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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】車両用衝突安全装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/56 20060101AFI20220112BHJP
   B60R 19/18 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
B60R19/56
B60R19/18 S
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018003649
(22)【出願日】2018-01-12
(65)【公開番号】P2019123280
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】橋村 徹
(72)【発明者】
【氏名】山川 大貴
(72)【発明者】
【氏名】前田 康裕
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-077822(JP,A)
【文献】特開2009-101848(JP,A)
【文献】特開2004-203211(JP,A)
【文献】特表2006-516513(JP,A)
【文献】特開2009-196599(JP,A)
【文献】特開2008-024023(JP,A)
【文献】実開平05-041994(JP,U)
【文献】特開2011-201513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延びる中空状のビームと、
前記ビームに連結されたステイと、
前記ステイが連結された前記ビームの部分の前記ビームの内部又は外部に配置された中空状の補強部材と
を備え、
前記ビームと前記補強部材とが前記ステイに対して共締めされており、
車高方向に並べて配置された複数の前記補強部材を備え、
複数の前記補強部材のうち最も上方に位置する前記補強部材の材料の降伏応力は、複数の前記補強部材のうちの他の前記補強部材の材料の降伏応力よりも大きい、車両用衝突安全装置。
【請求項2】
前記ビームは、
車長方向に離れて配置された一対のフランジと、
前記一対のフランジの間に、車高方向に離れて配置された複数のウェブと
を備える、請求項1に記載の車両用衝突安全装置。
【請求項3】
前記補強部材は、車高方向において隣接する前記ウェブと、前記一対のフランジとで囲まれる中空部に配置されている、請求項2に記載の車両用衝突安全装置。
【請求項4】
複数の前記ウェブのうち最も上方に位置する前記ウェブの厚みは、複数の前記ウェブのうちの他の前記ウェブの厚みよりも大きい、請求項2又は3に記載の車両用衝突安全装置。
【請求項5】
前記補強部材は、前記補強部材を前記ビームと前記ステイとに取り付けるためのボルトが螺合するピアスナットを備える、請求項2から4のいずれか1項に記載の車両用衝突安全装置。
【請求項6】
前記補強部材は、アルミニウム合金からなる、請求項5に記載の車両用衝突安全装置。
【請求項7】
前記ビームは、車幅方向に延びる凹部と、車幅方向に延びて前記凹部と嵌合する凸部とのうちの一方を備え、
前記補強部材は、前記凸部と前記凹部のうちの他方を備える、請求項1からのいずれか1項に記載の車両用衝突安全装置。
【請求項8】
前記ビームと前記補強部材とは、異なる種類の金属材料から形成されており、
前記ビームと前記補強部材との間には、絶縁性を有する接着剤が配置されている、請求項1からのいずれか1項に記載の車両用衝突安全装置。
【請求項9】
前記ビームは、アルミニウム合金からなる中空状の押出形材である、請求項1からのいずれか1項に記載の車両用衝突安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用衝突安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラックと乗用車とが衝突した場合に、乗用車がトラックの下部に潜り込んで、乗用車及び乗用車の乗員に損害を与えることを防止するために、トラック等の車両の前方及び後方には、一般的に、アンダーランプロテクタとよばれる衝突安全装置が設置されている。特に、日本国内では、トラック等の車両は、乗用車の車体前部がトラックなどの車両の下部に突入することを防止するための車両用衝突安全装置を後面に備えることが義務づけられている(道路運送車両の保安基準第18条の2第3項)。このような車両用衝突安全装置として、特許文献1に示すような中空のバンパー本体と、バンパー本体に取り付けられたバンパーステイとを備えるものがある。このような車両用衝突安全装置では、車両の衝突時には、バンパー本体とバンパーステイとの取付部分に大きな負荷がかかることから、同保安基準では、バンパー本体とバンパーステイとの取付部分において、最も高い強度を要求している。
【0003】
また、国際的にも、突入防止装置に係る協定規則(第58号)の改正に伴い、車両の後方に設置される衝突安全装置全体の強度を向上させることが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平5-54106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の衝突安全装置ではバンパーステイが連結されたバンパー本体の部分において、バンパー本体に作用する局所的な高負荷に対する有効な対策について教示されていない。
【0006】
本発明は、ステイとビームとを備える衝突安全装置において、ステイが連結するビームの部分の強度を部分的に向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、車幅方向に延びる中空状のビームと、前記ビームに連結されたステイと、前記ステイが連結された前記ビームの部分の前記ビームの内部又は外部に配置された中空状の補強部材とを備え、前記ビームと前記補強部材とが前記ステイに対して共締めされており、車高方向に並べて配置された複数の前記補強部材を備えてもよく、複数の前記補強部材のうち最も上方に位置する前記補強部材の材料の降伏応力は、複数の前記補強部材のうちの他の前記補強部材の材料の降伏応力よりも大きい、車両用衝突安全装置を提供する。ここで、降伏応力とは、材料が降伏するときの応力であり、アルミニウム合金などの降伏現象を示さない材料の場合では、耐力を示す。
【0008】
この構成によれば、ステイが連結するビームの部分に補強部材が配置されているため、ビームの強度を部分的に向上できる。また、この構成によれば、ビームの上側は、ビームの下側よりも衝突荷重に対して変形しにくい。このため、トラックなどの車両に近いビームの上側で荷重を受けることができるので、車両とステイの連結部分回りの回転モーメントを低減できる。これにより、車両とステイとの連結部分回りのビームの回転を抑制でき、乗用車がトラックなどの車両の下部に潜り込むことを防止できる。
【0009】
前記ビームは、車長方向に離れて配置された一対のフランジと、前記一対のフランジの間に、車高方向に離れて配置された複数のウェブとを備えていてもよい。
【0010】
前記補強部材は、車高方向において隣接する前記ウェブと、前記一対のフランジとで囲まれる中空部に配置されていてもよい。
【0011】
複数の前記ウェブのうち最も上方に位置する前記ウェブの厚みは、複数の前記ウェブのうちの他の前記ウェブの厚みよりも大きくてもよい。
【0012】
この構成によれば、ビームの上側は、ビームの下側よりも衝突荷重に対して変形しにくい。このため、トラックなどの車両に近いビームの上側で荷重を受けることができるので、車両とステイの連結部分回りの回転モーメントを低減できる。これにより、車両とステイとの連結部分回りのビームの回転を抑制でき、乗用車がトラックなどの車両の下部に潜り込むことを防止できる。
【0013】
前記補強部材は、前記補強部材を前記ビームと前記ステイとに取り付けるためのボルトが螺合するピアスナットを備えていてもよい。
【0014】
この構成によれば、補強部材は、ピアスナットが予め接合されているため、ボルトとピアスナットとを螺合させる際に、ピアスナットの回転止めが必要ない。また、補強部材は、ビームよりも短い寸法を有しているため、ビームのような長尺の部材の内側にピアスナットを打ち込む場合と比較して、ピアスナットを打ち込むための装置を小型化及び簡易化できる。
【0015】
前記補強部材は、アルミニウム合金からなっていてもよい。
【0016】
この構成によれば、補強部材がアルミニウム合金からなっているため、ピアスナットを高張力鋼のような塑性変形しにくい材料に打ち込んで接合する場合と比較して、ピアスナットを補強部材に接合しやすい。
【0020】
前記ビームは、車幅方向に延びる凹部と、車幅方向に延びて前記凹部と嵌合する凸部とのうちの一方を備えていてもよく、前記補強部材は、前記凸部と前記凹部のうちの他方を備えていてもよい。
【0021】
この構成によれば、ビーム又は補強部材のうちの一方に設けられた凹部と、ビーム又は補強部材のうちの他方に設けられた凸部とが嵌合することで、補強部材をビームの取付位置に対して正確に位置決めできるため、補強部材のビームに対する取付精度を向上できる。
【0022】
前記ビームと前記補強部材とは、異なる種類の金属材料から形成されていてもよく、前記ビームと前記補強部材との間には、絶縁性を有する接着剤が配置されていてもよい。
【0023】
この構成によれば、絶縁性を有する接着剤は、ビームと補強部材とが直接接触することを防止するため、異種金属接触腐食によってビームの強度と補強部材の強度とが低下することを抑制できる。
【0024】
前記ビームは、アルミニウム合金からなる中空状の押出形材であってもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ステイとビームとを備える衝突安全装置において、ステイが連結するビームの部分の強度を局所的に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施形態に係るアンダーランプロテクタが採用される車両の側面図。
図2】本発明の第1実施形態に係るアンダーランプロテクタが採用される車両の背面図。
図3】本発明の第1実施形態に係るアンダーランプロテクタの斜視図。
図4図3のIV-IV線での断面図。
図5】第1実施形態の変形例に係る図4と同様の図。
図6】第1実施形態の他の変形例に係る図4と同様の図。
図7】本発明の第2実施形態に係るアンダーランプロテクタの断面図。
図8】本発明の第3実施形態に係るアンダーランプロテクタの断面図。
図9】本発明の第4実施形態に係るアンダーランプロテクタの斜視図。
図10図9のX-X線での断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
図1を参照すると、本実施形態に係るアンダーランプロテクタ(車両用衝突安全装置)1は、トラックなどの車両2の後部かつ下部に設けられた取付部2aに取り付けられており、乗用車が後方から車両2の下部に突入することを防止する。アンダーランプロテクタ1は、車両2に取り付けられて後方(図1において右側)かつ下方(図1において下側)に延びるステイ10と、ステイ10に固定された中空状のビーム20とを備える。以下の説明において、車両2の車幅方向、車長方向、及び車高方向を、それぞれX方向、Y方向、及びZ方向という場合がある。
【0028】
図2を参照すると、ステイ10は、車両2のX方向の中心線CLに対して対称な位置に1つずつ設けられている。ビーム20は、X方向に沿うように設置されており、中心線CLに対して対称となるように設けられている。アンダーランプロテクタ1は、道路運送車両の保安基準に定められた強度基準に適合している必要があり、車両の衝突を模擬した強度試験が行われる。具体的には、ビーム20のX方向の外側に水平荷重P1を加える試験、ステイ10が固定されたビーム20の部分に水平荷重P2を加える試験、及びビーム20のX方向中心に水平荷重P3を加える試験がそれぞれ行われる。ここで、水平荷重P2は、水平荷重P1及び水平荷重P3の概略2倍の大きさである。
【0029】
図3を参照すると、アンダーランプロテクタ1は、ビーム20の内部に配置された中空状の第1補強部材30と、ビーム20の内部かつ第1補強部材30のZ方向下側に配置された中空状の第2補強部材40とを備える。ビーム20と第1補強部材30とは、ステイ10に対して、ボルト50によって共締めされている。同様に、ビーム20と第2補強部材40とは、ステイ10に対して、ボルト50によって共締めされている。
【0030】
図3及び図4を参照すると、ステイ10は、車両2に取り付けられるステイ本体11と、ステイ本体11と一体に形成された板状の取付板部12とを備える。取付板部12は、ボルト50を挿通するための取付孔12aが設けられている。
【0031】
本実施形態のビーム20は、アルミニウム合金からなる角筒状の押出形材である。本実施形態のビーム20は、Y方向に離れて配置された一対のフランジと、一対のフランジの間に配置された3つのウェブとを備えており、YZ平面において日の字形の断面形状を有している。具体的には、ビーム20は、前部フランジ21と、前部フランジ21からY方向の後方側に離間して配置された後部フランジ22とを備える。ビーム20は、前部フランジ21と後部フランジ22とをZ方向上側で接続する上部ウェブ23と、前部フランジ21と後部フランジ22とをZ方向下側で接続する下部ウェブ24とを備える。また、ビーム20は、前部フランジ21と後部フランジ22とを上部ウェブ23と下部ウェブ24との間で接続する中部ウェブ25を更に備え、中部ウェブ25の上下に2つの中空部が形成されている。具体的には、ビーム20は、前部フランジ21、後部フランジ22、上部ウェブ23、及び中部ウェブ25で囲まれた中空部26Aと、前部フランジ21、後部フランジ22、下部ウェブ24、及び中部ウェブ25で囲まれた中空部26Bとを備える。前部フランジ21は、ボルト50が挿通するための貫通孔21aが設けられている。
【0032】
ここで、本実施形態の上部ウェブ23の厚さt1は、下部ウェブ24の厚さt2及び中部ウェブ25の厚さt3よりも大きい。また、中部ウェブ25の厚さt3は下部ウェブ24の厚さt2よりも大きい。
【0033】
図3を参照すると、本実施形態の第1補強部材30は、高張力鋼からなる角筒状の部材であり、X方向においてビーム20よりも短い寸法を有している。第1補強部材30は、ビーム20の中空部26Aに挿入され、X方向においてビーム20とステイ10とが取り付けられる部分に配置されている。図4を参照すると、第1補強部材30は、前壁31と、前壁31からY方向の後方側に配置された後壁32と、前壁31と後壁32とを接続する上壁33及び下壁34とを備える。第1補強部材30の前壁31には、ボルト50と螺合するピアスナット51が予め接合されている。ピアスナット51が予め接合されている前壁31の厚さT1は、後壁32、上壁33、及び下壁34の厚さよりも大きい。
【0034】
ビーム20の内周面と第1補強部材30の外周面との間には、Y方向の前方以外の部分で、接着剤52が充填されている。接着剤52は、例えばエポキシ樹脂系接着剤であり、絶縁性を有する。
【0035】
図3を参照すると、本実施形態の第2補強部材40は、アルミニウム合金からなる角筒状の部材である。ここで、本実施形態の第2補強部材40を形成するアルミニウム合金の耐力は、第1補強部材30を形成する高張力綱の降伏応力よりも小さい。第2補強部材40は、X方向においてビーム20よりも短い寸法を有している。第2補強部材40は、ビーム20の中空部26Bに挿入され、X方向においてビーム20とステイ10とが取り付けられる部分に配置されている。図4を参照すると、第2補強部材40は、前壁41と、前壁41からY方向の後方側に配置された後壁42と、前壁41と後壁42とを接続する上壁43及び下壁44とを備える。第2補強部材40の前壁41には、ボルト50と螺合するピアスナット51が予め接合されている。ピアスナット51が予め接合されている前壁41の厚さT2は、後壁42、上壁43、及び下壁44の厚さよりも大きい。
【0036】
ボルト50は、Y方向の前方側から、ステイ10の取付孔12aと、ビーム20の貫通孔21aとに挿通され、第1補強部材30に設けられたピアスナット51に螺合することで、ビーム20と第1補強部材30とをステイ10に対して共締めしている。同様に、ボルト50は、Y方向の前方側から、ステイ10の取付孔12aとビーム20の貫通孔21aに挿通され、第2補強部材40に設けられたピアスナット51に螺合することで、ビーム20と第2補強部材40とをステイ10に対して共締めしている。
【0037】
この構成によれば、第1補強部材30及び第2補強部材40は、ステイ10が取り付けられるビーム20の部分に配置されているため、ビーム20の強度を部分的に向上できる。
【0038】
また、ビーム20と第1補強部材30とがボルト50によってステイ10に対して共締めされており、ビーム20と第2補強部材40とがボルト50によってステイ10に対して共締めされている。このため、ステイ10とビーム20、ビーム20と第1補強部材30、及びビーム20と第2補強部材40をそれぞれ別個に接合する場合と比較して、アンダーランプロテクタ1を軽量化できる。
【0039】
第1補強部材30と第2補強部材40とは、ピアスナット51が予め接合されているため、ボルト50とピアスナット51とを螺合させる際に、ピアスナット51の回転止めが必要ない。また、第1補強部材30と第2補強部材40とは、X方向においてビーム20よりも短い寸法を有しているため、ビーム20のような長尺の部材の内側にピアスナット51を打ち込む場合と比較して、ピアスナット51を打ち込むための装置を小型化及び簡易化できる。
【0040】
また、第2補強部材40がアルミニウム合金からなっているため、ピアスナット51を高張力鋼のような塑性変形しにくい材料に打ち込んで接合する場合と比較して、ピアスナット51を第2補強部材40に接合しやすい。
【0041】
ピアスナット51が予め接合されている第1補強部材30の前壁31の厚みT1が、第1補強部材30の他の部分の厚みよりも大きいため、第1補強部材30全体の重量の増加を抑制しつつ、第1補強部材30とピアスナット51との接合強度を向上できる。
【0042】
同様に、ピアスナット51が予め接合されている第2補強部材40の前壁41の厚みT1が、第2補強部材40の他の部分の厚みよりも大きいため、第1補強部材40全体の重量の増加を抑制しつつ、第1補強部材40とピアスナット51との接合強度を向上できる。
【0043】
ビーム20の上部ウェブ23の厚さt1が、下部ウェブ24の厚さt2及び中部ウェブ25の厚さt3よりも大きいため、ビーム20の上側は、ビーム20の下側よりも衝突荷重に対して変形しにくい。このため、乗用車が車両2に追突した場合に、車両2に近いビーム20の上側で荷重を受けることができ、取付部2a回りのステイ10の回転モーメントを低減できる。これにより、ビーム20が取付部2a回りに回転することを抑制でき、乗用車が車両2の下部に潜り込むことを防止できる。
【0044】
ビーム20の中空部26Aに配置された第1補強部材30の材料の降伏応力が、中空部26Bに配置された第2補強部材40の材料の耐力よりも大きいため、ビーム20の上側は、ビーム20の下側よりも衝突荷重に対して変形しにくい。このため、乗用車が車両2に追突した場合に、車両2に近いビーム20の上側で荷重を受けることができるので、取付部2a回りのステイ10の回転モーメントを抑制できる。これにより、これにより、ビーム20が取付部2a回りに回転することを抑制でき、乗用車が車両2の下部に潜り込むことを防止できる。
【0045】
また、ビーム20と第1補強部材30との間に絶縁性を有する接着剤52が配置されていることで、アルミニウム合金からなるビーム20と、高張力綱からなる第1補強部材30とが直接接触することを防止でき、ビーム20の強度と第1補強部材30の強度とが異種金属接触腐食によって低下することを防止できる。
【0046】
ここで、中空部26Aに配置された第1補強部材30と、中空部26Bに配置された第2補強部材40とは、同じ材料によって形成されてもよい。この場合、第1補強部材30の厚みを、第2補強部材40の厚みよりも大きくすることで、第1補強部材30の剛性を第2補強部材40の剛性よりも大きくしてもよい。
【0047】
図5及び図6を参照して、第1実施形態に係るアンダーランプロテクタ1の変形例を説明する。
【0048】
図5に示す変形例では、ビーム20は、YZ平面において、口の字形の断面形状を有している。具体的には、前部フランジ21、後部フランジ22、上部ウェブ23、及び下部ウェブ24によって中空部26が形成されている。中空部26には、第1補強部材30が配置されている。
【0049】
図6に示す他の変形例では、ビーム20は、YZ平面において、目の字形の断面形状を有している。具体的には、ビーム20は、2つの中部ウェブ25A,25Bを更に備え、前部フランジ21、後部フランジ22、中部ウェブ25A、及び中部ウェブ25Bによって中空部26Cが形成されている。また、中空部26Aには、第1補強部材30が配置されており、中空部26Cには、第2補強部材40が配置されている。
【0050】
以下に説明する第2実施形態から第4実施形態では、第1実施形態と同一ないし同様の要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。さらに、これらの実施形態では、特に言及する点を除いて、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0051】
(第2実施形態)
本実施形態のビーム20は、X方向に延在する凹部53を備え、第1補強部材30及び第2補強部材40は、X方向に延在してビーム20の凹部53と嵌合する凸部54を備える。凹部53は、ビーム20の上部ウェブ23と、下部ウェブ24と、後部フランジ22の上側及び下側に設けられている。凸部54は、第1補強部材30の上壁33及び後壁32と、第2補強部材40の下壁44と後壁42とに設けられている。
【0052】
この構成によれば、ビーム20に設けられた凹部53と、第1補強部材30及び第2補強部材40に設けられた凸部54とが嵌合することで、第1補強部材30及び第2補強部材40をビーム20の取付位置に対してYZ面内で位置決めできる。このため、第1補強部材30及び第2補強部材40のビーム20に対する取付精度を向上できる。
【0053】
ここで、ビーム20が凸部54を備えていてもよく、第1補強部材30及び第2補強部材40が凹部53を備えていてもよい。
【0054】
(第3実施形態)
本実施形態の第1補強部材30は、前壁31と、前壁31からY方向の後方側に配置された後壁32と、前壁31と後壁32とを接続する上壁33及び下壁34と、前壁31と後壁32とを接続し上壁33と下壁34の間に配置された中壁35A,35Bとを備える。
【0055】
この構成によれば、第1補強部材30が中壁35A,35Bを備えているため、Y方向の後方からの衝撃に対する強度を向上できる。また、補強部材を複数備える必要がなく、ボルト50の数を低減できるとともに、貫通孔21aやピアスナット51の加工コストを低減できる。
【0056】
(第4実施形態)
図9を参照すると、本実施形態の補強部材130は、ビーム20を取り囲むようにビーム20の外側に配置されている。図10を併せて参照すると、本実施形態の補強部材130の内周面は、ビーム20の外周面よりも大きい。ビーム20は、前部フランジ21に予め接合されているピアスナット51を備える。また、補強部材130は、前壁131に貫通孔131aが設けられている。ボルト50は、Y方向の前方側から、取付板部12の取付孔12aと、補強部材130の貫通孔131aに挿通され、ビーム20のピアスナット51と螺合することで、ビーム20と補強部材130とをステイ10に対して共締めする。
【0057】
補強部材をビーム20の中空部に挿入する場合と比較して、補強部材130をビーム20の外側から取り付けることができるので、補強部材130とビーム20のX方向の位置決めを容易にでき、作業性を向上できる。
【0058】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲において、種々の変更が可能である。
【0059】
例えば、アンダーランプロテクタは、トラックなどの車両の前方に取り付けられていてもよい。すなわち、車両用衝突安全装置は、フロントアンダーランプロテクタであってもよい。
【0060】
ビームは、鋼板プレス部品から構成されていてもよい。
【0061】
第1実施形態から第4実施形態では、ピアスナットを補強部材又はビームに接合していたが、ウェルドナットを溶接によって補強部材又はビームに接合してもよい。
【0062】
中空部の数及び大きさは、アンダーランプロテクタの取付位置や取付状況、又は要求される強度によって適宜変更されてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 アンダーランプロテクタ(車両用衝突安全装置)
2 トラックなどの車両
10 ステイ
11 ステイ本体
12 取付板部
12a 取付孔
20 ビーム
21 前部フランジ
21a 貫通孔
22 後部フランジ
23 上部ウェブ
24 下部ウェブ
25 中部ウェブ
26,26A,26B,26C 中空部
30 第1補強部材
31 前壁
31a 貫通孔
32 後壁
33 上壁
34 下壁
35 中壁
40 第2補強部材
41 前壁
42 後壁
43 上壁
44 下壁
50 ボルト
51 ピアスナット
52 接着剤
53 凹部
54 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10