IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京瓦斯株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電力システム 図1
  • 特許-電力システム 図2
  • 特許-電力システム 図3
  • 特許-電力システム 図4
  • 特許-電力システム 図5
  • 特許-電力システム 図6
  • 特許-電力システム 図7
  • 特許-電力システム 図8
  • 特許-電力システム 図9
  • 特許-電力システム 図10
  • 特許-電力システム 図11
  • 特許-電力システム 図12
  • 特許-電力システム 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】電力システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20220112BHJP
   H02B 1/40 20060101ALI20220112BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20220112BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20220112BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
H02J3/46
H02B1/40 A
H02J3/14 130
H02J13/00 311T
H02J3/38 110
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018064111
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019176663
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 聡史
(72)【発明者】
【氏名】伴野 卓也
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 崇之
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-133599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/46
H02B 1/40
H02J 3/14
H02J 13/00
H02J 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統の電力を、漏電ブレーカおよび前記漏電ブレーカの二次側に接続された単相3線式の内部配線を通じて負荷設備に供給する電力システムであって、
前記内部配線の電圧線および中性線における前記負荷設備より前記漏電ブレーカ側に接続された電力供給設備と、
前記電力供給設備に流れる設備電流を測定する設備電流計と、
前記漏電ブレーカの一次側の受電点における前記電力供給設備が接続された電圧線を流れる受電点電流を測定する受電点電流計と、
前記設備電流と前記受電点電流との和が、前記漏電ブレーカの定格遮断電流または前記内部配線の過電流耐量以下となるように、前記電力供給設備の出力を制限する制御部と、
を備えることを特徴とする電力システム。
【請求項2】
電力系統の電力を、漏電ブレーカおよび前記漏電ブレーカの二次側に接続された単相3線式の内部配線を通じて負荷設備に供給する電力システムであって、
前記内部配線の2つの電圧線における前記負荷設備より前記漏電ブレーカ側に接続された電力供給設備と、
前記電力供給設備に流れる設備電流を測定する設備電流計と、
前記漏電ブレーカの一次側の受電点における一方の電圧線を流れる第1受電点電流を測定する第1受電点電流計と、
前記受電点における他方の電圧線を流れる第2受電点電流を測定する第2受電点電流計と、
前記設備電流と前記第1受電点電流との和、および、前記設備電流と前記第2受電点電流との和のいずれもが前記漏電ブレーカの定格遮断電流または前記内部配線の過電流耐量以下となるように、前記電力供給設備の出力を制限する制御部と、
を備えることを特徴とする電力システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記漏電ブレーカの定格遮断電流もしくは前記内部配線の過電流耐量、または、前記漏電ブレーカの定格遮断電流もしくは前記内部配線の過電流耐量未満の所定電流に追従するように、前記電力供給設備の出力を制限する請求項1または2に記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、需要者構内に電力供給設備を接続可能な電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
需要者は、電力会社からの電気(商用電力)の供給を受けて構内の負荷設備(一般用電気工作物)で電気を使用する。また、太陽光発電設備等、発電設備を構内に設け、負荷設備を動作させるとともに(例えば、特許文献1)、電力会社に余った電力を売電することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-247737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽光発電設備等の発電設備や電池を用いた電力供給設備として、単相3線式100V/200V(以下、単に単相3線式という)のものが用いられている。また、単相3線式の一方の電圧線と中性線とに小出力の電力供給設備を設置することもある。
【0005】
非常に大きな負荷設備が接続されたときに、内部配線の許容電流(過電流耐量)を超過する電流が、電力系統から流れ込むことを防ぐため、内部配線の一次側の漏電ブレーカで電流を制限している。しかし、上述のような電力供給設備が構内に接続され、構内のみで電力融通を行い、負荷設備への電力を一部賄う場合には、漏電ブレーカの定格遮断電流に基づいて制限された過電流耐量以上の電流が内部配線に流れてしまい、発熱や耐久性劣化の原因となるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、電力供給設備を、負荷設備より漏電ブレーカ側の内部配線に接続したとしても、既設の内部配線に過電流耐量を上回る電流が流れるのを防止することが可能な電力システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、電力系統の電力を、漏電ブレーカおよび漏電ブレーカの二次側に接続された単相3線式の内部配線を通じて負荷設備に供給する本発明の電力システムは、内部配線の電圧線および中性線における負荷設備より漏電ブレーカ側に接続された電力供給設備と、電力供給設備に流れる設備電流を測定する設備電流計と、漏電ブレーカの一次側の受電点における電力供給設備が接続された電圧線を流れる受電点電流を測定する受電点電流計と、設備電流と受電点電流との和が漏電ブレーカの定格遮断電流または内部配線の過電流耐量以下となるように、電力供給設備の出力を制限する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決するために、電力系統の電力を、漏電ブレーカおよび漏電ブレーカの二次側に接続された単相3線式の内部配線を通じて負荷設備に供給する本発明の他の電力システムは、内部配線の2つの電圧線における負荷設備より漏電ブレーカ側に接続された電力供給設備と、電力供給設備に流れる設備電流を測定する設備電流計と、漏電ブレーカの一次側の受電点における一方の電圧線を流れる第1受電点電流を測定する第1受電点電流計と、受電点における他方の電圧線を流れる第2受電点電流を測定する第2受電点電流計と、設備電流と第1受電点電流との和、および、設備電流と第2受電点電流との和のいずれもが漏電ブレーカの定格遮断電流または内部配線の過電流耐量以下となるように、電力供給設備の出力を制限する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
制御部は、漏電ブレーカの定格遮断電流もしくは内部配線の過電流耐量、または、漏電ブレーカの定格遮断電流もしくは内部配線の過電流耐量未満の所定電流に追従するように、電力供給設備の出力を制限するとしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電力供給設備を、負荷設備より漏電ブレーカ側の内部配線に接続したとしても、既設の内部配線に過電流耐量を上回る電流が流れるのを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】電力システムの基本的な接続態様を示した説明図である。
図2】比較例としての電力供給設備の接続態様を説明するための説明図である。
図3】電力供給設備の接続態様を説明するための説明図である。
図4】比較例としての電力供給設備の接続態様を説明するための説明図である。
図5】電力供給設備の接続態様を説明するための説明図である。
図6】電力システムの基本的な接続態様を示した説明図である。
図7】比較例としての電力供給設備の接続態様を説明するための説明図である。
図8】電力供給設備の接続態様を説明するための説明図である。
図9】電力供給設備の接続態様を説明するための説明図である。
図10】電力システムの基本的な接続態様を示した説明図である。
図11】比較例としての電力供給設備の接続態様を説明するための説明図である。
図12】電力供給設備の接続態様を説明するための説明図である。
図13】電力供給設備の接続態様を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、電力システム100の基本的な接続態様を示した説明図である。電力システム100は、引き込み線12を通じて、電力系統14から電気(商用電力)の供給を受ける。かかる電力システム100は、低圧受電の需要者単位で構成され、その範囲としては、一般用電気工作物であれば、家屋等に限らず、病院、工場、ホテル、レジャー施設、商業施設、マンションといった建物単位や建物内の一部分であってもよい。
【0014】
また、電力システム100は、電力メータ112と、分電盤114と、構内配線116とを含んで構成される。
【0015】
電力メータ(電力量計)112は、電力系統14に引き込み線12を介して接続され、引き込み線12と電力システム100との間に流れる(消費および売電の)電流の電流値を計測する。
【0016】
分電盤114は、電力メータ112に接続され、契約容量を示すサービスブレーカ114a、漏電の検出に応じて電気の供給を遮断する漏電ブレーカ114b、および、内部配線(主幹バー)114cを介して漏電ブレーカ114bと接続され、構内配線116に流れる電流が定格遮断電流を超過すると電気の供給を遮断する配線用(安全)ブレーカ114dを有する。ここで、漏電ブレーカ114bは、漏電遮断機能付き過電流遮断器、および、漏電遮断機能のみを有する漏電遮断器のいずれの概念も含んでいる(以下、説明の便宜上、単に漏電ブレーカ114bとして説明する)。
【0017】
需要者は、構内配線116それぞれに1または複数の負荷設備16を接続し、サービスブレーカ114a、漏電ブレーカ114b、内部配線114c、配線用ブレーカ114d、および、構内配線116を通じて電力の供給を受ける。かかる構成では、漏電ブレーカ114bの定格遮断電流 ≧ 内部配線114cの過電流耐量 > 配線用ブレーカ114dの定格遮断電流という関係となっている。
【0018】
ここで、上記の電力システム100に、さらに電力供給設備120を接続することを検討する。この場合、電力システム100は、電力メータ112、分電盤114、構内配線116に加え、電力供給設備120を含むことになる。電力供給設備120は、電力系統14より優先して負荷設備16に電力を供給することができる。かかる電力供給設備120としては、例えば、太陽光発電機、風力発電機、水力発電機、地熱発電機、太陽熱発電機、大気中熱発電機等の再生可能エネルギー発電設備や、燃料電池、内燃力発電、蓄電池等を用いることができる。
【0019】
図2は、比較例としての電力供給設備120の接続態様を説明するための説明図である。図2に示される単相3線式の配電方式では、2つの電圧線のうち一方の第1電圧線(R相)と中性線(N相)との間、および、他方の第2電圧線(T相)と中性線(N相)との間の電圧が100Vとなり、第1電圧線と第2電圧線との間の電圧が200Vとなる。なお、以下の説明では、第1電圧線をR相、第2電圧線をT相としているが、第1電圧線をT相に、第2電圧線をR相に置換可能なのは言うまでもない。
【0020】
100V出力の電力供給設備120を電力システム100に接続する場合、電力供給設備120は、例えば、内部配線114cにおける、漏電ブレーカ114bの二次側の直後の第2電圧線(または第1電圧線)と中性線とに、別途の個別ブレーカ114eを介して接続される。したがって、電力供給設備120は、内部配線114cの第2電圧線および中性線における漏電ブレーカ114bからみて負荷設備16a、16b、16cより一次側(負荷設備16a、16b、16cより漏電ブレーカ114b側)に接続されていることになる。ここでは、電力系統からの電力供給方向を基準に、設備の電力系統側を一次側、その反対側を二次側として定義する。
【0021】
電力供給設備120は、発電部120aと、設備電流計120bと、制御部120cとを有している。発電部120aは、例えば、燃料電池等で構成され、他のエネルギーを電気エネルギーに変換して電気を生成する。設備電流計120bは、例えば、変流器(CT)と整流器とで構成され、発電部120aから出力される電流(以下、設備電流という)を測定する。制御部120cは、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路で構成され、設備電流に基づいて発電部120aの出力(電流)を制御する。このような電力供給設備120を内部配線114cに接続することで、電力系統だけでは不足する負荷設備16への電力を電力供給設備120で賄うことができる。
【0022】
しかし、一方で、電力供給設備120から電力が供給されることにより、漏電ブレーカ114bの定格遮断電流に基づいて制限されている過電流耐量以上の電流が内部配線114cに流れる場合がある。
【0023】
図2を参照し、例えば、負荷設備16aにおいて3A(300W)消費され、負荷設備16b、16cにおいて合わせて35A(3500W)消費されているとする。ここでは、説明の便宜上、他の負荷設備16の消費は考慮しない。このとき、漏電ブレーカ114bの定格遮断電流および内部配線114cの過電流耐量は30Aであるとする。
【0024】
ここで、電力供給設備120から連系相を通じて電流値10A相当の電力が負荷設備16bに供給されると、電力系統からは最大25A相当の電力が負荷設備16bに供給されることになる。具体的には、第1電圧線に3A、中性線に22A、第2電圧線に25A流れることとなる(電流の向きは不問)。このとき、電力供給設備120は定格内で動作しており、単相3線式の各線(第1電圧線、中性線、第2電圧線)に流れる電流も漏電ブレーカ114bの定格遮断電流30A以下なので問題がない。
【0025】
しかし、内部配線114cのうち、図2において太線で示した部分では、最大で、電力供給設備120の電流と受電点電流(電力系統から供給された電流)との和に相当する電流(例えば35A)が流れ、その電流値が、内部配線114cの過電流耐量30A以上となる場合がある。そうすると、内部配線114cの発熱や耐久性劣化の原因となるおそれがある。
【0026】
そこで、本実施形態では、発電部120aの出力を制御することで、このような既設の内部配線114cに過電流耐量を上回る電流が流れるのを防止する。
【0027】
図3は、電力供給設備120の接続態様を説明するための説明図である。ここでは、例えば、漏電ブレーカ114bの一次側(受電点)に予め設けられている、第1電圧線の電流(以下、第1受電点電流という)を測定する第1受電点電流計130a、および、第2電圧線の電流(以下、第2受電点電流という)を測定する第2受電点電流計130bのうち、電力供給設備120が接続された(連系相である)第2電圧線における第2受電点電流計130bを用いる。第1受電点電流計130aおよび第2受電点電流計130bは、変流器(CT)と整流器とで構成される。
【0028】
そして、電力供給設備120の制御部120cは、設備電流計120bで測定された設備電流と、第2受電点電流計130bで測定された第2受電点電流との和が、漏電ブレーカ114bの定格遮断電流以下となるように、発電部120aの出力を制限する。
【0029】
例えば、図3に示すように、第2受電点電流が25Aであれば、制御部120cは、その第2受電点電流25Aと設備電流との和が、漏電ブレーカ114bの定格遮断電流30A以下となるように、すなわち、設備電流が5A以下となるように、発電部120aを制御する。そうすると、内部配線114cの全ての部分に流れる電流が、内部配線114cの過電流耐量30A以下となるので、既設の内部配線114cに過電流耐量を上回る電流が流れるのを防止でき、発熱や耐久性劣化を防止することが可能となる。
【0030】
このとき、負荷設備16b、16cでは、合わせて最大で30Aしか消費できなくなるが、そもそも内部配線114cでは過電流耐量以下の電流しか流せない想定なので問題は生じない。この場合、負荷設備16b、16cの負荷を調整すれば足りる。
【0031】
また、制御部120cは、設備電流と第2受電点電流との和が、漏電ブレーカ114bの定格遮断電流の30A、または、漏電ブレーカ114bの定格遮断電流未満の所定電流、例えば、28Aに追従するように、電力供給設備120の出力を制限してもよい。かかる構成により、受電点電流が増大すると、その分、設備電流を減少させ(抑制し)、逆に、受電点電流が減少すると、その分、設備電流を増大させることができるようになる。こうして、電力供給設備120の出力を最大に活かしつつ、既設の内部配線114cに過電流耐量を上回る電流が流れるのを防止することができる。
【0032】
なお、ここでは、第2電圧線の電流を計測する第2受電点電流計130bを用いる例を挙げて説明したが、電力供給設備120が接続された電圧線の電流を計測しさえすれば足り、例えば、電力供給設備120が第1電圧線に接続されている場合、第1受電点電流計130aを用いてもよい。
【0033】
また、単相3線式では、3つの線(第1電圧線、中性線、第2電圧線)のいずれか2つの線の電流を把握できれば、他の1の線の電流を計算により導出できる。したがって、第1受電点電流計130aと中性線を流れる電流を測定する電流計とを準備し、第2電圧線の電流を、第1受電点電流と中性線を流れる電流とから導出するとしてもよい。
【0034】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、100V出力の電力供給設備120を接続する例を挙げて説明したが、200V出力の電力供給設備120を接続することもできる。
【0035】
図4は、比較例としての電力供給設備120の接続態様を説明するための説明図である。200V出力の電力供給設備120を電力システム100に接続する場合、電力供給設備120は、例えば、内部配線114cにおける、漏電ブレーカ114bの二次側の直後の第1電圧線と第2電圧線とに、別途の個別ブレーカ114eを介して接続される。したがって、電力供給設備120は、内部配線114cの第1電圧線および第2電圧線における漏電ブレーカ114bからみて負荷設備16a、16b、16dより一次側(負荷設備16a、16b、16dより漏電ブレーカ114b側)に接続されていることになる。
【0036】
ここでも、図2同様、電力供給設備120から電力が供給されることにより、過電流耐量以上の電流が内部配線114cに流れる場合がある。図4を参照し、例えば、負荷設備16a、16dにおいて合わせて35A(3500W)消費され、負荷設備16bにおいて20A(2000W)消費されているとする。ここでも、説明の便宜上、他の負荷設備16の消費は考慮しない。このとき、漏電ブレーカ114bの定格遮断電流および内部配線114cの過電流耐量は30Aであるとする。
【0037】
ここで、電力供給設備120から電流値10A相当の電力が負荷設備16a、16bおよび負荷設備16dに供給されると、電力系統からは最大25A相当の電力が負荷設備16a、16b、16dに供給されることになる。具体的には、第1電圧線に25A、中性線に15A、第2電圧線に10A流れることとなる。このとき、電力供給設備120は定格内で動作しており、単相3線式の各線(第1電圧線、中性線、第2電圧線)に流れる電流も漏電ブレーカ114bの定格遮断電流30A以下なので問題がない。
【0038】
しかし、内部配線114cのうち、図4において太線で示した部分では、最大で、電力供給設備120の電流と受電点電流との和に相当する電流(例えば35A)が流れ、その電流値が、内部配線114cの過電流耐量30A以上となる場合がある。そうすると、図2同様、発熱や耐久性劣化の原因となるおそれがある。ここでは、100V出力の電力供給設備120同様、200V出力の電力供給設備120においても、発電部120aの出力を制御することで、既設の内部配線114cに過電流耐量を上回る電流が流れるのを防止する。
【0039】
図5は、電力供給設備120の接続態様を説明するための説明図である。ここでは、例えば、第1受電点電流計130aと第2受電点電流計130bの両方を用いる。
【0040】
そして、電力供給設備120の制御部120cは、設備電流計120bで測定された設備電流と、第1受電点電流計130aで測定された第1受電点電流との和、および、設備電流と、第2受電点電流計130bで測定された第2受電点電流との和のいずれもが漏電ブレーカ114bの定格遮断電流以下となるように(いずれか大きい方が定格遮断電流以下となるように)、発電部120aの出力を制限する。
【0041】
なお、ここでは、第1受電点電流と第2受電点電流とが論理和で計算されることとなるので、電力供給設備120に入力される受電点電流が、第1受電点電流と第2受電点電流とのいずれであるかを特定しなくとも、いずれか大きい方を採用することで、適切に、発電部120aの出力を制限することができる。
【0042】
例えば、図5に示すように、第1受電点電流が25Aであり、第2受電点電流が15Aであれば、値が大きい第1受電点電流25Aと設備電流との和が、漏電ブレーカ114bの定格遮断電流30A以下となるように、すなわち、設備電流が5A以下となるように、発電部120aを制御する。そうすると、内部配線114cの全ての部分に流れる電流が、内部配線114cの過電流耐量30A以下となるので、既設の内部配線114cに過電流耐量を上回る電流が流れるのを防止でき、発熱や耐久性劣化を防止することが可能となる。
【0043】
また、制御部120cは、設備電流と第1受電点電流との和、および、設備電流と第2受電点電流との和のいずれもが漏電ブレーカ114bの定格遮断電流の30A、または、漏電ブレーカ114bの定格遮断電流未満の所定電流、例えば、28Aに追従するように、電力供給設備120の出力を制限してもよい。かかる構成により、受電点電流が増大すると、その分、設備電流を減少させ(抑制し)、逆に、受電点電流が減少すると、その分、設備電流を増大させることができるようになる。こうして、電力供給設備120の出力を最大に活かしつつ、既設の内部配線114cに過電流耐量を上回る電流が流れるのを防止することができる。
【0044】
なお、ここでは、第1受電点電流計130aと第2受電点電流計130bとを用いる例を挙げて説明した。しかし、単相3線式では、3つの線(第1電圧線、中性線、第2電圧線)のいずれか2つの線の電流を把握できれば、他の1の線の電流を計算により導出できる。したがって、中性線を流れる電流を測定する電流計を準備し、その電流計と第1受電点電流計130a、または、その電流計と第2受電点電流計130bとの組み合わせにより、第1受電点電流や第2受電点電流を導出するとしてもよい。
【0045】
(第3の実施形態)
第1の実施形態および第2の実施形態では、電力供給設備120を、内部配線114cにおける、漏電ブレーカ114bの二次側の直後に、別途の個別ブレーカ114eを介して接続する例を挙げて説明した。第3の実施形態では、負荷設備16より漏電ブレーカ114bの下流(漏電ブレーカ114bから離れる側)に相当する位置に電力供給設備120を配置する例を挙げる。
【0046】
図6は、電力システム200の基本的な接続態様を示した説明図である。電力システム200は、図1の電力システム100同様、電力メータ112と、分電盤114と、構内配線116と、電力供給設備120を含んで構成される。ただし、ここでは、図1と異なり、電力供給設備120が、内部配線114cにおける第2電圧線と中性線とに、負荷設備16より漏電ブレーカ114bの下流に相当する配線用ブレーカ114dを介して接続される(下位連系)。したがって、電力供給設備120は、内部配線114cの第2電圧線および中性線における、漏電ブレーカ114bからみて負荷設備16より二次側(負荷設備16を基準に漏電ブレーカ114bではない方側)に接続されていることになる。
【0047】
図7は、比較例としての電力供給設備120の接続態様を説明するための説明図である。ここでも、図2図4同様、電力供給設備120から電力が供給されることにより、過電流耐量以上の電流が内部配線114cに流れる場合がある。
【0048】
図7を参照し、例えば、負荷設備16a、16dにおいて合わせて25A(2500W)消費され、負荷設備16bにおいて10A(1000W)消費されているとする。なお、電力供給設備120が連系された第2電圧線(連系相)に接続された負荷設備16bより、電力供給設備120が連系されていない第1電圧線(非連系相)に接続された負荷設備16a、16dの方が負荷が大きく、漏電ブレーカ114bの定格遮断電流に近くなっている。また、ここでも、説明の便宜上、他の負荷設備16の消費は考慮しない。このとき、漏電ブレーカ114bの定格遮断電流および内部配線114cの過電流耐量は30Aであるとする。
【0049】
ここで、電力供給設備120から電流値10A相当の電力が負荷設備16bに供給されると、電力系統から、第1電圧線に25A、中性線に25A、第2電圧線に0A流れることとなる(電流の向きは不問)。このとき、電力供給設備120は定格内で動作しており、単相3線式の各線(第1電圧線、中性線、第2電圧線)に流れる電流も漏電ブレーカ114bの定格遮断電流30A以下なので問題がない。
【0050】
しかし、内部配線114cのうち、図7において太線で示した負荷設備16aと負荷設備16bとを接続する部分では、最大で、電力供給設備120の電流と受電点電流との和に相当する電流(例えば35A)が流れ、その電流値が、内部配線114cの過電流耐量30A以上となる場合がある。そうすると、内部配線114cの発熱や耐久性劣化の原因となるおそれがある。ここでは、発電部120aの出力を制御することで、既設の内部配線114cに過電流耐量を上回る電流が流れるのを防止する。
【0051】
図8および図9は、電力供給設備120の接続態様を説明するための説明図である。ここでは、例えば、第1受電点電流計130aと第2受電点電流計130bの両方を用いる。
【0052】
そして、電力供給設備120の制御部120cは、設備電流計120bで測定された設備電流と、電力供給設備120が接続されていない第1電圧線(非連系相)における第1受電点電流計130aで測定された第1受電点電流との和が、漏電ブレーカ114bの定格遮断電流以下となるように、発電部120aの出力を制限する。
【0053】
例えば、図8に示すように、第1受電点電流が25Aであれば、制御部120cは、その第1受電点電流25Aと設備電流との和が、漏電ブレーカ114bの定格遮断電流30A以下となるように、すなわち、設備電流が5A以下となるように、発電部120aを制御する。そうすると、内部配線114cの全ての部分に流れる電流が、内部配線114cの過電流耐量30A以下となるので、既設の内部配線114cに過電流耐量を上回る電流が流れるのを防止でき、発熱や耐久性劣化を防止することが可能となる。
【0054】
ここで、発電部120aの出力制限の条件として、設備電流と、電力供給設備120が接続されていない第1電圧線における第1受電点電流計130aで測定された第1受電点電流との和としているのは以下の理由からである。
【0055】
例えば、設備電流をX、負荷設備16aで消費する電流をY、負荷設備16bで消費する電流をZとすると、各配線に流れる電流は、図9のようになる。ここでは、太線で示した負荷設備16aと負荷設備16bとを接続する部分を流れるX+Yの電流値が最大となるので、X+Yが内部配線114cの過電流耐量以下となればよいことになる。したがって、制御部120cは、設備電流Xと、電力供給設備120が接続されていない第1電圧線における第1受電点電流計130aで測定された(負荷設備16aの消費電流Yと等しい)第1受電点電流との和が、漏電ブレーカ114bの定格遮断電流以下となるように、発電部120aの出力を制限すればよいこととなる。
【0056】
また、制御部120cは、設備電流と、電力供給設備120が接続されていない第1電圧線における第1受電点電流計130aで測定された第1受電点電流との和が、漏電ブレーカ114bの定格遮断電流の30A、または、漏電ブレーカ114bの定格遮断電流未満の所定電流、例えば、28Aに追従するように、電力供給設備120の出力を制限してもよい。かかる構成により、受電点電流が増大すると、その分、設備電流を減少させ(抑制し)、逆に、受電点電流が減少すると、その分、設備電流を増大させることができるようになる。こうして、電力供給設備120の出力を最大に活かしつつ、既設の内部配線114cに過電流耐量を上回る電流が流れるのを防止することができる。
【0057】
なお、ここでは、第1電圧線の電流を計測する第1受電点電流計130aを用いる例を挙げて説明したが、電力供給設備120が接続されていない電圧線の電流を計測しさえすれば足り、例えば、電力供給設備120が第1電圧線に接続されている場合、第2受電点電流計130bを用いてもよい。
【0058】
また、単相3線式では、3つの線(第1電圧線、中性線、第2電圧線)のいずれか2つの線の電流を把握できれば、他の1の線の電流を計算により導出できる。したがって、第2受電点電流計130bと中性線を流れる電流を測定する電流計とを準備し、第1電圧線の電流を、第2受電点電流と中性線を流れる電流とから導出するとしてもよい。
【0059】
(第4の実施形態)
第3の実施形態では、100V出力の電力供給設備120を接続する例を挙げて説明したが、200V出力の電力供給設備120を接続することもできる。
【0060】
図10は、電力システム300の基本的な接続態様を示した説明図である。電力システム300は、図1の電力システム100および図6の電力システム200同様、電力メータ112と、分電盤114と、構内配線116と、電力供給設備120を含んで構成される。ただし、ここでは、図1図6と異なり、電力供給設備120が200V出力なので、配線用ブレーカ114dに接続できず、内部配線114cにおける、負荷設備16より漏電ブレーカ114bの下流に相当する200Vの連系ブレーカ114fを介して接続される(下位連系)。したがって、電力供給設備120は、内部配線114cの第1電圧線および第2電圧線における、漏電ブレーカ114bからみて負荷設備16より二次側に接続されていることになる。
【0061】
図11は、比較例としての電力供給設備120の接続態様を説明するための説明図である。200V出力の電力供給設備120を電力システム300に接続する場合、電力供給設備120は、例えば、内部配線114cにおける、第1電圧線と第2電圧線とに、負荷設備16a、16b、16dより漏電ブレーカ114bの下流に相当する連系ブレーカ114fを介して接続される。したがって、電力供給設備120は、内部配線114cの第1電圧線および第2電圧線における、漏電ブレーカ114bからみて負荷設備16a、16b、16dより二次側に接続されていることになる。
【0062】
ここでも、図7同様、電力供給設備120から電力が供給されることにより、過電流耐量以上の電流が内部配線114cに流れる場合がある。図11を参照し、例えば、負荷設備16a、16dにおいて合わせて35A(3500W)消費され、負荷設備16bにおいて10A(1000W)消費されているとする。ここでも、説明の便宜上、他の負荷設備16の消費は考慮しない。このとき、漏電ブレーカ114bの定格遮断電流および内部配線114cの過電流耐量は30Aであるとする。
【0063】
ここで、電力供給設備120から電流値10A相当の電力が負荷設備16a、16bおよび負荷設備16dに供給されると、電力系統からは最大25A相当の電力が負荷設備16a、16b、16dに供給されることになる。具体的には、第1電圧線に25A、中性線に25A、第2電圧線に0A流れることとなる。このとき、電力供給設備120は定格内で動作しており、単相3線式の各線(第1電圧線、中性線、第2電圧線)に流れる電流も漏電ブレーカ114bの定格遮断電流30A以下なので問題がない。
【0064】
しかし、内部配線114cのうち、図11において太線で示した部分では、最大で、電力供給設備120の電流と受電点電流との和に相当する電流(例えば35A)が流れ、その電流値が、内部配線114cの過電流耐量30A以上となる場合がある。そうすると、図7同様、発熱や耐久性劣化の原因となるおそれがある。ここでは、100V出力の電力供給設備120同様、200V出力の電力供給設備120においても、発電部120aの出力を制御することで、既設の内部配線114cに過電流耐量を上回る電流が流れるのを防止する。
【0065】
図12および図13は、電力供給設備120の接続態様を説明するための説明図である。ここでは、例えば、第1受電点電流計130aと第2受電点電流計130bの両方を用いる。
【0066】
そして、電力供給設備120の制御部120cは、設備電流計120bで測定された設備電流と、接続点が電力供給設備120に近い負荷設備16a、16dが接続された第1電圧線における第1受電点電流計130aで測定された第1受電点電流との和が、漏電ブレーカ114bの定格遮断電流以下となるように、発電部120aの出力を制限する。
【0067】
例えば、図12に示すように、第1受電点電流が25Aであれば、制御部120cは、その第1受電点電流25Aと設備電流との和が、漏電ブレーカ114bの定格遮断電流30A以下となるように、すなわち、設備電流が5A以下となるように、発電部120aを制御する。そうすると、内部配線114cの全ての部分に流れる電流が、内部配線114cの過電流耐量30A以下となるので、既設の内部配線114cに過電流耐量を上回る電流が流れるのを防止でき、発熱や耐久性劣化を防止することが可能となる。
【0068】
ここで、発電部120aの出力制限の条件として、設備電流と、接続点が電力供給設備120に近い負荷設備16が接続された第1電圧線における第1受電点電流計130aで測定された第1受電点電流との和としているのは以下の理由からである。
【0069】
例えば、設備電流をX、負荷設備16aで消費する電流をY、負荷設備16bで消費する電流をZとすると、各配線に流れる電流は図13のようになる。ここでは、太線で示した部分を流れるYの電流値が最大となるので、Yが内部配線114cの過電流耐量以下となればよいことになる。したがって、制御部120cは、設備電流Xと、接続点が電力供給設備120に近い負荷設備16aが接続された第1電圧線における第1受電点電流計130aで測定された第1受電点電流Y-Xとの和であるYが、漏電ブレーカ114bの定格遮断電流以下となるように、発電部120aの出力を制限すればよいこととなる。
【0070】
また、制御部120cは、設備電流と、接続点が電力供給設備120に近い負荷設備16aが接続された第1電圧線における第1受電点電流計130aで測定された第1受電点電流Y-Xとの和が、漏電ブレーカ114bの定格遮断電流の30A、または、漏電ブレーカ114bの定格遮断電流未満の所定電流、例えば、28Aに追従するように、電力供給設備120の出力を制限してもよい。かかる構成により、受電点電流が増大すると、その分、設備電流を減少させ(抑制し)、逆に、受電点電流が減少すると、その分、設備電流を増大させることができるようになる。こうして、電力供給設備120の出力を最大に活かしつつ、既設の内部配線114cに過電流耐量を上回る電流が流れるのを防止することができる。
【0071】
なお、ここでは、第1電圧線の電流を計測する第1受電点電流計130aを用いる例を挙げて説明したが、接続点が電力供給設備120に近い負荷設備16が接続された電圧線の電流を計測しさえすれば足り、例えば、接続点が電力供給設備120に近い負荷設備16が接続された電圧線が第2電圧線である場合、第2受電点電流計130bを用いてもよい。
【0072】
また、単相3線式では、3つの線(第1電圧線、中性線、第2電圧線)のいずれか2つの線の電流を把握できれば、他の1の線の電流を計算により導出できる。したがって、第2受電点電流計130bと中性線を流れる電流を測定する電流計とを準備し、第1電圧線の電流を、第2受電点電流と中性線を流れる電流とから導出するとしてもよい。
【0073】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0074】
例えば、上述した実施形態においては、制御部120cが電力供給設備120内に設けられている例を挙げて説明したが、かかる場合に限らず、制御部120cを別体として電力供給設備120外に設けてもよい。この場合、制御部120cと、電力供給設備120、第1受電点電流計130a、および、第2受電点電流計130bとの間の情報伝達は、アナログ信号(例えば電圧値)でも、デジタル信号でも構わない。
【0075】
また、ここでは、制御部120cは、漏電ブレーカ114bの定格遮断電流以下となるように電力供給設備120の出力を制限しているが、漏電ブレーカ114bの定格遮断電流 ≧ 内部配線114cの過電流耐量であるから、漏電ブレーカ114bの定格遮断電流に代えて内部配線114cの過電流耐量以下であることを条件としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、需要者構内に電力供給設備を接続可能な電力システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
14 電力系統
16(16a、16b、16c、16d) 負荷設備
100、200、300 電力システム
114b 漏電ブレーカ
114c 内部配線
114d 配線用ブレーカ
114e 個別ブレーカ
114f 連系ブレーカ
120 電力供給設備
120a 発電部
120b 設備電流計
120c 制御部
130a 第1受電点電流計(受電点電流計)
130b 第2受電点電流計(受電点電流計)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13