速度の逆数、前記開瞼時の相対速度の逆数、前記瞬目持続時間、前記瞬目中の閉眼時間、及び前記瞬目の出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ群発区間である閉眼・群発区間に対する注意力評価、
前記短時間閉眼出現割合及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つ、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、前記瞬目頻度、前記閉瞼時の相対速度の逆数、前記開瞼時の相対速度の逆数、前記瞬目持続時間、瞬目中の閉眼時間、及び前記瞬目の出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、瞬目区間且つ群発区間である瞬目・群発区間に対する注意力評価、
前記開眼区間の各々のマイクロサッカード割合、前記マイクロサッカード突度、及び前記開瞼度の標準偏差のうちの少なくとも1つ、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、前記マイクロサッカード頻度、前記開眼区間持続時間、及び前記開瞼度平均値のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ非群発区間である開眼・非群発区間に対する注意力評価、
前記開瞼度の標準偏差、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記閉眼区間持続時間、及び前記開瞼度平均値のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ非群発区間である閉眼・非群発区間に対する注意力評価、
前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、及び前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるかのうちの少なくとも1つに基づく、瞬目区間且つ非群発区間である瞬目・非群発区間に対する注意力評価、
のうちの少なくとも1つを求める項(1)に記載の注意力低下状態推定システム。
【0189】
(3)
前記眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部は、更に、前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼/閉眼/瞬目のいずれか、開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、閉眼区間が群発区間に含まれるか、マイクロサッカード突度、マイクロサッカード頻度、開眼区間持続時間、瞬目頻度、閉瞼時の相対速度の逆数、開瞼時の相対速度の逆数、瞬目中の閉眼時間、瞬目の出現割合、及び閉眼区間持続時間のうちの1つを算出し、
前記注意力評価部は、
前記マイクロサッカード割合、前記サッカード相対速度、前記開瞼度の標準偏差、前記開瞼度平均値、及び前記瞬目持続時間のうちの少なくとも1つ、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、前記マイクロサッカード突度、前記マイクロサッカード頻度、前記開眼区間持続時間、前記瞬目頻度、前記閉瞼時の相対速度の逆数、前記開瞼時の相対速度の逆数、前記瞬目中の閉眼時間、及び前記瞬目の出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ群発区間である開眼・群発区間に対する注意力評価、
前記開瞼度の標準偏差、前記開瞼度平均値、及び前記瞬目持続時間のうちの少なくとも1つ、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記閉眼区間が群発区間に含まれるか、前記閉眼区間持続時間、前記瞬目頻度、前記閉瞼時の相対速度の逆数、前記開瞼時の相対速度の逆数、前記瞬目中の閉眼時間、及び前記瞬目の出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ群発区間である閉眼・群発区間に対する注意力評価、
前記瞬目持続時間、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、前記瞬目頻度、前記閉瞼時の相対速度の逆数、前記開瞼時の相対速度の逆数、瞬目中の閉眼時間、及び前記瞬目の出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、瞬目区間且つ群発区間である瞬目・群発区間に対する注意力評価、
前記マイクロサッカード割合、前記サッカード相対速度、前記開瞼度の標準偏差、及び前記開瞼度平均値のうちの少なくとも1つ、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、前記マイクロサッカード頻度、及び前記開眼区間持続時間のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ非群発区間である開眼・非群発区間に対する注意力評価、
前記開瞼度の標準偏差、及び前記開瞼度平均値のうちの少なくとも1つ、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、及び前記閉眼区間持続時間のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ非群発区間である閉眼・非群発区間に対する注意力評価、
前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、及び前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるかのうちの少なくとも1つに基づく、瞬目区間且つ非群発区間である瞬目・非群発区間に対する注意力評価、
のうちの少なくとも1つを求める項(1)に記載の注意力低下状態推定システム。
【0190】
(4)
対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定し、眼球運動・眼瞼活動データを得る眼球運動・眼瞼活動測定部と、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間、閉眼区間、瞬目区間、及び群発区間を判定する区間判定部と、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記開眼区間の各々のマイクロサッカード割合、前記開眼区間の各々のサッカード相対速度、前記開眼区間及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度の標準偏差、前記開眼区間の及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度平均値、前記群発区間の各々の瞬目持続時間のうちの少なくとも2つを算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部と、
前記マイクロサッカード割合、前記サッカード相対速度、前記開瞼度の標準偏差、前記開瞼度平均値、及び前記瞬目持続時間のうちの少なくとも2つに基づく、開眼区間且つ群発区間である開眼・群発区間に対する注意力評価、
前記開瞼度の標準偏差、前記開瞼度平均値、及び前記瞬目持続時間のうちの少なくとも2つに基づく、閉眼区間且つ群発区間である閉眼・群発区間に対する注意力評価、
前記マイクロサッカード割合、前記サッカード相対速度、前記開瞼度の標準偏差、及び前記開瞼度平均値のうちの少なくとも2つに基づく、開眼区間且つ非群発区間である開眼・非群発区間に対する注意力評価、及び
前記開瞼度の標準偏差、及び前記開瞼度平均値に少なくとも基づく、閉眼区間且つ非群発区間である閉眼・非群発区間に対する注意力評価、
のうちの少なくとも1つを求める注意力評価部と、
を備える注意力低下状態推定システム。
【0191】
(5)
対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定し、眼球運動・眼瞼活動データを得る眼球運動・眼瞼活動測定部と、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間、閉眼区間、瞬目区間、及び群発区間を判定する区間判定部と、
前記開眼区間の各々のマイクロサッカード割合、前記開眼区間の各々のサッカード相対速度、前記開眼区間及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度の標準偏差、前記開眼区間の及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度平均値、前記群発区間の各々の瞬目持続時間、前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼/閉眼/瞬目のいずれか、開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、閉眼区間が群発区間に含まれるか、マイクロサッカード突度、マイクロサッカード頻度、開眼区間持続時間、瞬目頻度、閉瞼時の相対速度の逆数、開瞼時の相対速度の逆数、瞬目中の閉眼時間、瞬目の出現割合、及び閉眼区間持続時間のうちの1つを算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部と、
前記マイクロサッカード割合、前記サッカード相対速度、前記開瞼度の標準偏差、前記開瞼度平均値、及び前記瞬目持続時間のうちの少なくとも1つ、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、前記マイクロサッカード突度、前記マイクロサッカード頻度、前記開眼区間持続時間、前記瞬目頻度、前記閉瞼時の相対速度の逆数、前記開瞼時の相対速度の逆数、前記瞬目中の閉眼時間、及び前記瞬目の出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ群発区間である開眼・群発区間に対する注意力評価、
前記開瞼度の標準偏差、前記開瞼度平均値、及び前記瞬目持続時間のうちの少なくとも1つ、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記閉眼区間が群発区間に含まれるか、前記閉眼区間持続時間、前記瞬目頻度、前記閉瞼時の相対速度の逆数、前記開瞼時の相対速度の逆数、前記瞬目中の閉眼時間、及び前記瞬目の出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ群発区間である閉眼・群発区間に対する注意力評価、
前記瞬目持続時間、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、前記瞬目頻度、前記閉瞼時の相対速度の逆数、前記開瞼時の相対速度の逆数、瞬目中の閉眼時間、及び前記瞬目の出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、瞬目区間且つ群発区間である瞬目・群発区間に対する注意力評価、
前記マイクロサッカード割合、前記サッカード相対速度、前記開瞼度の標準偏差、及び前記開瞼度平均値のうちの少なくとも1つ、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、前記マイクロサッカード頻度、及び前記開眼区間持続時間のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ非群発区間である開眼・非群発区間に対する注意力評価、
前記開瞼度の標準偏差、及び前記開瞼度平均値のうちの少なくとも1つ、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、及び前記閉眼区間持続時間のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ非群発区間である閉眼・非群発区間に対する注意力評価、
前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、及び前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるかのうちの少なくとも1つに基づく、瞬目区間且つ非群発区間である瞬目・非群発区間に対する注意力評価、
のうちの少なくとも1つを求める注意力評価部と、
を備える注意力低下状態推定システム。
【0192】
(6)
前記注意力評価は、ナイーブベイズ推定により得られた、注意力低下レベルの各々の推定出現確率である項(1)~(5)のいずれか1項に記載の注意力低下状態推定システム。
【0193】
(7)
前記注意力評価は、前記開眼・群発区間,前記閉眼・群発区間,前記瞬目・群発区間、前記開眼・非群発区間、前記閉眼・非群発区間、前記瞬目・非群発区間の各区間ごとに算出された注意力低下レベルの各々の推定出現確率に基づいて算出された評価時間当たりの前記注意力低下レベルの各々の推定出現確率である項(6)に記載の注意力低下状態推定システム。
【0194】
(8)
前記ナイーブベイズ推定における最初の事前確率は、前記注意力評価の対象者自身の眼球運動・眼瞼活動データから得られた教師用データに基づいて算出されたものである請求項(6)又は(7)に記載の注意力低下状態推定システム。
【0195】
(9)
前記ナイーブベイズ推定における最初の事前確率は、前記注意力評価の対象者自身以外の者、又は前記注意力評価の対象者自身及び前記注意力評価の対象者自身以外の者の眼球運動・眼瞼活動データから得られた教師用データに基づいて算出されたものである請求項(6)又は(7)に記載の注意力低下状態推定システム。
【0196】
(10)
対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定し、眼球運動・眼瞼活動データを得る眼球運動・眼瞼活動測定部と、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間を判定する区間判定部と、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記開眼区間の各々のマイクロサッカード割合及び/又は前記開眼区間の各々のマイクロサッカード突度を算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部と、
前記開眼区間に対して、前記開眼区間の各々のマイクロサッカード割合及び/又は前記マイクロサッカード突度に少なくとも基づいて、注意力評価を求める注意力評価部と、
を備える注意力低下状態推定システム。
【0197】
(11)
対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定し、眼球運動・眼瞼活動データを得る眼球運動・眼瞼活動測定部と、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間を判定する区間判定部と、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記開眼区間の各々のマイクロサッカード割合及び/又はサッカード相対速度を算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部と、
前記開眼区間に対して、前記マイクロサッカード割合及び/又はサッカード相対速度に少なくとも基づいて、注意力評価を求める注意力評価部と、
を備え、
前記注意力評価は、3つ以上の注意力低下レベルのいずれであるかの評価である注意力低下状態推定システム。
【0198】
(12)
対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定し、眼球運動・眼瞼活動データを得る眼球運動・眼瞼活動測定部と、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間及び/又は閉眼区間を判定する区間判定部と、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記開眼区間及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度の標準偏差及び/又は開瞼度平均値を算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部と、
前記開眼区間及び/又は前記閉眼区間に対して、前記開瞼度の標準偏差及び/又は開瞼度平均値に少なくとも基づいて、注意力評価を求める注意力評価部と、
を備え、
前記注意力評価は、3つ以上の注意力低下レベルのいずれであるかの評価である注意力低下状態推定システム。
【0199】
(13)
対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定し、眼球運動・眼瞼活動データを得る眼球運動・眼瞼活動測定部と、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、群発区間を判定する区間判定部と、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記群発区間の各々の瞬目持続時間を算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部と、
前記群発区間に対して、前記瞬目持続時間に少なくとも基づいて、注意力評価を求める注意力評価部と、
を備え、
前記注意力評価は、3つ以上の注意力低下レベルのいずれであるかの評価である注意力低下状態推定システム。
【0200】
(14)
対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定し、眼球運動・眼瞼活動データを得る眼球運動・眼瞼活動測定部と、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間を判定する区間判定部と、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記開眼区間の各々のマイクロサッカード割合及びサッカード相対速度を算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部と、
前記開眼区間に対して、前記マイクロサッカード割合及びサッカード相対速度に少なくとも基づいて、注意力評価を求める注意力評価部と、
を備える注意力低下状態推定システム。
【0201】
(15)
対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定し、眼球運動・眼瞼活動データを得る眼球運動・眼瞼活動測定部と、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間及び/又は閉眼区間を判定する区間判定部と、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記開眼区間及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度の標準偏差及び開瞼度平均値を算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部と、
前記開眼区間及び/又は前記閉眼区間に対して、前記開瞼度の標準偏差及び開瞼度平均値に少なくとも基づいて、注意力評価を求める注意力評価部と、
を備える注意力低下状態推定システム。
【0202】
(16)
対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定することによって得られた眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間、閉眼区間、瞬目区間、及び群発区間を判定する区間判定ステップと、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記開眼区間の各々のマイクロサッカード割合、前記開眼区間の各々のマイクロサッカード突度、前記開眼区間及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度の標準偏差、前記群発区間の各々の、持続時間が所定時間未満の閉眼の出現割合である短時間閉眼出現割合、及び前記群発区間の各々の、持続時間が前記所定時間以上の閉眼の出現割合である長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つを算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出ステップと、
前記開眼区間の各々のマイクロサッカード割合、前記マイクロサッカード突度、前記開瞼度の標準偏差、前記短時間閉眼出現割合、及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ群発区間である開眼・群発区間に対する注意力評価、
前記開瞼度の標準偏差、前記短時間閉眼出現割合、及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ群発区間である閉眼・群発区間に対する注意力評価、
前記短時間閉眼出現割合及び前記長時間閉眼出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、瞬目区間且つ群発区間である瞬目・群発区間に対する注意力評価、
前記開眼区間の各々のマイクロサッカード割合、前記マイクロサッカード突度及び前記開瞼度の標準偏差のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ非群発区間である開眼・非群発区間に対する注意力評価、及び
前記開瞼度の標準偏差に少なくとも基づく、閉眼区間且つ非群発区間である閉眼・非群発区間に対する注意力評価、
のうちの少なくとも1つを算出する注意力評価算出ステップと、
を含む注意力低下状態推定方法。
【0203】
(17)
対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定することによって得られた眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間、閉眼区間、瞬目区間、及び群発区間を判定する区間判定ステップと、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記開眼区間の各々のマイクロサッカード割合、前記開眼区間の各々のサッカード相対速度、前記開眼区間及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度の標準偏差、前記開眼区間の及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度平均値、前記群発区間の各々の瞬目持続時間のうちの少なくとも1つを算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出ステップと、
前記マイクロサッカード割合、前記サッカード相対速度、前記開瞼度の標準偏差、前記開瞼度平均値、及び前記瞬目持続時間のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ群発区間である開眼・群発区間に対する注意力評価、
前記開瞼度の標準偏差、前記開瞼度平均値、及び前記瞬目持続時間のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ群発区間である閉眼・群発区間に対する注意力評価、
前記瞬目持続時間に少なくとも基づく、瞬目区間且つ群発区間である瞬目・群発区間に対する注意力評価、
前記マイクロサッカード割合、前記サッカード相対速度、前記開瞼度の標準偏差、及び前記開瞼度平均値のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ非群発区間である開眼・非群発区間に対する注意力評価、及び
前記開瞼度の標準偏差、及び前記開瞼度平均値のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ非群発区間である閉眼・非群発区間に対する注意力評価、
のうちの少なくとも1つを算出する注意力評価算出ステップと、
を含み、
前記注意力評価は、3つ以上の注意力低下レベルのいずれであるかの評価である注意力低下状態推定方法。
【0204】
(18)
対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定することによって得られた眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間、閉眼区間、瞬目区間、及び群発区間を判定する区間判定ステップと、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記開眼区間の各々のマイクロサッカード割合、前記開眼区間の各々のサッカード相対速度、前記開眼区間及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度の標準偏差、前記開眼区間の及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度平均値、前記群発区間の各々の瞬目持続時間のうちの少なくとも2つを算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出ステップと、
前記マイクロサッカード割合、前記サッカード相対速度、前記開瞼度の標準偏差、前記開瞼度平均値、及び前記瞬目持続時間のうちの少なくとも2つに基づく、開眼区間且つ群発区間である開眼・群発区間に対する注意力評価、
前記開瞼度の標準偏差、前記開瞼度平均値、及び前記瞬目持続時間のうちの少なくとも2つに基づく、閉眼区間且つ群発区間である閉眼・群発区間に対する注意力評価、
前記マイクロサッカード割合、前記サッカード相対速度、前記開瞼度の標準偏差、及び前記開瞼度平均値のうちの少なくとも2つに基づく、開眼区間且つ非群発区間である開眼・非群発区間に対する注意力評価、及び
前記開瞼度の標準偏差、及び前記開瞼度平均値に少なくとも基づく、閉眼区間且つ非群発区間である閉眼・非群発区間に対する注意力評価、
のうちの少なくとも1つを算出する注意力評価算出ステップと、
を含む注意力低下状態推定方法。
【0205】
(19)
対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定することによって得られた眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間、閉眼区間、瞬目区間、及び群発区間を判定する区間判定ステップと、
前記開眼区間の各々のマイクロサッカード割合、前記開眼区間の各々のサッカード相対速度、前記開眼区間及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度の標準偏差、前記開眼区間の及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度平均値、前記群発区間の各々の瞬目持続時間、前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼/閉眼/瞬目のいずれか、開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、閉眼区間が群発区間に含まれるか、マイクロサッカード突度、マイクロサッカード頻度、開眼区間持続時間、瞬目頻度、閉瞼時の相対速度の逆数、開瞼時の相対速度の逆数、瞬目中の閉眼時間、瞬目の出現割合、及び閉眼区間持続時間のうちの1つを算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出ステップと、
前記マイクロサッカード割合、前記サッカード相対速度、前記開瞼度の標準偏差、前記開瞼度平均値、及び前記瞬目持続時間のうちの少なくとも1つ、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、前記マイクロサッカード突度、前記マイクロサッカード頻度、前記開眼区間持続時間、前記瞬目頻度、前記閉瞼時の相対速度の逆数、前記開瞼時の相対速度の逆数、前記瞬目中の閉眼時間、及び前記瞬目の出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ群発区間である開眼・群発区間に対する注意力評価、
前記開瞼度の標準偏差、前記開瞼度平均値、及び前記瞬目持続時間のうちの少なくとも1つ、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記閉眼区間が群発区間に含まれるか、前記閉眼区間持続時間、前記瞬目頻度、前記閉瞼時の相対速度の逆数、前記開瞼時の相対速度の逆数、前記瞬目中の閉眼時間、及び前記瞬目の出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ群発区間である閉眼・群発区間に対する注意力評価、
前記瞬目持続時間、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、前記瞬目頻度、前記閉瞼時の相対速度の逆数、前記開瞼時の相対速度の逆数、瞬目中の閉眼時間、及び前記瞬目の出現割合のうちの少なくとも1つに基づく、瞬目区間且つ群発区間である瞬目・群発区間に対する注意力評価、
前記マイクロサッカード割合、前記サッカード相対速度、前記開瞼度の標準偏差、及び前記開瞼度平均値のうちの少なくとも1つ、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるか、前記マイクロサッカード頻度、及び前記開眼区間持続時間のうちの少なくとも1つに基づく、開眼区間且つ非群発区間である開眼・非群発区間に対する注意力評価、
前記開瞼度の標準偏差、及び前記開瞼度平均値のうちの少なくとも1つ、並びに、前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、及び前記閉眼区間持続時間のうちの少なくとも1つに基づく、閉眼区間且つ非群発区間である閉眼・非群発区間に対する注意力評価、
前記開眼/閉眼/瞬目のいずれか、及び前記開眼・瞬目区間が群発区間に含まれるかのうちの少なくとも1つに基づく、瞬目区間且つ非群発区間である瞬目・非群発区間に対する注意力評価、
のうちの少なくとも1つを求める注意力評価ステップと、
を含む注意力低下状態推定方法。
【0206】
(20)
前記注意力評価は、ナイーブベイズ推定により得られた、注意力低下レベルの各々の推定出現確率である項(16)~(19)のいずれか1項に記載の注意力低下状態推定方法。
【0207】
(21)
対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定することによって得られた眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間を判定する区間判定ステップと、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記開眼区間の各々のマイクロサッカード割合及び/又は前記開眼区間の各々のマイクロサッカード突度を算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出ステップと、
前記開眼区間に対して、前記開眼区間の各々のマイクロサッカード割合及び/又は前記マイクロサッカード突度に少なくとも基づいて、注意力評価を求める注意力評価ステップと、
を備える注意力低下状態推定方法。
【0208】
(22)
対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定することによって得られた眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間を判定する区間判定ステップと、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記開眼区間の各々のマイクロサッカード割合及び/又はサッカード相対速度を算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出ステップと、
前記開眼区間に対して、前記マイクロサッカード割合及び/又はサッカード相対速度に少なくとも基づいて、注意力評価を求める注意力評価ステップと、
を備え、
前記注意力評価は、3つ以上の注意力低下レベルのいずれであるかの評価である注意力低下状態推定方法。
【0209】
(23)
対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定することによって得られた眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間及び/又は閉眼区間を判定する区間判定ステップと、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記開眼区間及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度の標準偏差及び/又は開瞼度平均値を算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出ステップと、
前記開眼区間及び/又は前記閉眼区間に対して、前記開瞼度の標準偏差及び/又は開瞼度平均値に少なくとも基づいて、注意力評価を求める注意力評価ステップと、
を備え、
前記注意力評価は、3つ以上の注意力低下レベルのいずれであるかの評価である注意力低下状態推定方法。
【0210】
(24)
対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定することによって得られた眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、群発区間を判定する区間判定ステップと、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記群発区間の各々の瞬目持続時間を算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出ステップと、
前記群発区間に対して、前記瞬目持続時間に少なくとも基づいて、注意力評価を求める注意力評価ステップと、
を備え、
前記注意力評価は、3つ以上の注意力低下レベルのいずれであるかの評価である注意力低下状態推定方法。
【0211】
(25)
対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定することによって得られた眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間を判定する区間判定ステップと、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記開眼区間の各々のマイクロサッカード割合及びサッカード相対速度を算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出ステップと、
前記開眼区間に対して、前記マイクロサッカード割合及びサッカード相対速度に少なくとも基づいて、注意力評価を求める注意力評価ステップと、
を備える注意力低下状態推定方法。
【0212】
(26)
対象者の眼球運動及び眼瞼活動を測定することによって得られた眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、開眼区間及び/又は閉眼区間を判定する区間判定ステップと、
前記眼球運動・眼瞼活動データに基づいて、前記開眼区間及び/又は前記閉眼区間の各々の開瞼度の標準偏差及び開瞼度平均値を算出する眼球運動・眼瞼活動関連情報算出ステップと、
前記開眼区間及び/又は前記閉眼区間に対して、前記開瞼度の標準偏差及び開瞼度平均値に少なくとも基づいて、注意力評価を求める注意力評価ステップと、
を備える注意力低下状態推定方法。
【0213】
(27)
項(16)~(26)のいずれか1項に記載の注意力低下状態推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【0214】
(28)
項(27)に記載のプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【符号の説明】
【0215】
1 注意力低下状態推定システム
11 眼球運動・眼瞼活動測定部
12 PVT実施部
13 区間判定部
15 眼球運動・眼瞼活動関連情報算出部
17 注意力評価部
18 事前確率・尤度算出部
19 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15