IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トーショーの特許一覧

<>
  • 特許-散薬分包機及び散薬分包システム 図1
  • 特許-散薬分包機及び散薬分包システム 図2
  • 特許-散薬分包機及び散薬分包システム 図3
  • 特許-散薬分包機及び散薬分包システム 図4
  • 特許-散薬分包機及び散薬分包システム 図5
  • 特許-散薬分包機及び散薬分包システム 図6
  • 特許-散薬分包機及び散薬分包システム 図7
  • 特許-散薬分包機及び散薬分包システム 図8
  • 特許-散薬分包機及び散薬分包システム 図9
  • 特許-散薬分包機及び散薬分包システム 図10
  • 特許-散薬分包機及び散薬分包システム 図11
  • 特許-散薬分包機及び散薬分包システム 図12
  • 特許-散薬分包機及び散薬分包システム 図13
  • 特許-散薬分包機及び散薬分包システム 図14
  • 特許-散薬分包機及び散薬分包システム 図15
  • 特許-散薬分包機及び散薬分包システム 図16
  • 特許-散薬分包機及び散薬分包システム 図17
  • 特許-散薬分包機及び散薬分包システム 図18
  • 特許-散薬分包機及び散薬分包システム 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】散薬分包機及び散薬分包システム
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
A61J3/00 310E
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018156678
(22)【出願日】2018-08-23
(65)【公開番号】P2020028513
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-08-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000151472
【氏名又は名称】株式会社トーショー
(74)【代理人】
【識別番号】100147348
【弁理士】
【氏名又は名称】堀井 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】大村 司郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 繁幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 拓
(72)【発明者】
【氏名】深津 邦夫
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-226086(JP,A)
【文献】特開平11-226087(JP,A)
【文献】特開平07-220011(JP,A)
【文献】特開平08-337201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
散薬を収容し、それを排出口から放出できる散薬収容容器と、
前記散薬収容容器を載置し、そこから散薬を放出できる第1の散薬放出部と、
前記第1の散薬放出部から放出された散薬を一時保管できる散薬一時保管容器と、
前記散薬一時保管容器を載置し、前記散薬一時保管容器へ放出された散薬の重量を計測できる散薬計量部と、
計量済みの散薬の入った前記散薬一時保管容器を載置し、その排出口から散薬を放出できる第2の散薬放出部と、
前記第2の散薬放出部から放出された散薬を包装する散薬包装装置と、
前記散薬収容容器と前記散薬一時保管容器との両方を載置可能な散薬容器棚と、
前記散薬容器棚、前記第1の散薬放出部、前記第2の散薬放出部、及び前記散薬計量部の相互間で、前記散薬収容容器または前記散薬一時保管容器を移送可能な散薬容器移送装置と、
外部から提供される、あるいは、内部で生成される処方指示リストに基づいて散薬の分包の手順を制御する散薬分包制御部と
前記散薬一時保管容器を洗浄する散薬容器洗浄部と
を有し、前記散薬分包制御部が、前記第2の散薬放出部において放出を完了した前記散薬一時保管容器を、前記処方指示リストに基づいて、前記散薬容器洗浄部にて洗浄を行うかどうかを決定することを特徴とする散薬分包機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、散薬を配分して分包する散薬分包機に関する。特に個別の散薬を収容したカセットを複数用意し、これを棚に装填しておくだけで自動的に必要分の散薬を分包装置側に移送して、処方箋に従って、全自動で分包を可能とし、かつ、より効率的な運用を可能とした散薬分包機及び散薬分包システムに関する。
【背景技術】
【0002】
総合病院など多くの診療科や病棟をかかえる病院では、その調剤を効率よく行うために、各診療科や病棟と院内薬局との間を回線で接続して、各診療科や病棟のパソコンから、必要な薬剤処方のデータを入力して、これが薬局側のパソコンが受信して、その処方の発生順の処方順位に従って、散薬分包機に所定の処方の実行を指示するようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、中央演算処理部が、散薬瓶などの収納場所、装着場所を管理するとともに、処方表示部に表示された処方データの包装順序にしたがって、散薬処理機構および包装機構を駆動する技術思想が開示されている。
【0004】
ここで、全自動型の散薬分包機は、使用する容器類を各位置に移送する移送機構が利用されているが、そのためには移送の時間が必要となる。
【0005】
例えば、A散薬の処方が完了した場合は、A散薬の散薬収容容器は散薬容器棚に移送し、そこで使った散薬一時保管容器(計量カップ)は、次に他の散薬に使用するために洗浄装置に移送して洗浄後容器棚に戻すように制御される。これらの一連の移送は3軸直行電動スライダなどが行うが、容器類は同時に1個しか保持できないので、一連の動作を順番に行う必要があって、時間を要するものである。
【0006】
そのために、当該処方が完了したときに、次の処方がまたA薬であった場合には、容器を元に戻さずに、そのまま次の分の計量を行った方が時間の削減になる場合がある。
【0007】
処方動作開始前に、発生している処方箋の順番待ちリストから、同一散薬の処方がある場合には、それを連続して実行するように散薬分包機が順番を組み替えすることにより、効率化が可能となる。
【0008】
更に、散薬分包機が既に処方動作を開始した後に、所定のタイミングで現時点での処方の順番待ちリストを参照し、その情報によって動作順位や動作パターンを変えるようにきめ細かく制御することができれば、より効率化が図れる。
【0009】
このような、より効率的な運用が可能な全自動型の散薬分包機あるいは散薬分包システムが未だ実用化されていないことが大きな問題点となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2001-253403号公報 湯山
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
解決しようとする課題は、上記問題に鑑み、全自動で分包処理を実行する際に、より効率的な運用が可能な散薬分包機及び散薬分包システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、散薬分包機であって、
-散薬を収容し、それを排出口から放出できる散薬収容容器と、
-前記散薬収容容器を載置し、そこから散薬を放出できる第1の散薬放出部と、
-前記第1の散薬放出部から放出された散薬を一時保管できる散薬一時保管容器と、
-前記散薬一時保管容器を載置し、前記散薬一時保管容器へ放出された散薬の重量を計測できる散薬計量部と、
-計量済みの散薬の入った前記散薬一時保管容器を載置し、その排出口から散薬を放出できる第2の散薬放出部と、
-前記第2の散薬放出部から放出された散薬を包装する散薬包装装置と、
-前記散薬収容容器と前記散薬一時保管容器との両方を載置可能な散薬容器棚と、
-前記散薬容器棚、前記第1の散薬放出部、前記第2の散薬放出部、及び前記散薬計量部の相互間で、前記散薬収容容器または前記散薬一時保管容器を移送可能な散薬容器移送装置と、
-外部から提供される、あるいは、内部で生成される処方指示リストに基づいて散薬の分包の手順を制御する散薬分包制御部と
を有することを特徴とする。
【0013】
このようにすると、散薬放出部を2段階に設け、途中に散薬一時保管容器を設けるようにしたから、第1の散薬放出部から放出され、散薬計量部で正しく計量できた場合には、第2の散薬放出部から計量済みの散薬を散薬包装装置へと受け渡し、万一、計量ミスが発生した場合には、散薬一時保管容器を散薬計量部から散薬包装装置に移送する前に、その散薬一時保管容器を散薬容器移送装置により取り除いて散薬容器棚へ移送することができ、計量ミスによる損害を最小限にすることができる。
【0014】
また、その上に、散薬の処方指示リスト、すなわち、処方の発生順になった散薬の個別の処方情報などが提供された場合に、そのリストに基づき、散薬分包制御部が、散薬分包の手順、例えば、各部の動作、あるいは処方の順番などを制御するから、同一の散薬が処方指示リストにある場合などは、分包の動作を簡略化し、処理時間を短縮するなど、処理の効率化の効果を生じる。
【0015】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様において、前記散薬分包制御部が、前記処方指示リストに同一散薬が存在する場合は、前記同一散薬を優先して処理するように制御することを特徴とする。
【0016】
ここで、優先するとは、連続して処理すること、あるいは、処方順番を繰り上げて処理することを含むものとする。
【0017】
例えば、通常は処方指示リストの順番に(処方情報の発生順に)処理しているが、その処理中に、処方指示リストを参照あるいは照合して、同一の散薬が連続して存在する、あるいは、連続でなくても処方指示リスト中に存在することが判明した場合は、処方指示リストの処方順位を変更することも含めて、連続して分包処理を行うようにしてもよい。
【0018】
また、処方指示リストを参照あるいは照合するタイミングは、ある散薬の分包処理を開始した段階だけでなく、ある散薬の計量が完了した時期や、更に処理が進行して散薬の包装処理が開始されてからでもよい。
【0019】
その間に、同一散薬が処方指示リストに追加される可能性があり、その場合に、連続して分包処理を実行するか、それが間に合わなくても、同一散薬があることを考慮して、処方の順番を繰り上げたり、容器の移送の運用を変更したりするようにしてもよい。これも同一散薬処理を優先することに含まれる。
【0020】
このようにすると、具体的に、分包動作の簡略化や処理時間短縮の効果が得られる。
【0021】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様において、更に、
-前記散薬包装装置に、前記散薬一時保管容器を洗浄する散薬容器洗浄部を有し、
前記散薬分包制御部が、前記第2の散薬放出部において放出を完了した前記散薬一時保管容器を、前記処方指示リストに基づいて、前記散薬容器洗浄部にて洗浄を行うかどうかを決定することを特徴とする。
【0022】
すなわち、ある散薬の処方の処理の間に、処方指示リストを参照または照合して、当該散薬と同じ散薬が処方されている場合は、散薬一時保管容器を洗浄せずに、散薬容器棚へ移送するなどの処置を行う。
【0023】
なお、通常の処理では、ある散薬の処方が完了した時点で、処方指示リストに当該散薬が処方されていない場合は、当該散薬一時保管容器は散薬容器洗浄部において洗浄された後に、散薬容器棚に戻され、別の散薬の分包に供するようになっている。
【0024】
本発明の第4の態様は、散薬分包システムであって、
-本発明の第1の態様の散薬分包機と、
-散薬を含む薬剤の処方の管理を行う処方管理装置と
を有し、前記処方管理装置において、前記処方指示リストを作成することを特徴とする。
【0025】
ここで、処方管理装置は、病院全体の薬剤の処方を管理するものであり、各診療科や病棟に設けられる処方指示に関する装置と無線又は有線で接続され情報交換が可能であることが望ましく、また、病院全体の、散薬を含む薬剤の在庫データベースなどとも接続されていることが望ましい。
【0026】
これによれば、散薬分包機に提供される処方指示リストを、外部の高度な処理が可能な処方管理装置が作成するから、全体のシステムとして、効率的に運用することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、全自動で分包処理を実行する際に、散薬分包制御部が、処方指示リストに基づき、散薬の分包処理の手順を制御するようにしたから、より効率的な運用が可能な散薬分包機及び散薬分包システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態の散薬分包機の機能ブロック図である。
図2】本発明の一実施形態の散薬分包機の正面図(カバー付き)である。
図3】本発明の一実施形態の散薬分包機の正面扉を開いた状態の正面図である。
図4】本発明の一実施形態の散薬分包機の内部構造を示す正面断面図である。
図5】本発明の一実施形態の散薬分包機の内部構造を示す側面断面図である。
図6】本発明の一実施形態の散薬分包機の散薬収容容器の斜視図である。
図7】本発明の一実施形態の散薬分包機の第1の散薬放出部の側断面図である。
図8】本発明の一実施形態の散薬分包機の散薬一時保管容器の斜視図である。
図9】本発明の一実施形態の散薬分包機の散薬計量部の斜視図である。
図10】本発明の一実施形態の散薬分包機の第2の散薬放出部の側断面図である。
図11】本発明の一実施形態の散薬分包機の散薬包装装置の一部の斜視図である。
図12】本発明の一実施形態の散薬分包機の移送の動作を示す斜視図である。
図13】本発明の一実施形態の散薬分包機の移送の別の動作を示す斜視図である。
図14】本発明の一実施形態の散薬分包機の移送の別の動作を示す斜視図である。
図15】本発明の一実施形態の散薬分包システムの機能ブロック図である。
図16】本発明の一実施形態の散薬分包機に用いられる処方指示リストの例を示す図である。
図17】本発明の一実施形態の散薬分包機の動作のフローチャートその1である。
図18】本発明の一実施形態の散薬分包機の動作のフローチャートその2である。
図19】本発明の一実施形態の散薬分包機の動作のフローチャートその3である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する部分は公知技術によるものとする。
【0030】
図1は本発明の一実施形態に係る散薬分包機の機能ブロック図であり、図2は本発明の一実施形態に係る散薬分包機の扉を閉めた状態の正面図であり、図3は本発明の一実施形態に係る散薬分包機の扉を開いた状態の正面図であり、図4は本発明の一実施形態に係る散薬分包機の奥側部分の立面図であり、図5は本発明の一実施形態に係る散薬分包機の側面図である。
【0031】
散薬分包機1は、収容された散薬を収容し、それを排出口から放出できる散薬収容容器100と、散薬収容容器100を載置し、そこから散薬を放出できる第1の散薬放出部200と、第1の散薬放出部200から放出された散薬を一時保管できる散薬一時保管容器300と、散薬一時保管容器300を載置し、散薬一時保管容器300へ放出された散薬の重量を計測できる散薬計量部400と、計量済みの散薬の入った散薬一時保管容器300を載置し、その排出口から散薬を放出できる第2の散薬放出部500と、第2の散薬放出部500から放出された散薬を包装する散薬包装装置600と、散薬収容容器100と散薬一時保管容器300との両方を載置可能な散薬容器棚700と、散薬容器棚700、第1の散薬放出部200、第2の散薬放出部500、及び散薬計量部400の相互間で、散薬収容容器100または散薬一時保管容器300を移送可能な散薬容器移送装置800、散薬分包機の各部の制御を行う散薬分包制御部10を有する。
【0032】
なお、散薬包装装置600は、散薬一時保管容器300を洗浄する散薬容器洗浄部900を有していてもよい。
【0033】
なお、ここで、第1の散薬放出部200、散薬計量部400、第2の散薬放出部500、散薬容器棚700、散薬容器移送装置800、及び、散薬分包制御部10の一部を総称して散薬計量放出装置(あるいは、散薬準備装置)としてもよい。
【0034】
但し、これらの装置の切り分けは、これに限定されず、同等の機能を発揮できればどのような切り分けであってもよい。
【0035】
以下に各構成要素につき、説明する。
【0036】
<散薬収容容器100>
図6は本発明の一実施形態に係る散薬分包機1の散薬収容容器100の斜視図であり、図6(a)は上蓋が閉じた状態、図6(b)は上蓋が開いた状態を示す。
【0037】
散薬収容容器100の本体101は、略直方体の、底面を有する箱型形状で、長手方向を略水平方向として置かれている。この姿勢を横置きとする。
【0038】
散薬収容容器100は、本体101の上部に上蓋102、本体101の下部側面に散薬の排出口(図示せず)、排出口の出口部分に排出口を遮蔽する遮蔽部(遮蔽板)103を有する。遮蔽部103は機械に装着されると開放されるようになっており、排出口から散薬が放出されるようになっている。
【0039】
更に、散薬収容容器100は、後述する散薬容器移送装置800による移動のために、遮蔽部103側の面の上部に一対の装着ガイド穴104a、104b、その下方に磁性体である鉄板105、底面外側に他の機器に載置され固定されるための鉄板106、及び同じく底面外側に種々の情報を保持できるRFIDタグ107を有している。
【0040】
<第1の散薬放出部200>
図7は本発明の一実施形態に係る散薬分包機1の第1の散薬放出部200の側断面図である。第1の散薬放出部200は、主に、散薬収容容器100(または散薬一時保管容器300)を載置可能な容器載置台210と、容器載置台210に載置された容器を振動させて散薬を放出する振動台220とから構成される。
【0041】
振動台220は、固定板221、固定板221の上に、複数のコイルスプリング222を介して設置される中間台223を有し、中間台223の上に複数の板バネ224を介して、容器載置台210が取り付けられる。
【0042】
中間台223には第1の電磁石225が、容器載置台210には磁性を有する鉄材211が、それぞれ相対して僅かな間隙を保持して配置されている。
【0043】
第2の電磁石213は、容器載置台210の上面に着磁面を露出させて設けられ、散薬収容容器100(または散薬一時保管容器300)の底面に取付けられた鉄板106(306)を吸着することで、容器載置台210に散薬収容容器100(または散薬一時保管容器300)を載置固定することができる。
【0044】
更に、直動型電磁ソレノイド214が容器載置台210の下面に取付けられており、散薬収容容器100(または散薬一時保管容器300)の遮蔽部103(303)を開閉する機能を有する。
【0045】
また、RFIDリーダ・ライタ215(後に図13に示す)が容器載置台210の上面に設置され、散薬収容容器100(または散薬一時保管容器300)の底面のRFIDタグ107(307)との間で、情報の読み取り、書き込みができるようになっている。
【0046】
<散薬一時保管容器300>
図8は本発明の一実施形態に係る散薬分包機1の散薬一時保管容器300の斜視図である。散薬一時保管容器300は、実質的には、散薬収容装置100から上蓋102を取り外したものであり、散薬容器棚700などに載置される部分の形状が同一である。
【0047】
そのようにすれば、容器の製造コストも低廉となり、機械の設計も単純化される。
【0048】
図8(a)は底部が下側の通常の状態、図8(b)は上下180度回転させて底部が上側になった状態を示す。
【0049】
図に示すように、散薬一時保管容器300の本体301の下部側面に散薬の排出口(図示せず)、排出口の出口部分に排出口を遮蔽する遮蔽部(遮蔽板)303を有する。遮蔽部303は機械に装着されると開放されるようになっており、排出口から散薬が放出されるようになっている。
【0050】
更に、散薬一時保管容器300は、後述する散薬容器移送装置800による移動のために、遮蔽部303側の面の上部に一対の装着ガイド穴304a、304b、その下方に磁性体である鉄板305、底面外側に他の機器に載置され固定されるための鉄板306、及び同じく底面外側に種々の情報を記憶できるRFIDタグ307を有している。
【0051】
本体301の上部には、上蓋を有せず、大きく開口しており、落下してくる散薬を受け取ることができるような構造となっている。
【0052】
なお、散薬収容容器100と散薬一時保管容器300とは、全体形状がほぼ同一で、上蓋102の有無のみの相違としたが、散薬容器棚700などに載置される部分の形状さえ同一であれば、高さ、幅、奥行や、その他の外観が異なってもよい。各々の機能に特化した設計により、利便性が増す場合もあり得る。
【0053】
あるいは、散薬収容容器100と散薬一時保管容器300とを、全く同一の構造としてもよい。両方とも上蓋ありとする、あるいは両方とも上蓋なしとするとして、周辺の構造を変更して、あるいは追加の機構を設けて使用してもよい。このようにすると、運用が容易になり、散薬容器のコストが低廉になるなどの効果が期待できる。
【0054】
<散薬計量部400>
図9は本発明の一実施形態に係る散薬分包機1の散薬計量部400の斜視図である。上部に散薬の放出ができる第1の散薬放出部200を固定結合する散薬放出部保持部401を有し、その下に散薬一時保管容器300を載置できる散薬一時保管容器載置台402、散薬一時保管容器載置台402の上の重量を計測できる台はかり403から構成される。
【0055】
なお、散薬放出部保持部401は、不要とすることも可能である。すなわち、散薬計量部400に保持させなくても、周囲の筐体などから部材を用いて保持するようにしてもよい。
【0056】
散薬一時保管容器置台402は、後述する散薬容器棚700の容器載置台705と略同一の構成である。このようにすることで、散薬一時保管容器300が、散薬容器移送装置800によって移送されて載置されることができる。
【0057】
台はかり403は、散薬一時保管容器置台402上の散薬一時保管容器300及び内蔵する散薬を含めた全重量が計測可能であって、散薬一時保管容器300に散薬が落下していくと、重量の値が増加していき、その増加分が散薬一時保管容器300内の散薬そのものの重量となる。よってこの重量があらかじめ処方箋に従って定められた重量となるところで、散薬収容容器100からの散薬の放出、落下を停止すれば、散薬一時保管容器300には、指定された重量の散薬が収容できることになる。
【0058】
なお、散薬を計量できる機構として台はかりを例示したが、これに限定されず、重量を計測できるものであれば、ロードセルなどであってもよい。
【0059】
また、少し構成が異なることになるが、散薬を計量できる機構を第1の散薬放出部200を支持する部分に設けてもよい。例えば、第1の散薬放出部200全体の重量を測定できる機構を散薬計量部37に(または第1の散薬放出部200内部に)設け、放出された散薬の重量を、差分(減じた重量)から算出するようにしてもよい。
【0060】
しかしながら、この構成ではあくまでも放出された散薬の重量が算出されるだけであって、放出の過程で、散薬一時保管容器300に収容されずに、筐体内の空気中に飛散したり、別の部位に付着したりした散薬の微小な減量は知ることができない。従って、特に、新生児や幼児等への投薬の場合に精密な計量が要求される場合は、先に述べた散薬一時保管容器300側での計量の方が実用上は好適である。
【0061】
<第2の散薬放出部500>
第2の散薬放出部500は、後述する散薬包装装置600の円盤配分部610の近傍に配置され、円盤配分部610へと散薬を放出する。
【0062】
第2の散薬放出部500は、第1の散薬放出部200と略同一構造であるが、その概略を説明する
【0063】
図10は本発明の一実施形態に係る散薬分包機1の第2の散薬放出部500の側断面図である。第2の散薬放出部500は、主に散薬一時保管容器300(または散薬収容容器100)を載置可能な容器載置台510と、容器載置台510に載置された容器を振動させて散薬を放出する振動台520とから構成される。
【0064】
振動台520は、固定板521、固定板521の上に、複数のコイルスプリング522を介して設置される中間台523を有し、中間台523の上に複数の板バネ524を介して、容器載置台510が取り付けられる。
【0065】
中間台523には第1の電磁石525が、容器載置台510には磁性を有する鉄材511が、それぞれ相対して僅かな間隙を保持して配置されている。
【0066】
第2の電磁石513は、容器載置台510の上面に着磁面を露出させて設けられ、散薬一時保管容器300(または散薬収容容器100)の底面に取付けられた鉄板306(106)を吸着することで、容器載置台510に散薬一時保管容器300(または散薬収容容器100)を載置固定することができる。
【0067】
更に、直動型電磁ソレノイド514が容器載置台510の下面に取付けられており、散薬一時保管容器300(または散薬収容容器100)の遮蔽部303(103)を開閉する機能を有する。
【0068】
また、RFIDリーダ・ライタ515(後に図13に示す)が容器載置台510の上面に設置され、散薬一時保管容器300(または散薬収容容器100)の底面のRFIDタグ307(107)との間で、情報の読み取り、書き込みができるようになっている。
【0069】
なお、第1の散薬放出部200と第2の散薬放出部500とは、略同一の構成としたが、その各々の機能の相違により、同一の技術思想であるが、細部において異なった構造とすることはあり得る。
【0070】
<散薬包装装置600>
散薬包装装置600は、図4に示すように、第2の散薬放出部500から放出された散薬を円盤611上で受け取り、図示しない散薬切り出し部により散薬を所定量ずつ切り出す円盤配分部610と、円盤配分部610で切り出された散薬を下方へと落下させるホッパ・シュート620と、ホッパ・シュート620の出口に分包紙を配置し、その分包紙に散薬を封入して包装する散薬包装部630とを有する。
【0071】
更に、散薬包装装置600は、ホッパ・シュート620の上方に散薬容器洗浄部900を有していてもよい。
【0072】
図11は本発明の一実施形態に係る散薬分包機1の散薬包装装置600の円盤配分部610の斜視図である。
【0073】
円盤配分部610は、左右2セットの左側円盤611aと右側円盤611bとを有し、その各々に対して第2の散薬放出部500を2台配置することができるため、1つの円盤配分部610に、4台の散薬放出部500a、500b、500c、500dが配置されることになる。更に、散薬分包機1全体としては、このような円盤配分部610が複数セット配置されることもある。
【0074】
なお、これらの配置台数は例示であり、これより少なくてもよく、あるいは、多くてもよい。適宜、用途目的によって選択すればよい。
【0075】
散薬切り出し部(図示せず)は円盤611上にドーナッツ状に形成された散薬を必要量ずつ切り出すことのできる機構であり、公知の技術によるものとする。
【0076】
散薬容器洗浄部900は、散薬収容容器100または散薬一時保管容器300を、後述する散薬容器移送装置800の回転駆動部808によって反転させて、内部を種々の方法、例えば、外部からの振動付与(直接打撃あるいは超音波振動)、内部の空気の吸引、局所的な空気の噴射などの方法で洗浄できる機構である。
【0077】
<散薬容器棚700>
散薬容器棚700は、図2及び図3に示すように、その前面に、ヒンジ701a、701b、701c、701dで保持されて、観音開きができる右扉702aと左扉702bとが取り付けられている。
【0078】
また右扉702aの上部には透明カバー703aが、左扉702bの上部には透明カバー703bが取り付けられていて、扉が閉の状態でも、透明カバー703a、703bを介してその内側が装置前面側から目視可能となっている。
【0079】
更に、右扉702a、左扉702bの下部には、それぞれタッチ式ディスプレイ704a、704bが取り付けられている。
【0080】
この左右扉702を開けると、上下6段の棚になっていて、各段に6乃至7カ所の容器載置台705(後に図12に示す)が設けられており、この容器載置台705には、散薬収容容器100と散薬一時保管容器300とのいずれもが載置できるようになっている。
【0081】
このように左右扉702を開けた状態で、散薬収容容器100と散薬一時保管容器300との合計42個を全て装置前面から目視可能で、かつ、取り付け・取り外し可能な状態で載置できるようになっている。
【0082】
それぞれの位置を1番から42番の番号で示すと、左右扉702を開けたときは1番から42番までの全ての容器が目視可能で、左右扉702を閉めたときには1番から24番までの容器が透明カバー703を介して目視可能となる。
【0083】
また、散薬容器棚700の左右脇には、2組の第1の散薬放出部200a、200b、散薬計量部400a、400bが設けられている。
【0084】
なお、各々の容器載置台705の上面(容器を載置する面)には、散薬収容容器100または散薬一時保管容器300を載置固定するための電磁石(図示せず)及びそれらの容器に設けられたRFIDタグ107(307)との間で情報を読み取ったり、書き込んだりするためのRFIDリーダ・ライタ(図示せず)が設けられている。これらの電磁石及びRFIDリーダ・ライタは、第1の散薬放出部200及び第2の散薬放出部500において説明したのと、容器との相対位置関係において、等しい位置に設けられている。
【0085】
また、このRFIDタグ107(307)には、例えば、
1)事前に散薬を充填したときに入力される「薬剤名称」「消費期限」「充填量」
2)処方の都度入力される「載置台番号」「処方番号」「払出し量」「現在予想残量」
などと関連つける符号が入力される。すなわちそれらの処方情報そのものであってもよいし、それらの詳細情報は本装置あるいは、上位の処方情報システムのデータベースとして保管され、RFID側は、このデータベース番号を参照する符号であってもよい。
【0086】
また、扉の枚数・構造は、2枚の扉で観音開きが好適であるが、それに限定せず、1枚扉であっても、3枚以上の扉であってもよく、開閉も、片開き、スライド式、跳ね上げ式など、どのような方式であってもよく、散薬収容容器100及び散薬一時保管容器300の数、大きさなどにより、適宜、定めればよい。また、棚の段数、各段の容器載置台705の数についても6段×(6~7)個に限定せず、適宜定めてよい。
【0087】
ここで、扉702を設けたのは、塵埃の侵入を防止し、また、部外者によるアクセスを規制するものであり、錠剤管理上、鍵(図示せず)を取付ける場合もあるし、機械安全管理上、扉702の開閉検知装置(図示せず)を付加して、装置が動作中に扉の開閉があった場合に、この検知信号によって装置を停止する制御を行うようにしてもよい。
【0088】
更に、透明カバー703を設けたのは、全ての散薬収容容器100及び散薬一時保管容器300を、装置の前面側に並べて、透明カバー703で覆われた部分を除き、係員が一目でそれを目視できるようにするためである。図示しないが、各散薬収容容器に対応した棚の部位にLED表示などによって、その容器残量を表示するようにしてもよい。
【0089】
なお、容器載置台705自体も、右扉702aに対応する右側部分と左扉702bに対応する左側部分がヒンジ(図示せず)により、観音開きできるようにすることが好適である。このようにすると、機械後方の散薬容器移送装置800に機械前方からアクセスすることができ、メンテナンスが容易となるなどの利点がある。
【0090】
<散薬容器移送装置800>
散薬容器移送装置800は、図4及び図5に示すように、機械正面から見て、散薬容器棚700の背面側に配設されており、互いに直交する3軸上を移動する第1の移動部801、第2の移動部803、第3の移動部805を有している。
【0091】
ここで、第1の移動部801は、電動スライダであることが好ましく、鉛直方向(Z軸方向)に延伸する左右一対の電動シリンダ801a、801bで構成され、スライダに設けられたテーブル(可動部材)802a、802bが対向している。
【0092】
第2の移動部803は、電動スライダであることが好ましく、第1の移動部801の対向するテーブル802a、802bの間に設置され、水平で左右の方向(X軸方向)にスライダが延伸しており、スライダにはテーブル(可動部材)804が設けられている。
【0093】
第3の移動部805は、電動スライダであることが好ましく、第2の移動部803のスライダに設けられたテーブル804に設置され、水平で前後の方向(Y軸方向)にスライダが延伸している。
【0094】
更に、第3の移動部805のスライダに設けられたテーブル(可動部材)806に、容器保持部807が設けられている。
【0095】
さらに容器保持部807の先には180度回転を可能にするための回転駆動部(アクチュエータ)808が取り付けられており、更に、回転駆動部808の先には、その駆動によって回転させられる回転ヘッド809が設けられており、通常の姿勢の容器保持位置の回転ヘッド809aと把持した容器を180度反転した位置の回転ヘッド809bとの2つの位置の間を回転可能としている。
【0096】
更に、回転ヘッド809の先端部には、2本のガイドピン810a、810b(後に図示)を有しており、これらのガイドピン810a、810bは散薬収容容器100(または散薬一時保管容器300)の装着ガイド穴104(304)に嵌合するようになっている。
【0097】
更になお、回転ヘッド809の先端部には、電磁石811を有しており、これに通電することにより、散薬収容容器100(または散薬一時保管容器300)の側面鉄板105(305)と電磁力により結合できるようになっている。
【0098】
<散薬分包制御部10>
散薬分包制御部10は、ハードウエア構成は、すくなくともCPUを備え、必要に応じて、メモリー、通信インターフェース、ディスプレイ、キーボードなどを備えていてもよく、散薬分包機1の全体の制御を司る。
【0099】
次に、図15は、本発明の一実施形態の散薬分包システム1000の機能ブロック図である。これまで説明した散薬分包機1に加えて、少なくとも、散薬など薬剤の処方を管理する処方管理装置2を有し、更に、散薬分包機1との間で散薬収容容器100などへの散薬の充填を行わせることのできる散薬充填台3、散薬分包機1以外の、手動、半自動あるいは自動の、その他の散薬分包手段4、処方管理装置2で処方される散薬などの薬剤についての在庫などに関する情報を記憶している薬剤在庫データベース5などを有していてもよい。
【0100】
処方管理装置2は、ハードウエア構成は、CPU、メモリー、通信インターフェース、ディスプレイ、キーボードなどを備えており、パソコンあるいはサーバが好適であるが、それに限定されない。また、一部のハードウエアを散薬分包機1の散薬分包制御部と共有したり、あるいは、一部をクラウドコンピューティングのように遠隔に有したりしていてもよい。
【0101】
また、処方管理装置2は、病院内の各所、例えば、A診療科6a、B診療科6b、C病棟6c、D病棟6dなどと、有線または無線の回線、あるいはインターネットなどによって接続されている。
【0102】
この処方管理装置2は、各所から要請される薬剤の処方についての情報を管理し、処方指示リスト2000を作成する。図16は、本発明の一実施形態の散薬分包機に用いられる処方指示リスト2000の例を示す図である。
【0103】
これによると、処方番号、発生時刻、注文元、患者番号、単一薬剤か複数薬剤の混和か、薬剤名、指定された分包手段、処方全量、分割数が表記され、また、薬剤在庫データベース5からの情報による在庫数量が表記され、更には、劇薬などの付帯情報も表記される。
【0104】
なお、表記される情報はこれに限定されず、これよりも多い、または少ない項目を表記してもよい。
【0105】
なお、処方指示リスト2000は、処方管理装置2において作成されたものでなくてもよい。他の調剤関連の装置で作成してもよく、あるいは、散薬分包機1の内部で作成するようにしてもよい。内製の場合には、処方管理装置2は不要で、散薬分包機1のみで完結が可能である。
【0106】
<動作説明>
以上のごとく構成された散薬分包機1の各部の動作を説明する。
<散薬収容容器・散薬一時保管容器 搭載動作>
あらかじめ係員によって、複数の種類の散薬を収容した散薬収容容器100を散薬容器棚700の適当な場所の容器載置台705に装着しておく。同様に複数の散薬一時保管容器300も容器載置台705の適当な場所に装着しておく。ただし、全ての容器載置台705に容器を装着せずに、複数の場所は空きとしておくことが望ましい。
【0107】
また、それら装着された容器に関する情報は、事前に別の装置で書き込まれているものとし、これを図示しないRFIDリーダ・ライタで読み取って、容器載置台705の位置と、そこに載置されている容器の散薬情報を紐付けて、これを記憶テーブルに保存しておく。
【0108】
<散薬収容容器の第1の散薬放出部への移送動作>
ここで、処方指示リストある散薬に関する処方、例えば、散薬AAA 21gを21分割して個包化する処方が入力されたとする。
【0109】
散薬AAAが収容されている容器の位置を記憶テーブルから検索して、この位置の散薬収容容器100を散薬容器移送装置800によって、第1の散薬放出部200に載置する。
【0110】
図12は本発明の一実施形態に係る散薬分包機1の散薬容器移送装置800の動作を示す斜視図である。
【0111】
図12の右図に示すように、散薬容器移送装置800のテーブル806をスライドさせて散薬容器棚700の容器載置台705の散薬収容容器100に近接させ、テーブル806の先端に設けられた容器保持部807のガイドピン810a、810bを散薬収容容器100のガイド穴104a、104bに挿入しながら、電磁石811を作動させて散薬収容容器100の側面鉄板105を吸着し、図12の左図に示すようにしっかりと散薬収容容器100を保持する。
【0112】
次に、散薬収容容器100は、容器保持部807に保持されたまま、散薬容器移送装置800の第3の移動部805、第2の移動部803、第1の移動部801によって、第1の散薬放出部200へと移送される。
【0113】
図13は本発明の一実施形態に係る散薬分包機1の散薬容器移送装置800の別の動作を示す斜視図である。
【0114】
図13(a)は容器保持部807が、散薬収容容器100を保持して、第1の散薬放出部200の容器載置台210の真上に接近した状態を示す。このようにして、散薬収容容器100が移送されてくる。
【0115】
図13(b)は、(a)の状態から、Z軸下方向に移動して、散薬収容容器100が、その底部の鉄板106と容器載置台210に設けられた第2の電磁石213との吸着によって、容器載置台210に載置された状態である。このようにして、散薬収容容器100はしっかりと第1の散薬放出部200に載置される。
【0116】
図13(c)は、(b)の状態から、電磁石811の励磁を止めるとともに、Y軸方向(後方)にテーブル806が移動して、散薬容器移送装置800が散薬収容容器100から離れた状態を示している。このようにして、散薬収容容器100の第1の散薬放出部200ヘの載置が完了する。
【0117】
<散薬一時保管容器の散薬計量部への移送動作>
次に、空の散薬一時保管容器300も同様の動作で散薬容器移送装置800によって散薬計量部400の散薬一時保管容器置台402に載置される。
【0118】
先に述べたように、散薬一時保管容器置台402は、散薬容器棚700の容器載置台705と同様の構成であり、また、第1の散薬放出部200の容器載置台210とも(振動する点を除けば)略同様の構成であるため、同様の動作が実現できる。
【0119】
<散薬収容容器から散薬一時保管容器への放出及び計量動作>
次に、第1の散薬放出部200の第1の電磁石225に交流的電気波形を入力すると、鉄材211が第1の電磁石225に引き寄せられたり、離れたりという振動的挙動を示す。
【0120】
結果として容器載置台210は板バネ224を介して中間台223に取り付いているので、容器載置台210全体として、図面での上下方向と左右方向が合成された振動を行うことができる。
【0121】
これによって、散薬Aが散薬一時保管容器300に落下し、その重量変化が台はかり403によって計量され、この場合は21gになった時点で振動を停止し、散薬落下を停止する。
【0122】
その後、再度台はかり403で重量計測を行う。これは、台はかり403の重量指示値が完全に静定するまでに数秒を要するためであり、この値が、所定の誤差以内であれば、次の動作に進む。
【0123】
なお、第1の散薬放出部200の散薬放出の方法は、電磁石によるものに限定されず、少量ずつ散薬を放出できるものであれば、圧電素子による振動発生であってもよく、あるいは、振動に限定されず螺旋スクリュー駆動や、それ以外のものであってもよい。
【0124】
<散薬一時保管容器の戻し動作>
しかしながら、このとき所定の誤差を超えてしまった場合には、当該散薬一時保管容器300は、散薬容器移送装置800で、散薬容器棚700の空いた容器載置台705に戻すとともに、そのRFIDタグ307に、計量失敗に関する情報を書き込んでおく。
【0125】
なお、散薬一時保管容器300の戻し動作は、既に説明した動作を逆に行えばよいので説明を省略する。
【0126】
これによって、人手によらず、自動で、計量ミスのあった散薬一時保管容器300を取り除くことができ、機械を停止することなく作業が進行できる。また、計量ミスのあった散薬一時保管容器300が散薬容器棚700に戻されるため、操作者が、適切なタイミングで容易に回収または廃棄処理をすることができ、作業の効率化、散薬の廃棄ロスの最小化が可能となる。
【0127】
<散薬一時保管容器の第2の散薬放出部への移送動作>
正常な場合の次のステップでは、計量済みの散薬一時保管容器300を、散薬容器移送装置800を用いて、散薬包装装置600の円盤配分部610の近傍の第2の散薬放出部500へ移送し、容器載置台510に載置する。この移送及び載置方法も既に図13において説明した動作と同様であるので、図13の中に対応する番号を括弧書きして説明を省略する。
【0128】
<散薬分配動作>
この後は、周知の円盤を用いた配分動作をおこなう。まず、「円盤撒き動作」として円盤611上にドーナツ状に全円周(360度)に渡って散薬を堆積させ、次に「配分動作」として堆積した散薬を図示しない切り出し部で、所定の(この場合は21分割)で配分し、ホッパ・シュート620に放出すると、これが散薬包装部630の分包紙に順次封入されていき、1処方21包の分包状態が完成するものである。
【0129】
この円盤撒き動作と配分動作には時間を要する。この動作と並行して、散薬容器移送装置800は、先に計量した散薬収容容器100を散薬容器棚700の元の容器載置台705に戻しておき、次の処方の散薬が入った散薬収容容器100を第1の散薬放出部200に移送し、載置することができる。
【0130】
次に空の散薬一時保管容器300を、散薬容器移送装置800によって、当該第1の散薬放出部200の直下の散薬計量部400の散薬一時保管容器置台402に装着する。
【0131】
これで、次の処方の計量が可能となるので、円盤撒き動作や配分動作とは独立して計量動作を行うことができる。
【0132】
1処方で2種類以上の散薬を混合する場合もあるので、この場合は左右2台の散薬計量部400a、400bを並行動作させることもできる。
【0133】
<容器洗浄動作>
図14は本発明の一実施形態に係る散薬分包機1の散薬容器移送装置800の更に別の動作を示す斜視図であり、図14(a)が通常の位置、図14(b)が反転した位置を示す。
【0134】
ここで、円盤配分部装置400で円盤撒き動作が完了して、空になった散薬一時保管容器37は、図に示すように、散薬容器移送装置800の回転駆動部808によって、通常の姿勢の容器保持位置の回転ヘッド809aの状態から、保持した容器を180度反転した位置の回転ヘッド809bの状態へ上下反転させてから、散薬容器洗浄部900に装着し、洗浄後に散薬容器棚700の容器載置台705の空いた場所に載置しておき、一連の動作が終わる。
【0135】
<並べ直し動作>
なお、散薬分包機1において、処方入力のないときには、先に計量に失敗した散薬一時保管容器300や、残量が不足した散薬収容容器100を、散薬容器棚700の左右扉302を閉めたときに容器が透明カバー303を介して目視可能となる位置に、容器移載装置800を用いて並べ直しておく。
【0136】
こうすることで、機械内の全ての容器が前面から目視可能ではないが、交換必要な容器は、前面から容易に目視可能となる。
【0137】
これまで詳述したような構造と作用によって、散薬の調剤作業の自動化において次のような実用的な効果を得ることができるものである。
【0138】
第1には、複数の散薬収容容器100を散薬分包機1の前面側に同一面の散薬容器棚700上に複数配置して、これをX-Y-Z直交型電動スライダ801、803、805で各部に移送できるようにした散薬容器移送装置800と、1処方分の計量を円盤部611への放出の際に行うのではなく、独立した散薬計量部400で行い、計量した散薬は専用の散薬一時保管容器300に収容し、正しく計量した散薬のみを円盤部611に放出し、計量不良の発生した散薬一時保管容器300は別に保管できるように制御することで、何らかの要因(外的振動など)で計量失敗となっても、これを別に保管することで機械を停止する必要がなくなった。
【0139】
第2には、散薬収容容器100と散薬一時保管容器300は、その形状を一致させることで、散薬容器棚700上の空いている任意の位置の容器載置台705に収納できるようにした。これにより、前面に配列した散薬容器棚700の一部をさえぎる形で、操作用のディスプレイ704を配置しても、実際に係員が回収や補充が必要な容器は、散薬容器棚700のディスプレイ704に遮られない場所に配置しなおすように散薬容器移送装置800を制御できるので、散薬の無駄の発生することがない。更に、複数の容器の回収や補充が、見やすい位置の操作ディスプレイ704を確認しながら、同時に前面から行うことのできる、きわめて操作利便性の高い全自動型の散薬分包機1を提供できるものである。
【0140】
なお、これまでの説明では、散薬収容容器100の散薬容器棚700と第1の散薬放出部200との相互の移送、散薬一時保管容器300の、散薬容器棚700から散薬計量部400へ、更に、散薬放出部400から、第2の散薬放出部500経由、または直接、散薬容器棚700への移送について記載したが、それ以外のルート、例えば、散薬収容容器100を第2の散薬放出部500へ直接移送するルートも可能である。調剤の都合によっては有利なこともある。その他の記載のないルートも利用可能である。
【0141】
また、これまでの説明において、散薬収容容器100及び散薬一時保管容器300にRFIDタグを設け、それらを載置または保持する部分には、RFIDリーダ・ライタを設けるとしたが、これに限定せず、自動読み取りが容易なように考えられた符号、例えば、バーコードを含む1次元コード、ARマーカー、QRコード(登録商標)を含む2次元コード、カラーコードを含む多次元コードなどのコード符号、OCR等で読み取れる文字や読み取りを容易にした文字に係る情報読取可能な符号と、それの読み取り書き込み装置であればどのようなものであってもよい。
【0142】
また、これまでの説明で、散薬容器棚700における容器の配置は、機械前面に平面状に配置されるとしたが、若干の円弧状あるいは多角形状に前に凸あるいは後ろに凸に湾曲した形状であってもよい。操作性や視認性が向上する効果がある場合もある。
【0143】
次に、本発明の散薬分包機1及びそれを含む散薬分包システム1000の運用について説明する。
【0144】
図17から図19は、本発明の一実施形態の散薬分包機1の運用の例を示すフローチャートである。
【0145】
<散薬計量までのステップ>
スタートにおいては、予め処方される散薬を保持する散薬収容容器100及び空の散薬一時保管容器300が散薬容器棚700に搭載されているものとする。
【0146】
ステップ01(S01)において、散薬容器移送装置800が、処方指示リスト2000の先頭にある散薬を収容している散薬収容容器100を第1の散薬放出部200へ移送する。
【0147】
なお、図示しないが、この段階で、処方指示リスト2000に先頭の散薬と同一の散薬があった場合は、後述のステップS21を省略し、ステップS22へと進むようにしてもよい。
【0148】
次に、ステップS02において、散薬容器移送装置800が、散薬容器棚700から空の散薬一時保管容器300を散薬計量部400へ移送する。
【0149】
なお、ステップS01とステップS02はその順序が逆であってもよい
【0150】
次に、ステップS03において、第1の散薬放出部200が、散薬収容容器100から散薬一時保管容器300へ散薬を放出する。
【0151】
次に、ステップS04において散薬計量部400が、放出された散薬を計量する。散薬の計量が正常に終了すれば、散薬計量の完了(ステップS05)となる。
【0152】
<円盤撒きまでのステップ>
散薬計量が完了すると、並行動作となる。
ステップS11において、散薬容器移送装置800が、計量済みの散薬を保持する散薬一時保管容器300を第2の散薬放出部500へ移送する。
【0153】
引き続き、ステップS12において、第2の散薬放出部500が、散薬一時保管容器300から散薬を放出(円盤撒き)する。これが完了すれば、円盤撒きの完了ステップ(S13)となる。
【0154】
一方、ステップS11と並行して、処方指示リスト2000の参照が行われる。(ステップS21)
【0155】
ステップS22では、参照の結果として、同一散薬が連続した処方に存在するか、あるいは連続でなくてもリストの中に存在する場合に、散薬分包制御部10が、それを続けて処方してもよいかどうかを判断する。
【0156】
なお、最初の処方を開始する時点で、同一散薬が処方されていることが分かっている場合は、処方指示リスト2000の参照を省略してもよい。
【0157】
ステップS22で、処方を連続させると決定した場合は、ステップS02を繰り返す。すなわち、散薬収容容器100は第1の散薬放出部200に設置された状態で、散薬容器移送装置800が、散薬容器棚700から空の散薬一時保管容器300を散薬計量部400に移送する。
【0158】
ステップ22で、同一散薬が処方指示リスト2000に存在しないか、同一散薬の処方を連続させないと決定した場合は、ステップS23に進み、散薬容器移送装置800が、散薬収容容器100を散薬容器棚700へ戻す。
【0159】
<散薬包装ステップへ>
散薬の円盤撒きが完了したら、ステップS31に進み、散薬包装装置600が、散薬を切り出し、包装を開始する。これが完了すれば、散薬包装の完了ステップ(S32)となる。
【0160】
一方、散薬包装動作と並行して、処方指示リスト2000の参照が行われる。(ステップS41)
【0161】
参照の結果として、ステップS42で、同一散薬が処方指示リスト2000の中に存在するかどうかを判定する。
【0162】
同一散薬が処方指示リスト2000にない場合には、ステップS43へと進み、散薬容器洗浄部900が、散薬一時保管容器100を洗浄する。
【0163】
ステップS43の後は、ステップS44に進み、散薬容器移送装置800が、散薬一時保管容器100を散薬容器棚700へ戻す。これが終了すると、一連の動作が完了する。
【0164】
散薬分包機1は、分包が完了したら、完了通知を処方管理装置2に対して送り、即時に処方管理装置2は、処方指示リスト2000から、完了した処方番号を削除し、別に用意された図示しない処方完了リストにその処方番号を移動する。
【0165】
一方、ステップS42において、参照の結果として、同一散薬がリストの中に存在する場合は、ステップS45に進み、散薬計量部400が空いているかどうかをチェックする。
【0166】
ここで、散薬計量部400が空いている場合は、ステップS46へ進み、散薬容器移送装置800が、使用済みの散薬一時保管容器300を、洗浄せず、そのまま散薬計量部400へ移送する。
【0167】
引き続き、ステップS47において、散薬容器移送装置800が、散薬容器棚700に戻した当該処方散薬の散薬収容容器100を第1の散薬放出部200へ移送する。
【0168】
その後、ステップS03に戻り、第1の散薬放出部200が、散薬収容容器100から散薬一時保管容器300へ散薬を放出する。
【0169】
また、ステップS45において、散薬計量部400が空いていない場合は、ステップS48において、散薬容器移送装置800が、空になった散薬一時保管容器300を、洗浄せずに、散薬容器棚700に移送する。
【0170】
その後、ステップS45に戻り、散薬計量部400の空きを待ち、空きができたら、ステップS46に進み、当該空になった散薬一時保管容器300を、散薬容器移送装置800が、散薬計量部400と移送し、その後は、ステップS47から、ステップS03へと進む。
【0171】
このようにして、ある散薬の分包処理の最後の段階で、同一散薬が処方指示リスト2000にあることが判明した場合でも、散薬一時保管容器300の洗浄の手間を省くことができる。
【実施例1】
【0172】
次に、本発明の散薬分包システムの一実施形態にかかる実施例を、処方指示リスト2000に表示されている処方例を用いて説明する。
【0173】
まず、処方番号001は、同日8:00にA診療科6aから患者1001に対してAAAなる単薬を処方する注文であり、同時に薬剤在庫データベース5を参照して散薬分包機1に該当散薬の在庫が200gあるとの情報から、処方管理装置2から散薬分包機1にAAA薬/21g/21分割の指示が行われ、自動計量および分包が行われる。
【0174】
散薬分包機1は、分包が完了したら、完了通知を処方管理装置2に対して送り、処方管理装置2は、即時に処方指示リスト2000から当該処方001を削除し、別の図示しない処方完了リストに移動する。
【0175】
次に、処方番号002の例は、同日8:10にB診療科6bから患者番号1002に対してBBBとCCCという2薬を処方する注文である。これは混和と呼ばれる処方であり、同一包内に複数の散薬を所定比率で封入するものである。
【0176】
この場合も処方管理装置2が、薬剤在庫データベース5を参照して、散薬分包機1にそれぞれの該当薬剤の在庫があるとの情報から、散薬分包機1に(BBB薬/32g)および(CCC薬/10g)/42分割の指示が行われ、自動計量および分包が行われる。
【0177】
なお、散薬分包機1には2組の散薬計量部400と、複数の第2の散薬放出部500を具備するので、複数の散薬を同時に円盤撒き動作できるものである。実施例では、左右の円盤に各2台の第2の散薬放出部500を有するので、最大4薬の混和を実行することができる。
【0178】
次の処方番号003の例は、劇薬登録されているDDD薬の処方注文である。劇薬として別に管理している薬剤を使用するので、他の散薬分包手段4で分包が行われる。
【0179】
他にも、特定の散薬で、散薬分包機1で処理するよりは、他の散薬分包手段4で処理した方が効率的と判断される場合、例えば、1処方の量が大量で、これを処方すると、散薬収容容器100の残量がなくなってしまう場合などは、他の散薬分包手段4で処理するように指示される。
【0180】
次の処方番号004と005の例は、同一散薬EEE薬の処方が連続する場合である。この場合は処方番号004と005の処方を一括して、散薬分包機1に指示する。
【0181】
このような指示を受けた場合には、「連続処方」の処理として、図17から図18に示すように、ステップステップS01からステップS05の後、ステップS22、ステップS23のステップを経由してステップS01へと戻る。
【0182】
なお、予め「連続処方」の指示を受けている場合は、ステップS21の処方指示リスト2000の参照ステップはスキップしてステップS22に進んでもよい。
【0183】
すなわち、処方番号004の処理として、EEE薬が収容された散薬収容容器100を第1の散薬放出部200に移送して、さらに空の散薬一時保管容器300を散薬計量部400に移送して、処方番号004に指示される計量を行い、計量済みの散薬一時保管容器300を第2の散薬放出部500に移送し、その後の円盤撒き、配分動作ならびに1包化分包を行う。
【0184】
次に、処方番号005の処理として、別の空の散薬一時保管容器300を散薬計量部400に移送して、同一散薬EEE薬の処方番号005に指示される計量を行うものである。
【0185】
これによって、EEE薬の散薬収容容器100を散薬容器棚700に移送返却するという動作を省くことができる。
【0186】
次の処方番号006から009では、短時間にFFF薬の処方が連続している例である。
【0187】
例えば、処方の処理が少し進行した段階の8:34に処方指示リスト2000を参照すると、その時点では処方番号007以降の処方注文はまだ発生していない。それゆえ、この場合は処方番号006について「連続処方」でなく、通常の処方の処理を進める。
【0188】
散薬分包機1は、処方番号006の処理を進めて、各種の容器移送の後、散薬計量部300での63gの計量が完了した時点で、図18のステップS21に示すように、散薬一時保管容器300の移送を行わずに、その時点での処方指示リスト2000を参照する。
【0189】
一般の動作であると、処方動作開始から計量完了までには数分を要するので、この間に新たな処方注文が入る場合がある。
【0190】
本例のように計量完了時点(8:37以降)に処方指示リスト2000を参照すると、8:37に処方番号008に示すように同一散薬FFF薬の処方注文が発生していることが判明した。
【0191】
このような場合には、図18のステップS22に示すように、先に処方番号004と005で説明した「連続処方」に切り替え、処方番号008の順番を繰り上げて、ステップS01に戻す。
【0192】
これによってFFF薬の散薬収容容器100を散薬容器棚700に移送返却するという動作を省くことができる。
【0193】
更に、処方番号006の動作が進んで、第2の散薬放出部500で、散薬一時保管容器300からの放出が終わる「円盤撒き完了」(ステップS13)以降でも、再度、処方指示リスト2000を参照する。
【0194】
参照時点で、同一散薬の処方注文がない場合は、そのまま分包を継続し、本例のように「円盤撒き」完了以降(8:39以降)に、処方指示リスト2000を参照して、8:39に処方番号009の同一散薬FFF薬の処方注文が発生していることが判明したとする。(ステップS41-S42)
【0195】
この場合は、通常は、空になった散薬一時保管容器300を洗浄してから散薬容器棚700に返却するものを、この洗浄ステップをスキップして、洗浄しないまま空の散薬一時保管容器300を一旦、散薬容器棚700に移送・返却し、次に散薬計量部400が空いた時点で、この散薬一時保管容器300で処方番号009を実行する。
【0196】
このようにすることで、洗浄しなくとも同一散薬であるから、コンタミネーションを発生することなく時間短縮を図りつつ分包が実行できる。
【0197】
なお、散薬の分包処理に関し、散薬収容容器100に収容されている散薬が不足するまたはなくなった場合の対応方法につき、付記しておく。
【0198】
散薬分包機1の散薬容器棚700に所定処方用の散薬が処方必要量在庫していることが、薬剤在庫データベース5で確認できた場合は、散薬分包機1に対して、該当散薬の所定量の分包を指示する。
【0199】
散薬分包機1の散薬容器棚700に所定処方用の散薬が在庫しているが、その残量が処方必要量に満たないことが、薬剤在庫データベース5で確認できた場合は、まず、散薬分包機1に対して、該当散薬の残量全ての計量をすることを指示する。
【0200】
同時に散薬充填台3に対して、新たに薬剤師が手で十分な量の当該散薬を収容し、この散薬収容容器100を散薬分包機1に装填するように指示する。
【0201】
散薬分包機1が、新たに当該散薬が収容された散薬収容容器100の装填を検出したら、先に計量して空になった散薬収容容器100と交換して、残りの分を計量継続し、完了後、分包を行う。
【0202】
散薬分包機1の散薬容器棚700に所定処方用の散薬が在庫していないことが、薬剤在庫データベース5で確認できた場合は、薬剤在庫データベース5には、それぞれ散薬について、散薬分包機1で分包するか、他の散薬分包手段4で分包するかの指定を予め行っておく。
【0203】
散薬分包機1で分包すると指示されている場合は、散薬充填台3に対して、新たに薬剤師が手で十分な量の当該散薬を収容し、この散薬収容容器100を散薬分包機1に装填するように指示する。
【0204】
その後に散薬分包機1が、新たに当該散薬が収容された散薬収容容器100の装填を検出したら、新たな散薬収容容器100を計量部に移送して、計量および分包を行う。
【0205】
また、他の散薬分包手段4で分包すると指示されている場合は、薬剤師が別の容器に所定薬量を計量して、この容器の散薬を他の散薬分包手段4に投入して、分包する。
【0206】
なお、これまでに述べたような制御を実現するためには、各容器のRFIDを利用して、各容器の薬剤種、残量、さらには洗浄の有無などが、実時間で管理されていることが必要である。
【0207】
本発明の効果については、これまで述べてきたように、散薬分包機1及び散薬分包システム1000において、特定の処方を散薬分包機1に指示するタイミングで、処方指示リスト2000を参照して、同一の散薬があれば、それを連続して行うように順位組み換えをするだけでなく、さらに分包を開始し、「計量完了」と「円盤撒き完了」という時間経過したタイミングでもさらに、制御を切り替えることで、きめ細かく動作時間短縮を行うことができる。
【0208】
また、このような制御をプログラム化すると、同一散薬が頻繁に注文された場合などで、先に注文があった処方が後回しになる場合があるので、注文後の時間経過を管理し、所定時間経過しても、分包動作を開始できない処方番号があれば、これを優先して実行するようにしてもよい。
【0209】
ここで重ねて、本発明の運用と効果について説明する。
まず、散薬分包機1で、計量完了後に処方指示リストに同一散薬が追加されていた場合には、順番は後ろにあるこの同一散薬の処方の計量を継続する。これによって散薬収容容器100を散薬容器棚700に戻し、再び取り出し移送するという時間を節約することができる。
【0210】
この制御は、散薬分包機1が動作開始するときの判断ではなく、それから時間が経過した計量完了時点で行うこともできるため、その間に追加された新たな処方番号を参照でき、より広汎に時間節減効果が得られる。
【0211】
次に、ここで用いる散薬一時保管容器300は、使い回しになるので、使用の都度散薬容器洗浄部900で洗浄した後に、散薬容器棚700に戻されるように制御されるが、直近の処方に同一散薬の計量があれば、その場合は洗浄しないで、そのまま再使用することで、より効率的になる。
【0212】
この洗浄を行うか行わないかの判定も、処方動作開始時だけではなく、散薬一時保管容器300を散薬容器洗浄部900に移送する直前に行うこともでき、処方動作開始時から洗浄開始動作までの時間に追加された新たな処方番号を参照することができ、効率的な運用ができる。
【0213】
先に説明したように、同一散薬処方が発生していた場合には、直接、散薬計量部400に洗浄をしない空の散薬一時保管容器300を移動させる場合もあるし、既に散薬計量部400が他の散薬の計量を行って占有されている場合は、一旦、散薬容器棚700に返却し、散薬計量部400が空いたら、改めて散薬容器棚700から当該散薬一時保管容器300を移送すればよく、このようにしても時間短縮、洗浄動作の削減などの効果が十分得られる。
【産業上の利用可能性】
【0214】
本発明は、調剤薬局などにおける散薬の調剤処理を効率的に行うことができるものであるから、大いに産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0215】
1 散薬分包機
2 処方管理装置
3 散薬充填台
4 その他の散薬分包手段
5 薬剤在庫データベース
6 診療科または病棟
10 散薬分包制御部
100 散薬収容容器
200 第1の散薬放出部
300 散薬一時保管容器
400 散薬計量部
500 第2の散薬放出部
600 散薬包装装置
700 散薬容器棚
800 散薬容器移送装置
900 散薬容器洗浄部
1000 散薬分包システム
2000 処方指示リスト

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19