(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】穿孔支援装置
(51)【国際特許分類】
E21B 15/00 20060101AFI20220128BHJP
E21B 7/02 20060101ALI20220128BHJP
E21D 9/00 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
E21B15/00
E21B7/02
E21D9/00 C
(21)【出願番号】P 2017224218
(22)【出願日】2017-11-22
【審査請求日】2020-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000165974
【氏名又は名称】古河機械金属株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594149398
【氏名又は名称】古河ロックドリル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 悠
(72)【発明者】
【氏名】宮越 征一
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-057607(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0123146(US,A1)
【文献】特開平10-317874(JP,A)
【文献】特開2015-230189(JP,A)
【文献】実開昭60-066787(JP,U)
【文献】特開平07-229385(JP,A)
【文献】特開2010-216183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 7/02
E21B 15/00
E21D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動台車に取り付けられ、回転関節及び直動関節を含む複数の関節が設けられた支持部材と、前記支持部材に取り付けられ、穿孔ロッドを有する穿孔機とを備えた穿孔装置における、前記穿孔ロッドの先端部の位置及び姿勢の制御を支援する穿孔支援装置であって、
前記移動台車と前記支持部材の第1の構成部品とを相対変位可能とする第1の関節、前記第1の構成部品と前記支持部材の第2の構成部品とを相対変位可能とする第2の関節、及び前記第2の構成部品と前記支持部材の第3の構成部品とを相対変位可能とする第3の関節を含む第1の関節群の動作速度の目標値を算出する第1の目標値演算部と、
前記第1の目標値演算部で算出した前記第1の関節群の動作速度の目標値に基づき、前記第1の関節群それぞれの動作速度を制御する第1の関節群動作制御部と、
前記支持部材に形成された関節のうちの前記第1の関節群以外の1または複数の関節からなる第2の関節群の動作速度の目標値を算出する第2の目標値演算部と、
前記第2の目標値演算部で算出した前記第2の関節群の動作速度の目標値に基づき、前記第2の関節群それぞれの動作速度を制御する第2の関節群動作制御部と
、
オペレータからの前記第2の関節群の動作の指示入力を受け付ける指示入力部と、を備え、
前記第2の目標値演算部は、前記指示入力部で受け付けた指示入力に基づき、前記第2の関節群の動作速度の目標値を算出し、
前記第1の目標値演算部は、前記第2の目標値演算部で算出した前記第2の関節群の動作速度の目標値に基づき、前記第2の関節群の動作に起因して前記穿孔ロッドの先端部に発生することが予期される移動速度をゼロとするための、前記第1の関節群の動作速度の目標値を算出することを特徴とする穿孔支援装置。
【請求項2】
前記第1の目標値演算部は、前記第2の目標値演算部で算出した前記第2の関節群の動作速度の目標値のベクトルに、該目標値のベクトルから前記穿孔ロッドの先端部の移動速度のベクトルを算出するヤコビ行列と、該移動速度のベクトルから前記第1の関節
群の動作速度の目標値のベクトルを算出するヤコビ逆行列とを乗算して、前記第1の関節群の動作速度の目標値のベクトルを算出することを特徴とする請求項
1に記載の穿孔支援装置。
【請求項3】
移動台車に取り付けられ、回転関節及び直動関節を含む複数の関節が設けられた支持部材と、前記支持部材に取り付けられ、穿孔ロッドを有する穿孔機とを備えた穿孔装置における、前記穿孔ロッドの先端部の位置及び姿勢の制御を支援する穿孔支援装置であって、
前記移動台車と前記支持部材の第1の構成部品とを相対変位可能とする第1の関節、前記第1の構成部品と前記支持部材の第2の構成部品とを相対変位可能とする第2の関節、及び前記第2の構成部品と前記支持部材の第3の構成部品とを相対変位可能とする第3の関節を含む第1の関節群の動作速度の目標値を算出する第1の目標値演算部と、
前記第1の目標値演算部で算出した前記第1の関節群の動作速度の目標値に基づき、前記第1の関節群それぞれの動作速度を制御する第1の関節群動作制御部と、
前記支持部材に形成された関節のうちの前記第1の関節群以外の1または複数の関節からなる第2の関節群の動作速度の目標値を算出する第2の目標値演算部と、
前記第2の目標値演算部で算出した前記第2の関節群の動作速度の目標値に基づき、前記第2の関節群それぞれの動作速度を制御する第2の関節群動作制御部と、
穿孔が計画されている計画孔の挿し角を記憶している計画孔記憶部と、を備え、
前記第2の目標値演算部は、前記計画孔記憶部が記憶している前記計画孔の挿し角と前記穿孔ロッドの姿勢とが等しくなるように前記第2の関節群の動作速度の目標値を算出し、
前記第1の目標値演算部は、前記第2の目標値演算部で算出した前記第2の関節群の動作速度の目標値に基づき、前記第2の関節群の動作に起因して前記穿孔ロッドの先端部に発生することが予期される移動速度をゼロとするための、前記第1の関節群の動作速度の目標値を算出することを特徴とする穿孔支援装置。
【請求項4】
前記穿孔ロッドの先端部の位置を取得する位置取得
部を備え、
前記計画孔記憶部は、前記計画孔の開口位置及び挿し角を記憶しており、
前記第1の目標値演算部は、前記計画孔記憶部が記憶している前記計画孔の開口位置、前記位置取得部で取得した前記穿孔ロッドの先端部の位置、及び前記第2の目標値演算部で算出した前記第2の関節群の動作速度の目標値に基づき、前記第2の関節群の動作に起因して前記穿孔ロッドの先端部に発生することが予期される移動速度をゼロとするとともに、前記計画孔の開口位置と前記穿孔ロッドの先端部の位置とを等しくするための、前記第1の関節群の動作速度の目標値を算出することを特徴とする請求項
3に記載の穿孔支援装置。
【請求項5】
前記第1の目標値演算部は、
前記計画孔記憶部が記憶している前記計画孔の開口位置と前記位置取得部で取得した前記穿孔ロッドの先端部の位置との差をゼロとするための、前記穿孔ロッドの先端部の移動速度の目標値を算出する第1の演算実行部と、
前記第1の演算実行部で算出した目標値、及び前記第2の目標値演算部で算出した前記第2の関節群の動作速度の目標値に基づき、前記第2の関節群の動作に起因して前記穿孔
ロッドの先端部に発生することが予期される移動速度をゼロとするとともに、前記計画孔の開口位置と前記穿孔ロッドの先端部の位置とを等しくするための、前記第1の関節群の動作速度の目標値を算出する第2の演算実行部と、を備えたことを特徴とする請求項4に記載の穿孔支援装置。
【請求項6】
前記第1の演算実行部は、前記穿孔ロッドの先端部の移動速度の目標値として、加速域、定速域及び減速域からなる速度パターンを設定することを特徴とする請求項5に記載の穿孔支援装置。
【請求項7】
前記第1の関節及び前記第2の関節は、回転関節であり、
前記第3の関節は、直動関節であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の穿孔支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル工事に用いられる穿孔装置に適用される穿孔支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動台車に取り付けられたブームと、ブームに取り付けられたガイドシェルと、ガイドシェルに取り付けられ、穿孔ロッドを有する穿孔機と、を備えた穿孔装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に記載の穿孔装置では、ブームとガイドシェルとの位置や姿勢をセンサーで測定し、測定した位置や姿勢をモニターに表示させることで、穿孔ロッドの先端部の位置や姿勢の調整を支援するようになっている。
しかしながら、特許文献1に記載の穿孔装置では、例えば、穿孔ロッドの先端部の姿勢を調整する場合、ブーム等の関節を動作させて、穿孔ロッドの姿勢を変化させると、穿孔ロッドの先端部の位置も変化するため、オペレータに高い技術が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、穿孔ロッドの先端部の位置及び姿勢をより容易に調整可能な穿孔支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、(a)移動台車に取り付けられ、回転関節及び直動関節を含む複数の関節が設けられた支持部材と、支持部材に取り付けられ、穿孔ロッドを有する穿孔機とを備えた穿孔装置における、穿孔ロッドの先端部の位置及び姿勢の制御を支援する穿孔支援装置であって、(b)支持部材の第1の構成部品と移動台車とを相対変位可能とする第1の関節、第1の構成部品と支持部材の第2の構成部品とを相対変位可能とする第2の関節、及び第2の構成部品と支持部材の第3の構成部品とを相対変位可能とする第3の関節を含む第1の関節群の動作速度の目標値を算出する第1の目標値演算部と、(c)第1の目標値演算部で算出した第1の関節群の動作速度の目標値に基づき、第1の関節群それぞれの動作速度を制御する第1の関節群動作制御部と、(d)支持部材に形成された関節のうちの第1の関節群以外の1または複数の関節からなる第2の関節群の動作速度の目標値を算出する第2の目標値演算部と、(e)第2の目標値演算部で算出した第2の関節群の動作速度の目標値に基づき、第2の関節群それぞれの動作速度を制御する第2の関節群動作制御部と、(f)オペレータからの第2の関節群の動作の指示入力を受け付ける指示入力部と、を備え、(g)第2の目標値演算部は、指示入力部で受け付けた指示入力に基づき、第2の関節群の動作速度の目標値を算出し、(h)第1の目標値演算部は、第2の目標値演算部で算出した第2の関節群の動作速度の目標値に基づき、第2の関節群の動作に起因して穿孔ロッドの先端部に発生することが予期される移動速度をゼロとするための、第1の関節群の動作速度の目標値を算出する穿孔支援装置であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第2の関節群の動作に起因して穿孔ロッドの先端部に発生することが予期される移動速度が打ち消されるように、第1の関節群を動作できる。そのため、穿孔ロッドの先端部の位置及び姿勢をより容易に調整可能な穿孔支援装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る穿孔支援装置と穿孔装置との概略構成を表す概念図である。
【
図2】ブームとガイドシェルとの各部の名称を説明するための説明図であり、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【
図3】第1のモード実行処理を表すフローチャートである。
【
図4】第1の関節群の動作速度の目標値の算出方法の説明図である。
【
図5】第2のモード実行処理を表すフローチャートである。
【
図6】第3のモード実行処理を表すフローチャートである。
【
図7】第4のモード実行処理を表すフローチャートである。
【
図8】第1、第2の関節群の動作速度の目標値の算出方法の説明図である。
【
図9】第5のモード実行処理を表すフローチャートである。
【
図10】数式の導出に用いるΣ
0~Σ
8座標系を説明するための説明図であり、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態に係る穿孔支援装置について図面を参照して説明する。
(構成)
図1に示すように、穿孔支援装置1は、切羽2に対し爆薬装填用の装薬孔3を穿孔するためのトンネル工事用作業用車両(以下、「穿孔装置4」とも呼ぶ)に搭載される。
穿孔装置4は、移動台車5と、移動台車5に取り付けられ、回転関節及び直動関節を含む複数の関節が設けられた支持部材6と、支持部材6に取り付けられ、穿孔ロッド7aを有する穿孔機7と、支持部材6の各関節(回転関節、直動関節)それぞれを駆動させる関節駆動装置8と、を備えている。支持部材6は、移動台車5に取り付けられたブーム9と、ブーム9に取り付けられ、穿孔機7を搭載するガイドシェル10と、を備えている。
【0009】
図2(a)(b)に示すように、ブーム9は、移動台車5に設けられたヨーク5aに取り付けられたペデステル9aと、ペデステル9aに取り付けられた角筒状のアウターブーム9bと、アウターブーム9bに挿入された角柱状のインナーブーム9cと、インナーブーム9cに取り付けられたフォーク9dと、を備えている。また、フォーク9dに取り付けられたチルトボディ9eと、チルトボディ9eに取り付けられたスイングボディ9fと、スイングボディ9fに取り付けられたロータリーボディ9gと、ロータリーボディ9gに設けられた腕部9hに取り付けられたガイドマウンチング9iと、を更に備えている。腕部9hは、ロータリーボディ9gの回転軸と直交する方向に延びて設けられている。
【0010】
ヨーク5aとペデステル9aとの間(連結部)には、鉛直方向(
図2のZ方向)に延びている軸を回転軸(以下、「第1の回転軸11a」とも呼ぶ)とする回転関節(以下、「第1の関節12a」とも呼ぶ)が形成されている。また、ペデステル9aとアウターブーム9bとの間(連結部)には、移動台車5の左右方向(水平方向)に延びている軸を回転軸(以下、「第2の回転軸11b」とも呼ぶ)とする回転関節(以下、「第2の関節12b」とも呼ぶ)が形成されている。さらに、アウターブーム9bとインナーブーム9cとの連結部には、アウターブーム9bの長手方向に延びている直動軸(以下、「第3の直動軸11c」とも呼ぶ)に沿って伸縮する直動関節(以下、「第3の関節12c」とも呼ぶ)が形成されている。すなわち、第1の関節12aは移動台車5とペデステル9aとを相対変位可能とし、第2の関節12bはペデステル9aとアウターブーム9bとを相対変位可能とし、第3の関節12cはアウターブーム9bとインナーブーム9cとを相対変位可能とする。
【0011】
なお、第1、第2の関節12a、12bを回転関節とし、第3の関節12cを直動関節とする例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、第2、第3の関節12b、12cを回転関節とし、第1の関節12aを直動関節としてもよい。また、第1、第3の関節12a、12cを回転関節とし、第2の関節12bを回転関節としてもよい。
フォーク9dとチルトボディ9eとの連結部には、第2の回転軸11bと平行な移動台車5の左右方向に延びている軸を回転軸(以下、「第4の回転軸11d」とも呼ぶ)とする回転関節(以下、「第4の関節12d」とも呼ぶ)が形成されている。さらに、チルトボディ9eとスイングボディ9fとの連結部には、第4の回転軸11dと直交する方向に延びている軸を回転軸(以下、「第5の回転軸11e」とも呼ぶ)とする回転関節(以下、「第5の関節12e」とも呼ぶ)が形成されている。
図2(a)(b)の例では、第5の回転軸11eは、第1の回転軸11a(鉛直方向に延びている軸)と平行となっている。
【0012】
スイングボディ9fとロータリーボディ9gとの連結部には、第5の回転軸11eと直交する方向に延びている軸を回転軸(以下、「第6の回転軸11f」とも呼ぶ)とする回転関節(以下、「第6の関節12f」とも呼ぶ)が形成されている。
図2(a)(b)の例では、第6の回転軸11fは、第3の直動軸11cと平行となっている。また、腕部9hとガイドマウンチング9iとの連結部には、腕部9hの方向(第6の回転軸11fと直交する方向)に延びている軸を回転軸(以下、「第7の回転軸11g」とも呼ぶ)とする回転関節(以下、「第7の関節12g」とも呼ぶ)が形成されている。
図2(a)(b)の例では、第7の回転軸11gは、第2、第4の回転軸11b、11dと平行となっている。
【0013】
ガイドシェル10は、ガイドマウンチング9iに取り付けられている。ガイドマウンチング9iとガイドシェル10との連結部には、第7の回転軸11gと直交する方向(穿孔ロッド7aの方向)に延びている直動軸(以下、「第8の直動軸11h」とも呼ぶ)に沿って伸縮する直動関節(以下、「第8の関節12h」とも呼ぶ)が形成されている。
図2(a)(b)の例では、第8の直動軸11hは、第6の回転軸11fと平行となっている。
図1に戻り、穿孔機7は、先端部に穿孔用ビットを有する穿孔ロッド7aと、穿孔ロッド7aの後端部に打撃を付与するドリフタ7bと、を備えている。穿孔ロッド7aは、第8の直動軸11hと平行な方向に延びている。そして、穿孔機7は、穿孔ロッド7aの後端部にドリフタ7bで打撃を付与することで、切羽2に装薬孔3を穿孔可能となっている。
【0014】
関節駆動装置8は、後述するコントローラ18からの指令に従って、第1~第8の関節12a~12hそれぞれを駆動(回転、伸縮)させる。関節駆動装置8としては、例えば、第1~第8の関節12a~12hそれぞれに設けられた油圧シリンダ等の油圧駆動装置(不図示)への油圧供給を制御して、第1~第8の関節12a~12hそれぞれを駆動可能な油圧制御装置を採用できる。また、関節駆動装置8は、後述する第1の回転角θ1と第5の回転角θ5とが互いに反対方向に同じだけ回転するように、第1、第5の関節12a、12eを駆動させ、第2の回転角θ2と第4の回転角θ4とが互いに反対方向に同じだけ回転するように、第2、第4の関節12b、12dを駆動させる同調機能を有している。
これにより、穿孔装置4は、コントローラ18からの指令に応じて、第1~第8の関節12a~12hの回転や伸縮を行い、穿孔ロッド7aの先端部の位置及び姿勢を変更可能となっている。そして、穿孔ロッド7aの先端部を切羽2の所定位置に所定姿勢で押し当てる動作と、穿孔ロッド7aの後端部にドリフタ7bで打撃を付与する動作とを繰り返すことで、切羽2の所定位置に所定角度を有する複数の装薬孔3を穿孔可能となっている。
【0015】
また、穿孔支援装置1は、
図1に示すように、動作量検出部13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13hと、モード切替スイッチ14と、指示入力部15と、計画孔記憶部16と、モニター17と、コントローラ18と、を備えている。
動作量検出部13aは、第1の関節12aによるペデステル9aの回転角度(以下、「第1の回転角θ
1」とも呼ぶ)を検出する。また、動作量検出部13bは、第2の関節12bによるアウターブーム9bの回転角度(以下、「第2の回転角θ
2」とも呼ぶ)を検出する。さらに、動作量検出部13cは、第3の関節12cによる伸縮量(以下、「第3の伸縮量L
3」とも呼ぶ)を検出する。また、動作量検出部13dは、第4の関節12dによるチルトボディ9eの回転角度(以下、「第4の回転角θ
4」とも呼ぶ)を検出する。
【0016】
動作量検出部13eは、第5の関節12eによるスイングボディ9fの回転角度(以下、「第5の回転角θ
5」とも呼ぶ)を検出する。また、動作量検出部13fは、第6の関節12fによるロータリーボディ9gの回転角度(以下、「第6の回転角θ
6」とも呼ぶ)を検出する。さらに、動作量検出部13gは、第7の関節12gによるガイドマウンチング9iの回転角度(以下、「第7の回転角θ
7」とも呼ぶ)を検出する。また、動作量検出部13hは、第8の直動軸11hの伸縮量(以下、「第8の伸縮量L
8」とも呼ぶ)を検出する。第1、第2、第4~第7の回転角θ
1、θ
2、θ
4~θ
7、及び第3、第8の伸縮量L
3、L
8の正方向は、
図2に矢印で示す方向とする。そして、動作量検出部13a~13hは、検出結果(θ
1、θ
2、L
3、θ
4~θ
7、L
8)をコントローラ18に出力する。
【0017】
モード切替スイッチ14は、オペレータからの動作モードの切り替えの指示入力を受け付ける。動作モードとしては、例えば、穿孔ロッド7aの先端部の位置を維持しつつ第4、第5の回転角θ4、θ5を操作可能とする第1のモード、穿孔ロッド7aの先端部の位置を維持しつつ第6の回転角θ6を操作可能とする第2のモード、及び穿孔ロッド7aの先端部の位置を維持しつつ第7の回転角θ7を操作可能とする第3のモードを有している。すなわち、第1のモードではθ4、θ5への操作に対して穿孔ロッド7aの先端部の位置を維持する補正制御を行い、第2のモードではθ6への操作に対して補正制御を行い、第3のモードではθ7への操作に対して補正制御を行う。また、穿孔ロッド7aの先端部の位置や姿勢を自動制御する第4のモード、及び第1~第4のモードのような位置や姿勢の維持の制御を行わない、つまり、手動制御とする第5のモードを更に有している。そして、モード切替スイッチ14は、受け付けた指示入力をコントローラ18に出力する。
なお、第1~第3のモードの実行中は補正制御を行うθ4~θ7以外の回転角等も、入力・操作可能としてもよい。また、第1~第3のモードを同時に実行可能としてもよい。
【0018】
また、第4のモードの実行中は、第2、第3のモードを実行可能としてもよい。ただし、θ1~θ5は、自動制御とバッティングするため、入力しても動かすことができない。
指示入力部15は、オペレータからの第1~第8の関節12a~12hの回転や収縮の指示入力を受け付ける。そして、受け付けた指示入力をコントローラ18に出力する。
計画孔記憶部16は、切羽2への穿孔パターンを記憶している。穿孔パターンとしては、例えば、穿孔が計画されている装薬孔3(以下、「計画孔」とも呼ぶ)の開口位置xref、yref、zref、挿し角φref、ψref、及び穿孔長からなるパターンを採用できる。
モニター17は、オペレータから視認可能な位置に配置され、コントローラ18で生成された画像データ(切羽2の画像と計画孔の位置のマーカーの画像データ)を表示する。
【0019】
コントローラ18は、A/D(Analog to Digital)変換回路、D/A(Digital to Analog)変換回路、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等から構成した集積回路を備える。ROMは、各種処理を実現するプログラムを記憶している。CPUは、ROMが記憶しているプログラムに従って、計画孔記憶部16が記憶している穿孔パターンに基づき、切羽2の画像とともに計画孔の位置のマーカーを表示させる指令をモニター17に出力する。これにより、オペレータは、モニター17を視認しながら、目的のマーカー位置に穿孔ロッド7aの先端を移動させる。
【0020】
また、CPUは、ROMが記憶しているプログラムに従って、第1の目標値演算部18a(第1の演算実行部18b及び第2の演算実行部18cを含む)と、第1の関節群動作制御部18dと、第2の目標値演算部18eと、第2の関節群動作制御部18fと、位置取得部18gとを実現し、これら18a~18gにより、モード切替スイッチ14が出力する指示入力に基づき、第1のモード実行処理、第2のモード実行処理、第3のモード実行処理、第4のモード実行処理、及び第5のモード実行処理のいずれかを実行する。
【0021】
(第1のモード実行処理)
次に、コントローラ18(第1、第2の目標値演算部18a、18e、第1、第2の関節群動作制御部18d、18f)が実行する第1のモード実行処理について説明する。第1のモード実行処理は、モード切替スイッチ14が出力する指示入力が第1のモードを表している場合に、所定時間(例えば、10[msec])が経過するたびに実行される。
図3に示すように、まず、ステップS101では、第2の目標値演算部18eは、指示入力部15が出力する第4、第5の関節12d、12eの動作の指示入力に基づき、第4、第5の関節12d、12eの角速度の目標値dθ
4ref/dt、dθ
5ref/dtを算出する。
【0022】
続いてステップS102に移行して、第1の目標値演算部18aは、ステップS101で算出した目標値dθ
4ref/dt、dθ
5ref/dtに基づき、第4、第5の関節12d、12eの動作に起因して穿孔ロッド7aの先端部に発生することが予期される移動速度d
0x
8/dt、d
0y
8/dt、d
0z
8/dtをゼロとするための、第1、第2の関節12a、12bの角速度の目標値dθ
1ref/dt、dθ
2ref/dt、及び第3の関節12cの伸縮速度の目標値dL
3ref/dtを算出する。具体的には、
図4に示すように、目標値dθ
4ref/dt、dθ
5ref/dtに基づき、下記(1)式に従って、第1、第2の関節12a、12bの角速度の目標値dθ
1ref/dt、dθ
2ref/dt、及び第3の関節12cの伸縮速度の目標値dL
3ref/dtを算出する。その際、第6、第7の関節12f、12gの角速度の目標値dθ
6ref/dt、dθ
7ref/dtはゼロとする。
〔d
0x
8/dt、d
0y
8/dt、d
0z
8/dt〕
T
=
0J
8(48)・〔dθ
4ref/dt、dθ
5ref/dt、dθ
6ref/dt、dθ
7ref/dt〕
T
〔d
0x
5/dt、d
0y
5/dt、d
0z
5/dt〕
T
=〔d
0x
8/dt、d
0y
8/dt、d
0z
8/dt〕
T
〔dθ
1ref/dt、dθ
2ref/dt、dL
3ref/dt〕
T
=
0J
5(13)
-1・〔d
0x
5/dt、d
0y
5/dt、d
0z
5/dt〕
T …(1)
なお、上記(1)式の導出手順、及び行列
0J
8(48)、
0J
5(13)
-1については後述する。
【0023】
続いてステップS103に移行して、第1の関節群動作制御部18dは、ステップS102で算出した第1、第2の関節12a、12bの角速度の目標値dθ1ref/dt、dθ2ref/dt、第3の関節12cの伸縮速度の目標値dL3ref/dt、及び動作量検出部13a、13b、13cの検出結果に基づき、第1、第2の関節12a、12bの角速度dθ1/dt、dθ2/dt、及び第3の関節12cの伸縮速度dL3/dtを目標値dθ1ref/dt、dθ2ref/dt、dL3ref/dtと等しくするための指令を関節駆動装置8に出力する。これにより、関節駆動装置8に、コントローラ18からの指令に従って、第1~第3の関節12a~12cを駆動させ、第1~第3の関節12a~12cの動作速度dθ1/dt、dθ2/dt、dL3/dtを制御する。
【0024】
また同時に、第2の関節群動作制御部18fは、ステップS101で算出した第4、第5の関節12d、12eの角速度の目標値dθ4ref/dt、dθ5ref/dt、及び動作量検出部13d、13eの検出結果に基づき、第4、第5の関節12d、12eの角速度dθ4/dt、dθ5/dtを目標値dθ4ref/dt、dθ5ref/dtと等しくするための指令を関節駆動装置8に出力した後、この演算処理、つまり、第1のモード実行処理を終了する。これにより、関節駆動装置8に、コントローラ18からの指令に従って、第4、第5の関節12d、12eを駆動させ、第4、第5の関節12d、12eの動作速度dθ4/dt、dθ5/dtを制御する。
これにより、関節駆動装置8が、コントローラ18からの指令に従って、第1~第5の関節12a~12eそれぞれを駆動させることで、穿孔ロッド7aの先端部の位置を維持しつつ、オペレータからの指示入力に従って、穿孔ロッド7aの姿勢を操作可能とする。
【0025】
ここで、穿孔装置4は、穿孔ロッド7aの先端部の位置を決めるために3自由度、穿孔ロッド7aの角度を決めるために2自由度、合計5自由度が必要となる。これに加え、操縦席からの視認性確保や、トンネル壁面との衝突回避、トンネル側壁面への穿孔を行うために、自由度に冗長性を持たせる必要があるため、合計8自由度を有している。そのため、例えば、穿孔ロッド17aの先端部に発生することが予期される移動速度d0x8/dt、d0y8/dt、d0z8/dtから、その移動速度d0x8/dt、d0y8/dt、d0z8/dtをゼロとするための、8自由度に対応する関節、つまり第1~第8の関節12a~12hの動作速度の目標値を行列式で算出するようにした場合、入力と出力の数が異なるため、係数行列の逆行列を直接計算できない。したがって、穿孔ロッド7aの先端部の位置を維持しつつ、オペレータからの指示入力に従って、穿孔ロッド7aの姿勢を操作可能とすることが困難である。
【0026】
これに対し、実施形態に係る穿孔支援装置1によれば、第1~第3の関節12a~12cを駆動することで、他の関節の動作に起因して穿孔ロッド17aの先端部に発生することが予期される移動速度d0x8/dt、d0y8/dt、d0z8/dtをゼロとし、穿孔ロッド7aの先端部の位置を維持するようにした。それゆえ、上記(1)式では、予期される移動速度d0x8/dt、d0y8/dt、d0z8/dtから、第1、第2の関節12a、12bの角速度の目標値dθ1ref/dt、dθ2ref/dt、及び第3の関節12cの伸縮速度の目標値dL3ref/dtを算出するようになる。そのため、式中で用いられる逆行列0J5(13)
-1は、3×3の正方行列となるため、直接計算できる。したがって、穿孔ロッド7aの先端部の位置を維持しつつ、オペレータからの指示入力に従って、穿孔ロッド7aの姿勢を操作可能とすることが容易となる。
【0027】
(第2のモード実行処理)
次に、コントローラ18(第1、第2の目標値演算部18a、18e、第1、第2の関節群動作制御部18d、18f)が実行する第2のモード実行処理について説明する。第2のモード実行処理は、モード切替スイッチ14が出力する指示入力が第2のモードを表している場合に、所定時間(10[msec])が経過するたびに実行される。
図5に示すように、まず、ステップS201では、第2の目標値演算部18eは、指示入力部15が出力する第6の関節12fの動作(回転)の指示入力に基づき、第6の関節12fの角速度の目標値dθ
6ref/dtを算出する。
【0028】
続いてステップS202に移行して、第1の目標値演算部18aは、ステップS201で算出した目標値dθ6ref/dtに基づき、第6の関節12fの動作に起因して穿孔ロッド7aの先端部に発生することが予期される移動速度d0x8/dt、d0y8/dt、d0z8/dtをゼロとするための、第1、第2の関節12a、12bの角速度の目標値dθ1ref/dt、dθ2ref/dt及び第3の関節12cの伸縮速度の目標値dL3ref/dtを算出する。具体的には、目標値dθ6ref/dtに基づき、上記(1)式に従って、第1、第2の関節12a、12bの角速度の目標値dθ1ref/dt、dθ2ref/dt及び第3の関節12cの伸縮速度の目標値dL3ref/dtを算出する。その際、第4、第5、第7の関節12d、12e、12gの角速度の目標値dθ4ref/dt、dθ5ref/dt、dθ7ref/dtはゼロとする。
【0029】
続いてステップS203に移行して、第1の関節群動作制御部18dは、ステップS202で算出した第1、第2の関節12a、12bの角速度の目標値dθ1ref/dt、dθ2ref/dt、第3の関節12cの伸縮速度の目標値dL3ref/dt、及び動作量検出部13a、13b、13cの検出結果に基づき、第1、第2の関節12a、12bの角速度dθ1/dt、dθ2/dt、及び第3の関節12cの伸縮速度dL3/dtを目標値dθ1ref/dt、dθ2ref/dt、dL3ref/dtと等しくするための指令を関節駆動装置8に出力する。これにより、関節駆動装置8に、コントローラ18からの指令に従って、第1~第3の関節12a~12cを駆動させ、第1~第3の関節12a~12cの動作速度dθ1/dt、dθ2/dt、dL3/dtを制御する。
【0030】
また同時に、第2の関節群動作制御部18fは、ステップS201で算出した第6の関節12fの角速度の目標値dθ6ref/dt、及び動作量検出部13fの検出結果に基づき、第6の関節12fの角速度dθ6/dtを目標値dθ6ref/dtと等しくするための指令を関節駆動装置8に出力した後、この演算処理、つまり、第2のモード実行処理を終了する。これにより、関節駆動装置8に、コントローラ18からの指令に従って、第6の関節12fを駆動させ、第6の関節12fの動作速度dθ6/dtを制御する。
これにより、関節駆動装置8が、コントローラ18からの指令に従って、第1~第3、第6の関節12a~12c、12fそれぞれを駆動させることで、穿孔ロッド7aの先端部の位置を維持しつつ、オペレータからの指示入力に従って、第6の回転角θ6を操作可能とする。その際、第7の関節12gにおける第7の回転角θ7が0[rad]である場合には、穿孔ロッド7aの先端部の位置に加え、穿孔ロッド7aの姿勢も維持される。
【0031】
(第3のモード実行処理)
次に、コントローラ18(第1、第2の目標値演算部18a、18e、第1、第2の関節群動作制御部18d、18f)が実行する第3のモード実行処理について説明する。第3のモード実行処理は、モード切替スイッチ14が出力する指示入力が第3のモードを表している場合に、所定時間(10[msec])が経過するたびに実行される。
図6に示すように、まず、ステップS301では、第2の目標値演算部18eは、指示入力部15が出力する第7の関節12gの動作(回転)の指示入力に基づき、第7の関節12gの角速度の目標値dθ
7ref/dtを算出する。
【0032】
続いてステップS302に移行して、第1の目標値演算部18aは、ステップS301で算出した目標値dθ7ref/dtに基づき、第7の回転角θ7の動作に起因して穿孔ロッド7aの先端部に発生することが予期される移動速度d0x8/dt、d0y8/dt、d0z8/dtをゼロとするための、第1、第2の関節12a、12bの角速度の目標値dθ1ref/dt、dθ2ref/dt及び第3の関節12cの伸縮速度の目標値dL3ref/dtを算出する。具体的には、目標値dθ7ref/dtに基づき、上記(1)式に従って、第1、第2の関節12a、12bの角速度の目標値dθ1ref/dt、dθ2ref/dt及び第3の関節12cの伸縮速度の目標値dL3ref/dtを算出する。その際、第4、第5、第6の関節12d、12e、12fの角速度の目標値dθ4ref/dt、dθ5ref/dt、dθ6ref/dtはゼロとする。
【0033】
続いてステップS303に移行して、第1の関節群動作制御部18dは、ステップS302で算出した第1、第2の関節12a、12bの角速度の目標値dθ1ref/dt、dθ2ref/dt、第3の関節12cの伸縮速度の目標値dL3ref/dt、及び動作量検出部13a、13b、13cの検出結果に基づき、第1、第2の関節12a、12bの角速度dθ1/dt、dθ2/dt、及び第3の関節12cの伸縮速度dL3/dtを目標値dθ1ref/dt、dθ2ref/dt、dL3ref/dtと等しくするための指令を関節駆動装置8に出力する。これにより、関節駆動装置8に、コントローラ18からの指令に従って、第1~第3の関節12a~12cを駆動させ、第1~第3の関節12a~12cの動作速度dθ1/dt、dθ2/dt、dL3/dtを制御する。
【0034】
また同時に、第2の関節群動作制御部18fは、ステップS301で算出した第7の関節12gの角速度の目標値dθ7ref/dt、及び動作量検出部13gの検出結果に基づき、第7の関節12gの角速度dθ7/dtを目標値dθ7ref/dtと等しくするための指令を関節駆動装置8に出力した後、この演算処理、つまり、第3のモード実行処理を終了する。これにより、関節駆動装置8に、コントローラ18からの指令に従って、第7の関節12gを駆動させ、第7の関節12gの動作速度dθ7/dtを制御する。
これにより、関節駆動装置8が、コントローラ18からの指令に従って、第1~第3、第7の関節12a~12c、12gそれぞれを駆動させることで、穿孔ロッド7aの先端部の位置を維持しつつ、オペレータからの指示入力に従って、第7の回転角θ7を操作可能とする。なお、第7の回転角θ7を操作する状況としては、ロックボルト穿孔がある。
【0035】
(第4のモード実行処理)
次に、コントローラ18(第1の目標値演算部18a、第1、第2の演算実行部18b、18c、第1の関節群動作制御部18d、第2の目標値演算部18e、第2の関節群動作制御部18f、位置取得部18g)が実行する第4のモード実行処理について説明する。第4のモード実行処理は、モード切替スイッチ14が出力する指示入力が第4のモードを表している場合に、所定時間(10[msec])が経過するたびに実行される。
図7に示すように、まず、ステップS401では、第2の目標値演算部18eは、計画孔記憶部16が記憶している切羽2の穿孔パターンから計画孔を1つ選択する。計画孔の選択方法としては、例えば、穿孔装置4のオペレータによる指示入力部15の操作を基に選択する方法や、予め定めた順番で自動的に選択する方法を用いることができる。続いて、選択した計画孔の開口位置xref、yref、zref及び挿し角φref、ψrefを読み出す。
【0036】
続いてステップS402に移行して、第2の目標値演算部18eは、Σ
8座標系(後述)のY軸方向の単位ベクトル(R
12、R
22、R
32)に基づき、下記(2)式に従って、切羽2の法線方向と穿孔ロッド7aとがなす角度を挿し角φnow、ψnowとして算出する。挿し角φnowは、切羽2の法線方向と穿孔ロッド7aとを上方から見た場合になす角度であり、挿し角ψnowは、切羽2の法線方向と穿孔ロッド7aとを側方から見た場合になす角度である。続いて、
図8に示すように、算出した挿し角φnow、ψnow、及びステップS401で読み出した計画孔の挿し角φref、ψrefに基づき、下記(3)式に従って、穿孔ロッド7aの姿勢(挿し角φnow、ψnow)と計画孔の挿し角φref、ψrefとが等しくなるように、第4、第5の関節12dの角速度の目標値dθ
4ref/dt、dθ
5ref/dtを算出する。
φnow=tan
-1(R
12/R
22)
ψnow=tan
-1(R
32/R
22) …(2)
dθ
4ref/dt=kψ・ψerr
dθ
5ref/dt=kφ・φerr …(3)
ψerr=ψref-ψnow
φerr=φref-φnow
ここで、kψ、kφは、フィードバックゲインである。
【0037】
続いてステップS403に移行して、位置取得部18gは、穿孔ロッド7aの先端部の位置xnow、ynow、znowを取得する。位置xnow、ynow、znowを取得する方法としては、例えば、穿孔装置4とは別体に設けられ、穿孔ロッド7aの先端部の位置を測量する測量装置(不図示)から取得する方法や、動作量検出部13a~13hの検出結果(回転量、伸縮量)に基づき、穿孔ロッド7aの先端部の位置を算出する方法を採用できる。
続いてステップS404に移行して、第1の目標値演算部18a(第1の演算実行部18b)は、ステップS401で読み出した計画孔の開口位置(xref、yref、zref)と、ステップS403で取得した穿孔ロッド7aの先端部の位置(xnow、ynow、znow)との差(距離)をゼロとするための、穿孔ロッド7aの先端部の移動速度の目標値(以下、「目標速度Vref(=〔d0x8ref/dt、d0y8ref/dt、d0z8ref/dt〕T)」とも呼ぶ)を算出する。
【0038】
具体的には、第1の目標値演算部18a(第1の演算実行部18b)は、まず下記(4)式に従って正規化した位置誤差ベクトルQerrを算出する。続いて、算出した正規化した位置誤差ベクトルQerrに基づき、下記(5)式に従って目標速度Vrefを算出する。
Qerr=Perr/Derr …(4)
Perr=〔xerr、yerr、zerr〕T
Derr=〔xerr2+yerr2+zerr2〕1/2
xerr=xref-xnow
yerr=yref-ynow
zerr=zref-znow
Vref=Qerr・Sref …(5)
【0039】
ここで、Srefは、穿孔ロッド7aの先端部の移動速度の目標値の大きさを設定するためのスカラ値である。スカラ値Srefとしては、例えば、加速域、定速域及び減速域からなる速度パターンを設定するようにしてもよい。加速域では、第1の関節群動作制御部18dによる制御の開始直後に、穿孔ロッド7aの先端部の移動速度の目標値d0x8ref/dt、d0y8ref/dt、d0z8ref/dtの時間変化率を徐々に増大させ、定速域では、目標値d0x8ref/dt、d0y8ref/dt、d0z8ref/dtが予め定められた最大速度に到達すると最大速度を維持させ、減速域では、第1の関節群動作制御部18dによる制御の終了直前に、目標値d0x8ref/dt、d0y8ref/dt、d0z8ref/dtの時間変化率を徐々に低減させる。これにより、穿孔ロッド7aの先端部の移動開始時に移動速度をスローアップし、移動終了時に移動速度をスローダウンすることができるため、第1~第3の関節12a~12cの振動を抑制することができる。
【0040】
ちなみに、穿孔装置4では、第1~第3の関節12a~12cを、電動モータ等と異なり応答速度が遅い油圧駆動装置を用いて駆動している。それゆえ、例えば、目標値d0x8ref/dt、d0y8ref/dt、d0z8ref/dtの時間変化率が増大し、第1~第3の関節12a~12cの動作速度の目標値dθ1ref/dt、dθ2ref/dt、dL3ref/dtが増大すると、応答遅れやオーバーシュートが発生して、第1~第3の関節12a~12cに振動が発生する可能性がある。
【0041】
続いてステップS405に移行して、第1の目標値演算部18a(第2の演算実行部18c)は、ステップS402で算出した目標値dθ4ref/dt、dθ5ref/dt、及びステップS404で算出した目標速度Vrefに基づき、第4、第5の関節12d、12eの動作に起因して穿孔ロッド7aの先端部に発生することが予期される移動速度d0x8/dt、d0y8/dt、d0z8/dtをゼロとするとともに、計画孔の開口位置(xref、yref、zref)と穿孔ロッド7aの先端部の位置(xnow、ynow、znow)とを等しくするための、第1~第3の関節12a~12cの動作速度の目標値〔dθ1ref/dt、dθ2ref/dt、dL3ref/dt〕Tを算出する。
【0042】
具体的には、第1の目標値演算部18a(第2の演算実行部18c)は、まず、目標値dθ4ref/dt、dθ5ref/dtに基づき、下記(6)式に従って穿孔ロッド7aの先端部の移動速度d0x8/dt、d0y8/dt、d0z8/dtを算出する。続いて、算出した移動速度d0x8/dt、d0y8/dt、d0z8/dt、及び目標速度Vrefに基づき、下記(7)式に従って、第1~第3の関節12a~12cの動作速度の目標値〔dθ1ref/dt、dθ2ref/dt、dL3ref/dt〕Tを算出する。
〔d0x8ref/dt、d0y8ref/dt、d0z8ref/dt〕T
=0J8(48)・〔dθ4ref/dt、dθ5ref/dt、0、0〕T …(6)
〔dθ1ref/dt、dθ2ref/dt、dL3ref/dt〕T
=0J5(13)
-1・(Vref-〔d0x8ref/dt、d0y8ref/dt、d0z8ref/dt〕T) …(7)
【0043】
続いてステップS406に移行して、第1の関節群動作制御部18dは、ステップS405で算出した第1、第2の関節12a、12bの角速度の目標値dθ1ref/dt、dθ2ref/dt、第3の関節12cの伸縮速度の目標値dL3ref/dt、及び動作量検出部13a、13b、13cの検出結果に基づき、第1、第2の関節12a、12bの角速度dθ1/dt、dθ2/dt、及び第3の関節12cの伸縮速度dL3/dtを目標値dθ1ref/dt、dθ2ref/dt、dL3ref/dtと等しくするための指令を関節駆動装置8に出力する。これにより、関節駆動装置8に、コントローラ18からの指令に従って、第1~第3の関節12a~12cを駆動させ、第1~第3の関節12a~12cの動作速度dθ1/dt、dθ2/dt、dL3/dtを制御する。
【0044】
同時に、第2の関節群動作制御部18fは、ステップS402で算出した第4、第5の関節12d、12eの角速度の目標値dθ4ref/dt、dθ5ref/dt、及び動作量検出部13d、13eの検出結果に基づき、第4、第5の関節12d、12eの角速度dθ4/dt、dθ5/dtを目標値dθ4ref/dt、dθ5ref/dと等しくするための指令を関節駆動装置8に出力した後、この演算処理、つまり、第4のモード実行処理を終了する。これにより、関節駆動装置8に、コントローラ18からの指令に従って、第4、第5の関節12d、12eを駆動させ、第4、第5の関節12d、12eの動作速度dθ4/dt、dθ5/dtを制御する。
これにより、関節駆動装置8が、コントローラ18からの指令に従って、第1~第5の関節12a~12eそれぞれを駆動させることで、穿孔ロッド7aの先端部の位置と姿勢とを、計画孔の開口位置と挿し角とに自動的にゆっくりと徐々に近づけることができる。
【0045】
(第5のモード実行処理)
次に、コントローラ18(第1、第2の目標値演算部18a、18e、第1、第2の関節群動作制御部18d、18f)が実行する第5のモード実行処理について説明する。第5のモード実行処理は、モード切替スイッチ14が出力する指示入力が第5のモードを表している場合に、所定時間(10[msec])が経過するたびに実行される。
図9に示すように、まず、ステップS501では、第1の目標値演算部18aは、指示入力部15が出力する第1~第3の関節12a~12cの動作の指示入力に基づき、第1、第2の関節12a、12bの角速度の目標値dθ
1ref/dt、dθ
2ref/dt、及び第3の関節12cの伸縮速度の目標値dL
3ref/dtを算出する。また、第2の目標値演算部18eは、指示入力部15が出力する第4~第7の関節12d~12gの動作の指示入力に基づき、第4~第7の関節12d~12gの角速度の目標値dθ
4ref/dt~dθ
7ref/dtを算出する。
【0046】
続いてステップS502に移行して、第1の関節群動作制御部18dは、ステップS501で算出した第1、第2の関節12a、12bの角速度の目標値dθ1ref/dt、dθ2ref/dt、第3の関節12cの伸縮速度の目標値dL3ref/dt、及び動作量検出部13a、13b、13cの検出結果に基づき、第1、第2の関節12a、12bの角速度dθ1/dt、dθ2/dt、及び第3の関節12cの伸縮速度dL3/dtを目標値dθ1ref/dt、dθ2ref/dt、dL3ref/dtと等しくするための指令を関節駆動装置8に出力する。これにより、関節駆動装置8に、コントローラ18からの指令に従って、第1~第3の関節12a~12cを駆動させ、第1~第3の関節12a~12cの動作速度dθ1/dt、dθ2/dt、dL3/dtを制御する。
【0047】
また同時に、第2の関節群動作制御部18fは、ステップS501で算出した第4~第7の関節12d~12gの角速度の目標値dθ4ref/d~dθ7ref/dt、及び動作量検出部13d~13gの検出結果に基づき、第4~第7の関節12d~12gの角速度dθ4/dt~dθ7/dtを目標値dθ4ref/dt~dθ7ref/dtと等しくするための指令を関節駆動装置8に出力した後、この演算処理、つまり、第5のモード実行処理を終了する。これにより、関節駆動装置8に、コントローラ18からの指令に従って、第4~第7の関節12d~12gを駆動させ、第4~第7の関節12d~12gの動作速度dθ4/dt~dθ7/dtを制御する。
【0048】
(演算式の導出手順)
次に、上記(1)式の導出手順について詳細に説明する。
まず、
図10(a)(b)に示すように、Σ
0~Σ
8座標系の原点を設定する。そして、
図10(a)(b)に示すように、第1、第2、第4~第7の回転角θ
1、θ
2、θ
4~θ
7が0[rad]であるときに、Σ
0~Σ
8座標系のX方向が移動台車5の右方向と一致し、Σ
0~Σ
8座標系のY方向が移動台車5の前方向と一致し、Σ
0~Σ
8座標系のZ方向が移動台車5の上方向と一致するようにした。また、Σ
0座標系からΣ
1座標系の原点を見た場合の位置、Σ
1座標系からΣ
2座標系の原点を見た場合の位置の位置、Σ
2座標系からΣ
3座標系の原点を見た場合の位置、Σ
4座標系からΣ
5座標系の原点を見た場合の位置、Σ
5座標系からΣ
6座標系の原点を見た場合の位置、Σ
6座標系からΣ
7座標系の原点を見た場合の位置、並びにΣ
7座標系からΣ
8座標系の原点を見た場合の位置を、下記表1に示す。
【0049】
【0050】
すると、Σ
0座標系とΣ
1座標系との同次変換行列
0T
1は、下記(8)式で表される。
【数1】
【0051】
ここで、C
1=cosθ
1、S
1=sinθ
1である。
また、Σ
1座標系とΣ
2座標系との同次変換行列
1T
2は、下記(9)式で表される。
【数2】
【0052】
ここで、C
2=cosθ
2、S
2=sinθ
2である。
また、Σ
2座標系とΣ
3座標系との同次変換行列
2T
3は、下記(10)式で表される。
【数3】
【0053】
また、Σ
3座標系とΣ
4座標系との同次変換行列
3T
4は、下記(11)式で表される。
【数4】
【0054】
ここで、C
4=cosθ
4、S
4=sinθ
4である。
また、Σ
4座標系とΣ
5座標系との同次変換行列
4T
5は、下記(12)式で表される。
【数5】
【0055】
ここで、C
5=cosθ
5、S
5=sinθ
5である。
また、Σ
5座標系とΣ
6座標系との同次変換行列
5T
6は、下記(13)式で表される。
【数6】
【0056】
ここで、C
6=cosθ
6、S
6=sinθ
6である。
また、Σ
6座標系とΣ
7座標系との同次変換行列
6T
7は、下記(14)式で表される。
【数7】
【0057】
ここで、C
7=cosθ
7、S
7=sinθ
7である。
また、Σ
7座標系とΣ
8座標系との同次変換行列
7T
8は、下記(15)式で表される。
【数8】
【0058】
また、Σ
0座標系とΣ
8座標系との同次変換行列
0T
8は、下記(16)式で表される。
【数9】
【0059】
以上より、Σ
0座標系から見たΣ
8座標系の原点の座標は下記(17)式で表される。
【数10】
0x
8=C
1(C
5(S
6(L
8S
7+C
7H
shell+H
dump)-D
rote-C
6D
dump)-S
5((-H
shellS
7)+L
rote+C
7L
8))
-S
1(
(-S
2(
S
4(S
5(S
6(L
8S
7+C
7H
shell+H
dump)-D
rote-C
6D
dump)+C
5((-H
shellS
7)+L
rote+C
7L
8)+ L
tilt)
+ C
4(C
6(L
8S
7+C
7H
shell+H
dump)+D
dumpS
6+H
tilt)-H
fork
))
+C
2(
C
4(S
5(S
6(L
8S
7+C
7H
shell+H
dump)-D
rote-C
6D
dump)+C
5((-H
shellS
7)+L
rote+C
7L
8)+L
tilt)
-S
4(C
6(L
8S
7+C
7H
shell+H
dump)+D
dumpS
6+H
tilt)+L
3
)+L
pede
)
0y
8=C
1(
(-S
2(
S
4(S
5(S
6(L
8S
7+C
7H
shell+H
dump)-D
rote-C
6D
dump)+C
5((-H
shellS
7)+L
rote+C
7L
8)+L
tilt)
+C
4(C
6(L
8S
7+C
7H
shell+H
dump)+D
dumpS
6+H
tilt)-H
fork
))
+ C
2(
C
4(S
5(S
6(L
8S
7+C
7H
shell+H
dump)-D
rote-C
6D
dump)+C
5((-H
shellS
7)+L
rote+C
7L
8)+L
tilt)
-S
4(C
6(L
8S
7+C
7H
shell+H
dump)+D
dumpS
6+H
tilt)+L
3
)+L
pede
)
+S
1(C
5(S
6(L
8S
7+C
7H
shell+H
dump)-D
rote-C
6D
dump)-S
5((-H
shellS
7)+L
rote+C
7L
8))
+ L
york
0z
8=C
2(
S
4(S
5(S
6(L
8S
7+C
7H
shell+H
dump)-D
rote-C
6D
dump)+C
5((-H
shellS
7)+L
rote+C
7L
8)+L
tilt)
+C
4(C
6(L
8S
7+C
7H
shell+H
dump)+D
dumpS
6+H
tilt)-H
fork
)
+S
2(
C
4(S
5(S
6(L
8S
7+C
7H
shell+H
dump)-D
rote-C
6D
dump)+C
5((-H
shellS
7)+L
rote+C
7L
8)+L
tilt)
-S
4(C
6(L
8S
7+C
7H
shell+H
dump)+D
dumpS
6+H
tilt)+L
3
)+H
york
【0060】
ここで、各関節12a~12hの状態量がθ1、θ2、L3、θ4、θ5、θ6、θ7、L8であるときに、第4~第7の関節12d~12gを角速度dθ4/dt、dθ5/dt、dθ6/dt、dθ7/dtで回転させた場合、穿孔ロッド7aの先端に発生する移動速度d0x8/dt、d0y8/dt、d0z8/dtは、穿孔ロッド7aの先端部の座標(0x8、0y8、0z8)、つまり上記(17)式を第4~第7の回転角θ4~θ7で偏微分し、偏微分したものに、第4~第7の関節12d~12gの角速度dθ4/dt、dθ5/dt、dθ6/dt、dθ7/dtを乗算することで得られる。
【0061】
すなわち、チルトボディ9eを第4の関節12d回りに角速度dθ4/dt で回転させたときに、穿孔ロッド7aの先端に発生する移動速度のX方向成分d0x8/dt、Y方向成分d0y8/dt、Z方向成分d0z8/dtは、下記(18)~(20)式で表される。
d0x8/dt=〔-S1(C2(-S4P4A-C4P4B)-S2(C4P4A-S4P4B))〕・dθ4/dt …(18)
d0y8/dt=〔C1(C2(-S4P4A-C4P4B)-S2(C4P4A-S4P4B))〕・dθ4/dt …(19)
d0z8/dt=〔S2(-S4P4A-C4P4B)+C2(C4P4A-S4P4B)〕・dθ4/dt …(20)
P4A=S5(S6(S7L8+C7Hshell+Hdump)-C6Ddump-Drote+C5(-S7Hshell+Lrote+C7L8)+Ltilt、P4B=C6(S7L8+C7Hshell+Hdump)+S6Ddump+Htilt
【0062】
また、スイングボディ9fを第5の関節12e回りに角速度dθ5/dtで回転させたときに、穿孔ロッド7aの先端に発生する移動速度のX方向成分d0x8/dt、Y方向成分d0y8/dt、Z方向成分d0z8/dtは、下記(21)~(23)式で表される。
d0x8/dt=〔C1 P5B -S1(C2 C4P5A -S2 S4 P5A)〕・dθ5/dt …(21)
d0y8/dt=〔S1 P5B +C1(C2 C4P5A -S2 S4 P5A)〕・dθ5/dt …(22)
d0z8/dt=〔C2 S4 P5A + S2 C4P5A〕・dθ5/dt …(23)
P5A= C5 (S6 ( S7L8+ C7 Hshell + Hdump) - C6 Ddump- Drote)- S5 (-S7 Hshell + Lrote+ C7L8)、P5B= - S5 (S6 ( S7L8 + C7 Hshell+ Hdump) - C6 Ddump - Drote)- C5(-S7 Hshell + Lrote + C7L8)
【0063】
さらに、ロータリーボディ9gを第6の関節12f回りに角速度dθ6/dtで回転させたときに、穿孔ロッド7aの先端に発生する移動速度のX方向成分d0x8/dt、Y方向成分d0y8/dt、Z方向成分d0z8/dtは、下記(24)~(26)式で表される。
d0x8/dt=〔C1C5P6A-S1(C2(C4S5P6A-S4P6B)-S2(C4P6B+S4S5P6A))〕・dθ6/dt …(24)
d0y8/dt=〔C1(C2(C4S5P6A-S4P6B)-S2(C4P6B+S4S5P6A))+C5S1P6A〕・dθ6/dt …(25)
d0z8/dt=〔S2(C4S5P6A-S4P6B)+C2(C4P6B+S4S5P6A)〕・dθ6/dt …(26)
P6A=C6(S7L8+C7Hshell+Hdump)+S6Ddump、P6B=-S6(S7L8+C7Hshell+Hdump)+C6Ddump
【0064】
また、ガイドマウンチング9iを第7の関節12g回りに角速度dθ7/dtで回転させたときに、穿孔ロッド7aの先端に発生する移動速度のX方向成分d0x8/dt、Y方向成分d0y8/dt、Z方向成分d0z8/dtは、下記(27)~(29)式で表される。
d0x8/dt=〔C1(C5S6P7A-S5P7B)-S1(C2(C4(C5P7B+S5S6P7A)-C6S4P7A)-S2(S4(C5P7B+S5S6P7A)+C4C6P7A))〕・dθ7/dt …(27)
d0y8/dt=〔C1(C2(C4(C5P7B+S5S6P7A)-C6S4P7A)-S2(S4(C5P7B+S5S6P7A)+C4C6P7A))+S1(C5S6P7A-S5P7B)〕・dθ7/dt …(28)
d0z8/dt=〔C2(S4(C5P7B+S5S6P7A)+C4C6P7A)+S2(C4(C5P7B+S5S6P7A)-C6S4P7A)〕・dθ7/dt …(29)
P7A=C7L8-S7Hshell、P7B=-S7L8-C7Hshell
【0065】
また、第4~第7の関節12d~12gの動作を同時に行った場合には、上記(18)~(29)式のX方向成分d0x8/dt、Y方向成分d0y8/dt、Z方向成分d0z8/dtを成分毎に足し合わせた速度が、穿孔ロッド7aの先端部に発生する。それゆえ、穿孔ロッド7aの先端部に発生する移動速度のX方向成分d0x8/dt、Y方向成分d0y8/dt、Z方向成分d0z8/dtは、下記(30)式に示すように、行列式で表すことができる。
【0066】
【0067】
ここで、第4~第7の関節12d~12gの角速度dθ4/dt、dθ5/dt、dθ6/dt、dθ7/dtを穿孔ロッド7aの先端の移動速度d0x8/dt、d0y8/dt、d0z8/dtへ変換する行列0J8(48)は、ヤコビ行列と呼ばれる。ヤコビ行列0J8(48)は、各関節12a~12hの状態量(回転量、伸縮量)θ1、θ2、L3、θ4、θ5、θ6、θ7、L8によって変化するため、穿孔ロッド7aの先端部の位置や姿勢が変化した場合には更新する必要がある。なお、穿孔ロッド7aの先端部の位置や姿勢の変化が小さい場合には、ヤコビ行列0J8(48)の変化も小さくなる。そのため、必ずしも制御周期毎にヤコビ行列0J8(48)を更新する必要はない。
【0068】
また、第1~第8の関節12a~12hの状態量がθ1、θ2、L3、θ4、θ5、θ6、θ7、L8であるときに、第1~第3の関節12a~12cを角速度dθ1/dt、dθ2/dt、伸縮速度dL3/dtで動作させた場合、位置合わせの基点に発生する移動速度d0x8/dt、d0y8/dt、d0z8/dtを算出するための数式も、上記(30)式の導出手順と同様の手順によって得られる。ただし、穿孔装置4は、角速度dθ2/dtに対して角速度dθ4/dtが同調するため、角速度dθ2/dtによって発生する基点の移動速度は、(d0x5/dt、d0y5/dt、d0z5/dt)=(d0x3/dt、d0y3/dt、d0z3/dt)となる。また、第3の関節12cの伸縮速度dL3/dtによって発生する基点の移動速度は、ブーム9の姿勢によらず、(d0x5/t、d0y5/t、d0z5/t)=(d0x3/dt、d0y3/dt、d0z3/dt)となる。
ここで、基点の座標の各成分0x5、0y5は、下記(31)、(32)式で表される。なお、0z5は、θ1の要素を持たず、θ1で偏微分すると0となるため説明を省略する。
0x5=0x3+S1(S4(S2Ltilt+C2Htilt)+C4(-C2Ltilt+S2Htilt)) …(31)
0y5=0y3+C1(-S4(S2Ltilt+C2Htilt)-C4(-C2Ltilt+S2Htilt)) …(32)
0x3=-S1C2L3-S1S2Hfork-S1Lpede
0y3=C1C2L3+C1S2Hfork+C1Lpede+Lyork
0z3=S2L3-C2Hfork+Hyork
【0069】
続いて、上記(31)、(32)式及び省略した0z5の数式を第1の回転角θ1、θ2や第3の伸縮量L3で偏微分し、偏微分したものに、第1~第3の関節12a~12cの角速度dθ1/dt、dθ5/dtやdL3/dを乗算すると、下記(33)~(35)式が得られる。
d0x5/dt=〔(-C1S2Hfork-C1Lpede-C1C2L3)+C1(S4(S2Ltilt+C2Htilt)+C4(-C2Ltilt+S2Htilt))〕・dθ1/dt
d0y5/dt=〔(-S1S2Hfork-S1Lpede-S1C2L3)+S1(S4(S2Ltilt+C2Htilt)+C4(-C2Ltilt+S2Htilt))〕・dθ1/dt
d0z5/dt=0 …(33)
d0x5/dt=〔S1S2L3-S1C2Hfork〕・dθ2/dt
d0y5/dt=〔-C1S2L3+C1C2Hfork〕・dθ2/dt
d0z5/dt=〔C2L3+S2Hfork〕・dθ2/dt …(34)
d0x5/dt=〔-S1C2〕・dL3/dt
d0y5/dt=〔C1C2〕・dL3/dt
d0z5/dt=〔S2〕・dL3/dt …(35)
【0070】
また、第1~第3の関節12a~12cの動作を同時に行った場合には、上記(33)~(35)式のX方向成分d0x5/dt、Y方向成分d0y5/dt、Z方向成分d0z5/dtを成分毎に足し合わせた速度が、位置合わせの基点に発生する。それゆえ、基点に発生する移動速度のX方向成分d0x5/dt、Y方向成分d0y5/dt、Z方向成分d0z5/dtは、上記(30)式と同様に、下記(36)式に示すように、行列式で表すことができる。
【0071】
【0072】
ここで、第1~第3の関節12a~12cの角速度dθ1/dt、dθ2/dt、dL3/dtを位置合わせの基点の移動速度d0x8/dt、d0y8/dt、d0z8/dtへ変換する行列0J5(13)もヤコビ行列と呼ばれる。また、ヤコビ行列0J5(15)は、正方行列であるため、逆行列0J5(15)
-1を求めることができる。ヤコビ逆行列0J5(15)
-1を用いることで、位置合わせの基点における速度(d0x5/dt、d0y5/dt、d0z5/dt)を実現するための、第1~第3の関節12a~12cの動作速度(dθ1/dt、dθ2/dt、dL3/dt)を演算可能な下記(37)式が導出される。
【0073】
k
11=C
1/(S
4(S
2L
tilt+C
2H
tilt)+C
4(S
2H
tilt-C
2L
tilt)-S
2H
fork-C
2L
3-L
pede)
k
21=S
1/(S
4(S
2L
tilt+C
2H
tilt)+C
4(S
2H
tilt-C
2L
tilt)-S
2H
fork-C
2L
3-L
pede)
k
31=0
k
12=(S
1S
2)/L
3
k
22=-(C
1S
2)/L
3
k
32=C
2/L
3
k
13=-(S
1S
2H
fork/L
3+S
1C
2)
k
23=(C
1S
2H
fork/L
3+C
1C
2)
k
33=(-C
2H
fork/L
3+S
2)
【0074】
また、穿孔装置4は、第1の回転角θ1と第5の回転角θ5、第2の回転角θ2と第4の回転角θ4の同調機能を有しているため、下記(38)式に示すように、位置合わせの基点の移動速度d0x5/dt、d0y5/dt、d0z5/dtは、穿孔ロッド7aの先端部の移動速度d0x8/dt、d0y8/dt、d0z8/dtと等しくなる。
【0075】
【0076】
このような手順により、上記(30)、(37)、(38)式、つまり、上記(1)式が導出される。
(動作その他)
次に、実施形態に係る穿孔支援装置1の動作について説明する。
まず、穿孔装置4のオペレータが、モード切替スイッチ14を操作し、動作モードを第1のモードに切り替えたとする。そして、指示入力部15を操作し、第4、第5の関節12d、12eを動作させる指示入力、つまり、穿孔ロッド7aの姿勢を変更させる入力を行ったとする。すると、コントローラ18が、指示入力部15が出力する第4、第5の関節12d、12eの動作、つまり、回転の指示入力に基づき、第4、第5の関節12d、12eの角速度の目標値dθ
4ref/dt、dθ
5ref/dtを算出する(
図3のステップS101)。
【0077】
続いて、コントローラ18が、算出した目標値dθ
4ref/dt、dθ
5ref/dtに基づき、上記(1)式に従って、第4、第5の関節12d、12eの動作に起因して穿孔ロッド7aの先端部に発生することが予期される移動速度d
0x
8/dt、d
0y
8/dt、d
0z
8/dtをゼロとするための、第1、第2の関節12a、12bの角速度の目標値dθ
1ref/dt、dθ
2ref/dt、及び第3の関節12cの伸縮速度の目標値dL
3ref/dtを算出する(
図3のステップS102)。
【0078】
続いて、コントローラ18が、算出した第1、第2の関節12a、12bの角速度の目標値dθ
1ref/dt、dθ
2ref/dt、第3の関節12cの伸縮速度の目標値dL
3ref/dt、及び動作量検出部13a、13b、13cの検出結果に基づき、第1~第3の関節12a~12cの動作速度dθ
1/dt、dθ
2/dt、dL
3/dtを目標値dθ
1ref/dt、dθ
2ref/dt、dL
3ref/dtと等しくするための指令を関節駆動装置8に出力する(
図3のステップS103)。これにより、関節駆動装置8が、コントローラ18からの指令に従って、第1~第3の関節12a~12cを駆動させ、動作速度dθ
1/dt、dθ
2/dt、dL
3/dtが目標値dθ
1ref/dt、dθ
2ref/dt、dL
3ref/dtと等しくなる。それゆえ、オペレータの操作による第4、第5の関節12d、12eの動作に起因して穿孔ロッド7aの先端部に発生することが予期される移動速度d
0x
8/dt、d
0y
8/dt、d
0z
8/dtが打ち消され、穿孔ロッド7aの先端部の位置が維持される。
【0079】
同時に、コントローラ18が、算出した第4、第5の関節12d、12eの角速度の目標値dθ
4ref/dt、dθ
5ref/dt、及び動作量検出部13d、13eの検出結果に基づき、第4、第5の関節12d、12eの動作速度dθ
4/dt、dθ
5/dtを目標値dθ
4ref/dt、dθ
5ref/dtと等しくするための指令を関節駆動装置8に出力する(
図3のステップS103)。これにより、関節駆動装置8が、コントローラ18からの指令に従って、第4、第5の関節12d、12eを駆動させ、動作速度dθ
4/dt、dθ
5/dtが目標値dθ
4ref/dt、dθ
5ref/dtと等しくなる。それゆえ、オペレータの操作に応じて、穿孔ロッド7aの姿勢が変更される。
そして、上記フローが繰り返し実行されることで、穿孔ロッド7aの先端部の位置を維持しつつ、穿孔装置4のオペレータが希望する穿孔ロッド7aの姿勢に変更することができる。そのため、穿孔ロッド7aの位置及び姿勢をより容易に調整することができる。
【0080】
ここで、トンネル工事では、穿孔装置4を使用して切羽2に複数の装薬孔3を穿孔しながら掘り進めてゆくが、経済性や効率性を考慮すると、できるだけ余掘りを少なくすることが重要である。なぜならば、余掘りが多くなると、余分な量のずりと呼ばれる掘削残渣が発生するだけでなく、仕上げコンクリートの施工量も余分に必要となるからである。
したがって、経済性や効率性の高いトンネル工事のためには、予定した切羽2の位置へ計画した深さの装薬孔3を掘ることが非常に重要である。そのため、オペレータは、穿孔ロッド7aの先端を、切羽2の計画した位置に正確に設置する必要がある。このとき、オペレータは、目視によって穿孔ロッド7aの先端が正確に目的の箇所を指しているかを確認する必要があるが、穿孔機7の姿勢によっては目視ができない場合がある。このような場合には、穿孔装置4の各関節12a~12hを動作させて目視可能な位置まで穿孔機7を移動させることになるが、操作の良し悪しによっては、穿孔ロッド7aの先端位置がずれてしまったり、挿し角が変わってしまったりということが起こり得る。また、これらの操作に余分な時間を費やすこととなり、作業工程が長くなってしまうこととなる。
【0081】
これに対し、実施形態に係る穿孔支援装置1によれば、穿孔ロッド7aの位置及び姿勢を容易に調整できるため、穿孔装置4の各関節12a~12hを動作させて目視可能な位置まで穿孔機7を容易に移動できる。それゆえ、穿孔ロッド7aの先端を、切羽2の計画した位置に正確に設置することができ、切羽2への正確な発破孔施工によって余掘りを少なくし、経済性や効率性高くトンネル工事を行うことができる。また、穿孔ロッド7aの位置及び姿勢の調整に費やす時間を短縮でき、作業工程を短縮できる。また、オペレータの熟達した技術が要求されず、しかも高価なセンサー類や測定装置が必要とされない。
【0082】
一方、穿孔装置4のオペレータが、モード切替スイッチ14を操作し、動作モードを第2のモードに切り替えたとする。そして、指示入力部15を操作し、第6の関節12fを動作させる指示入力、つまり、穿孔ロッド7aの第6の回転角θ
6(ガイドロータリー角)を変更させる入力を行ったとする。すると、コントローラ18が、指示入力部15が出力する第6の関節12fの動作の指示入力、つまり、回転の指示入力に基づき、第6の関節12fの角速度の目標値dθ
6ref/dtを算出する(
図5のステップS201)。
続いて、コントローラ18が、算出した目標値dθ
6ref/dtに基づき、上記(1)式に従って、第6の関節12fの動作に起因して穿孔ロッド7aの先端部に発生することが予期される移動速度d
0x
8/dt、d
0y
8/dt、d
0z
8/dtをゼロとするための、第1、第2の関節12a、12bの角速度の目標値dθ
1ref/dt、dθ
2ref/dt、及び第3の関節12cの伸縮速度の目標値dL
3ref/dtを算出する(
図5のステップS202)。
【0083】
続いて、コントローラ18が、算出した第1、第2の関節12a、12bの角速度の目標値dθ
1ref/dt、dθ
2ref/dt及び第3の関節12cの伸縮速度の目標値dL
3ref/dt、及び動作量検出部13a、13b、13cの検出結果に基づき、第1~第3の関節12a~12cの動作速度dθ
1/dt、dθ
2/dt、dL
3/dtを目標値dθ
1ref/dt、dθ
2ref/dt、dL
3ref/dtと等しくするための指令を関節駆動装置8に出力する(
図5のステップS203)。これにより、関節駆動装置8が、コントローラ18からの指令に従って、第1~第3の関節12a~12cを駆動させ、動作速度dθ
1/dt、dθ
2/dt、dL
3/dtが目標値dθ
1ref/dt、dθ
2ref/dt、dL
3ref/dtと等しくなる。それゆえ、オペレータの操作による第4、第5の関節12d、12eの動作に起因して穿孔ロッド7aの先端部に発生することが予期される移動速度d
0x
8/dt、d
0y
8/dt、d
0z
8/dtが打ち消され、穿孔ロッド7aの先端部の位置が維持される。
【0084】
同時に、算出した第6の関節12fの角速度の目標値dθ
6ref/dt、動作量検出部13fの検出結果に基づき、第6の関節12fの角速度dθ
6/dtを目標値dθ
6ref/dtと等しくするための指令を関節駆動装置8に出力する(
図5のステップS203)。これにより、関節駆動装置8が、コントローラ18からの指令に従って、第6の関節12fを駆動させ、動作速度dθ
6/dtが目標値dθ
6ref/dtと等しくなり、第6の回転角θ
6が変更される。
そして、上記フローが繰り返し実行されることで、穿孔ロッド7aの先端部の位置を維持しつつ、オペレータが希望する第6の回転角θ
6に変更できる。その際、第7の関節12gの回転角度θ
7が0[rad]である場合には、穿孔ロッド7aの姿勢も維持できる。
【0085】
また一方、穿孔装置4のオペレータが、モード切替スイッチ14を操作し、動作モードを第3のモードに切り替えたとする。そして、指示入力部15を操作し、第7の関節12gを動作させる指示入力、つまり、穿孔ロッド7aの第7の回転角θ
7(ガイドダンプ角)を変更させる入力を行ったとする。すると、コントローラ18が、指示入力部15が出力する第7の関節12gの動作の指示入力、つまり、回転の指示入力に基づき、第7の関節12gの角速度の目標値dθ
7ref/dtを算出する(
図5のステップS301)。
続いて、コントローラ18が、取得した第7の回転角θ
7に基づき、上記(1)式に従って、第7の関節12gの動作に起因して穿孔ロッド7aの先端部に発生することが予期される移動速度d
0x
8/dt、d
0y
8/dt、d
0z
8/dtをゼロとするための、第1、第2の関節12a、12bの角速度の目標値dθ
1ref/dt、dθ
2ref/dt、及び第3の関節12cの伸縮速度の目標値dL
3ref/dtを算出する(
図6のステップS302)。
【0086】
続いて、コントローラ18が、算出した第1、第2の関節12a、12bの角速度の目標値dθ
1ref/dt、dθ
2ref/dt及び第3の関節12cの伸縮速度の目標値dL
3ref/dt、及び動作量検出部13a、13b、13cの検出結果に基づき、第1~第3の関節12a~12cの動作速度dθ
1/dt、dθ
2/dt、dL
3/dtを目標値dθ
1ref/dt、dθ
2ref/dt、dL
3ref/dtと等しくするための指令を関節駆動装置8に出力する(
図6のステップS303)。これにより、関節駆動装置8が、コントローラ18からの指令に従って、第1~第3の関節12a~12cを駆動させ、動作速度dθ
1/dt、dθ
2/dt、dL
3/dtが目標値dθ
1ref/dt、dθ
2ref/dt、dL
3ref/dtと等しくなる。それゆえ、オペレータの操作による第4、第5の関節12d、12eの動作に起因して穿孔ロッド7aの先端部に発生することが予期される移動速度d
0x
8/dt、d
0y
8/dt、d
0z
8/dtが打ち消され、穿孔ロッド7aの先端部の位置が維持される。
【0087】
同時に、算出した第7の関節12gの角速度の目標値dθ
7ref/dt、動作量検出部13gの検出結果に基づき、第7の関節12gの動作速度dθ
7/dtを目標値dθ
7ref/dtと等しくするための指令を関節駆動装置8に出力する(
図6のステップS303)。これにより、関節駆動装置8が、コントローラ18からの指令に従って、第7の関節12gを駆動させ、動作速度dθ
7/dtが目標値dθ
7ref/dtと等しくなり、第7の回転角θ
7が変更される。
そして、上記フローが繰り返し実行されることで、穿孔ロッド7aの先端部の位置を自動的に維持しつつ、穿孔装置4のオペレータが希望する第7の回転角θ
7に変更できる。
【0088】
また一方、穿孔装置4のオペレータが、モード切替スイッチ14を操作し、動作モードを第4のモードに切り替えたとする。すると、コントローラ18が、計画孔記憶部16が記憶している切羽2の穿孔パターンから計画孔を1つ選択し、選択した計画孔の開口位置xref、yref、zref及び挿し角φref、ψrefを読み出す(
図7のステップS401)。続いて、挿し角φnow、ψnowを算出し、算出した挿し角φnow、ψnow、及び読み出した計画孔の挿し角φref、ψrefに基づき、上記(3)式に従って第4、第5の関節12d、12eの角速度の目標値dθ
4ref/dt、dθ
5ref/dtを算出する(
図7のステップS402)。
【0089】
続いて、コントローラ18が、穿孔ロッド7aの先端部の位置xnow、ynow、znowを取得する(
図7のステップS403)。続いて、上記(4)(5)式に従って、読み出した計画孔の開口位置(xref、yref、zref)と、取得した穿孔ロッド7aの先端部の位置(xnow、ynow、znow)との差(距離)をゼロとするための、穿孔ロッド7aの先端部の移動速度の目標値、つまり目標速度Vrefを算出する(
図7のステップS404)。
続いて、コントローラ18が、算出した目標速度Vref、及び算出した第4、第5の関節12d、12eの角速度の目標値dθ
4ref/dt、dθ
5ref/dtに基づき、上記(6)(7)式に従って、第4、第5の関節12d、12eの動作に起因して穿孔ロッド7aの先端部に発生することが予期される移動速度d
0x
8/dt、d
0y
8/dt、d
0z
8/dtをゼロとするとともに、計画孔の開口位置(xref、yref、zref)と穿孔ロッド7aの先端部の位置(xnow、ynow、znow)とを等しくするための、第1~第3の関節12a~12cの動作速度の目標値dθ
1ref/dt、dθ
2ref/dt、dL
3ref/dtを算出する(
図7のステップS405)。
【0090】
続いて、コントローラ18が、算出した第1、第2の関節12a、12bの角速度の目標値dθ
1ref/dt、dθ
2ref/dt、第3の関節12cの伸縮速度の目標値dL
3ref/dt及び動作量検出部13a、13b、13cの検出結果に基づき、第1、第2の関節12a、12bの角速度dθ
1/dt、dθ
2/dt、及び第3の関節12cの伸縮速度dL
3/dtを目標値dθ
1ref/dt、dθ
2ref/dt、dL
3ref/dtと等しくするための指令を、関節駆動装置8に出力する(
図7のステップS406)。これにより、関節駆動装置8が、コントローラ18からの指令に従って、第1~第3の関節12a~12cを駆動させ、動作速度dθ
1/dt、dθ
2/dt、dL
3/dtが目標値dθ
1ref/dt、dθ
2ref/dt、dL
3ref/dtと等しくなる。それゆえ、目標値dθ
4ref/dt、dθ
5ref/dtによる第4、第5の関節12d、12eの動作に起因して穿孔ロッド7aの先端部に発生することが予期される移動速度d
0x
8/dt、d
0y
8/dt、d
0z
8/dtが打ち消される。
【0091】
また同時に、算出した第4、第5の関節12d、12eの角速度の目標値dθ
4ref/dt、dθ
5ref/dt、及び動作量検出部13d、13eの検出結果に基づき、第4、第5の関節12d、12eの角速度dθ
4/dt、dθ
5/dtを、目標値dθ
4ref/dt、dθ
5ref/dtと等しくするための指令を関節駆動装置8に出力する(
図7のステップS406)。これにより、関節駆動装置8が、コントローラ18からの指令に従って、第4、第5の関節12d、12eを駆動させ、動作速度dθ
4/dt、dθ
5/dtが目標値dθ
4ref/dt、dθ
5ref/dtと等しくなる。
そして、上記フローが繰り返し実行されることで、穿孔ロッド7aの先端部の位置と姿勢とを、計画孔の開口位置と挿し角とに自動的に速やかに近づけることができる。
【0092】
また一方、穿孔装置4のオペレータが、モード切替スイッチ14を操作して、動作モードを第5のモードに切り替えたとする。そして、指示入力部15を操作し、第4、第5の関節12d、12eを動作させる指示入力、つまり、穿孔ロッド7aの姿勢を変更させる入力を行ったとする。すると、コントローラ18が、指示入力部15が出力する第4、第5の関節12d、12eの動作(回転)の指示入力に基づき、第4、第5の関節12d、12eの角速度の目標値dθ
4ref/dt、dθ
5ref/dtを算出する(
図9のステップS501)。
【0093】
続いて、コントローラ18が、算出した第4、第5の関節12d、12eの角速度の目標値dθ
4ref/d、dθ
5ref/dt、及び動作量検出部13d、13eの検出結果に基づき、第4、第5の関節12d、12eの角速度dθ
4/dt、dθ
5/dtを目標値dθ
4ref/dt、dθ
5ref/dtと等しくするための指令を関節駆動装置8に出力する(
図9のステップS502)。そして、上記フローが繰り返し実行され、穿孔装置4のオペレータからの指示入力に応じて、第4、第5の回転角θ
4、θ
5、つまり、穿孔ロッド7aの姿勢(挿し角)を変更できる。
【0094】
穿孔ロッド7aの姿勢(挿し角)が定まった後、穿孔装置4のオペレータが、指示入力部15を操作し、第1~第3の関節12a~12cを動作させる指示入力、つまり、穿孔ロッド7aの先端部の位置を変更させる入力を行ったとする。すると、コントローラ18が、指示入力部15が出力する第1~第3の関節12a~12cの動作の指示入力に基づき、第1、第2の関節12a、12bの角速度の目標値dθ
1ref/dt、dθ
2ref/dt、及び第3の関節12cの伸縮速度の目標値dL
3ref/dtを算出する(
図9のステップS501)。
【0095】
続いて、コントローラ18が、算出した第1、第2の関節12a、12bの角速度の目標値dθ
1ref/dt、dθ
2ref/dt、第3の関節12cの伸縮速度の目標値dL
3ref/dt、及び動作量検出部13a~13cの検出結果に基づき、第1~第3の関節12a~12cの動作速度dθ
1/dt、dθ
2/dt、dL
3/dtを目標値dθ
1ref/dt、dθ
2ref/dt、dL
3ref/dtと等しくするための指令を関節駆動装置8に出力する(
図9のステップS502)。そして、上記フローが繰り返し実行され、穿孔装置4のオペレータからの指示入力に応じて、第1、第2の回転角θ
1、θ
2、第3の伸縮量L
3、つまり穿孔ロッド7aの先端部の位置を変更できる。その際、θ
1とθ
5、θ
2とθ
4の同調機能を有しているため、定めた挿し角が維持される。
【0096】
以上、本実施形態では、
図2のペデステル9aが第1の構成部品を構成する。以下同様に、
図2のアウターブーム9bが第2の構成部品を構成する。さらに、
図2のインナーブーム9cが第3の構成部品を構成する。また、
図2の第1~第3の関節12a~12cが第1の関節群を構成する。さらに、第1、第2の関節12a、12bの角速度dθ
1/dt、dθ
2/dt、及び第3の関節12cの伸縮速度dL
3/dtが第1の関節群の動作速度を構成する。また、
図2の第4~第8の関節12d~12hのうちの1または複数の関節が第2の関節群を構成する。また、さらに、第4~第7の関節12d~12gの角速度dθ
4/dt~dθ
7/dt、及び第8の関節12hの伸縮速度dL
8/dtが第2の関節群の動作速度を構成する。また、上記(1)式の
0J
8(48)がヤコビ行列を構成する。さらに、上記(1)式の
0J
5(13)
-1がヤコビ逆行列を構成する。
【0097】
(1)このように、実施形態に係る穿孔支援装置1によれば、第1~第3の関節12a~12c(以下、「第1の関節群」とも呼ぶ)以外の1または複数の関節(以下、「第2の関節群」とも呼ぶ)の動作速度の目標値に基づき、第2の関節群の動作に起因して穿孔ロッド7aの先端部に発生することが予期される移動速度d0x8/dt、d0y8/dt、d0z8/dtをゼロとするための、第1の関節群の動作速度の目標値dθ1ref/dt、dθ2ref/dt、dL3ref/dtを算出するようにした。そして、算出した目標値dθ1ref/dt、dθ2ref/dt、dL3ref/dtに基づき、第1の関節群それぞれの動作速度dθ1/dt、dθ2/dt、dL3/dtを制御するようにした。それゆえ、第2の関節群の動作に起因して穿孔ロッド7aの先端部に発生することが予期される移動速度が打ち消されるように、第1の関節群を動作できる。そのため、穿孔ロッド7aの先端部の位置及び姿勢をより容易に調整可能な穿孔支援装置を1を提供できる。
【0098】
(2)また、実施形態に係る穿孔支援装置1によれば、指示入力部15で受け付けた指示入力に基づき、第2の関節群の動作速度の目標値を算出するため、穿孔ロッド7aの先端部の位置を維持しつつ、オペレータが希望する穿孔ロッド7aの姿勢に変更できる。
【0099】
(3)また、実施形態に係る穿孔支援装置1によれば、第2の関節群の動作速度の目標値のベクトルに、その目標値のベクトルから穿孔ロッド7aの先端部の移動速度のベクトルを算出するヤコビ行列0J8(48)とその移動速度のベクトルから第1の関節郡の動作速度の目標値のベクトル〔dθ1ref/dt、dθ2ref/dt、dL3ref/dt〕Tを算出するヤコビ逆行列0J5(13)
-1とを乗算して、第1の関節群の動作速度の目標値のベクトル〔dθ1ref/dt、dθ2ref/dt、dL3ref/dt〕Tを算出するようにした。それゆえ、ヤコビ逆行列0J5(15)
-1を正方行列、つまり直接に逆行列を算出可能な行列とすることができる。そのため、第1の関節群の動作速度の目標値のベクトル〔dθ1ref/dt、dθ2ref/dt、dL3ref/dt〕Tの算出を容易に行うことができる。
【0100】
(4)さらに、実施形態に係る穿孔支援装置1によれば、第2の関節群の動作速度の目標値、計画孔の開口位置、及び穿孔ロッド7aの先端部の位置に基づき、第2の関節群の動作に起因して穿孔ロッド7aの先端部に発生することが予期される移動速度をゼロとするとともに、計画孔の開口位置と穿孔ロッド7aの先端部の位置とを等しくするための、第1の関節群の動作速度の目標値を算出するようにした。それゆえ、穿孔ロッド7aの先端部の位置と姿勢とを、計画孔の開口位置と挿し角とに自動的に近づけることができる。
【0101】
(5)また、実施形態に係る穿孔支援装置1によれば、第2の関節群の動作に起因して穿孔ロッド7aの先端部に発生することが予期される移動速度をゼロとするとともに、計画孔の開口位置と穿孔ロッド7aの先端部の位置とを等しくするための、第1の関節群の動作速度の目標値dθ1ref/dt、dθ2ref/dt、dL3ref/dtを算出するようにした。それゆえ、第1の関節群の動作速度dθ1/dt、dθ2/dt、dL3/dtの制御を容易に行うことができる。
【0102】
(6)さらに、実施形態に係る穿孔支援装置1によれば、加速域、定速域及び減速域からなる速度パターンを設定するようにした。それゆえ、穿孔ロッド7aの先端部の移動開始時に移動速度をスローアップし、移動終了時に移動速度をスローダウンすることができるため、第1~第3の関節12a~12cに発生する振動を抑制することができる。
【符号の説明】
【0103】
1…穿孔支援装置、2…切羽、3…装薬孔、4…穿孔装置、5…移動台車、5a…ヨーク、6…支持部材、7…穿孔機、7a…穿孔ロッド、7b…ドリフタ、8…関節駆動装置、9…ブーム、9a…ペデステル、9b…アウターブーム、9c…インナーブーム、9d…フォーク、9e…チルトボディ、9f…スイングボディ、9g…ロータリーボディ、9h…腕部、9i…ガイドマウンチング、10…ガイドシェル、11a…第1の回転軸、11b…第2の回転軸、11c…第3の直動軸、11d…第4の回転軸、11e…第5の回転軸、11f…第6の回転軸、11g…第7の回転軸、11h…第8の直動軸、12a…第1の関節、12b…第2の関節、12c…第3の関節、12d…第4の関節、12e…第5の関節、12f…第6の関節、12g…第7の関節、12h…第8の関節、13a~13h…動作量検出部、14…モード切替スイッチ、15…指示入力部、16…計画孔記憶部、17…モニター、18…コントローラ、18a…第1の目標値演算部、18b…第1の演算実行部、18c…第2の演算実行部、18d…第1の関節群動作制御部、18e…第2の目標値演算部、18f…第2の関節群動作制御部、18g…位置取得部