(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】吸入器用のコンプライアンス監視モジュール
(51)【国際特許分類】
A61B 5/085 20060101AFI20220112BHJP
A61M 15/00 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
A61B5/085
A61M15/00 Z
(21)【出願番号】P 2017511924
(86)(22)【出願日】2015-08-28
(86)【国際出願番号】 US2015047369
(87)【国際公開番号】W WO2016033421
(87)【国際公開日】2016-03-03
【審査請求日】2018-08-10
【審判番号】
【審判請求日】2020-07-22
(32)【優先日】2014-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512297125
【氏名又は名称】ノートン (ウォーターフォード) リミテッド
【住所又は居所原語表記】Unit 301 IDA, Industrial Park, Cork Road, Waterford, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モリソン,マーク,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイツェル,ダグラス,イー.
(72)【発明者】
【氏名】カルデロン オリべラス,エンリケ
(72)【発明者】
【氏名】バック,ダニエル
【合議体】
【審判長】千壽 哲郎
【審判官】村上 聡
【審判官】莊司 英史
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-516265(JP,A)
【文献】米国特許第8807131(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入器用のコンプライアンス監視モジュールであって、
当該モジュールは:
前記吸入器が使用のために準備されたことを検出するように構成されたモードセンサを備え;さらに、
絶対圧を測定するように構成されたマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)またはナノエレクトロメカニカルシステム(NEMS)気圧センサを備え、前記MEMSまたはNEMS気圧センサは、前記吸入器の流路に通気連結されるように構成されたセンサポートを備え、前記流路を通じてユーザは吸入することができ;さらに、
プロセッサを備え、前記プロセッサは:前記吸入器が使用のために準備されたことを示すデータを前記モードセンサから受信し;前記吸入器が使用のために準備されたことを示す前記モードセンサからの前記データに基づいて、前記MEMSまたはNEMS気圧センサのスイッチを入れるまたは前記MEMSまたはNEMS気圧センサを低電力状態から立ち上げ、前記MEMSまたはNEMS気圧センサからの圧力測定値の移動平均から動的ゼロを
計算により決定し;前記MEMSまたはNEMS気圧センサからのデータが
薬が効果的に送達されるための閾値を越える
吸入流量を示しているかを
、前記動的ゼロを用いて判定し;そして、コンプライアンスレポートを前記MEMSまたはNEMS気圧センサからの前記データおよび前記動的ゼロに基づいて編集するように構成されており;さらに、
トランスミッタを備え、前記トランスミッタは、前記コンプライアンスレポートを発するように構成されている、
コンプライアンス監視モジュール。
【請求項2】
前記モードセンサは、配向センサを含み、
前記プロセッサは、
前記モードセンサからの前記データに基づいて、前記吸入器の配向を測定しかつ前記吸入器が使用のために準備されたかを判定し;そして、
前記コンプライアンスレポートを、前記MEMSまたはNEMS気圧センサからの前記データおよび前記モードセンサからの前記データに基づいて、編集するように構成されている、
請求項1に記載のコンプライアンス監視モジュール。
【請求項3】
前記コンプライアンス監視モジュールは、使用中の前記吸入器内に完全に位置されるように構成された請求項1に記載のコンプライアンス監視モジュール。
【請求項4】
前記コンプライアンス監視モジュールは、使用中の前記吸入器の外側に少なくとも部分的に位置されるように構成された請求項1に記載のコンプライアンス監視モジュール。
【請求項5】
前記流路は、前記吸入器のブーツと前記ブーツ内に少なくとも部分的に受けられたガスキャニスタとの間の隙間を備える請求項1に記載のコンプライアンス監視モジュール。
【請求項6】
前記吸入器は、加圧式定量吸入器(pMDI)である請求項1に記載のコンプライアンス監視モジュール。
【請求項7】
前記モードセンサは、機械式スイッチ、光学センサ、加速度計、または、ホール効果センサを含む請求項1に記載のコンプライアンス監視モジュール。
【請求項8】
前記コンプライアンス監視モジュールは、前記吸入器のカバーの下側に付されており、前記カバーは、前記吸入器のブーツ内のキャニスタを囲むように構成されている請求項3に記載のコンプライアンス監視モジュール。
【請求項9】
前記コンプライアンス監視モジュールを前記吸入器に留めるためのへりをさらに備え、通気連結が前記へりと前記吸入器のブーツの最外壁の内面との隙間を経由するように構成された請求項4に記載のコンプライアンス監視モジュール。
【請求項10】
前記吸入器は、ジェット噴霧吸入器である請求項1に記載のコンプライアンス監視モジュール。
【請求項11】
前記モードセンサは、前記吸入器が使用のために準備されるときに作動される機械式スイッチである請求項1に記載のコンプライアンス監視モジュール。
【請求項12】
投与が完了していることを示すためのユーザインターフェースを備える請求項1に記載のコンプライアンス監視モジュール。
【請求項13】
前記吸入器は、カプセル内に保持されたドライパウダー薬剤を受けるように構成されたドライパウダー吸入器(DPI)である請求項1に記載のコンプライアンス監視モジュール。
【請求項14】
吸入器の使用のコンプライアンスを監視するための方法であって、
当該方法は:
前記吸入器が使用のために準備されたことを示すデータをモードセンサから受信し;
前記吸入器が使用のために準備されたことを示す前記モードセンサからの前記データに基づいて、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)またはナノエレクトロメカニカルシステム(NEMS)気圧センサのスイッチを入れるまたは前記MEMSまたはNEMS気圧センサを低電力状態から立ち上げ、前記MEMSまたはNEMS気圧センサからの圧力測定値の移動平均から動的ゼロを
計算により決定し;
前記MEMSまたはNEMS気圧センサから受信したデータが
薬が効果的に送達されるための閾値を越える
吸入流量を示すことを
、前記動的ゼロを用いて判定し、前記MEMSまたはNEMS気圧センサは、絶対圧を測定するように構成され、さらに、前記MEMSまたはNEMS気圧センサは、前記吸入器の流路に通気連結されるように構成されたセンサポートを備え、前記流路を通じてユーザは吸入することができ;
コンプライアンスレポートを前記MEMSまたはNEMS気圧センサからの前記データおよび前記動的ゼロに基づいて編集し;そして、
前記コンプライアンスレポートを、ワイヤレストランスミッタを介して発する、
吸入器の使用のコンプライアンスを監視するための方法。
【請求項15】
前記方法は、さらに、前記吸入器中に残っている液状薬剤の液位を、前記気圧センサからの前記データから測定し、前記吸入器は、ジェット噴霧吸入器である請求項14に記載の吸入器の使用のコンプライアンスを監視するための方法。
【請求項16】
前記方法は、さらに、
前記吸入器の配向を示すデータを前記モードセンサから受信し、
前記モードセンサからの前記データに基づいて、前記吸入器の配向を測定し、
前記コンプライアンスレポートを、前記気圧センサからの前記データおよび前記モードセンサからの前記データに基づいて編集する、
請求項14に記載の吸入器の使用のコンプライアンスを監視するための方法。
【請求項17】
前記モードセンサは、加速度計であり、
前記方法は、さらに:
前記吸入器がジェット噴霧吸入器であれば、前記吸入器のコンプレッサが起動されたことを、前記加速度計を用いて測定し;
または、
前記吸入器が、カプセル内に保持されたドライパウダー薬剤を受けるように構成されたドライパウダー吸入器(DPI)であれば、カプセルが、チャンバ内で、開けられ、及び/又は、振動され/回転されたことを、前記加速度計を用いて測定する、
請求項16に記載の吸入器の使用のコンプライアンスを監視するための方法。
【請求項18】
前記モードセンサは、前記吸入器が使用のために準備されるときに作動される機械式スイッチである請求項16に記載の吸入器の使用のコンプライアンスを監視するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2014年8月28日付けで出願されたタイトル「吸入器用のコンプライアンス監視モジュール」の米国特許出願第62/043,114の優先権を主張するものであり、その内容は参照によって本願に完全に組み込まれる。
【0002】
本開示は、吸入器を経由した薬剤投与に対する患者のコンプライアンスの監視に関する。特に、本開示は、吸入器内のコンプライアンス監視用の小型圧力センサの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
吸入器またはプッファー(手動作動式吸入器)は、肺を経由して体内に薬剤を送達するために用いられる。これらは、例えば喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療に用いることができる。吸入器のタイプは、定量吸入器(MDIs)、噴霧吸入器(ネブライザイザー)、および、ドライパウダー吸入器(DPIs)を含む。
【0004】
MDIsは、3つの主要な要素を含む:製剤が存在する、一般的にはアルミニウムまたはステンレス鋼であるキャニスタ;一回分の計量された量の製剤が一作動毎に投与されるようにする計量バルブ;および、患者が装置を作動できるようにしかつエアロゾル化された薬を患者の肺へ導くアクチュエータ(またはマウスピース)。製剤それ自体は、薬、液化ガスプロペラント、および、多くの場合、安定化賦形剤からなる。アクチュエータは、嵌合放出ノズルを含み、さらに、一般的には、汚染を防止するためのダストキャップを含む。吸入器を使用するために、患者は、親指でアクチュエータの下部を支持しながらキャニスタの上端を押し下げる。装置の作動は、プロペラント中で溶けたまたは懸濁した薬剤を含む1回分の計量された用量の製剤を放出する。揮発性のプロペラントが液滴に分解し、続いてこれらの液滴が急速に蒸発することにより、マイクロメートルサイズの薬剤粒子からなるエアロゾルが生成され、これがその後吸引される。
【0005】
ジェット噴霧吸入器は、アトマイザーとしても知られており、管材によってコンプレッサに接続され、当該コンプレッサは、圧縮された空気または酸素が液薬中を高速で流れるようにし、それを、その後に患者によって吸引されるエアロゾルにする。ジェット噴霧吸入器は、一般的に、呼吸器疾患や重度の喘息の発作といった深刻な場合のように、他の吸入器を使用するのが難しい入院患者のために使用される。
【0006】
DPIsは、ドライパウダーの形式で薬剤を肺へ送達する。DPIsは、一般的に、喘息、気管支炎、気腫、およびCOPDのような呼吸器疾患を治療するために使用される。DPIsは、1回分の測定された用量のパウダーを患者が服用できる状態にするためにいくつかの手順を必要とすることがある。薬剤は、一般的には、手動装填のためにカプセル中に保持される、または、吸入器内部のホッパー/リザーバ中に保持される。一旦、装填または作動されると、患者は吸入器のマウスピースを口に入れて、深く吸入し、5-10秒間呼吸止める。
【0007】
呼吸器系薬送達において直面する共通の問題は、用いられる装置に関わらず、どのようにして患者のアドヒアランスおよびコンプラアンスを監視するかである。
【0008】
アドヒアランスは、例えば1日あたりに処方された回数の用量を服用しているといったように、調剤ラベルに従って患者を取り扱う。処方箋が1日あたり2用量を要求し、患者が1日に2用量を服用しているなら、それは100%のアドヒアラントとされる。患者が1日に1用量だけしか服用していないなら、それは50%のアドヒアラントにすぎない。後者の場合、患者は、医者により処方された治療を得ていない。
【0009】
コンプライアンスは、一方、患者が薬剤送達装置をどのように用いているかに関する。効果的な治療のために推奨された方法で用いられているなら、それは100%のコンプライアントである。適切に用いられていないなら、それは100%未満のコンプライアントである。
【0010】
一例として、pMDIを処方された患者を考える。多くのこのような装置は、使用前に、薬剤キャニスタ内で薬とプロペラントとが適切に混合されるように、当該キャニスタが振られることを要求する。これは、薬剤がプロペラントから分離して上方にフロートする(即ち、クリーム)現象である、使用と使用との間に生じるいわゆる“クリーミング効果”を克服する。振らなければ、患者は推奨された用量より少ない薬剤を受けることになるであろう。pMDI装置のもう一つの問題は、薬剤が実際に肺へ送達されることを保証するために必要とされる、コーディネートされた手/呼吸の手順である。当該要件は、1)吸入し、それから吸入を継続している間、2)キャニスタを押し下げて薬剤を投与し、続いて、3)吸入を継続し、最後に、4)短期間呼吸を止める、ことを伴う。この最後のステップは、薬の“沈殿”が肺内で生じるために重要である。吸入中の流量(流速)は、薬が効果的に送達されるためにある最小閾値を越える必要がありうる。たくさんの患者にとって、このようなマルチステップのプロセスに対するコンプライアンスは簡単ではない、というのも、彼らは手順について熟知しておらず、また、例えば子どもや年配の場合、実行するのが難しいとわかっているからである。
【0011】
別の例として、多くのDPIsは、装置からパウダーを取り込み、次いでパウダーを肺に達するのに十分に小さい粒子に分解するための患者の吸入の力に依存する。この理由のため、不十分な患者の吸入流量は、減少された用量送達およびパウダーの不完全な脱凝集をもたらし、不満足な治療結果をもたらすかもしれない。さらに、ユーザが装置内に息を吐くと、用量のいくらかが周囲の空気へ失われうる。これは、患者へ送達される用量を、十分にコンプライアンスに準拠できないほどに減少させ、さらに、周辺の者に対して、彼らが処方されていない薬を彼らにさらしてしまうことにより、リスクをもたらしうる。
【0012】
医者が薬剤を処方するとき、治療の効き目は、患者が装置を適切にかつ各日に適切な回数使用することに完全に依存する。患者は、そうすることができないなら、コンディションの改善を感じられない虞がある。患者のアドヒアランス/コンプライアンスを確かめる手段がなく、改善が見られない患者に直面すると、医者は、より強い用量を処方し、または、より強い薬剤を処方するしかなくなるであろう。時として、これは患者を危険にさらすかもしれない。患者が処方された薬剤を実際に摂取していることを確認する何らかの方法を医者が有しているならば、これは回避されうる。
【0013】
ある製薬会社によるアプローチは、薬剤送達製品に一体型用量カウンタ(ドーズカウンタ)を付加することである。例えば、用量カウンタは、作動ボタンを押すことや、キャップまたはカバーを開くことによって始動される。これは、患者や世話人に、装置が操作されたことの客観的な証拠を提供する一方、依然として何のコンプライアンス情報も提供することはできない。ユーザが全用量を吸入しているかを判定する方法はない。かくして、アドヒアランス情報だけでなくコンプライアンス情報も提供する製品の必要性がある。
【0014】
肺活量計は、患者の肺によって吸われおよび吐かれた空気の体積を測定するための装置である。肺活量計は、通気、つまり肺へのおよび肺からの空気の移動を測定する。肺容量曲線として知られ、肺活量計によって出力された記録波形から、異常な(閉塞性または拘束性のある)通気パターンを識別することができる。既存の肺活量計は、圧力変換器、超音波および水ゲージを含む様々な異なる測定方法を用いる。
【0015】
呼吸と関連する流れを監視するために、圧力センサが最も便利である、というのも、圧力情報は、流れを測定するために用いることができ、その後に体積を測定するために用いることができるからである。
【0016】
呼吸検出のために用いられる圧力センサは、一般的に、患者の気道の一部分にわたる圧力差を測定する。これは、一般的には、管材や他の適切な導管によって、センサを気道に接続する2つの接続を用いて行なわれる。他方のポートを大気へ開放して、気道への単一の接続を用いることもできる。気道内の圧力が、流れが適用される前および後の双方で測定されるのであれば、シングルポートゲージタイプのセンサが用いられてもよく、測定値の差は、空気経路抵抗にわたる所望の圧力降下を示す。しかしながら、最初の測定値(流れなしの測定値)に関連する不確実性は一般的に高い。
【0017】
従来の圧力センサの別の問題は、熱ドリフトである;圧力測定値が局所温度の変化で経時的に変化しうる現象である。追加の回路を用いて当該ドリフトを補償することができるが、これはコストおよび体積を増やし、必要電力を増加させる。当該回路は、圧力センサ自体内に位置されてもよいが、センサは一般的に測定されているガスからいくらか離されていることを考慮すると、検出された温度は、そのガスを表すものにならないかもしれない。温度監視回路が、患者に置かれてもよいが、これはさらなる構成要素を追加し、コストおよび複雑性を増加させる。
【0018】
従来の圧力センサのさらに別の問題は、高周波(RF)暴露に対しての影響の受けやすさである。これは、携帯電話のようなラジオトランスミッタに接近させて作動させたときに、実際に問題になりうる。他の潜在源は、WiFiルーターやコードレス電話のような無線通信装置、および、無線ネットワークプリンタのような他の様々な形式の情報技術(IT)装備を含む。
【0019】
従来の圧力センサの別の問題は、ヒステリシスであり、変形後に、その元の形態、形状、または位置に戻るダイアフラムのような圧力検出材料のリラクタンスである。これは、異なる方向から(目標圧力の上方または下方のどちらかから)同じ圧力を通過するときに出力の差異として観測される。非常に低い圧力変化を取り扱うとき、このようなオフセットは、測定されている信号を隠すほど十分に大きくなりうる。
【0020】
コンプライアンス監視の新規な方法が以下で記載される。
【発明の開示】
【0021】
第1の態様によれば、吸入器用のコンプライアンス監視モジュールが備えられ、該モジュールは:小型圧力センサを備え、該センサのセンサポートは、前記吸入器の流路に通気連結(空気的に連結)されるように構成され、該流路を通じてユーザは吸入することができ;プロセッサを備え、該プロセッサは:圧力センサの検出素子からデータを受信し;吸入器が非アクティブモードからアクティブモードへ変化するときを検出するように構成されたモードセンサからのデータを受信し;そして、前記圧力センサの検出素子からの前記データおよび前記モードセンサからの前記データに基づいて、コンプライアンスレポートを編集するように構成されており;および、トランスミッタを備え、当該トランスミッタは、前記コンプライアンスレポートを発するように構成されている。小型圧力センサは、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)圧力センサまたはナノエレクトロメカニカルシステム(NEMS)圧力センサでよい。
【0022】
前記モードセンサは、配向センサでよい。前記モードセンサは、吸入器が使用のために準備された(準備が完了された)ことを判定する手段でもよい。前記モードセンサは、加速度計、ジャイロスコープ、機械式スイッチ、光学センサ、ホール効果センサ、マイクロフォン、温度センサ、および、追加の圧力センサのうちの1つでよい。
【0023】
モードセンサが加速度計またはジャイロスコープであれば、前記プロセッサは、さらに前記加速度計または前記ジャイロスコープを用いて前記吸入器の配向を測定するように構成されてよい。
【0024】
モードセンサが加速度計であり、吸入器がジェット噴霧吸入器であれば、前記プロセッサは、さらに、吸入器のコンプレッサが起動されていることを、前記加速度計から受信されたデータに基づいて測定するように構成されてよい。
【0025】
モードセンサが加速度計であり、吸入器がカプセル内に保持されたドライパウダー薬剤を受けるように構成されたドライパウダー吸入器(DPI)であれば、前記プロセッサは、さらに、カプセルがチャンバ内で開かれ、及び/又は、振動され/回転されたことを、前記加速度計から受信されたデータに基づいて測定するように構成されてもよい。
【0026】
コンプライアンス監視モジュールは、使用中の吸入器内に完全に位置されるように構成されてよい。
【0027】
代わりに、コンプライアンス監視モジュールは、使用中の吸入器の外側に少なくとも部分的に位置されるように構成されてよい。
【0028】
コンプライアンス監視モジュールは、前記センサポートを前記流路に通気連結するために構成されたキャピラリーチューブをさらに備えてよい。
【0029】
前記キャピラリーチューブは、センサポートと流路との間にシールを備え、前記シールは流路からセンサポートへ圧力を伝達するように構成されてよい。
【0030】
吸入器は、加圧式定量吸入器(pMDI)でよい。
【0031】
前記流路は、吸入器のブーツと少なくとも部分的にその中に受けられたガスキャニスタとの間の隙間でよい。
【0032】
コンプライアンス監視モジュールは、使用中に最上となる吸入器の垂直な外縁に取り付けられるように構成されてよい。コンプライアンス監視モジュールは、さらに、該モジュールを吸入器に留めるためのへりを備え、前記した通気連結が、前記へりと、前記吸入器のブーツの最も外側の壁の内面との隙間を経由するように構成されてよい。
【0033】
吸入器は、ジェット噴霧吸入器でよい。
【0034】
コンプライアンス監視モジュールは、使用中に患者から見て実質的に外方に向く吸入器の外面に取り付けられるように構成されてよい。
【0035】
コンプライアンス監視モジュールは、投与(投薬)が完了したことを示すためのユーザインターフェースを備えてよい。
【0036】
プロセッサは、さらに、前記圧力センサの前記検出素子からの前記データから、噴霧吸入器に残っている液状薬剤の液位を測定するように構成されてよい。
【0037】
吸入器は、ドライパウダー吸入器(DPI)でよい。
【0038】
前記DPIは、カプセル中に保持されたドライパウダー薬剤を受けるように構成されてよい。
【0039】
前記プロセッサは、さらに、上首尾の(成功した)投与のための1または複数の所定の要件が満たされているかを、小型圧力センサから受信された前記データから判定するように構成されてよい。前記1または複数の要件は:所定の閾値を越える流量;所定の閾値を越える吸入継続時間;少なくとも所定の閾値継続時間において所定の閾値を越える流量;所定の閾値を越える吸入された総体積;および、所定の閾値を超えるピーク吸気流量(PIF);のうち1または複数を備えてよい。
【0040】
モジュールは、ユーザにより作動される投与機構のプライミングのための手段を備える吸入器で使用されるように構成されてよい。
【0041】
前記トランスミッタは、無線でよい。
【0042】
圧力センサ、プロセッサ、および、トランスミッタの任意の2つ以上が、単一の集積回路またはシステムオンチップ(SoC)に備えられてよい。
【0043】
モジュールは、前記流路をさらに備えてよく、前記圧力センサは、流路の内部に位置されており、前記圧力センサは任意で流路の内壁の凹部内に位置されている。
【0044】
モジュールは、前記流路をさらに備えてよく、前記圧力センサは、流路の外部に位置されており、そして、前記センサポートは、流路の壁の開口を経由して流路に通気連結されている。
【0045】
モジュールは、センサポートを前記開口に通気連結するように配置されたシールをさらに備え、前記シールの少なくとも一部は、任意で、圧力センサと壁との間に挟まれており、前記シールの少なくとも一部は、任意で、前記壁の外面から、圧力センサが取り付けられる面までのびて、壁に隣接する空気チャンバ内に圧力センサを包囲する。
【0046】
前記壁および前記シールは、二段階成形工程によって形成されてよい。
【0047】
モジュールは、さらに、圧力センサと壁との間に挟まれた熱伝導ガスケットをさらに備えてよく、前記熱伝導ガスケットは、任意で、シールとして機能する。
【0048】
モジュールは、前記センサポートを前記流路から分離する通気性、非通水性フィルタをさらに備えてよい。
【0049】
圧力センサは、金属製のハウジングを備えてよい。
【0050】
圧力センサは、MEMS気圧センサでよい。当該センサは、ピエゾ抵抗素子または容量MEMS圧力センサでよい。
【0051】
前記プロセッサは、前記圧力センサに備えられてよい。
【0052】
モジュールは、圧力センサの検出素子から受信されたデータを格納するように構成されたデータバッファをさらに備えてよい。前記データバッファは、任意で、圧力センサ内に備えられてよい。前記データバッファは、1つの吸入/吐出の波形に対応するデータを格納するように構成されてよい。前記データバッファは、先入れ先出し(FIFO)データバッファでよい。
【0053】
モジュールは、環境気圧活動を監視するために構成された追加のMEMS気圧センサをさらに備えてよい。
【0054】
トランスミッタは、圧力センサから及び/又は圧力センサに、データを通信するように構成されたトランシーバに備えられてよい。トランスミッタは、無線でよい。前記無線トランスミッタは、Bluetooth(登録商標)サブシステム、任意で、Bluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)集積回路またはシステムオンチップ(SoC)でよい。
【0055】
圧力センサ及び/又はトランスミッタは、プリント回路基板(PCB)に取り付けられてよい。
【0056】
モジュールは、圧力センサに電力を供給するように配置されたバッテリ、任意でコイン型電池をさらに備えてよい。
【0057】
圧力センサは、20パスカルまたはそれ未満の感度を有してよい。
【0058】
圧力センサは、検出素子を備えてよい。プロセッサは、100Hz以上の周波数で前記検出素子をポーリングするように構成されてよい。
【0059】
モジュールは、圧力センサのスイッチを入れるための及び/又は圧力センサを低電力状態から起ち上げるための制御手段をさらに備えてよい。
【0060】
前記制御手段は、機械式スイッチ、光学センサ、加速度計、またはホール効果センサでよい。プロセッサは、前記検出素子から風袋値を取得し、その後に前記風袋値を用いて検出素子から受信されたデータを較正することによって、前記制御手段が圧力センサのスイッチを入れ及び/又は圧力センサを立ち上げることに応答するように構成されてよい。
【0061】
プロセッサは、圧力センサによって測定値の移動平均から動的ゼロを計算により決定し、圧力センサを前記動的ゼロに従って動的に較正するように構成されてよい。
【0062】
プロセッサは、圧力センサの検出素子から受信されたデータにおける圧力センサに固有の電気的ノイズ及び/又は環境異常を除去するように構成されてよい。
【0063】
モジュールは、温度センサを、任意で圧力センサと一体化された温度センサをさらに備えてよい。プロセッサは、任意で圧力センサおよび温度センサのどちらか1つに備えられてよく、温度センサの検出素子から受信されたデータから測定された温度補償を、圧力センサの検出素子から受信されたデータに適用してよい。
【0064】
吸入器は、マウスピースをさらに備え、前記センサポートは、前記マウスピースと通気連通して流路に通気連結されてよい。
【0065】
第2の態様によれば、第1の態様のモジュールを備える吸入器の附属品が備えられ、該附属品は吸入器に接続されて、前記センサポートが、前記吸入器のマウスピースと通気連通して流路に通気連結される。
【0066】
第3の態様によれば、第1の態様のコンプライアンス監視モジュールを備える吸入器が備えられる。
【0067】
第4の態様によれば、吸入器の使用のコンプライアンスを監視するための方法が備えられ、当該方法は:吸入器が非アクティブモードからアクティブモードに変化するときを検出するように構成されたモードセンサからデータを受信し;小型圧力センサの検出素子からデータを受信し、前記圧力センサのセンサポートは、前記吸入器の流路に通気連結されるように構成されており、該流路を通じてユーザは吸入することができ;前記圧力センサの前記検出素子からの前記データおよび前記モードセンサからの前記データに基づいて、コンプライアンスレポートを編集し;そして、前記コンプライアンスレポートを発する。
【0068】
小型圧力センサは、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)圧力センサ、または、ナノエレクトロメカニカルシステム(NEMS)圧力センサでよい。圧力センサは、MEMS気圧センサでよい。当該センサは、ピエゾ抵抗素子または容量MEMS圧力センサでよい。
【0069】
吸入器が、ジェット噴霧吸入器であれば、前記方法は、吸入器内に残っている液状薬剤の液位を、前記圧力センサの検出素子から、測定するステップをさらに備えてよい。
【0070】
モードセンサが、加速度計またはジャイロメータであれば、前記方法は、前記吸入器の配向を、前記加速度計または前記ジャイロスコープを用いて測定するステップをさらに備えてよい。
【0071】
モードセンサが、加速度計または追加の圧力センサであり、吸入器が、ジェット噴霧吸入器あれば、前記方法は、吸入器のコンプレッサが起動されたことを、前記加速度計または前記追加の圧力センサを用いて判定するステップをさらに備えてよい。
【0072】
モードセンサが加速度計であり、吸入器がカプセル内に保持されたドライパウダー薬剤を受けるように構成されたドライパウダー吸入器(DPI)であれば、前記方法は、カプセルがチャンバ内で開かれた、及び/又は、振動され/回転されたことを、前記加速度計を用いて、判定するステップをさらに備えてよい。
【0073】
前記モードセンサは、配向センサでよい。前記モードセンサは、吸入器が使用のために準備されたことを判定する手段を備えてよい。前記モードセンサは:加速度計、ジャイロスコープ、機械式スイッチ、光学センサ、ホール効果センサ、マイクロフォン、および、温度センサのうちの1つでよい。
【0074】
方法は、吸入器によって完全に実施されてよい。
【0075】
代わりに、方法は、吸入器の外部の装置によって、少なくとも部分的に実施されてよい。
【0076】
前記センサポートを前記流路に通気連結するために構成されたキャピラリーチューブがあってよい。
【0077】
前記キャピラリーチューブは、センサポートと流路との間にシールを備えてよく、前記シールは、流路からセンサポートへ圧力を伝達するように構成される。
【0078】
吸入器は、加圧式定量吸入器(pMDI)でよい。
【0079】
前記流路は、吸入器のブーツと少なくとも部分的にその中に受けられたガスキャニスタとの間の隙間でよい。
【0080】
方法は、使用中に最上となる吸入器の垂直な外縁に取り付けられたモジュールによって実施されてよい。前記モジュールは、該モジュールを吸入器に留めるためのへりをさらに備え、当該ヘリは、前記通気連結が、前記へりと前記吸入器のブーツの最も外側の壁の内面との隙間を経由するように構成されてよい。
【0081】
吸入器は、ジェット噴霧吸入器でよい。方法は、使用中に患者から見て実質的に外方を向く吸入器の外面に取り付けられたモジュールによって実施されてよい。
【0082】
方法は、ユーザインターフェースを経由して、投与が完了したことを示すステップを備えてよい。
【0083】
前記方法は、吸入器内に残っている液状薬剤の液位を、前記圧力センサの前記検出素子からの前記データから測定するステップをさらに備えてよい。
【0084】
前記吸入器は、ドライパウダー吸入器(DPI)でよい。
【0085】
前記DPIは、カプセル内に保持されたドライパウダー薬剤を受けるように構成されてよい。
【0086】
前記方法は、上首尾の投与のための1または複数の要件が満たされているかを前記圧力センサから受信された前記データから判定するステップをさらに備えてよい。前記1または複数の要件は:所定の閾値を越える流量;所定の閾値を越える吸入継続時間;少なくとも所定の閾値継続時間において所定の閾値を越える流量;所定の閾値を越える吸入された総体積;および、所定の閾値を超えるピーク吸気流量(PIF);のうち1または複数を含んでよい。
【0087】
前記吸入器は、ユーザにより作動される投与機構のプライミングのための手段をさらに備えてよい。
【0088】
前記コンプライアンスレポートを発することは、無線送信によるものでよい。
【0089】
圧力センサ、プロセッサ、および、トランスミッタのうちの任意の2つ以上が、単一の集積回路内にまたはシステムオンチップ(SoC)内に備えられてよい。
【0090】
圧力センサは、流路の内部に位置されてよく、前記圧力センサは、任意で流路の内壁の凹部内に位置されている。
【0091】
圧力センサは、流路の外部に位置されてよく、前記圧力センサは、流路の壁の開口を経由して流路に通気連結されてよい。
【0092】
シールが、センサポートを前記開口に通気連結するように配置されてよく、前記シールの少なくとも一部は、任意で、圧力センサと壁との間に挟まれており、前記シールの少なくとも一部は、任意で、前記壁の外面から、圧力センサが取り付けられる面までのびて、壁に隣接する空気チャンバ内に圧力センサを包囲する。
【0093】
前記壁および前記シールは、二段階成形工程によって形成されてよい。圧力センサと壁との間に挟まれた熱伝導ガスケットがあってよく、前記熱伝導ガスケットは、任意で、シールとして機能する。
【0094】
前記センサポートを前記流路から分離する通気性、非通水性フィルタがあってよい。
【0095】
圧力センサは、金属製のハウジングを備えてよい。
【0096】
圧力センサは、MEMS気圧センサでよい。当該センサは、ピエゾ抵抗素子または容量MEMS圧力センサでよい。
【0097】
前記プロセッサは、前記圧力センサに備えられてよい。
【0098】
方法は、センサの検出素子から受信されたデータをデータバッファに格納するステップをさらに備えてよい。前記データは、1つの吸入/吐出の波形に対応するものでよい。前記データバッファは、任意で、圧力センサ内に備えられてよい。前記データバッファは、先入れ先出し(FIFO)データバッファでよい。
【0099】
前記方法は、環境気圧活動を、追加のMEMS気圧センサを用いて監視するステップ;および、前記流路に通気連結されたセンサポートを有する前記センサを、前記追加のセンサと対比して較正するステップをさらに備えてよい。
【0100】
前記コンプライアンスレポートを発することは、無線送信によるものでよい。前記無線送信は、Bluetooth(登録商標)プロトコル、任意で、Bluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)プロトコルでよい。
【0101】
前記コンプライアンスレポートを発することは、圧力センサから及び/又は圧力センサへデータを通信するように構成されたトランシーバ内に備えられたトランスミッタによるものでよい。トランスミッタは、無線でよい。前記無線トランスミッタは、Bluetooth(登録商標)サブシステム、任意で、Bluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)集積回路またはシステムオンチップ(SoC)でよい。
【0102】
圧力センサ、及び/又は、トランスミッタは、プリント回路基板(PCB)に取り付けられてよい。
【0103】
圧力センサは、バッテリ、任意でコイン型電池によって電力の供給を受けてよい。圧力センサは、20パスカルまたはそれ未満の感度を有してよい。
【0104】
圧力センサは、検出素子を備えてよい。方法は、100Hz以上の周波数で前記検出素子をポーリングするステップを備えてよい。
【0105】
前記方法は、制御手段を用いて、圧力センサのスイッチを入れ、及び/又は、圧力センサを低電力状態から立ち上げるステップをさらに備えてよい。
【0106】
前記制御手段は、機械式スイッチ、光学センサ、加速度計、または、ホール効果センサでよい。方法は、前記制御手段が圧力センサのスイッチを入れ及び/又は圧力センサを立ち上げることに応答して、前記検出素子から風袋値を取得し、その後に前記風袋値を用いて検出素子から受信されたデータを較正するステップをさらに備えてよい。
【0107】
方法は、圧力センサによって測定値の移動平均から動的ゼロを計算により決定し、そして、圧力センサを前記動的ゼロに従って動的に較正するステップをさらに備えてよい。
【0108】
方法は、圧力センサの検出素子から受信されたデータにおける圧力センサに固有の電気的ノイズ及び/又は環境異常を除去するステップをさらに備えてよい。
【0109】
方法は、温度センサの検出素子から受信されたデータを用いて、温度補償を圧力センサの検出素子から受信されたデータに適用するステップをさらに備えてよい。
【0110】
吸入器は、マウスピースをさらに備えてよく、前記センサポートは、前記マウスピースと通気連通して、流路に通気連結されている。
【0111】
方法は、吸入器のユーザによって吸入または吐出された空気の体積を、センサの検出素子によって検出されたデータから測定するステップをさらに備えてよい。
【0112】
第5の態様によれば、第4の態様の方法を実施するコンピュータプロセッサによる実行用の指示を備えるコンピュータプログラム製品が備えられる。
【0113】
第6の態様によれば、添付の図面を参照してここで実質的に記載されるようなコンプライアンス監視モジュールが備えられる。
【0114】
第7の態様によれば、添付の図面を参照してここで実質的に記載されるような吸入器の付属品が備えられる。
【0115】
第8の態様によれば、添付の図面を参照してここで実質的に記載されるような吸入器が備えられる。
【0116】
第9の態様によれば、添付の図面を参照してここで実質的に記載されるような方法が設けられる。
【0117】
第10の態様によれば、添付の図面を参照してここで実質的に記載されるようなコンピュータプログラム製品が備えられる。
本発明の例示は、添付の図面を参照して以下で記載される。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【
図1】呼吸検出用の小型圧力センサのための配置例を流路と関連付けて示す。
【
図2】呼吸検出用の小型圧力センサのための配置例を流路と関連付けて示す。
【
図3】呼吸検出用の小型圧力センサのための配置例を流路と関連付けて示す。
【
図4】呼吸検出用の小型圧力センサのための配置例を流路と関連付けて示す。
【
図5】呼吸検出用の小型圧力センサのための配置例を流路と関連付けて示す。
【
図7】吸入器中のコンプライアンスモジュールの構成例を示す。
【
図8】吸入器中のコンプライアンスモジュールの構成例を示す。
【
図9】吸入器中のコンプライアンスモジュールの構成例を示す。
【
図10】吸入器中のコンプライアンスモジュールの構成例を示す。
【
図11】吸入器中のコンプライアンスモジュールの構成例を示す。
【
図12】吸入器中のコンプライアンスモジュールの構成例を示す。
【
図13】一例に係るコンプライアンス監視方法を示すフローチャートである。
【0119】
図中に示される構成要素は正寸ではなく、働きを示すだけにすぎない。同様の構成は、同様の参照符号によって示される。
【0120】
上記で述べたような、差分(2ポート)タイプの圧力センサや、使用前および使用後のそれぞれで測定がなされるシングルポートゲージタイプのセンサに加えて、絶対圧または気圧センサを利用することができる。
【0121】
気圧センサは、真空を参照する。高度は気圧測定値から推測することができるので、これらはときに高度計とも呼ばれる。このタイプのセンサは、その極端に広いレンジ(20から110kPa)および低い分解能ゆえに、呼吸検出での使用が一般的に考慮されていない。どのように典型的な呼吸プロファイルがたった0.2kPaのオーダーの圧力変化を生じさせうるかを考慮すると、これは、その作動レンジの極端に狭い部分に渡りセンサを作動させることを要求するであろう。
【0122】
しかしながら、MEMSおよびNEMSの技術の導入を含む小型化により、さらに改良されたセンサを現在利用することができる。典型的なMEMS気圧センサは、20kPaから110kPaまで作動する能力を有しており、そして、既知の流体抵抗を有する流れ経路に通気連結されているとき、30lpm(リッター/分)未満の流量を検出することができる。
【0123】
気圧センサを使用することで、気圧を、測定サイクルを通じたベースラインとして用いることができ、それによって、他のシングルポートのアプローチの不確実性に対処することができる。
【0124】
また、局所の気圧の知識を有することで、患者の肺機能への洞察を提供することができる。大気圧の変化が、例えば接近する暴風雨前線と関連するようなそれが、おそらく喘息やCOPDの事象にすら関連する患者の呼吸に影響を与えるかは疑わしい。気圧センサは、すでに圧力が加えられた状態であり、装置内において真空下でシールされた内蔵の参照ポートを有している。これは、これらが関心領域で低いヒステリシスを有するこということである。それらの検出素子の極端に小さいサイズと質量により、MEMSセンサは、極端に小さい圧力変化に対して反応することができる。1Paほどの低い圧力変化を分析できるものもある。
【0125】
MEMS圧力センサは、必須のアナログ回路の全てをセンサパッケージ内に含んでよい。温度補正及び/又はデジタルインターフェースは、圧力センサに組み込まれてもよい。
【0126】
例えば、FreescaleMPL3115A2MEMS気圧計/高度計チップ(圧力センサ)は、デジタルであり、圧力情報をホストマイクロコンピュータへ通信するI<2>Cインターフェースを使用する。
【0127】
MEMS圧力センサは、金属内に包まれてよい。これは、RF遮蔽、および、温度補償に対する良好な熱伝導性を提供する。
【0128】
MEMS圧力センサは、また、ローコストであり、低電力消費を示し、とても小さい。これは、これらを、例えばコイン型電池のようなバッテリによって電力供給されるような、持ち運び可能及び/又は使い捨て可能な装置での使用に特に適したものにする。
【0129】
MEMS圧力センサの小さいサイズにより、これらを既存の設計の吸入器に組み込むことが容易になる。これらをマウスピース内またはマウスピースに隣接して組み込んで、患者の吸入または吐出によりもたらされる圧力変化をより正確に測定することがより容易になるであろう。
【0130】
いくらかの装置の設計では、小型気圧センサは、あらゆる種類の管材を必要としない空気の経路への小さな穴だけを用いて、患者の気道に直接的に接続されてよい。これは、エラストマー管材に関連する結露および潜在的な細菌繁殖の可能性を最小限にする。汚染から検出素子を保護する、例えばジェルシールのような内部シールが含まれてよい。
【0131】
このタイプの配置例が
図1に示されている。小型気圧センサ110が、流路120に向けて配置されており、該流路を通じて患者は呼吸する。気流は、実質的に、矢印130によって示される軸方向となる。センサポート111は、空気(気密)シール140によって流路壁122の開口121と一直線になるようにシールされている。(センサポートと流路との間の通気接続がある限り、当該シールが完全に気密である必要はない。)。センサポート111は、任意で、フィルタを、例えば通気性、非通水性のフィルタを備える。流路およびシールは、二段階成形工程によって形成されてよい。圧力センサ110は、電源および他の電子機器への接続を提供するプリント回路基板(PCB)に取り付けられてよい。シール140を開口121とセンサポート111との間の通路の周りに配置する代わりに、小型センサ全体が、
図2に示される通り、流路に隣接するチャンバ内に包囲されてよい。空気シール240は、センサ設置面の外側に位置され、流路壁222の外面から、センサ210が取り付けられる面250(例えばPCBの構成要素の面)まで、ずっとのびている。
図2は、断面を示し;空気シール240は、円形状、正方形状、長方形や他の任意の形状であってよく、センサ210の周囲を囲む。シール240、センサ取付面250、及び、流路壁222は、したがって、開口221の位置においての流路を除いて外部環境から通気不能に隔離された空洞を形成する。センサポート211における圧力は、したがって、開口221における流路内の圧力と等しい。
【0132】
MEMSセンサは、内蔵された温度補償を利用することができるので、外部温度センサを使用しなくてもよい。補償は測定位置で正しくなされ、補償の正確さは増加する。温度補償内蔵のMEMSセンサは、小型呼吸温度計として機能することもでき、追加の情報を患者及び/又はその世話人へ提供する。センサのハウジングが金属であるなら、感度の高い内部回路が、RF場、例えば携帯電話や近くの外乱と関連するそれから隔てられるだけでなく、センサは、最適な温度補償を提供するために、迅速に局所の温度と平衡になるであろう。
【0133】
図1および
図2の実施形態では、小型センサは、空気隙間によって流路壁から離されている。流路の温度の変化を迅速に検出する小型センサの能力を改善するために、熱伝導ガスケットが
図3に示されるように使用されてよい(
図3は、他の点では
図2と同様である)。
【0134】
図3の配置例では、トランジスタヒートシンク用のシリコンタイプのような熱伝導ガスケット360が、小型センサ310の(任意で金属製の)ハウジングと、流路壁322との間に設けられる。ガスケットによってカバーされた隣接表面積が大きい程、温度平衡がより素早くなる。ガスケット360は、したがって、流路壁322を向くセンサ310の面全体に実質的にわたってのびてよい。
【0135】
図4は、配置例を示すものであり、熱伝導ガスケット460は、非通気性材料からなり、センサ410の表面の輪郭と流路壁422に対して歪み、これらの間で圧縮される。これは、したがって、良好な熱接続を提供し、同時に空気シールとして機能し、別のシール要素の必要性を除去する。
【0136】
センサを流路に隣接して配置することに対しての代替案は、
図5に示される通り、センサ全体を、監視される装置の低圧力気道内に配置することである。例えば、センサは、DPIの本体内または加圧式定量吸入器(pMDI)の“ブーツ”内に配置されてよい。(“ブーツ“という用語は、一般的に薬キャニスタを保持する吸入器の本体を言う。)。この配置では、センサは、気流自体の圧力(および任意で温度)を本当に測定し、改善された正確さを提供する。したがって、流路520とセンサポート511との間の空気導管を作るシール要素の、または、これらの間での熱平衡を補助する熱伝導ガスケットの必要性もない。また、センサに、参照目的のための外部圧力環境へのアクセスを設ける必要もない、というのも、参照は、真空参照の形式でセンサ自体に既に内蔵されているからである。
【0137】
図5の実施例では、小型気圧センサ510は、流路壁522の内部に取り付けられ、任意で、PCB550を経由して取り付けられる。流路壁522は、示されるように、センサ510が530で示される気流に対する乱れを低減するように位置された凹部523を備えてよい。例えば、このような凹部523の深さは、センサ510の厚さに実質的に等しくてよく、センサポート511を備えるセンサの表面が、センサ510のどちらかの側で流路壁522の内側面の一部と同一平面上になる。凹部523は、壁522から除去された体積や、示されるように、残りの部分に対して径方向外方へのびる壁の一部でよい。
【0138】
小型圧力センサは、その小さいサイズゆえに、例えばpMDIs、ジェット噴霧吸入器、またはDPIsを通じた患者の流れを監視するために用いることができ、したがって、アドヒアランス監視に加えて/代えて、低コストなコンプライアンス監視を容易にし、装置の作動を確認する。前記コンプライアンス監視は、観測される気道への小さい穴を通じて、または、観測される気道と流体連通するキャピラリーチューブを通じて投与装置に、または投与装置自体内に連結する付属の装置を用いて実施されてよい。MEMSセンサの小さいサイズ、高いパフォーマンス、および低コストは、それらを、サイズおよび重量が常に吸入器を持ち運ばなければならないであろうユーザにとって主要な動機となるアプリケーションに理想的に適したものにする。小型圧力センサからの出力がデジタルであるなら、すべての低レベル信号処理は、センサ内でなされてよく、それを外部干渉から遮蔽する。これは、外部回路を有する従来のセンサで挑戦されていたであろうことを、数十オーダーのパスカルの信号で難なくできるようにする。
【0139】
図6は、一例に係るMEMS気圧センサのいくつかの電気構成要素を概略的に示す。検出素子601が、アナログ信号を、アナログデジタルコンバータ(ADC)602に送る。ADC602のデジタル出力信号は、それから、ノイズを低減するために、ローリング平均フィルタによって多くのサイクルに渡って平均化される。様々な平均が、応答時間に対してノイズのバランスをとるために、プログラムコントロール下で選択されてよい。
【0140】
一例として、ブロック603は、604での出力に対する8つの異なるオーバーサンプル(即ちフィルタ)比のうち1つを選択する手段を表す。最も早い応答は、OSR=1に対応するが、これはまた最もノイズがある設定である。反対に、OSR=128は、最も小さいノイズを導入するが、最も遅い応答を有する。最適な設定は、特定の用途に応じて選択されてよい。16のOSR設定であれば、出力は、ほとんどの呼吸器系の用途に対して、十分にクリーンであり、アップデートタイムは十分素早い。
【0141】
例えば患者の流れプロファイルを記録するために、センサによって検出された圧力のリアルタイム変動と関連する波形を作ることが望ましい。新しいデータが利用可能になる度に、このような波形をセンサの単一の測定値から作成すると、各タップと関連する遅延により、結果として得られる波形は、なめらかな波形というよりは、むらのあるアーチファクトを示すであろう。しかしながら、ADC602を、例えば約100Hzといった、適切な周波数で駆動し、そして、同じ速度でデータを読み取ることによって、各タップに示されるデータは、さらに平均化され、その結果、よりいっそうなめらかな波形となる。
【0142】
それから、平均出力は、データが装置内に組み込まれ接続されたプロセッサよって処理されうるまで、または、オフロード処理のために送信されうるまでの格納のためのサーキュラー先入れ先出し(FIFO)バッファ(図示略)へ送られてよい。このようなFIFOバッファは、例えば、1つの典型的な呼吸波形とほぼ同じまたはこれより僅かに大きな複数のサンプルを格納し、1つの吸入/吐出プロファイル全体がキャプチャーされることを保障するようにしてよい。波形がリアルタイムで必要とされない場合、バッファを使用することで、センサのシリアルポートの需要が減少する。
【0143】
通信の付加により、患者のアドヒアランスおよびコンプライアンスを監視し、このような情報を、例えば患者の流れプロファイルを含むような情報を、スマートフォンまたはタブレットのようなユーザ装置へ通信することができる。ユーザ装置から、データは、任意で、例えば医者のパーソナルコンピュータ(PC)のような世話人の装置へ通信されてよい。これは、例えばユニバーサルシリアルバス(USB)ポートを経由するといったように、有線接続を用いてなされてもよい。代わりに、無線技術を用いて、製品のハウジングを著しい方法で干渉することなく、結果を外部へ通信することができる。適切な無線技術は、例えば、IEEE802.11のようなWiFi技術、IEEE802.15のようなメディカルボディエリアネットワーク(MBAN)技術、近距離無線通信(NFC)技術、3Gのような携帯技術、および、Bluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)のようなBluetooth(登録商標)技術でよい。無線トランシーバが、例えばBLEチップの形式で、小型圧力センサに接続され、または、それに組み込まれてもよい。
【0144】
前記無線の接続性は、例えば、装置の作動及び/又は検出された吸入を、リアルタイムで、日付およびタイムスタンプと共に報告するために、用いられてよい。このデータは、外部で処理されてよく、当該処理の結果が、患者が十分にコンプライアンスに準拠していない、または、処方箋が再提出されるべきであると判定されたものであるなら、アラートが、患者、及び/又は、世話人、及び/又は、薬剤師へ送られてよい。アラートは、1または複数の吸入器のインターフェース(例えばLED及び/又はブザー)を経由して、または、テキストメッセージまたはEメールを経由して、提供されてよい。他の例として、投与(投薬)レポートが、予定された投与時刻後、所定の期間内に受けられてないなら、リマインダが、患者及び/又は世話人へ送られてよい。アラートは、例えば使用頻度が安全閾値を越えているときに、発生されるようにしてもよい。
【0145】
コンプランスは、患者のまたは世話人(例えば医者、看護師、薬剤師、家族メンバー、介護人)のユーザ装置(例えばスマートフォンのような携帯電話、タブレット、ラップトップ、デスクトップコンピュータ)、または、例えばヘルスサービスプロバイダーの、吸入器の製造業者の、薬の製造業者の、または、ディストリビュータのサーバ、または、クラウドストレージシステムのうち、1または複数と直接的または間接的に通信してよい。当該通信は、インターネットのようなネットワークを経由するものであってよく、例えば患者のスマートフォン上の専用アプリを伴うものでよい。
【0146】
コンプライアンス監視手段(例えば、機械式スイッチのような装置作動センサ、装置が効果的に投与のために適切な配向にあるかを検出する加速度計またはジャイロスコープのような配向センサ、適切な用量送達ために十分な流れを検出する小型圧力センサといった1または複数のセンサ)、及び、コンプライアンスレポート手段(例えば無線トランスミッタまたは有線出力ポート)は、単一のモジュール内に含まれてよい。このモジュールは、既存の設計の吸入器又はわずかに修正された設計の吸入器へのアタッチメント用の個別の吸入器の付属品/アップグレート品として売られてよい。代わりに、コンプライアンス監視モジュールは、製造中に吸入器に組み込まれてよい。コンプライアンス監視モジュールの全ての構成要素が、単一の物理ユニットに備えられている必要はないが、これは場合による(例えば、電子部品が全て単一のPCBに取り付けられ、または、単一の集積回路内に組み込まれる場合はある)。吸入器の付属品の形式の場合、モジュールは1または複数の取り付け可能なユニットからなってよい。吸入器に組み込まれたモジュールの場合、個々の構成要素は、吸入器内または吸入器上の任意の適切な箇所に位置されてよく、そして、一緒にグループ化されるまたはそれらが機能するために必要とされる以上に接続される必要はない。
【0147】
センサは、有線のまたは無線の手段によって、プロセッサおよびトランスミッタと通信してよい。例えば、これら3つの全てが単一のPCBに取り付けられているなら、小型圧力センサのセンサポートは、通気穴によって流路に直接的に通気連結されてよく、または、キャピラリーチューブによって間接的に連結されてよい。(もし、キャピラリーチューブが用いられるなら、圧力伝達シールは、チューブの流路端を閉じて、薬及び/又は水分が、チューブ内に侵入すること、圧力センサを損傷させること、チューブを詰まらせること、または、装置の衛生に影響を及ぼすことを防止する。)代わりに、小型圧力センサは、流路自体内に位置されて、吸入器内のまたは吸入器上の他のパーツ上に位置された1または複数の他のコンプライアンスモジュールの構成要素と無線で通信してよい。電子部品の小型化により、コンプライアンスモジュール全体を、流れを遮ることなく、流路内に位置させることができる。
【0148】
コンプライアンス監視モジュールは、例えば、米国特許番号6,446,627または米国特許出願公開番号13/110,532に記載されたpMDIsのタイプに用いられてよい。これらの吸入器は、アドヒアランスを監視するために用量カウンタ(ドーズカウンタ)を備える。例えば、米国2011/028997において、残りの用量の数を示す番号が付されたスプールリボンが、駆動されて、キャニスタの移動により作動されるアクチュエータ歯止めによって順次駆動されるラチェットホイールによって巻き出される。
【0149】
しかしながら、これらの吸入器は、1用量が首尾よく投与されたかを判定する手段を全く備えていない。吸入器を通じた気流経路中のどこかに、または、気流経路と流体連通するどこかに小型気圧センサを追加することで、コンプライアンス監視が可能となる。というのも、このような小型センサは、患者が適切な方法で(例えば、十分に強くそして十分長く)吸入して1回分の完全な用量の薬剤を受けたか否かを示す十分なデータを収集することができるからである。この情報は、用量カウンタ機構から生じる信号と組み合わされて、1用量が首尾よく投与されたことを確認するのに十分なものになる。
【0150】
信号は、任意の便利な方法で、用量カウンタシステムから得られてよい。例えば、電子式スイッチが設けられて、それが歯止めの動作またはスプールの回転によって作動されてもよい。このスイッチは、プロセッサの入力に接続されて、1用量が計量されたとき、プロセッサが電子パルスを受けるようにしてよい。用量のカウントは、電子的に利用することができるので、リボンが省略されてよい。
【0151】
図7-
図10は、どのようにしてコンプライアンスモジュールがpMDIに組み込まれうるかの詳細をさらに示す。
図7及び
図8は、どのようにしてコンプライアンスモジュールが既存のpMDIにいかなる修正もなしに付加されうるのかを、そして、それによって附属パック/アップグレードパックとして、pDMI自体から分離して提供されうるかを示す。
図9及び
図10は、どのようにしてコンプライアンスモジュールがいくらかのマイナーな修正でpMDIsに組み込まれうるかを示す。
【0152】
図7は、コンプライアンスモジュール710がpMDI700に留められた一例を示す。pMDI700は、ブーツ730内に受けられたキャニスタ720を備える。コンプライアンスモジュールのへり711が、ブーツの壁の上端に渡り、ブーツの壁とキャニスタとのラジアル隙間に引っ掛かっている。コンプライアンスモジュールは、それによって、吸入器に対して何ら修正することなく、吸入器上に留められる。
【0153】
矢印Aは、ユーザがマウスピース740を通じて吸入したときの気流を示す。空気が、キャニスタとブーツとのラジアル隙間を流れ落ち、装置の作動時にノズル721から噴射されたエアロゾルを取り込み、そして、マウスピース740を通じてユーザの口内へ出て行く。コンプライアンスモジュール内のMEMS圧力センサ712は、ブーツとキャニスタとのラジアル隙間によって形成された流路に、キャピラリーチューブ713によって通気連結されている。キャピラリーチューブは、へりの外壁のラインに沿って隙間に回り込むが、へりの底面の手前で止まる。これは、ヘリが、下方からの、即ちブーツ内の空気を除くキャピラリーチューブへの全ての空気を遮断することを保障する。別の配置では、へりは、管材が必要ない程に十分な流体隔離を提供するように形作られかつ位置決めされてよい。
【0154】
別の配置が
図8に示されており、コンプライアンスモジュール810は、カバー815の下側に付された(MEMS圧力センサを含む)電子機器ユニット814を備える。この全てが、pMDI800に上方からかぶせられ、ブーツ830の上部とキャニスタ820の露出部分を囲む。コンプライアンスモジュールが定位置にあり、ダストキャップ850が外されていれば、ユーザがマウスピース840を通じて吸入したとき、空気が、カバー815とブーツ830との隙間を通り、MEMS圧力センサを含む電子機器ユニット814を通過し、ブーツとキャニスタとのラジアル隙間を流れ落ち、装置の作動時に、キャニスタのノズルから噴射されたエアロゾルを取り込み、そして、マウスピース840を通じてユーザの口内へ出て行く。
【0155】
図9Aは、一例に係るpMDI900の部分分解図であり、pMDIは、ブーツ930の底に組み込まれたコンプライアンスモジュール910を備える。
図9Bおよび
図9Cは、装置の作動前および作動中のそれぞれのブーツの底部の内部図である。コンプライアンスモジュール910は、MEMS圧力センサ912、機械式クリックドームスイッチ916、および、PCB918に取り付けられ、コイン型バッテリ919によって電力の供給を受けるプロセッサ(例えば、マイクロコントローラユニット、MCU)917を備える。装置の作動前に、上部クリックドーム表面の上方に隙間がある。装置の作動中に、キャニスタ920は、ブーツ930内にさらに押し下げられる。キャニスタ920の底に付けられたスプリングアーム960も、結果的に、下方に移動し、クリックドーム916の上面に押し下がり、スイッチを作動させる。これにより、作動パルス信号はMCUへ送られる。この信号は、患者のアドヒアランスを測定するために用いられてよく、一方、圧力センサからMCUへの信号はコンプライアンスを測定するために用いられてよい。吸入器が使用前に必要に応じて振られたかを示すコンプライアンスデータを提供するために、加速度計(例えば3軸加速度計)が、PCBに備えられ、MCUに接続されてもよい。加速度計は、また、吸入器が適切な装填の要求に応じて直立に保持されているかを判定するために、計量チャンバへの一回分の用量の装填中における吸入器の配向を検出するために用いられてもよい。クリックドームスイッチは、バッテリを、圧力センサに接続するものとして機能させてもよく、若しくは、加速度計がないのであれば、バッテリをPCB全体に接続するものとして機能させてもよい。これは、バッテリ電力を、それが必要とされるときだけのために節約する。サーミスタは、PCB上に備えられてもよく、薬のエアロゾル化の完了に関連する温度降下が生じているかを示すことにより、コンプライアンスデータをさらに提供する。
【0156】
コンプライアンスモジュールは、代わりに、
図10に示される通り、“バックパック”として備えられてよい。コンプライアンスモジュール1010は、ブーツ1030の外部に付けられている。ブーツ1030の穴は、MEMS圧力センサ1012のポートと、ブーツ1030およびキャニスタ1020のラジアル隙間に形成された流路との間の流体連通を提供する。リニアポテンショメーター1070のスライドコンタクト1071は、キャニスタに付けられて、キャニスタと共に上方および下方に移動する。コンタクト1071は、ブーツ1030のスリット内をスライドする。ポテンショメータからの信号は、装置が作動されたとき、および、それがどれだけの時間作動されているかを示す。ポテンショメータは、コイン型バッテリ1019をPCB1018へ接続するスイッチとして機能してもよく、その結果、PCBは装置が作動されているときだけ電力供給される。コンタクト1071がスライドするスリットは、流路とMEMS圧力センサとの間の流体連通を提供してもよい。
【0157】
コンプライアンス監視モジュールは、ジェット噴霧吸入器に用いられてもよい。
図11は、これがどのように達成されうるかを示す。MEMS圧力センサ1112を備えるコンプライアンスモジュール1110は、ジェット噴霧吸入器1100の外部に付けられている。圧力センサのセンサポートは、キャピラリーチューブ1113によって、噴霧吸入器の内部と連通する。チューブの末端は、のび下がってバッフル1120に通される。バッフル1120は、(圧縮空気入口1131によって供給される)ノズル1130によって放出された大きなエアロゾル液滴を、マウスピース1140に存在し患者の気道へ向かう液滴が均一なサイズになるように反射させる平板である。キャピラリーチューブの端をバッフルの下方に位置させていることで、エアロゾル液滴がチューブ内に侵入することが防止され;リザーバ1150からの液状薬剤がその中にまでに飛び上がる程に噴霧吸入器のハンドセットが振られないのであれば、チューブの内部はかなり乾燥したままのはずである。
【0158】
バッフルは、穴があけられているので、それより大きいまたは小さい圧力は等しくなり、圧力センサはマウスピース1140内の圧力を効果的に測定する。マウスピース内の気流は、矢印Aによって示され、通気穴を通じたユーザの吸入によって引き込まれる流れ、および、ノズルによって放出される流れを備える。したがって、マウスピース内の圧力を監視することで、患者の吸入についての情報、および、コンプレッサ、液薬の液位などについての情報の双方を提供することができる。これは、患者へのフィードバックを可能にし、治療が完了したこと、または、リザーバが空であることを示すことができる。長い治療時間(典型的には10分オーダー)、および、コンプレッサおよびハンドセットによりもたらされる高いノイズレベルは、ユーザが治療が完了したときを知るのを困難にせしめるので、患者のアドヒアランスは、ジェット噴霧吸入器ではしばしば乏しい。したがって、コンプライアンス監視モジュールの使用は、アドヒアランスを改善しうる。圧力センサは、ポンプ機能を検査するために用いられ、ポンプによって作られる大きな脈動の1つが検出されたときに、コンプライアンスモジュールの残りを立ち上げるスイッチとして用いられてもよい。
【0159】
加速度計は、コンプライアンス監視モジュールに含まれてもよい。十分なコンプライアンスのために、あるジェット噴霧吸入器は、マウスピース内で凝集されてリザーバへ戻る液滴を振るために、ユーザがハンドセットをタップすることを要求する。加速度計は、このタップを検出してよい。加速度計は、コンプレッサによりもたらされる振動を検出して、それが使用中であることを確認してもよい。
【0160】
ドライパウダー吸入器も、コンプライアンス監視モジュールの追加から利益を受けうる。一例に係るDPI1200は、これに取り付けられたコンプライアンスモジュール1210を含んでおり、
図12に示されている。患者の気流は、ここでもまた矢印Aによって示される。それは、吸入器本体内の通気口を通過し、薬剤カプセル1230(前もって穴があけられている)を含む投与チャンバ1220を通過し、それから、マウスピース1240を通って出る。コンプライアンスモジュールは、キャピラリーチューブ1213を経由して投与チャンバと流体連通するセンサポートを含むMEMS圧力センサ1212を備える。加速度計またはマイクロフォンは、吸入中にチャンバ1220内でカプセル1230の移動によって発生される構造伝達振動を検出するように備えられてよい。コンプライアンスデータをコンプライアンスモジュールのプロセッサへフィードバックする機械式スイッチは、カプセル1230を開けることによって吸入器を使用できるように準備するピアスまたはピーリング機構(図示略)によって作動されてよい。
【0161】
MEMS気圧センサは、経時的に変化しうる環境気圧に応答するので、後に続くセンサ出力信号分析が基準とする最初の測定値に注意を払うべきことに、留意すべきである。自動ゼロ値・ゼロリーディング(即ち風袋)は、吸入信号を監視する直前に実施されてよい。この値を局所の環境気圧の変化に応答して経時的に変化させることもできるが、治療が数分内に完了されるのであれば、問題を生じさせるようなことは望まれないであろう。代わりに、第2の気圧計チップが気圧の活動の経過を記録するために用いられてよく、これにより、第1のチップを呼吸検出のためにもっぱら使用することができる。
【0162】
ジェット噴霧吸入器では、投与が完了する(即ち肺の体積がピークになる)点は、流れの方向が反転する点に対応する。したがって、圧力センサからのデータが、流れの方向が反転したことを示すとき、プロセッサは、投与が完了したと判定を下してよい。
【0163】
全ての処理が、モジュールによってなされる必要はない。任意のまたは全ての処理が外部データ処理装置へオフロードされてよい。無線方式(例えばBLEモジュールを含む)が、患者の流れプロファイルを、その後に特定の呼吸パラメータを計算するアプリへ送信するために用いられてよい。吸入器は、それによって、このようなタスクのために必要とされる処理を、例えばスマートフォンプロセッサにオフロードしてよい。これは、吸入器にとってふさわしい最小のフォームファクターを容易にするであろう。このアプローチのさらなる利点は、スマートフォンを動かすソフトウェアが吸入器を動かすソフトウェアより、より容易に変化させることができることにある。
【0164】
図13は、一例に係るコンプライアンス監視方法を示すフローチャートを示す。ステップ1310で、プロセッサは、吸入器が非アクティブモードからアクティブモードに変化したことを示すモードセンサからのデータを受信する。ステップ1320で、プロセッサは、小型圧力センサの検出素子からデータを受信し、前記センサのセンサポートは、ユーザが吸入するための前記吸入器の流路に通気連結されるように構成されている。ステップ1330で、プロセッサは、コンプライアンスレポートを編集するために、モードセンサおよび圧力センサからのデータを処理する。ステップ1340で、プロセッサは、コンプライアンスレポートをトランスミッタに送り、トランスミッタによってそれが発せられる。
【0165】
図14Aおよび14Bは、10個の異なる吸入器のケーシングの上部に付けられた小型相対圧力センサを用いて測定された平均圧力を、装置を通じて適用された一連の空気流量に対して示す。繰り返しの測定値は、各吸入器の寿命の初期、中期、および最期に対するものが含まれていた(用量が不足する前の“ショット”の回数を通じた進捗の観点で)。
図14Aでは、エラーバーは、±3シグマ変動で示される。
図14Bでは、エラーバーは、±2シグマ変動で示され、95%の吸入器が該当する帯域をキャプチャーしている。したがって、圧力測定に対する流れの不確実性の考えを、吸入器中で用いられるこのようなセンサによって得ることができる。
【0166】
典型的な吸入流量(30-60l/min)において、不確実性は、
図14Aから、~16l/minとして計算することができる。(各測定における流量の不確実性は、その測定値における上側のエラーバーと、当該測定値における下側のエラーバーおよびその次のそれとを結ぶ線が測定された圧力に達する点との流れ軸の差分として見積られる。即ち、30l/minでは、差分は、41l/min-30l/min=11l/minである。45l/minでは、差分は、15l/minであり、60l/minでは、それは22l/minである。)
図14Bから得られる同等の値は、~10l/minである。よって、十分な精度を得ることができ、有益なコンプライアンスデータを提供できる。
【0167】
上記は、本発明の例示に係る用途に関するものであり、他の実施形態および変形が可能であることが理解されよう。
【0168】
加えて、当業者は、装置の特定の特徴における特定の幾何学形状および配置を修正または変更させることができる。他の変形および修正も、当業者にとって自明である。当該変形および修正は、既に知られ、かつ、ここで記載された特徴に代えてまたは加えて用いられうる同等のおよび他の特徴を含むことができる。それぞれの実施形態で関連して記載された特徴は、単一の実施形態にて組合せで備えられてよい。逆に、単一の実施形態で関連して記載された複数の特徴は、別々に、または、適切な部分的組合せで備えられてもよい。