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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】静電容量型感圧センサー
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/14 20060101AFI20220112BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20220112BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20220112BHJP
   B25J 19/02 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
G01L1/14 J
B25J13/08 Z
B25J15/08 W
B25J19/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020166714
(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公開番号】P2021063801
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2021-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2019188265
(32)【優先日】2019-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514215103
【氏名又は名称】株式会社細田
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】細田哲郎
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6378001(JP,B2)
【文献】特許第3778148(JP,B2)
【文献】特許第4069256(JP,B2)
【文献】米国特許第8598893(US,B2)
【文献】特開2019-124506(JP,A)
【文献】特開2011-2256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J13/08
B25J19/02
B25J15/08
G01L1/14
本件出願を優先基礎とする国際特許出願PCT/JP2020/037392の調査結果が利用された。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサー略全体にかかる圧力を感知する小型の静電容量型感圧センサーであって、
少なくとも片面が導電体であるパネル電極Eと、
少なくとも片面が導電体であるパネル電極Sと、
前記パネル電極E及び/又は前記パネル電極Sとの間に介挿される少なくとも1枚の誘電体シートと、
前記パネル電極E又は前記パネル電極Sを直接的又は間接的に覆うように介挿される気泡を含む平板の弾性体セパレータとを備え、
前記平板の弾性体セパレータが圧縮された際に、前記気泡が前記平板の弾性体セパレータの外部に漏れないように密閉されていることを特徴とする小型の静電容量型感圧センサー
【請求項2】
前記平板の弾性体セパレータに内包される気泡が、前記平板の弾性体セパレータから外部に漏れないように密閉するシール層を備えたことを特徴とする請求項1に記載の小型の静電容量型感圧センサー
【請求項3】
センサー略全体にかかる圧力を感知する小型の静電容量型感圧センサーであって、
少なくとも片面が導電体であるパネル電極Eと、
少なくとも片面が導電体であるパネル電極Sと、
前記パネル電極E及び/又は前記パネル電極Sとの間に介挿される少なくとも1枚の誘電体シートと、
前記パネル電極E又は前記パネル電極Sを直接的又は間接的に覆うように介挿される所定形状の開口部を有する平板の弾性体セパレータとを備え、
前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体セパレータが圧縮された際に、前記開口部の気体が前記開口部から漏れないように密閉されていることを特徴とする小型の静電容量型感圧センサー
【請求項4】
前記開口部の気体が前記開口部から漏れないように密閉するシール層を備えたことを特徴とする請求項3に記載の小型の静電容量型感圧センサー
【請求項5】
前記誘電体シートは、前記気泡を含む平板の弾性体セパレータに張力がかかった引張状態で固着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の小型の静電容量型感圧センサー
【請求項6】
前記誘電体シートは、前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体セパレータに張力がかかった引張状態で固着されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の小型の静電容量型感圧センサー
【請求項7】
センサー略全体にかかる圧力を感知する小型の静電容量型感圧センサーであって、
下部パネル電極Eと、前記下部パネル電極E上に形成された第1誘電体シートと、前記第1誘電体シート上に形成された所定形状の開口部を有する平板の弾性体第1セパレータと、前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体第1セパレータ上に形成された第1パネル電極Sと、前記第1パネル電極S上に形成された絶縁体と、前記絶縁体上に形成された第2パネル電極Sと、前記第2パネル電極S上に形成された所定形状の開口部を有する平板の弾性体第2セパレータと、前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体第2セパレータ上に形成された第2誘電体シートと、前記第2誘電体シート上に形成された第2パネル電極Eとを備え、
前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体第1セパレータは、前記第1パネル電極Sと前記第1パネル電極Eとを離隔する第1気体層を有し、
前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体第2セパレータは、前記第2パネル電極Sと前記第2パネル電極Eとを離隔する第2気体層を有し、
前記第1誘電体シートと前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体第1セパレータとの間に前記第1気体層をシールする第1シール層と、前記第2誘電体シートと前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体第2セパレータとの間に前記第2気体層をシールする第2シール層とを備えたことを特徴とする小型の静電容量型感圧センサー
【請求項8】
センサー略全体にかかる圧力を感知する小型の静電容量型感圧センサーであって、
下部パネル電極Eと、前記下部パネル電極E上に形成された所定形状の開口部を有する平板の弾性体第1セパレータと、前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体第1セパレータ上に形成された第1誘電体シートと、前記第1誘電体シート上に形成された第1パネル電極Sと、前記第1パネル電極S上に形成された絶縁体と、前記絶縁体上に形成された第2パネル電極Sと、前記第2パネル電極S上に形成された第2誘電体シートと、前記第2誘電体シート上に形成された所定形状の開口部を有する平板の弾性体第2セパレータと、前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体第2セパレータ上に形成された第2パネル電極Eとを備え、
前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体第1セパレータは、前記第1パネル電極Sと前記第1パネル電極Eとを離隔する第1気体層を有し、
前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体第2セパレータは、前記第2パネル電極Sと前記第2パネル電極Eとを離隔する第2気体層を有し、
前記第1誘電体シートと前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体第1セパレータとの間に前記第1気体層をシールする第1シール層と、前記第2誘電体シートと前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体第2セパレータとの間に前記第2気体層をシールする第2シール層とを備えたことを特徴とする小型の静電容量型感圧センサー。
【請求項9】
前記第1誘電体シートは、前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体第1セパレータに張力がかかった引張状態で固着されており、前記第2誘電体シートは、前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体第2セパレータに張力がかかった引張状態で固着されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の小型の静電容量型感圧センサー
【請求項10】
前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体第1セパレータ及び/又は前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体第2セパレータは、シリコーンエラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、天然ゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、ウレアゴム、フッ素ゴムのいずれかであることを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載の小型の静電容量型感圧センサー
【請求項11】
センサー略全体にかかる圧力を感知するロボット用静電容量型感圧センサーであって、
少なくとも片面が導電体であるパネル電極Eと、
少なくとも片面が導電体であるパネル電極Sと、
前記パネル電極E及び/又は前記パネル電極Sとの間に介挿される少なくとも1枚の誘電体シートと、
前記パネル電極E又は前記パネル電極Sを直接的又は間接的に覆うように介挿される所定形状の開口部を有する平板の弾性体セパレータとを備え、
前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体セパレータが圧縮された際に、前記開口部の気体が前記開口部から漏れないように密閉されていることを特徴とするロボットハンドの指先、及び/又は走行ロボットの足裏にかかる圧力の感知に用いられるロボット用静電容量型感圧センサー
【請求項12】
前記開口部の気体が前記開口部から漏れないように密閉するシール層を備えたことを特徴とする請求項11に記載のロボットハンドの指先、及び/又は走行ロボットの足裏にかかる圧力の感知に用いられるロボット用静電容量型感圧センサー。
【請求項13】
前記誘電体シートは、前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体セパレータに張力がかかった引張状態で固着されていることを特徴とする請求項11又は12に記載のロボットハンドの指先、及び/又は走行ロボットの足裏にかかる圧力の感知に用いられるロボット用静電容量型感圧センサー
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量型の感圧センサーに関し、特に産業用ロボットハンドの指先、歩行・走行ロボットの足裏などに適用可能な静電容量型感圧センサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の静電容量型感圧センサーの構造は、例えば、下記特許文献1に記載のように、外皮カバーと、外皮カバーの内側に設けられた一対のパネル電極と、パネル電極間に配置される誘電体と、パネル電極の周縁に設けられる枠スペーサーと、パネル電極間に設けられた複数の柱状スペーサーと、パネル電極間の空気層とを備えて構成されている。
【0003】
静電容量型感圧センサーはその構造が簡単であり、かつ耐久性に優れていることから、ロボットの触覚センサー、産業用ロボットハンド、歩行・走行ロボットの足裏等への応用が検討されている。ロボットの手、足裏等に使用される感圧センサーに求められる性能として、1)僅かな力でも均一に圧縮変形する柔軟性(均一感知性)、2)圧力解除後に迅速に復元する復元性(迅速応答性)、3)大きな力が繰り返しかかっても容易に壊れない耐圧縮性(耐久性)、4)小さな力から大きな力まで測定可能な広範測定性、などが求められる。
【0004】
しかし、上述した従来の静電容量型感圧センサーの構造は、複数のスペーサーを対向する電極間に配置し、電極間のスペーサーの占有率をもとに感度に応じた所定の空気層を形成しなければならない。しかし小型の静電容量型感圧センサーにあっては、所望の空気層を小面積のスペーサーにより形成することは極めて難しい、という問題がある。また、従来構造の小型静電容量型感圧センサーは、負荷の繰り返しによりスペーサーがへたる(十分な耐久性が無い)、という問題がある。さらにスペーサーのへたりにより、負荷を解除した後の復元に時間がかかる(迅速応答性に欠ける)、という問題がある。このため、従来構造の静電容量型感圧センサーでは、ロボットの手(指先)、足裏等にかかる圧力を検知するセンサーとしては使用できない、という問題がある。このため現在のところ、ロボットハンド等に使用可能な、小型の静電容量型感圧センサーは存在していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6378001号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の課題は、このような事情に鑑みてなされたものであり、僅かな力でも均一に圧縮変形する柔軟性(均一感知性)、圧力解除後に迅速に復元する復元性(迅速応答性)、大きな力が繰り返しかかっても容易に壊れない耐圧縮性(耐久性)、小さな力から大きな力まで測定可能な広範測定性な性能を備えた小型の静電容量型感圧センサーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の第一は、センサー略全体にかかる圧力を感知する小型の静電容量型感圧センサーであって、
少なくとも片面が導電体であるパネル電極Eと、
少なくとも片面が導電体であるパネル電極Sと、
前記パネル電極E及び/又は前記パネル電極Sとの間に介挿される少なくとも1枚の誘電体シートと、
前記パネル電極E又は前記パネル電極Sを直接的又は間接的に覆うように介挿される気泡を含む平板の弾性体セパレータとを備え、
前記平板の弾性体セパレータが圧縮された際に、前記気泡が前記平板の弾性体セパレータの外部に漏れないように密閉されていることを特徴とする小型の静電容量型感圧センサー、である。
【0008】
セパレータは誘電体シートを介して間接的にパネル電極E、パネル電極Sを覆うように介挿してもよく、また誘電体シートを介さず直接的にパネル電極E、パネル電極Sを覆うように介挿しても良い。誘電体シートは1枚でも良く、また2枚以上介挿してもよい。誘電体シートを2枚介挿することで、セパレータはパネル電極E及びパネル電極Sの両方を誘電体シートを介して間接的に覆うことができる。本静電容量型感圧センサーは、セパレータに内包される気泡の反発力により迅速な応答性が確保できる。またセパレータが圧縮された際に外部に漏れないようにシールするシール層を備えることで、セパレータに内包されている気泡がより完全にシールされ、耐圧縮性(耐久性)、及び復元性(迅速応答性)を確保することができる。
【0009】
本発明の第二は、センサー略全体にかかる圧力を感知する小型の静電容量型感圧センサーであって、
少なくとも片面が導電体であるパネル電極Eと、
少なくとも片面が導電体であるパネル電極Sと、
前記パネル電極E及び/又は前記パネル電極Sとの間に介挿される少なくとも1枚の誘電体シートと、
前記パネル電極E又は前記パネル電極Sを直接的又は間接的に覆うように介挿される所定形状の開口部を有する平板の弾性体セパレータとを備え、
前記平板の弾性体セパレータが圧縮された際に、前記開口部の気体が前記開口部から漏れないように密閉されていることを特徴とする小型の静電容量型感圧センサー、である。
【0010】
セパレータの介挿は、誘電体シートを介してもよく、介さなくても良いことは上記の発明と同様である。本発明の静電容量型感圧センサーは、セパレータに所定形状の開口部を設けられている。かかる開口部は気体層(空気、不活性化ガス等の層)となるが、かかる開口部の気体をシールすることで開口部の気体の反発力をより効果的に利用することができる。これにより耐圧縮性(耐久性)、復元性(迅速応答性)を確保することができる。さらに、気泡を含む材料によるセパレータを用い開口部の気体のシールのみならず、セパレータが内包する気泡を併せてシールすることで、より耐圧縮性(耐久性)、復元性(迅速応答性)を確保することができる。
【0011】
本発明の第三は、センサー略全体にかかる圧力を感知する小型の静電容量型感圧センサーであって、
下部パネル電極Eと、前記下部パネル電極E上に形成された第1誘電体シートと、前記第1誘電体シート上に形成された所定形状の開口部を有する平板の弾性体第1セパレータと、前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体第1セパレータ上に形成された第1パネル電極Sと、前記第1パネル電極S上に形成された絶縁体と、前記絶縁体上に形成された第2パネル電極Sと、前記第2パネル電極S上に形成された所定形状の開口部を有する平板の弾性体第2セパレータと、前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体第2セパレータ上に形成された第2誘電体シートと、前記第2誘電体シート上に形成された第2パネル電極Eとを備え、
前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体第1セパレータは、前記第1パネル電極Sと前記第1パネル電極Eとを離隔する第1気体層を有し、
前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体第2セパレータは、前記第2パネル電極Sと前記第2パネル電極Eとを離隔する第2気体層を有し、
前記第1誘電体シートと前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体第1セパレータとの間に前記第1気体層をシールする第1シール層と、前記第2誘電体シートと前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体第2セパレータとの間に前記第2気体層をシールする第2シール層を備えたことを特徴とする小型の静電容量型感圧センサー、である。
【0012】
本発明は、絶縁体に積層されたパネル電極Sの上下にセパレータ、誘電体シート、パネル電極Eが積層された多極型の静電容量型感圧センサーである。多極構造とすることでより高感度の感圧センサーとなる。本発明では、パネル電極E上に誘電体シートを形成し、誘電体シート上にセパレータを形成する構造となっているが、パネル電極E上にセパレータを形成し、セパレータ上に誘電体シートを形成する構造としても良い。
また、パネル電極に誘電体シート、セパレータを形成する(積層する)順序を、パネル電極E上に第1セパレータを形成し、第1セパレータ上に第1誘電体シートを形成するようにしても良い。同様に、第2パネル電極S上に第2誘電体シートを形成し、第2誘電体シート上に第2セパレータを形成しても良い。さらに、これらを組み合わせるように構成しても良い。
これらの発明における誘電体シートは張力がかかった引張状態で前記セパレータ固着されていることが好適である。張力がかかった状態(引張状態)の誘電体シートは、セパレータの開口部周縁端部を支点としてトランポリン効果を奏するため、圧力解除後のより迅速な復元性(迅速応答性)等を確保することができる。
【0013】
本発明の第四は、センサー略全体にかかる圧力を感知するロボット用静電容量型感圧センサーであって、
少なくとも片面が導電体であるパネル電極Eと、
少なくとも片面が導電体であるパネル電極Sと、
前記パネル電極E及び/又は前記パネル電極Sとの間に介挿される少なくとも1枚の誘電体シートと、
前記パネル電極E又は前記パネル電極Sを直接的又は間接的に覆うように介挿される所定形状の開口部を有する平板の弾性体セパレータとを備え、
前記所定形状の開口部を有する平板の弾性体セパレータが圧縮された際に、前記開口部の気体が前記開口部から漏れないように密閉されていることを特徴とするロボットハンドの指先、及び/又は走行ロボットの足裏にかかる圧力の感知に用いられるロボット用静電容量型感圧センサー、である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ロボットの、足裏等にかかる圧力をセンサー(感知)可能であり、僅かな力でも均一に圧縮変形する柔軟性(均一感知性)、圧力解除後に迅速に復元する復元性(迅速応答性)、大きな力が繰り返しかかっても容易に壊れない耐圧縮性(耐久性)、小さな力から大きな力まで測定可能な広範測定性な性能を備えた小型の静電容量型感圧センサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施例である静電容量型感圧センサー1の平面と、それを構成する部材の積層状態を示した図である。
図2】本発明の第2実施例である静電容量型感圧センサー1aと、静電容量型感圧センサー1bを構成する部材の積層状態を示した図である。
図3】セパレータの形状を示す平面図である。
図4】他のセパレータの形状を示す平面図である。
図5】セパレータに開口部を形成した静電容量型感圧センサー1cの断面図である。
図6】多極型の静電容量型感圧センサー1dの断面を示した図である。
図7】多極型の静電容量型感圧センサー1Dの断面を示した図である。
図8】多極型の静電容量式感圧センサー1dに、それぞれ30Kgの圧縮荷重を負荷したときの静電容量値の変化と、基準値(開口部の無いセパレータの変化値)に対する倍率とを示した図である。
図9】本発明の第3実施例である静電容量型感圧センサー1eと、静電容量型感圧センサー1fを構成する部材の積層状態を示した図である。
図10】誘電体シート12-1に引張力を加える引張治具100の平面図である。
図11】誘電体シート12-1に引張力を加える引張治具100の断面図である。
図12】引張状態にある誘電体シートを用いた静電容量型感圧センサー1cの測定結果である
図13】引張状態にある誘電体シートを用いた静電容量型センサー1eの測定結果である。
図14】引張状態にない誘電体シートを用いた静電容量型感圧センサー1eの測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施例に基づいて、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。図1は本発明の第1実施例である静電容量型感圧センサー1の平面と、それを構成する部材の積層状態を示した図である。
【0017】
静電容量型感圧センサー1は、図1(a)に示すように指先のような形状をした小型の静電容量型感圧センサーである。周囲は外皮カバー16で覆われ内部に絶縁体10等を含む防水構造となっている。内部のパネル電極E(パネル電極11e)とパネル電極S(パネル電極11s)とからリード線20eと、リード線20sとが引き出され、外部測定器(図示していない)に接続される。
【0018】
第1実施例の静電容量型感圧センサー1は、図1(b)に示すように、セパレータ14を挟みこむように、その上下に誘電体シート12が積層されている。本実施例で用いたセパレータ14の素材は、気泡を内包する高分子弾性体の一つである低圧縮残留歪の特性を有し、気泡及び樹脂が均一なセル構造を形成しているポリウレタンフォーム(発泡ウレタン)である。また、本実施例ではセパレータ14に内包される気泡のシールを誘電体シート12とセパレータ14とを接着剤により密着することで行った。これによりセパレータ14が圧縮されても、そこに内包されている気泡は、シールにより内部から外部に漏れずその反発力を利用することができ、セパレータ14の耐圧縮性、静電容量型感圧センサー1の迅速応答性を確保することができる。なお、本明細書においてはパネル電極間を離隔する部材であるセパレータは、パネル電極を覆うように介挿される一体の部材をいう。これに対してスペーサーは、パネル電極間を離隔する部材、例えば静電容量型感圧センサーの周縁に設ける枠スペーサー、あるいはパネル電極間に点在して設ける柱状の部材をいう。
【0019】
図2は、本発明の第2実施例である静電容量型感圧センサー1aと、静電容量型感圧センサー1bを構成する部材の積層状態を示した図である。図1に示す静電容量型感圧センサー1と1a、1bとの違いは、セパレータ14に開口部15が形成されていること、開口部15を覆うようにシール層13が積層されているところにある。
【0020】
第2実施例である静電容量型感圧センサー1a、1bは、セパレータ14の開口部の気体を密閉することで、ウレタンフォームのような気泡を含む高分子弾性体でなくても、反発力の高いセパレータとして使用することができるところにある。密閉された気体が気泡の機能を代替するからである。もちろん気泡を含む高分子弾性体に開口部を設け、気泡と開口部の気体とを反発力として利用しても良いことは言うまでもない。
【0021】
パレータ14に圧縮力がかかった際に、セパレータ14に内包される気泡と開口部15の気体とが外部に漏れないようにするには、例えば両面テープによりセパレータ14と誘電体シート12とを密着させ、シール層を形成する。あるいはセパレータ14をフィルムで覆った上で誘電体シート12と接着剤等で密着させシール層を形成する。これらにより気泡、気体の漏れ出しを防止することができる。
【0022】
図2(b)静電容量型感圧センサー1bを示す。静電容量型感圧センサー1bと、静電容量型感圧センサー1aとの違いは、静電容量型感圧センサー1aには誘電体シート12の一つの面にシール層13が積層されている。これに対し静電容量型感圧センサー1bには、これに加え誘電体シート12の他の面にもシール層13が積層されているところにある。シール層を複数積層させることで、よりセパレータ14に内包する気泡の漏れをより完全に防止することができるからである。
【0023】
セパレータ14の素材である高分子弾性体として、ウレタンフォーム、シリコーンエラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、天然ゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、ウレアゴム、フッ素ゴムなどがあげられる
【0024】
図3図4はセパレータ14の形状を示した図である。図3(a)は気泡を内包する高分子弾性体を素材とするセパレータ14の平面図である。図3(b)、図3(c)はセパレータの中央部に開口部が形成されているセパレータ14a、14bの平面図である。図4(a)に示すセパレータは、開口がセパレータの形状に沿って均等に分散配置され、開口の均一性が担保されている。図4(b)は、縦・横の両方に開口部を挟んで対称に配置したセパレータの形状を示す図である。
【0025】
図3図4に示すようにセパレータに開口部15を設けることで、セパレータの素材は、気泡を内包する高分子弾性体に限られない。開口部の占有面積を測定対象物、所望の測定条件、測定値の範囲等に応じて決定することで、所望の感度を備えた静電容量型感圧センサーを製作することができる。
【0026】
図5は開口部15を有するセパレータを組み込んだ静電容量型感圧センサー1cの断面図である。開口部15を有するセパレータ14aを挟んで、シール層13、誘電体シート12、パネル電極11eとパネル電極11s、絶縁体10、そして外皮カバー16が積層されている。パネル電極E、パネル電極Sの端部からリード線20e、20sがそれぞれ引き出され、外部の測定器(図示していない)に接続する。開口部15には、空気あるいは窒素等の不活性ガス(気体)が充填されており、本明細書においてはかかる開口部を気体層とも称する。
【0027】
(比較実験)
セパレータの開口部の有無によるセンサー感度の違い、開口部の形状(開口面積割合)の違いによるセンサー感度の違いを検証した。この比較実験においては図6に示すような多極型の静電容量型感圧センサー(パネル電極Sを挟んで、パネル電極Eが2極形成されている)の静電容量型感圧センサー1dを用いた。そして静電容量型感圧センサー1dに上述した4種類のセパレータをそれぞれ組み込み、4個の静電容量型感圧センサーを作成し、比較実験を行った。
【0028】
静電容量型感圧センサー1dは、図6に示すように開口部15を有するセパレータ14aが、パネル電極11sと下部パネル電極11e(図6に示す下側のパネル電極11e)と、パネル電極11sと上部パネル電極11e(図6に示す上側のパネル電極11え)の間に2つ介挿されている。セパレータ14aには、それぞれシール層13、誘電体シート12、パネル電極11e、絶縁体10、そして外皮カバー16がそれぞれ積層されている。パネル電極E、パネル電極Sの端部からリード線20e、20sがそれぞれ引き出され、外部の測定器(図示していない)に接続している。
【0029】
静電容量型感圧センサー1dのパネル電極Eにはポリカーボネートシート(厚さ0.1mm~0.3mm)の片面に導電体を被覆したものを用いた。また開口部の空気を密閉するため誘電体シート12とセパレータ14a、セパレータ14aとパネル電極11s、パネル電極11sとセパレータ14a、セパレータ14aと誘電体シート12とを両面テープにより張り合わせ一体形成した。セパレータの素材は、密度(JIS K6401)480kg/m、残留歪5.9%、厚さ0.8mmのウレタンフォームを用いた。なお、セパレータ14aの開口部の空気を密閉するためのシール層の形成としては、両面テープの他、接着剤などがあげられる。
【0030】
図7は、多極型静電容量型感圧センサー1Dの断面を示した図である。多極型静電容量型感圧センサー1Dは、図6に示す多極型の静電容量型感圧センサーと、基本的には同じ構成であるが、シール層13がセパレータ14a1の下側と、セパレータ14a2の上側に設けられている点において相違する。シール層13はセパレータ14の開口部の気体をシール(密閉)できる位置(場所)であればその位置は問わない。また、パネル電極11e上に誘電体シート12を形成し、その上にセパレータ14を形成するのではなく、パネル電極11e上にセパレータ14を形成し、その上に誘電体シート12を形成しても良い。また、パネル電極11s上に誘電体シート12を形成し、その上にセパレータ14を形成しても良い。
【0031】
図8は上述した図6に示す4種類のセパレータを組み込んだ多極型の静電容量式感圧センサー1dのそれぞれに30Kgの圧縮荷重を負荷したときの静電容量値の変化と、基準値(開口部の無いセパレータを組み込んだ多極型の静電容量型感圧センサー1dの静電容量の変化値)に対する倍率とを示した図である。
【0032】
図8に示すセパレータNは表面積397mmで開口部がなし、セパレータSは中央部に開口部を有し、開口部を除いた表面積は352mm(開口部表面積45mm)、セパレータPはセパレータの形状の沿った開口部を有し、開口部を除いた表面積は316.5mm(開口部表面積80.5mm)、セパレータTは縦・横に開口部を有し、開口部を除いた表面積は313mm(開口部表面積84mm)である。
【0033】
セパレータNを用いた静電容量型感圧センサー1dの無負荷時の静電容量値は15.2PFである。これが30Kgの圧縮荷重を負荷することで静電容量値は69.3PFを示した。静電容量の変化量は54.1PFである。
【0034】
セパレータSを用いた静電容量型感圧センサー1dの無負荷時の静電容量値は15.3PFであるが、30Kgの圧縮荷重を負荷することで静電容量値は76.5PFを示した。静電容量の変化量は61.2PFである。セパレータNの変化量を基準値とすると変化した倍率は、1.131倍となる。
【0035】
セパレータPを用いた静電容量型感圧センサー1dの無負荷時の静電容量値は14.4PFであるが、30Kgの圧縮荷重を負荷することで静電容量値は86.4PFを示した。静電容量の変化量は72PFである。セパレータNの変化量を基準値とすると変化した倍率は、1.33倍となる。
【0036】
セパレータTを用いた静電容量型感圧センサー1dの無負荷時の静電容量値は16.1PFであるが、30Kgの圧縮荷重を負荷することで静電容量値は95.6PFを示した。静電容量の変化量は79.5PFである。セパレータNの変化量を基準値とすると変化した倍率は、1.469倍となる。
【0037】
多極型と単極型を比較するため、図2(b)に示す単極型の静電容量型感圧センサーにセパレータNを組み込み、同様の条件で実験を行い変化量を測定した。その結果、無負荷時の静電容量値は8.4PFであったのが、30Kgの圧縮荷重を負荷することで30.1PFを示した。静電容量の変化量は21.7PFであり、基準値に対して変化した倍率は0.401倍であった。
【0038】
以上の比較実験から、多極型の静電容量型感圧センサーとすることで感度を向上させることができる。また、セパレータに設ける開口部の形状、開口部の占める面積を変えることで感度を変えることができる。さらに、セパレータが内包する気泡及び/又は開口部の気体をシールすることで、耐圧縮性が向上すること、荷重を解除後の復元性が著しく向上することが実験において確認できた。
【0039】
図9は、本発明の第3実施例である静電容量型感圧センサー1eと、静電容量型感圧センサー1fを構成する部材の積層状態を示した図である。図9に示す静電容量型感圧センサー1e、1fの特徴とするところは、誘電体シート12-1に張力がかかった状態(引張状態)でセパレータ14-1又はセパレータ14に密着固定されているところにある。
【0040】
図9(a)に示す静電容量型感圧センサー1cの誘電体シート12-1は引張状態にあり、その端部はセパレータ14-1に固着されている。このため、引張状態にある誘電体シート12-1に荷重がかかると、セパレータ14-1の開口部にある気体とあいまって、誘電体シート12-1はセパレータ14-1の周縁端部を支持点として撓み、荷重が除去されるとその反発力により迅速に復元する。かかる効果は引張状態にある可撓性シートを弾性体支持点で支えるトランポリンの構造から得られる反発力と同様のものである。本明細書においては、この効果をトランポリン効果と称するが、トランポリン効果を奏する構造とすることで、従来構造では成しえなかった高耐久性、迅速復元性等の静電容量型感圧センサーを実現することができる。
【0041】
トランポリン効果を得るための誘電体シート12-1の部材としては、例えばシリコーンエラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、天然ゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、ウレアゴム、フッ素ゴムなどの弾性体、ゴム弾性体があげられる。またゴム弾性体の他、可撓性のある材料を用いてもよい。
【0042】
図9(b)に示す静電容量型感圧センサー1fの誘電体シート12-1は、それぞれ引張状態にありセパレータ14に固着されている。引張状態にある2つの誘電体シート12-1に荷重がかかると、セパレータ14内の気体とあいまって、セパレータ14の開口部周縁を支持点として、撓み、荷重が除去されると引張力により迅速に復元する。
【0043】
図10は誘電体シート12-1に張力を加える引張治具100の平面図である。また、図11(a)は誘電体シート12-1に張力を加える前の引張治具100の断面図、図11(b)は誘電体シート12-1に引張力を加えている状態の引張治具100の断面図である。
【0044】
引張治具100による張力の印加は、引張部124の締付ボルト121を緩め、上板122と底板123間に誘電体シートを挟む(図11(a))。次に、四方の締付ボルト121を締めて引張部124に誘電体シートを固定し、四方のナットを均等に回転することで、図11(b)のように引張状態の誘電体シート12-1が得られる。張力はナットの回転回数で調整し、引張状態にある誘電体シート12-1をセパレータの開口部周縁端部に固着する。
【0045】
(比較実験2)
引張状態にある誘電体シートを用いた静電容量型感圧センサーの性能を検証するため、図5に示す静電容量型感圧センサー1cと、図9に示す静電容量型感圧センサー1fに、それぞれ15kgの荷重を負荷し静電容量の変化を測定した。
【0046】
図12は静電容量型感圧センサー1cの測定結果である。荷重前の静電容量4.4pfが、15kgの荷重の負荷により20.6pfとなり、荷重の除去後、0.087秒後に負荷前の静電容量4.4pfに戻った。荷重負荷前後における静電容量の変化は16.2pfであった。
【0047】
図13は静電容量型センサー1fの測定結果である。静電容量型センサー1fの荷重前の静電容量5.3pfが、15kgの荷重の負荷により47.7pfとなり、荷重の除去後、0.093秒後に負荷前の静電容量5.3pfに戻った。負荷前後における静電容量の変化は42.4pfであった。
【0048】
図14はトランポリン効果の検証のため、静電容量型感圧センサー1e(誘電体シートには引張力を加えていない)の測定結果である。荷重前の静電容量5pfが、15kgの負荷により31.9pfとなり、荷重の除去後、0.14秒後に静電容量5.6pfで安定した。負荷前後における静電容量の変化は26.9pfであった。
【0049】
以上の比較実験により引張状態の誘電体シートを構成部材とすることで、ロボットの手、足裏等に使用可能な、僅かな力でも均一に圧縮変形する柔軟性(均一感知性)、圧力解除後に迅速に復元する復元性(迅速応答性)、大きな力が繰り返しかかっても容易に壊れない耐圧縮性(耐久性)、小さな力から大きな力まで測定可能な広範測定性な性能を備えた手小型の静電容量型感圧センサーを提供できることが明らかになった。
【符号の説明】
【0050】
1 静電容量式感知センサー
10 絶縁体
11 11e 11s パネル電極
12 誘電体シート
13 シール層
14 セパレータ
15 開口部(気体層)
16 外皮カバー
20 リード線
100 引張治具
110 ナット
111 ロッド
112 治具枠
113 底盤
120 固定部
121 締付ボルト
122 上板
123 底板
124 引張部
図1
図2
図3
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図5
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