(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】低い光反射性を有する塗料
(51)【国際特許分類】
B05D 1/02 20060101AFI20220112BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220112BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20220112BHJP
C09D 7/41 20180101ALI20220112BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20220112BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20220112BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220112BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
B05D1/02 Z
B05D7/24 303A
B05D7/24 301E
B05D3/00 D
B05D3/00 F
C09D7/41
C09D201/00
C09D7/20
C09D7/61
G02B5/00 B
(21)【出願番号】P 2020519787
(86)(22)【出願日】2018-10-08
(86)【国際出願番号】 GB2018052870
(87)【国際公開番号】W WO2019073210
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-09-16
(32)【優先日】2017-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507374170
【氏名又は名称】サレイ ナノシステムズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェンセン,ベン ポール
(72)【発明者】
【氏名】マッケナ,フィオナ マレイド
(72)【発明者】
【氏名】ラドラム,ウィリアム ジョン クリスチャン
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-286915(JP,A)
【文献】特開2012-002895(JP,A)
【文献】特開2020-097730(JP,A)
【文献】特開2021-140060(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/087088(US,A1)
【文献】中国特許第104861868(CN,B)
【文献】国際公開第2017/033027(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00-7/26
C08J9/00-9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板をコーティングする方法であって、
(i)溶媒中の染料
又は顔料および結合剤の懸濁液を用意するステップであって、結合剤に対する染料
又は顔料の比率は40wt%超であり、染料
又は顔料は溶媒中に均一に分散しているステップと;
(ii)懸濁液を基板上にスプレーコーティングするステップであって、溶媒の大部分はスプレーコーティングステップ中に蒸発して、基板上に染料
又は顔料および結合剤の多孔質コーティングをもたらすステップと;
(iii)コーティング厚が少なくとも30マイクロメートルとなるまでステップ(ii)を継続するステップと
を含み、染料
又は顔料はカーボンナノチューブを全く含まず、
基板上の染料
又は顔料と結合剤のコーティングが最大0.75g/cm
3の密度を有し、光反射率を抑制する光「捕捉部」として機能する細孔または空洞をもたらすことを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップ(ii)において基板上にコーティングされる懸濁液の流速が、1cm
-2当たり0.05g/秒~2g/秒である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
結合剤が、ポリ酢酸ビニル、もしくは酢酸ビニル、ネオデカン酸ビニルおよび(メタ)アクリル酸エステルの混合物、もしくは酢酸ビニル官能基の成分を含む任意の結合剤である、または結合剤がアクリルベースである、請求項1から2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
結合剤に対する溶媒の比率が、2:1~14:1である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(ii)における溶媒の蒸発が、得られるコーティングが100nm~700nmの範囲のサイズの空洞を有するように制御される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(i)における結合剤に対する染料
又は顔料の比率が、120wt%超である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
(iv)ステップ(iii)のコーティングをプラズマエッチングして、コーティング構造から結合剤を選択的に除去し、それにより追加の光捕捉空洞を形成し、より多くの吸収染料
又は顔料を入射光子に曝露させる追加のステップを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
プラズマエッチングが、0.05W/cm
2~0.3W/cm
2の電力密度で行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
電力密度が、約0.1W/cm
2である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
プラズマエッチングが、60~1200秒の期間行われる、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
プラズマエッチングが、0.1~2Torr(13.3~266.6Pa)の圧力下で行われる、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(iv)が、酸素、O
2およびN
2の混合物、またはO
2およびHeの混合物の存在下で行われる、請求項7から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
(v)ステップ(iv)のコーティングの少なくとも一部に疎水性コーティングを堆積させるために、ステップ(iv)のコーティングを、反応チャンバ内でフッ化炭素を含むコーティング前駆体の存在下でプラズマに供する追加のステップを含む、請求項7から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
コーティング前駆体が、CF
4およびC
2H
4の混合物である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
C
2H
4に対するCF
4の比率が、3:1~20:1である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、基板をコーティングする方法、特に低い光反射性を有する塗料で基板をコーティングする方法に関連する。本出願はまた、コーティング自体にも関連する。
【背景技術】
【0002】
長年にわたり、様々な工業的および科学的応用において、極めて低い反射性を有する環境的に安定したコーティングおよびデバイスを製造するための研究がなされてきた。これらは、画像化システム、較正目標、器具類、光ガイド、バッフル、迷光抑制および他の多くの用途において重要である。
【0003】
商業的に有用となるためには、これらのコーティングは、可能な限り低い反射率を有さなければならず、また幅広い領域にわたり実質的に均一な光吸収が可能でなければならない。同じく重要なことに、それらは、好ましくは平坦なスペクトル応答、真空曝露時の低いガス放出、低い微粒子剥脱を伴う機械的衝撃および振動に対する高い耐性、良好な耐熱衝撃性、ならびに水分に対する耐性を示すべきである。コーティングは多くの場合CCD(電荷結合素子)またはマイクロボロメータ等の高感度電子検出器に近い位置にあるため、これらは多くの工業的および科学的応用のための重要な要件である。そのようなコーティングからのいかなる汚染も、検出器上に不可避的に集積または凝縮し、故障をもたらす、または許容閾値を超えるほど性能を低下させる。
【0004】
低い光反射性を有する表面を形成する1つの手法は、コーティングの形態のカーボンナノチューブを使用することである。本出願者は、極めて低反射性のコーティングおよびコーティング方法を開発したが、これらは参照によりその内容が本明細書に組み込まれるPCT公開番号WO2017/033031およびWO2017/033027に開示されている。
【0005】
カーボンナノチューブで形成された吸収体コーティングは、反射性を低減する極めて効果的な手法となり得る。しかしながら、それらは、調製するのに比較的高額であり、得られる表面は物理的接触によって容易に損傷される。また、カーボンナノチューブの物理的性質のために(それらは粉末状態では目および粘膜に対して極めて刺激性である)、コーティングは、直接接触または擦過傷を生じているような人間に自由に曝露される領域では使用されるべきではない。それらはまた、作業者を製造環境から隔離するのに必要な多くの追加的安全システムに起因して、調製に費用を要する。
【0006】
本出願は、カーボンナノチューブを含まないが同等の光吸収を提供する低反射性コーティングで基板をコーティングする改善された方法を提供することを目的とする。
【0007】
EP2466341A1(富士フイルム株式会社)は、反射光に起因するゴースト、フレア等を防止するために、基板またはレンズモジュールの表面に黒色レジスト層をコーティングする方法を開示している。レジスト組成物は、黒色顔料(カーボンブラック等)、溶媒および分散液を含んでもよい。開示された方法は、フォトリソグラフィーを使用してパターンを露光することを含むため、レジスト組成物は、感光性成分、光重合開始剤および増感剤を含んでもよい。レジスト層は、基板上にスプレーコーティングされてもよく、光硬化性固体フィルムが得られる。得られるレジスト層の全半球反射率値は言及されていない。その代わり、言及された反射率レベルは、金属フィルムを基準として法線から5度の角度で測定され、したがって全半球反射率(THR)よりもはるかに低い方向反射率レベルのみ(単一方向での反射率)を示しており、THRは材料の反射率の目安であり、入射光が法線から8度の角度で衝突し、全ての角度からの反射が拡散積分球により収集される。
【0008】
それよりも劣る他のコーティングは、US5,490,893;WO2011/133000;EP3159741;WO2008/133887;US5,725,807およびUS4,197,221に開示されている。
【0009】
WO94/17147A1(PPG)は、スプレーにより塗布可能な内壁用のコーティング混合物を開示しており、これは、充填剤としての実質的に微粉化されたセルロース繊維、セルロースまたはデンプンベース結合剤、水、および発泡剤を含み、混合物はまた、少量の添加剤またはアジュバントを含んでもよく、セルロース繊維から計算される結合剤の量は、3~15重量%であり、混合物の乾燥物質含量は、約12重量%超である。本発明はまた、コーティング混合物の調製および塗布の方法にも関連する。
【0010】
CN105860719A(Qingdao Air)は、スプレー可能な焼成型水溶性減衰コーティングおよびその調製方法を開示している。スプレー可能な焼成型水溶性減衰コーティングは、10~50重量部のアクリルエマルジョン、5~20重量部の乳化剤、0.1~10重量部の中和剤、1~20重量部の分散剤、1~15重量部の共溶媒、10~80重量部の顔料充填剤および1~50重量部の水から調製される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本出願は、低反射性コーティングで基板をコーティングする改善された方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、基板をコーティングする方法が提供され、方法は、
(i)溶媒中の染料又は顔料および結合剤の懸濁液を用意するステップであって、結合剤に対する染料又は顔料の比率は40wt%超(好ましくは60wt%超、より好ましくは80wt%超)であり、染料又は顔料は溶媒中に均一に分散しているステップと;
(ii)懸濁液を基板上にスプレーコーティングするステップであって、溶媒の大部分はスプレーコーティングステップ中に蒸発して、基板上に最大0.75g/cm3(および好ましくは0.35~0.75g/cm3)の密度を有する染料又は顔料および結合剤のコーティングをもたらすステップと;
(iii)コーティング厚が少なくとも30マイクロメートルとなるまでステップ(ii)を継続するステップと
を含み、染料又は顔料はカーボンナノチューブを全く含まない。
【0013】
驚くべきことに、本発明により、(適正なプロセス条件下で)非常に低い全半球反射率(THR)、例えば可視スペクトルで約1%以下の全半球反射率(THR)を有するコーティングが、通常の染料又は顔料(例えばカーボンブラックベース顔料)を使用して調製され得ることが実現される。
【0014】
全半球反射率測定は、材料と光との相互作用の最も完全な測定法であり、極めて低反射性の材料の性能を測定するための標準として認められている。高反射性表面(硫酸バリウム(BaSO4))で内部コーティングされた積分球を使用して、試料により反射される光が全ての角度から収集される。試料から反射される光の量は、拡散BaSO4参照により反射される光の量とパーセンテージの形で比較される。表面からの正反射および拡散による寄与が収集されるように、入射光は法線から8度の角度で集光される。典型的な最新技術の黒色顔料含有吸収体コーティングは、3~5%の範囲内のTHRを有し、したがって光学系の性能を、すでに達成されている性能以上に改善することはできない。
【0015】
理論に制約されることを望まないが、低いTHRを有するコーティングを調製するための鍵は、得られるコーティングの密度を問題の数値未満に維持することであると考えられる。本出願者により考案された1つの理論は、低密度コーティングがより多くの細孔を有し、これが好適な染料
又は顔料と組み合わされると光反射率を抑制する光「捕捉部」として機能し得るということである。光子は入射して、空洞内で複数の内部反射を吸収されるまで生じ得る。従来の塗料コーティングでは、この機能は不可能である。全ての角度(0~90°)からの効率的な吸収を提供するためには、低密度構造は、コーティング構造内に入射しない光を散乱させる表面テクスチャを有する必要がある。この表面粗度または構造は、コーティングを塗布する間に形成されるべきである。光を吸収および散乱する吸収体コーティングの能力の測定は、TISまたは全積分散乱と呼ばれる。真正面で見た場合に強い吸収を示す表面は、45°を超える入射角度で観察するとほぼ常に極めて正反射性である(本発明による2つの異なる表面への白色光の入射角度に対して測定されたTISを示す
図9を参照されたい)。
【0016】
コーティングの密度および表面トポグラフィーに影響する因子は、溶媒比率、表面までのスプレーノズルの距離、ノズルの種類、周囲温度、湿度、基板の温度等、いくつかある。コーティング組成物(飛行中、または表面に接触した直後)から溶媒が蒸発する速度が特に重要であると考えられる。当業者(例えばスプレー技術者)は、必要な密度のコーティングを調製するためにこれらの因子を調節することができる。
【0017】
光エネルギー(光子)は、入射して染料又は顔料により吸収されるにはコーティング内に空間を必要とするため、吸収体コーティングの密度もまたそのTHRに関連する(THR数が低いほどより良好である)。吸収を最大化するためには、可能な限り多くの染料又は顔料が入射光子に曝露されなければならない。
【0018】
法線入射において表面から反射する光の量は、以下で示されるフレネルの式に従い、界面での材料の屈折率の差に比例する。したがって、材料の屈折率がより近い程、反射率はよりゼロに近付く傾向がある。特定の材料では、密度が低減するに従って屈折率が減少し、したがって反射率の低下が観察される。
【0019】
【0020】
従来の塗料型吸収体コーティングは、非常に低い反射率(<1.5%THR)を有するのに十分低い密度を有さないが、光源からの入射光を散乱させるために塗布表面を粗面化することにより拡散性(低い正反射率)にすることができる。光子を効率的に捕捉し、ひいては低THRを示すためには、光空間または空洞は、光子の波長範囲(可視スペクトルの場合この波長範囲は300~700nmである)に近い必要があり、同時に観察者から離れるように反射光を散乱させるピークおよび谷をコーティングに形成する必要がある。
【0021】
これは、より黒い、またはより低反射性のコーティングを形成する試みが、染料又は顔料および充填剤を添加した場合には限界に達することを意味するが、なぜなら染料又は顔料および充填剤は典型的には密度を増加および細孔度を低下させ、したがって吸収効率を増加させるために使用される光空洞を最小限化または排除してしまうためである。これは、結合剤樹脂内に閉じ込められた顔料粒子に入射する光のみの吸収をもたらし、光子を補足する効率的な手法ではない。吸収体コーティング等の塗料における最新技術は、典型的には、1.3g/cc超の最終コーティング密度で3~5%の全半球反射率を与える。
【0022】
本出願者は、全ての観察角度からの低い反射率(TIS)および可視スペクトルにおける1%のTHRを有する均一な低密度吸収体コーティングを生成する、スプレー塗布された超黒色吸収体コーティングを形成するための新たな方法を開発した。
【0023】
この技術により、比較的損傷抵抗性であり、構成要素が無害である比較的低コストの吸収体コーティングが調製され得る。
【0024】
正しい結果が達成されたことを技術者が知るのに役立ち得るいくつかのパラメータが存在する。コーティングの理想的な質量(基板が実際に秤量される場合)は、3~15mg/cm2であるべきである。この質量を達成するための塗料の体積は、転写効率および重ね塗りに依存して0.25~0.5mL/cm2の間である。十分な体積がスプレーされたら、部品は、明るい広スペクトル白色光の下、既知のTHR値の標準試料の隣で検査される。見かけの黒色度のレベルは全ての角度から判別不可能であるべきであり、粗度のレベルが比較される。ピンホールまたは不均一性が観察されるべきではない。スプレーされる標的の黒色度がより低く、より滑らかに見える場合、30~50μmの目標粗度を達成して明るい広スペクトルトーチ下で表面上に粒子が明確に見えるように、さらなる塗料が塗布され得る。灰色の領域および粗い表面の両方を伴う不均一表面が観察される場合、これは、塗料が過度に湿った状態で塗布され、滑らかな下層を粗い表面が覆っていることを示唆している。過度に厚い粗コーティングをもたらさずにこの結果を修正するのは困難となる。
【0025】
塗料配合物の粘度は、好ましくは、500~2000cpsの新たに調製された塗料の粘度を達成するように溶媒比率を変更することにより調節される。
【0026】
理想的な溶媒比率は、結合剤-溶媒相互作用、顔料粒子サイズおよび表面積等の多くの事項に依存し得、したがって、溶媒を増加または減少させて、塗料を適切な様式で微粒子化および送達するのに適切な粘度を達成し、基板への到達前に溶液の部分的乾燥を確保することができる。
【0027】
さらに、コーティングをプラズマエッチングステップに供することにより、上で定義されたコーティングの反射性がさらに低減され得る(例えば可視スペクトルにおいて0.5%未満)ことが実現される。したがって、方法は、好ましくは、
(iv)ステップ(iii)のコーティングをプラズマエッチングして、コーティング構造から結合剤を選択的に除去し、それにより追加の光捕捉空洞を形成し、より多くの吸収染料又は顔料を入射光子に曝露させる追加のステップを含む。プラズマエッチングステップはまた、コーティングの密度を低減し得る。
【0028】
プラズマエッチングされたコーティングは、次いで、
(v)ステップ(iv)のコーティングの少なくとも一部に疎水性コーティングを堆積させるために、ステップ(iv)のコーティングを、反応チャンバ内でフッ化炭素を含むコーティング前駆体の存在下でプラズマに供する追加のステップを含むことにより、疎水性コーティングでコーティングされることが極めて好ましい。
【0029】
ここで、好ましい実施形態のいくつかを、図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明に従ってスプレーされ、次いでエッチングされたスプレー塗料のSEM画像である。
【
図2A-2C】本発明において使用された塗料の特性がある特定の条件下で見せる挙動を示すグラフである。
【
図3】本発明に従いスプレーされた塗料のUV-vis反射率に対する疎水性コーティングの効果を示すグラフである。
【
図4】エッチングの前および後のスプレーされた塗料を示すSEMである。
【
図5】コーティング密度と反射率との間の関連性を示すグラフである。
【
図6】ファン圧力と得られるTHRとの間の関係を示すグラフである。スポットサイズは粗度を示す。結果は、Badger(登録商標)Crescendoエアブラシによるスプレーに基づいていた。
【
図7】ファン圧力および流速(g/s)の相互依存性を示すグラフである。結果は、Badger(登録商標)Crescendoエアブラシによるスプレーに基づいていた。
【
図8】ノズルから基板までの距離とTHRとの間の関係を示すグラフである(実施例15に基づく)。これは高流速Pro-lite(登録商標)圧縮空気ガンに基づき、したがってスプレー距離は、Badger(登録商標)Crescendoエアブラシよりも長くとる必要がある。
【
図9】本発明による2つの異なる表面(エッチングなしおよびエッチングあり)への白色光の入射角度に対する測定された全積分散乱のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下の例において、記号VBX-1はエッチング後のコーティングを指し、VBX-2はエッチングされていないコーティングを指す。
【0032】
全半球反射率(THR)の測定
全半球反射率は、硫酸バリウム積分球を備えるShimadzu(登録商標)UV-NIR 2500 Spectrometerを使用して測定される。試験試料を、積分球上の測定ポートに設置し、照明源に曝露する。検出器は、試料コーティングからの反射したエネルギーを収集し、200nm~1400nmで性能をプロットする。測定を行う前に、既知反射率の標準に対して機器を較正する。
【0033】
エッチングされない例
例1~10は、60%の顔料対結合剤比率(PTB)で、溶媒として酢酸エチルを用いたポリ酢酸ビニルホモポリマー結合剤を包含する。例11~16は、120%のPTBで、溶媒としてEAおよびアセトンの両方を用いた、酢酸ビニル、ネオデカン酸ビニルおよび(メタ)アクリル酸エステル酢酸ビニルをベースとしたコポリマーをベースとした水性コポリマー分散液の結合剤を包含する。
【0034】
例1
4:1(w/w)の酢酸エチル:ポリ酢酸ビニルホモポリマーのプレミックスエマルジョンの大量バッチを、手動での撹拌により調製した。この90gに、10.8gの水分散性炭素顔料を添加し、高剪断ミキサーを使用して10000rpmで17分間撹拌し、60%の顔料対結合剤比率とした。水ベース結合剤相と良好に相互作用するように、水分散性炭素を選択した。得られた塗料を、Badger(登録商標)150サイフォン供給式エアブラシを使用して、20psiの圧力および典型的な大気条件でスプレーした。3つのビードブラスト加工アルミニウムクーポンにスプレーすると、それぞれ1.001%、0.952%および1.001%の550nmでのTHR値が得られた。クーポンの質量は、0.203g、0.226gおよび0.200gであったが、これは13.1mg/cm2の平均質量を示す。
【0035】
例2
4:1(w/w)の酢酸エチル:ポリ酢酸ビニルホモポリマーのプレミックスエマルジョンの大量バッチを、手動での撹拌により調製した。この90gに、10.8gの親水性炭素顔料を添加し、木製スパチュラを使用して撹拌し、60%の顔料対結合剤比率とした。得られた塗料を、Badger(登録商標)150サイフォン供給式エアブラシを使用して、20psiの圧力および典型的な大気条件でスプレーした。5つのビードブラスト加工アルミニウムクーポンにスプレーすると、それぞれ1.123%、1.235%、1.099%、1.237%、1.236%の550nmでのTHR値が得られた。クーポンの質量は、0.355g、0.321g、0.408g、0.255g、0.212gであったが、これは19.4mg/cm2の平均質量を示す。この場合の低反射率を達成するために必要なより高い質量は、混合方法が顔料粉末の効率的分散を達成しなかったことによるものであった。はるかにより高い質量および粗度であっても、達成された値は通常、1.2%THRより高かった。
【0036】
例3
4:1(w/w)の酢酸エチル:ポリ酢酸ビニルホモポリマーのプレミックスエマルジョンの大量バッチを、手動での撹拌により調製した。この90gに、14.4gの親水性炭素顔料を添加し、木製スパチュラを使用して撹拌し、80%の顔料対結合剤比率とした。得られた塗料を、Badger(登録商標)150サイフォン供給式エアブラシを使用して、20psiの圧力および典型的な大気条件でスプレーした。5つのビードブラスト加工アルミニウムクーポンにスプレーすると、それぞれ1.196%、1.133%、1.131%、1.064%、1.095%の550nmでのTHR値が得られた。クーポンの質量は、0.221g、0.217g、0.193g、0.357g、0.551gであったが、これは19.2mg/cm2の平均質量を示す。PTB比率の増加は、達成される反射率を60%PTBでの1.2%に対して1.1%まで低減したが、この結合剤を使用すると、塗料の構造的完全性は極めて低く、緩い粉末様のテクスチャを有していた。
【0037】
反例4-刷毛塗り
4:1(w/w)の酢酸エチル:ポリ酢酸ビニルホモポリマーのプレミックスエマルジョンの大量バッチを、手動での撹拌により調製した。この90gに、10.8gの親水性炭素顔料を添加し、高剪断ミキサーを使用して10000rpmで17分間撹拌し、60%の顔料対結合剤比率とした。得られた塗料を、典型的な大気条件で塗料用の刷毛で塗布した。ビードブラスト加工アルミニウムクーポンをコーティングすると、3.009%の550nmでのTHR値および0.253gの質量が得られたが、これは15.8mg/cm2の平均質量を示す。
【0038】
例5-40psiでのスプレー
4:1(w/w)の酢酸エチル:ポリ酢酸ビニルホモポリマーのプレミックスエマルジョンの大量バッチを、手動での撹拌により調製した。この90gに、10.8gの親水性炭素顔料を添加し、高剪断ミキサーを使用して10000rpmで17分間撹拌し、60%の顔料対結合剤比率とした。得られた塗料を、Badger(登録商標)150サイフォン供給式エアブラシを使用して、40psiの圧力および典型的な大気条件でスプレーした。ビードブラスト加工アルミニウムクーポンをコーティングすると、1.145%の550nmでのTHR値および0.183gの質量が得られたが、これは11.4mg/cm2の平均質量を示す。
【0039】
例6-40%PTB
4:1(w/w)の酢酸エチル:ポリ酢酸ビニルホモポリマーのプレミックスエマルジョンの大量バッチを、手動での撹拌により調製した。この90gに、7.2gの親水性炭素顔料を添加し、高剪断ミキサーを使用して10000rpmで17分間撹拌し、40%の顔料対結合剤比率とした。得られた塗料を、Badger(登録商標)150サイフォン供給式エアブラシを使用して、20psiの圧力および典型的な大気条件でスプレーした。2つのビードブラスト加工アルミニウムクーポンにスプレーすると、それぞれ1.781%、1.787%の550nmでのTHR値が得られた。コーティングの質量は、0.181g、0.163gであったが、これは10.7mg/cm2の平均質量を示す。
【0040】
反例7-20%PTB
4:1(w/w)の酢酸エチル:ポリ酢酸ビニルホモポリマーのプレミックスエマルジョンの大量バッチを、手動での撹拌により調製した。この90gに、3.6gの親水性炭素顔料を添加し、高剪断ミキサーを使用して10000rpmで17分間撹拌し、20%の顔料対結合剤比率とした。得られた塗料を、Badger(登録商標)150サイフォン供給式エアブラシを使用して、20psiの圧力および典型的な大気条件でスプレーした。2つのビードブラスト加工アルミニウムクーポンにスプレーすると、それぞれ3.586%、3.588%の550nmでのTHR値が得られた。コーティングの質量は、0.152g、0.145gであったが、これは9.28mg/cm2の平均質量を示す。
【0041】
例8-疎水性顔料
4:1(w/w)の酢酸エチル:ポリ酢酸ビニルホモポリマーのプレミックスエマルジョンの大量バッチを、手動での撹拌により調製した。この90gに、9gの溶媒分散性炭素顔料を添加し、高剪断ミキサーを使用して10000rpmで17分間撹拌し、50%の顔料対結合剤比率とした。得られた塗料を、Badger(登録商標)150サイフォン供給式エアブラシを使用して、20psiの圧力および典型的な大気条件でスプレーした。4つのビードブラスト加工アルミニウムクーポンにスプレーすると、それぞれ0.991%、0.947%、0.987%および0.942%の550nmでのTHR値が得られた。コーティングの質量は、0.187g、0.209g、0.201g、0.212gであったが、これは12.6mg/cm2の平均質量を示す。疎水性顔料の溶媒相に対する改善された分散性は、配合物の黒色度および安定性を改善し、反射率を低下させると思われた。しかしながら、顔料の分散性の増加に起因して、塗料の粘度がスプレーするには高くなりすぎたため、この溶媒比率ではPTBを50%超に増加させることができなかった。したがって、溶媒比率およびPTBの増加の効果を評価した。
【0042】
例9-より高い溶媒比率での疎水性顔料
7:1(w/w)の酢酸エチル:ポリ酢酸ビニルホモポリマーのプレミックスエマルジョンの大量バッチを、手動での撹拌により調製した。この90gに、9gの疎水性炭素顔料を添加し、高剪断ミキサーを使用して10000rpmで17分間撹拌し、80%の顔料対結合剤比率とした。得られた塗料を、Badger(登録商標)150サイフォン供給式エアブラシを使用して、20psiの圧力および典型的な大気条件でスプレーした。5つのビードブラスト加工アルミニウムクーポンに異なる距離でスプレーすると、それぞれ1.156%、1.16%、0.692%、0.679%、0.827%の550nmでのTHR値が得られた。コーティングの質量は、0.196g、0.22g、0.208g、0.207g、および0.216gであったが、これは13.0mg/cm
2の平均質量を示す。この場合、スプレー距離の影響を評価するために、スプレーの距離は様々であったが、その結果は
図2Aに見ることができる。20cmの距離では、反射率は0.7%まで低くなることができたが、コーティングの構造的完全性は極めて低かった。基板から10~15cmでは、粉末化フレーク状コーティングをもたらすことなく1%のTHRを達成することができた。5つのクーポンの粗度Raの値は、それぞれ34.4μm、32.8μm、90.5μm、91.2μm、55.1μmであった。
【0043】
例10-異なる溶媒比率での疎水性顔料
7:1、8:1および9:1(w/w)の酢酸エチル:ポリ酢酸ビニルホモポリマーのプレミックスエマルジョンの3つの大量バッチを、手動での撹拌により調製した。この90gに、9g、8gおよび7.2gの疎水性炭素顔料を添加し、高剪断ミキサーを使用して10000rpmで17分間撹拌し、それぞれの場合において80%の顔料対結合剤比率とした。得られた塗料を、Badger(登録商標)150サイフォン供給式エアブラシを使用して、20psiの圧力、15cmの距離および典型的な大気条件でスプレーした。3つのビードブラスト加工アルミニウムクーポンに同じ距離でスプレーすると、それぞれ0.916%、0.952%、1.039%の550nmでのTHR値が得られた。コーティングの質量は、0.192g、0.20g、および0.182gであったが、これは11.9mg/cm
2の平均質量を示す。スプレーの距離を一定に維持して溶媒増加の影響に注目したが、これは%THRを徐々に増加させることが示される。結果を
図2Cに示す。
【0044】
例11-酢酸ビニルベースコポリマーのポリマー結合剤、14:1溶媒比率、80%PTB
14:1(w/w)の酢酸エチル:酢酸ビニルベースコポリマーコポリマーのプレミックスエマルジョンの大量バッチを、手動での撹拌により調製した。結合剤のチキソトロピー性は、非常に急速な溶液の増粘をもたらし、これにより高い溶媒比率が必要であった。この90gに、4.8gの疎水性炭素顔料を添加し、高剪断ミキサーを使用して10000rpmで10分間撹拌し、80%の顔料対結合剤比率とした。得られた塗料を、Badger(登録商標)150サイフォン供給式エアブラシを使用して、20psiの圧力および典型的な大気条件でスプレーした。2つのビードブラスト加工アルミニウムクーポンにスプレーすると、それぞれ1.562%および1.525%の550nmでのTHR値が得られた。クーポンの質量は、0.053g、0.0524gであったが、これは3.3mg/cm2の平均質量を示す。この場合、コーティングの質量は低かったが、被覆率は非常に良好であった。しかしながら、コーティングは極めてより滑らかであり、Ra値は20.1μmおよび18μmであった。
【0045】
例12-酢酸ビニルベースコポリマーのポリマー結合剤、14:1溶媒比率、80%PTB-事前分散
この場合では、結合剤のチキソトロピー性に起因して、溶媒への顔料の事前分散を行った。4.8gの疎水性炭素顔料を、84gの酢酸エチルに添加し、高剪断ミキサーを使用して10000rpmで10分間撹拌した。これに、6gの結合剤を添加し、混合物をさらに2分間撹拌し、80%の顔料対結合剤比率とした。この90gに、4.8gの疎水性炭素顔料を添加し、高剪断ミキサーを使用して10000rpmで10分間撹拌し、80%の顔料対結合剤比率とした。得られた塗料を、Badger(登録商標)150サイフォン供給式エアブラシを使用して、20psiの圧力および典型的な大気条件でスプレーした。2つのビードブラスト加工アルミニウムクーポンにスプレーすると、それぞれ1.322%、1.315%の550nmでのTHR値が得られた。クーポンの質量は、0.061g、0.0574gであったが、これは3.7mg/cm2の平均質量を示す。この場合、顔料の事前分散でわずかな改善が見られたため、この結合剤系で先に進めた。
【0046】
例13-酢酸ビニルベースコポリマーのポリマー結合剤、14:1溶媒比率、100%PTB
6gの疎水性炭素顔料を84gの酢酸エチルに添加することにより溶媒への顔料の事前分散を行い、高剪断ミキサーを使用して10000rpmで10分間撹拌した。これに、6gの結合剤を添加し、混合物をさらに2分間撹拌し、100%の顔料対結合剤比率とした。得られた塗料を、Badger(登録商標)150サイフォン供給式エアブラシを使用して、20psiの圧力および典型的な大気条件でスプレーした。2つのビードブラスト加工アルミニウムクーポンにスプレーすると、それぞれ0.996%および1.014%の550nmでのTHR値が得られた。クーポンの質量は、0.0643g、および0.0705gであったが、これは4.2mg/cm2の平均質量を示す。この結合剤では被覆速度および全体的な粗度は大幅により低いが、炭素および溶媒のより多くの投入が必要である。
【0047】
例14-酢酸ビニルベースコポリマーのポリマー結合剤、14:1溶媒比率、100%PTB-大量バッチ大型ガン
より速い被覆速度のために、Devilbliss Pro-lite(登録商標)スプレーガンを使用する必要があったが、これには小型エアブラシシステムと同等の乾燥を達成するために配合物にいくらかの変更が必要であった。また、より多量のバッチの塗料を配合する必要があった。溶媒への顔料の事前分散を行った。37gの疎水性炭素顔料を、363gの酢酸エチルに添加し、高剪断ミキサーを使用して10000rpmで10分間撹拌した。これに、37gの結合剤を添加し、混合物をさらに2分間撹拌し、100%の顔料対結合剤比率とした。得られた塗料を、1.2mmのノズルおよびTE10エアキャップを備えたDevilbliss Prolite重力供給式ガンを使用して、30psiの圧力および典型的な大気条件でスプレーした。1つのビードブラスト加工アルミニウムクーポンにスプレーすると、1.96%の550nmでのTHR値が得られた。クーポンの質量は、0.093gであったが、これは5.8mg/cm2の平均質量を示す。この結合剤では質量は大きかったが、粗度は非常に低く、試料は灰色を呈していた。このガンではエアブラシほど効率的に溶媒が蒸発していなかったと思われた。
【0048】
例15-酢酸ビニルベースコポリマーのポリマー結合剤、10:1溶媒比率、120%PTB-溶媒としてアセトン
溶媒への顔料の事前分散を行った。45gの疎水性炭素顔料を、363gのアセトンに添加し、高剪断ミキサーを使用して10000rpmで10分間撹拌した。これに、37gの結合剤を添加し、混合物をさらに2分間撹拌し、120%の顔料対結合剤比率および10:1の溶媒比率とした。アセトンの使用は、この結合剤にはるかにより低い粘度をもたらし、また蒸発を促進する。得られた塗料を、1.2mmのノズルおよびTE10エアキャップを備えたDevilbliss Prolite重力供給式ガンを使用して、30psiの圧力および16cmの距離および典型的な大気条件でスプレーした。1つのビードブラスト加工アルミニウムクーポンにスプレーすると、1.29%の550nmでのTHR値が得られた。クーポンの質量は、0.087gであったが、これは5.4mg/cm2の平均質量を示す。
【0049】
例16-酢酸ビニルベースコポリマーのポリマー結合剤、8:1溶媒比率、120%PTB-溶媒としてアセトン
溶媒への顔料の事前分散を行った。45gの疎水性炭素顔料を、296gのアセトンに3分間にわたり徐々に添加し、高剪断ミキサーを使用して5000rpmでさらに2分間撹拌した。これに、37gの結合剤を添加し、混合物を7000rpmでさらに2分間撹拌し、120%の顔料対結合剤比率および8:1の溶媒比率とした。アセトンの使用は、この結合剤にはるかにより低い粘度をもたらし、また蒸発を促進する。得られた塗料を、1.2mmのノズルおよびTE10エアキャップを備えたDevilbliss Prolite重力供給式ガンを使用して、約20cmの距離で30psiの圧力および典型的な大気条件でスプレーした。1つのビードブラスト加工アルミニウムクーポンにスプレーすると、1.031%の550nmでのTHR値が得られた。クーポンの質量は、0.093gであったが、これは5.8mg/cm
2の平均質量を示す。Bruker Dektak(登録商標)表面形状測定装置を使用してコーティングの平均厚さを332μmと測定し、占められた体積を計算することにより、このコーティングの密度を計算した。密度は0.420g/cm
3であることが判明した。
図5は、同じ配合物を使用してスプレーしたいくつかの他のクーポンと比較してこの値を示している。1.2%以下の%Rを有する全てのクーポンが、0.6g/cm
3未満の測定密度を示し、一方、基板に過度に近接してスプレーされた例18および19は、グラフ上ではるかにより高い密度、ひいてはTHR値を示すことが示された。
【0050】
例17-酢酸ビニルベースコポリマーのポリマー結合剤、8:1溶媒比率、130%PTB-溶媒としてアセトン
溶媒への顔料の事前分散を行った。48gの疎水性炭素顔料を、296gのアセトンに3分間にわたり徐々に添加し、高剪断ミキサーを使用して5000rpmでさらに2分間撹拌した。これに、37gの結合剤を添加し、混合物を7000rpmでさらに2分間撹拌し、130%の顔料対結合剤比率および8:1の溶媒比率とした。アセトンの使用は、この結合剤にはるかにより低い粘度をもたらし、また蒸発を促進する。得られた塗料を、1.2mmのノズルおよびTE10エアキャップを備えたDevilbliss Prolite重力供給式ガンを使用して、約20cmの距離で30psiの圧力および典型的な大気条件でスプレーした。1つのビードブラスト加工アルミニウムクーポンにスプレーすると、0.994%の550nmでのTHR値が得られた。クーポンの質量は、0.107gであったが、これは6.6mg/cm2の平均質量を示す。
【0051】
反例18-酢酸ビニルベースコポリマーのポリマー結合剤、8:1溶媒比率、120%PTB-溶媒としてアセトン-40psiで過度に近接してスプレー
溶媒への顔料の事前分散を行った。54gの疎水性炭素顔料を、355gのアセトンに3分間にわたり徐々に添加し、高剪断ミキサーを使用して5000rpmでさらに2分間撹拌した。これに、44gの結合剤を添加し、混合物を7000rpmでさらに2分間撹拌し、120%の顔料対結合剤比率および8:1の溶媒比率とした。得られた塗料を、Badger(登録商標)150サイフォン供給式エアブラシを使用して、40psiの圧力および典型的な大気条件でスプレーした。1つのビードブラスト加工アルミニウムクーポンにスプレーすると、1.919%の550nmでのTHR値が得られた。クーポンの質量は、0.171gであり、その密度は0.865g/cm3と計算された。
【0052】
反例19-酢酸ビニルベースコポリマーのポリマー結合剤、8:1溶媒比率、120%PTB-溶媒としてアセトン-70psiで過度に近接してスプレー
溶媒への顔料の事前分散を行った。54gの疎水性炭素顔料を、355gのアセトンに3分間にわたり徐々に添加し、高剪断ミキサーを使用して5000rpmでさらに2分間撹拌した。これに、44gの結合剤を添加し、混合物を7000rpmでさらに2分間撹拌し、120%の顔料対結合剤比率および8:1の溶媒比率とした。得られた塗料を、Badger(登録商標)150サイフォン供給式エアブラシを使用して、70psiの圧力および典型的な大気条件でスプレーした。1つのビードブラスト加工アルミニウムクーポンにスプレーすると、2.297%の550nmでのTHR値が得られた。クーポンの質量は、0.0616gであり、その密度は0.955g/cm3と計算された。
【0053】
例20-酢酸ビニルベースコポリマーのポリマー結合剤、8:1溶媒比率、120%PTB-溶媒としてアセトンを使用
溶媒への顔料の事前分散を行った。54gの疎水性炭素顔料を、355gのアセトンに3分間にわたり徐々に添加し、高剪断ミキサーを使用して5000rpmでさらに2分間撹拌した。これに、44gの結合剤を添加し、混合物を7000rpmでさらに2分間撹拌し、120%の顔料対結合剤比率および8:1の溶媒比率とした。得られた塗料を、Badger(登録商標)150サイフォン供給式エアブラシを使用して、30psiの圧力および典型的な大気条件でスプレーした。1つのビードブラスト加工アルミニウムクーポンにスプレーすると、1.031%の550nmでのTHR値が得られた。クーポンの質量は、0.0862gであり、その密度は0.414g/cm3と計算された。
【0054】
エッチングされた例
例21
塗料の調製:
0.5Lのバッチを調製するために、3分間にわたり粉末を徐々に添加することにより、62gの炭素顔料を355gのアセトンに事前分散させる。Silverson(登録商標)L5M機器で角穴高剪断混合ヘッドを使用して、5000rpmで合計5分間混合物を撹拌し、発熱および溶媒の蒸発を最小限にするために水浴で冷却する。44gの結合剤(高顔料容量酢酸ビニルコポリマー)媒体を量り取り、顔料/溶媒に徐々に添加し、7000rpmでさらに2分間、または、混合物の液滴をガラススライド上に滴下して不均一性を観察することで明らかとなるように均一分散に達するまで撹拌する。スプレーにより塗布するのに十分薄い混合物を達成するためには、結合剤に対する溶媒の比率は8:1であり、顔料対結合剤の質量比率は140%である。材料の加熱を回避するように注意が必要である。
【0055】
塗料の塗布:
圧縮空気供給式スプレーガンを使用して、0.2~0.4MPaの圧力で塗料を塗布する。ガンは、過剰の溶媒による塗料の湿潤および液だれ/筋の形成を制限するために、基板から10~30cmの距離に保持するべきである。ガンを過度に近接して保持すると、過剰の溶媒がそれを流動させて固体フィルムとして合一させるため、黒色コーティング様固形塗料が形成する。これは、5%超の反射率を有する。1%の反射率を達成するためには、表面はテクスチャ化されて完全フィルム形成を回避しなければならず、したがって、塗料の流体流速は、良好な微粒子化および低い表面の濡れを達成するために最小限化されるべきである。コーティングの粗度は、厚さと共に30~50μmの理想粗度平均(Ra)まで増加する。
【0056】
塗料のエッチング:
O2エッチングを使用して、数百ナノメートル程度の追加の細孔および空洞を形成することによりコーティングの黒色度を増加させる。材料の層を除去するのではなく微細孔を形成するように選択的にコーティングをエッチングするには、エッチング副生成物のエッチング選択性に対する影響を制限するために低出力およびO2の高流量/圧力が必要である。チャンバは、回転ベーンポンプまたは同様のポンプを使用して10-1~10-2Torrまで排気される。標準条件は、100~300sccm O2で0.1W/cm2、P=1~2Torr、室温である。エッチングにより除去される材料の質量は、全コーティング質量の約3%である。反射率は、550nmで約1~1.3%から0.5%未満まで減少する。
【0057】
疎水性コーティング:
O2エッチング後、表面は親水性となる。これを逆転させるためには、疎水性コーティングが施されなければならない。これは、0.4W/cm2のCF4-C2H4プラズマを10:1の比率で15秒間使用して行われる。より低い出力またはより高いC2H4濃度は、厚い灰色ポリマーの堆積をもたらすが、より高い出力は、コーティングの赤/青比率を増加させるCF4エッチングプロセスをもたらす。
【0058】
例22
塗料の調製:
0.5Lのバッチを調製するために、3分間にわたり粉末を徐々に添加することにより、43gの炭素顔料を373gの酢酸エチルに事前分散させる。Silverson(登録商標)L5M機器で角穴高剪断混合ヘッドを使用して、5000rpmで合計5分間混合物を撹拌し、発熱および溶媒の蒸発を最小限にするために水浴で冷却する。27gの結合剤(高顔料容量酢酸ビニルコポリマー)媒体を量り取り、顔料/溶媒に徐々に添加し、7000rpmでさらに2分間、または、混合物の液滴をガラススライド上に滴下して不均一性を観察することで明らかとなるように均一分散に達するまで撹拌する。スプレーにより塗布するのに十分薄い混合物を達成するためには、結合剤に対する溶媒の比率は14:1であり、顔料対結合剤の質量比率は160%である。材料の加熱を回避するように注意が必要である。
【0059】
塗料の塗布:
圧縮空気供給式スプレーガンを使用して、0.2~0.4MPaの圧力で塗料を塗布する。ガンは、過剰の溶媒による塗料の湿潤および液だれ/筋の形成を制限するために、基板から10~30cmの距離に保持するべきである。ガンを過度に近接して保持すると、過剰の溶媒がそれを流動させて固体フィルムとして合一させるため、黒色コーティング様固形塗料が形成する。これは、5%超の反射率を有する。1%の反射率を達成するためには、表面はテクスチャ化されて完全フィルム形成を回避しなければならず、したがって、塗料の流体流速は、良好な微粒子化および低い表面の濡れを達成するために最小限化されるべきである。コーティングの粗度は、厚さと共に30~50μmの理想粗度平均(Ra)まで増加する。
【0060】
塗料のエッチング:
O2エッチングを使用して、数百ナノメートル程度の細孔および空洞を形成することによりコーティングの黒色度を増加させる。材料の層を除去するのではなく微細孔を形成するように選択的にコーティングをエッチングするには、エッチング副生成物のエッチング選択性に対する影響を制限するために低出力およびO2の高流量/圧力が必要である。チャンバは、回転ベーンポンプまたは同様のポンプを使用して10-1~10-2Torrまで排気される。標準条件は、100~300sccm O2で0.1W/cm2、P=1~2Torr、室温である。エッチングにより除去される材料の質量は、全コーティング質量の約3%である。反射率は、550nmで約1~1.3%から0.5%未満まで減少する。パルス出力の使用は、チャンバ内の反応性種の増加を低減することにより、エッチングの選択性(吸光度の増加/除去質量)を改善する。パルスは、源のオンおよびオフ状態の間を1~10kHzの周波数、50%の負荷サイクルで振動させることで行われる。
【0061】
疎水性コーティング:
O2エッチング後、表面は親水性となる。これを逆転させるためには、疎水性コーティングが施されなければならない。これは、0.6W/cm2のCF4-C2H4プラズマを10:1の比率で20秒間使用して行われる。より低い出力またはより高いC2H4濃度は、厚い灰色ポリマーの堆積をもたらすが、より高い出力は、コーティングの赤/青比率を増加させるCF4エッチングプロセスをもたらす。
【0062】
例23
塗料の調製:
より粘稠性の結合剤媒体(ポリ酢酸ビニルホモポリマー)のために、薄めた結合剤溶液に顔料を直接添加することができる。0.5Lのバッチを調製するために、100gの結合剤を400gの酢酸エチルに添加した。均一な乳白色溶液が得られるまで単に振盪することにより、これらを組み合わせる。これに、粉末を3分間にわたり徐々に添加することにより、80gの炭素顔料を添加する。Silverson(登録商標)L5M機器で角穴高剪断混合ヘッドを使用して、5000rpmで合計5分間混合物を継続的に撹拌し、発熱および溶媒の蒸発を最小限にするために水浴で冷却する。混合物の液滴をガラススライド上に滴下して不均一性を観察することで明らかとなるように、均一分散に達するまで混合物を撹拌する。スプレーにより塗布するのに十分薄い混合物を達成するためには、結合剤に対する溶媒の比率は4:1であり、顔料対結合剤の質量比率は80%である。材料の加熱を回避するように注意が必要である。
【0063】
塗料の塗布:
圧縮空気供給式スプレーガンを使用して、0.2~0.4MPaの圧力で塗料を塗布する。ガンは、過剰の溶媒による塗料の湿潤および液だれ/筋の形成を制限するために、基板から10~30cmの距離に保持するべきである。ガンを過度に近接して保持すると、過剰の溶媒がそれを流動させて固体フィルムとして合一させるため、黒色コーティング様固形塗料が形成する。これは、5%超の反射率を有する。1%の反射率を達成するためには、表面はテクスチャ化されて完全フィルム形成を回避しなければならず、したがって、塗料の流体流速は、良好な微粒子化および低い表面の濡れを達成するために最小限化されるべきである。コーティングの粗度は、厚さと共に30~50μmの理想粗度平均(Ra)まで増加する。
【0064】
塗料のエッチング:
O2エッチングを使用して、数百ナノメートル程度の追加の細孔および空洞を形成することによりコーティングの黒色度を増加させる。材料の層を除去するのではなく微細孔を形成するように選択的にコーティングをエッチングするには、エッチング副生成物のエッチング選択性に対する影響を制限するために低出力およびO2の高流量/圧力が必要である。チャンバは、回転ベーンポンプまたは同様のポンプを使用して10-1~10-2Torrまで排気される。標準条件は、100~300sccm O2で0.1W/cm2、P=1~2Torr、室温である。エッチングにより除去される材料の質量は、全コーティング質量の約3%である。反射率は、550nmで約1~1.3%から0.5%未満まで減少する。
【0065】
疎水性コーティング:
O2エッチング後、表面は親水性となる。これを逆転させるためには、疎水性コーティングが施されなければならない。これは、0.4W/cm2のCF4-C2H4プラズマを10:1の比率で15秒間使用して行われる。より低い出力またはより高いC2H4濃度は、厚い灰色ポリマーの堆積をもたらすが、より高い出力は、コーティングの赤/青比率を増加させるCF4エッチングプロセスをもたらす。
【0066】
例24
塗料の調製:
より粘稠性の結合剤媒体(ポリ酢酸ビニルホモポリマー)のために、薄めた結合剤溶液に顔料を直接添加することができる。0.5Lのバッチを調製するために、50gの結合剤を400gの酢酸エチルに添加した。均一な乳白色溶液が得られるまで単に振盪することにより、これらを組み合わせる。これに、粉末を3分間にわたり徐々に添加することにより、40gの炭素顔料を添加する。Silverson(登録商標)L5M機器で角穴高剪断混合ヘッドを使用して、5000rpmで合計5分間混合物を継続的に撹拌し、発熱および溶媒の蒸発を最小限にするために水浴で冷却する。混合物の液滴をガラススライド上に滴下して不均一性を観察することで明らかとなるように均一分散に達するまで、混合物を撹拌する。スプレーにより塗布するのに十分薄い混合物を達成するためには、結合剤に対する溶媒の比率は8:1であり、顔料対結合剤の質量比率は80%である。材料の加熱を回避するように注意が必要である。
【0067】
塗料の塗布:
圧縮空気供給式スプレーガンを使用して、0.2~0.4MPaの圧力で塗料を塗布する。ガンは、過剰の溶媒による塗料の湿潤および液だれ/筋の形成を制限するために、基板から10~30cmの距離に保持するべきである。ガンを過度に近接して保持すると、過剰の溶媒がそれを流動させて固体フィルムとして合一させるため、黒色コーティング様固形塗料が形成する。これは、5%超の反射率を有する。1%の反射率を達成するためには、表面はテクスチャ化されて完全フィルム形成を回避しなければならず、したがって、塗料の流体流速は、良好な微粒子化および低い表面の濡れを達成するために最小限化されるべきである。コーティングの粗度は、厚さと共に30~50μmの理想粗度平均(Ra)まで増加する。
【0068】
塗料のエッチング:
O2エッチングを使用して、数百ナノメートル程度の追加の細孔および空洞を形成することによりコーティングの黒色度を増加させる。材料の層を除去するのではなく微細孔を形成するように選択的にコーティングをエッチングするには、エッチング副生成物のエッチング選択性に対する影響を制限するために低出力およびO2の高流量/圧力が必要である。チャンバは、回転ベーンポンプまたは同様のポンプを使用して10-1~10-2Torrまで排気される。標準条件は、100~300sccm O2で0.1W/cm2、P=1~2Torr、室温である。エッチングにより除去される材料の質量は、全コーティング質量の約3%である。反射率は、550nmで約1~1.3%から0.5%未満まで減少する。
【0069】
疎水性コーティング:
O2エッチング後、表面は親水性となる。これを逆転させるためには、疎水性コーティングが施されなければならない。これは、0.4W/cm2のCF4-C2H4プラズマを10:1の比率で15秒間使用して行われる。より低い出力またはより高いC2H4濃度は、厚い灰色ポリマーの堆積をもたらすが、より高い出力は、コーティングの赤/青比率を増加させるCF4エッチングプロセスをもたらす。
【0070】
さらなる実験結果
図2A、2Bおよび2Cは、例24-8:1の溶媒:結合剤(ホモポリマー)、80%PTBから収集されたデータを包含する。
【0071】
配合物は、乾燥するにつれて平坦化する刷毛塗り塗料と対照的に、粗い光学構造が形成され得るようにスプレー塗布されることが望ましかった。スプレーのために、配合物は、エアロゾル形成を補助する揮発性溶媒を含まなければならない。溶媒は、通常の塗料のようにコーティングを十分高密度化および平坦化するように、十分揮発性であり、塗布される塗料構造内に蓄積しないものであるべきである。したがって、顔料は、溶媒中で分散性および安定であると共に、結合剤媒体と適合性でなければならない。
【0072】
微粒子のサイズ/種類対反射率:
顔料の微小粒子サイズは、光の良好な吸収を、ひいてはより高い着色力を確実にすることがよく知られている。カーボンブラックは、一次粒子サイズが5nmに至るというその微小サイズに起因して、効果的な顔料としてよく知られている。微小顔料粒子の高い表面積/体積比率が、効率的な光捕捉を可能にする。しかしながら、微小粒子に起因して、カーボンブラックはファンデルワールス相互作用を受け、少なくとも80~800nmの範囲内の凝集体が形成される。衛生および安全性の理由から、炭素は多くの場合、粉塵形成を低減するためにさらに圧密され、またペレットまたはビーズとして販売され得る。この試験では、37~149μmおよび50~100nmの供給サイズ範囲の炭素を比較した。高剪断混合を使用して顔料を分散させたが、顔料のサイズは低減するものの最終サイズはまだ不明である。大きいメッシュの炭素塗料は、NIR範囲でのみ改善し、エッチングにより可視範囲で著しく改善することはあまりないことが判明した。グラフェンナノプレートレットもまた5~50nmのサイズ範囲内であるため、これらもまた比較した(添加剤として-コストのため)。しかしながら、それを含むことによる明確な利点は観察され得なかった。
【0073】
VBX-1による可視光吸収の大きな改善は、結合剤マトリックスを除去して、SEM分析により証明される100~700nm範囲内の空洞を形成したことに起因すると考えられる。最も効果的なエッチングでは、結合剤マトリックスが選択的に除去され、それにより顔料粒子のより広い表面積が露出すると共に、構造内の空洞が開放される。結合剤の除去により形成される大きな数百ナノメートルの空洞は、効果的な光の透過および捕捉を可能にする。
図1のSEM画像から、20~100nmの範囲内であるがより大きな凝集体の一部としての粒子が数多く観察される。
【0074】
結合剤:
酢酸ビニル(VA)ベース結合剤は、アクリルベース結合剤よりも良好な炭素顔料の安定化作用を有すると思われる。VA結合剤は、展着性、良好な湿潤粘着強度、良好な接着、優れた湿潤および乾燥引張強度、洗濯およびドライクリーニングに対する耐久性、塩安定性、ならびにヒートシール性に関して優れた特性を示し、したがってコーティング技術において広範に使用される。試験したアクリルベース結合剤は、はるかに高い含水量を有し、これは炭素の不安定化の原因となり得る。現在、製造者は、おそらくは1つの酢酸ビニル基および1つの(メタ)アクリル酸基を有する二官能性または共官能性結合剤を製造することが極めて多く、これはより高い顔料投入量およびより広範囲の異なる顔料の種類を可能にする。
【0075】
好ましい結合剤は、ポリ酢酸ビニルおよびLDM2454(酢酸ビニル、ネオデカン酸ビニル、および(メタ)アクリル酸エステル)である。
【0076】
顔料粒子と結合剤官能基との間の相互作用は、非常に弱い分子間力、例えば水素結合および双極子相互作用に主に起因する。したがって、顔料結合剤相互作用と顔料溶媒相互作用との間の競合がコロイド粒子の安定性に影響し、またこれが考慮される必要がある。結合剤の初期の良好な溶媒和のための溶媒と結合剤との間の類似性を確保するために、また顔料と溶媒との間の相互作用のバランスが期待され得るように、酢酸エチルが好ましい溶媒として選択された。アセトンもまた、溶媒として効果的であることが明らかとなり、一方エタノールは安定なコロイドを生成しなかった。これは、現在使用されている顔料(Emperor 2000および1600)との間の関連する相互作用が、溶媒および結合剤の両方に存在するカルボニル(=O)基によるものであることを示唆している。
【0077】
コーティング特性:
コーティングの構造は、メタマテリアル、すなわち天然材料中には通常見られない特性を示すような構造を有する合成複合材料の構造であると考えられる。これは、コーティングの構造および細孔度が反射性に大きく影響することを意味する。好ましい構造および細孔度を達成するためには、スプレー法に関する主な問題は、溶媒の蒸発および結合剤/顔料相の乾燥を制御することである。表面における炭素の顕著な露出をもたらすために好ましい100%顔料/結合剤(結合剤顔料投入容量に依存する)質量比率を超える極めて高い顔料投入量を有する塗料の配合もまた重要である。溶媒の選択および比率は、粘度および乾燥に影響し、したがって周囲温度またはガンの状態等の他の変化に対応するように変更され得る。
【0078】
コーティングされている部分の表面に衝突した際に塗料が過度に湿潤している場合、塗料は広がって滑らかとなり、1%(550nmで)よりも2%に近い反射率をもたらす傾向がある。エッチング後の最大の改善は、開始値の固定のパーセンテージ(最大80%)に近くなり、したがって2%の開始値は最小で0.4%まで低減し、一方1%のコーティングは理論的には0.2%に達し得る。しかしながら、0.5%未満の反射率を有するエッチングされた塗料には、ある範囲の開始値が使用され得る。
【0079】
混合物が過度に乾燥した状態で表面に衝突する場合、粘着性フィルムを形成するのに十分なエネルギーはなく、コーティングの非常に低い完全性がもたらされる。この状態を達成するためには、好ましい空気圧(流体流速に影響する)、距離、温度、湿度および粘度が維持されなければならない。
【0080】
スプレー距離の影響は、
図2Aおよび2Bに見ることができる。
【0081】
反射率に対する溶媒比率の増加の影響は、
図2Cに見ることができる。溶媒比率が理想値を超えて増加すると、反射率が増加する。過剰の溶媒が使用される場合、塗装されている基板が過度に湿潤する。これは、コーティングの平滑化および高密度化をもたらし、反射率がより高くなる。
【0082】
エッチング化学:
O2またはO2/N2プラズマを使用して塗料を効果的にエッチングし、光空洞を形成することができる。これまで、CF4含有プラズマを使用するいずれの試みも、あまりに侵攻性であり、極めて短期間で極めて高い質量損失をもたらしていた。アルゴンエッチングは非選択的であり、灰色コーティングを生成するのみであった。我々は、エッチング選択性をΔR/Δmと定義し、Rを反射率、mをmgでの質量と定義した。質量損失の低い極めて選択的なエッチングは、初めはより短い波長を吸収することができる微小空洞を形成するのみであり、したがってエッチングは、1に近い許容R/B比率が達成される点まで継続されなければならない。これは数分(3~4分)程度であり、連続波プラズマまたはパルスプラズマで行うことができる。チャンバ内で結合剤の分解が分解生成物としての酢酸を生成し、これが活性酸素種を消費することによりエッチング速度を改変し得るため、エッチングされている部分の面積もまた考慮されなければならない。高流量のO2および高圧を使用することにより、十分な供給量の反応性酸素が供給されて、チャンバのフルサイズ(400×400mm)にわたりプレートを均一にエッチングし得る。
【0083】
疎水性コーティングステップ:
塗料の粗度および大きな空洞に起因して、すべての隙間への透過を確実にするために疎水性コーティングを使用することが好ましい。このために、10:1の比率のCF4-C2H4プラズマと共に0.4W/cm
2の出力を15秒間使用した。より低い出力(0.2W/cm
2および0.3W/cm
2)では、コーティングは最初は疎水性であるが経時的に劣化するようである。チャンバ内の均一性も、この出力では良好ではなく、電極の縁および角部では大幅により大きな劣化が見られる。より低いHC含量で0.4W/cm
2を用いると、CF4がコーティングを大きくエッチングし、性能の低下、最も顕著には赤/青比率の増加をもたらす。これは、
図3の右側の図に見ることができる。CF4エッチング速度を制限するためには、HC比率を増加させ、出力を制限する。
【0084】
赤/青比率は、2つの異なる波長、すなわち650nm(赤)および475nm(青)におけるパーセント反射率の比率として定義される。これは試料の赤みにおいては明らかに見え、黒色は強い光の下ではより茶色である。
【0085】
出力を0.4W/cm2に増加させ、CF4:C2H4比率を少なくとも8:1に維持することにより、極めて短期間で効果的および安定な疎水性コーティングが堆積され得、反射率値への影響は最小限である。結露試験条件下では試料は依然としてわずかに分解することが観察され、最も顕著な影響は、クーポンの縁付近に現れるいくつかのピンホールである。しかしながら、この結露試験後、コーティングは全体として液体の水に対してまだ疎水性であり、これはコーティングがまだ安定で適切な状態にあることを示している。
【0086】
図4に示される顕微鏡写真は、エッチング前のコーティング(VBX-2、上の画像)およびエッチング後のコーティング(VBX-1、下の画像)の微細構造を示す。これらの2つの画像から、エッチング後、大きなフィーチャ(>10μm)においては有意な差は見られないことが明らかであるが、より高解像度(
図1)では、結合剤が選択的に除去されており、顔料表面がより露出していることが示されている。
【0087】
記載された実施形態および従属請求項の全ての任意選択および好ましい特徴および修正は、本明細書で教示された本発明の全ての態様において使用可能である。さらに、従属請求項の個々の特徴、ならびに記載された実施形態の全ての任意選択および好ましい特徴および修正は、互いに組み合わせることができ、また互いに交換可能である。
【0088】
本出願が優先権を主張する英国特許出願第1716503.6号、およびこの出願に付属する要約における開示は、参照により本明細書に組み込まれる。