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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】アンダーカット処理機構及び成形用金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/44 20060101AFI20220112BHJP
   B29C 45/44 20060101ALI20220112BHJP
   B22D 17/22 20060101ALI20220112BHJP
   B22C 9/06 20060101ALI20220112BHJP
   B22C 9/10 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
B29C33/44
B29C45/44
B22D17/22 C
B22C9/06 T
B22C9/10 S
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019509627
(86)(22)【出願日】2018-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2018011240
(87)【国際公開番号】W WO2018180824
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-01-26
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2017/012248
(32)【優先日】2017-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302067947
【氏名又は名称】株式会社テクノクラーツ
(74)【代理人】
【識別番号】100128277
【弁理士】
【氏名又は名称】專徳院 博
(72)【発明者】
【氏名】反本 正典
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-154123(JP,U)
【文献】特開2014-226806(JP,A)
【文献】実開昭56-156627(JP,U)
【文献】特開平07-032425(JP,A)
【文献】特開平7-241883(JP,A)
【文献】特開昭54-077664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00 - 33/76
B29C 45/00 - 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンダーカット部のある成形品を成形する成形用金型に取付けられ使用される、前記成形品の型抜き方向と交差する方向へ突出した前記アンダーカット部を型抜き可能とするアンダーカット処理機構であって、
前記成形用金型に固定又は一体的に形成されたホルダーと、
前記アンダーカット部を成形する成形部を有し、前記成形部が前記アンダーカット部から外れるように前記ホルダーに対して摺動可能な摺動駒と、
前記ホルダーに対して前記成形品の型抜き方向に対して交差する方向に進退可能な、前記摺動駒を摺動可能に保持する保持駒と、
前記保持駒を進退させる駆動手段と、
を備え、
前記駆動手段は、前記成形用金型の型開き時に前記保持駒を移動させる第1押圧手段と、前記成形用金型の型締め時に前記保持駒を型開き時とは逆方向に移動させる第2押圧手段と、を備え、
前記第1押圧手段が、スプリング、シリンダー又は電磁石であり、
前記第2押圧手段が、前記成形用金型に取付けられている、前記成形用金型の型開き及び型締め方向に対して傾斜する傾斜面を有し、該傾斜面を前記保持駒に対して摺動可能に係合させる駒であり、
前記成形用金型の型開きに連動して前記第1押圧手段を介して前記保持駒が移動することで、前記成形部が前記アンダーカット部から外れるように前記摺動駒が移動するように構成されていることを特徴とするアンダーカット処理機構。
【請求項2】
前記第2押圧手段は、底部に前記保持駒に係合する爪を備える強制引張駒であり、
前記保持駒は、前記成形用金型の型締め時に前記爪が嵌り込む嵌合溝を備え、
前記強制引張駒は、前記嵌合溝に係合する爪を介して前記成形用金型の型開き時に前記保持駒を強制的に移動させることを特徴とする請求項に記載のアンダーカット処理機構。
【請求項3】
前記第1押圧手段及び前記第2押圧手段が電磁石であることを特徴とする請求項1に記載のアンダーカット処理機構。
【請求項4】
前記成形部は、基端部に比較して先端部が細い先細りの外形を有することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のアンダーカット処理機構。
【請求項5】
前記ホルダー及び前記保持駒はそれぞれ、前記成形用金型の型開き時の前記摺動駒の移動方向を前記成形部が前記アンダーカット部から外れる方向に規制する規制手段を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のアンダーカット処理機構。
【請求項6】
前記ホルダーは、前記摺動駒及び/又は前記保持駒を部分的に又は完全に収納可能であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のアンダーカット処理機構。
【請求項7】
前記摺動駒は、前記アンダーカット部に中空部又は空間部を有する前記成形品を成形可能に前記アンダーカット部の中空部又は空間部を成形する成形部材を備えていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のアンダーカット処理機構。
【請求項8】
請求項1からのいずれか1項に記載のアンダーカット処理機構を備えることを特徴とする成形用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーカット部を有する成形品を成形する成形用金型に取付けられ使用されるアンダーカット処理機構及び成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
アンダーカット部を有する成形品を成形する成形用金型において、アンダーカット部の形態に対応するかたちで多くのアンダーカット処理機構が開発されている。アンダーカット処理機構としては、例えば、ルーズコアと呼ばれるものが一般的に用いられている。
【0003】
また従来のルーズコアを用いるアンダーカット処理機構では成形が困難である成形品、例えば、成形品全体の型抜き方向と交差する方向に中空部を有するボスが突出している成形品を成形する場合に、アンダーカット部となるボスを容易に型抜き可能とするアンダーカット処理機構が本出願人により既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載のアンダーカット処理機構は、成形用金型の固定型又は可動型に内設されるホルダーと、アンダーカット部を成形する成形コアとを備え、成形コアが第1コアと第2コアとからなり、第1コア及び第2コアが互いに隣接して傾斜した側面を有し、側面に沿ってホルダー内を摺動することでアンダーカット部を型抜き可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-155381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のアンダーカット処理機構によれば、従来のルーズコアを用いるアンダーカット処理機構では成形が困難であった形状の成形品の成形が容易化されるとともに支持ロッドやガイドロッド等が不要となり、従来のルーズコアを用いるアンダーカット処理機構と比較してコンパクトに構成可能である。
【0007】
本発明は、特許文献1に記載のアンダーカット処理機構とは異なる構成において、特許文献1に記載のアンダーカット処理機構のようにアンダーカット部を有する成形品の成形の容易化及びコンパクト化を実現可能なアンダーカット処理機構、成形用金型及び成形品を提案するものである。
【0008】
本発明の目的は、コンパクトかつ簡素に構成可能でありながらアンダーカット部を容易に型抜き可能なアンダーカット処理機構及び成形用金型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、アンダーカット部のある成形品を成形する成形用金型に取付けられ使用される、前記成形品の型抜き方向と交差する方向へ突出した前記アンダーカット部を型抜き可能とするアンダーカット処理機構であって、前記成形用金型に固定又は一体的に形成されたホルダーと、前記アンダーカット部を成形する成形部を有し、前記成形部が前記アンダーカット部から外れるように前記ホルダーに対して摺動可能な摺動駒と、前記ホルダーに対して前記成形品の型抜き方向に対して交差する方向に進退可能な、前記摺動駒を摺動可能に保持する保持駒と、前記保持駒を進退させる駆動手段と、を備え、前記駆動手段は、前記成形用金型の型開き時に前記保持駒を移動させる第1押圧手段と、前記成形用金型の型締め時に前記保持駒を型開き時とは逆方向に移動させる第2押圧手段と、を備え、前記第1押圧手段が、スプリング、シリンダー又は電磁石であり、前記第2押圧手段が、前記成形用金型に取付けられている、前記成形用金型の型開き及び型締め方向に対して傾斜する傾斜面を有し、該傾斜面を前記保持駒に対して摺動可能に係合させる駒であり、前記成形用金型の型開きに連動して前記第1押圧手段を介して前記保持駒が移動することで、前記成形部が前記アンダーカット部から外れるように前記摺動駒が移動するように構成されていることを特徴とするアンダーカット処理機構である。
【0010】
また本発明のアンダーカット処理機構において、前記第1押圧手段及び前記第2押圧手段が電磁石であることを特徴とする。
【0014】
また本発明のアンダーカット処理機構において、前記第2押圧手段は、底部に前記保持駒に係合する爪を備える強制引張駒であり、前記保持駒は、前記成形用金型の型締め時に前記爪が嵌り込む嵌合溝を備え、前記強制引張駒は、前記嵌合溝に係合する爪を介して前記成形用金型の型開き時に前記保持駒を強制的に移動させることを特徴とする。
【0015】
また本発明のアンダーカット処理機構において、前記成形部は、基端部に比較して先端部が細い先細りの外形を有することを特徴とする。
【0016】
また本発明のアンダーカット処理機構において、前記ホルダー及び前記保持駒はそれぞれ、前記成形用金型の型開き時の前記摺動駒の移動方向を前記成形部が前記アンダーカット部から外れる方向に規制する規制手段を備えることを特徴とする。
【0017】
また本発明のアンダーカット処理機構において、前記ホルダーは、前記摺動駒及び/又は前記保持駒を部分的に又は完全に収納可能であることを特徴とする。
【0018】
また本発明のアンダーカット処理機構において、前記摺動駒は、前記アンダーカット部に中空部又は空間部を有する前記成形品を成形可能に前記アンダーカット部の中空部又は空間部を成形する成形部材を備えていることを特徴とする。
【0019】
本発明は、前記アンダーカット処理機構を備えることを特徴とする成形用金型である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のアンダーカット処理機構及び成形用金型によれば、保持駒と摺動駒とがホルダーに収容され、成形用金型の型開きに連動し駆動手段が保持駒を移動させることで、保持駒と係合する摺動駒がアンダーカット部から外れるように移動するので、コンパクトかつ簡素に構成可能でありながらアンダーカット部を容易に型抜き可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態の成形用金型1の型締め時の断面図である。
図2】本発明の第1実施形態の成形用金型1の型開き後の断面図である。
図3】本発明の第1実施形態の成形用金型1の成形品Pの突き出し動作後の断面図である。
図4図1におけるアンダーカット処理機構10の周辺部の拡大図である。
図5図2におけるアンダーカット処理機構10の周辺部の拡大図である。
図6】本発明の第1実施形態の成形用金型1のアンダーカット処理機構10の斜視図である。
図7】本発明の第1実施形態の成形用金型1のアンダーカット処理機構10の分解斜視図である。
図8】本発明の第2実施形態の成形用金型2の型締め時の断面図である。
図9】本発明の第2実施形態の成形用金型2の型開き後の断面図である。
図10】本発明の第2実施形態の成形用金型2の成形品Pの突き出し動作後の断面図である。
図11】本発明の第2実施形態の成形用金型2のアンダーカット処理機構11を前方上方から見た斜視図である。
図12】本発明の第2実施形態の成形用金型2のアンダーカット処理機構11を後方上方から見た斜視図である。
図13】本発明の第2実施形態の成形用金型2のアンダーカット処理機構11を前方上方から見た分解斜視図である。
図14】本発明の第2実施形態の成形用金型2のアンダーカット処理機構11を後方上方から見た分解斜視図である。
図15】本発明の第3実施形態の成形用金型3の型締め時の断面図である。
図16】本発明の第3実施形態の成形用金型3の型開き後の断面図である。
図17】本発明のアンダーカット処理機構及び成形用金型で成形可能な成形品の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1図2図3は、それぞれ本発明の第1実施形態の成形用金型1の型締め時の断面図、成形用金型1の型開き後の断面図、成形用金型1の成形品Pの突き出し動作後の断面図である。図4は、図1におけるアンダーカット処理機構10の周辺部の拡大図、図5は、図2におけるアンダーカット処理機構10の周辺部の拡大図である。図6及び図7は、本発明の第1実施形態の成形用金型1のアンダーカット処理機構10の斜視図、及び成形用金型1のアンダーカット処理機構10の分解斜視図である。なお図1から図6では、アンダーカット処理機構10をホルダー20のみ断面図で示している。また図1から図3では、符号を一部省略している。
【0024】
本発明の第1実施形態の成形用金型1は、成形材料を射出し成形品P(図1参照)の外面側を成形する固定型100と、成形品Pのアンダーカット部P1を含む内面側を成形する可動型101とを備える公知の射出成形用金型と同様の構成であるが、アンダーカット処理機構10を備える点で公知の射出成形用金型とは異なっている。なお便宜上、図1の固定型100側を上、可動型101側を下として説明する。
【0025】
第1実施形態の成形用金型1は、公知の射出成形用金型と同様、固定型100が固定側取付板103、固定側型板104、ロケートリング105、スプルーブッシュ106を備え、可動型101が可動側取付板107、可動側型板108、スペーサーブロック109、2枚のエジェクタ台板110、エジェクタピン111、リターンピン112、スプリング113、エジェクタロッド114を備え、成形、型開き終了後、エジェクタ台板110が可動側型板108に対して成形品Pの型抜き方向(図1の上方向)に移動することでエジェクタピン111によって成形品Pの突き出し動作を行う。なお上記の構成部品は、公知の射出成形用金型と同様であるため説明を省略する。
【0026】
また第1実施形態の成形用金型1には、アンダーカット部P1の型抜きを可能とするアンダーカット処理機構10が可動型101に組込まれており、後述するアンダーカット処理機構10の保持駒50を成形用金型1の型締め及び型開きに連動して進退させる傾斜部材であるアンギュラピン12が成形用金型1の型締め及び型開き方向(図1の上下方向)に対して傾斜するように固定側型板104に固定されている。
【0027】
アンダーカット処理機構10は、成形品Pの成形時にアンダーカット部P1を成形し、成形用金型1の型開き時にアンダーカット部P1から外れることで、成形品Pの型抜き(突き出し)時にアンダーカット部P1を成形用金型1から型抜き可能とするものである。
【0028】
本実施形態においてアンダーカット部P1は、成形品Pの内面側から成形品Pの型抜き方向(図1の上方向)に対して交差する方向に突出した円筒ボスである。なお本発明のアンダーカット処理機構、成形用金型及び成形品において成形及び型抜き可能なアンダーカット部は、後述するように円筒ボスに限定されるものではない。また成形品Pの材料としては、プラスチック等の合成樹脂に限らず、鉄や銅、アルミニウム等の金属でも良い。
【0029】
アンダーカット処理機構10は、可動側型板108に埋設され固定されたホルダー20と、成形品Pのアンダーカット部P1を成形する成形部32を有する摺動駒30と、前記摺動駒30を摺動可能に保持する保持駒50とを備え、アンギュラピン12を介して成形用金型1の型開き及び型締めに連動して摺動駒30及び保持駒50がホルダー20に対して摺動可能に構成されており、成形用金型1の型締め時には摺動駒30の成形部32がアンダーカット部P1を成形し、成形用金型1の型開き時には摺動駒30の成形部32がアンダーカット部P1から外れるように動作する。
【0030】
ホルダー20は、可動型101の可動側型板108内に埋設され、摺動駒30及び保持駒50を部分的に収納するとともに、摺動駒30及び保持駒50の移動方向を規制する。ホルダー20は、平面視においてコ字形状の部材であり、摺動駒30の移動方向を規制する規制手段である斜溝22と保持駒50の移動方向を規制する規制手段である水平溝24とを互いに対向する内面の両方に有している。
【0031】
斜溝22は、後述する摺動駒30の凸条44が摺動自在に嵌合し、摺動駒30の移動方向を成形用金型1の型開き時に摺動駒30の成形部32がアンダーカット部P1から外れる方向に規制するように、成形用金型1の型開き方向に対して傾斜して設けられている。ここで摺動駒30の成形部32がアンダーカット部P1から外れる方向とは、アンダーカット部P1を変形及び損傷させることなく摺動駒30の成形部32がアンダーカット部P1から外れる摺動駒30の移動方向であり、本実施形態では円筒ボス(アンダーカット部P1)の中心軸線に一致する、摺動駒30がアンダーカット部P1から遠ざかる方向である。
【0032】
水平溝24は、後述する保持駒50の第1凸条52が摺動自在に嵌合し、保持駒50の移動方向を水平方向(図1の左右方向)に規制するように設けられている。なお保持駒50の移動方向は、水平方向に限定されるものではなく、水平溝24に代えて、水平方向に対して傾斜した斜溝がホルダー20に設けられていてもよい。
【0033】
またホルダー20の形状は、特定の形状に限定されるものではなく、成形用金型1の型開き時に摺動駒30の成形部32がアンダーカット部P1から外れるように摺動駒30及び保持駒50の移動方向を規制可能であればよい。さらにホルダー20は、複数の部材に分割して形成されていてもよく、可動側型板108に一体的に形成されていてもよい。
【0034】
摺動駒30は、アンダーカット部P1を成形する成形部32と、ホルダー20及び保持駒50に対して摺動する摺動部36と、成形部32と摺動部36とを繋ぐシャフト部38とを有している。成形部32、ピン34、摺動部36及びシャフト部38は、一体的に形成されていてもよく、このうちの一部又は全部が摺動駒30を構成可能にそれぞれ1つの部材として形成されていてもよい。
【0035】
成形部32は、台形ブロックであり、上面40にアンダーカット部P1を成形する中空部42を有し、中空部42にアンダーカット部P1の中空部を成形するピン34を有している。成形部32は、上面40、中空部42及びピン34の露出面が成形品Pの一部及びアンダーカット部P1を成形する成形面となる。このため成形部32は、成形品Pの成形不良を防止すべく、型締め時に上面40と可動側型板108の上面との間に隙間が生じないように形成され配置されている。
【0036】
ピン34は、アンダーカット部P1の中空部を成形する円柱形状の成形部材である。ピン34は、アンダーカット部P1の中空部を成形可能に成形部32の中空部42に配置され固定用軸部材43を介して成形部32に固定されている。
【0037】
摺動部36は、台形ブロックであり、ホルダー20の斜溝22が設けられた内面に接する側面に設けられ斜溝22に摺動自在に嵌合する凸条44と、下面に設けられ後述する保持駒50の第2凸条54に摺動自在に係合する蟻溝46とを有している。
【0038】
シャフト部38は、円柱形状であり、成形部32の下面から立設されている。シャフト部38は、ボルト48によって摺動部36の上面に固定されている。
【0039】
なお成形部32、ピン34、摺動部36及びシャフト部38の形状は、特定の形状に限定されるものではなく、成形品Pの形状等に応じて適宜変更すればよい。
【0040】
保持駒50は、台形ブロックであり、ホルダー20の水平溝24が設けられた内面に接する側面に設けられ水平溝24に摺動自在に嵌合する第1凸条52と、傾斜面に設けられ摺動駒30の蟻溝46が摺動自在に係合する第2凸条54と、上面から下面にかけて穿設されアンギュラピン12が挿通する傾斜孔56とを有している。
【0041】
第2凸条54が設けられている傾斜面及びアンギュラピン12が挿通する傾斜孔56の傾斜角度θ、θ図4参照)は、成形用金型1(可動型101)のストローク及びアンダーカット部P1の寸法に基づいて、型開き時に摺動駒30の成形部32がアンダーカット部P1から外れるように決められている。
【0042】
なお第2凸条54の水平方向(図1の左右方向)に対する傾斜角度θを大きくすると、保持駒50の移動量に対する摺動駒30の移動量が大きくなる。また傾斜孔56の垂直方向(図1の上下方向)に対する傾斜角度θを大きくすると、可動型101の移動量に対する保持駒50の移動量が大きくなる。
【0043】
また保持駒50及び可動側型板108には、摺動駒30のシャフト部38と摺動部36とを連結するボルト48を挿通可能な挿通孔58、120が穿設されている。これによってホルダー20、摺動駒30及び保持駒50を可動側型板108に組込んだ後に挿通孔58、120からボルト48を通し、摺動部36とシャフト部38との固定を行うことができる。
【0044】
次に第1実施形態の成形用金型1の作用について説明する。成形品Pの成形時には成形用金型1を型締めした状態で固定型100のスプルーブッシュ106から成形材料を射出し、成形材料を硬化させ成形品Pを成形する(図1図4参照)。成形時にはアンダーカット処理機構10の摺動駒30の成形部32の上面40が可動側型板108の上面と面一になって成形品P(成形材料)に接して成形を行い、摺動駒30の中空部42及びピン34の露出面が成形品Pのアンダーカット部P1を成形する。
【0045】
成形品Pの成形後、成形用金型1の型開きを行う。成形用金型1の型開き時には、可動型101全体が図1の下方向に移動する。これに連動して保持駒50が傾斜孔56及びアンギュラピン12の作用によってホルダー20の水平溝24に沿って後退(図1の右方向に移動)し、これに伴い摺動駒30が蟻溝46及び保持駒50の第2凸条54の作用によってホルダー20の斜溝22に沿って移動し、これによって摺動駒30の成形部32がアンダーカット部P1から外れる(図2図5参照)。
【0046】
成形用金型1の型開き後、成形品Pの突き出し動作を行う。成形品Pの突き出し動作時には、エジェクタ台板110が図1の上方向に移動し、エジェクタピン111によって成形品Pが可動側型板108から突き出される(図3参照)。
【0047】
成形品Pの取出後、次の成形品Pを成形すべく、再度、成形用金型1の型締めが行われる。型締め時には、可動型101全体が図3の上方向に移動するとともに、エジェクタ台板110が図3の下方向に移動する。アンダーカット処理機構10は、可動型101の移動に連動して、保持駒50が傾斜孔56及びアンギュラピン12の作用によってホルダー20の水平溝24に沿って前進(図3の左方向に移動)し、これに伴い摺動駒30が蟻溝46及び保持駒50の第2凸条54の作用によってホルダー20の斜溝22に沿って移動し、摺動駒30の成形部32の上面40が可動側型板108の上面と面一になる。型締めが完了すると、成形材料が射出され次の成形品Pが成形される。
【0048】
以上のように、第1実施形態の成形用金型1、アンダーカット処理機構10によれば、成形用金型1の型開きに連動して保持駒50がホルダー20に対して摺動することで、摺動駒30がホルダー20に対して摺動しアンダーカット部P1から外れるように移動するので、コンパクトかつ簡素に構成可能でありながらアンダーカット部P1を容易に型抜き可能である。
【0049】
また第1実施形態のアンダーカット処理機構10によれば、摺動駒30及び保持駒50をホルダー20内に部分的に収納した状態で成形用金型1に組込むことができるので、コンパクトに構成可能であるとともに、成形用金型1への取付けが容易である。また例えば、型締め時において、摺動駒30及び保持駒50がホルダー20内に完全に収納されるように構成することも可能である。
【0050】
また第1実施形態の成形用金型1、アンダーカット処理機構10によれば、アンギュラピン12を介して成形用金型1の型開き及び型締めに連動してアンダーカット処理機構10が動作するので、複雑な駆動機構等を設けることなくアンダーカット部P1の型抜きが可能となる。また保持駒50を進退させる駆動手段であるアンギュラピン12は、ホルダー20には係合しないのでホルダー20が簡素化され、アンダーカット処理機構10をコンパクトにすることができる。
【0051】
図8図9図10は、それぞれ本発明の第2実施形態の成形用金型2の型締め時の断面図、成形用金型2の型開き後の断面図、成形用金型2の成形品Pの突き出し動作後の断面図である。図11及び図12は、本発明の第2実施形態の成形用金型2のアンダーカット処理機構11を前方上方から見た斜視図、及び後方上方から見た斜視図である。図11及び図12では、ホルダー20の一部が切り取られている。図13及び図14は、本発明の第2実施形態の成形用金型2のアンダーカット処理機構11を前方上方から見た分解斜視図、及び後方上方から見た分解斜視図である。図1から図7に示す本発明の第1実施形態の成形用金型1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
本発明の第2実施形態の成形用金型2は、本発明の第1実施形態の成形用金型1と基本構成を同じくするが、アンダーカット処理機構11が第1実施形態のアンダーカット処理機構10と異なる。これに伴い可動型101の構成が部分的に異なるが、成形用金型2の固定型100、可動型101の基本構成は第1実施形態の成形用金型1と同じである。以降、第2実施形態のアンダーカット処理機構11を詳細に説明する。なお便宜上、図8の固定型100側を上、可動型101側を下として説明する。
【0053】
アンダーカット処理機構11は、アンダーカット部P1の型抜きを可能とするアンダーカット処理機構であり、可動型101に組込まれており、アンダーカット部P1が、成形品Pの内面側から成形品Pの型抜き方向(図8の上方向)に対して交差する方向に突出した円筒ボスである点において、第1実施形態のアンダーカット処理機構10と共通する。
【0054】
またアンダーカット処理機構11、成形用金型2及び成形品Pにおいて、成形及び型抜き可能なアンダーカット部P1が、円筒ボスに限定されないこと、また成形品Pの材料として、プラスチック等の合成樹脂に限らず、鉄や銅、アルミニウム等の金属でも良いことにおいても第1実施形態のアンダーカット処理機構10、成形用金型1と共通する。
【0055】
アンダーカット処理機構11は、構成上においても第1実施形態のアンダーカット処理機構10と多くの部分で共通するが、第1には保持駒を成形用金型の型締め及び型開きに連動して進退させる駆動手段が異なる。第2には成形品Pの一部及びアンダーカット部P1を成形する成形部32の形状が異なる。
【0056】
アンダーカット処理機構11は、可動側型板108に埋設され固定されたホルダー20と、成形品Pのアンダーカット部P1を成形する成形部32を有する摺動駒31と、前記摺動駒31を摺動可能に保持する保持駒51とを備える。さらに保持駒51をホルダー20の水平溝24に沿って移動させるための駆動手段であるスプリング70、及び強制引張駒80、ストッパー90を備える。
【0057】
ホルダー20は、第1実施形態のアンダーカット処理機構10のホルダー20と同様に可動型101の可動側型板108内に埋設され、ホルダー20の底部は、可動側型板108の底部に取付けられた可動側受板115で支持されている。本実施形態のアンダーカット処理機構11のホルダー20は、基本的形状、構成、機能等を含め第1実施形態のアンダーカット処理機構10のホルダー20と同一である。本実施形態のホルダー20は、第1実施形態のアンダーカット処理機構10のホルダー20と同様に、特定の形状に限定されず、また複数の部材に分割して形成されていてもよく、可動側型板108に一体的に形成されていてもよい。
【0058】
摺動駒31は、アンダーカット部P1を成形する成形部32と、ホルダー20及び保持駒51に対して摺動する摺動部36とを備える点で第1実施形態のアンダーカット処理機構10の摺動駒30と共通するが、摺動駒31は、シャフト部38を有さず、成形部32と摺動部36とが一体的に形成されている。但し、摺動駒31は、摺動駒30と同様にシャフト部38を有していてもよく、また複数の部材からなりこれらが連結され構成されてもよい。
【0059】
成形部32は、台形ブロックである。より具体的には成形部32は、横断面が矩形であり、ホルダー20の水平溝24に交差する面である前面33、後面35が、高さ方向にみたとき傾斜しており、上部に向かうほど先細りとなっており、断面積も順次小さくなっている。成形部32の外形を、このように基端部に比較して先端部を細くすることで可動側型108との摺動性が向上し、焼付き、かじりを防止することができ好ましい。
【0060】
成形部32の外形の先細り構造は、基端部に比較して先端部の断面積が小さければよく、傾斜する面はいずれの面であってもよい。よって前面33、後面35に代えて、成形部32の両側面が傾斜していてもよく、またいずれか1つの面が傾斜してもよく、全ての面が傾斜面であってもよい。
【0061】
成形部32は、第1実施形態のアンダーカット処理機構10の成形部32と同様に、上面40にアンダーカット部P1を成形する中空部42を有し、中空部42にアンダーカット部P1の中空部を成形するピン34を有し、これらが成形品Pの一部及びアンダーカット部P1を成形する成形面となり、成形品Pの成形不良を防止すべく、型締め時に上面40と可動側型板108の上面との間に隙間が生じないように形成され配置されている。
【0062】
ピン34及び摺動部36の構造、機能、作用効果は、第1実施形態のアンダーカット処理機構10のピン34及び摺動部36と同じである。なお成形部32、ピン34、摺動部36の形状は、特定の形状に限定されるものではなく、成形品Pの形状等に応じて適宜変更すればよい。
【0063】
保持駒51は、台形ブロックであり、前面に摺動駒31の摺動部36が摺動自在に係合する傾斜面59が、後面に強制引張駒80が摺動する傾斜面60が設けられている。保持駒51は、ホルダー20の水平溝24が設けられた内面に接する側面に設けられ水平溝24に摺動自在に嵌合する第1凸条52と、傾斜面59に設けられ摺動駒31の蟻溝46が摺動自在に係合する第2凸条54とを有する。
【0064】
傾斜面59の傾斜角度θ図8参照)は、成形用金型2(可動型101)のストローク及びアンダーカット部P1の寸法に基づいて、型開き時に摺動駒31の成形部32がアンダーカット部P1から外れるように決められている。第2凸条54の水平方向(図8の左右方向)に対する傾斜角度θを大きくすると、保持駒51の移動量に対する摺動駒31の移動量が大きくなる。これらは第1実施形態のアンダーカット処理機構10と同じである。
【0065】
保持駒51は、前面の下部にスプリング70を収容する収容孔61を備える。収容孔61は、貫通孔ではない。収容孔61は、スプリング70の個数に対応した個数が設けられ、内径はスプリング70の外径よりも僅かに大きく、長さはスプリング70の長さよりも短く設定されている。
【0066】
保持駒51の傾斜面60の下端には強制引張駒80の爪82が隙間なく嵌り込み係合する嵌合溝65が設けられている。嵌合溝65は、後端部側に傾斜した突起66を設ける形で形成されている。
【0067】
スプリング70は、本実施形態において第1押圧手段であり、保持駒51を後退する(図9の右側方向)ように移動させる。スプリング70は、本実施形態では2本の圧縮コイルばねからなるが、個数は特に限定されるものではない。またスプリング70の長さ、直径、ばね特性は特に限定されるものではなく、アンダーカット処理機構11に適したものを適宜選択し使用すればよい。
【0068】
スプリング70は、保持駒51の収容孔61に収容され、成形用金型2が型締めの状態では、一端をホルダー20の内壁面に、他端を収容孔61の底部62に圧接させ圧縮状態で収容孔61に収容される。スプリング70は、成形用金型2の型開きに伴い伸長し、保持駒51を後退させる。
【0069】
強制引張駒80は、前面の中央部から下端にかけて傾斜面81が設けられたブロック状の駒であり、前面底部に傾斜面81の下端につながる爪82を備える。爪82は、幅方向いっぱいに設けられ、爪82の前面83は、傾斜面81と同じ傾斜角度であり、傾斜面81とつながるように設けられている。爪82の裏面84も前面83と平行な傾斜面となっている。爪82は、成形用金型2の型開き時に、成形部32をアンダーカット部P1から強制的に引き離すための部材である。
【0070】
強制引張駒80は、傾斜面81と保持駒51の傾斜面60とが互いに摺動可能に、上部に設けられた突出部85を固定側型板104に設けられた嵌合溝に嵌め込み、上面が固定側型板104に接するように固定側型板104の底部に固定されている。このような強制引張駒80は、保持駒51のロッキングブロックとして、また保持駒51をホルダー20内に戻すように前進させる駆動手段(第2押圧手段)として、さらに成形用金型2の型開き時に、成形部32をアンダーカット部P1から強制的に引き離す手段として作用する。
【0071】
強制引張駒80の爪82及び保持駒51の嵌合溝65は、本実施形態の形態に限定されるものではない。爪82及び嵌合溝65は、型締め時に互いに係合するように爪82が嵌合溝65に嵌り込み、係合する爪82及び嵌合溝65の作用により、型開き時に強制的に保持駒51を後退させることができればよい。なお爪82による保持駒51の移動量(後退量)は、アンダーカット部P1の摺動駒31への食い付きを解消できればよい。
【0072】
ストッパー90は、保持駒51の後退量を規制する手段であり、型開きに伴い保持駒51が後退したとき、保持駒51の後端部が接触することで保持駒51の後退量が規制される。
【0073】
次に本実施形態の成形用金型2の作用について説明する。成形品Pの成形時には成形用金型2を型締めした状態で固定型100のスプルーブッシュ106から成形材料を射出し、成形材料を硬化させ成形品Pを成形する(図8参照)。成形時にはアンダーカット処理機構11の摺動駒31の成形部32の上面40が可動側型板108の上面と面一になって成形品P(成形材料)に接して成形を行い、摺動駒31の中空部42及びピン34の露出面が成形品Pのアンダーカット部P1を成形する。
【0074】
成形品Pの成形後、成形用金型2の型開きを行う。成形用金型2の型開き時には、可動型101全体が図8の下方向に移動する。これに連動して保持駒51は、強制引張駒80の爪82の作用により僅かにホルダー20の水平溝24に沿って強制的に後退(図8の右方向に移動)させられる。同時に保持駒51は、スプリング70の作用によってホルダー20の水平溝24に沿って後退する。これに伴い摺動駒31が蟻溝46及び保持駒51の第2凸条54の作用によってホルダー20の斜溝22に沿って移動し、これによって摺動駒31の成形部32がアンダーカット部P1から外れる(図9参照)。
【0075】
成形用金型2の型開き後、成形品Pの突き出し動作を行う。成形品Pの突き出し動作時には、エジェクタ台板110が図8の上方向に移動し、エジェクタピン111によって成形品Pが可動側型板108から突き出される(図10参照)。
【0076】
成形品Pの取出後、次の成形品Pを成形すべく、再度、成形用金型2の型締めが行われる。型締め時には、可動型101全体が図10の上方向に移動するとともに、エジェクタ台板110が図10の下方向に移動する。アンダーカット処理機構11は、可動型101の移動に連動して、保持駒51が強制引張駒80の作用によってホルダー20の水平溝24に沿って前進(図10の左方向に移動)し、これに伴い摺動駒31が蟻溝46及び保持駒51の第2凸条54の作用によってホルダー20の斜溝22に沿って移動し、摺動駒31の成形部32の上面40が可動側型板108の上面と面一になる。型締めが完了すると、成形材料が射出され次の成形品Pが成形される。
【0077】
以上のように、本実施形態の成形用金型2、アンダーカット処理機構11によれば、成形用金型2の型開きに連動して保持駒51がホルダー20に対して摺動することで、摺動駒31がホルダー20に対して摺動しアンダーカット部P1から外れるように移動するので、コンパクトかつ簡素に構成可能でありながらアンダーカット部P1を容易に型抜き可能である。
【0078】
また本実施形態のアンダーカット処理機構11によれば、摺動駒31及び保持駒51をホルダー20内に部分的に収納した状態で成形用金型2に組込むことができるので、コンパクトに構成可能であるとともに、成形用金型2への取付けが容易である。また例えば、型締め時において、摺動駒31及び保持駒51がホルダー20内に完全に収納されるように構成することも可能である。
【0079】
また第2実施形態の成形用金型2、アンダーカット処理機構11によれば、スプリング70及び強制引張駒80を介して成形用金型2の型開き及び型締めに連動してアンダーカット処理機構11が動作するので、複雑な駆動機構等を設けることなくアンダーカット部P1の型抜きが可能となる。
【0080】
保持駒を移動させる駆動源にスプリングを使用する成形用金型の場合、摺動駒の成形部がアンダーカット部P1に密着し、型開きをしてもスプリングが保持駒を後退させることができない場合がある。特に、本実施形態に示す成形品Pのようにアンダーカット部P1が、成形品Pの内面側から成形品Pの型抜き方向に対して交差する方向に突出した円筒ボスのような場合には、成形部とアンダーカット部P1との接触面積が多いため成形部がアンダーカット部P1に食い付き外れ難くなる。型開きに連動してアンダーカット部P1が外れないと成形品Pが破損する恐れがある。
【0081】
これに対して第2実施形態のアンダーカット処理機構11は、保持駒51の嵌合溝65の突起66に係合する強制引張駒80の爪82が、成形用金型2の型開き時に保持駒51を強制的に後退させるので、摺動駒31がアンダーカット部P1から外れるように移動する。これにより成形部32のアンダーカット部P1への食い付きが解消されるので、以降はスプリング70の力でアンダーカット部P1を外し、成形品Pを破損させることなく回収することができる。
【0082】
成形品Pの形状等からアンダーカット部P1の成形部32への食い付きが発生し難い場合には、強制引張駒80から爪82の部分を取り除いた駒を使用することができる。爪82を有さない駒は、ロッキングブロックとして、また保持駒51をホルダー20内に戻すように前進させる第2押圧手段として機能する。
【0083】
また第2実施形態のアンダーカット処理機構11は、摺動駒31の成形部32が上部に向かうほど先細りとなっているので可動側型108との摺動性が向上し、焼付き、かじりを防止することができる。第1及び後述の第3実施形態の摺動駒30の成形部32も第2実施形態の摺動駒31の成形部32と同様に先細り形状にするのが好ましい。
【0084】
図15は、本発明の第3実施形態の成形用金型3の型締め時の断面図、図16は、本発明の第3実施形態の成形用金型3の型開き後の断面図である。図1から図7に示す本発明の第1実施形態の成形用金型1、図8から図14に示す本発明の第2実施形態の成形用金型2と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0085】
本発明の第3実施形態の成形用金型3は、本発明の第1実施形態の成形用金型1と基本構成を同じくするが、アンダーカット処理機構15が第1実施形態のアンダーカット処理機構10と異なる。成形用金型3の固定型100、可動型101の基本構成は第2実施形態の成形用金型2と同じである。以降、第3実施形態のアンダーカット処理機構15を詳細に説明する。なお便宜上、図15の固定型100側を上、可動型101側を下として説明する。
【0086】
アンダーカット処理機構15は、アンダーカット部P1の型抜きを可能とするアンダーカット処理機構であり、可動型101に組込まれており、アンダーカット部P1が、成形品Pの内面側から成形品Pの型抜き方向(図15の上方向)に対して交差する方向に突出した円筒ボスである点において、第1実施形態のアンダーカット処理機構10及び第2実施形態のアンダーカット処理機構11と共通する。
【0087】
またアンダーカット処理機構15、成形用金型3及び成形品Pにおいて、成形及び型抜き可能なアンダーカット部P1が、円筒ボスに限定されないこと、また成形品Pの材料として、プラスチック等の合成樹脂に限らず、鉄や銅、アルミニウム等の金属でも良いことにおいても第1実施形態のアンダーカット処理機構10、第2実施形態のアンダーカット処理機構11、成形用金型1、2と共通する。
【0088】
アンダーカット処理機構15は、構成上においても第1実施形態のアンダーカット処理機構10と多くの部分で共通するが、保持駒を成形用金型の型締め及び型開きに連動して進退させる駆動手段が異なる。
【0089】
アンダーカット処理機構15は、可動側型板108に埋設され固定されたホルダー20と、成形品Pのアンダーカット部P1を成形する成形部32を有する摺動駒30と、前記摺動駒30を摺動可能に保持する保持駒50とを備える。さらに保持駒50をホルダー20の水平溝24に沿って移動させるための駆動手段であるシリンダー72を備える。ホルダー20、摺動駒30及び保持駒50の構成は、第1実施形態のアンダーカット処理機構10のホルダー20、摺動駒30及び保持駒50と同一ゆえ、説明を省略する。
【0090】
シリンダー72は、シリンダチューブ73、シリンダチューブ73に収容されたピストンに連結するピストンロッド74を備えるシリンダーであり、保持駒50を進退可能に可動型101に組み込まれている。ピストンロッドの先端部75が保持駒50の後面55に連結され、シリンダー72に対し駆動媒体を給排することでピストンロッド74が伸縮し、保持駒50が進退する。ピストンロッド74の伸縮量(ストローク)は、アンダーカットを外すことが可能に保持駒50を後退させることができればよく、シリンダー72には往復動可能な公知の油圧シリンダー等を使用することができる。
【0091】
本発明の第3実施形態の成形用金型3の作用について説明する。アンダーカット処理機構15は、他の実施形態のアンダーカット処理機構と同様に、成形用金型3の型開きに連動して動作しアンダーカットを抜く。具体的には、成形用金型3の型開きに連動し、ピストンロッド74が後退するようにシリンダー72に対し駆動媒体が給排される。これにより保持駒50がホルダー20の水平溝24に沿って後退し、摺動駒30が蟻溝46及び保持駒50の第2凸条54の作用によってホルダー20の斜溝22に沿って移動し、これによって摺動駒30の成形部32がアンダーカット部P1から外れる(図16参照)。
【0092】
またアンダーカット処理機構15は、成形用金型3の型締め時においては、成形用金型3の型締めに連動し、ピストンロッド74が前進する(突出される)ようにシリンダー72に対し駆動媒体が給排される。これにより保持駒50がホルダー20の水平溝24に沿って前進(図16の左方向に移動)し、これに伴い摺動駒30が蟻溝46及び保持駒50の第2凸条54の作用によってホルダー20の斜溝22に沿って移動し、摺動駒30の成形部32の上面40が可動側型板108の上面と面一になる。
【0093】
第3実施形態の成形用金型3では、アンダーカット処理機構15の保持駒50を進退させる駆動手段にシリンダー72を用いるが、シリンダー72に代えて電磁石を用い、保持駒50を前進、後退させるようにしてもよい。またシリンダー72と電磁石とを併用してもよい。
【0094】
電磁石を使用した保持駒50の進退は、特に限定されるものではないが、例えば以下の要領で行うことができる。保持駒50の後面55に磁石を取付け、保持駒50を後退させる位置に配置されたストッパー90に電磁石を配置する。電磁石への通電方向を切り替えることで極性を切換え、磁石と電磁石とを吸着させることで保持駒50を後退させ、逆に磁石と電磁石とを反発させることで保持駒50を前進させる。電磁石への通電のタイミング、通電方向の切り替えは、シリンダー72と同様に成形用金型3の型開き、型締めに連動して行う。磁石及び電磁石は、保持駒50の前側に配置してもよい。
【0095】
以上のように、第3実施形態の成形用金型3、アンダーカット処理機構15によれば、成形用金型3の型開きに連動して保持駒50がホルダー20に対して摺動することで、摺動駒30がホルダー20に対して摺動しアンダーカット部P1から外れるように移動するので、コンパクトかつ簡素に構成可能でありながらアンダーカット部P1を容易に型抜き可能である。
【0096】
また第3実施形態のアンダーカット処理機構15によれば、摺動駒30及び保持駒50をホルダー20内に部分的に収納した状態で成形用金型3に組込むことができるので、コンパクトに構成可能であるとともに、成形用金型3への取付けが容易である。また例えば、型締め時において、摺動駒30及び保持駒50がホルダー20内に完全に収納されるように構成することも可能である。
【0097】
第3実施形態のアンダーカット処理機構15では、保持駒50の駆動手段にシリンダー72を使用するので、大きな駆動力を得ることが可能である。また第3実施形態のアンダーカット処理機構15において、シリンダ-72に代えて電磁石を使用すればアンダーカット処理機構15をよりコンパクトにすることができる。
【0098】
上記第3実施形態のアンダーカット処理機構15では、保持駒50を進退させる駆動手段であるシリンダー72が、型開き、型締めに連動して動作することを説明したが、第3実施形態のアンダーカット処理機構15で採用するシリンダー72及び電磁石は、基本的に単独で動作が可能である。このため型開きの途中、型開き後も任意のタイミングで、また任意のストローク量だけ保持駒50を進退させることができる。
【0099】
以上、第1から第3実施形態の成形用金型1、2、3を用いて、本発明のアンダーカット処理機構、成形用金型及び成形品を説明したが、本発明のアンダーカット処理機構、成形用金型及び成形品は、上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で変形して使用することができる。例えば、ホルダー20と摺動駒30、31との規制手段は、蟻溝及び凸条であってもよく、この場合、ホルダー20に蟻溝、摺動駒30、31に凸条が設けられていてもよく、ホルダー20に凸条、摺動駒30、31に蟻溝が設けられていてもよい。ホルダー20と保持駒50、51との規制手段についても同様である。また同様に摺動駒30、31と保持駒50、51との規制手段は、摺動駒30、31に凸条、保持駒50、51に蟻溝が設けられていてもよい。
【0100】
また本発明のアンダーカット処理機構において、互いに嵌合又は係合する斜溝22と凸条44、水平溝24と第1凸条52、及び蟻溝46と第2凸条54は、嵌合部又は係合部の断面形状が図に示した矩形であるものに限定されるものではなく、嵌合部又は係合部の断面が円形、三角形等であるものであってもよい。また本発明のアンダーカット処理機構において、ホルダー20、摺動駒30、31及び保持駒50、51のそれぞれの規制手段は、上記実施形態のものに限定されるものではなく、例えば、リニアガイド等を用いてもよい。
【0101】
第2実施形態の成形用金型2では、スプリング70に圧縮コイルばねを使用し、これを保持駒51の前面側に配置するが、スプリング70に引きばねを使用してもよい。スプリング70に引きばねを使用する場合には、保持駒51の後面側にスプリング70を収容可能な収容孔を設け、この収容孔の底部とストッパー90とに架け渡すようにスプリング70を配置すればよい。
【0102】
第2実施形態の成形用金型2は、保持駒51をスライド移動させる駆動手段(第1押圧手段)としてスプリング70を使用するが、スプリング70に代えて一方向にのみ動作する油圧シリンダー、電磁石を用いてもよい。このような一方向にのみ動作する油圧シリンダー、電磁石等の駆動手段は、保持駒51の前面側のみならず後面側に配置してもよい。
【0103】
また本発明の成形用金型において成形可能な成形品は、アンダーカット部が円筒ボスであるものに限定されるものではない。図17(a)、図17(b)は、本発明のアンダーカット処理機構及び成形用金型で成形可能な成形品の一例を示す斜視図である。本発明の成形用金型のアンダーカット処理機構は、特に、第1から第3実施形態及び図17に示したアンダーカット部P1、P2、P3のように、成形品Pの型抜き方向に対して直交、交差する方向に移動する従来のルーズコアでは型抜き不可能であった、ピン34等の成形部材によって成形される中空部又は空間部を有し縦断面視においてアンダーカット部が突出している面に対して平行な方向に並ぶ複数の突出部を有するアンダーカット部の成形及び型抜きに好適に用いることができる。
【0104】
また本発明の成形用金型において、複数のアンダーカット処理機構を設けることも可能である。つまり本発明のアンダーカット処理機構及び成形用金型によれば、複数の円筒ボスのようなアンダーカット部を有する成形品の成形及び型抜きを行うことも可能である。また各アンダーカット部の突出方向、つまり型抜き可能な方向が異なる場合には、各アンダーカット処理機構において、それぞれ、対応するアンダーカット部を型抜き可能にホルダー、摺動駒、保持駒の斜溝、水平溝、蟻溝、凸条等の規制手段、保持駒の駆動手段及び保持駒の傾斜孔の傾斜角度、あるいは保持駒及び強制引張駒の形状を適宜、設定すればよい。
【0105】
また本発明のアンダーカット処理機構及び成形用金型において、各構成部材の角及び側稜にR面取りやC面取り等が施されていてもよい。
【0106】
また本発明のアンダーカット処理機構及び成形用金型に使用される各構成部材の材質は、特定の材質に限定されるものではなく、公知のアンダーカット処理機構及び成形用金型に使用される部材の材質と同様のものを適宜用いればよい。ただし各構成部材における摺動面は、摺動性の良好な材質又は摺動性の良好な表面処理が施された材料を用いることが好ましい。なお各摺動面は、面接触であるものに限定されるものではなく、線接触や点接触であってもよい。
【0107】
また本発明のアンダーカット処理機構は、水平、垂直又はその他の方向に開閉する成形用金型に適用可能である。
【0108】
また本発明のアンダーカット処理機構及び成形用金型は、射出成形金型以外にダイカスト金型のようなモールド金型、モールドプレス成形金型などに好適に使用することができる。
【0109】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更及び修正を容易に想定するであろう。従って、そのような変更及び修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。
【符号の説明】
【0110】
1、2、3 成形用金型
10、11、15 アンダーカット処理機構
12 アンギュラピン
20 ホルダー
22 斜溝
24 水平溝
30、31 摺動駒
32 成形部
33 前面
34 ピン
35 後面
36 摺動部
44 凸条
46 蟻溝
50、51 保持駒
52 第1凸条
54 第2凸条
59、60 傾斜面
61 収容孔
65 嵌合溝
66 突起
70 スプリング
72 シリンダー
80 強制引張駒
81 傾斜面
82 爪
P 成形品
P1、P2、P3 アンダーカット部
図1
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