(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】電源コンセント
(51)【国際特許分類】
H01R 25/00 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
H01R25/00 A
(21)【出願番号】P 2018053114
(22)【出願日】2018-03-20
【審査請求日】2021-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】神田 佳洋
(72)【発明者】
【氏名】加藤 明義
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-048961(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0030183(US,A1)
【文献】特開2006-048964(JP,A)
【文献】特開2004-327247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40 - 13/533
H01R 25/00 - 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の栓刃挿入口と接地極挿入口とがコンセントケースの前面に形成されて、接地極を有する接続プラグを接続可能な電源コンセントであって、
前記栓刃挿入口は、一方がI字状の栓刃を挿入可能なI形状を成す一方、他方が、I字状に加えてL字状、更には前記一方のI字状の栓刃に直交する方向に配置された倒I字状の3種類の栓刃を挿入可能なT形状を成して、互いに異なる形状の栓刃挿入口が左右に配置されると共に、
前記コンセントケースの前記栓刃挿入口の間に、前記栓刃挿入口に挿入された前記接続プラグの栓刃間で発生する放電を検知するための検知孔が複数形成されて成り、
前記検知孔のうちの1つが、前記栓刃挿入口間の中間位置で且つ中央に形成され、
加えて前記栓刃挿入口の上部の中間位置、及び下部の中間位置のうちの少なくとも一方にも形成されて成ることを特徴とする電源コンセント。
【請求項2】
前記検知孔は、前記栓刃挿入口の間の中間位置の中央部と、前記栓刃挿入口の上部の中間位置、及び下部の中間位置の計3カ所に形成されて成ることを特徴とする請求項1記載の電源コンセント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラッキングによる火災の発生を防止する電源コンセントに関し、詳しくはトラッキングに至る前に発生する放電を検知してトラッキングの発生を防止する電源コンセントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、トラッキング発生前の微小な放電を検知して電路を遮断する電源コンセントがある。例えば、特許文献1では、コンセントのプラグ挿入口間に直径1.5mm程度の孔を4カ所設け、その孔の奥部となるコンセントケースの内部にセンサとしてのリード線を配置し、リード線とグランドとの間で電流が流れたらプラグ挿入口間で放電が発生と判断して電路を遮断操作した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の技術により、プラグ挿入口の間に孔を設けて、その孔の内部に放電を検知させるリード線を配置することで、トラッキング放電に至る前の放電を検知することができた。
しかしながら、上記特許文献1の技術は、接地極のプラグ挿入口を持たない平行な栓刃のみ備えた単相100V用のコンセントに対応させた構成であったため、平行でない栓刃や接地極のプラグ挿入口を備えた3極構造のコンセントには対応できなかった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、接地極の有無に関わらず、また平行でない栓刃に対してもトラッキングに至る前の放電を検知できる電源コンセントを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、一対の栓刃挿入口と接地極挿入口とがコンセントケースの前面に形成されて、接地極を有する接続プラグを接続可能な電源コンセントであって、栓刃挿入口は、一方がI字状の栓刃を挿入可能なI形状を成す一方、他方が、I字状に加えてL字状、更には一方のI字状の栓刃に直交する方向に配置された倒I字状の3種類の栓刃を挿入可能なT形状を成して、互いに異なる形状の栓刃挿入口が左右に配置されると共に、コンセントケースの栓刃挿入口の間に、栓刃挿入口に挿入された接続プラグの栓刃間で発生する放電を検知するための検知孔が複数形成されて成り、検知孔のうちの1つが、栓刃挿入口間の中間位置で且つ中央に形成され、加えて栓刃挿入口の上部の中間位置、及び下部の中間位置のうちの少なくとも一方にも形成されて成ることを特徴とする。
この構成によれば、挿入された栓刃に対して、栓刃間の中央と、栓刃端部間の少なくとも一方の中間位置に検知孔を有するため、平行配置されたI字状の栓刃の間で発生する放電は中央の検知孔により良好に検知できるし、N極側がL字状或いは他方に直交配置された栓刃である場合は、栓刃挿入口の端部に合わせて形成した検知孔により検知できるため、何れの形状に栓刃であってもトラッキング前の放電を検知できる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、検知孔は、栓刃挿入口の間の中間位置の中央部と、栓刃挿入口の上部の中間位置、及び下部の中間位置の計3カ所に形成されて成ることを特徴とする。
この構成によれば、N極側がI形状、L字状或いは他方に直交する平坦な栓刃であっても、3カ所設けた検知孔により確実にトラッキング前の放電を検知できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、挿入された栓刃に対して、栓刃間の中央と、栓刃端部間の少なくとも一方の中間位置に検知孔を有するため、平行配置されたI字状の栓刃の間で発生する放電は中央の検知孔により良好に検知できるし、N極側がL字状或いは他方に直交配置された栓刃である場合は、栓刃挿入口の端部に合わせて形成した検知孔により検知できるため、何れの形状に栓刃であってもトラッキング前の放電を検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る電源コンセントの一例を示すコンセントの正面説明図である。
【
図2】
図1の電源コンセントに接続可能な接続プラグの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る電源コンセントの正面説明図であり、1(1a,1b)は接続プラグの栓刃を挿入する一対の栓刃挿入口、2は接続プラグの接地極を挿入する接地極挿入口、3はトラッキング発生前の放電を検知するための検知孔である。これらはコンセントケース10の前面に設けられ、コンセントケース10の内部には、検知孔3を介して栓刃間で発生する放電を検知するセンサ及び放電検知回路、更に放電が発生したら電路を遮断する遮断機構等が組み込まれている。
【0011】
尚、接続プラグの栓刃の間隔(栓刃挿入口1の間隔)及び接地極挿入口2の位置は、JIS規格で決められている。また
図1では、栓刃挿入口1は左右に配置され、接地極挿入口2はその中間位置の下部に配置されているが、コンセントケース10の向きは上下方向が限定されないため、90度回転して設置された場合は、栓刃挿入口1は上下に配置され、その横方向に接地極挿入口2が配置されることになる。
【0012】
図2は
図1の電源コンセントに接続可能な栓刃5,5を備えた3種類の接続プラグ4を示している。
図2において、(a)は同一のI字状の2枚の栓刃5a,5aを平行に配置した一般的な家庭用100Vの2極接続プラグ、(b)はI字状の栓刃5aとL字状の栓刃5bを備えた20アンペア対応の接地極無しの接続プラグ、(C)は同一のI字状であるが互いに直交するように配置した栓刃5a、5cを備え、更に接地極6を備えた20アンペア対応の接続プラグをそれぞれ示している。
このように、
図1の電源コンセントはこれら3種類の接続プラグ4を接続可能としているため、栓刃挿入口1のうち、右側の栓刃挿入口1bはI形状とする一方で、左側の栓刃挿入口1aはT形状として、縦のI字状、横のI字状、そしてL字状の3種類の栓刃5(5a,5b,5c)を挿入可能としている。
【0013】
上記の如く形成された電源コンセントにおいて、
図1に示すように検知孔3は3カ所設けられている。具体的に、栓刃挿入口1a,1bの中間位置で且つ中央に第1の孔3aが穿設され、その上方で栓刃5aの上端に対応する栓刃挿入口1の上部に第2の孔3bが穿設され、反対方向の栓刃5aの下端に対応する栓刃挿入口1の下部に第3の孔3cが穿設されている。
【0014】
図3は、栓刃間で発生する放電の説明図であり、検知孔3との関係を示している。
図3において、連続する「+」の記号で示す経路Sは何れも放電の経路を示し、実験より最初に発生する放電はこの経路Sで示す位置で発生する確率が高いことが確認されている。
具体的に、
図3(a)は
図2(a)に示す栓刃5a,5aの間で発生する放電の経路、
図3(b)は
図2(b)に示す栓刃5a,5bの間で発生する放電の経路、
図3(c)は
図2(c)に示す栓刃5a,5cの間で発生する放電の経路をそれぞれ示している。
【0015】
図3に示すように、平行する2枚の栓刃が接続されている場合は、中央に形成された第1の孔3aの前方で発生し易く、一方がL字状の栓刃の場合及び直交する栓刃を有する場合は、上部の第2の孔3b或いは第3の孔3cの何れかの前方で発生し易い。
そのため、3個の検知孔3を列設することで、3種類の接続プラグ4に対して、良好に放電を検知できる。
【0016】
図4は、検知孔3に対するセンサの配置を示している。検知孔3が穿設されたコンセントケース10の前面背部には、センサとしてのリード線7の芯線7aが3個の検知孔3に掛かるように配置されている。尚、リード線7は図示しない放電検知回路に接続されているが省略している。
芯線7aは、コンセントケース10の前面背部に密着するよう配置され、検知孔3の奥部に配置されている。こうしてコンセントケース10の前面において発生する放電が検知孔3を介して芯線7aに達するよう構成されている。尚、8は芯線7aを背部から覆い芯線7aを保護する絶縁シートを示している。
【0017】
このように、挿入された接続プラグ4の栓刃5に対して、栓刃5間の中央と、栓刃5の端部間に検知孔3(第1の孔3a、第2の孔3b、第3の孔3c)を有するため、平行配置されたI字状の栓刃5の間で発生する放電は中央の第1の孔3aにより検知し、N極側がL字状或いは他方に直交配置された栓刃5である場合は、栓刃挿入口1の端部に合わせて形成した第2の孔3b、或いは第3の孔3cにより検知できるため、何れの形状の栓刃5であってもトラッキング発生前の放電を検知できる。
【0018】
尚、上記実施形態では、検知孔3を3個設けた構成を示しているが、第1の孔3aと第2の孔3bの2個、第1の孔3aと第3の孔3cの2個でも良く、3種類の接続プラグ4に対して早期の放電の検知は可能である。
また、1つの接続プラグ4を接続する電源コンセントを説明しているが、コンセントケースに複数の電源コンセントを備えた構成も含むものである。
【符号の説明】
【0019】
1・・栓刃挿入口、2・・接地極挿入口、3・・検知孔、4・・接続プラグ、10・・コンセントケース。