(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】熱交換器のリーク検知方法
(51)【国際特許分類】
F28F 11/00 20060101AFI20220112BHJP
F28F 1/00 20060101ALI20220112BHJP
F28F 9/02 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
F28F11/00 A
F28F1/00 D
F28F9/02 J
(21)【出願番号】P 2018001928
(22)【出願日】2018-01-10
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】小田 拓央
(72)【発明者】
【氏名】石黒 達男
(72)【発明者】
【氏名】近藤 喜之
(72)【発明者】
【氏名】原 伸英
(72)【発明者】
【氏名】笠原 二郎
(72)【発明者】
【氏名】鴨 和彦
(72)【発明者】
【氏名】平岡 賢
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-280864(JP,A)
【文献】特開昭55-098326(JP,A)
【文献】特開2005-098694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/00,9/02,11/00
F28D 7/00-7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一伝熱面を有し、第一の流体が流通する第一流通部と、
前記第一伝熱面と対向する第二伝熱面を有し、前記第一伝熱面との間が不活性空間とされ、前記第一の流体と異なる第二の流体が流通する第二流通部と、を備える熱交換器のリーク検知方法であって、
前記不活性空間の圧力を測定する圧力測定工程と、
前記不活性空間の温度を取得し、前記温度に基づいて閾値を算出する閾値算出工程と、
前記圧力が前記閾値よりも大きい場合に、リークが発生したと判定するリーク判定工程と、を有
し、
前記閾値算出工程では、前記温度は、前記第一流通部に供給される第一の流体の温度と、前記第一流通部から排出される第一の流体の温度と、前記第二流通部に供給される第二の流体の温度と、前記第二流通部から排出される前記第二の流体の温度と、に基づいて算出される熱交換器のリーク検知方法。
【請求項2】
前記閾値算出工程では、前記温度は、前記第一流通部に供給される第一の流体の温度と、前記第一流通部から排出される第一の流体の温度と、前記第二流通部に供給される第二の流体の温度と、前記第二流通部から排出される前記第二の流体の温度と、の平均とする請求項1に記載の熱交換器のリーク検知方法。
【請求項3】
前記閾値算出工程では、前記温度は、前記第一流通部に供給される第一の流体の温度と、前記第一流通部から排出される第一の流体の温度と、前記第二流通部に供給される第二の流体の温度と、前記第二流通部から排出される前記第二の流体の温度と、の平均に時間遅れを加味した係数を乗じることで算出される請求項1に記載の熱交換器のリーク検知方法。
【請求項4】
前記閾値算出工程では、前記温度は、前記第一流通部に供給される第一の流体の温度と、前記第一流通部から排出される第一の流体の温度と、前記第二流通部に供給される第二の流体の温度と、前記第二流通部から排出される前記第二の流体の温度に加えて、前記第二の流体の流量、及びケーシングの熱容量に基づいて算出される請求項1に記載の熱交換器のリーク検知方法。
【請求項5】
前記熱交換器は、
前記第一の流体が供給される第一供給口、及び前記第一の流体が排出される第一排出口を有する筒状のケーシングと、
前記ケーシングの内部空間を通過するように延びるとともに、内側に前記第二の流体が流通する内管と、
前記内部空間を通過するように、前記内管を内側に収容して前記内管の延在方向に延びるとともに、前記内管との間が不活性空間とされた外管と、を有し、
前記第一伝熱面は、前記外管の内周面であり、
前記第二伝熱面は、前記内管の外周面である請求項1
から4のいずれか一項に記載の熱交換器のリーク検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器のリーク検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガスタービンでは、翼を冷却する空気と、燃料ガスとの間で熱交換器を用いて熱交換を行い、省エネルギー化を図っている(例えば、特許文献1参照)。
熱交換器としては、例えば、シェルアンドチューブ式と呼ばれる多管式熱交換器が知られている。多管式熱交換器は、筒状のケーシングと、ケーシングの内部にケーシングの軸線と平行に配置された複数の伝熱管を有している。
上記した熱交換器では、伝熱管に高温の燃料ガスを通過させ、管板間に空気を通過させることによって熱交換を実施している。
【0003】
また、熱交換器としては、複数のプレートを有し、各々のプレート間に形成された流路に高温流体と低温流体とを流して熱交換するプレート式熱交換器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記構造の熱交換器の運用に際しては、伝熱管の劣化などによる気体のリークを如何に早期に検知するかが課題となっている。
【0006】
この発明は、第一の流体が流通する第一流通部と、第一の流体と異なる第二の流体が流通する第二流通部とを備える熱交換器において、気体のリークを早期に検知可能な熱交換器のリーク検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様によれば、熱交換器のリーク検知方法は、第一伝熱面を有し、第一の流体が流通する第一流通部と、前記第一伝熱面と対向する第二伝熱面を有し、前記第一伝熱面との間が不活性空間とされ、前記第一の流体と異なる第二の流体が流通する第二流通部と、を備える熱交換器のリーク検知方法であって、前記不活性空間の圧力を測定する圧力測定工程と、前記不活性空間の温度を取得し、前記温度に基づいて閾値を算出する閾値算出工程と、前記圧力が前記閾値よりも大きい場合に、リークが発生したと判定するリーク判定工程と、を有し、前記閾値算出工程では、前記温度は、前記第一流通部に供給される第一の流体の温度と、前記第一流通部から排出される第一の流体の温度と、前記第二流通部に供給される第二の流体の温度と、前記第二流通部から排出される前記第二の流体の温度と、に基づいて算出される。
【0008】
このような構成によれば、不活性空間の温度及び圧力に基づいて、リークを早期に検知することができる。また、不活性空間の圧力及び温度を連続して取得することにより、熱交換器の運転中でもリークを検知することができる。
【0009】
上記熱交換器のリーク検知方法において、前記閾値算出工程では、前記温度は、前記第一流通部に供給される第一の流体の温度と、前記第一流通部から排出される第一の流体の温度と、前記第二流通部に供給される第二の流体の温度と、前記第二流通部から排出される前記第二の流体の温度と、の平均としてよい。
上記熱交換器のリーク検知方法において、前記閾値算出工程では、前記温度は、前記第一流通部に供給される第一の流体の温度と、前記第一流通部から排出される第一の流体の温度と、前記第二流通部に供給される第二の流体の温度と、前記第二流通部から排出される前記第二の流体の温度と、の平均に時間遅れを加味した係数を乗じることで算出されてもよい。
上記熱交換器のリーク検知方法において、前記閾値算出工程では、前記温度は、前記第一流通部に供給される第一の流体の温度と、前記第一流通部から排出される第一の流体の温度と、前記第二流通部に供給される第二の流体の温度と、前記第二流通部から排出される前記第二の流体の温度に加えて、前記第二の流体の流量、及びケーシングの熱容量に基づいて算出されてもよい。
【0010】
このような構成によれば、不活性空間の温度の測定が難しい場合においても、リークを検知することができる。
【0011】
上記熱交換器のリーク検知方法において、前記熱交換器は、前記第一の流体が供給される第一供給口、及び前記第一の流体が排出される第一排出口を有する筒状のケーシングと、前記ケーシングの内部空間を通過するように延びるとともに、内側に前記第二の流体が流通する内管と、前記内部空間を通過するように、前記内管を内側に収容して前記内管の延在方向に延びるとともに、前記内管との間が不活性空間とされた外管と、を有し、前記第一伝熱面は、前記外管の内周面であり、前記第二伝熱面は、前記内管の外周面であってよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、不活性空間の温度及び圧力に基づいて、リークを早期に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第一実施形態の熱交換器の断面図である。
【
図2】本発明の第一実施形態の熱交換器の制御装置のリーク検知部について説明するグラフである。
【
図3】本発明の第一実施形態の熱交換器のリーク検知方法を説明するフローチャートである。
【
図4】本発明の第二実施形態の熱交換器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔第一実施形態〕
以下、本発明の第一実施形態の熱交換器のリーク検知方法について図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態の熱交換器は、シェルアンドチューブ式と呼ばれる多管式熱交換器である。熱交換器は、ケーシングの内部に複数の伝熱管を収容して、伝熱管の内側と外側とに異なる温度の流体を流すことで熱交換を行う。
本実施形態の熱交換器は、ガスタービンにおいて、燃料ガスと、冷却に用いられる空気との間で熱交換を行い、燃料ガスを加熱するとともに、空気を冷却する。ただし、熱交換器の用途はこれに限ることはない。
【0015】
図1に示すように、熱交換器1は、ケーシング2と、ケーシング2内に配置され、伝熱管として機能する複数の内管3と、及び内管3を内側に収容した複数の外管4と、を有している。本実施形態の熱交換器1の伝熱管の一部は二重管である。なお、
図1には、1本の内管3と、2本の外管4のみ示すが、本実施形態の熱交換器1は、複数の内管3と複数の外管4を有している。
【0016】
ケーシング2は、ドーム形状(半球形状)の第一ドーム部5と、筒状の筒部7と、ドーム形状の第二ドーム部6と、を有している。第一ドーム部5は、筒部7に筒部7の一端を封止するように接続され、第二ドーム部6は、筒部7に筒部7の他端を封止するように接続されている。
【0017】
第一ドーム部5と筒部7とは、第一管板9で仕切られており、第一ドーム部5と第一管板9とによって燃料ガス室12が形成されている。燃料ガス室12は、仕切板16によって第一燃料ガス室12aと第二燃料ガス室12bとに仕切られている。
第二ドーム部6と筒部7とは、第三管板11で仕切られており、第二ドーム部6と第三管板11とによって第一窒素ガス室13が形成されている。
【0018】
第一管板9、筒部7、及び第二管板10によって形成される空間は、第二管板10によって仕切られている。第二管板10は、第一管板9と第二管板10との距離が、第二管板10と第三管板11との距離よりも小さくなるように配置されている。
筒部7と第一管板9と第二管板10とによって第二窒素ガス室14が形成されている。
筒部7と、第二管板10と、第三管板11と、複数の外管4によって空気A(第一の流体)が導入される空気室15(第一流通部)が形成されている。
【0019】
第一ドーム部5には、第一燃料ガス室12aに燃料ガスFG(第二の流体)を供給する燃料ガス供給口18と、第二燃料ガス室12bから燃料ガスFGを排出する燃料ガス排出口19とが形成されている。
筒部7には、空気室15に空気Aを供給する空気供給口20(第一供給口)と、空気室15から空気Aを排出する空気排出口21(第一排出口)とが形成されている。また、筒部7には、第二窒素ガス室14から窒素ガスNGを排出する窒素ガス排出口23が形成されている。
第二ドーム部6には、第一窒素ガス室13に窒素ガスNGを供給する窒素ガス供給口22が形成されている。
【0020】
外管4は、空気室15内に、筒部7の軸線方向D(以下、単に軸線方向Dと言う。)に延びて第一窒素ガス室13と第二窒素ガス室14とを接続する配管である。外管4の一端は、第二管板10に接続され、外管4の他端は、第三管板11に接続されている。外管4の内側の空間を介して、第一窒素ガス室13と第二窒素ガス室14とは連通する。
外管4の内周面4s(第一伝熱面)は、空気室15の伝熱面として機能する。
【0021】
内管3は、U字型の配管である。内管3の一端3a及び内管3の他端3bは、第一管板9に接続されている。内管3は、第一燃料ガス室12a内の燃料ガスFGが内管3の一端3aを介して内管3の内側に流通し、内管3の他端3bを介して第二燃料ガス室12bに排出されるように配置されている。
【0022】
内管3は、直線状の第一直線部25及び第二直線部26と、第一窒素ガス室13内で第一直線部25と第二直線部26とを接続する弧状のベンド部27と、を有している。第一直線部25と第二直線部26とは、外管4の内側に収容されるようにして延在している。これにより、内管3の外周面(第二伝熱面)と、外管の内周面(第一伝熱面)とは対向するように配置される。
ベンド部27は、第一窒素ガス室13内に配置されている。外管4は、空気室15(ケーシング2の内部空間)を通過するように、内管3を内側に収容して内管3の延在方向である軸線方向Dに延びている。
内管3の内側IS(第二流通部)は、燃料ガスFGとは異なる第二の流体である空気Aが流通し、内管3の外周面(第二伝熱面)は、伝熱面として機能する。
【0023】
外管4の外径は、例えば、内管3の外径の1.1倍から1.2倍とすることができる。外管4の外径は、内管3の外周面と外管4の内周面との間に所定の空間が形成されるように設定されている。
空気室15には、空気室15の空気Aの流れが外管4にできるだけ等しく当たるように、複数のバッフルプレート28が設けられている。バッフルプレート28は、外管4を支持する支持部材としても機能する。
【0024】
本実施形態の熱交換器1は、複数の温度センサTS1,TS2,TS3,TS4と、圧力センサPSと、制御装置60と、を有している。
熱交換器1は、燃料ガス供給口18の内部を流れる気体の温度T1を測定する第一温度センサTS1と、燃料ガス排出口19の内部を流れる気体の温度T2を測定する第二温度センサTS2と、空気供給口20の内部を流れる気体の温度T3を測定する第三温度センサTS3と、空気排出口21の内部を流れる気体の温度T4を測定する第四温度センサTS4と、を有している。
【0025】
熱交換器1は、第一窒素ガス室13内の気体の圧力Pを測定する圧力センサPSを有している。
温度センサTS1,TS2,TS3,TS4によって測定された温度T1,T2,T3,T4、及び圧力センサPSによって測定された圧力Pは、制御装置60に送信される。
【0026】
制御装置60は、温度センサTS1,TS2,TS3,TS4によって測定された温度T1,T2,T3,T4、及び圧力センサPSによって測定された圧力Pに基づいて、リークを検知するリーク検知部61を有している。ここで言うリークは、劣化等により伝熱管を構成する内管3又は外管4に生じたリークである。
【0027】
リーク検知部61は、リーク検知の基準となる閾値Lを算出する数式(1)を記憶している。
L=1.1×(R/V)×T ・・・(1)
数式(1)は、理想気体の状態方程式PV=RTによる直線P=(R/V)×Tに基づく式である。ここで、係数Rは、モル気体定数であり、Vは熱交換器1の仕様によって決定する体積である。即ち、R/Vは一定である。また、温度Tは、不活性空間NAの温度である。
【0028】
リーク検知部61は、温度センサTS1,TS2,TS3,TS4によって測定された温度T1,T2,T3,T4に基づいて不活性空間NAの温度Tを取得する機能を有している。本実施形態のリーク検知部61は、以下の数式(2)により、不活性空間NAの温度Tを推定することにより、温度Tを取得する。
T = (T1+T2+T3+T4)/4 ・・・(2)
即ち、本実施形態の制御装置60は、不活性空間NAの温度Tは、温度T1,T2,T3,T4の平均としている。
【0029】
リークが発生した場合は、内管3の外周面と外管4の内周面との間の空間、即ち、不活性空間NAの圧力が上昇するため、不活性空間Aによりリークを検知することができる。
リーク検知部61は、数式(2)により取得した温度T、及び数式(1)により、温度Tの場合の閾値Lを決定する。リーク検知部61は、圧力センサPSによって測定された圧力Pと閾値Lとを比較し、圧力Pが閾値Lよりも大きい場合に、気体のリークが発生していると判定する機能を有している。
【0030】
リーク検知部61について、
図2に示すグラフを用いて説明する。一点鎖線で示す直線は、理想気体の状態方程式による直線であり、理想気体の状態方程式PV=RTによる直線P=(R/V)×Tである。直線Lは、数式(1)による直線であり、温度Tと閾値Lとの関係式である。
温度T、及び圧力Pによりプロットされる点が直線Lよりも下にある場合、圧力Pは通常の値であると判定される。温度T、及び圧力Pによりプロットされる点が直線Lよりも上にある場合、圧力Pは異常な値であると判定され、リークが発生していると判定される。
【0031】
次に、本実施形態の熱交換器1の作用について説明する。
第一窒素ガス室13には、図示しない窒素ガス供給装置から窒素ガス供給口22を介して窒素ガスNGが供給される。第一窒素ガス室13に供給された窒素ガスNGは、内管3の外周面と外管4の内周面との間の空間に流入した後、第二窒素ガス室14に導入され、窒素ガス排出口23から排出される。
第一窒素ガス室13内、第二窒素ガス室14内、及び内管3の外周面と外管4の内周面との間の空間は、不活性ガスである窒素ガスNGで満たされた不活性空間NAとなる。
【0032】
燃料ガス供給口18を介して第一燃料ガス室12aに燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、内管3の一端3aから内管3の内側に流入した後、内側の他端3bから第二燃料ガス室12bに導入されて燃料ガス排出口19から排出される。
空気供給口20を介して空気室15に空気Aが供給されると、空気Aはバッフルプレート28に衝突しながら、空気室15内を流れた後、空気排出口21から排出される。
この間、燃料ガスFGと空気Aとの間で窒素ガスNGを介して熱交換が行われ、燃料ガスFGが加熱されるとともに、空気Aが冷却される。
【0033】
次に、本実施形態の熱交換器のリーク検知方法について説明する。
熱交換器のリーク検知方法は、不活性空間NAの圧力Pを測定する圧力測定工程S1と、不活性空間NAの温度Tを取得して数式(1)により閾値Lを算出する閾値算出工程S2と、比較工程S3と、リーク判定工程S4と、を有している。
【0034】
圧力測定工程S1では、圧力センサPSを用いて不活性空間NAの実際の圧力である圧力Pを測定する。圧力Pは制御装置60に送信される。
【0035】
閾値算出工程S2では、温度センサTS1,TS2,TS3,TS4を用いて燃料ガス供給口18の内部を流れる気体の温度T1と、燃料ガス排出口19の内部を流れる気体の温度T2と、空気供給口20の内部を流れる気体の温度T3と、空気排出口21の内部を流れる気体の温度T4が測定される。温度T1,T2,T3,T4は制御装置60に送信される。
制御装置60は、リーク検知部61に記憶された数式(2)を用いて温度Tを取得し、数式(1)を用いて閾値Lを算出する。
【0036】
比較工程S3では、圧力Pが閾値Lよりも大きいか否かを判定する。
圧力Pが閾値Lよりも大きい場合、リーク判定工程S4にてリークが発生したと判定する。
【0037】
上記実施形態によれば、不活性空間NAの温度T及び圧力Pに基づいて、リークを早期に検知することができる。また、不活性空間NAの圧力P及び温度Aを連続して取得することにより、熱交換器1の運転中でもリークを検知することができる。
また、不活性空間NAの温度Tを温度T1,T2,T3,T4の平均として取得することによって、不活性空間NAの温度の測定が難しい場合においても、リークを検知することができる。
【0038】
また、燃料ガスFGが供給される空間と空気Aが供給される空間との間に、不活性空間NAである窒素ガス空間が存在することによって、燃料ガスFGと空気Aとの混合を防止することができる。即ち、内管3と外管4の一方に不具合が発生して流体が漏れた場合においても、内管3と外管4との間が不活性空間NAとされていることによって、燃料ガスFGと空気Aとが混合して爆発する等の不具合を防止することができる。
【0039】
また、内管3のうちベンド部27が固定されていないため、内管3に発生する熱応力を発生させない構造とすることができる。
【0040】
なお、上記実施形態では、温度Tを温度T1,T2,T3,T4の平均から取得する構成としたがこれに限ることはない。例えば、熱交換器の理論に基づいて上記平均に、時間遅れを加味した係数を乗じてもよいし、気体の流量やケーシングの熱容量などを用いて推定精度を高めてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、第一の流体を燃料ガスFG、第二の流体を空気Aとしたが、これに限ることはなく、例えば、第一の流体が酸化剤に、第二の流体が還元剤に該当する場合に適用することができる。
また、上記実施形態では、内管3と内管3と外管4との間を窒素ガスNGで満たす構成としたが、内管3と内管3と外管4との間は不活性空間NAであればよく、例えば、内管3と内管3と外管4との間を真空にしてもよい。
【0042】
〔第二実施形態〕
以下、本発明の第二実施形態の熱交換器について図面を参照して詳細に説明する。
図4に示すように、本実施形態の熱交換器1Bは、プレート式熱交換器である。本実施形態の熱交換器1Bは、ケーシング50と、燃料ガスFGが流通する燃料ガス流通部55と、空気Aが流通する空気流通部56と、を有している。燃料ガス流通部55と空気流通部56とは、複数のプレート51,52,53,54によってケーシング2内に区画された部位である。
【0043】
燃料ガス流通部55は、第一プレート51と第一プレート51と対向する第二プレート52によって形成されている。燃料ガス流通部55には、燃料ガス供給口18Dを介して燃料ガスFGが供給され、燃料ガス排出口19Dを介して燃料ガスFGが排出される。
【0044】
空気流通部56は、第三プレート53と、第三プレート53と対向する第四プレート54によって形成されている。空気流通部56には、空気供給口20Dを介して空気Aが供給され、空気排出口21Dを介して空気Aが排出される。
【0045】
各々のプレート51,52,53,54は、熱伸び差を吸収するような形状をなしている。本実施形態のプレート51,52,53,54は、波形状である。更に詳しくは、プレート51,52,53,54は、正弦波形状をなしている。なお、プレート51,52,53,54の形状は、熱伸び差を吸収するような形状であればよく、例えば、矩形波形状としてもよい。
【0046】
燃料ガス流通部55の第二プレート52と、空気流通部56の第三プレート53とは、対向して配置されている。即ち、第二プレート52と第三プレート53は、共通のプレートではなく、第二プレート52と第三プレート53とは、間隔を開けて配置されている。
【0047】
第二プレート52の第三プレート53との間には、窒素ガス供給口22Dを介して窒素ガスNGが供給されている。即ち、第二プレート52と第三プレート53との間は、不活性空間NAとされている。また、第二プレート52と第三プレート53との間からは、窒素ガス排出口23Dを介して窒素ガスNGが排出される。
【0048】
本実施形態の熱交換器1Bは、第一実施形態の熱交換器1と同様に、複数の温度センサTS1,TS2,TS3,TS4と、圧力センサPSと、制御装置と、を有している。制御装置は、第一実施形態の制御装置60と同様の機能を有している。
【0049】
上記実施形態によれば、プレート式熱交換器においても、不活性空間NAの温度T及び圧力Pに基づいて、リークを早期に検知することができる。
また、燃料ガスFGが供給される空間と空気Aが供給される空間との間に、不活性空間NAである窒素ガス空間が存在することによって、燃料ガスFGと空気Aとの混合を防止することができる。即ち、プレート51,52,53,54に不具合が発生して流体が漏れた場合においても、燃料ガス流通部55と空気流通部56との間が不活性空間NAとされていることによって、燃料ガスFGと空気Aとが混合して爆発する等の不具合を防止することができる。
また、プレート51,52,53,54が波形状とされていることによって、伝熱が促進されるのみならず、熱伸び差を吸収することができる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1,1B 熱交換器
2 ケーシング
3 内管
3s 内管の外周面
4 外管
4s 外管の内周面
5 第一ドーム部
6 第二ドーム部
7 筒部
9 第一管板
10 第二管板
11 第三管板
12 燃料ガス室
12a 第一燃料ガス室
12b 第二燃料ガス室
13 第一窒素ガス室
14 第二窒素ガス室
15 空気室
16 仕切板
18 燃料ガス供給口
19 燃料ガス排出口
20 空気供給口
21 空気排出口
22 窒素ガス供給口
23 窒素ガス排出口
25 第一直線部
26 第二直線部
27 ベンド部
28 バッフルプレート
50 ケーシング
51 第一プレート
52 第二プレート
53 第三プレート
54 第四プレート
55 燃料ガス流通部
56 空気流通部
60 制御装置
61 リーク検出部
A 空気
IS 内管の内側
PS 圧力センサ
TS 温度センサ
FG 燃料ガス
NA 不活性空間
NG 窒素ガス