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特許7000060排水ますの補修部材、地下排水施設および排水ますの補修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】排水ますの補修部材、地下排水施設および排水ますの補修方法
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/10 20060101AFI20220112BHJP
   E03F 7/00 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
E03F5/10 Z
E03F7/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017145177
(22)【出願日】2017-07-27
(65)【公開番号】P2019027071
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】西川 明輝
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 稔
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-096696(JP,A)
【文献】実開昭58-165083(JP,U)
【文献】実開昭55-168554(JP,U)
【文献】特開平10-195971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 5/10
E03F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側方に開口した流入口、および、側方に開口し、前記流入口よりも下方に位置する流出口が形成された有底筒状のます本体を備えた排水ますの補修部材であって、
前記排水ますの前記流入口から前記ます本体内に流入した排水を受け、かつ、平面視において円形状に形成された排水受け部と、
一端が前記排水受け部に接続され、他端が前記排水ますの前記流出口に接続され、前記一端から前記他端に向かうに従って下方に傾斜した補修インバートと、
前記補修インバートの他端と連続し、前記排水ますの前記流出口に差し込まれる差込部と、
を備えた、排水ますの補修部材。
【請求項2】
側方に開口した流入口、および、側方に開口し、前記流入口よりも下方に位置する流出口が形成された有底筒状のます本体を備えた排水ますの補修部材であって、
前記排水ますの前記流入口から前記ます本体内に流入した排水を受け、かつ、平面視において円形状に形成された排水受け部と、
前記排水受け部の縁から下方に延びたガイド部と、
一端が前記排水受け部に接続され、他端が前記排水ますの前記流出口に接続され、前記一端から前記他端に向かうに従って下方に傾斜した補修インバートと、
を備え、
前記ガイド部は、前記ます本体の内周面に沿って延びている、排水ますの補修部材。
【請求項3】
側方に開口した流入口、および、側方に開口し、前記流入口よりも下方に位置する流出口が形成された有底筒状のます本体を備えた排水ますの補修部材であって、
前記排水ますの前記流入口から前記ます本体内に流入した排水を受け、かつ、平面視において円形状に形成された排水受け部と、
一端が前記排水受け部に接続され、他端が前記排水ますの前記流出口に接続され、前記一端から前記他端に向かうに従って下方に傾斜した補修インバートと、
を備え、
前記排水受け部は、前記流入口側部分の第1部材と、前記流出口側部分の第2部材とに分割される、排水ますの補修部材。
【請求項4】
前記第2部材には、前記補修インバートの一端が接続されている、請求項に記載された排水ますの補修部材。
【請求項5】
前記第2部材には、前記第1部材の端部の一部が載置される載置部が設けられている、請求項またはに記載された排水ますの補修部材。
【請求項6】
前記排水受け部は、下方に凹むように湾曲し、
前記補修インバートの一端は、排水受け部の最底部に接続されている、請求項1から5までの何れか1つに記載された排水ますの補修部材。
【請求項7】
排水ますと、
前記排水ますの補修部材と、
を備え、
前記排水ますは、側方に開口した流入口、および、側方に開口し、前記流入口よりも下方に位置する流出口が形成された有底筒状のます本体を備え、
前記補修部材は、
前記排水ますの前記流入口から前記ます本体内に流入した排水を受け、かつ、平面視において円形状に形成された排水受け部と、
一端が前記排水受け部に接続され、他端が前記排水ますの前記流出口に接続され、前記一端から前記他端に向かうに従って下方に傾斜した補修インバートと、
を備え、
前記排水ますは、地中に埋設され、
前記排水ますは、前記ます本体の底面に形成され、一端が前記流入口の下方に位置し、他端が前記流出口に接続されたインバートを備え、
前記補修部材は、前記インバートに前記補修インバートの他端が接するように、前記ます本体の内部に配置された、地下排水施設。
【請求項8】
前記ます本体はコンクリート製である、請求項に記載された地下排水施設。
【請求項9】
請求項に記載された排水ますの補修部材を用いて前記排水ますを補修する排水ますの補修方法であって、
前記補修インバートの他端が前記流出口に接続されるように、前記第2部材を前記ます本体の内部に配置する第1配置工程と、
前記第2部材の前記載置部に前記第1部材の端部の一部が載置されるように、前記第1部材を前記ます本体の内部に配置する第2配置工程と、
前記第1部材と前記第2部材との間、前記第1部材と前記ます本体との間、および、前記第2部材と前記ます本体との間に、接合剤を注入する注入工程と、
を包含する、排水ますの補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水ますの補修部材、地下排水施設および排水ますの補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、地中に埋設された排水ますが知られている。また、排水ますの一例として、コンクリート製の公共ますが知られている。コンクリート製の公共ますは、排水に含まれる成分と反応することで劣化または破損し易い。
【0003】
そこで、劣化または破損した排水ますを補修する方法として、例えば、特許文献1には、公共ますなどの排水ますを更生する更生部材を使用することが開示されている。この更生部材は、底面に形成されたインバートと、インバートの周縁部から立ち上がる立上管部とを有する排水ますに対して使用される。更生部材は、インバート上に載せられるインバート部更生部材と、立上管部の内周面に沿うように立上管部内に挿入される筒状の立上管部更生部材とを備えている。このことで、インバート部更生部材によってインバートを更生することができ、立上管部更生部材によって立上管部を更生することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5739781号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、排水ますの一例である公共ますは、事前に地中に埋設されており、建物が建設された際、例えば、排水管路を通じて、建物内のトイレ、風呂、台所の流し台などの排水設備に接続される。ここで、排水管路が埋設される深さが浅い場合には、側方に開口した流入口、および、側方に開口し、流入口よりも下方に位置する流出口が形成された有底筒状のます本体と、ます本体の底面に形成されたインバートとを備えた公共ますが使用されることがあり得る。このような公共ますでは、流入口から流入した排水は、滝落としのように流れ、インバートに叩きつけられることになる。そのため、公共ますのインバートは、特に劣化または破損がし易い。
【0006】
そこで、仮に、滝落としのように流れる公共ますであって、劣化または破損した公共ますを、特許文献1に開示された更生部材を使用して補修した場合、流入口からます本体内に流入した排水は、更生部材の底面に叩きつけられるため、飛散し易かった。また、排水が飛散することで、排水に含まれる汚物がます本体に残留することがあった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、劣化または破損した排水ますを好適に補修することが可能であり、かつ、補修したあとの排水ます内に排水を円滑に流すことが可能な排水ますの補修部材、地下排水施設、および、排水ますの補修方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る排水ますの補修部材は、側方に開口した流入口、および、側方に開口し、前記流入口よりも下方に位置する流出口が形成された有底筒状のます本体を備えた排水ますの補修部材である。前記補修部材は、排水受け部と、補修インバートとを備えている。前記排水受け部は、前記排水ますの前記流入口から前記ます本体内に流入した排水を受け、かつ、平面視において円形状に形成されている。前記補修インバートは、一端が前記排水受け部に接続され、他端が前記排水ますの前記流出口に接続され、前記一端から前記他端に向かうに従って下方に傾斜している。
【0009】
前記補修部材によれば、補修インバートの他端が排水ますの流出口に接続されるように、補修部材をます本体内に配置する。このとき、補修部材の排水受け部の少なくとも一部と、ます本体の底面との間には、空間が形成されている状態となる。よって、ます本体の底部が劣化または破損して、ます本体の底部に段差ができた場合であっても、上記段差に影響されずに、補修部材をます本体内に適切に配置することができる。よって、補修部材を使用して、劣化または破損した排水ますを好適に補修することができる。また、補修部材の排水受け部と、排水ますの流入口との上下方向の距離は、例えば排水ますの底面と流入口との上下方向の距離に比べて短い。よって、流入口から排水受け部に落ちた排水は、飛散し難い。
【0010】
本発明の好ましい一態様によれば、前記排水受け部は、下方に凹むように湾曲している。前記補修インバートの一端は、排水受け部の最底部に接続されている。
【0011】
上記態様によれば、排水受け部が下方に凹むように湾曲しているため、補修部材によって排水ますを補修した際、流入口からます本体内に流入した排水は、排水受け部によって受けられた後、補修インバートに向かって流れ易い。よって、排水受け部に排水が溜まることを抑制することができる。
【0012】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記補修インバートの他端と連続し、前記排水ますの前記流出口に差し込まれる差込部を備えている。
【0013】
上記態様によれば、排水ますの流出口に差込部を差し込んだ状態で、補修部材をます本体内に配置する。このことで、補修部材を使用して排水ますを補修する際、ます本体に対して補修部材がずれ難くすることができると共に、補修部材がます本体に対して揺動し難くなる。また、流出口に差込部を差し込むことで、ます本体に対する補修部材の位置合わせがし易い。更に、補修部材を使用して排水ますを補修した際、流出口と補修インバートとの間から排水が漏れ難くすることができる。
【0014】
本発明の好ましい他の一態様によれば、排水受け部の縁から下方に延びたガイド部を備えている。
【0015】
上記態様によれば、補修部材をます本体内に配置する際、補修部材のガイド部は、ます本体の内周面に沿って補修部材をます本体に挿入するときのガイドの役割として機能する。よって、ガイド部によって、補修部材をます本体内に挿入し易い。仮にガイド部が排水受け部の縁から上方に延びている場合、ガイド部に排水に含まれる汚物などが付着または堆積することがあり得る。しかしながら、上記態様では、ガイド部は、排水受け部の上方に位置していないため、ガイド部に汚物などが付着または堆積することを防止することができる。
【0016】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記排水受け部は、前記流入口側部分の第1部材と、前記流出口側部分の第2部材とに分割される。
【0017】
上記態様によれば、補修部材を使用して排水ますを補修する際、例えば、第2部材をます本体内に配置した後で、第1部材をます本体内に配置する。このことによって、例えば、1つの部材によって形成された補修部材をます本体内に配置する場合と比較して、補修部材をます本体内に配置し易い。
【0018】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記第2部材には、前記補修インバートの一端が接続されている。
【0019】
例えば、補修インバートの一端が第1部材と第2部材とに亘って接続されていた場合、補修インバートから排水が漏れるおそれがある。しかしながら、上記態様によれば、補修インバートの一端は、第2部材に接続されている。よって、補修インバートから排水を漏れなくすることができる。
【0020】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記第2部材には、前記第1部材の端部の一部が載置される載置部が設けられている。
【0021】
上記態様によれば、補修部材を使用して排水ますを補修する際、第1部材の端部の一部が第2部材の載置部に載置された状態で、第1部材および第2部材は、ます本体内に配置される。よって、第1部材と第2部材との間には、隙間ができ難く、第1部材と第2部材との間から排水が漏れ難い。
【0022】
本発明に係る地下排水施設は、上述した何れかの排水ますの補修部材と、前記排水ますとを備えている。前記排水ますは、地中に埋設されている。前記排水ますは、前記ます本体の底面に形成され、一端が前記流入口の下方に位置し、他端が前記流出口に接続されたインバートを備えている。前記補修部材は、前記インバートに前記補修インバートの他端が接するように、前記ます本体の内部に配置されている。
【0023】
前記地下排水施設によれば、補修部材の補修インバートの他端が、排水ますのインバートに接しているため、補修部材をます本体内で安定して配置させることができる。よって、ます本体内に、補修部材が安定して配置されるような地下排水施設を提供することができる。
【0024】
本発明の好ましい一態様によれば、前記ます本体はコンクリート製である。
【0025】
上記態様によれば、ます本体はコンクリート製であり、コンクリートは、排水に含まれる成分と反応して劣化し易く、かつ、地上からの荷重などで破損することがあり得る。そのため、コンクリート製であるます本体は、劣化または破損がし易いため、コンクリート製のます本体にとって、補修部材を使用して補修されることは特に有用である。
【0026】
本発明に係る排水ますの補修方法は、上述した排水ますの補修部材を用いて前記排水ますを補修する排水ますの補修方法である。前記補修方法は、第1配置工程と、第2配置工程と、注入工程とを包含する。前記第1配置工程では、前記補修インバートの他端が前記流出口に接続されるように、前記第2部材を前記ます本体の内部に配置する。前記第2配置工程では、前記第2部材の前記載置部に前記第1部材の端部の一部が載置されるように、前記第1部材を前記ます本体の内部に配置する。前記注入工程では、前記第1部材と前記第2部材との間、前記第1部材と前記ます本体との間、および、前記第2部材と前記ます本体との間に、接合剤を注入する。
【0027】
前記補修方法のような工程に沿って、補修部材をます本体の内部に配置することで、補修部材をます本体内に適切に配置することができる。そして、第1部材と第2部材との間、第1部材とます本体との間、および、第2部材とます本体との間に接合剤を注入することで、ます本体内に流入した排水が漏れ難い。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、劣化または破損した排水ますを好適に補修することが可能であり、かつ、補修したあとの排水ます内に排水を円滑に流すことが可能な排水ますの補修部材、地下排水施設、および、排水ますの補修方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施形態に係る地下排水施設の平面図である。
図2図1のII-II断面における地下排水施設の正面断面図である。
図3図1のIII-III断面における地下排水施設の左側面断面図である。
図4】補修部材の第1部材の斜視図である。
図5】第1部材の左側面図である。
図6図5のVI-VI断面における第1部材の断面図である。
図7】補修部材の第2部材の斜視図である。
図8】第2部材の平面図である。
図9】第2部材の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る補修部材を備えた地下排水施設の実施形態について説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の実施形態に過ぎず、当然ながら本発明を限定することを意図したものではない。
【0031】
図1は、本実施形態に係る地下排水施設100の平面図である。図2は、図1のII-II断面における地下排水施設100の正面断面図である。図3は、図1のIII-III断面における地下排水施設100の左側面断面図である。地下排水施設100は、地中に埋設されており、排水を流す施設である。ここで、「排水」には、汚水および雨水が含まれる。「汚水」とは、トイレ、風呂、および、台所の流し台などの排水設備から排出される水であり、そのままでは河川に放流させることができないものである。「雨水」とは、降雨などの自然現象に起因する水であり、そのまま河川に放流させることができるものである。本実施形態では、図1に示すように、地下排水施設100は、排水ます10と、補修部材30とを備えている。ここでは、排水ます10の一部が劣化または破損している。そのため、その劣化または破損した箇所から排水などが漏れないように、排水ます10には、補修部材30を使用した補修が施されている。
【0032】
なお、本実施形態では、図面中の符号Fは前を示し、符号Rrは後ろを示す。以下の説明では、符号Fの方向から排水ます10を見たときの左、右、上、下が、それぞれ排水ます10および補修部材30の左、右、上、下を意味するものとする。図面中の符号L、R、U、Dは、それぞれ左、右、上、下を意味するものとする。ただし、これら方向は、説明の便宜上定めた方向に過ぎず、排水ます10および補修部材30の設置態様を何ら限定するものではない。
【0033】
本実施形態に係る排水ます10は、いわゆる公共ますである。図3に示すように、排水ます10は、ます本体11と、インバート14とを備えている。ます本体11は、有底筒状のものである。ます本体11の形状は特に限定されないが、例えば略円筒状である。なお、本実施形態では、ます本体11は、複数の部材(ここでは、3つの部材)によって構成されているが、一体的に形成されていてもよい。ここでは、ます本体11の上部には、上方に開口した点検口21が形成されている。図示は省略するが、例えば点検口21には上方に延びた立管が接続され、上記立管の上端面には蓋が嵌め込まれている。
【0034】
本実施形態では、図2に示すように、ます本体11には、流入口12および流出口13が形成されている。流入口12には、外部からの排水が流入する。流入口12は、ます本体11の側部に形成され、側方に向かって開口している。詳しくは、流入口12は、ます本体11の側面の上下方向の中心よりも上方におけるます本体11の側面の部位に形成されている。本実施形態では、流入口12には、トイレ、風呂、台所の流し台、および、側溝などの排水設備(図示せず)に接続された流入管5が嵌め込まれる。
【0035】
流出口13からます本体11内の排水が流出する。流出口13は、ます本体11の側部に形成され、側方に向かって開口している。本実施形態では、流出口13は、流入口12よりも下方に位置している。詳しくは、流出口13は、ます本体11の側面の上下方向の中心よりも下方(ここでは、下端部)におけるます本体11の側面の部位に形成されている。平面視において、流出口13は、流入口12と対向している。本実施形態では、流出口13には、下水本管(図示せず)に接続された流出管6が嵌め込まれる。
【0036】
補修部材30によって排水ます10が補修されていない状態において、インバート14には、排水が流れる。図3に示すように、インバート14は、ます本体11の底面に形成された溝である。本実施形態では、平面視において、インバート14は、流入口12から流出口13に延びた直線状の溝であり、かつ、略半管形状の溝である。なお、本実施形態では、ます本体11の内周面であって、インバート14の前方および後方には、傾斜面22が形成されている。傾斜面22は、ます本体11の内周面からインバート14に向かうに従って、下方に傾斜している。
【0037】
本実施形態では、排水ます10を構成する部材は、コンクリート製である。すなわち、ます本体11、インバート14および傾斜面22をそれぞれ構成する部材は、コンクリート製である。しかしながら、排水ます10を構成する部材の一部は、コンクリート以外の材料で形成されていてもよい。
【0038】
本実施形態に係る排水ます10は、長期間の使用により、排水に含まれる腐食ガスまたは付着物などによって浸食され、劣化することがあり得る。もしくは、地盤沈下または地上からの荷重などによって排水ます10が破損することがあり得る。特に、流入口12からます本体11内に流入した排水は、インバート14における流入口12側の部位に直接当たる。そのため、インバート14における流入口12側の部位は、劣化し易い。このように、排水ます10が劣化または破損すると、排水ます10内の排水および臭気が外部に漏れるおそれがある。そこで、本実施形態では、排水および臭気の漏れを抑制するために、劣化または破損した排水ます10を、補修部材30を用いて補修する。
【0039】
次に、補修部材30について説明する。図4は、補修部材30の第1部材51の斜視図である。図5は、第1部材51の左側面図である。図6は、図5のVI-VI断面における第1部材51の断面図である。図7は、補修部材30の第2部材52の斜視図である。図8は、第2部材52の平面図である。図9は、第2部材52の左側面図である。以下の補修部材30の説明において、補修部材30の前、後、左、右、上、下とは、それぞれ補修部材30をます本体11に配置した状態における補修部材30の前、後、左、右、上、下とする。図2に示すように、補修部材30は、劣化または破損した排水ます10を補修するための部材であり、ます本体11内に設置されるものである。補修部材30は、排水受け部31と、ガイド部32と、補修インバート33と、差込部34とを備えている。
【0040】
排水受け部31は、排水ます10の流入口12からます本体11内に流入した排水を受けるものである。排水受け部31は、下方に凹むように湾曲している。ここでは、排水受け部31は、補修部材30の中心に向かうに従って、下方に湾曲している。言い換えると、排水受け部31は、補修インバート33の一端に向かうに従って、下方に湾曲している。本実施形態では、排水受け部31は、ます本体11に対応した形状であり、ます本体11に嵌合可能な形状である。本実施形態では、平面視において、排水受け部31は、円形状である。排水受け部31は、略椀形状である。
【0041】
ガイド部32は、補修部材30をます本体11内に設置する際、ガイドとなる役割を担う。ガイド部32は、排水受け部31の縁から下方に延びたものである。本実施形態では、ガイド部32は、排水受け部31の縁の全体に亘って設けられているが、一部が切り欠けられていてもよい。
【0042】
補修インバート33は、排水受け部31によって受けられた排水を流出口13へ導くためのものである。ここでは、補修インバート33の一端は、排水受け部31に接続され、補修インバート33の他端は、排水ます10の流出口13に接続される。ここでは、補修インバート33の一端は、排水受け部31の最底部に接続されている。ここで、「最底部」とは、排水受け部31における最も下に位置する部位のことをいう。補修インバート33は、一端から他端に向かうに従って、下方に傾斜している。換言すると、補修インバート33の底面は、排水受け部31の底部から左下方に向かって一直線状に延びている。しかしながら、平面視において、補修インバート33の一部は湾曲していてもよい。
【0043】
差込部34は、補修部材30をます本体11内に設置する際、排水ます10の流出口13に差し込まれるものである。ここでは、上述のように、流出口13には、流出管6が嵌め込まれ、流出管6に差込部34が差し込まれる。本実施形態では、差込部34は、補修インバート33の他端に設けられている。図8に示すように、平面視において、差込部34は、排水受け部31の縁から側方(ここでは、左方)に向かって突出している。ここでは、差込部34は、円筒状に形成されているが、差込部34の形状は特に限定されない。差込部34の外径と、流出管6の内径とは、略同じである。詳しくは、流出口13に嵌め込まれた流出管6に差込部34を差し込んだ状態において、差込部34の外周面は、流出管6の内周面と接触している。なお、差込部34の先端部には、先端に向かう程、差込部34の中心に向かって傾斜した差込傾斜面41が形成されている。このことによって、差込部34を流出口13に差し込み易くなる。
【0044】
本実施形態では、図1に示すように、排水受け部31は、複数の部材に分割される。なお、排水受け部31が分割される部材の数は特に限定されない。ここでは、排水受け部31は、第1部材51および第2部材52の2つの部材に分割される。第1部材51は、補修部材30を排水ます10内に配置した際、排水受け部31における流入口12側の部位を構成している。第2部材52は、補修部材30を排水ます10内に配置した際、排水受け部31における流出口13側の部位を構成している。本実施形態では、第2部材52は、第1部材51の左方に配置される。ここでは、平面視において、第1部材51の面積S1は、第2部材52の面積S2よりも小さい。しかしながら、第1部材51の面積S1は、第2部材52の面積S2と同じであってもよいし、第2部材52の面積S2よりも大きくてもよい。本実施形態では、平面視において、第1部材51の第2部材52側の端、および、第2部材52の第1部材51側の端は、それぞれ一直線状の端である、しかしながら、第1部材51の第2部材52側の端と、第2部材52の第1部材51側の端とは、合致するような端であれば、その形状は特に限定されない。例えば、平面視において、第1部材51の第2部材52側の端と、第2部材52の第1部材51側の端とは、少なくとも一部が曲線状であってもよい。
【0045】
本実施形態では、図7に示すように、補修インバート33は、第2部材52に設けられており、図4に示すように、第1部材51には設けられていない。ここでは、図7に示すように、補修インバート33は、一体的に形成されており、複数の部材によって構成されていない。図5および図9に示すように、ガイド部32は、第1部材51と第2部材52とに分割されて形成されている。
【0046】
ここでは、図8に示すように、第2部材52における第1部材51と接触する側の端部(ここでは、右端部)には、載置部53が形成されている。この載置部53は、第2部材52から第1部材51側(図8では、左から右)に向かって突出した板状のものである。この載置部53には、第1部材51における第2部材52と接触する端部(ここでは、左端部)が載置される。詳しくは、第1部材51における第2部材52と接触する端部の裏面には、図6に示すように、裏面から上方に凹んだ段差状の被載置部54が形成されている。この被載置部54が第2部材52の載置部53に載置されることで、第2部材52が第1部材51を支持する状態となる。
【0047】
なお、補修部材30の材質は特に限定されない。例えば、補修部材30は、樹脂製である。詳しくは、補修部材30の排水受け部31(第1部材51および第2部材52)、ガイド部32、補修インバート33および差込部34は、樹脂製である。しかしながら、排水受け部31、ガイド部32、補修インバート33および差込部34の少なくとも一部は、樹脂以外の材質によって形成されていてもよい。
【0048】
次に、補修部材30を用いて排水ます10を補修する補修方法について説明する。本実施形態に係る補修方法は、第1配置工程と、第2配置工程と、注入工程とを包含する。まず、第1配置工程では、排水ます10のます本体11内に、補修部材30の第2部材52を配置する。ここでは、図2に示すように、差込部34が排水ます10の流出口13に差し込まれるように、第2部材52をます本体11内に配置する。このとき、補修インバート33の他端の一部は、排水ます10のインバート14と接する。また、図示は省略するが、第2部材52に設けられたガイド部32の下端は、排水ます10の傾斜面22の上端部分に接する。なお、第2部材52をます本体11内に配置したあと、差込部34と流出管6との間に、接合剤を塗布してもよい。このとき、差込部34と流出管6との間に塗布する接合剤は、例えば、モルタルであるが、モルタルに限定されない。
【0049】
次に、第2配置工程では、補修部材30の第1部材51をます本体11内に配置する。ここでは、図2に示すように、第2部材52の載置部53上に、第1部材51の被載置部54が載置され、かつ、図1に示すように、第2部材52の右方に第1部材51が配置されるように、第1部材51をます本体11内に配置する。このとき、第1部材51に設けられたガイド部32の下端は、排水ます10の傾斜面22の上端部分に接する。
【0050】
以上、第1配置工程および第2配置工程において、補修部材30がます本体11内に配置される。次に、注入工程では、接合剤を用いて第1部材51と第2部材52、第1部材51とます本体11、および、第2部材52とます本体11とを接合する。ここでは、図1に示すように、第1部材51と第2部材52との間が含まれる領域AR1、ならびに、第1部材51とます本体11との間、および、第2部材52とます本体11の間が含まれる領域AR2に、接合剤を注入する。なお、使用する接合剤の種類は特に限定されない。本実施形態では、第1部材51と第2部材52との間が含まれる領域AR1には、接合剤の一例である接着剤が注入される。このことで、第1部材51と第2部材52との間に隙間がなくなり、第1部材51と第2部材52とは互いに固定される。第1部材51とます本体11との間、および、第2部材52とます本体11との間が含まれる領域AR2には、接合剤の一例であるモルタルが注入される。このことで、第1部材51とます本体11との間の隙間、および、第2部材52とます本体11との間の隙間がなくなり、第1部材51および第2部材52は、ます本体11に固定される。
【0051】
以上の工程に従うことで、補修部材30を用いて排水ます10を補修することができる。なお、図2に示すように、補修部材30によって排水ます10を補修した際、補修部材30の排水受け部31と、排水ます10のインバート14との間には、空間55が形成された状態となる。
【0052】
なお、補修部材30によって補修された排水ます10では、以下のようにして排水が流れる。まず、上記排水設備から排出された排水は、流入管5を流れ、流入口12からます本体11内に流入する。流入口12からます本体11内に流入した排水は、自重によって、排水受け部31に落ちる。そして、排水受け部31に落ちた排水は、補修インバート33に流れ、流出口13から流出する。流出口13から流出した排水は、流出管6を通じて、流出管6に接続された下水本管(図示せず)に排出される。
【0053】
以上、本実施形態では、補修部材30の補修インバート33の他端が排水ます10の流出口13に接続されるように、補修部材30をます本体11内に配置する。このとき、補修部材30の排水受け部31と、ます本体11の底面との間には、空間55が形成されている状態となる。よって、ます本体11の底部が劣化または破損して、ます本体11の底部に段差ができた場合であっても、上記段差に影響されずに、補修部材30をます本体11内に適切に配置することができる。よって、補修部材30を使用して、劣化または破損した排水ます10を好適に補修することができる。
【0054】
また、補修部材30によって補修された排水ます10では、流入口12からます本体11内に流入した排水は、排水ます10のインバート14よりも上方に配置された排水受け部31に落ちる。よって、流入口12から流入した排水がインバート14に落ちる場合と比較して、補修部材30によって補修された排水ます10では、ます本体11内で排水が飛散し難い。
【0055】
本実施形態では、排水受け部31は、下方に凹むように湾曲している。ここでは、排水受け部31は、略椀形状である。そして、補修インバート33の一端は、排水受け部31の最底部に接続されている。このことによって、補修部材30によって排水ます10を補修した際、流入口12からます本体11内に流入した排水は、排水受け部31によって受けられた後、補修インバート33に向かって流れ易い。よって、排水受け部31に排水が溜まることを抑制することができる。
【0056】
本実施形態では、補修インバート33の他端と連続し、排水ます10の流出口13に差し込まれる差込部34を備えている。このことによって、排水ます10の流出口13に差込部34を差し込んだ状態で、補修部材30をます本体11内に配置する。よって、補修部材30を使用して排水ます10を補修する際、ます本体11に対して補修部材30がずれ難くすることができる。本実施形態では、差込部34の外径と流出管6の内径とは、略同じであるため、補修部材30がます本体11に対して揺動し難く、かつ、差込部34と流出管6とをより強固に密着させることができる。また、流出口13に差込部34を差し込むことで、ます本体11に対する補修部材30の位置合わせがし易い。更に、補修部材30を使用して排水ます10を補修した際、流出口13と補修インバート33との間から排水が漏れ難くすることができる。
【0057】
本実施形態では、図1に示すように、排水受け部31は、流入口12側部分の第1部材51と、流出口13側部分の第2部材52とに分割される。このことによって、補修部材30を使用して排水ます10を補修する際、本実施形態では、第2部材52をます本体11内に配置した後で、第1部材51をます本体11内に配置する。このことによって、例えば、1つの部材によって形成された補修部材をます本体11内に配置する場合と比較して、補修部材30をます本体11内に配置し易い。
【0058】
また、本実施形態では、図7に示すように、第2部材52には、補修インバート33の一端が接続されている。図4に示すように、第1部材51には、補修インバート33は接続されていない。仮に、補修インバート33の一端が第1部材51と第2部材52とに亘って接続されていた場合、補修インバート33から排水が漏れるおそれがある。しかしながら、本実施形態では、補修インバート33の一端は、図7に示すように、第2部材52に接続され、かつ、第1部材51に接続されていないため、補修インバート33から排水が漏れない。
【0059】
また、本実施形態では、図8に示すように、第2部材52には、第1部材51の端部(ここでは、被載置部54(図6参照))が載置される載置部53が設けられている。このことによって、補修部材30を使用して排水ます10を補修する際、第1部材51の被載置部54が第2部材52の載置部53に載置された状態で、第1部材51および第2部材52は、ます本体11内に配置される。よって、第1部材51と第2部材52との間には、隙間ができ難く、第1部材51と第2部材52との間から排水が漏れ難い。
【0060】
本実施形態では、図3に示すように、ガイド部32は、排水受け部31の縁から下方に延びている。このことによって、補修部材30をます本体11内に配置する際、補修部材30のガイド部32は、ます本体11の内周面に沿って補修部材30をます本体11に挿入するときのガイドの役割として機能する。よって、ガイド部32によって、補修部材30をます本体11内に挿入し易い。仮にガイド部32が排水受け部31の縁から上方に延びている場合、排水に含まれる汚物などがガイド部32に付着または堆積することがあり得る。しかしながら、本実施形態では、ガイド部32は、排水受け部31の上方には位置していないため、ガイド部32に汚物などが付着または堆積することを防止することができる。
【0061】
本実施形態では、図2に示すように、補修部材30は、排水ます10のインバート14に補修インバート33の他端が接するように、ます本体11の内部に配置されている。このことによって、補修部材30の補修インバート33の他端が、排水ます10のインバート14に接しているため、補修部材30をます本体11内で安定して配置させることができる。
【0062】
本実施形態では、ます本体11はコンクリート製である。コンクリートは、排水に含まれる成分と反応して劣化し易く、かつ、コンクリート製のます本体11は、地上からの荷重などで破損することがあり得る。そのため、コンクリート製であるます本体11は、劣化または破損がし易いため、コンクリート製のます本体11にとって、補修部材30を使用して補修されることは特に有用である。
【0063】
本実施形態に係る補修方法は、第1配置工程と、第2配置工程と、注入工程とを包含する。第1配置工程では、補修インバート33の他端が流出口13に接続されるように、第2部材52をます本体11の内部に配置する。第2配置工程では、第2部材52の載置部53に第1部材51の被載置部54が載置されるように、第1部材51をます本体11の内部に配置する。そして、注入工程では、第1部材51と第2部材52との間、第1部材51とます本体11との間、および、第2部材52とます本体11との間に、接合剤を注入する。このような工程に沿って、補修部材30をます本体11の内部に配置することで、補修部材30をます本体11内に適切に配置することができる。そして、第1部材51と第2部材52との間、第1部材51とます本体11との間、および、第2部材52とます本体11との間に接合剤を注入することで、ます本体11に流入した排水が漏れ難くすることができる。
【0064】
例えば、排水ます10において、長期間の使用によって、流出口13の周囲の部位に亀裂が入ったり、破損したりするおそれがある。本実施形態では、差込部34が流出口13に差し込まれた状態で、補修部材30とます本体11との間に接合剤が注入される。よって、亀裂が入ったり、破損したりした流出口13の周囲の箇所を、上記接合剤によって補修することができる。
【0065】
上記実施形態では、排水受け部31は、第1部材51と第2部材52との2つの部材に分割されていた。しかしながら、排水受け部31を分割する部材の数は、2つに限定されず、3つ以上であってもよい。また、排水受け部31は、1つの部材によって形成されていてもよい。
【0066】
上記実施形態では、補修部材30を用いて排水ます10を補修した際、補修部材30の排水受け部31と、排水ます10のインバート14との間には、空間55(図2参照)が形成されていた。しかしながら、空間55には、モルタルなどの接合剤が注入されていてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 排水ます
11 ます本体
12 流入口
13 流出口
30 補修部材
31 排水受け部
32 ガイド部
33 補修インバート
34 差込部
51 第1部材
52 第2部材
100 地下排水施設
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9