(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】病原体からの免疫原性抗原同定および臨床的有効性との相関
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/04 20060101AFI20220203BHJP
C12N 1/14 20060101ALI20220203BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20220203BHJP
C12N 7/00 20060101ALI20220203BHJP
C12N 5/09 20100101ALI20220203BHJP
C07K 14/57 20060101ALI20220203BHJP
C12N 9/64 20060101ALI20220203BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20220203BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20220203BHJP
A61K 39/02 20060101ALI20220203BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20220203BHJP
A61K 39/155 20060101ALI20220203BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220203BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220203BHJP
A61K 35/768 20150101ALI20220203BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220203BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20220203BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220203BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12N1/14 A
C12N1/20 A
C12N7/00
C12N5/09
C07K14/57
C12N9/64 Z
G01N33/68
A61K39/00 H
A61K39/02
A61K39/12
A61K39/155
A61K39/00 K
A61K39/395 R
A61K39/395 S
A61K39/395 T
A61K35/17 Z
A61K35/768
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2018514333
(86)(22)【出願日】2016-09-19
(86)【国際出願番号】 US2016052487
(87)【国際公開番号】W WO2017049291
(87)【国際公開日】2017-03-23
【審査請求日】2019-09-18
(32)【優先日】2015-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391058060
【氏名又は名称】ベイラー カレッジ オブ メディスン
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR COLLEGE OF MEDICINE
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リーン、アン、マリー
(72)【発明者】
【氏名】アグアヨ-ヒラルド、ペールベル
(72)【発明者】
【氏名】ツァンノウ、イフィゲネイア
(72)【発明者】
【氏名】ヴェラ、ジュアン、エフ.、ヴァルデス
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/110397(WO,A2)
【文献】特表平09-510211(JP,A)
【文献】特表2013-530943(JP,A)
【文献】Journal of Virology,2001年,Vol.75, No.18,pp.8649-8659
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q1/00-3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップを含む、病原体またはがんに対する抗原の免疫原性の階層の確立のための方法:
複数の個体から得られたそれぞれの末梢血単核細胞(PBMC)を、以下の(a)~(
e)を含むin vitroの培養条件下で培養するステップ;
(a)1個体に由来する前記細胞を、病原体またはがんに由来する2以上の抗原に、
1以上のTh1サイトカインの存在下で、前記抗原を認識する細胞の量的な増殖を可能ならしめる条件下で曝露して、増殖した細胞を作製すること、
(b)増殖した前記細胞を複数の別々の培養物に分けて、それぞれの培養物で別々の前記抗原の1つを添加すること、
(c)増殖した前記細胞の別々の培養物のそれぞれから判定された生物学的活性の大きさを閾値と比較して、レスポンダーである増殖した細胞培養物とノンレスポンダーである増殖した細胞培養物とを判別すること、
(d)前記生物学的活性が前記閾値を超えた場合は増殖した細胞培養物をレスポンダーと同定し、前記生物学的活性が前記閾値を超えない場合は細胞培養物をノンレスポンダーと同定すること、
(e)複数の個体
から得られたPBMC
について前記(a)~(d)を行い、前記2以上の抗原のそれぞれについて、評価した個体の数に対して、前記増殖した細胞培養物がレスポンダーである頻度及び前記増殖した細胞培養物がノンレスポンダーである頻度を決定すること、及び
(f)以下の数式:
【数1】
に基づいて前記抗原の免疫優性の階層を確立する
ステップ;
ここで、前記生物学的活性が、IFNγ及び/又はグランザイムBの産生を含む。
【請求項2】
前記病原体が、ウイルス、真菌または細菌である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記閾値を決定するステップをさらに含む、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ウイルスが、呼吸器ウイルスである、請求項2
または3に記載の方法。
【請求項5】
前記呼吸器ウイルスが、パラインフルエンザウイルスまたはメタニューモウイルスである、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記パラインフルエンザウイルスが、III型である、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記メタニューモウイルスが、ヒトメタニューモウイルスである、請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
前記階層の情報が、前記病原体に曝露された、前記病原体に曝露されるリスクがある、前記病原体に罹患しやすい、前記病原体からの疾患を有する、前記がんのリスクがある、または前記がんを有する個体に対する免疫療法の決定に用いられる、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記免疫療法が、ワクチン、免疫原性組成物、モノクローナル抗体、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)、腫瘍溶解性ウイルス、養子T細胞移植、またはこれらの組み合わせを含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記免疫療法が、同じ細胞上の1つより多くの抗原を標的にする、請求項
8または
9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年9月18日に出願した米国仮特許出願第62/220,884号の優先権を主張するものであり、前記仮出願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本開示の実施形態は、少なくとも細胞生物学、分子生物学、免疫学および医学の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
造血幹細胞移植(HSCT)は、様々な悪性および非悪性障害に対して選択される処置である。しかし、移植後の移植片対宿主病(GVHD)、原疾患再発およびウイルス感染症は、いまだ罹患率および死亡率の主原因である。ウイルス感染症は、同種移植レシピエントの大多数において検出される。抗ウイルス薬は、一部のウイルスには利用できるが、常に有効であるとは限らず、それ故、新規治療法の必要性が強調される。これらのウイルス感染症を処置するための1つの戦略は、例えば、ドナー由来のウイルス特異的T細胞(VST)の注入を少なくとも含む、養子T細胞移植を用いる戦略である。VSTアプローチを用いて、例えば、ドナーから細胞を抽出し、ウイルス特異的集団をex vivoで増殖させ、そして最後にT細胞産物を幹細胞移植レシピエントに注入することができる。
【0004】
Adv、EBV、CMV、BK、HHV6を標的にする、in vitroで増殖されたドナー由来および第3者VSTは、ウイルス感染症を有する幹細胞移植患者に養子移入されたとき安全であることが示されている。Adv、EBV、CMV、BKおよびHHV6に対するVSTの再構成抗ウイルス免疫は、疾患の除去に有効であり、in vivoでかなりの増殖を示した。in vitroで増殖され養子移入された自家がん特異的T細胞が患者に養子移入されたとき、安全であり、臨床的利点を伴うことも証明されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施形態は、ある一定の病原体およびがん抗原に対する治療法を提供することにより、ならびにまたどの抗原が免疫原性であり、臨床的に効果があるのかを明らかにすることにより、当技術分野における長年にわたる切実な要求を満たすものである。
【0006】
本開示の実施形態は、ヒトまたはイヌなどの哺乳動物個体のための1つ以上の免疫療法において臨床的に効果があるであろう1つ以上の抗原を同定するためのものを含む、免疫療法を作り出すための方法、組成物および/またはシステムに関する。前記方法の実施形態は、病原体またはがん細胞由来のどの抗原が、哺乳動物における1つ以上の治療応用への利用に好適な免疫原性のものであるかを判定することに関する。ある一定の実施形態では、病原体は、例えば、ウイルス、細菌、または真菌である。
【0007】
特定の実施形態において、本開示の方法は、問題の病原体および/またはがん細胞からの複数の抗原に対する免疫原性の判定に関し、ならびに好適な生物学的判定に基づく免疫原性の順序付けに関する。それらの免疫原性に基づく抗原の階層の決定は、病原体または癌を有する、病原体および/または癌からの曝露および/または疾患に感受性があるか、またはその危険性がある個体に好適な免疫原性療法を検討する際に用いることができる。特定の実施形態において、好適な免疫原性療法は、特定の病原体またはがんに対する抗原の免疫優性に基づく最も好適な免疫原性療法を含む。
【0008】
様々な実施形態において、病原体またはがんからの少なくとも2つの抗原を同定し、それらの免疫原性レベルが定量される。次いで、それらの抗原をそれらの免疫原性レベルに基づいた順序でランク付けすることができ、その結果、どの抗原を免疫療法の標的として使用すべきであるかについての決定を下すことができる。
【0009】
抗原の階層の決定に基づいて設計される免疫原性療法は、いかなる種類のものであってもよいが、特定の実施形態における免疫原性療法は、ワクチン、養子細胞療法、モノクローナル抗体、二重特異性抗体(BITES)、腫瘍溶解性ウイルス、またはこれらの組み合わせを含む。免疫療法は、養子T細胞療法(ネイティブT細胞受容体(TCR)、改変TCR、またはCAR T細胞)を含み得るが、NK細胞、NK T細胞、間葉系間質細胞(MSC)および樹状細胞(DC)をはじめとする他の型の免疫細胞を用いてもよい。免疫療法は、免疫細胞の産生および使用に依存することがあり、ネイティブであるかまたは改変されているT細胞受容体に依存するもの、ならびにNK細胞、NKT細胞、間葉系間質細胞(MSC)および樹状細胞(DC)に依存するものを含む。例えば、病原体またはがんの最も免疫原性が高い抗原のうちの少なくとも2つを、それぞれの病原性細胞またはがん細胞を破壊する意図をもって攻撃する、T細胞療法を設計することができる。そのような療法は、病原体またはがんからの最も免疫展性の高い抗原標的のうちの少なくとも2つを認識することができるT細胞を生成する、T細胞製造プロセスを含むことがあり得る。代替実施形態において、T細胞療法は、病原体または癌由来の1つだけの抗原を標的にする。
【0010】
ある一定の実施形態では、病原体に曝露された個体(病原体により直接もしくは間接的に引き起こされる疾患に罹患した個体を含む)、または病原体に曝露される可能性がある個体、またはがんを有する、もしくはがんを発症するリスクがある個体、または病原体に曝露された結果としてがんを発症するリスクがある個体に対する治療に用いることになる1つ以上の抗原の検討に使用するために、病原体またはがんからの1つより多くの抗原の免疫原性を判定し、順序付けして階層にする。
【0011】
特定の実施形態では、評価を行って、所与の抗原の免疫原性レベルに値を割り当てるために使用することができる情報ベースを構築する。この情報ベースは、次のように確立される:a)病原体に曝露された個体またはがん患者から採取した末梢血単核細胞(PBMC)を、前記病原体由来の2つ以上の抗原または前記がんからの2つ以上の抗原に、好ましくはTh-1極性化サイトカインの存在下で、前記PBMCを曝露するin vitro培養プロセスに付すステップ;b)一定の期間、前記抗原を認識するT細胞の量を倍増させるステップ;c)その培養物を分割して、ステップaに存在した抗原の数と同数の別個の培養物にし、前記抗原の1つだけを各培養物に添加するステップであって、その結果、各培養物が、元の抗原の1つを含み、かつ各培養物が、他の培養物とは異なる抗原を含むことになる、ステップ;d)生物学的活性を測定するステップ(これを生物学的測定と呼ぶこともある);e)並行して、または異なる時点で、ことによると経時的な参照により、生物学的活性の閾値を、ステップcのものと同じ薬剤(複数可)にin vitroで逐次的に曝露も並行して曝露もされていないPBMCにおいて生じる生物学的活性のin vitroでの評定によって確立するステップ;f)ステップcの培養物の各々についての生物学的活性を前記閾値と比較し、前記閾値を超える生物学的活性を有するものをレスポンダーとして分類し、前記閾値を超える生物学的活性を有さないものをノンレスポンダーとして分類するステップ;およびg)ステップa~fの結果として、評価した個体数に対するレスポンダーおよびノンレスポンダーの出現頻度が分かり、ならびに前記閾値に対する、およびゼロに対する、レスポンダーの生物学的活性の大きさが分かるステップ。
【0012】
特定の態様では、閾値が生物学的活性の測定プロセスにおけるノイズであることは、当業者には理解される。閾値を確立するための方法は、1つより多くある。例えば、上で説明したように、PBMCを前記プロセスで使用した各抗原に曝露することができ、その後の生物学的活性を測定して閾値を確立することができる。あるいは、例えば、ステップcの培養物をステップaに含まれない抗原で抗原処理することもできる。両方のアプローチによってノイズが検出されることになり、その結果、目的の抗原に曝露される培養物がレスポンダーとして分類されるために超える必要がある閾値が確立されることになる。
【0013】
ある一定の実施形態には、病原体またはがんの免疫原性抗原を特徴づける方法があり、この方法は、多様な複数のT細胞を用意するまたは生成するステップであって、前記複数のT細胞各々が、前記病原体またはがんからの1つの抗原に特異的なものであるステップ;複数各々からの細胞からの、それらのそれぞれの抗原による抗原処理に基づく、定量可能な生物学的応答をアッセイするステップであって、前記生物学的応答の定量された出力を閾値量と比較して、複数各々からの応答の有効性および大きさを決定し、前記有効性が、前記閾値量を超える生物学的応答を有する集団内の個体の百分率である、ステップ;および複数各々からの前記応答の有効性と応答の大きさの間の数学的関係に基づいて各抗原の免疫原性を順序付けるステップを含む。
【0014】
他の実施形態では、レスポンダーの百分率およびノンレスポンダーの百分率ならびに生物学的応答の大きさをはじめとする変数を使用して抗原に値を割り当てる式であって、前記値が高いほど特定の抗原に割り当てられる免疫原性レベルが高い、式を確立する。
【0015】
他の実施形態では、レスポンダーの百分率およびノンレスポンダーの百分率ならびに生物学的応答の大きさをはじめとする変数を使用して抗原に値を割り当てる式であって、前記値が高いほど特定の抗原に割り当てられる免疫原性レベルが高い、式を確立する。
【0016】
例示的なウイルスX、細菌Y、腫瘍Zの、ならびにまた例示的だが具体的なウイルス、例えば、パラインフルエンザIII型(PIV3)およびヒトメタニューモウイルス(hMPV)の、免疫プロファイリング方法の例を本明細書において提供する。特定の実施形態では、PIV3およびhMPVの多数の抗原の免疫原性をそれぞれ判定し、治療に用いる。
【0017】
特定の実施形態において、本開示の方法および組成物は、感染症、例えば、HSCT後の感染症を予防または処置するための、養子T細胞療法に関する。特定の事例では、本開示は、例えば、PIV(少なくともPIV3を含む)、hMPV、サイトメガロウイルス、BKウイルス、ヒトヘルペスウイルス6、アデノウイルス、エプスタイン・バーウイルス、BKウイルス、RSV、インフルエンザ、パラインフルエンザ、ボカウイルス、コロナウイルス、LCMV、流行性耳下腺炎、麻疹、メタニューモウイルス、パルボウイルスB、ロタウイルス、ウエストナイルウイルス、JC、またはHHV7による感染症を少なくとも含む、ウイルス感染症の予防または処置のための治療法を含む。以下のファミリーの1つからのもの含む、任意のウイルス感染症からのウイルスが処置され得る:アデノウイルス科(Adenoviridae)、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)、ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)、ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、レトロウイルス科(Retroviridae)、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)、パポーバウイルス科(Papovaviridae)、ポリオーマウイルス科(Polyomavirus)、ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)、またはトガウイルス科(Togaviridae)。
【0018】
目的の病原体を含み得る細菌には、少なくとも次のものが含まれる:例えば、炭疽菌(Bacillus anthracis)、セレウス菌(Bacillus cereus)、ヘレンセラ菌(Bartonella henselae)、塹壕熱菌(Bartonella Quintana)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボレリア・ガリニ(Borrelia garinii)、ボレリア・アフゼリ(Borrelia afzelii)、回帰熱ボレリア(Borrelia recurrentis)、ウシ流産菌(Brucella abortus)、イヌ流産菌(Brucella canis)、ヤギ流産菌(Brucella melitensis)、ブタ流産菌(Brucella suis)、ジェジュニ菌(Campylobacter jejuni)、肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)、トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、オウム病クラミジア(Chlamydophila psittaci)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、ディフィシル菌(Clostridium difficile)、ウルシュ菌(Clostridium perfringens)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheria)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、フェシウム菌(Enterococcus faecium)、大腸菌(Escherichia coli)、野兎病菌(Francisella tularensis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、在郷軍人病菌(Legionella pneumophila)、レプトスピラ・インターロガンス(Leptospira interrogans)、レプトスピラ・サンタロサイ(Leptospira santarosai)、レプトスピラ・ウェイリイ(Leptospira weilii)、レプトスピラ・ノグチイ(Leptospira noguchii)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、らい菌(Mycobacterium leprae)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ロッキー山紅斑熱リケッチア(Rickettsia rickettsii)、チフス菌(Salmonella typhi)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、ソンネ菌(Shigella sonnei)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、腐性ブドウ球菌(Staphylococcus saprophyticus)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、ウレアプラズマ・ウレアリチカム(Ureaplasma urealyticum)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、ペスト菌(Yersinia pestis)、腸炎エルシニア(Yersinia enterocolitica)、または偽結核菌(Yersinia pseudotuberculosis)。
【0019】
特定の実施形態において、本開示の方法および組成物は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、副腎皮質がん、AIDS関連がん、カポジ肉腫、AIDS関連リンパ腫、原発性CNSリンパ腫、肛門がん、虫垂がん、星細胞腫、非定型奇形腫/ラブドイド腫瘍、基底細胞癌、胆管がん、膀胱がん、骨がん(ユーイング肉腫および骨肉腫および悪性線維性組織球腫を含む)、乳がん、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、消化管カルチノイド腫瘍、カルチノイド腫瘍、心(心臓)腫瘍、胚芽腫、胚細胞腫瘍、リンパ腫、子宮頸がん、胆管細胞癌、脊索腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性腫瘍、結腸直腸がん、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、非浸潤性乳管癌(DCIS)、胚芽腫、子宮内膜がん、上衣腫、食道がん、鼻腔神経芽細胞腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵管がん、骨線維性組織球腫、悪性のもの、および骨肉腫、胆嚢がん、胃(Gastric)(胃(Stomach))がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣がん、精巣がん、妊娠性絨毛性疾患、神経膠腫、ヘアリー細胞白血病、頭頸部がん、心臓腫瘍、肝細胞がん、ランゲルハンス細胞組織球症、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼球内黒色腫、膵島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、膵がん、カポジ肉腫、喉頭がん、喉頭乳頭腫症、白血病、口唇および口腔がん、肝がん、肺がん、非ホジキンリンパ腫、骨悪性線維性組織球腫、骨肉腫、黒色腫、眼球内黒色腫、メルケル細胞癌、皮膚がん、中皮腫、悪性中皮腫、原発不明転移性扁平上皮性頸部がん、NUT遺伝子が関与する正中線上の癌、口のがん-頭頸部がん、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、慢性骨髄増殖性腫瘍、骨髄性白血病、慢性(CML)、鼻腔および副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、口腔内がん、口唇および口腔がん、中咽頭がん、口腔がん、骨肉腫、膵がん、乳頭腫症、傍神経節腫、副鼻腔および鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、腹膜がん、前立腺がん、直腸がん、結腸直腸がん、腎細胞(腎)がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、唾液腺腫瘍、肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、子宮肉腫、子宮がん、血管腫瘍、セザリー症候群、皮膚がん、小細胞肺がん、小腸がん、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、扁平上皮性頸部がん、胃(Stomach)(胃(Gastric))がん、皮膚T細胞リンパ腫、精巣がん、喉のがん、胸腺腫、胸腺癌、甲状腺がん、甲状腺腫瘍、腎盂および尿管の移行上皮がん、尿道がん、子宮がん、子宮内膜、子宮肉腫、膣がん、血管腫瘍、外陰がん、ワルデンストレームマクログロブリン血症(非ホジキンリンパ腫)ならびにウィルムス腫瘍からなる群から選択されるがんを含む、がんを予防または処置するための養子T細胞療法にも関する。
【0020】
他のおよびさらなる目的、特徴および利点は、本明細書の続きを読むこと、およびその一部を構成する添付の図面、または本開示のために与える本発明の現在好ましい実施形態の任意の例を参照することによって明らかになり、ひいてはより容易に理解されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、多数の抗原へのPBMCの曝露、続いて再抗原処理し、そして閾値の決定、そしてレスポンダーおよびノンレスポンダーの同定を含む、例示的なウイルスXの免疫原性抗原同定の例を示す図である。
【0022】
【
図2】
図2は、
図1における各抗原の免疫原性を順序付けるための数式および抗原階層同定の例を提供する図である。
【0023】
【
図3】
図3は、
図2における抗原階層に基づく具体的な抗原の選択の一例を示す図である。
【0024】
【
図4】
図4は、
図2における抗原階層に基づく具体的な抗原の選択の一例を示す図である。
【0025】
【
図5】
図5は、
図2における抗原階層に基づく具体的な抗原の選択の一例を示す図である。
【0026】
【
図6】
図6は、多数の抗原へのPBMCの曝露、続いて再抗原処理し、そして閾値の決定、そしてレスポンダーおよびノンレスポンダーの同定を含む、例示的な細菌Yの免疫原性抗原同定の例を示す図である。
【0027】
【
図7】
図7は、
図6における各抗原の免疫原性を順序付けるための数式および抗原階層同定の例を提供する図である。
【0028】
【
図8】
図8は、
図7における抗原階層に基づく具体的な抗原の選択の一例を示す図である。
【0029】
【
図9】
図9は、
図7における抗原階層に基づく具体的な抗原の選択の一例を示す図である。
【0030】
【
図10】
図10は、
図7における抗原階層に基づく具体的な抗原の選択の一例を示す図である。
【0031】
【
図11】
図11は、多数の抗原へのPBMCの曝露、続いて再抗原処理し、そして閾値の決定、そしてレスポンダーおよびノンレスポンダーの同定を含む、例示的な腫瘍Zの免疫原性抗原同定の例を示す図である。
【0032】
【
図12】
図12は、
図11における各抗原の免疫原性を順序付けるための数式および抗原階層同定の例を提供する図である。
【0033】
【
図13】
図13は、
図12における抗原階層に基づく具体的な抗原の選択の一例を示す図である。
【0034】
【
図14】
図14は、
図12における抗原階層に基づく具体的な抗原の選択の一例を示す図である。
【0035】
【
図15】
図15は、
図12における抗原階層に基づく具体的な抗原の選択の一例を示す図である。
【0036】
【
図16】
図16は、3’-N-P-M-F-M2-SH-G-L-5’を含む、HMPV分子およびその遺伝子産物を示す図である。
【0037】
【
図17】
図17は、hMPVへのT細胞応答の一例を示す図である。
【0038】
【
図18】
図18は、抗原階層を含む、hMPVへのT細胞応答の一例を示す図である。
【0039】
【
図19】
図19は、hMPVランキングに対応するT細胞スコアの例示的なものを提供する図である。
【0040】
【
図20】
図20は、N-P-M-F-HN-Lを含む、PIV3分子およびその遺伝子産物を示す図である。
【0041】
【
図21】
図21は、PIV3へのT細胞応答の一例を示す図である。
【0042】
【
図22】
図22は、抗原階層を含む、PIV3へのT細胞応答の一例を示す図である。
【0043】
【
図23】
図23は、PIV3ランキングに対応するT細胞スコアの例示的なものを提供する図である。
【0044】
【
図24】
図24は、病原体に対する免疫応答の特性解析のためにグランザイムBを使用してレスポンダーのノンレスポンダーに対する百分率を決定する例を示す図である。
【0045】
【
図25】
図25は、155日目と162日目の間で特定の高まりを示す、抗原MおよびNを標的にするPIV3特異的T細胞の出現頻度を示す図である。
【0046】
【
図26】
図26は、ウイルス感染症を抑えるようなPIV3 T細胞の臨床的関連性の例であって、骨髄移植(BMT)後の活動性感染症を有する代表患者においてPIV3特異的T細胞の出現頻度の増加に感染症の症状およびウイルス検出との逆相関があった例を示す図である。
【0047】
【
図27】
図27は、異なるhMPV抗原に対する免疫T細胞応答の臨床的関連性を示す図である。
【0048】
【
図28】
図28は、ウイルスXの最上位の標的が抗原源として同定されるランキングの治療応用を示す図である。
【0049】
【
図29】
図29は、細菌Yの最上位の標的が抗原源として同定されるランキングの治療応用を示す図である。
【0050】
【
図30】
図30は、腫瘍Zの最上位の標的が抗原源として同定されるランキングの治療応用を示す図である。
【0051】
【0052】
【
図32】
図32は、抗原MおよびHNについての細胞内サイトカイン染色により検出されたCD4+およびCD8+の抗原特異性を示す図である。
【0053】
【
図33】
図33は、hMPV T細胞製造の一例を示す図である。
【0054】
【0055】
【0056】
【
図36】
図36は、HMPV標的細胞が漸減する結果となる、HMVP特異的T細胞との培養の結果を提供する図である。
【0057】
【
図37】
図37は、
図35における細胞が、関連抗原についての細胞内サイトカイン染色による検出に従って抗原特異性であったことを示す図である。
【0058】
【
図38】
図38は、T細胞の産物を定義するための数学的関係の一例を示す図である。
【0059】
【
図39】
図39は、培養物の特異性および細胞溶解能力をアデノウイルス特異性T細胞について0、10および20日目に評定したことを示す図である。
【0060】
【
図40】
図40は、培養物の特異性および細胞溶解能力をBKウイルス特異性T細胞について0、10および20日目に評定したことを示す図である。
【0061】
【
図41】
図41は、培養物の特異性および細胞溶解能力をCMV特異性T細胞について0、10および20日目に評定したことを示す図である。
【0062】
【
図42】
図42は、末梢血または白血球アフェレーシス産物から生成された抗原特異的T細胞の患者への投与を示す図である。
【0063】
【
図43】
図43は、特異的T細胞のオフザシェルフ使用を示す図である。
【0064】
【
図44】
図44は、T細胞の産物を患者に与えるときまたは与えないときの数学的例を提供する図である。
【0065】
【
図45】
図45は、
図44における数学的例によって定義されたCMV特異的T細胞産物で処置された活動性CMV感染症を有する患者の臨床成績を示す図である。
【0066】
【
図46】
図46は、
図44における数学的例によって定義されたEBV特異的T細胞産物で処置された活動性EBV感染症を有する患者の臨床成績を示す図である。
【0067】
【
図47】
図47は、
図44における数学的例によって定義されたBKV特異的T細胞産物で処置された活動性BKV感染症を有する患者の臨床成績を示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0068】
本願で使用される「a」および「an」という語は、本特許請求の範囲および/または本明細書において「含むこと」という用語とともに使用される場合、「1つ」を意味することがあるが、「1つ以上」、「少なくとも1」および「1または1を超える」の意味とも一致する。本発明の一部の実施形態は、本発明の1つ以上の要素、方法ステップ、および/もしくは方法からなることもあり、またはそれらから本質的になることもある。本明細書に記載の任意の方法または組成物を、本明細書に記載の任意の他の方法または組成物に関して実行することができると考えられる。
【0069】
本明細書で使用される用語「生物学的活性」は、例えば、IFNガンマ、グランザイムB、IL2、TNFアルファなどのエフェクター分子の産生、標的細胞の特異的溶解、またはCD25、CD69、CD27、CD28もしくはCD107a/bなどの細胞表面分子の発現の生物学的変化と定義される。
【0070】
I.一般的実施形態
【0071】
本開示の一部の実施形態において、個体は、本開示の方法および/または組成物を必要としている。特定の実施形態において、個体は、易感染性である(例えば、免疫系で感染性疾患と闘う能力が何らかの理由で損なわれているまたは完全に存在しない個体と定義され得る)。特定の実施形態において、易感染性個体は、幹細胞移植を受けたことがあった、臓器移植を受けたことがあった、などである。別の特定の実施形態において、個体は、がんを有するか、またはがんを発症するリスクがある。
【0072】
本開示の実施形態は、病原体またはがんの免疫優性の階層の確立に関し、代表的な事例では、病原体は、例えば、PIV(少なくともPIV3を含む)、hMPV、サイトメガロウイルス、BKウイルス、ヒトヘルペスウイルス6、アデノウイルス、エプスタイン・バーウイルス、BKウイルス、RSV、インフルエンザ、パラインフルエンザ、ボカウイルス、コロナウイルス、LCMV、流行性耳下腺炎、麻疹、メタニューモウイルス、パルボウイルスB、ロタウイルス、ウエストナイルウイルス、JC、またはHHV7である。がん抗原は、肺、乳房、脳、結腸、皮膚、前立腺、膵臓、子宮内膜、腎臓、卵巣、精巣、骨、脾臓、肝臓、胆嚢、甲状腺、食道、腸、膀胱、直腸、肛門、胃、頭頸部、喉、下垂体のがん、または多発性骨髄腫もしくはリンパ腫からのものであり得る。特定の実施形態において、病原体がウイルスである場合、レスポンダーとノンレスポンダーを区別するための活性の閾値の例は、ELIspotアッセイにおける20IFNガンマスポット形成細胞(SFC)/(2×105インプット細胞)または10グランザイムB SFC/(2×105インプット細胞)より上の値である。これらが、活性の閾値を定義するために使用される生物学的活性の例の代表であることは、当業者には理解される。しかし、生物学的活性を定義するための数値的閾値の例は、生物学的活性を測定するために使用されるアッセイ/ツールによって変わることがある。
【0073】
特定の実施形態では、1つ以上の定量的生物学的応答が、病原体からの抗原の免疫原性のランクの決定に用いられる。特定の実施形態では、応答は、レスポンダー対ノンレスポンダーを決定するために使用することができるレベルを含む、T細胞活性の重要なレベルを同定するために用いられる。ある一定の実施形態において、定量的生物学的応答は、特定の標的の認識に基づくT細胞からの化合物の産生(例えば、細胞からの分泌型産生)または発現(例えば、細胞上での膜結合型発現)である。特定の実施形態において、化合物は、IL1α、IL1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10、IL-12(p35+p40)、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17a、IL-17B、IL-17F、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23(p90+p43)、IL-25、IL-26、IL-27(p28+EBI3)、IL-28A/B/IL29A、IL-30(IL-27のp28サブユニット)、IL-31、IL-32、IL-33、IL-35(p35+EBI3)、TNFα、LTα、LTβ、LIGHT、OX40L、CD25、CD45、CD40L、FASL、CD27L、CD30L、4-1BBL、TRAIL、RANKリガンド、GM-CSF、IFNγ、LIF、MIF、TGFβ1、TGFβ2、および/またはTGFβ3である。特定の実施形態において、化合物は、IL2、IFNγ、グランザイムB、CD25、パーフォリン、GM-CSF、および/またはTNFαである。一部の実施形態において、生物学的応答は、同種抗原、例えば、CD25、CD27、CD28、CD45、CD69および/またはCD107での刺激に基づく1つ以上のマーカーの発現増加である。
【0074】
SFCという用語が、目的の特定の化合物を発現または分泌する細胞を同定する酵素結合免疫吸着スポット(ELIspot)技術に関して用いられることは、当業者には理解される。この技術は、好適な膜上に固定化された標的タンパク質特異的抗体の使用を用いる。様々な密度で播種された目的の細胞によって産生される化合物を、その化合物を認識する一次抗体によって捕捉し、次いで、同じくその化合物に対して特異的である標識された二次標識抗体によって可視化する。この反応の列記が、本明細書において開示する、ある一定の方法のバイオマーカーである。
【0075】
II.免疫原性抗原の同定およびその有効性の順序
【0076】
本開示の特定の実施形態は、1タイプ以上の免疫療法の作出および/または該免疫療法における利用に特に好適である免疫原性抗原(複数可)の同定に関する方法および組成物を提供する。特定の実施形態では、抗原のコレクションにおいて、該収集物から1つ以上の抗原が他の抗原(複数可)より免疫原性が高いと同定される。抗原のコレクションは、同じ実体からの多数の抗原、例えば、同じ病原体からの多数の抗原、または同じがん型からの多数の抗原(腫瘍抗原を含む)であり得る。一部の事例では、抗原のコレクションは、病原体またはがんからの可能性のある抗原の一部または大部分を含み、ある一定の事例では、抗原のコレクションは、病原体またはがんからの可能性のあるすべての抗原を含む。病原体は、例えば、ウイルス、細菌または真菌であり得る。
【0077】
一般的な実施形態では、病原体またはがんからの様々な抗原についての一連の免疫原性は、T細胞に対する抗原での少なくとも初回または2回目の抗原処理後に順序付けされ、その後、T細胞の応答の有効性を表す数値が決定され、この決定は、2回目またはその後の抗原処理後に行われる。例として、個体からのT細胞は、抗原のコレクションを用いてin vitroで抗原処理され、この初回刺激は、T細胞への曝露のためにプールされた異なる抗原、またはT細胞への曝露のために分離された異なる抗原のいずれかを用いて行うことができる。この刺激は、ある一定の事例では、Th1極性化サイトカインの存在下で行われることもあり、その存在下で行われないこともある。好適な時間(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12日)後、T細胞は、2回目の抗原処理に付されるが、2回目の抗原処理では、T細胞は、分離された形の(プールされたものでない)異なる抗原に曝露される。好適な時間(例えば、15分~72時間)の後、T細胞の1つ以上の生物学的応答が、評価される、例えば、定量的なやり方で評価される。例えば、生物学的応答として、1つ以上の特定の化合物(例えば、細胞から産生および分泌されるもの、または細胞表面発現のために産生されるものを含む)の産生を、T細胞の活性の尺度として評定することができる。この測定は、T細胞の2回目またはその後の抗原処理後、ある一定の時間(例えば、15分~72時間)の後に行われ得る。
【0078】
特定の抗原についての方法の定量的出力は、1、2、またはそれを超える値の関数として特徴づけることができる。特定の実施形態において、定量的出力は、1)T細胞子孫が特定の抗原を有効に認識するドナーの数、および2)T細胞応答の大きさ(例えば、ある一定のインプットT細胞数あたりのSFCの数)を含む。
【0079】
特定の実施形態では、T細胞が抗原に応答しているか否かの定性的判定を設定する閾値。活性の閾値を定義するためのパラメータは、上記の通り定義され、無関係の標的(目的の病原体もしくは腫瘍によって発現されない抗原)に対するまたは未操作のPBMCに対する生物学的応答を測定することによる非特異的応答レベルの決定を含む。そのとき、この非特異的応答レベルによって、レスポンダーとノンレスポンダーとを判別するためのベースラインが確立される。したがって、ある一定の実施形態では、生物学的応答の定量出力を閾値量と比較して、1つの抗原に対して特異的である複数のT細胞各々からの応答の有効性および大きさを判定する。少なくとも一部の事例では、有効性は、閾値量を超える生物学的応答を有する集団内の個体の百分率を包含する。閾値より大きい応答の大きさを有する細胞は、レスポンダーと見なされるのに対して、閾値未満の応答値を有するものは、ノンレスポンダーと見なされる。
【0080】
特定の実施形態では、抗原に対するT細胞の応答の大きさの定量的判定により確立される閾値。非特異的応答は、無関係の標的(目的の病原体もしくは腫瘍によって発現されない抗原)に対するまたは未操作のPBMCに対する生物学的活性に基づいて判定され得る。これにより、レスポンダーをノンレスポンダーと区別するための閾値が確立される。応答が、確立された非特異的応答を超えた場合、レスポンダーを示す。ノンレスポンダーは、確立された非特異的応答を超えない応答で示される。したがって、ある一定の実施形態では、生物学的応答の定量アウトプットを閾値量と比較して、1つの抗原に対して特異的である複数のT細胞各々からの応答の有効性および大きさが判定される。少なくとも一部の事例では、有効性は、閾値量を超える生物学的応答を有する集団内の個体の百分率を包含する。閾値より大きい応答規模を有する細胞は、レスポンダーと見なされるのに対して、閾値未満の応答値を有するものは、ノンレスポンダーと見なされる。
【0081】
T細胞応答の定量は、培養下の細胞についての細胞内で、分泌されて、または細胞表面で同定される1つ以上の変化などの、任意の好適な測定基準によって測定され得る。可溶性であるか、または不溶性である、分泌されるか、または分泌されない、ある一定の化合物の産生が測定され得る。そのような化合物は、いかなる種類のものであってもよいが、特定の実施形態では、それらはサイトカインである。測定する具体的化合物の例としては、IL1α、IL1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10、IL-12(p35+p40)、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17a、IL-17B、IL-17F、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23(p90+p43)、IL-25、IL-26、IL-27(p28+EBI3)、IL-28A/B/IL29A、IL-30(IL-27のp28サブユニット)、IL-31、IL-32、IL-33、IL-35(p35+EBI3)、TNFα、LTα、LTβ、LIGHT、OX40L、CD40L、FASL、CD27L、CD30L、4-1BBL、TRAIL、RANKリガンド、GM-CSF、IFNγ、LIF、MIF、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、およびこれらの組み合わせが挙げられる。細胞表面表現型変化を評価する場合、例えば、CD11a、CD11c、CD16、CD25、CD27、CD28、CD31、CD38、CD40L、CD43、CD44、CD45、CD49d、CD62L、CD69、CD95、CD122、CD127、CXCR3、CCR5、CCR6、CCR7および/またはKLRG-1の発現レベルを測定することができる。一部の事例では、細胞内および細胞外変化が評定され、そのような変化は、例えば、IL-1β、IL2、IL4、IL6、IL12、IFNγ、TNFα、TGFβ、CD107および/またはGM-CSFの産生/発現を含み得る。
【0082】
特定の実施形態において、レスポンダーの百分率とノンレスポンダーの百分率は、生物学的応答を惹起するためのものである所望の薬剤への曝露に応答してのものであった生物学的活性の大きさとの数学的関係に用いられ、前記生物学的活性は、特定の実施形態ではIFNガンマSFCの測定値を表し得る。特定の事例では、数学的関係は、レスポンダーの百分率と応答の大きさの積のノンレスポンダーの百分率に対する比として含む。特定の事例では、数学的関係は、1を加えたレスポンダーの百分率と応答の大きさを掛けたものを1を加えたノンレスポンダーの百分率で割ったものである。
【0083】
特定の実施形態において、レスポンダーの百分率およびノンレスポンダーの百分率は、生物学的活性の大きさとの数学的関係(特定の実施形態ではIFNガンマの測定値を表し得る)に用いられる。特定の事例では、数学的関係は、ノンレスポンダーの百分率に対する比としての、レスポンダーの百分率と応答の大きさの積を含む。特定の事例では、数学的関係は、ノンレスポンダーの百分率+1で割った、(レスポンダーの百分率+1)と応答の規模の積である。
【0084】
特定の実施形態において、特定の生物学的測定値についてのレスポンダーの百分率と応答の大きさの数学的関係は、数式で表される。1つより多くの式が適用可能であり得るが、特定の実施形態における式は、次の通りである:
【0085】
【0086】
この数学的関係からの値を各抗原について決定したら、各抗原についての値を比較し、階層、例えば、有効性が最も高い抗原から有効性が最も低い抗原への階層に順序付けることができる。この免疫原性スペクトラムは、最も好適な抗原(複数可)、例えば、免疫療法で使用されることになる最も好適な抗原(複数可)を選択する必要があるユーザーに情報を提供する。特定の実施形態では、この方法の使用に従って、免疫療法に抗原(複数可)として使用されることになる可能性のある抗原のコレクションから、最も有効な抗原のうちの1、2、3、またはそれより多くを選択することができる。特定の実施形態では、前記方法の出力に従って最も免疫原性の高い抗原のみを選択するが、他の事例では、前記方法の出力に従って2、3、4以上の最も免疫原性の高い抗原を選択することもある。特定の事例では、前記方法の出力に従って最も免疫原性の高い抗原を、前記方法の出力に従って2番目に免疫原性の高い抗原、前記方法の出力に従って3番目に免疫原性の高い抗原、および/または前記方法の出力に従って4番目に免疫原性の高い抗原などに加えて、選択することもある。本開示の方法で同定される最も有効な抗原(複数可)を用いる免疫療法は、ワクチン、免疫原性組成物、養子T細胞移植などをはじめとする、いかなる種類のものであってもよい。
【0087】
ある一定の実施形態では、病原体に関連する病状を有する個体、または病原体に対して血清反応陽性である個体、またはがんを有するもしくはがんのリスクがある個体に、本明細書に記載の免疫原性抗原を特徴づける方法に基づいて設計された免疫療法の治療有効量を与えることができる。
【0088】
例示的病原体の免疫原性抗原の同定およびそれらの免疫原性/有効性の順序付けについての具体的な例は、後段の実施例セクションで提供する。
【0089】
III.免疫細胞とそれらの臨床的有効性との数学的および他の相関
【0090】
本開示の特定の実施形態には、ある一定の免疫細胞、例えば、T細胞、NK細胞またはNK T細胞の有効性を判定するために用いられる方法および組成物がある。前記細胞は、上で説明したような抗原免疫優性の階層の判定に基づいて改変されることもあり、またはされないこともある。特定の実施形態において、細胞産物の生物学的特徴は、臨床的有効性をはじめとする有効性と相関している。
【0091】
特定の実施形態において、T細胞は、抗原、例えば、病原性またはがん(腫瘍を含む)抗原(複数可)での初回および/または2回目またはその後の刺激に基づいて産生される。T細胞の特異性および細胞傷害性を測定して、ある一定の複数の抗原特異的T細胞についての臨床的有効性の見通しを得てもよい。その際、T細胞についての1つ以上の生物学的測定値、例えば、細胞からの分泌化合物の量および/または細胞上の細胞表面マーカーの量が評定される。1つ以上の生物学的測定値は、細胞内のものであってもよく、または細胞表面でのものであってもよい。測定は、1回以上の刺激へのT細胞の曝露後、ある一定の時間の後、例えば、1回以上の刺激後72時間以内だが約15分以内に行われ得る。
【0092】
特定の実施形態において、そのようなT細胞の生物学的測定値は、関係のない実体、例えば、関係のないまたは無関係の標的(例えば、目的の特定の病原体またはがんに存在しない抗原)についての値と比較され得る。少なくともある一定の例において、関係のない実体は、未操作のPBMCを含む、未操作の細胞である。少なくともある一定の事例において、所与の抗原に対するレスポンダーの百分率は、問題のT細胞についての生物学的測定値と未操作の細胞対応物の値の比を使用して決定される。特定の事例において、所与の抗原に対するレスポンダーの百分率は、細胞についての生物学的測定値を、未操作の細胞対応物の生物学特性の値で割ることによって決定される。少なくとも一部の実施形態では、そのような計算により、結果が1以上であった場合、T細胞がその方法で検定された個体はレスポンダーと見なされ、計算結果が1未満であった場合には、T細胞がその方法で検定された個体はノンレスポンダーと見なされる。
【0093】
T細胞に対する特異性に関して、抗原への細胞の曝露後に、例えば、抗原への少なくとも2回の別々の曝露に伴ってある一定の化合物を産生する細胞の能力を検定することができる。特定の実施形態において、特異的病原体またはがんのすべての抗原に指向された化合物産生スポット形成細胞(SFC)の合計が、測定されることになる細胞の化合物の産生によって決まる、SFC/(2×105インプット細胞)のある一定の値以上である場合、細胞は特異的と見なされる。例えば、IFNγ産生については応答を測定するためのベースラインは、≧20SFC/(2×105インプット細胞)であるが、グランザイムBについては応答を測定するためのベースラインは、≧10SFC/(2×105インプット細胞)である。
【0094】
細胞の細胞傷害性の測定に関して、細胞傷害性は、共培養アッセイ、抗原負荷/発現標的の非放射性および放射性標識を含む標準的な殺滅アッセイによって判定され得る。1つの特定の実施形態は、クロム放出アッセイを含み、このアッセイでは、T細胞がエフェクターとして利用され、標的が問題の抗原をパルスしたクロム標識自家PHAブラストである。エフェクター対標的比は、5:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1;60:1、65:1、70:1、75:1、80:1、85:1、90:1、または95:1などであり得る(または少なくとも前記比であってもよく、または前記比以下であってもよい)。細胞は、関連抗原をパルスしたPHAブラストの特異的溶解の百分率が、無関係のT細胞産物または未操作PBMCによって媒介される溶解より高い場合、特定の病原体または腫瘍抗原に対して細胞傷害性であると見なされ得る。一部の状況では、このアッセイにおける活性の閾値は、(例えば、関係のないペプチド(例えば、目的の病原体にも目的の腫瘍にも存在しないペプチド)を発現する標的細胞の非特異的殺滅の百分率を減算した後)40:1のエフェクター対標的比で10%特異的溶解と考えることができる。
【0095】
特定の複数の抗原特異的T細胞についての臨床的有効性は、抗原特異性および/または細胞傷害性の関数として数学的に決定され得る。特定の実施形態において、細胞の有効性の定量的値は、抗原特異的T細胞および未操作の対照細胞、例えば未操作のPBMC、についての生物学的測定値を用い、かつ特異的殺滅についての値を用いる、数学的関係によって得られる。
【0096】
抗原特異性および細胞傷害性を考慮する具体的な数式の一例として、次のものが挙げられる:
【0097】
【0098】
- 式中、RTBは、[(Tbio-P)+1]/[(Tbio-U)+1]と定義され、この式が≧1の場合、RTB値は1に相当し、<1の場合、RTB値は0に対応し;および
【0099】
-
RTKは、[TSpec-P/TCSpec]と定義され、この式が≧1の場合、
RTK値は1に相当し、<1の場合、
RTK値は0に対応する(
図38を参照されたい)。
【0100】
Tbio-Pは、in vitro T細胞産物の生物学的特性(複数可)と定義され、Tbio-Uは、未操作のPBMCまたは無関係の抗原の生物学的特性(複数可)である。TSpec-P、すなわち、in vitro T細胞産物の特異的殺滅能力は、予め定義されたエフェクター対標的比(例えば、40:1 エフェクター対標的比)で同種抗原を発現する溶解されたHLA適合標的細胞の百分率であって、無関係のペプチド、すなわち、予め定義されたエフェクター対標的比で目的の病原体内にも目的の腫瘍内にも存在しない抗原またはマーカー、を発現する標的細胞の未操作のPBMCによる非特異的殺滅の百分率(TCSpec)を減算した後の百分率と定義される。
【0101】
特定の実施形態において、上で言及した式について(RTB)+(RTK)の計算が1以上である場合には、検定しているT細胞の集団は、臨床的に効果があることになる。そのような細胞を、治療有効量で、それを必要とする個体に投与してもよい。上で言及した式について(RTB)+(RTK)の計算が1未満である場合、検定しているT細胞の集団は、臨床的に効果がないことになる。そのような細胞を、治療有効量で、それを必要とする個体に投与しなくてもよい。
【0102】
改変免疫細胞とそれらの臨床的有効性との数学的相関の具体的な例は、後段の実施例セクションで提供する。
【0103】
最後に、多数の産物が、式(RTB)+(RTK)≧1による定義に従って臨床用途に利用可能である場合には、バイナリ出力への変換前に生数値データ(RTBおよび/またはRTK)を使用して産物をランク付けすることができる。あるいは、補足式α(RTB)+β(RTK)=φを適用することもできる。この補足式中、ファイは、臨床的有効性変数と定義される(この値が高いほど「良好な」産物である)。
【0104】
【0105】
式中、RTBは、[(Tbio-P)+1]/[(Tbio-U)+1]から得られる値と定義される
【0106】
式中、RTKは、[(%TSpec-P)/TCSpec]から得られる値と定義される
【0107】
式中、αおよびβは、変数に依存する重み付け係数と定義され、前記変数には、治療応用、製造プロセス、ペプチド混合物、細胞株などが含まれるが、これらに限定されない
【0108】
式中、φは、治療用産物間の臨床的有効性のランキングを決定するために使用され得る臨床有効性値と定義される
【0109】
IV.抗原特異的T細胞を生成する方法
【0110】
特定の実施形態において、本開示は、病原体(ウイルス、細菌もしくは真菌を含む)からの少なくとも1つの抗原を標的にする、または腫瘍抗原を含む他の疾患関連抗原を標的にする、抗原特異的T細胞の発生に関する。本開示のある一定の態様において、本開示は、例えば、少なくとも1つのウイルスからの抗原を標的にする抗原特異的T細胞の発生に関する。
【0111】
一実施形態では、健常ドナーが試料、例えば、血液試料、またはロイコパックの白血球アフェレーシス産物を提供する。PBMCが採取され、病原体全体または病原体の1つ以上の部分に曝露される。細胞は、1つ以上のサイトカインに曝露されることもある。培養下で少なくとも48時間後、細胞は、多数のチューブに分割され、個々の抗原で再抗原処理される。細胞は、1つ以上のサイトカインに曝露されることもある。
【0112】
本開示の実施形態は、1つ以上の病原体またはがん抗原に対する特異性を有する抗原特異的T細胞株の生成に関する。ある一定の実施形態において、そのような特異的を有する抗原特異的T細胞の生成は、そのような株の調製には樹状細胞を用いないが、代替実施形態では、樹状細胞を標準的な方法で用いる。一部の事例では、抗原は、該抗原の一部またはすべてにわたる1つ以上のペプチドの形態で、PBMCに提示される。抗原特異的ペプチドは、pepmixと呼ばれることもあるペプチド混合物のライブラリーの状態でPBMCに供給されることもある。本開示の他の実施形態では、抗原特異的T細胞の調製において、本開示により様々なpepmixをプールすることが可能になる。
【0113】
本開示の一部の実施形態では、本明細書に含まれているような抗原選択方法に続いて、1つ、2つ、またはそれを超えるウイルスからの少なくとも1つ、2つ、またはそれを超える抗原を標的にする抗原特異的T細胞を生成する方法があり、この方法は、複数の末梢血単核細胞と、特定のウイルス抗原に対応するペプチドを各々が含む少なくとも2つのペプチドライブラリーとを接触させるステップ;および1つ以上のサイトカインの存在下で前記複数の細胞を増殖させるステップを含む。特定の実施形態において、前記方法は、抗原特異的T細胞を増殖させるステップの前に、単離されたペプチドパルス樹状細胞にライブラリーを曝露するステップが存在しない状態で行われる。ある一定の実施形態において、1つ以上のサイトカインは、IL4、IL7、IL12、IL21、IL15、IL6およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。一部の実施形態において、ペプチドは、ウイルス抗原の一部またはすべてにわたるような配列が重複しているペプチドとさらに定義される。例えば、ある一定の態様において、ペプチドは、少なくとも3、4、5または6つのアミノ酸が重複しており、一部の実施形態において、ペプチドは、長さが少なくとも6、7、または8アミノ酸以上である。
【0114】
本開示の少なくとも一部の方法において、該方法によって生成される抗原特異的T細胞は、個体、例えば、易感染性個体に投与される。一部の事例では、個体は、自家幹細胞移植を受けたことがある。特定の実施形態において、細胞は、例えば、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、腹腔内注射などのような、注射によって投与される。一部の実施形態において、個体は、リンパ腫または白血病を有する。一部の実施形態において、抗原特異的T細胞は、さらに、ポリクローナルCD4+およびCD8+抗原特異的T細胞と定義される。PBMCは、個体にとって同種異系のものであってもよく、または個体にとって自家のものであってもよい。
【0115】
個体における感染症(または感染症のリスク、または感染症に対する易罹患性)は、いかなる種類の病原体からのものであってもよいが、特定の実施形態において、感染症は、1つ以上のウイルスの結果である。病原性ウイルスは、いかなる種類のものであってもよいが、特定の実施形態では、次の科のうちの1つからのものである:アデノウイルス科、ピコルナウイルス科、ヘルペスウイルス科、ヘパドナウイルス科、フラビウイルス科、レトロウイルス科、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、パポーバウイルス科、ポリオーマウイルス、ラブドウイルス科、アレナウイルス科(Arenaviridae)、カリシウイルス科(calciviridae)、コロナウイルス科(coronaviridae)、パルボウイルス科(parvoviridae)、レオウイルス科(reoviridae)、ポックスウイルス科(poxviridae)またはトガウイルス科。一部の実施形態において、ウイルスは、免疫優性もしくは準優性である抗原を産生するか、または両方の種類を産生する。特定の事例では、ウイルスは、EBV、CMV、アデノウイルス、BKウイルス、HHV6、RSV、インフルエンザ、パラインフルエンザ、ボカウイルス、コロナウイルス、LCMV、流行性耳下腺炎、麻疹、メタニューモウイルス、パルボウイルスB、ロタウイルス、ウエストナイルウイルス、スペイン風邪、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0116】
一部の態様において、感染症は、病原性細菌の結果であり、本開示は、あらゆるタイプの病原性細菌に適用可能である。例示的な病原性細菌としては、少なくとも、例えば、炭疽菌、セレウス菌、ヘレンセラ菌、塹壕熱菌、百日咳菌、ボレリア・ブルグドルフェリ、ボレリア・ガリニ、ボレリア・アフゼリ、回帰熱ボレリア、ウシ流産菌、イヌ流産菌、ヤギ流産菌、ブタ流産菌、ジェジュニ菌、肺炎クラミジア、トラコーマクラミジア、オウム病クラミジア、ボツリヌス菌、ディフィシル菌、ウルシュ菌、破傷風菌、ジフテリア菌、エンテロコッカス・フェカリス、フェシウム菌、大腸菌、野兎病菌、インフルエンザ菌、ピロリ菌、在郷軍人病菌、レプトスピラ・インターロガンス、レプトスピラ・サンタロサイ、レプトスピラ・ウェイリイ、レプトスピラ・ノグチイ、リステリア菌、らい菌、結核菌、マイコバクテリウム・ウルセランス、肺炎マイコプラズマ、淋菌、髄膜炎菌、緑膿菌、ロッキー山紅斑熱リケッチア、チフス菌、ネズミチフス菌、ソンネ菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、腐性ブドウ球菌、ストレプトコッカス・アガラクチア、肺炎球菌、化膿性連鎖球菌、梅毒トレポネーマ、ウレアプラズマ・ウレアリチカム、コレラ菌、ペスト菌、腸炎エルシニア、または偽結核菌が挙げられる。
【0117】
一部の態様において、感染症は、病原性真菌の結果であり、本開示は、あらゆるタイプの病原性真菌に適用可能である。例示的な病原性真菌としては、少なくとも、カンジダ属(Candida)、コウジカビ属(Aspergillus)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、ヒストプラズマ属(Histoplasma)、ニューモシスチス属(Pneumocystis)、スタキボトリス属(Stachybotrys)、ブラストミセス属(Blastomyces)、コクシジオイデス属(Coccidioides)、クラドスポリウム属(Cladosporium)、エクスセロフィルム属(Exserohilum)、ペニシリウム・マルネッフェイ(Penicillium marneffei)、ムコール真菌類(mucormycetes)、スポロトリクス属(Sporothrix)、または白癬(Tinea)が挙げられる。
【0118】
本開示の一部の実施形態において、個体は、がんのリスクがあることもあり、またはがんを有することもあり、本開示は、あらゆる型のがんに適用可能である。がんは、いかなる種または起源のものであってもよいが、特定の実施形態では、次の型のものである:癌腫、肉腫、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、黒色腫、脳および脊髄腫瘍、胚細胞腫瘍、芽細胞腫、神経内分泌腫瘍、カルチノイド腫瘍および良性腫瘍。特定の事例では、がんは、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、副腎皮質がん、AIDS関連がん、カポジ肉腫、AIDS関連リンパ腫、原発性CNSリンパ腫、肛門がん、虫垂がん、星細胞腫、非定型奇形腫/ラブドイド腫瘍、基底細胞癌、胆管がん、膀胱がん、骨がん(ユーイング肉腫および骨肉腫および悪性線維性組織球腫を含む)、乳がん、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、消化管カルチノイド腫瘍、カルチノイド腫瘍、心(心臓)腫瘍、胚芽腫、胚細胞腫瘍、リンパ腫、子宮頸がん、胆管細胞癌、脊索腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性腫瘍、結腸直腸がん、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、非浸潤性乳管癌(DCIS)、胚芽腫、子宮内膜がん、上衣腫、食道のもの、感覚神経芽細胞腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵管がん、骨線維性組織球腫、悪性のもの、および骨肉腫、胆嚢がん、胃(Gastric)(胃(Stomach))がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣がん、精巣がん、妊娠性絨毛性疾患、神経膠腫、ヘアリー細胞白血病、頭頸部がん、心臓腫瘍、肝細胞がん、ランゲルハンス細胞組織球症、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼球内黒色腫、膵島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、膵がん、カポジ肉腫、喉頭がん、喉頭乳頭腫症、白血病、口唇および口腔がん、肝がん、肺がん、非ホジキンリンパ腫、骨悪性線維性組織球腫、骨肉腫、黒色腫、眼球内黒色腫、メルケル細胞癌、皮膚がん、中皮腫、悪性中皮腫、原発不明転移性扁平上皮性頸部がん、NUT遺伝子が関与する正中線上の癌、口のがん-頭頸部がん、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、慢性骨髄増殖性腫瘍、骨髄性白血病、慢性(CML)、鼻腔および副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、口腔内がん、口唇および口腔がん、中咽頭がん、口腔がん、骨肉腫、膵がん、乳頭腫症、傍神経節腫、副鼻腔および鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、腹膜がん、前立腺がん、直腸がん、結腸直腸がん、腎細胞(腎)がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、唾液腺腫瘍、肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、子宮肉腫、子宮がん、血管腫瘍、セザリー症候群、皮膚がん、小細胞肺がん、小腸がん、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、扁平上皮性頸部がん、胃(Stomach)(胃(Gastric))がん、皮膚T細胞リンパ腫、精巣がん、喉のがん、胸腺腫、胸腺癌、甲状腺がん、甲状腺腫瘍、腎盂および尿管の移行上皮がん、尿道がん、子宮がん、子宮内膜、子宮肉腫、膣がん、血管腫瘍、外陰がん、ワルデンストレームマクログロブリン血症(非ホジキンリンパ腫)ならびにウィルムス腫瘍からなる群から選択される。
【0119】
本開示の一部の実施形態において、ペプチドのライブラリーは、抗原特異的T細胞を最終的に生成するためにPBMCに供給される。ライブラリーは、特定の事例では、同じ抗原の一部またはすべてにわたるペプチドの混合物(「pepmix」)を含む。本開示において用いられるpepmixは、市販のペプチドライブラリー、例えば、ある一定の態様では、15アミノ酸長であり、11のアミノ酸が互いに重複している、ペプチドで構成されている市販のペプチドライブラリーからのものであり得る。場合により、それらを商業的に入手してもよく、または合成により生成してもよい。例としては、JPT Technoloties(バージニア州、スプリングフィールド)またはMiltenyi Biotec(カリフォルニア州、オーバーン)からのものが挙げられる。特定の実施形態において、ペプチドは、例えば、長さが少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35アミノ酸以上であり、特定の実施形態では、例えば、長さが少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33または34アミノ酸の重複がある。異なるペプチドの混合物は、いかなる比の、異なるペプチドを含んでいてもよいが、一部の実施形態では、特定のペプチド各々が混合物中に別の特定のペプチドと実質的に同数で存在する。
【0120】
特定の実施形態において、本開示に関する任意の種類の細胞を単独の好適な培地において培養してもよく、またはサイトカインが補足された好適な培地において培養してもよく、およびガス透過性培養デバイス(例えば、G-Rex10(Wilson Wolf Manufacturing Corporation、ミネソタ州、ニューブライトン)、他の培養装置、バイオリアクターもしくはシステムまたは組織培養プレート)で培養してもよい。培地および/またはサイトカインを補充してもよく、培養物を好適な期間の後、分割してもよい。特定の実施形態では、例えばIL7、IL4、IL15、IL12、IL21および/またはIL2を含む、1つ以上の特定のサイトカインが用いられる。
【0121】
T細胞を調製する実施形態は、複数の末梢血単核細胞を1つ、2つ、またはそれを超えるペプチドライブラリーと接触させるステップであって、前記ペプチドライブラリー(単数または複数)の各々が、1つ以上の特定の抗原に対応するペプチドを含むものである、ステップと;前記複数の細胞を、1つ以上のサイトカイン、任意選択的にIL4、IL15、IL21、IL12、IL6および/またはIL7の存在下で増殖させるステップとを含み得る。
【0122】
V.本開示のキット
【0123】
本明細書に記載のいずれの組成物も、キットに含まれることがある。非限定的な例では、細胞、サイトカイン、試料抽出器具、細胞培養培地、細胞培養フラスコ、ペプチド、タンパク質、ウイルスおよび/または他の試薬がキットに含まれることがある。
【0124】
キットは、本開示において用いられる適切に小分けされた組成物を含み得る。キットの組成物は、水性培地中に入っている状態または凍結乾燥形態のいずれかで包装され得る。キットの容器手段は、成分を入れること、好ましくは、適切に小分けすることができる、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、瓶、注射器または他の容器手段を一般に含むことになる。キット内に1つより多くの成分が存在する場合、キットは、追加の成分を別々に入れることができる第2の、第3のまたは他の追加の容器も一般に含むことになる。しかし、成分の様々な組み合わせがバイアルに含まれることもある。本開示のキットは、商業販売のために厳重に密封された状態で組成物を収容する手段も概して含むことになる。そのような容器としては、所望のバイアルが保持される射出またはブロー成形プラスチック容器を挙げることができる。特定の実施形態において、キットは、血液細胞および/または骨髄細胞を採取するための1つ以上の手段を含む。
【0125】
キットの成分が1つおよび/またはそれを超える溶液の状態で備えられている場合、その溶液は、水溶液であり、滅菌水溶液が特に好ましい。組成物は、注射用組成物に製剤化されることもある。その場合、容器手段自体が、注射器、ピペットおよび/または他のそのような器具であってもよく、それ(それら)から製剤を身体の患部に適用すること、動物に注射すること、ならびに/またはさらにはキットの他の成分に適用および/もしくはキットの他の成分と混合することができる。しかし、キットの成分は、乾燥粉末(複数可)として備えられていることもある。試薬および/または成分が乾燥粉末として備えられている場合、粉末を好適な溶媒の添加によって再構成することができる。前記溶媒が別の容器手段に備えられてもよいことが想定される。
【実施例】
【0126】
本明細書で提供する実施例は、本開示の特定の実施形態を実証するために含めるものである。以下の実施例において開示する技術が、本発明の実施に当たってよく機能することを本発明者が見いだした技術の代表であること、したがって、その実施の好ましい方式に相当すると考えることができることは、当業者には理解されるはずである。しかし、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、開示する特定の実施形態に多くの変更を加え、なお同様のまたは類似の結果を得ることができることは、本開示にかんがみて当業者には理解されるはずである。
【実施例1】
【0127】
[免疫原性抗原同定および臨床的有効性との相関]
特定の実施形態において、本開示は、免疫原性であり、重要な治療応用形態がある、病原体(ウイルス、細菌もしくは真菌)および/またはがんに由来する抗原を同定するためのプロセスに関する。ある一定の態様において、このプロセスは、ウイルスなどの生物全体の一部またはすべてを、抗原として知られるフラグメントに区分すること、および有意な治療用抗原標的のランクを確立することを含む。次いで、この情報を使用して、ワクチン、養子細胞療法またはこれらの任意の組み合わせなどの処置の開発のために生物における特に有用なフラグメント(複数可)またはフラグメントの組み合わせを選択することができる。重要なこととして、このプロセスは、免疫原性抗原の同定を含み、したがって、エピトープ/HLA限定レベルで機能し得る以前の方法とは異なり、単一のHLA型に限定されない。
【0128】
この一例としては、ウイルスXがA、B、C、D、EおよびFという名の6つのフラグメント、すなわち抗原、に区分される下記のシナリオ(
図1)を挙げることができよう。その場合、ウイルスXのこれらのフラグメント化された成分を使用して、健常個体から単離されたPBMCまたはT細胞のin vitro刺激を行う(この刺激は、一緒にプールされたこれらのフラグメントを用いて行うこともでき、または個別にプールされたこれらのフラグメントを用いて行うこともできる)。この実施例では、ウイルスXに対して血清反応陽性の100名(例えば、最低限5名で上限なし)の健常個体から採取したT細胞を、個別のまたはプールされたフラグメント化標的とともに10日間(例えば、6~14日の範囲)、Th1極性化サイトカインの存在下、in vitroで培養した。この初回T細胞抗原処理後、T細胞を抽出し、再び抗原処理したが、このときは個別のフラグメント(抗原)のみで抗原処理した。この2回目の抗原処理後、T細胞をそれらの応答について評定した。T細胞応答を評定するための1つの方法は、IFNγ産生を評価することであるが、T細胞応答を評価するための他の方法は公知であり、それらを使用することができる。この実施例では、IFNγ ELIspotを使用してIFNγ産生を評定した。次いで、この情報を処理して、レスポンダー対ノンレスポンダーの閾値、および応答の大きさを決定することができる。異なる病原体(ウイルスを含む)およびがんについての活性の閾値(ベンチマークと称されることもある)は、測定した各生物学的活性について同じ値であることもあることもあり、または同じ値でないこともある。例えば、異なるウイルスは、IFNγ産生を測定するために20SFC/2×10
5のような閾値を用いることができる。別の例として、異なるウイルスは、グランザイムBを測定するために10SFC/2×10
5のような閾値を用いることができる。
【0129】
この技術を使用して、レスポンダーの閾値を、2×105インプットT細胞あたり30より上のSFC値であると決定した。生物学的活性についての応答の閾値は、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、1000、1250、1500、1750、2000、2250、2500、3000、3500、4000、4500、またはそれを超えるSFC/2×105であり得る(または少なくとも前記値であってもよく、または前記値以下であってもよい)。
【0130】
【0131】
抗原Aは、ドナーの80%(n=80)によって認識され、500SFC/(2×105インプットT細胞)の平均値を有した。
【0132】
抗原Bは、ドナーの70%(n=70)によって認識され、200SFC/(2×105インプットT細胞)の平均値を有した。
【0133】
抗原Cは、ドナーの30%(n=30)によって認識され、100SFC/(2×105インプットT細胞)の平均値を有した。
【0134】
抗原Dは、ドナーの90%(n=90)によって認識され、450SFC/(2×105インプットT細胞)の平均値を有した。
【0135】
抗原Eは、ドナーの80%(n=80)によって認識され、1000SFC/(2×105インプットT細胞)の平均値を有した。
【0136】
抗原Fは、ドナーの30%(n=30)によって認識され、50SFC/(2×105インプットT細胞)の平均値を有した。
【0137】
次に免疫優性の階層を定義するために、本発明者らは、応答するドナーの出現頻度と反応性T細胞の数の両方を考慮に入れるTC(T細胞)検定を開発した。式は、次の通りである:
【0138】
【0139】
かくて、
図2に示すようにTCスコアを標的抗原の各々に適用される。この式を使用して、例えば、抗原Aに1928.5のスコアが適用され、抗原Bに458.1のスコアが適用され、抗原Cに43.6のスコアが適用され、抗原Dに3722.7のスコアが適用され、抗原Eに3857.1のスコアが適用され、抗原Fに21.8のスコアが適用される。したがって、これらの抗原を次の免疫優性階層に編成することができる:
【0140】
E>D>A>B>C>F
【0141】
したがって、下記は、ウイルスXに感染した患者に防御免疫を与えるための、所望の標的または標的の組み合わせの同定を表すものである(
図3、4および5):
【0142】
(a)最も免疫優性度の高い標的抗原(抗原E)
【0143】
(b)2つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(E+D)
【0144】
(c)3つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(E+D+A)
【0145】
(d)4つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(E+D+A+B)
【0146】
(e)5つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(E+D+A+B+C)
【0147】
(f)6つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(E+D+A+B+C+F)
【0148】
上で説明した方法を、これらに限定されるものではないが細菌、寄生虫および真菌を含む、ウイルス以外の病原体、ならびに腫瘍に応用することができることに注目することが重要である。
【0149】
したがって、上で説明したプロセスの第2の例として、細菌Yが、A、B、C、D、E、F、GおよびHという名の8つのフラグメント、すなわち抗原、に区分される、下記のシナリオを挙げることができよう。上で説明したプロセスを用いたときの、
図6に示すような細菌Yについての結果の例を、以下に示す:
【0150】
抗原Aは、ドナーの90%(n=90)によって認識され、20SFC/(2×105インプットT細胞)の平均値を有した。
【0151】
抗原Bは、ドナーの50%(n=50)によって認識され、800SFC/(2×105インプットT細胞)の平均値を有した。
【0152】
抗原Cは、ドナーの70%(n=70)によって認識され、1000SFC/(2×105インプットT細胞)の平均値を有した。
【0153】
抗原Dは、ドナーの30%(n=30)によって認識され、300SFC/(2×105インプットT細胞)の平均値を有した。
【0154】
抗原Eは、ドナーの20%(n=20)によって認識され、150SFC/(2×105インプットT細胞)の平均値を有した。
【0155】
抗原Fは、ドナーの60%(n=60)によって認識され、600SFC/(2×105インプットT細胞)の平均値を有した。
【0156】
抗原Gは、ドナーの40%(n=40)によって認識され、450SFC/(2×105インプットT細胞)の平均値を有した。
【0157】
抗原Hは、ドナーの80%(n=80)によって認識され、50SFC/(2×105インプットT細胞)の平均値を有した。
【0158】
図7に示すように、TC検定を用い、TCスコアを細菌Y標的抗原の各々に適用して、免疫優性の階層を決定した。例えば、抗原Aに167.45のスコアが適用され、抗原Bに800のスコアが適用され、抗原Cに2290.32のスコアが適用され、抗原Dに130.99のスコアが適用され、抗原Eに38.89のスコアが適用され、抗原Fに892.68のスコアが適用され、抗原Gに302.46のスコアが適用され、抗原Hに192.86のスコアが適用される。したがって、これらの抗原を次の階層に編成することができる:
【0159】
C>F>B>G>H>A>D>E
【0160】
したがって、下記は、細菌Yに感染した患者に防御免疫を与えるための、所望の標的または標的の組み合わせの同定を表すものである(
図8、9および10):
【0161】
(a)最も免疫優性度の高い標的抗原(抗原C)
【0162】
(b)2つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(C+F)
【0163】
(c)3つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(C+F+B)
【0164】
(d)4つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(C+F+B+G)
【0165】
(e)5つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(C+F+B+G+H)
【0166】
(f)6つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(C+F+B+G+H+A)
【0167】
(g)6つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(C+F+B+G+H+A)
【0168】
(h)7つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(C+F+B+G+H+A+D)
【0169】
(i)7つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(C+F+B+G+H+A+D+E)
【0170】
免疫優性抗原の階層を同定する第3の例として、腫瘍Zを、A、B、C、D、Eという名の4つのフラグメント、すなわち抗原、に区分する、下記のシナリオ(
図11)を挙げることができよう。
【0171】
この例では、腫瘍Zを有する100名の個体から採取したT細胞を、個別のまたはプールされたフラグメント化標的とともに10日間、Th1極性化サイトカインの存在下、in vitroで培養した。この初回T細胞抗原処理後、T細胞を抽出し、再び抗原処理したが、このときは抗原のみで抗原処理した。この2回目の抗原処理後、IFNγ ELIspotを使用してIFNγ産生を評定した。
【0172】
レスポンダーの閾値を、2×105インプットT細胞あたり20より上のSFC値であると決定した。しかし、生物学的活性についての応答の閾値は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、1000、1250、1500、1750、2000、2250、2500、3000、3500、4000、4500、またはそれを超えるSFC/2×105であり得る(または少なくとも前記値であってもよく、または前記値以下であってもよい)。
【0173】
これらの結果の一例を以下に示す:
【0174】
抗原Aは、ドナーの95%(n=95)によって認識され、225SFC/(2×105インプットT細胞)の平均値を有した。
【0175】
抗原Bは、ドナーの70%(n=70)によって認識され、700SFC/(2×105インプットT細胞)の平均値を有した。
【0176】
抗原Cは、ドナーの10%(n=10)によって認識され、50SFC/(2×105インプットT細胞)の平均値を有した。
【0177】
抗原Dは、ドナーの20%(n=20)によって認識され、300SFC/(2×105インプットT細胞)の平均値を有した。
【0178】
抗原Eは、ドナーの75%(n=75)によって認識され、655SFC/(2×105インプットT細胞)の平均値を有した。
【0179】
図11に示すように、TC検定を用い、TCスコアを標的抗原の各々に当てはめて、免疫優性の階層を決定した。例えば、抗原Aに3600のスコアを割り当て、抗原Bに1603.23のスコアを割り当て、抗原Cに6.04のスコアを当てはめ、抗原Dに130.99のスコアを割り当て、抗原Eに38.89のスコアを割り当てる。したがって、これらの抗原を次の階層に編成することができる(
図12):
【0180】
A>E>B>D>C
【0181】
したがって、下記は、腫瘍Zを有する患者に防御免疫を与えるための、望ましい標的または標的の組み合わせの同定を表すものである(
図13、14および15):
【0182】
(a)最も免疫優性度の高い標的抗原(抗原A)
【0183】
(b)2つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(A+E)
【0184】
(c)3つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(A+E+B)
【0185】
(d)4つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(A+E+B+D)
【0186】
(e)5つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(A+E+B+D+C)
【実施例2】
【0187】
[hMPVの免疫優性階層の同定]
ヒトメタニューモウイルス(HMPV)は、乳児、高齢および易感染性個体における急性呼吸器疾患最も重要な原因因子である(Wen SCおよびWilliams JV、Clin.Vaccine Immunol. 2015)。
【0188】
[ウイルス学]
【0189】
HMPVは、パラミクソウイルス科内のニューモウイルス亜科(Pneumovirinae subfamily)、メタニューモウイルス属のエンベロープのある1本鎖のマイナス鎖RNAウイルスである。HMPVゲノムは、9つのタンパク質をコードする8個の遺伝子を3’-N-P-M-F-M2-SH-G-L-5’の順序で含有する(
図16)。
【0190】
ビリオンの表面には、小型疎水性(SH)タンパク質と、重度にグリコシル化された推定的付着タンパク質(G)と、ウイルス融合および侵入を媒介する融合(F)糖タンパク質という、3つの膜貫通糖タンパク質が存在する。SHタンパク質の機能は不明確であるが、いくつかの研究により、自然および適応免疫応答の阻害におけるこのタンパク質の役割が示唆されている。基質タンパク質(M)は、ビリオンのウイルス膜の直下を裏打ちしており、RSV Mタンパク質に類似して、ウイルスの構築および出芽に関与する。RNAゲノムが核タンパク質(N)によって完全にカプシドに内包されて、ヌクレオカプシド(リボ核タンパク質複合体と呼ばれることもある)を形成する。Nタンパク質、リン酸化タンパク質(P)、M2-1タンパク質、およびラージRNA依存性RNAポリメラーゼタンパク質(L)がRNAゲノムと会合して、ウイルスRNAポリメラーゼ複合体を形成する。第2のM(M2)遺伝子は、RSVにおける転写処理能力を促進し、完全長mRNAの合成に不可欠であるM2-1と、転写とゲノム複製のバランスを保つM2-2という、2つのタンパク質をコードする(Wen SCおよびWilliams JV、Clin.Vaccine Immunol.、2015)。
【0191】
[伝播]
【0192】
HMPVは、唾液、液滴または大粒子エアロゾルを含み得る、汚染分泌物との直接的または密接な接触によって、伝播されると考えられる。HMPV RNAは、症状開始の5日~2週間後に分泌物中で見つけられる。しかし、感染から回復する患者からの呼吸器試料におけるHMPV RNAの検出、それ自体は、生存可能な伝染性ウイルス粒子を示さないので、伝染性の程度は不明である(Haas LEら、Viruses、2013)。
【0193】
[疫学および臨床的特徴]
【0194】
HMPVは、小児集団によく見られ、2歳未満の小児における罹患率が高い(Panda Sら、Int.J.Infect.Dis.、2014)。急性呼吸器疾患を呈しているが他の点では健常な小児からの25年間にわたって採取された鼻洗浄液検体を用いて行われた後ろ向き研究において、鼻洗浄液検体の20%が、HMPV RNAまたは生存ウイルス(培養で回収)を含有した。HMPV感染小児の平均年齢は、11.6カ月であり、その疾患の大多数が晩冬/早春に起こった(Wen SCおよびWilliams JV、Clin.Vaccine Immunol.、2015)。
【0195】
成人におけるHMPV感染症の割合は、3%~7.1%の間で様々である。これは、入院している成人におけるほうが高い(4.3%~13.2%に及ぶ)(Haas LEら、Viruses、2013)。成人におけるHMPV感染症は、通常、軽度のインフルエンザ様症状しか示さない。しかし、一部の成人症例(特に、高齢成人)では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの重症合併症が起こることがあり得る。呼吸困難は、小児と比較して成人におけるほうが起こる可能性が高い。HMPV感染症は、数名の易感染性患者、例えば、肺移植レシピエント、血液悪性疾患を有する患者、および造血幹細胞移植レシピエントにおいても報告されている(Panda Sら、Int.J.Infect.Dis.、2014)。これらの患者の臨床経過は長く、呼吸不全を発症することもある(Haas LEら、Viruses、2013)。
【0196】
[予防および処置]
【0197】
ヒトにおける使用が認可されたHMPVワクチンは現在存在しないが、不活化ウイルス、サブユニットタンパク質、ウイルス様粒子、弱毒ウイルスおよびキメラウイルスの使用を含む様々な戦略が、動物モデルにおいて研究されている。
【0198】
HMPV融合タンパク質を標的にして、いくつかのモノクローナル抗体が開発されている。MAb234およびMAb338という2つのマウスMAbは、Fタンパク質への高い親和性結合を示し、動物モデルにおいて予防的にまたは治療的に投与したとき有効であった。同様に、MPE8および54G10というヒトモノクローナル抗体は、マウスモデルにおいてHMPVに対して予防および治療有効性を示した。
【0199】
ヒトにおけるHMPV感染症の処置は、主として対症的である。ヌクレオシド類似体であるリバビリンは、in vitroでもBALB/cマウスにおいてもHMPVに対する有効性を有することが証明された。しかし、リバビリンは高価であり、溶血性貧血などの有害作用を引き起こすことができるものであり、潜在的催奇形物質である。さらに、非常に多くの逸話的報告があるが、HMPV感染症の処置におけるその有効性を研究するために行われた対照試験はない。リバビリンは、重症HMPV感染症を有する患者に、一部の症例では静脈内免疫グロブリン(IVIg)とともに投与されている。IVIgは、in vitroでHMPVに対して抗ウイルス活性を有するが、大量の液量の注入を要し、先天性心疾患を有する小児では有害事象を伴う(Wen SCおよびWilliams JV、Clin.Vaccine Immunol.、2015)。
【0200】
[防御の免疫応答および相関因子(Correlates of Protection)]
【0201】
適応免疫応答(液性および細胞性免疫)は、HMPVに対する防御免疫の最も重要な態様である。実際、動物研究は、抗体の受動伝達がHMPV複製を防ぐのに十分なものであることを示す。T細胞は、ウイルス排除にも重要である。CD4+T細胞とCD8+T細胞両方の枯渇は、BALB/cマウスにおけるHMPV抗原処理後、より高いウイルス力価をもたらした(Wen SCおよびWilliams JV、Clin.Vaccine Immunol.、2015)。加えて、HMPV呼吸器疾患があるヒト患者は、HMPVタンパク質へのCD8+T細胞応答を有することが明らかになった(Wen SCおよびWilliams JV、Clin.Vaccine Immunol.、2015)。したがって、HMPVの免疫優性階層を評定することが、新規治療戦略を開発するために必要である。
【0202】
[hMPVの免疫優性階層の確立]
【0203】
下記は、実施例1で説明したプロセスおよびTC検定を適用することによる、hMPVに対するT細胞応答の新規な特徴づけを表すものである:
【0204】
hMPVを次のフラグメントに区分した:SH、M、L、G、F、M2-2、P、M2-1およびN。レスポンダーの百分率は、SHについては3.4%、Mについては79.3%、Lについては44.8%、Gについては31%、Fについては96.5%、M2-2については0%、Pについては68.9%、M2-1については79.3%、およびNについては86.2%であり、SHについては34、Mについては154、Lについては125、Gについては62、Fについては300、M2-2については0、Pについては130、M2-1については167、およびNについては220の応答規模であった。TC検定を適用することにより、本発明者らは、SHについては1.53、Mについては569.87、Lについては101.87、Gについては28.34、Fについては6500、M2-2については0、Pについては283.08、M2-1については617.97、およびMについては1178.38のTCスコアを同定した(
図17~18)。このTCスコアを当てはめることにより、本発明者らは、異なるhMPV抗原(
図19)を以下のようにランク付けした:
【0205】
F>N>M2-1>M>P>L>G>SH>M2-2
【0206】
したがって、下記は、HMPVに感染した患者に防御免疫を与えるための、望ましい標的または標的の組み合わせの同定を表すものである(
図19):
【0207】
(a) 最も免疫優性度の高い標的抗原(抗原F)
【0208】
(b) 2つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(F+N)
【0209】
(c) 3つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(F+N+M2-1)
【0210】
(d) 4つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(F+N+M2-1+M)
【0211】
(e) 5つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(F+N+M2-1+M+P)
【0212】
(f) 6つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(F+N+M2-1+M+P+L)
【0213】
(g) 7つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(F+N+M2-1+M+P+L+G)
【0214】
(h) 8つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(F+N+M2-1+M+P+L+G+SH)
【0215】
(i) 9つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(F+N+M2-1+M+P+L+G+SH+M2-2)
【実施例3】
【0216】
[PIV3の免疫優性階層の同定]
ヒトパラインフルエンザウイルス3型(PIV3)は、気道病原体であり、乳児および幼児における細気管支炎および肺炎の主原因である(Zvirbliene A.ら、Viral Immunology、2009)。低年齢小児に加えて、PIV3は、高齢者および易感染性成人を脅かす。PIV3感染症は、造血幹細胞移植(HSCT)を受ける患者の死(35%~75%)につながる重症疾患の原因にもなる(Nichols WGら、Blood、2001;Maziarz RTら、Biol Blood Marrow Transplant、2010;Sasaki Mら、Emerging Infect.Dis.、2013)
【0217】
[ウイルス学』
【0218】
PIV3は、パラミクソウイルス科のレスピロウイルス属の代表である。PIV3は、負極性の1本鎖RNAゲノムを含有する、エンベロープのあるRNAウイルスである。PIV3ゲノムは、少なくとも6つの構造タンパク質を不変順序N-P-M-F-HN-Lでコードするように構成された、おおよそ15,500のヌクレオチドを含有する(
図20)。
【0219】
PIV3による宿主細胞の感染は、細胞膜タンパク質上のシアル酸へのビリオンエンベロープ上のヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ(HN)糖タンパク質の結合によって開始される。次いで、Fusion(F)タンパク質がウイルスのエンベロープと宿主細胞の原形質膜との融合を媒介する。これにより、核タンパク質(N)によって堅く結合されているウイルスゲノムからなり、リン酸化タンパク質(P)およびラージRNA依存性RNAポリメラーゼ(L)タンパク質と会合している、ウイルヌクレオカプシドが放出される。ヌクレオカプシド結合ポリメラーゼは、ウイルス遺伝子の別個のmRNA転写物へのコピーを指示し、RNAゲノムの複製も指示する。子孫ヌクレオカプシドが組み立てられ、ビリオンにパッケージされ、該ビリオンが原形質膜から出芽する。基質(M)タンパク質がエンベロープの内面を覆っており、スパイク様糖タンパク質FおよびHNがエンベロープの外面から突出している(Schmidt ACら、Expert Rev Respir.Med.、2012)
【0220】
[伝播]
【0221】
ウイルス伝播は、手からの伝染性分泌物の直接接種、または目、鼻もしくは稀に口への大粒子エアロゾルの直接接種によって起こる(Maziarz RTら、Biol Blood Marrow Transplant、2010)。PIV3の複製は、気道を裏打ちする表在性上皮細胞内で起こる。感染は、典型的には鼻および喉の粘膜で始まるが、感染性ウイルスが下気道(LRT)に直接伝播されることもある(Schmidt ACら、Expert Rev Respir.Med.、2012)。
【0222】
[疫学および臨床的特徴]
【0223】
米国では毎年おおよそ18,000名の乳児および小児がPIV3に起因する下気道感染症(LRTI)のために入院する。細気管支炎および肺炎は、最もよく見られる臨床像である(Henrickson KJ、Clin.Microbiology Rev.、2003)。低年齢小児に加えて、移植レシピエントのような易感染性小児および成人では、PIV3は非常に問題である。例えば、成人HSCTレシピエントの5~7%の間がPIV3に感染することになり、彼らのおおよそ24~50%は肺炎のような重症LRTIを発症し、これらの患者の22~75%が呼吸不全で死亡する(Henrickson KJ、Clin.Microbiology Rev.、2003)。後ろ向き研究により、PIV3感染症を有する小児HSCT患者の25%が肺炎を発症し、33%がその肺炎で死亡することが判明した(Lujan-Zilbermann Jら、Clin Infect.Dis.、2001)。同様に、PIV3は、肺移植レシピエントにおいて移植後5年までに重症LRTIおよび死亡(8%)を引き起こすことが証明されている(Vilchez RA.ら、Clin Infect.Dis.、2001)。
【0224】
[予防および処置]
【0225】
PIV3ワクチンへの現行のアプローチは、生弱毒株の鼻腔内投与、HNおよびFタンパク質を使用するサブユニット戦略、組換えウシ/ヒトウイルス、ならびに逆遺伝学を用いて人工的に作り出された株を含む。実際、低温継代によって生じさせたPIV3の減弱株であるrhPIV3cp45(またはMEDI-560)と、cDNA由来のキメラウシ/ヒトPIV3であるB/hPIV3-RSV-F(またはMEDI-534)という、2つの被験ワクチンが、現在、第I相臨床試験において試験中である。安全性および免疫原性データの分析は保留中である(Schmidt ACら、Expert Rev Respir.Med.、2012)。
【0226】
PIV3をはじめとするパラミクソウイルスに対してin vitroで抗ウイルス活性を有することが判明した薬剤としては、ノイラミニダーゼ阻害剤(例えば、ザナミビル)、タンパク質合成阻害剤(ピューロマイシン)、核酸合成阻害剤、ベンゾチアゾール誘導体、1,3,4-チアジゾール-2-イルシアナミド(1,3,4-thiadizol-2-ylcyanamide)、炭素環式3-デエエザアデノシン(3-deezaadenosine)、アスコルビン酸、エノール酸カルシウム、およびセイヨウウマノミツバ(Sanicula europaea)の抽出物が挙げられる。これらの化合物または薬物はいずれも、まだ臨床応用されていない(Henrickson KJ、Clin.Microbiology Rev.、2003)。
【0227】
リバビリンは、ウイルスRNA合成およびウイルスmRNAキャッピングを止めるために使用されるグアノシン類似体である。PIV3排出減少および臨床的改善の事例報告が、エアロゾル化リバビリンおよび経口リバビリンで処置された易感染性患者において報告されている。しかし、Fred Hutchinson Cancer Centerにおける最近の再調査により、すでに罹患しているPIV3肺炎は、エアロゾル化リバビリンにほとんど反応しないことが実証された(Nicholas WGら、Biol.Blood Marrow Transpl.、2001)。現在、PIV3に対する臨床的有効性が証明されている抗ウイルス薬はない(Henrickson KJ、Clin.Microbiology Rev.、2003)。
【0228】
[防御の免疫応答および相関因子(Correlates of Protection)]
【0229】
PIV3感染症は、感染した宿主において強力な液性および細胞性免疫を誘導することができる。血清中和抗体および粘膜の中和抗体は、両方とも、疾患に対する持続的防御をもたらすことができる(Schmidt ACら、Expert Rev Respir.Med.、2012)。同様に、細胞傷害性Tリンパ球応答は、PIV3に感染中のLRTからのウイルスの排除に重要であるようである(Henrickson KJ、Clin.Microbiology Rev.、2003)。したがって、PIV3の免疫優性階層を評定することが、新規治療戦略を開発するために必要である。
【0230】
[PIV3の免疫優性階層の確立]
【0231】
下記は、実施例1で説明したプロセスおよびTC検定を適用することによる、PIV3に対するT細胞応答の新規特性解析を表すものである:
【0232】
PIV3を次のフラグメントに区分した:HN、プロテインC、PP、Large、M、NおよびFusion。レスポンダーの百分率は、HNについては88.2%、プロテインCについては47%、PPについては47%、Lageについては47%、Mについては94.1%、Nについては64.7%、およびFusionについては47%であり、HNについては131、プロテインCについては214.6、PPについては203.7、Largeについては115.8、Mについては261.2、Nについては160、およびFusionについては175.7の応答規模であった。TC検定を適用することにより、本発明者らは、HNについては912.91、プロテインCについては190.76、PPについては181.07、Largeについては102.93、Mについては3600、Nについては289.59、および融合については156.18のTCスコアを同定した(
図21および22)。このTCスコアを当てはめることにより、本発明者らは、異なるPIV3抗原を以下のようにランク付けした(
図23):
【0233】
M>HN>Large>N>プロテインC>PP>Fusion>Large
【0234】
したがって、下記は、PIV3に感染した患者に防御免疫を与えるための、所望の標的または標的の組み合わせの同定を表すものである(
図13):
【0235】
(a) 最も免疫優性度の高い標的抗原(抗原M)
【0236】
(b) 2つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(M+HN)
【0237】
(c) 3つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(M+HN+N)
【0238】
(d) 4つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(M+HN+N+プロテインC)
【0239】
(e) 5つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(M+HN+N+プロテインC+PP)
【0240】
(f) 6つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(M+HN+N+プロテインC+PP+Fusion)
【0241】
(g) 7つの最も免疫優性度の高い標的の組み合わせ(M+HN+Large+N+プロテインC+PP+Fusion+Large)
【実施例4】
【0242】
[レスポンダーの百分率の同定]
図18および22に示すように、ならびに一例として、IFNγ産生の閾値を使用してT細胞活性の臨界レベルを同定することができ、それを使用してレスポンダー対ノンレスポンダーを決定することができる。しかし、この閾値は、IFNγ産生のみに限定されるものではなく、この閾値の代わりに、例えばIL2、グランザイムB、CD25、GM-CSFおよびTNFαを含むがこれらに限定されない関連標的に関する認識に基づいてT細胞により産生される(細胞により分泌され、細胞培養物の上清から測定される場合のような)または発現される(細胞膜上に固定された不溶性マーカーの場合のような)任意の他の生物学的マーカーを用いることができることは、当業者には理解されるであろう。すべてのそのようなマーカーを使用して、非特異的応答の閾値を先ず同定することによりレスポンダー対ノンレスポンダーを決定することができる。非特異的応答のレベルは、無関係の抗原(例えば、初回T細胞刺激で使用しなかった抗原)に対して検出された生物学的活性の規模によって同定することができる。例えば、5つの抗原(A、B、C、D、E)をコードするウイルスへの免疫応答を分析する場合、無関係の抗原は、異なるウイルスに由来するまたは未操作PBMCに対する抗原Fとなる。これを、特定の実施形態において、IFNγについて2×10
5あたり20SFC、およびグランザイムBについて2×10
5あたり10SFCと決定した。
図24は、病原体に対する免疫応答の特性解析のためにグランザイムBを使用してレスポンダーのノンレスポンダーに対する百分率を決定する例を示すものである。
【実施例5】
【0243】
[TCスコアは臨床的に関連性のある標的を同定する]
TCスコアによって確立された階層の臨床的関連性を確認するために、本発明者らは、活動性感染症を有する患者におけるPIV3に対する免疫T細胞応答を分析した。
図25に示すように、抗原MおよびNを標的とするPIV3特異的T細胞の出現頻度は、155日目と162日目の間で特定の高まりを示し、これは、167日目までに治まる臨床症状のその後の改善と相関する。ウイルス感染症を抑えるようなPIV3 T細胞の臨床的関連性のもう1つの例であって、PIV3特異的T細胞の出現頻度の増加に、骨髄移植(BMT)後の活動性感染症を有する1人の代表患者に存在する感染症の症状およびPCRによるウイルス検出との逆相関があった例を
図26に示す。
【0244】
図27は、異なるhMPV抗原に対する免疫T細胞応答の臨床的関連性を示すものである。この図は、活動性HMPV感染症を有する1人の代表患者において検出されたタンパク質F、N、M、M2-1およびPに対して反応性のT細胞の出現頻度を示すものであり、前記患者の症状は、末梢血中のこれらのT細胞の検出後に消散した。
【0245】
[T細胞を使用する最上位ランクの抗原の標的化]
【0246】
図28、29および30は、所与の病原体またはがんの最上位の標的を抗原源として同定する、このランキングの治療応用を示すものである。これに伴う培養条件が、ひいては、所与の標的に特異的なT細胞のその後の富化をもたらすことになる。
【0247】
[治療目的使用のためのPIV3特異的T細胞の生成]
【0248】
健常なPIV3血清反応陽性個体から単離したPBMCを、Th1極性化サイトカインの存在下で10日間の間、タンパク質MおよびHN全体との重複があるペプチドとともに培養した。
図31は、T細胞産物の表現型特性を示すものであり、
図32は、抗原MおよびHNについての細胞内サイトカイン染色によって検出されたCD4+およびCD8+の抗原特異性を示すものである。
【0249】
[治療目的使用のためのhMPV特異的T細胞の生成]
【0250】
健常なhMPV血清反応陽性個体から単離したPBMCを、
図33に示すように、Th1極性化サイトカインの存在下で10日の間、G-Rex培養システム(または任意の他の細胞培養プラットホーム、バイオリアクターもしくは組織培養プレート)を使用してタンパク質全体との重複があるペプチドとともに培養した。このプロセスは、
図34に示すようにT細胞の有意な増殖をもたらした。検査に基づき、これらの増殖細胞は、ポリクローナルであり(
図35)、関連抗原についての細胞内サイトカイン染色による検出に従って抗原特異的であることが判明した(
図37)。この増殖T細胞産物の抗ウイルス特性を評価するために、HLA適合標的細胞にHMPVペプチドをパルスし、それらをPKH染料で標識し、HMPV特異的T細胞とともに1:1比で培養した。
図36に示すように、ウイルス特異的T細胞との培養は、培養0、2および4日目の後、HMPV標的細胞の35.5%から18.7%へ、そこから6.4%への漸減をもたらした。したがって、時間が経つにつれて、感染細胞が殺滅されていく。
【実施例6】
【0251】
[産物についての臨床的有効性の同定]
[産物の組成]
【0252】
本発明者らは、ある一定の実施形態において、臨床的有効性と相関する最終産物の生物学的特徴の例を同定した。
【0253】
特定の実施形態において、産物が患者において臨床的有効性を有するかどうかを明らかにする方法についての以下の説明は、病原体の抗原の免疫原性の階層の決定に関する本明細書における他の実施形態とは無関係である。すなわち、ある一定の抗原を有するT細胞を、それらのそれぞれの抗原を免疫原性階層に基づいて選択したか否か、またはそれらのそれぞれの抗原が他の抗原選択方法に基づいたか否か、またはそれらのそれぞれの抗原がランダムであるか否かを問わず、下記の特徴づけ方法に付すことができる。
【0254】
[ウイルス特異的T細胞の特徴づけ]
【0255】
同一性:一部の事例では、細胞の同一性をHLAタイピングによって決定することがある。最終産物は、少なくとも一部の事例では、ドナー由来の細胞を含む。したがって、最終産物のHLA型は、ある一定の実施形態ではドナー血のものと同一であるはずである。
【0256】
表現型分析:最適なin vivo T細胞持続性および活性にはヘルパー(CD4+)T細胞と細胞傷害性(CD8+)T細胞の両方が必要である。したがって、表現型分析を使用して、産物がポリクローナルT細胞からなるかどうかを判定することができる。
【0257】
特異性:産物の抗ウイルス特異性は、増殖させた細胞を個々の合成ペプチドライブラリーの各々に曝露すること、および前記合成ペプチドライブラリーの各々を認識するそれらの細胞の能力を評定することにより、in vitroで評定することができる。例えば、産物特異性を評定するための1つの方法は、IFNγ ELIspot検定を使用して、合成ペプチド曝露後にサイトカインインターフェロンガンマ(IFNγ)を産生するこれらの細胞の能力を検定することを含む。この検定では、刺激のために使用したウイルス抗原の各々に細胞を再曝露する。標的ウイルスからのすべての抗原に指向されたIFNγ産生スポット形成細胞(SFC)の合計が、(活性の閾値の一例として)≧20SFC毎2×105インプット細胞であった場合、その産物をウイルスXに対して特異的と見なす。
【0258】
細胞傷害性:産物の細胞傷害特性を標準的な殺滅アッセイで測定することができ、該アッセイでは、細胞をエフェクターとして使用し、標的は、例えば、関連pepmixをパルスしたクロム標識PHAブラストである。エフェクターの標的に対する比は、5:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1;60:1、65:1、70:1、75:1、80:1、85:1、90:1、95:1などであり得る(または少なくとも前記比であってもよく、または前記比以下であってもよい)。単独での、または無関係のpepmixを負荷した、自家または同種異系PHAブラストを、特異性およびアロ反応性対照として使用することができる。例えば、pProductは、少なくとも特定の事例では、関連pepmixをパルスしたPHAブラストの特異的溶解百分率が、40:1のエフェクター対標的比で、≧10%である場合、ウイルスXに対して細胞傷害特異性を示すと見なす。所与のエフェクター対標的比での標的細胞の殺滅は、ベースラインレベル(未操作のPBMCをエフェクターとして使用して、または無関係の抗原をパルスした標的細胞に対するT細胞産物の活性を評定して、確立したレベル)より上である場合、抗原特異的と見なす。
【0259】
下記は、当業者が産物組成を同定することを可能にする数学的表現を表すものである:
【0260】
[産物の定義]
【0261】
産物は、下記を特徴とする、in vitro培養から単離したT細胞と定義する:
【0262】
【0263】
- 式中、RTBは、[(Tbio-P)+1]/[(Tbio-U)+1]と定義し、この式が≧1の場合、1のRTB値に相当し、<1の場合、0のRTB値に対応し;および
【0264】
-
RTKは、[(%TSpec-P)/TCSpec]と定義し、この式が≧1の場合、1の
RTK値に相当し、<1の場合、0の
RTK値に対応する(
図38を参照されたい)。
【0265】
Tbio-Pは、in vitro T細胞産物の生物学的活性と定義し、Tbio-Uは、ノイズ閾値の生物学的活性と定義し、前記生物学的活性は、前に説明したように、目的の抗原の存在下の場合は未操作PBMCの生物学的活性であることができ、または目的のものではない無関係の抗原の存在下の場合はin vitro T細胞産物の生物学的活性であることができる。そのような生物学的活性としては、これらに限定されるものではないが、例えば、IFNγ、IL2、GM-CSFおよびTNFα産生、ならびに例えば、CD25、CD45、CD27、CD28、CD69およびCD107などのマーカーの発現増加を挙げることができよう。
【0266】
TSpec-P、すなわち、in vitro T細胞産物の特異的殺滅能力は、予め定義されたエフェクター対標的比(例えば、40:1 エフェクター対標的比)で同種抗原を発現する溶解されたHLA適合標的細胞の百分率であって、無関係のペプチド、すなわち、予め定義されたエフェクター対標的比で目的の病原体内にも目的の腫瘍内にも存在しない抗原、を発現する標的細胞の未操作のPBMCによる非特異的殺滅の百分率を減算した後の百分率と定義する。
【0267】
複数の産物が、臨床的投与に利用可能である場合には、補足式[α(RTB)+β(RTK)=φ]を適用して、優先度順に産物をランク付けすることができる。
【0268】
【0269】
式中、RTBは、[(Tbio-P)+1]/[(Tbio-U)+1]から得られる値と定義する
【0270】
式中、RTKは、[(%TSpec-P)/TCSpec]から得られる値と定義する
【0271】
式中、αおよびβは、変数に依存する重み付け係数と定義し、前記変数には、治療応用、製造プロセス、ペプチド混合物、細胞株などが含まれるが、これらに限定されない
【0272】
式中、φは、治療用産物間の臨床的有効性のランキングを決定するために使用され得る臨床有効性値と定義する
【0273】
実施例1は、産物に存在する生物学的特性の例である。
【0274】
Tbio-P=200SFC(2×105あたり)IFNγ
【0275】
Tbio-U=50SFC(2×105あたり)IFNγ
【0276】
TSpec-P=40%
【0277】
TCSpec=10%
【0278】
α=1
【0279】
β=5
【0280】
RTB=[(Tbio-P)+1]/[(Tbio-U)+1]
【0281】
RTB=[(200)+1]/[(50)+1]=3.94
【0282】
したがって、
【0283】
RTB=1
【0284】
RTK=[(TSpec-P)/(TCSpec)]
【0285】
RTK=[(40%)/(10%)]=4
【0286】
したがって、
【0287】
RTK=1
【0288】
したがって、この実施例は、(RTB)+(RTK)≧1によって定義されるような産物に相当する。加えて、この産物の臨床的有効性は、α(RTB)+β(RTK)=φによる定義に従って23.94である。
【0289】
実施例2は、産物に存在する生物学的特性の例である。
【0290】
Tbio-P=100SFCグランザイムB
【0291】
Tbio-U=10SFC(2×105あたり)グランザイムB
【0292】
TSpec-P=5%
【0293】
TCSpec=10%
【0294】
α=1
【0295】
β=5
【0296】
RTB=[(Tbio-P)+1]/[(Tbio-U)+1]
【0297】
RTB=[(100)+1]/[(10)+1]=9.18
【0298】
したがって、
【0299】
RTB=1
【0300】
RTK=[(TSpec-P)/(TCSpec)]
【0301】
RTK=[(5%)/(10%)]=0.5
【0302】
したがって、
【0303】
RTK=0
【0304】
したがって、実施例2は、(RTB)+(RTK)≧1によって定義されるような産物に相当する。加えて、この産物の臨床的有効性は、α(RTB)+β(RTK)=φによる定義に従って11.68である。
【0305】
実施例1および2は両方とも(RTB)+(RTK)≧1によって定義されるような産物に相当するため、臨床的有効性値(φ)は、患者が実施例1からの産物と実施例2からの産物両方を受ける資格がある場合、産物選択の決定に役立つであろう。φ値が大きいほど、高い特異性および殺滅能力を有する産物を表し、したがって、産物をランク付けすることができる。この場合、実施例1は、そのφ臨床的有効性値に基づいて、患者への投与のための「優れた」産物に相当する。
【0306】
実施例3は、産物に存在しない生物学的特性の例である。
【0307】
Tbio-P=50SFC(2×105あたり)IL2
【0308】
Tbio-U=70SFC(2×105あたり)IL2
【0309】
TSpec-P=9%
【0310】
TCSpec=10%
【0311】
α=1
【0312】
β=5
【0313】
RTB=[(Tbio-P)+1]/[(Tbio-U)+1]
【0314】
RTB=[(50)+1]/[(70)+1]=0.7
【0315】
したがって、
【0316】
RTB=0
【0317】
RTK=[(TSpec-P)/(10%)]
【0318】
RTK=[(9%)/(10%)]=0.9
【0319】
したがって、
【0320】
RTK=0
【0321】
したがって、実施例3は、(RTB)+(RTK)≧1によって定義されるような産物に相当しない。
【実施例7】
【0322】
[産物の製造]
(RTB)+(RTK)≧1を特徴とするin vitro T細胞と定義される産物は、様々な製造プロセスによって獲得することができる。後段の説明は、ある一定のT細胞が治療的に有用であるか否かの判定についての実施形態に関する。下記は、一部の製造実施例を表すものである:
【0323】
[1.ウイルス特異的T細胞の製造および凍結保存]
【0324】
健常ドナーからの末梢血または白血球アフェレーシス産物からの単核細胞を、ウイルスXによって発現された抗原のうちの1つ以上についての配列のすべてまたは一部を包含する、1つ以上の重複合成ペプチドライブラリーと接触させる。合成ペプチド曝露後、in vitro製造プロセスで単核細胞の中の抗原特異的T細胞を活性化し、増殖させる。この実施例では、単核細胞を、Th1サイトカイン、例えば、これらに限定されるものではないがIL7およびIL4と、ウイルスXの1つ以上の抗原の配列全体にわたる臨床グレードのペプチド混合物(pepmix)とを補足したT細胞培地とともに、ガス透過性培養デバイス(例えば、G-Rex培養デバイス)または組織培養プレートに添加することにより、単核細胞をin vitroで9~11日間、活性化し、増殖させることになる。臨床グレードのペプチド混合物(pepmix)に加えて、抗原源が、例えば、ウイルスの組換えタンパク質、DNA、抗原(複数可)をコードするRNAなども含むことができようことは、当業者には理解されるであろう。特定の事例では、産物は、(RTB)+(RTK)≧1によって設定される基準を満たし、したがって、例えば、その産物をさらなる臨床使用のために凍結保存することができる。
【0325】
あるいは、追加の抗原刺激を(培養10~13日目に)行うことができ、該抗原刺激では、(例として)自家単核細胞(または)OKT3ブラスト(または)PHAブラストのいずれかであることができる抗原提示細胞に、ウイルスXの1つ以上の抗原に対して特異的なpepmixを再びパルスし、次いで照射(80Gy)し、その後、それらを刺激因子として使用する。2回目の刺激の時点で、培養物にTh1サイトカイン(例えば、これらに限定されるものではないが、IL4+IL7、IL15、IL2、IL21、IL12またはこれらの組み合わせ)を補足することになり、3日後に培養物にIL2、またはIL15、IL7、IL21、IL4もしくはこれらの組み合わせを補足する。培養下で19~23日後、ウイルスXに対して特異的な細胞をG-Rex培養デバイスまたは組織培養プレートから回収し、適切なサイズの滅菌容器にプールし、計数する。細胞を遠心分離により洗浄し、次いで、患者への注入に好適なアリコートで、氷冷凍結培地に1×107細胞/mLの濃度まで再懸濁させる。この時点で、または凍結7日以内に、適切な数の細胞、洗浄前および洗浄後の培養上清、ならびに最終細胞懸濁液のアリコートをエンドトキシン試験および微生物学的スクリーニングに付す。同時に、適切な数の細胞を、例えば、HLAタイピング、表現型、特異性および/または細胞溶解機能を含む、産物の特徴づけのためにのために採取してもよい。
【0326】
特定の実施形態において、初回抗原刺激後、2回目の抗原刺激までの時間(例として
図39~41を参照されたい)は、いずれの好適な時間であってもよく、例えば、用いることになる抗原などの様々な理由によって変動し得る。特定の実施形態において、初回抗原刺激と2回目の抗原刺激の間の日数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、25、30、35、40、45、50日、もしくはそれを超える日数である(または少なくとも前記日数もしくは前記日数以下である)。他の実施形態において、2回目の抗原刺激後の時間は、いずれの好適な時間であってもよく、例えば、用いることになる抗原などの様々な理由によって変動し得る。特定の実施形態において、2回目の抗原刺激とその後のステップ(例えば、培養の終点、細胞検定、細胞の治療目的使用など)との間の日数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、25、30、35、40、45、50日、もしくはそれを超える日数である(または少なくとも前記日数もしくは前記日数以下である)。
【0327】
[2.ウイルス特異的T細胞の特徴づけ]
【0328】
同一性:細胞の同一性をHLAタイピングによって決定される。最終産物は、ドナー由来の細胞からなる。したがって、最終産物のHLA型は、ドナー血のものと同一であるはずである。
【0329】
表現型分析:最適なin vivo T細胞持続性および活性にはヘルパー(CD4+)T細胞と細胞傷害性(CD8+)T細胞の両方が必要である。したがって、表現型分析を使用して、産物がポリクローナルT細胞からなるかどうかを判定する。
【0330】
特異性:産物の抗ウイルス特異性は、増殖させた細胞を個々の合成ペプチドライブラリーの各々に曝露すること、および前記合成ペプチドライブラリーの各々を認識するそれらの細胞の能力を評定することにより、in vitroで評定することができる。例えば、産物特異性を評定するための1つの方法は、IFNγ ELIspot検定を使用して、合成ペプチド曝露後にサイトカインインターフェロンガンマ(IFNγ)を産生するこれらの細胞の能力を検定することを含む。この検定では、刺激のために使用したウイルス抗原の各々に細胞を再曝露する。標的ウイルスからすべての抗原に指向されたIFNγ産生スポット形成細胞(SFC)の合計が、2×105インプット細胞あたり≧20SFCであった場合、産物を、ウイルスXに対して特異的と見なす。
【0331】
細胞傷害性:産物の細胞傷害特性を標準的な殺滅アッセイで測定することができ、該アッセイでは、細胞をエフェクターとして使用し、標的は、関連pepmixをパルスしたPHAブラストである。単独での、または無関係のpepmixを負荷した、自家または同種異系PHAブラストを、特異性およびアロ反応性対照として使用することができる。関連pepmixをパルスしたPHAブラストの特異的溶解百分率が、40:1のエフェクター対標的比で、≧10%である場合、産物を、ウイルスXに対して細胞傷害性を示すと見なす。
【0332】
[3.データ]
【0333】
上で説明したようなウイルスの免疫優性抗原に対して特異的なT細胞の製造および特徴づけを使用して、単なる例として、アデノウイルス(AdV)、BKウイルス(BKV)およびサイトメガロウイルス(CMV)に対して特異的なT細胞を生成した。
【0334】
[3.1 アデノウイルス]
【0335】
アデノウイルスは、依然として、易感染性個体における罹患率および死亡率の主原因であり、そのような個体においてアデノウイルスは、肺炎、出血性膀胱炎、腎炎、大腸炎、肝炎および脳炎を生じさせることがある。疾患処置に最も高頻度に使用される薬物はシドホビルであるが、明らかなウイルス性疾患を有する患者における臨床的有益性は限定的であり、付随する腎毒性は大きな懸念事項である。その上、前向き、無作為化、対照試験が存在しないので、薬物の有効性は不確かなままである(Leen AMら、Biol.Blood Marrow Transpl.、2006)。ウイルス排除は循環AdV特異的T細胞の検出と相関することが証明されていることから、養子T細胞移植は、治療の代替選択肢と見なされてきた(Feuchtinger T.ら、Br.J.Hematol.、2005)
【0336】
アデノウイルス特異的T細胞を生成するために、健常ドナーからの末梢血製剤からの単核細胞を、サイトカインIL7およびIL4と、アデノウイルスの最も免疫優性度の高い抗原、すなわちヘキソンおよびペントン、の配列全体にわたる臨床グレードのペプチド混合物(pepmix)とを補足したT細胞培地とともに、GRex培養デバイスに添加することによって、前記単核細胞をin vitroで活性化し、増殖させた。2回目の(培養10~13日目における)刺激のために、自家PBMCにヘキソンおよびペントンに対して特異的なpepmixを再びパルスし、次いで照射(80Gy)し、その後、それらをAPCとして使用し、その後、IL4およびIL7を補足し、そして後にIL2を補足した培地で、増殖させた。培養物の特異性および細胞溶解能力を、
図39に示すように、0、10および20日目に評定した。0日目の未操作PBMCと比較して、10日目の培養物は、>20 IFNγ生産SFCによって証明されるように、ヘキソン指向およびペントン指向T細胞の出現頻度の実質的増加(それぞれ、28.7および32.3倍増加)を示した。20日目の培養物は、10日目の培養物に比べてT細胞特異性のさらなる増加(ヘキソンまたはペントン反応性細胞において、それぞれ、2.7および1.9倍増加)を示した。重要なこととして、20日目の培養物は、アデノウイルス抗原負荷標的細胞の>10%細胞傷害性によって証明されるように、抗原負荷標的細胞を殺滅する能力を増殖細胞に付与する2回目の刺激を受けた細胞を含有した。
【0337】
[3.2 BKウイルス]
【0338】
BKVは、一般集団の>90%において潜在性、無症候性の感染症を確立する偏在性ポリオーマウイルスである。しかし、固形臓器およびHSCT同種移植レシピエント両方において、ウイルスの再活性化は度々起こり、循環BKV特異的T細胞の非存在と相関する。それ故、BKVの尿排出がHSCTレシピエントの60~80%において起こり(Tomblyn Mら、Bone Marrow Transpl.、2009)、5~15%においてBKV関連出血性膀胱炎(PVHC)に進展し、その結果、長期入院、重度の罹患、および死亡率上昇となる。現在、BKウイルス感染症の処置のための承認された抗ウイルス剤はまだ存在しない。
【0339】
BKウイルス特異的T細胞を生成するために、健常ドナーからの末梢血からの単核細胞を、サイトカインIL7およびIL4と、BKウイルスの最も免疫優性度の高い抗原、すなわちLTおよびVP1、の配列全体にわたる臨床グレードのペプチド混合物(pepmix)とを補足したT細胞培地とともに、GRex培養デバイスに添加することによって、前記単核細胞をin vitroで活性化し、増殖させた。2回目の(培養10~13日目における)刺激のために、自家PBMCにLTおよびVP1に対して特異的なpepmixを再びパルスし、次いで照射(80Gy)し、その後、それらをAPCとして使用し、その後、IL4およびIL7を補足した、そして後にIL2を補足した培地で、増殖させた。培養物の特異性および細胞溶解能力を、上で説明したように、また
図40に示すように、0、10および20日目に評定した。0日目の無感作培養物と比較して、10日目の培養物は、>20 IFNγ生産SFCによって証明されるように、LTおよびVP1特異的T細胞の出現頻度の実質的増加(それぞれ、316.8および38.6倍増加)を示した。20日目の培養物は、10日目の培養物に比べてT細胞特異性のさらなる増加(LTおよびVP1反応性細胞において、それぞれ、2.7および1.9倍増加)を示した。重要なこととして、これらの培養物は、BKウイルス抗原負荷標的細胞の>20%細胞傷害性によって証明されるように、抗原負荷標的細胞を殺滅する能力を増殖細胞に付与する2回目の刺激を受けた細胞を含有した。
【0340】
[3.3 サイトメガロウイルス]
【0341】
サイトメガロウイルス(CMV)は、免疫正常個体において通常は無症候性感染を引き起こす潜在性ベータヘルペスウイルスである。CMVは、健常な成人のおおよそ70%において存続し、上皮細胞、線維芽細胞および単球において複製する。幹細胞レシピエントにおけるCMVの再活性化は、有意な罹患率および死亡率をもたらすことができ、間質性肺炎、胃腸炎、発熱、肝炎、脳炎および網膜炎をはじめとする臨床症状を伴う(Boeckh Mら、Biol.Blood Marrow Transpl.、2003)。細胞性免疫は、CMV感染症を抑えるのに最も重要な因子と考えられ、CMV特異的CD4+およびCD8+リンパ球は、一次感染症とその後の再活性化の両方に対する免疫防御に重要な役割を果す。
【0342】
CMVウイルス特異的T細胞を生成するために、健常ドナーからの末梢血からの単核細胞を、サイトカインIL7およびIL4と、CMVウイルスの最も免疫優性度の高い抗原、すなわちIE1およびpp65、の配列全体にわたる臨床グレードのペプチド混合物(pepmix)とを補足したT細胞培地とともに、GRex培養デバイスに添加することによって、前記単核細胞をin vitroで活性化し、増殖させた。2回目の(培養10~13日目における)刺激のために、自家PBMCにIE1およびpp65に対して特異的なpepmixを再びパルスし、次いで照射(80Gy)し、その後、それらをAPCとして使用し、その後、IL4およびIL7を補足し、そして後にIL2を補足した培地で、増殖させた。培養物の特異性および細胞溶解能力を、上で説明したように、また
図41に示すように、0、10および20日目に評定した。0日目の無感作培養物と比較して、10日目の培養物は、>20 IFNγ生産SFCによって証明されるように、IE1およびpp65の出現頻度の実質的増加(それぞれ、6.66および5.7倍増加)を示した。20日目の培養物は、10日目の培養物に比べてT細胞特異性のさらなる増加(IE1およびpp65反応性細胞において、それぞれ、1.1および1.4倍増加)を示した。重要なこととして、これらの培養物は、CMV抗原負荷標的細胞の>20%細胞傷害性によって証明されるように、抗原負荷標的細胞を殺滅する能力を増殖細胞に付与する2回目の刺激を受けた細胞を含有した。
【0343】
このセクションでは、ウイルスの1つ以上の免疫優性抗原に対して特異的なT細胞の製造および特徴づけを説明している。3つの実施例-AdV、BKウルスおよびCMV-を提供することにより、本発明者らは、このプロセスが堅牢であり、再現性のあるものであることを明らかにした。加えて、このプロセスにより、製造プロセスに含まれる2回目の刺激に主として起因する、免疫優性抗原に対する>20 IFNγ SFCおよび>10%の細胞傷害性を有する、ウイルス特異的T細胞の生成が可能になる。したがって、このプロセスを使用して、前に説明したようなhMPVおよびPIV3を含む任意のウイルスに対して特異的なT細胞を生成し、特徴づけることができる。
【0344】
[4.範囲]
【0345】
上で説明したプロセスによって製造し、特徴づけられた抗原特異的T細胞は、ドナー特異的設定と第3者設定の両方で用いることができる。その2つを後段で詳細に説明する:
【0346】
[4.1 ドナー特異的設定]
【0347】
この設定では、セクション1に概要を示した通りのステップに従って末梢血または白血球アフェレーシス産物から抗原特異的T細胞を生成する。その後、これらの細胞を患者に投与することができる。この概要を
図42に示す。
【0348】
[4.2 第三者設定]
【0349】
この設定では、セクション1に概要を示したのと同様のステップに従って末梢血または白血球アフェレーシス産物から抗原特異的T細胞を生成し、凍結保存する。その後、
図43に概要を示すように、HLAがある程度適合している多数のレシピエントに投与することができる。
【0350】
[産物の使用]
【0351】
以下の説明は、産物が治療的に有用であるか否かを判定する方法に関する。特定の実施形態において、産物の使用は、
【0352】
[(RTB)+(RTK)]×Th
によって定義され得るものであり、この式が、≧1である場合、産物を患者に投与し、この式が、<1である場合、投与しない。
【0353】
この方程式中、
【0354】
Th=HLAP対HLAPt、(共有アレル数)、この式が≧1である場合、1のTh値に相当し、<1である場合、0のTh値に対応する
【0355】
HLAP=産物のHLA型
【0356】
HLAPt=患者のHLA型
【0357】
実施例1は、産物を特定の患者に投与することになるシナリオを例証するものである。
【0358】
Tbio-P=212SFC(2×105あたり)IL2
【0359】
Tbio-U=44SFC(2×105あたり)IL2
【0360】
TSpec-P=5%
【0361】
TCSpec=10%
【0362】
RTB=[(Tbio-P)+1]/[(Tbio-U)+1]
【0363】
RTB=[(212)+1]/[(44)+1]=4.7
【0364】
したがって、
【0365】
RTB=1
【0366】
RTK=[(TSpec-P)/(TCSpec)]
【0367】
RTK=[(5%)/(10%)]=0.5
【0368】
したがって、
【0369】
RTK=0
【0370】
HLAP=A(2,31)、B(35,51)、DR(3,4)、DQ(2,4)
【0371】
HLAPt=A(2,11)、B(27,35)、DR(4,8)、DQ(3,4)
【0372】
HLAP対HLAPt=4
【0373】
したがって、Th=1
【0374】
[(RTB)+(RTK)]×Th
【0375】
[(1)+(0)]×1=1
【0376】
したがって、この産物をこの特定の患者に投与することになる。
【0377】
実施例2は、産物を特定の患者に投与することになるシナリオを例証するものである。
【0378】
Tbio-P=500SFC(2×105あたり)IL2
【0379】
Tbio-U=10SFC(2×105あたり)IL2
【0380】
TSpec-P=55%
【0381】
TCSpec=10%
【0382】
RTB=[(Tbio-P)+1]/[(Tbio-U)+1]
【0383】
RTB=[(500)+1]/[(10)+1]=45.5
【0384】
したがって、
【0385】
RTB=1
【0386】
RTK=[(TSpec-P)/(TCSpec)]
【0387】
RTK=[(55%)/(10%)]=5.5
【0388】
したがって、
【0389】
RTK=1
【0390】
HLAP=A(2,24)、B(8,14)、DR(1,3)、DQ(2,5)
【0391】
HLAPt=A(2,23)、B(15,44)、DR(7,13)、DQ(3,3)
【0392】
HLAP対HLAPt=1
【0393】
したがって、Th=1
【0394】
[(RTB)+(RTK)]×Th
【0395】
[(1)+(1)]×1=2
【0396】
したがって、この産物をこの特定の患者に投与することになる。
【0397】
実施例3は、産物を特定の患者に投与しないことになるシナリオを例証するものである。
【0398】
Tbio-P=1200SFC(2×105あたり)IL2
【0399】
Tbio-U=54SFC(2×105あたり)IL2
【0400】
TSpec-P=87%
【0401】
TCSpec=10%
【0402】
RTB=[(Tbio-P)+1]/[(Tbio-U)+1]
【0403】
RTB=[(1200)+1]/[(54)+1]=21.8
【0404】
したがって、
【0405】
RTB=1
【0406】
RTK=[(TSpec-P)/(TCSpec)]
【0407】
RTK=[(87%)/(10%)]=8.7
【0408】
したがって、
【0409】
RTK=1
【0410】
HLAP=A(1,24)、B(8,14)、DR(11,8)、DQ(2,5)
【0411】
HLAPt=A(2,23)、B(15,44)、DR(7,13)、DQ(3,3)
【0412】
HLAP対HLAPt=0
【0413】
したがって、Th=0
【0414】
[(RTB)+(RTK)]×Th
【0415】
[(1)+(1)]×0=0
【0416】
したがって、この産物をこの特定の患者に投与しないことになる。
【0417】
一実施例は、(
RTB)+(
RTK)≧1によって定義され、[(
RTB)+(
RTK)]×Th≧1によって選択されたCMV特異的T細胞産物で処置した、活動性CMV感染症を有する患者の臨床成績を代表するものである。
図45に示すように、CMV特異的T細胞の投与後、患者の末梢血においてPCRによって検出されたウイルス負荷のその後の減少があり、これは、IFNγ ELIspotによって検出されたCMV特異的T細胞の増加と逆相関があった。
【0418】
一実施例は、(
RTB)+(
RTK)≧1によって定義され、[(
RTB)+(
RTK)]×Th≧1によって選択されたEBV特異的T細胞産物で処置した、活動性ウイルス感染症を有する患者の臨床成績を代表するものである。
図46に示すように、EBV特異的T細胞の投与後、患者の末梢血においてPCRによって検出されたウイルス負荷のその後の減少があり、これは、IFNγ ELIspotによって検出されたEBV特異的T細胞の増加と逆相関があった。
【0419】
この実施例は、(
RTB)+(
RTK)≧1によって定義され、[(
RTB)+(
RTK)]×Th≧1によって選択されたBKV特異的T細胞産物で処置した、活動性ウイルス感染症を有する患者の臨床成績を代表するものである。
図47に示すように、BKV特異的T細胞の投与後、患者の尿においてPCRによって検出されたウイルス量のその後の減少があり、これは、IFNγ ELIspotによって検出されたBKV特異的T細胞の増加と逆相関があった。
【0420】
本発明の実施形態およびその利点を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨および精神から逸脱することなく、この中で様々な変更、置換および代替を行うことができることは、理解されるはずである。さらに、本願の範囲は、本明細書に記載のプロセス、機械、製造(物)、物の組成物、手段、方法およびステップの特定の実施形態に限定されることを意図したものではない。本明細書に記載の対応する実施形態と実質的に同じ機能を果すまたは実質的に同じ結果を達成する、現在存在するまたは後に開発されるプロセス、機械、製造(物)、物の組成物、手段、方法またはステップを本発明に従って用いることができるということは、本発明の開示から当業者には容易に理解されるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、それらの範囲内にそのようなプロセス、機械、製造(物)、物の組成物、手段、方法またはステップを含むことを意図したものである。