(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】弁装置及び内弁箱の固定方法
(51)【国際特許分類】
F16L 55/00 20060101AFI20220112BHJP
F16K 27/04 20060101ALI20220112BHJP
F16K 43/00 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
F16L55/00 C
F16K27/04
F16K43/00
(21)【出願番号】P 2018026805
(22)【出願日】2018-02-19
【審査請求日】2020-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永森 保行
【審査官】竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-223528(JP,A)
【文献】特開2006-194344(JP,A)
【文献】特開2009-019737(JP,A)
【文献】実開平01-116276(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/00
F16L 41/04
F16K 27/04
F16K 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の流体管に外嵌装着される外弁箱と、その外弁箱に収容され、前記流体管内を流れる流体の流路を遮断または切替可能な弁体を有する内弁箱と、前記外弁箱の内部を外部と連通させる連通口に
螺合されたネジ部材を含む固定手段と
、前記外弁箱と前記内弁箱との間を密閉する内パッキンと、を備え、
前記内パッキンは、前記外弁箱の内面と前記内弁箱の外面との間の隙間を密閉し且つ下方に密閉空間を形成する環状部を有し、
前記内弁箱の外面は、前記環状部よりも下方に形成された凹部を有し、
前記固定手段は、前記密閉空間内に位置する前記凹部に対して係止させることによって前記内弁箱が前記外弁箱に固定されるように構成された弁装置。
【請求項2】
前記連通口が、平面視において前記外弁箱から外側に突き出ないように設けられている請求項
1に記載の弁装置。
【請求項3】
既設の流体管に外嵌装着される外弁箱と、その外弁箱に収容され、前記流体管内を流れる流体の流路を遮断または切替可能な弁体を有する内弁箱と、前記外弁箱の内部を外部と連通させる連通口に内蔵されたピースと、前記外弁箱と前記内弁箱との間を密封する内パッキンを備え、
前記ピースが、前記連通口を介した外部からの操作により、前記外弁箱の内部に突出した突出位置と、前記外弁箱の内部に突出しないように前記連通口に収納された収納位置との間で変位可能であり、前記突出位置の前記ピースを前記内弁箱の外面に係止させることによって前記内弁箱が前記外弁箱に固定されるように構成され、
前記外弁箱の内面と前記内弁箱の外面との間に、前記内パッキンにより区画された密閉空間が形成されており、
前記連通口が、前記密閉空間を外部と連通させるようにして前記外弁箱に設けられている
、弁装置。
【請求項4】
既設の流体管に外弁箱を外嵌装着し、前記外弁箱に接続した切削装置を用いて前記外弁箱の内部で前記流体管を切削する切削工程と、
前記切削装置に代えて挿入装置を前記外弁箱に接続し、前記挿入装置を用いて前記外弁箱の内部に内弁箱を挿入する挿入工程と、
前記外弁箱に前記内弁箱を固定する固定工程と、を備え、
前記挿入工程では、前記外弁箱の内部を外部と連通させる連通口を介した外部からの操作により、前記連通口に内蔵されたピースを、前記外弁箱の内部に突出しないように前記連通口に収納しておき、
前記固定工程では、前記連通口を介した外部からの操作により、前記外弁箱の内部に前記ピースを突出させ、前記ピースを前記内弁箱の外面に係止させることで前記内弁箱を前記外弁箱に固定し、
前記切削工程では、前記連通口に密封状態で取り付けた治具を用いて、前記外弁箱の内部に突出しないように前記ピースを前記連通口に収納しておく
、内弁箱の固定方法。
【請求項5】
既設の流体管に外弁箱を外嵌装着し、前記外弁箱に接続した切削装置を用いて前記外弁箱の内部で前記流体管を切削する切削工程と、
前記切削装置に代えて挿入装置を前記外弁箱に接続し、前記挿入装置を用いて前記外弁箱の内部に内弁箱を挿入する挿入工程と、
前記外弁箱に前記内弁箱を固定する固定工程と、を備え、
前記挿入工程では、前記外弁箱の内部を外部と連通させる連通口を介した外部からの操作により、前記連通口に内蔵されたピースを、前記外弁箱の内部に突出しないように前記連通口に収納しておき、
前記固定工程では、前記連通口を介した外部からの操作により、前記外弁箱の内部に前記ピースを突出させ、前記ピースを前記内弁箱の外面に係止させることで前記内弁箱を前記外弁箱に固定し、
前記挿入工程では、前記内弁箱に装着された内パッキンにより、前記外弁箱と前記内弁箱との間を密封するとともに、前記外弁箱の内面と前記内弁箱の外面との間に、前記内パッキンにより区画された密閉空間を形成し、
前記連通口が、前記密閉空間を外部と連通させるようにして前記外弁箱に設けられている
、内弁箱の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の流体管に装着される外弁箱と、その外弁箱に収容される内弁箱とを備えた弁装置、及び、その内弁箱を外弁箱に固定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3には、既設の流体管に装着される外弁箱と、その外弁箱に収容される内弁箱とを備えた弁装置が記載されている。内弁箱は、流体管内の流体の流路を遮断可能な弁体を有する。また、この弁装置は、外弁箱の分割部の隙間を密封するパッキン(外パッキン)と、外弁箱とそれに収容された内弁箱との間を密封するパッキン(内パッキン)とを備える。この種の弁装置の組み立て作業では、挿入装置を用いて外弁箱の内部に内弁箱を挿入した後、その外弁箱から挿入装置を取り外す前に内弁箱を外弁箱に固定(または仮固定)する必要がある。
【0003】
従来は、特許文献1~3に記載されているように、外弁箱に内弁箱を固定するための固定手段として雄ねじ部材(ボルト)が利用されている。雄ねじ部材は、外弁箱またはその上方の接続部材に螺合されており、回転操作に応じて、その先端部を内部に突出させることができる。かかる固定手段によれば、内部に突出させた雄ねじ部材の先端部を内弁箱の外面に係止させることにより内弁箱が外弁箱に固定されるが、下記[1]及び[2]で挙げるような不都合があった。
【0004】
[1]従来の固定手段では、雄ねじ部材の先端部が回転しながら内弁箱の外面に押し当たるとともに、雄ねじ部材の先端部が内弁箱の外面に「線当たり」しやすいため、塗装を剥がしてしまうなど内弁箱の外面を傷付けることがあった。
[2]従来の固定手段では、内弁箱の反力や水圧に起因する曲げせん断荷重が雄ねじ部材に作用するため、経年変化により雄ねじ部材が曲がったり、雄ねじ部材のネジ山が歪んだりすることがあった。かかる現象は雄ねじ部材の回転操作に支障を及ぼし、将来的に内弁箱を撤去する必要が生じたときに問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-194344号公報
【文献】特開2016-223528号公報
【文献】特開2016-173133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、外弁箱に内弁箱を固定する際に内弁箱の外面を傷付けず、内弁箱を撤去するときに不都合を生じない弁装置と、その内弁箱の固定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る弁装置は、既設の流体管に外嵌装着される外弁箱と、その外弁箱に収容され、前記流体管内を流れる流体の流路を遮断または切替可能な弁体を有する内弁箱と、前記外弁箱の内部を外部と連通させる連通口に内蔵されたピースとを備え、前記ピースが、前記連通口を介した外部からの操作により、前記外弁箱の内部に突出した突出位置と、前記外弁箱の内部に突出しないように前記連通口に収納された収納位置との間で変位可能であり、前記突出位置の前記ピースを前記内弁箱の外面に係止させることによって前記内弁箱が前記外弁箱に固定されるように構成されたものである。
【0008】
この弁装置によれば、上記の如き連通口に内蔵されたピースを用いることにより、外弁箱に内弁箱を固定する際に内弁箱の外面を傷付けない。また、ピースが経年変化を起こしたとしても、従来の雄ねじ部材(ボルト)の先端部を内弁箱の外面に係止させる構成とは異なり、内弁箱を撤去するときに不都合を生じない。
【0009】
前記内弁箱の外面に係止する前記ピースの係止面が平坦面により形成されていることが好ましい。これにより、ピースの係止面が内弁箱の外面を損傷させない。更に、前記係止面が、前記外弁箱の内部に向かって上方に傾斜しているとともに、前記内弁箱の外面における前記係止面との接触部位が、前記係止面と同じ方向に傾斜した傾斜面により形成されている場合には、内弁箱の外面に対してピースを円滑に係止させることができる。
【0010】
前記連通口が、平面視において前記外弁箱から外側に突き出ないように設けられていることが好ましい。これにより、将来的に弁装置の周辺を掘削したときにバックホーなどの重機が連通口を引っ掛けてしまうことを防止できる。通常、流体管の上方を掘削する際は、重機を使用せず、流体管を損傷しないようにスコップなどによる手作業が行われるためである。
【0011】
前記外弁箱と前記内弁箱との間を密封する内パッキンを備え、前記外弁箱の内面と前記内弁箱の外面との間に、前記内パッキンにより区画された密閉空間が形成されており、前記連通口が、前記密閉空間を外部と連通させるようにして前記外弁箱に設けられているものでもよい。内パッキンにより区画された密閉空間には流体が浸入しないため、この密閉空間の内部にピースを突出させることができる。ピースが内蔵される連通口は外弁箱に設けられるため、外弁箱の高さ寸法が小さい場合にも適用できる。
【0012】
本発明に係る内弁箱の固定方法は、既設の流体管に外弁箱を外嵌装着し、前記外弁箱に接続した切削装置を用いて前記外弁箱の内部で前記流体管を切削する切削工程と、前記切削装置に代えて挿入装置を前記外弁箱に接続し、前記挿入装置を用いて前記外弁箱の内部に内弁箱を挿入する挿入工程と、前記外弁箱に前記内弁箱を固定する固定工程と、を備え、前記挿入工程では、前記外弁箱の内部を外部と連通させる連通口を介した外部からの操作により、前記連通口に内蔵されたピースを、前記外弁箱の内部に突出しないように前記連通口に収納しておき、前記固定工程では、前記連通口を介した外部からの操作により、前記外弁箱の内部に前記ピースを突出させ、前記ピースを前記内弁箱の外面に係止させることで前記内弁箱を前記外弁箱に固定するものである。
【0013】
この固定方法によれば、上記のように外弁箱の内部に突出させたピースを内弁箱の外面に係止させることにより、外弁箱に内弁箱を固定する際に内弁箱の外面を傷付けない。また、ピースが経年変化を起こしたとしても、従来の雄ねじ部材(ボルト)の先端部を内弁箱の外面に係止させる方法とは異なり、内弁箱を撤去するときに不都合を生じない。外弁箱の内部に内弁箱を挿入する際は、連通口にピースを収容しておくので、内弁箱にピースが干渉しない。
【0014】
前記切削工程では、前記連通口に密封状態で取り付けた治具を用いて、前記外弁箱の内部に突出しないように前記ピースを前記連通口に収納しておくことが好ましい。これにより、切削工程では、切削装置にピースを干渉させることなく、またピースを外弁箱の内部に脱落させることなく、流体管内の流体が連通口から漏出することを防止できる。
【0015】
前記固定工程では、前記連通口にネジ部材を螺合することにより前記ピースを前記外弁箱の内部に突出させることが好ましい。これにより、ピースが外弁箱の内部に突出した状態を確保し、外弁箱に内弁箱を堅固に固定することができる。
【0016】
前記挿入工程では、前記内弁箱に装着された内パッキンにより、前記外弁箱と前記内弁箱との間を密封するとともに、前記外弁箱の内面と前記内弁箱の外面との間に、前記内パッキンにより区画された密閉空間を形成し、前記連通口が、前記密閉空間を外部と連通させるようにして前記外弁箱に設けられているものでもよい。内パッキンにより区画された密閉空間には流体が浸入しないため、この密閉空間の内部にピースを突出させることができる。ピースが内蔵される連通口は外弁箱に設けられるため、外弁箱の高さ寸法が小さい場合にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図8】外弁箱に挿入装置を接続した状態を示す縦断面図
【
図10】本発明の別実施形態における弁装置の要部断面図
【
図11】本発明の別実施形態における外弁箱の平面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
[弁装置の構成]
図1,2に示すように、弁装置1は、既設の水道管K(流体管の一例)に外嵌装着される外弁箱3と、その外弁箱3に収容される内弁箱4と、外弁箱3と内弁箱4との間を密封する内パッキン6とを備える。図面上での区別を容易にするため、
図2(及び
図4,5,8,9)では、外観で示した内パッキン6を着色して描いている。内弁箱4は、水道管K内を流れる流体(即ち、水)の流路を遮断または切替可能な弁体2を有する。外弁箱3は分割構造を有しており、その分割部30の隙間が外パッキン5,5によって密封されている。本実施形態では、水道管Kの周方向の二箇所に分割部30,30が設定され、それらが水平方向に位置している。
【0020】
外弁箱3は、水道管Kの所定箇所の外周面を密封状態で取り囲んでいる。外弁箱3は、上側部材3Aと下側部材3Bとで構成された上下二つ割り構造を有する。外パッキン5は、上側部材3A及び下側部材3Bの各々に取り付けられている。外パッキン5は、内パッキン6とは別個に形成されている。
図1は、上側部材3Aと下側部材3Bとの合わせ目となる分割部30の高さで切断した横断面であり、
図2のB-B断面に相当する。
図2は、
図1のA-A断面に相当するが、内弁箱4を側面視で描いている。上側部材3Aと下側部材3Bとは、ボルト孔31に挿通されたボルト及びそれに螺合されたナットからなる固着具(図示せず)によって互いに接合されている。
【0021】
上側部材3Aには、内弁箱4などを出し入れ可能な開口部32が形成されている。
図2では、開口部32を施蓋するようにして蓋体36が外弁箱3に接続されている。本実施形態では、外弁箱3に分岐配管7が接続されている。分岐配管7は、断面ではなく外観で描かれている。分岐配管7は、外弁箱3に接続される一方側の端部7aと、図示しない分岐管または栓体に接続される他方側の端部7bとを有する。端部7aは、分割部30に挟み込んで接続されているが、これに限定されない。端部7bは、受口として形成されているが、これに限定されない。外弁箱3の内面と分岐配管7の外面との間の隙間は、外パッキン5,5によって密封されている。
【0022】
内弁箱4は、軸方向を上下に向けた略円筒状の筐体により構成されている。内弁箱4は、外弁箱3と同様に、金属材により形成されている。
図2の内弁箱4は、外観で描かれている。内弁箱4の側面には、水道管Kの軸方向に沿って設けられた一対の貫通孔41,42と、分岐配管7の軸方向に沿って設けられた貫通孔43とが形成されている。弁体2は、弁軸21の操作に応じて回転自在に構成されている。弁体2によって貫通孔41~43を選択的に閉塞することで、流路を遮断したり切り替えたりすることができる。内弁箱4の上方には、弁軸21に連結された操作部23を備える減速機22が被せられている。
【0023】
内パッキン6は、内弁箱4の外面に装着されている。内パッキン6は、外パッキン5と同様に、ゴムなどの弾性材により形成されている。
図1,2のように、内弁箱4は、内パッキン6を介して外弁箱3の内面に当接する。
図3,4に示すように、内パッキン6は、内弁箱4の上部側面の周囲に沿って装着される環状部61と、環状部61から下方に延び、内弁箱4の側面から底面に亘って装着される複数のU字状部62とを有する。本実施形態では、内パッキン6が三つのU字状部62を有する例を示す。これらのU字状部62は、それぞれ貫通孔41~43を取り囲むように配置されている。
【0024】
環状部61は、開口部32において、外弁箱3の内面と内弁箱4の外面との間の隙間を密封する。U字状部62は、貫通孔41~43の周囲において、外弁箱3の内面と内弁箱4の外面との間の隙間を密封する。隣り合うU字状部62の間には、外弁箱3の内面と内弁箱4の外面とで挟まれた密閉空間Sが形成される。
図3では、図面上での区別を容易にするため、密閉空間Sを着色して描いている。密閉空間Sは、内弁箱4の側面の三箇所で上下方向に延びており、それらが内弁箱4の底面側で連通している。外弁箱3と内弁箱4との間でのシール性能(つまりは止水性能)が適切に発揮されていれば、水道管K内の水は密閉空間Sに浸入しない。
【0025】
内パッキン6は、内弁箱4の外面に形成された溝44(
図5参照)に嵌入されているが、後述するような弁装置1を組み立てる作業において、外弁箱3の内面に内パッキン6を接触させながら内弁箱4を下方へ移動させる際、内弁箱4(の溝44)から内パッキン6が離脱する恐れがある。そこで、この弁装置1では、そのような内パッキン6の離脱を防止できるよう、内パッキン6に、複数のU字状部62を互いに連結する連結部63が設けられている。内パッキン6の離脱は内弁箱4の底面で起こりやすいため、連結部63は、少なくとも内弁箱4の底面側に配置されていることが好ましい。これにより、内パッキン6を圧縮状態で擦りながら内弁箱4が挿入されても、内弁箱4の底面での内パッキン6の離脱を効果的に防止できる。
【0026】
U字状部62は、
図3のように、上下方向に延びて内弁箱4の側面に装着される一対の側方部分62a,62bと、その一対の側方部分62a,62bの下端部を互いに接続して内弁箱4の底面に装着される下方部分62cとを有する。また、
図4のように、内弁箱4の底面側から見て、U字状部62は、円弧状部分62Aと、その円弧状部分62Aの両端から内弁箱4の側面に向けて延びた一対の直線状部分62S,62Sとを含んでいる。かかる構成によれば、すり鉢状に形成された外弁箱3の底部内面にU字状部62(の下方部分62c)を密着させやすい。円弧状部分62Aは、環状部61の周方向に沿って円弧状に形成されている。直線状部分62Sは、円弧状部分62Aの端部から屈曲して延びている。
【0027】
連結部63は、円弧状部分62Aの延長方向に沿って設けられている。これにより、内パッキン6において張力が作用する方向に連結部63が設けられるので、U字状部62を強固に連結できる。これに代えてまたは加えて、後述する別実施形態のように直線状部分62Sの延長方向に沿って連結部63を設けることも可能である。また、内パッキン6の離脱は、その内パッキン6の屈曲した部位で起こりやすいため、
図4で示したような内パッキン6の屈曲部位に連結部63を設けることが、離脱防止効果を高めるうえで好ましい。
【0028】
図3~5に示すように、本実施形態では、連結部63がU字状部62(の下方部分62c)よりも細く形成され、密閉空間Sが連結部63によって遮断されないように構成されている。このため、密閉空間Sでは、内弁箱4の側面の上下方向に延びた空間と、内弁箱4の底面側の空間との連通状態が確保されている。
図5の例では、内弁箱4の外面に形成された溝44に連結部63が嵌入されているため、かかる連通状態が確実に保持される。但し、外弁箱3の内面と内弁箱4の外面との隙間に連結部63を配置することも可能であり、その場合においても、密閉空間Sを遮断しない程度に連結部63が十分に細く(即ち、小さい断面積で)形成される。
【0029】
図6に示すように、外弁箱3は、外弁箱3の内部を外部と連通させる連通口33と、その連通口33を開閉させる開閉部材34とを有する。
図2では、これらを断面ではなく外観で描いている。本実施形態では、連通口33が筒状に形成され、開閉部材34が止めねじ34aとプラグ34bとで構成されている。連通口33は、密閉空間Sを外部と連通させるようにして外弁箱3に設けられている。止めねじ34aは、連通口33に螺合されるネジ部材として構成されている。また、本実施形態では、外弁箱3に内弁箱4を固定するための固定手段が連通口33に内蔵されているが、これについては後述する。
【0030】
既述のように、外弁箱3と内弁箱4との間でのシール性能が適切に発揮されていれば、水道管K内の水は密閉空間Sに浸入しない。したがって、不断水状態で弁装置1を組み立てる際に、外弁箱3のドレン35や後述する挿入装置83のドレンから続けて水が排出されない場合は、外弁箱3と内弁箱4との間でのシール性能が適切に発揮されていることが確認される。そうでない場合は、密閉空間Sが浸水しているため、シール性能が適切に発揮されていないことが確認される。上記のように連結部63は密閉空間Sを遮断しないため、このシール性能の確認作業に支障を及ぼさない。
【0031】
[内弁箱の固定手段]
外弁箱3に内弁箱4を固定するための固定手段について説明する。
図6のように、この弁装置1は、外弁箱3の内部(本実施形態では密閉空間S)を外部と連通させる連通口33に内蔵されたピース37を備える。ピース37は、金属などの剛体で形成され、例えば鉄製である。ピース37には雄ねじが形成されていない。ピース37は、連通口33を介した外部からの操作により、外弁箱3の内部に突出した突出位置(
図6参照)と、外弁箱3の内部に突出しないように連通口33に収納された収納位置(
図7参照)との間で変位可能であり、突出位置のピース37を内弁箱4の外面に係止させることによって内弁箱4が外弁箱3に固定されるように構成されている。
【0032】
既述の通り、外弁箱3の内面と内弁箱4の外面との間には、内パッキン6により区画された密閉空間Sが形成されている。密閉空間Sは浸水しないため、この密閉空間Sの内部にピース37を突出させることができる。ピース37は、環状部61よりも下方で内弁箱4の側面に係止するため、外弁箱3の高さ寸法が小さくても適用可能である。また、ピース37が内蔵された連通口33は外弁箱3に設けられているので、内弁箱4を固定するための別個の部材を外弁箱3に接続する必要はない。よって、この弁装置1は、外弁箱3に内弁箱4を固定するうえで使い勝手に優れたものとなる。
【0033】
連通口33の内面は、ピース37の回動を規制する形状を有し、ピース37は回転不能な状態で連通口33に収容されている。そのため、後述するボルト部材38bを螺合する際に、ピース37の供回りを防止できる。
図6では、連通口33を介した外部からの操作により、具体的には連通口33に螺合されたネジ部材としての止めねじ34aによって、ピース37が突出位置に配置されている。止めねじ34の背面(
図6の右側の面)には、図示しない六角穴が形成されている。止めねじ34aを捩じ込むことにより、その止めねじ34aの先端面がピース37の背面を押圧し、密閉空間Sの内部に向けてピース37を変位させることができる。
【0034】
ピース37は、回転しながら内弁箱4の外面に押し当たるものではなく、しかも内弁箱4の外面に対して「面当たり」しやすいため、外弁箱3に内弁箱4を固定する際に内弁箱4の外面を傷付けない。また、内弁箱4の反力や水圧に起因する曲げせん断荷重が作用することでピース37が経年変化を起こしても、止めねじ34aを含む開閉部材34には影響を及ぼさないので、将来的に内弁箱4を撤去するときに不都合を生じない。加えて、かかるピース37によれば、従来の雄ねじ部材(ボルト)の先端部と比べて荷重を受ける面を大きくできるため、その設定個数を減らすことによりネジ加工を削減し、コストダウンを図ることができる。
【0035】
本実施形態では、内弁箱4の外面に係止するピース37の係止面37fが平坦面により形成されているため、係止面37fによって内弁箱4の外面を損傷させない。また、係止面37fは、外弁箱3の内部に向かって上方に傾斜しているとともに、内弁箱4の外面における係止面37fとの接触部位は、その係止面37fと同じ方向に傾斜した傾斜面4fにより形成されている。このため、内弁箱4の外面に対してピース37を円滑に係止させることができる。係止面37fと傾斜面4fとは互いに面接触するように構成されている。
【0036】
図7では、連通口33を介した外部からの操作により、具体的には連通口33に密封状態で取り付けた治具38を用いて、ピース37が収納位置に配置されている。治具38は、Oリングを介して連通口33を密封する筒状部材38aと、その筒状部材38aの内部に螺合されたボルト部材38bとを備える。ボルト部材38bは、ピース37の背面に螺合可能な先端部を有する。かかる治具38を用いて外弁箱3の内部(本実施形態では密閉空間S)から遠ざかる方向にピース37を引っ張ることにより、ピース37を収納位置で保持できる。
【0037】
[弁装置の組み立て]
不断水工法によって弁装置1を組み立てる手順の一例について説明する。まずは、既設の水道管Kに外弁箱3を外嵌装着し、その外弁箱3に接続した切削装置(図示せず)を用いて外弁箱3の内部で水道管Kを切削する(切削工程)。外弁箱3は、例えば、水道管Kの管路のうち、補修や撤去が必要な特定区域の上流側に装着される。外弁箱3の装着作業では、固着具を締め付けることで上側部材3Aと下側部材3Bとを互いに接合し、分割部30の隙間を外パッキン5,5で密封する。その際、分割部30に分岐配管7の端部7aを挟み込んで外弁箱3に分岐配管7を接続する。分岐配管7の端部7bには栓体81を装着しておく(
図8参照)。
【0038】
切削装置は、固着具の締め付けを完了した後、作業弁82(
図8参照)を介して外弁箱3の開口部32に接続される。水道管Kの切削作業では、作業弁82を開放した状態で、開口部32を通じてホールソーなどの切削工具(図示せず)を外弁箱3の内部に配置し、不断水状態で水道管Kを切削する。本実施形態では、水道管Kよりも大径の切削工具(例えば、ホールソー)を用いて、
図1のように水道管Kを軸方向に切り離すフルカット切断を採用しているが、これに限られない。切削により発生した切り粉は、ドレン35を開放することで外部に排出できる。切削が完了したら、切削工具を引き上げて作業弁82を閉じる。
【0039】
切削工程では、
図7のように、連通口33に密封状態で取り付けた治具38を用いて、外弁箱3の内部に突出しないようにピース37を連通口33に収納しておくことが好ましい。これにより、切削工程において、切削装置(の切削工具)にピース37を干渉させることなく、またピース37を外弁箱3の内部に脱落させることなく、連通口33からの漏水を防止できる。これに対し、本出願人による特許文献3に開示されるようなボルトの先端で内弁箱を固定する構造では、ボルトにシールテープなどのシール材が使用され、そのまま外弁箱3に残置されてしまうことがある。
【0040】
次に、
図8のように切削装置に代えて挿入装置83を外弁箱3に接続し、その挿入装置83を用いて外弁箱3の内部に内弁箱4を挿入する(挿入工程)。内弁箱4の挿入作業では、
図8の状態から作業弁82を開放し、内弁箱4の底面が外弁箱3の底部内面に当接するまで挿入装置83のシャフトを押し込み、内弁箱4を下降させる。この時点で、内弁箱4には弁体2と弁軸21が取り付けられており、その内弁箱4の外面には内パッキン6が装着されている。外弁箱3に内弁箱4が挿入されると、環状部61が開口部32を密封するとともに、三つのU字状部62がそれぞれ貫通孔41~43の周囲を密封する。その結果、外弁箱3と内弁箱4との間が内パッキン6によって密封される(
図1,2参照)。
【0041】
挿入工程では、内弁箱4に装着された内パッキン6により、上記の如く外弁箱3と内弁箱4との間を密封するとともに、外弁箱3の内面と内弁箱4の外面との間に、内パッキン6により区画された密閉空間Sを形成する。内弁箱4が下方へ移動する際、外弁箱3の内面に内パッキン6が接触するものの、連結部63によって内パッキン6の離脱を防止できることから、密閉空間Sが適切に形成される。また、挿入工程では、
図7のように、連通口33を介した外部からの操作により、外弁箱3の内部に突出しないようにピース37を連通口33に収納しておく。これにより、ピース37を内弁箱4に干渉させないようにできる。
【0042】
外弁箱3と内弁箱4との間でのシール性能が適切に発揮されていても、挿入工程の直後は密閉空間Sに水が溜まっているため、ドレン35を開放して密閉空間S内の水を排出する。ドレン35から続けて水が排出されない場合は、外弁箱3と内弁箱4との間でのシール性能、特にU字状部62によるシール性能が適切に発揮されていることが確認できる。また、挿入装置83のドレン(図示せず)を開放しても続けて水が排出されない場合は、外弁箱3と内弁箱4との間でのシール性能、特に環状部61によるシール性能が適切に発揮されていることが確認できる。シール性能の確認後、連通口33から治具38を取り外す。
【0043】
次に、外弁箱3に内弁箱4を固定する(固定工程)。この固定工程では、
図6のように、連通口33を介した外部からの操作により、密閉空間Sの内部にピース37を突出させ、そのピース37を内弁箱4の外面に係止させることで内弁箱4を外弁箱3に固定する。最終的には、
図2のように蓋体36によって内弁箱4を外弁箱3に固定できるため、ピース37による固定は、一時的な固定(即ち、仮固定)であってもよい。本実施形態では、連通口33に止めねじ34aを螺合することによりピース37を密閉空間Sの内部に突出させる。止めねじ34aのネジ山を保護する観点から、必要に応じて、連通口33をプラグ34bで閉塞してもよい。
【0044】
外弁箱3に内弁箱4を固定した後、外弁箱3から作業弁82と挿入装置83を取り外す。そして、
図2のように、内弁箱4の上方に減速機22を被せるとともに、外弁箱3に蓋体36を接続して施蓋し、外弁箱3に内弁箱4が収容された状態とする。かかる弁装置1によれば、特定区域での補修や撤去を行うために流路を遮断したり、分岐配管7に接続した分岐管に流路を切り替えたりすることが可能になる。何らかの事情で内弁箱4を撤去する場合は、上記とは逆の手順によって外弁箱3に対する内弁箱4の固定を解除すればよい。
【0045】
[他の実施形態]
前述の実施形態では、弁装置が、回転式の弁体によって流路を切替可能な切替弁(三方切替弁)として構成されている例を示したが、これに限定されない。したがって、例えば、弁装置が、上述した本出願人による特許文献3に開示されるような、昇降式の弁体によって流路を遮断可能な仕切弁として構成されていてもよい。
【0046】
前述の実施形態では、内パッキンが三つのU字状部を有する例を示したが、これに限定されない。例えば、上記の如き仕切弁として弁装置が構成されている場合において、内パッキンは、一対の貫通孔を取り囲むように配置された二つのU字状部を有しうる。内パッキンが有するU字状部の数は、例えば二つ乃至四つである。
【0047】
前述の実施形態では、内パッキンに、複数のU字状部を互いに連結する連結部が設けられている例を示したが、これに限定されるものではない。また、前述の実施形態では、内パッキンが外パッキンと別個に形成されている例を示したが、これに限られず、本出願人による特許文献3に開示されるように内パッキンが外パッキンと一体的に形成されていても構わない。
【0048】
図9は、別実施形態における内弁箱4の底面図であり、いずれも二つのU字状部62を有する内パッキン6が装着されている。
図9(a)は、連結部63が円弧状部分62Aの延長方向に沿って設けられた例である。
図9(b)は、連結部63が直線状部分62Sの延長方向に沿って設けられた例である。二本の連結部63,63は互いに交差しており、その交差部は必要に応じて接着してもよい。
図9(c)は、連結部63が直線状部分62Sの延長方向に沿って設けられた例であり、連結部63がX字状に形成されている。これらの変形例は、前述の実施形態に適用することも可能である。
【0049】
図10は、別実施形態の弁装置を分岐配管(
図10では図示せず)の軸方向に沿って見た縦断面を示し、内弁箱4及び水道管Kは外観で描いている。前述の実施形態では、連通口が密閉空間を外部と連通させるようにして設けられ、ピースが環状部よりも下方に位置する例を示したが、
図10の例では、連通口33が密閉空間Sに面しておらず、ピース37が環状部61よりも上方に位置している。このように、ピース37が係止する内弁箱4の外面は、側面に限られず、上面であってもよい。この例では、連通口33が、水道管Kの軸方向に沿って水道管Kの上方に設けられている。
【0050】
図11は、別実施形態の弁装置が備える外弁箱3の平面図である。(a)は、
図10の構成と同様に、連通口33が、水道管Kの軸方向に沿って水道管Kの上方に設けられた例を示す。(b)は、連通口33が、水道管Kの軸方向に対して斜めに設けられた例を示す。(a)及び(b)のいずれにおいても、連通口33は、平面視において外弁箱3から外側に突き出ないように設けられている。かかる構成によれば、将来的に弁装置の周辺を掘削したときにバックホーなどの重機が連通口33を引っ掛けてしまうことを防止できる。
【0051】
本発明に係る弁装置は、水道管に適用できるものであるが、これに限られず、水以外の各種の液体、気体などの流体に用いる流体管に幅広く適用できる。
【0052】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 弁装置
2 弁体
3 外弁箱
4 内弁箱
4f 傾斜面
5 外パッキン
6 内パッキン
7 分岐配管
33 連通口
34 開閉部材
34a 止めねじ(ネジ部材)
34b プラグ
35 ドレン
37 ピース
37f 係止面
38 治具
61 環状部
62 U字状部
63 連結部
K 水道管(流体管)
S 密閉空間