(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】結晶基板上において、以下の材料:ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びアルミニウム(Al)のうちの少なくとも1つを用いて得られる窒化物の半極性層を得ることを可能にする方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/38 20060101AFI20220112BHJP
C30B 25/18 20060101ALI20220112BHJP
C23C 16/34 20060101ALI20220112BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20220112BHJP
H01L 33/16 20100101ALI20220112BHJP
H01L 33/22 20100101ALI20220112BHJP
H01L 33/32 20100101ALI20220112BHJP
【FI】
C30B29/38 D
C30B29/38 C
C30B29/38 Z
C30B25/18
C23C16/34
H01L21/205
H01L33/16
H01L33/22
H01L33/32
(21)【出願番号】P 2017565193
(86)(22)【出願日】2016-06-16
(86)【国際出願番号】 EP2016063824
(87)【国際公開番号】W WO2016202899
(87)【国際公開日】2016-12-22
【審査請求日】2019-06-05
(32)【優先日】2015-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2015-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】311015001
【氏名又は名称】コミサリヤ・ア・レネルジ・アトミク・エ・オ・エネルジ・アルテルナテイブ
(73)【特許権者】
【識別番号】311016455
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エル・コーリー・マルーン,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】フイエ,ギー
(72)【発明者】
【氏名】ベンヌグ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】スニガ・ペレス,ヘスス
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0276722(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/38
C30B 25/18
C23C 16/34
H01L 21/205
H01L 33/16
H01L 33/22
H01L 33/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物(N)と、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びアルミニウム(Al)のうちの少なくとも1つとを含む少なくとも1つの材料の少なくとも1つの半極性層(480)を結晶基板(310)の上面上において得る方法であって、以下のステップ:
- 前記結晶基板(310)の前記上面上において、主として第一の方向に延びる複数の平行な溝(320、410、420)を得るステップであって、各溝(320、410、420)は、連続的であり、各溝(320、410、420)は、少なくとも2つの対向する傾斜ファセット(330、331)を含み、前記2つの対向するファセット(330、331)のうちの少なくとも1つ(330)は、{111}結晶方向を有する、ステップと、
- {111}結晶方向を有する前記ファセット(330)に対向する前記ファセット(331)がマスキングされ、且つ{111}結晶方向を有する前記ファセット(330)がマスキングされないように、前記結晶基板(310)の前記上面をマスキングするステップと、
- 前記半極性層(480)をエピタキシャル成長させるステップと
を含む、方法において、前記複数の平行な溝(320、410、420)を得る前記ステップの後、且つ前記半極性層(480)をエピタキシャル成長させる前記ステップの前に実行される以下のステップ:
- 前記溝(320、410、420)の前記第一の方向に関して回転させた後の第二の方向に延び、したがって前記連続する溝(320、410、420)を中断して、それぞれ{111}結晶方向を有する個別のファセット(330’)のアレイ(335)を形成する複数の平行なトレンチ(450)をエッチングするステップであって、前記トレンチ(450)及び前記溝(320、410、420)は、それぞれ底部(451)を有し、前記トレンチ(450)の前記底部(451)は、前記溝(320、410、420)の前記底部(411、421)と同じ深さ又はそれより下方に配置される、ステップ
も含むことと、
エピタキシャル成長させる前記ステップ中、前記材料は、{111}結晶方向を有し、且つ前記アレイ(335)を形成する前記個別のファセット(330’)から開始してのみ成長することとを特徴とする方法。
【請求項2】
窒化物(N)と、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びアルミニウム(Al)のうちの少なくとも1つとを含む前記材料のV/IIIモル比は、100~2000である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
窒化物(N)と、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びアルミニウム(Al)のうちの少なくとも1つとを含む前記材料の前記V/IIIモル比は、300~500、好ましくは380~420である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
{111}結晶方向を有する前記ファセット(330)に対向する前記ファセット(331)がマスキングされ、且つ{111}結晶方向を有する前記ファセット(330)がマスキングされないように、前記結晶基板(310)の前記上面をマスキングする前記ステップは、二酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiN)、窒化チタン(TiN)のうちの少なくとも1つを含む材料のマスキング層(460)を堆積させるステップを含む、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の平行な溝(320、410、420)が延びる前記第一の方向は、前記結晶基板(310)の前記上面の平面及び<111>面に共通の方向に対応する、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
マスキング層(460)の堆積は、{111}結晶方向を有する前記ファセット(330)以外の、前記結晶基板(310)の前記上面全体がマスキングされるように
、{111}結晶方向を有する前記ファセット(330)上で起こる堆積を防止するように堆積角度を調整したイオンビームスパッタリングで行われる、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記材料は、窒化ガリウム(GaN)系材料である、請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記窒化ガリウム(GaN)系材料は、アルミニウム(Al)とインジウム(In)とをさらに含む任意の合金からなる、請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記材料は、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化アルミニウムガリウムインジウム(AlGaInN)、窒化アルミニウムインジウム(AlInN)のうちの任意の1つである、請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記溝は、完全なV字形溝(410)であり、前記2つの対向する傾斜ファセット(330、331)は、前記溝(410)の前記底部で接し、且つ一緒に前記溝(410)の前記底部(411)を画定する、請求項1~9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記溝(420)は、平坦な底部(421)を含み、前記2つの対向するファセット(330、331)は、前記溝(420)の前記底部(421)で接する、請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
エピタキシャル成長させる前記ステップ中、前記材料は、核の形態で成長し、前記核の合体は、前記半極性層(480)を形成し、前記トレンチ(450)及び溝(320)の寸法は、前記トレンチ(450)の前記底部(451)との接触又は少なくともその全部との接触がない前記核(480)の成長及び好ましくは合体を可能にするように構成される、請求項1~11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
エピタキシャル成長させる前記ステップ中、前記材料は、核の形態で成長し、前記核の合体は、前記半極性層(480)を形成し、前記トレンチ(450)及び溝(320)の前記寸法は、少なくともいくつかの核と前記トレンチ(450)の前記底部(451)との間の間隔(500)を保ちながらの前記核(480)の成長及び好ましくは合体を可能にするように構成される、請求項1~12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
{111}結晶方向を有する前記ファセット(330)の長さは、50nmより大きい、請求項1~13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第一及び第二の方向は、40°より大きく、好ましくは50°~90°、好ましくは60°~90°である角度(470)を画定する、請求項1~14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記トレンチ(450)は、前記初期溝(320、410、420)に垂直にエッチングされる、請求項1~15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記トレンチ(450)は、前記溝(320、410、420)の深さより大きいか、又はそれと等しい深さ(452)を有する、請求項1~16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記トレンチ(450)は、垂直の側壁を有する、請求項1~17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の平行な溝(320、410、420)は、50nm~20μm、好ましくは75nm~15μmであるピッチp1を有する、請求項1~18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の平行なトレンチ(450)は、(p1
*0.8)/2.5より大きく、好ましくは(p1
*0.9)/2.5より大きいピッチp2を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記複数の平行なトレンチ(450)は、1.1
*p1より小さく、好ましくはp1より小さいピッチp2を有する、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
エピタキシャル成長させる前記ステップ中、前記基板(310)の温度は、700~1300℃、好ましくは900~1100℃に保持される、請求項1~21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
エピタキシャル成長させる前記ステップ中、圧力は、30mbar~1500mbar、好ましくは50mbar~700mbarに保持される、請求項1~22の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記複数の平行な溝(320、410、420)は、ピッチp1を有し、前記複数の平行なトレンチ(450)は、0.9
*p1~1.1
*p1であるピッチp2を有し、前記第一及び第二の方向によって画定される前記小さい角度(470)は、40°より大きく、好ましくは60°より大きい、請求項1~23の何れか一項に記載の方法。
【請求項25】
エピタキシャル成長させる前記ステップは、
- {111}結晶方向を有し、且つ前記アレイ(335)を形成する前記個別のファセット(330’)から開始する、窒化アルミニウム(AlN)系材料の第一のエピタキシャル成長と、
- エピタキシャル成長後の前記窒化アルミニウム(AlN)系材料から開始する、窒化ガリウム(GaN)系材料(480)の少なくとも1つの第二のエピタキシャル成長と
を含む、請求項1~24の何れか一項に記載の方法。
【請求項26】
複数の平行なトレンチをエッチングする前記ステップは、前記複数の平行な溝(320、410、420)を得る前記ステップの後、且つ{111}結晶方向を有する前記ファセット(330)に対向する前記ファセットがマスキングされるように、前記結晶基板(310)の前記上面をマスキングする前記ステップの前に実行される、請求項1~25の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも緑色波長範囲で発光するように構成された少なくとも1つの発光ダイオード(LED)を製造する方法であって、窒化物(N)と、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びアルミニウム(Al)のうちの少なくとも1つとを含む少なくとも1つの材料の半極性層(480)を結晶基板(310)の上面上において得るための、請求項1~26の何れか一項に記載の方法を含む、方法。
【請求項28】
結晶基板と、前記結晶基板の上面上の、窒化物(N)と、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びアルミニウム(Al)のうちの少なくとも1つとを含む少なくとも1つの材料の半極性層とを含むマイクロエレクトロニックデバイスであって、
- 前記基板は、第一の方向に延びる複数の平行な溝(を含み、各溝は、それぞれ前記第一の方向に延びる連続的な帯を形成する少なくとも2つの対向する傾斜ファセットを含み、前記2つの対向するファセットのうちの少なくとも1つは、{111}結晶方向を有する、マイクロエレクトロニックデバイスにおいて、
前記基板は、前記第一の方向とは平行ではない第二の方向に延びる複数の平行なトレンチも含み、
前記複数の平行な溝と前記複数の平行なトレンチとの組合せは、{111}結晶方向を有する個別のファセットのアレイを画定し、
前記トレンチ及び前記溝は、それぞれ底部を有し、前記トレンチの前記底部は、前記溝の前記底部より下方に配置され、
前記材料は、結晶方向を有する前記個別のファセットと直接接触し、
前記デバイスは、前記基板と前記材料との間に配置され、且つ結晶方向を有する前記個別のファセット以外の、前記基板の前記上面の全体を覆うマスキング層も含むことを特徴とするマイクロエレクトロニックデバイス。
【請求項29】
前記複数の平行な溝(320、410、420)は、ピッチp1を有し、前記複数の平行なトレンチ(450)は、0.8
*p1~1.2
*p1であるピッチp2を有し、前記第一及び第二の方向によって画定される小さい角度(470)は、40°より大きく、好ましくは60°より大きい、請求項28に記載のマイクロエレクトロニックデバイス。
【請求項30】
請求項28又は29に記載のマイクロエレクトロニックデバイスを含む発光ダイオード(LED)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、発光ダイオード(LED)に関し、より詳しくは、異なる材料からなる基板上において成長させた、以下の材料:ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びアルミニウム(Al)のうちの少なくとも1つを用いて得られた少なくとも1つの窒化物(N)のエピタキシャル層を含むLEDに関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用照明器具の交換電球等の民生用として高輝度で安価なLEDを大規模生産することは、長年にわたり世界中の多くの科学及び学術チームの特に強い関心の対象となっている。
【0003】
大きい一歩は、1994年に日本において、窒化ガリウム(GaN)と窒化インジウム(InN)との混合物からなり、その後、III族/V族の三元系直接遷移型半導体を形成する半導体材料であるInGaN、すなわち窒化インジウムガリウムの使用に基づく高輝度の青色LEDの実現可能性を初めて実証した日亜化学工業株式会社の中村修二により成し遂げられた。青色LEDの発明により、中村は2014年に他の2名の日本人科学者と共にノーベル物理学賞を受賞した。
【0004】
それ以来、窒化物の化合物と、より詳しくは窒化ガリウム(GaN)及びそのインジウム(In)とアルミニウム(Al)との合金が、可視スペクトルの短波長領域、すなわち青及び紫外線(UV)領域で動作可能な光電子デバイスを得るために広く使用されてきた。GaN系合金の使用によって高性能の緑色LEDを容易に構成できるが、このスペクトル範囲では効率の低下があり、これは「緑色における効率低下」、又は英語で「グリーンギャップ」の名称で呼ばれる。GaN系緑色LED、すなわち500nm(ナノメートル=10-9メートル)を超える波長範囲で動作するように設計されたLEDは、特にこれらをその青色及び紫外線ホモログと比較した場合、電流から光への良好な変換効率に到達できない。青色LEDでは80%近い効率が証明されているが、緑色LEDの対応する数値は典型的に約15%にすぎない。
【0005】
緑色LEDで見られる低い効率は、典型的に異なる性質の基板上のエピタキシャル成長を経た、したがって多層ヘテロ構造を形成するGaN系化合物の材料の結晶特性に基づいて得ることができる。GaN系合金の安定した結晶構造の形態は、
図1に示されるウルツ鋼型構造である。この六方晶構造100において、結晶面を定義することが適当であり、例えばc面110、a面120、及びm面130である。これまで、GaN系材料のエピタキシャル層をまずc面から、すなわち極性軸c 112に平行な方向に成長させることが比較的容易であると判明していることから、GaN系の実験的及び商業的デバイスのほとんどがこのように構成されてきた。しかしながら、この成長方向、すなわちLEDに関する方向c 112による不利な結果は、それによってデバイスのInGaN系合金において量子井戸の活性領域の粒子封じ込めシュタルク効果(QCSE)が生じることである。これは、放射再結合の顕著な効率低下につながるが、それは、その結果として量子井戸の活性領域内で電子と正孔とが空間的に分離され、それらの相互作用により光を生成する確率が低くなるからである。この挙動の理由は、自発分極に加えて、この特定の結晶構造において生じ、二軸応力と呼ばれる機械的応力を受けたことに起因して、結晶のピエゾ分極が起こるからである。したがって、分極と、それに伴う活性領域(量子井戸)の縮小及び材料の品質低下とに関わる影響は、インジウムの配合量がより高い量子井戸(すなわち、緑色LEDに必要なもの)の場合、特に有害である。これらの影響は、したがって、より高波長で(すなわち、緑色で)動作する窒化物系の光電子デバイスの効率損失を説明する主な理由と考えられている。
【0006】
図2は、結晶方向がInGaN量子井戸中に存在する自発及びピエゾ分極の強さに与える影響を示す
図200である。
図2は、方向cに関する方向に対するこのパラメータの典型的な変化を示す。強さは、実際には、極性方向112の場合に、すなわち前述のようにGaN系エピタキシャル層がc面110に垂直に成長する場合に最大210となる。a面120及びm面130のそれらのような非極性方向では、分極強さ220がゼロ軸と交差する。ここで留意すべき点として、
図1に示される面140のような半極性方向では、ピエゾ分極の影響はまた、極性方向230と比較した場合に減少していることがあり得る。
【0007】
基板から、古典的なc面と異なる面、例えば140等の半極性面で開始される成長にも、それなりの問題がある。特に、異なる材料から製作された平坦な基板上において成長したGaN系層は、典型的に、古典的なc面110と異なる面から成長を開始した場合、転移及び基底面の積層欠陥の密度が増大することが観察されている。
【0008】
その結果、GaN系層を基本的に方向cへと成長させ続けることにより、結晶構造の欠陥を防止しながら平坦な半極性構造を得るために、いくつかの研究開発グループがエピタキシャル成長に基づく方法を発表している。以下の刊行物にこの種の方法の例が記載されている。
-- “Fabrication and properties of semi-polar(1-101)and(11-22)InGaN/GaN light emitting diodes on patterned Si substrates”by T.Hikosaka et al.in phys.stat.sol.(c)5,No.6,2234-2237(2008)
-- “Growth of(1-0 1)GaN on a 7-degree off-oriented(0 0 1)Si substrate by selective MOVPE”by Honda et al.in J.Cryst.Growth 242 82-6(2002)
【0009】
上記刊行物で挙げられた例が
図3において再現されており、これは、
図3aにおいて基板310上にエッチングされたV溝320を示す。トレンチの幅及び間隔は数マイクロメートルの範囲である。溝は、例えば、その標準ミラー指数により定義される{001}面に関して7°ずれた結晶方向を有するシリコン基板310にエッチングされる。これにより、トレンチの側壁は、ミラー指数{111}に対応する方向を有するファセット330を形成し、これは、c方向のGaN系層の成長を開始するのに好適な核生成面であることがさらに知られている。上述の刊行物に記載され、また
図3b及び3cに示されているように、この方法では、二酸化シリコン(SiO2)又は窒化シリコン(SiN)若しくは窒化チタン(TiN)で{111}方向ファセット330以外のすべての表面を覆うことができる。次に、エピタキシは、マスキングされていないこのファセットの集合から開始して、GaN系層342がまず方向c 341へと斜めに成長するように始まる。成長は、横方向に、GaN系材料が溝からその縁より上へと溢れるまで続き、最終的に合体を開始し、
図3dに示されるように半極性方向(10-11)を有する平面340が形成される。
【0010】
ここで留意すべき点として、(10-11)方向は一例にすぎず、{001}面に関して7°ずれた方向を有するSi上の成長の場合にのみ適用される。半極性GaNのその他の方向では、シリコンの方向も異なっている必要がある。半極性GaN系層の所望の種類に応じて、基板の方向は、GaNのc面と所望の半極性面との間の角度が基板内の溝の側壁の結晶ファセットと基板の表面との間の角度と同じになるように選択しなければならない。その他の方向、例えば(20-21)及び(11-22)が想定される場合、他のシリコン基板、この場合、それぞれSi(114)及びSi(113)を使用することが必要である。
【0011】
GaN系エピタキシャル層を、V溝を有するシリコン基板の上面から成長させる上述の技術により、緑色LEDを用いたデバイスの性能におけるある程度の改良は予想されるものの、報告されている最良の結果でも、緑色LEDは依然として20%のオーダと低効率であり、これは青色LEDの数値とは程遠い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】“Fabrication and properties of semi-polar(1-101)and(11-22)InGaN/GaN light emitting diodes on patterned Si substrates”by T.Hikosaka et al.in phys.stat.sol.(c)5,No.6,2234-2237(2008)
【文献】“Growth of(1-0 1)GaN on a 7-degree off-oriented(0 0 1)Si substrate by selective MOVPE”by Honda et al.in J.Cryst.Growth 242 82-6(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の1つの目的は、表面へと伝搬する拡張欠陥の数を減らすことにより、LED、特に緑色LEDの効率を高めるための解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のその他の目的、特徴、及び利点は、以下の説明を検討し、添付の図面を参照すれば当業者に明らかとなるであろう。任意の追加の利点が本明細書に含まれることが想定される。
【0015】
この目的を達成するために、本発明の1つの実施形態は、以下の材料:ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びアルミニウム(Al)のうちの少なくとも1つを用いて得られる窒化物(N)を含む少なくとも1つの材料を含む少なくとも1つの半極性層を結晶基板の上面上において得る方法に関し、前記方法は、以下のステップ:
- 結晶基板の上面上において、第一の方向に延びる複数の平行な溝を得るステップであって、各溝は、少なくとも2つの対向する傾斜ファセットを含み、各溝は、連続的であり且つ前記第一の方向に延び、前記2つの対向するファセットのうちの少なくとも1つは、{111}結晶方向を有する、ステップと、
- {111}結晶方向を有する前記ファセットに対向するファセットがマスキングされ、且つ{111}結晶方向を有する前記ファセットがマスキングされないように、結晶基板の上面をマスキングするステップと、
- 前記層をエピタキシャル成長させるステップと
を含む。
【0016】
この方法は、複数の平行な溝を得るステップの後、且つ前記層をエピタキシャル成長させるステップの前に実行される以下のステップ:
- 溝の前記第一の方向に関して回転させた、すなわち傾斜させた後の第二の方向に延び、したがって連続する溝を中断して、それぞれ{111}結晶方向を有する個別のファセットを形成する複数の平行なトレンチをエッチングするステップ
も含む。
【0017】
好ましくは、トレンチ及び溝は、それぞれ底部を有し、トレンチの底部は、溝の底部と同じ深さ又はそれより下方に配置される。
【0018】
好ましくは、エピタキシャル成長させる前記ステップ中、前記材料は、{111}結晶方向を有し、且つ前記アレイを形成する前記個別のファセットから開始してのみ成長する。
【0019】
本発明の方法は、{111}結晶方向を有し、それから開始して、Ga、In、及びAlのうちの少なくとも1つを含む窒化物材料が成長できるファセットの利用可能な表面積を縮小し、フットプリントを小さくして、したがって、エピタキシャル成長中にGaN/AlN/Si又はAlN/Si界面において発生して拡張する欠陥を減少させながら、適当な方向+cに成長させることを可能にする。
【0020】
本発明及び提案される方法は、したがって、表面へと伝搬する拡張欠陥の密度を減少させることができ、したがって分極の影響を大幅に減少させる半極性方向において、より高い効率の緑色LEDを得ることができる。
【0021】
さらに、{111}結晶方向を有するファセットが、突出する起伏部を形成するマスクによってではなく、トレンチ、したがって窪んだ起伏部により区切られるという事実により、半極性層における欠陥の数を減少させるという課題に対して有効に対応することが可能となる。実際に、{111}方向のファセットは、トレンチ及び溝で区切られることにより、トレンチの底部等の下地層から少なくとも部分的に離れ、したがって部分的に「空洞の」空間の少なくとも上方で、各種の核の成長及び合体が可能となる。実際に、溝に沿って及びエッチングされたトレンチの上方において横方向の成長が起こる。
【0022】
これにより、核の成長中及び合体中の応力解放がより良好に行われる。GaN層内の応力は減少し、半極性層480中の欠陥数も減る。
【0023】
任意選択により、本発明の方法は、別々でも組み合わせてもよい以下の任意選択の特徴及びステップのうちの少なくとも何れか1つをさらに有し得る。
【0024】
- 1つの実施形態によれば、窒化物(N)と、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びアルミニウム(Al)のうちの少なくとも1つとを含む前記材料のモル比V/IIIは、100~2000である。1つの実施形態によれば、窒化物(N)と、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びアルミニウム(Al)のうちの少なくとも1つとを含む前記材料のモル比V/IIIは、300~500、好ましくは380~420である。
【0025】
この比は、成長中の各前駆体のモルガス流を指す(Gaの場合、TMGaが前駆体として使用されてもよく、Nの場合、NH3が前駆体として使用されてもよい)。この比は半極性成長の方向、すなわち基板表面に垂直な方向を改善し、したがって、これによってエッチングされた溝及びしたがって基板の初期面の上方で結晶を得ることができる。
【0026】
- 1つの実施形態において、{111}結晶方向を有する前記ファセットに対向するファセットがマスキングされ、且つ{111}結晶方向を有する前記ファセットがマスキングされないように、結晶基板の上面をマスキングするステップは、二酸化シリコン(SiO2)及び/又は窒化シリコン(SiN)及び/又は窒化チタン(TiN)のうちの少なくとも1つを含む材料からなるマスキング層(460)を堆積させるステップを含む。
【0027】
- 1つの実施形態によれば、マスキング層の堆積は、{111}結晶方向を有する前記ファセット以外の、結晶基板の上面全体がマスキングされるように実行される角堆積である。
【0028】
- 1つの実施形態によれば、前記材料は窒化ガリウム(GaN)系材料である。1つの実施形態によれば、前記窒化ガリウム(GaN)系材料は、アルミニウム(Al)とインジウム(In)とをさらに含む任意の合金からなる。
【0029】
- 1つの実施形態によれば、窒化物(N)と、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びアルミニウム(Al)のうちの少なくとも1つとを含む前記材料は、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化アルミニウムガリウムインジウム(AlGaInN)、窒化アルミニウムインジウム(AlInN)のうちの任意の1つである。本発明の以下の説明では、これは、概して、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びアルミニウム(Al)のうちの少なくとも1つを含む窒化物材料又はいわゆるV-N材料と呼ぶ。
【0030】
- 1つの実施形態によれば、エピタキシャル成長させる前記ステップは、
- {111}結晶方向を有し、且つ前記アレイを形成する前記個別のファセットから開始する、窒化アルミニウム(AlN)系材料の第一のエピタキシャル成長と、
- エピタキシャル成長後の前記窒化アルミニウム(AlN)系材料から開始する、窒化ガリウム(GaN)系材料の少なくとも1つの第二のエピタキシャル成長と
を含む。
【0031】
この実施形態は、基板がシリコンを含むか、シリコンからなる場合に再溶融によるエッチングを防止するために特に有利である。
【0032】
- 1つの実施形態によれば、溝は、完全なV字形溝であり、2つの対向する傾斜ファセットは、溝の底部で接し、且つ一緒に溝の底部を画定する。他の解決策によれば、エッチング時間が短い場合、溝は、平坦な底部と、溝の底部で接する2つの対向するファセットとを含む。
【0033】
- 1つの実施形態によれば、{111}結晶方向を有する前記ファセットの長さは、50nmより大きい。ファセットの長さは、基板の上面から溝の底部までファセットの傾斜方向に測定される。
【0034】
- 1つの実施形態によれば、溝が主に延びる第一の方向は、結晶基板の前記上面の平面及び<111>面に共通の方向に対応する。
【0035】
- 1つの実施形態によれば、前記第一及び第二の方向は、30°より大きい、好ましくは40°より大きい、好ましくは40°~90°であり、好ましくは50°~90°であり、好ましくは60°~90°の角度をなす。この角度は、2つの方向のなす最小角度である。1つの実施形態によれば、この角度は、50°より大きい。1つの実施形態によれば、この角度は、80°より大きい。1つの実施形態によれば、この角度は、90°と等しい。この角度は、基板の底部の表面に水平な平面内で測定される。したがって、第一の方向に関して回転させた第二の方向は、第二の方向が第一の方向に関して回転又は傾斜していることを表す。
【0036】
- 1つの実施形態によれば、トレンチは、初期溝に対して垂直にエッチングされる。
【0037】
- 1つの実施形態によれば、トレンチの深さは、溝の深さより大きいか、又はそれと等しい。
【0038】
- 1つの実施形態によれば、トレンチは、垂直な側壁を有する。当然のことながら、何れの工業工程にも伴う不正確さにより、側壁は正確に垂直ではないことがあり得る。
【0039】
- 1つの実施形態によれば、複数の平行な溝は、50nm~20μm、好ましくは75nm~15μmであるピッチp1を有する。これらのピッチにより、合体を容易にしながら工程を容易にすることが可能である。溝のピッチp1は、溝の幅に、2つの連続する溝を分離する距離を加算したものである。ピッチp1は、基板の底部に平行な平面内で測定される。
【0040】
- 1つの実施形態によれば、複数の平行なトレンチは、(p1*0.8)/2.5より大きく、好ましくは(p1*0.9)/2.5より大きいピッチp2を有する。1つの実施形態によれば、複数の平行なトレンチは、1.1*p1より小さく、好ましくはp1より小さいピッチp2を有する。より一般的に、p2はp1/2.5±10%~p1±10%である。トレンチのピッチp2は、トレンチの幅に、2つの連続するトレンチを分離する距離を加算したものである。ピッチp2は、基板の底部に平行な平面内で測定される。
【0041】
- 1つの実施形態によれば、GaNをエピタキシャル成長させるステップ中、基板の温度は、700~1300℃、好ましくは900~1100℃に保持される。これらの温度により、結晶の品質を改良できる。
【0042】
- 次の材料の成長を開始させるための典型的な温度範囲を以下に示す。
- AlN:900~1400℃
- GaN:700~1300℃
- AlN:900~1500℃
- InGaN:400~900℃
- AlGaN:900~1300℃
- AlInN:600~1100℃
- AlInGaN:500~1000℃
【0043】
- 1つの実施形態によれば、前記材料V-Nをエピタキシャル成長させるステップ中、圧力は、15mbar~1500mbar、好ましくは15mbar~700mbarに保持される。
【0044】
- 1つの実施形態によれば、複数の平行な溝は、ピッチp1を有し、複数の平行なトレンチは、0.9*p1~1.1*p1のピッチp2を有し、前記第一及び第二の方向間の小さい角度は、30°より大きく、好ましくは40°より大きく、好ましくは60°より大きい。1つの実施形態によれば、この角度は、55~65°である。これらの比により、全方向への同時合体を容易にすることが可能である。
【0045】
- 1つの実施形態によれば、{111}結晶方向を有する前記ファセットに対向するファセットがマスキングされ、且つ{111}結晶方向を有する前記ファセットがマスキングされないように、結晶基板の上面をマスキングする前記ステップは、基板と前記材料との間に配置され、且つ{111}結晶方向を有する個別のファセット以外の、基板の上面全体を覆うマスキング層を形成するように実行される。
【0046】
- 1つの実施形態によれば、エピタキシャル成長させる前記ステップ中、前記材料は、核の形態で成長し、核の合体は、前記半極性層を形成し、トレンチ及び溝の寸法は、任意選択によりマスキング層で覆われたトレンチの底部との接触又は少なくともその全部との接触がない、核のうちの少なくともいくつか、好ましくは核の全部の成長及び好ましくは合体を可能にするように構成される。
【0047】
- 1つの実施形態によれば、エピタキシャル成長させる前記ステップ中、前記材料は、核の形態で成長し、核の合体は、前記半極性層を形成し、トレンチ及び溝の寸法は、核のうちの少なくともいくつか、好ましくは核の全部と、任意選択でマスキング層により覆われたトレンチの底部との間の間隔を保ちながらの核の成長及び好ましくは合体を可能にするように構成される。
【0048】
これらの実施形態により、最終的に得られる半極性層の欠陥数を減少させるという課題をはるかにより効率的に解決することができる。
【0049】
- 1つの実施形態によれば、結晶基板は、シリコン(Si)又はシリコン系材料からなる。1つの実施形態によれば、窒化物(N)と、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びアルミニウム(Al)のうちの少なくとも1つとを含む前記少なくとも1つの材料の半極性層の成長は、その結果、3つの次元(3D)での成長であり、これは、{111}結晶方向を有する個別のファセットのアレイから起こる。
【0050】
- 1つの実施形態によれば、初期の上側構造化表面は、{111}結晶方向を有する少なくとも1つの傾斜縁部を含む平行な溝の集合により形成される。
【0051】
別の実施形態によれば、本発明は、緑色波長領域で発光するように構成された少なくとも1つの発光ダイオード(LED)を製造する方法に関し、これは、上記の方法による、窒化物(N)と、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びアルミニウム(Al)のうちの少なくとも1つとを含む少なくとも1つの材料の半極性層を結晶基板の上面上において得るための方法を含む。
【0052】
他の実施形態によれば、本発明は、結晶基板と、前記結晶基板の上面上の、窒化物(N)と、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びアルミニウム(Al)のうちの少なくとも1つとを含む少なくとも1つの材料の半極性層とを含むマイクロエレクトロニックデバイスに関し、
- 基板は、第一の方向に延びる複数の平行な溝を含み、各溝は、それぞれ前記第一の方向に延びる連続的な線を形成する少なくとも2つの対向するファセットを含み、前記2つの対向するファセットのうちの少なくとも1つは、{111}結晶方向を有する。
【0053】
基板は、前記第一の方向に関して回転させた後の第二の方向に延びる複数の平行なトレンチも含む。複数の平行な溝と複数の平行なトレンチとの組合せは、{111}結晶方向を有する個別のファセットのアレイを画定する。
【0054】
任意選択により、本発明のマイクロエレクトロニックデバイスは、それに加えて、個別に、又は組み合わせて、以下の任意選択による特徴の少なくとも何れか1つを有し得る。
【0055】
- 1つの任意選択の実施形態によれば、前記材料は、{111}結晶方向を有する個別のファセットと直接接触する。
【0056】
- 1つの任意選択の実施形態によれば、トレンチ及び溝は、それぞれ底部を有し、トレンチの底部は、溝の底部と同じ深さであるか、又はそれより深い。
【0057】
- 1つの任意選択の実施形態によれば、デバイスはまた、基板と前記材料との間に配置されたマスキング層を含み、マスキング層は、{111}結晶方向を有する個別のファセット以外の、基板の上面の全体を覆う。
【0058】
- 1つの任意選択の実施形態によれば、複数の平行な溝は、ピッチp1を有し、複数の平行なトレンチは、0.8*p1~1.2*p1のピッチp2を有し、前記第一及び第二の方向によって画定される小さい角度は、30°より大きい。1つの実施形態によれば、この角度は、40°より大きく、好ましくは60°より大きい。1つの実施形態によれば、この角度は、55°より大きい。
【0059】
他の実施形態によれば、本発明は、本発明によるマイクロエレクトロニックデバイスを含む発光ダイオード(LED)に関する。
【0060】
他の実施形態によれば、本発明は、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びアルミニウム(Al)のうちの少なくとも1つを含む窒化物材料の半極性層を結晶基板の上側構造化表面上で成長させる方法に関し、前記上側構造化表面は、{111}結晶方向を有する斜めの平行に整列したファセットの集合を含むように配置され、前記方法は、
- トレンチの集合を整列したファセットに関して斜めにエッチングし、整列したファセットの集合を{111}方向の個別のファセットのアレイに分割することにより、上面の新しい構造化を実行するステップと、
- {111}方向の個別のファセットのアレイから開始して前記材料の層を成長させるステップと
からなるステップをさらに含む。
【0061】
前記材料の半極性層の成長を開始する前に、{111}方向のファセット以外の、上側構造化表面のすべての表面は、酸化シリコン(SiO2)及び/又は窒化シリコン(SiN)及び/又は窒化チタン(TiN)を含む材料の堆積層で保護される。
【0062】
本発明の1つの利点は、窒化物系材料のエピタキシャル層の成長を開始するために使用されたシーディング面、すなわち{111}方向のファセットのそれぞれの表面積が、最初にトレンチがエッチングされたために縮小されていることである。
【0063】
本発明は、基板上の材料V-Nのフットプリントを減少させたことにより、発生する欠陥が減少するという利点を有する。
【0064】
これにより、エピタキシャル層内で成長する結晶における欠陥の量を減らすことができ、したがって、より高効率の緑色(黄/赤/紫外線)LEDを得ることが可能となる。
【0065】
他の実施形態によれば、本発明は、窒化物(N)と、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びアルミニウム(Al)のうちの少なくとも1つとを含む少なくとも1つの材料の半極性層を結晶基板の上面上において得る方法に関し、前記方法は、以下のステップ:
結晶基板の上面上において、第一の方向に延びる複数の平行な溝を得るステップであって、各溝は、それぞれ前記第一の方向に延びる連続する線を形成する少なくとも2つの対向する傾斜したファセットを含み、前記2つの対向するファセットのうちの1つは、{111}結晶方向を有する、ステップと、
溝の前記第一の方向に関して回転された第二の方向に延びる複数の平行なトレンチをエッチングするステップであって、複数の平行なトレンチは、したがって、溝と共に、{111}結晶方向を有する複数の不連続的なファセットを画定する、ステップと、
{111}結晶方向を有する前記ファセットに対向するファセットがマスキングされ、且つ{111}結晶方向を有する前記ファセットがマスキングされないように、結晶基板の上面をマスキングするステップと、
{111}結晶方向を有する前記ファセットから開始して前記基材をエピタキシャル成長させるステップと
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】ウルツ鉱型結晶構造の各種の結晶方向を示す。
【
図2】方向に対するウルツ鉱型結晶構造におけるピエゾ分極の強さを示す。
【
図3a】先行技術文献に記載されている、{111}方向のファセットの1つの集合から開始するエピタキシャル層の成長を示す。
【
図3b】先行技術文献に記載されている、{111}方向のファセットの1つの集合から開始するエピタキシャル層の成長を示す。
【
図3c】先行技術文献に記載されている、{111}方向のファセットの1つの集合から開始するエピタキシャル層の成長を示す。
【
図3d】先行技術文献に記載されている、{111}方向のファセットの1つの集合から開始するエピタキシャル層の成長を示す。
【
図4a】
図4a~4hからなり、成長後のエピタキシャル層の欠陥密度を減少させることのできる、本発明の1つの実施形態による方法のステップを示す。
【
図4b】
図4a~4hからなり、成長後のエピタキシャル層の欠陥密度を減少させることのできる、本発明の1つの実施形態による方法のステップを示す。
【
図4c】
図4a~4hからなり、成長後のエピタキシャル層の欠陥密度を減少させることのできる、本発明の1つの実施形態による方法のステップを示す。
【
図4d】
図4a~4hからなり、成長後のエピタキシャル層の欠陥密度を減少させることのできる、本発明の1つの実施形態による方法のステップを示す。
【
図4e】
図4a~4hからなり、成長後のエピタキシャル層の欠陥密度を減少させることのできる、本発明の1つの実施形態による方法のステップを示す。
【
図4f】
図4a~4hからなり、成長後のエピタキシャル層の欠陥密度を減少させることのできる、本発明の1つの実施形態による方法のステップを示す。
【
図4g】
図4a~4hからなり、成長後のエピタキシャル層の欠陥密度を減少させることのできる、本発明の1つの実施形態による方法のステップを示す。
【
図4h】
図4a~4hからなり、成長後のエピタキシャル層の欠陥密度を減少させることのできる、本発明の1つの実施形態による方法のステップを示す。
【
図5a】
図5a及び5bからなり、
図4g及び4hに示される構造の、{111}方向のファセットを通る、{111}方向のファセットに垂直であり、且つ平行なトレンチに垂直な断面の2つの断面図である。
【
図5b】
図5a及び5bからなり、
図4g及び4hに示される構造の、{111}方向のファセットを通る、{111}方向のファセットに垂直であり、且つ平行なトレンチに垂直な断面の2つの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図は例として示されており、本発明を限定しない。これらは本発明を理解しやすくするための基本的な概略的表現であり、したがって、必ずしも実際の応用と同じ縮尺によるとは限らない。特に、各種の層と膜との相対的厚さは現実を表していない。
【0068】
以下の本発明の詳細な説明は、添付の図面に関する。説明は、例として挙げられた実施形態を含んでいるが、その他の実施形態も可能であり、本発明の趣旨及び応用分野から逸脱することなく、説明されている実施形態に対する変更形態がなされ得る。
【0069】
1つの実施形態によれば、本発明の方法は、ピラーに類似したファセットを有する構造のアレイを作るものであり、そこから以下の材料:ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びアルミニウム(Al)のうちの少なくとも1つを用いて得られる少なくとも1つの窒化物(N)の多次元半極性成長がその後行われる。ピラーに類似したファセットを有する構造物のアレイは、溝、典型的にはV溝と、溝に関して垂直な又は斜めのトレンチとを形成することによって得られる。
【0070】
したがって、本発明の方法は、基板との接触面を縮小することによってエピタキシャル層のフットプリントを減少させて、核生成中に発生する拡張欠陥の密度をさらに減少させる。この半極性方向の材料V-Nの層の材料の改善により、効率損失、すなわち電流から光への変換の効率の損失をさらに低減させることができる。
【0071】
詳細な実施形態を、
図4a~4hからなる
図4を参照しながら以下に説明する。
【0072】
製造は、溝320の形成から開始する。これらの溝は、
図3で上述したもののようなV溝であってもよい。これらは、好ましくはシリコンからなる基板内にエッチングされる。
【0073】
前述のように、また
図4a及び4bに再び示されているように、V溝320の形成は、例えば、結晶層310の表面、例えば{001}面に関して7°ずれた結晶方向を有するシリコン(Si)基板から実行される。Si基板の場合、その他の方向も可能であり、例えば、{114}面及び{113}面に関して1°ずれている。本発明は、これらの方向の何れの1つにも限定されない。例えば、本発明はまた、{001}面に関して6°又は8°ずれた結晶方向を有するシリコン(Si)基板310にも適用される。
【0074】
V溝のエッチングは、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)又は水酸化カリウム(KOH)等のウェットエッチング溶液の使用に基づくよく知られた標準的な異方性技術を用いて実行される。この種の異方性エッチングにより、{111}方向のファセット330を基板310内にエッチングすることができる。
【0075】
エッチングは、
図3及び4に示されているもののように完全なV溝410を作ることができる。完全なV溝では、対向する2つの傾斜面、すなわちファセット330、331が接して溝410の底部411を形成する。その結果、V溝では、溝の底部411はV字形である。
【0076】
本発明の他の実施形態によれば、V溝のエッチングでは、不完全なV溝420を作ってもよい。不完全なV溝では、対向する2つの傾斜面は溝の底部421で接し、底部421は略平坦な面を形成する。不完全なV溝420は、完全なV溝410の場合より短いエッチング時間で得られる。
【0077】
結晶層310は外面を有し、これは上面とも呼ばれる。平行な溝320、410、420は、結晶層310の外面の平面及び化学エッチングにより露出させたい<111>面に共通する方向に対応する方向に向いている。この方向は、<110>型の方向である。したがって、溝320、410、420は、結晶層310の上面の平面と<111>面との間の交線に平行である。
図4a~4hに示される本発明の実施形態の例では、これは<110>型の方向である。
【0078】
以下の非限定的な例では、結晶方向が{001}面に関して7°ずれているSi基板を使用すると仮定する。V溝は、基板の上に標準的なリソグラフィ技法で成長され、又は堆積された二酸化シリコン(SiO2)又は窒化シリコン(SiN)又は窒化チタン(TiN)の層中にハードマスク430を切削した後にエッチングされた。当業者であれば、最も適当な技術の選択方法がわかるであろう。例えば、サブミクロンの寸法を使用しなければならない場合、電子ビーム又はナノプリンティングリソグラフィの技法が使用されてもよい。
【0079】
その後、
図4bに示されるように、SiO2マスクが、ウェットエッチング溶液、例えばフッ化アンモニウム(NH4F)又はフッ化水素酸(HF)の希釈混合物等の緩衝酸化物エッチング溶液(BOE)を用いて除去される。
【0080】
溝は、100nmからの範囲であってもよく、15μm(10-6メートル)に到達してもよい幅の範囲の限度内でエッチングされてもよい。これより小さい100分の1ナノメートル(10-9メートル)のオーダでの寸法では、場合により、ナノプリンティング又は電子ビームリソグラフ技法の使用が必要となり得る。より大きいファセット330をエッチングすることは、フットプリントがより大きいことを意味し、この場合、後に発生する欠陥が増える。より小さいファセットでは、その反対の事象が見られる。溝の反復周期に関して、それが大きいほど転移のレベルがより良好であり、それは、これが第一の成長段階中に減少し、そこからさらに結晶が伸長すると、欠陥のない材料の生成につながるからである。用途に応じて、妥協点を決定する必要があり得る。何れの場合も、より大きいファセット330をより短い時間で作ると、最終的により多くの欠陥ができると言うことができる。
【0081】
幅がより広く、μmの範囲であると、特にシリコン上で成長端の良好な合体を得ること等、他の課題が生じる危険性があり、この場合、再溶融によるエッチングの潜在的問題の危険性もある。実際に、再溶融によるエッチングは、ガリウムとシリコンとの間で生じる化学反応であり、それがMOCVD成長に一般的な温度でのシリコンの強力な拡散につながり、ウェハ上の広い面積に損傷を与える危険性があり、その結果、その後のデバイス製造の障害となる。有利には、この現象を防止するために、この方法は、窒化ガリウム(GaN)を成長させる前にシリコン系の、好ましくはシリコンからなる基板上に窒化アルミニウム(AlN)の第一の層を成長させるステップを含む。
【0082】
より一般的に、窒化物(N)を含む少なくとも1つの材料からなり、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びアルミニウム(Al)から選択される材料のうちの少なくとも1つを有する少なくとも1つの層(480)を成長させるステップは、いくつかの成長ステップを含んでいてもよく、各ステップは、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びアルミニウム(Al)からの材料の少なくとも1つと共に窒化物(N)を含む材料の成長を含む。
【0083】
例えば、GaN又はInGaNの層を成長させるために、この方法は、{111}結晶方向を有する個別のシリコン系のファセットから直接開始してAlNを成長させる第一のステップを含む。次に、GaN又はInGaNをAlNから開始して成長させる。
【0084】
好ましくは、AlInGaN又はInNの層を成長させるために、この方法は、
- {111}結晶方向を有する個別のシリコン系のファセットから直接開始してAlNを成長させる第一のステップと、
- このAlの成長から開始してGaNを成長させる第二のステップと、
- GaNから開始してAlInGaN又はInNを成長させる第三のステップと
を含む。
【0085】
好ましくは、InAlNの層を成長させるために、この方法は、
- {111}結晶方向を有する個別のシリコン系のファセットから直接開始してAlNを成長させる第一のステップと、
- このAlの成長から開始してGaNを成長させる第二のステップと、
- GaNから開始してInAlNを成長させる第三のステップと
を含む。
【0086】
好ましくは、AlGaNの層を成長させるために、この方法は、
- {111}結晶方向を有する個別のシリコン系のファセットから直接開始してAlNを成長させる第一のステップと、
- このAlNの成長から開始してAlGaNを成長させる第二のステップと
を含む。
【0087】
他の解決策によれば、より詳しくは、Gaの比が十分に低い場合、{111}結晶方向を有する個別のシリコン系のファセットから直接開始してAlGaNを成長させる。
【0088】
任意選択により、{111}ファセット330の大きさは、エッチング時間に応じて異なっていてもよい。完全なV溝を有することは必須ではなく、不完全な溝420を有することも可能であり、この場合、より小さいファセットの溝が得られる。
【0089】
有利には、ファセットを有する溝はより小さいため、より低い転移密度が得られる。
【0090】
次に、マスキング層が形成され、これは長いストリップの形状である。
【0091】
例えば、このマスクは、溝410、420を含む基板310上に堆積された感光性樹脂等の樹脂の層から得られる。
【0092】
次に、長い樹脂のストリップを露光させることにより、第二のレベルのリソグラフィが実行される。この第二のレベルのマスクは、任意選択により、V溝を作るために使用されるものと同じであり、これは異なる程度に回転させて使用される。このステップの結果が
図4cにおいて説明されており、これは樹脂が現像された後に残った線440を示す。
【0093】
何れの種類のマスクが使用されてもよく、本発明は何れの特定のマスキング材料にも限定されない。
【0094】
任意選択により、線は90°の角度と異なる角度470で形成されてもよい。
【0095】
例えば、溝410、420の主要方向と線の主要方向との間の小さい角度470は、30°より大きく、好ましくは40°~90°である。1つの実施形態によれば、この角度は、50°~90°である。1つの実施形態によれば、この角度は、55°~65°である。この角度470は、結晶層310により形成される基板の底部に平行な平面内、すなわち
図4a~4hによる水平面において測定される。この角度は、
図4c及び4dで説明されている。したがって、この角度は、ストリップ440の向きの方向と結晶層410の外面の平面及び<111>面に共通の方向との間に画定され、この共通の方向は、前述のように、溝32、410、420の向きの方向である。
【0096】
ストリップの幅442はまた、100nmの下限と15μmの上限との間で変化してもよい。
【0097】
樹脂のストリップ440が所定の場所に残された状態で、シリコンのマスキングされていない領域は、マイクロエレクトロニクス業界で使用されるシリコンのエッチングのための多くの方法のうちの何れか1つによりエッチングされる。これにより、
図4dにおいて説明されているようなトレンチ450ができる。
【0098】
その結果、その前に溝410、420によって画定されていた{111}方向の連続ファセット330が今度は中断され、それぞれトレンチ450によって相互に分離された個別のファセット330’の配列を画定する。
【0099】
図4eは、ストリップのマスクを通じたエッチング後、マスクを除去した後の全シリコン基板のトレンチ及びV溝を示す。参照番号456は、エッチング後の図であり、458は、この場合、平坦でない底部451を有するトレンチ450により分離された不完全なV溝420を示す実際の画像である。実際には、切り取られたトレンチ450の底部451の面は、V溝の表面の上部を再現している。ここで、{111}方向のファセット330はトレンチ450の底部451の高さで再現されているが、これらはエッチング及びイオン衝撃の結果として大きく変形しており、したがって、これらは良好な結晶成長に適合していない点を指摘すべきである。
【0100】
切り取られたトレンチ452の深さは、少なくともV溝320の底部411、421に対応しなければならない。この最後に述べたパラメータは、第一のマスクの開口の幅454に依存する。例えば、マスクの開口の幅が5μmである場合、形成されるV溝の深さは5μmに近付き、これは、したがって深さ5μmのトレンチ450を必要とする。しかしながら、これは特定の向きの一例にすぎない。大きさはファセットの角度に応じて変化してもよい。例えば、Si(114)において、{111}ファセット330は74°及び35°であり、これにより、その大きさは深さに応じて変化する。
【0101】
より一般的には、切り取られたトレンチ452は、v溝の底部411、421と同等の深さか、又はそれよりはるかに深い。
【0102】
トレンチ450及び溝320の深さは、基板310の底部に垂直な方向に測定される。説明されている図面では、トレンチ450及び溝320の深さは、垂直方向に測定される。
【0103】
より浅いエッチングも容認可能であり、それは、成長が選択的であるためである。したがって、100nm~50μmの範囲の深さが有効である。エッチングされた溝の底部が平坦であるという事実は重要な点ではなく、それは、最終的にSiO2で覆われ、そこで成長が行われないからである。
【0104】
図4fは、次のステップの結果を示し、その間にマスキング層460、例えば二酸化シリコン(SiO2)又は窒化シリコン(SiN)系の又はそれからなる誘電層が、{111}方向の個別のファセット330’以外の全表面上に堆積される。このステップは、標準的なイオンビームスパッタリング(IBS)設備を使って実行され、堆積角度は、この場合、{111}方向のファセット330上で起こる堆積を防止するように調節できる。その結果、個別のファセット330’は、{111}方向を有し、相互に分離された個別のファセット330’のアレイ335を一緒に形成する。特に、マスキング層460は、例えば
図4fからわかるように、{111}方向のファセットに対向するファセットを覆う。
【0105】
図4gは、以下の材料Ga、In、及びAl(材料V-N)480のうちの少なくとも1つを用いて得られる窒化物の成長が、誘電マスキング層460により覆われていない個別の{111}ファセット330’からどのように開始されるかを示す。
図4g及び4fに示されているように、このマスキング層460は、基板310と層480との間に配置される。矢印341は、前述のように、c面における成長の方向を示し、矢印472及び474は、本発明の構造中で成長が横方向にも延びてトレンチを埋める様子を示す。留意すべき点として、
図4gは、明らかに成長の方向を示すことを目的としているにすぎず、現実を正確に表すものではない。実際には、エピタキシャル成長により、横方向の合体及び線上の合体、すなわち方向341、472、474の各々への成長が可能である。
【0106】
成長は、主として方向341に起こる。
【0107】
その結果、成長は、{111}結晶方向を有する前記個別のファセット330’からのみ開始する。
【0108】
より長い成長時間及び最適化された成長の条件において、結晶は溝から基板の表面の上方に向かう。これは、基本的に低いV-III比で得られてもよい。
【0109】
最後に、
図4hに示されるように、エピタキシャル材料の成長が継続し、最も高い位置の最終的な表面がV-N系の連続的な半極性層480を形成する間にすべての結晶の合体が得られる。
【0110】
図5a及び5bは、
図4g及び4hに示されている構造の、{111}方向のファセットを通過する、{111}方向のファセットに垂直であり、且つ平行なトレンチに垂直な2つの断面図である。この断面の平面は、
図4fにおいてPで示される。
【0111】
これらの図面は、したがって{111}方向のファセット330’を示し、そこから核480の成長が開始する。ごく単純化された
図4gと異なり、
図5aは、核480の横方向の成長、すなわちトレンチ450内における上述の方向472及び474への成長を示す。成長の方向341、472、及び474は
図5a及び5bにも示されている。したがって、横方向の成長は溝に沿って、エッチングされたトレンチの上方で起こる。この種のエピタキシは、ペンデオ・エピタキシと呼ばれてよい。
【0112】
これらの{111}方向のファセット330’は、好ましくはマスキング層460で覆われているトレンチ541の底部の上方に位置付けられている。トレンチ450の底部451は、トレンチ450の窪んだ起伏部により形成される底部であり、この底部が1つ又は複数の層、例えばマスキング層460により覆われているか否かを問わない。この底部は、平坦であってもなくてもよい。
【0113】
図5aに示されているように、核480は合体前に「空洞の上方」に成長し、すなわち、これらはトレンチ450の底部451から離れて成長する。したがって、空洞の空間500、すなわち中実の材料のない部分が成長している核480と、マスキング層460により覆われる基板310との間に存在する。
【0114】
その結果、その成長の少なくとも一部において、核480は、トレンチ450の底部451と接触することから生じる応力に曝されずに成長する。これにより、核480において、その成長の少なくとも一部において欠陥を減らすことが可能となる。したがって、最終的に得られた半極性層480中の欠陥が減少する。
【0115】
図5bに示されるように、非限定的であるが特に有利な実施形態によれば、核480の合体は、核480がトレンチ450の底部451と接触していないとき、又は核480がトレンチ450の底部451と完全には接触していないときに起こる。
【0116】
好ましくは、トレンチ450及び溝320の幅(方向472及び474に向かう)と深さ(基板310の厚さを通る)との寸法は、核の少なくともいくつかがトレンチ450の底部451と完全には接触することなく、核480の合体が可能にするように構成される。当然のことながら、マスキング層460の厚さも、成長する核480と接触しないような寸法とされる。
【0117】
ある有利な実施形態によれば、核480の少なくとも一部、好ましくは全部がトレンチ450の底部451から完全に離れている。したがって、これらの核は、トレンチ450の底部451と接触せず、また、トレンチの底部を覆うマスキング層460等の任意選択による層と接触しない。
【0118】
図5bは、したがって、各種の核の合体後、半極性層480と、任意選択によりマスキング層460により覆われているトレンチ450の底部との間に空間500が存在する実施形態を示す。
【0119】
好ましくは、空間500は、最終的な半極性層とトレンチ450の底部との間に存在する。
【0120】
これらの実施形態は、いくつかの非常に有利な技術的効果を提供する。
【0121】
トレンチ450の上方、したがって「空洞の」空間500の上方で各種の核が合体することにより、合体中の応力をより良好に解放し、GaNの層における応力を減少させることができる。
【0122】
その結果、横方向選択成長を経た領域における応力勾配のないエピタキシャル層が得られる。
【0123】
比較のために、「ELO」型(「エピタキシャル横方向選択成長」の略語)の構造は、上及び横方向のファセットの湾曲を誘発し、これは合体中の問題に反映される(転移及び生じ得る空洞の発生)。
【0124】
最終的に、本発明は、半極性層480の欠陥数を大幅に減らすことができる。
【0125】
さらに、トレンチの底部451の少なくとも一部分上にこの空間500が存在することにより、半極性層の剥離が、それと基板との間の界面がより脆弱になるために容易になる。したがって、本発明により、剥離中のGaNの層の破損のリスクを低減させることができる。
【0126】
留意すべき点として、これらの技術的な効果及び利点は、半極性層480の一部がトレンチ450の底部451と接触していたとしても得られる。
【0127】
本発明による製造方法の非限定的な例を以下に説明する。この方法の主要なステップは、
図4a~4hに関してすでに説明した:
ステップ1:例えば、SiO2からなる保護層430のクリーンな基板310への堆積。堆積される層の厚さは約10nmで十分であるが、調節されてもよい。SiO2の代わりにSiN又はTiNも使用してよい。
ステップ2:整列して切り取られた第一のマスクを用いたリソグラフィと樹脂の成長。
ステップ3:樹脂が依然として上にある間に、露出した保護層(SiO2又はSiN又はTiN)が、例えば、酸素の存在中にトリフルオロメタンプラズマ(CHF3/O2プラズマ)中でエッチングされる。その他のエッチング溶液も使用されてよい。このステップは、その後のKOH又はTMAHでの異方性ウェットエッチングのための開口を作ることを目的としている。別の解決策によれば、緩衝酸化物エッチング溶液(BOE)を使ってマスクを除去してもよい。
ステップ4:樹脂がアセトン及び酸素のプラズマを使って除去される。
ステップ5:KOH又はTMAHでのエッチングを開始し、
図4aに示されるような完全又は不完全なV溝320を形成する所望の{111}ファセット330を形成する。
ステップ6:溝の形成された基板を塩化水素(HCl)で洗浄し、KOHの結晶残留物を表面から除去する。
ステップ7:SiO2又SiN又はTiNの保護マスクを、緩衝エッチング溶液BOEを使って除去し、したがって、
図4bに示されるように、全シリコンの切欠き部のある基板を得る。
ステップ8:整列した第二のマスクを用いたリソグラフィ。マスクは、任意選択により、第一のマスクと同じであってもよいが、異なる向きで使用される。リソグラフィは、その結果、V溝の深さに応じて適応される。例えば、5μmの深さのV溝には200mJの露光エネルギーが必要となり、最終的により長い現像時間が必要となる。例えば、深さ1μmのより浅い溝の場合、120mJのオーダのより低い露光エネルギーが必要となる。上述の数字はまた、使用される樹脂の種類及び結果的に得られる厚さにも依存してよい。
次に、樹脂が現像される(
図4c)。
ステップ9:パターンを形成し、マスクとして使用される樹脂から開始して、シリコンの異方性エッチングを六フッ化硫黄(SF6)(又はその他のエッチング溶液)の誘導結合プラズマ(ICP)中で実施し、直線の側壁を有するトレンチ450を形成する(
図4d)。
ステップ10:アセトン及び酸素のプラズマを使って樹脂を除去する。
ステップ11:SiO2又はSiN又はTiNの角堆積を{111}面以外の全表面に実行し、1方向cへのエピタキシャル層の成長を強制する。
ステップ12:マスキングされていない{111}面から開始して、以下の材料:ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びアルミニウム(Al)の少なくとも1つを用いて得られる窒化物の層をエピタキシャル成長させる。以下の材料:ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びアルミニウム(Al)の少なくとも1つを用いて得られる前記窒化物の性質に応じて、第一の層、典型的にはAlNがファセット330’上に最初に成長する。
【0128】
上記ステップ全体を通じて、マスクを形成する保護コーティングの代わりに、他の何れの種類のマスキング材料を用いてもよい。
【0129】
実験では以下の成長速度が見られた:
- 半極性成長速度:1nm/s
- +c方向への成長速度:2.5nm/s、すなわち半極性方向への成長速度の約2.5倍。
【0130】
本発明の実行に関するその他の詳細のいくつかを以下に示す。これらの詳細は、特に、上述の成長速度に関するGaN系のエピタキシャル層の成長に関する。
- 材料:V/IIIモル比は100~200である。この比は、できるだけ低く保持しなければならない。好ましい実施形態によれば、比V/IIIは440に略等しいが、440未満の数値でも同様の結果を得ることができ、2000までの数値に到達してもよい。これらの数値はまた、MOCVD(金属有機化学蒸着)リアクタの構成及び質量流量能力にも依存する。実験は、AIXTRON AG社製の直接制御(クローズカップルシャワーヘッドの省略CCS)方式のThomas Swanエピタキシリアクタを使って行った。
- 温度:有利には、温度は1000℃より高く保持される。これにより、結晶の品質を向上させることができる。それより低温ではファセットが波状になり得る。
- 圧力:圧力は、好ましくは、50~700mbarに保持される。しかしながら、圧力はリアクタの能力に依存する重要パラメータではないことがわかっている。
【0131】
これらの成長条件によれば、半極性層の成長方向を改善することができ、その結果、基板の表面上で結晶を得ることができる。
【0132】
非限定的な実施形態によれば、本発明により得られるパターンは以下の寸法を有していてもよい:
- V溝320のピッチp1:このピッチp1はまた、第一のレベルのリソグラフィの期間として定義されてもよい。好ましくは、これは50nm≦p1≦15μmとなるような範囲内である。これは、大きい面積での処理を容易にしながら、効果的に合体させることができる。溝320のピッチp1は、溝の幅454に、2つの連続する溝を分離する距離を加算したものである。ピッチp1は、基板310の底部に平行な平面、すなわち説明されている図面内で水平の平面内で測定される。
- トレンチ450のピッチp2:このピッチp2はまた、第二のレベルのリソグラフィの期間として定義されてもよい。典型的に、p2は、p1より2.5倍小さくなるように選択される。例えば、p1が10μmと等しくなるように選択されると、p2は4μm±30%に近くなければならない。有利には、この比によって全方向への同時合体が確実に行われる。その結果、好ましい実施形態によれば、V溝320のピッチとトレンチ450のピッチとは相応に調節される。トレンチ450のピッチp2は、トレンチの幅に、2つの連続するトレンチ450を分離する距離を加算したものである。ピッチp2は、基板310の底部に平行な、すなわち、説明されている図面内の水平な平面内で測定される。
- 以下の材料:ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びアルミニウム(Al)のうちの少なくとも1つを用いて得られる窒化物のエピタキシャル成長がそこから開始するファセットの寸法:このファセットの寸法は、50nmからピッチ及び開口に依存する完全なV溝の数値までの範囲である。
【0133】
基板とV-N系材料の成長層との間の接触を減らすことにより、発生する欠陥の数が減る。転移の連鎖の空間分布の点で、この基板構成により、基板/V-N材料の界面の接触により発生する初期欠陥の数を減らすことができる。
【0134】
さらに、本発明の方法により、合体前により多くの結晶領域を形成することができ、これは、基底面に沿った転移の曲がりがより大きくなり、その結果、表面に広がる転移がより少なくなることを意味し、これはP.Vennegues et al.“Reduction mechanisms for defect densities in the V-N material using one- or two-step epitaxial lateral overgrowth methods”,JOURNAL OF APPLIED PHYSICS.AMERICAN INSTITUTE OF PHYSICS,NEW YORK,US,Vol.87,no.9,1 May 2000(2000-05-01),Pages 4175-4181の著作物で説明されている。
【0135】
基底面積層欠陥(BSF)の分布に関して、BSFは成長方向-cから開始することがわかっているため、本発明のピラー構造の製作により、-c面における拡張がさらに減少し、これがBSFの低減化につながる。
【0136】
上述の説明から、本発明により、以下の材料:ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びアルミニウム(Al)のうちの少なくとも1つを用いて得られた窒化物のエピタキシャル層をシリコン基板上において成長させる際の結晶構造の欠陥を削減できることが明らかである。
【0137】
したがって、本発明により、より高効率の緑色LEDを得ることが可能となる。
【0138】
本発明は、上述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲により包含される実施形態のすべてに及ぶ。