(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】耐火性熱膨張材を内蔵した受け口形耐火二層管
(51)【国際特許分類】
E03C 1/12 20060101AFI20220112BHJP
F16L 5/04 20060101ALI20220112BHJP
F16L 5/02 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
E03C1/12 E
F16L5/04
F16L5/02 F
(21)【出願番号】P 2017187663
(22)【出願日】2017-09-28
【審査請求日】2020-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】595025224
【氏名又は名称】フネンアクロス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】久保田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】大木田 貞治
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3211920(JP,U)
【文献】特開2005-282750(JP,A)
【文献】特開2010-139057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12
F16L 5/04
F16L 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築構造物の床スラブを上下に貫通して設けられる不燃性の排水管継手
の接続端部を受容する受け口形の接続端部を上部に備えると共に該受け口形の接続端部内には排水管継手との間をシールするゴムリングを備えた合成樹脂製の排水縦管と
、
火災の熱により膨張して該接続端部を閉塞すべく該受け口形の接続端部のくびれ部又はその付近の外周を周回して配設された耐火性熱膨張材と
、
該受け口形の接続端部の周面及び該耐火性熱膨張材を被覆する短筒状の繊維混入モルタル層と
、
該排水縦管の該受け口形の接続端部及び
該排水縦管の下端部分を除いた部分を被覆する繊維混入モルタル製の直管と、を有
し、
該排水縦管の該下端部分が該建築構造物の下層階の床スラブに設けられた不燃性の排水管継手の受け口形の接続端部に挿入され、
上下階の該排水管継手間で排水の管路を構成する、耐火二層管であって
、
短筒状の繊維混入モルタル層の下端面を該直管の上端面に載置したことを特徴とする耐火性熱膨張材を内蔵した受け口形耐火二層管。
【請求項2】
建築構造物の床スラブを上下に貫通して設けられる不燃性の排水管継手の接続端部を受容する受け口形の接続端部を上部に備えると共に該受け口形の接続端部内には排水管継手との間をシールするゴムリングを備えた合成樹脂製の排水縦管と、
火災の熱により膨張して該接続端部を閉塞すべく該受け口形の接続端部のくびれ部又はその付近の外周を周回して配設された耐火性熱膨張材と、
該受け口形の接続端部の周面及び該耐火性熱膨張材を被覆する短筒状の繊維混入モルタル層と、
該排水縦管の該受け口形の接続端部及び該排水縦管の下端部分を除いた部分を被覆する繊維混入モルタル製の直管と、を有し、
該排水縦管の該下端部分が該建築構造物の下層階の床スラブに設けられた不燃性の排水管継手の受け口形の接続端部に挿入され、
上下階の該排水管継手間で排水の管路を構成する、耐火二層管であって
、
上記短筒状の繊維混入モルタル層の下端面に、上記直管の上端部
が嵌入する環状凹溝を形成したことを特徴とす
る耐火性熱膨張材を内蔵した受け口形耐火二層管。
【請求項3】
上記短筒状の繊維混入モルタル層を、その筒軸方向に縦割りされた分割筒片で構成し、不燃性のバンドを該分割筒片の外周に周回させて短筒状に固定したことを特徴とする請求項1または2に記載の耐火性熱膨張材を内蔵した受け口形耐火二層管。
【請求項4】
上記分割筒片同士の合せ面に、筒軸方向に延びて筒内外の連通を妨げる段部を形成したことを特徴とする請求項3に記載の耐火性熱膨張材を内蔵した受け口形耐火二層管。
【請求項5】
上記
分割筒片の上端部周縁に、上記ゴムリン
グを覆う防火フランジを形成したことを特徴とする請求項
3又は請求項4に記載の耐火性熱膨張材を内蔵した受け口形耐火二層管。
【請求項6】
上記排水縦管の上記受け口形の接続端部の周面および上記耐火性熱膨張材を、フェルトやゴム等の遮音材を介して上記短筒状の繊維混入モルタル層により被覆したことを特徴とする請求項4に記載の耐火性熱膨張材を内蔵した受け口形耐火二層管。
【請求項7】
建築構造物の床スラブを上下に貫通して設けられる不燃性の排水管継手
の接続端部を受容する受け口形の接続端部を上部に備えると共に該受け口形の接続端部内には排水管継手との間をシールするゴムリングを備えた合成樹脂製の排水縦管と
、
火災の熱により膨張して該接続端部を閉塞すべく該受け口形の接続端部のくびれ部又は
該くびれ部とその付近の外周を周回して配設された耐火性熱膨張材と
、
該受け口形の接続端部の周面及び該耐火性熱膨張材を被覆する短筒状の繊維混入モルタル層と
、
該排水縦管の該受け口形の接続端部及び
該排水縦管の下端部分を除いた部分を被覆する繊維混入モルタル製の直管と、を有
し、
上下階の該排水管継手間で排水の管路を構成する、耐火二層管であって
、
該短筒状の繊維混入モルタル層の下端部を該直管の上端部にモルタルにより接合したことを特徴とする耐火性熱膨張材を内蔵した受け口形耐火二層管。
【請求項8】
上記耐火性熱膨張材は、酸化処理黒鉛粉末等の耐火性熱膨張粉末原料を封入した帯状袋または耐火性熱膨張粉末原料に加硫ゴムを添加した成形加工品で構成したことを特徴とする請求項1または5に記載の耐火性熱膨張材を内蔵した受け口形耐火二層管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水管継手に接続するための受け口形の接続端部を備えた耐火二層管すなわち内管を構成する合成樹脂製の排水縦管の外周を繊維混入モルタル製の耐火性の外管で被覆した二層構成の管であって火災の際には排水管路を閉塞して火災の被害の拡散を防止するための耐火性熱膨張材を内蔵した形式の耐火二層管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高層住宅の床スラブなどの防火区画を貫通して設けられる合成樹脂製の管を使用した管路には、火災時に防火区画を介して火災の被害が上層階へ波及しないように管路を閉塞する手段を設けることが防災上要望されている。この要望を満足するため、例えば高層住宅の床スラブに耐火二層管継手や鋳鉄製継手などの不燃性の排水管継手を埋設し、この継手に合成樹脂から成る可燃性の排水縦管を接続して管路を構成する場合、排水管継手の接続口の周囲に耐火性の熱膨張材を収容した保持具を設け、火災の際には、火災の熱で軟化した排水縦管を膨張する熱膨張材により押し潰して管路を閉塞するようにしたものが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1のものは継手に係るもので、耐火二層管に関するものではなく、排水管継手の受け口形に構成した接続端部へ排水縦管の挿し口形の接続端部を挿入する接続構造を有し、熱膨張材は排水管継手に設けた保持金具により排水縦管を押し潰せるように継手に取り付けられている。
【0004】
一方、排水管継手と排水縦管の接続構造として、
図1に示すように、鋳鉄製の排水管継手cの接続端部dを雄型に形成し、この接続端部dを受け口形に形成した合成樹脂製の排水縦管aの接続端部bに嵌入する構造も知られているが、この場合は受け口形の接続端部bの内側に筒型のゴムリングeを設けて配管の接続部の水密性を維持する必要があり、火災の際に管路を閉塞する耐火性の熱膨張材gは、排水縦管aの外周で且つ接続端部bよりも下方で排水縦管aを押し潰し可能な位置に保持金具fにより保持して設け、火災の際には、
図2のように該熱膨張材gが排水縦管aを押し潰して管路が閉塞されるようになっている。この受け口形の形状は、直管の排水縦管の端部を加熱して治具により押圧拡大して形成されるもので、排水縦管ごとに受け口の寸法が多少異なっており、そのため保持金具fとの間に隙間が生じている。また、この接続構成では、火災の熱でゴムリングeが燃えてしまうと、金具fと継手cとの間に隙間が生じ、この隙間hから火災の熱風が継手c内へと吹き込むことが考えられ、これは上層階へ被害をもたらすので好ましくない。なお、この例の排水縦管aは部分的に保持金具fで覆われたにすぎない合成樹脂製の単管であって繊維混入モルタル製の外管で覆われた耐火二層管ではないから、排水縦管a内を流れる排水により生じる騒音は防げない。 保持金具fは、排水縦管aが火災で溶融しても落下しないように支持部材iにより床スラブjに固定される。
【0005】
これらの従来例における耐火性の熱膨張材は、その取り扱いを容易にし且つ熱膨張時に分散しないように塊状を維持するために、酸化処理した黒鉛粉末などの熱膨張原料に加硫ゴムなどの比較的高価な添加物を添加してシート状やリング状に成形加工したものが知られており、さらに、前記熱膨張材に代わるものとして内三つ折りしたアルミ箔のテープ内に酸化処理した黒鉛粉末等の熱膨張原料を封入した帯状袋の構成とし、高倍率の膨張が得られ安価で体積も小さくなるという利点が得られるものも提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4907499号
【文献】特許第5451064号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した受け口形の接続端部を有する排水縦管を火災の際に押し潰して管路を閉塞する構成とするには、排水縦管を排水管継手に接続するだけでなく接続端部の周囲を囲って熱膨張材を保持した保持金具を取り付ける作業が必要であり、接続作業が複雑で時間が掛かるので配管コストが高くなる不都合が生じ、また配管作業に必要となる部品点数が多いので部品管理が煩わしく、被覆のない裸状態の合成樹脂製の排水縦管は耐火二層管よりも遮音性が大幅に悪いという欠点があった。さらに上記排水縦管の受け口形の接続端部の寸法誤差が大きいので、接続端部と保持金具との間に隙間が生じて外気が浸入し易く、そのため気温の変化により排水管の周面に結露が生じ、これが保持金具内の熱膨張材を変質させてしまう不都合があった。
【0008】
こうした欠点、不都合を解消する手段として、発明者等は、建築構造物の床スラブを上下に貫通して設けられる不燃性の排水管継手の下方の接続端部を受容する受け口形の接続端部を上部に備えると共に該受け口形の接続端部内には排水管継手との間をシールするゴムリングを備えた合成樹脂製の排水縦管と、火災の熱により膨張して該接続端部を閉塞する該受け口形の接続端部のくびれ部やその付近の外周を周回して配設された耐火性熱膨張材と、該受け口形の接続端部の周面及び該耐熱性熱膨張材を被覆する短筒状の繊維混入モルタル層と、該排水縦管の該受け口形の接続端部及び排水縦管の下端部分を除いた部分を被覆した繊維混入モルタル製の直管と、を有する耐火二層管であって、該短筒状の繊維混入モルタル層を該接続端部の周囲に射出成型により形成し、さらに火災により合成樹脂製の排水縦管が溶損してもこの繊維混入モルタル層が落下しないように支持部材により床スラブに支持させることを考えた。
【0009】
しかし、該接続端部の周囲に射出成型により該短筒状の繊維混入モルタル層を形成する工程が大掛かりになり、支持部材を床スラブに取り付ける作業にかなりの時間が掛かって好ましくなく、該繊維混入モルタル層が火災の際にひび割れして満足な閉塞を実行できなくなるという事態も想定された。
【0010】
本発明は、耐火性熱膨張材を内蔵した耐火二層管を不燃性の排水管継手に受け口形の接続端部を接続するだけで特別な支持部材を要することなく配管作業を終えることができ、遮音性も良好で安価に製作可能な受け口形の接続端部を有する耐火二層管を提供することを課題とするものである。
【0011】
第一の発明では、上記課題を解決すべく、建築構造物の床スラブを上下に貫通して設けられる不燃性の排水管継手の接続端部を受容する受け口形の接続端部を上部に備えると共に該受け口形の接続端部内には排水管継手との間をシールするゴムリングを備えた合成樹脂製の排水縦管と、火災の熱により膨張して該接続端部を閉塞すべく該受け口形の接続端部のくびれ部又はその付近の外周を周回して配設された耐火性熱膨張材と、該受け口形の接続端部の周面及び該耐火性熱膨張材を被覆する短筒状の繊維混入モルタル層と、該排水縦管の該受け口形の接続端部及び該排水縦管の下端部分を除いた部分を被覆する繊維混入モルタル製の直管と、を有し、該排水縦管の該下端部分が該建築構造物の下層階の床スラブに設けられた不燃性の排水管継手の受け口形の接続端部に挿入される、耐火二層管であって、該短筒状の繊維混入モルタル層の下端面を該直管の上端面に載置するようにした。
第二の発明では、該短筒状の繊維混入モルタル層の下端面に、該直管の上端部が上記載置時に嵌入する環状凹溝を形成している。
好ましくは、該短筒状の繊維混入モルタル層を、その筒軸方向に縦割りされた分割筒片で構成し、その分割筒片同士の合せ面に、筒軸方向に延びて筒内外の連通を妨げる段部を形成してもよく、不燃性のバンドを該分割筒片の外周に周回させて短筒状に固定するようにしてもよい。該短筒状の繊維混入モルタル層の上端部周縁に、該ゴムリング及び該直管の上端部を覆う防火フランジを形成し、更に該受け口形の接続端部の周面および該耐火性熱膨張材を、フェルトやゴム等の遮音材を介して該短筒状の繊維混入モルタル層により被覆してもよい。
第三の発明では、該短筒状の繊維混入モルタル層の下端部を該直管の上端部にモルタルにより接合する。
該耐火性熱膨張材は、酸化処理黒鉛粉末等の耐火性熱膨張粉末原料を封入した帯状袋または耐火性熱膨張粉末原料に加硫ゴムを添加した成形加工品で構成してもよい。
【発明の効果】
【0012】
該耐火性熱膨張材は、強度が劣る排水縦管の受け口形接続端部のくびれ部やその付近に配設され、火災時には膨張して軟化した排水縦管を押し潰すことにより排水縦管内を閉塞するが、その膨張力が排水縦管の方向へ向かうように丈夫な短筒状の繊維混入モルタル層で該耐火性熱膨張材を被覆している。合成樹脂製の受け口形接続端部が火災の熱で溶損すると、その周囲を覆う短筒状の繊維混入モルタル層が遊動状態となって落下し、その結果該原料の熱膨張による該接続端部の閉塞作用が営めなくなる。この落下を防止するため、床スラブに固定した支持部材で該モルタル層を支持することを考えたが、これは前記したように作業時間が掛かるなどの好ましくない点があり、本発明においては、該短筒状の繊維混入モルタル層の下端面を繊維混入モルタル製の直管の上端面に載置し、前記のように排水縦管が溶損しても該モルタル層は該上端面に支えられ、特別な支持部材を設けることなくその落下を防止できる。また、火災のない通常時は、遮音性の良い直管とモルタル層が排水縦管を覆っているのでその内部を流通する排水騒音を遮断できる。この繊維混入モルタル層は、繊維混入モルタル管を切断することにより簡単安価に製作でき、繊維混入モルタル層を分割筒片で構成するときは、射出成型により簡単安価に製作できる。
【0013】
該短筒状の繊維混入モルタル層の下端面に環状凹溝を形成し、この凹溝に直管の上端部を嵌入させることで、火災時に繊維混入モルタル層がずれ落ちることが防止でき、該短筒状の繊維混入モルタル層をその筒軸方向に縦割りされた分割筒片で構成し、不燃性のバンドを分割筒片の外周に周回させて短筒状に固定することで該接続端部の上端部を覆う防火フランジを設けて該接続端部の周囲全体を包み込むように被覆でき、耐火性を向上させることができる。該耐火性熱膨張材をフェルト等の遮音材を介して該モルタル層で覆うと遮音性が一層向上する。
【0014】
該該短筒状の繊維混入モルタル層の下端部を該直管の上端部にモルタルにより接合する構成とすることで、該モルタル層と直管の遊動を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】従来の熱膨張手段を備えた受け口形の接続端部の断面図
【
図2】
図1の構成における管路遮断状態の切断側面図
【
図3】本発明の受け口形耐火二層管の実施の形態を示す一部切断側面図
【
図5】本発明の受け口形耐火二層管の使用状態の側面図
【
図8】
図3の実施の形態において使用した帯状袋の正面図
【
図13】本発明の受け口形耐火二層管の作動状態を示す切断側面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図3に基づき本発明の実施の形態を説明すると、同図において符号1は耐火性熱膨張材を内蔵した受け口形の耐火二層管を示し、この耐火二層管1は、合成樹脂製の排水縦管2と、酸化処理黒鉛等からなる耐火性熱膨張材3と、短筒状の繊維混入モルタル層4と、該排水縦管2の直管状の本体部分を被覆する繊維混入モルタル製の直管5を有する。
【0017】
この受け口形耐火二層管1は、
図5乃至
図7に示したように、建築構造物の床スラブ6を上下に貫通して設けられた鋳鉄製継手或いは耐火二層管継手のような不燃性の排水管継手7a
の挿し口形の接続端部8aと、その下層階の床スラブ9に設けられた不燃性の排水管継手7b
の受け口形の接続端部8bとの間に配管されて排水の管路を構成する。
【0018】
該排水管継手7
aの接続端部8aを受容するため、合成樹脂製の排水縦管2の上方部分は大径に拡開されて受け口形の接続端部10が形成され、この接続端部10の内部にはそこに挿入される排水管継手7aの接続端部8aとの間をシールするゴムリング11が設けられる。また、耐火二層管1を構成する排水縦管2の下端部分12は、
図7に見られるように、下層階の床スラブ9の該排水管継手7bの受け口形の接続端部8bに挿入される。
【0019】
短筒状の繊維混入モルタル層4は、
図3に示したように、該排水縦管2の接続端部10からくびれ部14の周面形状にほぼ沿った曲面17を有する内壁15と、筒型の外壁16とを有し、この実施の形態における繊維混入モルタル層4は、
図4に見られるように、筒軸方向に2つ割りされた分割筒片4a、4aを突き合わせて筒形とし、その周囲を不燃性のバンド28を周回させて短筒状に形成した。この分割筒片4aは射出成型により成形したのち乾燥硬化させて製作した。そして、該モルタル層4の下端面32に、モルタル製の該直管5の上端部が嵌入する環状凹溝33を形成し、該モルタル層4を該直管5の上端部に載置したときその嵌入によって該モルタル層4と直管5が互いに係合するので、火災時に排水縦管2が溶損しても該モルタル層4は脱落することがなく、特別な支持部材を設けなくても直管5上に安定して位置するから火炎が排水管継手7aの内部へ侵入することを阻止でき、直管5も該モルタル層4を介して排水管継手7aの接続端部8aに係合してその傾倒が防止される。なお、分割筒片4a同士の合せ面29には筒軸方向へ延びて筒体内外の連通を妨げる段部30を形成した。また、分割筒片4aの上端部周縁に、上記ゴムリング11及び直管5の上端部を覆う防火フランジ31を形成し、火災の際に火炎からゴムリング11や直管5を防護できるようにした。
【0020】
該耐火性熱膨張材3は、酸化処理黒鉛粉末等の耐火性熱膨張粉末原料を封入した帯状袋または耐火性熱膨張粉末原料に加硫ゴムを添加した成形加工品で構成することが好ましく、帯状袋3aに構成した場合の実施例は
図8及び
図9に示す如くであり、成形加工品3bで構成した場合の実施例を
図12に示した。
図8及び
図9に示した帯状袋3aは、三つ折りした長尺のアルミ箔テープ19により市販の酸化処理黒鉛粉末20を封入し、両端部をシール27したもので、三つ折りした折片側の面21をくびれ部14に対面させて周回させ、その上を覆って粘着テープ18で押さえ込んで
図3に見られるように貼着した。短筒状の繊維混入モルタル層4はこの貼着した帯状袋3a及び接続端部8aを覆って設けられる。該粉末原料20がくびれ部14に向けて膨張するとき、アルミ箔テープ19が重なっただけの面21を押し開いて迅速に膨張する。また、成形加工品3bとしては例えば加硫ゴムに酸化処理した黒鉛粉末を混合して成形加工した市販品が使用される。
【0021】
該耐火性熱膨張材3は、
図10に示したように、排水縦管2のくびれ部14から多少離れた位置に設けてもよく、該熱膨張材3及び接続端部10の周面を
図11のようにフェルトやゴム等の遮音材34で覆い、その上を該モルタル層4で覆うと遮音性が更に向上する。
【0022】
該短筒状の繊維混入モルタル層4には、
図12に示すように繊維混入モルタル管をカットしたものを直管5の上端部にモルタル36により接合してもよい。同図の該耐火性熱膨張材3には、酸化処理した黒鉛粉末等の熱膨張材を加硫ゴムや合成樹脂と混合して成形した市販の成形加工品3bを使用した。
【0023】
図3に示した構成の本発明の耐火二層管は、
図5のように上下階の床スラブ6、9に設けられた排水管継手7a、7b間に配管接続されるもので、室内に火災が発生したとき
図13のように帯状袋3内の耐火性熱膨張粉末原料20が膨張して排水管継手8aの口部を塞ぐ。このような火災時には、火炎が室内を上昇して耐火二層管1の上方を炙るのでゴムリング11が焼損し、その結果排水縦管2の受け口形の接続端部10が溶損するが、多くの場合、耐火性の良いモルタル製の直管5で覆われた部分は溶損を免れるので直管5は直立状態に存し、モルタル層4は環状凹溝33に係合した直管5の上端に支えられて落下することがなく、該モルタル層4の落下防止のための支持部材は不要であるから簡単に配管作業が完了できる。符号25は該直管5が排水縦管2の周面に沿って遊動しないように介在された輪ゴムからなる遊動防止材である。該直管5は排水縦管2接続端部10及び下端部分12を除いた直管部分26を覆うもので、この直管5によって火災の際に直管部分26が防火保護される。
【0024】
図3に示す構成の耐火二層管1において、排水縦管2の口径が100mm、帯状袋3が厚さ20ミクロン、幅7.5cmのアルミ箔テープ19に酸化黒鉛100%の耐火性熱膨張粉末原料20を均一に分散させて三つ折りしたものとし、モルタル層4は厚さ14~30mmとした。この耐火二層管1を不燃性の排水管継手に接続し、所定の耐火試験方法に基づき耐火試験を行った。試験温度はISO834-1の標準加熱曲線にしたがって昇温させた。20分経過したところで排水縦管2が炭化し始め、25分経過したとき熱膨張粉末原料20が膨張を開始し、膨張した粒子が炭化した部分に入り込み接続端部10内を
図13に示したように閉塞した。該モルタル層4の環状凹溝33には直管5の上端部が篏合状態にあり、倒壊することがなく、ゴムリング11は半焼していたが閉塞状態は維持された。
【符号の説明】
【0025】
1 受口形の耐火二層管、2 排水縦管、3 耐火性熱膨張材、3a 帯状袋、3b 成形加工品、4 短筒状の繊維混入モルタル層、4a 分割筒片、5 直管、6 床スラブ、7a 不燃性の排水管継手、8a 下方の挿し口形の接続端部、10 排水縦管の受け口形の接続端部、11 ゴムリング、12 排水縦管の下端部分、14 くびれ部、20 酸化処理黒鉛粉末、21 折片側の面、28 不燃性バンド、29 合せ面、30 段部、31 防火フランジ、32 下端面、33 環状凹溝、34 遮音材、36 モルタル、