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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】分離装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 29/00 20060101AFI20220112BHJP
   B01D 24/38 20060101ALI20220112BHJP
   B01D 29/88 20060101ALI20220112BHJP
   B03B 5/00 20060101ALI20220112BHJP
   B03B 5/28 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
B01D23/02 A
B01D23/20
B03B5/00 Z
B03B5/28 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017044599
(22)【出願日】2017-03-09
(65)【公開番号】P2018144008
(43)【公開日】2018-09-20
【審査請求日】2020-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000229128
【氏名又は名称】ベルテクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】特許業務法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 孝太郎
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-248026(JP,A)
【文献】特開2011-020052(JP,A)
【文献】特開2006-142261(JP,A)
【文献】特開2007-090144(JP,A)
【文献】特開2013-133588(JP,A)
【文献】特開2014-008487(JP,A)
【文献】特開2016-112543(JP,A)
【文献】米国特許第04298465(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D29/00-29/96
B01D35/00-37/08
B03B1/00-13/06
B04C1/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入する液体に含まれる固形物を分離する分離装置であって、
第一の面に配置された固形物を含む液体が流入する流入口と、前記第一の面に対し交差する方向の側面に配置されたスクリーンと、前記第一の面及び該第一の面に対向する対向面に配置された前記流入口から流入した液体を上下方向の旋回流にするための誘導部と、を有する流入室と、
液体が流出する流出口を有する流出室と、を有する分離槽を有し、
前記流入室を構成する対向面であって前記流入口よりも上部に設けられ、分離槽の外部に向けて一部が傾斜した傾斜部材によって構成され、該流入室に滞留した固形物を一部の液体と共に分離槽から排出する排出部を設けたことを特徴とする分離装置。
【請求項2】
流入する液体に含まれる固形物を分離する分離装置であって、
第一の面に配置された固形物を含む液体が流入する流入口と、前記第一の面に対し交差する方向の側面に配置されたスクリーンと、前記第一の面及び該第一の面に対向する対向面に配置された前記流入口から流入した液体を上下方向の旋回流にするための誘導部と、を有する流入室と、
液体が流出する流出口を有する流出室と、を有する分離槽を有し、
前記流入室を構成する第一の面の下部に設けた誘導部と対向面の下部に設けた誘導部の間に設けられ、端部が分離槽の外部であって前記流入口と略同じ高さか僅かに低く配置された排出路として構成され、該流入室に滞留した固形物を一部の液体と共に分離槽から排出する排出部を設けたことを特徴とする分離装置。
【請求項3】
流入する液体に含まれる固形物を分離する分離装置であって、
第一の面に配置された固形物を含む液体が流入する流入口と、前記第一の面に対し交差する方向の側面に配置されたスクリーンと、前記第一の面及び該第一の面に対向する対向面に配置された前記流入口から流入した液体を上下方向の旋回流にするための誘導部と、を有する流入室と、
液体が流出する流出口を有する流出室と、を有する分離槽を有し、
前記流入室を構成する第一の面であって、前記流入口と該第一の面の下部に設けた誘導部との間に設けた排出部材として構成され、該流入室に滞留した固形物を一部の液体と共に分離槽から排出する排出部を設けたことを特徴とする分離装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載された分離装置を構成する排出部の排出側の端部に、排出された固形物を収集するための収集部材を配置したことを特徴とする分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場やプラント或いは下水道管路、農業用水路等の固形物を含んだ液体の排水処理施設などに用いられる分離装置に関し、特に、分離された固形物を一部の液体と共に排出し得るようにした分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば都市部に敷設された雨水排水処理施設に流入する雨水、農業用水路を流れる農業用水などの中には、土砂類、紙類、落ち葉等を含む種々のゴミ類からなる固形状の不純物(以下「固形物」という。)が混入しているのが一般的である。これらの固形物は、雨水排水処理施設に於ける処理能力の低下や、農業施設に対する水質汚濁、環境汚染の原因となる虞があるため、雨水や農業用水から分離しておくことが好ましい。
【0003】
流れる水から固形物を分離する分離装置として、排水に水平方向の旋回流(スワール)を発生させ、その旋回流により固形物を分離する分離装置があり、そのような分離装置として、例えばドイツのUFT社の商品名フルードセップが知られている。しかしフィルター若しくはスクリーンを有しない分離装置は、メンテナンスは容易であるが浮遊性や細かい固形物の確実な分離・捕捉は困難である。
【0004】
上記問題を解決する分離装置として、縦方向に設置したスクリーンを有し、このスクリーンに沿って流れる水を垂直面内で上下方向に旋回させて固形物を分離してスクリーンから外部に排水するように構成したものがある(例えば特許文献1等)。この発明では、スクリーンによって分離した固形物を下方に設けた第2室に堆積させている。そして、第2室に堆積した固形物を排出する場合には、分離装置の運転を停止させると共に先端部分を第2室に到達させた吸引管を利用して吸引し、或いは第2室に接続された開閉弁を開放して排出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4668290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された分離装置では、流れる水に含まれた固形物を第1室で分離して第2室に堆積させることができる。しかし、第2室に堆積した固形物を排出する場合、常時水が流れている状態で固形物を排出することが困難であるため、分離装置を停止させて吸引管による吸引、或いは開閉弁を操作することが必要となる。このため、分離装置を長時間連続させて運転することができないという問題や、人手を必要とするという問題がある。
【0007】
また、第2室に堆積した固形物は排出する手段が設けられているものの、第2室に落下することなく、第1室の旋回流と共に旋回している固形物を排出する構造は有していない。このため、見掛け比重が小さく、第1室に於ける旋回流に浮上しているような固形物や、見掛け比重が流れる水と大きな差がなく、第1室に於ける旋回流と共に旋回を継続しているような固形物を排出することができない。このような固形物を排出する場合、分離装置を停止させて第1室にある水を固形物ごと排出することが必要となり、前述したと同様の問題が生じている。
【0008】
本発明の目的は、流れる水のエネルギを利用して人手を要することなく分離した固形物の排出を行うことができる分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決する本発明の分離装置は、流入する液体に含まれる固形物を分離する分離装置であって、第一の面に配置された固形物を含む液体が流入する流入口と、前記第一の面に対し交差する方向の側面に配置されたスクリーンと、前記第一の面及び該第一の面に対向する対向面に配置された前記流入口から流入した液体を上下方向の旋回流にするための誘導部と、を有する流入室と、液体が流出する流出口を有する流出室と、を有する分離槽を有し、前記流入室に滞留した固形物を一部の液体と共に分離槽から排出する排出部を設けたものである。
【0010】
第1の分離装置、前記排出部は、前記流入室を構成する対向面であって前記流入口よりも上部に設けられ、分離槽の外部に向けて一部が傾斜した傾斜部材によって構成されている。
【0011】
また、第2の分離装置、前記排出部は、前記流入室を構成する第一の面の下部に設けた誘導部と対向面の下部に設けた誘導部の間に設けられ、端部が分離槽の外部であって前記流入口と略同じ高さか僅かに低い配置された排出路として構成されている。
【0012】
また、第3の分離装置、前記排出部は、前記流入室を構成する第一の面であって、前記流入口と該第一の面の下部に設けた誘導部との間に設けた排出部材として構成されている。
【0013】
更に、上記何れかの分離装置に於いて、前記排出部の排出側の端部に、排出された固形物を収集するための収集部材を配置したことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る分離装置は、固形物を含む液体が流入する流入口が配置された第一の面と、第一の面に対向する対向面と、第一の面と交差する方向の側面に配置されたスクリーンと、第一の面及び対向面に配置された誘導部を有する流入室と、液体が流出する流出口を有する流出室と、を有する分離槽を有する。このため、流入口から流入した固形物を含む液体は誘導部に誘導されて流入室内を上下方向に旋回し、この過程で液体はスクリーンを通過して流出し、固形物は流入室内に残ることで分離することができる。
【0015】
分離装置が排出部を有するため、流入した液体から分離された固形物は、液体と共に流入室内で旋回を継続し、排出部に到達したとき、旋回している液体のエネルギにより、該液体の一部と共に分離槽の外部に排出される。
【0016】
特に、排出部を流入室の対向面で且つ流入口よりも上部に設けた外部に向けて一部が傾斜した傾斜部材によって構成した場合、見掛け比重が小さく旋回する液体の表面に浮上した状態の固形物を排出することができる。傾斜部材が流入口よりも上部に設けられているため、浮上した状態の固形物が存在しても直ちに排出されることはなく、流入室内の水位の上昇に伴って浮上した固形物を上部から排出することができる。
【0017】
また、排出部を流入室の第一の面と対向面の下部に設けた誘導部の間に設けられ、端部が分離槽の外部で流入口と略同じ高さに配置された排出路として構成した場合、見掛け比重が液体よりも大きく、液体から沈殿するような固形物を排出することができる。即ち、この排水路は流入室の底部に開口し、端部が分離槽の外部で流入口と略同じ高さか僅かに低い配置される。このため、旋回する液体から沈下した固形物は排水路に落下し、分離槽の内部の水位が流入口と同じになったとき、液体の一部は排水ロの端部から排出され、同時に排水路に落下した固形物も液体と共に排出される。
【0018】
また、排出部を流入室の第一の面であって、流入口と下部に設けた誘導部との間に設けた排出部材として構成された場合、見掛け比重が液体と同じ程度の固形物を排出することができる。即ち、排出部材が第一の面に於ける流入口と誘導部の中間に構成されているため、旋回流と共に旋回している固形物は最も強い遠心力が作用した状態で排出部材に到達することとなる。このため、固形物を液体の一部と共に排出することができる。
【0019】
更に、排出部の排出側の端部に収集部材を配置した場合には、排出された固形物のみを収集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施例に係る分離装置の構成を説明する図である。
図2】第2実施例に係る分離装置の構成を説明する図である。
図3】第3実施例に係る分離装置の構成を説明する図である。
図4】分離装置の利用例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る分離装置は、落ち葉や土砂或いは一般ごみ等の固形物を含んで流れる液体(以下「水」という)からこれらの固形物を分離し、分離した固形物を流れる水のエネルギを利用して一部の水と共に排出し得るように構成したものである。このため、分離装置の稼働を停止させて固形物の排出を行う必要がなく、保守作業を容易に行うことが可能となる。
【0022】
本発明に係る分離装置は、水が固形物を含んで流れる下水道処理施設や工場やプラントの排水処理施設、或いは農業用水路等に適用することが可能である。例えば、開放された水路を流れ落ち葉や砂などの固形物が混入しやすい農業用水路に於いて、流れる水の速度エネルギを取り出して仕事をさせるような場合、農業用水路の本流から一部を分流させたバイパス水路に適用することが可能である。この場合、分流させた水から固形物を分離した後の水の速度エネルギを仕事に変換し、分離した固形物を再度本流に排出しても良い。
【0023】
また、分離装置から一部の水と共に排出した固形物を如何に処理するかについては限定するものではなく、固形物の大きさや重量等の条件に対応して適宜処理することが好ましい。例えば、固形物が落ち葉や合成樹脂の破片のように比較的大きい場合、固形物を籠状の容器に収容し、水は分離後の水路に戻すことで良い。また、固形物が土砂のように比較的比重が大きい場合、固形物と水を箱状の容器に収容し、水の上澄みを分離後の水路に戻すことで良い。更に、固形物が粒子の小さい砂のような場合、固形物と水を目の細かい袋に収容し、袋から浸出した水を分離後の水路に戻すことで良い。
【0024】
更に、分離装置の用途によっては、一部の水と共に排出された固形物を元の水路に戻すように構成しても良い。即ち、本発明に係る分離装置は、分離装置によって分離された固形物を該分離装置から外部に排出し得ればよく、排出した固形物を如何に処理するかについてを限定するものではない。例えば、排出した固形物を分別して再利用したり、単に廃棄することでも良い。
【0025】
以下、本発明に係る分離装置の実施例について説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は本発明の分離装置の第1実施例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。本実施例に係る分離装置Aは、例えば合成樹脂シート片や木片等に代表される見掛け比重が小さく、水に浮上した状態で流れる固形物Bを分離すると共に排出し得るように構成されている。
【0027】
分離装置Aは、分離槽1と、分離槽1の内部を流入室2と流出室3に仕切る仕切体4と、仕切体4に配置されたスクリーン5と、流入室2に形成された流入口6と、流出室3に形成された流出口7を備えている。流入口6は第一の面となる流入室2の周壁2aに設けた貫通孔により形成され、流出口7は流出室3を構成する周壁(分離槽1の周壁と共通する周壁)に設けた貫通孔により形成される。
【0028】
そして流入口6には、例えば下水道或いは農業用水路等からなる上流側の管路に接続するための接続管6aが接続され、流出口7には下流側の管路に接続するための流出管7aが接続される。しかし、必ずしも接続管6a、流出管7aを必要とするものではなく、下水道或いは農業用水等の管路を直接流入口6と流出口7に接続することも可能である。
【0029】
分離槽1の上部は開放された状態であっても良く、蓋体を開閉可能に設けていても良い。また、仕切体4の上端位置は分離槽1の上端よりも低く設定されている。このため、流入室2と流出室3は仕切体4の上端部分で連通しており、流入室2に於ける水位が仕切体4を超えたとき、水が流出室3にオーバーフローし得るように構成されている。
【0030】
仕切体4は分離槽1の内部を流入室2と流出室3に仕切る枠体として構成されている。この仕切体4の一部は分離槽1と共通して流入室2を構成し、この共通した面が第一の面となる周壁2aを構成している。この周壁2aには流入口6が配置され、該周壁2aの面に対して交差する方向の側面にはスクリーン5が配置されている。また、周壁2aに対向する面には、対向面としての周壁2bが形成されている。スクリーン5は必ずしも仕切体4の側面(流入室2の側面)に固定される必要はなく、分離槽1に直接固定することも可能である。
【0031】
スクリーン5としては、この分野で一般に慣用されている、薄いステンレス板などに数ミリの大きさの孔を多数形成したパンチングメタルで作られたパンチングメタルスクリーン、やウェッジワイヤスクリーンを使用することが可能である。パンチングメタルスクリーンに形成される孔の径は分離しようとする固形物に対応してΦ1~Φ10程度の中から適宜設定される。本実施例ではパンチングメタルスクリーンを使用している。
【0032】
流入口6は、流入室2の周壁2aに於ける仕切体4の上端部よりも低い位置に配置され、該流入室2の上部から水を水平に供給するように構成されている。また、流入口6から供給される水が流入室2の上部を水平に移動して突き当たる反対側の周壁2bには、移動してきた水を下降させ、それにより流入室2の内部に上下方向の旋回流を生成させるために形成された誘導部8aが設けられている。
【0033】
また、周壁2bの下方には、誘導部8aによって下降流に変換された水を周壁2a方向への流れに誘導する誘導部8bが設けられている。更に、周壁2aの下方には、誘導部8bによって周壁2a方向への水平流に変換された水を上方への流れに誘導する誘導部8cが設けられており、該誘導部8cの上方には上昇した水を流入口6からの水流と同方向に誘導する誘導部8dが設けられている。従って、供給部6から流入室2に供給された水は各誘導部8a~8dによって流れ方向が誘導され、該流入室2の内部で旋回流となる。
【0034】
各誘導部8a~8dは、水の流れ方向を円滑に変換する機能を有する。このため、この機能を発揮し得るような形状を有していればよく、例えば円弧状、或いは略45度の斜壁として形成することが好ましい。
【0035】
流入室2の下方には堆積室9が形成されている。この堆積室9には、比重の大きい固形物が水と共に流入室2の内部に流入して旋回したとき、旋回する水から下方に落下した比重の大きい固形物が堆積する。このため、流入室2の底面2cには、誘導部8bと誘導部8cとの間に開口9aが形成されている。
【0036】
周壁2bの上部に設けた誘導部8aの上方に排出部を構成するシュート10が設けられている。このシュート10は、一方側の端部10aが誘導部8aの上部であって仕切体4の上端部と略等しいか僅かに低い位置に配置され、他方の端部10bが分離槽1の外部に配置されている。そして、端部10aから分離槽1の外部に向けて略水平な状態で延長され、分離槽1の外部に出た後一部が傾斜部10cとして構成され、その後、他方の端部10bに至っている。
【0037】
尚、シュート10は上記形状に限定するものではなく、流出管7aとの位置関係で適宜設定することが好ましい。
【0038】
上記の如く構成された分離装置Aでは、流入口6から流入室2に流入した水は、該流入室2の上部を矢印のように水平方向に移動し、誘導部8aに誘導されて下降し、下方に設けた誘導部8bにより水平方向に戻るように誘導されて流入口6の下方に移動する。流入口6の下方に移動した水は誘導部8cにより上昇方向に誘導され、更に誘導部8dによって流入口6による流入方向と同方向に誘導されることで、流入室2内部の水に上下方向の旋回流が生成される。
【0039】
流入室2の内部で上下方向への旋回流が生成されたとき、見掛け比重の小さい固形物Bは旋回流の上部に浮上することとなる。また、旋回する水の一部は2つのスクリーン5から流出室3側に流出し、水に含まれている見掛け比重の大きい固形物はスクリーン5の表面に補足されて分離され、底面2cに形成した開口9aから堆積室9に落下して堆積される。流入口6から水が流入している間は、流入室2の内部に継続して上下方向の旋回流が生成し、固形物Bを分離した水がスクリーン5を通過して流出室3側に流出する。
【0040】
前述したように、シュート10の端部10aは誘導部8aの上部で仕切体4の上端部と略等しいか僅かに低い位置に配置され、流入口6も仕切体4の上端部よりも低い位置に配置されている。このため、見掛け比重が小さい固形物Bが水と共に流入室2に流入したとき、この固形物Bは水の旋回に関わらず、流入室2の上部での浮上状態を保持することになる。そして、流入室2の水位が上昇して水面がシュート10の端部10aの高さに到達したとき、水面の水がシュート10に流れ込み、このときのシュート10に流れ込む水のエネルギによって、水面に浮上している固形物Bもシュート10に移動して端部10bから排出される。
【0041】
流入室2内の水位は、流入する水量とスクリーン5を通過して流出する水量とに応じて変化する。通常は流入する水量と流出する水量は同じであり、水位は略一定している。しかし、流入する水量が流出する水量よりも多くなると水位が上昇することとなる。例えば上流側の流量の増加によって流入する水量が一時的に流出する水量よりも多くなる場合、或いは流入室2に滞留している固形物の量が過多となった場合などがある。
【0042】
上記の如くして流入室2の水位がシュート10の端部10aよりも高くなったとき、流入室2内に於ける旋回流の一部と、浮上している固形物Bがシュート10から分離槽1の外部に排出される。
【0043】
シュート10の端部10bから排出された水と固形物Bをどのように処理するかは限定するものではなく、専用の排出路を設けて処理施設に誘導することが可能である。また、シュート10の端部10bの下方に容器11を配置しておき、この容器11に分離した固形物を収容することでも良い。特に、シュート10の端部10bの下方に容器11を配置した場合には、該容器11をガイド12によってシュート10から退避し得るように構成することが好ましい。
【実施例2】
【0044】
次に、第2実施例に係る分離装置Aの構成について説明する。図2は分離装置の第2実施例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は排出管を流出管に接続した構成を説明する図、(c)は排出管を容器に接続した構成を説明する図である。尚、図に於いて前述の第1実施例と同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付して説明を省略する(以下の各実施例も同じ)。
【0045】
本実施例に係る分離装置Aは、例えば石のように見掛け比重が大きく、流入室2に於ける水の旋回に関わらず速やかに流入室2の底面2cに落下するような固形物Bを分離すると共に排出し得るように構成されている。
【0046】
本実施例に係る分離装置Aでは、流入室2の底面2cに開口14を形成すると共に、該開口14を一方の端部として流入室2の下側を通り、他方の端部15aが分離槽1の外部であって流入口6と略同じ高さに配置された排出路15が形成されている。流入室2の底面2cに於ける開口14の形成位置は特に限定するものではない。
【0047】
しかし、開口14は、誘導部8aに誘導されて周壁2bに沿って下降した水が、誘導部8bから誘導部8cに向けた水平な流れに変換されて、この流れが安定した位置にあることが好ましい。開口14がこのような位置に形成されることで、流入室2に流入した見掛け比重が大きく底面2cに落下した固形物Bは、誘導部8bから誘導部8c方向への流れに伴って円滑に移動し、開口14から排出路15に移動することが可能となる。
【0048】
特に、開口14は、水の流れ方向上流側(誘導部8b側)の端部14aと下流側(誘導部8c側)の端部14bとの間に高さhの段差を有している。高さhの寸法については特に限定するものではないが、想定した固形物Bの大きさと略等しいか僅かに大きい程度で良い。開口14の端部14a、14bの間に段差を形成するには、周壁2aの下方に形成された誘導部8cを底面2cよりも目的の段差分高く配置し、端部14aを底面2c側に、端部14bを誘導部8c側にして開口14を形成することで良い。
【0049】
上記の如く、開口14の端部14a、14bの間に段差を設けることによって、流入室2の底面2cに落下している固形物Bを、該底面2cに沿って流れる水のエネルギによって開口14方向に移動させることが可能である。そして、流れる水の一部を開口14から排出路15に分流させることで、固形物Bを円滑に排出することが可能である。
【0050】
尚、開口14の下部に於ける排出路15の上流側の端部は、前述の体積室9を供用することが可能である。この場合、見掛け比重の大きい固形物を排出路15に於ける開口14の下方に堆積させた状態で、より見掛け比重の小さい固形物を排出することが可能である。
【0051】
上記の如く構成された分離装置Aでは、流入室2に流入した固形物Bは水と共に旋回流を形成するものの、見掛け比重が大きいため速やかに底面2cに落下し、旋回流と共に開口14に移動して排出路15に落下する。
【0052】
そして、図2(b)に示すように、排出路15の下流側の端部15aを流出管7aに接続した場合、該流出管7aを流れる水の流速によって吸引され、固形物の円滑な排出を実現することが可能である。
【0053】
また、同図(c)に示すように端部15aを容器11に開口させた場合、排出路15の端部15aは流入口6と略同じ高さに配置されているため、流入室2内の水位が端部15aよりも上昇したとき、排出路15に流れが生じることとなり、排出路15に落下した固形物Bは、この水の流れと共に移動し、端部15aから容器11に排出される。
【実施例3】
【0054】
次に、第3実施例に係る分離装置Aの構成について説明する。図3は分離装置の第実施例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。本実施例に係る分離装置Aは、見掛け比重が水と略同じ程度であり、流入室2の内部に形成された旋回流と共に旋回を継続しやすい固形物Bを排出し得るように構成されている。
【0055】
図に於いて、周壁2aであって誘導部8cと誘導部8dの間に開口17が形成されており、該開口17を一方の端部とする排出路18が構成されている。開口17の位置は特に限定するものではないが、上下の誘導部8c、8dの略中間であることが好ましい。また、排出路18には、目の細かい網状の容器16が取り付けられている。
【0056】
上記の如く構成された分離装置Aでは、見掛け比重が水と同程度の固形物Bには水の旋回に伴うエネルギによって遠心力が作用する。特に、周壁2aでは上下の誘導部8c、8dの間隔が狭いため、固形物Bには他の部位と比較して大きい遠心力が作用することとなる。このため、固形物Bは周壁2aに接触して上昇し、誘導部8c、8dの略中間に設けた開口17から排出路18に円滑に排出され、該排出路18に取り付けた網状の容器16に捕集される。
【0057】
本実施例に係る分離装置Aでは、流入室2の内部に於ける水位が開口17よりも高く、旋回流が継続していれば固形物Bを排出することが可能である。
【0058】
次に、上記の如く構成された分離装置Aを利用する例について図4により説明する。本例は、農業用水を利用した小電力発電装置に適用したものである。
【0059】
農業用水路Cから分岐したバイパス水路C(流入口6と接続された接続管6a、流出口7と接続された流出管7a)が構成されており、該バイパス水路Cの上流側に分離装置Aが配置され、分離装置Aの下流側に小電力発電装置Dが配置されている。
【0060】
従って、上流側のバイパス水路Cに流入した農業用水に落ち葉や土砂或いは木片やプラスチック片等の固形物Bが含まれている場合、これらの固形物Bは流入室2で分離されてシュート10を介して、或いは排出路15を介して元の農業用水路Cに戻される。
【0061】
また、流入室2に於けるスクリーン5を経て流出室3に流出した固形物Bを含むことのない水は、バイパス水路Cによって小電力発電装置Dに導かれ、該小電力発電装置Dに配置された水車を回転させることが可能である。そして、小電力発電装置Dを通過した水は、元の農業用水路Cに合流し、その後、通常の農業用水として利用される。
【0062】
上記構成に於いて、分離した固形物Bを元の農業用水路Cに戻すようにしたが、この構成に限定するものではなく、前述の第1実施例、第2実施例と同様に容器に収容して処理しても良いことは当然である。
【0063】
また、固形物Bを分離した後の水によって小電力発電装置Dを動作し得るように構成したが、この構成も限定するものではなく、流れる水に含まれた固形物Bを排除することで有効な作業を行うことが可能な装置、例えば排水処理装置などに適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る分離装置は、固形物を含んだ流れる下水道の排水処理設備や工場、プラントに於ける排水処理設備、農業用水路などに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0065】
A 分離装置
B 固形物
C 農業用水路、バイパス水路
D 小電力発電装置
1 分離槽
2 流入室
2a、2b 周壁
2c 底面
3 流出室
4 仕切体
5 スクリーン
6 流入口
6a 接続管
7 流出口
7a 流出管
8a~8d 誘導部
9 堆積室
9a 開口
10 シュート
10a、10b 端部
10c 傾斜部
11、16 容器
12 ガイド
14、17 開口
14a、14b 端部
15、18 排出路
15a 端部
図1
図2
図3
図4