(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】広告効果予測システム、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/02 20120101AFI20220112BHJP
【FI】
G06Q30/02 382
(21)【出願番号】P 2018029340
(22)【出願日】2018-02-22
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000155469
【氏名又は名称】株式会社野村総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 好浩
(72)【発明者】
【氏名】小川 晃生
【審査官】池田 聡史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-018224(JP,A)
【文献】特開2006-072649(JP,A)
【文献】特開2011-081534(JP,A)
【文献】特開2014-006684(JP,A)
【文献】特開2012-053889(JP,A)
【文献】特開2012-216936(JP,A)
【文献】特開2005-006181(JP,A)
【文献】特開2002-016873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
広告に接した消費者の反応を予測する広告効果予測システムであって、
未知の広告を受け付ける入力部と、
既知の広告とこれに対応する消費者反応情報とを関連付けた教師データで学習させた予測モデルに、前記入力部で受け付けた未知の広告を入力することにより、前記未知の広告に対応する消費者反応情報を算出する算出部と、
を備え、
前記算出部は、広告画像中の人物面積占有度、人物登場時間比率、人物の認知度、人物の好感度、広告が音声を含む場合の発話時間比率、発話文字数、メロディ有無、メロディ再生時間のいずれかを前記未知広告又は前記既知広告から抽出する
ことを特徴とする広告効果予測システム。
【請求項2】
広告に接した消費者の反応を予測する広告効果予測方法であって、
コンピュータを用いて、
未知の広告を受け付け、
既知の広告とこれに対応する消費者反応情報とを関連付けた教師データで学習させた予測モデルに、前記入力部で受け付けた未知の広告を入力することにより、前記未知の広告に対応する消費者反応情報を算出する
とともに、
広告画像中の人物面積占有度、人物登場時間比率、人物の認知度、人物の好感度、広告が音声を含む場合の発話時間比率、発話文字数、メロディ有無、メロディ再生時間のいずれかを前記未知広告又は前記既知広告から抽出する
ことを特徴とする広告効果予測方法。
【請求項3】
広告に接した消費者の反応を予測する広告効果予測プログラムであって、
コンピュータを、
未知の広告を受け付ける入力部と、
既知の広告とこれに対応する消費者反応情報とを関連付けた教師データで学習させた予測モデルに、前記入力部で受け付けた未知の広告を入力することにより、前記未知の広告に対応する消費者反応情報を算出する算出部と
して機能させ、
前記算出部に、広告画像中の人物面積占有度、人物登場時間比率、人物の認知度、人物の好感度、広告が音声を含む場合の発話時間比率、発話文字数、メロディ有無、メロディ再生時間のいずれかを前記未知広告又は前記既知広告から抽出させる
ことを特徴とする広告効果予測プログラム。
【請求項4】
前記教師データに含まれる消費者反応情報は、前記既知の広告に接した消費者によるアンケート回答結果を含むことを特徴とする請求項
3に記載の広告効果予測
プログラム。
【請求項5】
前記アンケート回答結果は、広告認知度、ブランド認知度、好感度、興味度、購買・利用意向度、購買・利用実績度のいずれかに関するデータを含むことを特徴とする請求項
4に記載の広告効果予測
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広告表示による消費者の反応を事前に予測する広告効果予測システム、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
世の中には商品イメージや企業メッセージを消費者に届けるための多種多様な広告が存在し、それぞれの目的に応じた効果測定が重要である。
例えば特許文献1には、デジタルサイネージを閲覧している人物の顔をビデオカメラで撮影し、その映像に含まれる個々の顔の数、性別、年齢カテゴリー、スクリーンに向けていた時間等のデータを分析することにより、デジタルサイネージによる広告の効果を高速測定するという手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の手法は、広告閲覧中の消費者の画像そのものを分析することを通じて広告効果を推定するものに過ぎず、広告に接して生じる消費者の反応(内面の変化)を直接測定するものではない。また、広告を表示した後でその効果を一定の方法で推定するだけであって、広告表示前の効果予測を行うことも不可能である。
【0005】
本発明はかかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、広告表示による消費者の反応を事前に予測する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、広告に接した消費者の反応を予測する広告効果予測システムであって、未知の広告を受け付ける入力部と、既知の広告とこれに対応する消費者反応情報とを関連付けた教師データで学習させた予測モデルに、前記入力部で受け付けた未知の広告を入力することにより、前記未知の広告に対応する消費者反応情報を算出する算出部と、
を備えることを特徴とする。
また、同様の方法、プログラムとしても成立する。
【0007】
かかる広告効果予測システムにおいては、未知の広告の特徴情報が入力された予測モデルが、近い印象の既知の広告に接した消費者の過去の消費者反応情報を出力する。予測モデルは、既知の広告の特徴情報と、当該既知の広告に接した際に消費者が実際に示した消費者反応情報(例えば、アンケート回答)とを関連付けた教師データによる網羅的な学習により生成されている。したがって、未知の広告に接した際の消費者の(未知の)反応情報が、特徴情報が類似する既知広告に接した際の消費者の(既知の)反応情報で近似され、これが未知広告に接した消費者がとるであろう反応情報として出力される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、未知の広告に接した場合の消費者の反応を事前に予測することができる。そして、この広告を修正した場合の広告効果の改善度合をシミュレーションすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る広告効果予測システムの構成図である。
【
図5】広告効果予測システムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0011】
図1は、実施の形態に係る広告効果予測システム10の構成図である。広告効果予測システム10は、入力部11、算出部12、出力部13、モデル学習部30を備える。
【0012】
入力部11は、外部から広告の素材データを受け付けた上で、後述する特徴抽出部12aに渡したり、反応データを受け付けて反応データDB22に格納する。
ここで、広告の素材データは、典型的には、テレビCMやWeb広告のように音声(会話やメロティ等)及び文字を含んだ動画データである。
また、反応データは、典型的には、
図2に示すように、アンケート会社主催で消費者から収集した既知の広告に関するアンケート回答データである。同図のアンケート回答データは、IDで識別される広告毎に、
・広告認知度(その広告を知っていると回答した人のアンケート回答対象者数に対する割合)
・ブランド認知度(その広告で表現されているブランドを知っていると回答した人のアンケート回答対象者数に対する割合)
・好感度(その広告で表現されている商品に好感を持ったと回答した人のアンケート回答対象者数に対する割合)
・興味度(その広告で表現されている商品に興味を持ったと回答した人のアンケート回答対象者数に対する割合)
・購買・利用意向度(その広告で表現されている商品を購買したり役務を利用する意向があると回答した人のアンケート回答対象者数に対する割合)
・購買・利用実績度(その広告で表現されている商品を購買したり役務を利用した経験があると回答した人のアンケート回答対象者数に対する割合)
が記述されたものである。
【0013】
算出部12は、特徴抽出部12aと効果予測部12bとを含む。
特徴抽出部12aは、入力部11から受け付けた未知の広告や既知の広告の素材データから特徴量を抽出し、特徴量DB21に格納する。特徴量は、ある指標に従って広告の特徴を数値化したものである。
例えば
図3に示した特徴量は、ある商品に関するテレビCMの特徴量の一例であり、IDで識別される広告毎に、
・タレント占有度(テレビCM画面全体に占めるタレント部分の面積の割合の平均値)
・商品占有度(テレビCM画面全体に占める商品部分の面積の割合の平均値)
・セリフ音量(テレビCM中のタレントのセリフの音量の平均)
・画素数(テレビCM画像の画素数)
・歌・音楽の有無(有は1、無は0)
・字幕の文字数(平仮名換算)
・字幕内の商品名表示回数
・ロゴ有無(有は1、無は0)
が記述されたものである。
【0014】
効果予測部12bは、予測モデルDB23内の予測モデルに、特徴量DB210内の特徴量を入力することにより、効果予測データを算出する。
図4に示す予測モデルF1は、ニューラルネットワークの各層のニューロン間の重み付け係数を機械学習で最適化したものであり、素材データを入力すると反応データを出力するように生成されている。
【0015】
出力部13は、効果予測部12bで算出された効果予測データを出力し、人間やコンピュータが処理できる形で表示する。効果予測データは、原則として、入力部11から入力された反応データと同じ形式であるが、これに限定されない。
【0016】
モデル学習部30は、教師データに基づき、予測モデルDB23内の予測モデルF1を生成・更新する。教師データは、既知の広告の素材データと、これらの各広告に対する消費者の実際の反応データとを関連付けたものであり、特徴量DB21内の特徴量(
図3)と、反応データDB22内の反応データたるアンケート回答データ(
図2)として記憶されている。
【0017】
このような構成の広告効果予測システム10の挙動を、
図5のフローチャートに基づいて説明する。同図において、S1~S3が予測モデルF1を生成・更新する学習段階、S5~S7が未知の広告の効果を予測する予測段階である。
【0018】
まず、入力部11から教師データを受け付ける(S1)。教師データは、既知の広告の素材データ(
図3)と、これらの各広告に対して消費者が実際に示した反応データ(アンケート回答データ:
図2)とを関連付けたものを含む。入力部11で受け付けた教師データのうち、素材データは特徴抽出部12aで特徴量が抽出されて、この特徴量が特徴量DB21に格納される。教師データのうちの反応データは反応データDB22に格納される(S2)。ある広告についての特徴量とその広告に対する反応データには、同一の広告IDが割り振られて関連付け可能となっている。
【0019】
そして、モデル学習部30が特徴量DB21内の特徴量と反応データDB22内の反応データとに基づいて、予測モデルDB23内の予測モデルF1を生成あるいは更新する(S3)。その結果、ある特徴をもった既知の広告と、その広告に対する消費者の反応とを関連付けて学習した予測モデルが生成(または更新)される。
【0020】
モデル学習が完了していなければ(S4でN)、S1に戻って学習を継続するが、全ての教師データによるモデル学習が完了したら(S4でY)、予測段階に移行する。予測段階ではまず、入力部11で未知の広告の素材データを受け付ける(S5)。受け付けられた素材データは、特徴抽出部12aで特徴量が抽出される(S6)。
【0021】
そして、効果予測部12bは、予測モデルDB23内の予測モデルF1に、S6で抽出した(未知の広告の)特徴量を入力することにより、同一・類似の特徴量をもつ既知の広告の反応データを、(この未知の広告の)効果予測データとして出力部13へ出力する(S7)。
【0022】
以上のように、広告効果予測システム10によれば、既知の広告の素材データとこれらの各広告に対する消費者の反応データとを関連付けた教師データで予測モデルが生成されているから、この予測モデルに未知の広告を入力することにより、同一・類似の特徴量を持つ既知に広告に対する消費者の反応データ出力でき、もって未知の広告に接した場合の消費者の反応を事前に予測することができる。また、入力される広告(の素材データ)次第で出力される反応データは異なるから、広告の修正段階の広告効果の改善度合をシミュレーションすることができる。
【0023】
なお、本実施形態は発明の趣旨に応じて適宜改変可能であることはいうまでもない。
例えば、広告は動画形式に限定されるわけではなく、画像のみ、音声のみ、文字のみ、あるいはこれらの任意の組合せ等、いかなる形式であってもよい。
【0024】
また、反応データ中の広告認知度は、テレビCMの場合であれば、CMの覚えやすさを示す指標である「10Freq認知率」(あるテレビCMに10回接触した時に、消費者がその広告を「知っている」と回答する割合)をスコア化したものであることが望ましい。同じく購入・利用意向度は、広告への接触によって、消費者がその広告で扱っている商品等を買いたくなる・利用したくなる効果をスコア化し、広告に接触した消費者(接触群)における、事前-事後の購入意向等の推移・変化(差分)から、広告に接触しなかった消費者(対照群)における、同時期の変化(差分)を引く(差分の差分を算出する)ことによって、購入意向等に与える広告だけの純粋な効果を測定する、「差分の差分」方式により測定したものであることが望ましい。
そもそも反応データ自体、アンケート回答データに限定されるわけではなく、既知の広告に接した消費者から何らかの手法で収集したものであれば、いかなる反応データ(例えば、既知の広告を見た消費者の瞳孔の変化や心拍数変化の測定データ等)であってもよい。
【0025】
特徴量も、
図3に示した指標によって数値化されたものに限定されるわけではなく、広告の目的や形式に応じて定義された、広告に関するあらゆる特徴量が含まれる。例えば、本実施形態で例示した指標以外のものとして、以下の特徴量を採用することもできる。
・人物登場時間比率(動画広告の再生時間に占める人物登場時間の割合)
・人物認知度(広告中に登場する人物を知っていると回答した人のアンケート回答対象者数に対する割合)
・人物の好感度(広告中に登場する人物に好感を持ったと回答した人のアンケート回答対象者数に対する割合)
・発話時間比率(広告中の登場する人物による会話時間の広告再生時間に対する割合)
・発話文字数(広告中の登場する人物による会話の文字数)
・メロティ有無(有は1、無は0)
・メロティ再生時間(広告中のメロディの再生時間ないしその広告再生時間に対する割合)
【0026】
予測モデルは、ニューラルネットワークに限定されるわけではなく、線形回帰モデルや、ロジスティック回帰モデル、ランダムフォレスト等の他の形式でもよい。そして、教師データの豊富化により予測モデルが更新されるから、複数種類の予測モデルを用意しておいて適宜正解率が最も高い予測モデルを選択的に採用するようにしてもよい。
【0027】
システム構成も適宜定めることができる。例えば、本実施形態では、システム内の特徴抽出部12aで素材データから特徴量を抽出したが、事前に計測した特徴量(特徴データ)を直接予測モデルに入力するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
10…広告効果予測システム
11…入力部
12…算出部
12a…特徴抽出部
12b…効果予測部
13…出力部
21…特徴量DB
22…反応データDB
23…予測モデルDB
30…モデル学習部