(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】架台運搬車
(51)【国際特許分類】
B60P 3/00 20060101AFI20220112BHJP
B62B 3/10 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
B60P3/00 G
B62B3/10 Z
(21)【出願番号】P 2020160597
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2020-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小塩 賢人
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】西独国特許出願公開第03842324(DE,A1)
【文献】特開2000-247125(JP,A)
【文献】特開2002-178956(JP,A)
【文献】特開2008-195528(JP,A)
【文献】特開2009-297591(JP,A)
【文献】実開昭50-150977(JP,U)
【文献】米国特許第4266795(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/00
B62B 1/00- 5/08
B62D 53/00
B60D 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引車
であるフォークリフトが連結される連結機構と、
前記
フォークリフトが備える油圧回路に接続される油圧回路接続部と、
車輪により構成される走行装置と、
板が立てかけて載せられている架台を支持する支持機構と、
前記支持機構を昇降させる昇降用油圧アクチュエータと、を備え、
前記連結機構は、前記フォークリフトが備えるフォークが差し込まれるフォーク差込口を有し、
前記支持機構は、前記昇降用油圧アクチュエータに供給される油圧に応じて、前記架台が接地しないように当該架台を持ち上げた状態と、前記架台が接地するように当該架台を降ろした状態とに切り替え可能に構成され、
前記油圧回路接続部と前記昇降用油圧アクチュエータとを接続する油路に、当該昇降用油圧アクチュエータ内の油圧の変動を抑制するアキュムレータが設けられている
ことを特徴とする架台運搬車。
【請求項2】
牽引車であるフォークリフトが連結される連結機構と、
前記フォークリフトが備える油圧回路に接続される油圧回路接続部と、
車輪により構成される走行装置と、
板が立てかけて載せられている架台を支持する支持機構と、
前記支持機構を昇降させる昇降用油圧アクチュエータと、
前記油圧回路接続部と前記昇降用油圧アクチュエータとを接続する油路に設けられて、当該昇降用油圧アクチュエータ内の油圧を制御する制御弁と、を備え、
前記制御弁は、前記フォークリフトが備える操作装置の操作に従って動作するように構成され、
前記支持機構は、前記昇降用油圧アクチュエータに供給される油圧に応じて、前記架台が接地しないように当該架台を持ち上げた状態と、前記架台が接地するように当該架台を降ろした状態とに切り替え可能に構成され、
前記制御弁と前記昇降用油圧アクチュエータとを接続する油路に、当該昇降用油圧アクチュエータ内の油圧の変動を抑制するアキュムレータが設けられている
ことを特徴とする架台運搬車。
【請求項3】
作動油圧の異なる複数の前記アキュムレータを備えている
ことを特徴とする
請求項1または2に記載の架台運搬車。
【請求項4】
前記架台に対して前記板を制震する制震機構と、
前記制震機構を動作させる制震用油圧アクチュエータと、をさらに備え、
前記制震機構は、前記制震用油圧アクチュエータに供給される油圧に応じて、前記架台に対して前記板を押さえつける状態と、前記架台に対して前記板を押さえつけない状態とに切り替え可能に構成され、
前記油圧回路接続部と前記制震用油圧アクチュエータとを接続する油路に、当該制震用油圧アクチュエータ内の油圧の変動を抑制する他のアキュムレータが設けられている
ことを特徴とする
請求項1~3のいずれか一項に記載の架台運搬車。
【請求項5】
牽引車
であるフォークリフトが連結される連結機構と、
前記
フォークリフトが備える油圧回路に接続される油圧回路接続部と、
車輪により構成される走行装置と、
板が立てかけて載せられている架台を支持する支持機構と、
前記架台に対して前記板を制震する制震機構と、
前記支持機構を昇降させる昇降用油圧アクチュエータと、
前記制震機構を動作させる制震用油圧アクチュエータと、を備え、
前記連結機構は、前記フォークリフトが備えるフォークが差し込まれるフォーク差込口を有し、
前記支持機構は、前記昇降用油圧アクチュエータに供給される油圧に応じて、前記架台が接地しないように当該架台を持ち上げた状態と、前記架台が接地するように当該架台を降ろした状態とに切り替え可能に構成され、
前記制震機構は、前記制震用油圧アクチュエータに供給される油圧に応じて、前記架台に対して前記板を押さえつける状態と、前記架台に対して前記板を押さえつけない状態とに切り替え可能に構成され、
前記油圧回路接続部と前記制震用油圧アクチュエータとを接続する油路に、当該制震用油圧アクチュエータ内の油圧の変動を抑制するアキュムレータが設けられている
ことを特徴とする架台運搬車。
【請求項6】
牽引車であるフォークリフトが連結される連結機構と、
前記フォークリフトが備える油圧回路に接続される油圧回路接続部と、
車輪により構成される走行装置と、
板が立てかけて載せられている架台を支持する支持機構と、
前記架台に対して前記板を制震する制震機構と、
前記支持機構を昇降させる昇降用油圧アクチュエータと、
前記制震機構を動作させる制震用油圧アクチュエータと、
前記油圧回路接続部と前記昇降用油圧アクチュエータおよび前記制震用油圧アクチュエータとを接続する油路に設けられて、当該昇降用油圧アクチュエータ内の油圧および当該制震用油圧アクチュエータ内の油圧を制御する制御弁と、を備え、
前記制御弁は、前記フォークリフトが備える操作装置の操作に従って動作するように構成され、
前記支持機構は、前記昇降用油圧アクチュエータに供給される油圧に応じて、前記架台が接地しないように当該架台を持ち上げた状態と、前記架台が接地するように当該架台を降ろした状態とに切り替え可能に構成され、
前記制震機構は、前記制震用油圧アクチュエータに供給される油圧に応じて、前記架台に対して前記板を押さえつける状態と、前記架台に対して前記板を押さえつけない状態とに切り替え可能に構成され、
前記制御弁と前記制震用油圧アクチュエータとを接続する油路に、当該制震用油圧アクチュエータ内の油圧の変動を抑制するアキュムレータが設けられている
ことを特徴とする架台運搬車。
【請求項7】
前記制震機構が前記架台に対して前記板を押さえつけている状態であるか否かを検知する検知装置と、
前記検知装置による検知結果を表示する表示装置と、をさらに備える
ことを特徴とする
請求項4~6のいずれか一項に記載の架台運搬車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板が立てかけて載せられている架台を運搬するための架台運搬車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
板であるガラス板が立てかけて載せられる板用架台が知られている。また、架台に車輪を設けることで運搬台車を構成し、ガラス板が載せられている運搬台車を牽引することにより工場敷地内でガラス板とともに架台を運搬することが行われている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、架台に設けられる車輪が小さいと、重い板を運搬することが困難になるという不都合がある。また、架台に設けられる車輪が大きいと、運搬台車が大型化するという不都合がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、板が立てかけて載せられる架台に車輪を設けることなく板とともに架台を運搬できる架台運搬車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の架台運搬車は、牽引車であるフォークリフトが連結される連結機構と、前記フォークリフトが備える油圧回路に接続される油圧回路接続部と、車輪により構成される走行装置と、板が立てかけて載せられている架台を支持する支持機構と、前記支持機構を昇降させる昇降用油圧アクチュエータと、を備え、前記連結機構は、前記フォークリフトが備えるフォークが差し込まれるフォーク差込口を有し、前記支持機構は、前記昇降用油圧アクチュエータに供給される油圧に応じて、前記架台が接地しないように当該架台を持ち上げた状態と、前記架台が接地するように当該架台を降ろした状態とに切り替え可能に構成され、前記油圧回路接続部と前記昇降用油圧アクチュエータとを接続する油路に、当該昇降用油圧アクチュエータ内の油圧の変動を抑制するアキュムレータが設けられていることを特徴とする。
また、請求項2に記載の架台運搬車は、牽引車であるフォークリフトが連結される連結機構と、前記フォークリフトが備える油圧回路に接続される油圧回路接続部と、車輪により構成される走行装置と、板が立てかけて載せられている架台を支持する支持機構と、前記支持機構を昇降させる昇降用油圧アクチュエータと、前記油圧回路接続部と前記昇降用油圧アクチュエータとを接続する油路に設けられて、当該昇降用油圧アクチュエータ内の油圧を制御する制御弁と、を備え、前記制御弁は、前記フォークリフトが備える操作装置の操作に従って動作するように構成され、前記支持機構は、前記昇降用油圧アクチュエータに供給される油圧に応じて、前記架台が接地しないように当該架台を持ち上げた状態と、前記架台が接地するように当該架台を降ろした状態とに切り替え可能に構成され、前記制御弁と前記昇降用油圧アクチュエータとを接続する油路に、当該昇降用油圧アクチュエータ内の油圧の変動を抑制するアキュムレータが設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の架台運搬車は、請求項1または2に記載の架台運搬車において、作動油圧の異なる複数の前記アキュムレータを備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の架台運搬車は、請求項1~3のいずれか一項に記載の架台運搬車において、前記架台に対して前記板を制震する制震機構と、前記制震機構を動作させる制震用油圧アクチュエータと、をさらに備え、前記制震機構は、前記制震用油圧アクチュエータに供給される油圧に応じて、前記架台に対して前記板を押さえつける状態と、前記架台に対して前記板を押さえつけない状態とに切り替え可能に構成され、前記油圧回路接続部と前記制震用油圧アクチュエータとを接続する油路に、当該制震用油圧アクチュエータ内の油圧の変動を抑制する他のアキュムレータが設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するため、請求項5に記載の架台運搬車は、牽引車であるフォークリフトが連結される連結機構と、前記フォークリフトが備える油圧回路に接続される油圧回路接続部と、車輪により構成される走行装置と、板が立てかけて載せられている架台を支持する支持機構と、前記架台に対して前記板を制震する制震機構と、前記支持機構を昇降させる昇降用油圧アクチュエータと、前記制震機構を動作させる制震用油圧アクチュエータと、を備え、前記連結機構は、前記フォークリフトが備えるフォークが差し込まれるフォーク差込口を有し、前記支持機構は、前記昇降用油圧アクチュエータに供給される油圧に応じて、前記架台が接地しないように当該架台を持ち上げた状態と、前記架台が接地するように当該架台を降ろした状態とに切り替え可能に構成され、前記制震機構は、前記制震用油圧アクチュエータに供給される油圧に応じて、前記架台に対して前記板を押さえつける状態と、前記架台に対して前記板を押さえつけない状態とに切り替え可能に構成され、前記油圧回路接続部と前記制震用油圧アクチュエータとを接続する油路に、当該制震用油圧アクチュエータ内の油圧の変動を抑制するアキュムレータが設けられていることを特徴とする。
また、請求項6に記載の架台運搬車は、牽引車であるフォークリフトが連結される連結機構と、前記フォークリフトが備える油圧回路に接続される油圧回路接続部と、車輪により構成される走行装置と、板が立てかけて載せられている架台を支持する支持機構と、前記架台に対して前記板を制震する制震機構と、前記支持機構を昇降させる昇降用油圧アクチュエータと、前記制震機構を動作させる制震用油圧アクチュエータと、前記油圧回路接続部と前記昇降用油圧アクチュエータおよび前記制震用油圧アクチュエータとを接続する油路に設けられて、当該昇降用油圧アクチュエータ内の油圧および当該制震用油圧アクチュエータ内の油圧を制御する制御弁と、を備え、前記制御弁は、前記フォークリフトが備える操作装置の操作に従って動作するように構成され、前記支持機構は、前記昇降用油圧アクチュエータに供給される油圧に応じて、前記架台が接地しないように当該架台を持ち上げた状態と、前記架台が接地するように当該架台を降ろした状態とに切り替え可能に構成され、前記制震機構は、前記制震用油圧アクチュエータに供給される油圧に応じて、前記架台に対して前記板を押さえつける状態と、前記架台に対して前記板を押さえつけない状態とに切り替え可能に構成され、前記制御弁と前記制震用油圧アクチュエータとを接続する油路に、当該制震用油圧アクチュエータ内の油圧の変動を抑制するアキュムレータが設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項7に記載の架台運搬車は、請求項4~6のいずれか一項に記載の架台運搬車において、前記制震機構が前記架台に対して前記板を押さえつけている状態であるか否かを検知する検知装置と、前記検知装置による検知結果を表示する表示装置と、をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、板が立てかけて載せられる架台に車輪を設けることなく板とともに架台を運搬できる架台運搬車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る架台運搬車による架台の運搬態様を示す概要図である。
【
図2】同実施形態に係る架台運搬車による架台の運搬態様を示す概要図である。
【
図3】同実施形態に係る架台運搬車の側面図である。
【
図4】同実施形態に係る架台運搬車の正面図である。
【
図5】同実施形態に係る架台運搬車の概略構成を示すブロック図である。
【
図6】(A)および(B)は、架台の運搬作業手順を示す模式図である。
【
図7】(A)および(B)は、変形例に係る架台運搬車の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して、本発明を具体化した一実施形態に係る架台運搬車1(以下「運搬車1」という)を説明する。なお、図中の矢印で示す前後方向X、左右方向Y、および、上下方向Zは、互いに直交する方向である。
【0014】
図1および
図2は、運搬車1およびフォークリフト5による架台8の運搬態様を示す図である。なお、
図2は、
図1の運搬車1を前方から見た図であって、フォークリフト5等の図示は省略されている。
【0015】
図1および
図2に示すように、運搬車1は、自力走行できない被牽引車であり、フォークリフト5が走行することで、運搬車1は、板Pが立てかけて載せられている架台8を運搬する。板Pは、ガラスにより形成された1枚または複数枚のガラス板である。
【0016】
フォークリフト5は、運搬車1を牽引する牽引車である。フォークリフト5は、運搬車1が接続されるフォーク51、外部へ作動油を供給する油圧回路52、および、オペレータ(図示略)により操作される操作装置53等を備えている。操作装置53は、例えば複数の操作レバーにより構成されている。
【0017】
架台8は、板Pが立てかけられる傾斜台81と、傾斜台81の下端部に設けられた脚部82とを備えている。脚部82は、左右方向Yに延びており、脚部82の右端部および左端部には、接地しないように形成された非接地面82Aが設けられている。本実施形態においては、複数の脚部82が、前後方向Xに互いに間隔をあけて設けられている。
【0018】
図3は、運搬車1の右側面図であり、
図4は、運搬車1の正面図である。
図3および
図4に示すように、運搬車1は、車体構造体10と、連結機構11と、油圧回路接続部12と、走行装置13と、支持機構14と、制震機構15と、昇降用油圧アクチュエータ16と、制震用油圧アクチュエータ17と、複数のアキュムレータ18A,18B,19とを備えている。
【0019】
車体構造体10は、左右方向Yにおいて間隔をあけて設けられた右メインフレーム10Aおよび左メインフレーム10B、メインフレーム10A,10Bの各後端部を連結する後部フレーム10C、ならびに、支持機構14を覆うように設けられた上部フレーム10D等により構成されている。
【0020】
連結機構11は、フォークリフト5が連結される牽引車接続部である。連結機構11は、車体構造体10の後端部に接続されており、フォーク51が差し込まれるフォーク差込口11Aを有している。
【0021】
油圧回路接続部12は、油圧回路52に接続される油路接続部材により構成されている。油圧回路接続部12を介して、各油圧アクチュエータ16,17は油圧回路52に接続され、油圧回路接続部12から各油圧アクチュエータ16,17に油圧が供給される。
【0022】
走行装置13は、運搬車1の右側部および左側部の各々に設けられている。具体的には、走行装置13は、各メインフレーム10A,10Bの下方に設けられている。走行装置13は、それぞれ、路面上を転動するタイヤ付きの車輪13A,13Bと、車輪13A,13Bを回転可能に支持する車輪支持体13Cとにより構成されている。
【0023】
支持機構14は、運搬車1の右側部および左側部に設けられた2つの走行装置13の間(すなわち、メインフレーム10A,10Bの間)に設けられており、車体構造体10のメインフレーム10A,10Bに接続されている。支持機構14は、架台8を下方から支持する。支持機構14は、架台8の右方に配置される右フレーム14Aと、架台8の左方に配置される左フレーム14Bとを備えている。右フレーム14Aの下端部には、左方に向けて突出した爪14Cが設けられるとともに、左フレーム14Bの下端部には、右方に向けて突出した爪14Dが設けられている。爪14Cは、架台8の右端部を下方から支持し、爪14Dは、架台8の左端部を下方から支持する。また、爪14C,14Dの後端部には、上方に突出した移動規制片14Eが設けられている。移動規制片14Eは、架台8と接触することにより、支持機構14に対する架台8の前後方向Xにおける相対的な移動を規制する。支持機構14は、昇降用油圧アクチュエータ16に供給される油圧に応じて、架台8が接地しないように架台8を持ち上げた状態と、架台8が接地するように架台8を降ろした状態とに切り替え可能に構成されている。
【0024】
制震機構15は、架台8の右前部、左前部、右後部、および、左後部に対応する4箇所に設けられており、車体構造体10のメインフレーム10A,10Bに接続されている。制震機構15は、架台8に対して板Pを制震する。具体的には、架台8の右前部および右後部に対応する位置に設けられた制震機構15は、架台8の右側部に立てかけられた板Pを右方から押さえることで制震し、架台8の左前部および左後部に対応する位置に設けられた制震機構15は、架台8の左側部に立てかけられた板Pを左方から押さえることで制震する。制震機構15は、それぞれ、板Pを架台8に押さえつけるためのパッド15Aと、パッド15Aを支持するアーム15B(
図2参照)とを備えている。制震機構15は、制震用油圧アクチュエータ17に供給される油圧に応じて、架台8に対して板Pを押さえつける状態と、架台8に対して板Pを押さえつけない状態とに切り替え可能に構成されている。
【0025】
昇降用油圧アクチュエータ16は、支持機構14を昇降させる油圧シリンダであって、油圧回路接続部12から供給される油圧に応じて伸縮する。昇降用油圧アクチュエータ16は、走行装置13と支持機構14とを接続しており、昇降用油圧アクチュエータ16が伸長すると支持機構14が上昇し、昇降用油圧アクチュエータ16が収縮すると支持機構14が下降するように構成されている。昇降用油圧アクチュエータ16が支持機構14を昇降させることで、支持機構14とともに車体構造体10および制震機構15も昇降するように構成されている。
【0026】
制震用油圧アクチュエータ17は、制震機構15を動作させる油圧シリンダであって、油圧回路接続部12から供給される油圧に応じて伸縮する。制震用油圧アクチュエータ17は、支持機構14と制震機構15とを接続しており、制震用油圧アクチュエータ17が伸長すると制震機構15が架台8に対して板Pを押さえつけ、制震用油圧アクチュエータ17が収縮すると制震機構15が板Pから離間するように構成されている。
【0027】
アキュムレータ18A,18Bは、油圧回路接続部12と昇降用油圧アクチュエータ16とを接続する油路に設けられている。アキュムレータ18A,18Bは、昇降用油圧アクチュエータ16内の油圧の変動を抑制する。アキュムレータ18A,18Bは、それぞれ作動油圧が異なっており、アキュムレータ18Aは、低圧における油圧変動を効果的に吸収できるように構成され、アキュムレータ18Bは、高圧における油圧変動を効果的に吸収できるように構成されている。
【0028】
アキュムレータ19は、油圧回路接続部12と制震用油圧アクチュエータ17とを接続する油路に設けられている。アキュムレータ19は、制震用油圧アクチュエータ17内の油圧の変動を抑制する。
【0029】
図5は、運搬車1の概略構成を示すブロック図である。
図5に示すように、運搬車1は、制御弁21と、電気回路接続部22と、検知装置23と、表示装置24と、灯火装置25とを備えている。
【0030】
制御弁21は、油圧回路接続部12と油圧アクチュエータ16,17とを接続する油路に設けられている。制御弁21は、油圧アクチュエータ16,17へ供給される作動油および油圧アクチュエータ16,17から排出される作動油を制御することにより、各油圧アクチュエータ16,17内の油圧を制御する。制御弁21は、操作装置53の操作に従って動作するように構成されている。
【0031】
アキュムレータ18A,18Bは、制御弁21と昇降用油圧アクチュエータ16とを接続する油路に設けられている。本実施形態では、運搬車1の右側部および左側部に設けられた2つの昇降用油圧アクチュエータ16に繋がる油路に対して、1つのアキュムレータ18Aおよび1つのアキュムレータ18Bが接続されている。
【0032】
アキュムレータ19は、制御弁21と制震用油圧アクチュエータ17とを接続する油路に設けられている。本実施形態では、運搬車1の4箇所に設けられた4つの制震用油圧アクチュエータ17に繋がる油路に対して、1つのアキュムレータ19が接続されている。
【0033】
電気回路接続部22は、フォークリフト5が備える電気回路(図示略)に接続される電線接続部材により構成されている。電気回路接続部22を介して、表示装置24および灯火装置25はフォークリフト5の電気回路に接続され、電気回路接続部22から表示装置24および灯火装置25に電力が供給される。
【0034】
検知装置23は、制震機構15が架台8に対して板Pを押さえつけている状態であるか否かを検知する。具体的には、検知装置23は、パッド15Aが板Pに当接しているか否かに応じて出力が変化するセンサにより構成される。検知装置23は、パッド15Aが板Pに当接しているとき、制震機構15が架台8に対して板Pを押さえつけている状態であることを検知する。また、検知装置23は、パッド15Aが板Pから離間しているとき、制震機構15が架台8に対して板Pを押さえつけていない状態であることを検知する。本実施形態では、検知装置23は、4つの制震機構15の状態を個別に検知できるように、制震機構15の各々に設けられた複数のセンサにより構成されている。
【0035】
表示装置24は、検知装置23による検知結果を表示する。具体的には、例えば、表示装置24は、制震機構15が架台8に対して板Pを押さえつけている状態であることが検知されたとき、赤色の光を発光するように構成されている。また、例えば、表示装置24は、制震機構15が架台8に対して板Pを押さえつけていない状態であることが検知されたとき、緑色の光を発光するように構成されている。本実施形態では、表示装置24は、4つの検知装置23の検知結果を個別に表示できるように、複数のランプにより構成されている。
【0036】
灯火装置25は、暗所での作業を支援するための周囲を照らす照明装置である。灯火装置25の点灯および消灯は、フォークリフト5が備える照明装置(図示略)の点灯および消灯と連動するように構成されている。
【0037】
次に、
図6を参照して板Pを運搬するための作業手順を説明する。なお、以下の作業は、運搬車1に連結されているフォークリフト5に搭乗しているオペレータが、操作装置53を操作することにより行われる。
【0038】
運搬車1の爪14C,14Dが脚部82の非接地面82Aよりも低い状態でフォークリフト5を前進させ、
図6(A)に示すように、爪14C,14Dを地面と非接地面82Aとの間に差し込み、全ての脚部82の下に爪14C,14Dが位置したときフォークリフト5の走行を停止させる。次いで、
図6(B)に示すように、支持機構14を上昇させ、爪14C,14Dで架台8を持ち上げる。このとき、支持機構14の上昇と同時にフォーク51を上昇させることで、架台8が前後方向Xに傾かないようにする。次いで、
図6(B)中の破線で示すように制震機構15を動作させ、パッド15Aで架台8に対して板Pを押さえつける。そして、4つの制震機構15のパッド15Aにより板Pが架台8に対して押さえつけられている状態で、フォークリフト5を後進させて、運搬車1を牽引する。こうして、フォークリフト5により牽引される運搬車1は、架台8および架台8に立てかけて載せられている板Pを運搬する。
【0039】
目的地まで板Pを運搬すると、フォークリフト5の走行を停止させ、制震機構15を動作させ、
図6(B)中の実線で示すように板Pが架台8に対して押さえつけられないように板Pからパッド15Aを離間させる。そして、
図6(A)に示すように、支持機構14を下降させ、架台8を接地させる。このとき、支持機構14の下降と同時にフォーク51を下降させることで、架台8が前後方向Xに傾かないようにする。そして、地面と非接地面82Aとの間から爪14C,14Dを抜くように、フォークリフト5を後進させる。
【0040】
本実施形態では次の効果が得られる。
(1)運搬車1は、昇降用油圧アクチュエータ16により支持機構14を昇降させることで、板Pが立てかけて載せられている架台8を持ち上げることができ、架台8を持ち上げた状態でフォークリフト5により牽引されることにより、架台8を運搬することができる。このため、架台8に車輪を設けることなく板Pとともに架台8を運搬できる。
【0041】
(2)運搬車1は、昇降用油圧アクチュエータ16内の油圧の変動を抑制するアキュムレータ18A,18Bを備えているため、運搬車1の走行に伴う支持機構14の振動を抑制できる。このため、運搬車1がアキュムレータ18A,18Bを備えていない構成に比べて、運搬時に板Pが割れることを抑制できる。
【0042】
(3)運搬車1は、制震用油圧アクチュエータ17内の油圧の変動を抑制するアキュムレータ19を備えているため、運搬車1の走行に伴う制震機構15の振動を抑制できる。このため、運搬車1がアキュムレータ19を備えていない構成に比べて、運搬時に板Pが割れることを抑制できる。
【0043】
(4)運搬車1は、検知装置23による検知結果を表示する表示装置24を備えているため、オペレータは、表示装置24を参照して、板Pが架台8に対して押さえつけられている状態であるか否かを確認することができる。
【0044】
本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、上記構成を変更することもできる。例えば、以下のように変更して実施することもでき、以下の変更を組み合わせて実施することもできる。
【0045】
・アキュムレータ19を省略してもよい。すなわち、
図7(A)に示すように、アキュムレータ18A,18Bにより油圧アクチュエータ16,17のうち昇降用油圧アクチュエータ16内の油圧変動のみが抑制されるように構成することもできる。
【0046】
・アキュムレータ18A,18Bを省略してもよい。すなわち、
図7(B)に示すように、アキュムレータ19により油圧アクチュエータ16,17のうち制震用油圧アクチュエータ17内の油圧変動のみが抑制されるように構成することもできる。
【0047】
・アキュムレータ18A,18Bに代えて1つのアキュムレータを、油圧回路接続部12と昇降用油圧アクチュエータ16とを接続する油路に設けることもできる。また、油圧回路接続部12と制震用油圧アクチュエータ17とを接続する油路に、アキュムレータ19に代えて作動油圧の異なる複数のアキュムレータを設けることもできる。
【0048】
・昇降用油圧アクチュエータ16による支持機構14の昇降が、操作装置53の操作に従って制御されずに、所定のプログラムに従って自動で制御されるように構成することもできる。また、制震用油圧アクチュエータ17による制震機構15の動作が、操作装置53の操作に従って制御されずに、所定のプログラムに従って自動で制御されるように構成することもできる。
【0049】
・制震機構15の個数および配置を適宜変更することもできる。例えば、制震機構15を、架台8の右中央部および左中央部に対応する2箇所に設けることもできる。また、制震機構15を省略することもできる。
【0050】
・フォークリフト5以外の車両により、運搬車1を牽引するように構成することもできる。すなわち、連結機構11の構成を適宜変更することもでき、牽引車はフォークリフト5に限定されない。
【0051】
・運搬車1は、ガラス板以外の板が立てかけて載せられている架台8を運搬してもよい。すなわち、ガラス以外により形成された板を運搬するために、本発明の運搬車1を用いてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 架台運搬車
5 フォークリフト(牽引車)
8 架台
11 連結機構
12 油圧回路接続部
13 走行装置
14 支持機構
15 制震機構
16 昇降用油圧アクチュエータ
17 制震用油圧アクチュエータ
18A,18B アキュムレータ
19 アキュムレータ(他のアキュムレータ)
23 検知装置
24 表示装置
P 板
X 前後方向
Y 左右方向
Z 上下方向
【要約】
【課題】板が立てかけて載せられる架台に車輪を設けることなく板とともに架台を運搬できる架台運搬車を提供する。
【解決手段】架台運搬車1は、牽引車が連結される連結機構11と、牽引車が備える油圧回路に接続される油圧回路接続部12と、車輪13A,13Bにより構成される走行装置13と、板が立てかけて載せられている架台を支持する支持機構14と、支持機構14を昇降させる昇降用油圧アクチュエータ16と、を備える。支持機構14は、昇降用油圧アクチュエータ16に供給される油圧に応じて、架台を持ち上げた状態と、架台を降ろした状態とに切り替え可能に構成され、油圧回路接続部12と昇降用油圧アクチュエータ16とを接続する油路に、昇降用油圧アクチュエータ16内の油圧の変動を抑制するアキュムレータ18A,18Bが設けられている。
【選択図】
図3