(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】涙器系薬剤送達装置
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
A61F9/007 170
(21)【出願番号】P 2020216657
(22)【出願日】2020-12-25
(62)【分割の表示】P 2018222254の分割
【原出願日】2014-01-14
【審査請求日】2021-01-25
(32)【優先日】2013-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】308032460
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイト
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF COLORADO,a body corporate
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】カフック,マリク
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/024982(WO,A2)
【文献】特表2012-515628(JP,A)
【文献】特表2010-537775(JP,A)
【文献】特表2012-512725(JP,A)
【文献】米国特許第5318513(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0251568(US,A1)
【文献】米国特許第3828777(US,A)
【文献】特表2006-525953(JP,A)
【文献】特表2010-505569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
涙器系薬剤送達装置であって、
a)充填ポートおよび出口ポートを有するリザーバーであって、前記リザーバーが
液体を受容し、ひずむまで充填しそして使用の際に力を提供して液体を前記リザーバーから送達するように構成され;ここで前記リザーバーが、前記ひずみに応答して、それにより使用の際に前記力を提供して、液体をリザーバーから送達する弾性特性を有する、リザーバーと、
b)前記出口ポートに連結されかつ流れ限定ポートを含む第1のチューブであって、前記第1のチューブが前記流れ限定ポートで終結
する第1のチューブと、そして
c)前記充填ポートに接続された第2のチューブを含み、
前記装置が、最低1週間にわたり1日あたり0.1マイクロリットルと30.0マイクロリットルとの間の固定した比率で流体を送達する
を含む、装置。
【請求項2】
前記リザーバーが、活性成分を備える組成物を含む流体をさらに含む、請求項
1に記載の装置。
【請求項3】
前記リザーバーが解剖学的な固定を可能にする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記解剖学的な固定が装置保持特徴である、請求項
3に記載の装置。
【請求項5】
前記出口ポートが内部プランジャーに連結される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記出口ポートが、前記内部プランジャーに連結された内部バネに連結される、請求項
5に記載の装置。
【請求項7】
前記装置が、微小電気機械システムバネ圧レギュレータをさらに含む、請求項
6に記載の装置。
【請求項8】
前記装置が生体内崩壊性物質で作製される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記装置がマイクロ多孔性物質で作製される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記装置がナノ多孔性物質で作製される、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記装置が医療グレードの物質で作製される、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記流れ限定ポートが流れレギュレータを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記流れ限定ポートがフィルターを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記流れ限定ポートが少なくとも1つのナノ多孔性膜を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つのナノ多孔性膜を、前記装置の遠位端からの流れを調節するために使用することができる、請求項1
4に記載の装置。
【請求項16】
前記流体の流れが弁により制御される。請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連案件の相互参照
本願は、2013年1月15日に出願の米国仮特許出願番号第61/752,742号の利益を請求するものであり、この文献は参照により援用される。
【背景技術】
【0002】
本発明は、涙器系に関する医療行為の分野にある。本発明は、眼、洞および/または眼窩周囲の組織への薬剤送達用の涙器系装置ならびにこの装置の使用方法に関する。
【0003】
眼または鼻腔への適切な薬剤送達およびドライアイの処置を含む眼および呼吸器の疾患または障害を管理する分野において、患者および医師は多くの問題に直面している。眼の管理では、たとえば現在多くの眼薬剤送達システムが手動による反復性の薬剤投与を必要としており、患者のコンプライアンスの不足または眼に達する薬剤の濃度が不適切であることにより、大抵の場合有効ではない。また、現在の涙の流れを阻害する多くの技術は本質的に不可逆的であることを含む欠点を有している。
【0004】
従来より使用される眼または眼窩周囲の組織への薬剤送達方法により、取り外し可能な薬剤を放出する涙点インプラントを涙点に配置できる。1つ以上の薬剤の徐放を可能にすることにより、本発明の涙点インプラントは、不十分な患者のコンプライアンス、無駄な消耗、時期を逸した投与、または非局在化送達などの、現在の薬剤投与(すなわち手動の目薬の滴下)に関連する欠点のいくつかを克服できるとされる。眼から涙の流れを遮断する手法の1つとして、一般に涙点プラグと呼ばれる取り外し可能であるが、保持可能な涙点インプラントを涙点に配置することがある。このような涙点プラグは、徐放薬剤送達のための手段を提供すると示唆されているが、しかしながらそれらのプラグには、除去およびずれ(特に、患者が眼または瞼を勢いよくこするか、またはくしゃみをする場合)、限定される薬物リザーバーの容量、および薬剤の分散が眼の涙膜で利用可能な涙の希釈を介した分布に依存しているための涙の産生が不十分である患者での治療剤の不均等な送達、を含むいくつかの欠点がある。眼および/または眼窩周囲の組織へ薬剤を送達する必要のある対象を処置するために、治療剤を長期間供給でき、安定して放出できる装置が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、涙器系に関する医療行為の分野である。本発明は、眼、洞および/または眼窩周囲の組織への薬剤送達用の涙器系装置ならびにこの装置の使用方法に関する。
【0006】
1つの実施形態では、本発明は、涙器系薬剤送達装置であって、a)充填ポートおよび出口ポートを有するリザーバーであって、弾性特性を有するリザーバーと、b)出口ポートに連結する第1のチューブと、c)第1のチューブに連結する流れ限定ポートを含む第2のチューブとを含む、装置に関する。1つの実施形態では、このリザーバーは自己圧縮特性を有する。別の実施形態では、第1のチューブおよび第2のチューブは、1つの連続したチューブを含む。1つの実施形態では、第1のチューブおよび第2のチューブは、上記装置の遠位端で流れ限定ポートを含む1つの連続したチューブである。別の実施形態では、本装置は、2組めの、出口ポートに連結した第1のチューブおよび第1のチューブに連結した流れ限定ポートを含む第2のチューブを含む。1つの実施形態では、本装置は、充填ポートに連結した第3のチューブをさらに含む。
図3Aは、それ自体が膨張している装置を示す。
図3Bは、装置が相互作用する涙器系の主要部分を示す。
図3Cは、各涙管を通じて各涙点(それぞれ上位涙点(superior punctum)および下位涙点(inferior punctum)、上涙点(upper punctum)および下涙点(lower punctum))に延びる2組のチューブが存在する、本装置の1実施形態を示す。本装置は、1組または2組のチューブを有していてもよい。
図3Dは、2組のチューブを備えるが、第3の融合/再充填チューブを有さない装置の1実施形態を示す。
図3Eは、流れ限定ポート5で終結する1組のチューブを備える装置であって、このポートが上(上位)涙点で終結する装置である好ましい実施形態を示す。
図3Fは、流れ限定ポート5で終結する1組のチューブを備える装置であって、このポートが下(下位)涙点で終結する装置を示す。1つの実施形態では、本装置は、出口ポートに連結した内部プランジャーに連結した内部バネをさらに含む。1つの実施形態では、この内部プランジャーは、弾性リザーバーに依存することなく組成物の一定した放出を可能にする。
1つの実施形態では、ニチノールワイヤ(または他の物質)のバネを、定圧のゴム状のバルーンに依存することなく一定した流体の送達を可能にするよう流体を放出するように、遠位開口部に向かって内部プランジャーを引き抜く装置の涙部(lacrimal portion)の内部に用いる。1つの実施形態では、本装置は、微小電気機械システム(MEMS)バネ圧レギュレータをさらに含む。1つの実施形態では、弾性リザーバーは、活性成分を備える組成物を含む流体をさらに含む。1つの実施形態では、弾性リザーバーは解剖学的な固定を可能にする。1つの実施形態では、この解剖学的な固定は装置保持特徴であり、フォーリーカテーテルの保持特徴と非常に類似する。1つの実施形態では、出口ポートは内部プランジャーと連結する。1つの実施形態では、出口ポートは内部プランジャーと連結する内部バネと連結する。1つの実施形態では、本装置は微小電気機械システムバネ圧レギュレータをさらに含む。1つの実施形態では、本装置は生体内崩壊性物質で作製される。1つの実施形態では、本装置は医療用物質で作製される。1つの実施形態では、流れ限定ポートは穴を含む。1つの実施形態では、流れ限定ポートはフィルターを含む。1つの実施形態では、この流れ限定ポートは少なくとも1つのePTFE膜を含む。1つの実施形態では、このePTFE膜を、本装置の遠位端からの流れを調節するために使用してもよい。たとえば、ePTFEは0.0003インチ+/-0.0001インチ(0.00762mm+/-0.00254mm)の厚さおよび80%+/-10%の多孔性および、0.2~0.5ミクロンの流れ孔を備える。1つの実施形態では、ePTFE物質の1つ以上の層を、流れの調節のために使用できる。1つの実施形態では、本装置からの流体の流れは重力依存性である。1つの実施形態では、本装置からの流体の流れは、重力依存性の弁により限定される。1つの実施形態では、本装置からの流体の流れは、処置が必要とされないその日の所定の時間における(たとえば睡眠時)流れを減少するために、操作者(患者または医師)によりアクセス可能な締切り弁により制御される。1つの実施形態では、弾性リザーバーは、最低1週間、1日あたり0.1マイクロリットル~30.0マイクロリットルの固定した比率で眼の表面に流体+/-活性成分を送達する。別の実施形態では、この送達は最低60日間成し遂げられる。
【0007】
別の実施形態では、本発明は、a)i)涙管および涙嚢を含む対象と、ii)涙器系薬剤送達装置であって、A)少なくとも1つの活性成分を備える組成物を含む弾性リザーバーであって、涙嚢の内部に挿入できるリザーバーと、B)鼻涙管内から上涙管または下涙管のいずれかを介して弾性リザーバーから延びる管腔を備えた第1のチューブと、C)第1のチューブに連結した流れ限定ポートを備える第2のチューブであって、眼の涙膜と接触した涙点において流れ限定ポートで終結する第2のチューブとを含む装置とを提供することと、b)薬剤送達装置を涙器系に挿入することと、c)涙器系薬剤送達装置を使用して対象に組成物を投与することとを含む、処置方法に関する。1つの実施形態では、このリザーバーは自己圧縮特性を有する。別の実施形態では、上記第1のチューブおよび第2のチューブは1つの連続したチューブを含む。別の実施形態では、上記装置は、2組めの、出口ポートに連結した第1のチューブおよび第1のチューブに連結した流れ限定ポートを含む第2のチューブを含み、この2組めの第2のチューブが、眼の涙膜と接触する他の涙点の流れ限定ポートで終結する。1つの実施形態では、本装置は、弾性リザーバーと連結した第3のチューブをさらに含み、この第3のチューブは弾性リザーバーから鼻涙管内へと延びており、そこで終結している。1つの実施形態では、この第3のチューブは、涙管を介して管の鼻開口部まで延びている。1つの実施形態では、本装置は締切り弁をさらに含む。1つの実施形態では、本装置は生体内崩壊性物質を含む。1つの実施形態では、本装置は、生体内崩壊性物質を備える内部組成物カラムを含む。1つの実施形態では、生体内崩壊性物質の崩壊は、内部組成物カラムに沿うことを可能にする内部孔を経時的に開けることにより組成物のパルス投与を可能にする。1つの実施形態では、この活性成分は人工涙液、緑内障用目薬、抗炎症剤、非ステロイド系薬剤、抗生剤、生物、タンパク質、アプタマー、核酸、サイトカイン、血漿、交感神経作用物質(sympahtomemetics)、副交感神経作用物質(parasympathomemetics)、プロスタグランジン類似体、β阻害薬、αアゴニスト、抗VEGF剤および眼または眼窩周囲の組織の疾患を処置するために知られている他の薬剤からなる。1つの実施形態では、弾性リザーバーは、フラッシングおよび再充填の工程のための第3のチューブを介してアクセスしてもよい。1つの実施形態では、この装置からの流体の流れは、処置が望ましくない所定の時間において流れを減少させるため、操作者によりアクセス可能な締切り弁により制御される。1つの実施形態では、流れ限定ポートは、装置からの組成物の流れを調節する。1つの実施形態では、この流れ限定ポートは、少なくとも1つのePTFE膜を含む。たとえば、ePTFEは、0.0003インチ+/-0.0001インチ(0.00762mm+/-0.00254mm)の厚さおよび80%+/-10%の多孔性および0.2~0.5ミクロンの流れ孔を備える。1つの実施形態では、流れ限定ポートは、ePTFE物質の少なくとも1つの層を含む。1つの実施形態では、装置の先端でナノ~ミクロンの寸法の穴を使用して、ePTFE物質以外の流体の放出を制御する。1つの実施形態では、弾性リザーバーは、最低1週間、0.1マイクロリットル~30.0マイクロリットルの固定した比率で眼の表面に流体+-活性成分を送達する。別の実施形態では、この送達は最低60日間成し遂げられる。
【0008】
1つの実施形態では、本発明は、涙器系薬剤送達装置であって、a)充填ポートおよび出口ポートを有するリザーバーと、b)出口ポートに連結した第1のチューブと、c)第1のチューブに連結した流れ限定ポートを含む第2のチューブとを含む、装置に関する。
1つの実施形態では、上記第1のチューブおよび第2のチューブは、1つの連続したチューブを含む。1つの実施形態では、上記リザーバーは自己圧縮特性を有する。1つの実施形態では、上記充填ポートおよび出口ポートは同一のポートである。1つの実施形態では、上記リザーバーはナノ多孔性(nanoporous)物質を含む。1つの実施形態では、上記リザーバーはマイクロ多孔性物質を含む。1つの実施形態では、本装置のバルーン部1は、固定用にのみ設計されてもよく、かつ送達用(フォーリーカテーテルを保持する特徴のような)に設計されなくてもよい。1つの実施形態では、ニチノールワイヤ(または他の物質)のバネ10を、定圧のゴム状バルーン1に依存することなく一定した流体の送達を可能にするよう流体が放出されるように、遠位開口部に向かって内部プランジャー8を引き抜く、本装置の涙部の内部で使用する。1つの実施形態では、本装置は、生体内崩壊性または生体内分解性物質6を含む。1つの実施形態では、この生体内崩壊性物質6または生体内分解性物質6は、パルス投与を可能にする内部流体カラムに沿った内部孔を経時的に開ける。1つの実施形態では、本装置は、微小電気機械システム(MEMS)のバネ圧レギュレータ12をさらに含む。1つの実施形態では、ePTFE膜7を使用して、本装置の遠位端から流れを調節してもよい。たとえば、ePTFEは、0.0003インチ+/-0.0001インチ(0.00762mm+/-0.00254mm)の厚さ、80%+/-10%の多孔性、および平均0.2~0.5ミクロンの寸法の流れ孔を備える。1つの実施形態では、ePTFE物質の1つ以上の層を、流れの調節に使用できる。
図5は、本装置の斜視図(angled view)である。
図6は、本装置の斜視図である。
図7は、チューブの遠位端のクローズアップである。
図8AおよびBは、本装置の1実施形態を示す。
図8Aは、洞などの組織の空間に直接薬剤を送達できるマイクロ多孔性バルーン1からなる装置を示す。これは、必要に応じてマイクロ多孔性バルーン1を再充填する単純な充填ポート7(涙点、または結膜/涙丘もしくは周辺組織に位置する)として扱うことのできる遠位膜7を含んでもよく、または含まなくてもよい流れ限定ポート/出口ポート5を備えるチューブ(3、2)を含む。
図8Bは、ニチノールケージ13または他の構造的な特徴が、マイクロ多孔性バルーン/リザーバー1に圧力を与え得ることを示す。薬剤/組成物が遠位部7を介してのみ送達される代わりに、この選択肢により、遠位部を介して送達する、または送達することなくリザーバー1から周辺組織に直接薬剤を送達する可能性も加わる。慢性副鼻腔炎など、この手法が有益である特定の疾患が存在する。
図9は、マイクロ多孔性バルーン/弾性リザーバー1および遠位膜7が存在し、第1のチューブ2が生体内崩壊部6および内部プランジャー8を含み、かつ出口ポート9が内部プランジャー8、微小電気機械システムバネ圧レギュレータ12に連結した内部バネ10と連結し、かつ生体内崩壊性物質が内部組成物カラムに沿うことのできる内部孔を経時的に開け、活性剤組成物のパルス投与を可能にする、装置を示す。
図10は、ニチノールケージ13が直線状のワイヤを含むように充填する前に、リザーバー1の周りに別個のニチノール装置13を構築する装置の1実施形態を示す。充填すると、リザーバー1はニチノールを外部に押し出し、次いでニチノールは非弾性または半弾性物質に作用し、上部(出口ポート)で流れ限定膜7に向かって流体をゆっくりと押し出す。1つの実施形態では、本装置は、リザーバーおよび第1のチューブを含む。1つの実施形態では、本装置は、リザーバーの圧縮を可能にする周辺物質の中に含まれる非弾性リザーバーを含む。
1つの実施形態では、ニチノールのワイヤ、バネ、またはケージを使用して、リザーバーの圧縮を提供してもよい。1つの実施形態では、リザーバーは実質的に弾性ではない。1つの実施形態では、リザーバーは、マイクロ多孔性またはナノ多孔性の物質から作製される。1つの実施形態では、リザーバー内の組成物は、リザーバー物質の孔から放出される。いくつかの実施形態では、本装置は、上記リザーバーの上に配置した保護スリーブを含む。1つの実施形態では、このスリーブは、鼻涙管または他の組織区画に侵入する漏出を防ぐ。1つの実施形態では、本装置は、使用者(医師または患者)による検出および位置の確認を可能にするために、蛍光物質または着色剤を含む。1つの実施形態では、リザーバーは、眼の周辺の洞の中に埋め込まれる。1つの実施形態では、涙点部または遠位端は弾性リザーバーを薬物で充填することを考慮するが、弾性リザーバーは洞に位置しマイクロ多孔性バルーンを介した薬剤の送達を考慮する。1つの実施形態では、涙点部は涙丘または結膜を介して埋め込まれ(ジョーンズ・チューブのインプラント挿入と類似)、マイクロ多孔性バルーンポンプが眼の周辺の洞または他の組織領域に直接薬剤を送達することを考慮する。別の実施形態では、本装置は、涙点に位置する穴を伴うチューブに送達する最初の実施形態に加えて、マイクロ多孔性リザーバーを介して薬物を送達する。1つの実施形態では、圧縮したリザーバーは、最低1週間、1日当たり0.1マイクロリットル~30.0マイクロリットルの固定した比率で眼の表面に流体+/-活性成分を送達する。
別の実施形態では、この送達は最低60日間成し遂げられる。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、a)i)涙管を含む対象と、ii)涙器系薬剤送達装置であって、A)少なくとも1つの活性成分を備える組成物を含むリザーバーであって、限定するものではないが、涙嚢、洞、および指定領域(punctual area)を含む眼の周辺の組織内部に挿入できるリザーバーと、B)鼻涙管内から上涙管または下涙管を介してリザーバーから延びる管腔を備えた第1のチューブと、C)第1のチューブに連結した第2のチューブであって、第1のチューブに連結した流れ限定ポートを備え、眼の涙膜と接触して涙点の流れ限定ポートで終結する第2のチューブとを含む涙器系送達装置を提供することと、b)涙器系に薬剤送達装置を挿入することと、c)涙器系薬剤送達装置を使用してこの対象に上記組成物を投与することとを含む、処置方法に関する。1つの実施形態では、このリザーバーは自己圧縮特性を有する。1つの実施形態では、この装置は、リザーバーおよび第1のチューブを含む。1つの実施形態では、本装置は、リザーバーの圧縮を可能にする周辺物質内に含まれる非弾性リザーバーを含む。1つの実施形態では、ニチノールのワイヤ、バネ、またはケージを使用して、リザーバーの圧縮を提供してもよい。1つの実施形態では、リザーバーは実質的に弾性ではない。1つの実施形態では、リザーバーはマイクロ多孔性物質またはナノ多孔性物質から作製される。1つの実施形態では、リザーバー内の組成物は、リザーバー物質の孔を介して放出される。いくつかの実施形態では、本装置は、リザーバーの上に配置した保護スリーブを含む。1つの実施形態では、このスリーブは、鼻涙管または他の組織区画に侵入する漏出を防ぐ。1つの実施形態では、この装置は、使用者(医師または患者)による検出および位置の確認を可能にする蛍光物質または着色剤を含む。1つの実施形態では、リザーバーは眼の周辺の洞の中に埋め込まれる。1つの実施形態では、涙点部または遠位端は弾性リザーバーを薬物で充填することを考慮するが、弾性リザーバーは洞に位置し、マイクロ多孔性バルーンを介した薬物の送達を考慮する。1つの実施形態では、涙点部を、涙丘または結膜を介して埋め込み(ジョーンズ・チューブの埋め込みと類似)、マイクロ多孔性バルーンポンプにより、眼の周辺の洞または他の組織領域に直接薬剤を送達することを考慮する。別の実施形態では、本装置は、涙点に位置する穴を備えるチューブに送達する初期の実施形態に加えて、マイクロ多孔性リザーバーを介して薬物を送達する。1つの実施形態では、リザーバーは、最低1週間、1日あたり0.1マイクロリットル~30.0マイクロリットルの固定した比率で眼の表面に流体+/-活性成分を送達する。別の実施形態では、この送達は最低60日間成し遂げられる。
【0010】
定義
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語を以下に定義する。
【0011】
本明細書中で定義される用語は、本発明に関連する領域の当業者により一般に理解される意味を有する。「a」、「an」、および「the」などの用語は、単一の実体のみを指すよう意図するものではなく、特定の例を示すために使用し得る一般的な分類を含む。
本明細書中の術語は、本発明の特定の実施形態を記述するために使用するが、この使用は、特許請求の範囲に記述されるものを除き限定するものではない。
【0012】
本明細書に使用されるように、用語「患者」または「対象」は、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、またはそのトランスジェニック種などの生存する哺乳類の生物を指す。特定の実施形態では、患者または対象は霊長類である。ヒトの対象の非限定的な例は、成人、若年、乳児および胎児である。
【0013】
本明細書で使用される「予防」または「予防する」は、限定するものではないが、(1)ある疾患を発症するリスクのある、かつ/または発症しやすい可能性があるが、この疾患の病態または総体症状のいずれかまたはすべてをまだ経験または呈していない対象または患者の疾患の発症を阻害することであって、このような阻害は部分的または完全であってもよいこと、および/または(2)疾患を発症するリスクのある、かつ/または発症しやすい可能性があるがこの疾患の病態または総体症状のいずれかまたは全てをまだ経験または呈していない対象または患者の疾患の病態または総体症状の発症を遅らせることを含む。
【0014】
本明細書で示されるように、用語「薬物」または「治療剤」は、限定するものではないが、薬剤または医薬組成物を含む、疾患または疾病の症状を処置または予防または軽減する任意の化合物および/または分子を指す。薬物は、治療上有効量または薬学的有効量で送達される、または存在すると考えられる。
【0015】
本明細書で使用される「治療上有効量」または「薬学的有効量」は、疾患を処置するために対象または患者に投与する際に、この疾患の治療に影響を与えるか、または疾患もしくは疾病の1つ以上の症状を軽減する(たとえば疼痛を軽減する)ために十分な量を指す。
【0016】
本明細書で使用されるように、用語「処置する」および「処置している」は、対象(たとえば患者)を治癒し、かつ疾患を根絶する事例に限定されない。また、処置はむしろ、症状を単に低減してもよく、他の効果の内、疾患の進行を(ある程度)改善し、かつ/または遅らせてもよい。処置は、疾患または苦痛が治癒する例に限定されることを意図するものではない。症状が低減するために十分であるものとされる。
【0017】
本明細書で使用されるように、用語「医療装置」、「インプラント」、「装置」、「医療装置」、「医療インプラント」、「インプラント/装置」などは、組織の増強、適合、生理学的な機能の回復、疾患もしくは外傷により損傷した組織の修復もしくは回復、および/または正常な、損傷した、もしくは疾患のある臓器および組織に対する治療剤の送達などの、1つ以上の治療上または予防上の目的のために患者の身体の中に部分的または全体的に配置されるよう設計した任意の物体を指すために同義的に使用される。医療装置は、通常、生物学的に適合可能な合成物質(たとえば医療用ステンレス鉄、ニチノール、チタン、および他の物質;ポリウレタン、シリコーン、PLA、PLGA、PGA、PCLなどの外来ポリマー)から構成されるが、他の物質も医療インプラントの構成に使用してもよい。いずれかの特定の装置に本発明を限定するものではないが、本発明に特に関連している特定の医療装置およびインプラントは、ステント、涙点プラグ、クロフォードチューブ、カテーテル、涙用チューブ、眼または他のシャント、および薬剤送達システムを含む。いくつかの実施形態では、本装置は、標準的なイメージング装置で視覚化を可能にする造影剤または他の不透明な物質(たとえばX線視覚化を可能にするバリウム)を組み込む。
【0018】
本明細書に使用されるように、用語「薬物リザーバー」は、薬物または治療剤を含む任意の弾性構造を指す。好ましい実施形態では、リザーバーは、伸縮性のあるプラスチックまたはシリコーンで作製される。
【0019】
本明細書に使用されるように、用語「近位」は、開始する点に向かって置かれた位置(たとえば、医師と涙インプラント装置との間)を指す。
【0020】
本明細書に使用されるように、用語「遠位」は、開始する点から離れて置かれた位置(たとえば医師に対して涙インプラント装置の後ろ側)を指す。
【0021】
本明細書に使用されるように、用語「ハイドロゲル」は、たとえば、高吸水性ポリマー、ハイドロコロイド、および水吸水性の親水性ポリマーなどの吸収性物質または他の保持物質(たとえば吸水性物質)を指す。いくつかの例では、用語「ハイドロゲル」は、「乾燥または脱水した」状態の高吸水性ポリマー粒子を指し、より具体的には、水を全く含まないものから約5重量%未満の水など、粒子の重量より少ない量の水を含む物質を含む粒子を指す。いくつかの例では、用語「ハイドロゲル」は、ハイドロゲルが膨張可能ではない際の「乾燥または脱水した」状態の高吸水性ポリマーを指し、かつ、高吸水性ポリマーの水和したまたは膨張した状態も指し、より具体的には、水中での高吸水性ポリマーの重量の数倍など、少なくともその重量を吸水したハイドロゲルを指す。ハイドロゲルが流体を吸収する際、その寸法は増大し、かつその形状はたとえば涙小管の膨大部または涙小管の壁の少なくとも一部に対して偏るように変化できる。
【0022】
本明細書に使用されるように、用語「薬品」は、医療化合物または薬剤などの、医療処置での使用に適した任意の活性剤を指す。
【0023】
本明細書に使用されるように、用語「活性剤」は、生存する生物に対し影響を及ぼす任意の分子実体を指す。
【0024】
本明細書で使用されるように、用語「ポリマー」は、当業者に良く知られているように、1つ以上の反復単位を含む任意の有機高分子を指す。
【0025】
本明細書に使用されるように、用語「コポリマー」は、含まれる少なくとも2種類の反復単位がその中に存在する任意のポリマーを指す。コポリマーは、1つの種類の複数の反復単位を含む区域が存在し、第2の種類の複数の反復単位を含む区域に結合している、ブロックコポリマーとすることができる。
【0026】
本明細書に使用されるように、用語「親水性ポリマー」は、水により湿潤させることのできる任意のポリマー、すなわち、防水性の表面を有していないポリマーを指す。親水性ポリマーは少ない程度まで水を、たとえば約0~100重量%の水を吸収できるが、ハイドロゲル形成ポリマーが膨張するような容積に顕著に膨張することはない。
【0027】
本明細書に使用されるように、用語「埋め込まれる」は、宿主の内部に装置を完全にまたは部分的に配置することを指す。装置は、装置の一部が宿主に達するか、または宿主の外側に延びる場合に部分的に埋め込まれている。
【0028】
本明細書に使用されるように、用語「ステロイド」は、3つのシクロヘキサン環(右の図面で環A、B、およびCと表されている)および1つのシクロペンタン環(D環)の、4つの縮合環の形態をとる共に結合した20の炭素元素から構成されるコアを含む任意の有機化合物を指す。
【化1】
ステロイドは、4つの環のコアに付着した官能基および環の酸化状態により異なる。ステロイドの例として、限定するものではないが、食事脂肪コレステロール、性ホルモンのエラストジオールおよびテストステロン、ならびに抗炎症薬剤のデキサメタゾンが挙げられる。
【0029】
本明細書で使用されるように、用語「非ステロイド性抗炎症剤」、「非ステロイド性抗炎症薬剤」は、通常NSAIDまたはNAIDと略されているが、非ステロイド性抗炎症剤/鎮痛剤(NSAIA)または非ステロイド性抗炎症薬物(NSAIM)とも呼ばれ、鎮痛作用および解熱(熱を低下させる)作用を伴い、高い用量では抗炎症性作用を有する任意の薬剤を指す。
【0030】
本明細書で使用されるように、用語「抗生剤」は、細菌、真菌、または他の微生物を殺傷するか、またはこの増殖を阻害する任意の化合物または物質を指す。
【0031】
本明細書で使用されるように、用語「抗炎症剤」は、炎症を低減する任意の物質または処置を指す。
【0032】
本明細書で使用されるように、用語「免疫抑制剤」は、免疫系の活性を阻害または抑えるすべての薬剤を指す。
【0033】
本明細書で使用されるように、用語「抗腫瘍剤」は、腫瘍細胞の発達、成熟、もしくは拡散を予防または阻害するすべての薬剤を指す。
【0034】
本明細書で使用されるように、用語「プロスタグランジン類似体」は、プロスタグランジン受容体に結合するすべての分子を指す。
【0035】
本明細書に使用されるように、用語「酸化窒素(nitric oxide)」または「一酸化窒素(nitrogen monoxide)」は、化学式NOを伴う任意の2成分の2原子分子を指す。
【0036】
本明細書で使用されるように、用語「エンドセリン」は、様々な細胞および組織で産生される21のアミノ酸残基からなる任意のタンパク質を指し、血管運動活性、細胞増殖、ホルモンの産生を調節する役割を果たし、かつ血管性疾患の発達に関連している。たとえば、エンドセリンの生物学的活性として、限定するものではないが、血管の狭窄、血圧の上昇、眼圧の低下、および神経細胞組織の変性の防止が挙げられる。
【0037】
本明細書で使用されるように、用語「副腎皮質ステロイド」は、天然に産生されるステロイドホルモンまたは合成ステロイドホルモン類似体のいずれかを含む化学物質の分類を指す。副腎皮質ステロイドは、限定するものではないが、ストレス応答、免疫応答、ならびに炎症、炭水化物の代謝、タンパク質の異化作用、血液の電解質レベル、および行動の調節を含む、幅広い範囲の生理学的工程に関与する。
【0038】
本明細書で使用されるように、用語「抗体ベースの免疫抑制剤」は、免疫抑制活性を有する任意の抗体(たとえばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fab抗体など)を指す。
【0039】
本明細書で使用されるように、用語「薬剤の放出」は、インプラント装置から発せられる薬剤またはその小成分のいずれかの存在を指す。
【0040】
本明細書で使用されるように、用語「類似体(analogueまたはanalog)は、親化合物と構造的に類似しているが、わずかに組成が異なる(たとえば1つの原子または官能基が異なるか、追加されているか、除去されている)任意の化学化合物を指す。
類似体は、元の化合物と異なる化学的または物理的特性を有してもよく、または有していなくてもよく、かつ、改善した生物学的活性および/または化学的活性を有していてもよく、または有していなくてもよい。たとえば、類似体は、より親水性であってもよく、または親化合物と比較して変化した反応性を有していてもよい。類似体は、親化合物の化学的活性および/または生物的活性を模倣してもよく(すなわち類似または同一の活性を有していてもよく)、または場合によって、増大したもしくは減少した活性を有していてもよい。類似体は、元の化合物の天然にまたは非天然に発生する(たとえば組み換え)変異体であってもよい。類似体の一例は、ムテイン(すなわち、少なくとも1つのアミノ酸が削除、追加、または別のアミノ酸と置換されているタンパク質類似体)である。他の種類の類似体は、異性体(エナンチオマー、ジアステレオマーなど)および化合物の他の種のキラル変異体、ならびに構造異性体である。類似体は、直鎖化合物の分枝または環状変異体であってもよい。例えば、直鎖化合物は、特定の望ましい特性(たとえば、親水性または生物学的利用率の改善)を加えるために、分枝または置換されている類似体を有していてもよい。
【0041】
本明細書で使用されるように、用語「誘導体」は、親化合物と構造的に類似しており、かつ親化合物から(実際にまたは理論的に)誘導可能である化学化合物の化学的または生物学的に改変した任意のバージョンを指す。「誘導体」は、親化合物が「誘導体」を生成する開始物質であってもよく、一方でこの親化合物は「類似体」を生成するための開始物質として必ずしも使用されない点で「類似体」と異なる。類似体は、親化合物と異なる化学的または物理的特性を有し得る。たとえば、誘導体は、より親水性であってもよく、親化合物と比較して変化した反応性を有してもよい。誘導体化(すなわち改変)は、分子内の1つ以上の部位の置換(たとえば官能基の変化)を含んでもよい。たとえば、水素は、フッ素もしくは塩素などのハロゲンと置換してもよく、またはヒドロキシル基(‐OH)は、カルボン酸部(‐COOH)と置換してもよい。用語「誘導体」はまた、親化合物の抱合体およびプロドラッグ(すなわち、生理学的条件下で元の化合物に変換できる化学的に改変された誘導体)をも含む。たとえば、プロドラッグは、活性剤の不活性形態であってもよい。生理学的条件下で、プロドラッグは、化合物の活性形態へと変換されてもよい。プロドラッグは、たとえば、アシル基(アシルプロドラッグ)、またはカルバミン酸基(カルバミン酸プロドラッグ)により窒素原子上の1つまたは2つの水素原子を置換することにより形成されてもよい。プロドラッグに関連するより詳細な情報は、たとえばFleisherらのAdvanced Drug Delivery Reviews 19(1996)115[1]に見出されており、参照として本明細書に援用される。用語「誘導体」は、たとえば、親化合物の水和物または付加物(たとえばアルコールを備える付加物)、活性代謝物、および塩といった、すべての溶媒和物を記述するためにも使用される。調製し得る塩の種類は、化合物内の部位の性質に依存する。たとえばカルボン酸基といった酸性基は、たとえば、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩(たとえばナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩およびカルシウム塩、ならびに生理学的に許容可能な4基のアンモニウムイオンを備えた塩、ならびに、アンモニアおよびたとえば、トリエチルアミン、エタノールアミンまたはトリス-(2‐ヒドロキシエチル)アミンなどの生理学的に許容可能な有機アミンを備える酸付加塩)を形成できる。塩基性基は、たとえば、塩酸、硫酸もしくはリン酸などの無機酸を備えるか、または酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、メタンスルホン酸もしくはp‐トルエンスルホン酸などの有機性のカルボン酸およびスルホン酸を備える酸付加塩を形成できる。たとえば、塩基性窒素原子に加えてカルボキシル基など、塩基性基および酸性基を同時に含む化合物は、双性イオンとして存在できる。塩は、たとえば溶媒もしくは希釈剤中に有機酸もしくは塩基と化合物を組み合わせることによるか、または陽イオン交換もしくは陰イオン交換により他の塩から、当業者に知られている慣例的な方法により入手できる。
【0042】
本明細書で使用されるように、用語「阻害剤」または「アンタゴニスト」は、生物学的工程が発生するのを防ぎ、かつ/または生物学的な工程の発生の速度を遅くし、かつ/またはこの発生の度合いを遅くする任意の薬剤を指す。この工程は瘢痕化などの一般的なものであってもよく、またはたとえば、サイトカインの放出をもたらす分子工程などの特定の生物学的作用を指してもよい。
【0043】
本明細書で使用されるように、用語「アゴニスト」は、生物学的工程の工程または生物学的な工程の速度もしくは度合いを刺激する任意の薬剤を指す。この工程は、瘢痕化などの一般的な工程であってもよく、またはたとえば、サイトカインの放出をもたらす分子工程などの特定の生物学的作用を指してもよい。
【0044】
本明細書で使用されるように、用語「抗微小管剤」はたとえば、重合化の防止または安定化を介して、微小管の機能を欠損させる任意のタンパク質、ペプチド、化学物質、または他の分子を含むと理解されるべきである。微小管の重合化を安定させる化合物は、本明細書中で「微小管安定化剤」と呼ばれる。幅広い範囲の方法、たとえばSmithら(Cancer Lett. 79(2):213-219, 1994)[2]およびMooberryら(Cancer Lett. 96(2):261-266, 1995)[3]により記載されるアッセイを含む方法を使用して、特定の化合物の抗微小管活性を決定してもよい。両文献は参照により本明細書に援用される。
【0045】
本明細書に列挙される濃度の範囲、パーセンテージの範囲、または比率の範囲は、他に記載のない限り、ある整数の10分の1および100分の1などの範囲および割合の中のいずれかの整数の濃度、パーセンテージ、または比率を含むことが理解される。さらに、ポリマーのサブユニット、寸法または厚さなどの任意の物理的特徴に関連する本明細書に引用されるいずれかの数の範囲は、他に記載のない限り、列挙される範囲内のいずれかの整数を含むことが理解される。上記および本明細書中の他の場所で使用される用語「a」および「an」は、「1つ以上の」列挙した構成要素を指すと理解すべきである。たとえば、「a」ポリマーは、1つのポリマー、あるいは2つ以上のポリマーを含む混合物の両方を指す。本明細書で使用されるように、用語「約」は、±15%を指す。
【0046】
本明細書で使用されるように、用語「生体材料」は、本来合成または天然である任意の物質(薬剤以外)またはその組み合わせを指し、身体の任意の組織、臓器、または機能を処置、増大、または置換するシステムの全体または一部として任意の期間使用できる。
【0047】
本明細書で使用されるように、用語「生体適合性」は、特定の適用において適切な宿主応答を伴って実施するための物質の能力を指す。
【0048】
本明細書で使用されるように、用語「弾性限界」または「降伏強度」は、物質が可塑的に変形し始める応力を指す。降伏点の前に物質は弾性的に変形し、適用した応力が除去されると元の形状に戻る。降伏点を通過すると、変形の一部が永続的かつ不可逆的になる。
【0049】
本明細書で使用されるように、用語「弾性」は、完全に回復可能な状態で物質に力が適用される際に非常に大きな変形能を有する物質を指し、これらの力が除去されると最初の形状および寸法に戻る物体を意味する。このような特徴はまた、ゴム弾性とも呼ばれる。
このような「弾性」物質の分子上の必要条件では、物質はポリマー鎖からなるものでなければならず、応力下で配座および伸長を変化させる必要がある。ポリマー鎖は可撓性が高くなければならない。配座変化に達する必要がある(w/ガラス、結晶、または硬い物質ではない)。ポリマー鎖は、ネットワーク構造で連結されてなければならない。不可逆的な鎖の滑り(永久ひずみ)を回避することが必要である。100のモノマーのうち1つが、2つの異なる鎖に連結しなければならない。連結(ブロックコポリマー中の共有結合、結晶子、ガラス状ドメイン)。弾性ポリマーの例として、ゴム、ラテックス、合成ゴム、ネオプレン、シリコーンなどが挙げられる。
【0050】
本明細書で使用されるように、用語「非弾性」は、力が適用される際に変形能が低いまたは変形が全くない物質を指す。ひずみ限界を超えると、非弾性物質は、不可逆的な変形を経験する。ポリマー鎖は可撓性がなく、かつ配座変化に容易に達しない。これらは、不可逆的な鎖の滑り(永久ひずみ)を経験し得る。この例として、ガラス、硬質プラスチック、非晶質ガラス状ポリマーなどが挙げられる。
【0051】
本明細書に使用されるように、用語「半弾性」は、完全に回復可能な状態で物質に力が適用される際に、中程度の変形能を有する物質を指し、力が除去されると最初の形状および寸法に戻る物体を意味する。多数の半弾性ポリマーが存在する。半結晶性ポリマーの例は、直鎖状ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはイソタクチックポリプロピレン(PP)である。
【0052】
本明細書に使用されるように、用語「自己圧縮」は、物質がリザーバーに添加されてひずむまで詰められた場合に、リザーバー内部の物質を圧縮する弾性力をもたらすことを指す。この自己圧縮は、リザーバーから流れ限定ポートまたは強制される拡散を介してリザーバー内部での物質の分布を開始する力を提供する。
【0053】
本明細書に使用されるように、用語「ステント」は、疾患が誘導される、局在化した流れの狭窄を防止または妨害するために、身体の天然の経路/導管の中に挿入される任意の人工的な「チューブ」を指す。またこの用語は、このような天然の導管の開口を一時的に保持して外科手術用のアクセスを可能にするために使用するチューブも指す。
【0054】
本明細書に使用されるように、用語「シャント」は、2つの領域の間の流体の移動を可能にする穴または通路を作製するために本体内に挿入される任意の人工的なチューブを指す。このチューブは、一時的または永続的に埋め込まれてよい。
【0055】
本明細書に使用されるように、用語「フォーリーカテーテル」は、多くの場合尿道を介しておよび膀胱の中へ通過する可撓性のチューブを指す。このチューブは、チューブの全長を流下する2つの別々のチャネルまたは管腔を有する。1つの管腔は両端が開口しており、収集袋に尿を排出できる。他の管腔は、外側の端に弁を有し、かつ先端がバルーンと連結している。このバルーンは膀胱の中にある時に、滑り出ないようにするため、無菌水、または他の流体/気体で膨張する。
【0056】
本明細書で使用されるように、用語「カテーテル」は、身体の腔、管、または血管に挿入できる任意のチューブを指す。カテーテルはしたがって、流体もしくは気体の排出、投与、または外科的器具によるアクセスを可能にする。カテーテルの挿入工程はカテーテル法である。多くの使用において、カテーテルは薄く、可撓性のチューブ(「軟質」カテーテル)であるが、場合によっては、より大きく硬い(「硬質」)カテーテルを使用する。
体内に一時的または永続的に残されるカテーテルは、留置カテーテルと呼ばれる場合がある。永続的に挿入されるカテーテルは、パームキャスと呼ばれる場合がある。
【0057】
本明細書で使用されるように、「微小電気機械システム」、または「MEMS」は、非常に小さな装置の技術を指す。MEMは、分子ナノテクノロジーまたは分子電子工学の仮想上の画像(hypothetical vision)と別のものである。MEMSは、1~100マイクロメートルの寸法(すなわち0.01~0.1mm)の部品から作製され、MEMS装置は、一般的に、20マイクロメートル(20メートルの100万分の1)~ミリメートル(すなわち0.02~1.0mm)のサイズ範囲である。これらは、通常、データを処理する中央装置(マイクロプロセッサ)およびマイクロセンサなどの周辺と相互作用するいくつかの部品からなる。
【0058】
本明細書に使用されるように、用語「PLGAまたはポリ(乳酸-コ‐グリコール酸)」は、コポリマーを指し、その生体分解性および生体適合性のため、アメリカ食品医薬局(FDA)により治療装置として認可されている。PLGAは、緩慢な薬物放出のため研究されている[4]。
【0059】
本明細書で使用されるように、用語「ポリエチレングリコール」(略してPEG)は、任意のポリエーテル化合物を指す。たとえばPEGは、分子量に応じてポリエチレンオキシド(PEO)またはポリオキシエチレン(POE)として商業的に入手可能である(Carbowax(登録商標))。
【0060】
添付する図面は、本明細書に組み込まれるものであり、本明細書の一部を形成し、本発明のいくつかの実施形態を記載と共に例示し、本発明の原則を説明する。図面は、本発明の好ましい実施形態を例示するのみを目的とし、本発明を限定するように考慮されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】下位涙点に挿入される現在使用されている涙点プラグを示す。いくつかの涙点プラグは、薬物放出プラットフォームに使用されるが、非常に限定されたリザーバーを含み、かつ、治療剤を分散させるために涙膜と涙の分布との自然な相互作用に依存する。
【
図2】現在の本発明の設計の例を示す。このモデルは、膨張型および圧縮型のリザーバーの両方を示す。この装置は、涙器系の涙点を出るチューブ部に取り付けられた流れ限定ポート(
図3A~Fに示す)を介する治療剤の徐放を提供する。
【
図3】涙器系、涙器系の一部の内に適切に挿入した膨張した装置、および膨張した装置自体の例を示す。
図3Aは、膨張した装置自体を示す。
図3Bは、装置が相互作用する涙器系の主要部分を示す。
図3Cは、各涙管を介して各涙点(それぞれ上位涙点および下位涙点、上涙点および下涙点)へ2組のチューブを延ばす、装置の実施形態を示す。本装置は、1組または2組のチューブを有してもよい。
図3Dは2組のチューブを備えるが、第3のフラッシング/再充填チューブは備えない装置の実施形態を示す。
図3Eは、好ましい実施形態である、流れ限定ポーチ5で終結する1組のチューブを備える装置であって、このポートが、上(上位)涙点で終結する、装置を示す。
図3Fは、流れ限定ポート5で終結する1組のチューブを備える装置であって、このポートが、下(下位)涙点で終結する、装置を示す。
【
図4】涙器系の図を示す。ここで、上涙管および下涙管は、鼻涙管に収束する。本装置は、涙嚢に位置するリザーバーから延び、かつ流れ限定ポート5を用いて涙点(puncta lacrimaliaまたはpunctum)で終結する上涙管または下涙管へとチューブを介してリザーバーから延びると想定されている。
【
図8】本装置の1実施形態を示す。
図8Aは、洞などの組織の空間に直接薬剤を送達できるマイクロ多孔性バルーン1からなる装置を示す。これは、必要に応じてマイクロ多孔性バルーン1を再充填するために、単純な充填ポート7として扱うことのできる遠位膜7を含み得るまたは含まない流れ限定ポート/出口ポート5(涙点または結膜/涙丘、または周辺組織に位置する)を備えるチューブ(3、2)を含む。次いで、バルーン1が、標的化した組織に薬物/流体を滲出する。
図8Bは、ニチノールケージ13または他の構造的な特徴が、マイクロ多孔性バルーン/リザーバー1に圧力を与えてもよいことを示す。
【
図9】マイクロ多孔性バルーン/弾性リザーバー1および遠位膜7が存在し、第1のチューブ2が生体内崩壊部6および内部プランジャー8を含み、かつ出口ポート9が内部プランジャー8、微小電気機械システムバネ圧レギュレータ12に連結した内部バネ10と連結し、かつ生体内崩壊性物質6が内部組成物カラムに沿うことのできる内部孔を経時的に開け、活性剤組成物のパルス投与を可能にする、装置を示す。
【
図10】別個のニチノール装置13が、ニチノールケージ13が直線状のワイヤを含むように充填する前にリザーバー1を包囲するよう構築される装置の1実施形態を示す。一旦充填されると、リザーバー1はニチノールを外側に押出し、次いでニチノールは非弾性物質または半弾性物質に作用し、上部(出口ポート9)で流れ限定膜7に向かって流体をゆっくりと流体を外側に押し出す。
【符号の説明】
【0062】
1.弾性リザーバー
2.第1のチューブ
3.第2のチューブ
4.第3のチューブ
5.流れを限定する能力を含むフェースプレート
6.生体内崩壊部
7.遠位膜
8.内部プランジャー
9.出口ポート
10.内部バネ
11.内部プランジャー
12.微小電気機械システムバネ圧レギュレータ
13.ニチノールケージ
【発明を実施するための形態】
【0063】
眼の感染症、眼の炎症、緑内障および他の眼疾患または障害を処置するために、多くの場合薬剤を眼に投与する必要がある。従来の薬剤送達方法は、眼の表面に局所的に目薬を使用することによるものである。局所的な目薬は有効ではあるが、不十分である場合がある。1例として、目薬が眼に滴下される際に、多くの場合結膜嚢(すなわち眼および瞼の間のポケット)を過剰に満たして、眼瞼縁からの流出および頬への漏出のため目薬の実質的な部分が失われることになる。さらに、眼の表面に残る目薬の大部分が涙小管の中または涙小管を介して洗い出されることにより、眼を処置できる前に薬剤の濃度が希釈される。さらに、局所的に投与した薬剤は多くの場合、投与後約2時間が眼への作用のピークであり、この後望ましい薬剤の治療上の利益を維持するために薬剤をさらに投与しなければならないが、頻繁には投与されていない。
【0064】
眼の管理がさらに困難なことに、多くの場合患者は処方されたように目薬を使用しない。この不十分なコンプライアンスは、たとえば、目薬により引き起こされかつ患者が経験した最初の針痛または灼熱感によるものである可能性がある。患者の一部は眼を保護するための正常反射により、個人の眼に目薬を滴下することが困難である場合がある。したがって、1つ以上の液滴は眼に落ちない場合がある。老齢の患者は、関節炎、不安定さ、および視力の低下により目薬の滴下にさらなる問題を有する場合がある。小児科および精神科の集合でもまた困難である。
【0065】
ドライアイの症状は、眼から涙小管の中へのおよび涙小管を介する涙の流れを阻害することにより処置されている。このことは、涙点の開口部を縫い付けて閉じることによるか、または涙点の開口部を密閉するために電気またはレーザ焼灼を使用することにより毛細管を閉鎖することを含んだ。このような手法は、ドライアイを処置するために涙の流れを阻害する望ましい結果を提供できるが、不幸なことに、それらは再建外科手術なしでは可逆的ではない。
【0066】
眼の管理と異なる分野では、呼吸関連疾患または障害(たとえばアレルギー)の制御が多くの場合、薬物の反復的な手動での消化または他の摂取を必要とし、患者のコンプライアンスの欠損または局在化しない薬剤送達により不十分となる場合がある。
【0067】
治療装置
眼および涙器系関連の症状を処置するために設計された様々な治療装置が存在する。これらの中の基本的なものは涙器の涙点プラグである。いくつかの装置が存在し、有益な特徴を有しているが、本発明の利点を有するものではない。
【0068】
参照として、Sim, S.らの“Composite Lacrimal Insert and Related Methods,”(2009年4月29日に出願の米国特許出願公開公報第20100034870号、出願番号第12/432,553号)[5]は、QLTにより保有されている取り外し可能な薬剤放出涙器インプラントを開示している。このプラグは対象の涙点に埋め込まれる。このような涙点プラグは、薬剤コアの溶解に対する涙の動きに応じて涙膜への送達で浸食する薬剤コアに含まれている。この薬剤コアは定着性(sedentary)であり、かつ涙は、薬剤を分布させるために、リザーバーの中におよび外に流れることが必要とされる。この投与は、本発明の弾性リザーバーシステムおよび涙膜への流体の能動的な「押し出し」を教示するものではない。
【0069】
別の参照として、1993年3月1日に出願の米国特許第5,410,016号のHubbell, J. A.らによる”Photopolymerizable Biodegradable Hydrogels as Tissue Contacting Materials and Controlled-Release Carriers,”は、Ocular Therapeutixにより保有されている涙点プラグ送達にも使用される生体内分解性PEGベースシステムを開示する。これは、本発明の弾性リザーバーを備える装置を記述するものではない。
【0070】
別の参照として、2008年1月30日に出願の米国特許出願公開公報第20080181930号のRodstrom ,T. R.らの”Punctal Plugs and Methods of Delivering Therapeutic Agents,”[7]は、外面の一部をコーティングするパリレンポリマーを備える、シリコーンおよび眼の薬剤のマトリックスを備える別の涙点プラグ薬剤送達システムを開示する。薬剤送達方法は、眼の涙膜への薬剤の溶解を受動的に利用する。しかしながら、プラグおよび延在部は、本発明のリザーバーを欠いている。
【0071】
別の参照として、2007年6月7日に出願の米国特許出願公開公報第20070298075号のBorgia, M. Jらの”Punctal Plugs for the Delivery of Active Agents,”[8]は、徐放薬剤送達を伴う涙点プラグの別の例を開示する。この参照は、本発明のリザーバーを記述するものではない。
【0072】
別の参照として、2011年3月8日に出願の米国特許出願公開公報第20110251568号のBeeley,N.R.F.およびColdren,B.Aの”Punctal Plugs for Controlled Release of Therapeutic Agents,”[9]は、数種類の涙点プラグを開示しているが、1例では、プラグは、わずかに透過性で涙管へ延びる伸長型「リザーバー」を含む。この参照は、本発明の弾性リザーバーまたは涙嚢に位置するリザーバーを記述するものではない。
【0073】
別の参照として、2002年7月25日に出願の国際特許公開公報第WO/2002/056863号およびPCT/US2001/048804号のM.J.らの”Sustained Release Drug Delivery Devices,”[10]は、薬物を分布させるための別のプラグ装置を開示する。この参照は、本発明の弾性リザーバーまたは涙嚢に位置するリザーバーを記述するものではない。
【0074】
別の参照として、2010年2月23日に出願の米国特許出願公開公報第20100274204号のRapacki,A.R.らの”Lacrimal Implants and Related Methods,”[11]は、伸長型バージョンの涙点プラグであり、挿入される際に涙管へ延びる追加的な取付けアームを備える別の涙器薬剤送達装置を開示する。この参照は、本装置を配置するための構造部としての「バルーン」の使用を記述しているが、薬剤含有リザーバーとしての「バルーン」の使用を記述するものではない。この参照は、本発明の弾性リザーバーまたは涙嚢に位置するリザーバーを記述するものではない。
【0075】
別の参照として、2000年4月7日に出願の欧州特許第1891942B1号および第EP1178779A1号のCohan,B.E.らの”Opthalmic Insert and Method for Sustained Release of Medication to the Eye,”[12]は、涙管の閉塞の処置用の涙管(涙排出経路)の挿管装置を開示する。さらに、この装置の内部は、装置の特定の幾何学的な形状に基づき制御される方法で装置の孔を介して放出され得る薬物のリザーバーとして作用し得る。この制御される比率は、涙膜による薬物の涙の溶解およびリザーバーの浸透にさらに基づく。この参照は、本発明の弾性リザーバーおよび涙嚢に位置するリザーバーを記述するものではない。
【0076】
別の参照として、Murube,J.らの(2003)Subcutaneous Abdominal Artificial Tears Pump-Reservoir for Severe Dry Eyes, Orbit 22(1), 29[13]は、重篤なドライアイを伴う患者の目の表面に人工涙液を提供するための、腹部の皮下組織の下に位置する挿入型ポンプリザーバーユニットの研究を開示する。このシステムはリザーバーを提供する一方で、システムは電気ポンプを使用し、かつこのリザーバーの位置は涙嚢から離れている。この参照は、本発明の弾性リザーバーまたは涙嚢に位置するリザーバーを記述するものではない。
【0077】
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明は、涙器系薬剤送達装置として設計された埋め込み型医療装置を含む。これは、遠位端が上涙点または下涙点に隣接する涙膜に近接しかつ対向端が、薬剤または他の治療溶液などの活性成分を充填できる弾性リザーバー(涙嚢に配置される)を形成する可撓性物質から構成されるように、埋め込むことのできる、可撓性弾性リザーバーに関連した涙器系装置である。一旦充填されると、活性成分は弾性リザーバーから遠位開口部へと「押し出され」、涙膜に近接する。次いで薬剤が涙膜へ入り、眼の組織により吸収されて多様な眼疾患を処置する。本装置は、涙管システムの終結部を介して鼻腔に接続してもよく、または接続しなくてもよい。本装置のバルーンからの薬剤の放出は、非膨張状態に戻ろうとする弾性リザーバーの作用に完全に依存している。活性ポンプは必要とされていない。
本装置の最終的な目標は、定期的かつ着実な方法で眼の表面に薬剤を長期間送達することである。涙点プラグまたは涙器プラグを使用して涙膜に薬剤を送達する他の装置は、涙膜と接触した後に分解する薬剤コアによりこのような送達を行っている。
【0078】
本発明を限定するものではないが、本装置の挿入の1つの方法として、クロフォードチューブの導入と類似した挿入方法における涙点側部上で崩壊する装置の導入がある。この装置の崩壊型リザーバーは、涙点および細管を介して適合すると考えられており、この装置のリザーバーは、治療剤を充填する際に拡大できる涙嚢に存在する。1つの実施形態では、潤滑剤がシステムと共に用いられてより滑らかな非外傷性の挿入を考慮する。この実施形態では、本装置はリザーバーからのさらなるチューブを含み、フラッシングおよび再充填用の鼻涙管からリザーバーへのアクセスを可能にしている。1つの実施形態では、さらなるチューブが、限定するものではないが、チューブの小さなチップ、グローブロックシステム(groove lock system)のグローブ、キスロック/がまぐちの閉鎖システム、またはチューブの端の完全な閉鎖もしくは圧着を含む様々な手段を介してアクセスできる。本装置を限定するものではないが、本装置は、標準的な解剖学上の寸法のバリエーションに一致すると考えられる。1つの実施形態では、本装置は、様々な範囲の寸法および年齢の対象に使用できる。1つの実施形態では、本装置は、限定するものではないが、鼻涙器系に外傷を伴う対象、慢性的な鼻の炎症、または涙嚢炎を伴う対象を含む、特定の対象に適していなくてもよい。涙嚢炎は、鼻涙嚢の炎症であり、鼻涙管の閉塞または感染症により頻繁に引き起こされる。1つの実施形態では、本装置は、少なくとも2ヶ月間または60日超の間機能し使用される。ドライアイまたは緑内障を処置する特定の場合では、本装置の治療は少なくとも2か月間続く。白内障などの病態の外科手術後の処置の場合では、この治療は2~6週間、あるいはそれより長い範囲の処置を含む。
【0079】
本装置の設計単独の1実施形態を
図2に示す。涙器系を埋め込んだ装置の1実施形態を
図3に示す。
図2および
図3は、充填、フラッシング、および再充填などを可能にする充填ポートおよび出口ポートを有する弾性リザーバー1を示す。これは、伸縮性のプラスチックまたはシリコーンで作製できる。出口ポートに連結した第1のチューブ2および第1のチューブ2に連結した流れ限定ポート5を含む第2のチューブ3を介して動かす前に、リザーバー1および充填ポートに連結した第3のチューブ4の両方に治療剤が存在する。
1つの実施形態では、流れ限定ポート5は、流れを限定する特質を含むフェースプレートである。1つの実施形態では、第1のチューブおよび第2のチューブは、流れ限定ポート5で終結するリザーバー1の出口ポートに連結した1つの連続したチューブを含む。1つの実施形態では、流れ限定ポート5は、遠位膜7を含む。1つの実施形態では、
図3に例示されるように、本装置は、流れ限定ポート5で終結するリザーバー1の出口ポートに連結する2組めの第1のチューブ2および第2のチューブ3を含む。第3のチューブ4は、鼻涙管を介して鼻腔と連通して弾性リザーバー1のフラッシングまたは再充填を可能にする。第3のチューブ4の終結端は、防水性であるように留める、閉鎖する、または挟むことができる。第2のチューブ3は、涙点および涙膜の外に開口している。バルブ機構または小口径開口部は、遠位フェースプレートから涙膜への流体の流れを制御する。これは、流れ限定ポート5と呼ばれる。流量は、弾性リザーバーの特徴および/またはフェースプレートでの遠位流れ限定機構を改変することにより変更できる。第1のチューブ2は装置の毛細管部(涙管に挿入される)であり弾性リザーバー1を第2のチューブ3および涙膜と連結する管腔を含む。
【0080】
1つの実施形態では、本装置のバルーン部1は、固定のためのみであり、送達用ではないように設計されてもよい(フォーリーカテーテルの保持特徴のように)。1つの実施形態では、ニチノールワイヤ(または他の物質の)バネ10を、定圧のゴム状バルーン1に依存することなく一定した流体の送達を考慮するよう流体を放出するように遠位開口部に向かって内部プランジャー8を引き抜く装置の涙部の内部に使用する。1つの実施形態では、本装置は、生体内崩壊性または生体内分解性の物質6を含む。1つの実施形態では、生体内崩壊性物質または生体内分解性物質6は、内部流体カラムに沿うことが可能な内部孔を経時的に開け、パルス投与を可能にする。1つの実施形態では、本装置は、微小電気機械システム(MEMES)バネ圧レギュレータ12をさらに含む。1つの実施形態では、ePTFE膜7を使用して本装置の遠位端からの流れを調節してもよい。1つの実施形態では、このような遠位膜7は、この遠位的なフェースプレートから涙膜までの流体の流れを制御する。これを、流れ限定ポート5と呼ぶ。たとえば、ePTFEは、0.0003インチ+/-0.0001インチ(0.00762mm+/-0.00254mm)の厚さおよび80%+/-10%の多孔性および、0.2~0.5ミクロンの流れ孔を備える。1つの実施形態では、ePTFE物質の1つ以上の層を流れの調節に使用できる。
図5は、本装置の斜視図を示す。
図6は、本装置の斜視図を示す。
図7は、チューブの遠位端のクローズアップを示す。
図8AおよびBは、本装置の1実施形態を示す。
図8Aは、洞などの組織の空間に薬剤を直接送達できるマイクロ多孔性バルーン1からなる装置を示す。これは、必要に応じてマイクロ多孔性バルーン1を再充填するための、単純な充填ポート7として使用できる遠位膜7を含み得る、または含まなくても良い流れ限定ポート/出口ポート5(涙点、または結膜/涙丘、または周辺組織に位置する)を備えるチューブ(2、3)を含む。次いで、バルーン1が、標的化した組織に薬物/流体を滲出する。
図8Bは、ニチノールケージ13または他の構造的な特徴が、マイクロ多孔性バルーン/リザーバー1上に圧力を与え得ることを示す。薬剤/組成物が遠位膜7または流れ限定ポート5を介してのみ送達される代わりに、この選択肢は、遠位部を介した送達を用いるか、または用いることなく、リザーバー1から周辺組織に薬剤を直接送達できる可能性を提供する。慢性副鼻腔炎など、この手法が有益である特定の疾患が存在する。
図9は、マイクロ多孔性バルーン/弾性リザーバー1および遠位膜7が存在し、第1のチューブ2が生体内崩壊部6および内部プランジャー8を含み、かつ出口ポート9が内部プランジャー8、微小電気機械システムバネ圧レギュレータ12に連結した内部バネ10と連結し、かつ生体内崩壊性物質が内部組成物カラムに沿うことのできる内部孔を経時的に開け、活性剤組成物のパルス投与を可能にする、装置を示す。
図10は、別個のニチノール装置13が、ニチノールケージ13が直線状のワイヤを含むように充填する前に、リザーバー1の周辺に構築される装置の1実施形態を示す。一旦充填されると、リザーバー1はニチノールを外側に押し出し、次いでニチノールは非弾性または半弾性の物質に作用して上部(出口ポート)の流れ限定膜7に向かって流体をゆっくりと押し出す。1つの実施形態では、弾性リザーバー1は、最低1週間、1日当たり0.1マイクロリットル~30.0マイクロリットルの固定した比率で流体+/-活性成分を眼の表面に送達する。別の実施形態では、この送達は、最低60日間成し遂げられる。
【0081】
1つの実施形態では、本装置は、リザーバー1および第1のチューブを含む。1つの実施形態では、本装置は、リザーバー1の圧縮を可能にする周辺物質内に含まれる非弾性リザーバー1を含む。1つの実施形態では、ニチノールのワイヤ、バネまたはケージ13を使用してリザーバー1の圧縮を提供してもよい。1つの実施形態では、リザーバー1は、実質的に非弾性である。1つの実施形態では、リザーバー1は、マイクロ多孔性またはナノ多孔性の物質から作製される。1つの実施形態では、リザーバー1の中の組成物が、リザーバー物質の孔を介して放出される。いくつかの実施形態では、本装置は、リザーバーの上方に配置した保護スリーブを含む。1つの実施形態ではこのスリーブは、鼻涙管または他の組織区画に侵入する漏出を防ぐ。1つの実施形態では、本装置は、使用者(医師または患者)による検出および位置の確認を可能にするために蛍光物質または着色剤を含む。1つの実施形態では、リザーバーは、眼の周辺の洞に埋め込まれる。1つの実施形態では、涙点部または遠位端は、薬物での弾性リザーバーの充填を考慮するが、弾性リザーバー1は洞に位置しマイクロ多孔性バルーンを介した薬剤の送達を考慮する。1つの実施形態では、涙点部は、涙丘または結膜を介して埋め込まれ(ジョーンズ・チューブの挿入と類似)、かつマイクロ多孔性バルーンポンプが眼の周辺の洞または他の組織の領域に薬剤を直接送達することを考慮する。別の実施形態では、本装置は、涙点に位置する穴を備えるチューブに送達する最初の実施形態に加えて、マイクロ多孔性リザーバーを介して薬物を送達する。
【0082】
上述の通り、本発明は、涙器、眼、洞および/または眼窩周囲の組織系のインプラント装置に関連する組成物、方法および装置であって、単純かつ簡便な設計にて、現在入手可能なものよりも多くの量で治療剤を着実に送達する能力を顕著に増大させる。1つの態様では、本発明は、医薬療法、継続する医薬療法、および/または美容外科手術もしくは再建外科手術に使用するための、様々な治療剤ならびに涙器、眼、洞および/または眼窩周囲の組織系のインプラントの組み合わせを提供する。1つの態様では、本発明は、医薬療法、継続する医薬療法、および/または美容外科手術もしくは再建外科手術に使用するための、涙器、眼、洞および/または眼窩周囲の組織系の治療剤送達装置である。
【0083】
いくつかの例では、インプラント本体での微生物の成長をさらに防止するために、インプラント本体の外面の少なくとも一部に、抗菌コーティングを処置、または抗菌コーティングを浸透させることができる。1例として、抗菌コーティングは、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、5-ブロモ-5-ニトロ-1,3-ジオキサン、7-エチルビシクロオキサゾリジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ホウ酸、ブロノポール、塩化セチルピリジニウム、ジグルコン酸クロルヘキシジン、クロロアセトアミド、クロロブタノール、クロロメチルイソチアゾリノンおよびメチルイソチアゾリン、ジメトキサン、ジメチルオキサゾリジン、ジメチルヒドロキシメチルピラゾール、クロロキシレノール、デヒドロ酢酸、ジアゾリジニル尿素、ジクロロベンジルアルコール、DMDM ヒダントイン、エチルアルコール、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ヘキサクロロフェン、ヘキセチジン、ヘキサメチレンテトラミン(hexamethylenetramine)、イミダゾリジニル尿素、ヨードプロピニル ブチルカルバメート、イソチアゾリノン、塩化メテナモニウム(methenammonium chloride)、メチルジブロモグルタロニトリル、MDM ヒダントイン、ミノサイクリン、オルソフェニルフェノール、p-クロロ-m-クレゾール、パラベン(ブチルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン)、フェネチルアルコール、フェノキシエタノール、ピロクタンオラミン(piroctane olamine)、ポリアミノプロピルビグアニド、ポリメトキシ二環オキサゾリジン、ポリオキシメチレン、ポリクォータニウム-42、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、プロピオン酸、クアテルニウム-15、リファンピシン、サリチル酸、ニ硫化セレン、ホウ酸ナトリウム、ヨウ素酸ナトリウム、ヒドロキシメチルグリシンナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ピリチオンナトリウム、ソルビン酸、チメロサール、トリクロサン、トリクロカルバン、ウンデセン酸、フェノールスルホン酸亜鉛(zinc phenosulfonate)、およびピリチオン亜鉛を含む群から選択される薬剤を含むことができる。1例として、抗菌コーティングは、乳酸銀、リン酸銀、クエン酸銀、酢酸銀、安息香酸銀、塩化銀、ヨード銀、ヨウ素酸銀、硝酸銀、スルファジアジン銀、パルミチン酸銀またはそれらのうち1つ以上の混合物を含む群から選択される物質を含むことができる。1例として、抗菌コーティングは、少なくとも1つの抗生剤または消毒剤を含んでよい。たとえば、抗菌コーティングは、平均して数時間~1日持続する一時的な麻酔薬を含むことができる。さらなる他の例では、抗菌コーティングは、即時性作用のボーラスなどの、根底にある疾患を処置するための薬剤の使用を含むことができる。
【0084】
治療剤(または単純に「薬剤」)は、数ある中で、以下の、緑内障用薬物(たとえばアドレナリン作動薬、アドレナリン遮断薬(β阻害薬)、炭酸脱水素酵素阻害剤(CAI、全身用および局所用)、副交感神経作動薬、プロスタグランジンおよび降圧脂質、およびその組み合わせ)、抗菌剤(たとえば抗生剤、抗ウイルス剤、駆虫薬(antiparacytic)、抗真菌剤など)、副腎皮質ステロイドまたは他の抗炎症剤(たとえばNSAIDまたは他の鎮痛剤および疼痛管理化合物)、うっ血除去薬(たとえば血管収縮剤)、アレルギー応答の修飾を防止する薬剤(たとえば抗ヒスタミン剤、サイトカイン阻害剤、ロイコトリエン(leucotriene)阻害剤、IgE阻害剤、免疫調節剤)、肥満細胞安定化剤、調節麻痺剤、散瞳薬などを含む、薬剤、またはそれらの等価物、誘導体もしくは類似体のうちの1つまたはいずれかの組み合わせから作製される薬剤を含むことができる。
【0085】
利用可能な薬剤の例として、限定するものではないが、トロンビン阻害剤、抗血栓形成剤、血小板溶解薬、血栓溶解剤、血管攣縮阻害剤、血管拡張剤、降圧剤、抗生剤などの抗菌剤(テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、セファレキシン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、リファンピシン、シプロフロキサシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、ペニシリン、スルホンアミド、スルファジアジン、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルフイソキサゾール、ニトロフラゾン、プロピオン酸ナトリウムなど)、抗真菌剤(アンホテリシンBおよびミコナゾールなど)、および抗ウイルス剤(イドクスウリジン トリフルオロサイミジン、アシクロビル、ガンシクロビル、インターフェロンなど)、表面糖タンパク質受容体の阻害剤、抗血小板剤、有糸分裂阻害剤、微小管阻害剤、抗分泌剤、活性阻害剤、リモデリング阻害剤、アンチセンスヌクレオチド、代謝拮抗剤、抗増殖剤(抗血管新生剤を含む)、抗癌化学療法剤、抗炎症剤(ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン21-ホスフェート、フルオシノロン、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン21-ホスフェート、酢酸プレドニゾロン、フルオロメタロン(fluoromethalone)、ベタメサゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドなど)、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)(サリチル酸塩、インドメタシン、イブプロフェン、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、ピロキシカム インドメタシン、イブプロフェン、ナキソペン(naxopren)、ピロキシカムおよびナブメトンなど)が挙げられる。本発明の涙器インプラントに使用するために考慮されるこのような抗炎症性ステロイドの例として、トリアムシノロンアセトニド(一般名)および、たとえば、トリアムシノロン、デキサメタゾン、フルオシノロン、コルチゾン、プレドニゾロン、フルメトロン(flumetholone)、およびそれらの誘導体)を含むコルチコステロイド;抗アレルギー剤(クロモグリク酸ナトリウム、アンタゾリン、メタピリレン(methapyriline)、クロルフェニラミン、セチリジン(cetrizine)、ピリラミン、プロフェンピリダミンなど);抗増殖剤(anti proliferative agents)(1,3-シスレチノイン酸、5-フルオロウラシル、タキソール、ラパマイシン、マイトマイシンCおよびシスプラチンなど);うっ血除去薬(フェニレフリン、ナファゾリン、テトラヒドラゾリン(tetrahydrazoline)など);縮瞳薬および抗コリンエステラーゼ(ピロカルピン、サリチル酸塩、カルバコール、塩化アセチルコリン、フィゾスチグミン、エゼリン、ジイソプロピルフルオロホスファート、ホスホリンヨウ素(phospholine iodine)、臭化デメカリウムなど);抗悪性腫瘍薬(カルムスチン、シスプラチン、フルオロウラシルなど);免疫薬剤(ワクチンおよび免疫刺激剤(immune stimulants)など);ホルモン剤(エストロゲン、-エストラジオール、プロゲステロン(progestational、progesterone)、インシュリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、ペプチドおよびバソプレシン視床下部放出因子ナド);免疫抑制剤、増殖ホルモン遮断薬、増殖因子(上皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、トランスフォーミング増殖因子β、ソマトラピン(somatotrapin)、フィブロネクチンなど);血管新生阻害剤(アンジオスタチン、アネコルタブアセタート、トロンボスポンジン、抗-VEGF抗体など);ドーパミン遮断薬;放射線治療剤(radiotherapeutic agents);ペプチド;タンパク質;酵素;細胞外マトリックス;構成成分(components);ACE阻害剤;フリーラジカル消去剤;キレート剤;抗酸化剤;抗ポリメラーゼ;光力学治療剤;遺伝子治療剤;ならびにチモロール、ベタキソロール、レボブノロール、アテノロールなどのβ阻害薬を含む緑内障用薬剤を含む、プロスタグランジン、抗プロスタグランジン、プロスタグランジン前駆体、およびビマトプロスト、トラボプロスト、ラタノプロストなどのプロスタグランジン類似体などの他の治療剤;アセタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、メタゾラミド、ジクロフェナミド、ダイアモックスなどの炭酸脱水酵素阻害剤;ルベゾール(lubezole)、ニモジピンおよび関連する化合物の神経保護薬;ならびにピロカルピン、カルバコール、フィゾスチグミンなどの副交感神経作動薬(parasympathomimetric)が挙げられる。
【0086】
本発明の涙器インプラントと共に使用できるさらなる薬剤として、限定するものではないが、米国の連邦食品・医薬品・化粧品法のセクション505および公衆衛生法(Public Health Service Act)の下認可された薬剤が挙げられる。本発明の涙器インプラントはまた、この特許文書の出願日と同一の日付、より前の日付、またはより後の日付を有するまたは記録するFDAのオレンジブックに列挙される薬剤と共に使用できる。たとえば、これらの薬剤としては、限定するものではないが、数ある中で、ドルゾラミド、オロパタジン、トラボプロスト、ビマトプロスト、シクロスポリン、ブリモニジン、モキシフロキサシン、トブラマイシン、ブリンゾラミド、アシクロビル マレイン酸チモロール、ケトロラクトロメタミン、酢酸プレドニゾロン、ヒアルロン酸ナトリウム、ネパフェナク、ブロムフェナク、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、スプロフェナク(suprofenac)、ビノキサン(binoxan)、パンタノール、デキサメタゾン/トブラマイシンの併用、モキシフロキサシン、またはアシクロビルを挙げることができる。
【0087】
上記に列挙した薬剤で処置できる疾患または障害の例として、限定するものではないが、緑内障、手術前および手術後の眼の処置、ドライアイ、抗眼アレルギー(anti-eye Allergy)、抗感染薬(anti-infective)、手術後の炎症もしくは疼痛、またはアレルギーなどの呼吸関連障害が挙げられる。いくつかの例では、治療剤は、潤滑剤または界面活性剤、たとえば、ドライアイを処置する潤滑剤を含むことができる。他の例では、治療剤は、眼からの涙を吸収できる吸収剤を含むことができる。
【0088】
治療剤の形態は、リザーバーに連結するポートを介した流れを限定した放出を伴う液体であると考えられているが、薬剤の供給物が1つ以上の薬剤の徐放を提供できる1つ以上の生体適合物質を含むことができる。たとえば、生体内分解性マトリックス、多孔性薬剤供給物、または液体薬剤供給物が挙げられる。薬剤を含むマトリックスは、生体内分解性ポリマーまたは非生体内分解性ポリマーのいずれかから形成できる。いくつかの例では、非生体内分解性薬剤の供給物は、限定するものではないが、シリコーン、アクリル酸塩、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリウレタン、ハイドロゲル、ポリエステル(たとえば、E. I. Du Pont de Nemours and Company, Wilmington, Del.製のDACRON(登録商標))、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸PTFE(ePTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ナイロン、押出型コラーゲン、ポリマーの発泡体、シリコーンゴム、ポリエチレンテレフタラート、超高分子量ポリエチレン、ポリカーボネートウレタン、ポリウレタン、ポリイミド、ステンレス鋼、ニッケル-チタン合金(たとえばニチノール)、チタン、ステンレス鋼、コバルト-クロムの合金(たとえば、ELGILOY(登録商標)(Elgin Specialty Metals, Elgin, 111.製);CONICHROME(登録商標)(Carpenter Metals Corp., Wyomissing, Pa.製))を含むことができる。いくつかの例では、生体内分解性の薬剤の供給物は、タンパク質、ハイドロゲル、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリ(L-グリコール酸)(PLGA)、ポリグリコリド(polyglycolide)、ポリ-L-ラクチド、ポリ-D-ラクチド、ポリ(アミノ酸)、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリグルコン酸(polygluconate)、ポリ乳酸-ポリエチレンオキシドコポリマー、変性セルロース、コラーゲン、ポリオルトエステル(polyorthoesters)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ無水物、ポリホホスホエステル、ポリ(α-ヒドロキシ酸)およびその組み合わせなどの1つ以上の生体内分解性ポリマーを含むことができる。いくつかの例では、薬剤の供給はハイドロゲルポリマーを含むことができる。いずれの薬剤供給マトリックスも、上述したポートを介して圧縮徐放ができなければならない。
【0089】
実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態および態様を示しかつさらに例示するために提供され、本発明の範囲を限定するよう構築されるものではない。
【0090】
実施例1
1実施形態、基礎データ
人工涙液および使用する可能性のある物質である他の局所薬物および弾性構成要素の様々な流体特性を考慮して、試料の計算を行って実験用の論理的な開始時の根拠を作製した。以下は、3種類の試料(PTFE、シリコーンゴム、ポリイミド)のそれぞれで実施した計算の要約である。スプレッドシート、ベルヌーイの流れの等式、ならびにヤング率などのバルーン物質の弾性特性および遠位端の直径を使用して、以下の推定評価を計算して、7マイクロリットル/日の流量を得、かつバルーンを100日間機能させることができた。
PTFE:
内部チューブの直径:1.55×10-6m
弾性リザーバーの容積:7×10-4L
ポリイミド:
内部チューブの直径:8.43×10-7m
弾性リザーバーの容積:7×10-4L
シリコーンゴム:
内部チューブの直径:3.37×10-6m
弾性リザーバーの容積:7×10-4L
【0091】
これらの計算は、内部チューブの直径および開始時の弾性リザーバーの容積をまず推測することにより行った。弾性リザーバーの容積に対応する膨張したバルーンの表面積を計算してバルーンの半径を得た。バルーンの表面積を考慮し、ヤング率を使用して流体上でバルーンにより働く圧力を計算し、それにより、バルーン内部の正味の圧力を計算した。
この圧力、流体の密度、および遠位端でのフリージェットのベルヌーイの仮定、ならびにバルーンの中心のわずかな流体速度を考慮して、本装置の端で変動可能な未知の速度を計算した。次いで、内部チューブの直径を、7マイクロリットル/日の流量に対応するように繰り返し調節し、100日の寿命基準に適合するようにさらに調節した。
図5、
図6、および
図7に示すデザインを使用して、7マイクロリットルの流体を、90日以上の期間にわたり一定して送達した。
【0092】
したがって、涙器系薬剤送達装置の特定の組成および方法を開示した。しかしながら、すでに記載したものを除く多くの改変が本明細書中の本発明の概念から逸脱せず用いることが可能であることは当業者に明らかである。さらに本開示を解釈する際に、全ての用語は、本文脈と一致する最も広く取り得る方法で解釈されるべきである。特に、用語「含む(comprise)」および「含んでいる(comprising)」は、非排他的な形式の部品、構成要素、またはステップを指すと解釈されるべきであり、言及される部品、構成要素、またはステップは、明示的に言及されない他の部品、構成要素、またはステップを伴って存在してもよくまたは利用してもよく、または併用してもよい。
【0093】
本明細書中に言及されるすべての公報は、これら公報が引用されるもの関連した方法および/または物質を開示かつ記述するために本明細書中で参照として援用される。本明細書中で論述される公報は、本出願の出願日前に開示されたもののみが提供される。本明細書中では、本発明は、本発明の効力によるこのような公開より前に権限があるものではないとの承認として構築されるものではない。さらに、提供される公開日は、実際の公開日と異なってもよく、それぞれ独自に確認する必要がある場合がある。
【0094】
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