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特許6999995動物患者用対応提案システム、動物患者用対応提案端末及び動物患者用対応提案プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】動物患者用対応提案システム、動物患者用対応提案端末及び動物患者用対応提案プログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/20 20180101AFI20220112BHJP
【FI】
G16H50/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021533749
(86)(22)【出願日】2020-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2020014790
【審査請求日】2021-07-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515158272
【氏名又は名称】株式会社PECO
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 純
【審査官】関 博文
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0091403(US,A1)
【文献】米国特許第05315505(US,A)
【文献】特開2005-242395(JP,A)
【文献】天野 孝一,イノベーションを実現するビッグデータ活用,FUJITSU,日本,富士通株式会社,2015年07月01日,第66巻, 第4号,pp.98-104
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物患者に対する診断結果情報を含む動物患者データベースと、前記診断結果情報に複数の動物種の夫々が関連付けられた対応候補を含む対応データベースとが格納されている記憶手段、
前記対応データベースを参照し、前記診断結果情報に基づいて前記対応候補を抽出する抽出手段、
抽出された前記対応候補をユーザに対して選択操作が可能に表示する表示手段、
選択された前記対応候補に関する情報を出力する出力手段、
表示した前記対応候補の前記ユーザによる前記選択操作に基づいて価値を更新する評価値更新手段、
を備え、
前記対応候補は、前記診断結果情報に前記評価値と共に関連付けられており、
前記抽出手段は、前記評価値に基づいて前記対応候補を抽出し、
前記記憶手段は、前記ユーザの属性情報を記憶しており、
前記評価値に対する前記更新の度合いは、前記ユーザの前記属性情報に基づいて定められる、
動物患者用対応提案システム。
【請求項2】
請求項1に記載の動物患者用対応提案システムであって、
前記動物患者データベースは、問診情報、身体所見情報、現病歴情報、検査履歴情報、処置履歴情報、投薬歴情報又は処方履歴情報のいずれかを含み、
前記対応データベースは、前記動物患者データベースから選択される二以上の選択情報に関連付けられた前記対応候補を含み、
前記抽出手段は、前記対応データベースを参照し、前記選択情報に基づいて前記対応候補を抽出する、
動物患者用対応提案システム。
【請求項3】
請求項2に記載の動物患者用対応提案システムであって、
前記動物患者データベースは、前記身体所見情報として当該動物患者の体重情報を有し、
前記対応データベースは、前記対応候補として、前記体重情報に基づいて変動される薬量パラメータが関連付けられた薬剤候補を含む動物患者用対応提案システムにおいて、
前記抽出手段が前記薬剤を抽出した場合に、前記体重情報に基づいて前記薬量パラメータを更新する更新手段を更に含み、
前記表示手段は、抽出された前記薬剤と、更新された前記薬量パラメータとを表示する、
動物患者用対応提案システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の動物患者用対応提案システムであって、
評価更新手段は、他の端末における他のユーザによる前記選択操作に基づいても前記評価値を更新する、
動物患者用対応提案システム。
【請求項5】
携行可能な動物患者用対応提案端末であって、
動物患者に対する診断結果情報を含む動物患者データベースと、前記診断結果情報に複数の動物種の夫々が関連付けられた対応候補を含む対応データベースとが格納されている記憶手段と、
前記対応データベースを参照し、前記診断結果情報に基づいて前記対応候補を抽出する抽出手段と、
抽出された前記対応候補をユーザに対して選択操作が可能に表示する表示手段、
選択された前記対応候補に関する情報を出力する出力手段、
表示した前記対応候補の前記ユーザによる前記選択操作に基づいて価値を更新する評価値更新手段、
を備え、
前記対応候補は、前記診断結果情報に前記評価値と共に関連付けられており、
前記抽出手段は、前記評価値に基づいて前記対応候補を抽出し、
前記記憶手段は、前記ユーザの属性情報を記憶しており、
前記評価値に対する前記更新の度合いは、前記ユーザの前記属性情報に基づいて定められる、
動物患者用対応提案端末。
【請求項6】
動物患者に対する診断結果情報を少なくとも含む動物患者データベースと、少なくとも前記診断結果情報に複数の動物種の夫々が関連付けられた対応候補を含む対応データベースとが格納されている記憶手段、
前記対応データベースを参照し、前記診断結果情報に基づいて前記対応候補を抽出する抽出手段、
抽出された前記対応候補をユーザに対して選択操作が可能に表示する表示手段、
選択された前記対応候補に関する情報を出力する出力手段、
表示した前記対応候補の前記ユーザによる前記選択操作に基づいて価値を更新する評価値更新手段としてタッチディスプレイデバイスを有し携行可能な動物患者用対応提案端末を機能させ、
前記対応候補は、前記診断結果情報に前記評価値と共に関連付けられており、
前記抽出手段は、前記評価値に基づいて前記対応候補を抽出し、
前記記憶手段は、前記ユーザの属性情報を記憶しており、
前記評価値に対する前記更新の度合いは、前記ユーザの前記属性情報に基づいて定められる、
動物患者用対応提案プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物患者用対応提案システム、動物患者用対応提案端末及び動物患者用対応提案プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人間患者の診察を電子化処理するソリューションは様々な者が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、病院や診療所等の医療機関及び介護施設並びに患者自宅等における受付、予診、診察、診療報酬計算、及び会計までの一連の業務を電子カルテを用いて支援する方法が開示されている。
【0004】
このような方法は、操作が不慣れな者にとっては余計に時間がかかる場合がある。そこで、電子カルテの入力作業を軽減する技術が提案されている。例えば、特許文献2及び特許分文献3に記載の技術はいずれも、入力しようとしている内容を予め予測して表示することにより、入力作業の負荷を低減するための技術である。
【0005】
また、特許文献4には、複数の患者の中から特定の疾患に対して比較的高い発症リスクを有する患者群を抽出して推定する技術が開示され、特許文献5には、既往歴とバイタルデータから異常(診断)を推定する技術が開示されている。いずれの技術も、入力された情報に基づいて何らかの推定を表示するという点で作業者の入力不可を図ろうとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-191389号公報
【文献】特開2004-213678号公報
【文献】特開2017-162037号公報
【文献】特開2019-86839号公報
【文献】特許6558700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特に動物を患者とする診療の場合、人間の診療とは異なり、動物種や個体差によって適応できる検査、診断、処置、投薬及び処方が根本的に異なることから、それらを反映した新規な提案システムの提供が期待される。
【0008】
そこで、本発明では、より簡易で精度が高く合わせて獣医療という分野特有の課題を解決することのできる提案システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、
動物患者情報と;検査結果情報と;診断情報と;を記憶する記憶手段、
前記動物患者情報と前記検査結果情報とに基づいて、前記診断情報から少なくとも一の対応候補を抽出する抽出手段、及び
抽出された前記対応候補を提案する提案手段を備える、
動物患者用対応提案システム
が得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より簡易で精度が高く合わせて獣医療という分野特有の課題を解決することのできる提案システムを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態による提案システムが実行される動物病院端末の機能ブロック図である。
図2】本発明の実施の形態による提案システムにおける対応レコメンドモジュールの構成例を示す図である。
図3】動物患者データベースの構成例である。
図4】レコメンドデータベースのイメージ図である。
図5】提案システムの処理フローを示す図である。
図6】レコメンドに利用する情報の組み合わせを説明したイメージ図である。
図7】本発明の変形例による対応レコメンドモジュールの構成例を示す図である。
図8図7の変形例による提案システムの処理フローを示す図である。。
図9図7の変形例による提案システムのレコメンドデータベースのイメージ図である。
図10】対応候補を表示する表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、実施形態に示される構成要素のすべてが、本発明の必須の構成要素であるとは限らない。
【0013】
[項目1]
動物患者に対する診断結果情報を含む動物患者データベースと、前記診断結果情報に関連付けられた対応候補を含む対応データベースとが格納されている記憶手段、
前記対応データベースを参照し、前記診断結果情報に基づいて前記対応候補を抽出する抽出手段、
抽出された前記対応候補をユーザに対して選択操作が可能に表示する表示手段、
選択された前記対応候補に関する情報を出力する出力手段、
を備える
動物患者用対応提案システム。
[項目2]
項目1に記載の動物患者用対応提案システムであって、
前記動物患者データベースは、問診情報、身体所見情報、現病歴情報、検査履歴情報、処置履歴情報、投薬歴情報又は処方履歴情報のいずれかを含み、
前記対応データベースは、前記動物患者データベースから選択される二以上の選択情報に関連付けられた前記対応候補を含み、
前記抽出手段は、前記対応データベースを参照し、前記選択情報に基づいて前記対応候補を抽出する、
動物患者用対応提案システム。
[項目3]
項目2に記載の動物患者用対応提案システムであって、
前記動物患者データベースは、前記身体所見情報として当該動物患者の体重情報を有し、
前記対応データベースは、前記対応候補として、前記体重情報に基づいて変動される薬量パラメータが関連付けられた薬剤候補含む動物患者用対応提案システムにおいて、
前記抽出手段が前記薬剤を抽出した場合に、前記体重情報に基づいて前記薬量パラメータを更新する更新手段を更に含み、
前記表示手段は、抽出された前記薬剤と、更新された前記薬量パラメータとを表示する、
動物患者用対応提案システム。
[項目4]
項目1乃至項目3のいずれかに記載の動物患者用対応提案システムであって、
前記対応候補は、前記診断結果情報に評価値と共に関連付けられており、
前記抽出手段は、前記評価値に基づいて前記対応候補を抽出する、
動物患者用対応提案システム。
[項目5]
項目4に記載の動物患者用対応提案システムであって、
表示した前記対応候補の前記ユーザによる前記選択操作に基づいて前記評価値を更新する評価値更新手段を更に備える、
動物患者用対応提案システム。
[項目6]
項目5に記載の動物患者用対応提案システムであって、
前記評価更新手段は、他の端末における他のユーザによる前記選択操作に基づいても前記評価値を更新する、
動物患者用対応提案システム。
[項目7]
項目5又は項目6に記載の動物患者用対応提案システムであって、
前記記憶手段は、前記ユーザの属性情報を記憶しており、
前記評価値に対する前記更新の度合いは、前記ユーザの前記属性情報に基づいて定められる、
動物患者用対応提案システム。
[項目8]
携行可能な動物患者用対応提案端末であって、
動物患者に対する診断結果情報を含む動物患者データベースと、前記診断結果情報に関連付けられた対応候補を含む対応データベースとが格納されている記憶手段と、
前記対応データベースを参照し、前記診断結果情報に基づいて前記対応候補を抽出する抽出手段と、
抽出された前記対応候補をユーザに対して選択操作が可能に表示する表示手段、
選択された前記対応候補に関する情報を出力する出力手段と、
を備える
動物患者用対応提案端末。
[項目9]
動物患者に対する診断結果情報を少なくとも含む動物患者データベースと、少なくとも前記診断結果情報に関連付けられた対応候補を含む対応データベースとが格納されている記憶手段、
前記対応データベースを参照し、前記診断結果情報に基づいて前記対応候補を抽出する抽出手段、
抽出された前記対応候補をユーザに対して選択操作が可能に表示する表示手段、
選択された前記対応候補に関する情報を出力する出力手段、としてタッチディスプレイデバイスを有し携行可能な動物患者用対応提案端末を機能させる、
動物患者用対応提案プログラム。
【0014】
<概略>
本発明の実施の形態による動物患者用対応提案システム(以下「提案システム」という。)は、特に、動物病院内において獣医療従事者その他の作業者又は動物患者の飼い主等(以下「ユーザ」という。)によって操作可能な携帯端末による操作を受け付けることができるものである。
【0015】
提案システムは、主として、動物病院において行われる検査、診断、対応の大きく3つのステップを同一システム上で処理することを可能とするものであり、本実施の形態においては、特に、確定した診断結果に基づいて、適切な対応候補をレコメンドする機能を説明する。
【0016】
提案システムは、特に、基礎的な動物患者自身の情報と、来院した後に取得・入力される診断結果情報に基づいて、後述する対応データベースを参照し、当該動物患者の診断として適切な対応候補を抽出してユーザに提供する。
【0017】
<構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る提案システムが実行される動物病院端末300の機能ブロック図である。この提案システムは、一又は複数の動物病院端末のディスプレイ等を介して表示される。
【0018】
動物病院端末100は、動物病院が管理し、上述したユーザが利用する、例えば、パーソナルコンピュータやタブレット端末等の情報処理装置であるが、スマートフォンや携帯電話、PDA等により構成しても良い。特に、院内において携行可能に構成されていることが好ましい。
【0019】
また、衛生面や診察中に手を休めずに入力できる等の観点から、音声認識機能によって入力操作が可能とされていることが好ましい。この場合、当該音声認識機能にあっては、特に獣医療分野における専門用語や略語等の認識に特化されていることが好ましい。
【0020】
なお、本実施の形態による提案システムは、動物病院端末100のみで完結するものを説明するが、一部の機能をサーバ装置又は飼い主の端末において実行することとしてもよい。この場合、動物病院端末において実行されるプログラムの一部を、サーバ端末又は飼い主の端末にインストールすることで、提案システム全体を論理的に構成及び実行することとしてもよい。
【0021】
<動物病院端末300のハードウェア構成>
図1に示されるように、動物病院端末100は、通信部110と、表示操作部120と、記憶部130と、制御部140とを備える。当該構成は一例であり、その他の構成を備えていてもよい。
【0022】
通信部110は、ネットワークを介して必要に応じてサーバ端末と通信を行うための通信インタフェースである。
【0023】
表示操作部120は、ユーザが指示を入力し、制御部140からの入力データに応じてテキスト、画像等を表示するために用いられるユーザインターフェースであり、動物病院端末100がタブレット端末で構成されている場合はタッチパネル等から構成される。この表示操作部120は、記憶部130に記憶されている制御プログラムにより起動されてコンピュータ(電子計算機)である動物病院端末100により実行される。
【0024】
記憶部130は、各種制御処理や制御部140内の各機能を実行するためのプログラム、入力データ等を記憶するものであり、RAMやROM等から構成される。また、記憶部130は、サーバ端末との通信内容を一時的に記憶する。
【0025】
制御部140は、記憶部130に記憶されているプログラムを実行することにより、動物病院端末100の全体の動作を制御するものであり、CPUやGPU等から構成される。
【0026】
<対応レコメンドモジュールの機能ブロック>
図2は、本実施の形態による提案システムにおける対応レコメンドモジュール200である。対応レコメンドモジュール200は、入力又は取得された診断結果情報等を含む動物患者データベースに基づいて、当該動物患者に対する処置、投薬、処方等の対応として検討すべき対応候補をレコメンドする機能を有する。対応レコメンドモジュール200は、図1に示される記憶部130によって実現される記憶手段202と、制御部140によって実現される抽出手段208と、表示操作部120によって実現される表示手段210とで論理的に構成される。
【0027】
図2示すように、対応レコメンドモジュール200は、動物患者データベース204と、対応データベース206を含む記憶手段202を有する。なお、記憶手段202には、本実施の形態による提案システムを構成する他の情報が格納されていてもよい。
【0028】
動物患者データベース204は、本実施の形態による提案システムが管理している動物患者情報の現在及び過去の情報を格納する。動物患者データベース204に格納されている動物患者情報には、当該動物病院のみならず、グループ経営やグループ管理がされている他の動物病院の動物患者情報の全部又は一部が利用可能に含まれてもよい。
【0029】
対応データベース206は、動物患者に対して検討すべき対応候補が含まれる。対応候補としては、手術や注射等の「処置」、薬剤やワクチン等の「投薬」、自宅にて投薬を行うための「処方」の3種類がカテゴライズされ、これらが格納される。
【0030】
抽出手段208は、動物患者データベース204に基づいて対応データベース206を参照し、対応する対応候補を抽出する。抽出された対応候補は、例えば、タッチパネル等の表示手段210を介してユーザに表示され、選択操作等を受ける。
【0031】
表示手段210は、図1における表示操作部120の一部を構成するものであり、本実施の形態においてはタッチパネルが採用される。表示手段210は、抽出された対応候補をユーザに対して表示する。なお、本実施の形態における提案システムは、例えば、動物病院内における手術室や検査室等様々な場所において利用される可能性があることから、ユーザに対するレコメンド情報やその他の通知の提供方法としては視覚的な表示ではなく音声や警告音等の聴覚的な提供方法としてもよい。この場合、音声等の提示は、視覚的な提示と同時にはまたは別に行うこととしてもよい。
【0032】
<動物患者データベースの詳細>
動物患者データベース204に含まれる各動物患者情報は、例えば、図3に示す情報が含まれている。本実施の形態における動物患者データベース204は、動物患者に動物患者IDと飼い主IDとが関連付けて管理される。ここで同一の飼い主IDに対して複数の動物患者IDが関連付けられることも起こり得る。
【0033】
動物患者毎のカルテデータは、受診日毎に管理される。例えば、動物患者ID1000で識別されるユーザの電子カルテデータとして、名前、性別、種別、サイズ等の動物患者基本情報502、問診情報503、身体所見情報504、現病歴情報505、検査結果情報506、診断履歴情報507、処置履歴情報508、投薬履歴情報509、処方履歴情報510、メモ512、及び動物患者の動画/画像等の情報513、会計情報514が含まれる。ここで、動物患者基本情報502、問診情報503及びペットの動画/画像等の情報513の入力内容は、ユーザが所有する携帯端末から受信されたデータで構成されていてもよい。一方、身体所見情報504等それ以外の動物患者情報は動物病院端末100から受信されたデータで構成することができ、また、獣医師等の担当者が、動物患者の飼い主から取得した情報に基づいて動物病院端末100に入力することで受信されたデータで構成することができる。
【0034】
特に、上述した種別情報には、当該動物患者が該当する動物種情報を含む。動物種情報の例としては、イヌ、キツネ、タヌキ、フェネック、ネコ、ハムスター、モルモット、ハツカネズミ、シマリス、タイワンリス、プレーリードッグ、モモンガ、ウサギ、サル、ミニブタ、フェレット、スカンク、ロバ、ウマ(ミニチュアホース、ファラベラ)、九官鳥、ジュウシマツ、セキセイインコ、オカメインコ、ワカケホンセイインコ、文鳥、鳩、ミズガメ、リクガメ、ヤモリ、トカゲ、ヘビ、ワニ、カエル、サンショウウオ、金魚、錦鯉、熱帯魚、エビ、カブトムシ、クワガタムシ、スズムシ、水生昆虫、カマキリ、クモ、サソリ、サソリモドキ、ウデムシ、ヒヨケムシ、ムカデ、ヤスデなどが例示されるがこの限りではない。更に、イヌにおいても、犬種(犬の品種)等の下位概念が存在し得る。
【0035】
問診情報503は、飼い主から取得する主観的な情報(主訴)である。例えば、「ご飯をあまり食べていない」「足に擦り傷ができている」「太ってきた」「元気がない」「鼻水が出ている」等であり、飼い主が所有する動物を見たときに観察される症状である。問診情報は、動物病院に来院した際に問診表や問診用端末等を利用して飼い主から取得することとしてもよいし、飼い主が所有する携帯端末等で事前に入力してもらい取得することとしてもよい。
【0036】
身体所見情報504は、動物病院等において獣医師等が調べることができ、客観的な数値で表せる身体情報である。例えば「体重」「体温」「心拍」「呼吸数」等であり、以下に説明する現病歴情報505とともに必要な検査を抽出するために必要な情報である。
【0037】
現病歴情報505は、獣医師等が聴取した主観的な情報である。現病歴情報505は、上述した問診情報503と同一になる場合も多いが、例えば「喉が赤い」というように飼い主だけでは実際に確認するのが困難な項目も含まれている。また、問診情報503では「血尿が出ている」という情報が取得されたとしても、獣医師等によって診察したところ「肛門から出血している」という現病歴が聴取されることもある。
【0038】
検査結果情報506は、当該動物患者が来院して受けた検査の結果を含んでいる。検査結果には、過去の通院において受けたことのある検査結果や、検診において受けたことのある検査結果などを含めることができる。また、その際に、検査に対する反応(嫌がったかどうか等、検査自体の受容性・許容性に関する情報)を関連付けて記憶することとしてもよい。当該情報は検査をレコメンドする際の重要な指標になり得るからである。検査項目は、炎症検査、生化学検査、心機能検査、内分泌機能検査、アレルギー検査、感染症検査、微生物検査、形態学的検査と言ったように目的別にカテゴリ化されていてもよいし、血液検査、レントゲン検査、超音波検査、細胞診検査、内視鏡検査(胃カメラ、直腸鏡)、CT検査(画像検査)、病理検査のように検査の特性に応じてカテゴリ化されていることとしてもよい。
【0039】
診断履歴情報507は、少なくとも当該動物患者が過去に受けた診断の履歴を含んでいる。過去に罹患した具体的な疾患名や怪我等の情報を含めることができる。診断履歴には、過去の通院において疑われた診断に関する情報を含めてもよい。
【0040】
処置履歴情報508及び投薬履歴情報509は、当該動物患者が過去に受けた処置履歴/投薬履歴情報508、509を含む。なお、この場合においても、当該対応に対する反応(嫌がったかどうか、体調に影響を来たしたか等、処置又は投薬自体の受容性・許容性に関する情報)を関連付けて記憶することとしてもよい。項目としては、肛門腺処置、爪切処置、足裏処置、耳処置、毛抜き、眼科処置、歯科処置、エリザベスカラー・腹帯など、鍼灸処置、留置、便出し、抜糸、消毒、酸素処置、催吐処置、緊急蘇生処置、水抜き、強制給餌、洗浄、圧排、マッサージ、マイクロチップ、トリミング、カテーテル、リハビリ、手術、麻酔、入院、注射、輸血、点滴、検査、放射線治療、各種ドック、介護、衛生処置、シャンプー、しつけ、サプリメント、おやつ、避妊、去勢、ノミダニ駆除、狂犬病薬、ワクチン、フード、内用薬、点耳薬、点鼻薬、点眼薬、外用薬(軟膏・クリーム)、外用薬(消毒薬・スプレー)、外用薬、フィラリア予防などが例示できるがこの限りではない。
【0041】
処方履歴情報510は、当該動物患者が過去に処方された薬剤等の情報を含んでいる。この場合、自宅にて処方された薬剤を服用できたか否か、嫌がったかどうか、体調に影響を来たしたか等、処置又は投薬自体の受容性・許容性に関する情報をユーザの携帯端末を介して取得することとしてもよい。
【0042】
<対応データベースの詳細>
対応データベース206(図2参照)は、図4に例示するデータセット(テーブル)を有する。詳しくは、データセットは、診断(結果)と、処置と、投薬と、処方とが関連付けられて記憶される。例えば、急性膵炎という診断がなされた場合には、皮下注射という処置と、制吐薬という投薬と、膵炎急性期用抗炎症剤という薬を処方することがレコメンドされる。なお、一つの診断結果に関連付けられる対応候補は、一つであっても複数であってもよい。例えば、図4においてXXXと診断されたときのように、ある診断に関連付けられた時にレコメンドされる対応候補が、投薬と処方の二つのみであってもよい。
【0043】
データセットの処置、投薬、処方の具体例としては、上述した処置履歴情報508及び投薬履歴情報509に含まれる項目と同様の項目を利用することができる。
【0044】
<処理のフロー>
図5は、対応レコメンドモジュール200の処理の流れを説明するフローチャートの一例である。対応レコメンドモジュール200は、動物患者の診断結果情報を含む動物患者情報を読み込む(S101)。診断結果情報を含む取得した情報に基づいて、対応データベースを参照し(S102)、診断結果情報に関連付けられた対応候補を抽出する(S103)。抽出した対応候補はタッチディスプレイ等の表示手段210に表示された後(S104)、獣医師等から対応候補の選択操作を受け付ける(S105)。表示例等は後述する。
【0045】
図6に示されるように、本実施の形態によるシステムは、診断結果情報と、その他の情報(例えば、動物種情報、問診情報、身体所見情報、現病歴情報、検査履歴情報、処置履歴情報、投薬歴情報、処方履歴情報)とを含む2以上の情報を利用して対応候補をレコメンドするものである。この場合、対応データベースには、診断結果条件を必ず含み、動物種条件、問診条件、身体所見条件、現病歴条件、検査履歴条件、処置履歴条件、投薬歴条件、処方履歴条件の少なくともいずれかを含む条件との組み合わせに対して、所定の対応候補が関連付けられている。例えば、図示される対応候補1には、診断結果条件(採決の結果等)と、動物種条件(犬又は猫等)と、問診条件(主訴に関する情報等)が関連付けられている、このように、複数の条件に診断候補を関連付けることによって、より精度の高いレコメンドが可能となる。
【0046】
<変形例>
以上説明したシステムは、診断結果情報を含む動物患者情報に基づいて対応データベースから対応候補を抽出してレコメンドすることとしたが、複数の対応候補を何らかの評価値によって評価し、より確からしい対応候補としてレコメンドしてもよい。
【0047】
例えば、対応レコメンドモジュールを、図7に示すように、提案システムにおける対応レコメンドモジュール200'のような構成としてもよい。対応レコメンドモジュール200’は、入力又は取得された診断結果情報等を含む動物患者データベース204に基づいて、当該動物患者の診断として検討すべき対応候補を評価値に基づいてレコメンドする機能を構成する。本実施の形態においては、レコメンドされた対応候補のいずれの候補が選択されたかという事実に基づいて当該評価値を更新する評価値更新手段212を更に備える。その他の構成は図2に示す対応レコメンドモジュール200と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0048】
図8に示すように、本実施の形態では、対応レコメンドモジュール200’は、動物患者の診断結果情報を含む動物患者情報を読み込む(S201)。診断結果情報を含む取得した情報に基づいて対応データベースを参照し(S202)、診断結果情報に対応する関連付けられた対応候補の評価値を特定し(S203)、評価値に基づいて対応候補を表示手段210に表示する(S204)。表示した対応候補に対して、獣医師等から対応候補の選択操作を受け付ける(S205)。
【0049】
図9に示されるように、急性膵炎と診断された場合であっても、診断結果以外の情報(身体所見情報、検査結果等:図6参照)の内容によってなすべき対応の重要度が変わることからそれらを評価値として関連付けることにより、最も適切な対応をレコメンドすることとしている。
【0050】
評価値は、レコメンドすべき対応候補の確からしさを評価値として表現し記憶するものであったが、例えば、情報(身体所見情報、検査結果等)のそれぞれに評価値を関連付けておき、情報に関連付けられた評価値を合算したものを設定することとしてもよい。例えば、動物種と、身体所見情報とに評価値を関連づけておき、各情報それぞれの評価値を合算したものを算出することとしてもよい。この場合、更に、情報の内容に評価値の重みづけをすることとしてもよい。
【0051】
このように、複数の対応候補毎に評価値を算出する式を重みづけすることにより精度を高めることができる。
【0052】
以上説明したように、このような客観的な対応候補のレコメンドを行うこととすれば、対応候補の入力作業を省力化できると共に、検討すべき対応候補から漏れを防止できる。特に、経験年数が多い者や実績が高いと評価された者(「ベテラン獣医師等」と呼ぶ)と、経験年数が少ない者や実績が高くないと評価された者(「新人獣医師等」と呼ぶ)の間における、判断スキルの偏りを是正し、標準化することができる。
【0053】
<評価値の更新>
図6の評価値更新手段212は、上述した対応データベース206に含まれる評価値を、対応候補のユーザによる選択操作の事実に基づいて変更・更新することとしてもよい。これによりレコメンド機能の正確性を向上させることができる。
【0054】
また、評価値更新手段212は、他の端末(同一病院内の別の端末であるか、同一システムに接続された他の病院内の端末であるかを問わない)における他のユーザによる選択操作に基づいても評価値を変更・更新することとしてもよい。
【0055】
評価値の更新方法は、種々の方法により行うことができる。もっとも簡便な考え方としては、本システムを利用して同一事例において実際に選択され実施された対応候補について評価値を増加させる方法が考えられる。一方、提案されたものの選択されず実施もされなかった対応候補については評価値を変動させない又は減少させればよい。
【0056】
上述したベテラン獣医師等や新人獣医師等に所定の指標(経験年数等)を関連付けて利用して記憶しておき、ベテラン獣医師等による選択操作による評価値の増減に当該指標に応じた重みづけをすることとしてもよい。
【0057】
本実施の形態における評価値更新手段212は、評価値自体の更新のみならず、上述した対応候補の抽出の際に評価値に付与する重みづけや、選択操作の主体を示す指標(経験年数)もまた更新の対象とする。
【0058】
<表示例>
続いて、提案システムの表示例を説明する。図10に示すように、動物病院端末の画面は、対象とする動物患者毎に、受診日毎に生成された診察情報が関連付けられた管理される。
【0059】
画面表示例の右側の診断レコメンド領域802には、診断レコメンド機能によって3つの診断候補が提案される。獣医師は、レコメンドされた3つの診断候補から急性膵炎であると認定し、この診断結果が診断結果表示領域804に表示されている。このとき、診断を確定させるためには、確定ボタン806をスライドし、これにより診断が確定したことを表示する。
【0060】
診断が確定すると、対応レコメンド領域810に必要な対応候補が表示される。図8に示す例では、領域811に皮下注射が選択された状態である。このとき、皮下注射を組成する薬剤(ソルF、ビタミン4種、pp、pre、ブスコパン)の名称が薬剤表示領域812に表示され、薬剤の配合量が配合領域814に表示される。
【0061】
本実施の形態においては、対応候補に薬剤が含まれていた場合、当該動物患者の体重に応じて適切な投与量が計算される。薬剤の夫々には動物種毎に、体重1kgあたりの投与量が予め関連付けられており、当日に図った体重情報に基づいて、薬剤とその投与量が表示される。なお、例えば、点滴のように複数の薬剤が混合されてなる場合にもそれに含まれる各薬剤の配合量が自動計算される。
【0062】
なお、編集ボタン830を操作すると、配合量を変えるための数字の手動入力を行うことができる。これにより、錠剤を溶かし込む場合などには、1/2量に近似して投与を行うことなど、柔軟に対応することが可能となる。
【0063】
また、領域820の「履歴から探す」を選択すると、過去に対応を行った内容を領域810に反映させることができる。
【0064】
以上のようなユーザインターフェースを含む提案システムを提供することにより、動物病院の医師等の担当者は、診療データの入力とともに一元的な作業を行うことができる。特に動物を患者とする診療の場合、人間の診療とは異なり、動物種や個体差によって適応できる検査、診断、処置、投薬及び処方が根本的に異なることから、それらを反映した提案システムを提供することができる。これにより、より簡易で精度が高く合わせて獣医療という分野特有の課題を解決することのできる提案システムを提供することができる。
【0065】
以上、開示に係る実施形態について説明したが、これらはその他の様々な形態で実施することが可能であり、種々の省略、置換および変更を行なって実施することが出来る。これらの実施形態および変形例ならびに省略、置換および変更を行なったものは、特許請求の範囲の技術的範囲とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
100 動物病院端末
110 通信部
120 表示操作部
130 記憶部
140 制御部
200 対応レコメンドモジュール
202 記憶手段
204 動物患者データベース
206 対応データベース
208 抽出手段
210 表示手段
212 評価値更新手段
【要約】
【課題】より簡易で精度が高く合わせて獣医療という分野特有の課題を解決することのできる提案システムを提供すること。
【解決手段】本発明による動物患者用対応提案システムは、動物患者情報と;検査結果情報と;診断情報と;を記憶する記憶手段、前記動物患者情報と前記検査結果情報とに基づいて、前記診断情報から少なくとも一の対応候補を抽出する抽出手段、及び抽出された前記対応候補を提案する提案手段を備えている。特に動物を患者とする診療の場合、人間の診療とは異なり、動物種や個体差によって適応できる検査、診断、処置、投薬及び処方が根本的に異なることから、それらを反映した提案システムを提供することができる。
【選択図】図2
図1
図2
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図6
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図8
図9
図10