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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】新規ペプチド及びこれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20220112BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 19/04 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220112BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20220112BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20220112BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220112BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
A61P29/00
A61P43/00 105
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P17/06
A61P17/00
A61P37/08
A61P1/04
A61P19/04
A61P25/00
A61P37/02
A61P11/00
A61P19/08
A61P31/00
A61P39/02
A61P9/00
A61P1/16
A61P3/10
A61P35/00
A61P17/02
A61K38/08
A61K8/64
A61Q19/00
A61Q19/08
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2017561720
(86)(22)【出願日】2016-05-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-08-30
(86)【国際出願番号】 KR2016005529
(87)【国際公開番号】W WO2016190660
(87)【国際公開日】2016-12-01
【審査請求日】2019-03-11
(31)【優先権主張番号】10-2015-0073188
(32)【優先日】2015-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514286826
【氏名又は名称】ジェムバックス アンド カエル カンパニー,リミティド
(73)【特許権者】
【識別番号】514286848
【氏名又は名称】キム サン チェ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】キム サン チェ
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/167574(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/167298(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第2014-0089295(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0210036(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 1/00-15/90
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1~配列番号10及び配列番号12のうちの一つで表されるアミノ酸配列からなるペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
配列番号1~3、8~10、及び12のいずれか1つによって表されるアミノ酸配列からなるペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を含む、抗炎症性組成物。
【請求項3】
TNF‐αの減少により抗炎症活性を有する、請求項2に記載の抗炎症性組成物。
【請求項4】
関節リウマチ、乾癬、乾癬関節炎、アトピー性皮膚炎、潰瘍性大腸炎及びクローン病などの炎症性腸疾患、強直性脊椎炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス(SLE)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、敗血症、内毒素ショック、肝炎、及び第1型糖尿病からなる群から選ばれるいずれか一つ以上の炎症関連の疾患を予防又は治療するための、請求項2に記載の抗炎症性組成物。
【請求項5】
配列番号1、5及び8のいずれか1つによって表されるアミノ酸配列からなるペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を含む、身体器官の線維症の予防、治療又は改善用組成物。
【請求項6】
TGF‐βシグナル伝達抑制による身体器官の線維症の抑制活性を有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記線維症が、癌、抗がん剤の投与及び放射線の暴露からなる群から選ばれる一つ以上により誘導される、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記癌が、膵臓癌、大腸癌、胃癌、前立腺癌、非小細胞肺癌、乳房癌、黒色種及び卵巣癌からなる群から選ばれる、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
配列番号8、9及び12のいずれか1つによって表されるアミノ酸配列からなるペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を含む、創傷の治癒又は改善用組成物。
【請求項10】
コラーゲン合成を誘導することにより、創傷治癒の効能を有する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
表皮火傷、表皮裂傷、表皮創傷、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、創傷を治療又は改善するための、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
配列番号8、9及び12のいずれか1つによって表されるアミノ酸配列からなるペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を含む、皮膚状態の改善用組成物。
【請求項13】
前記皮膚状態は、皮膚の老化による皮膚のシワ、皮膚の乾燥、傷跡、弾力低下、及び皮膚のへこみのうちいずれか一つ以上である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
配列番号1、5及び8のいずれか1つによって表されるアミノ酸配列からなるペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を含む、抗癌組成物。
【請求項15】
請求項2~14のうちいずれか1項に記載の組成物、及び
前記組成物の投与量、投与経路、投与回数、及び適応症のうちの一つ以上を開示した指示書
を含む、抗炎症、抗線維症、抗癌治療、創傷治癒及び皮膚状態の改善のうちいずれか一つ以上の効能のために用いられるキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、新規ペプチド及びこれを含む組成物に関し、より詳しくは、新規ペプチドを含み、抗炎症、抗繊維化、創傷治癒及び抗癌治療に効果的な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍壊死因子(TNF)、特に、TNF‐αは、炎症性細胞から放出され、多様な細胞傷害反応、免疫反応、及び炎症反応を起こすものと知られている。TNF‐αは、多くの炎症疾患及び自己免疫疾患の発症や、遷延化に関わり、また血液中に放出されて、全身に作用すると、重症の敗血症及び敗血症性ショックを引き起こすことが知られている。このように、TNF‐αは、広範囲に生体の免疫系に関連している因子であるため、TNF‐αを阻害する薬剤の開発が活発に実施されている。TNF‐αは、不活性型として生合成され、プロテアーゼにより切断されることで活性型になる。この活性化に関与する酵素は、腫瘍壊死因子変換酵素(TACE)と呼ばれている。したがって、このTACEを阻害する物質は、TNF‐αから起因する疾患、病態、異常状態、状態がよくない、良くない自覚症状などを治療、改善、予防できる(KR2011-0060940A)。
【0003】
線維症は、線維芽細胞による細胞外マトリックスの非定常的生成、蓄積及び沈着が生じる疾患であって、多様な組織の構造及び機能を変える損傷(injury)又は炎症によるコラーゲンマトリックスの非定常的な蓄積を言う。線維症の発病位置に関係なく、線維症の殆どの病因学は、正常組織を置き換えるコラーゲンマトリックスの過剰な蓄積を含む。特に、腎臓、肝、肺、心臓、骨又は骨髄、及び皮膚に誘発された線維症は、臓器の機能不全をもたらし、最悪の場合には、死に至らしめる。前記線維芽細胞は、正常的状態では、細胞外マトリックスの前駆体を生成して、線維組織を形成する機能を有する。結合組織の細胞間物質である細胞外マトリックスは、フィブロネクチン、ラミニン、コンドロネクチン、コラーゲンのようなタンパク質の形態で存在する。
【0004】
一方、TGF-βは、線維芽細胞による細胞外マトリックスの非定常的生成、蓄積又は、細胞増殖、炎症反応、癌細胞の転移のように、非常に多様な役割を果し、多くの細胞シグナル伝達経路(Cellular Signaling Pathway)と標的が究明されている。従って、多くの疾病モデルにおいて、TGF-βに関する研究がなされており、最も活発な研究及び薬物の開発が進行されている分野としては、線維症関連疾患(Fibrotic diseases)と癌を挙げられる。TGF-βは、細胞増殖調節因子であって、細胞増殖を誘導又は制限して、癌、心臓疾患、糖尿を始めた様々な疾病の発病過程において重要な役割を果すことが報告されており、多様な生理活性などが報告されている。例えば、TGF-β合成の抑制(細胞増殖調節因子の産生抑制)、TGF-βアンタゴニスト(TGFレセプターを撹乱、シグナル伝達の妨害)、血小板由来増殖因子(Platelet-Derived Growth Factor、PDGF)アンタゴニスト(血管新生誘導因子抑制)、p38MAPキナーゼ抑制剤(kinase inhibitor)(細胞増殖シグナル伝達酵素抑制)、抗炎症(TNF-α及びMAPKの産生抑制)などの作用がある。従って、よりTGF-βを直接抑制するか、TGF-βが関与するシグナル伝達過程を遮断することができ、副作用もない新規の医薬組成物を開発できれば、線維化に誘発される各種の疾病及び老化の予防及び治療を行うことができる。
【0005】
創傷治癒の過程は、大きく炎症期(inflammation)、肉芽形成期(granulation)、上皮化期(epithelialization)、及び繊維増殖期(fibroplasia)の4段階に分かれる。炎症期では、必要な細胞(繊維芽細胞、上皮細胞など)を活性化する。次に、肉芽形成期では、繊維芽細胞がコラーゲンを堆積(deposit)し、これによりコラーゲンが増加するようになり、創傷が成熟(mature)になる。また、創傷部位の角質細胞(keratinocyte)の変化が生じるようになり、欠損部位の表皮(epidermis)が厚くなり、表皮下の基底細胞から表皮まで、上皮細胞(epithelial cells)が移動するようになる状態に進んでいき、これを上皮化期といい、上皮化期を経て、繊維増殖期に進んで、コラーゲン繊維(collagen fibers)が、コラーゲンマトリックス(collageneous matrix)を形成して、創傷の欠損部位を埋めるようになり、これが長期間行われた後、終了すると、治癒となることである。したがって、上皮細胞の増殖と、コラーゲンの生成もまた、創傷の治療及び抗老化作用の重要なメカニズムのうちの一つであると言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】KR2011-0060940A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、前述の背景の下で、新規ペプチドを開発することにより、TNF‐αの減少及びTGF‐βの抑制による抗炎症、抗繊維化、創傷治癒、及び抗癌などの効能があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
一側面において、本発明の目的は、抗炎症、抗繊維化、創傷治癒、及び抗癌に効能のある新規ペプチド及びこれを含む、疾病の予防及び治療用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様において、本発明は、配列番号1から配列番号12のうちの一つで表されるアミノ酸配列から構成されるペプチド、前記ペプチド配列のフラグメントであるペプチド、前記ペプチド配列又はこのフラグメントであるペプチドと80%以上の配列相同性を有するペプチド、又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0010】
一態様において、本発明は、前記ペプチド、又はその薬学的に許容可能な塩を含む抗炎症性組成物を提供する。
【0011】
一態様において、本発明による前記抗炎症性組成物は、TNF‐αの抑制により抗炎症活性を有することを特徴とする、抗炎症性組成物であってもよい。
【0012】
一態様において、本発明による前記抗炎症性組成物は、関節リウマチ、乾癬、乾癬関節炎、アトピー性皮膚炎、潰瘍性大腸炎及びクローン病などの炎症性腸疾患、強直性脊椎炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス(SLE)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、敗血症、内毒素ショック、肝炎、及び第1型糖尿病からなる群から選ばれるいずれか一つ以上の炎症関連の疾患を予防又は治療することを特徴とする組成物であってもよい。
【0013】
一態様において、本発明は、また前記ペプチド、又はその薬学的に許容可能な塩を含む、身体器官繊維症の予防、治療、又は改善用組成物を提供する。
【0014】
一態様において、本発明による前記身体器官繊維症の予防、治療、又は改善用組成物は、TGF‐βシグナル伝達の抑制により身体器官繊維症の抑制活性を有することを特徴とする組成物であってもよい。
【0015】
一態様において、本発明による前記身体器官繊維症の予防、治療、又は改善用組成物は、癌、抗がん剤の投与及び放射線の暴露からなる群から一つ以上選ばれることにより誘導される繊維症を、予防及び治療することを特徴とする組成物であってもよい。
【0016】
一態様において、本発明による前記身体器官繊維症の予防、治療、又は改善用組成物は、膵臓癌、大腸癌、胃癌、前立腺癌、非小細胞肺癌、乳房癌、黒色種及び卵巣癌からなる群から選ばれる、癌細胞組織の繊維症を予防又は治療することを特徴とする組成物であってもよい。
【0017】
一態様において、本発明は、また前記ペプチド、又はその薬学的に許容可能な塩を含む、創傷の治癒又は改善用組成物を提供する。
【0018】
一態様において、本発明による前記創傷の治癒又は改善用組成物は、コラーゲン合成の誘導により創傷治癒の効能を有することを特徴とする組成物であってもよい。
【0019】
一態様において、本発明による前記創傷の治癒又は改善用組成物は、皮膚のシワ、皮膚の乾燥、傷跡、皮膚のへこみ、表皮火傷、表皮裂傷、表皮創傷、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、皮膚の疾患又は悪化を予防又は治療することを特徴とする組成物であってもよい。
【0020】
本発明の一態様による組成物は、前記一つ以上のペプチド、又はその塩を含む、皮膚状態の改善用組成物であってもよい。一態様において、前記皮膚状態は、皮膚の老化による皮膚のシワ、皮膚の乾燥、弾力低下、及び皮膚のへこみのうちいずれか一つ以上であってもよい。一態様において、前記組成物は、化粧料組成物であってもよい。
【0021】
本発明の一態様による組成物は、一つ以上の前記ペプチド、又はその塩を含む、抗癌組成物であってもよい。
【0022】
一態様において、本発明は、また前記ペプチド、又はその薬学的に許容可能な塩を含む組成物、及び前記組成物の投与量、投与経路、投与回数、及び適応症のうちの一つ以上を開示した指示書を含む、抗炎症、抗繊維化、抗癌、創傷治癒、及び皮膚状態の改善のうちいずれか一つ以上の効能のために用いられるキットを提供する。
【0023】
一態様において、本発明は、また前記ペプチド、又はその薬学的に許容可能な塩を含む組成物を、抗炎症、抗繊維化、抗癌、創傷治癒、及び皮膚状態の改善のうちいずれか一つ以上の効果を必要とする対象に投与することを含む、炎症、繊維症、癌又は創傷の改善、予防又は治療方法、又は皮膚状態の改善方法を提供する。
【0024】
一態様において、本発明は、前記ペプチド、又はその薬学的に許容可能な塩の新規な用途を提供する。一態様において、前記用途は、炎症、繊維症、癌又は創傷の改善、予防及び治療であってもよい。別の態様において、前記用途は、皮膚状態の改善用であってもよい。一態様において、前記皮膚状態は、皮膚の老化による皮膚のシワ、皮膚の乾燥、弾力低下、及び皮膚のへこみのうちいずれか一つ以上であってもよい。例えば、化粧品組成物としての用途であってもよい。
【0025】
一態様において、本発明は、炎症、繊維症、癌又は創傷の改善、予防又は治療用ペプチド又はその塩であってもよい。
【発明の効果】
【0026】
一態様において、本発明による配列番号の配列を有するペプチドは、抗炎症、抗繊維化、創傷治癒及び抗癌の効能を有することにより、炎症、繊維化、創傷、及び癌関連の疾患の予防又は治療方法を提供すると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】LPS処理のTHP-1細胞株に、新規ペプチドPep‐WH‐1からPep‐WH‐12を、各濃度別(1、5、10μM)に処理した後、TNF‐αのmRNA発現量を、RT‐qPCRにより測定した後、これを抑制率として示したグラフである。
図2】LPSで炎症を誘導したTHP-1細胞株に、新規ペプチドPep‐WH‐1からPep‐WH‐12を、各濃度別(0.05、0.5、5μM)に投与した実験群と、何の処理もしていない対照群及びエストラジオール(E2)を処理した陽性対照群とに分けて処理した後、TNF‐αの量をELISAにより測定し、これを示したグラフである。
図3】HepG2細胞株に、何の処理もしていない対照群、TGF‐βのみを処理した繊維症対照群、TGF‐β及びSB43152を処理した陽性対照群、新規ペプチドPep‐WH‐1からPep‐WH‐4を、各濃度別(1及び10μM)に処理した実験群に分けて処理した後、繊維症マーカーである、phosphor‐Smad2/3、Smad2/3と、参照遺伝子GAPDHとの発現を、ウェスタンブロッティング及びイメージ分析器により測定して示した、写真(上)及びグラフ(下)である。
図4】HepG2細胞株に、何の処理もしていない対照群、TGF‐βのみを処理した繊維症対照群、TGF‐β及びSB43152を処理した陽性対照群、新規ペプチドPep‐WH‐5からPep‐WH‐8を、各濃度別(1及び10μM)に処理した実験群に分けて処理した後、繊維症マーカーである、phosphor‐Smad2/3、Smad2/3と、参照遺伝子GAPDHとの発現を、ウェスタンブロッティング及びイメージ分析器により測定して示した、写真(上)及びグラフ(下)である。
図5】HepG2細胞株に、何の処理もしていない対照群、TGF‐βのみを処理した繊維症対照群、TGF‐β及びSB43152を処理した陽性対照群、新規ペプチドPep‐WH‐9からPep‐WH‐12を、各濃度別(1及び10μM)に処理した実験群に分けて処理した後、繊維症マーカーである、phosphor‐Smad2/3、Smad2/3と、参照遺伝子GAPDHとの発現を、ウェスタンブロッティング及びイメージ分析器により測定して示した、写真(上)及びグラフ(下)である。
図6】SDラットに創傷を誘導した、創傷誘導の動物モデルに、創傷の直後及び2日おきに、新規ペプチドPep‐WH‐8を、100μg/mlの濃度で50μlずつ毎回処理し、その直後(0日)及び、1、3、5、7、10、11日毎に、創傷の面積を、何の処理もしていない対照群と共に測定して示したグラフである。
図7】SDラットに創傷を誘導した、創傷誘導の動物モデルに、創傷の直後及び2日おきに、新規ペプチドPep‐WH‐9を、100μg/mlの濃度で50μlずつ毎回処理し、その直後(0日)及び、1、3、5、7、10、11日毎に、創傷の面積を、何の処理もしていない対照群と共に測定して示したグラフである。
図8】SDラットに創傷を誘導した、創傷誘導の動物モデルに、創傷の直後及び2日おきに、新規ペプチドPep‐WH‐11を、100μg/mlの濃度で50μlずつ毎回処理し、その直後(0日)及び、1、3、5、7、10、11日毎に、創傷の面積を、何の処理もしていない対照群と共に測定して示したグラフである。
図9】SDラットに創傷を誘導した、創傷誘導の動物モデルに、創傷の直後及び2日おきに、新規ペプチドPep‐WH‐12を、100μg/mlの濃度で50μlずつ毎回処理し、その直後(0日)及び、1、3、5、7、10、11日毎に、創傷の面積を、何の処理もしていない対照群と共に測定して示したグラフである。
図10】SDラットに創傷を誘導した、創傷誘導の動物モデルに、創傷の直後及び2日おきに、新規ペプチドPep‐WH‐8、Pep‐WH‐9、Pep‐WH‐11、Pep‐WH‐12を、100μg/mlの濃度で50μlずつ毎回処理した実験群と、何の処理もしていない対照群とにおいて、3日目と5日目に、それぞれ2匹ずつ生検を実施し、組織をマッソントリクローム(masson trichrome)染色を行い、コラーゲン生成の程度を、平均蛍光強度として測定して示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、多様な変換を加えてもよく、様々な実施例を有してもよい。以下、本発明をより詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の実施形態に限定することではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変換、均等物ないし代替物を含むことを理解すべきである。本発明を説明するにあたって、関連の公知技術に関する具体的な説明が、本発明の要旨を曖昧にする恐れがあると判断する場合、その詳細な説明を省略する。
【0029】
本発明の一態様において、配列番号1から配列番号12のうちの一つの配列から構成される新規ペプチドを開示する。
【0030】
本明細書に開示されたペプチドは、配列番号1から12のうちの一つである新規ペプチドのそれぞれと80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の配列相同性を有するペプチドを含んでもよい。また、本明細書に開示されたペプチドは、配列番号1から12のうちの一つで表されるペプチドと、1個以上のアミノ酸、2個以上のアミノ酸、3個以上のアミノ酸、4個以上のアミノ酸、5個以上のアミノ酸、6個以上のアミノ酸又は7個以上のアミノ酸が変化されたペプチドとを含んでもよい。
【0031】
本発明の一態様において、アミノ酸の変化は、ペプチドの物理化学的特性を変更させる性質に属する。例えば、ペプチドの熱安定性を向上し、気質特異性を変更させ、最適のpHを変化させるなどのアミノ酸の変化が行われてもよい。
【0032】
本明細書において、「アミノ酸」とは、自然にペプチドに統合される22個の標準アミノ酸のみならず、D-異性体及び変形されたアミノ酸を含む。これにより、本発明の一態様において、ペプチドは、D-アミノ酸を含むペプチドであってもよい。一方、本発明の他の態様において、ペプチドは、翻訳後修飾(post-translational modification)の非標準アミノ酸などを含んでもよい。翻訳後修飾の例には、リン酸化(phosphorylation)、グリコシル化(glycosylation)、アシル化(acylation)(例えば、アセチル化(acetylation)、ミリストイル化(myristoylation)及びパルミトイル化(palmitoylation)を含む)、アルキル化(alkylation)、カルボキシル化(carboxylation)、ヒドロキシル化(hydroxylation)、糖化反応(glycation)、ビオチニル化(biotinylation)、ユビキチニル化(ubiquitinylation)、化学的性質の変化(例えば、ベータ‐除去脱アミド化、脱アミド化)及び構造的変化(例えば、二黄化物ブリッジの形成)が含まれる。また、ペプチドコンジュゲートを形成するための架橋剤(crosslinker)との結合過程で起こる化学反応により生じるアミノ酸の変化、例えば、アミノ基、カルボキシ基、又は側鎖における変化のようなアミノ酸の変化が含まれる。
【0033】
本明細書に開示されたペプチドは、自然そのままの供給源から、同定及び分離された野生型ペプチドであってもよい。一方、本明細書に開示されたペプチドは、配列番号1のフラグメントであるペプチドと比較して、一つ以上のアミノ酸が、置換、欠失及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含む、人工変異体であってもよい。人工変異体のみならず、野生型ポリペプチドにおけるアミノ酸の変化は、タンパク質のフォールディング(folding)及び/又は活性に有意義の影響を及ばないアミノ酸の保存性置換を含む。保存性置換の例は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン及びヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸及びアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミン及びアスパラギン)、疎水性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン及びメチオニン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン)、及び小さいアミノ酸(グリシン、アラニン、セリン及びトレオニン)の群の範囲内にある。一般に、特異的活性を変更させないアミノ酸の置換が、本分野に公知されている。最も頻繁に生じる交換は、Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Tyr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、及びAsp/Gly、そしてこれらと逆のものである。保存的置換の他の例は、以下の表に示している。
【0034】
【表1】
【0035】
ペプチドの生物学的特性における実在的な変形は、(a)置換領域内のポリペプチド骨格の構造、例えば、シート又は螺旋の立体構造の保持におけるこれらの効果、(b)標的部位での前記分子の電荷又は疎水性の保持におけるこれらの効果、又は(c)側鎖のバルクの保持におけるこれらの効果が、相当に異なる置換部を選択することにより行われる。天然の残基は、通常の側鎖の特性に基づいて、次のグループに分けられる:
(1) 疎水性:ノルロイシン、met、 ala、val、leu、ile、
(2) 中性親水性:cys、ser、thr、
(3) 酸性: asp、glu、
(4) 塩基性:asn、gln、his、lys、arg、
(5) 鎖の配向に影響を及ぼす残基:gly、 pro、及び
(6) 芳香族:trp、tyr、phe。
【0036】
非保存的置換は、これらの類型のうちの一つの構成員を、また他の類型に交換することにより行われる。ペプチドの適当な立体構造の保持と関連のないいかなるシステイン残基も、一般にセリンに置換されて、前記分子の酸化的安定性を向上し、異常な架橋結合を防ぐことができる。逆に言えば、システイン結合(複数の結合)を前記ペプチドに加え、その安定性を向上することができる。
【0037】
ペプチドの他の類型のアミノ酸変異体は、抗体のグリコシル化パターンが変化されたものである。変化とは、ペプチドで見付けられた一つ以上の炭水化物残基の欠失及び/又はペプチド内に存在しない一つ以上のグリコシル化部位の付加を意味する。
【0038】
ペプチドのグリコシル化は、典型的に、N-結合されるか、O-結合されるものである。N-結合されるとは、炭水化物残基が、アスパラギン残基の側鎖に付着したものを言う。トリペプチド配列のアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-トレオニン(ここで、Xは、プロリンを除いた任意のアミノ酸である)は、炭水化物残基を、アスパラギン側鎖に酵素的付着するための認識配列である。従って、これらのトリペプチド配列のうちの一つが、ポリペプチドに存在することにより、潜在的なグリコシル化部位が生成される。O-結合されたグリコシル化は、糖N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース及びキシロースのうちの一つを、ヒドロキシアミノ酸、最も通常的には、セリン又はトレオニンに付着することを意味するが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンを用いてもよい。
【0039】
ペプチドへのグリコシル化部位の付加は、前に挙げられたトリペプチド配列の一つ以上を含有するようにアミノ酸配列を変化することで、便宜に行われる(N-結合されたグリコシル化部位の場合)。このような変化は、一つ以上のセリン又はトレオニン残基を、最初の抗体の配列に付加するか、これらの残基で置換することにより行われてもよい(O-結合されたグリコシル化部位の場合)。
【0040】
また、本発明の一態様による配列番号1から12のペプチドは、細胞内毒性が低く、生体内安定性が高いという長所を有する。一態様による本発明における配列番号1から12のペプチドは、各々以下のようなアミノ酸8個の長さのペプチドである。
【0041】
配列番号1から12に記載されたペプチドは、以下の表2の通りである。以下の表2における「名称」は、ペプチドを区別するために命名したものである。
【0042】
【表2】
【0043】
本発明の一態様では、配列番号1から12のうちの一つのアミノ酸配列を含むペプチドを一つ以上、有効成分として含む薬学的組成物を提供する。
【0044】
本発明の一態様による炎症、繊維化、創傷及び癌関連の疾患の予防及び治療用薬学組成物は、一側面では、配列番号1から12のうちの一つのペプチドを、0.01mg/mL~0.1mg/mL、1mg/mL、10mg/mL、及び100mg/mLの含量で含んでもよいが、容量による効果の差を示す場合、これを適切に調整することができる。前記範囲又はそれ以下の範囲で含む場合、本発明の意図した効果を奏するのに適切であるだけではなく、組成物の安定性及び安全性の両方を満たすことができ、費用対比効果の観点からも、前記範囲で含むことが適切であり得る。
【0045】
本発明の一態様による組成物は、ヒト、イヌ、トリ、ブタ、ウシ、ヤギ、ギニアピグ又はサルを含む全ての動物に適用できる。
【0046】
本発明の一態様による薬学組成物は、経口、直腸、経皮、静脈内、筋肉内、腹腔内、骨髄内、硬膜内又は皮下内に投与できる。
【0047】
経口投与のための剤形は、錠剤、丸剤、軟質又は硬質のカプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤、又は乳濁剤であってもよいが、これに限定されない。非経口投与のための剤形は、注射剤、点滴剤、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、懸濁剤、乳剤、坐剤、パッチ、又は噴霧剤であってもよいが、これに限定されない。
【0048】
本発明の一態様による薬学組成物は、必要に応じて、希釈剤、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩解剤、緩衝剤、分散剤、界面活性剤、着色剤、香料、又は甘味剤などの添加剤を含んでもよい。本発明の一態様による薬学組成物は、当業界の通常的な方法により製造できる。
【0049】
本発明の一態様による薬学組成物の有効成分は、投与しようとする対象の年齢、性別、体重、病理状態及びその重症度、投与経路又は処方者の判断によって異なる。このような因子に基づいた適用量の決定は、当業者のレベル内にあり、この一日投与量は、例えば、0.1μg/kg/日~100g/kg/日、具体的には、10μg/kg/日~10g/kg/日、より具体的には、100μg/kg/日~1g/kg/日、さらにより具体的には、500μg/kg/日~100mg/kg/日となってもよいが、容量による効果の差を示す場合、これを適切に調整してもよい。本発明の一態様による薬学組成物は、1日1回~3回投与してもよいが、これに限定されない。
【0050】
本発明の一態様による組成物の製形は、特に限定されないが、例えば、錠剤、顆粒剤、粉末剤、液剤、固形製剤などに製形化することができる。各製剤は、有効成分の他に、当該分野において通常用いられる成分を、製形又は使用目的に応じて、当業者が容易に適宜選択して配合でき、他の原料と同時に適用する場合、相昇効果を奏することができる。
【0051】
本発明の一態様によるペプチドを含む組成物は、関節リウマチ、乾癬、乾癬関節炎、アトピー性皮膚炎、潰瘍性大腸炎及びクローン病などの炎症性腸疾患、強直性脊椎炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス(SLE)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、敗血症、内毒素ショック、肝炎、及び第1型糖尿病からなる群から選ばれるいずれか一つ以上の炎症関連の疾患を予防又は治療する薬学的組成物として使用できる。
【0052】
本発明の一態様によるペプチドを含む組成物は、癌、抗がん剤の投与及び放射線の暴露からなる群から一つ以上選ばれることにより誘導される繊維症を予防及び治療する薬学的組成物として使用できる。
【0053】
本発明の一態様によるペプチドを含む、繊維症の予防及び治療用薬学的組成物は、膵臓癌、大腸癌、胃癌、前立腺癌、非小細胞肺癌、乳房癌、黒色種及び卵巣癌からなる群から選ばれる、癌細胞組織の繊維症を抑制する効果を示すことができる。
【0054】
本発明の一態様によるペプチドを含む組成物は、皮膚のシワ、皮膚の乾燥、皮膚のへこみ、表皮火傷、表皮裂傷、表皮創傷、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、皮膚の疾患又は悪化の予防又は治療及び改善のための薬学的組成物として効果を示し、使用できる。
【0055】
本発明の一態様によれば、前記ペプチド又はその塩を含む化粧品組成物が提供される。前記化粧品組成物は、化粧品学又は皮膚科学的に許容可能な媒質又はベースを含有する。これは、局所適用に適合な全ての剤形に、例えば、溶液、ゲル、固体、練り無水生成物、水相に油相を分散して得たエマルジョン、油相に水相を分散して得たエマルジョン、マルチエマルジョン、懸濁液、ミクロエマルジョン、ミクロカプセル、微細顆粒球、イオン型(リポソーム)及び非イオン型の小嚢分散剤、フォーム(foam)、圧縮の推進剤をさらに含有するエアゾール又はパッチの形態として使用できる。これらの組成物は、当該分野における通常の方法に従って製造できる。
【0056】
前記化粧品組成物は、前記の物質の他に、主な効果を損なわない範囲内で、好ましくは、主な効果に相乗効果を与えられる他の成分を含有するものも構わなく、本発明の有効成分の以外にも、他の成分をその他の化粧品組成物の剤形又は使用目的に応じて、当業者が容易に適宜選定して配合できる。例えば、本発明の化粧品組成物は、前記有効成分と共に、必要に応じて、通常化粧品組成物に配合される他の成分を含んでもよく、この例として、油脂成分、保湿剤、エモリエント剤、界面活性剤、有機及び無機顔料、有機粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、安定化剤、増粘剤、グリセリン、pH調整剤、アルコール、色素、香料、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、精製水などを挙げられる。前記化粧品組成物に含まれ得るその他の配合成分は、これらに限定されず、また前記成分の配合量は、本発明の目的及び効果を損なわない範囲内で可能である。
【0057】
前記化粧品組成物の剤形は、特に制限されず、目的に合わせて適切に選択できる。例えば、石鹸型製剤、柔軟化粧水、栄養化粧水、エッセンス、栄養クリーム、マッサージクリーム、パック、ジェル、メイクアップベース、ファウンデーション、パウダー、リップスティック、パッチ、噴霧剤、アイクリーム、アイエッセンス、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジン ウォーター、メイク落とし、ヘアシャンプー、ヘアコンディショニング、ヘアトリートメント、ヘアエッセンス、ヘアローション、頭皮ヘアトニック、頭皮エッセンス、ヘアジェル、ヘアスプレー、ヘアパック、ボディローション、ボディクリーム、ボディオイル、及びボディエッセンスからなる群から選ばれた一つ以上の剤形と製造できるが、これに制限されない。
【0058】
本明細書による食品組成物の剤形は、特に限定されないが、例えば、錠剤、顆粒剤、粉末剤、ドリンク剤のような液剤、キャラメル、ゲル、バーなどに剤形化することができる。各剤形の食品組成物は、有効成分の他に、当該分野において通常用いられる成分を、剤形又は使用目的に応じて、当業者が容易に適宜選定して配合でき、他の原料と同時に適用する場合、相乗効果を奏することができる。
【0059】
本明細書による食品組成物において、前記有効成分の投与量の決定は、当業者のレベル内にあり、この1日投与容量は、例えば、0.1mg/kg/日~5000mg/kg/日、より具体的には、50mg/kg/日~500mg/kg/日となってもよいが、これに制限されず、投与しようとする対象の年令、健康状態、合併症など、様々な要因によって異なる。
【0060】
本明細書による食品組成物は、例えば、チューインガム、キャラメル製品、キャンディー類、氷菓類、お菓子類などの各種の食品類、清涼飲料、ミネラルウォーター、アルコール飲料などの飲料製品、ビタミンやミネラルなどを含んだ健康機能性食品類であってもよい。
【0061】
また、本発明の一態様による食品組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護コロイド、増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などを含んでもよい。その他に、本発明の機能性食品組成物は、天然の果物ジュース及び果物ジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含んでもよい。このような成分は、独立的に又は組み合わせて使用してもよい。このような添加剤の比率は、あまり重要でないが、本発明の組成物100重量部当り0~約20重量部の範囲で含むのが一般的である。
【0062】
本明細書において用いられた用語は、特定の具体例を説明するための目的のみで意図されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。名詞の前に個数が省略された用語は、数量を制限するものではなく、言及された名詞の物品が、一つ以上存在することを示すものである。用語「含む」、「有する」、及び「含有する」とは、包括的意味と解釈される(即ち、「含まれるが、これに限定されない」という意味)。
【0063】
数値の範囲を言及するのは、単にその範囲内に属するそれぞれの別個の数値を、個別的に言及することに代わる容易な方法であるためであり、それではないと明示されていない限り、各数値は、個別的に明細書に言及されているように本明細書に適用される。全ての範囲の限界値は、その範囲内に含まれ、独立的に組み合わせ可能である。
【0064】
本明細書に述べられる全ての方法は、特に明示されているか、文脈により明白に矛盾しない限り、適切な順序で行われ得る。いずれか一つの実施例及び全ての実施例又は例示的言語(例えば、「~のような」)を使用するのは、特許請求の範囲に含まれていない限り、単に本発明の記載を容易にするためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本明細書のいかなる言語も、請求されていない構成要素を、本発明の実施に必須的なものであると解釈してはいけない。特に定めのない限り、本明細書に用いられる技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者により通常理解されるような意味を有する。
【0065】
本発明の好適な具体例は、本発明を実行するために、発明者に知られた最適のモードを含む。好適な具体例の変形は、先行する記載に触れれば、当業者に明白になるであろう。本発明者らは、当業者がそのような変形を適切に利用することを期待し、発明者らは、本明細書の記載とは異なる方式で、本発明が実施されることを期待する。従って、本発明は、特許法により許容されているように、添付の特許請求の範囲に述べられた発明の要旨の均等物及び全ての変形を含む。さらに、全ての可能な変形内で、前述の構成要素のいかなる組み合わせも、ここで異なって明示するか、文脈上、明白に矛盾しない限り、本発明に含まれる。本発明は、例示的な具体例を参照して、具体的に開示し、記述されたが、当業者は、添付の特許請求の範囲により定められる発明の思想及び範囲を逸脱することなく、形態及びディテールにおいて多様な変化が可能であることがよく分かる。
【0066】
以下、実施例及び実験例をもって、本発明の構成及び効果をより詳細に説明する。しかし、以下の実施例及び実験例は、本発明の理解を助けるために例示の目的にのみ提供されたものに過ぎず、本発明の範疇及び範囲を限定するものではない。
【0067】
実施例1:新規ペプチドの合成
配列番号1から12の新規ペプチド(以下、「Pep-WH-1からPep-WH-12」という)を、従来知られている固相ペプチド合成法(solid phase peptide synthesis, SPPS)に従って製造した。具体的に、ペプチドは、ASP48S(Peptron, Inc., 大韓民国大田)を用いて、Fmoc固相合成法でC-末端からアミノ酸を一つずつカップリングすることにより合成した。次のように、ペプチドのC-末端の一番目のアミノ酸が、レジンに付着されたものを用いた。例えば、以下の通りである。
【0068】
NH-Lys(Boc)-2-クロロ-トリチルレジン
NH-Ala-2-クロロ-トリチルレジン
NH-Arg(Pbf)-2-クロロ-トリチルレジン
ペプチド合成に用いた全てのアミノ酸原料は、N-末端がFmocで保護(protection)され、残基は全て酸で除去される、Trt、Boc、t-Bu(t-ブチルエステル)、Pbf(2、2、4、6、7-ペンタメチルジヒドロ-ベンゾフラン-5-スルフォニル)などで保護されたものを用いた。例えば、次の通りである。
【0069】
Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Arg(Pbf)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Leu-OH、Fmoc-Ile-OH、Fmoc-Phe-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Thr(tBu)-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Trp (Boc)-OH、Fmoc-Met-OH、Fmoc-Asn(Trt)-OH、Fmoc-Tyr(tBu)-OH、Fmoc-Ahx-OH、Fmoc-Gln-OH、Trt-メルカプト酢酸
カップリング試薬(Coupling reagent)としては、HBTU[2-(1H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1、1、3、3-テトラメチルアンモニウムヘキサフルオロホスファート]/HOBt[N-ヒドロキシベンゾトリアゾル]/NMM[4-メチルモルホリン]を用いた。Fmocの除去は、20%のDMF中のピペリジン (piperidine in DMF)を用いた。合成されたペプチドを、レジンから分離及び残基の保護基の除去には、切断カクテル(Cleavage Cocktail)[TFA (トリフルオロ酢酸)/TIS(トリイソプロピルシラン)/EDT(エタンジチオール)/HO=92.5/2.5/2.5/2.5]を用いた。
【0070】
アミノ酸の保護基が結合された出発アミノ酸が、固相支持体に結合されている状態を利用して、ここに当該アミノ酸を各々反応させ、溶媒で洗浄した後、脱保護する過程を繰り返すことにより、各ペプチドを合成した。合成されたペプチドを、レジンから切り出した後、HPLCで精製し、LC/MSで合成の可否を確認した後、凍結乾燥した。
【0071】
本実施例に用いられたペプチドへの高速液体クロマトグラフィーの結果、全てのペプチドの純度は、95%以上であった。
【0072】
ペプチドPep-WH-1の製造についての具体的な過程は、以下の通りである。
【0073】
1)カップリング
NH-A-2-クロロ-トリチルレジンに、保護されたアミノ酸(8当量)と、カップリング試薬HBTU(8当量)/HOBt(8当量)/NMM(16当量)とをDMFに溶解して加えた後、常温で2時間反応させ、DMF、MeOH 、DMFの順に洗浄した。
【0074】
2)Fmoc脱保護
20%のDMF中のピペリジン(piperidine in DMF)を加えて、常温で5分間2回反応させ、DMF、MeOH 、DMFの順に洗浄した。
【0075】
3)前記1)と2)の反応を繰り返して行い、ペプチドの基本骨格NH- A-L-S(tBu)-S(tBu)-R(Pbf)L-R(Pbf)-A-2-クロロ-トリチルレジンを作製した。
【0076】
4)切断(Cleavage):合成が完了されたペプチドレジンに、切断カクテル(Cleavage Cocktail)を加えて、レジンからペプチドを分離した。
【0077】
5)得られた混合物に、冷却ジエチルエーテルを加えた後、遠心分離して得られたペプチドを沈殿した。
【0078】
6)以上の過程から得られた粗ペプチドを、Prep HPLCで分離精製した。カラムは、Vydac Everest C18 column(250mmx22mm、10μm)を用いた。溶出液(Eluent)は、0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸が含有された水-アセトニトリル線形勾配(10%~75%(v/v)のアセトニトリル)を用いた。
【0079】
7)分離したペプチドが、望みの配列で合成されているかを、LC/MS(Agilent HP1100 series)により確認した。
【0080】
8)分子量が確認されたペプチドを、再び分析用(analytical)HPLCにより、95%以上の純度で分離精製されたことを確認し、凍結乾燥の過程を経て白色のパウダーとして製造した。
【0081】
ペプチドPep-WH-2からPep-WH-12の11個のペプチドも、前記 Pep-WH-1の製造のような方法に基づいて、ペプチドの基本骨格のみが、各ペプチドの該当配列に合わせて置換されて製造した。
【0082】
実施例2:新規ペプチドの抗炎症活性
新規ペプチドPep-WH-1からPep-WH-12の抗炎症活性を検証するために、LPS(リポ多糖、Lipopolysaccharide)で炎症を誘導した細胞株において、炎症活性を示すサイトカインと知られているTNF‐αの発現程度を、RT‐qPCRと、ELISA法とを用いて、各ペプチド別に測定した。
【0083】
実験試薬及び材料の用意
ヒト急性単球性白血病(Human acute monocytic leukemia)細胞株であるTHP-1細胞(American Type Culture Collection(ATCC), Manassas, VA, USA)を用いて実験を行った。THP-1を、96ウェルプレートにウェル当り1x10セルとなるように、RPMI1640倍地に浮遊し、24時間培養した。この際、マクロファージ(macrophage)への分化のために、PMA(phorbol 12-myristate 13-acetate, Sigma社製)を処理した。
【0084】
リポ多糖(LPS、Sigma社製)は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で溶解して用い、PMAは、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解して用いた。
【0085】
ペプチドPep-WH-1からPep-WH-12は、実施例1での合成法に従い、Peptron(大韓民国大田)で合成して用いた。
【0086】
実験方法
RT‐qPCR試験方法は、以下の通りである。THP-1細胞を、6ウェルプレートに2x10/ウェルでプレーティングした後、100ng/ml濃度のPMAを、24時間処理し、マクロファージに分化した。培地(Media)を除去し、分化したTHP-1細胞を、無血清培地(SFM、serem-free media)で2回洗浄した後、10ng/mlのLPSと、1、5、10μMの濃度別の各新規ペプチドを共に処理して、6時間培養した。RNeasy(登録商標) Plus Mini Kit(Qiagen社製)を用いて、RNAを抽出し、抽出したRNAを定量した後、Reverse Transcription system(商品名、Promega社製)を用いて、cDNA合成を行った。CFX96‐Real-Time System(商品名、Bio-rad社製)を用いて、RT‐qPCRを行い、TNF‐αのmRNA発現を分析し、参照遺伝子(Reference gene)としてGAPDHを用いた。PCR条件は、40サイクル(95℃で15秒、55℃で30秒、72℃で30秒)であり、用いたプライマーの配列は、以下の表3の通りである。
【0087】
【表3】
【0088】
ELISA試験方法は、以下の通りである。ATCCから分譲された単核(monocyte)細胞株であるTHP-1を継代培養して、P3段階で用意し、細胞株をウェル‐プレートに分注し、PMAを処理してマクロファージに分化した。分化した細胞にLPSを処理して、炎症反応を誘導(TNF‐α生成を誘導)し、先の細胞に新規ペプチドを濃度別(0.05、0.5、5μM)に処理して、TNF‐αの量をELISAで測定した。無炎症群と、完全炎症群とに対する相対値を算定し、エストロゲン(E2)陽性対照群と、一般対照群とに、新規ペプチドを処理していない無処理細胞株を設定して比較した。E2は、THP‐1でTNF‐αの生成を抑制するステロイドと知られている。
【0089】
統計処理
全てのデータは、平均±標準誤差(mean±S.E.M.)で示し、統計処理は、ANOVA検定により行った。SigmaStat統計プログラムを用い、統計学的分析は、クラスカルワォリス検定(Kruskal-Wallis test)及びマンホイットニー検定(Mann-Whitney U-test)を用いて分析した。また、各群間の比較は、死後検定(Tukey test)法を行い、p値が0.05未満の場合、統計学的に有意であると判定した。
【0090】
実験結果及び分析
前記実験方法を通じて測定した結果は、以下の通りである。
【0091】
RT‐qPCRにより、THP-1細胞においてLPSでLPS誘導の炎症反応を起こしたものに対して、新規ペプチドを各々の濃度(1、5、10μM)別に処理したとき、TNF‐αのmRNA発現量を通じて、各ペプチドの抗炎症活性を示すTNF‐αのmRNA抑制率を比較した結果、10μMでは、全てのペプチドが50%以上の抗炎症活性を濃度依存的に示し、処理濃度のうち最も低い1μMでは、Pep‐WH‐11が最も高い抗炎症活性を示した(図1を参照)。
【0092】
ELISAにより、新規ペプチドの抗炎症活性を、THP-1細胞のTNF‐α生成の抑制能として確認した結果、処理していない無処理対照群(None)に比べて、新規ペプチドが、0.5μMの濃度で新規ペプチドを処理する場合、全ての場合において、低いTNF‐αの発現程度、即ち、炎症誘導の活性を見せた(図2を参照)。陽性対照群として用いられたE2と比較したとき、新規ペプチドのうち、Pep‐WH‐8、Pep‐WH‐9、Pep‐WH‐11及びPep‐WH‐12が、全ての濃度でより低い炎症誘導の活性を示した。
【0093】
前記二つの実験の結果から、本発明による新規ペプチドは、TNF‐αの抑制により現れる抗炎症活性を示すことが分かる。TNF‐αの抑制に関する実験は、全体の炎症抑制効果の立証に最も基礎的な実験と知られており、これにより本発明の新規ペプチドは、全般的な抗炎症効果を有することが分かる。
【0094】
実施例3:新規ペプチドの抗繊維化活性
新規ペプチドPep‐WH‐1からPep‐WH‐12の繊維化症の主な原因と思われるTGF‐βの抑制効能を確認するために、HepG2細胞株において、TGF‐βシグナル伝達(signaling)抑制作用を確認する実験を、以下のように行った。
【0095】
実験試薬及び材料の用意
本実験に用いた試薬及び材料は、以下の通りである。パウダー状の新規ペプチドは、0.2μmのフィルターでろ過された蒸留水(0.2μm filtered sterile water)に溶解した後、-70℃にアリコート(aliquot)して保管し、これを使用時に溶かして用いた。細胞株は、HepG2(ATCC HB‐8065; American Type Culture Collection)を用い、組換えヒト(human)TGF-βを、4mMのHClに溶解して、10μg/mlのストック(stock)と調製して用いた。陽性対照群として用いるSB431542(Sigma社製)は、10mMストックと調製して用いた。
【0096】
細胞株の用意
2x10個のHepG2細胞(ATCC HB‐8065)を、60mmペトリディッシュ(petri-dish)に播種(seeding)した後、COインキュベーターで16時間培養した。その後、無血清培地(serum-free media, SFM)に培地交換し、さらに24時間培養した。次に、10ng/ml濃度のTGF-β1に培地交換し、さらに新規ペプチドを濃度別に(1、10μM)同時処理して、72時間培養した。各新規ペプチド処理群は、さらにCOインキュベーター中、37℃で1時間培養した。
【0097】
実験方法
新規ペプチドの抗繊維化活性を測定するために、TGF-βシグナル伝達抑制程度を測定するための実験は、ウェスタンブロッティング(Western Blotting)を用い、具体的な実験方法は、以下の通りである。
【0098】
ペプチド処理を行った細胞を、PBSで2回洗浄した後、セルスクレーパー(cell scraper)で1.5mLの遠心分離管(EPチューブ)に集め、遠心分離機(1000rpm、4℃、2分)で上層液を除去した後、RIPAされたHepG2細胞に100μLずつ加える。氷冷の下で40分間培養(incubation)した後、10分毎に振盪混合し(vortex, micro-centrifugeは、予め4℃に冷却)、1ml注射器を用いて、試料を40~50回混ぜる。最終に、13,000rpmで、15分間遠心分離を行い、上層液を用いる。
【0099】
30μgのタンパク質を、8%SDS-PAGE(sodium dodecyl sulfate-polyacrylamide gel electrophoresis)を行い、PVDF膜(polyvinylidene difluoride membranes、Millipore)に移る(transfer)。PVDF膜を、5%脱脂牛乳(skim milk)でブロッキング(blocking)し、特定の一次抗体(primary antibodies)と培養する。この実験に用いられた抗体は、以下の通りである。Smad2/3(60, 52 kDa, 5% BSA 1:1000, #3102, Cell Signaling)、pSmad2/3(Cell Signaling #3102)、GAPDH(37 kDa, 5% BSA 1:1000, #2118, Cell Signaling)。次に、PVDF膜を、TBST(Tris-buffered saline containing 0.1% Tween-20)で洗浄した後、HRP接合抗ウサギ抗体(HRP-conjugated anti-rabbit antibody、Jackson Immuno Research Laboratories社製)と反応させる。その後、ECL検出(detection, Amersham Pharmacia Biotech)を行い、得られたイメージは、イメージ分析器(GEヘルスケア社製のImage Quant LAS 4000)で分析した。
【0100】
TGF‐β抑制能を測定するために、TGF‐βシグナル伝達活性マーカーとして、pSmad2/3、Smad2/3を用い、電気泳動の際、参照群としてGAPDHを用いた。前記TGF‐βシグナル伝達活性マーカーは、TGF‐βが抑制されるほど、高い濃度で発現されるものを用いた。
【0101】
統計処理
全てのデータは、平均±標準誤差(mean±S.E.M.)で示し、統計処理は、ANOVA検定により行った。SigmaStat統計プログラムを用い、統計学的分析は、クラスカルワォリス検定(Kruskal-Wallis test)及びマンホイットニー検定(Mann-Whitney U-test)を用いて分析した。また、各群間の比較は、死後検定(Tukey test)法を行い、p値が0.05未満の場合、統計学的に有意であると判定した。
【0102】
実験結果及び分析
前記実験方法を通じて測定した結果は、以下の通りである。
【0103】
ウェスタンブロッティング方法により、新規ペプチドのTGF‐βの抑制程度を測定した結果、繊維化誘導のTGF‐βのみ処理の無処理群(Untreat)に比べて、全ての新規ペプチドの処理濃度が、10μMである場合、TGF‐βが抑制されるほど、高く現れるマーカーの発現が高く示されたことが見られる(図3図5を参照)。これは、新規ペプチドの処理により、TGF‐βが抑制されたことを示す結果であると言える。また、処理濃度が10μMの場合、陽性対照群であるSB431542を処理したのと比較したとき、10μMの場合、Pep‐WH‐3、Pep‐WH‐4、Pep‐WH‐5、Pep‐WH‐6、Pep‐WH‐7、Pep‐WH‐12の場合に、より高いTGF‐β抑制活性を示すことが分かる。
【0104】
前記実験の結果により、本発明による新規ペプチドは、TGF‐βの抑制により現れる抗繊維症活性を示すことが分かる。TGF‐βの抑制に関する実験は、抗繊維症活性実験のうち広く用いられる実験と知られており、これにより本発明の新規ペプチドは、抗繊維症活性効果を有し得ることが分かる。
【0105】
実施例4:新規ペプチドの創傷治癒活性
新規ペプチドPep‐WH‐8、Pep‐WH‐9、Pep‐WH‐11、及びPep‐WH‐12の創傷治癒効能を確認するために、創傷誘導の動物モデルに、新規ペプチドを処理した後、創傷の大きさの減少及び治癒過程に必要なコラーゲン生成効能を確認する実験を、以下のように行った。
【0106】
実験動物の用意
マウスは、皮膚が薄く、一定に創傷を造り難いので、SDラット(Spraque-Dawley Rat)を選択した。ホルモンの変化による影響を排除するために、オスを選び、6週令を入蔵して、約1週間の順応期間を経たが、実験結果をより細密に導出するために、11週令まで待ってから、実験を実施した。実験動物が、嗅覚に敏感することにより、他の個体に危害を与えるかもしれないので、創傷を作った後から、各個体を分離して、ケージ当りに1匹ずつ飼いながら観察した。
【0107】
実験方法
用意した実験動物に全層創傷(full-thickness excision)を形成するために、以下のような方法に従った。麻酔を誘導するために、実験動物の重さkg当り10mgのキシラジン塩酸塩(xylazine-HCl)と、kg当り100mgのケタミン塩酸塩(ketamine HCl)を混合して、ラットの腹腔内に注射するか、又は呼吸麻酔器を用いた。麻酔が誘導された後、伏せた姿勢で実験動物の背中の毛をきれいに剃り、ベタジン(betadine)で消毒した後、16mmパンチを用いて、背中の最も高い部位から左右側に、それぞれ約1cm離れた地点に、1個ずつ円形の全層創傷を作った。創傷部位に別途のドレッシングは行わなかった。
【0108】
全層創傷が誘導された動物モデルを、以下のようにグループに分けて、創傷の形成直後、及び二日おきに、薬物を塗布処理した。塗布方法は、物質を1mg/mlの濃度で作った後、実験の直前に100μg/mlとなるように10倍希釈して用いた。塗布は、創傷毎に50μlを点滴した。
1)対照群:創傷1個当り生理食塩水50μlを点滴
2)実験群1:0.1mg/mlのPep‐WH‐8を、創傷1個当り50μlずつを点滴
3)実験群2:0.1mg/mlのPep‐WH‐9を、創傷1個当り50μlずつを点滴
4)実験群3:0.1mg/mlのPep‐WH‐11を、創傷1個当り50μlずつを点滴
5)実験群4:0.1mg/mlのPep‐WH‐12を、創傷1個当り50μlずつを点滴
創傷の形成直後、及び創傷後2、4、7、9、11、14日目に観察をし、撮影した。傷が完全に癒えた場合、癒えた日付を記入した。通常に、約9日目に最初の傷の5%水準まで減る個体が出始めた。傷の部位を、尺と共に撮影した後、撮影したイメージをイメージプログラム(Image program, NIH, USA)で分析し、傷の面積を算出して比較した。
【0109】
コラーゲンの形成のための生検は、創傷後、3日目と、5日目とにそれぞれ対照群中の2匹と、実験群中の2匹とを犠牲し、背中の両方の創傷部位を採集して実行した。コラーゲン合成の可否を比較するために、マッソントリクローム(masson trichrome)染色を行った後、平均的な蛍光強度(intensity)を測定した値を得た。
【0110】
実験結果及び分析
各実験群を対照群と比較したとき、Pep‐WH‐8及びPep‐WH‐12は、全層創傷誘導の後、3日目の創傷の大きさが、対照群より小さく現れた(図6及び図9を参照)。Pep‐WH‐9及びPep‐WH‐11の場合、 全層創傷誘導の後、1日目に創傷の大きさが、対照群より小さく現れた(図7及び図8を参照)。対照群と実験群の両方が、11日目まで観察すると、創傷の大きさの差異が大きくなく、治癒されていくが、創傷の発生後、初期に実験群において、創傷が対照群に比べて減ったことは、新規ペプチドが、創傷発生の初期に効果を発揮することを示す証拠であると言える。
【0111】
また、創傷誘導の後、コラーゲンの形成を観察した結果から、対照群及び実験群のコラーゲン発生の平均蛍光強度を測定した結果、全ての実験群が、対照群と比較したとき、高く現れた(図10を参照)。これは、新規ペプチドが、創傷部位の治癒が成り立つとき、必須のコラーゲン形成を促進することを示すと見られる。
【0112】
前記実験の結果から、本発明による新規ペプチドは、創傷発生の面積を減少し、コラーゲンの合成を増加する活性を示すことが分かる。これにより、本発明の新規ペプチドは、創傷治癒活性の効果を有することが分かる。
【0113】
前記多数の実験例の結果をまとめると、本発明による新規ペプチドが、抗炎症、抗繊維化及び創傷治癒の効果があることが分かり、これを利用して、炎症、繊維化症、及び創傷を予防及び治療する治療剤の開発に加え、炎症、繊維化症を伴う癌と、各種の疾病の予防及び治療剤、症状の改善剤の開発が可能であると判断される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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