(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】処理液吐出配管および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220112BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20220112BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
H01L21/304 648K
H01L21/304 643C
H01L21/304 643A
H01L21/30 564Z
H01L21/30 572B
H01L21/306 R
(21)【出願番号】P 2018013772
(22)【出願日】2018-01-30
【審査請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】竹松 佑介
(72)【発明者】
【氏名】温井 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】岩川 裕
(72)【発明者】
【氏名】東 克栄
(72)【発明者】
【氏名】菅原 雄二
【審査官】山口 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-178109(JP,A)
【文献】特開2008-205059(JP,A)
【文献】特開2015-070157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/027
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に対して処理液を吐出する処理装置に取り付けられ、前記処理液が流通する流路と、前記流路を流通する処理液を前記基板表面に吐出する吐出口とを有する処理液吐出配管であって、
前記流路は、
壁面の少なくとも一部が親水性である親水性流路、
を含み、
前記処理装置に取り付けられた状態において、
前記親水性流路は、鉛直方向に対して傾斜し、上流側の端部が下流側の端部よりも高く位置する、
処理液吐出配管。
【請求項2】
請求項1に記載の処理液吐出配管であって、
前記流路は、壁面が疎水性の流路を有する、
処理液吐出配管。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の処理液吐出配管であって、
前記流路は、
前記親水性流路の下流側に位置し、壁面が疎水性である第1流路、
を有し、
前記処理装置に取り付けられた状態において、前記第1流路は鉛直方向に延びる、
処理液吐出配管。
【請求項4】
請求項3に記載の処理液吐出配管であって、
前記吐出口は、前記第1流路の下流側端部に位置する、
処理液吐出配管。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の処理液吐出配管であって、
前記親水性流路と前記第1流路とは隣接している、
処理液吐出配管。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一つに記載の処理液吐出配管であって、
前記流路は、
前記親水性流路の上流に位置する第2流路、
を有し、
前記処理装置に取り付けられた状態において、前記第2流路は水平方向に延びる、
処理液吐出配管。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一つに記載の処理液吐出配管であって、
前記親水性流路は、
樹脂からなり、薬液に浸漬されることで、壁面の少なくとも一部が、親水性となっている、
処理液吐出配管。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一つに記載の処理液吐出配管であって、
親水性である前記親水性流路の壁面は、他の流路の壁面よりも粗い、
処理液吐出配管。
【請求項9】
基板表面に対して処理液を吐出する処理装置に取り付けられ、前記処理液が流通する流路と、前記流路を流通する処理液を前記基板表面に吐出する吐出口とを有する処理液吐出配管であって、
樹脂からなり、
前記流路は、
壁面の少なくとも一部に対して水を接した状態で薬液に浸漬して、前記壁面の少なくとも一部を親水性にした親水性流路、
を含み、
前記処理装置に取り付けられた状態において、
前記親水性流路は、鉛直方向に対して傾斜し、上流側の端部が下流側の端部よりも高く位置する、
処理液吐出配管。
【請求項10】
請求項9に記載の処理液吐出配管であって、
前記親水性流路は、前記流路に水を満たした状態で薬液に浸漬して、親水性にされている、
処理液吐出配管。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか一つに記載の処理液吐出配管、を備える基板処理装置であって、
チャンバと、
前記チャンバの内部において基板を水平に保持する基板保持部と、
前記処理液吐出配管を介して、前記基板保持部に保持された基板の上面に、処理液を供給する処理液供給部と、
前記処理液吐出配管の前記流路内の処理液を、上流側へ引き戻す引き戻し機構と、
を備える基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面に吐出させる処理液が流通する処理液吐出配管、および、それを備えた基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハの製造工程においては、フォトレジスト液、エッチング液、洗浄液、純水等の種々の処理液が、基板表面に供給される。この処理液の供給処理において、処理液の供給を停止する際、処理液の吐出口から、意図せぬ液滴の落下、所謂「ボタ落ち」が生じる場合がある。このような液滴のボタ落ちは、基板表面のムラの原因となるため、回避する必要がある。
【0003】
特許文献1には、ボタ落ちを防止するために、処理液の吐出孔を超親水性にした、供給ノズルが開示されている。特許文献1では、吐出孔を超親水性とすることで、先端部の表面に付着した処理液の液滴が球状となることなく、薄膜状に拡がる。これにより、球状の液滴が振動などによって先端部の表面を流下していくことが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成によれば、ノズル先端部に付着した処理液のボタ落ちを抑制できる。しかしながら、先端部よりも内側(上流側)に処理液が残存している場合、処理液の自重により、ボタ落ちが生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、液滴落下を防止する処理液吐出配管、および、それを備えた基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、基板表面に対して処理液を吐出する処理装置に取り付けられ、前記処理液が流通する流路と、前記流路を流通する処理液を前記基板表面に吐出する吐出口とを有する処理液吐出配管であって、前記流路は、壁面の少なくとも一部が親水性である親水性流路、を含み、前記処理装置に取り付けられた状態において、前記親水性流路は、鉛直方向に対して傾斜し、上流側の端部が下流側の端部よりも高く位置する。
【0008】
本願の第2発明は、第1発明の処理液吐出配管であって、前記流路は、壁面が疎水性の流路を有する。
【0009】
本願の第3発明は、第1発明または第2発明の処理液吐出配管であって、前記流路は、前記親水性流路の下流側に位置し、壁面が疎水性である第1流路、を有し、前記処理装置に取り付けられた状態において、前記第1流路は鉛直方向に延びる。
【0010】
本願の第4発明は、第3発明の処理液吐出配管であって、前記吐出口は、前記第1流路の下流側端部に位置する。
【0011】
本願の第5発明は、第3発明または第4発明の処理液吐出配管であって、前記親水性流路と前記第1流路とは隣接している。
【0012】
本願の第6発明は、第1発明から第5発明までのいずれかの処理液吐出配管であって、前記流路は、前記親水性流路の上流に位置する第2流路、を有し、前記処理装置に取り付けられた状態において、前記第2流路は水平方向に延びる。
【0013】
本願の第7発明は、第1発明から第6発明までのいずれかの処理液吐出配管であって、前記親水性流路は、樹脂からなり、薬液に浸漬されることで、壁面の少なくとも一部が、親水性となっている。
【0014】
本願の第8発明は、第1発明から第7発明までのいずれかの処理液吐出配管であって、親水性である前記親水性流路の壁面は、他の流路の壁面よりも粗い。
【0015】
本願の第9発明は、基板表面に対して処理液を吐出する処理装置に取り付けられ、前記処理液が流通する流路と、前記流路を流通する処理液を前記基板表面に吐出する吐出口とを有する処理液吐出配管であって、樹脂からなり、前記流路は、壁面の少なくとも一部に対して水を接した状態で薬液に浸漬して、前記壁面の少なくとも一部を親水性にした親水性流路、を含み、前記処理装置に取り付けられると、前記親水性流路は、鉛直方向に対して傾斜し、上流側の端部が下流側の端部よりも高く位置する。
【0016】
本願の第10発明は、第9発明の処理液吐出配管、であって、前記親水性流路は、前記流路に水を満たした状態で薬液に浸漬して、親水性にされている。
【0017】
本願の第11発明は、第1発明から第10発明までのいずれかの処理液吐出配管、を備える基板処理装置であって、チャンバと、前記チャンバの内部において基板を水平に保持する基板保持部と、前記処理液吐出配管を介して、前記基板保持部に保持された基板の上面に、処理液を供給する処理液供給部と、前記処理液吐出配管の前記流路内の処理液を、上流側へ引き戻す引き戻し機構と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本願の第1発明~第11発明によれば、流路が傾斜すると処理液の保持が難しくなるが、その傾斜した流路の壁面が親水性となることで、その壁面による処理液の保持力は高まる。つまり、吐出口より上流側で、処理液が保持される。これにより、吐出口からの処理液の滴下(ボタ落ち)を防止できる。
【0019】
本願の第4発明によれば、吐出口付近に処理液が残存し、空気との接触により、処理液が乾燥することを防止できる。
【0020】
本願の第6発明によれば、処理液の流路抵抗が低く、処理液の流通が妨げられることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図4】処理液吐出配管に接続される給液部の一例を示した図である。
【
図5】制御部と、処理ユニット内の各部との接続を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、本発明の処理液吐出配管を備えた、基板処理装置について説明する。
【0023】
<1.基板処理装置の全体構成>
図1は、本実施形態に係る基板処理装置100の平面図である。基板処理装置100は、半導体ウェハの製造工程において、円板状の基板W(シリコン基板)の表面を処理する装置である。基板処理装置100は、基板Wの表面に処理液を供給する液処理と、基板Wの表面を乾燥させる乾燥処理とを行う。
【0024】
基板処理装置100は、インデクサ101と、複数の処理ユニット102と、主搬送ロボット103とを備えている。
【0025】
インデクサ101は、処理前の基板Wを外部から搬入するとともに、処理後の基板Wを外部へ搬出するための部位である。インデクサ101には、複数の基板Wを収容するキャリアが、複数配置される。また、インデクサ101は、図示を省略した移送ロボットを有する。移送ロボットは、インデクサ101内のキャリアと、処理ユニット102または主搬送ロボット103との間で、基板Wを移送する。なお、キャリアには、例えば、基板Wを密閉空間に収納する公知のFOUP(Front Opening Unified Pod)またはSMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッド、或いは、収納基板Wが外気と接するOC(Open Cassette)が用いられる。
【0026】
処理ユニット102は、基板Wを1枚ずつ処理する、いわゆる枚様式の処理部である。複数の処理ユニット102は、主搬送ロボット103の周囲に配置されている。本実施形態では、主搬送ロボット103の周囲に配置された4つの処理ユニット102が、高さ方向に3段に積層されている。すなわち、本実施形態の基板処理装置100は、全部で12台の処理ユニット102を有する。複数の基板Wは、各処理ユニット102において、並列に処理される。ただし、基板処理装置100が備える処理ユニット102の数は、12台に限定されるものではなく、その台数は適宜変更可能である。例えば、24台、16台、8台、4台、1台などであってもよい。
【0027】
主搬送ロボット103は、インデクサ101と複数の処理ユニット102との間で、基板Wを搬送するための機構である。主搬送ロボット103は、例えば、基板Wを保持するハンドと、ハンドを移動させるアームとを有する。主搬送ロボット103は、インデクサ101から処理前の基板Wを取り出して、処理ユニット102へ搬送する。また、処理ユニット102における基板Wの処理が完了すると、主搬送ロボット103は、当該処理ユニット102から処理後の基板Wを取り出して、インデクサ101へ搬送する。
【0028】
<2.処理ユニットの構成>
続いて、処理ユニット102の構成について説明する。以下では、基板処理装置100が有する複数の処理ユニット102のうちの1つについて説明するが、他の処理ユニット102も同等の構成を有する。
【0029】
図2は、処理ユニット102の平面図である。
図3は、処理ユニット102の縦断面図である。
図2および
図3に示すように、処理ユニット102は、チャンバ10、基板保持部20、回転機構30、処理液供給部40、処理液捕集部50、および制御部60を備えている。
【0030】
チャンバ10は、基板Wを処理するための処理空間11を内包する筐体である。チャンバ10は、処理空間11の側部を取り囲む側壁12と、処理空間11の上部を覆う天板部13と、処理空間11の下部を覆う底板部14と、を有する。基板保持部20、回転機構30、処理液供給部40、および処理液捕集部50は、チャンバ10の内部に収容される。側壁12の一部には、チャンバ10内への基板Wの搬入およびチャンバ10から基板Wの搬出を行うための搬入出口と、搬入出口を開閉するシャッタとが、設けられている(いずれも図示省略)。
【0031】
図3に示すように、チャンバ10の天板部13には、ファンフィルタユニット(FFU)15が設けられている。ファンフィルタユニット15は、HEPAフィルタ等の集塵フィルタと、気流を発生させるファンとを有する。ファンフィルタユニット15を動作させると、基板処理装置100が設置されるクリーンルーム内の空気が、ファンフィルタユニット15に取り込まれ、集塵フィルタにより清浄化されて、チャンバ10内の処理空間11へ供給される。これにより、チャンバ10内の処理空間11に、清浄な空気のダウンフローが形成される。
【0032】
また、側壁12の下部の一部には、排気ダクト16が接続されている。ファンフィルタユニット15から供給された空気は、チャンバ10の内部においてダウンフローを形成した後、排気ダクト16を通ってチャンバ10の外部へ排出される。
【0033】
基板保持部20は、チャンバ10の内部において、基板Wを水平に(法線が鉛直方向を向く姿勢で)保持する機構である。基板保持部20は、円板状のスピンベース21と、複数のチャックピン22とを有する。複数のチャックピン22は、スピンベース21の上面の外周部に沿って、等角度間隔で設けられている。基板Wは、パターンが形成される被処理面を上側に向けた状態で、複数のチャックピン22に保持される。各チャックピン22は、基板Wの周縁部の下面および外周端面に接触し、スピンベース21の上面から僅かな空隙を介して上方の位置に、基板Wを支持する。
【0034】
スピンベース21の内部には、複数のチャックピン22の位置を切り替えるためのチャックピン切替機構23が設けられている。チャックピン切替機構23は、複数のチャックピン22を、基板Wを保持する保持位置と、基板Wの保持を解除する解除位置と、の間で切り替える。
【0035】
回転機構30は、基板保持部20を回転させるための機構である。回転機構30は、スピンベース21の下方に設けられたモータカバー31の内部に収容されている。
図3中に破線で示したように、回転機構30は、スピンモータ32と支持軸33とを有する。支持軸33は、鉛直方向に延び、その下端部がスピンモータ32に接続されるとともに、上端部がスピンベース21の下面の中央に固定される。スピンモータ32を駆動させると、支持軸33がその軸芯330を中心として回転する。そして、支持軸33とともに、基板保持部20および基板保持部20に保持された基板Wも、軸芯330を中心として回転する。
【0036】
処理液供給部40は、基板保持部20に保持された基板Wの上面に、処理液を供給する機構である。処理液供給部40は、3本の処理液吐出配管41を有する。3本の処理液吐出配管41は、それぞれ、処理液が流通する流路を内部に有する。処理液吐出配管41は、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)またはPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)などのフッ素樹脂から形成される。なお、処理液吐出配管41の数は、3本に限定されるものではなく、1本、2本、または4本以上であってもよい。
【0037】
処理液吐出配管41の一端は、
図2に示すように、モータ42に支持されている。処理液吐出配管41は、モータ42に支持された側の端部を基端部として、その基端部から水平方向に延びるとともに、その先端部が鉛直方向下向きに屈曲する。すなわち、本実施形態の処理液吐出配管41は、L字状の外形を有する。処理液吐出配管41の、鉛直方向下向きに屈曲した部分の下端部には、吐出口41Aが設けられる。
【0038】
処理液吐出配管41は、モータ42の駆動により、
図2中の矢印のように、モータ42を中心として、水平方向に個別に回動する。これにより、処理液吐出配管41の吐出口41Aは、基板保持部20に保持された基板Wの上方の処理位置と、処理液捕集部50よりも外側の退避位置との間で、移動する。処理液の供給時には、吐出口41Aが基板Wの上方の処理位置に配置される。そして、処理液吐出配管41の流路を流通した処理液が、吐出口41Aから基板Wの上面に吐出される。処理液吐出配管41の具体的な構成は、後に詳述する。
【0039】
各処理液吐出配管41には、処理液を供給するための給液部が個別に接続されている。
図4は、処理液吐出配管41に接続される給液部45の一例を示した図である。
図4では、処理液として、硫酸(H
2SO
4)と、過酸化水素水(H
2O
2)との混合液であるSPM洗浄液を供給する場合の例を示している。
【0040】
給液部45は、硫酸供給源451と、過酸化水素水供給源452とを有する。硫酸供給源451に接続される流路途中には、第1バルブ453が設けられている。また、過酸化水素水供給源452に接続される流路途中には、第2バルブ454が設けられている。硫酸供給源451および過酸化水素水供給源452のそれぞれに接続された流路は、下流側で合流し、処理液吐出配管41に接続されている。
【0041】
吐出口41Aを処理位置に配置した状態で、第1バルブ453および第2バルブ454を開放すると、硫酸供給源451から排出される硫酸と、過酸化水素水供給源452から排出される過酸化水素水とが、合流して、SPM洗浄液となって、処理液吐出配管41に供給される。そして、そのSPM洗浄液が、処理液吐出配管41の吐出口41Aから、基板保持部20に保持された基板Wの上面に向けて吐出される。
【0042】
なお、3本の処理液吐出配管41はそれぞれ、互いに異なる処理液を吐出する。処理液の例としては、上述したSPM洗浄液の他に、SC1洗浄液(アンモニア水、過酸化水素水、純水の混合液)、SC2洗浄液(塩酸、過酸化水素水、純水の混合液)、DHF洗浄液(希フッ酸)、純水(脱イオン水)などを挙げることができる。
【0043】
また、処理液吐出配管41には、サックバック配管43が設けられる。サックバック配管43は、本発明の「引き戻し機構」の一例である。サックバック配管43は、鉛直方向に延びる配管であって、その上端部が、処理液吐出配管41の水平方向に延びる部位に接続される。これにより、処理液吐出配管41の水平方向に延びる流路は分岐される。第1バルブ453および第2バルブ454が閉鎖され、給液部45から処理液吐出配管41への処理液の供給が停止されると、吐出口41Aからの処理液の吐出が停止する。
【0044】
このとき、処理液吐出配管41の流路44内に残る処理液は、サイフォンの原理によって、サックバック配管43の流路へ流れ込む。つまり、サックバック配管43の下端部の高さは、吐出口41Aの高さよりも低いため、サックバック配管43の接続箇所より下流側の流路44内に残る処理液は、サックバック配管43へ向けて引き戻される。これにより、吐出口41Aからの処理液の滴下が抑制される。
【0045】
処理液捕集部50は、使用後の処理液を捕集する部位である。
図3に示すように、処理液捕集部50は、内カップ51、中カップ52、および外カップ53を有する。内カップ51、中カップ52、および外カップ53は、図示を省略した昇降機構により、互いに独立して昇降移動することが可能である。
【0046】
内カップ51は、基板保持部20の周囲を包囲する円環状の第1案内板510を有する。中カップ52は、第1案内板510の外側かつ上側に位置する円環状の第2案内板520を有する。外カップ53は、第2案内板520の外側かつ上側に位置する円環状の第3案内板530を有する。また、内カップ51の底部は、中カップ52および外カップ53の下方まで広がっている。そして、当該底部の上面には、内側から順に、第1排液溝511、第2排液溝512、および第3排液溝513が設けられている。
【0047】
処理液供給部40の各処理液吐出配管41から吐出された処理液は、基板Wに供給された後、基板Wの回転による遠心力で、外側へ飛散する。そして、基板Wから飛散した処理液は、第1案内板510、第2案内板520、および第3案内板530のいずれかに捕集される。第1案内板510に捕集された処理液は、第1排液溝511を通って、処理ユニット102の外部へ排出される。第2案内板520に捕集された処理液は、第2排液溝512を通って、処理ユニット102の外部へ排出される。第3案内板530に捕集された処理液は、第3排液溝513を通って、処理ユニット102の外部へ排出される。
【0048】
このように、この処理ユニット102は、処理液の排出経路を複数有する。このため、基板に供給された処理液を、種類毎に分別して回収できる。したがって、回収された処理液の廃棄や再生処理も、各処理液の性質に応じて別々に行うことができる。
【0049】
制御部60は、処理ユニット102内の各部を動作制御するための手段である。
図5は、制御部60と、処理ユニット102内の各部との接続を示したブロック図である。
図5中に概念的に示したように、制御部60は、CPU等のプロセッサ61、RAM等のメモリ62、およびハードディスクドライブ等の記憶部63を有するコンピュータにより構成される。記憶部63内には、処理ユニット102における基板Wの処理を実行するためのコンピュータプログラムPが、インストールされている。
【0050】
また、
図5に示すように、制御部60は、上述したファンフィルタユニット15、チャックピン切替機構23、スピンモータ32、3つのモータ42、処理液供給部40のバルブ453、454、および処理液捕集部50の昇降機構と、それぞれ通信可能に接続されている。制御部60は、記憶部63に記憶されたコンピュータプログラムPおよびデータをメモリ62に一時的に読み出し、当該コンピュータプログラムPに基づいて、プロセッサ61が演算処理を行うことにより、上記の各部を動作制御する。これにより、処理ユニット102における基板Wの処理が進行する。
【0051】
<3.処理液吐出配管41の構成>
次に、処理液吐出配管41の具体的構成について説明する。
図6は、処理液吐出配管41の断面図である。
【0052】
図6に示すように、処理液吐出配管41は、第1配管部411と、第2配管部412と、第3配管部413とを有する。第1配管部411は、水平方向に延びる部位である。第1配管部411の上流側の端部は、上述した給液部45に接続される。第2配管部412は、略L字状の処理液吐出配管41の屈曲箇所に位置する部位である。処理液吐出配管41の上流側の端部は、第1配管部411の下流側の端部に接続される。第2配管部412の下流側の端部は、第2配管部412の上流側の端部よりも下方に位置する。また、第2配管部412は、上流側の端部から下流側の端部へ向けて、湾曲しつつ延びる。第3配管部413は、鉛直方向に延びる部位である。第3配管部413の上流側の端部は、第2配管部412の下流側の端部に接続される。第3配管部413の下流側の端部は、第3配管部413の上流側の端部よりも下方に位置する。第3配管部413の下端部には、前記した吐出口41Aが設けられる。
【0053】
なお、第1配管部411、第2配管部412および第3配管部413は、一部品であってもよいし、異なる部品であってもよい。
【0054】
処理液吐出配管41は、処理液が流通する流路44を内部に有する。流路44は、上流側から順に、第1配管流路441と、第2配管流路442と、第3配管流路443とを有する。
【0055】
第1配管流路441は、第1配管部411の内部に形成され、水平方向に延びる直線流路である。上記のサックバック配管43は、第1配管部411に接続される。すなわち、サックバック配管43は、第1配管部411から分岐する。第1配管流路441の壁面、つまり、第1配管部411の内壁面411Aは、疎水性である。具体的には、第1配管部411の内壁面411Aは、後述する第2配管流路442の内壁面412Aよりも、平滑な面となっている。第1配管流路441は、本発明の「第2流路」の一例である。
【0056】
第2配管流路442は、第2配管部412の内部に形成され、鉛直方向に対して傾斜した流路である。第2配管流路442は、第1配管流路441の下流側に隣接して位置する。第2配管流路442の上流側の端部の位置は、第2配管流路442の下流側の端部の位置よりも高い。第2配管流路442の壁面、つまり、第2配管部412の内壁面412Aは、親水性である。具体的には、第2配管流路442の内壁面412Aは、上述した第1配管部411の内壁面411Aおよび後述する第3配管部413の内壁面413Aよりも、粗い面となっている。また、第2配管流路442の内壁面412Aは、処理液吐出配管41の外壁面よりも、粗い面となっている。第2配管流路442は、本発明の「親水性流路」の一例である。
【0057】
第3配管流路443は、第3配管部413の内部に形成され、鉛直方向に延びる直線流路である。第3配管流路443は、第2配管流路442の下流側に隣接して位置する。第3配管流路443の下端は、吐出口41Aである。第3配管流路443の壁面、つまり、第3配管部413の内壁面413Aは、疎水性である。具体的には、第3配管部413の内壁面413Aは、上述した第2配管流路442の内壁面412Aよりも、平滑な面となっている。第3配管流路443は、本発明の「第1流路」の一例である。
【0058】
第2配管流路442の壁面を親水性にする方法としては、例えば、フッ素樹脂製の処理液吐出配管41を、塩酸(塩化水素(HCL)水溶液)に浸漬させる方法が挙げられる。塩酸に浸漬させる際、第1配管部411~第3配管部413のうち、第2配管部412内のみを水で満たす。その状態で、処理液吐出配管41を塩酸に浸漬させると、塩酸中に溶解していた塩酸ガスが、第2配管部412内に浸透する。そうすると、水に接液している第2配管部412の内壁面412Aの表面に対して、浸透した塩素ガスが作用する。その結果、第2配管部412の内壁面412Aが粗面化される。これに対し、水が満たされていない第1配管部411内および第3配管部413内には、塩酸ガスが溜まるだけで、内壁面411Aおよび内壁面413Aは、粗面化されない。
【0059】
つまり、第2配管部412の内壁面412Aの表面粗さは、第1配管部411の内壁面411Aおよび第3配管部413の内壁面413Aの表面粗さよりも、粗い。第2配管部412の内壁面412Aの表面粗さは、例えば、JIS B 0601:2013(対応国際規格:ISO 4287:1997)において定義された「算術平均粗さRa」の値が、Ra=0.04~0.15であることが好ましい。
【0060】
第1配管流路441の壁面が疎水性であるため、第1配管流路441における処理液の流路抵抗は低い。このため、給液部45からの処理液の供給時に、第1配管流路441において、処理液の流通は妨げられにくい。
【0061】
また、第3配管流路443の壁面が疎水性であるため、第3配管流路443内の処理液は、第3配管流路443の壁面で保持されることなく、吐出口41Aから滴下しやすい。また、給液部45からの処理液の供給が停止されると、第3配管流路443内の処理液は、サックバック配管43により、上流側に引き戻される。このため、第3配管流路443内に処理液は残存しにくい。その結果、第3配管流路443内に処理液が残存し、その残存した処理液が、意図せぬときに滴下し、また、空気と触れて乾燥するおそれを防止できる。
【0062】
また、第2配管流路442の壁面が親水性であるため、第2配管流路442内に残存した処理液は、第2配管流路442の壁面に保持されやすい。このため、第2配管流路442に残存する処理液は、第3配管流路443へ流下しにくい。特に、第2配管流路442は、鉛直方向に対して傾斜している。流路の壁面で保持される処理液にかかる自重は、その流路が傾斜している場合の方が、流路が傾斜していない場合よりも大きい。しかしながら、この処理液吐出配管41では、傾斜している第2配管流路442の壁面を親水性として、処理液の保持力を大きくすることで、自重による処理液の滴下を抑制できる。
【0063】
<4.基板Wの処理>
以下に、上記のように構成された基板処理装置100における、基板Wの処理の一例について説明する。
【0064】
主搬送ロボット103により、チャンバ10内に基板Wを搬入すると、基板保持部20は、搬入された基板Wを、複数のチャックピン22により水平に保持する。その後、回転機構30のスピンモータ32を駆動して、基板Wの回転を開始させる。続いて、モータ42を駆動して、処理液供給部40の第3配管部413を、基板Wの上面に対向する処理位置へ移動させる。そして、
図4の第1バルブ453および第2バルブ454を開放して、第3配管部413から基板Wの上面に向けて、硫酸と過酸化水素水との混合液であるSPM洗浄液を吐出する。SPM洗浄液の温度は、例えば、150℃~200℃とされる。
【0065】
所定時間のSPM洗浄液を吐出した後、第1バルブ453のみを閉鎖して、硫酸の供給を停止する。これにより、第3配管部413から過酸化水素水のみを吐出する、いわゆる「過水押し出し処理」を行う。この過水押し出し処理は、流路内に残留する硫酸成分を洗い流して、処理液の供給を停止した後の第3配管部413からの硫酸の意図せぬ滴下を防止するために行われる。その後、所定時間が経過すると、第2バルブ454も閉鎖して、過酸化水素水の吐出を停止する。
【0066】
基板Wへの種々の処理液の供給が完了した後、基板Wの表面を乾燥させる。基板Wの乾燥処理が終了すると、複数のチャックピン22による基板Wの保持が解除され、主搬送ロボット103が、処理後の基板Wを、基板保持部20から取り出して、チャンバ10の外部へ搬出する。
【0067】
上述の通り、処理液吐出配管41の傾斜した第2配管流路442の壁面を親水性とすることで、第2配管流路442の壁面での処理液の保持力を高めることができる。そして、第2配管流路442の壁面で保持された処理液が、自重による滴下することを防止できる。その結果、基板Wの表面を、精度よく処理できる。特に、本例で示したSPM洗浄液は、比較的(例えば純水よりも)比重が高く、かつ、比較的(例えば純水よりも)表面張力が低い。このような、高比重かつ低表面張力の薬液は、自重による滴下が極めて生じやすい。しかしながら、この基板処理装置100では、第2配管流路442の壁面を親水性とすることで、このような薬液の自重による滴下を防止できる。
【0068】
<5.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0069】
壁面を親水性にする流路は、上記の実施形態の第2配管流路442に限定されない。壁面を親水性にする流路は、少なくとも、吐出口41Aよりも上流側であって、鉛直方向に対して傾斜し、上流側の端部が下流側の端部よりも高い位置にある流路であればよい。
【0070】
図7は、変形例の処理液吐出配管46の断面図である。
【0071】
図7の処理液吐出配管46は、第1配管部461と、第2配管部462と、第3配管部463とを有する。第1配管部461は、水平方向に延びる部位である。第2配管部462は、第1配管部461の下流側に位置し、鉛直方向に対して傾斜した直線状の部位である。第2配管部462の上流側の端部は、第1配管部461の下流側の端部に接続される。第2配管部462の下流側の端部は、第2配管部462の上流側の端部よりも、下方に位置する。第3配管部463は、第2配管部462の下流側に位置し、水平方向に延びる部位である。第3配管部463の上流側の端部は、第2配管部462の下流側の端部に接続される。第3配管部463の下流側の端部には、吐出口46Aが設けられる。第3配管部463は、本発明の「第1直線流路」の一例である。
【0072】
処理液吐出配管46は、内部に処理液が流通する流路47を有する。流路47は、第1配管流路471と、第2配管流路472と、第3配管流路473とを有する。
【0073】
第1配管流路471は、第1配管部461の内部に形成され、水平方向に延びる直線流路である。
図4で説明したサックバック配管43は、第1配管部461に接続される。第1配管流路471の壁面、つまり、第1配管部461の内壁面461Aは、疎水性である。
【0074】
第2配管流路472は、第2配管部462の内部に形成され、鉛直方向に対して傾斜した流路である。第2配管流路472は、第1配管流路471の下流側に位置する。第2配管流路472の上流側の端部の位置は、第2配管流路442の下流側の端部の位置よりも高い。第2配管流路472の壁面、つまり、第2配管部462の内壁面462Aは、親水性である。第2配管流路472の壁面は、上記の実施形態と同様、第2配管流路472内に水を満たした状態で、処理液吐出配管46を塩酸に浸漬することで、親水性にされる。第2配管流路472は、本発明の「親水性流路」の一例である。
【0075】
第3配管流路473は、第3配管部463の内部に形成され、水平方向に延びる直線流路である。第3配管流路473は、第2配管流路472の下流側に位置する。第3配管流路473の壁面、つまり、第3配管部463の内壁面463Aは、疎水性である。
【0076】
この構成の処理液吐出配管46においても、上記実施形態の処理液吐出配管41と同様、傾斜した第2配管流路472の壁面で処理液が保持される。これにより、処理液の自重による滴下が防止される。
【0077】
なお、上記の実施形態、および、
図7の変形例においては、傾斜した第2配管流路462の壁面全体を親水性としているが、傾斜した第2配管流路462の壁面の少なくとも一部が親水性であればよい。この場合、第2配管流路462のうち、親水性にしたい部分の壁面内に水を封止しつつ、処理液吐出配管を塩酸に浸漬すればよい。
【0078】
また、流路の壁面を親水性にする方法は、薬液に浸漬する以外の方法であってもよい。また、流路の壁面を親水性にする方法は、粗面化以外の方法であってもよい。さらに、上記の実施形態および、
図7の変形例において、第2配管流路442、472の上流に位置する第1配管流路441、471の壁面を疎水性としているが、親水性としてもよい。また、第1配管部411と、第2配管部412と、第3配管部413とを、別部品として、壁面を親水性にすべき配管のみを、塩酸に浸漬するようにしてもよい。
【0079】
さらに、上記の説明において、各配管は、定義した方向(鉛直方向または水平方向)に対し、必ずしも平行に延びていなくてもよい。例えば、
図6の第3配管部413は、鉛直方向に対して、多少傾斜していてもよい。
【0080】
基板処理装置100の細部の構成については、本願の各図と相違していてもよい。また、上記の実施形態および変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0081】
40 :処理液供給部
41 :処理液吐出配管
41A :吐出口
43 :サックバック配管
44 :流路
46 :処理液吐出配管
46A :吐出口
47 :流路
61 :プロセッサ
62 :メモリ
63 :記憶部
100 :基板処理装置
411 :第1配管部
411A :内壁面
412 :第2配管部
412A :内壁面
413 :第3配管部
413A :内壁面
414 :モータ
441 :第1配管流路
442 :第2配管流路
443 :第3配管流路
451 :硫酸供給源
452 :過酸化水素水供給源
453 :第1バルブ
454 :第2バルブ
461 :第1配管部
461A :内壁面
462 :第2配管部
462A :内壁面
463 :第3配管部
463A :内壁面
471 :第1配管流路
472 :第2配管流路
473 :第3配管流路