(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】什器構造
(51)【国際特許分類】
A47C 7/54 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
A47C7/54 A
(21)【出願番号】P 2018007727
(22)【出願日】2018-01-19
【審査請求日】2021-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 義徳
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-086278(JP,A)
【文献】特開2011-004841(JP,A)
【文献】特開2004-248840(JP,A)
【文献】特開2014-076736(JP,A)
【文献】特開2010-173387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/00 - A47C 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造体と、前記支持構造体に着脱可能に取り付けられる表装形成体と、を備え、
前記支持構造体と前記表装形成体との間には、前記支持構造体に対する前記表装形成体の移動を規制する係合部が設けられ、
前記支持構造体および表装形成体の少なくとも一方には、什器外側から前記係合部に向けて工具を挿入可能な工具逃げ部が設けられ、
前記表装形成体は、少なくとも一部が弾性変形する遮蔽部を有し、前記遮蔽部の弾性変形を伴って、前記工具逃げ部を遮蔽した第一状態から前記工具逃げ部を露呈させた第二状態へ移行するように構成されている什器構造。
【請求項2】
前記表装形成体は、弾性層を有している請求項1に記載の什器構造。
【請求項3】
前記遮蔽部は、前記弾性層を含んで構成されている請求項2に記載の什器構造。
【請求項4】
前記表装形成体は、前記弾性層を支持するとともに前記支持構造体への係合要素を形成するベース体を備え、
前記ベース体には、前記工具逃げ部が設けられている請求項2又は3に記載の什器構造。
【請求項5】
前記支持構造体と前記表装形成体との間には、前記支持構造体に対して前記表装形成体が荷重入力面に沿う第一の方向に移動することで係合し、前記支持構造体に対する前記表装形成体の離脱を規制する第二係合部が設けられ、
前記係合部は、前記支持構造体に対して前記表装形成体が前記第一の方向と反対側の第二の方向に移動することを規制する請求項1から4の何れか一項に記載の什器構造。
【請求項6】
前記係合部は、
前記支持構造体に設けられ、前記第一の方向を向く第一係止面を有する係合リブと、
前記表装形成体に設けられ、前記第二の方向を向くとともに前記第一係止面に係合可能な第二係止面を有し、弾性変形することによって前記第二係止面を前記第一係止面との係合位置から退避可能な弾性レバー部と、を備えている請求項5に記載の什器構造。
【請求項7】
前記第二係合部は、前記荷重入力面の長手方向で複数設けられ、
前記係合部は、複数の前記第二係合部の内、前記長手方向で順に並ぶ一対の前記第二係合部の間に設けられ、かつ前記一対の第二係合部の間の前記長手方向の中央位置よりも前記第一の方向に寄って配置されている請求項5又は6に記載の什器構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、什器構造に関する。
【背景技術】
【0002】
椅子の肘掛けといった什器構造に関し、例えば、下記特許文献1,2に開示されるものが公知である。
まず、特許文献1に開示される椅子の肘掛けは、肘支柱8の上端部から水平方向に面的な広がりを有する肘当て10を有している。肘当て10は、下方から挿入されるネジによって互いに連結される基板11と天板12とを有する。このような構成は、下方に露呈するネジの頭部に着座者の手が触れることによって、着座者に違和感を与えることから、改善が求められている。
【0003】
そこで、特許文献2に開示される構成を採用することが考えられる。この構成においては、肘掛け構造体21の上部杆22の上面に中間部材45が固着され、この中間部材45に形成された構造体側上面係止部28の下面側に、肘当て部材31に形成された肘当て側上面係止部38が下方から係合することによって、肘当て部材31が上方へ変位しないよう規制されている。そして、肘掛け構造体21と肘当て部材31とは前後方向には変位する関係にあるため、肘掛け構造体21の前端部に形成された肘掛け側前面係止部29と、肘当て部材31の前端部に形成された構造体側前面係止部39と、を係合させることで、上面係止部同士の係合が解除されないようになっている。換言すると、特許文献2における肘当て部材31は、肘掛け構造体21に対して、いわゆる嵌め殺し状態で連結されている。このような構成を採用することにより、肘当て部材を、ネジを使用することなく堅牢に構造体に支持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5879394号公報
【文献】特開2017-086278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した什器構造において、肘当て部材の係合部の一部破損や、肘当て部材の上層に取り付けられた表装体の交換等を目的として、肘当て部材を取り外す必要が生じることがある。
しかし、特許文献2に開示される構成においては、構造体に対して肘当て部材が嵌め殺し状態で連結されており、肘掛け側前面係止部29と構造体側前面係止部39とが外部からアプローチ不能であることから、肘当て部材を取り外す作業を行うことが困難である。また、係合部への作業孔を設ける場合は、別途の遮蔽部材を必要とし、部品点数を増加させるとともに外観に影響を与えてしまう。
【0006】
本願発明は、上記の技術的課題に鑑みてなされたもので、支持構造体に表装形成体を取り付ける什器構造において、表装形成体の支持構造体への係合部に工具をアクセス可能としつつ、このアクセス通路を合理的に遮蔽可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決手段として、本発明は、支持構造体と、前記支持構造体に着脱可能に取り付けられる表装形成体と、を備え、前記支持構造体と前記表装形成体との間には、前記支持構造体に対する前記表装形成体の移動を規制する係合部が設けられ、前記支持構造体および表装形成体の少なくとも一方には、什器外側から前記係合部に向けて工具を挿入可能な工具逃げ部が設けられ、前記表装形成体は、少なくとも一部が弾性変形する遮蔽部を有し、前記遮蔽部の弾性変形を伴って、前記工具逃げ部を遮蔽した第一状態から前記工具逃げ部を露呈させた第二状態へ移行するように構成されている什器構造を提供する。
この構成によれば、支持構造体に表装形成体を取り付けた際の表装形成体の相対移動を係合部で規制するとともに、この係合部に通じる工具逃げ部を表装形成体の遮蔽部で遮蔽した。表装形成体を取り外す際には、表装形成体の遮蔽部の少なくとも一部を弾性変形させて工具逃げ部を露呈させることで、係合部に工具を差し込んで係合解除を行うことができる。工具逃げ部は、通常時には遮蔽部によって遮蔽されているので、什器の外観を良好にするとともに、係合部への意図せぬ操作や悪戯を防止することができる。遮蔽部は、表装形成体の一部を利用することで、少ない部品点数と簡単な構造で、遮蔽部の弾性変形を伴って工具逃げ部を開閉する構造を設けることができる。
【0008】
本発明において、前記表装形成体は、弾性層を有している構成でもよい。
この構成によれば、表装形成体全体が弾性を有することによって、遮蔽部の弾性変形を阻害しないので、遮蔽部の弾性変形を伴って工具逃げ部を露呈させる作業を容易にすることができる。
【0009】
本発明において、前記遮蔽部は、前記弾性層を含んで構成されている構成でもよい。
この場合、工具逃げ部を遮蔽する遮蔽部を弾性変形させる際、遮蔽部の弾性変形が容易になり、表装形成体を取り外す際に工具逃げ部を露呈させやすくなるので、表装形成体の着脱作業性を向上させることができる。また、遮蔽部を表装形成体と一体形成可能となり、部品点数を増やすことなく弾性変形可能な遮蔽部を設けることができる。
【0010】
本発明において、前記表装形成体は、前記弾性層を支持するとともに前記支持構造体への係合要素を形成するベース体を備え、前記ベース体には、前記工具逃げ部が設けられている構成でもよい。
この場合、支持構造体への係合要素を形成するベース体が弾性変形し難くても、このベース体に工具逃げ部を設けることで、工具の挿入を容易にすることができる。
【0011】
本発明において、前記支持構造体と前記表装形成体との間には、前記支持構造体に対して前記表装形成体が荷重入力面に沿う第一の方向に移動することで係合し、前記支持構造体に対する前記表装形成体の離脱を規制する第二係合部が設けられ、前記係合部は、前記支持構造体に対して前記表装形成体が前記第一の方向と反対側の第二の方向に移動することを規制する構成でもよい。
この場合、支持構造体に対する表装形成体の離脱は第二係合部で規制し、この第二係合部の係合解除方向への表装形成体の移動のみ係合部で規制することで、係合部を簡単かつ小型にし、係脱に要する力も軽減することが可能となる。このため、表装形成体の着脱作業を容易にすることができる。また、遮蔽部の弾性変形により生じた隙間からの作業でも容易に係合部の係合解除を行うことができる。
【0012】
本発明において、前記係合部は、前記支持構造体に設けられ、前記第一の方向を向く第一係止面を有する係合リブと、前記表装形成体に設けられ、前記第二の方向を向くとともに前記第一係止面に係合可能な第二係止面を有し、弾性変形することによって前記第二係止面を前記第一係止面との係合位置から退避可能な弾性レバー部と、を備えている構成でもよい。
この場合、係合リブの第一係止面と弾性レバー部の第二係止面との当接係合により、表装形成体が第二の方向(係合解除方向)に移動することが規制される。弾性レバー部は、係合位置に挿入した工具により弾性変形することで、第一係止面と第二係止面との係合を解除して表装形成体を第二の方向に移動可能とする。したがって、簡単な構成で表装形成体の着脱作業を容易にすることができる。
【0013】
本発明において、前記第二係合部は、前記荷重入力面の長手方向で複数設けられ、前記係合部は、複数の前記第二係合部の内、前記長手方向で順に並ぶ一対の前記第二係合部の間に設けられ、かつ前記一対の第二係合部の間の前記長手方向の中央位置よりも前記第一の方向に寄って配置されている構成でもよい。
この場合、荷重入力面の長手方向に並ぶ複数の第二係合部の内、長手方向で隣り合う一対の第二係合部の間に係合部を配置し、この係合部を一対の第二係合部の内の第一の方向(係合方向)にあるものに近付けて配置した。一対の第二係合部の間で荷重入力面に荷重入力があると、一対の第二係合部の内の係合方向にある第二係合部では、表装形成体の撓みにより表装形成体の係合要素が引き込まれ、この係合要素が係合解除方向へ移動しようとする。この第二係合部の近くに係合部を配置し、表装形成体の係合解除方向への移動を規制することで、第二係合部の係合が予期せず解除されて表装形成体が外れてしまうことを効果的に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、支持構造体に表装形成体を取り付ける什器構造において、表装形成体の支持構造体への係合部に工具をアクセス可能としつつ、このアクセス通路を合理的に遮蔽可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図5】上記肘掛けのパッド体の下面側を見上げた斜視図である。
【
図10】上記肘掛けのパッド体を取り外す際の作用を示す
図9に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る椅子について図面を参照して説明する。
以下の説明において、便宜上、椅子1に着座した利用者(着座者)が前を向く方向を「前方」、その反対方向を「後方」、つまり
図2の紙面に沿った横方向を前後方向又は奥行方向と称する。さらに、椅子1を設置する床側とその反対側とを結ぶ方向を上下方向、椅子1の幅方向、つまり
図2の紙面に直交する方向を左右方向又は幅方向と称する。なお、図中適所には、椅子1の幅方向を示す矢印X、椅子1の奥行方向を示す矢印Y、椅子1の上下方向を示す矢印Zが示されている。
【0017】
図1、
図2に示すように、椅子1は、平面視で放射状に配置された複数(五本)の脚杆2aを有する脚体2を備えている。各脚杆2aの先端部には、それぞれ床面Fに接地するキャスタ2bが設けられている。脚体2の中央には、ガススプリングを内蔵した伸縮式の脚柱3が起立している。脚柱3は、下部を構成する外筒3aと上部を構成する内筒3bとを相対回転可能に有している。脚柱3の上端には、支基4の後部が固定されている。支基4は、背凭れ5を支持する背凭れ支持杆6を傾動可能(回動可能)に支持するとともに、着座面14bを形成する座体14を背凭れ支持杆6と連動して傾動可能に支持している。
【0018】
背凭れ支持杆6は、左右一対に設けられ、それぞれ側面視L字状をなしている。背凭れ支持杆6は、例えばアルミニウム合金等の金属材料で構成されている。背凭れ支持杆6は、支基4の側方に隣接する位置から後方へ延びる後方延出部6aと、後方延出部6aの後端に連なり上方へ屈曲する湾曲部6bと、湾曲部6bの上端に連なり上方へ延びる上方延出部6cと、を有している。上方延出部6cは、後方延出部6aに対して幅方向外側へ変位している。左右の上方延出部6cの間には、背凭れ5の下部が挟まれて支持されている。
【0019】
上方延出部6cの幅方向外側には、肘掛け20の後部が固定されている。肘掛け20の上面すなわち肘載せ面31aは、上方延出部6cの上端と略同一高さにある。肘載せ面31aは、背凭れ5における着座者の腰部を後方から支持する前方突出部5aと略同一高さにある。
【0020】
座体14は、背凭れ支持杆6に連結された座受け部材14a上に、前後スライド可能に支持されている。左右背凭れ支持杆6の前部には、上向きに延びる座支持杆6dがそれぞれ一体に設けられている。例えば、座支持杆6dは、背凭れ支持杆6に一体形成されている。図中符号C1は支基4の側方に突出して背凭れ支持杆6の前端部を支持する回動軸(リクライニング軸)の中心軸線を示す。
【0021】
左右座支持杆6dの上端部には、それぞれ座受け部材14aの後部が、回動軸の軸線C1と平行な軸線C2の回動軸を介して回動可能に軸支されている。座受け部材14aの前部は、上下方向を向く起立姿勢をなす左右一対のリンク部材12の上端部に、軸線C1と平行な軸線C3の回動軸を介して回動可能に軸支されている。左右リンク部材12の下端部は、軸線C1と平行な軸線C4の回動軸を介して、支基4の前部に回動可能に軸支されている。
【0022】
背凭れ5と座体14とは、
図2に示す側面視で、第一節L1、第二節L2、第三節L3および第四節L4を有する四節リンク状の連動機構15を介して連動可能である。
背凭れ5は、後方へ傾動する前(リクライニング前)の起立位置(
図2参照)からリクライニング位置に向けて後方へ回動したとき、連動機構15の作用により、座体14を後方へ移動させつつ後下がりに傾斜させる。
【0023】
以下、本実施形態の肘掛け20周辺の構造について詳細に説明する。なお、左右の肘掛け20周辺は互いに左右対称の構成を有しており、以下の説明では、
図2以降に示す左側の肘掛け20を参照して説明を行い、右側の肘掛け20については説明を省略する。また、以下の説明において、肘掛け20の上下、前後および左右の向きは、特に記載がなければ肘掛け20を背凭れ支持杆6に取り付けた状態での向きと同一とする。
【0024】
図2、
図3に示すように、肘掛け20は、背凭れ5に支持される肘掛け本体(支持構造体)21と、肘掛け本体21に取り付けられるパッド体(表装形成体)31と、を備えている。
肘掛け本体21は、側面視で概略三角形状の枠状に一体形成されている。肘掛け本体21は、背凭れ支持杆6と同様、例えばアルミニウム合金等の金属材料で構成されている。肘掛け本体21は、前後方向に延びる上部杆22と、上部杆22の前部から後下方へ延びる前部杆23と、上部杆22および前部杆23の後端部間に渡る後部杆24と、を有している。後部杆24は、背凭れ支持杆6の上方延出部6cの幅方向外側に、上下一対のボルト等によって締結固定されている。
【0025】
上部杆22は、パッド体31が取り付けられることで、着座者の肘および前腕を支持する肘載せ部30を構成している。上部杆22の前端部は、着座者の手指を掛ける部位として使用される。上部杆22の前端部の下方には、例えばワイヤケーブル等を介して支基4側と機械的に連結される操作レバー23cが配置されている。操作レバー23cは、例えば支基4内のリクライニング機構や支柱の昇降機構等を操作可能としている。
【0026】
図4を参照し、上部杆22は、上下幅を抑えた偏平の樋状に形成されている。上部杆22内には、格子状のリブ41が形成されている。上部杆22には、上部杆22の樋形状の上面部(開放部)22aを上方から覆うようにパッド体31が取り付けられている。
【0027】
図5を参照し、例えば、パッド体31は、肘載せ面31aを含む外面を形成する例えば比較的軟質の合成樹脂製の表装体33と、表装体33を外装して上部杆22側から表装体33を支持するとともに、上部杆22に対する取り付け構造(パッド側係止部35)を形成する例えば比較的硬質の合成樹脂製のベース体34と、を備えている。パッド体31は、素材の異なる二種類の部材により、肘載せ面31aの柔軟な感触と上部杆22への取り付け強度とを両立させている。
【0028】
パッド体31は、例えば二色成形等の手段により表装体33とベース体34とを一体成形している。なお、パッド体31は、インサート成形により表装体33とベース体34とを一体成形してもよい。また、パッド体31は、互いに別体の表装体33とベース体34とを嵌め合わせて一体化してもよい。ベース体34は表装体33と比べて硬質であるが、ある程度撓ませることが可能である。
【0029】
図4、
図5を参照し、上部杆22の上面側には、パッド体31を取り付けるための(ベース体34を係合させるための)複数の係止片32が、それぞれビス32aにより固定されている。パッド体31は、下面部を上部杆22の上面部22aに上方から対向、当接させた状態で、上部杆22の上面部22aに沿うように後方へスライド移動することで、後述する複数のパッド側係止部35を対応する係止片32にそれぞれ係合させて、肘掛け20への取り付け状態となる。
【0030】
なお、係止片32を上部杆22に一体形成すると、上部杆22の内部形状を形成する金型を上下方向で型抜きする場合、係止片32がオーバーハングするが、係止片32を別体としてビス固定とすることで、大型の肘掛け本体21における上部杆22を形成する金型の複雑化を抑えている。各パッド側係止部35および係止片32の組は、パッド体31を上部杆22に取り付けるための取り付け係合部36を構成している。
【0031】
図3、
図4を参照し、前部杆23は、上部杆22の前部の下方に突出するように形成される側面視逆三角形状の下方突出部23aと、下方突出部23aの下端部から下後方へ湾曲するように指向して延びる下後方延出部23bと、を有している。下方突出部23aには前記操作レバー23cが支持され、この操作レバー23cが下方突出部23aの前方に突出している。操作レバー23cの上方かつ下方突出部23aよりも前方には、上部杆22の前端部が配置されている。
【0032】
後部杆24は、側面視で背凭れ5の下部の傾斜に沿うように、下方に位置するほど後方に位置するように傾斜している。後部杆24は、上部杆22および前部杆23に対して、幅方向内側にオフセットしている。後部杆24は、背凭れ支持杆6の上方延出部6cに、例えば上下一対のボルトにより締結固定されている。
【0033】
図中符号で示すボルトB3は、肘掛け本体21の後上部から下方かつ幅方向内側へ斜めに挿通されるボルトである。上部杆22の後部、および上方延出部6cの上部には、これらをボルトB3の傾斜に沿って貫通するボルト挿通孔25が形成されている。ボルト挿通孔25は、上部杆22の後部の上面部22a(後部杆24の上端部でもある)に開口25aを形成している。ボルトB3は、開口25aからボルト挿通孔25へ挿入されて、背凭れ5の下部に保持したナットに螺着し締め込まれる。これにより、上部杆22の後部が、上方延出部6cの上部を介して背凭れ5の下部に締結固定されている。ボルト挿通孔25の開口25aは、ボルトB3の頭部とともにパッド体31により肘掛け外側から遮蔽されている。
【0034】
以下、上部杆22およびパッド体31を主構成とする肘載せ部30について詳細に説明する。
図6を参照し、肘載せ部30は、略一定の左右幅を有して前後方向に延びている。肘載せ部30は、前後方向に延びる内側縁部30aおよび外側縁部30b、並びに前端縁部30cおよび後端縁部30dを有している。
【0035】
内側縁部30aは、概ね前後方向に沿うように(詳細には後側ほど左右方向内側に位置するように傾斜して)延びている。外側縁部30bは、平面視で左右方向外側に凸となるように緩やかに湾曲して延びている。外側縁部30bの後部は、外側縁部30bの前部に比べて、後側ほど左右方向内側に位置するように曲率を大きくしている。この外側縁部30bの後部の湾曲により、肘載せ部30の後部は、後側ほど左右幅を狭めるように形成されている。
【0036】
前端縁部30cは、内外側縁部30a,30bの前端部間に渡り、平面視で前方に凸となるように緩やかに湾曲して延びている。後端縁部30dは、内外側縁部30a,30bの後端部間に渡り、左右方向外側ほど前方に位置するように傾斜して延びている。
【0037】
図3を参照し、肘載せ部30は、側面視で肘載せ面31aに沿うように形成されている。すなわち、肘載せ部30は、側面視で前半部が上方に凸となるように緩やかに湾曲している。肘載せ部30の側面視の頂部30eは、肘載せ部30の前後方向中央部よりも前側に位置している。肘載せ部30は、頂部30eよりも前方では前下がりに傾斜し、頂部30eよりも後方では後下がりに傾斜している。
【0038】
図4、
図6を参照し、肘載せ部30の前端部、前後方向中央部および後端部には、それぞれ幅方向で一対の係止片32が配置されている。各係止片32は、平面視長方形状の板材であり、長手方向一側の基部がビス32aにより上部杆22の締結部32bにそれぞれ固定され、長手方向他側の先端部32cが後述する係合空間K1内にそれぞれ突出している。
【0039】
肘載せ部30の前端部および前後方向中央部の各一対の係止片32は、それぞれ左右方向に離間して並び、前方に向けて矩形状の先端部32cを延ばしている。
肘載せ部30の後端部の一対の係止片32は、前後方向で基部を隣接させるように並び、左右方向外側および内側に向けて矩形状の先端部32cを延ばしている。具体的に、肘載せ部30の後端部前側の係止片32は、左右方向外側に先端部32cを延ばし、肘載せ部30の後端部後側の係止片32は、左右方向内側に先端部32cを延ばしている。
【0040】
図4を参照し、上部杆22内の格子状のリブ41は、前後方向に延びる複数(四つ)の前後方向リブ42と、複数の前後方向リブ42の間を適宜連結する複数の幅方向リブ43~46と、を有している。
以下、複数の前後方向リブ42を、左右方向外側から順に、第一~第四前後方向リブ42-1~42-4と称することがある。
【0041】
また、肘載せ部30の前端部に位置する幅方向リブ43を、左右方向外側から順に、第一~第三前部幅方向リブ43-1~43-3と称し、肘載せ部30の後端部に位置する幅方向リブ44を、左右方向外側から順に、第一~第三後部幅方向リブ44-1~44-3と称し、肘載せ部30の前後中間部前側に位置する幅方向リブ45を、左右方向外側から順に、第一~第三中間前側幅方向リブ45-1~45-3と称し、肘載せ部30の前後中間部後側に位置する幅方向リブ46を、左右方向外側から順に、第一~第三中間後側幅方向リブ46-1~46-3と称する。なお、本実施形態の「中間部」とは、前後方向中央部を含む前後幅を有する範囲を示す。
【0042】
第二前部幅方向リブ43-2は、第二および第三前後方向リブ42-2,42-3の前端部間を連結している。第一および第三前部幅方向リブ43-1,43-3は、各前後方向リブ42の前端部よりも後方となる位置で、第一および第二前後方向リブ42-1,42-2の間、ならびに第三および第四前後方向リブ42-3,42-4の間をそれぞれ連結している。第一および第三前部幅方向リブ43-1,43-3の前方には、これら幅方向リブと各前後方向リブ42の前端部とに囲まれた凹状の締結部32bが形成され、この締結部32bに係止片32の基部が固定されている。各締結部32bの前方には、各係止片32の下面と、上部杆22の上面部22aとが、互いに間隔を空けて対向することによって、各係止片32に対応する係合空間K1が形成されている。
【0043】
第一後部幅方向リブ44-1は、第一および第二前後方向リブ42-1,42-2の後端部間を連結し、第二後部幅方向リブ44-2は、第二および第三前後方向リブ42-2,42-3の後端部間を連結し、第三後部幅方向リブ44-3は、第三および第四前後方向リブ42-3,42-4の後端部間を連結している。第一および第二後部幅方向リブ44-1,44-2は、互いに面一状に連なり、第三後部幅方向リブ44-3よりも前方に変位している。第二後部幅方向リブ44-2の後方には、前側の係止片32を固定する締結部32bが形成され、この締結部32bの後方には、後側の係止片32を固定する締結部32bが形成されている。第一後部幅方向リブ44-1の後方には、前側の係止片32の下面と、上部杆22の上面部22aとが、互いに間隔を空けて対向することによって、前側の係止片32に対応する係合空間K1が形成されている。第三後部幅方向リブ44-3の後方には、後側の係止片32の下面と、上部杆22の上面部22aとが、互いに間隔を空けて対向することによって、後側の係止片32に対応する係合空間K1が後方に離間して形成されている。
【0044】
ここで、第一および第四前後方向リブ42-1,42-4の前後中間部は、所定の前後幅で切除されている。すなわち、第一および第四前後方向リブ42-1,42-4の前後中間部には、所定の前後幅のリブ切り欠き部47が形成されている。リブ切り欠き部47は、上部杆22の前後中間部の係合空間K1を、それぞれ上部杆22の幅方向外側へ開放させている。なお、上部杆22の前後端部の各係合空間K1も、それぞれ上部杆22の幅方向外側へ開放している。
【0045】
リブ切り欠き部47の前端位置において、第一中間前側幅方向リブ45-1は、第一および第二前後方向リブ42-1,42-2の端部間を連結し、第二中間前側幅方向リブ45-2は、第二および第三前後方向リブ42-2,42-3の端部間を連結し、第三中間前側幅方向リブ45-3は、第三および第四前後方向リブ42-3,42-4の端部間を連結している。各中間前側幅方向リブ45は、各前後方向リブ42の端部位置で、相互に面一状に連なっている。
【0046】
リブ切り欠き部47の後端位置において、第一中間後側幅方向リブ46-1は、第一および第二前後方向リブ42-1,42-2の端部間を連結し、第二中間後側幅方向リブ46-2は、第二および第三前後方向リブ42-2,42-3の端部間を連結し、第三中間後側幅方向リブ46-3は、第三および第四前後方向リブ42-3,42-4の端部間を連結している。各中間後側幅方向リブ46は、各前後方向リブ42の端部よりも後方となる位置で、相互に面一状に連なっている。第一および第三中間後側幅方向リブ46-1,46-3の前方には、これら幅方向リブと各前後方向リブ42の前端部とに囲まれた凹状の締結部32bが形成され、この締結部32bに係止片32の基部が固定されている。各締結部32bの前方には、各係止片32の下面と、上部杆22の上面部22aとが、互いに間隔を空けて対向することによって、各係止片32に対応する係合空間K1が形成されている。
【0047】
図5を参照し、パッド体31のベース体34は、肘載せ面31aに沿う板状をなしている。ベース板の外周部31bには、上方に開放する断面コ字状の補強部37が外周縁に沿って延びている。補強部37は、延び方向に並ぶ複数の節37aを有して剛性を高めている。ベース板の下面における補強部37よりも内周側の部位には、下方(上部杆22側)に起立する内周壁部38が形成されている。ベース体34の下面には、平面視格子状のビード34aが形成されている。
【0048】
図9を併せて参照し、内周壁部38は、補強部37の内周側に間隔を空けて配置され、補強部37に沿うように延びている。内周壁部38は、補強部37よりも下方に突出し、上部杆22の内部空間に入り込むように設けられている。内周壁部38は、上部杆22における上方に起立した外周壁部22bと上下方向位置をラップさせている。ベース体34の左右方向内側において、内周壁部38には、後述する工具差し込み位置と左右方向で並ぶように切り欠き部(以下、パッド内周切り欠き部38aと称する。)が形成されている。
【0049】
図5を参照し、ベース体34における各係止片32に対応する位置には、側面視L字状をなすパッド側係止部35が形成されている。パッド側係止部35は、ベース体34の下面から下方に起立する前壁部35aと、前壁部35aの下端から後方に延びる下壁部35bと、ベース体34の下面、前壁部35aおよび下壁部35bに渡る側壁部35cと、を有している。側壁部35cは、各パッド側係止部35におけるベース体34の幅方向外側の側面に位置している。
【0050】
各パッド側係止部35は、対応する係止片32とともに、肘載せ部30の前端部、前後方向中央部および後端部の各々において取り付け係合部36を構成している。以下、肘載せ部30の前端部、前後方向中央部および後端部の各々に位置する取り付け係合部36を、肘載せ部30の前側から順に、第一~第三取り付け係合部36-1~36-3と称することがある(
図6参照)。
【0051】
図7、
図8を併せて参照し、ベース体34ひいてはパッド体31を上部杆22の上面に取り付けた際、各パッド側係止部35は、下壁部35bを係止片32の先端部32cの下方から係合させて、パッド体31の上部杆22上方への離脱を規制する。各パッド側係止部35は、前壁部35aを係止片32の先端部32cの前縁に前方から係合させるとともに、側壁部35cを係止片32の先端部32cの側縁に側方から係合させて、パッド体31の後方移動および左右方向移動を規制する。ベース体34と上部杆22との間には、各パッド側係止部35を係止片32に係合させた状態で、ベース体34ひいてはパッド体31の前方移動を規制する弾性係合部(スナップフィット部)51を備えている。
【0052】
図4、
図5を参照し、弾性係合部51は、上部杆22に設けられ、後方を向く第一係止面52aを有する第三中間前側幅方向リブ45-3および第三後部幅方向リブ44-3(以下、係合リブ52と称することがある。)と、ベース体34に設けられ、前方を向くとともに第一係止面52aに前後方向で対向して当接可能な第二係止面53aを有し、上方に弾性変位することで第二係止面53aを第一係止面52aとの係合位置から退避可能な弾性レバー部53と、を備えている。弾性係合部51は、第一係止面52aと第二係止面53aとの当接係合によって、上部杆22に対するパッド体31の前方移動を規制し、各パッド側係止部35の係止片32に対する係合の解除を規制する。
【0053】
図5を参照し、弾性レバー部53は、ベース体34に支持された弾性片53bと、弾性片53bの下面に突設された爪部53cと、を備えている。弾性片53bは、前後方向に延びる帯状をなし、例えばベース体34に左右一対のスリットを形成することで、ベース体34の一部を切り出して構成されている。弾性片53bは、ベース体34の残余の部分(一般部分)に対して独立して上下に弾性変形可能である。なお、ベース体34と別体の弾性片53bをベース体34に支持した構成でもよい。
【0054】
弾性片53bは、後端を基端、前端を自由端として、上下に揺動するように弾性変形可能である。弾性片53bの前端部は、側面視で下方に凸のU字状をなすように湾曲した変形許容部53dを形成し、この変形許容部53dがベース体34の一般部分に連結、支持されている。
【0055】
爪部53cは、例えば弾性片53bの前後中間部に設けられている。爪部53cは、側面視逆三角形状をなし、前側に形成された第二係止面53aと、後側に形成された傾斜ガイド面53eと、を有している。第二係止面53aは、略垂直に形成され、傾斜ガイド面53eは、第二係止面53aの下端から後側ほど上方に位置するように傾斜して形成されている。
【0056】
図6を参照し、弾性係合部51は、前後方向で複数(二つ)設けられている。具体的に、弾性係合部51は、肘載せ部30の前端部および前後方向中央部の各取り付け係合部36の間と、肘載せ部30の前後方向中央部および後端部の各取り付け係合部36の間と、にそれぞれ設けられている。以下、複数の弾性係合部51を、肘載せ部30の前側から順に、第一および第二弾性係合部51-1,51-2と称することがある。
【0057】
肘載せ部30の前端部および前後方向中央部の間の第一弾性係合部51-1は、その前後の第一および第二取り付け係合部36-1,36-2の間の中央位置よりも後側に位置している。すなわち、第一弾性係合部51-1は、その後方の第二取り付け係合部36-2に近接して設けられている。肘載せ部30の前後方向中央部および後端部の間の第二弾性係合部51-2は、その前後の第二および第三取り付け係合部36-2,36-3の間の中央位置よりも後側に位置している。すなわち、第二弾性係合部51-2は、その後方の第三取り付け係合部36-3に近接して設けられている。
【0058】
前後に並ぶ取り付け係合部36の間で、着座者の肘等から下方に向けて荷重入力がなされると、パッド体31が下方に撓み、前後の取り付け係合部36のパッド側係止部35を前後方向内側へ引き込もうとする。このとき、前側のパッド側係止部35の後方移動は、このパッド側係止部35の前壁部35aによって規制され、後側のパッド側係止部35の前方移動は、後側に偏って配置された弾性係合部51によって規制される。弾性係合部51は、前後に複数設けられるので、弾性係合部51が単一に設けられる場合に比べて、前後に複数設けられた取り付け係合部36の係合解除をバランス良く規制可能である。
【0059】
弾性係合部51は、左右方向で肘載せ部30の中央位置を避けるように、左右方向内側に変位して設けられている。
図4を併せて参照し、各弾性レバー部53は、第三および第四前後方向リブ42-3,42-4の間に臨むように設けられている。そして、第三および第四前後方向リブ42-3,42-4の間に位置する第三中間前側幅方向リブ45-3および第三後部幅方向リブ44-3には、それぞれ前後の弾性レバー部53の爪部53cが係止される。
【0060】
図4、
図7を参照し、第三中間前側幅方向リブ45-3および第三後部幅方向リブ44-3には、それぞれ上端部前側を凹ませることで、リブ側傾斜ガイド面52eが形成されている。リブ側傾斜ガイド面52eは、対応する弾性レバー部53の爪部53cの傾斜ガイド面53eと略平行に設けられている。第三中間前側幅方向リブ45-3および第三後部幅方向リブ44-3の上端部後側には、それぞれ略垂直な第一係止面52aが形成されている。この第一係止面52aに爪部53cの第二係止面53aが係合することで、上部杆22に対するパッド体31の前方移動が規制されている。
【0061】
肘載せ部30の左右中央部は、着座者の肘等からの荷重入力を受けやすく、パッド体31の撓みが弾性係合部51の係合に影響する可能性がある。また、弾性係合部51の存在がパッド体31のクッション性に影響する可能性もある。これらの可能性を抑えるため(
図6参照)、弾性係合部51は、左右方向で肘載せ部30の中央位置を避けるように左右方向内側に偏って配置されている。肘載せ部30の左右方向外側は、平面視で湾曲しているので、弾性係合部51を大きくオフセットさせることが難しいが、肘載せ部30の左右方向内側は、平面視で直線状をなしているので、弾性係合部51を大きくオフセットさせることが容易である。
【0062】
ところで、パッド体31は、表装体33の劣化等により交換することがある。このとき、パッド体31を上部杆22から取り外すために、上部杆22に対する弾性レバー部53の係合を解除する必要がある。その際、
図10に示すように、パッド体31と上部杆22との間に側方から工具TLを差し込み、弾性レバー部53の係合解除を行う。工具TLを差し込む位置は、肘載せ部30の前後方向中間部においては、第四前後方向リブ42-4の前後方向中間部のリブ切り欠き部47が形成された位置であり、肘載せ部30の後端部においては、第四前後方向リブ42-4の後端よりも後方の位置である。
【0063】
図4、
図5、
図10を参照し、各工具差し込み位置において、上部杆22には、リブを無くすことで弾性係合部51周辺を側方に開放したリブ開放部55が形成され、パッド体31には、内周壁部38を切り欠いたパッド内周切り欠き部38aが形成されている。これらリブ開放部55およびパッド内周切り欠き部38aにより、各工具差し込み位置には、肘掛け外側から弾性係合部51に向けて工具TLを挿入可能な工具逃げ部56が形成されている。
【0064】
工具逃げ部56の左右方向内側には、上部杆22の外周壁部22bとパッド体31の外周部31bとが配置されている。上部杆22の外周壁部22bとパッド体31の外周部31bとの間には、パッド体31が弾性変形していない通常状態では隙間がないか、あるいは微小な隙間しかない(
図9参照)。このため、工具逃げ部56は、通常時には上部杆22の外周壁部22bとパッド体31の外周部31bとによって肘掛け外側から遮蔽されている。
【0065】
一方、パッド体31の外周部31bは、パッド体31自体が弾性を有することから、上方に捲り上げるように弾性変形することによって、上部杆22の外周壁部22bとパッド体31の外周部31bとの間に隙間を形成可能であり、工具逃げ部56を肘掛け外側に露呈させることが可能である(
図10参照)。すなわち、パッド体31の外周部31bは、工具逃げ部56を遮蔽した第一状態から、工具逃げ部56を肘掛け外側に露呈させた第二状態へ弾性変形可能な遮蔽部57を構成している。
【0066】
遮蔽部57は、軟質の表装体33を含んで構成されているので、弾性変形が容易である。また、遮蔽部57が肘載せ部30のパッド体31を利用して構成されているので、別途の遮蔽部57材を用いる場合に比べて部品点数の増加が抑えられ、かつ一体感があるので外観や触感が良好であり、さらに清掃のしやすさも良好である。また、遮蔽部57の弾性変形を利用して工具逃げ部56を開閉するので、別途の遮蔽部材を着脱する場合に比べて、パッド体31の着脱作業がさらに容易である。
【0067】
次に、パッド体31を上部杆22に取り付ける方法について説明する。
まず、パッド体31の下面を、上部杆22の上面に対向させ、パッド体31を上部杆22への取り付け位置よりも前方にずれた取り付け前位置に配置する。このとき、各パッド側係止部35は、係止片32前方の係合空間K1内に入り込む。
【0068】
次に、パッド体31を上部杆22の上面に沿って後方移動させ、各パッド側係止部35を後方移動させて、各パッド側係止部35の下壁部35bを係止片32の先端部32cの下方に進入させる。そして、各パッド側係止部35の前壁部35aを係止片32の前端に突き当てることで、パッド体31を上部杆22への取り付け位置で停止させる。このとき、各パッド側係止部35の下壁部35bの上面が係止片32の先端部32cの下面に圧接し、パッド体31の上方移動(上部杆22上方への離脱)およびガタツキが規制される。
【0069】
また、パッド体31が上部杆22への取り付け位置に移動したとき、各パッド側係止部35の前壁部35aが係止片32の前端に当接するとともに、各パッド側係止部35の側壁部35cが係止片32の側端に当接し、パッド体31の後方移動および左右方向移動が規制される。パッド体31の前方移動は、弾性係合部51の係合によって規制される。これにより、上部杆22上にパッド体31が固定的に取り付けられた状態となる。
【0070】
パッド体31を上部杆22に取り付ける際、パッド体31を取り付け前位置に配置すると、前後の弾性レバー部53の爪部53cは、それぞれ前後の係合リブ52の上端部の前方に配置される。このとき、弾性レバー部53の爪部53cは、係合リブ52の上端部と上下方向位置をラップさせる。この状態で、パッド体31を上部杆22の上面に沿って後方移動させると、爪部53cの傾斜ガイド面53eと係合リブ52のリブ側傾斜ガイド面52eとが摺接し、弾性レバー部53を上方に弾性変形させる。
【0071】
これにより、各パッド側係止部35を後方にスライドさせて係止片32に係合させる動作のみで、弾性レバー部53を係合リブ52の上端部を乗り越えて後方移動させることが可能である。弾性レバー部53は、係合リブ52の上端部を後方に乗り越えた後に弾性変形前の状態に戻り、爪部53cと係合リブ52の上端部との上下方向位置をラップさせる。このとき、爪部53cの第二係止面53aと係合リブ52の第一係止面52aとが前後方向で対向配置される。
【0072】
この状態でパッド体31を前方移動させようとしても、略垂直な第一および第二係止面52a,53a同士が互いに突き当たることで、弾性レバー部53が弾性変形することなく、パッド体31の前方移動が規制される。したがって、各パッド側係止部35の係止片32に対する係合の解除が規制され、パッド体31の上部杆22への取り付け状態が維持される。
【0073】
次に、パッド体31を上部杆22から取り外す方法について説明する。
まず、パッド体31の左右方向内側の工具差し込み位置において、パッド体31の外周部31bを上方に捲り上げるように弾性変形させる。これにより、上部杆22の外周壁部22bとパッド体31の外周部31bとの間に隙間を形成し、この隙間を通じて工具逃げ部56を肘掛け外側に露呈させる。すなわち、パッド体31の遮蔽部57が、肘掛け外側から工具逃げ部56を遮蔽した第一状態から、工具逃げ部56を肘掛け外側に露呈させた第二状態へ変化する。そして、上部杆22の外周壁部22bとパッド体31の外周部31bとの間の隙間、および工具逃げ部56を通じて、マイナスドライバ等の工具TLを工具逃げ部56の奥へアクセス可能とする。工具逃げ部56の奥には、係合リブ52の上端部に係合した弾性レバー部53の爪部53cが位置しており、この爪部53c周辺を工具TLで押し上げることで、弾性係合部51の係合を解除可能である。
【0074】
弾性係合部51の係合解除時には、弾性レバー部53が上方に変位するが、この弾性レバー部53の上方変位は、例えば弾性レバー部53が軟質の表装体33の下面を押圧して食い込むことで許容される。なお、表装体33の下面に上方変位した弾性レバー部53を避ける凹部を形成してもよい。そして、弾性係合部51の係合解除により、パッド体31が前方移動可能となり、各取り付け係合部36の係合を解除可能となり、パッド体31を上部杆22から取り外し可能となる。
【0075】
このように、弾性係合部51に向けて工具TLをアクセス可能とする工具逃げ部56があり、この工具逃げ部56が弾性層を有するパッド体31で遮蔽されるので、通常時には工具逃げ部56を隠し、パッド体31の取り外し時には容易に弾性係合部51の係合解除を行うことができる。また、パッド体31の遮蔽部57は、弾性変形を解除すれば遮蔽状態に戻るので、パッド体31を再度上部杆22に取り付ける場合にも遮蔽部57を遮蔽状態に戻す作業は不要であり、パッド体31の着脱作業を容易にすることができる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態の什器構造は、肘掛け本体21と、弾性層(表装体33)を有して肘掛け本体21に着脱可能に取り付けられるパッド体31と、を備え、肘掛け本体21とパッド体31との間には、肘掛け本体21に対するパッド体31の移動を規制する弾性係合部51が設けられ、肘掛け本体21およびパッド体31の少なくとも一方には、肘掛け外側から弾性係合部51に向けて工具TLを挿入可能な工具逃げ部56が設けられ、パッド体31には、工具逃げ部56を遮蔽した第一状態から工具逃げ部56を露呈させた第二状態へ弾性変形可能な遮蔽部57が設けられている。
この構成によれば、肘掛け本体21にパッド体31を取り付けた際のパッド体31の相対移動を弾性係合部51で規制するとともに、この弾性係合部51に通じる工具逃げ部56をパッド体31の遮蔽部57で遮蔽した。パッド体31を取り外す際には、パッド体31の遮蔽部57を弾性変形させて工具逃げ部56を露呈させることで、弾性係合部51に工具TLを差し込んで係合解除を行うことができる。工具逃げ部56は、通常時には遮蔽部57によって遮蔽されているので、什器の外観を良好にするとともに、弾性係合部51への意図せぬ操作や悪戯を防止することができる。遮蔽部57は、表装体33を有するパッド体31を利用することで、少ない部品点数と簡単な構造で、遮蔽部の弾性変形により工具逃げ部56を開閉する構造を設けることができる。
【0077】
また、本実施形態の什器構造において、肘掛け本体21とパッド体31との間には、肘掛け本体21に対してパッド体31が荷重入力面(肘載せ面31a)に沿う第一の方向(後方)に移動することで係合し、肘掛け本体21に対するパッド体31の離脱を規制する第二係合部(取り付け係合部36)が設けられ、弾性係合部51は、肘掛け本体21に対してパッド体31が第一の方向と反対側の第二の方向(前方)に移動することを規制する。
この構成によれば、肘掛け本体21に対するパッド体31の離脱は第二係合部で規制し、この第二係合部の係合解除方向へのパッド体31の移動のみ弾性係合部51で規制することで、弾性係合部51を簡単かつ小型にし、係脱に要する力も軽減することが可能となる。このため、パッド体31の着脱作業を容易にすることができる。また、遮蔽部57の弾性変形により生じた隙間からの作業でも容易に弾性係合部51の係合解除を行うことができる。
【0078】
また、本実施形態の什器構造において、弾性係合部51は、肘掛け本体21に設けられ、第一の方向を向く第一係止面52aを有する係合リブ52と、パッド体31に設けられ、第二の方向を向くとともに第一係止面52aに係合可能な第二係止面53aを有し、弾性変位することによって第二係止面53aを第一係止面52aとの係合位置から退避可能な弾性レバー部53と、を備えている。
この構成によれば、係合リブ52の第一係止面52aと弾性レバー部53の第二係止面53aとの当接係合により、パッド体31が第二の方向(係合解除方向)に移動することが規制される。弾性レバー部53は、係合位置に挿入した工具TLにより弾性変形することで、第一係止面52aと第二係止面53aとの係合を解除してパッド体31を第二の方向に移動可能とする。したがって、簡単な構成でパッド体31の着脱作業を容易にすることができる。
【0079】
また、本実施形態の什器構造において、遮蔽部57は、表装体33を含んで構成されている。
この構成によれば、工具逃げ部56を遮蔽する遮蔽部57を弾性変形させる際、遮蔽部57の弾性変形が容易になり、パッド体31を取り外す際に工具逃げ部56を露呈させやすくなるので、パッド体31の着脱作業性を向上させることができる。また、遮蔽部57をパッド体31と一体形成可能となり、部品点数を増やすことなく弾性変形可能な遮蔽部57を設けることができる。
【0080】
また、本実施形態の什器構造において、パッド体31は、表装体33を支持するとともに肘掛け本体21への係合要素(弾性レバー部53およびパッド側係止部35)を形成するベース体34を備え、ベース体34には、工具逃げ部56(パッド内周切り欠き部38a)が設けられている。
この構成によれば、肘掛け本体21への係合要素を形成するベース体34が弾性変形し難くても、このベース体34に工具逃げ部56を設けることで、工具TLの挿入を容易にすることができる。
なお、ベース体34から独立して表装体33を弾性変形させる構成としてもよい。すなわち、表装体33のみで工具逃げ部56の遮蔽部57を構成してもよい。この場合、工具TLの挿入および弾性係合部51の係合解除をより一層容易にすることができる。
【0081】
また、本実施形態の什器構造において、第二係合部(取り付け係合部36)は、肘載せ面31aの長手方向で複数設けられ、弾性係合部51は、複数の第二係合部の内、長手方向で順に並ぶ一対の第二係合部の間に設けられ、かつ一対の第二係合部の間の長手方向の中央位置よりも第一の方向に寄って配置されている。
この構成によれば、肘載せ面31aの長手方向に並ぶ複数の第二係合部の内、長手方向で隣り合う一対の第二係合部の間に弾性係合部51を配置し、この弾性係合部51を一対の第二係合部の内の第一の方向(係合方向)にあるものに近付けて配置した。一対の第二係合部の間で肘載せ面31aに荷重入力があると、一対の第二係合部の内の係合方向にある第二係合部では、パッド体31の撓みによりパッド体31の係合要素が引き込まれ、この係合要素が係合解除方向へ移動しようとする。この第二係合部の近くに弾性係合部51を配置し、パッド体31の係合解除方向への移動を規制することで、第二係合部の係合が予期せず解除されてパッド体31が外れてしまうことを効果的に防ぐことができる。
【0082】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、弾性係合部は、弾性レバー部に相当する弾性変形可能な係合要素を肘掛け本体側に設けた構成でもよい。工具逃げ部は、肘掛け本体およびパッド体の一方のみに設けた切り欠き等で構成されてもよい。パッド体の遮蔽部は、ベース体を含まず表装体(弾性層)のみで構成されてもよい。椅子の座や背凭れ等、肘掛け以外に適用してもよく、ひいては椅子以外の什器に適用してもよい。
【0083】
また、表装形成体(パッド体)における軟質の表装体を捲り上げた状態(表装体の少なくとも一部が弾性変形した状態)で、例えばベース体に形成されたヒンジ部で開閉する扉等の遮蔽手段を開くことで、工具逃げ部を開放する態様(すなわち、表装体は弾性変形しているが、ベース体は弾性変形していない態様)も有り得る。
また、表装形成体における表装体がウレタンのような軟質性の素材ではなく、ベース体に比べて相対的に硬度が小である樹脂板等からなる態様も有り得る。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 椅子(什器)
20 肘掛け
21 肘掛け本体(支持構造体)
22 上部杆
30 肘載せ部
31 パッド体(表装形成体)
31a 肘載せ面(荷重入力面)
32 係止片
33 表層体(弾性層)
34 ベース体
35 パッド側係止部
36 取り付け係合部(第二係合部)
38a パッド内周切り欠き部(工具逃げ部)
51 弾性係合部(係合部)
52 係合リブ
52a 第一係止面
53 弾性レバー部
53a 第二係止面
55 リブ開放部(工具逃げ部)
56 工具逃げ部
57 遮蔽部